JP2004067984A - 樹脂組成物、光学フィルム及び偏光板 - Google Patents
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Abstract
【課題】透明性と透湿性に優れると共に強度と流動性の改善された樹脂組成物、及び、該樹脂組成物を用いて得られる光学フィルムの提供。
【解決手段】ノルボルネン系樹脂と下記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂とを含有する樹脂組成物、及び該樹脂組成物から得られる光学フィルム。
【選択図】 なし
【解決手段】ノルボルネン系樹脂と下記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂とを含有する樹脂組成物、及び該樹脂組成物から得られる光学フィルム。
【選択図】 なし
Description
【0001】
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂組成物、該樹脂組成物からなる光学フィルム、及び該光学フィルムが用いられた偏光板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子材料用樹脂として様々な樹脂が用いられている。ノルボルネン系樹脂は、骨格が剛直であり、ガラス転移温度が高いことから、耐熱性に優れたオレフィン材料として知られている。
しかしながら、このようなノルボルネン系樹脂は、ガラス転移温度が高いために、成形温度が高く、分子量が高いと、成形可能温度で樹脂が分解を始めてしまうといった問題があった。そのため、ノルボルネン系樹脂を成形用樹脂として用いる場合には、比較的分子量の低いものが用いられるが、このような比較的分子量の低いノルボルネン系樹脂は、樹脂の力学強度が高くないという問題があった。また、ノルボルネン系樹脂は、低誘電性の樹脂であり、電子材料用樹脂として期待されているが、電子材料用樹脂は、低温成形が必要な場合があり、また、用途によっては、高い力学強度も求められるため、利用可能な用途が限られていた。
【0003】
ところで、近年、卓上電子計算機、電子時計、ワープロ、自動車、機械類の計器類等には液晶表示装置が用いられることが多い。代表的な液晶表示装置としては、液晶分子を封入した電極が組み込まれたガラスセルに偏光板が貼り合わされたものが挙げられる。
【0004】
偏光板は、通常、延伸配向したポリビニルアルコール樹脂にヨウ素又は二色性染料を吸着させたものからなり、更に偏光板の両面には光学フィルムからなる偏光板保護フィルムが接着されている。
【0005】
偏光板保護フィルムには、高温・高湿といった過酷な条件下でも偏光板としての光学特性を保持できることが要求される。たとえば、高温の状態にさらされると、偏光子として用いられているPVAフィルムが収縮する。偏光子が収縮すると偏光度が低下するため、保護フィルムはこの収縮を抑制するめに、高温でも力学強度を維持する耐熱性が要求される。また、たとえ収縮そのものを抑えられても、その際に収縮応力がかかるため、保護フィルムには位相差が生じる。位相差が発生すると、画面に抜け等が発生するため、画面の視認性が著しく落ちる。この収縮応力による位相差は光弾性係数が大きいと大きくなるため、保護フィルムの材料には光弾性係数が小さいことが要求される。
【0006】
従来、偏光板保護フィルムとしては、セルローストリアセテートフィルムが多用されてきた。しかし、屋外用等耐湿性が特に要求される分野では、セルローストリアセテートフィルムでは耐熱性が低く、吸水率や透湿度が大きいため偏光板保護フィルムとして不適当であり、それに代わるフィルムが要望されていた。
【0007】
特許文献1、特許文献2、特許文献3等には、耐熱性、低吸水性、防湿性、低複屈折率等の特徴を有するノルボルネン系樹脂のフィルムが提案されている。
しかしながら、これらのノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムを偏光板保護フィルムとして使用した場合、透湿性があまりにも低いため、偏光板に貼り合わせる際に用いる接着剤の水分の蒸発が遅く、偏光板に曇りを生じたり、偏光板と充分に接着しない等の問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−51117号公報
【特許文献2】
特開平7−77608号公報
【特許文献3】
特開平11−142645号公報
【0009】
これに対して、特許文献4には、極性基を導入した単量体を重合して得られる改質ノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムが提案されている。このような改質ノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムは、適度な透湿性を有しており、偏光板保護フィルムに用いれば最適な接着性が得られる。しかしながら、改質ノルボルネン系樹脂は、ガラス転移温度が高いために高い成形温度を必要とし、熱分解等の問題から流動性の改良が求められている。また、改質ノルボルネン系樹脂は一般にポリカーボネート樹脂等に比べて脆い。脆さを改良するためには分子量を上げることが有効であるが、分子量を上げると流動性が悪化するという問題点があり、強度と流動性とをともに改良することは困難であった。
【0010】
【特許文献4】
特開平9−316179号公報
【0011】
すなわち、このようなノルボルネン系樹脂は、ガラス転移温度が高いために、高い成形温度が必要であり、樹脂が分解を始めてしまったり、ダイラインが発生したりするといった問題があった。ノルボルネン系を溶融成形して用いるためには、分子量の低いものを用いざるを得なかったが、フィルムが脆くなり、フィルムの強度、伸びが落ちてしまうという問題があった。脆い樹脂は、成形機から押し出された瞬間はフィルムとして成形することができても、巻き取りの祭にかかる張力や、ロールに搬送される際のわずかな歪みでフィルムが破断するため、成形が非常に困難である。また、フィルムを偏光子に張り合わせる工程の際にも、このような不具合は同様に生じる。
【0012】
さらに、偏光板を液晶セルに張り合わせる工程の際に、まれに位置ずれ、気泡の混入等がある。このような不良品となった液晶パネルは通常、偏光板を剥がして液晶セルを再利用する。いわゆるリワーク作業が行われている。このとき、保護フィルムが脆いと、偏光板の剥離時に保護フィルムもしくは偏光板が破断し、作業効率が著しく低下してしまう。
【0013】
このように樹脂の流動性を改良するためには、分子量を下げることが有効であるが、分子量を下げるとフィルムが脆くなるという問題点があり、強度と流動性をともに改良することは困難であった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、透明性と透湿性に優れると共に強度と流動性の改善された樹脂組成物、及び、該樹脂組成物を用いて得られる光学フィルムを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ノルボルネン系樹脂と下記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂とを含有する樹脂組成物である。
【0016】
【化2】
【0017】
式中、R1、R2は、少なくともいずれか一方が、極性を有するそれぞれ独立した官能基を表し、Yは、CH2、O又はSを表す。
以下に本発明を詳述する。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、ノルボルネン系樹脂と上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂とを含有する樹脂組成物である。
【0019】
上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂中に存在し、R1及びR2で表される官能基としては特に限定されず、例えば、塩素基、臭素基、フッ素基等のハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、無水酸基、シアノ基、シリル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基等が挙げられる。なかでも、エステル基や無水酸基は、脱保護により置換基に反応性を与えることができるので好ましい。
【0020】
上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂の合成方法としては特に限定されないが、公知の開環メタセシス重合により合成することができる。
【0021】
上記開環メタセシス重合には、公知の重合触媒を用いることができるが、R1及びR2として高い極性を有する官能基が存在する場合には、ルテニウム系又はオスミウム系の重合触媒が安定性、重合速度の面で好ましい。
上記ルテニウム系触媒としては、空気中で使用でき、しかも水に対してもさほど不安定でない、高活性なルテニウム錯体触媒が好ましい。このようなルテニウム錯体触媒としては、例えば、米国特許第5,831,108号公報に記載されたルテニウム(又はオスミウム)アルキリデン錯体触媒、更には耐熱性、耐酸素性及び反応制御性に優れた、本出願人の開発したルテニウム錯体触媒等が挙げられる。なかでも、下記一般式(2)〜(5)で表される構造を有するルテニウム系錯体が特に好ましい。
【0022】
【化3】
【0023】
上記一般式(2)中、R3及びR4は、同一又は異なる水素、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のカルボキシル基、炭素数2〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルチオ基、又は、フェロセン誘導体を表し、これらは、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルコキシ基によって置換されたフェニルによって必要に応じて置換されていても良い。
【0024】
また、X1及びX2は、同一又は異なる任意のアニオン性配位子を表し、Cl又はBrであることが好ましく、Clであることが更に好ましい。
【0025】
更に、L1及びL2は、同一又は異なる任意の中性電子供与体を表し、リン系配位子であることが好ましい。上記リン系配位子としては、一般式:PR′R′′R′′′で表されるホスフィン等が挙げられる。ここで、R′、R′′及びR′′′は、それぞれ独立した炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表し、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、置換フェニル基の中から選ばれ、重複して選ぶこともできる。具体的には、−P(シクロヘキシル)3、−P(フェニル)3、−P(イソプロピル)3等が挙げられる。
【0026】
また、L1及びL2としては、イミダゾリウム化合物も好適に用いられる。具体的には、イミダゾリン−2−イリデン誘導体、4,5−ジヒドロイミダゾリン−2−イリデン誘導体が好ましく、更に具体的には、N、N′−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン配位子やN、N′−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾリン−2−イリデン配位子等がより好ましい。更に、L1及びL2が同一分子となり、二座配位とすることもできる。
【0027】
なお、X1、X2、L1及びL2のうち2個又は3個は、更に一緒になって多座キレート化配位子を形成しても良い。
また、上記一般式(2)では、L1、L2は互いがトランス位に記述されているが、その立体嵩高さによって、また同一分子となって二座配位した場合等においてシス配位をとることもできる。
更に、X1、X2は互いがシス位に記述されているが、L1、L2の種類によってトランス配位をとることもできる。
【0028】
【化4】
【0029】
上記一般式(3)中、R5及びR6は、同一又は異なる水素、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のカルボキシル基、炭素数2〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜20のアルキルシリル基、炭素数2〜20のアリールシリル基、又は、フェロセン誘導体を表し、これらは、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルコキシ基によって置換されたフェニルによって必要に応じて置換されていても良い。
【0030】
ただし、R5として、アルキルシリル基又はアリールシリル基を用いる場合には、錯体の安定性からケイ素上に重複して選ぶことができ、その際、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等の中から選ばれることが好ましい。具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジメチルt−ブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等が挙げられる。また、この場合、錯体の安定性や活性の面から、R6としては、t−ブチル基、n−ブチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、エチル基、メチル基、メトキシメチル基、フェロセニル基、トリメチルシリル基、フェニル基、トリル基、アニシル基等が好ましい。
【0031】
また、X3及びX4は、同一又は異なる任意のアニオン性配位子を表し、Cl又はBrであることが好ましく、Clであることが更に好ましい。
【0032】
更に、L3及びL4は、同一又は異なる任意の中性電子供与体を表し、リン系配位子であることが好ましい。上記リン系配位子としては、一般式:PR′R′′R′′′で表されるホスフィンが挙げられる。ここで、R′、R′′及びR′′′は、それぞれ独立した炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表し、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、置換フェニル基の中から選ばれ、重複して選ぶこともできる。具体的には、−P(シクロヘキシル)3、−P(フェニル)3、−P(イソプロピル)3等が挙げられる。
【0033】
また、L3及びL4としては、イミダゾリウム化合物も良好に用いられる。具体的には、イミダゾリン−2−イリデン誘導体、4,5−ジヒドロイミダゾリン−2−イリデン誘導体が好ましく、更に具体的には、N、N′−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン配位子やN、N′−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾリン−2−イリデン配位子等がより好ましい。更に、L3及びL4が同一分子となり、二座配位とすることもできる。
【0034】
なお、X3、X4、L3及びL4のうち2個又は3個は、更に一緒になって多座キレート化配位子を形成しても良い。
【0035】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
上記一般式(4)又は(5)の式中、R7、R8、R9及びR10は、同一又は異なる水素、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のカルボキシル基、炭素数2〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルチオ基又はフェロセン誘導体等を表し、これらは、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルコキシ基によって置換されたフェニル基によって必要に応じて置換されていても良い。
【0038】
また、R7、R9及びR10としては、炭素数1〜20のアルキル基、シクロへキシル基、フェニル基や、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルキルオキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜5のアルキルシリル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ハロゲン、炭素数5以下のアミノ基、アセチル基、アセトキシ基で置換されたフェニル基等であることが好ましく、フェニル基、o−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、アニシル基、ニトロベンゼン基、クロロベンゼン基、o−イソプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロへキシル基等であることが更に好ましい。
【0039】
また、Y1、Y2及びY3は、同一又は異なる硫黄、酸素、セレン元素等を表し、なかでも、硫黄、セレンであることが好ましい。
【0040】
また、X5、X6、X7及びX8は、同一又は異なる任意のアニオン性配位子を表し、ClまたはBrであることが好ましく、Clであることが更に好ましい。
【0041】
更に、L5、L6、L7及びL8は、同一又は異なる任意の中性電子供与体を表し、リン系配位子であることが好ましい。上記リン系配位子としては、式:PR′R′′R′′′で表されるホスフィン等が挙げられる。ここで、R′、R′′及びR′′′は、それぞれ独立した炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基等を表し、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、置換フェニル基の中から選ばれ、重複して選ぶこともできる。具体的には、−P(シクロヘキシル)3、−P(フェニル)3、−P(イソプロピル)3等が挙げられる。
【0042】
また、L5、L6、L7及びL8としては、イミダゾリウム化合物も良好に用いられる。具体的には、イミダゾリン−2−イリデン誘導体、4,5−ジヒドロイミダゾリン−2−イリデン誘導体が好ましく、更に具体的には、N、N′−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン配位子やN、N′−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾリン−2−イリデン配位子が挙げられる。更に、L5及びL6、L7及びL8が同一分子となり、二座配位とすることもできる。
【0043】
なお、X5、X6、X7、X8、L5、L6、L7及びL8の2個又は3個は、更に一緒になって多座キレート化配位子を形成しても良い。
【0044】
上記一般式(2)〜(5)で表されるルテニウム系錯体は、種々の方法により製造することができるが、代表的な方法としては、一方でL1〜L8等を有する配位子前駆体等の原料を公知の方法に従って合成し、他方でルテニウム錯体前駆体原料を公知の方法に従って合成し、最後に両者の原料を混合して配位子交換反応を行って製造する方法が挙げられる。
【0045】
上記メタセシス重合反応は、不活性気体雰囲気下にて行うことが好ましいが、Ru系の安定な触媒を用いた場合は、空気中で重合することができる。一般に、メタセシス重合反応により得られる樹脂は、二重結合を有し、空気中の酸素等により劣化することがある。この劣化を防止するため、重合系中に抗酸化剤を添加させることもできる。
【0046】
上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂には、耐熱性を考慮すると、不飽和結合が存在することは好ましくない。そのため、上記オレフィン系樹脂に不飽和結合が存在する場合には、水素添加を行って不飽和結合を処理することが好ましい。水素添加に際して使用される水素添加触媒としては、 例えば、ウィルキンソン錯体、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセテート/トリイソブチルアルミニウム、パラジウム−カーボン、ルテニウム錯体、ルテニウム−カーボン、ニッケル−けいそう土等が挙げられる。
【0047】
上記水素添加は、触媒の種類により均一系又は不均一系で、通常、1〜200気圧の水素圧下、0〜250℃で行われる。
【0048】
耐熱性と力学特性とのバランスをとるために、上述した触媒を用いて合成される上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂の配合量は、ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、その下限は1重量部、上限は100重量部であることが好ましい。より好ましい下限は3重量部、上限は50重量部である。
【0049】
上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂の数平均分子量の下限は2万、上限は100万であることが好ましい。数平均分子量が2万未満であると、配合した樹脂組成物から得られるフィルムの力学強度が不充分となることがある。数平均分子量が100万を超えると、ノルボルネン系樹脂との相溶性が低下し、得られるフィルムの透明性が不充分となることがある。より好ましい下限は3万、上限は50万である。更に好ましい下限は5万、上限は30万である。
【0050】
また、上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度の下限は20℃、上限は150℃であることが好ましい。ガラス転移温度が20℃未満であると、得られる樹脂組成物の耐熱性が低下することがある。一方、150℃を超えると、得られる樹脂組成物の溶融成形性が不充分となり、成形時に分解が生じることがある。より好ましい下限は30℃、上限は130℃であり、更に好ましい下限は40℃、上限は120℃である。
【0051】
本発明の樹脂組成物に含有されるノルボルネン系樹脂のノルボルネン系モノマーとしては、例えば、下記一般式(6)で表される構成元素が炭素と水素、又は、それ以外の元素とからなるテトラシクロドデセン誘導体のノルボルネンモノマー等が挙げられる。
【0052】
【化7】
【0053】
式中、A、Bは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、単環又は多環を有していても良いし、A、Bで結合する短環又は多環を有していても良い。X、Yは、水素原子又は極性基が置換した炭素数1〜20の炭化水素基を表し、mは1又は2を表す。
【0054】
上記一般式(6)で表されるノルボルネン系モノマーのうち、極性を持たないノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−エチリデン−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレン、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。
【0055】
また、上記一般式(6)で表される以外のノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03.8.012,17]−5−ドコセン、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン5−フェニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−メチル−5−フェニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(2,4,6−トリメチルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(エチルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(イソプロピルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(ビフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(β−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(α−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(アントラセニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5,6−ジフェニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加体、2分子のシクロペンタジエンと1分子のアセナフチレン付加体、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(2,4,6−トリメチルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(エチルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(イソプロピルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジフェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(β−ナフチル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(α−ナフチル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(アントラセニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、11−フェニル−ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、14、15−ベンゾ−ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン等が挙げられる。
【0056】
これらのノルボルネン系モノマーは単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、2種類以上の開環重合可能なノルボルネン系モノマーを用いて開環共重合反応を行ってもよく、上記一般式(6)で表されるノルボルネン系モノマーに、一般式(6)で表される以外のノルボルネン系モノマーを共重合又は付加重合することもできる。
【0057】
また、上記一般式(6)で表されるノルボルネン系モノマーのうち、極性基を有するノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−ジメタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−プロピルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−イソプロピルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−ブチルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−プロピルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−イソプロピルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−ブチルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン等が挙げられる。
【0058】
これらのノルボルネン系モノマーは単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、2種類以上の開環重合可能なノルボルネン系モノマーを用いて開環共重合反応を行ってもよく、上記一般式(6)で表されるノルボルネン系モノマーに、一般式(6)で表される以外のノルボルネン系モノマーを共重合又は付加重合することもできる。
【0059】
上記ノルボルネン系モノマーの重合方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができ、必要に応じて、他の共重合可能なモノマーと共重合したり、水素添加によりノルボルネン系重合体水素添加物としたりしてもよい。
また、上記重合に用いる重合媒体として、例えば、Ir、Os、Ruの三塩化物の含水塩、MoCl5、WCl6、ReCl5 、(C2H5)3Al、(C2H5 )3Al/TiCl4 、(π−C4H7)4Mo/TiCl4 、(π−C4H7)4 W/TiCl4、(π−C3H5)3Cr/WCl6等が挙げられる。
【0060】
上記ノルボルネン系樹脂の数平均分子量の好ましい下限は5000、上限は5万である。この範囲内であると、得られる成形品、とりわけ光学フィルム等の力学強度と成形性とのバランスが非常によくなる。より好ましい下限は7000、上限は35000、更に好ましい下限は8000、上限は3万である。
なお、上記ノルボルネン系樹脂の数平均分子量は、クロロホルム溶液に調製した試料を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用いて、40℃にて測定し、標準ポリスチレンで置換することにより求めることができる。
【0061】
また、上記ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度の下限は120℃、上限は190℃であることが好ましい。120℃未満であると、樹脂組成物全体の耐熱性が低下することがある。一方、190℃を超えると、溶融成形時に分解が生じることがある。より好ましい下限は130℃、上限は170℃である。
【0062】
上記ノルボルネン系樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、「ZEONOR」、「ZEONEX」(日本ゼオン社製);「OPTOREZ」(日立化成工業社製);「APEL」(三井石油化学社製)、「ARTON」(日本合成ゴム社製)等が挙げられる。
【0063】
上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂と、ノルボルネン系樹脂との屈折率の差は0.2以下であることが好ましい。屈折率の差が0.2を超えると、特に上記一般式(1)で表される構造のシクロオレフィン系樹脂の分子量が高い場合に、微分散が困難になり、かつ、相の界面で屈折率の差に由来する散乱・反射が起こるために十分な透明性が確保できなくなる傾向にあり、光学フィルム等の透明性を高く保ちにくくなる。より好ましい屈折率の差は0.1以下であり、さらに好ましくは0.05以下であり、最も好ましくは0.02以下である。
【0064】
上記一般式(1)で表される構造のシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度と、ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度とは、その分子量によって好ましい範囲の中で最適化される。最も重要な点は、溶融時の流動性にあり、分子量の高い樹脂を用いる場合はそのガラス転移温度は比較的低いことが好ましい。ガラス転移温度が高くなると、耐熱性はよくなる反面、成形可能温度と分解開始温度とが近づくため、樹脂劣化等の問題が発生する。上記一般式(1)で表される構造のシクロオレフィン系樹脂は、分子量とガラス転移温度とのバランスをとることにより、分子量とガラス転移温度とのバランスが良いので、分子量が高い樹脂であっても、成形温度が比較的低く、ノルボルネン系樹脂との溶融成形時の流動性を近づけやすく両者の相容性を高めやすい。
【0065】
本発明の樹脂組成物の240℃での溶融粘度の下限は100Pa・s、上限は13,000Pa・sであり、かつ、ガラス転移温度は、100〜190℃であることが好ましい。240℃での溶融粘度が100Pa・s未満であると、樹脂組成物から得られるフィルムの力学強度が不充分となることがある。一方、240℃での溶融粘度が13,000Pa・sを超えると、溶融成形性が不充分となることがある。溶融粘度のより好ましい下限は200Pa・s、上限は10000Pa・sであり、更に好ましい下限は300Pa・s、上限は8000Pa・sである。
【0066】
本発明の樹脂組成物は、混練時や成形時に極端な高温にさらされることから、耐熱性を向上させるとともに、変性して光学性能が低下することがないように、酸化防止剤を含有させてもよい。上記酸化防止剤としては特に限定されず、公知の酸化防止剤、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジルチルフェノール、2,2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス(ジ−ノニルフェニルホスファイト)等が挙げられる。
【0067】
また、本発明の樹脂組成物には、変色を防止するために紫外線吸収剤を含有させてもよい。上記紫外線吸収剤としては、例えば、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−(2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−(2′−ジヒドロキシ−4′−m−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0068】
本発明の透明樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、架橋助剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤等の各種添加剤を必要に応じて1種類又は2種類以上含有させてもよい。
【0069】
本発明における保護フィルムの製造法としては、特に限定されないが、樹脂のブレンドに伴う相構造をできるだけ微分散化し、透明性を保持するために、Tダイ方式による溶融押し出し成形が好ましい。溶融押し出し成形に用いる押し出し機としては、混練性の観点から2軸押し出し機が好ましく、とくに同方向2軸押し出し機が好ましい。単軸押し出し機を用いる場合は、グルメージスクリュー、DISスクリュー等の混練性を上げるスクリューを用いることが好ましい。
【0070】
溶融押し出し時の樹脂温度としては、冷却ロールとフィルムとの接点直前におけるフィルムの温度がTg+50℃以上であると、この状態で非晶性熱可塑性樹脂からフィルムが変形されたとしても、樹脂における応力は著しく小さくなり、フィルム中の残留位相差(R(0))を小さく保つことができる。さらに好ましくはTg+80℃である。残留位相差が大きいと、液晶パネルとしたときに光抜け等の光学特性を低下させる現象が起こるため、10nm以下にすることが好ましい。
これは、非晶性熱可塑性樹脂は、樹脂の温度が高温になればなるほど、変形したときに応力を発生しないためである。従って、製膜時において樹脂に変形を与える際に、適切な温度制御を行うことにより発生する樹脂の応力は小さくなり、残留位相差が発生しにくくなる。
【0071】
冷却ロールとフィルムとの接点直前におけるフィルムの温度をTg+50℃にする具体的な方法としては、特に限定されず、例えば金型の温度を制御する方法などが考えられる。
この場合、金型温度を上げすぎると樹脂によっては熱劣化するが、熱劣化しない程度の温度条件を採用することにより、上記残留位相差を満足できる光学フィルムを確実に得ることができる。また、上記接点直前におけるフィルム温度をTg+50℃以上さらにはTg+80℃以上とするために、エアギャップを狭める方法を用いることができる。この場合には、ダイライン及びフィルムの厚み精度を十分に考慮してエアギャップの大きさを設定すればよい。
【0072】
上記Tダイの種類は、特に限定されず、ストレートマニホールドタイプ、ハンガーマニホールドタイプ、コートハンガータイプ、フィッシュテールタイプ等通常使用されるものであれば使用可能である。
また、Tダイによるダイライン等のフィルム表面の欠陥を少なくするためには、ダイ滞留部が極力少なくなるような構造の金型を使用することが好ましく、更にダイ内部やリップにキズ等が極力ないものを用いることが好ましい。
【0073】
また、位相差板の製造法としては、従来知られている方法が使用でき、例えば、上記押し出しによって得られたフィルムを一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸等の延伸処理を行うことで製造できる。
【0074】
また、作製された成形品の表面に、無機化合物、シランカップリング剤等の有機シリコン化合物、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、メラニン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等からなるハードコート層を形成することができる。上記ハードコート層の形成手段としては、例えば、熱硬化法、紫外線硬化法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法が挙げられる。これによって、成形品の耐熱性、光学特性、耐薬品性、耐磨耗性及び透湿性等を向上させることができる。
【0075】
本発明の樹脂組成物の用途としては特に限定されず、広い範囲にわたって使用することができ、例えば、受像転写シートや各種フィルム、シート等を中心とした光学用表示材(例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等)、一般カメラ用レンズ、ビデオカメラ用レンズ、望遠鏡レンズ、眼鏡レンズ、レーザビーム用レンズ等のレンズ類、光学式ビデオディスク、オーディオディスク、文書ファイルディスク、メモリディスク等の光ディスク類、光ファイバー等の光学材料等が挙げられる。更に、各種電子機器筺体、窓ガラス、プリント基板、封止剤、無機又は有機化合物のバインダー等として好適に使用することができる。
【0076】
本発明の樹脂組成物は、偏光板の保護フィルム以外に、反射型液晶ディスプレイ等に使用されている位相差板にも好適に使用される。位相差板は従来公知の技術で作成することができ、たとえば、本発明の光学フィルムを1軸もしくは2軸延伸処理することで作成できる。このように得られた位相差板は偏光板保護フィルムとともに偏光板に積層されるが、本発明の光学フィルムを用いた位相差板は、偏光板の保護フィルムとしての機能も持ち合わせているため、上記に記載の保護フィルムと同様にして、偏光子に直接貼り合わせることで、位相差板の機能を兼ね備えた保護フィルムとしても、用いることができる。
【0077】
なかでも、本発明の樹脂組成物の特徴である、成形性、耐熱性に優れるという点を最大限に活かした用途は、位相差フィルム、偏光板保護フィルム等の光学フィルムである。
かかる、本発明の樹脂組成物からなる光学フィルムもまた、本発明の1つである。
【0078】
得られる樹脂組成物を光学フィルムに用いる場合には、樹脂組成物に含まれる一般式(1)で表されるシクロオレフィン系樹脂の数平均分子量が5万〜100万の範囲で、かつ分子量分布が2.0未満であることが好ましい。高分子量のシクロオレフィン系樹脂が配合された樹脂組成物をフィルムに加工した場合は、シクロオレフィン樹脂の一部がゲル化して多数の外観欠点が発生する。しかし、シクロオレフィン系樹脂の数平均分子量、及び分子量分布が本発明の範囲であると、シクロオレフィン系樹脂のゲルかが抑制され、樹脂組成物を光学フィルムに加工形した際に外観欠点を少なくすることが出来る。特に好ましい分子量範囲は、数平均分子量55,000〜700,000の範囲である。また分子量分布に関しては1.8未満であるのが特に好ましい。
【0079】
本発明の光学フィルムでは、平行光線透過率は、85%以上である。平行光線透過率が85%未満であると透明性が低く、偏光板保護フィルムや位相差フィルム等の用途には用いることができなくなる。
【0080】
また、本発明の光学フィルムでは、引裂強度は、0.1N以上である。引裂強度が0.1N未満であると、フィルム強度が不充分となり、偏光板保護フィルムや位相差フィルム等の用途には用いることができなくなる。
【0081】
また、本発明の光学フィルムでは、破断伸度は、2%以上である。破断伸度が2%未満であると、本発明の光学フィルムの製造過程、及び、偏光子との貼合過程において、フィルムのたるみを解消するために引っ張った際、フィルムが容易に破断してしまう。また、偏光板と液晶セルを貼り合わせる際に位置がずれたり、欠点があったりした場合に液晶セルから偏光板を引き剥がして液晶セルを再利用する作業(リワーク作業)の際に偏光板が割れ、著しく作業効率が落ちる。さらに好ましい破断伸度は2.5%以上である。本発明のフィルムはこのような高強度のフィルムが得られる。
【0082】
本発明の光学フィルムでは、透湿度の下限は、10g/m2/day(平均フィルム厚40μm)、上限は300g/m2/day(平均フィルム厚40μm)である。10g/m2/day(平均フィルム厚40μm)未満であると、透湿度が不充分であるために、偏光板保護フィルム等に用いる場合に偏光子との貼り合わせ等の際に用いる接着剤の溶剤等の揮発を阻害し、プロセス上不具合が生じる。また、300g/m2/day(平均フィルム厚40μm)を超えると、得られるフィルムの耐湿性が低下する。本発明の樹脂組成物に配合する上記一般式(1)で表される構造のシクロオレフィン系樹脂は、この範囲内で透湿性を制御するために重要である。より好ましい透湿度の下限は50g/m2/day(平均フィルム厚40μm)、上限は200g/m2/day(平均フィルム厚40μm)である。
【0083】
本発明の光学フィルムでは、光弾性係数の上限は、10×10−12 m2/Nである。ガラスやプラスチックなどの透明な弾性体は応力が加わった際、一時的に光学的異方体となり、複屈折性を示す。この現象の発生原因となる応力は、偏光板の保護フィルムの場合、たとえば、偏光板が高温の状態にさらされたときに、偏光子として用いているPVAフィルムが収縮する際の収縮応力等が挙げられる。この現象が偏光板の保護フィルムに起こると、フィルムに位相差が発生し、位相差が大きいと画面に抜け等が発生するため、画面の視認性が著しく落ちる。この位相差は光弾性係数が大きいと大きくなるため、フィルムの光弾性係数は10×10−12 m2/N以下であることが要求され、好ましくは8×10−12 m2/N以下である。一般に光弾性係数は分子中にベンゼン環等の芳香族基が存在すると大きくなる。本発明はこのような芳香族基を含まないため、光弾性係数を低く抑えることができる。
【0084】
本発明によれば、任意のノルボルネン系樹脂に、特定のシクロオレフィン系樹脂を配合することにより、ノルボルネン系樹脂の有する耐熱性や透明性を損なうことなく、成形性、透湿性及び接着性等を改善し、かつ、溶融成形時の熱劣化や欠陥の発生を制御することができる樹脂組成物が得ることができる。これを用いてなる本発明の光学フィルムは、透明性、耐熱性、低複屈折性、成形性及び接着性等に優れており、また、低吸湿性を損なわずに透湿性を高めることができ、偏光板保護フィルム等に好適に用いることができる。
【0085】
本発明における偏光板とは、本発明の光学フィルムが、上記偏光子の少なくとも片面に積層されたものであり、好ましくは、両面に積層されたものである。
上記偏光子の少なくとも片面としては、液晶セル側の面に本発明の光学フィルムを配することが好ましい。これによって、正面及び斜めから眺めたときの光漏れが少なくなり、正面のみならず斜めから眺めても高コントラストのLCDを得ることができる。
【0086】
また、偏光子のもう一方の面(液晶セルと反対側の面)には、本発明の光学フィルム以外の透明性が高いフィルムを用いてもよく、例えば、樹脂はオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられ、更に溶融成形、溶液キャスト成形のどちらで製膜しても良く、一軸延伸、二軸延伸されていても構わない。
【0087】
上記偏光子とは、偏光子の機能を有するフィルム又はシートであれば特に限定されることなく使用でき、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)からなるフィルムにヨウ素を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸したPVA・ヨウ素系偏光子、PVAフィルムに二色性の高い直接染料を拡散吸着させた後、一軸延伸したPVA・染料系偏光子、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のようなポリエン配向偏光子等が挙げられる。
【0088】
上記PVAは、酢酸ビニルのみを重合したポリ酢酸ビニルを鹸化して製造されたものだけでなく、酢酸ビニルに少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等の共重合可能成分を共重合させたものが鹸化されたものでもよい。
【0089】
本発明の光学フィルムと偏光子とを積層する方法としては、特に限定されず、一般に使用される方法としては、例えばウェットラミネーション等が用いられる。
ウェットラミネーションは、乾燥後の厚み、塗工の円滑性等を考慮して、例えば、接着剤を水により適当な濃度(例えば0.01〜50重量%)に希釈して塗工液を調製した後、公知の方法(例えば、グラビアコーター、マイクログラビアコーター等)でフィルム上に塗布するか、又は滴下した後、対ロールで余分な塗工液をしごきながらラミネートし、熱風等で乾燥させて接着する方法が挙げられる。
【0090】
上記接着剤は、透明性を有する接着剤又は粘着剤等であれば、特に限定されず、例えば、ウレタン系接着剤、PVA系接着剤等が高い接着性能や耐久性の面から好ましく用いられる。
【0091】
また、上記光学フィルムを積層する際に、フィルムの接着力を向上する目的で、光学フィルムの接着面にコロナ処理、紫外線照射処理等の一般に使用される表面処理を施すことが好ましい。
【0092】
偏光板の保護フィルムには透明性・耐熱性だけでなく、偏光子と保護フィルムとを水系接着剤を用いて貼合・乾燥させるために透湿性が必要であり、かつ貼合ライン等で破断があってはならない。
【0093】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0094】
上記一般式(1)で表されるシクロオレフィン系樹脂の合成
(合成例1)
exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物15kgをメタノール40lに溶解させ、硫酸20mlを加えて還流条件にて5時間攪拌した後、メタノールを減圧除去し、冷水で洗浄することにより、エステル化合物を得た。
次に、得られたエステル化合物のうち10kgをクロロホルムに溶解させ20重量%クロロホルム溶液を調製した。米国特許第5,831,108号に記載の方法に従って合成した下記式(7)で表されるルテニウム錯体化合物39g(1/1000モル当量)を加えて40℃で18時間重合させた。その後、クロロホルム/メタノール系にて再沈精製を行い、減圧乾燥を行うことにより重合物を得た。
更に、得られた重合体5kgをテトラヒドロフラン25kgに溶解させ、5重量%カーボン担持ルテニウム触媒500gを加えた後、容量100Lの加圧釜に仕込み、アルゴンガスで系内を置換した後、水素ガス50kg/cm2になるまで送入した。これを100℃まで昇温し、全圧が50kg/cm2に保たれるように水素ガスを供給しつつ10時間反応を行った。反応終了後、水素を除去し、濾過にて触媒を除いてから生成した水素添加物をメタノール中で析出させ、濾別、
乾燥して樹脂を得た。得られた樹脂を1H−NMRにより分析し、2重結合に由来するピーク(5〜7ppm)の消失を確認した。得られた樹脂を以下樹脂(1)とした。なお、上記合成反応を式(8)に模式的に示した。
【0095】
【化8】
【0096】
【化9】
【0097】
(合成例2)
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物15kgをメタノール40lに溶解させ、硫酸10mlを加えて還流条件にて5時間攪拌した。メタノールを減圧除去した後、精製カラムを用いて精製することにより、エステル化合物を得た。
得られたエステル化合物を用いて合成例1と同様にして樹脂(2)を得た。なお、上記合成反応を式(9)に模式的に示した。
【0098】
【化10】
【0099】
(合成例3)
まず、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物10kgをクロロホルムに溶解させ20重量%クロロホルム溶液を調製した。これに上記化学式(8)で表されるルテニウム錯体化合物30g(1/1000モル当量)を加えて60℃で18時間重合させた。その後、クロロホルム/メタノール系にて再沈精製を行い、減圧乾燥を行うことにより重合物を得た。得られた重合物を用いて合成例1と同様にして樹脂(3)を得た。なお、上記合成反応を式(10)に模式的に示した。
【0100】
【化11】
【0101】
(合成例4)
上記式(7)で表される重合触媒とともに、アリルアセテート70mgを加えたこと以外は、合成例1と同様の操作を行って樹脂(4)を得た。
【0102】
(合成例5)
Organometallics 1998 17 5190記載の合成法に従って合成した下記式(11)で示され表されるルテニウム化合物39g(1/1000モル当量)を用いてエステル化合物の重合を行うこと以外は合成例2と同様の操作を行って樹脂(5)を得た。
【0103】
【化12】
【0104】
(合成例6)
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物をメタノールの代わりにエタノールを用いてエステル化したこと以外は合成例5と同様の操作を行って樹脂(6)を得た。
【0105】
(合成例7)
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物をメタノールの代わりにn−プロパノールを用いてエステル化したこと及びChemistry Letter 1999 369記載の合成法に従って合成した下記化学式(12)で表されるルテニウム化合物1/1000モル当量を用いてエステル化合物の重合を行うこと以外は合成例5と同様の操作を行って樹脂(7)を得た。
【0106】
【化13】
【0107】
(合成例8)
合成例2で用いたエステル化合物10kgをシクロヘキサン70kgに溶解し、分子量調整剤として1−ヘキセン0.3kg、トリエチルアルミニウムの15%シクロヘキサン溶液3kg、およびトリエチルアミン1.7kgを添加した。この溶液を、30℃に保ちながら四塩化チタンの20%シクロヘキサン溶液3.3kgを1時間にわたって連続的に反応系に添加して、開環重合を行った。30分後、六塩化タングステンの0.8%シクロヘキサン溶液1.7kgを添加し、更に30分間攪拌した。
重合体への転化率は98%であった。得られた樹脂は合成例1と同様の操作で水素添加を行い水添樹脂を得た。得られた水添樹脂を樹脂(8)とした。
【0108】
上記で得られた樹脂(1)〜(8)の数平均分子量、分子量分布(Mw/Mn)、ガラス転移温度及び屈折率を下記の方法により測定し、その結果を表1に示した。
【0109】
(数平均分子量、分子量分布)
自動試料供給装置(東ソー株式会社社製「オートサンプラーAS−8020」)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社社製「HLC−8020」)と、データ解析装置(東ソー株式会社社製「SC−8020」)とを組み合わせた測定システムを用いた。また、カラムShodex社製、K−806L(2本使用)を用い、測定条件として、流量を1ml/min、オーブン温度を40℃、屈折計温度を40℃、試料濃度を約0.1wt%、試料注入量を300μl、溶媒をクロロホルム、標準試料を標準ポリスチレンとして測定し、数平均分子量、分子量分布を求めた。
【0110】
(ガラス転移温度)
示差熱量測定装置(TA Instruments株式会社社製、DSC2920 Modulated DSC)を用いた。そして、下記に示す条件で試料を加熱又は冷却し、最後に昇温を行った時に測定されたガラス転移温度を本発明のガラス転移温度とした。
▲1▼室温から200℃まで、10℃/minで昇温して200℃で5分間保持。
▲2▼200℃から−50℃まで、10℃/minで冷却して−50℃で5分間保持。
▲3▼−50℃から200℃まで、10℃/minで昇温して200℃で5分間保持。
【0111】
(屈折率)
アッベ屈折率計(株式会社アタゴ社製「1T」)を用いて、23℃で測定した。
【0112】
【表1】
【0113】
(実施例1)
表2に示した組成に応じたノルボルネン系樹脂とシクロオレフィン系樹脂を、2軸溶融押出機を用いて250℃で溶融混合し、Tダイより押出成形して40μmの光学フィルムを得た。
【0114】
(比較例1)
表2に示した組成に応じたノルボルネン系樹脂とシクロオレフィン系樹脂を、2軸溶融押出機を用いて280℃で溶融混合し、Tダイより押出成形して40μmの光学フィルムを得た。
【0115】
(実施例2〜9、比較例2)
表2に示した組成に応じたノルボルネン系樹脂とシクロオレフィン系樹脂を、2軸溶融押出機を用いて260℃で溶融混合し、Tダイより押出成形して40μmの光学フィルムを得た。
【0116】
(実施例10)
実施例2と同様にして厚さ50μmの光学フィルムを得た。このフィルムを174℃で1.5倍に1軸延伸することで、厚さ40μmの延伸光学フィルムを得た。延伸の過程でフィルムの巾が若干狭くなった。なお、このときの550nmにおける位相差値は130nmであった。
【0117】
(比較例2)
光学フィルムとしてセルローストリアセテート(TAC)のキャストフィルム(フジタッククリアー、厚さ80μm、富士写真フィルム社製)を使用した。
【0118】
実施例1〜9及び比較例1、2で得られた光学フィルムについて、溶融粘度、ガラス転移温度、引裂強度、透湿度、破断伸度、平行光線透過率、光弾性係数、偏光板のリワーク性、及び外観を下記の方法により測定し、結果を表2に示した。
【0119】
(溶融粘度)
CFT−500C島津フローテスタを用い、240℃において次の条件で溶融粘度を測定した。
【0120】
(ガラス転移温度)
示差熱量測定装置(TA Instruments株式会社社製、DSC2920 Modulated DSC)を用いた。そして、下記に示す条件で試料を加熱又は冷却し、最後に昇温を行った時に測定されたガラス転移温度を本発明のガラス転移温度とした。
▲1▼室温から200℃まで、10℃/minで昇温して200℃で5分間保持。
▲2▼200℃から−50℃まで、10℃/minで冷却して−50℃で5分間保持。
▲3▼−50℃から200℃まで、10℃/minで昇温して200℃で5分間保持。
【0121】
(引裂強度)
JIS K 7128(直角形)に準拠して測定した。
【0122】
(透湿度)
JIS Z 0208に準じて測定した。測定条件は40℃90%RHで行った。
【0123】
(破断伸度)
引張張試験 TENSILON「UTA−500」(ORIENTEC社製)により押し出し方向に対して平行方向(MD方向)の破断伸度を、下記の条件で評価した。
【0124】
(平行光線透過率)
ヘイズメーターTC−HIIIDPK(東京電色社製)を用い、JIS K 7150に準拠して測定した。
【0125】
(光弾性係数)
実施例及び比較例にて得られた光学フィルムを、流れ方向に平行に、巾1cm長さ15cmのサイズにカットし、0,400,800,1200,1600,2000gの荷重下で、KOBRA−21ADH(新王子計測機器社製)を用い測定波長590nmにて位相差を測定し、荷重と位相差を最小2乗近似によって得られた直線の傾きから光弾性係数を算出した。尚、測定は、フィルムの法線方向R(0)について行った。
【0126】
(偏光板のリワーク性)
実施例及び比較例にて得られた光学フィルムをA4サイズにカットし、偏光子接着面側にコロナ処理を施した。(処理後のフィルム面は水による接触角測定において42°〜44°の値であった。)
接着剤溶液として、水性ウレタン接着剤(EL−436A/B、東洋モートン社製)の主剤/硬化剤(混合比10/3)を10重量%になるように水で希釈し調製した。次に、この接着剤溶液をワイヤーバー#8で上記光学フィルムのコロナ処理面に塗布し、偏光子上に貼り合せた。更に、この操作を偏光子のもう一方の面にも行い、偏光子の両面に光学フィルムを貼り付けた。この際、光学フィルムの流れ方向と偏光子の延伸方向が同一になるように貼り合わせた。これを45℃の恒温槽で72時間保持し乾燥・養生を行い偏光板を作製した。
得られた偏光板を15cm角にカットした後、再度コロナ処理し、両面粘着シートを用いて無アルカリガラス基盤に貼り付けた(180°ピール強度:25N/25mm巾)。偏光板を、角から中心方向に向かって45°の角度で鉛直方向に引きはがし、下記の基準で評価を行った。
○:ガラスに対して糊残りなしに完全に剥がれた。
×:途中で破れが生じた。
【0127】
(外観)
得られたフィルムの背面から光を当てて、点状に見える欠陥の数(検査面積10m2)を数えて下記の基準で評価し、結果を表2に示した。
◎:3個/m2以下
○:4〜9個/m2
×:10個/m2以上
【0128】
(総合評価)
上記項目の結果を総合的に評価し、下記の基準で評価した。結果を表2に示した。
○:光学フィルムとして優れており、偏光板に使用し得る。
×:光学フィルムとして不十分であり、偏光板として使用できない。
【0129】
【表2】
【0130】
(評価結果)
実施例1で得られた樹脂組成物を加工したフィルムは、比較例1に示す市販のノルボルネン樹脂(ZEONOR1600R、日本ゼオン社製)を加工したフィルムに比べ、240℃で溶融させた時の溶融粘度が低くおさえられている。この結果は従来は樹脂劣化の可能性を伴う280℃以上で成形しなければならなかったノルボルネン系樹脂が低温での成形可能になると言う非常に優れた特徴を有することを示している。。また、透湿度や破断伸度などの物性においても改善が確認されていることから、実施例1で示された樹脂組成物フィルムが従来のノルボルネン樹脂に比べてフィルム物性が向上した上で低温で成形可能となったことを示している。
【0131】
実施例2〜8に示されているように、シクロオレフィン系樹脂の分子量分布が2.0以下である光学フィルムは、実施例9に示す分子量分布が2.30である光学フィルムに比べて外観欠点数が減少している。これは分子量分布が大きい場合には、高分子量領域にゲル化しやすい成分が含まれていることに起因すると思われる。また、実施例4〜8に見られるように、シクロオレフィン系樹脂の分子量分布を1.8以下にすることにより光学フィルムの外観欠点を著しく改善出来ることがことがわかる。 すなわち、ノルボルネン系樹脂を含む従来のシクロオレフィン系樹脂の添加によるシクロオレフィン系樹脂の強度はシクロオレフィン樹脂系の分子量を上げることで改善は見られるものの、ゲル化し易い成分の割合を増加させることにより点状の外観欠点が多く見られるという問題点が生じる。
一方、分子量分布の狭い特定分子量のシクロオレフィン系樹脂を添加することで、外観を損ねることなく強度を付与できることが確認された。
【0132】
【発明の効果】
本発明は、上記の構成よりなるので、任意のノルボルネン系樹脂に特定のシクロオレフィン系樹脂を配合することにより、ノルボルネン系樹脂の有する耐熱性や透明性を損なうことなく、成形性、透湿性、接着性等が改善され、かつ、溶融成形時の熱劣化や欠陥の発生が抑制された樹脂組成物を提供することができ、更には、この樹脂組成物を溶融成形すると、透明性、耐熱性、低複屈折性、成形性、透湿性、接着性等に優れ、また、低吸湿性を損なわずに透湿性を高めることができる光学フィルムを提供することができる。
さらに、上記光学フィルムは特に偏光板保護フィルムとして好適に用いられ、また延伸することで位相差板としての機能を兼ね備えた偏光板保護フィルムにもなる。この光学フィルムを用いた偏光板を用いることにより光学特性に優れた液晶ディスプレイを供給することが出来る。
【発明の属する技術分野】
本発明は、樹脂組成物、該樹脂組成物からなる光学フィルム、及び該光学フィルムが用いられた偏光板に関する。
【0002】
【従来の技術】
従来、電子材料用樹脂として様々な樹脂が用いられている。ノルボルネン系樹脂は、骨格が剛直であり、ガラス転移温度が高いことから、耐熱性に優れたオレフィン材料として知られている。
しかしながら、このようなノルボルネン系樹脂は、ガラス転移温度が高いために、成形温度が高く、分子量が高いと、成形可能温度で樹脂が分解を始めてしまうといった問題があった。そのため、ノルボルネン系樹脂を成形用樹脂として用いる場合には、比較的分子量の低いものが用いられるが、このような比較的分子量の低いノルボルネン系樹脂は、樹脂の力学強度が高くないという問題があった。また、ノルボルネン系樹脂は、低誘電性の樹脂であり、電子材料用樹脂として期待されているが、電子材料用樹脂は、低温成形が必要な場合があり、また、用途によっては、高い力学強度も求められるため、利用可能な用途が限られていた。
【0003】
ところで、近年、卓上電子計算機、電子時計、ワープロ、自動車、機械類の計器類等には液晶表示装置が用いられることが多い。代表的な液晶表示装置としては、液晶分子を封入した電極が組み込まれたガラスセルに偏光板が貼り合わされたものが挙げられる。
【0004】
偏光板は、通常、延伸配向したポリビニルアルコール樹脂にヨウ素又は二色性染料を吸着させたものからなり、更に偏光板の両面には光学フィルムからなる偏光板保護フィルムが接着されている。
【0005】
偏光板保護フィルムには、高温・高湿といった過酷な条件下でも偏光板としての光学特性を保持できることが要求される。たとえば、高温の状態にさらされると、偏光子として用いられているPVAフィルムが収縮する。偏光子が収縮すると偏光度が低下するため、保護フィルムはこの収縮を抑制するめに、高温でも力学強度を維持する耐熱性が要求される。また、たとえ収縮そのものを抑えられても、その際に収縮応力がかかるため、保護フィルムには位相差が生じる。位相差が発生すると、画面に抜け等が発生するため、画面の視認性が著しく落ちる。この収縮応力による位相差は光弾性係数が大きいと大きくなるため、保護フィルムの材料には光弾性係数が小さいことが要求される。
【0006】
従来、偏光板保護フィルムとしては、セルローストリアセテートフィルムが多用されてきた。しかし、屋外用等耐湿性が特に要求される分野では、セルローストリアセテートフィルムでは耐熱性が低く、吸水率や透湿度が大きいため偏光板保護フィルムとして不適当であり、それに代わるフィルムが要望されていた。
【0007】
特許文献1、特許文献2、特許文献3等には、耐熱性、低吸水性、防湿性、低複屈折率等の特徴を有するノルボルネン系樹脂のフィルムが提案されている。
しかしながら、これらのノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムを偏光板保護フィルムとして使用した場合、透湿性があまりにも低いため、偏光板に貼り合わせる際に用いる接着剤の水分の蒸発が遅く、偏光板に曇りを生じたり、偏光板と充分に接着しない等の問題があった。
【0008】
【特許文献1】
特開平6−51117号公報
【特許文献2】
特開平7−77608号公報
【特許文献3】
特開平11−142645号公報
【0009】
これに対して、特許文献4には、極性基を導入した単量体を重合して得られる改質ノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムが提案されている。このような改質ノルボルネン系樹脂からなる光学フィルムは、適度な透湿性を有しており、偏光板保護フィルムに用いれば最適な接着性が得られる。しかしながら、改質ノルボルネン系樹脂は、ガラス転移温度が高いために高い成形温度を必要とし、熱分解等の問題から流動性の改良が求められている。また、改質ノルボルネン系樹脂は一般にポリカーボネート樹脂等に比べて脆い。脆さを改良するためには分子量を上げることが有効であるが、分子量を上げると流動性が悪化するという問題点があり、強度と流動性とをともに改良することは困難であった。
【0010】
【特許文献4】
特開平9−316179号公報
【0011】
すなわち、このようなノルボルネン系樹脂は、ガラス転移温度が高いために、高い成形温度が必要であり、樹脂が分解を始めてしまったり、ダイラインが発生したりするといった問題があった。ノルボルネン系を溶融成形して用いるためには、分子量の低いものを用いざるを得なかったが、フィルムが脆くなり、フィルムの強度、伸びが落ちてしまうという問題があった。脆い樹脂は、成形機から押し出された瞬間はフィルムとして成形することができても、巻き取りの祭にかかる張力や、ロールに搬送される際のわずかな歪みでフィルムが破断するため、成形が非常に困難である。また、フィルムを偏光子に張り合わせる工程の際にも、このような不具合は同様に生じる。
【0012】
さらに、偏光板を液晶セルに張り合わせる工程の際に、まれに位置ずれ、気泡の混入等がある。このような不良品となった液晶パネルは通常、偏光板を剥がして液晶セルを再利用する。いわゆるリワーク作業が行われている。このとき、保護フィルムが脆いと、偏光板の剥離時に保護フィルムもしくは偏光板が破断し、作業効率が著しく低下してしまう。
【0013】
このように樹脂の流動性を改良するためには、分子量を下げることが有効であるが、分子量を下げるとフィルムが脆くなるという問題点があり、強度と流動性をともに改良することは困難であった。
【0014】
【発明が解決しようとする課題】
本発明は、上記に鑑み、透明性と透湿性に優れると共に強度と流動性の改善された樹脂組成物、及び、該樹脂組成物を用いて得られる光学フィルムを提供することを目的とする。
【0015】
【課題を解決するための手段】
本発明は、ノルボルネン系樹脂と下記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂とを含有する樹脂組成物である。
【0016】
【化2】
【0017】
式中、R1、R2は、少なくともいずれか一方が、極性を有するそれぞれ独立した官能基を表し、Yは、CH2、O又はSを表す。
以下に本発明を詳述する。
【0018】
本発明の樹脂組成物は、ノルボルネン系樹脂と上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂とを含有する樹脂組成物である。
【0019】
上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂中に存在し、R1及びR2で表される官能基としては特に限定されず、例えば、塩素基、臭素基、フッ素基等のハロゲン基、水酸基、カルボキシル基、エステル基、アミノ基、無水酸基、シアノ基、シリル基、エポキシ基、アクリル基、メタクリル基等が挙げられる。なかでも、エステル基や無水酸基は、脱保護により置換基に反応性を与えることができるので好ましい。
【0020】
上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂の合成方法としては特に限定されないが、公知の開環メタセシス重合により合成することができる。
【0021】
上記開環メタセシス重合には、公知の重合触媒を用いることができるが、R1及びR2として高い極性を有する官能基が存在する場合には、ルテニウム系又はオスミウム系の重合触媒が安定性、重合速度の面で好ましい。
上記ルテニウム系触媒としては、空気中で使用でき、しかも水に対してもさほど不安定でない、高活性なルテニウム錯体触媒が好ましい。このようなルテニウム錯体触媒としては、例えば、米国特許第5,831,108号公報に記載されたルテニウム(又はオスミウム)アルキリデン錯体触媒、更には耐熱性、耐酸素性及び反応制御性に優れた、本出願人の開発したルテニウム錯体触媒等が挙げられる。なかでも、下記一般式(2)〜(5)で表される構造を有するルテニウム系錯体が特に好ましい。
【0022】
【化3】
【0023】
上記一般式(2)中、R3及びR4は、同一又は異なる水素、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のカルボキシル基、炭素数2〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルチオ基、又は、フェロセン誘導体を表し、これらは、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルコキシ基によって置換されたフェニルによって必要に応じて置換されていても良い。
【0024】
また、X1及びX2は、同一又は異なる任意のアニオン性配位子を表し、Cl又はBrであることが好ましく、Clであることが更に好ましい。
【0025】
更に、L1及びL2は、同一又は異なる任意の中性電子供与体を表し、リン系配位子であることが好ましい。上記リン系配位子としては、一般式:PR′R′′R′′′で表されるホスフィン等が挙げられる。ここで、R′、R′′及びR′′′は、それぞれ独立した炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表し、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、置換フェニル基の中から選ばれ、重複して選ぶこともできる。具体的には、−P(シクロヘキシル)3、−P(フェニル)3、−P(イソプロピル)3等が挙げられる。
【0026】
また、L1及びL2としては、イミダゾリウム化合物も好適に用いられる。具体的には、イミダゾリン−2−イリデン誘導体、4,5−ジヒドロイミダゾリン−2−イリデン誘導体が好ましく、更に具体的には、N、N′−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン配位子やN、N′−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾリン−2−イリデン配位子等がより好ましい。更に、L1及びL2が同一分子となり、二座配位とすることもできる。
【0027】
なお、X1、X2、L1及びL2のうち2個又は3個は、更に一緒になって多座キレート化配位子を形成しても良い。
また、上記一般式(2)では、L1、L2は互いがトランス位に記述されているが、その立体嵩高さによって、また同一分子となって二座配位した場合等においてシス配位をとることもできる。
更に、X1、X2は互いがシス位に記述されているが、L1、L2の種類によってトランス配位をとることもできる。
【0028】
【化4】
【0029】
上記一般式(3)中、R5及びR6は、同一又は異なる水素、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のカルボキシル基、炭素数2〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルチオ基、炭素数2〜20のアルキルシリル基、炭素数2〜20のアリールシリル基、又は、フェロセン誘導体を表し、これらは、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルコキシ基によって置換されたフェニルによって必要に応じて置換されていても良い。
【0030】
ただし、R5として、アルキルシリル基又はアリールシリル基を用いる場合には、錯体の安定性からケイ素上に重複して選ぶことができ、その際、メチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基等の中から選ばれることが好ましい。具体的には、トリメチルシリル基、トリエチルシリル基、ジフェニルメチルシリル基、ジメチルt−ブチルシリル基、トリイソプロピルシリル基等が挙げられる。また、この場合、錯体の安定性や活性の面から、R6としては、t−ブチル基、n−ブチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、エチル基、メチル基、メトキシメチル基、フェロセニル基、トリメチルシリル基、フェニル基、トリル基、アニシル基等が好ましい。
【0031】
また、X3及びX4は、同一又は異なる任意のアニオン性配位子を表し、Cl又はBrであることが好ましく、Clであることが更に好ましい。
【0032】
更に、L3及びL4は、同一又は異なる任意の中性電子供与体を表し、リン系配位子であることが好ましい。上記リン系配位子としては、一般式:PR′R′′R′′′で表されるホスフィンが挙げられる。ここで、R′、R′′及びR′′′は、それぞれ独立した炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基を表し、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、置換フェニル基の中から選ばれ、重複して選ぶこともできる。具体的には、−P(シクロヘキシル)3、−P(フェニル)3、−P(イソプロピル)3等が挙げられる。
【0033】
また、L3及びL4としては、イミダゾリウム化合物も良好に用いられる。具体的には、イミダゾリン−2−イリデン誘導体、4,5−ジヒドロイミダゾリン−2−イリデン誘導体が好ましく、更に具体的には、N、N′−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン配位子やN、N′−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾリン−2−イリデン配位子等がより好ましい。更に、L3及びL4が同一分子となり、二座配位とすることもできる。
【0034】
なお、X3、X4、L3及びL4のうち2個又は3個は、更に一緒になって多座キレート化配位子を形成しても良い。
【0035】
【化5】
【0036】
【化6】
【0037】
上記一般式(4)又は(5)の式中、R7、R8、R9及びR10は、同一又は異なる水素、炭素数2〜20のアルケニル基、炭素数1〜20のアルキル基、炭素数6〜20のアリール基、炭素数2〜20のカルボキシル基、炭素数2〜20のアルコキシ基、炭素数2〜20のアルケニルオキシ基、炭素数6〜20のアリールオキシ基、炭素数2〜20のアルコキシカルボニル基、炭素数2〜20のアルキルチオ基又はフェロセン誘導体等を表し、これらは、炭素数1〜5のアルキル基、ハロゲン原子、炭素数1〜5のアルコキシ基によって置換されたフェニル基によって必要に応じて置換されていても良い。
【0038】
また、R7、R9及びR10としては、炭素数1〜20のアルキル基、シクロへキシル基、フェニル基や、炭素数1〜5のアルキル基、炭素数1〜5のアルキルオキシ基、カルボキシル基、炭素数1〜5のアルキルシリル基、ヒドロキシル基、ニトロ基、ハロゲン、炭素数5以下のアミノ基、アセチル基、アセトキシ基で置換されたフェニル基等であることが好ましく、フェニル基、o−トリル基、p−トリル基、2,6−キシリル基、アニシル基、ニトロベンゼン基、クロロベンゼン基、o−イソプロピルフェニル基、2,6−ジイソプロピルフェニル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロへキシル基等であることが更に好ましい。
【0039】
また、Y1、Y2及びY3は、同一又は異なる硫黄、酸素、セレン元素等を表し、なかでも、硫黄、セレンであることが好ましい。
【0040】
また、X5、X6、X7及びX8は、同一又は異なる任意のアニオン性配位子を表し、ClまたはBrであることが好ましく、Clであることが更に好ましい。
【0041】
更に、L5、L6、L7及びL8は、同一又は異なる任意の中性電子供与体を表し、リン系配位子であることが好ましい。上記リン系配位子としては、式:PR′R′′R′′′で表されるホスフィン等が挙げられる。ここで、R′、R′′及びR′′′は、それぞれ独立した炭素数1〜20のアルキル基、又は、炭素数6〜20のアリール基等を表し、好ましくはメチル基、エチル基、イソプロピル基、t−ブチル基、シクロヘキシル基、フェニル基、又は、置換フェニル基の中から選ばれ、重複して選ぶこともできる。具体的には、−P(シクロヘキシル)3、−P(フェニル)3、−P(イソプロピル)3等が挙げられる。
【0042】
また、L5、L6、L7及びL8としては、イミダゾリウム化合物も良好に用いられる。具体的には、イミダゾリン−2−イリデン誘導体、4,5−ジヒドロイミダゾリン−2−イリデン誘導体が好ましく、更に具体的には、N、N′−ジメシチルイミダゾリン−2−イリデン配位子やN、N′−ジメシチル−4,5−ジヒドロイミダゾリン−2−イリデン配位子が挙げられる。更に、L5及びL6、L7及びL8が同一分子となり、二座配位とすることもできる。
【0043】
なお、X5、X6、X7、X8、L5、L6、L7及びL8の2個又は3個は、更に一緒になって多座キレート化配位子を形成しても良い。
【0044】
上記一般式(2)〜(5)で表されるルテニウム系錯体は、種々の方法により製造することができるが、代表的な方法としては、一方でL1〜L8等を有する配位子前駆体等の原料を公知の方法に従って合成し、他方でルテニウム錯体前駆体原料を公知の方法に従って合成し、最後に両者の原料を混合して配位子交換反応を行って製造する方法が挙げられる。
【0045】
上記メタセシス重合反応は、不活性気体雰囲気下にて行うことが好ましいが、Ru系の安定な触媒を用いた場合は、空気中で重合することができる。一般に、メタセシス重合反応により得られる樹脂は、二重結合を有し、空気中の酸素等により劣化することがある。この劣化を防止するため、重合系中に抗酸化剤を添加させることもできる。
【0046】
上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂には、耐熱性を考慮すると、不飽和結合が存在することは好ましくない。そのため、上記オレフィン系樹脂に不飽和結合が存在する場合には、水素添加を行って不飽和結合を処理することが好ましい。水素添加に際して使用される水素添加触媒としては、 例えば、ウィルキンソン錯体、酢酸コバルト/トリエチルアルミニウム、ニッケルアセチルアセテート/トリイソブチルアルミニウム、パラジウム−カーボン、ルテニウム錯体、ルテニウム−カーボン、ニッケル−けいそう土等が挙げられる。
【0047】
上記水素添加は、触媒の種類により均一系又は不均一系で、通常、1〜200気圧の水素圧下、0〜250℃で行われる。
【0048】
耐熱性と力学特性とのバランスをとるために、上述した触媒を用いて合成される上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂の配合量は、ノルボルネン系樹脂100重量部に対して、その下限は1重量部、上限は100重量部であることが好ましい。より好ましい下限は3重量部、上限は50重量部である。
【0049】
上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂の数平均分子量の下限は2万、上限は100万であることが好ましい。数平均分子量が2万未満であると、配合した樹脂組成物から得られるフィルムの力学強度が不充分となることがある。数平均分子量が100万を超えると、ノルボルネン系樹脂との相溶性が低下し、得られるフィルムの透明性が不充分となることがある。より好ましい下限は3万、上限は50万である。更に好ましい下限は5万、上限は30万である。
【0050】
また、上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度の下限は20℃、上限は150℃であることが好ましい。ガラス転移温度が20℃未満であると、得られる樹脂組成物の耐熱性が低下することがある。一方、150℃を超えると、得られる樹脂組成物の溶融成形性が不充分となり、成形時に分解が生じることがある。より好ましい下限は30℃、上限は130℃であり、更に好ましい下限は40℃、上限は120℃である。
【0051】
本発明の樹脂組成物に含有されるノルボルネン系樹脂のノルボルネン系モノマーとしては、例えば、下記一般式(6)で表される構成元素が炭素と水素、又は、それ以外の元素とからなるテトラシクロドデセン誘導体のノルボルネンモノマー等が挙げられる。
【0052】
【化7】
【0053】
式中、A、Bは、水素原子又は炭素数1〜20の炭化水素基を表し、単環又は多環を有していても良いし、A、Bで結合する短環又は多環を有していても良い。X、Yは、水素原子又は極性基が置換した炭素数1〜20の炭化水素基を表し、mは1又は2を表す。
【0054】
上記一般式(6)で表されるノルボルネン系モノマーのうち、極性を持たないノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、ノルボルネン、5−メチル−2−ノルボルネン、5−エチル−2−ノルボルネン、5−ブチル−2−ノルボルネン、5−エチリデン−2−ノルボルネン、5,5−ジメチル−2−ノルボルネン、5−フェニル−2−ノルボルネン、5−フェニル−5−メチル−2−ノルボルネン、6−メチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−エチル−1,4:5,8−エチリデン−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、5,8−メタノ−1,2,3,4,4a,5,8,8a−オクタヒドロ−2,3−シクロペンタジエノナフタレン、4,9:5,8−ジメタノ−3a,4,4a,5,8,8a,9,9a−オクタヒドロ−1H−ベンゾインデン、4,11:5,10:6,9−トリメタノ−3a,4,4a,5,5a,6,9,9a,10,10a,11,11a−ドデカヒドロ−1H−シクロペンタアントラセン等が挙げられる。
【0055】
また、上記一般式(6)で表される以外のノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン、オクタシクロ[8.8.0.12,9.14,7.111,18.113,16.03.8.012,17]−5−ドコセン、ペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン5−フェニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−メチル−5−フェニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(2,4,6−トリメチルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(エチルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(イソプロピルフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(ビフェニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(β−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(α−ナフチル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5−(アントラセニル)ビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、5,6−ジフェニルビシクロ[2.2.1]−2−ヘプテン、シクロペンタジエン−アセナフチレン付加体、2分子のシクロペンタジエンと1分子のアセナフチレン付加体、1,4−メタノ−1,4,4a,5,10,10a−ヘキサヒドロアントラセン、8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−フェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(2,4,6−トリメチルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(エチルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(イソプロピルフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8,9−ジフェニル−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(ビフェニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(β−ナフチル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(α−ナフチル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−(アントラセニル)−テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン、11,12−ベンゾ−ペンタシクロ[6.6.1.13,6.02,7.09,14]−4−ヘキサデセン、11−フェニル−ヘキサシクロ[6.6.1.13,6.110,13.02,7.09,14]−4−ヘプタデセン、14、15−ベンゾ−ヘプタシクロ[8.7.0.12,9.14,7.111,17.03,8.012,16]−5−エイコセン等が挙げられる。
【0056】
これらのノルボルネン系モノマーは単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、2種類以上の開環重合可能なノルボルネン系モノマーを用いて開環共重合反応を行ってもよく、上記一般式(6)で表されるノルボルネン系モノマーに、一般式(6)で表される以外のノルボルネン系モノマーを共重合又は付加重合することもできる。
【0057】
また、上記一般式(6)で表されるノルボルネン系モノマーのうち、極性基を有するノルボルネン系モノマーの具体例としては、例えば、5−シアノ−2−ノルボルネン、5−メチル−5−メトキシカルボニル−2−ノルボルネン、6−クロロ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−シアノ−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−ピリジル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、6−メトキシカルボニル−1,4:5,8−ジメタノ−1,4,4a,5,6,7,8,8a−オクタヒドロナフタレン、1,4−ジメタノ−1,4,4a,4b,5,8,8a,9a−オクタヒドロフルオレン、5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、5−シアノビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン、8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−プロピルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−イソプロピルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−n−ブチルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−プロピルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−イソプロピルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン、8−メチル−8−n−ブチルオキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセンペンタシクロ[7.4.0.12,5.19,12.08,13]−3−ペンタデセン等が挙げられる。
【0058】
これらのノルボルネン系モノマーは単独で用いられても良いし、2種類以上が併用されても良い。また、2種類以上の開環重合可能なノルボルネン系モノマーを用いて開環共重合反応を行ってもよく、上記一般式(6)で表されるノルボルネン系モノマーに、一般式(6)で表される以外のノルボルネン系モノマーを共重合又は付加重合することもできる。
【0059】
上記ノルボルネン系モノマーの重合方法としては特に限定されず、公知の方法を用いることができ、必要に応じて、他の共重合可能なモノマーと共重合したり、水素添加によりノルボルネン系重合体水素添加物としたりしてもよい。
また、上記重合に用いる重合媒体として、例えば、Ir、Os、Ruの三塩化物の含水塩、MoCl5、WCl6、ReCl5 、(C2H5)3Al、(C2H5 )3Al/TiCl4 、(π−C4H7)4Mo/TiCl4 、(π−C4H7)4 W/TiCl4、(π−C3H5)3Cr/WCl6等が挙げられる。
【0060】
上記ノルボルネン系樹脂の数平均分子量の好ましい下限は5000、上限は5万である。この範囲内であると、得られる成形品、とりわけ光学フィルム等の力学強度と成形性とのバランスが非常によくなる。より好ましい下限は7000、上限は35000、更に好ましい下限は8000、上限は3万である。
なお、上記ノルボルネン系樹脂の数平均分子量は、クロロホルム溶液に調製した試料を、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置を用いて、40℃にて測定し、標準ポリスチレンで置換することにより求めることができる。
【0061】
また、上記ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度の下限は120℃、上限は190℃であることが好ましい。120℃未満であると、樹脂組成物全体の耐熱性が低下することがある。一方、190℃を超えると、溶融成形時に分解が生じることがある。より好ましい下限は130℃、上限は170℃である。
【0062】
上記ノルボルネン系樹脂のうち市販されているものとしては、例えば、「ZEONOR」、「ZEONEX」(日本ゼオン社製);「OPTOREZ」(日立化成工業社製);「APEL」(三井石油化学社製)、「ARTON」(日本合成ゴム社製)等が挙げられる。
【0063】
上記一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂と、ノルボルネン系樹脂との屈折率の差は0.2以下であることが好ましい。屈折率の差が0.2を超えると、特に上記一般式(1)で表される構造のシクロオレフィン系樹脂の分子量が高い場合に、微分散が困難になり、かつ、相の界面で屈折率の差に由来する散乱・反射が起こるために十分な透明性が確保できなくなる傾向にあり、光学フィルム等の透明性を高く保ちにくくなる。より好ましい屈折率の差は0.1以下であり、さらに好ましくは0.05以下であり、最も好ましくは0.02以下である。
【0064】
上記一般式(1)で表される構造のシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度と、ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度とは、その分子量によって好ましい範囲の中で最適化される。最も重要な点は、溶融時の流動性にあり、分子量の高い樹脂を用いる場合はそのガラス転移温度は比較的低いことが好ましい。ガラス転移温度が高くなると、耐熱性はよくなる反面、成形可能温度と分解開始温度とが近づくため、樹脂劣化等の問題が発生する。上記一般式(1)で表される構造のシクロオレフィン系樹脂は、分子量とガラス転移温度とのバランスをとることにより、分子量とガラス転移温度とのバランスが良いので、分子量が高い樹脂であっても、成形温度が比較的低く、ノルボルネン系樹脂との溶融成形時の流動性を近づけやすく両者の相容性を高めやすい。
【0065】
本発明の樹脂組成物の240℃での溶融粘度の下限は100Pa・s、上限は13,000Pa・sであり、かつ、ガラス転移温度は、100〜190℃であることが好ましい。240℃での溶融粘度が100Pa・s未満であると、樹脂組成物から得られるフィルムの力学強度が不充分となることがある。一方、240℃での溶融粘度が13,000Pa・sを超えると、溶融成形性が不充分となることがある。溶融粘度のより好ましい下限は200Pa・s、上限は10000Pa・sであり、更に好ましい下限は300Pa・s、上限は8000Pa・sである。
【0066】
本発明の樹脂組成物は、混練時や成形時に極端な高温にさらされることから、耐熱性を向上させるとともに、変性して光学性能が低下することがないように、酸化防止剤を含有させてもよい。上記酸化防止剤としては特に限定されず、公知の酸化防止剤、例えば、2,6−ジブチル−4−メチルフェノール、2−(1−メチルシクロヘキシル)−4,6−ジルチルフェノール、2,2−メチレン−ビス−(4−メチル−6−t−ブチルフェノール)、トリス(ジ−ノニルフェニルホスファイト)等が挙げられる。
【0067】
また、本発明の樹脂組成物には、変色を防止するために紫外線吸収剤を含有させてもよい。上記紫外線吸収剤としては、例えば、p−t−ブチルフェニルサリシレート、2,2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−(2′−ジヒドロキシ−4−メトキシ−ベンゾフェノン、2−(2′−ジヒドロキシ−4′−m−オクトキシフェニル)ベンゾトリアゾール等が挙げられる。
【0068】
本発明の透明樹脂組成物には、本発明の効果を損なわない範囲において、架橋助剤、充填剤、軟化剤、可塑剤、滑剤、帯電防止剤、防曇剤、着色剤、酸化防止剤(老化防止剤)、熱安定剤、光安定剤等の各種添加剤を必要に応じて1種類又は2種類以上含有させてもよい。
【0069】
本発明における保護フィルムの製造法としては、特に限定されないが、樹脂のブレンドに伴う相構造をできるだけ微分散化し、透明性を保持するために、Tダイ方式による溶融押し出し成形が好ましい。溶融押し出し成形に用いる押し出し機としては、混練性の観点から2軸押し出し機が好ましく、とくに同方向2軸押し出し機が好ましい。単軸押し出し機を用いる場合は、グルメージスクリュー、DISスクリュー等の混練性を上げるスクリューを用いることが好ましい。
【0070】
溶融押し出し時の樹脂温度としては、冷却ロールとフィルムとの接点直前におけるフィルムの温度がTg+50℃以上であると、この状態で非晶性熱可塑性樹脂からフィルムが変形されたとしても、樹脂における応力は著しく小さくなり、フィルム中の残留位相差(R(0))を小さく保つことができる。さらに好ましくはTg+80℃である。残留位相差が大きいと、液晶パネルとしたときに光抜け等の光学特性を低下させる現象が起こるため、10nm以下にすることが好ましい。
これは、非晶性熱可塑性樹脂は、樹脂の温度が高温になればなるほど、変形したときに応力を発生しないためである。従って、製膜時において樹脂に変形を与える際に、適切な温度制御を行うことにより発生する樹脂の応力は小さくなり、残留位相差が発生しにくくなる。
【0071】
冷却ロールとフィルムとの接点直前におけるフィルムの温度をTg+50℃にする具体的な方法としては、特に限定されず、例えば金型の温度を制御する方法などが考えられる。
この場合、金型温度を上げすぎると樹脂によっては熱劣化するが、熱劣化しない程度の温度条件を採用することにより、上記残留位相差を満足できる光学フィルムを確実に得ることができる。また、上記接点直前におけるフィルム温度をTg+50℃以上さらにはTg+80℃以上とするために、エアギャップを狭める方法を用いることができる。この場合には、ダイライン及びフィルムの厚み精度を十分に考慮してエアギャップの大きさを設定すればよい。
【0072】
上記Tダイの種類は、特に限定されず、ストレートマニホールドタイプ、ハンガーマニホールドタイプ、コートハンガータイプ、フィッシュテールタイプ等通常使用されるものであれば使用可能である。
また、Tダイによるダイライン等のフィルム表面の欠陥を少なくするためには、ダイ滞留部が極力少なくなるような構造の金型を使用することが好ましく、更にダイ内部やリップにキズ等が極力ないものを用いることが好ましい。
【0073】
また、位相差板の製造法としては、従来知られている方法が使用でき、例えば、上記押し出しによって得られたフィルムを一軸延伸、同時二軸延伸、逐次二軸延伸等の延伸処理を行うことで製造できる。
【0074】
また、作製された成形品の表面に、無機化合物、シランカップリング剤等の有機シリコン化合物、アクリル系樹脂、ビニル系樹脂、メラニン樹脂、エポキシ樹脂、フッ素系樹脂、シリコーン樹脂等からなるハードコート層を形成することができる。上記ハードコート層の形成手段としては、例えば、熱硬化法、紫外線硬化法、真空蒸着法、スパッタリング法、イオンプレーティング法等の公知の方法が挙げられる。これによって、成形品の耐熱性、光学特性、耐薬品性、耐磨耗性及び透湿性等を向上させることができる。
【0075】
本発明の樹脂組成物の用途としては特に限定されず、広い範囲にわたって使用することができ、例えば、受像転写シートや各種フィルム、シート等を中心とした光学用表示材(例えば、液晶ディスプレイ、ELディスプレイ、プラズマディスプレイ等)、一般カメラ用レンズ、ビデオカメラ用レンズ、望遠鏡レンズ、眼鏡レンズ、レーザビーム用レンズ等のレンズ類、光学式ビデオディスク、オーディオディスク、文書ファイルディスク、メモリディスク等の光ディスク類、光ファイバー等の光学材料等が挙げられる。更に、各種電子機器筺体、窓ガラス、プリント基板、封止剤、無機又は有機化合物のバインダー等として好適に使用することができる。
【0076】
本発明の樹脂組成物は、偏光板の保護フィルム以外に、反射型液晶ディスプレイ等に使用されている位相差板にも好適に使用される。位相差板は従来公知の技術で作成することができ、たとえば、本発明の光学フィルムを1軸もしくは2軸延伸処理することで作成できる。このように得られた位相差板は偏光板保護フィルムとともに偏光板に積層されるが、本発明の光学フィルムを用いた位相差板は、偏光板の保護フィルムとしての機能も持ち合わせているため、上記に記載の保護フィルムと同様にして、偏光子に直接貼り合わせることで、位相差板の機能を兼ね備えた保護フィルムとしても、用いることができる。
【0077】
なかでも、本発明の樹脂組成物の特徴である、成形性、耐熱性に優れるという点を最大限に活かした用途は、位相差フィルム、偏光板保護フィルム等の光学フィルムである。
かかる、本発明の樹脂組成物からなる光学フィルムもまた、本発明の1つである。
【0078】
得られる樹脂組成物を光学フィルムに用いる場合には、樹脂組成物に含まれる一般式(1)で表されるシクロオレフィン系樹脂の数平均分子量が5万〜100万の範囲で、かつ分子量分布が2.0未満であることが好ましい。高分子量のシクロオレフィン系樹脂が配合された樹脂組成物をフィルムに加工した場合は、シクロオレフィン樹脂の一部がゲル化して多数の外観欠点が発生する。しかし、シクロオレフィン系樹脂の数平均分子量、及び分子量分布が本発明の範囲であると、シクロオレフィン系樹脂のゲルかが抑制され、樹脂組成物を光学フィルムに加工形した際に外観欠点を少なくすることが出来る。特に好ましい分子量範囲は、数平均分子量55,000〜700,000の範囲である。また分子量分布に関しては1.8未満であるのが特に好ましい。
【0079】
本発明の光学フィルムでは、平行光線透過率は、85%以上である。平行光線透過率が85%未満であると透明性が低く、偏光板保護フィルムや位相差フィルム等の用途には用いることができなくなる。
【0080】
また、本発明の光学フィルムでは、引裂強度は、0.1N以上である。引裂強度が0.1N未満であると、フィルム強度が不充分となり、偏光板保護フィルムや位相差フィルム等の用途には用いることができなくなる。
【0081】
また、本発明の光学フィルムでは、破断伸度は、2%以上である。破断伸度が2%未満であると、本発明の光学フィルムの製造過程、及び、偏光子との貼合過程において、フィルムのたるみを解消するために引っ張った際、フィルムが容易に破断してしまう。また、偏光板と液晶セルを貼り合わせる際に位置がずれたり、欠点があったりした場合に液晶セルから偏光板を引き剥がして液晶セルを再利用する作業(リワーク作業)の際に偏光板が割れ、著しく作業効率が落ちる。さらに好ましい破断伸度は2.5%以上である。本発明のフィルムはこのような高強度のフィルムが得られる。
【0082】
本発明の光学フィルムでは、透湿度の下限は、10g/m2/day(平均フィルム厚40μm)、上限は300g/m2/day(平均フィルム厚40μm)である。10g/m2/day(平均フィルム厚40μm)未満であると、透湿度が不充分であるために、偏光板保護フィルム等に用いる場合に偏光子との貼り合わせ等の際に用いる接着剤の溶剤等の揮発を阻害し、プロセス上不具合が生じる。また、300g/m2/day(平均フィルム厚40μm)を超えると、得られるフィルムの耐湿性が低下する。本発明の樹脂組成物に配合する上記一般式(1)で表される構造のシクロオレフィン系樹脂は、この範囲内で透湿性を制御するために重要である。より好ましい透湿度の下限は50g/m2/day(平均フィルム厚40μm)、上限は200g/m2/day(平均フィルム厚40μm)である。
【0083】
本発明の光学フィルムでは、光弾性係数の上限は、10×10−12 m2/Nである。ガラスやプラスチックなどの透明な弾性体は応力が加わった際、一時的に光学的異方体となり、複屈折性を示す。この現象の発生原因となる応力は、偏光板の保護フィルムの場合、たとえば、偏光板が高温の状態にさらされたときに、偏光子として用いているPVAフィルムが収縮する際の収縮応力等が挙げられる。この現象が偏光板の保護フィルムに起こると、フィルムに位相差が発生し、位相差が大きいと画面に抜け等が発生するため、画面の視認性が著しく落ちる。この位相差は光弾性係数が大きいと大きくなるため、フィルムの光弾性係数は10×10−12 m2/N以下であることが要求され、好ましくは8×10−12 m2/N以下である。一般に光弾性係数は分子中にベンゼン環等の芳香族基が存在すると大きくなる。本発明はこのような芳香族基を含まないため、光弾性係数を低く抑えることができる。
【0084】
本発明によれば、任意のノルボルネン系樹脂に、特定のシクロオレフィン系樹脂を配合することにより、ノルボルネン系樹脂の有する耐熱性や透明性を損なうことなく、成形性、透湿性及び接着性等を改善し、かつ、溶融成形時の熱劣化や欠陥の発生を制御することができる樹脂組成物が得ることができる。これを用いてなる本発明の光学フィルムは、透明性、耐熱性、低複屈折性、成形性及び接着性等に優れており、また、低吸湿性を損なわずに透湿性を高めることができ、偏光板保護フィルム等に好適に用いることができる。
【0085】
本発明における偏光板とは、本発明の光学フィルムが、上記偏光子の少なくとも片面に積層されたものであり、好ましくは、両面に積層されたものである。
上記偏光子の少なくとも片面としては、液晶セル側の面に本発明の光学フィルムを配することが好ましい。これによって、正面及び斜めから眺めたときの光漏れが少なくなり、正面のみならず斜めから眺めても高コントラストのLCDを得ることができる。
【0086】
また、偏光子のもう一方の面(液晶セルと反対側の面)には、本発明の光学フィルム以外の透明性が高いフィルムを用いてもよく、例えば、樹脂はオレフィン系樹脂、アクリル系樹脂、ポリエステル系樹脂、ポリカーボネート系樹脂、ポリアミド系樹脂、ポリサルホン系樹脂、ポリイミド系樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられ、更に溶融成形、溶液キャスト成形のどちらで製膜しても良く、一軸延伸、二軸延伸されていても構わない。
【0087】
上記偏光子とは、偏光子の機能を有するフィルム又はシートであれば特に限定されることなく使用でき、例えば、ポリビニルアルコール(PVA)からなるフィルムにヨウ素を吸着させた後、ホウ酸浴中で一軸延伸したPVA・ヨウ素系偏光子、PVAフィルムに二色性の高い直接染料を拡散吸着させた後、一軸延伸したPVA・染料系偏光子、PVAの脱水処理物やポリ塩化ビニルの脱塩酸処理物のようなポリエン配向偏光子等が挙げられる。
【0088】
上記PVAは、酢酸ビニルのみを重合したポリ酢酸ビニルを鹸化して製造されたものだけでなく、酢酸ビニルに少量の不飽和カルボン酸(塩、エステル、アミド、ニトリル等を含む)、オレフィン類、ビニルエーテル類、不飽和スルホン酸塩等の共重合可能成分を共重合させたものが鹸化されたものでもよい。
【0089】
本発明の光学フィルムと偏光子とを積層する方法としては、特に限定されず、一般に使用される方法としては、例えばウェットラミネーション等が用いられる。
ウェットラミネーションは、乾燥後の厚み、塗工の円滑性等を考慮して、例えば、接着剤を水により適当な濃度(例えば0.01〜50重量%)に希釈して塗工液を調製した後、公知の方法(例えば、グラビアコーター、マイクログラビアコーター等)でフィルム上に塗布するか、又は滴下した後、対ロールで余分な塗工液をしごきながらラミネートし、熱風等で乾燥させて接着する方法が挙げられる。
【0090】
上記接着剤は、透明性を有する接着剤又は粘着剤等であれば、特に限定されず、例えば、ウレタン系接着剤、PVA系接着剤等が高い接着性能や耐久性の面から好ましく用いられる。
【0091】
また、上記光学フィルムを積層する際に、フィルムの接着力を向上する目的で、光学フィルムの接着面にコロナ処理、紫外線照射処理等の一般に使用される表面処理を施すことが好ましい。
【0092】
偏光板の保護フィルムには透明性・耐熱性だけでなく、偏光子と保護フィルムとを水系接着剤を用いて貼合・乾燥させるために透湿性が必要であり、かつ貼合ライン等で破断があってはならない。
【0093】
【実施例】
以下に実施例を挙げて本発明を更に詳しく説明するが、本発明はこれら実施例のみに限定されるものではない。
【0094】
上記一般式(1)で表されるシクロオレフィン系樹脂の合成
(合成例1)
exo−3,6−エポキシ−1,2,3,6−テトラヒドロフタル酸無水物15kgをメタノール40lに溶解させ、硫酸20mlを加えて還流条件にて5時間攪拌した後、メタノールを減圧除去し、冷水で洗浄することにより、エステル化合物を得た。
次に、得られたエステル化合物のうち10kgをクロロホルムに溶解させ20重量%クロロホルム溶液を調製した。米国特許第5,831,108号に記載の方法に従って合成した下記式(7)で表されるルテニウム錯体化合物39g(1/1000モル当量)を加えて40℃で18時間重合させた。その後、クロロホルム/メタノール系にて再沈精製を行い、減圧乾燥を行うことにより重合物を得た。
更に、得られた重合体5kgをテトラヒドロフラン25kgに溶解させ、5重量%カーボン担持ルテニウム触媒500gを加えた後、容量100Lの加圧釜に仕込み、アルゴンガスで系内を置換した後、水素ガス50kg/cm2になるまで送入した。これを100℃まで昇温し、全圧が50kg/cm2に保たれるように水素ガスを供給しつつ10時間反応を行った。反応終了後、水素を除去し、濾過にて触媒を除いてから生成した水素添加物をメタノール中で析出させ、濾別、
乾燥して樹脂を得た。得られた樹脂を1H−NMRにより分析し、2重結合に由来するピーク(5〜7ppm)の消失を確認した。得られた樹脂を以下樹脂(1)とした。なお、上記合成反応を式(8)に模式的に示した。
【0095】
【化8】
【0096】
【化9】
【0097】
(合成例2)
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物15kgをメタノール40lに溶解させ、硫酸10mlを加えて還流条件にて5時間攪拌した。メタノールを減圧除去した後、精製カラムを用いて精製することにより、エステル化合物を得た。
得られたエステル化合物を用いて合成例1と同様にして樹脂(2)を得た。なお、上記合成反応を式(9)に模式的に示した。
【0098】
【化10】
【0099】
(合成例3)
まず、5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物10kgをクロロホルムに溶解させ20重量%クロロホルム溶液を調製した。これに上記化学式(8)で表されるルテニウム錯体化合物30g(1/1000モル当量)を加えて60℃で18時間重合させた。その後、クロロホルム/メタノール系にて再沈精製を行い、減圧乾燥を行うことにより重合物を得た。得られた重合物を用いて合成例1と同様にして樹脂(3)を得た。なお、上記合成反応を式(10)に模式的に示した。
【0100】
【化11】
【0101】
(合成例4)
上記式(7)で表される重合触媒とともに、アリルアセテート70mgを加えたこと以外は、合成例1と同様の操作を行って樹脂(4)を得た。
【0102】
(合成例5)
Organometallics 1998 17 5190記載の合成法に従って合成した下記式(11)で示され表されるルテニウム化合物39g(1/1000モル当量)を用いてエステル化合物の重合を行うこと以外は合成例2と同様の操作を行って樹脂(5)を得た。
【0103】
【化12】
【0104】
(合成例6)
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物をメタノールの代わりにエタノールを用いてエステル化したこと以外は合成例5と同様の操作を行って樹脂(6)を得た。
【0105】
(合成例7)
5−ノルボルネン−2,3−ジカルボン酸無水物をメタノールの代わりにn−プロパノールを用いてエステル化したこと及びChemistry Letter 1999 369記載の合成法に従って合成した下記化学式(12)で表されるルテニウム化合物1/1000モル当量を用いてエステル化合物の重合を行うこと以外は合成例5と同様の操作を行って樹脂(7)を得た。
【0106】
【化13】
【0107】
(合成例8)
合成例2で用いたエステル化合物10kgをシクロヘキサン70kgに溶解し、分子量調整剤として1−ヘキセン0.3kg、トリエチルアルミニウムの15%シクロヘキサン溶液3kg、およびトリエチルアミン1.7kgを添加した。この溶液を、30℃に保ちながら四塩化チタンの20%シクロヘキサン溶液3.3kgを1時間にわたって連続的に反応系に添加して、開環重合を行った。30分後、六塩化タングステンの0.8%シクロヘキサン溶液1.7kgを添加し、更に30分間攪拌した。
重合体への転化率は98%であった。得られた樹脂は合成例1と同様の操作で水素添加を行い水添樹脂を得た。得られた水添樹脂を樹脂(8)とした。
【0108】
上記で得られた樹脂(1)〜(8)の数平均分子量、分子量分布(Mw/Mn)、ガラス転移温度及び屈折率を下記の方法により測定し、その結果を表1に示した。
【0109】
(数平均分子量、分子量分布)
自動試料供給装置(東ソー株式会社社製「オートサンプラーAS−8020」)と、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)装置(東ソー株式会社社製「HLC−8020」)と、データ解析装置(東ソー株式会社社製「SC−8020」)とを組み合わせた測定システムを用いた。また、カラムShodex社製、K−806L(2本使用)を用い、測定条件として、流量を1ml/min、オーブン温度を40℃、屈折計温度を40℃、試料濃度を約0.1wt%、試料注入量を300μl、溶媒をクロロホルム、標準試料を標準ポリスチレンとして測定し、数平均分子量、分子量分布を求めた。
【0110】
(ガラス転移温度)
示差熱量測定装置(TA Instruments株式会社社製、DSC2920 Modulated DSC)を用いた。そして、下記に示す条件で試料を加熱又は冷却し、最後に昇温を行った時に測定されたガラス転移温度を本発明のガラス転移温度とした。
▲1▼室温から200℃まで、10℃/minで昇温して200℃で5分間保持。
▲2▼200℃から−50℃まで、10℃/minで冷却して−50℃で5分間保持。
▲3▼−50℃から200℃まで、10℃/minで昇温して200℃で5分間保持。
【0111】
(屈折率)
アッベ屈折率計(株式会社アタゴ社製「1T」)を用いて、23℃で測定した。
【0112】
【表1】
【0113】
(実施例1)
表2に示した組成に応じたノルボルネン系樹脂とシクロオレフィン系樹脂を、2軸溶融押出機を用いて250℃で溶融混合し、Tダイより押出成形して40μmの光学フィルムを得た。
【0114】
(比較例1)
表2に示した組成に応じたノルボルネン系樹脂とシクロオレフィン系樹脂を、2軸溶融押出機を用いて280℃で溶融混合し、Tダイより押出成形して40μmの光学フィルムを得た。
【0115】
(実施例2〜9、比較例2)
表2に示した組成に応じたノルボルネン系樹脂とシクロオレフィン系樹脂を、2軸溶融押出機を用いて260℃で溶融混合し、Tダイより押出成形して40μmの光学フィルムを得た。
【0116】
(実施例10)
実施例2と同様にして厚さ50μmの光学フィルムを得た。このフィルムを174℃で1.5倍に1軸延伸することで、厚さ40μmの延伸光学フィルムを得た。延伸の過程でフィルムの巾が若干狭くなった。なお、このときの550nmにおける位相差値は130nmであった。
【0117】
(比較例2)
光学フィルムとしてセルローストリアセテート(TAC)のキャストフィルム(フジタッククリアー、厚さ80μm、富士写真フィルム社製)を使用した。
【0118】
実施例1〜9及び比較例1、2で得られた光学フィルムについて、溶融粘度、ガラス転移温度、引裂強度、透湿度、破断伸度、平行光線透過率、光弾性係数、偏光板のリワーク性、及び外観を下記の方法により測定し、結果を表2に示した。
【0119】
(溶融粘度)
CFT−500C島津フローテスタを用い、240℃において次の条件で溶融粘度を測定した。
【0120】
(ガラス転移温度)
示差熱量測定装置(TA Instruments株式会社社製、DSC2920 Modulated DSC)を用いた。そして、下記に示す条件で試料を加熱又は冷却し、最後に昇温を行った時に測定されたガラス転移温度を本発明のガラス転移温度とした。
▲1▼室温から200℃まで、10℃/minで昇温して200℃で5分間保持。
▲2▼200℃から−50℃まで、10℃/minで冷却して−50℃で5分間保持。
▲3▼−50℃から200℃まで、10℃/minで昇温して200℃で5分間保持。
【0121】
(引裂強度)
JIS K 7128(直角形)に準拠して測定した。
【0122】
(透湿度)
JIS Z 0208に準じて測定した。測定条件は40℃90%RHで行った。
【0123】
(破断伸度)
引張張試験 TENSILON「UTA−500」(ORIENTEC社製)により押し出し方向に対して平行方向(MD方向)の破断伸度を、下記の条件で評価した。
【0124】
(平行光線透過率)
ヘイズメーターTC−HIIIDPK(東京電色社製)を用い、JIS K 7150に準拠して測定した。
【0125】
(光弾性係数)
実施例及び比較例にて得られた光学フィルムを、流れ方向に平行に、巾1cm長さ15cmのサイズにカットし、0,400,800,1200,1600,2000gの荷重下で、KOBRA−21ADH(新王子計測機器社製)を用い測定波長590nmにて位相差を測定し、荷重と位相差を最小2乗近似によって得られた直線の傾きから光弾性係数を算出した。尚、測定は、フィルムの法線方向R(0)について行った。
【0126】
(偏光板のリワーク性)
実施例及び比較例にて得られた光学フィルムをA4サイズにカットし、偏光子接着面側にコロナ処理を施した。(処理後のフィルム面は水による接触角測定において42°〜44°の値であった。)
接着剤溶液として、水性ウレタン接着剤(EL−436A/B、東洋モートン社製)の主剤/硬化剤(混合比10/3)を10重量%になるように水で希釈し調製した。次に、この接着剤溶液をワイヤーバー#8で上記光学フィルムのコロナ処理面に塗布し、偏光子上に貼り合せた。更に、この操作を偏光子のもう一方の面にも行い、偏光子の両面に光学フィルムを貼り付けた。この際、光学フィルムの流れ方向と偏光子の延伸方向が同一になるように貼り合わせた。これを45℃の恒温槽で72時間保持し乾燥・養生を行い偏光板を作製した。
得られた偏光板を15cm角にカットした後、再度コロナ処理し、両面粘着シートを用いて無アルカリガラス基盤に貼り付けた(180°ピール強度:25N/25mm巾)。偏光板を、角から中心方向に向かって45°の角度で鉛直方向に引きはがし、下記の基準で評価を行った。
○:ガラスに対して糊残りなしに完全に剥がれた。
×:途中で破れが生じた。
【0127】
(外観)
得られたフィルムの背面から光を当てて、点状に見える欠陥の数(検査面積10m2)を数えて下記の基準で評価し、結果を表2に示した。
◎:3個/m2以下
○:4〜9個/m2
×:10個/m2以上
【0128】
(総合評価)
上記項目の結果を総合的に評価し、下記の基準で評価した。結果を表2に示した。
○:光学フィルムとして優れており、偏光板に使用し得る。
×:光学フィルムとして不十分であり、偏光板として使用できない。
【0129】
【表2】
【0130】
(評価結果)
実施例1で得られた樹脂組成物を加工したフィルムは、比較例1に示す市販のノルボルネン樹脂(ZEONOR1600R、日本ゼオン社製)を加工したフィルムに比べ、240℃で溶融させた時の溶融粘度が低くおさえられている。この結果は従来は樹脂劣化の可能性を伴う280℃以上で成形しなければならなかったノルボルネン系樹脂が低温での成形可能になると言う非常に優れた特徴を有することを示している。。また、透湿度や破断伸度などの物性においても改善が確認されていることから、実施例1で示された樹脂組成物フィルムが従来のノルボルネン樹脂に比べてフィルム物性が向上した上で低温で成形可能となったことを示している。
【0131】
実施例2〜8に示されているように、シクロオレフィン系樹脂の分子量分布が2.0以下である光学フィルムは、実施例9に示す分子量分布が2.30である光学フィルムに比べて外観欠点数が減少している。これは分子量分布が大きい場合には、高分子量領域にゲル化しやすい成分が含まれていることに起因すると思われる。また、実施例4〜8に見られるように、シクロオレフィン系樹脂の分子量分布を1.8以下にすることにより光学フィルムの外観欠点を著しく改善出来ることがことがわかる。 すなわち、ノルボルネン系樹脂を含む従来のシクロオレフィン系樹脂の添加によるシクロオレフィン系樹脂の強度はシクロオレフィン樹脂系の分子量を上げることで改善は見られるものの、ゲル化し易い成分の割合を増加させることにより点状の外観欠点が多く見られるという問題点が生じる。
一方、分子量分布の狭い特定分子量のシクロオレフィン系樹脂を添加することで、外観を損ねることなく強度を付与できることが確認された。
【0132】
【発明の効果】
本発明は、上記の構成よりなるので、任意のノルボルネン系樹脂に特定のシクロオレフィン系樹脂を配合することにより、ノルボルネン系樹脂の有する耐熱性や透明性を損なうことなく、成形性、透湿性、接着性等が改善され、かつ、溶融成形時の熱劣化や欠陥の発生が抑制された樹脂組成物を提供することができ、更には、この樹脂組成物を溶融成形すると、透明性、耐熱性、低複屈折性、成形性、透湿性、接着性等に優れ、また、低吸湿性を損なわずに透湿性を高めることができる光学フィルムを提供することができる。
さらに、上記光学フィルムは特に偏光板保護フィルムとして好適に用いられ、また延伸することで位相差板としての機能を兼ね備えた偏光板保護フィルムにもなる。この光学フィルムを用いた偏光板を用いることにより光学特性に優れた液晶ディスプレイを供給することが出来る。
Claims (16)
- 一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂と、ノルボルネン系樹脂との屈折率の差が、0.2以下であることを特徴とする請求項1記載の樹脂組成物。
- 一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂の数平均分子量が、2万〜100万の範囲であることを特徴とする請求項1又は2記載の樹脂組成物。
- 一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂のガラス転移温度が、20〜150℃の範囲であることを特徴とする請求項1、2又は3記載の樹脂組成物。
- ノルボルネン系樹脂のガラス転移温度が、120〜190℃の範囲であることを特徴とする請求項1、2、3又は4記載の樹脂組成物。
- 240℃での溶融粘度が、100〜13000Pa・sであり、かつ、ガラス転移温度が、100〜190℃であることを特徴とする請求項1、2、3、4又は5記載の樹脂組成物。
- 一般式(1)で表される構造を有するシクロオレフィン系樹脂の数平均分子量が5万〜100万、分子量分布が2.0未満であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、または6に記載の樹脂組成物。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物からなり、平行光線透過率が、85%以上であることを特徴とする光学フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物からなり、引裂強度が、0.1N以上であることを特徴とする光学フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物からなり、破断伸度が、2%以上であることを特徴とする光学フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物からなり、透湿度が、10〜300g/m2/day(平均フィルム厚40μm、温度40℃、湿度90%で測定)であることを特徴とする光学フィルム。
- 請求項1〜7のいずれかに記載の樹脂組成物からなり、光弾性係数が10×10−12 m2/N以下であることを特徴とする請求項1、2、3、4、5、6又は7に記載の光学用フィルム
- 請求項8〜12のいずれかに記載の光学フィルムを延伸してなる位相差板。
- 請求項8〜12に記載の光学フィルムが、偏光子の少なくとも片面に積層されてなることを特徴とする偏光板。
- 請求項14に記載の位相差板が、偏光子の少なくとも片面に積層されてなることを特徴とする偏光板。
- 請求項13もしくは14に記載の偏光板を少なくとも1枚用いてなることを特徴とする液晶ディスプレイ。
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