JP2005272711A - 熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム、光学フィルム及び偏光子保護フィルム - Google Patents

熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム、光学フィルム及び偏光子保護フィルム Download PDF

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Katsunori Toyoshima
克典 豊嶋
Takeharu Morita
健晴 森田
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Abstract

【課題】 高い耐クラック性と光学性能とを両立した熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フ
ィルム、光学フィルム及び偏光子保護フィルムを提供する。
【解決手段】 熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、ゴム質重合体を
5〜40重量部含有する熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムであって、熱可塑性飽
和ノルボルネン系樹脂からなるマトリックス中にゴム質重合体からなる分散相が分散相間
の距離が700nm以下となるように分散している熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィ
ルム。
【選択図】 なし

Description

本発明は、高い耐クラック性と光学性能とを両立した熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フ
ィルム、光学フィルム及び偏光子保護フィルムに関する。
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂は、耐熱性、光学性能、透明性、電気特性等において優
れた性能を有し、自動車部品、電気・電子部品、光学部品及び建材等に用いるフィルムと
しての応用が検討されている。とりわけ、卓上電子計算機、電子時計、ワープロ、自動車
や機械類の計器類等の液晶表示装置の偏光板に用いる偏光子保護フィルムや位相差板とし
ての応用が期待されている。
偏光板は、通常、延伸配向したポリビニルアルコール樹脂にヨウ素又は二色性染料を吸着
させた偏光子と、偏光子の両面に接着された偏光子保護フィルムからなる。偏光子保護フ
ィルムとして用いる光学フィルムには、光透過性等の光学性能に優れること、収縮性の大
きい偏光子の収縮を防止できるだけの力学的強度を有すること、製造工程においてかけら
れる高温に耐えうる耐熱性を有すること等が求められている。
従来、偏光子保護フィルムとしては、トリアセチルセルロースからなる光学フィルムが用
いられていた。しかし、トリアセチルセルロースからなる光学フィルムは、高い光学性能
を有するものの、耐熱性、耐湿性が不充分であり、高温又は高湿雰囲気下で長時間使用す
ると偏光度の著しい低下、偏光子と保護フィルムとの剥離、トリアセチルセルロースの加
水分解による透明性の低下等が起こり、偏光板の性能を低下させるという問題があった。
また、液晶表示装置には、液晶物質を通過する際の光の歪みを補償することを目的として
位相差板が用いられている。このような位相差板としては、ポリカーボネート樹脂やポリ
スルホン樹脂のように透明性、耐熱性に優れる樹脂からなるものが用いられていた。
特許文献1には、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムが開示されてい
る。熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムは、応力に対する複屈折の発
現が小さいといった特徴や高透明性等の優れた光学性能に加え、優れた耐熱性を示す。従
って、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムを用いれば、高い光学性能
を有する偏光板を得ることが期待できる。
しかしながら、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムは、非常に脆く、
容易にクラックが生じることがあった。とりわけ、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂から
なる光学フィルムを偏光子保護フィルムとして用いて作製した偏光板をガラス板に貼り付
け、これを耐熱試験に供すると、しばしば偏光子保護フィルムにクラックが生じることが
あった。そこで、高い耐クラック性と、優れた光学性能とを両立したフィルムが求められ
ていた。
これに対して、特許文献2には、ノルボルネン開環重合体水素添加物とゴムとを含有して
なる樹脂組成物が開示されている。これは、ノルボルネン開環重合体水素添加物にゴムを
添加することにより、金属部品のインサート成形に用いたときにクラックや成形時のひけ
が抑えられた成形品が得られ、また、熱可塑性飽和ノルボルネン系ポリマーとの接着性に
優れるというものである。この樹脂組成物は、ノルボルネン系樹脂の有する脆さ等の物理
性能は改善されていると考えられる。しかしながら、ゴムの添加により、平行光線透過率
等の光学性能は著しく低下し、光学フィルムとしては用いることができないものであった
また、特許文献3にも、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂及びそれと非相溶である配合剤
からなり、配合剤がミクロドメインを形成して分散している熱可塑性飽和ノルボルネン系
樹脂組成物及びこれからなる光学材料が記載されており、配合剤としてゴム質重合体を用
いた場合には、各種の塗料や膜との接着性が改良できる旨が開示されている。しかしなが
ら、充分な光学性能を得るためには、添加するゴム質重合体の量は熱可塑性飽和ノルボル
ネン系樹脂100重量部に対して0.001〜0.8重量部程度とされ、この程度の配合
剤の添加では、充分な物理性能の改善は実現できなかった。
また、特許文献4には、熱可塑性飽和ノルボルネン樹脂とゴム質重合体とからなる熱可塑
性樹脂組成物が開示されており、該熱可塑性樹脂組成物を射出成形してなる成形体が記載
されている。しかしながら、特許文献4においては得られた成形体の耐衝撃性や全光線透
過率等についての記載はされているものの、光学フィルムの製造については何ら記載され
ておらず、光学フィルムの性能として不可欠な平行光線透過率やヘイズについても何ら記
載されていなかった。
更に、特許文献5には、熱可塑性飽和ノルボルネン樹脂とゴム成分を溶媒に溶解又は分散
し、キャスト法により形成したフィルムが開示されている。これは、熱可塑性飽和ノルボ
ルネン樹脂に対してゴム成分を配合し、伸度を改善するというものである。しかしながら
、得られたフィルムは平行光線透過率等の光学性能に劣り、光学フィルムとしては用いる
ことができないものであった。
特開平5−247324号公報 特開平3−106963号公報 特開平5−247324号公報 特許第2940014号公報 特開平5−148413号公報
本発明は、上記現状に鑑み、高い耐クラック性と光学性能とを両立した熱可塑性飽和ノル
ボルネン系樹脂フィルム、光学フィルム及び偏光子保護フィルムを提供することを目的と
する。
本発明は、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、ゴム質重合体を5〜
40重量部含有する熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムであって、熱可塑性飽和ノ
ルボルネン系樹脂からなるマトリックス中にゴム質重合体からなる分散相が分散相間の距
離が700nm以下となるように分散している熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム
である。
以下に本発明を詳述する。
本発明者らは、鋭意検討の結果、従来の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムには、
応力を加える時間に依存してフィルムの強度が徐々に低下してしまうという性質があり、
これが偏光子保護フィルムとして用いて製造した偏光板において、偏光子保護フィルムに
クラックが発生してしまう原因となっていることを見出した。即ち、偏光板においては、
長期間にわたって偏光子の収縮応力が偏光子保護フィルムにかかり続けることから、時間
の経過とともに熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの破断強度が急速に低下してい
ってしまうものと考えられる。このような性質は、例えば、定荷重引張試験を行う前後に
おいて、JIS K 7127に準ずる方法により測定した定荷重引張試験前後での引張
強さの比を測定することにより容易に検証することができる。即ち、従来の熱可塑性飽和
ノルボルネン系樹脂フィルムでは、定荷重引張試験前後での引張強さの比が極端に低い傾
向があった。
本発明者らは、更に鋭意検討の結果、一定量のゴム質重合体を特定の分散状態となるよう
に熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂中に分散させることにより、優れた光学性能を維持し
たまま、定荷重引張試験前後の引張強さの比が著しく改善されたフィルムを得ることがで
き、このような熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは極めて耐クラック性に優れる
ことを見出し、本発明を完成するに至った。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂
とゴム質重合体とを含有する。
本明細書において熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂とは、ノルボルネン系単量体の重合体
、又は、ノルボルネン系単量体とこれと共重合可能な単量体との共重合体であって、分子
内に不飽和結合を有しないもの、又は、分子内に不飽和結合を有する場合においてはこれ
を水素添加したものを意味する。
上記ノルボルネン系重合体としては特に限定されないが、例えば、下記一般式(1)で表
される少なくとも1種のノルボルネン系単量体を重合してなるもの、又は、下記一般式(
1)で表される少なくとも1種のノルボルネン系単量体とこれと共重合可能な共重合性単
量体とを共重合してなるものが好適に用いられる。
Figure 2005272711
式中、A、Bは独立して水素原子又は炭素数1〜10の炭化水素基を表し、X、Yは独立
して水素原子、ハロゲン原子又は有機基を表し、mは0又は1を表す。
上記一般式(1)で表されるノルボルネン系単量体としては特に限定されないが、例えば
、ビシクロ〔2.2.1〕−2−ヘプテン、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕−8−
デセン、トリシクロ〔5.2.1.02,6〕−3−デセン、トリシクロ〔6.2.1.
1,9〕−9−ウンデセン、トリシクロ〔6.2.1.01,9〕−4−ウンデセン、
テトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−3−ドデセン等の官能基を有しな
いもの;8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,5.17,10〕−
3−ドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ〔4.4.0.12,
.17,10〕−3−ドデセン、5−メトキシカルボニル−ビシクロ〔2.2.1〕−
2−ヘプテン等の官能基を有するものが好適である。なかでも、上記一般式(1)におい
てmが1であるテトラシクロドデセン誘導体が、ガラス転移温度の高い重合体が得られる
点で好適である。これらのノルボルネン系単量体は単独で用いてもよいし、2種以上を併
用してもよい。
上記一般式(1)で表されるノルボルネン系単量体と共重合可能な共重合性単量体として
は特に限定されず、例えば、上記一般式(1)に含まれないノルボルネン系単量体やノル
ボルネン骨格を有しない環状オレフィン系単量体が挙げられる。
上記一般式(1)に含まれないノルボルネン系単量体としては、例えば、ペンタシクロ〔
6.5.1.13,6.02,7.09,13〕−4−ペンタデセン、ペンタシクロ〔6
.6.1.13,6.02,7.09,14〕−4−ヘキサデセン、ペンタシクロ〔6.
5.1.13,6.02,7.09,13〕−11−ペンタデセン、ジシクロペンタジエ
ン、ペンタシクロ〔6.5.1.13,6.02,7.09,13〕−ペンタデカ−4,
11−ジエン等のポリシクロアルケン等が挙げられる。
上記ノルボルネン骨格を有しない環状オレフィン系単量体としては特に限定されず、例え
ば、シクロペンテン、シクロオクテン、1,5−シクロオクタジエン、1,5,9−シク
ロドデカトリエン等のシクロオレフィン類等が挙げられる。
上記一般式(1)で表されるノルボルネン系単量体を重合する方法、又は、上記一般式(
1)で表されるノルボルネン系単量体とこれと共重合可能な共重合性単量体とを共重合す
る方法としては特に限定されず、例えば、開環メタセシス重合、付加重合等の従来公知の
方法を用いることができる。
上記ノルボルネン系重合体又はノルボルネン系共重合体に水素添加する方法としては特に
限定されず、例えば、ウィルキンソン錯体、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニ
ッケルアセチルアセトナート/トリイソブチルアルミニウム、パラジウム−カーボン、ル
テニウム錯体、ルテニウム−カーボン、ニッケル−珪藻土等の従来公知の触媒を用いる方
法等が挙げられる。また、重合の際にルテニウムアルキリデン錯体、ルテニウムビニリデ
ン錯体、ルテニウムフィッシャーカルベン錯体等のメタセシス重合性を示す錯体を用いる
場合には、水素添加触媒を加えることなく水素加圧によって水素化が行え、重合と水素化
のステップを連続で行うことができる。
上記水素添加は、触媒の種類により均一系または不均一系で、通常1〜200気圧の水素
圧下、0〜250℃の条件で行われる。
上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂とは、上記ノルボルネン系重合体又は上記ノルボル
ネン系共重合体が分子内に不飽和結合を有する場合には、水素添加率が少なくとも50%
以上となるように水素添加したものを意味するが、水素添加率は90%以上であることが
好ましく、より好ましくは99%以上である。水素添加率が50%未満であると、得られ
る第1の本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの耐光性、耐熱劣化性が劣る
上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂の標準ポリスチレン換算による数平均分子量の好ま
しい下限は1万、好ましい上限は100万である。1万未満であると、得られる本発明の
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの力学強度が不足することがあり、100万を
超えると、溶融成形性が著しく低下することがある。より好ましい下限は15000、よ
り好ましい上限は70万である。
なお、上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂は、溶融成形性等の他の要件を満たす範囲で
、より高分子量の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を用いることが好ましい。
上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度の好ましい下限は70℃、好まし
い上限は180℃である。70℃未満であると、得られる本発明の熱可塑性飽和ノルボル
ネン系樹脂フィルムの耐熱性が劣ることがあり、180℃を超えると成形が困難になるこ
とがある。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、ゴム質重合体を含有する。本明細
書においてゴム質重合体とは、ハードセグメントとソフトセグメントとからなる重合体で
あって、ソフトセグメントのガラス転移温度が25℃以下であるものを意味する。
上記ゴム質重合体としては特に限定されず、例えば、スチレン−ブタジエンブロック共重
合体、水素化スチレン−ブタジエンブロック共重合体、スチレン−イソプレンブロック共
重合体、水素化スチレン−イソプレンブロック共重合体、スチレン−イソブチレンブロッ
ク共重合体等のスチレン系エラストマーや、低結晶性ポリブタジエン樹脂、エチレン−プ
ロピレンエラストマー、スチレングラフトエチレン−プロピレンエラストマー、熱可塑性
ポリエステルエラストマー、エチレン系アイオノマー樹脂等の熱可塑性エラストマー等が
挙げられる。これらのゴム質重合体は、エポキシ基、カルボキシル基、ヒドロキシル基、
アミノ基、酸無水物基、オキサゾリン基等の特定の官能基によって変性されたものであっ
てもよい。なかでも、スチレン系エラストマーが好適である。
上記スチレン系エラストマーとしては、得られる本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹
脂フィルムの光学性能を損なうことなく引張弾性率、引張破壊伸び等の物理性能を改善で
きるものであれば特に限定されず、例えば、スチレンセグメントとガラス転移温度が25
℃以下のセグメントとからなる共重合体が挙げられ、なかでも、スチレン−エチレン−ブ
チレン共重合体(SEBS)やスチレン−エチレン−プロピレン共重合体等が好ましい。
特に、スチレン成分が25〜50重量%、エチレン成分が25〜50重量%であるスチレ
ン−エチレン−ブチレン共重合体は、極めて高い光学性能と物理性能とを両立した光学フ
ィルムが得られることから好適である。これは、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂との屈
折率が極めて近く、ゴム的な性質を効率よく付与できかつ弾性率の低下も小さいため、熱
可塑性飽和ノルボルネン系樹脂の特性を損なわないためと考えられる。
上記ゴム質重合体としてスチレン系エラストマーを用いる場合、上記スチレン系エラスト
マーの数平均分子量の好ましい下限は5万、好ましい上限は100万である。5万未満で
あると、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂中への分散性が不充分となり、ゴム質重合体の
添加による物理性能の改質効果が得られないことがあり、100万を超えると、ノルボル
ネン系樹脂への配合時の溶融粘度が高すぎて、成形性が劣り均一なフィルムが得られない
ことがある。より好ましい下限は8万、より好ましい上限は50万であり、更に好ましい
下限は10万、更に好ましい上限は40万である。
上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂とゴム質重合体とは、屈折率の差が0.2以下であ
ることが好ましい。0.2を超えると、得られる本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹
脂フィルムの透明性、残留位相差等が悪化したり、光学的な歪み等を生じやすくなったり
することがある。より好ましくは0.1以下、更に好ましくは0.05以下、特に好まし
くは0.03以下である。
また、本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを、各成分を溶融混合すること
により製造する場合には、成形温度における上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂の粘度
(ηノルボルネン)とゴム質重合体の粘度(ηゴム)との比(ηゴム/ηノルボルネン)
が1に近いことが好ましい。粘度比が1に近いと、上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂
中に上記ゴム質重合体を微分散させることができる。好ましくは0.2〜3.0であり、
より好ましくは0.4〜2.0である。得られる熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィル
ムのヘイズ値を0.5%以下とする場合には、特にηゴム/ηノルボルネンが0.5〜1
.8であることが好ましい。なお、ここでいう粘度とは、実際の成形温度においてせん断
速度24.3で測定したときの粘度を意味する。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムにおいては、上記ゴム質重合体からな
る分散相が、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなるマトリックス中に分散相間の距離
が700nm以下となるように分散している。このような特定の分散状態をとるときに、
得られる熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、下述するような高い定荷重引張試
験前後の引張強さの比を発現することができ、このような熱可塑性飽和ノルボルネン系樹
脂フィルムは極めて耐クラック性に優れるものとなる。分散相間の距離が700nmを超
えると、定荷重引張試験前後の引張強さの比が劣る。
なお、本明細書において分散相間の距離とは、ゴム質重合体からなる分散相が分散した本
発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂において、隣接する分散相の外縁部間の距離の平
均を意味し、簡易的には以下の方法により測定することができる。
即ち、まず、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂を四酸化ルテニウム等により染色した後、
ミクロトームを用いて約0.05μmの厚さにスライスし、その断面を透過型電子顕微鏡
を用いて25000倍の倍率で写真撮影する。得られた写真の略中央部に任意の1点を定
め、この点を中心として放射状に直線を描き、該直線上にある隣接する分散相について外
縁部間の距離を測定する。10本の直線を描いて測定を行い、分散相間の平均距離を求め
る。
上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなるマトリックス中におけるゴム質重合体から
なる分散相間の距離は、上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂とゴム質重合体との親和性
や、これらを溶融混合する際の温度等により決まり、ゴム質重合体からなる分散相の径が
小さいほど短くなる。
また、上記分散相間の距離は、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂とゴム質重合体とがサラ
ミ構造をとる場合にも短くなる。サラミ構造とは、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂から
なるマトリックス(海相)中に、ゴム質重合体からなる分散相(島相)が分散している場
合において、更にゴム質重合体からなる分散相(島相)中に、熱可塑性飽和ノルボルネン
系樹脂からなる湖相が形成されているような構造を意味する。可塑性飽和ノルボルネン系
樹脂とゴム質重合体とがサラミ構造をとる場合には、連続相と分散相との界面が増加する
ことから、たとえ分散相の径が大きくとも、分散相間の距離は短くなる。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムにおいて、上記熱可塑性飽和ノルボル
ネン系樹脂100重量部に対するゴム質重合体の含有量の好ましい下限は5重量部、好ま
しい上限は40重量部である。5重量部未満であると、充分な物理性能の改善効果が得ら
れないことがあり、40重量部を超えると、得られる本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン
系樹脂フィルムの光学性能が劣ることがある。より好ましい下限は10重量部、より好ま
しい上限は30重量部である。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、更に、熱可塑性樹脂を含有するこ
とが好ましい。熱可塑性樹脂を含有することにより、上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹
脂とゴム質重合体との相溶性が向上し、得られる本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹
脂フィルムの光学性能が向上することがある。
上記熱可塑性樹脂としては特に限定されないが、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂との相
溶性に優れることからオレフィン系樹脂が好適である。
上記熱可塑性樹脂の数平均分子量の好ましい下限は300、好ましい上限は1万である。
300未満であると、ブリードアウト等の問題が生ずることがあり、1万を超えると、相
溶性向上効果が得られないことがある。より好ましい下限は500、より好ましい上限は
5000であり、更に好ましい下限は600、更に好ましい上限は2000である。
上記熱可塑性樹脂は、上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂との屈折率差が0.2以下で
あることが好ましい。0.2を超えると、得られる本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系
樹脂フィルムの透明性が劣ることがある。より好ましくは0.1以下である。
また、本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを、各成分を溶融混合すること
により製造する場合には、上記熱可塑性樹脂としては、熱重量分析において空気雰囲気下
での2重量%分解温度が230℃以上であるものが好ましい。より好ましくは250℃以
上、更に好ましくは270℃以上である。
このような性質を有する熱可塑性樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、トー
ネックス社製「エスコレッツ」、ヤスハラケミカル社製「クリアロン」、荒川化学社製「
アルコン」等が挙げられる。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、本発明の目的を阻害しない範囲で
必要に応じて、2,6−ジ−t−ブチル−4−メチルフェノール、2−(1−メチルシク
ロヘキシル)−4,6,ジメチルフェノール、2,2−メチレン−ビス−(4−エチル−
6−t−ブチルフェノール)、トリス(ジ−ノニルフェニルホスファイト)等の酸化防止
剤;p−t−ブチルフェニルサリシレート、2,2’−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベ
ンゾフェノン、2−(2’−ジヒドロキシ−4’−m−オクトキシフェニル)ベンゾトリ
アゾール等の紫外線吸収剤;パラフィンフェノス、硬化油等の滑剤;ステアロアジトプロ
ピルジメチル−β−ヒドロキシエチルアンモニウムトレート等の帯電防止剤等を含有して
もよい。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、23℃、50%RHの雰囲気下で
20mm幅の試験片の長さ方向に9.8Nの引張荷重を24時間付加する定荷重引張試験
を行う前後において、JIS K 7127に準ずる方法により測定した定荷重引張試験
前後の引張強さをそれぞれA、Bとしたときに、引張強さの比B/Aが0.7以上である
。0.7未満であると、偏光子保護フィルムとして用いて作製した偏光板において、使用
中に偏光子保護フィルムにクラックが生じることがある。好ましくは0.8以上であり、
より好ましくは0.9以上である。
上記引張強さの比の測定法について更に詳述する。
まず、押出フィルムである場合には押出方向に平行(MD)及び直角(TD)に、キャス
トフィルムである場合には塗工方向(MD)に切り出し、幅20mm×長さ250mmの
試験片を作製する。次いで、引張試験機(例えば、テンシロンUTA−500、オリエン
テック社製)を用い、この試験片に9.8Nの荷重に相当する錘をぶら下げた状態で、2
3℃、50%RHの条件下で24時間放置する定荷重引張試験を行う。
この定荷重引張試験前後(ただし、定荷重引張試験後12時間以内の試験片を用いる)の
試験片について、引張試験機を用いて、JIS K 7127に準拠して引張強さを測定
する。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、JIS K 7127に準じて測
定した引張弾性率が900MPa以上であることが好ましい。900MPa未満であると
、偏光子保護フィルムとして用いた場合に、偏光子の収縮を抑えることができないことが
ある。より好ましくは1000MPa以上である。なお、引張弾性率は高い方が好ましく
、特に上限はない。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、JIS K 7127に準じて測
定した引張破壊伸びの好ましい下限が4%、好ましい上限が40%である。4%未満であ
ると、破断しやすくなることから、偏光子保護フィルムとして用いた場合に、偏光板のリ
ワーク性が劣ることがあり、40%を超えると、耐久試験、特に耐熱劣化試験を行うと偏
光板の寸法変化が大きくなり、光学性能の変化や液晶セルからの剥離が発生しやすくなる
ことがある。より好ましい下限は6%、より好ましい上限は35%であり、更に好ましい
下限は8%である。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、平行光線透過率が87%以上であ
ることが好ましい。87%未満であると、偏光子保護フィルム等の用途には用いることが
困難となる。より好ましくは89%以上である。
また、本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、ヘイズ値が5%以下である
ことが好ましい。5%を超えると、偏光子保護フィルム等の用途に用いた場合に、光洩れ
等の原因となることがある。より好ましくは3%以下、更に好ましくは1%以下、特に好
ましくは0.5%以下である。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、更に、残留位相差が3nm以下、
かつ、光軸ずれが長軸(MD)方向に対して±10°以下であることが好ましい。残留位
相差が3nmを超えたり、光軸ずれが長軸方向に対して±10°を超えたりすると、本発
明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを偏光子保護フィルム等として用いた場合
に光洩れ等の原因となることがある。残留位相差と光軸ずれとは小さい方が好ましいが、
残留位相差が1nm以下であると、光軸ずれの大きさを無視することができ、光軸ずれを
検査する工程が不要となることから偏光子保護フィルム等を製造する際の製造工程を大幅
に簡略化することができより好ましい。
なお、上記光軸とは、入射光線の屈折率が最も大きくなる方向、一般的には遅相軸と呼ば
れる軸のことを意味し、上記光軸ずれとは、上記光軸の長軸方向に対する角度のズレのこ
とを意味する。また、長軸方向とは、例えばフィルムを押出成形により作製する場合の押
出成形の流れ方向である。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、光弾性係数が2.0×10−11
Pa−1以下であることが好ましい。本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム
を偏光子保護フィルムとして用いた場合、偏光子の収縮応力、貼り合わせ時の歪みによる
応力、ディスプレイへの組み込み時の歪みによる応力等、種々の外力がかかる。とりわけ
、高温高湿環境下においては、偏光子の収縮応力は大きい。光弾性係数とは、下記式によ
り算出されるものであり、外力に対する複屈折の変化を表す値である。
光弾性係数(c) = 複屈折(Δn)/応力(σ)
即ち、光弾性係数が小さいほど、外力による複屈折率の変化量が小さいものになる。光弾
性係数が2.0×10−11Pa−1を超えると、外力による変形により光学性能が大き
く変化するため、光学フィルムの用途には用いることが困難となる。より好ましくは1.
0×10−11Pa−1以下である。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの厚さとしては特に限定されないが、
平均膜厚が100μm以下であるときに、上述の光学性能及び物理性能を満たすものであ
ることが好ましい。より好ましくは平均膜厚が70μm以下、更に好ましくは平均膜厚が
50μm以下であるときに、上述の光学性能及び物理性能を満たすものであることである
。平均膜厚50μm以下で上述の光学性能及び物理性能を満たすものであると、コストも
大幅に削減することができ、極めて価値が高い。平均膜厚の下限についても特に限定され
ないが、光学フィルムや偏光子保護フィルム等として用いることを考えれば、好ましくは
平均膜厚が25μm以上、より好ましくは平均膜厚が20μm以上であるときに、上述の
光学性能及び物理性能を満たすものであることが好ましい。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを製造する方法としては特に限定され
ず、溶融押出法等の従来公知の方法により製造することができる。
ただし、本発明においては熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂中にゴム質重合体からなる分
散相を高分散させることが重要である。
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂中におけるゴム質重合体からなる分散相の分散性は、例
えば、溶融押出法により製造する場合には、押出機における樹脂の溶融温度とスクリュー
の回転数とにより制御することができる。即ち、溶融温度が低いほど、また、スクリュー
の回転数が大きいほど、ゴム質重合体からなる分散相の分散性が高くなり、分散相間の距
離を700nm以下にすることができる。また、上述の熱可塑性樹脂等の相溶化剤を配合
することも効果的である。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、上述のように高い光学性能を維持
したまま、定荷重引張試験前後の引張強さの比が著しく改善されたものであり、偏光子保
護フィルムとして用いた場合にも、クラックの発生が少ない。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムからなる光学フィルムもまた、本発明
の1つである。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムからなる偏光子保護フィルムもまた、
本発明の1つである。
本発明の偏光子保護フィルムは、用いる液晶ディスプレイの用途にあわせて、各種の表面
処理を行ってもよい。上記表面処理としては特に限定されず、例えば、クリアハードコー
ト処理、AG(映り込み防止)処理、AR(反射防止)処理等が挙げられる。
本発明の偏光子保護フィルムは、光学性能を損なわない範囲で、偏光子との貼り合わせ性
を向上させる目的で、表面の水による接触角が40〜50度程度になるようにコロナ放電
処理等を施してもよい。
本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムは、一軸又は二軸延伸して配向性を付
与することにより、液晶物質を通過する際の光の歪みを補償する位相差板としても好適に
用いることができる。本発明の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムからなる位相差
板もまた、第1の本発明の1つである。更に、本発明の位相差板を偏光子の少なくとも片
面に直接積層してなる偏光板もまた、本発明の1つである。
上記延伸を行う場合の温度としては特に限定されないが、上記熱可塑性飽和ノルボルネン
系樹脂のガラス転移温度〜上記熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度+20
℃であることが好ましい。この範囲外であると、低温側ではフィルムが破断してしまった
り、高温側では所望の位相差値が得られなかったりすることがある。より好ましくは上記
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度+1℃〜上記熱可塑性飽和ノルボルネ
ン系樹脂のガラス転移温度+10℃である。
上記延伸を行う場合の延伸倍率としては特に限定されないが、フィルムの溶融押出の方向
に延伸する場合には、好ましい下限は1.05倍、好ましい上限は5.0倍である。1.
05倍未満であると、変形量が少なすぎて充分なレタデーションが得られないことがあり
、5.0倍を超えると、フィルムが破断してしまうことがある。より好ましい下限は1.
1倍、より好ましい上限は2.5倍である。また、フィルムの溶融押出の方向とは垂直の
方向に延伸する場合には、好ましい下限は1.2倍、好ましい上限は3.0倍であり、よ
り好ましい下限は1.5倍、より好ましい上限は2.5倍である。
本発明によれば、高い耐クラック性と光学性能とを両立した熱可塑性飽和ノルボルネン系
樹脂フィルム、光学フィルム及び偏光子保護フィルムを提供できる。
以下に実施例を掲げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれらの実施例のみに限
定されるものではない。
(実施例1)
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂(JSR社製、ARTON G6810:ガラス転移温
度164℃、屈折率1.52)とスチレン系エラストマー(旭化成社製、タフテックH1
041:屈折率1.51、スチレン含量32%、エチレン含量43%)とを90:10の
重量比で2軸溶融押出機に供給して286℃で溶融混合しペレタイズし、110℃で3時
間予備乾燥して熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂組成物を調製した。
得られた熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂組成物を用い、下記の押出機、Tダイ及び樹脂
フィルターにより、押出成形を行い、平均厚さ40μmの熱可塑性飽和ノルボルネン系樹
脂フィルムを得た。
押出機:直径90mm、L/D=28のTダイ付単軸押出機
Tダイ:幅1500mmのコートハンガータイプ、樹脂流路表面はH−Crメッキが施さ
れたもの
(実施例2)
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂とスチレン系エラストマーとを溶融混合してペレタイズ
する際の温度を320℃とした以外は実施例1と同様の方法により熱可塑性飽和ノルボル
ネン系樹脂組成物を調製し、これを用いて平均厚さ40μmの熱可塑性飽和ノルボルネン
系樹脂フィルムを得た。
(実施例3)
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂とスチレン系エラストマーとを溶融混合してペレタイズ
する際の温度を300℃とした以外は実施例1と同様の方法により熱可塑性飽和ノルボル
ネン系樹脂組成物を調製し、これを用いて平均厚さ40μmの熱可塑性飽和ノルボルネン
系樹脂フィルムを得た。
(実施例4)
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂とスチレン系エラストマーとを溶融混合してペレタイズ
する際の温度を310℃とした以外は実施例1と同様の方法により熱可塑性飽和ノルボル
ネン系樹脂組成物を調製し、これを用いて平均厚さ40μmの熱可塑性飽和ノルボルネン
系樹脂フィルムを得た。
(比較例1)
スチレン系エラストマーを用いず、ペレタイズ工程を省略したこと以外は実施例1と同様
の方法により熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを作製した。
(比較例2)
実施例1の樹脂混合物をトルエン溶液として、溶液キャスト法にて平均厚さ40μmの熱
可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを得た。
実施例1及び比較例1、2で作製した熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムについて
、以下の方法により評価を行った。
結果を表1に示した。
(1)ゴム質重合体からなる分散相間の距離の測定
熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムを四酸化ルテニウム等により染色した後、ミク
ロトームを用いて約0.05μmの厚さにスライスし、その断面を透過型電子顕微鏡(日
本電子社製、JEM−1200EX II)を用いて約25000倍の倍率で写真撮影し
た。図1に、実施例1で作製した熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの透過電子顕
微鏡写真を示した。図1においては、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなるマトリッ
クス中にゴム質重合体からなる分散相が分散しているのがわかる。
次いで、写真の略中央の1点から任意に放射線状に直線を描き、該直線上にあるゴム質重
合体からなる分散相について外周間の距離を測定した。各々の写真について10本の直線
を描いて測定を行い、分散相間の平均距離を求めた。
(2)全光線透過率、平行光線透過率及びヘイズ値の測定
ヘイズメーター(東京電色社製、TC−HIIIDKP)を用い、JIS K 7105
に準じて測定を行った。
(3)引張強さ比の測定
実施例1及び比較例1で得られたフィルムの場合には押出方向に平行(MD)及び直角(
TD)に、比較例2で得られたフィルムの場合には塗工方向(MD)に切り出し、幅20
mm×長さ250mmの試験片を作製した。次いで、引張試験機(テンシロンUTA−5
00、オリエンテック社製)を用い、この試験片に9.8Nの荷重に相当する錘をぶら下
げた状態で、23℃、50%RHの条件下で24時間放置する定荷重引張試験を行った。
定荷重引張試験前後(ただし、定荷重引張試験後12時間以内の試験片を用いた)の試験
片について、引張試験機(テンシロンUTA−500、オリエンテック社製)を用いて、
JIS K 7127に準拠して引張強さを測定し、引張強さ比を求めた。
なお、引張強さの測定は、チャック間距離を100mm、引張速度を13.3mm/分、
23℃、50%RHの条件下で行い、得られた破断点強さ及び降伏点強さのうち高いほう
を引張強さとした。なお、測定はそれぞれの試験片で5本ずつ行い、その平均値を求めた
(4)クラック発生の評価
ポリビニルアルコール(重合度3800、鹸化度:99.5モル%)の未延伸フィルム(
厚さ:75μm)を室温の水で洗浄した後、縦一軸方向に6倍延伸を行い、この延伸状態
を保持したままでヨウ素0.5重量%及びヨウ化カリウム5重量%を含有する水溶液中に
浸漬した後、更にホウ酸10重量%及びヨウ化カリウム10重量%を含有する50℃の水
溶液中で5分間架橋処理を行うことにより、偏光子を作製した。
一方、熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム表面にコロナ放電処理を施した後、2液
混合型水性ウレタン系接着剤(東洋モートン社製、EL−436A/B)のA剤/B剤=
10/3(重量比)の混合物を固形分が10重量%となるように水で希釈して接着剤溶液
を調製し、メイヤーバー#8を用いてコロナ放電処理面に塗工し、これを偏光子の両面に
貼り付けて積層体を得た。得られた積層体を45℃の恒温槽中で72時間保持し、乾燥、
養生を行って、偏光板を作製した。
得られた偏光板を90℃、500時間の耐熱試験に供した後、熱可塑性飽和ノルボルネン
系樹脂フィルム表面のクラックの発生の有無を調べた。
Figure 2005272711
本発明によれば、高い耐クラック性と光学性能とを両立した熱可塑性飽和ノルボルネン系
樹脂フィルム、光学フィルム及び偏光子保護フィルムを提供できる。
実施例1において作製した熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムの透過電子顕微鏡写真である。

Claims (5)

  1. 熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、ゴム質重合体を5〜40重量部
    含有する熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムであって、
    熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂からなるマトリックス中にゴム質重合体からなる分散相
    が分散相間の距離が700nm以下となるように分散している
    ことを特徴とする熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム。
  2. 23℃、50%RHの雰囲気下で20mm幅の試験片の長さ方向に9.8Nの引張荷重を
    24時間付加する定荷重引張試験を行う前後において、JIS K 7127に準ずる方
    法により測定した定荷重引張試験前後の引張強さをそれぞれA、Bとしたときに、引張強
    さの比B/Aが0.7以上であることを特徴とする請求項1記載の熱可塑性飽和ノルボル
    ネン系樹脂フィルム。
  3. 熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂とゴム質重合体とは、屈折率の差が0.2以下であるこ
    とを特徴とする請求項1又は2記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルム。
  4. 請求項1、2又は3記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムからなることを特徴
    とする光学フィルム。
  5. 請求項1、2又は3記載の熱可塑性飽和ノルボルネン系樹脂フィルムからなることを特徴
    とする偏光子保護フィルム。
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