JP2005232328A - セルロースアシレートドープ液、およびセルロースアシレートフィルム - Google Patents

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Abstract

【課題】 湿度に対して、レターデーション変化の小さいセルロースアシレートフィルム及びその製造に好適なセルロースアシレートドープ液を提供する。得られたフィルムを光学フィルムや偏光板保護フィルムとし、光漏れを起こしにくく表示品位の高い液晶表示装置を提供する。
【解決手段】 セルロースアシレートと、ノルボルネン系化合物、チオール系化合物及び重合開始剤とを、有機溶剤に溶解してセルロースアシレートドープ液とする。このセルロースアシレートドープ液を流延する製膜工程と、得られた膜に活性エネルギー線を照射して重合させる工程と、有機溶媒を除去する加熱・乾燥工程とを経て、セルロースアシレートフィルムを製造できる。
【選択図】 図1

Description

本発明は、セルロースアシレートフィルム製造用濃厚液(セルロースアシレートドープ液。単に、「ドープ液」、「ドープ」ともいう。)、セルロースアシレートフィルム、セルロースアシレートフィルムの製造方法、並びにこのフィルムを用いた光学フィルム、偏光板及び液晶表示装置に関するものである。
セルロースアシレートフィルムは適度な水蒸気透過性を有し、かつ加工が容易であることから液晶表示装置用偏光板の保護フィルムとして広く使用されている。しかし、一方では、湿度によるレターデーション変化が大きいため、セルロースアシレートフィルムを用いた偏光板を長期使用すると、光漏れ等が生じ、液晶表示装置の表示品位が低下しやすい。そこで、湿度に対してレターデーション変化の低い(すなわち、レターデーション安定性の高い)セルロースアシレートフィルムが強く求められている。
レターデーション変化の低いセルロースアシレートフィルムを得る方法の一つとして、従来、疎水性の高い低分子化合物(可塑剤)をセルロースアシレートへ混ぜ込む方法が知られている。しかし、この場合は、混ぜ込んだ低分子化合物(可塑剤)がフィルム表面に析出しやすい問題がある。
このようなフィルム表面での低分子化合物(可塑剤)の析出の問題を避けるために、高分子化合物(以下、ポリマー)、例えば、分子量(重量平均分子量)が400〜5,000であってセルロースアシレートとの相溶性が高いポリエステルをセルロースアシレートへ混ぜ込む方法が提案されている(特許文献1参照)。
また、セルロースアシレートと、これに相溶可能な光重合性モノマー及び光重合開始剤とを均一な濃厚液(ドープ液)とし、このドープ液を流延製膜工程で紫外線照射し、セルロースアシレート中にポリマーのネットワークを形成させる方法も提案されている(特許文献2参照)。
特開2002−22956号公報 特開2002−20410号公報
しかし、特許文献1で用いられているポリマーは分子量(400〜5,000)が小さく、ポリマーとしての特性を十分に発揮しにくい。そのため、湿度に対するレターデーション変化が充分に低いフィルムを得ることができない。
また、上記特許文献2で用いられている光重合性モノマーは、エチレン性不飽和モノマー及び/又は官能基を有するエチレン性不飽和モノマーであり、これらは光重合開始剤の存在下に光重合が進行するものの、ポリマーネットワークの形成が不十分であるせいか、湿度に対するレターデーション変化が満足できるほど充分に低くすることができない。
本発明の主たる課題は、従来用いられているポリマーとは異なるポリマーを与える重合性モノマーを用いて、セルロースアシレート中にポリマーのネットワークを形成させ、湿度に対するレターデーション変化の小さい(すなわち、レターデーション安定性の高い)セルロースアシレートフィルムを提供することであり、また、そのようなセルロースアシレートフィルムの製造に好適なセルロースアシレートドープ液を提供することである。また、別の課題は、得られた上記セルロースアシレートフィルムを液晶表示装置の偏光板に用いることで、光漏れなどの問題を起こしにくく表示品位の高い液晶表示装置を提供することである。
上記課題を達成するために、本発明は以下の構成をとった。
すなわち、本発明は、セルロースアシレートと、ノルボルネン系化合物、チオール系化合物及び重合開始剤とを、有機溶剤に溶解してなることを特徴とするセルロースアシレートドープ液である。
また、本発明は、セルロースアシレートと、ノルボルネン系化合物をチオール系化合物及び重合開始剤の存在下に重合して得られるポリマーとを含有してなるセルロースアシレートフィルムも提供する。
また、本発明は、上記セルロースアシレートドープ液を流延する製膜工程、得られた膜に活性エネルギー線を照射して重合する工程、及び有機溶媒を除去する加熱・乾燥工程、を含むことを特徴とするセルロースアシレートフィルムの製造方法、でもある。
本発明のセルロースアシレートドープ液を用いれば、セルロースアシレート中に、ノルボルネン系化合物が重合してなるポリマーのネットワークを形成させることができ、湿度に対するレターデーション変化の小さい(すなわち、レターデーション安定性の高い)セルロースアシレートフィルムを提供できる。
また、本発明のセルロースアシレートフィルムは、光学フィルムや偏光板保護フィルムに利用できる。特に、VA(vertically aligned)型、IPS(in−phase switching)型等の液晶表示装置に好適に用いられ、光漏れなどの問題の少ない表示品位の高い液晶表示装置を提供できる。
以下、更に本発明を詳しく説明する。
本発明者は、セルロースアシレートに混ぜ込むポリマーを種々検討した結果、重合性のノルボルネン系化合物をチオール系化合物及び重合開始剤の存在下に、光照射して得られるポリマーを、セルロースアシレート中にネットワークとして形成させることにより、セルロースアシレートフィルムの吸水性が低下し、その結果、湿度変化に対するレターデーション安定性が飛躍的に向上することを見出し、本発明に至ることができたのである。
本発明のセルロースアシレートドープ液は、先に述べたように、セルロースアシレートと、ノルボルネン系化合物、チオール系化合物及び重合開始剤とを、有機溶剤に溶解してなることを特徴とするセルロースアシレートドープ液である。
以下、必須的構成成分から順に、さらに説明する。
〔セルロースアシレート〕
セルロースを構成するβ−1,4結合しているグルコース単位は、2位、3位および6位に遊離の水酸基を有している。セルロースアシレートは、これらの水酸基の一部または全部をエステル化した重合体(ポリマー)である。アシル置換度は、2位、3位および6位のそれぞれについて、セルロースがエステル化している割合(100%のエステル化は置換度1)の合計を意味する。
セルロースの2位、3位および6位のそれぞれの水酸基の置換度は特に限定されないが、セルロースアシレートの6位の置換度の総和は、好ましくは0.8以上、さらに好ましくは0.85以上、特に好ましくは0.90以上である。セルロースアシレートの溶解性を向上させることができ、特に非塩素系有機溶媒において、良好な溶液の作製が可能だからである。
異なる2種類以上のセルロースアシレートを混合して使用してもよい。
セルロースアシレートのアシル基は、脂肪族アシル基でも芳香族アシル基のいずれであってもよい。アシル基が脂肪族アシル基である場合、炭素数2ないし22であることが好ましく、炭素数2ないし8であることが更に好ましく、炭素数2ないし4であることが特に好ましい。脂肪族アシル基の例としては、アルキルカルボニル、アルケニルカルボニルあるいはアルキニルカルボニルなどを挙げることができる。アシル基が芳香族アシル基である場合、炭素数6ないし22であることが好ましく、炭素数6ないし18であることが更に好ましく、炭素数6ないし12であることが特に好ましい。これらのアシル基は、それぞれ更に置換基を有していてもよい。
好ましいアシル基の例としては、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ヘプタノイル、ヘキサノイル、オクタノイル、デカノイル、ドデカノイル、トリデカノイル、テトラデカノイル、ヘキサデカノイル、オクタデカノイル、イソブチリル、t‐ブチリル、シクロヘキサンカルボニル、オレオイル、ベンゾイル、ナフタレンカルボニル、フタロイル、シンナモイルなどを挙げることができる。これらの中でも、更に好ましいものは、アセチル、プロピオニル、ブチリル、ドデカノイル、オクタデカノイル、t‐ブタノイル、オレオイル、ベンゾイル、ナフチルカルボニル、シンナモイルなどであり、特に好ましいものはアセチル、プロピオニル、ブチリルである。
用いるセルロースアシレートは2種以上のアシル基の混合エステルであってもよく、好ましい例として、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロパノエートブチレート、セルロースアセテートプロピオネートブチレート、セルロースアセテートヘキサノエート、セルロースアセテートオクタノエート、セルロースアセテートシクロヘキサノエート、セルロースアセテートデカノエート、セルロースアセテートアダマンタンカルボキシレート、セルロースアセテートカルバメート、セルロースアセテートフタレートなどを挙げることができる。更に好ましい例としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレート、セルロースプロパノエートブチレート、セルロースアセテートヘキサノエート、セルロースアセテートオクタノエートなどを挙げることができる。特に好ましい例としては、セルロースアセテートプロピオネート、セルロースアセテートブチレートを挙げることができる。
セルロースアシレートドープ液におけるセルロースアシレートの含量(不揮発分を基準とする)、又は(本発明の)セルロースアシレートフィルムにおけるセルロースアシレートの含量は、通常は、55質量%以上、好ましくは70質量%以上、さらに好ましくは80質量%以上とする。
セルロースアシレートの合成方法は、右田伸彦他、木材化学180〜190頁(共立出版、1968年)などに記載されている。代表的な合成方法は、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相アシル化法である。具体的には、綿花リンターや木材パルプ等のセルロース原料を適当量のカルボン酸(必要に応じて、水、硫酸などを含んでいても良い)で前処理した後、アシル化剤混液を投入してエステル化し、完全セルロースアシレート(2位、3位および6位のアシル置換度の合計が、ほぼ3.00)を合成する方法である。上記アシル化剤混液は、一般に溶媒としての酢酸またはカルボン酸、エステル化剤としてのカルボン酸無水物、および、触媒としてのプロトン酸(硫酸、過塩素酸、塩化亜鉛、塩化スルフリル、リン酸など)またはルイス酸を含む。カルボン酸無水物は、これと反応するセルロースおよび系内に存在する水分の合計よりも、化学量論的に過剰量で使用することが好ましい。触媒の量はセルロース100重量に対して0.5〜25重量部であることが好ましい。
反応温度は目的とするセルロースアシレートの特性に応じて任意に選択することができるが、−30℃〜70℃であることが好ましく、−20℃〜60℃であることが好ましく、−10℃〜50℃であることが特に好ましい。反応温度は反応の段階に応じて変化させても良い。反応温度の調節は、アシル化剤混液の温度や反応容器の温度制御で行うことができる。
アシル化反応の終了後に、残存している過剰のカルボン酸無水物の加水分解およびエステル化触媒の一部または全部の中和のために、水や中和剤(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛などの炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物)の水溶液を添加してもよい。得られたセルロースアシレートを少量の酸触媒(一般には、残存する硫酸などの酸触媒)の存在下で、−10〜90℃に保つことによりケン化ならびに解重合(いわゆる熟成)を行い、所望のアシル置換度および重合度を有するセルロースアシレートに至るまで加水分解させることが好ましく行われる。所望のセルロースアシレートが得られた時点で、残存している触媒を前記のような中和剤を用いて完全に中和するか、あるいは中和することなく、水または適切な有機溶媒中にセルロースアシレート溶液を投入(あるいは、セルロースアシレート溶液中に、水または適切な有機溶媒を投入)してセルロースアシレートを沈殿させ、洗浄を行うことによりセルロースアシレートを得ることができる。副生するセルロース硫酸エステルの分解や、残存する酸の中和を目的に、安定化剤(例えば、ナトリウム、カリウム、カルシウム、マグネシウム、鉄、アルミニウムまたは亜鉛などの炭酸塩、酢酸塩、水酸化物または酸化物)の水溶液による処理を行うことが好ましい。
6位置換度の大きいセルロースアシレートの合成については、特開平11−5851号、特開2002−212338号や特開2002−338601号などに記載がある。
セルロースアシレートの他の合成法としては、塩基(水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化バリウム、炭酸ナトリウム、ピリジン、トリエチルアミン、t−ブトキシカリウム、ナトリウムメトキシド、ナトリウムエトキシドなど)の存在下に、カルボン酸ハライドと反応させる方法、アシル化剤として混合酸無水物(カルボン酸・トリフルオロ酢酸混合無水物、カルボン酸・メタンスルホン酸混合無水物など)を用いる方法によってもでき、特に炭素数の多いアシル基や、カルボン酸無水物−酢酸−硫酸触媒による液相アシル化法が困難なアシル基を導入する際には有効である。
セルロース混合アシレートを得る方法としては、アシル化剤として2種のカルボン酸無水物を混合または逐次添加により反応させる方法、2種のカルボン酸の混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を用いる方法、カルボン酸と別のカルボン酸の酸無水物(例えば、酢酸とプロピオン酸無水物)を原料として反応系内で混合酸無水物(例えば、酢酸・プロピオン酸混合酸無水物)を合成してセルロースと反応させる方法、置換度が3に満たないセルロースアシレートを一旦合成し、酸無水物や酸ハライドを用いて、残存する水酸基を更にアシル化する方法などを用いることができる。
セルロースアシレートから低分子成分を除去すると、平均分子量(重合度)が高くなるが、粘度は低くなるため有用である。低分子成分の少ないセルロースアシレートは、通常の方法で合成したセルロースアシレートから低分子成分を除去することにより得ることができる。低分子成分の除去は、セルロースアシレートを適当な有機溶媒で洗浄することにより実施できる。なお、硫酸触媒を用いて低分子成分の少ないセルロースアシレートを製造する場合、アシル化反応における硫酸触媒量を、セルロース100重量に対して0.5〜25重量部に調整することが好ましい。硫酸触媒の量を上記範囲にすると、好ましい分子量分布を有する(分子量分布の均一な)セルロースアシレートを合成することができる。
セルロースアシレートの原料綿や合成方法については、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の7頁〜12頁に詳細に記載されている。
セルロースアシレートの重合度は、平均重合度で通常150〜700、好ましくは180〜550、更に好ましくは200〜400であり、特に好ましくは粘度平均重合度200〜350である。平均重合度は、宇田らの極限粘度法(宇田和夫、斉藤秀夫、繊維学会誌、第18巻第1号、105〜120頁、1962年)、ゲル浸透クロマトグラフィー (GPC)による分子量分布測定などの方法により測定できる。更に特開平9−95538号に詳細に記載されている。
セルロースアシレートの含水率は2質量%以下であることが好ましく、1質量%以下であることが更に好ましく、0.7質量%以下であることが特には好ましい。一般に、セルロースアシレートは水を含有しており、その含有率は2.5〜5質量%であることが知られている。セルロースアシレートの含水率を好ましい量に調整するためには、セルロースアシレートを乾燥することが好ましい。乾燥の方法については、目的とする含水率が得られるのであれば特に限定されない。
有機溶媒に溶解する前のセルロースアシレートの形状は、粒子状が好ましく、使用する粒子の90質量%以上が0.5〜5mmの粒子径を有することが好ましい。また、使用する粒子の50質量%以上が1〜4mmの粒子径を有することが好ましい。セルロースアシレート粒子は、なるべく球形に近い形状を有することが好ましい。
〔ノルボルネン系化合物〕
用いるノルボルネン系化合物は、ノルボルネン性二重結合を含むノルボルネン部位を1つ又は2つ以上有する化合物、すなわち、次の一般式(化1)で表される化合物である。
Figure 2005232328
ここで、R1は水素又はメチル基(好ましくは水素)であり、nは1又は2以上の整数であり、Zはn価の有機基である。
上記一般式(化1)で表される化合物のうち、好ましいものは次の一般式(化2)で表すことができる。
Figure 2005232328
ここで、R1及びnは、先と同じ意味であり、Lは2価の結合基であり、Z’はn価の有機基である。Lとしては、−COO−、−CONH−、−OCO−及び−OCONH−が例示でき、これらの群より選ばれた結合基であることが好ましく、−COO−である(ここでカルボニル基がノルボルネン骨格に結合している。)ことが特に好ましい。
具体的には、特開平10−60114号、米国特許第4,808,638号、同第5,034,490号、同第5,171,816号、同第5,182,360号、同第5,266,670号公報などに記載されているノルボルネン系化合物を使用することができる。
ノルボルネン系化合物は、好ましくは、ノルボルネン性二重結合を含むノルボルネン部位を2以上有する多官能性化合物(すなわち、nは2以上の整数)である。セルロースアシレート中にポリマーネットワーク構造を形成させ、湿度によるレターデーション変化を低く抑えるためである。
また、用いるノルボルネン系化合物は、セルロースアシレートと混合させ、均一に溶解させ、その後に重合させるため、低分子であることが好ましい。具体的には、分子量が1,500以下であることが好ましく、1,000以下であることがさらに好ましく、800以下であることが最も好ましい。
さらに、用いるノルボルネン系化合物は、セルロースアシレートの疎水性を向上させるために、疎水的であることが好ましい。ただ、疎水性が高すぎるとセルロースアシレートと相溶しなくなるために、疎水性の上限は必要である。これらの性質を数値で表す場合、水オクタノール分配係数(logP)を目安に使用できる。用いるノルボルネン系化合物のlogPは、3.0〜15.0であることが好ましく、3.0〜12.0であることがさらに好ましく、4.0〜12.0であることが特に好ましい。
好ましいノルボルネン系化合物の代表例を以下に示す。
Figure 2005232328
Figure 2005232328
これらの中でも、NB−1〜5、10〜14、19〜23、28〜32、37〜40、47〜48、55〜56、57〜62が好ましく、NB−1〜5、19〜23、37、39、47〜48、57、59、61,63がさらに好ましい。
以下に、用いるノルボルネン系化合物の合成例を示す。
(NB−2の合成)
エトキシ化ビスフェノールAを44.3g、ノルボルネン−5−カルボン酸クロライドを340g及びピリジンを63g、トルエン1.2L中に仕込み、還流下6時間攪拌する。室温に冷却後、3N塩酸水溶液1.2Lを添加し、分液抽出する。脱イオン水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過する。この溶液を加熱しながら、エバポレーターで約1Lまで減圧濃縮し、溶液を室温に放置すると、NB−2の白色結晶700gを得る。
(NB−48の合成)
1,8−オクタンジオール15.3g及びピリジン17gを、トルエン30mL中に仕込み、ノルボルネン−5−カルボン酸クロライド32gを滴下する。還流下3時間攪拌する。室温に冷却後、水を加え、分液抽出する。脱イオン水で2回洗浄し、硫酸マグネシウムで乾燥し、ろ過する。この溶液を加熱しながら、エバポレーターで減圧濃縮する。溶液をカラムクロマトグラフィーで精製すると、NB−48の粘性液体25gを得る。
〔チオール系化合物〕
本発明で用いるチオール系化合物は、分子中にチオール基を1つ又は2つ以上有する化合物である。具体例としては、特開平10−60114号、米国特許第4,119,617号、同第3,445,419号、同第4,289,867号公報などに記載されている化合物である。
用いるチオール系化合物は、チオール基を2つ以上有する多官能性化合物が好ましい。セルロースアシレート中にポリマーネットワーク構造を形成させ、湿度によるレターデーション変化を低く抑えるためである。
また、用いるチオール系化合物は、セルロースアシレートと混合させ、均一に分散させ、その後に重合させるため、低分子であることが好ましい。具体的には、分子量が1,500以下であることが好ましく、1,000以下であることがさらに好ましく、800以下であることが特に好ましい。
好ましいチオール系化合物の代表的な例を以下に示す。
Figure 2005232328
中でも、PT−1、PT−2、PT−4、PT−6が好ましく、PT−1、PT−2がさらに好ましい。
〔重合開始剤〕
本発明で用いる重合開始剤とは、活性エネルギー線により、活性なラジカル種又はカチオン種を発生し、重合反応を開始、促進する化合物をいう。活性エネルギー線としては、放射線、ガンマー線、アルファ線、電子線、紫外線などが用いられる。中でも、紫外線が好ましく用いられる。紫外線としては、極大吸収波長が400nm以下の紫外線領域に紫外線が好ましい。それにより、白灯下で取り扱うことができる。
重合開始剤としては、公知の重合開始剤や結合解離エネルギーの小さな結合を有する化合物などを、適宜、選択して用いることとができる。また、重合開始剤は、単独または2種以上を併用して用いることができる。具体的には、アミン化合物(特公昭44−20189号公報参照)、有機ハロゲン化化合物、カルボニル化合物、有機過酸化化合物、アゾ系重合開始剤、メタロセン化合物、ヘキサアリールビイミダゾール化合物、有機ホウ素化合物、スルホン化合物等が挙げられる。
ここで、有機ハロゲン化化合物としては、具体的には、若林等、「Bull Chem.Soc Japan」42、2924(1969)、米国特許第3,905,815号明細書、特公昭46−4605号、特開昭62−212401号、特開昭63−70243号、特開昭63−298339号、M.P.Hutt"Jurnal of Heterocyclic Chemistry"1(No3),(1970)」等に記載の化合物が挙げられ、特に、トリハロメチル基が置換したオキサゾール化合物:S−トリアジン化合物が挙げられる。
更に好適には、少なくとも一つのモノ、ジ、またはトリハロゲン置換メチル基がs−トリアジン環に結合したs−トリアジン誘導体が挙げられる。
他の有機ハロゲン化化合物の例として、特開平5−27830号公報中の段落番号〔0039〕〜〔0048〕に記載のケトン類、スルフィド類、スルホン類、窒素原子含有の複素環類等が挙げられる。
カルボニル化合物としては、例えば、「最新 UV硬化技術」60〜62ページ((株)技術情報協会刊、1991年)、特開平8−134404号公報の段落番号〔0015〕〜〔0016〕、同11−217518号公報の段落番号〔0029〕〜〔0031〕に記載の化合物等が挙げられ、アセトフェノン系、ヒドロキシアセトフェノン系、ベンゾフェノン系、チオキサン系、ベンゾインエチルエーテル、ベンゾインイソブチルエーテル等のベンゾイン化合物、p−ジメチルアミノ安息香酸エチル、p−ジエチルアミノ安息香酸エチル等の安息香酸エステル誘導体、ベンジルジメチルケタール、アシルフォスフィンオキサイド等が挙げられる。
有機過酸化化合物としては、例えば、特開2001−139663号公報の段落番号〔0019〕に記載の化合物等が挙げられる。
メタロセン化合物としては、特開昭59−152396号公報、特開昭61−151197号公報、特開昭63−41484号公報、特開平2−249号公報、特開平2−4705号公報、特開平5−83588号公報等に記載の種々のチタノセン化合物、特開平1−304453号公報、特開平1−152109号公報等に記載の鉄−アレーン錯体等が挙げられる。
ヘキサアリールビイミダゾール化合物としては、例えば、特公平6−29285号、米国特許第3,479,185号、同第4,311,783号、同第4,622,286号等の各公報記載の種々の化合物等が挙げられる。
有機ホウ素化合物としては、特開昭62−143044号、特開昭62−150242号、特開平9−188685号、特開平9−188686号、特開平9−188710号、特許第2764769号、特開2002−116539号等の各公報、及び、Kunz,Martin"Rad Tech'98.Proceeding April 19−22,1998,Chicago"等に記載される有機ホウ酸塩化合物が挙げられる。例えば、前記特開2002−116539号公報では、段落番号〔0022〕〜〔0027〕記載の化合物である。
他の有機ホウ素化合物として、特開平6−348011号公報、特開平7−128785号公報、特開平7−140589号公報、特開平7−306527号公報、特開平7−292014号公報等に記載の有機ホウ素遷移金属配位錯体等が具体例として挙げられる。
スルホン化合物としては、特開平5−239015号に記載の化合物や、特開昭61−166544号公報に記載の一般式(II)及び一般式(III)で示されるジスルホン化合物等が挙げられる。
〔有機溶媒〕
有機溶媒としては、セルロースアシレートを溶解するために使用される有機溶媒が使用でき、低級脂肪族炭化水素の塩化物や低級脂肪族アルコールを用いる。
低級脂肪族炭化水素の塩化物の例には、メチレンクロライドを挙げることができる。
低級脂肪族アルコールの例には、メタノール、エタノール、n−プロピルアルコール、イソプロピルアルコール及びn−ブタノールが含まれる。
その他の溶媒の例としては、ハロゲン化炭化水素を実質的に含まない混合溶媒が有用であり、このような混合有機溶媒を構成する溶媒としては、アセトン、炭素原子数4から12までのケトン(例えばメチルエチルケトン、ジエチルケトン、ジイソブチルケトン、シクロヘキサノン及びメチルシクロヘキサノン等)、炭素原子数3〜12のエステル(例えば、ギ酸エチル、ギ酸プロピル、ギ酸ペンチル、酢酸メチル、酢酸エチル、酢酸プロピル、酢酸ブチル、酢酸ペンチル及び2−エトキシ−エチルアセテート等)、炭素原子数1〜6のアルコール(例えば、メタノール、エタノール、プロパノール、イソプロパノール、1−ブタノール、t-ブタノール、2−メチル−2−ブタノール、2−メトキシエタノール、2−ブトキシエタノール等)、炭素原子数3〜12のエーテル(例えば、ジイソプロピルエーテル、ジメトキシメタン、ジメトキシエタン、1,4−ジオキサン、1,3−ジオキソラン、テトラヒドロフラン、アニソール、フェネトール等)、炭素原子数5〜8の環状炭化水素類(例えばシクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘプタン、シクロオクタン等)が挙げられる。
セルロースアシレートの溶解性の点を考慮すると、好ましい有機溶媒は、エステル類、ケトン類、及びアルコール類よりなる混合溶媒である。
また、メチレンクロライドのようなハロゲン化炭化水素を含まない非ハロゲン系有機溶媒系の具体例として、例えば、特開2002−146043号公報の段落番号〔0021〕〜〔0025〕、特開2002−146045号公報の段落番号〔0016〕〜〔0021〕等に記載の溶媒系の例が挙げられる。
〔添加剤〕
(a)微粒子
フィルムの耐傷性や搬送性を良好に保持するために、本発明におけるセルロースアシレートドープ液に微粒子を添加することができる。マット剤、ブロッキング防止剤あるいはキシミ防止剤と称されて従来から利用されているものである。これら微粒子は、フィルムの耐傷性や搬送性を良好に保持する素材であれば、無機化合物でも有機化合物でもよい。具体的には、無機化合物として、ケイ素を含む化合物、二酸化ケイ素、酸化チタン、酸化亜鉛、酸化アルミニウム、酸化バリウム、酸化ジルコニウム、酸化ストロンチウム、酸化アンチモン、酸化スズ、酸化スズ・アンチモン、炭酸カルシウム、タルク、クレイ、焼成カオリン、焼成ケイ酸カルシウム、水和ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウム、ケイ酸マグネシウム、リン酸カルシウム等があり、好ましくは、ケイ素を含む無機化合物や酸化ジルコニウムであり、更に好ましくは、セルロースアシレートフィルムの濁度を低減できるので、二酸化ケイ素である。
また、表面処理された無機微粒子もセルロースアシレート中への分散性が良好となるので、好ましく用いられる。表面処理法としては、例えば、特開昭54−57562号公報に記載の方法が挙げられる。無機微粒子としては、例えば、特開2001−151936号公報に記載のものが挙げられる。
有機化合物としては、例えば、架橋ポリスチレン、シリコーン樹脂、フッ素樹脂、アクリル樹脂等のポリマーが好ましく、なかでも、シリコーン樹脂が好ましく、特に三次元の網状構造を有するシリコーン樹脂が好ましい。
これら微粒子の1次平均粒子径は、ヘイズを低く抑えるという観点から、通常0.001〜20μmであり、好ましくは0.001〜10μmであり、更に好ましくは0.002〜1μmであり、特に好ましくは0.005〜0.5μmである。
セルロースアシレート(100質量部)に対する微粒子の添加量は、通常0.3質量部以下、好ましくは0.01〜0.3質量部、更に好ましくは0.05〜0.2質量部とする。
これら微粒子や次で述べる添加剤をセルロースアシレートドープ液へ加える場合は、特にその方法は限定しない。例えば、セルロースアシレートと有機溶媒とを混合する段階で加えてもよいし、有機溶媒にセルロースアシレートを溶かした後に添加剤を加えてもよい。更にはドープ液を流延する直前に添加混合してもよく、いわゆる直前添加方法であり、その混合にはスクリュー式混練がオンラインで設置して用いられる。添加剤の添加は、それ自身を添加してもよいが、予め溶媒やバインダー(好ましくはセルロースアシレート)を用いて溶解しておいたり、場合により分散して安定化した溶媒として用いることも好ましい態様である。
(b)その他の添加剤
セルロースアシレートドープ液には、上記微粒子のほかに、用途に応じた種々の添加剤、例えば、可塑剤、紫外線防止剤(吸収剤)、劣化防止剤、光学異方性コントロール剤、剥離剤、赤外吸収剤等を適当な工程で加えることができる。それら添加剤は固体でもよく油状物でもよい。すなわち、その融点や沸点において特に限定されるものではない。例えば、融点20℃以下と20℃以上の紫外線吸収材料の混合や、同様に可塑剤の混合などであり、例えば、特開2001−151901号公報などに記載されている。さらにまた、赤外吸収染料としては、例えば、特開2001−194522号公報に記載されている。またその添加する時期はドープ作製工程において何れで添加しても良いが、ドープ調製工程の最後の調製工程に添加剤を添加し調製する工程を加えて行ってもよい。更にまた、各素材の添加量は機能が発現する限りにおいて特に限定されない。また、セルロースアシレートフィルムが多層から形成される場合、各層の添加物の種類や添加量が異なってもよい。例えば特開2001−151902号公報などに記載されているが、これらは従来から知られている技術である。さらにこれらの詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の16頁〜22頁に詳細に記載されている素材が好ましく用いられる。これらの添加剤の使用量は、セルロールアシレート全組成物中、0.001〜20質量%の範囲で適宜用いられることが好ましい。
〔セルロースアシレートドープ液〕
セルロースアシレートドープ液の全組成分中、用いる重合性化合物のノルボルネン系化合物およびチオール系化合物は、1〜50質量%の割合で使用するのが好ましく、より好ましくは2〜30質量%である。
なお、ノルボルネン系化合物およびチオール系化合物は、二種類以上の混合物として用いても良い。
ノルボルネン系化合物の二重結合部位数:チオール系化合物のチオール部位数が1:0.1〜1:10、好ましくは1:0.5〜1:5、さらに好ましくは1:0.8〜1:1.2、となるように両者の混合比率を設定する。
また、重合開始剤は、ノルボルネン系化合物およびポリチオール系化合物の合計質量に対して、0.0001〜10質量%、好ましくは0.001〜5質量%、さらに好ましくは0.01〜1質量%の割合で含有する。
〔セルロースアシレートドープ液の調製〕
セルロースアシレートは、有機溶媒に10〜30質量%溶解している溶液であることが好ましい。これらの濃度にセルロースアシレートを実施する方法は、溶解する段階で所定の濃度になるように実施してもよく、また予め低濃度溶液(例えば、9〜14質量%)として作製した後に後述する濃縮工程で所定の高濃度溶液に調製してもよい。さらに、予め高濃度のセルロースアシレート溶液として後に、種々の添加物を添加することで所定の低濃度のセルロースアシレート溶液としてもよく、いずれの方法でも、所定のセルロースアシレート溶液濃度になるように実施されれば特に問題ない。
本発明のセルロースアシレートドープの調製する場合の溶解方法は特に限定されず、室温溶解法でもよくさらには冷却溶解法あるいは高温溶解方法、さらにはこれらの組み合わせで実施される。これらに関しては、例えば特開平5−163301号公報、特開昭61−106628号公報、特開昭58−127737号公報、特開平9−95544号公報、特開平10−95854号公報、特開平10−45950号公報、特開2000−53784号公報、特開平11−322946号公報、さらに特開平11−322947号公報、特開平2−276830号公報、特開2000−273239号公報、特開平11−71463号公報、特開平04−259511号公報、特開2000−273184号公報、特開平11−323017号公報、特開平11−302388号公報などにセルロースアシレートドープの調製法が記載されている。以上記載したこれらのセルロースアシレートの有機溶媒への溶解方法は、本発明においても適宜本発明の範囲であればこれらの技術を適用できるものである。これらの詳細は、特に非塩素系溶媒系については発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の22頁〜25頁に詳細に記載されている方法で実施される。さらに本発明のセルロースアシレートのドープは、溶液濃縮,ろ過が通常実施され、同様に発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の25頁に詳細に記載されている。なお、高温度で溶解する場合は、使用する有機溶媒の沸点以上の場合がほとんどであり、その場合は加圧状態で用いられる。
本発明のセルロースアシレートドープは、その溶液の粘度と動的貯蔵弾性率がある範囲であることが好ましい。試料溶液1mLをレオメーター(CLS 500)に直径4cm/2°のSteel Cone(共にTA Instrumennts社製)を用いて測定した。測定条件はOscillation Step/Temperature Rampで 40℃〜−10℃の範囲を2℃/分で可変して測定し、40℃の静的非ニュートン粘度n*(Pa・sec)及び−5℃の貯蔵弾性率G’(Pa)を求めた。尚、試料溶液は予め測定開始温度にて液温一定となるまで保温した後に測定を開始した。本発明では、40℃での粘度が1〜300Pa・secが好ましく、かつ−5℃での動的貯蔵弾性率が1万〜100万Paが好ましい。
〔セルロースアシレートフィルムの製造方法〕
次に、本発明のセルロースアシレートドープを用いたフィルムの製造方法について述べる。本発明のセルロースアシレートフィルムを製造する方法及び設備は、従来セルローストリアセテートフィルム製造に供する溶液流延製膜方法及び溶液流延製膜装置が用いられる。溶解機(釜)から調製されたドープ(セルロースアシレート溶液)を貯蔵釜で一旦貯蔵し、ドープに含まれている泡を脱泡して最終調製をする。ドープをドープ排出口から、例えば回転数によって高精度に定量送液できる加圧型定量ギヤポンプを通して加圧型ダイに送り、ドープを加圧型ダイの口金(スリット)からエンドレスに走行している流延部の金属支持体の上に均一に流延され、金属支持体がほぼ一周した剥離点で、生乾きのドープ膜(ウェブとも呼ぶ)を金属支持体から剥離する。得られるウェブの両端をクリップで挟み、幅保持しながらテンターで搬送して乾燥し、続いて乾燥装置のロール群で搬送し乾燥を終了して巻き取り機で所定の長さに巻き取る。テンターとロール群の乾燥装置との組み合わせはその目的により変わる。ハロゲン化銀写真感光材料や電子ディスプレイ用機能性保護膜に用いる溶液流延製膜方法においては、溶液流延製膜装置の他に、下引層、帯電防止層、ハレーション防止層、保護層等のフィルムへの表面加工のために、塗布装置が付加されることが多い。これらの各製造工程については、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の25頁〜30頁に詳細に記載され、流延(共流延を含む)、金属支持体、乾燥、剥離、延伸などに分類される。
ここで、本発明においては流延部の空間温度は特に限定されないが、−50℃〜50℃であることが好ましい。更には−30℃〜40℃であることが好ましい。特に低温での空間温度により流延されたセルロースアシレート溶液は、支持体の上で瞬時に冷却されゲル強度アップすることでその有機溶媒を含んだフィルムを保持することができる。これにより、セルロースアシレートから有機溶媒を蒸発させることなく、支持体から短時間で剥ぎ取ることが可能となり、高速流延が達成できるものである。なお、空間を冷却する手段としては通常の空気でもよいし窒素やアルゴン、ヘリウムなどでもよく、特に限定されない。またその場合の湿度は0〜70%RHが好ましく、さらには0〜50%RHが好ましい。また、本発明ではセルロースアシレート溶液を流延する流延部の支持体の温度が−50℃〜130℃であり、好ましくは−30℃〜25℃である。流延部を本発明の温度に保つためには、流延部に冷却した気体を導入して達成してもよく、あるいは冷却装置を流延部に配置して空間を冷却してもよい。この時、水が付着しないように注意することが重要であり、乾燥した気体を利用するなどの方法で実施できる。
流延工程では1種類のセルロースアシレート溶液を単層流延してもよいし、2種類以上のセルロースアシレート溶液を同時及び/又は逐次共流延しても良い。
2層以上の複数のセルロースアシレート溶液を共流延する方法としては、例えば、支持体の進行方向に間隔を置いて設けた複数の流延口からセルロースアシレートを含む溶液をそれぞれ流延させて積層させる方法(例えば、特開平11−198285号公報記載の方法)、2つの流延口からセルロースアシレート溶液を流延する方法(特開平6−134933号公報記載の方法)、高粘度セルロースアシレート溶液の流れを低粘度のセルロースアシレート溶液で包み込み、その高、低粘度のセルロースアシレート溶液を同時に押出す方法(特開昭56−162617号公報記載の方法)等が挙げられる。本発明ではこれらに限定されるものではない。
得られたフィルムは支持体(バンド)から剥ぎ取り、更に乾燥させる。乾燥工程における乾燥温度は40℃〜250℃、特に70℃〜180℃が好ましい。
更に残留溶媒を除去するために、50℃〜160℃で乾燥させ、その場合逐次温度を変えた高温風で乾燥して残留溶剤を蒸発させることが好ましい。以上の方法は、特公平5−17844号公報に記載されている。この方法によると、流延から剥ぎ取りまでの時間を短縮することができる。使用する溶媒によって乾燥温度、乾燥風量及び乾燥時間が異なり、使用溶媒の種類、組み合わせに応じて適宜選ぶことができる。最終仕上がりフィルムの残留溶媒量は2質量%以下、更に0.4質量%以下であることが、寸度安定性良好なフィルムを得る上で好ましい。これらの乾燥工程の具体的な方法は、例えば、前述の発明協会公開技報に記載の従来公知の方法及び装置のいずれを用いてもよく、特に限定されるものではない。
本発明において活性エネルギー線を照射する工程は、ドープを流延してから乾燥が終了するまでの間の任意の場所で行えばよいが、特に乾燥終了前のドープ膜が支持体上にあるときに照射することが好ましい。これは、有機溶媒がウェブ中に適度に存在することにより分子の移動が容易で、重合がスムースに進行し易いためである。活性エネルギー線が紫外線である場合には、その光源は、超高圧、高圧、中圧、低圧の各水銀灯、ケミカルランプ、カーボンアーク灯、メタルハライド灯、キセノン灯、太陽光等が挙げられる。波長350〜420nmの入手可能な各種レーザー光源をマルチビーム化照射等を採用して用いることもできる。
紫外線照射による光重合は、空気または不活性気体中で行うことができるが、ラジカル重合性化合物を使用する場合には、重合の誘導期を短くするか、または重合率を十分に高める等のために、できるだけ酸素濃度を少なくした雰囲気とすることが好ましい。照射する紫外線の照射強度は、0.1〜100mW/cm2程度が好ましく、ドープ膜表面上での光照射量は100〜1000mJ/cm2が好ましい。また、光照射工程でのドープ膜の温度分布は、均一なほど好ましく、3℃以内が好ましく、更には1.5℃以内に制御されることが好ましい。この範囲において、ドープ膜の面内及び層内深さ方向での重合反応が均一に進行するので好ましい。
本発明において、レターデーションを発現させるために、セルロースアシレートフィルムを延伸してもよい。延伸する場合は、フィルム中の構造体を破壊しないために、光照射は延伸後に行うのが好ましい。したがって、延伸は、製膜中未乾燥の状態(例えば、流延後支持体から剥ぎ取った後から乾燥完了までの間)、すなわち、フィルム中に有機溶媒が適度に存在している状態で行うのが好ましい。かようにして得られたフィルムは、上記の手法にて乾燥させる。
本発明に従い製造されるフィルムの厚さは、5〜500μmであることが好ましく、15〜300μmであることが更に好ましく、20〜200μmであることが最も好ましい。また、光学フィルムに用いる場合には20〜80μmも好ましい。
セルロースアシレートフィルムは、場合により表面処理を行うことによって、セルロースアシレートフィルムと各機能層(例えば、下塗層及びバック層)との接着の向上を達成することができる。例えばグロー放電処理、紫外線照射処理、コロナ処理、火炎処理、酸またはアルカリ処理を用いることができる。ここでいうグロー放電処理とは、10-3〜20Torrの低圧ガス下でおこる低温プラズマでもよく、更にまた大気圧下でのプラズマ処理も好ましい。プラズマ励起性気体とは上記のような条件においてプラズマ励起される気体をいい、アルゴン、ヘリウム、ネオン、クリプトン、キセノン、窒素、二酸化炭素、テトラフルオロメタンの様なフロン類及びそれらの混合物などがあげられる。これらについては、詳細が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の30頁〜32頁に詳細に記載されている。なお、近年注目されている大気圧でのプラズマ処理は、例えば10〜1000Kev下で20〜500Kgyの照射エネルギーが用いられ、より好ましくは30〜500Kev下で20〜300Kgyの照射エネルギーが用いられる。これらの中でも特に好ましくは、アルカリ鹸化処理でありセルロースアシレートフィルムの表面処理としては極めて有効である。
アルカリ鹸化処理は、鹸化液を塗布することで行ことも好ましい。塗布方法としては、ディップコーティング法、カーテンコーティング法、エクストルージョンコーティング法、バーコーティング法及びE型塗布法を挙げることができる。アルカリ鹸化処理塗布液の溶媒は、鹸化液の透明支持体に対して塗布するために濡れ性が良く、また鹸化液溶媒によって透明支持体表面に凹凸を形成させずに、面状を良好なまま保つ溶媒を選択することが好ましい。具体的には、例えば特開2002−82226号公報、WO02/46809号公報に記載の内容が挙げられる。
フィルムと乳剤層との接着を達成するために、表面活性化処理をしたのち、直接セルロースアシレートフィルム上に機能層を塗布して接着力を得る方法と、一旦何がしかの表面処理をした後、あるいは表面処理なしで、下塗層(接着層)を設けこの上に機能層を塗布する方法とがある。これらの下塗層についての詳細は、発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の32頁に記載されている。また本発明のセルロースアシレートフィルムの機能性層についても各種の機能層が発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)32頁〜45頁に詳細に記載されている。
〔セルロースアシレートフィルムの用途〕
本発明で作製されたセルロースアシレートの用途についてまず簡単に述べる。
本発明の光学フィルムは特に偏光板保護フィルム用として有用である。偏光板保護フィルムとして用いる場合、偏光板の作製方法は特に限定されず、一般的な方法で作製することができる。得られたセルロースアシレートフィルムをアルカリ処理し、ポリビニルアルコールフィルムを沃素溶液中に浸漬延伸して作製した偏光子の両面に完全ケン化ポリビニルアルコール水溶液を用いて貼り合わせる方法がある。アルカリ処理の代わりに特開平6−94915号公報、特開平6−118232号公報に記載されているような易接着加工を施してもよい。保護フィルム処理面と偏光子を貼り合わせるのに使用される接着剤としては、例えば、ポリビニルアルコール、ポリビニルブチラール等のポリビニルアルコール系接着剤や、ブチルアクリレート等のビニル系ラテックス等が挙げられる。偏光板は偏光子及びその両面を保護する保護フィルムで構成されており、更に該偏光板の一方の面にプロテクトフィルムを、反対面にセパレートフィルムを貼合して構成される。プロテクトフィルム及びセパレートフィルムは偏光板出荷時、製品検査時等において偏光板を保護する目的で用いられる。この場合、プロテクトフィルムは、偏光板の表面を保護する目的で貼合され、偏光板を液晶板へ貼合する面の反対面側に用いられる。又、セパレートフィルムは液晶板へ貼合する接着層をカバーする目的で用いられ、偏光板を液晶板へ貼合する面側に用いられる。液晶表示装置には通常2枚の偏光板の間に液晶を含む基板が配置されているが、本発明の光学フィルムを適用した偏光板保護フィルムはどの部位に配置しても優れた表示性が得られる。特に液晶表示装置の表示側最表面の偏光板保護フィルムには透明ハードコート層、防眩層、反射防止層等が設けられるため、該偏光板保護フィルムをこの部分に用いることが特に好ましい。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な用途で用いることができ、液晶表示装置の光学補償シートとして用いると効果がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、様々な表示モードの液晶セルに用いることができる。TN(Twisted Nematic)、IPS(In−Plane Switching)、FLC(Ferroelectric Liquid Crystal)、AFLC(Anti−ferroelectric Liquid Crystal)、OCB(Optically Compensatory Bend)、STN(Super Twisted Nematic)、VA(Vertically Aligned)及びHAN(Hybrid Aligned Nematic)のような様々な表示モードが提案されている。また、上記表示モードを配向分割した表示モードも提案されている。セルロースアシレートフィルムは、いずれの表示モードの液晶表示装置においても有効である。また、透過型、反射型、半透過型のいずれの液晶表示装置においても有効である。本発明のセルロースアシレートフィルムを、TNモードの液晶セルを有するTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。本発明のセルロースアシレートフィルムを、STNモードの液晶セルを有するSTN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として用いてもよい。一般的にSTN型液晶表示装置では、液晶セル中の棒状液晶性分子が90〜360度の範囲にねじられており、棒状液晶性分子の屈折率異方性(Δn)とセルギャップ(d)との積(Δnd)が300〜1500nmの範囲にある。STN型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、特開2000−105316号公報に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、VAモードの液晶セルを有するVA型液晶表示装置の光学補償シートの支持体として特に有利に用いられる。本発明のセルロースアシレートフィルムは、OCBモードの液晶セルを有するOCB型液晶表示装置またはHANモードの液晶セルを有するHAN型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。
本発明のセルロースアシレートフィルムは、TN型、STN型、HAN型、GH(Guest−Host)型の反射型液晶表示装置の光学補償シートとしても有利に用いられる。これらの表示モードは古くから良く知られている。TN型反射型液晶表示装置については、特開平10−123478号、WO98/48320号、特許第3022477号の各公報に記載がある。反射型液晶表示装置に用いる光学補償シートについては、WO00/65384号に記載がある。本発明のセルロースアシレートフィルムは、ASM(Axially Symmetric Aligned Microcell)モードの液晶セルを有するASM型液晶表示装置の光学補償シートの支持体としても有利に用いられる。ASMモードの液晶セルは、セルの厚さが位置調整可能な樹脂スペーサーにより維持されているとの特徴がある。その他の性質は、TNモードの液晶セルと同様である。ASMモードの液晶セルとASM型液晶表示装置については、クメ(Kume)他の論文(Kume et al., SID 98 Digest 1089 (1998))に記載がある。
以上述べてきたこれらの詳細なセルロースアシレートフィルムの用途は発明協会公開技報(公技番号 2001−1745、2001年3月15日発行、発明協会)の45頁〜59頁に詳細に記載されている。
以下に本発明の具体的な実施例を記述するが、本発明はこれらに限定されるものではない。
(セルロースアシレートドープの組成)
本発明のセルロースアシレートドープの組成例(組成例1〜組成例4)を以下に示す。
〔組成例1〕
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.8、粘度平均重合度320)
18.0質量部
ノルボルネン系化合物:NB−2(logP=6.9) 1.4質量部
ポリチオール系化合物:PT−1(シグマアルドリッチ社製) 0.6質量部
重合開始剤:IRG184(チバガイギー社製)(化6) 0.05質量部
微粒子:二酸化ケイ素(粒径20nm) 0.1質量部
紫外線吸収剤:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.15質量部
メチレンクロライド 72.0質量部
メタノール 8.0質量部
Figure 2005232328
〔組成例2〕
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.8、粘度平均重合度320)
18.0質量部
ノルボルネン系化合物:NB−48(logP=4.7) 0.9質量部
ポリチオール系化合物:PT−1(シグマアルドリッチ社製) 1.1質量部
重合開始剤:IRG184(チバガイギー社製) 0.05質量部
微粒子:二酸化ケイ素(粒径20nm)) 0.1質量部
紫外線吸収剤:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.15質量部
メチレンクロライド 72.0質量部
メタノール 8.0質量部
〔組成例3〕
セルロースアセテートプロピオネート(アセチル置換度0.8、プロピオニル置換度2.0、粘度平均重合度350) 18.0質量部
ノルボルネン系化合物:NB−2(logP=6.9) 1.4質量部
ポリチオール系化合物:PT−1(シグマアルドリッチ社製) 0.6質量部
重合開始剤:IRG184(チバガイギー社製) 0.05質量部
微粒子:二酸化ケイ素(粒径20nm) 0.1質量部
紫外線吸収剤:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.15質量部
メチレンクロライド 72.0質量部
メタノール 8.0質量部
〔組成例4〕
セルロースアセテートブチレート(アセチル置換度1.1、ブチリル置換度1.7、粘度平均重合度300) 18.0質量部
ノルボルネン系化合物:NB−2(logP=6.9) 1.4質量部
ポリチオール系化合物:PT−1(シグマアルドリッチ社製) 0.6質量部
重合開始剤:IRG184(チバガイギー社製) 0.05質量部
微粒子:二酸化ケイ素(粒径20nm) 0.1質量部
紫外線吸収剤:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.15質量部
メチレンクロライド 72.0質量部
メタノール 8.0質量部
比較に用いたセルロースアシレートドープ液(組成例5,6)液を、次に示す。
〔組成例5(比較)〕
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.8、粘度平均重合度320)
18.0質量部
エチレン性不飽和モノマー:A(化7) 2.0質量部
重合開始剤:IRG184(チバガイギー社製) 0.05質量部
微粒子:二酸化ケイ素(粒径20nm) 0.1質量部
紫外線吸収剤:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.15質量部
メチレンクロライド 72.0質量部
メタノール 8.0質量部
Figure 2005232328
〔組成例6(比較)〕
セルローストリアセテート(アセチル置換度2.8、粘度平均重合度320)
18.0質量部
エポキシモノマー:B(化8) 2.0質量部
重合開始剤:4,4’−ビス(ジ(β-ヒドロキシエトキシ)フェニルスルフォニオ)フェニルスルフィド−ビス−ヘキサフルオロアンチモネート 0.05質量部
微粒子:二酸化ケイ素(粒径20nm)) 0.1質量部
紫外線吸収剤:2(2’−ヒドロキシ−3’,5’−ジ−tert−ブチルフェニル)−5−クロルベンゾトリアゾール 0.15質量部
メチレンクロライド 72.0質量部
メタノール 8.0質量部
Figure 2005232328
上記ドープ液及び比較液を用いて、以下の過程を経て、フィルム、偏光板および液晶表示装置を作製し、評価を行う。
(セルロースアシレートドープの調製)
攪拌羽根を有するステンレス製溶解タンクに、それぞれの溶媒混合溶液によく攪拌しつつ、セルロースアシレート粉体を徐々に添加してドープを調製する。添加後、室温(25℃)に1時間放置後、35℃に維持してセルロースアシレートを膨潤させる。これにメチレンクロライドとメタノールに溶解させた重合性モノマー、メチレンクロライドに溶解させた重合開始剤、さらに微粒子と紫外線吸収剤を添加する。つぎに、このドープは弱い超音波照射することで泡抜きを実施する。脱泡したドープは1.5MPaに加圧した状態で、最初公称孔径5μmの焼結金属フィルターを通過させ、ついで同じく2.5μmの焼結金属フィルターを通過させる。濾過後のドープの温度は35℃に調整してステンレス製のストックタンク内に貯蔵する。ストックタンクは中心軸にアンカー翼を有して周速0.3m/secで常時攪拌される。
(セルロースアシレートフィルムの作製)
上記の溶解法で得られたドープを40℃にし、流延ギーサーを通して表面温度20℃とした鏡面ステンレス支持体上に流延して製膜する。
バンド上に流延されたドープは、最初に平行流の乾燥風を送り乾燥する。乾燥する際の乾燥風からのドープへの総括伝熱係数は24kcal/m2・hr・℃とする。乾燥風の温度はバンド上部で140℃、下部で100℃とする。
流延後5秒間は遮風装置により乾燥風が直接ドープに当らない様にし、その後、2kW高圧水銀灯を用いて、ドープ表面の全光照射量が900mJ/cm2となる条件で光照射する。しかる後に、多数のロールを有する乾燥ゾーンを搬送することで、厚さ60μmのセルロースアシレートフィルムを作製する。
(フィルムのレターデーション評価)
上記の得られたセルロースアシレートフィルムのレターデーション評価を以下の通りにして行なう。なお、フィルムのRe(レターデーション)値およびRth(厚み方向レターデーション)値は、下記(I)および(II)で定義される。
(I):Re=(nx−ny)×d
(II):Rth={(nx+ny)/2−nz}×d
上記(I)および(II)において、nxは、フィルム面内の遅相軸方向(屈折率が最大となる方向)の屈折率、nyはフィルム面内の進相軸方向(屈折率が最小となる方向)の屈折率、nzはフィルムの厚み方向の屈折率、dは単位をnmとするフィルムの厚さである。
サンプルフィルムを任意の部分から1cm×1cmの大きさに切り出す。これを25℃80%rhに3時間以上調湿後、自動複屈折計(KOBRA−21ADH/PR:王子計測器(株)製)を用いて、25℃80%rhにおいて、サンプルフィルム表面に対し垂直方向および、フィルム面法線から±40°傾斜させて方向から波長550nmにおけるレターデーション値を測定する。垂直方向から面内のレターデーション(Re)、垂直方向、±40°方向の測定値から算出する。これらをRe(80)、Rth(80)とする。さらに、これらのサンプルをそのまま用い、25℃10%rh中で測定しRe(10)、Rth(10)を求める。各サンプルについて、下記式に従い湿度Re変化、湿度Rth変化を求め、各9点の測定点の平均を求める。
湿度Re変化=Re(80)とRe(10)の差の絶対値
湿度Rth変化=Rth(80)とRth(10)の差の絶対値
得られた結果を、表1(後記)に示す。
(偏光板の作製とその評価)
iso-プロパノール80重量部に水20重量部を加え、これにKOHを1.5規定となるように溶解し、これを60℃に調温したものを鹸化液として用いる。これを60℃で、上記の各製膜したセルロースアシレートフィルム上に10g/m2塗布し、1分間鹸化する。この後、50℃の温水スプレーを用い、10L/m2・分で1分間吹きかけ洗浄する。特開2001−141926の実施例1に従い、2対のニップロール間に周速差を与え、長手方向に延伸し、厚み20μmの偏光層を調製する。このようにして得た偏光層と、上記鹸化処理したセルロースアシレートフィルムのうちから2枚選び、これらで上記偏光層を挟んだ後、PVA((株)クラレ製PVA−117H)3%水溶液を接着剤として、偏光軸とセルロースアシレートフィルムの長手方向が90度となるように張り合わせ、偏光板とする。
上記のように作製した偏光板を特開2000−154261号公報の図2〜9に記載の20インチVA型液晶表示装置液晶表示装置に25℃60%rh下で取り付けた後、これを25℃10%rhの中に持ち込み、目視で色調変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)で評価する。表示むらの発生している領域を目視で評価し、それが発生している割合(%)を示す。得られた結果を表1に示す。
(光学フィルムの作製とその評価)
特開平11−316378号の実施例1の液晶層を塗布したセルロースアセテートフィルムの代わりに、本発明の鹸化済みのセルロースアシレートフィルムを使用し、これを、特開2002−62431の実施例9に記載のベンド配向液晶セルに25℃60%rh下で取り付けた後、これを25℃10%rhの中に持ち込み、コントラストの変化を目視評価し、色変化の大小を10段階評価(大きいものほど変化が大きい)する。得られた結果を表1に示す。
(評価結果)
各組成物より作製したセルロースアシレートフィルムおよびこれを用いた偏光板および光学フィルムの評価結果を以下に示す。
Figure 2005232328
上記の結果から明らかなように、本発明のセルロースアシレートフィルムの湿度変化に対するレターデーション安定性は、比較例に比べて良好である。さらに、これを用いて作製した偏光板および光学フィルムも比較例に比べて良好な性能を示す。
以上の様に、本発明のセルロースアシレートフィルム及びこれを用いて作製した偏光板および光学補償フィルムは、優れた性能を示す。
本発明のセルロースアシレートフィルムの製造方法を実施する流延製膜ラインの一実施形態の概略図である。
符号の説明
11 ミキシングタンク
12 送液ポンプ
13 フィルタ
14 流延ダイ
15 流延バンド
16 流延側部回転ドラム
17 非流延部側回転ドラム
18 ガイドロール
19 剥ぎ取りロール
20 ガイドロール
21 巻取りロール
22 乾燥部
23 フィルム

Claims (10)

  1. セルロースアシレートと、
    ノルボルネン系化合物、チオール系化合物及び重合開始剤とを、
    有機溶剤に溶解してなることを特徴とする
    セルロースアシレートドープ液。
  2. ノルボルネン系化合物及びチオール系化合物は、いずれか一方又は両方が多官能性化合物である
    請求項1に記載のセルロースアシレートドープ液。
  3. ノルボルネン系化合物及びチオール系化合物の分子量が、いずれも1,500以下である
    請求項1又は2に記載のセルロースアシレートドープ液。
  4. ノルボルネン系化合物の水オクタノール分配係数が、3.0〜15.0である
    請求項1〜3のいずれか一つに記載のセルロースアシレートドープ液。
  5. セルロースアシレートと、
    ノルボルネン系化合物をチオール系化合物及び重合開始剤の存在下に重合させたポリマーとを含有してなることを特徴とする
    セルロースアシレートフィルム。
  6. セルロースアシレートと、ノルボルネン系化合物、チオール系化合物及び重合開始剤とを、有機溶剤に溶解してなるセルロースアシレートドープ液を流延する製膜工程、
    及び有機溶媒を除去する加熱・乾燥工程、
    を含むセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  7. セルロースアシレートと、ノルボルネン系化合物、チオール系化合物及び重合開始剤とを、有機溶剤に溶解してなるセルロースアシレートドープ液を流延する製膜工程、
    得られた膜に活性エネルギー線を照射して重合する工程、及び
    有機溶媒を除去する加熱・乾燥工程、
    を含む請求項6に記載のセルロースアシレートフィルムの製造方法。
  8. 記載の方法で製造されたセルロースアシレートフィルムを用いた光学フィルム。
  9. 請求項5に記載のフィルム、または請求項6〜7に記載の方法により製造されたセルロースアシレートフィルムを貼り付けた偏光板。
  10. 請求項8に記載の光学フィルム又は請求項9に記載の偏光板を用いた液晶表示装置。
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Cited By (4)

* Cited by examiner, † Cited by third party
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KR101789456B1 (ko) 2013-09-13 2017-10-23 후지필름 가부시키가이샤 폴리머 필름, 폴리머 필름의 제조 방법, 편광판 및 액정 표시 장치

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