JP4976734B2 - セルロース体組成物、フィルム、偏光板および液晶表示装置 - Google Patents
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Description
(1)少なくとも一種類の下記一般式(I)で表される環状オレフィンモノマーを含むモノマー組成物から成る重合体と、セルロース体とを含有する、セルロース体組成物。
(2)前記極性基がアシルオキシ基である(1)に記載のセルロース体組成物。
(3)一般式(I)中のR1、R2、R3およびR4が、それぞれ独立に極性基または水素原子である(1)または(2)に記載のセルロース体組成物。
(4)一般式(I)中のXが、−CH2−である(1)〜(3)のいずれか1項に記載のセルロース体組成物。
(5)前記モノマー組成物から成る重合体がビニル重合体である、(1)〜(4)のいずれか1項に記載のセルロース体組成物。
(6)前記セルロース体と、前記モノマー組成物から成る重合体の添加比率(質量比)が、95/5〜60/40である、(1)〜(5)のいずれか1項に記載のセルロース体組成物。
(7)(1)〜(6)のいずれか1項に記載のセルロース体組成物を用いてなるフィルム。
(8)(7)に記載のフィルムであって、該フィルムの厚みを80μmに換算した場合のRe590が0≦Re590≦100nm(Re590は、波長590nmにおける面内のレターデーション(Re)を表す。)を満たす、フィルム。
(9)(7)または(8)に記載のフィルムを用いた偏光板。
(10)(7)または(8)に記載のフィルムを用いた液晶表示装置。
(11)少なくとも一種類の下記一般式(I)で表される環状オレフィンモノマーを含むモノマー組成物から成る重合体を含むセルロース体フィルム用改質剤。
本発明のセルロース体組成物は、セルロース体と少なくとも一種類の一般式(I)で表される環状オレフィンモノマーを含むモノマー組成物(以下、単に「モノマー組成物」ということがある)から成る重合体を含む。また、本発明の別の実施形態は、本発明のセルロース体組成物からなるフィルムである。なお、本発明のセルロース体組成物は、液体(例えば、セルロース体を含む溶液)であっても、固体(例えば、セルロース体を主原料とするフィルム)等様々な形態とすることができる。
本発明で用いるモノマー組成物は、少なくとも一種類の一般式(I)で表される環状オレフィンモノマーを含む。一般式(I)で表される環状オレフィンモノマーは、セルロース体との相溶性を高めるため、極性基を少なくとも一つ含有する。すなわち、一般式(I)のR1、R2、R3およびR4のうち、少なくとも一つは極性基である。この一般式(I)で表される環状オレフィンモノマーを含むモノマー組成物を重合させることにより、本発明で用いる重合体が得られる。本発明で用いる重合体は、下記式に示すように、重合形式により、ビニル重合のタイプA、開環重合(メタセシス)のタイプB1、およびその水素添加のタイプB2、カチオン重合のタイプC、オレフィンとの共重合タイプD、一酸化炭素との共重合タイプEなどに主に分類されるが、これに限定されるものではない。また、セルロース体と相溶させるには、重合体の極性基(R1、R2、R3およびR4のいずれ)がセルロース体と相互作用しやすいほうが好ましく、すなわち、本発明で用いる重合体の構造が剛直であることが好ましい。従って、タイプAまたはタイプB1が好ましく、タイプAがより好ましい。
また、R1、R2、R3、R4、R1’、R2’'、R3’およびR4’が、極性基以外である場合、当該置換基としては、特に限定されるものではないが、水素原子を好適に挙げることができ、いずれもが水素原子であることが好ましい。R1、R2、R3、R4、R1’、R2’'、R3’およびR4’のうち極性基以外の置換基を水素原子とすることにより、重合活性を高めることができるという利点がある。
本発明で用いる重合体は、数平均分子量が500〜100万であることが好ましく、1000〜70万であることがより好ましく、1000〜60万であることが特に好ましい。また、本発明で用いる重合体は、重量平均分子量が5万〜200万であることが好ましく、7万〜100万であることがより好ましい。さらに、分子量分布は、1〜10であることが好ましく、1〜5であることがより好ましく、2〜4であることが特に好ましい。
また、本発明で用いる重合体中に含まれる極性基の割合は特に制限されるものではなく、導入する極性基の種類等の条件により、適宜、選択することができるが、重合単位(モノマー)あたり、好ましくは0.5〜3個、より好ましくは1〜2個である。
本発明の重合体の好ましい例を以下に示すが、本発明はこれらの具体例に限定されるものではない。
本発明のタイプAもしくはA’の重合体は以下の製造方法で得ることができる。すなわち、一般式(I)で表される環状オレフィンモノマーまたは、一般式(I)で表される環状オレフィンモノマーおよび一般式(I’)で表されるモノマーを、[Pd(CH3CN)4][BF4]2、ジ−μ−クロロ−ビス−(6−メトキシビシクロ[2.2.1]ヘプト−2−エン−エンド−5σ,2π)−Pd(以下、「I」と略す)とメチルアルモキサン(MAO)、IとAgBF4、IとAgSbF6、[(η3−アリル)PdCl]2とAgSbF6、[(η3−アリル)PdCl]2とAgBF4、[(η3−クロチル)Pd(シクロオクタジエン)][PF6]、パラジウムビスアセチルアセトナートとトリシクロヘキシルホスフィンとジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、[(η3−アリル)PdCl]2とトリシクロヘキシルホスフィンとトリブチルアリルスズもしくはアリルマグネシウムクロライドジメチルアニリニウムテトラキスペンタフルオロフェニルボレート、[(η3−クロチル)Ni(シクロオクタジエン)][B((CF3)2C6H4)4]、[NiBr(NPMe3)]4とMAO、Ni(オクトエート)2とMAO、Ni(オクトエート)2とB(C6F5)3とAlEt3、Ni(オクトエート)2と[ph3C][B(C6F5)4]とAli−Bu3、Co(ネオデカノエート)とMAO等の周期律表8族のNi、Pd.Co等のカチオン錯体またはカチオン錯体を形成する触媒を用いて、シクロヘキサン、シクロペンタン、メチルシクロペンタン等の脂環式炭化水素溶媒、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、オクタン等の脂肪族炭化水素溶媒、トルエン、ベンゼン、キシレン等の芳香族炭化水素溶媒ジクロロメタン、1,2−ジクロロエチレン、クロロベンゼン等のハロゲン化炭化水素溶媒、酢酸エチル、酢酸ブチル、γ−ブチロラクトン、プロピレングリコールジメチルエーテル、ニトロメタン等の極性溶媒から選ばれた溶媒中で20〜150℃の重合することにより得ることができる。また、マクロモレキュールス(Macromolecules)、1996年、29巻、2755ページ、マクロモレキュールス(Macromolecules)、2002年、35巻、8969ページ、国際公開WO2004/7564号パンフレットに記載の方法も好適に用いられる。
また、セルロース体と、本発明に係る重合体の添加比率(質量)は、特に制限されるものではないが、好ましくは95/5〜60/40、より好ましくは90/10〜80/20である。
本発明において、「セルロース体」とは、例えば、セルロースを基本構造とする化合物であって、セルロースを原料として生物的あるいは化学的に官能基を導入して得られるセルロース骨格を有する化合物を含むものをいう。セルロース体として好ましいものはセルロース誘導体であり、より好ましくはセルロースアシレート(セルローストリアシレート、セルロースアシレートプロピオネート等が挙げられる。)である。また、本発明においては異なる2種類以上のセルロース体を混合して用いてもよい。
本発明に用いられるセルロースアシレート原料のセルロースとしては、綿花リンタや木材パルプ(広葉樹パルプ、針葉樹パルプ)などがあげられ、何れの原料セルロースから得られるセルロースアシレートでも使用でき、場合により混合して使用してもよい。これらの原料セルロースについての詳細な記載は、例えば「プラスチック材料講座(17)繊維素系樹脂」(丸澤、宇田著、日刊工業新聞社、1970年発行)や発明協会公開技報2001−1745(7頁〜8頁)に記載のセルロースを用いることができる。もちろん、本発明のセルロースアシレートフィルムに対してはこれらに限定されるものではない。
前記の特定のセルロースアシレートは、セルロースの水酸基をアセチル基および炭素数が3以上のアシル基で置換して得られたセルロースの混合脂肪酸エステルであって、セルロースの水酸基への置換度が下記数式(1)および数式(2)を満足するセルロースアシレートであることが好ましい。
数式(1):2.0≦A+B≦3.0
数式(2):0<B
上記式中Aは、セルロースの水酸基に置換されているアセチル基の置換度を表し、Bはセルロースの水酸基に置換されている炭素数3以上のアシル基の置換度を表す。なお、アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)を意味する。
本発明におけるセルロースアシレートの重合度は、粘度平均重合度で180〜700であることが好ましく、セルロースアセテートにおいては、180〜550がより好ましく、180〜400がさらに好ましく、180〜350が特に好ましい。重合度を700以下とすることにより、セルロースアシレートのドープ溶液の粘度が高くなり過ぎず、流延によるフィルム製造が容易になる傾向にある。また、重合度を180以上とすることにより、作製したフィルムの強度がより向上する傾向にあり好ましい。また、本発明で好ましく用いられるセルロースアシレートの分子量分布はMw/Mn(Mwは質量平均分子量、Mnは数平均分子量)が小さく、分子量分布が狭いことが好ましい。具体的なMw/Mnの値としては、1.0〜3.0であることが好ましく、1.0〜2.0であることがより好ましく、1.0〜1.6であることがさらに好ましい。
また、本発明におけるセルロースアシレートの原料綿や合成方法としては、例えば、発明協会公開技報(公技番号2001−1745、7頁〜12頁、2001年3月15日発行、発明協会)に記載のものを好ましく採用できる。
本発明のセルロース体組成物を用いてなるフィルム(以下、「セルロース体組成物フィルム」ということがある)は優れた光学透明性、耐熱性、接着性、密着性および耐吸湿性を有するので、液晶表示素子基板、導光板、偏光フィルム、位相差フィルム、液晶バックライト、液晶パネル、OHP用フィルム、透明導電性フィルム等をはじめとして、光ディスク、光ファイバー、レンズ、プリズム等の光学材料、電子部品さらに医療機器、容器等に好適に用いられる。
本発明のセルロース体組成物フィルムの製造方法は、熱溶融製膜の方法と溶液製膜の方法があり、いずれも適応可能であるが、本発明においては面状の優れたフィルムを得ることのできる溶液製膜方法を用いることが好ましい。以下に溶液製膜方法について記述する。
本発明においては、溶解、流延、製膜できる範囲において、その目的が達成できる限りは、使用できる有機溶剤は特に限定されない。例えばジクロロメタン、クロロホルムに代表される塩素系溶剤、炭素数が3〜12の鎖状炭化水素、環状炭化水素、芳香族炭化水素、ケトン、エーテルなどから選ばれる溶剤が好ましい。有機溶剤の好ましい沸点は35℃〜200℃である。乾燥性、粘度等の溶液物性調節のために2種以上の溶剤を混合して用いることができ、さらに、混合溶媒で溶解する限りは、貧溶媒を添加することも可能である。好ましい貧溶媒は適宜選択することができる。良溶媒として塩素系有機溶剤を使用する場合は、アルコール類を好適に使用することができる。アルコール類としては、好ましくは直鎖であっても分枝を有していても環状であってもよく、その中でも飽和脂肪炭化水素であることが好ましい。アルコールの水酸基は、第一級〜第三級のいずれであってもよい。貧溶媒の中でも特に1価のアルコール類は、剥離抵抗低減効果があり、好ましく使用することができる。選択する良溶剤によって特に好ましいアルコール類は変化するが、乾燥負荷を考慮すると、沸点が120℃以下のアルコールが好ましく、炭素数1〜6の1価アルコールがさらに好ましく、炭素数1〜4のアルコールが特に好ましく使用することができる。ドープを作製する上で特に好ましい混合溶剤は、ジクロロメタンを主溶剤とし、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノールあるいはブタノールから選ばれる1種以上のアルコール類を貧溶媒にする組み合わせである。
本発明のセルロース体組成物溶液(ドープ)の調製については、室温攪拌溶解による方法、室温で攪拌してポリマーを膨潤させた後、−20〜−100℃まで冷却し再度20〜100℃に加熱して溶解する冷却溶解法、密閉容器中で主溶剤の沸点以上の温度にして溶解する高温溶解方法、さらには溶剤の臨界点まで高温高圧にして溶解する方法などがある。ドープの粘度は25℃で1〜500Pa・sの範囲であることが好ましい。さらに好ましくは5〜200Pa・sの範囲である。粘度の測定は次のようにして行う。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径 4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)で測る。試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始する。
本発明のセルロース体組成物には、各調製工程において用途に応じた種々の添加剤(例えば、劣化防止剤、紫外線防止剤、レターデーション(光学異方性)調節剤、微粒子、剥離促進剤、赤外吸収剤、など)を加えることができ、それらは固体でもよく油状物でもよい。添加する時期は溶液流延法によるフィルム作成の場合、ドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。溶融法によるフィルムを作製する場合、樹脂ペレット作製時に添加していても良いし、フィルム作製時に混練しても良い。各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、フィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。
フィルム劣化防止の観点から、劣化(酸化)防止剤が好ましく用いられる。例えば、2,6−ジ−tert−ブチル,4−メチルフェノール、4,4'−チオビス−(6−tert−ブチル−3−メチルフェノール)、ペンタエリスリチル−テトラキス[3−(3,5−ジ−tert−ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオネートなどのフェノール系あるいはヒドロキノン系酸化防止剤を添加することができる。さらに、トリス(4−メトキシ−3,5−ジフェニル)ホスファイト、トリス(ノニルフェニル)ホスファイト、ビス(2,4−ジ−tert−ブチルフェニル)ペンタエリスリトールジホスファイトなどのリン系酸化防止剤をすることが好ましい。酸化防止剤の添加量は、セルロース体組成物100質量部に対して、好ましくは0.05〜5.0質量部を添加する。
偏光板または液晶等の劣化防止の観点から、紫外線吸収剤が好ましく用いられる。紫外線吸収剤としては、波長370nm以下の紫外線の吸収能に優れ、かつ良好な液晶表示性の観点から、波長400nm以上の可視光の吸収が少ないものが好ましく用いられる。本発明に好ましく用いられる紫外線吸収剤の具体例としては、例えばヒンダードフェノール系化合物、オキシベンゾフェノン系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、サリチル酸エステル系化合物、ベンゾフェノン系化合物、シアノアクリレート系化合物、ニッケル錯塩系化合物などが挙げられる。これらの紫外線防止剤の添加量は、セルロース体組成物に対して質量割合で1ppm〜1.0%が好ましく、10〜1000ppmがさらに好ましい。
フィルム面のすべり性を改良するためには、微粒子(マット剤)が好ましく用いられる。これを用いることで、フィルム表面に凹凸を付与し、すなわちフィルム表面の粗さを増加させることで(マット化)、フィルム同士のブロッキングを減少させることができる。フィルム中、またはフィルムの少なくとも片方の面上に微粒子が存在することにより、偏光板加工時の偏光子とフィルム間の密着性が著しく向上する。本発明に使用するマット剤は、無機微粒子であれば、平均粒子サイズが、通常0.05μm〜0.5μm、好ましくは0.08μm〜0.3μm、より好ましくは0.1μm〜0.25μmの微粒子である。微粒子は、無機化合物としては二酸化ケイ素、シリコーンおよび二酸化チタンが好ましく、高分子化合物としてはフッ素樹脂、ナイロン、ポリプロピレンおよび塩素化ポリエーテルが好ましいが、さらに好ましくは二酸化ケイ素であり、特に好ましくは有機物により表面処理されている二酸化ケイ素である。
フィルムの剥離抵抗を小さくするため、剥離促進剤が好ましく用いられる。好ましい剥離剤としては燐酸エステル系の界面活性剤、カルボン酸あるいはカルボン酸塩系の界面活性剤、スルホン酸あるいはスルホン酸塩系の界面活性剤、硫酸エステル系の界面活性剤が効果的である。また上記界面活性剤の炭化水素鎖に結合している水素原子の一部をフッ素原子に置換したフッ素系界面活性剤も有効である。剥離剤の添加量はセルロース体組成物に対して0.05〜5質量%が好ましく、0.1〜2質量%がより好ましく、0.1〜0.5質量%がさらに好ましい。
可塑剤としては、リン酸エステルおよび/またはカルボン酸エステルであることが好ましい。リン酸エステル系可塑剤としては、例えばトリフェニルホスフェート(TPP)、トリクレジルホスフェート(TCP)、クレジルジフェニルホスフェート、オクチルジフェニルホスフェート、ビフェニルジフェニルホスフェート(BDP)、トリオクチルホスフェート、トリブチルホスフェート等が好ましい。また、カルボン酸エステル系可塑剤としては、例えば、ジメチルフタレート(DMP)、ジエチルフタレート(DEP)、ジブチルフタレート(DBP)、ジオクチルフタレート(DOP)、ジフェニルフタレート(DPP)、ジエチルヘキシルフタレート(DEHP)、O−アセチルクエン酸トリエチル(OACTE)、O−アセチルクエン酸トリブチル(OACTB)、クエン酸アセチルトリエチル、クエン酸アセチルトリブチル、オレイン酸ブチル、リシノール酸メチルアセチル、セバシン酸ジブチル、トリアセチン、トリブチリン、ブチルフタリルブチルグリコレート、エチルフタリルエチルグリコレート、メチルフタリルエチルグリコレート、ブチルフタリルブチルグリコレート等が好ましい。
本発明のセルロース体組成物フィルムの製造方法(製膜)について述べる。本発明のセルロース体組成物フィルムを製造する方法および設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供するのと同様の溶液流延製膜方法および溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープを貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。
ドープを、金属支持体としての平滑なバンド上或いはドラム上に単層液として流延してもよいし、2層以上の複数のドープを流延してもよい。重層流延の場合、内側と外側の厚さは特に限定されないが、好ましくは外側が全膜厚の1〜50%であることが好ましく、より好ましくは2〜30%の厚さである。
溶液の流延方法としては、調製されたドープを加圧ダイから金属支持体上に均一に押し出す方法、一旦金属支持体上に流延されたドープをブレードで膜厚を調節するドクターブレードによる方法、或いは逆回転するロールで調節するリバースロールコーターによる方法等があるが、加圧ダイによる方法が好ましい。流延に用いられるドープの温度は、−10〜55℃が好ましく、より好ましくは25〜50℃である。その場合、工程のすべてが同一でもよく、あるいは工程の各所で異なっていてもよい。異なる場合は、流延直前で所望の温度であればよい。
セルロース体組成物フィルムの製造に係わる金属支持体上におけるドープの乾燥は、一般的には金属支持体(例えば、ドラムまたはバンド)の表面側、つまり金属支持体上にあるウェブの表面から熱風を当てる方法、ドラムまたはバンドの裏面から熱風を当てる方法、温度コントロールした液体をバンドやドラムのドープ流延面の反対側である裏面から接触させて、伝熱によりドラムまたはバンドを加熱し表面温度をコントロールする液体伝熱方法などがあるが、裏面液体伝熱方式が好ましい。流延される前の金属支持体の表面温度はドープに用いられている溶剤の沸点以下であれば何度でもよい。しかし乾燥を促進するためには、また金属支持体上での流動性を失わせるためには、使用される溶剤の内の最も沸点の低い溶剤の沸点より1〜10度低い温度に設定することが好ましい。尚、流延ドープを冷却して乾燥することなく剥ぎ取る場合はこの限りではない。
生乾きのフィルムを金属支持体から剥離するとき、剥離抵抗(剥離荷重)が大きいと、製膜方向にフィルムが不規則に伸ばされて光学的な異方性むらを生じる。特に剥離荷重が大きいときは、製膜方向に段状に伸ばされたところと伸ばされていないところが交互に生じて、レターデーションに分布を生じる。液晶表示装置に装填すると線状あるいは帯状にむらが見えるようになる。このような問題を発生させないためには、フィルムの剥離荷重をフィルム剥離幅1cmあたり0.25N以下にすることが好ましい。剥離荷重はより好ましくは0.2N/cm以下、さらに好ましくは0.15N以下、特に好ましくは0.10N以下である。剥離荷重0.2N/cm以下のときはむらが現れやすい液晶表示装置においても剥離起因のむらは全く認められず、特に好ましい。剥離荷重を小さくする方法としては、前述のように剥離剤を添加する方法と、使用する溶剤組成の選択による方法がある。剥離時の好ましい残留揮発分濃度は5〜60質量%である。10〜50質量%がさらに好ましく、20〜40質量%が特に好ましい。高揮発分で剥離すると乾燥速度が稼げて、生産性が向上して好ましい。一方、高揮発分ではフィルムの強度や弾性が小さく、剥離力に負けて切断したり伸びたりしてしまう。また剥離後の自己保持力が乏しく、変形、しわ、クニックを生じやすくなる。またレターデーションに分布を生じる原因になる。
本発明のセルロース体組成物フィルムを延伸処理する場合は、剥離のすぐ後の未だフィルム中に溶剤が十分に残留している状態で行うのが好ましい。延伸の目的は、(1)しわや変形のない平面性に優れたフィルムを得るためおよび、(2)フィルムの面内レターデーションを大きくするために行う。(1)の目的で延伸を行うときは、比較的高い温度で延伸を行い、延伸倍率も1%からせいぜい10%までの低倍率の延伸を行う。2〜5%の延伸が特に好ましい。(1)と(2)の両方の目的、あるいは(2)だけの目的で延伸する場合は、比較的低い温度で、延伸倍率も5〜150%で延伸する。
本発明のセルロース体組成物フィルムの好ましい光学特性は、フィルムの用途により異なるが、本発明の好ましいフィルムの一例として、該フィルムの厚みを80μmに換算した場合のRe590が0≦Re590≦100nm(Re590は、波長590nmにおける面内のレターデーション(Re)を表す。)を満たすフィルムが挙げられる。この中でも、20≦Re590≦90nmを満たすフィルムがより好ましい。
特に、偏光板保護フィルムとして使用する場合は、面内レターデーション(Re)は、0nm≦Re≦5nmが好ましく、0nm≦Re≦3nmがさらに好ましい。厚さ方向レターデーション(Rth)は、0nm≦Rth≦50nmが好ましく、0nm≦Rth≦35nmがさらに好ましく、0nm≦Rth≦10nmが特に好ましい。
また、位相差フィルムとして使用する場合は、位相差フィルムの種類によってReやRthの範囲は異なり、多様なニーズがあるが、0nm≦Re≦100nm、0nm≦Rth≦400nmであることが好ましい。TNモードなら0nm≦Re≦20nm、40nm≦Rth≦80nm、VAモードなら20nm≦Re≦80nm、80nm≦Rth≦400nmがより好ましく、特にVAモードで好ましい範囲は、30nm≦Re≦75nm、120nm≦Rth≦250nmであり、一枚の位相差膜で補償する場合は、50nm≦Re≦75nm、180nm≦Rth≦250nm、2枚の位相差膜で補償する場合は、30nm≦Re≦50nm、80nm≦Rth≦140nmである。これらはVAモードの補償膜として黒表示時のカラーシフト、コントラストの視野角依存性の点で好ましい態様である。本発明のセルロース体組成物フィルムは、共重合比率、添加剤の種類および添加量、延伸倍率、剥離時の残留揮発分などの工程条件を適宜調節することで所望の光学特性を実現することができる。
測定されるフィルムが1軸または2軸の屈折率楕円体で表されるものである場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)のフィルム法線方向に対して法線方向から片側50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて全部で6点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記において、法線方向から面内の遅相軸を回転軸として、ある傾斜角度にレターデーションの値がゼロとなる方向をもつフィルムの場合には、その傾斜角度より大きい傾斜角度でのレターデーション値はその符号を負に変更した後、KOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
尚、遅相軸を傾斜軸(回転軸)として(遅相軸がない場合にはフィルム面内の任意の方向を回転軸とする)、任意の傾斜した2方向からレターデーション値を測定し、その値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基に、以下の式(1)及び式(2)よりRthを算出することもできる。
上記のRe(θ)は法線方向から角度θ傾斜した方向におけるレターデーション値を表す。
式(1)におけるnxは面内における遅相軸方向の屈折率を表し、nyは面内においてnxに直交する方向の屈折率を表し、nzはnx及びnyに直交する方向の屈折率を表す。
Rth=((nx+ny)/2−nz)xd--- 式(2)
測定されるフィルムが1軸や2軸の屈折率楕円体で表現できないもの、いわゆる光学軸(optic axis)がないフィルムの場合には、以下の方法によりRth(λ)は算出される。
Rth(λ)は前記Re(λ)を、面内の遅相軸(KOBRA 21ADHまたはWRにより判断される)を傾斜軸(回転軸)としてフィルム法線方向に対して−50度から+50度まで10度ステップで各々その傾斜した方向から波長λnmの光を入射させて11点測定し、その測定されたレターデーション値と平均屈折率の仮定値及び入力された膜厚値を基にKOBRA 21ADHまたはWRが算出する。
上記の測定において、平均屈折率の仮定値は ポリマーハンドブック(JOHN WILEY&SONS,INC)、各種光学フィルムのカタログの値を使用することができる。平均屈折率の値が既知でないものについてはアッベ屈折計で測定することができる。主な光学フィルムの平均屈折率の値を以下に例示する: セルロースアシレート(1.48)、シクロオレフィンポリマー(1.52)、ポリカーボネート(1.59)、ポリメチルメタクリレート(1.49)、ポリスチレン(1.59)である。これら平均屈折率の仮定値と膜厚を入力することで、KOBRA 21ADHまたはWRはnx、ny、nzを算出する。この算出されたnx、ny、nzよりNz=(nx−nz)/(nx−ny)が更に算出される。
偏光板は、偏光子およびその少なくとも一方(好ましくはその両方)に配置された保護膜を有する。一方または両方の保護膜として、本発明のセルロース体組成物フィルムを用いることができる。他方の保護膜は、通常のセルロースアセテートフィルム等を用いてもよい。偏光子には、ヨウ素系偏光子、二色性染料を用いる染料系偏光子やポリエン系偏光子がある。ヨウ素系偏光子および染料系偏光子は、一般にポリビニルアルコール系フィルムを用いて製造する。本発明のセルロース体組成物フィルムを偏光板の保護膜として用いる場合、セルロース体組成物フィルムは後述の如き表面処理を行い、しかる後にフィルム処理面と偏光子とを接着剤を用いて貼り合わせることが好ましい。使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス、ゼラチン等が挙げられる。偏光板は偏光子およびその少なくとも一方を保護する保護膜で構成されており、さらに該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルムおよびセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。また、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。本発明のセルロース体組成物フィルムの偏光子への貼り合せ方は、偏光子の透過軸とフィルムの遅相軸を一致させるように貼り合せることが好ましい。
本発明では、偏光子と保護フィルムとの接着性を改良するため、セルロース体組成物フィルムの表面を表面処理することが好ましい。表面処理については、接着性を改善できる限りいかなる方法を利用してもよいが、好ましい表面処理としては、例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理および火炎処理が挙げられる。ここでいうグロー放電処理とは、低圧ガス下でおこる、いわゆる低温プラズマのことである。本発明では大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。その他、グロー放電処理の詳細については、米国特許第3462335号、米国特許第3761299号、米国特許第4072769号および英国特許第891469号明細書に記載されている。放電雰囲気ガス組成を放電開始後にポリエステル支持体自身が放電処理を受けることにより容器内に発生する気体種のみにした特表昭59−556430号公報に記載された方法も用いられる。また真空グロー放電処理する際に、フィルムの表面温度を80℃〜180℃にして放電処理を行う特公昭60−16614号公報に記載された方法も適用できる。
ポリビニルアルコールからなる偏光子と、表面処理された本発明のセルロース体組成物フィルムとを貼合する際には、水溶性ポリマーを含有する接着剤を用いることが好ましい。前記接着剤に好ましく使用される水溶性ポリマーとしては、N−ビニルピロリドン、アクリル酸、メタクリル酸、マレイン酸、アクリル酸β−ヒドロキシエチル、メタクリル酸β−ヒドロキシエチル、ビニルアルコール、メチルビニルエーテル、酢酸ビニル、アクリルアミド、メタクリルアミド,ジアセトンアクリルアミド、ビニルイミダゾールなどエチレン性不飽和モノマーを構成要素として有する単独重合体もしくは共重合体、またポリオキシエチレン、ボリオキシプロピレン、ポリ−2−メチルオキサゾリン、メチルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、ヒドロキシプロピルセルロースゼラチン、などが挙げられる。本発明では、この中でもポリビニルアルコール(PVA)およびゼラチンが好ましい。接着剤層厚みは、乾燥後に0.01〜5μmが好ましく、0.05〜3μmが特に好ましい。
偏光板の、液晶セルと反対側に配置される透明保護膜には反射防止層などの機能性膜を設けることが好ましい。特に、本発明では透明保護膜上に少なくとも光散乱層と低屈折率層がこの順で積層した反射防止層または透明保護膜上に中屈折率層、高屈折率層、低屈折率層がこの順で積層した反射防止層が好適に用いられる。
光散乱層は、表面散乱および/または内部散乱による光拡散性と、フィルムの耐擦傷性を向上するためのハードコート性をフィルムに寄与する目的で形成される。従って、ハードコート性を付与するためのバインダー、光拡散性を付与するためのマット粒子、および必要に応じて高屈折率化、架橋収縮防止、高強度化のための無機フィラーを含んで形成される。光散乱層の膜厚は、ハードコート性を付与する観点並びにカールの発生および脆性の悪化抑制の観点から、1〜10μmが好ましく、1.2〜6μmがより好ましい。
さらに、ハードコート層、前方散乱層、プライマー層、帯電防止層、下塗り層や保護層等を設けてもよい。
ハードコート層は、反射防止層を設けた透明保護膜に物理強度を付与するために、透明支持体の表面に設ける。特に、透明支持体と前記高屈折率層の間に設けることが好ましい。ハードコート層は、光および/または熱の硬化性化合物の架橋反応、または、重合反応により形成されることが好ましい。硬化性官能基としては、光重合性官能基が好ましく、また加水分解性官能基含有の有機金属化合物は有機アルコキシシリル化合物が好ましい。
帯電防止層を設ける場合には体積抵抗率が10-8(Ωcm-3)以下の導電性を付与することが好ましい。吸湿性物質や水溶性無機塩、ある種の界面活性剤、カチオンポリマー、アニオンポリマー、コロイダルシリカ等の使用により10-8(Ωcm-3)の体積抵抗率の付与は可能であるが、温湿度依存性が大きく、低湿では十分な導電性を確保できない問題がある。そのため、導電性層素材としては金属酸化物が好ましい。
本発明のセルロース体組成物フィルム、該フィルムからなる位相差フィルム、該フィルムを用いた偏光板は、様々な表示モードの液晶セル、液晶表示装置に用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Supper Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)およびHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。このうち、OCBモードまたはVAモードに好ましく用いることができる。
アルドリッチ社製の5−ノルボルネン−2−イルアセテート(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イルアセテート;NBOAc)を減圧蒸留により精製し、純度99.2%とした。精製トルエン1000質量部に対し、精製したNBOAcを395質量部となるように反応容器に仕込んだ。次いでトルエン10質量部中に溶解したアリルパラジウムクロライドダイマー(東京化成社製)0.10質量部とトリシクロヘキシルフォスフィン(ストレム社製)0.16質量部、塩化メチレン10質量部中に溶解したジメチルアニリニウム・テトラキスペンタフルオロフェニルボレート(ストレム社製)1.03質量部、さらにトルエン10質量部に溶解したアリルトリブチルスズ(アルドリッチ社製)0.25質量部を反応容器に投入した。この混合物を90〜100℃で6時間反応させた。なお、この間反応溶液の粘度の上昇とともに、トルエンを適宜追加した。1−ヘキセン(和光純薬社製)10質量部を滴下し、さらに1時間反応させた。得られた反応溶液を、過剰のメタノール中に投入し、重合体P−1を沈殿させた。沈殿を採取し、メタノールで洗浄し、110℃で6時間真空乾燥した。収量は176質量部であった。このP−1をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、数平均分子量は61,400、重量平均分子量は114,000であった。
アルドリッチ社製の5−ノルボルネン−2−イルアセテート(ビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イルアセテート;NBOAc)を減圧蒸留により精製し、純度99.2%とした。精製メチレンクロライド200質量部に対し、精製したNBOAcを100質量部となるように反応容器に仕込んだ。次いでメチレンクロライド10質量部中に溶解したベンジリデンビス(トリシクロヘキシルホスフィン)ジクロロルテニウム(アルドリッチ社製)0.12質量部を反応容器に投入した。この混合物を室温で30分反応させた。得られた反応溶液を、過剰のメタノール中に投入し、重合体P−17を沈殿させた。沈殿を採取し、メタノールで洗浄し、50℃で6時間真空乾燥した。収量は82質量部であった。このP−17をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、数平均分子量は546,500、重量平均分子量は863,500であった。
ヘルベティカキミカアクタ1984年67巻1612〜1615ページの記載に従い、下記構造式の2−エキソ−アンド−2−エンド−シアノ−7−オキサビシクロ[2.2.1]ヘプト−5−エン−2−イルアセテートを合成した。
特開2003−344655号公報に従い、下記化合物M−1を合成した。
ジシクロペンタジエン(和光純薬社製)158.2g、1−オクテン(和光純薬社製)313.3gとヒドロキノン(和光純薬社製)2.5gを1Lオートクレーブに仕込み、空隙を窒素置換した。密閉系で内温200℃で4時間攪拌した(回転速度=300rpm)。反応混合物をろ過し、揮発成分をエバポレーションした。残存物を精密蒸留(カラム長さ=70cm、カラム充填物=DixonPacking(SUS−304,φ6×6mm)、還流比=10/1、圧力=7mmHg、トップ温度=89〜90℃)に付して、無色透明な5−ヘキシル−2−ノルボルネンを得た。これを合成例1と同様に重合し、A−1を得た。このA−1をテトラヒドロフランに溶解し、ゲルパーミエーションクロマトグラフによる分子量を測定したところ、数平均分子量は74,000、重量平均分子量は302,000であった。
(実施例1)
(製膜)
4gのP−1とセルローストリアセテート(TAC、ダイセル社製、置換度2.86)16gを塩化メチレン/メタノール(90/10)110gに溶かし、これを加圧ろ過した。得られたドープをA3大の疎水性ガラス板上でアプリケーターを用いて、流延製膜した(クリアランス0.6)。これを25℃密閉系で5分乾燥し、続いて40℃の送風乾燥機中で10分乾燥した。ガラス板からフィルムを剥ぎ取り、ステンレス製の枠に挟み、これを100℃の乾燥機中で30分、133℃の乾燥機中で30分乾燥を行った。透明なフィルムF−1を得た。
揮散量(%)={(未処理品中の残存化合物量)−(処理品中の残存化合物量)}/(未処理品中の残存化合物量)×100
添加物と添加量を表1のように変更した他は、実施例1と同様にしてフィルムF−2〜5を得た。得られたフィルムのブリードアウトと揮散性の評価を実施例1と同様に行った。
実施例1においてセルローストリアセテート(TAC)をセルロースアセテートプロピオネート(CAP:イーストマンケミカル社製、CAP481−20)に変更した他は、実施例1と同様にしてフィルムF−6を得た。得られたフィルムのブリードアウトと揮散性の評価を実施例1と同様に行った。
(実施例6)
セルローストリアセテート(ダイセル社製;置換度2.86)とP−1を混合比80/20で塩化メチレン/メタノール(95/5重量比)の混合溶媒に溶かし、バンド流延機を用いて流延した。残留溶剤量が約25質量%でバンドから剥ぎ取ったフィルムを、テンターを用いて10%の延伸率で幅方向に延伸して、フィルムにしわが入らないように保持しながら、熱風を当てて乾燥した。その後テンター搬送からロール搬送に移行し、さらに120℃から140℃で乾燥し巻き取り、フィルムF−6を得た。得られたフィルムのブリードアウトと揮散性の評価を実施例1と同様に行った。さらに以下のレターデーション(Re)の測定を行った。
実施例6において延伸倍率を20%として、同様にフィルムF−7を得た。得られたフィルムの評価を実施例6と同様に行った。
実施例6においてセルローストリアセテート(ダイセル社製;置換度2.86)とM−1を混合比95/5として、同様にフィルムF−8を得た。得られたフィルムの評価を実施例6と同様に行った。
実施例6においてセルローストリアセテート(ダイセル社製;置換度2.86)とM−1を混合比90/10として、同様にフィルムF−9を得たが、M−1がブリードアウトしたため、フィルムの評価を行うことはできなかった。
実施例6においてセルローストリアセテート(ダイセル社製;置換度2.86)とA−1を混合比90/10で混合したが、ドープは白濁し相溶しなかった。
(実施例8)
実施例7で得られたF−7およびセルロースアシレートフィルム(フジTAC、富士写真フイルム社製)を60℃の水酸化ナトリウム1.5N水溶液中で2分間浸漬した。この後、0.1Nの硫酸水溶液に30秒浸漬した後、水洗浴を通し、鹸化処理したF−7とフジTACを得た。
Claims (9)
- 一般式(I)中のR1、R2、R3およびR4が、それぞれ独立にアシルオキシ基または水素原子である請求項1に記載のセルロース体組成物。
- 一般式(I)中のXが、−CH2−である請求項1または2に記載のセルロース体組成物。
- 前記重合体が付加重合体である、請求項1〜3のいずれか1項に記載のセルロース体組成物。
- 前記セルロース体と、前記重合体の添加比率(質量比)が、95/5〜60/40である、請求項1〜4のいずれか1項に記載のセルロース体組成物。
- 請求項1〜5のいずれか1項に記載のセルロース体組成物を用いてなるフィルム。
- 請求項6に記載のフィルムを用いた偏光板。
- 請求項6に記載のフィルムを用いた液晶表示装置。
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