JP3220837B2 - ハロゲン化銀乳剤およびハロゲン化銀カラー写真感光材料 - Google Patents

ハロゲン化銀乳剤およびハロゲン化銀カラー写真感光材料

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JP3220837B2 JP05211894A JP5211894A JP3220837B2 JP 3220837 B2 JP3220837 B2 JP 3220837B2 JP 05211894 A JP05211894 A JP 05211894A JP 5211894 A JP5211894 A JP 5211894A JP 3220837 B2 JP3220837 B2 JP 3220837B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、写真の分野において有
用なハロゲン化銀乳剤およびハロゲン化銀写真感光材料
に関するものであり、更に詳しくは、潜像保存性に優れ
たハロゲン化銀乳剤およびハロゲン化銀カラー写真感光
材料に関する。
【0002】
【従来の技術】近年、ハロゲン化銀カラー写真感光材料
の分野においては、ISO1600〜3200に代表される超高感
度化フィルムや、ディスクフィルムに代表されるスモー
ルフォーマット化の普及に伴い、益々高感度・高画質化
の要求が高まっている。
【0003】さらに近年は、「撮りっきりミニ」等に代
表されるレンズ付フィルムは手軽で、安価に写真が撮れ
るといった理由で、その需要は益々増加の一途を辿って
おり、フィルムの品質に対する向上は益々要求されると
ころとなっている。レンズ付フィルムの普及に伴い、例
えば夏場の観光地等での撮影の機会も増えているが、そ
の使用状況も様々である。その中でも、ある場所で数枚
の撮影をした後、別の場所で残ったフィルムを撮影する
その間、車内やバックといった熱や湿気の伴った環境下
にさらされるといったケースが頻繁にみられる。そこで
フィルムの高温、高湿度環境下での潜像保存性の向上が
重要になってきている。
【0004】潜像保存性の向上を達成する為の大きな要
因の1つとして挙げられるのが高感度化である。
【0005】高感度化を達成するための最も正当な方法
が、ハロゲン化銀結晶の感光過程での非効率を軽減させ
量子効率を向上させることであるといえる。その量子効
率を高める方法として、ハロゲン化銀結晶の光吸収によ
り生成した光電子と正孔の再結合、および正孔による潜
像銀の漂白を防止する技術が挙げられる。代表的な例と
しては、正孔と反応し正孔を消滅させる小さな銀核をハ
ロゲン化銀の内部あるいは表面に形成付与する技術が還
元増感として良く知られている。
【0006】還元増感の試みは古くから検討されてい
る。
【0007】Carrollは、米国特許第2,487,850号におい
て錫化合物を用い、またLoweらは同第2,512,925号にお
いてポリアミン化合物を用い、またFallensらは、英国
特許第789,823号において、二酸化チオ尿素を用い、さ
らにCollierはPhotographic Science and Engineering
第23巻,第113頁(1979)において種々の還元増感法を試
みた。具体的には、ジメチルアミノボラン、塩化第一
錫、ヒドラジン、高pH熟成、低pAg熟成を採用した。ま
た、特開平2-136852号,同2-196232号などでは還元剤と
してアスコルビン酸の使用を開示している。
【0008】一方、特開平3-196136号及び同4-32832号
にはハロゲン化銀乳剤の潜像保存性の改良に関し、チオ
スルホン酸等の酸化剤の存在下、アスコルビン酸または
その誘導体による還元増感技術が開始されている。
【0009】また、ゼラチンに関しては、高感度化及び
粒状性改良の技術として、特開平3-240035号に核発生及
び成長工程を有する主として双晶より成るハロゲン化銀
写真乳剤の製造方法においてα鎖、β鎖の比率を規定し
たゼラチンを用いる技術、特開平3-204643号には同じく
抽出温度及び透過率を規定したゼラチンを用いる技術、
更に特開平3-243943号には同じく物理抑制度を規定した
ゼラチンを用いる技術、さらには特開平3-239241号にお
いて、ゼラチン本体のアミノ酸の1つであるチロシンの
含有量を規定した技術が知られているが上記いずれの技
術においてもなお、高温、高湿下での潜像保存性に対し
ては、充分なレベルには至っておらず更なる改良が要望
されている。
【0010】
【発明が解決しようとする課題】本発明の目的は、上記
問題点を改良して、高温、高湿度下で長時間保存された
後の潜像保存性に優れたハロゲン化銀乳剤およびハロゲ
ン化銀カラー写真感光材料を提供することにある。
【0011】
【課題を解決するための手段】本発明の上記課題は、以
下の構成により達成された。
【0012】.下記(1)の条件を満たすゼラチンお
よび(2)の条件を満たすハロゲン化銀粒子を含有する
ことを特徴とするハロゲン化銀乳剤。
【0013】(1)ハロゲン化銀粒子の実質的な成長の
際、分散媒として使用されるゼラチンのアデニン含有量
が0.2ppm以下であること。
【0014】(2)粒子内部に還元増感されたハロゲン
化銀粒子であること。
【0015】.前記(1)に記載のアデニン含有量が
0.1ppm以下であることを特徴とする前記記載のハロゲ
ン化銀乳剤。
【0016】.前記(1)の条件を満たすゼラチンお
よび前記(2)の条件を満たすハロゲン化銀粒子を少な
くとも1層のハロゲン化銀乳剤層に含有することを特徴
とするハロゲン化銀カラー写真感光材料。
【0017】.前記(1)に記載のアデニン含有量が
0.1ppm以下であることを特徴とする前記記載のハロゲ
ン化銀カラー写真感光材料。
【0018】以下、本発明について更に詳細に述べる。
【0019】一般的なゼラチンの製造方法は、例えば日
本写真学会編、写真工学の基礎・銀塩写真編(コロナ社
刊、122〜124頁)にもあるように、ゼラチンは、動物の
結合組織の主成分であるコラーゲンから製造され、写真
用ゼラチンの原料としては、牛骨、牛皮、豚皮等が挙げ
られるが、牛骨、牛皮を用いるのが一般的である。又、
コラーゲンの処理方法として酸処理法と石灰処理法の2
種類の方法が存在するが、写真用ゼラチンとしては石灰
処理法を用いるのが一般的であり、本発明に係るゼラチ
ンにおいても石灰処理法を用いるのが好ましい。一例と
して、牛骨から石灰処理により写真用ゼラチンを製造す
る場合、通常、脱灰・石灰処理・抽出・濾過・濃縮・ゲ
ル化・乾燥のプロセスを経る。乾燥した牛骨を4〜8日
程度希塩酸溶液に漬け脱灰を施し、水洗、中和を経て、
ケラチン等を除くために牛の皮や骨を2〜3ヶ月飽和石
灰水中に石灰漬した後、水洗、中和を経て50〜60℃位の
湯で6〜8時間抽出(1番抽出)を行ない、その後5〜10
℃程度高い湯を加え、2番抽出、3番抽出を行う。抽出
後、濾過工程を経て減圧下で一般に60℃以下の温度にて
濃縮し、冷却、ゲル化を経て、25℃位で乾燥して作る。
【0020】本発明に係るゼラチンは上記の製造方法に
おいて、原料として、牛骨のハードボーンの部分を用い
るのが好ましい。ゼラチン抽出温度は60℃以下に特定し
たものを用い、濾過工程後、陽イオン及び陰イオン交換
樹脂による処理の両方を行うことによって達成される。
【0021】本発明に係るゼラチンの抽出温度として
は、好ましくは55℃以下、より好ましくは40℃以下であ
る。
【0022】また、脱イオン工程はゼラチン抽出工程後
のどこで行ってもよいが、濾過工程後に行うのが好まし
い。イオン交換樹脂としては陽イオン交換基として−H
型、−Na型のもの、陰イオン交換基として−OH型、−Cl
型のものがあるが、陽イオン交換基として−H型また陰
イオン交換基として−OH型のものが好ましい。イオン交
換の処理時間は、イオン交換樹脂処理が充分に行われて
ゼラチン溶液からイオン成分が無くなり、ゼラチン溶液
のpH値がおよそ4.9〜5.3程度になるようにイオン交換
樹脂の使用量及び処理時間を定めるのが好ましい。また
処理を行う順番として、先に陽イオン交換樹脂処理を行
うのが好ましい。さらに、イオン交換処理を行ったゼラ
チン溶液は、通常のpH調整剤でpH値を調整してもよい
が、調整せず等電点のpHのままが好ましい。
【0023】本発明においてゼラチン1g当りのアデニ
ン量を測定する方法は写真用ゼラチン試験法(写真用ゼ
ラチン試験法合同審議会刊、第7版、項目19、27〜28
頁)に詳しく記載されており、本発明に係るゼラチンも
ここに記されている方法を用いることによって、ゼラチ
ン中のアデニン含有量を定量することができる。
【0024】本発明に係るゼラチンに関してアデニン含
有量は0.2ppm以下であればよく、好ましくは0.1ppm以
下、さらに好ましくは0.05ppm以下である。
【0025】また、本発明に係るゼラチンは、下記物理
抑制度測定法に従い測定した抑制度が、B液添加開始15
分経時の濁度として60ppm以上であることが好ましく、
更に好ましくは80ppm以上、最も好ましくは120ppm以上
である。
【0026】ここに本発明に係るゼラチンの物理抑制度
測定法を記す。
【0027】 A液 試験用ゼラチン 3.0g 蒸留水 180ml 0.1mol塩化ナトリウム水溶液 3.0ml B液 0.1mol硝酸銀水溶液 3.0ml 1) A液を60℃に加熱溶解後、pHを0.1molKOH及び0.1m
olHNO3にて6.0に調整し、純水で200mlに仕上げる。
【0028】2) A液を200mlガラスビーカーに移し、6
0℃に保温、一定条件で撹拌しB液を瞬時に添加し、一
定条件で撹拌を続ける(撹拌には、羽根径40mmで4枚羽
根の付いた撹拌羽根を回転数300rpmで用いた。)。
【0029】3) B液添加10分後、生成した塩化銀乳剤
を採取し濁度を測定する。濁度測定には三菱化学工業
(株)製濁度計(モデルSEP-PT-501D)を用い、測定セルは
光路長10mmの石英セルを使用した。
【0030】測定時間内では、生成した塩化銀粒子はレ
イリー散乱に従う為、塩化銀粒子径(d)と入射光強度
(i)、透過光強度(I)の間に以下の関係が成立する。
【0031】I/d3 ∝ I/i 即ち、ゼラチンの物理抑制度が低いほど、オストワルド
熟成が進み、粒子は成長するために濁度は上昇する。
【0032】本発明に係るゼラチンにおいて上記物理抑
制度測定法を選定するにあたり、PAGI法による物理
抑制度測定法もあるが、開平3-243943号の7〜9頁にあ
るようにPAGI法では乳剤性能とのよい相関が得られ
なかったことを受け、上記測定法を選定した。
【0033】また、現在ゼラチンのハロゲン化銀写真感
光材料に対する機能が明確になるにつれ、ゼラチンに対
する尺度もPAGI法にある試験項目に留まらず、様々
な解析法が採られている。ゼラチンの構成単位である18
種のアミノ酸残基の一つであるチロシン含量を規定した
ゼラチンをハロゲン化銀粒子成長工程中の分散媒として
使用した技術として特開平3-241337号、同5-26045号等
に記載されている。
【0034】チロシンは通常の蛋白質の構成アミノ酸の
一種で、ゼラチン中にも含有されている。
【0035】これはゼラチン鎖末端のテロペプチド部分
にのみ含有され、写真用ゼラチンの製造方法における石
灰処理の際、処理期間を長くする程加水分解によりゼラ
チンの末端鎖にあたるテロペプチドと共に失われる傾向
があり、またこの末端鎖には写真的に活性なアミノ酸残
基が多いといわれている。
【0036】またDavid S.Fieldは「ザ・ジャーナル・
オブ・フォトグラフィック・サイエンス(J.Phot.Sc
i)」、36巻(1988年)、頁23〜28において、チロシンはハ
ロゲン受容体の性質を有していることに関して述べてお
り、またその定量法についても記載されている。本発明
に係るゼラチンをこの定量法を用いて測定した。
【0037】本発明に係るゼラチンは、チロシン含有量
が乾燥状態で1gあたり7.0〜15.0μモルの範囲である
ことが好ましく、更に好ましくは9.40〜11.0μモルの範
囲である。また、上記の乾燥状態とはゼラチンの含水率
を0%に換算した時の状態を指す。
【0038】本発明のハロゲン化銀乳剤は、種晶から成
長させるものでも良く、核生成を伴うものでも良い。
【0039】本発明のハロゲン化銀乳剤は、沃塩化銀、
沃臭化銀、塩沃臭化銀のいずれであってもよいが、特に
高感度のものが得られるという点で、沃臭化銀であるこ
とが好ましい。
【0040】本発明において調製されるハロゲン化銀乳
剤は、粒子サイズ分布の広い多分散乳剤、粒子サイズ分
布の狭い単分散乳剤など任意であってもよく、それぞれ
が単独の乳剤であっても、これらの乳剤を数種類混合し
たものであってもよい。
【0041】本発明のハロゲン化銀乳剤を用いてハロゲ
ン化銀カラー写真感光材料を作成する際には、単分散乳
剤であることが好ましい。ここで単分散のハロゲン化銀
乳剤としては、平均粒径rを中心に±20%の粒径範囲内
に含まれるハロゲン化銀重量が、全ハロゲン化銀粒子重
量の60%以上であるものが好ましく、より好ましくは70
%以上、更に好ましくは80%以上である。ここに、平均
粒径rは、粒径riを有する粒子の頻度niとri3との積
ni×ri3が最大となる時の粒径riと定義する(有効数
字3桁、最小桁数字は4捨5入する)。ここでいう粒径
とは、球状のハロゲン化銀粒子の場合は、その直径、ま
た球状以外の形状の粒子の場合は、その投影像を同面積
の円像に換算したときの直径である。粒径は、例えば該
粒子を電子顕微鏡で1万倍から5万倍に拡大して撮影
し、そのプリント上の粒子直径または投影時の面積を実
測することによって得ることができる(測定粒子個数は
無差別に1000個以上あることとする)。
【0042】本発明の特に好ましい高度の単分散乳剤
は、 標準偏差/平均粒径×100 = 単分散度 (%) によって単分散度を定義したとき20%以下のものであ
り、更に好ましくは15%以下のものである。
【0043】ここに平均粒径および標準偏差は、上記定
義した粒径riから求めるものとする。単分散乳剤を得
る方法としては、種粒子を含むゼラチン溶液中に、水溶
性銀塩溶液と水溶性ハライド溶液をpAgおよびpHの制御
下ダブルジェット法で加えることによって得ることがで
きる。添加速度の決定に当たっては、特開昭54−48
521号、 特開昭58-49938号を参考にできる。
【0044】本発明のハロゲン化銀乳剤の製造にあたっ
ては、ハロゲン化銀結晶の成長速度に合わせて、結晶成
長時のpAgをコントロールすることができる。結晶成長
時のpAgとしては6〜12が好ましい。ハロゲン化銀生成
時のpAgは、一定でもよく、また階段状に変化させても
連続的に変化させてもよいが、変化させる場合には、ハ
ロゲン化銀粒子が生成するにつれて、pAgを上昇させる
ことが好ましい。
【0045】本発明のハロゲン化銀乳剤の製造にあたっ
ては、製造時の攪拌条件が重要である。
【0046】攪拌装置としては、特開昭62-160128号に
示される銀塩水溶液とハロゲン化物水溶液をダブルジェ
ットで供給する攪拌装置を用い、攪拌回転数としては20
0〜1000回転/分にする事が好ましい。
【0047】本発明のハロゲン化銀乳剤の調製時に、ア
ンモニア、チオエーテル、チオ尿素等の公知のハロゲン
化銀溶剤を存在させることもできるし、ハロゲン化銀溶
剤を使用しなくても良い。
【0048】本発明のハロゲン化銀粒子は、粒子内部に
還元増感されている。
【0049】前記還元増感は、ハロゲン化銀乳剤又は粒
子成長のための混合溶液に還元剤を添加することによっ
て行われる。あるいは、ハロゲン化銀乳剤又は粒子成長
のための混合溶液をpAg7以下の低pAg下で、又はpH7
以上の高pH条件下で熟成又は粒子成長させることによ
って行なわれる。これらの方法を組み合わせて行なう方
法は、本発明において好ましい態様である。
【0050】本発明のハロゲン化銀粒子の還元増感に使
用される還元剤として好ましいものは二酸化チオ尿素,
アスコルビン酸及びその誘導体、第1錫塩が挙げられ
る。他の適当な還元剤としては、ボラン化合物、ヒドラ
ジン誘導体、ホルムアミジンスルフィン酸、シラン化合
物、アミン及びポリアミン類及び亜硫酸塩等が挙げられ
る。添加量は、ハロゲン化銀1モル当たり10-2〜10-8
ルが好ましい。
【0051】低pAg熟成を行なうためには、銀塩を添加
することができるが、水溶性銀塩が好ましく、水溶性銀
塩としては硝酸銀が好ましい。熟成時のpAgは7以下が
適当であり、好ましくは6以下、更に好ましくは1〜3
である(ここで、pAg=−log[Ag+]である)。
【0052】高pH熟成は、例えばハロゲン化銀乳剤あ
るいは粒子成長の混合溶液にアルカリ性化合物を添加す
ることによって行われる。アルカリ性化合物としては、
例えば水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、炭酸ナトリ
ウム、炭酸カリウム、アンモニア等を用いることができ
る。ハロゲン化銀形成にアンモニア性硝酸銀を添加する
方法においては、アンモニアの効果が低下するためアン
モニアを除くアルカリ性化合物が好ましく用いられる。
【0053】還元増感のための銀塩、アルカリ性化合物
の添加方法としては、ラッシュ添加でもよいし、あるい
は一定時間をかけて添加してもよい。この場合には、一
定流量で添加してもよいし、関数様に流量を変化させて
添加してもよい。また、何回かに分割して必要量を添加
してもよい。可溶性銀塩及び/又は可溶性ハロゲン化物
の反応容器中への添加に先立ち、反応容器中に存在せし
めていてもよいし、あるいは可溶性ハロゲン化物溶液中
に混入し、ハロゲン化物とともに添加してもよい。更に
は、可溶性銀塩、可溶性ハロゲン化物とは別個に添加を
行なってもよい。
【0054】本発明のハロゲン化銀乳剤の作成におい
て、銀粒子から結晶成長させる形態を使用する場合は、
低pAg熟成は種乳剤の形成後、すなわち種粒子の脱塩直
前〜脱塩後までの工程の間に硝酸銀を添加して熟成させ
ることが好ましい。特に種粒子の脱塩後に硝酸銀を添加
して熟成させるのが好ましく、熟成温度は40℃以上、5
0℃〜80℃が好ましい。熟成時間は30分以上、50〜15
0分が好ましく用いられる。
【0055】種粒子から成長させる形態において、高p
H熟成を行なう場合は、成長後の粒子の体積に対して、
70%に相当する部分が成長するまでにpH7以上の環境
を少なくとも1回は経て粒子成長させる必要があり、成
長後の粒子の体積に対して、50%に相当する部分が成長
するまでにpH7以上の環境を少なくとも1回は経て粒
子成長させることが更に好ましく、成長後の粒子の体積
に対して、40%に相当する部分が成長するまでにpH8
以上の環境を少なくとも1回は経て粒子成長させること
が特に好ましい。
【0056】本発明のハロゲン化銀乳剤には酸化剤を用
いることができる。酸化剤としては以下のものを使用す
ることができる。例えば、過酸化水素(水)及びその付加
物:H2O2、NaBO2、H2O2-3H2O2、Na4P2O7-2H2O2、2Na2SO
4-H2O2-2H2Oなど。ペルオキシ酸塩:K2S2O3、K2C2O3、K
4P2O3、K2[Ti(O2)C2O4]-3H2O。過酢酸、オゾン、沃素、
臭素、チオスルホン酸系化合物などが挙げられる。
【0057】本発明で用いる酸化剤の添加量は、還元剤
の種類、還元増感条件、酸化剤の添加時期、添加条件に
よりその量に影響を受けるが、用いた還元剤1モル当た
り10-2〜10-5モルが好ましい。
【0058】酸化剤の添加時期は、ハロゲン化銀乳剤製
造工程中であればどこでもよい。還元剤の添加に先立っ
て添加することもできる。
【0059】また、酸化剤を添加した後に、過剰な酸化
剤を中和するために新たに還元性物質を添加することも
できる。これらの還元性物質としては、上記酸化剤を還
元し得る物質であり、スルフィン酸類、ジ及びトリヒド
ロキシベンゼン類、クロマン類、ヒドラジン及びヒドラ
ジド類、p-フェニレンジアミン類、アルデヒド類、アミ
ノフェノール類、エンジオール類、オキシム類、還元性
糖類、フェニドン類、亜硫酸塩、アスコルビン酸誘導体
などがある。これらの還元性物質の添加量は、用いる酸
化剤の量1モル当たり10-3〜103モルが好ましい。
【0060】本発明に係るハロゲン化銀粒子に還元増感
を施す位置としては、粒子内部であれば良く、好ましく
は、ハロゲン化銀の実質的な成長がハロゲン化銀量で50
%終了する以前に還元増感を施すのが好ましく、実質的
な成長が開始される時点がさらに好ましい。
【0061】ここで粒子内部とは、粒子の最表面より50
Åの部分を除く部分を指す。
【0062】本発明においてハロゲン化銀量で50%と
は、本発明におけるハロゲン化銀粒子の実質的な成長の
開始から終了までの間に、該ハロゲン化銀粒子の成長が
行われる保護コロイドを含む水溶液中において形成され
たハロゲン化銀総量の50%を言う。
【0063】本発明のハロゲン化銀乳剤におけるハロゲ
ン化銀粒子の「実質的な成長」とは、該ハロゲン化銀粒
子の成長が行われる保護コロイド(ゼラチン)を含む水溶
液中へ、ハライドイオンと銀イオンとが水溶性のアルカ
リハライド及び水溶性の銀塩として、あるいはハロゲン
化銀微粒子として供給され、ハロゲン化銀粒子の核発生
が終了してから、粒子の成長が終了するまでのハロゲン
化銀乳剤製造工程のことであり、該ハロゲン化銀粒子成
長終了後における脱塩工程以降のハロゲン化銀乳剤の製
造工程は含まれない。
【0064】なお核発生終了とは、核の発生後、核のサ
イズおよび数がFIXされた状態のことを指す。
【0065】本発明のハロゲン化銀乳剤は、種粒子から
成長させるのが好ましい。
【0066】本発明において種粒子とは、当業界で一般
的に知られているように、実質的な成長とは別バッチで
核生成、成長させた後に脱塩を施し、実質的な成長の前
に反応容器中に存在させることができる粒子を指す。
【0067】また、本発明に係るゼラチンは、本発明の
効果を有効に発現させる為に上記した実質的な成長の際
の分散媒として使用されるものであり、核生成中にも使
用されてもよい。
【0068】また当業界では、脱塩後の乳剤にゼラチン
水溶液を加えて、ある温度にて数十分間撹拌分散させた
後、蒸留水を加えて乳剤として一旦仕上げることが一般
的に知られているが、望ましくはこのゼラチン水溶液の
ゼラチンに本発明に係るゼラチンを用い、且つ、上記し
た実質的な成長の際の分散媒として使用されることが最
も好ましい。
【0069】本発明に係るゼラチンは1種単独で用いて
も良いし、2種以上組み合わせて用いても良い。2種以
上のゼラチンを組み合わせる際、ゼラチンのアデニン量
は組み合わされる個々のアデニン量を指すものではな
く、組み合わされたゼラチン全体のアデニン含有量が請
求項1の(1)の条件を満たせば使用できる。
【0070】本発明のハロゲン化銀乳剤は、沃臭化銀か
ら実質的に成るコアと、該コアを被覆するとともに該コ
アの沃臭化銀よりも低い沃化銀含有率を有する沃臭化
銀、又は臭化銀から実質的になるシェルから構成される
沃臭化銀であることが好ましい。
【0071】前記コアは沃化銀を均一に含んでいてもよ
いし、また沃化銀含有率の異なる相から成る多層構造を
持っていてもよい。後者の場合には、沃化銀含有率の最
も高い相の沃化銀含有率が5モル%以上であり、更に好
ましくは10モル%以上であり、且つ、シェルの沃化銀含
有率がコアの最高沃化銀含有率相のそれよりも低ければ
よく、シェルの沃臭化銀含有率は、5モル%以下である
ことが好ましい。
【0072】本発明のハロゲン化銀粒子の表面のハロゲ
ン組成は、7モル%以下であり、5モル%以下であるこ
とがさらに好ましい。
【0073】また、「沃臭化銀から実質的になる」と
は、主に沃臭化銀から成っているが、本発明の効果を損
なわない範囲で塩化銀を含有してもよいことを意味す
る。
【0074】本発明のハロゲン化銀粒子は、粒子を形成
する過程および/または成長させる過程で、カドミウム
塩、亜鉛塩、鉛塩、タリウム塩、イリジウム塩(錯塩を
含む)から選ばれる少なくとも1種を用いて金属イオン
を添加し、粒子内部および/または粒子表面にこれらの
金属元素を含有させることができ、また適当な酸化雰囲
気におくことにより、粒子内部および/または粒子表面
の金属銀に作用して銀イオンに変換せしめる作用を施し
てもよい。
【0075】本発明のハロゲン化銀粒子は、潜像が主と
して表面に形成される粒子あるいは主として粒子内部に
形成される粒子いずれであっても良く、ハロゲン化銀の
サイズとしては、0.05〜5.0μm、好ましくは0.1〜3.0μ
mのものである。
【0076】本発明のハロゲン化銀乳剤は、ハロゲン化
銀粒子の成長終了後に、不要な可溶性塩類を除去したも
のであってもよいし、あるいは含有させたままのもので
も良い。該塩類を除去する場合には、リサーチ・ディス
クロージャー (Research Disclosure,以下RDと略す)
17643号II項に記載の方法に基づいて行なうことができ
る。さらに詳しくは、沈澱成生後、あるいは物理熟成後
の乳剤から可溶性塩を除去するためにはゼラチンをゲル
化させて行なうヌーデル水洗法を用いても良く、また無
機塩類、アニオン性界面活性剤、アニオン性ポリマー
(例えばポリスチレンスルホン酸)、あるいはゼラチン
誘導体(例えばアシル化ゼラチン、カルバモイル化ゼラ
チンなど)を利用した沈澱法(フロキュレーション)を
用いても良い。
【0077】本発明のハロゲン化銀乳剤は、常法により
化学増感することができる。即ち、硫黄増感、セレン増
感、金その他の貴金属化合物を用いる貴金属増感法など
を単独でまたは組み合わせて用いることができる。
【0078】本発明のハロゲン化銀乳剤は、写真業界に
おいて増感色素として知られている色素を用いて所望の
波長域に光学的に増感できる。増感色素は、単独で用い
てもよいが2種類以上を組み合わせて用いても良い。増
感色素と共にそれ自身分光増感作用を持たない色素、あ
るいは可視光を実質的に吸収しない化合物であって、増
感色素の増感作用を強める強色増感剤を乳剤中に含有さ
せても良い。
【0079】本発明のハロゲン化銀乳剤には、カブリ防
止剤、安定剤などを加えることができる。
【0080】本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料
の乳剤層にはカプラーが用いられる。さらに色補正の効
果を有している競合カプラーおよび現像主薬の酸化体と
のカップリングによって現像促進剤、現像剤、ハロゲン
化銀溶剤、調色剤、硬膜剤、カブリ剤、カブリ防止剤、
化学増感剤、分光増感剤および減感剤のような写真的に
有用なフラグメントを放出する化合物を用いることがで
きる。
【0081】本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料
には、フィルター層、ハレーション防止層、イラジュエ
ーション防止層等の補助層を設けることができる。これ
らの層中および/または乳剤層中には現像処理中に前記
ハロゲン化銀カラー写真感光材料から流出するか、もし
くは漂白される染料が含有されても良い。
【0082】本発明のハロゲン化銀カラー写真感光材料
には、マット剤、潤滑剤、画像安定剤、ホルマリンスカ
ベンジャー、紫外線吸収剤、蛍光増白剤、界面活性剤、
現像促進剤や現像遅延剤を添加できる。
【0083】本発明に使用される支持体としては,ポリ
エチレン等をラミネートした紙、ポリエチレンテレフタ
レートフィルム、バライタ紙、三酢酸セルロース等を用
いることができる。
【0084】
【実施例】以下、実施例を挙げて本発明を詳細に説明す
るが、本発明の態様はこれに限定されない。
【0085】実施例1 (ゼラチンA・Bの調製)牛骨のハードボーンを原料と
し、消石灰懸濁液で60日間処理し、36度で抽出後、H型
陽イオン交換樹脂による処理をしその後−OH型陰イオン
交換樹脂による処理を行った。アデニン含有量は0.02pp
m/gである。このゼラチンをAとする。
【0086】ゼラチンAと同様な条件で原料選択をせず
イオン交換樹脂のカラム能力を変えたゼラチンBを得
た。アデニン含有量は0.1ppm/gである。
【0087】(ゼラチンCの調製)牛骨のハードボーン
を原料とし、消石灰懸濁液で60日間処理し、60度で抽出
後、H型陽イオン交換樹脂による処理をしその後−OH型
陰イオン交換樹脂による処理を行った。アデニン含有量
は0.18ppm/gである。このゼラチンをCとする。
【0088】(ゼラチンDの調製)ゼラチンA・Bと同
様な条件にて抽出した後、Na型陽イオン交換樹脂処理の
みを行った。アデニン含有量は0.30ppm/gである。こ
のゼラチンをDとする。
【0089】(ゼラチンEの調製)牛骨を原料とし、消
石灰懸濁液で60日間処理し、70度で抽出後、H型陽イオ
ン交換樹脂による処理をしその後−OH型陰イオン交換樹
脂による処理を行った。アデニン含有量は0.25ppm/g
である。このゼラチンをEとする。
【0090】得られたゼラチンA〜Eのアデニン含有量
測定結果を表1に示す。
【0091】
【表1】
【0092】(脱塩後に低pAg熟成を施した種乳剤T−
1の調製)以下に示す方法によって、2枚の平行な双晶
面を有した種乳剤を調製した。
【0093】 (A液) オセインゼラチン 80.0g 臭化カリウム 47.0g HO(CH2CH2O)m{CH(CH3)CH2O}19.8(CH2CH2O)nH(m+n=9.7)の10重量% メタノール溶液 0.48ml 蒸留水で8000.0mlに仕上げる (B液) 硝酸銀 1200.0g 蒸留水で1600.0mlに仕上げる オセインゼラチン 32.2g (C液) 臭化カリウム 790.0g 沃化カリウム 70.34g 蒸留水で1600.0mlに仕上げる (D液) アンモニア水 470.0ml 40℃で激しく攪拌した(A液)に、(B液)と(C液)
をダブルジェット法により7.7分間で添加し核の生成を
行なった。この間、pBrは1.60に保った。
【0094】その後、30分間かけて温度を20℃に下げ
た。さらに、(D液)を1分間で添加し、引き続き5分
間の熟成を行なった。熟成時のKBr濃度は0.03mol/l、
アンモニア濃度は0.66mol/lであった。熟成終了後、p
Hを6.0に調整し、常法に従って脱塩を行なった。
【0095】脱塩後の乳剤に、10重量%のゼラチン水溶
液1884mlを加え、60℃で15分間撹拌分散させた後、21.0
gの硝酸銀を含む水溶液130mlを添加して乳剤のpAg値を
1.9に調整して還元増感を設し、引き続き60℃で80分間
撹拌熟成させた。その後、14.5gの臭化カリウムを含む
水溶液193mlを添加し、乳剤温度を40℃に下げて蒸留水
を加え5360gの乳剤として仕上げた。この種乳剤粒子を
電子顕微鏡で観察したところ、互いに平行な2枚の双晶
面を有する球状粒子であった。
【0096】この種乳剤粒子の平均粒径は0.217μm、2
枚の平行な双晶面を有する粒子は、全粒子の75%(個数
比)であった。
【0097】(脱塩後に低pAg熟成を施さない種乳剤T
−2の調製)脱塩までは上記種乳剤T−1と同様に調整
し、脱塩後の乳剤に10重量%のゼラチン水溶液を加え、
60℃で30分間撹拌分散させた後、蒸留水を加えて5360g
の乳剤として仕上げた。
【0098】(本発明のハロゲン化銀乳剤Em−1の調
製)以下に示す7種類の溶液〔(溶液A)に上記種乳剤
(T−1)を含む〕を用いて本発明に係る、2枚の平行
な双晶面を有した平板状の単分散乳剤Em−1を調製し
た。
【0099】 (溶液A) ゼラチンA 67.0g 蒸留水 3176.0ml HO(CH2CH2O)m{CH(CH3)CH2O}19.8(CH2CH2O)nH (m+n=9.77) の10重量%メタノール溶液 2.5ml 種乳剤(T−1) 98.51g 蒸留水で3500mlに仕上げる (溶液B) 0.5N硝酸銀水溶液 948ml (溶液C) 臭化カリウム 52.88g ゼラチンA 35.55g 蒸留水で948mlに仕上げる (溶液D) 3.5N硝酸銀水溶液 4471ml (溶液E) 臭化カリウム 1862.2g オセインゼラチン 200g 蒸留水で4471mlに仕上げる (溶液F) 3重量%のゼラチンと、沃化銀粒子(平均粒径0.05μm) から成る微粒子乳剤(*) 2465.5g (*)調製法を以下に示す。
【0100】0.06molの沃化カリウムを含む6.0重量%の
ゼラチン溶液5000mlに、7.06molの硝酸銀と、7.06molの
沃化カリウムを含む水溶液各々2000mlを、10分間かけて
添加した。微粒子形成中のpHは硝酸を用いて2.0にし、
温度は40℃に制御した。粒子形成後に、炭酸ナトリウム
水溶液を用いてpHを6.0に調整した。仕上がり重量は1
2.53kgであった。
【0101】(溶液G) 1.75N臭化カリウム水溶液 反応容器に(溶液A)を添加し、激しく撹拌しながら、
(溶液B)〜(溶液F)を表2に示した組み合わせに従
って同時混合法により添加を行ない、種結晶を成長さ
せ、コア/シェル型ハロゲン化銀乳剤を調製した。
【0102】ここで、(1)(溶液B)、(溶液C)及
び(溶液F)の添加速度、(2)(溶液D)、(溶液
E)及び(溶液F)の添加速度、(3)(溶液D)及び
(溶液E)の添加速度は、それぞれハロゲン化銀粒子の
臨界成長速度に見合ったような時間に対して関数様に変
化させ、成長している種結晶以外に小粒子の発生及びオ
ストワルド熟成により多分散化しないように適切な添加
速度にコントロールした。
【0103】また、結晶成長の全域に渡って、反応容器
内の溶液温度を75℃、pAgを8.8にコントロールした。pA
gをコントロールするために、必要に応じて(溶液G)
を添加した。反応溶液の添加時間に対するその時点での
粒径及び表面を形成するハロゲン化銀相の沃化銀含有率
を表2に示した。
【0104】粒子成長後に、特開平5-72658号に記載の
方法に従い脱塩処理を施し、その後ゼラチンを加え再分
散し、40℃にてpHを5.80、pAgを8.06に調整した。得ら
れた乳剤粒子の電子顕微鏡写真から、平均粒径1.22μ
m、平均アスペクト比1.9、粒径分布13.7%の平板状乳剤
であることが確認された。
【0105】
【表2】
【0106】(比較用乳剤Em−2の調製)さらに、E
m−2の製造方法において、(溶液A)中の種乳剤を
(T−2)にした以外はEm−1と同様の製造方法によ
り、比較用乳剤Em−2を調製した。
【0107】(本発明乳剤Em−3及び4の調製)ま
た、Em−3及び4の製造方法において、ゼラチンをそ
れぞれB及びCにした以外はEm−1と同様の製造方法
により、比較用乳剤Em−3及び4を調製した。
【0108】(比較用乳剤Em−5及び6の調製)ま
た、Em−5及び6の製造方法において、ゼラチンをそ
れぞれD及びEにした以外はEm−1と同様の製造方法
により、比較用乳剤Em−5及び6を調製した。
【0109】(比較用乳剤Em−7の調製)また、Em
−7の製造方法において、ゼラチンをDにした以外はE
m−2と同様の製造方法により、比較用乳剤Em−7を
調製した。
【0110】以上、乳剤Em−1〜7に関して以下の様
に表3にまとめた。
【0111】
【表3】
【0112】実施例−2(ハロゲン化銀カラー写真感光
材料試料の作成) Em−1〜Em−7に金・硫黄増感を施し、これらの乳
剤を用いてトリアセチルセルロースフィルム支持体上に
下記に示すような組成の各層を順次支持体側から形成し
て、多層カラー写真感光材料を作成した。
【0113】以下のすべての記載において、ハロゲン化
銀写真感光材料中の添加量は、特に記載のない限り1m2
当たりのグラム数を示す。また、ハロゲン化銀およびコ
ロイド銀は銀に換算して示し、増感色素においては同一
層内のハロゲン化銀1mol当たりのモル数で示した。
【0114】試料1 多層カラー写真感光材料である試料1(本発明の乳剤E
m−1を第5層に使用)の構成は以下の通りである。
【0115】 試料1 第1層:ハレーション防止層 黒色コロイド銀 0.16 紫外線吸収剤(UV-1) 0.20 高沸点溶媒(OIL-1) 0.16 ゼラチン 1.60 第2層:中間層 化合物(SC-1) 0.14 高沸点溶媒(OIL-2) 0.17 ゼラチン 0.80 第3層:低感度赤感性層 沃臭化銀乳剤A 0.15 沃臭化銀乳剤B 0.35 増感色素(SD-1) 2.0×10-4 増感色素(SD-2) 1.4×10-4 増感色素(SD-3) 1.4×10-5 増感色素(SD-4) 0.7×10-4 シアンカプラー(C-1) 0.53 カラードシアンカプラー(CC-1) 0.04 DIR化合物(D-1) 0.025 高沸点溶媒(OIL-3) 0.48 ゼラチン 1.09 第4層:中感度赤感性層 沃臭化銀乳剤B 0.30 沃臭化銀乳剤C 0.34 増感色素(SD-1) 1.7×10-4 増感色素(SD-2) 0.86×10-4 増感色素(SD-3) 1.15×10-5 増感色素(SD-4) 0.86×10-4 シアンカプラー(C-1) 0.33 カラードシアンカプラー(CC-1) 0.013 DIR化合物(D-1) 0.02 高沸点溶媒(OIL-1) 0.16 ゼラチン 0.79 第5層:高感度赤感性層 本発明の乳剤Em−1 0.95 増感色素(SD-1) 1.0×10-4 増感色素(SD-2) 1.0×10-4 増感色素(SD-3) 1.2×10-5 シアンカプラー(C-2) 0.14 カラードシアンカプラー(CC-1) 0.016 高沸点溶媒(OIL-1) 0.16 ゼラチン 0.79 第6層:中間層 化合物(SC-1) 0.09 高沸点溶媒(OIL-2) 0.11 ゼラチン 0.80 第7層:低感度緑感性層 沃臭化銀乳剤A 0.12 沃臭化銀乳剤B 0.38 増感色素(SD-4) 4.6×10-5 増感色素(SD-5) 4.1×10-4 マゼンタカプラー(M-1) 0.14 マゼンタカプラー(M-2) 0.14 カラードマゼンタカプラー(CM-1) 0.06 高沸点溶媒(OIL-4) 0.34 ゼラチン 0.70 第8層:中間層 ゼラチン 0.41 第9層:中感度緑感性層 沃臭化銀乳剤B 0.30 沃臭化銀乳剤C 0.34 増感色素(SD-6) 1.2×10-4 増感色素(SD-7) 1.2×10-4 増感色素(SD-8) 1.2×10-4 マゼンタカプラー(M-1) 0.04 マゼンタカプラー(M-2) 0.04 カラードマゼンタカプラー(CM-1) 0.017 DIR化合物(D-2) 0.025 DIR化合物(D-3) 0.002 高沸点溶媒(OIL-4) 0.12 ゼラチン 0.50 第10層:高感度緑感性層 沃臭化銀乳剤D 0.95 増感色素(SD-6) 7.1×10-5 増感色素(SD-7) 7.1×10-5 増感色素(SD-8) 7.1×10-5 マゼンタカプラー(M-1) 0.09 カラードマゼンタカプラー(CM-1) 0.011 高沸点溶媒(OIL-4) 0.11 ゼラチン 0.79 第11層:イエローフィルター層 黄色コロイド銀 0.08 化合物(SC-1) 0.15 高沸点溶媒(OIL-2) 0.19 ゼラチン 1.10 第12層:低感度青感性層 沃臭化銀乳剤A 0.12 沃臭化銀乳剤B 0.24 沃臭化銀乳剤C 0.12 増感色素(SD-9) 6.3×10-5 増感色素(SD-10) 1.0×10-5 イエローカプラー(Y-1) 0.50 イエローカプラー(Y-2) 0.50 DIR化合物(D-4) 0.04 DIR化合物(D-5) 0.02 高沸点溶媒(OIL-2) 0.42 ゼラチン 1.40 第13層:高感度青感性層 沃臭化銀乳剤C 0.15 沃臭化銀乳剤E 0.80 増感色素(SD-9) 8.0×10-5 増感色素(SD-11) 3.1×10-5 イエローカプラー(Y-1) 0.12 高沸点溶媒(OIL-2) 0.05 ゼラチン 0.79 第14層:第1保護層 沃臭化銀乳剤(平均粒径0.08μm、沃化銀含有率1.0モル%) 0.40 紫外線吸収剤(UV-1) 0.065 高沸点溶媒(OIL-1) 0.07 高沸点溶媒(OIL-3) 0.07 ゼラチン 0.65 第15層:第2保護層 アルカリ可溶性マット剤(平均粒径2μm) 0.15 ポリメチルメタクリレート(平均粒径3μm) 0.04 滑り剤(WAX-1) 0.04 ゼラチン 0.55 尚上記組成物の他に、塗布助剤Su−1、分散助剤Su
−2、粘度調整剤、硬膜剤H−1、H−2、安定剤ST
−1、かぶり防止剤AF−1、平均分子量:10,000及び
平均分子量:1,100,000の2種のAF−2、及び防腐剤
DI−1を添加した。
【0116】上記試料に用いた乳剤は、下記のとおりで
ある。尚平均粒径は、立方体に換算した粒径で示した。
また、各乳剤は、金・硫黄増感を最適に施した。
【0117】
【表4】
【0118】試料はマルチスライドホッパー型コーター
にて、1回目は第1層から第8層までを、2回目はその
上に第9層から第16層までをそれぞれ同時に塗設した。
試料1の銀塗布量は6.25g/m2、乾燥膜厚は18μmであ
り、特定写真感度は420であった。
【0119】
【化1】
【0120】
【化2】
【0121】
【化3】
【0122】
【化4】
【0123】
【化5】
【0124】
【化6】
【0125】
【化7】
【0126】
【化8】
【0127】
【化9】
【0128】
【化10】
【0129】
【化11】
【0130】上記の様にして作成した試料1の第5層に
添加した本発明に係る乳剤Em−1を以下の様に変え
て、試料2〜7を作成した。
【0131】 試料名 2 3 4 5 6 7 使用乳剤 Em−2 Em−3 Em−4 Em−5 Em−6 Em−7 処理工程は以下の通りである。
【0132】 処理工程 1.発色現像 3分15秒 38.0±0.1℃ 2.漂 白 6分30秒 38.0±3.0℃ 3.水 洗 3分15秒 24〜41℃ 4.定 着 6分30秒 38.0±3.0℃ 5.水 洗 3分15秒 24〜41℃ 6.安 定 3分15秒 38.0±3.0℃ 7.乾 燥 50℃以下 各処理工程において使用した処理液組成は下記の通りで
ある。
【0133】 <発色現像液> 4-アミノ-3-メチル-N-エチル-N-(β-ヒドロキシエチル) アニリン・硫酸塩 4.75g 無水亜硫酸ナトリウム 4.25g ヒドロキシルアミン・1/2硫酸塩 2.0g 無水炭酸カリウム 37.5g 臭化ナトリウム 1.3g ニトリロ三酢酸・三ナトリウム塩(一水塩) 2.5g 水酸化カリウム 1.0g 水を加えて1リットルとし、pH=10.1に調整する。
【0134】 <漂白液> エチレンジアミン四酢酸鉄アンモニウム塩 100.0g エチレンジアミン四酢酸二アンモニウム塩 10.0g 臭化アンモニウム 150.0g 氷酢酸 10.0g 水を加えて1リットルとし、アンモニア水を用いてpH
=6.0に調整する。
【0135】 <定着液> チオ硫酸アンモニウム 175.0g 無水亜硫酸ナトリウム 8.5g メタ亜硫酸ナトリウム 2.3g 水を加えて1リットルとし、酢酸を用いてpH=6.0に調
整する。
【0136】 <安定液> ホルマリン(37%水溶液) 1.5ml コニダックス(コニカ株式会社製) 7.5ml 水を加えて1リットルとする。
【0137】上記のようにして作成した各試料を各々2
つに分け一方を、赤色光(R)を用いてセンシトメトリ
ー用ウエッジ露光(1/200")を施した後、作成直後の
相対感度として、露光後1分以内に現像処理を開始し、
Dmin(最小濃度)+0.15の濃度を与える露光量の逆数の相
対値として求め、試料1の感度を100とする値で示した
(100に対して、値が大きいほど高感度であることを示
す)。
【0138】潜像保存性の関しては、他方の試料に上記
と同様の赤色光(R)を露光後、55℃、相対湿度80%で
7日間放置した後、現像処理を行い、上記試料1の作成
直後の相対感度を100とする値に対して各試料の相対感
度を求めた。その結果を表5に示す。
【0139】
【表5】
【0140】表5に示す結果から明らかなように、本発
明に係る乳剤Em−1,3,4を含む本発明の試料1,
3,4は高感度であり、かつ上記諸条件による環境下に
おいても保存性は十分に改良されていることがわかる。
これらの中でも、本発明のベストの組み合わせを満たす
乳剤Em−1を用いた試料1は特に優れている。
【0141】上述のごとく、本発明によれば潜像保存性
に優れるハロゲン化銀乳剤およびハロゲン化銀カラー写
真感光材料を得ることができる。
【0142】また、緑感性層、青感性層の乳剤を本発明
の乳剤と置き換えた場合も同様の効果が得られた。
【0143】
【発明の効果】本発明により、高温、高湿度下で長時間
保存された後の潜像保存性に優れたハロゲン化銀乳剤お
よびハロゲン化銀カラー写真感光材料を提供することが
できる。

Claims (4)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下記(1)の条件を満たすゼラチンおよ
    び(2)の条件を満たすハロゲン化銀粒子を含有するこ
    とを特徴とするハロゲン化銀乳剤。 (1)ハロゲン化銀粒子の実質的な成長の際、分散媒と
    して使用されるゼラチンのアデニン含有量が0.2ppm以下
    であること。 (2)粒子内部に還元増感されたハロゲン化銀粒子であ
    ること。
  2. 【請求項2】 前記(1)に記載のアデニン含有量が0.
    1ppm以下であることを特徴とする請求項1記載のハロゲ
    ン化銀乳剤。
  3. 【請求項3】 前記(1)の条件を満たすゼラチンおよ
    び前記(2)の条件を満たすハロゲン化銀粒子を少なく
    とも1層のハロゲン化銀乳剤層に含有することを特徴と
    するハロゲン化銀カラー写真感光材料。
  4. 【請求項4】 前記(1)に記載のアデニン含有量が0.
    1ppm以下であることを特徴とする請求項3記載のハロゲ
    ン化銀カラー写真感光材料。
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