JP4356532B2 - ノルボルネン系開環重合体の製造方法、およびその成形品の位相差の波長分散性の調整方法 - Google Patents
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Description
Δn=nx−ny
で定義される正〜負の値であり、その絶対値は入射光の波長によって異なる。
そして、正(または、負)の複屈折性とは、前記Δnが正(または、負)である場合の上記成形品の性質を意味する。
Re=Δn×d
(式中、dは、透過光の光路長であり、通常、上記延伸フィルムの厚さである)
で定義される正〜負の値であり、その絶対値は入射光の波長によって異なる。
そして、光学機器の機能の高度化や用途の広範化に伴い、従来の環状オレフィン系樹脂では種々の要求への対応が困難となっている。
即ち、本発明は、下記一般式(1):
[式中、aは0〜2の整数であり、Xは式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基であり、R1〜R6は、独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基であり、但し、R3〜R6の少なくとも1つは下記一般式(1−1)で表される芳香環を有する基および一般式(1−2)で表される芳香環を有する基からなる群から選ばれる基である。]
で表される構造単位(1)を有し、複数存在するXは同一または異なるノルボルネン系開環重合体を提供する。
で表される基から選ばれる2価芳香族炭化水素基であり、R7〜R15は、独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基であり、bおよびcは独立に0〜3の整数であり、但し、b=c=0の場合、R8とR11、および/またはR15とR11は相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。]
更に、本発明の開環重合体を他種の透明樹脂と組み合わせ、その組成比を設定することにより、所望の位相差の波長依存性を有する組成物を得ることが可能である。
[ノルボルネン系開環重合体]
本発明のノルボルネン系開環重合体は、前記構造単位(1)を必須の構造単位として含むが、必要に応じて、下記一般式(2):
で表される構造単位(2)を有していてもよいし、前記構造単位(2)以外の構造単位を更に有していてもよい。
炭素原子数1〜30の炭化水素基としては、例えば、メチル基、エチル基、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等のアルケニル基;エチリデン基、プロピリデン基等のアルキリデン基;フェニル基、ナフチル基、ビフェニリル基、アントラセニル基等のアリール基;式:−(CH2)m−R'(式中、R'は前記シクロアルキル基または前記アリール基であり、mは1〜10の整数である)で表される基、例えば、ベンジル基、2−フェニルエチル基等のアラルキル基等;等が挙げられる。これらの基中の炭素原子に結合した水素原子は、例えば、フッ素、塩素、臭素等のハロゲン原子;フェニルスルホニル基;シアノ基等で置換されていてもよい。(但し、上記R25〜R34は、前記一般式(1−1)で表される芳香環を有する基および一般式(1−2)で表される芳香環を有する基以外の基である。)
非置換の炭化水素基としては、代表的には炭素原子数1〜30の炭化水素基が例示され、例えば、メチル基、エチル基礎、プロピル基等のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基、プロペニル基等のアルケニル基;フェニル基、トリル基、キシリル基等のアリール基などが挙げられる。置換炭化水素基として、これら炭化水素基が、例えば、アルコキシメチル基、アルコキシエチル基、アリロキシメチル基、アリロキシエチル基、アルコキシカルボニルメチル基、アルコキシカルボニルエチル基、アルコキシカルボニルオキシメチル基、オキシカルボニルアルキルエチル基、ハロゲン化メチル基、ハロゲン化エチル基、ヒドロキシエチル基等の原子又は基で置換されたものが挙げられ、具体例としては、メトキシメチル基、メトキシエチル基、エトキシメチル基、フェノキシメチル基、フェノキシエチル基、メトキシカルボニルエチル基、アセトキシメチル基、アセトキシエチル基、クロロメチル基、クロロエチル基である。
前記連結基は、酸素原子、窒素原子、硫黄原子およびケイ素原子のうち、1種を含むものであってもよいし、2種以上を含むものであってもよい。この連結基としては、例えば、カルボニル基(−CO−);カルボニルオキシ基(−COO−)、オキシカルボニル基(−OCO−);スルホニル基(−SO2−);スルホニルオキシ基(−SO2O−);オキシスルホニル基(−OSO2−);エーテル結合(−O−);チオエーテル結合(−S−);イミノ基(−NH−)、アミド結合(−NHCO−,−CONH−);式:−Si(R)2−、式:−Si(OR)2O−、式:−OSi(R)2−、または式:−OSi(OR)2−(前記各式中、Rは炭素原子数1〜10の炭化水素基であり、好ましくは、メチル基、エチル基等のアルキル基である)で表されるケイ素原子を含む結合;あるいは、これらの2種以上が組み合わさって連なったものが挙げられる。
本発明のノルボルネン系開環重合体は、下記一般式(3):
[式中、e、f、g、hおよびR25〜R34は、前記一般式(2)に関して定義のとおりである。]
で表されるノルボルネン系単量体(以下、「単量体(2)」という。)とともに、更に必要に応じて前記単量体(2)と他の共重合可能な単量体とともに、開環重合もしくは共重合し、次いで必要に応じて上記構造単位(1)中の、或いは、場合により、上記構造単位(1)および/または上記構造単位(2)中の式:−CH=CH−で表されるオレフィン性不飽和結合を水素添加することにより得ることができる。
上記単量体(1)としては、その製造が容易であることから、上記一般式(3)中のR3〜R6のうちのいずれか一つだけが、上記一般式(1−1)で表される芳香環を有する基、または上記一般式(1−2)で表される芳香環を有する基であるものが好ましい。
上記一般式(4)で表される単量体(2)としては、先ず、工業的に比較的容易に入手可能なノルボルネン誘導体であり、R31〜R34 がアルキル基、アルコキシカルボニル基を有することが望ましく、上記一般式(4)で表され、かつ上記一般式(4)中のR31〜R34の少なくとも一つが、下記構造式:
・ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・トリシクロ[5.2.1.02,6]−8−デセン
・トリシクロ[5.2.1.02,6]デカ−3,8−ジエン
・テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・2,10−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・2,9−ジメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・ペンタシクロ[6.5.1.13,6.02,7.09,13]−4−ペンタデセン
・ペンタシクロ[7.4.0.12,5.18,11.07,12]−3−ペンタデセン
・トリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン
・7−メチルトリシクロ[4.4.0.12,5]−3−ウンデセン
・5−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・1−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・7−メチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−エチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−メチル−5−メトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−メチル−5−エトキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−メチル−5−フェノキシカルボニルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−(1−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−(2−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−(4−フェニルフェノキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−メチル−8−メトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−メチル−8−エトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−メチル−8−n−プロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−メチル−8−イソプロポキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−メチル−8−n−ブトキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−メチル−8−フェノキシカルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−メチル−8−(1−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−メチル−8−(2−ナフトキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−メチル−8−(4−フェニルフェノキシ)カルボニルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・ヘプタシクロ[8.7.0.13,6.110,17.112,15.02,7.011,16]−4−エイコセン
・ヘプタシクロ[8.8.0.14,7.111,18.113,16.03,8.012,17]−5−ヘンエイコセン
・5−エチリデンビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・8−エチリデンテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・5−n−ブチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−n−ヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−シクロヘキシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−(3−シクロヘキセニル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−n−オクチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−n−デシルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−イソプロピルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−トリメトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−トリエトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−トリn-プロポキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−トリn-ブトキシシリルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−クロロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−ヒドロキシメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−フルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−フルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−ペンタフルオロエチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,5−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,6−ジフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,5−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5−メチル−5−トリフルオロメチルビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,5,6−トリフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,5,6,6−テトラフルオロビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,5,6,6−テトラキス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・5,6−ジフルオロ−5,6−ビス(トリフルオロメチル)ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン
・8−フルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−トリフルオロメチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8−ペンタフルオロエチルテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8,8−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8,9−ジフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8,8−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8,8,9−トリフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8,8,9,9−テトラフルオロテトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8,8,9,9−テトラキス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
・8,9−ジフルオロ−8,9−ビス(トリフルオロメチル)テトラシクロ[4.4.0.12,5.17,10]−3−ドデセン
本発明において、上記のとおり、ノルボルネン系開環重合体(I)は、上記単量体(1)の1種の単独重合体、上記単量体(1)の2種以上の共重合体、上記単量体(1)と上記単量体(2)等との共重合体、または前記単独重合体もしくは共重合体の水素添加物の何れであっても差し支えない。上記単量体(1)の2種以上の組み合わせを開環重合させる場合には、その量比は特に制限されない。
以下、本発明のノルボルネン系開環重合体(I)の製造方法における重合条件を更に説明する。
・開環重合触媒
本発明に用いられる開環重合用の触媒としては、例えば、
(I)"Olefin Metathesis and Metathesis Polymerization"(K.J.IVIN, J.C.MOL, Academic Press 1997)に記載されている触媒が好ましく用いられる。このような触媒としては、例えば、(a)W、Mo、Re、VおよびTiの化合物から選ばれた少なくとも1種と、(b)アルカリ金属元素(例えば、Li、Na、K)、アルカリ土類金属元素(例えば、Mg、Ca)、第12族元素(例えば、Zn、Cd、Hg)、第13族元素(例えば、B、Al)、第14族元素(例えば、Si、Sn、Pb)等の化合物であって、少なくとも1つの当該元素−炭素結合あるいは当該元素−水素結合を有するものから選ばれた少なくとも1種との組み合わせからなるメタセシス触媒が挙げられる。この触媒は、触媒活性を高めるために、後述の(c)添加剤が添加されたものであってもよい。
(II)周期表第4族〜第8族の遷移金属−カルベン錯体やメタラシクロブタン錯体等からなるメタセシス触媒を用いることができる。上記触媒(II)の具体例としては、W(=N−2,6−C6H3 iPr2)(=CHtBu)(OtBu)2、Mo(=N−2,6−C6H3 iPr2)(=CHtBu)(OtBu)2、Ru(=CHCH=CPh2)(PPh3)2Cl2、Ru(=CHPh)(PC6H11)2Cl2等が挙げられる。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。
開環重合体の分子量の調整は、重合温度、触媒の種類、溶媒の種類等を調整することによっても行うことができるが、本発明においては、分子量調節剤を反応系に共存させることにより調整することが好ましい。分子量調節剤としては、例えば、エチレン、プロピレン、1−ブテン、1−ペンテン、1−ヘキセン、1−ヘプテン、1−オクテン、1−ノネン、1−デセン等のα−オレフィン類、およびスチレン、4−ビニルビフェニル、1−ビニルナフタレン、2−ビニルナフタレン等のビニル芳香族化合物が好ましく、これらのうち、1−ブテン、1−ヘキセンが特に好ましい。これらの分子量調節剤は、1種単独でも2種以上を組み合わせても使用することができる。分子量調節剤の使用量は、全単量体1モル当たり、通常、0.001〜0.6モル、好ましくは0.02〜0.5モルである。
開環重合反応において用いられる溶媒(即ち、単量体、メタセシス触媒、分子量調節剤等を溶解する溶媒)としては、例えば、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン、ノナン、デカン等のアルカン類;シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン、デカリン、ノルボルナン等のシクロアルカン類;ベンゼン、トルエン、キシレン、エチルベンゼン、クメン等の芳香族炭化水素;クロロブタン、ブロモヘキサン、塩化メチレン、ジクロロエタン、ヘキサメチレンジブロミド、クロロベンゼン、クロロホルム、テトラクロロエチレン等のハロゲン化アルカン;ハロゲン化アリール等の化合物;酢酸エチル、酢酸n−ブチル、酢酸iso−ブチル、プロピオン酸メチル等の飽和カルボン酸エステル類;ジメトキシエタン、ジブチルエーテル、テトラヒドロフラン等のエーテル類が挙げられ、これらのうち、芳香族炭化水素が好ましい。これらは1種単独でも2種以上を組み合わせて使用することができる。この開環重合反応用溶媒の使用量は、「溶媒:全単量体」の重量比が、通常、1:1〜10:1となる量であり、好ましくは1:1〜5:1となる量である。
上記開環重合により得られるノルボルネン系開環重合体(I)は、構造単位(1)中のXと、場合により有する構造単位(2)中のYとが、式:−CH=CH−で表されるオレフィン性不飽和基の構造を有するものである。この開環重合体は、そのまま使用することができる。
本発明のノルボルネン系開環重合体は、上記製法(1)以外に、下記製法(2)によっても調製することができる。
(I)下記一般式(5)
[式中、a、X、R1およびR2は、上記一般式(1)に関して定義のとおりであり、R36〜R39は、独立に、水素原子;ハロゲン原子;上記一般式(1−1)で表される芳香環を有する基および一般式(1−2)で表される芳香環を有する基以外の、酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基であり、但し、R36〜R39の少なくとも1つは下記構造式:
で表される基から選ばれる1価芳香族炭化水素基である。]
で表される構造単位(3)を有し、更に必要に応じて、上記一般式(2)で表される構造単位(2)(但し、前記構造単位(3)と同一である場合を除く)を有していてもよいし、前記構造単位(2)以外の構造単位を更に有していてもよく、複数存在するXは同一または異なるノルボルネン系開環重合体を調製する工程、並びに、
(II)該ノルボルネン系開環重合体と、下記一般式(6):
[式中、R16〜R24およびdは、上記一般式(1−2)に関して定義のとおりであり、Zはハロゲン原子である。]
で表される芳香族スルホニルハライド化合物よりなる群から選ばれる芳香族スルホニルハライド化合物とを反応させて、上記構造単位(5)中に含まれる上記1価芳香族炭化水素基中の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一つを、下記一般式(8):
上記一般式(5)で表される構造単位(3)を有し、複数存在するXは同一または異なるノルボルネン系開環重合体は、下記一般式(10):
[式中、a、X、R1、R2およびR35〜R38は、上記一般式(5)に関して定義のとおりである。]
で表されるノルボルネン系単量体(以下、「単量体(4)」という)を、また、必要に応じて上記製法(1)に記載の単量体(2)(但し、単量体(4)と同一である場合を除く)とともに、更に必要に応じて、上記製法(1)に記載の単量体(2)以外の他の共重合可能な単量体とともに、開環重合もしくは共重合し、次いで必要に応じて上記構造単位(5)中の、或いは、場合により、上記構造単位(5)および/または上記構造単位(2)中の式:−CH=CH−で表されるオレフィン性不飽和結合を水素添加することにより得ることができる。
アリールスルホニル化剤としてアリールスルホニルクロライド、アリールスルホニルブロマイド、アリールスルホニルフロライド、アリールスルホン酸、アリールスルホン酸トリフロロメタンスルホン酸無水物(ArSO2OSO2CF3)等が用いられる。このときに使用するアリールスルホニル化剤により触媒の有無、反応条件が異なる。
スルホニル化で用いる溶媒として、ベンゼン、トルエン、クロロベンゼン、ニトロベンゼン、ニトロメタン、二硫化炭素などを用いることが出来るが、反応により溶媒を使用しない場合もある。
スルホニル化反応化試薬として一般的なフリーデル・クラフツ反応試薬を用いることが出来る。例えば、塩化アルミニウム、臭化アルミニウム、四塩化チタン、四塩化スズ、三塩化鉄、三臭化鉄、三塩化ホウ素、三塩化ガドリニウム、五塩化アンチモン、四塩化ジルコニウム、三塩化アンチモン、三弗化ホウ素、二塩化亜鉛、二塩化マグネシウムなどが挙げられる。また、アリールスルホン酸をスルホニル化試薬として用いる場合は、五酸化二リン‐ポリリン酸等の組み合わせが良好である。アリールスルホン酸トリフロロメタンスルホン酸無水物(ArSO2OSO2CF3)を用いた場合では、スルホニル化反応化試薬は、必要なく,フェニルスルホニル化が可能である。
反応温度については、−78℃から80℃の範囲内であるが、使用する反応試薬によりこれらの範囲以外もありうる。
本発明の上記製法(1)または製法(2)で得られるノルボルネン系開環重合体(またはその水素添加物、以下、同じ)のウッベローデ型粘度計、クロロホルム中で測定される固有粘度[η]は、通常、0.2〜5.0、好ましくは0.3〜4.0、更に好ましくは0.35〜2.0である。また、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC、テトラヒドロフラン溶媒、ポリスチレン換算)による分子量の測定では、前記開環重合体の数平均分子量(Mn)は、通常、1,000〜500,000、好ましくは2,000〜300,000、更に好ましくは5,000〜250,000であり、重量平均分子量(Mw)が、通常、5,000〜2,000,000、好ましくは10,000〜1,000,000、更に好ましくは20,000〜500,000である。
なお、実施例および比較例中に記載の各種測定、評価等は、以下のようにして行った。
1.ガラス転移温度(Tg)
示差走査熱量計(セイコーインスツルメンツ社製、商品名:DSC6200)を用いて、窒素気流下,昇温速度:20℃/分の条件下で測定した。
ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC、東ソー株式会社製、商品名:HLC−8020/カラム4本:東ソー株式会社製、商品名:TSK gel G7000HxL, TSK gel GMHxL, TSK gel GMHxL, TSK gel G2000xL)を用い、溶媒としてテトラヒドロフラン(THF)を用いて、ポリスチレン換算の重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)を測定した。なお、前記Mnは数平均分子量である。
超伝導核磁気共鳴吸収装置(NMR、Bruker社製、商品名:AVANCE500)を用い、重水素化クロロホルム中で1H−NMRを測定した。更に、赤外分光光度計(IR、日本分光社製、商品名:FT/IR−420)を用いて赤外線吸収(IR)スペクトルを測定した。得られたデータから、水素添加率の算出および分子構造の同定を行った。
重合体を塩化メチレンに溶解させ(濃度:25重量%)、平坦なガラス板上にキャストして乾燥膜厚100μmのフィルムを得て、更に、60℃で真空下に12時間放置して乾燥させた。
得られたフィルムを、恒温槽付き引張試験機(インストロン社製、MODEL5567型)を使用して、ガラス転移温度+10℃の温度に5分間保持した後、同温度条件下で一軸延伸を行った。延伸倍率は2.0倍とした。
測定波長:400nm,550nm,800nmにおける位相差の値(それぞれ、順に、Re400,Re550,Re800とする)を求め、Re400/Re550の比の値、およびRe800/Re550の比の値を求めた。
5−フェニル−ビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン 80g(0.471モル)、分子量調節剤として1−へキセン 8.85g、および溶媒としてトルエン 160gを、窒素置換した反応容器に仕込み、80℃に加熱した。これに重合触媒として、トリエチルアルミニウムのトルエン溶液(濃度:0.6モル/L)0.63mL、およびメタノール変性六塩化タングステンのトルエン溶液(濃度:0.025モル/L)1.88mLを加え、80℃で4時間反応させることにより開環重合体を含む重合体溶液を得た。
上記重合体P1 5.0g(フェニル基含量:0.029モル)をニトロベンゼン20mLに溶解した後、フェニルスルホニルクロライド 7.5g(0.043モル)を加えて攪拌した。この溶液に塩化アルミニウム 3.8g(0.029モル)を加え、50℃で3時間反応を行った。反応混合物をイソプロパノール中で沈殿させた後、塩化メチレンに再溶解し、セライトろ過した。次いで、メタノール中で再沈殿させることにより、薄黄色固体状の重合体 2.0gを得た。この重合体を「重合体P2」とする。
得られた重合体P2から、上記のとおりにして、位相差測定用試料を調製し、Re400/Re550の比の値、およびRe800/Re550の比の値を求めた。他の特性とともに測定結果を表1に示す。
上記重合体P1 5.0g(フェニル基含量:0.029モル)をクロロベンゼン20mLに溶解した後、フェニルスルホニルクロライド 5.1g(0.029モル)を加えて攪拌した。この溶液に塩化アルミニウム 1.9g(0.015モル)を加え、50℃で3時間反応を行った。反応混合物をイソプロパノール中で沈殿させた後、塩化メチレンに再溶解し、セライトろ過した。次いで、メタノール中で再沈殿させることにより、薄黄色固体状の重合体 2.5gを得た。この重合体を「重合体P3」とする。
得られた重合体P3から、上記のとおりにして、位相差測定用試料を調製し、Re400/Re550の比の値、およびRe800/Re550の比の値を求めた。他の特性とともに測定結果を表1に示す。
表1の波長分散性の測定結果から明らかなように、本発明の重合体よりなる延伸フィルムは、入射光の波長が短波長から長波長へとなるにつれて、位相差の絶対値が大きくなるという正の波長依存性を示す。また、その程度は、フェニルスルホニル基の含有量が多いほど大きく、位相差の波長分散性が大きいことが分かる。従って、フェニルスルホニル基の含有量を設定することによって、位相差の波長分散性を調整することができることが明らかである。
Claims (12)
- 下記一般式(1):
[式中、aは0〜2の整数であり、Xは式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基であり、R1〜R6は、独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基であり、但し、R3〜R6の少なくとも1つは下記一般式(1−1)で表される芳香環を有する基および一般式(1−2)で表される芳香環を有する基からなる群から選ばれる基である。]
で表される構造単位(1)を有し、複数存在するXは同一または異なるノルボルネン系開環重合体:
[式中、Arは、独立に、下記構造式:
で表される基から選ばれる2価芳香族炭化水素基であり、R7〜R15は、独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基であり、bおよびcは独立に0〜3の整数であり、但し、b=c=0の場合、R8とR11、および/またはR15とR11は相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。]
[式中、Arは上記一般式(1−1)に関して定義のとおりであり、R16〜R24は、独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基であり、dは0〜3の整数である。]
の製造方法において、
(I)下記一般式(5)
[式中、a、X、R 1 およびR 2 は、上記一般式(1)に関して定義のとおりであり、R 36 〜R 39 は、独立に、水素原子;ハロゲン原子;上記一般式(1−1)で表される芳香環を有する基および一般式(1−2)で表される芳香環を有する基以外の、酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基であり、但し、R 36 〜R 39 の少なくとも1つは下記構造式:
で表される基から選ばれる1価芳香族炭化水素基である。]
で表される構造単位(3)を有し、複数存在するXは同一または異なるノルボルネン系開環重合体を調製する工程、及び
(II)工程(I)で得た該ノルボルネン系開環重合体を、下記一般式(6):
[式中、R 7 〜R 15 、bおよびcは上記一般式(1−1)に関して定義のとおりであり、Zはハロゲン原子である。]
で表される芳香族スルホニルハライド化合物、および下記一般式(7):
[式中、R 16 〜R 24 およびdは、上記一般式(1−2)に関して定義のとおりであり、Zはハロゲン原子である。]
で表される芳香族スルホニルハライド化合物よりなる群から選ばれる芳香族スルホニルハライド化合物と反応させて、上記構造単位(5)中のR 36 〜R 39 の少なくとも一つに含まれる上記1価芳香族炭化水素基中の炭素原子に結合した水素原子の少なくとも一つを、下記一般式(8):
[式中、R 7 〜R 15 、bおよびcは、上記のとおりである。]
で表される芳香族スルホニル基、および下記一般式(9):
[式中、R 16 〜R 24 およびdは、上記のとおりである。]
で表される芳香族スルホニル基よりなる群から選ばれる芳香族スルホニル基で置換する工程を含む、上記の方法。 - 上記工程(I)のノルボルネン系開環重合体が、さらに下記一般式(2):
[式中、eおよびfは独立に0または1であり、但し、これらの少なくとも一方は1であり、gおよびhは独立に0〜2の整数であり、Yは式:−CH=CH−で表される基または式:−CH2CH2−で表される基であり、R25〜R34は、独立に、水素原子;ハロゲン原子;前記一般式(1−1)で表される芳香環を有する基および一般式(1−2)で表される芳香環を有する基以外の、酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基であり、R31とR32、および/またはR33とR34は一体化して2価炭化水素基を形成してもよく、R31またはR32と、R33またはR34とは相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。]
で表される構造単位(2)を有し、複数存在するYは同一または異なる、請求項1または2に記載の方法。 - 複数存在する前記Xの40モル%以上が式:−CH2CH2−で表される基である請求項1〜4のいずれか一項に記載の方法。
- 複数存在する前記Xおよび前記Yの合計の40モル%以上が式:−CH 2 CH 2 −で表される基である請求項3〜6のいずれか一項に記載の方法。
- 請求項3〜7のいずれか一項に記載のノルボルネン系開環重合体の製造方法であって、該重合体を構成する全構造単位中に占める前記構造単位(1)の割合が10モル%以上である、請求項3〜7のいずれか一項に記載の方法。
- 上記工程(II)で使用する芳香族スルホニルハライド化合物が、フェニルスルホニルハライドである、請求項1〜8のいずれか一項に記載の方法。
- 下記一般式(1):
[式中、aは0〜2の整数であり、Xは式:−CH=CH−で表される基または式:−CH 2 CH 2 −で表される基であり、R 1 〜R 6 は、独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基であり、但し、R 3 〜R 6 の少なくとも1つは下記一般式(1−1)で表される芳香環を有する基および一般式(1−2)で表される芳香環を有する基からなる群から選ばれる基である。]
で表される構造単位(1)を有し、複数存在するXは同一または異なるノルボルネン系開環重合体:
[式中、Arは、独立に、下記構造式:
で表される基から選ばれる2価芳香族炭化水素基であり、R 7 〜R 15 は、独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基であり、bおよびcは独立に0〜3の整数であり、但し、b=c=0の場合、R 8 とR 11 、および/またはR 15 とR 11 は相互に結合して炭素環または複素環(これらの炭素環または複素環は単環構造でもよいし、他の環が縮合して多環構造を形成してもよい。)を形成してもよい。]
[式中、Arは上記一般式(1−1)に関して定義のとおりであり、R 16 〜R 24 は、独立に、水素原子;ハロゲン原子;酸素原子、硫黄原子、窒素原子もしくはケイ素原子を含む連結基を有してもよい、置換もしくは非置換の炭素原子数1〜30の炭化水素基;または極性基であり、dは0〜3の整数である。]
において、該ノルボルネン系開環重合体中の上記一般式(1−1)及び/又は上記一般式(1−2)中の芳香族スルホニル基の含有量を設定することにより、該ノルボルネン系開環重合体の成形品の位相差の波長分散性を調整することを特徴とする方法。 - 上記一般式(1−1)及び/又は上記一般式(1−2)中の芳香族スルホニル基がフェニルスルホニル基である、請求項10に記載の方法。
- 上記芳香族スルホニル基の含有量を、上記ノルボルネン系開環重合体を構成する全構造単位の10モル%以上で設定する、請求項10又は11に記載の方法。
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