JP2008050495A - 環状オレフィン系共重合体およびその製造方法ならびに用途 - Google Patents
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Abstract
【効果】本発明によれば、芳香環を有する環状オレフィン系化合物から導かれる構造単位と、芳香環を有さない環状オレフィン系化合物から導かれる構造単位とを有し、構造単位の偏在が少なく、容易に製造可能で、透明性、耐熱性、有機溶剤への溶解性、強度、加工性に優れ、各種光学部品用途に好適に使用できる、環状オレフィン系共重合体およびその製造方法を提供することができる。
【選択図】なし
Description
ロール性に優れることが示されているが、該重合体はガラス転移温度が必要以上に高く、強度および加工性が低いという問題があった。
ノルボルネン骨格と芳香環構造とを有する環状オレフィン系モノマー(A)と、
ノルボルネン骨格を有し芳香環構造を有さない環状オレフィン系モノマー(B)と
を共重合するに際し、
モノマー総量の5〜90重量%のモノマーと重合触媒とを用いて重合を開始し、
重合反応中に残余のモノマーを反応系に供給して重合することを特徴としている。
環状オレフィン系モノマー(A)が、下記式(1−1)、(1−2)、(1−3)および(1−4)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであり、
環状オレフィン系モノマー(B)が、下記式(2−1)および(2−2)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであることが好ましい。
本発明の環状オレフィン系共重合体の製造方法では、重合終了までに使用する、環状オレフィン系モノマー(A)と、環状オレフィン系モノマー(B)との合計量100モル%中、環状オレフィン系モノマー(A)の使用割合が5〜50モル%であることが好ましい。
本発明の環状オレフィン系共重合体は、
ノルボルネン骨格と芳香環構造とを有する環状オレフィン系化合物から誘導される構造単位(a)と、ノルボルネン骨格を有し芳香環構造を有さない環状オレフィン系化合物から誘導される構造単位(b)とを有し、
次式で示される芳香環構造の偏在度が1以下であることを特徴としている。
(式中、R100000およびR1000は、それぞれ、屈折率についての微分分子量分布図(1)から読み取られた分子量100000の強度および分子量1000の強度を示し、U100000およびU1000は、それぞれ、254nmの紫外線吸収強度についての微分分子量分布図(2)から読み取られた分子量100000の強度および分子量1000の強度を示す。)
本発明の光学部品は、上記本発明の環状オレフィン系共重合体のいずれかを成形して得られることを特徴としている。
本明細書において、複屈折との用語は通常の意味で用いられる。また、複屈折の値(これを、Δnとする)とは、重合体から成形されたフィルムを一軸または二軸延伸し、重合体分子鎖を一方向に配向させた延伸フィルムにおいて、延伸方向(二軸延伸においては延伸倍率の大きい方向)をx軸、これに対して面内垂直方向をy軸とし、x軸方向の屈折率をnx、Y軸方向の屈折率をnyとして、下記式:
Δn=nx−ny
で定義される正ないし負の値であり、その絶対値は入射光の波長によって異なる。
次に、位相差(Retardation、これをReとする)とは、下記式:
Re=Δn×d (式中、dは、透過光の光路長(nm)であり、通常、上記延伸フィルムの厚さである。)
で定義される正〜負の値であり、その絶対値は入射光の波長によって異なる。また、「位相差が1/4λ」とは入射光波長(λ)の1/4に相当する位相差を発現することを意味する。
環状オレフィン系モノマー(A)は、ノルボルネン骨格と芳香環構造とを有する化合物である。環状オレフィン系モノマー(A)は、分子内に芳香環構造を1つのみ有していてもよく、また2個以上有していてもよい。本発明では、分子内に芳香環構造を1つまたは2つ有する環状オレフィン系モノマーが好適に用いられる。
ここで、前記式(1−1)〜(1−4)中のR、ならびに前記式(2−1)および(2
−1)における、RならびにR1〜R4で表される原子もしくは基について説明する。
炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;エチリデン基、プロピリデン基等のアルキリデン基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の芳香族基等が挙げられる。これらの基中の炭素原子に結合した水素原子は、例えば、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子、フェニルスルホニル基、シアノ基等で置換されていてもよい。
−)、スルホニルオキシ基(−SO2−O−)、エーテル結合(−O−)、チオエーテル
結合(−S−)、イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−)、シロキサン結合(−Si(R)2O−)(式中、Rはメチル基、エチル基等のアルキル基である);或い
はこれらの2種以上が組み合わさって連なったものが挙げられる。
前記式(1−1)で表される化合物の好ましい具体例としては、例えば以下のものが挙げられる。
環状オレフィン系モノマー(B)
環状オレフィン系モノマー(B)は、ノルボルネン骨格を有し芳香環構造を有さない化合物である。
本発明に係る環状オレフィン系共重合体は、上述した環状オレフィン系モノマー(A)および(B)のみを共重合して得られる共重合体であることが好ましいが、環状オレフィン系モノマー(A)および(B)とともに、必要に応じてその他の共重合性モノマーを共重合して得られる共重合体であってもよい。その他の共重合性モノマーを用いることにより、環状オレフィン系共重合体のガラス転移温度などを制御することができる。
共重合
本発明に係る環状オレフィン系共重合体の製造にあたっては、上述した環状オレフィン系モノマー(A)と、環状オレフィン系モノマー(B)との使用割合は、所望の共重合体の特性に応じて適宜設計することができ、特に限定されるものではないが、好ましくは、反応終了までの総量基準で、モノマー(A)とモノマー(B)との合計量を100mol%として、モノマー(A)が5〜50mol%の範囲であるのが好ましく、10〜50mol%の範囲であるのがより好ましい。モノマー(A)をこのような共重合比で用いることにより、得られる本発明の環状オレフィン系共重合体が有する屈折率の異方性や波長分散性などの光学的特性、およびガラス転移温度などの物理的特性を容易にコントロールすることができる。
・重合方法
本発明では、反応終了までのモノマー総量のうちの、一部のモノマー(初期重合モノマー)と重合触媒を用いて重合を開始し、その重合反応中に残余のモノマーを供給して重合反応を行う。本発明において、初期重合モノマーとして用いるモノマーの量は、モノマー総量の少なくとも5重量%を用いることが好ましく、より好ましくは10〜95重量%であり、さらに好ましくは20〜90重量%である。初期重合モノマー量が5重量%未満の
場合は、重合体中の構造の偏在が生じるために、本発明の効果を得ることができない。初期重合を開始する時のモノマー溶液の温度は、30〜200℃が好ましく、より好ましくは50℃〜180℃である。30℃未満の場合は重合体の収率が低下することがあり、200℃を超える場合は分子量コントロールが困難になることがある。
・重合触媒
本発明の環状オレフィン系共重合体を製造するのに好適に用いることのできる重合触媒としては、ノルボルネンなどの環状オレフィンを重合する場合に用いられる開環重合触媒および付加重合触媒をいずれも用いることができる。
(I)Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization(K.J.IVIN, J.C.MOL, Academic Press 1997)に記載されている触媒が好ましく用いられる。このような触媒としては、例えば、(a)W、Mo、Re、VおよびTiの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)アルカリ金属元素(例えば、Li、Na、K)、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca)、第12族元素(例えば、Zn、Cd、Hg)、第13族元素(例えば、B、Al)、第14族元素(例えば、Si、Sn、Pd)等の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合または当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組み合わせからなるメタセシス触媒が挙げられる。該触媒の活性を高めるために、後述の(c)添加剤が添加されたものであってもよい。
Cl3、TiCl4等の特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
ン、LiH等の特開平1−240517号公報に記載の化合物を挙げることができる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
(II)周期表第4族〜第8族の遷移金属−カルベン錯体やメタラシクロブタン錯体等からなるメタセシス触媒を用いることができる。
また、付加共重合を行う触媒としては、チタン化合物、ジルコニウム化合物およびバナジウム化合物から選ばれた少なくとも一種と、助触媒としての有機アルミニウム化合物とが用いられる。
VO(OR)aXb、またはV(OR)cXd
〔ただし、Rは炭化水素基、Xはハロゲン原子であって、0≦a≦3、0≦b≦3、2≦(a+b)≦3、0≦c≦4、0≦d≦4、3≦(c+d)≦4である。〕
で表されるバナジウム化合物、あるいはこれらの電子供与付加物が用いられる。
)が2以上であり、好ましくは2〜50、特に好ましくは3〜20の範囲である。
・分子量調節剤
本発明に係る環状オレフィン系共重合体の分子量の調節は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類等を調整することによっても行うことができるが、分子量調節剤を共重合の反応系に共存させることにより調節することが好ましい。分子量調節剤としては、例えば、エチレン、プロペン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィン類およびスチレンが好ましく、これらのうち、1−ブテンおよび1−ヘキセンが特に好ましい。これらの分子量調節剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。この分子量調節剤の使用量は、全モノマー1モル当り、通常、0.005〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルである。
・重合反応溶媒
共重合反応において用いられる溶媒(即ち、単量体、重合触媒、分子量調節剤等を溶解する溶媒)としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロムヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のハロゲン化アルカン、ハロゲン化アリール等の化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン、ジメトキシエタン等のエーテル類が挙げられ、これらの中では芳香族炭化水素が好ましい。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。この重合反応用溶媒の使用量は、「溶媒:全モノマー」の重量比が、通常、1:1〜10:1となる量であり、好ましくは1:1〜5:1となる量であるのが望ましい。
水素添加
上記共重合により得られる環状オレフィン系共重合体は、開環重合により製造を行った場合は、オレフィン性不飽和基の構造を有するものである。この重合体は、そのまま使用することができるが、耐熱安定性をより向上させるために、上記オレフィン性不飽和基を水素添加して、水素添加された重合体(水素添加物)として得ることが好ましい。ただし、本発明でいう水素添加物とは、共重合により生じる前記オレフィン性不飽和基が水素添加されたものであって、モノマー構造に由来するベンゼン環などの芳香環骨格中の環内共役二重結合は、実質的に水素添加されていないものであることが好ましい。
リチウム、チタノセンジクロリド/ジエチルアルミニウムモノクロリド、酢酸ロジウム、クロロトリス(トリフェニルホスフィン)ロジウム、ジクロロトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、クロロヒドロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム、ジクロロカルボニルトリス(トリフェニルホスフィン)ルテニウム等が挙げられる。これら触媒の形態は粉末状でも粒状でもよい。また、この水素添加反応触は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
環状オレフィン系共重合体の特性
本発明の環状オレフィン系共重合体は、日本工業規格K7121に従って測定した補外ガラス転移開始温度が、好ましくは110〜180℃、より好ましくは112〜178℃、さらに好ましくは114〜176℃であって、充分な耐熱性を有するとともに、押出し成形等の溶融成形も可能な優れた成形性を有する。
であるか、或いは、重量平均分子量(Mw)が5000未満であると、本発明の環状オレフィン系共重合体から得られる成形物の強度が著しく低下する場合がある。一方、対数粘度(ηinh) が0.81以上であるか、数平均分子量(Mn)が50万以上であるか、或いは、重量平均分子量(Mw)が200万以上であると、前記重合体の溶融粘度または溶液粘度が高くなりすぎて、所望の成形品を得ることが困難になる場合がある。
(式中、R100000およびR1000は、それぞれ、屈折率についての微分分子量分布図(1)から読み取られた分子量100000の強度および分子量1000の強度を示し、U100000およびU1000は、それぞれ、254nmの紫外線吸収強度についての微分分子量分布図(2)から読み取られた分子量100000の強度および分子量1000の強度を示す。)
ここで、紫外線吸収強度を測定する波長である254nmには、芳香環構造の紫外線吸収ピークが存在する。なお、得られた共重合体中の分子量ごとの分画は、GPC法により行うことができる。
)とで重合反応性が異なることから、当初からモノマー全量を共重合反応に供した場合には、反応初期に反応性の高いモノマー(B)が多く反応し、反応後期に反応性の高いモノマーが消費されることにより高濃度となったモノマー(A)が多く反応することに起因して、モノマー(A)由来の構造単位(a)の含有量が低分子量物に多く、高分子量物に少なくなる傾向があるが、本発明に係る環状オレフィン系共重合体では、この差が小さく、構造単位(a)の偏在が少ない。
<成形>
本発明の環状オレフィン系開環共重合体は、押出し成形および射出成形などの溶融成形、溶液流延法(キャスト法)による成形のいずれによっても好適に所望の形状に成形することができる。
・光学フィルム
本発明の環状オレフィン系重合体は、環状オレフィン系モノマー(A)および(B)の構造/種類の選択、共重合組成比の設定などにより、得られるフィルムなどの成形品の複屈折の絶対値や、位相差の波長依存性を調整することができる。たとえば上記式(1−1)〜(1−4)で表される環状オレフィンモノマー(A)の置換基Rや、上記式(2−1)あるいは(2−2)で表される環状オレフィン系モノマー(B)の置換基R1〜R4の構造・種類、共重合組成比などを設定することにより、これらの特性を制御することができる。
特性(1)〜(6)を同時に満足することができる。
(1)ヘイズ≦2%
(2)0≦Re550≦300nm
(3)0.5≦Re450/Re550≦1.0
(4)1.0≦Re650/Re550≦1.3
(5)10000≦d≦250000
(6)0.1≦Nz≦2.0
(上記式中、Re450、Re550、Re650は、それぞれ波長450nm、550nm、650nmにおけるフィルム面内の位相差Reを示し、Re=(nx−ny)×dで表され、Nz=(nx−nz)/(nx−ny)で表される。ここで、nxおよびnyは延伸方向をx軸、これに対してフィルム面内垂直方向をy軸としたときのx軸方向およびy軸方向の屈折率をそれぞれ表し、dはフィルムの厚み(nm)を表す。)
本発明に係る延伸フィルムが、上記(1)〜(6)の光学特性を同時に満たす場合には、各種仕様のモニター、テレビ、またはモバイル機器等の光学補償材料として特に好適に使用できる。
以下、実施例に基づいて本発明をさらに具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例に限定されるものではない。
なお、以下において、「部」及び「%」は、特に断りのない限り「重量部」および「重量%」を意味する。また、室温とは25℃である。
・ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、商品名:DSC6200)を用いて、日本工業規格K7121に従って補外ガラス転移開始温度を求めた。以下、単にガラス転移温度(Tg)という。
・重量平均分子量、分子量分布、および重合体中の芳香環構造の偏在
ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC、東ソー株式会社製、商品名:HLC-8020)を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、屈折率を観測することによって、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、数平均分子量(Mn)および分子量分布(Mw/Mn)を測定し、屈折率についての微分分子量分布図(分布図1)を作成した。さらに、254nmの紫外線吸収強度を観測することによって、紫外線吸収強度についての微分分子量分布図(分布図2)を作成した。
分布図1から分子量1000の強度(R1000)、分子量100000の強度(R100000)を読み取り、分布図2から分子量1000の強度(U1000)、分子量100000の強度(U100000)を読み取り、これらを用いて、下記式によって芳香環構造の偏在度を評価した。
・重合体分子構造
超伝導核磁気共鳴吸収装置(NMR、Bruker社製、商品名:AVANCE500)を用い、重水素化クロロホルム中で1H−NMRを測定し、共重合組成比および水素添加率を算出した。
・透明性、位相差、複屈折評価
開環重合体の塩化メチレン溶液(濃度:25%)を平滑なガラス板上にキャストし、乾燥後、厚さ100μm、残留溶媒0.5〜0.8%の無色透明なフィルムを得た。このフィルムのガラス転移温度(Tg)よりも5〜10℃高い温度で、1.2〜2.0倍に一軸延伸した。この延伸フィルムの透明性を、ヘイズメーター(スガ試験機社製、商品名:HGM−2DP型)を使用して測定した。さらに、位相差および複屈折の値を、レターデーション測定器(王子計測機器製、商品名:KOBRA21DH)を用いて測定した。
・対数粘度
ウッベローデ型粘度計を用いて、クロロホルム中、試料濃度0.5g/dL、温度30℃で測定した。
・引き裂き強度
株式会社東洋精機製作所製エレメンドルフ引き裂き試験装置3200型を用いて測定した。
[実施例1]
単量体として式(A)で表されるスピロ[フルオレン−9,8'−トリシクロ[4.3.0.12.5][3]デセン](以下モノマーAという)22g(0.0774mol)、式(B)で表される8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン(以下モノマーBという)59g(0.2540mol)、式(C)で表されるビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン(以下モノマーCという)4g(0.0425mol)、分子量調節剤として1−へキセン 3.3g(0.0395mol)、およびトルエン360gを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(トリエチルアルミニウム濃度0.61mol/L)0.43mL、メタノール変性WCl6のトルエン溶液(メタノール変性WCl6濃度0.025mol/L)1.74mLを加え、重合を開始した。この重合溶液の温度を測定し、温度上昇が1℃/分になったところで、8−メトキシカルボニル−8−メチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン15g(0.0646mol)を5分間かけて滴下した。滴下終了時から1時間反応させることにより重合体を得た。ここで得られた重合体溶液をオートクレーブに入れ、さらにトルエンを100g加えた。水素添加反応触媒としてRuHCl(CO)[P(C6H5)3]3を0.040g添加し、水素ガスを10MPaのゲージ圧となるように添加し、160〜165℃に加熱し
て3時間の反応を行った。反応終了後多量のメタノールに沈殿させることにより水素添加体を回収し、100℃の真空乾燥機で12時間乾燥した。
また、対数粘度(ηinh)=0.72、補外ガラス転移開始温度(Tg)=165℃、収量79g(収率79%)であった。NMR測定により求めたこの水素添加体の水素添加率は99.9%であり、芳香環残存率は100%であった。NMRにより求めた単量体A、単量体B、および単量体C由来の構造単位含有率(共重合組成比)はそれぞれ18、76、および6重量%であった。得られた重合水添体の1H−NMRスペクトルを図1に示す。
モノマーAを22g(0.0774mol)、モノマーBを44g(0.1894mol)、モノマーCを4g(0.0425mol)を用いて重合を開始し、モノマーBを30g(0.1291mol)追加すること以外は実施例1と同様にして、重合反応、水素添加反応、水素添加体回収および乾燥を行った。
このようにして、対数粘度(ηinh)=0.61、補外ガラス転移開始温度(Tg)=166℃の重合水添体を収率88%で得た。NMR測定により求めたこの水素添加体の水素添加率は99.8%であった。得られた重合水添体の1H−NMRスペクトルを図2に示す。
これら結果をまとめて表1に示した。
[実施例3]
モノマーAを22g(0.0774mol)、モノマーBを65g(0.2798mol)、モノマーCを4g(0.0425mol)を用いて重合を開始し、モノマーBを9g(0.0387mol)追加すること以外は実施例1と同様にして、重合反応、水素添加反応、水素添加体回収および乾燥を行い、共重合体水素添加物を得た。重量平均分子量(Mw)=126,384、分子量分布(Mw/Mn)=7.38、芳香環構造の偏在度は0.80であった。
これら結果をまとめて表1に示した。
[実施例4]
モノマーAを25g(0.0879mol)、モノマーBを7g(0.0301mol)、モノマーCを0.4g(0.0042mol)、1−へキセン1.8g(0.0218mol)を用いて重合を開始し、モノマーBを64g(0.2755mol)、モノマーCを3.6g(0.0382mol)の混合物を追加すること以外は実施例1と同様にして、重合反応、水素添加反応、水素添加物の回収および乾燥を行い、重量平均分子量(Mw)=50,742、分子量分布(Mw/Mn)=3.09、対数粘度(ηinh)=0.45、芳香環構造の偏在度は0.61であった。補外ガラス転移開始温度(Tg)=172℃の重合水添体を収率92%で得た。NMR測定により求めたこの水素添加物の水素添加率は99.9%であった。
これらの結果をまとめて表1に示した。
[比較例1]
モノマーAを30g(0.1055mol)、モノマーBを62g(0.2669mol)、モノマーCを8g(0.0850mol)、分子量調節剤として1−へキセン51g(0.0605mol)、およびトルエン250gを窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これにトリエチルアルミニウムのトルエン溶液(トリエチルアルミニウム濃度0.61mol/L)0.57mL、メタノール変性WCl6のトルエン溶液(メタノール変性WCl6濃度0.025mol/L)1.73mLを加え、80℃で1時間反応させることにより重合体を得た。ここで得られた重合体を用いること以外は実施例1と同様にして、水素添加反応、水素添加物の回収および乾燥を行った。得られた共重合体水素添加物は、重量平均分子量(Mw)=70,237、分子量分布(Mw/Mn)=5.35であり、芳香環構造の偏在度は1.14であった。対数粘度(ηinh)=0.50、補外ガラス転移開始温度(Tg)=158.0℃、収量80g(収率80%)であった。NMR測定により求めたこの水素添加体の水素添加率は99.8%であった。
[比較例2]
モノマーCを使用しないこと以外は比較例1と同様にして開環重合反応、水素添加反応、水素添加体回収および乾燥を行い、重量平均分子量(Mw)=100,003、分子量分布(Mw/Mn)=5.29、対数粘度(ηinh)=0.66、補外ガラス転移開始温度(Tg)=188.0℃の重合水添体を収率84%で得た。NMR測定により求めたこの水素添加体の水素添加率は99.9%であった。
[比較例3]
モノマーAおよびモノマーCを使用せず、モノマーB100gおよび分子量調節剤として1−へキセン4.6gを使用したこと以外は比較例1と同様にして重合反応、水素添加反応、水素添加体回収および乾燥を行い、重量平均分子量(Mw)=135,000、分子量分布(Mw/Mn)=3.06、対数粘度(ηinh)=0.78、補外ガラス転移開始温度(Tg)=167.0℃の重合水添体を収率90%で得た。NMR測定により求めたこの水素添加体の水素添加率は99.8%であった。
得られた重合水添体を実施例1と同様に製膜して140μmのフィルムを得た。得られたフィルム中の残留溶媒量は530ppmであった。このフィルムの引き裂き強度は21gfであった。
結果をまとめて表1に示した。
合体水素添加物から得られた実施例の延伸フィルムは、優れた透明性を持ち、短波長ほど位相差が小さくなる「逆波長分散性」を示し、さらにモノマーCを含有することで補外ガラス転移開始温度が低くなることに起因して、比較例2と同等の応力で同等の光学特性を発現する延伸温度(加工温度)を低くできることがわかる。このように、本発明の環状オレフィン系共重合体が、加工性および強度に優れ、且つそれから得られる延伸フィルムが「逆波長分散性」を有することが示されている。このような逆波長分散性、強度、および加工性は用いる単量体の種類およびその組成比を変えることにより調節することができる。
Claims (12)
- ノルボルネン骨格と芳香環構造とを有する環状オレフィン系モノマー(A)と、
ノルボルネン骨格を有し芳香環構造を有さない環状オレフィン系モノマー(B)と
を共重合するに際し、
モノマー総量の5〜90重量%のモノマーと重合触媒とを用いて重合を開始し、
重合反応中に残余のモノマーを反応系に供給して重合することを特徴とする環状オレフィン系共重合体の製造方法。 - 環状オレフィン系モノマー(A)が、下記式(1−1)、(1−2)、(1−3)および(1−4)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであり、
環状オレフィン系モノマー(B)が、下記式(2−1)および(2−2)で表される化合物よりなる群から選ばれる少なくとも1種のモノマーであることを特徴とする請求項1に記載の環状オレフィン系共重合体の製造方法;
- 重合終了までに使用する、環状オレフィン系モノマー(A)と、環状オレフィン系モノマー(B)との合計量100モル%中、
環状オレフィン系モノマー(A)の使用割合が5〜50モル%であることを特徴とする請求項1または2に記載の環状オレフィン系共重合体の製造方法。 - 環状オレフィン系モノマー(B)が、前記式(2−1)で表され、式(2−1)中のR1およびR2が水素原子であり、R3が水素原子またはメチル基であり、R4が水素原子またはアルコキシカルボニル基であることを特徴とする請求項1〜3のいずれかに記載の環状オレフィン系共重合体の製造方法。
- 請求項1〜5のいずれかに記載の製造方法により得られたことを特徴とする環状オレフィン系共重合体。
- ノルボルネン骨格と芳香環構造とを有する環状オレフィン系化合物から誘導される構造単位(a)と、ノルボルネン骨格を有し芳香環構造を有さない環状オレフィン系化合物から誘導される構造単位(b)とを有し、
次式で示される芳香環構造の偏在度が1以下であることを特徴とする環状オレフィン系共重合体。
芳香環構造の偏在度=|{(R100000)/(U100000)−(R1000)/(U1000)}|
(式中、R100000およびR1000は、それぞれ、屈折率についての微分分子量分布図(1)から読み取られた分子量100000の強度および分子量1000の強度を示し、U100000およびU1000は、それぞれ、254nmの紫外線吸収強度についての微分分子量分布図(2)から読み取られた分子量100000の強度および分子量1000の強度を示す。) - 請求項6または7に記載の環状オレフィン系共重合体を成形して得られることを特徴とする光学部品。
- 請求項6または7に記載の環状オレフィン系共重合体を、溶液流延法または溶融押出法により製膜して得られることを特徴とする光学フィルム。
- 請求項9に記載の光学フィルムを延伸して得られることを特徴とする延伸フィルム。
- 請求項10に記載の延伸フィルムを含むことを特徴とする偏光板。
- 請求項11に記載の偏光板を含むことを特徴とする液晶表示装置。
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