JP2932614B2 - ポリエステル強撚糸 - Google Patents

ポリエステル強撚糸

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Description

【発明の詳細な説明】 [産業上の利用分野] 本発明はポリエステル強撚糸に関するものである。
本発明のかかる強撚糸は、織物、編物などにされ、そ
の特徴を生かして高級衣料用途に最適に用いられるもの
である。
[従来の技術] 従来、シボ布帛は繊維束に1000〜3000T/M程度の撚を
かけ、或いは仮ヨリ加工を行なって歪みを与えておき、
これを製織しやすいように撚止めセットし製布する。次
いで、ロータリーワッシャー、連続リラクサー、液流染
色機等のシボ立て装置の中に入れ、40〜100℃の温浴中
で揉布作用を加え、繊維束の撚を解撚させ、シボと呼ば
れる凹凸感のある布帛を得るものである。いかにシボ立
ち性を大きくするかが、シボ質を大きく左右するもので
ある。なお、シボ立て加工後、布帛は風合調整のアルカ
リ減量加工を行ない、染色し仕上げられる。
しかしながら、ポリエステルは高結晶性、高剛性のた
め、ナイロンや絹、レーヨンなどに比べて、シボ立ちが
劣る欠点があることが周知である。このため、ナイロン
などこれらの素材が通常、常圧でシボ立てできるのに対
し、ポリエステルの高圧下110〜120℃の温度で、且つ強
い揉布作用を加えたり、或いは繊維束に2500〜3500T/M
のできるだけ多くの強い撚をかけることが行なわれる
が、シボ立ちの改善効果は低い。また、高圧シボ立てに
よるワッシャシワ、シボむら等のシボ欠点が発生した
り、強い撚をかけ過ぎるとことで、ビリや地割れ等の不
均整なシボ質を惹起しやすいものである。従って、ナイ
ロン素材では常圧で容易にシボ立てができるデシン、チ
リメン等の高級チリメンを、ポリエステルを素材として
得るのは困難であった。
これらの問題に対し、次のようなシボ立て方法が提案
されている。
シボ立て時にポリエステルの膨潤剤としてキャリヤー
を用いる方法(特公昭61−56352、特開昭56−140166、
特開昭58−76573)や、高圧水流でシボ立てする方法
(特開昭59−179868)、圧接ギヤロールでシボ立てする
方法(特開昭59−179869)などの加工法、或いは6000m/
分以上の紡糸速度で製糸したポリエステル(特開昭54−
106647)や自発伸長するポリエステル(特開昭55−1069
4)、比重の大きい高結晶化ポリエステル(特公昭51−2
3619)などが提案されている。
しかしながら、これらの加工法には、それぞれ、キャ
リヤー臭により作業環境が劣ること、特殊なシボ立て装
置を必要とし、汎用性に乏しいこと、および、製糸面で
は高速製糸のための過大な設備を必要とすること、ポリ
エステルポリマーが特定され普遍性に欠けることなどい
ずれも問題が残っていた。
また、通常、シボ立て後に布帛を染色するものである
が、ポリエステルは難染性のゆえ、前記ナイロン、絹、
レーヨン等の常圧可染性素材と混用した場合、常圧染色
すると、ポリエステルの色が淡くなり、これらの常圧可
染性素材との同色性が得られない。
一方、通常のポリエステルの染色温度である130〜135
℃で染色すると、同色性は得られるが、混用する常圧可
染性素材の強度、伸度が大幅に低下し、且つ、風合が損
なわれ、ガサガサした風合となる。
したがって、同色性と物性、風合などの兼ね合いから
110〜120℃程度の染色温度で妥協点を見い出しつつ、問
題をかかえた状態で生産されているのが現状である。
かかる問題を解決せんがため、次のような常圧可染型
ポリエステルが提案されている。
ナトリウムスルホイソフタル酸を5モル%(8重量
%)以上共重合したカチオン染料可染型ポリエステル
が、たとえば、特開昭61−34022号、特開昭60−246847
号、特開昭60−173185号、特開昭60−88190号などにそ
れぞれ開示されている。
さらに、芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸或
いは脂肪族ジオールを共重合させた易染性ポリエステル
繊維が、例えば、特開昭51−130320号、特開昭57−3016
9号などに開示されている。
しかしながら、ナトリウムスルホイソフタル酸を共重
合したカチオン染料可染型ポリエステルは、染色性は高
められるものの、単繊維強度が2.0〜2.5g/d程度と低い
こと、収縮応力が2.5〜2.8g/d程度と小さく、加工で十
分な収縮が得られないこと、耐薬品性が乏しい、カチオ
ン染料の耐光堅牢度が乏しいことの問題がある。
芳香族ジカルボン酸や脂肪族ジカルボン酸あるいは脂
肪族ジオールを共重合させた易染性ポリエステル繊維
は、常圧可染化に近づくものの、問題点も多くなる。
例えば、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸等の
脂肪族ジカルボン酸や、脂肪族ジオールのうち、ブタン
ジオール、ネオペンチルグリコール等を共重合したポリ
エステルや、イソフタル酸、1,2−ビス(フェノキシ)
エタン−4,4−ジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸を
共重合したポリエステル繊維では、常圧可染とするには
共重合率を15重量%以上とする必要があり、そのため
に、原糸強度の低下、耐光堅牢度の低下、原糸の黄化、
耐熱性の低下、製糸性不良等の問題があり、満足すべき
ものではなかった。
また、かかる常圧可染型ポリエステルは、いずれもシ
ボ立ち性は通常のポリエステル並みであり、シボ立ち
性、シボ質を改善できるものはなかった。
[発明が解決しようとする課題] 本発明者らは、かかる従来技術おける欠点に鑑み、強
撚用ポリエステルについて鋭意検討した結果、特定の組
成、収縮特性、物性を有するポリエステルを強撚するこ
とによって、シボ立ち性、シボ質が大幅に改善でき、且
つ常圧で染色できることを見い出し、本発明に到達した
ものである。
即ち、本発明の目的はシボ立ち性がよく、シボムラや
地割れ、ビリ等の欠点のない均製なシボ質を有し、且ナ
イロンや絹等と同色性があり、これらの混用品と同時に
常圧染色できるポリエステル強撚糸を提供することであ
る。
[課題を解決するための手段] 上記課題を解決するために本発明のポリエステル強撚
糸は次の構成を有する。すなわち、 ポリエステル強撚糸であって、該ポリエステルが平均
分子量500〜4000のポリエチレングリコールを6.0〜10重
量%共重合し、かつ、抗酸化剤を含有する常圧可染性ポ
リエステルであり、その単繊維強度が3.0〜6.0g/dで、
沸騰水収縮率が3〜23%であり、かつ、該強撚糸のヨリ
係数が70〜500であることを特徴とするポリエステル強
撚糸である。
本発明に用いるポリエステルは平均分子量500〜4000
のポリエチレングリコールを6.0〜10重量%共重合する
ものである。これにより本組成のポリエステルがシボ立
ち性、シボ質に対して著しい向上効果を奏するものであ
るので、これを図によって説明する。
第1図は本発明のポリエステル強撚糸に用いるポリエ
ステル(A)と比較のための常圧カチオン染料可染型で
ある5−ナトリウムスルホイソフタル酸5モル%共重合
ポリエステル(B)およびポリエステルホモポリマー
(C)をそれぞれ用いた強撚チリメン織物のシボ立て温
度とシボ立ち性の関係を示したものである。本発明のポ
リエステル強撚糸に用いるポリエステル(A)は常圧カ
チオン染料可染型ポリエステル(B)、ポリエステルホ
モポリマー(C)にくらべて低温領域からのシボ立ちが
始まり、最終温度においてもシボ立ち性が高く、シボ質
が良好であることが分かる。
本発明のポリエステル強撚糸に用いるポリエステル
(A)のシボ立ち性が大きい理由については、明確でな
いが、ガラス転位点Tgが60℃と低く、非晶領域が多い等
によるポリマーのもつソフトセグメントの分子運動が低
温領域から活発になり、シボ立ちに大きく寄与している
ものと推察される。
本発明のポリエステル強撚糸に用いるポリエステルは
平均分子量500〜4000のポリエチレングリコールを共重
合するものである。平均分子量が500未満の場合には、
共重合時にポリエチレングリコールの一部が飛散し、共
重合が一定化せず、得られた延伸糸の強伸度、収縮率、
染ムラを生じ、好ましくない。一方、平均分子量が4000
を越える場合には、共重合されない高分子量が増大する
ため、染色性の低下、耐光堅牢度が低下し、好ましくな
い。
本発明のポリエステル強撚糸に用いるポリエステルの
ポリエチレングリコールの共重合率は6.0重量%〜10重
量%とするものである。6.0重量%未満では、シボ立ち
性、シボ質の改善効果が不十分であり、且つ常圧可染性
は得られない。一方、10重量%を越える場合は、シボ
質、発色性は十分であっても、とくにアルカリ減量加工
後の原糸強度が低く、耐アルカリ性、仮ヨリ加工糸特性
が低下し、最終製品の品位が低下する。
かかる常圧可染性ポリエステルは、通常のポリエステ
ルに比較して、ポリエチレングリコールを共重合してい
る分、上述したように耐酸化分解性が低下するので、そ
のまま用いたのでは紡糸、後加工、特に染色加工、とり
わけアルカリ減量などの加熱加工において、強力低下を
惹起する。単繊維強度3〜6g/dを維持するために、抗酸
化剤を該常圧可染性ポリエステル中に配合することが、
本発明において重要である。すなわち、かかる抗酸化剤
を配合したことにより、常圧可染性ポリエステル繊維で
ありながら、染色やアルカリ減量しても単繊維強度を高
く維持し得たものである。
本発明の強撚糸に用いる素材である前記ポリエステル
には、必要に応じて他の共重合成分を共重合したり、他
のポリマをブレンドしても良い。例えば、ペンタエリス
リトール、トリメチロールプロパン、トリメリット酸、
ホウ酸等の鎖分岐剤を少割合共重合したものであっても
良い。
また、この他に任意の添加剤、例えば、酸化チタン等
の艶消し剤、紫外線吸収剤、難燃剤、顔料などを必要に
応じて含有させてもよい。
本発明のポリエステル強撚糸に用いるポリエステルは
常圧可染性を示すものであるが、本発明では常圧可染性
を次のように定義する。即ち、 98℃染色時の黒色明度L98と130℃染色時の黒色明度L
130との差が1.0%以下である。L98とL130との差が1.0%
を越える場合には、130℃染色時の発色に対する98℃染
色時の発色が不充分であり、完全な常圧可染性は得られ
ない。
本発明において、L98、L130とは前記のとおり、それ
ぞれ98℃染色時の黒色明度、130℃染色時の黒色明度で
あって、次の方法で測定した値をいう。
<L98、L130の測定方法> ポリエステルフィラメントの繊維から靴下編地(一口
筒編地)を編成し、次いで精練剤としてサンデットC−
29(三洋化成(株)製)を用い常法により98℃、20分間
煮沸下で、精練処理し、風乾後、これをフリー状態で18
0℃、3分間乾熱セットした後に後述の条件で染色、水
洗、還元洗浄、水洗、風乾する。
次いで、黒発色の明度を多光源分光測色計MSC−2
(スガ試験機(株)製)にてL値(%)を測定する。
染色温度が98℃の場合の黒色明度(L値)をL98、染
色温度が130℃の場合の黒色明度(L値)をL130とす
る。
染色条件: (イ)染色:Dlanlx Black BG−FS 200%品、(三菱化
成(株)製) 染色濃度:7%owf 染色助剤:ニッカサンソルト#1200(日華化学工
業(株)製) 染色助剤濃度:0.5g/ 染色浴PH:6 染色浴比:1/30 (ロ)水洗 (ハ)還元洗浄 洗浄剤濃度 洗浄剤:ハイドロサルファイト 2g/ 苛性ソーダ 2g/ サンデットG−29 1g/ (三洋化成(株)製) 洗浄温度,時間:80℃、20分 浴比:1/30 (ニ)水洗、風乾 本発明に用いるポリエステル繊維の単繊維強度は3.0
〜6.0g/dとするものである。単繊維強度が3.0g/d未満で
は強撚糸の糸切れ、耐アルカリ性、製品物性が低下し、
実用性に乏しい。一方、6.0g/dを越えるポリエステル繊
維を得るのは一般に困難である。
本発明に用いるポリエステル強撚糸の沸収は3〜23%
とするものである。3%未満では収縮不足となり、シボ
立ち性が乏しい、セットによる形態安定性が乏しい、絞
り感のある風合が得られない等の問題があり、好ましく
ない。一方、23%を越える場合は、収縮が高すぎて、風
合が粗硬化する。解撚トルクが原糸収縮によって打ち負
かされ、シボ質が細かくなり、大シボのチリメンが得ら
れない、から好ましくない。特に、更に好ましくは6〜
18%である。
なお、本発明に用いるポリエステル繊維の収縮応力は
特に限定するものではないが、0.4〜0.8g/dが好まし
い。ここで、収縮応力とは、乾熱100〜200℃のピーク温
度における単繊維の発現応力をいう。
本発明のポリエステル強撚糸に用いるポリエステルの
収縮率を制御する方法については特に限定するものでは
ないが、通常の紡糸速度(1000〜1500m/分)で紡糸した
のち、延伸時に熱板や熱ピンで120〜190℃の範囲で熱処
理する方法で達成できる。また、本組成にイソフタル酸
やビスフェノール等の第4成分を少量共重合し、高収縮
糸を得る方法や、いったん延伸糸したものを仮ヨリ加工
機等で150〜210℃で再熱処理し、低収縮糸を得る方法な
ども適用できる。
なお、本発明において沸騰水収縮率の測定は次の方法
で行なうものである。
<沸騰水収縮率の測定> ポリエステルフィラメント延伸糸を15mg/dの荷重をか
けて、測長した値をl0とする。
これを綛状にし、ガーゼで包み98℃,20分間熱湯処理
する。次いで風乾し、処理前と同様の荷重で測長した値
をl1とし、次式により沸騰水収縮率を求める。
S(%)=[(l0−l1)/l0]×100 本発明の強撚糸の原糸形態は、フィラメント、紡績糸
いずれであっても良い。フィラメントは生糸或いは仮ヨ
リ糸にそのまま撚をかけて用いることが好ましい。
本発明の強撚糸の繊度は、30〜400Dの範囲のものが好
ましく、布帛の組織、形態によって適宜選定する。例え
ば、和装綸子の場合は30〜50D、ジューゼットクレープ
の場合は50〜100D、シフォンジョーゼット,パレス,デ
シンクレープなどの場合は50〜75D、チリメン;の場合
は150〜400Dが好適である。
本発明の強撚糸に用いる単繊維繊度は、通常0.5d〜5d
のものが好ましく用いられる。
単繊維繊度の小さい糸をタテ糸に用いたデシンやチリ
メンは、シボ質がより均整化するので好ましい。
本発明のポリエステル強撚糸のヨリ係数は70〜500と
するものである。70未満のものは、シボ立ち性が劣る。
一方、500を越えるものは撚が強すぎてビリが発生し、
且つ風合が硬くなり、実用性に乏しい。
ここで、ヨリ係数とは次式で求めた値をいう。
ただし、T:ヨリ数(回/m),D:総繊度(デニール) 本発明のポリエステル強撚糸において繊度とヨリ係数
の好ましい組合せを例示すれば、次のようである。
本発明のポリエステル強撚糸においては、上記ヨリ係
数で強撚をかけたのち、製織しやすいように常法により
ヨリ止めセットするのが一般的である。ヨリ止めは常法
のスチーム方式を適用し、通常のポリエステルと同様に
80〜85℃、20〜30分間処理する。なお、本発明に用いる
前記ポリエステルポリマーは通常のポリエステルにくら
べてセットされ易い性質があり、セット温度を通常のポ
リエステルホモポリマーにくらべ10℃程度低くすること
ができる。
本発明の強撚糸は、ヨリ止めセットした後、目的の布
帛形態に製織、製編される。製布条件は常法に従って行
ない得る。
次いで、シボ立て精練加工は常法のロータリーワッシ
ャー、液流染色機、拡布式リラクサー、吊練槽等を適用
することができる。
染色は常圧下、90℃でキャリヤーを用いることなく分
散染料で染色する。染色後は常法に従って、洗浄し、仕
上げする。
なお、染色前に風合加工としてアルカリ減量加工をす
ることも、通常のポリエステルと同様に適用することが
できる。但し、減量速度が通常のポリエステルに対し
て、4〜5倍速いので、アルカリ濃度の低い浴で、調整
して行なうことが好ましい。
本発明のポリエステル強撚糸では、上記した常圧可染
性ポリエステル100%使いで用いられるほか、常圧可染
性ポリエステルにナイロン、絹、レーヨン等の常圧可染
性素材を好ましく混用することができる。また、本発明
のポリエステル強撚糸は、スパン糸の場合は、ウールや
ポリアクリル、綿等の混紡糸を混用することができる。
混用素材や混用形態は特に限定されるものではない。
以下、本発明を実施例により、更に説明する。
[実施例] なお、本実施例中の評価項目は次のようにして測定し
た。
<シボ立ち性> A.ヨコ収縮率、タテ収縮率 シボ立て前の生機を基準とし、シボ立て後の織物の幅
方向、長さ方向の収縮変化率を求めた。数値が大きくな
るほどシボ立ち性が良好である。
B.厚み シボ立て後の織物の厚さ(mm)のダイヤル厚み計(尾
崎製作所(株)製)で測定した。数値が大なるほどシボ
立ち性が良好である。
C.シボ立ち指標 タテ収縮率(%)、ヨコ収縮率(%)、厚み(mm)の
全て乗じたもので、数値が大なるほどシボ立ち性が良好
である。
<シボ質> 肉眼判定し、シボが高く密なるものを良好とし、◎:
極めて良好,○:良好,△:やや悪い,×:悪い,×
×:極めて悪いの5段階で評価した。
<シボムラ、地割れ、ビリ、処理ムラ> 肉眼判定し、欠点がないものを良好とし、W0:全くな
く良好,W1:ほとんどなく良好,W2:すべてあり悪い,W3:す
べてあり極めて悪いの4段階で評価した。
<発色明度> 強撚糸布帛を分散染料で染色し、染色物の表面の明度
を多光源分光測定計MSC−2(スガ試験機(株)製)に
てL値(%)を測定した。値が小さい程発色性が良好で
ある。
<同色性> ポリエステルと常圧可染性素材を混用した布帛におい
て、ポリエステルを分散染料で染色し、更に常圧可染性
素材を該素材に適した染料で染色した色相を等級比較判
定した(5級:色相が極めてよく似ており良好,4級:色
相がよく似ており良好,3級:色相がやや似ており普通,2
級:色相があまり似ていない,1級:色相が似ず悪い)。
<布帛の風合評価> 布帛を次の4段階に官能評価した。◎:ソフトでふく
らみがあり適度の張り、腰があるもの,○:これに準ず
る良好なもの,△:ソフト感、ふくらに欠け、硬く劣る
も,×:粗硬で劣るもの。
<染色濃度> 染色濃度(%owf)は分散染料の場合は、ポリエステ
ルに対する重量比、酸性染料の場合はナイロンまたは絹
に対する重量比を表わす。
総合評価は、◎:最も優れているもの,○:良好なも
の,△:若干問題あるもの,×:問題があるものの4段
階ににそれぞれ評価した。
(実施例1) <常圧可染性ポリエステルの製造方法> ジメチルテレフタレート100部、エチレングリコール8
0部、抗酸化剤イルガノックス−1010(チバ・ガイギー
社製)0.3部、ジメチルポリシロキサン(東芝シリコー
ン(株)製シリコーンオイル)0.01部、酢酸コバルト0.
04部、三酸化アンチモン0.04部の混合物を130℃〜230℃
に加熱し、メタノールを抽出してエステル交換反応せし
めた後、平均分子量1000のポリエチレングリコールを8.
3部添加し、さらに230℃で30分間反応させた。その後、
トリメチルホスフェート0.03部を添加し、5分後に0.05
部の二酸化チタンを20重量%のエチレングリコールスラ
リーとして添加し、低重合体を得た。得られた低重合体
をさらに230℃から280℃に徐々に昇温するとともに、大
気圧から1mmHg以下の高真空まで徐々に減圧して重縮合
させ、極限粘度0.703、軟化点257℃の改質ポリエチレン
テレタレートを得た。
このようにして得られたポリエステル中の平均分子量
1000のポリエチレングリコールの共重合率は7.5倍であ
った(実施例1)。
また、平均分子量1000のポリエチレングリコールをそ
れぞれ6.6部、11.0部添加した以外は上記とまったく同
様に共重合して、平均分子量1000のポリエチレングリコ
ールの共重合率が6.0重量%(実施例1)、10.0重量
%(実施例1)の共重合ポリエステルを得た。
得られたポリエステルチップを乾燥機内の雰囲気温度
150℃で、1mmHg以下の減圧を維持して5時間乾燥した。
該乾燥チップを孔数24個の口金を用い、紡糸温度290
℃、紡糸速度1350m/minで紡糸した。引続き、ホットロ
ーラー温度80℃、熱板温度165℃、延伸倍率3.37倍、延
伸速度800m/minで延伸し、75d,24filの延伸糸を得た。
得られた延伸糸(実施例1)は単繊維強度5.2g/d、
伸度30%、沸収11%、収縮応力0.72g/dの糸物性を有し
ていた。また、延伸糸(実施例1)は単繊維強度5.2g
/d、伸度31%、沸収10.5、収縮応力0.75g/d、延伸糸
(実施例1)は単繊維強度5.0g/d、伸度32%、沸収11
%、収縮応力0.71g/dであった。
このようにして得られたポリエステル延伸糸を3本揃
えて150Dにし、それぞれ24ゲージの靴下編地を編成し
た。
次いで常法により精練、セット、染色しL98、L130
測定した。結果を表1に示す。
<強撚糸織物の製造方法> 一方、前記フィラメント糸を2本引き揃えて150Dと
し、それぞれヨリ係数188、ヨリ数2300回/mの撚を加
え、85℃,30分間スチーム下、ヨリ止めセットした。ヨ
リはイタリー式加撚糸機を用い、ヨリ止めは真空式スチ
ームセッターを用いて行なった。
次いで、タテ糸のナイロン6フィラメント(70D,69fi
l、ヨリ数:150回/m)に前記ポリエステル強撚糸をそれ
ぞれ交織して、チリメン織物に製織した。生機幅:131c
m、タテ密度120本/吋、ヨコ密度69/吋とした。
次いで、ロータリーワッシャで45分かけて昇温し、98
℃で20分間シボ立て加工した。次いで中間セットし、ア
ルカリ減量した。ポリエステルの減量率は25重量%とし
た。次いで染色し、仕上げた。
なお、染色は分散染料Resoline Blue FBL(バイエル
社製)0.5%owfと酸性染料Xylene Fast Blue PR(サン
ド社製)0.5%owfを混合し、キャリヤーを用いることな
く、98℃で60分間染色した。染色後は常法に従ってソー
ピングした。
織物は仕上幅92cm、タテ密度171本/吋、ヨコ密度80
本/吋であった。
評価結果を表1に示す。
実施例1、実施例1、実施例1の試料は、いず
れもシボ立ち性にすぐれ、シボムラや地割れのない良質
のシボ質であった。また、常圧可染性を示し、ナイロン
との同色性にすぐれた高級なチリメン織物が得られた。
なお、シボ立て加工、染色は、ノンキャリヤーで行な
うことがで、効率よく行なうことができた。
(比較例1〜3) 平均分子量1000のポリエチレングリコールの共重合率
を変えた以外、実施例1と全く同様にして重合、製糸を
行なった。
比較例1は、平均分子量1000のポリエチレングリコー
ルの共重合率を4.0重量%とした場合、比較例2は、平
均分子量1000のポリエチレングリコールの共重合率を12
重量%とした場合であり、比較例3は、ポリエステルホ
モポリマーを用いた場合である。
延伸糸の単繊維強度、比較例1,2,3の順に、5.3g/d、
4.3g/d、5.3g/dであった。
このようにして得られたポリエステル延伸糸を150D双
糸にし、それぞれ24ゲージで靴下編地を編成し、実施例
1と同様の評価を行なった。
結果を表1に併せて示す。
また、2本引揃えて150Dとし、チリメン織物として同
様に評価した。
なお、比較例1,2においてはキャリヤーを用いること
なく、一方、比較例3においては、キャリヤーT−40
(一方社(株)製)を5%owf添加し、115℃、60分間染
色したほかは、同様に評価した。
比較例1はシボ立ちが劣り、比較例2は強度が低く、
比較例3は常圧可染を示さず、いずれも問題があった。
(実施例2,比較例4) 平均分子量1000のポリエチレングリコールを8.0重量
%共重合した以外は実施例1と同様に重合した。延伸は
延伸時の熱板温度を120〜180℃に変更しながら、延伸糸
の沸収を6.4%(実施例2)、9.7%(実施例2)、
14.6%(実施例2)にそれぞれ制御し、製糸した。但
し、糸使いは150D,72filとした。延伸糸の単繊維強度は
実施例2,2,2の順に5.1g/d、5.0g/d、5.0g/dであ
った。これらの延伸糸はいずれも常圧可染性を示してい
た。
次いで、得られた延伸糸にヨリ係数213、ヨリ数2600
回/mの撚をかけ、75℃,20分間スチーミング処理し、ヨ
リ止めセットした。
次いで、同様のポリマーを用いた延伸糸50D、48fil
(単繊維繊度1d)のタテ糸(タテ撚数200回/m)に前記
強撚糸をそれぞれヨコ糸に用いてチリメン織物に製織し
た。生機幅:132cm、タテ密度118本/吋、ヨコ密度68本
/吋であった。
次いで、ロータリワッシャーで45分かけて昇温し、98
℃,20分間シボ立て処理し、中間セットし、減量率27重
量%でアルカリ減量し、染色し、仕上げた。染色はブラ
ウンの分散染料でキャリヤーを用いることなく、98℃、
60分間染色した。
結果を表2に示す。
一方、比較例として延伸糸の熱板温度を高めて、延伸
糸の沸収を2.7%に制御した比較例4、および熱板温
度を低めて沸収を25.0%にした比較例4をそれぞれ実
施例2と同様に処理した後、同様に評価した。結果を表
2に併せて示す。
実施例2で得た試料(実施例2、実施例2、実施
例2)は、シボ立ち性、シボ質にすぐれ、極めて良好
な特性を示していた。
一方、比較例で得た試料のうち、比較例4はシボム
ラ、地割れ欠点があり、また、比較例4は硬い風合
で、それぞれ問題であった。
(実施例3) 平均分子量1000のポリエチレングリコールを7.5重量
%共重合した。実施例1の延伸糸75D,24filを用い、
旋回式熱処理により嵩高加工糸を得た。加工糸の単繊維
繊度4.5g/d、沸収4.2%であった。
次いで、イタリー式撚糸機でヨリ係数を80(実施例3
)、300(実施例3)、400(実施例3)にそれぞ
れ制御し、ヨリ数の評価をした。
なお、ヨリ止めセットは85℃で30分間行ない、布帛は
それぞれ、タテ糸およびヨコ糸に用いて、ジョーゼット
クレープ織物に製布した。生機幅:135cm、タテ密度79本
/吋、ヨコ密度71本/吋であった。
次いで、液流式染色機を用いて、45分かけて昇温し、
98℃で20分間シボ立てした。次いで、中間セット、減量
率25%でアルカリ減量し、染色し、仕上げた。なお、染
色はグレーの分散染料で、キャリヤーを用いることなく
98℃で60分間染色した。
結果を表3に示す。
一方、比較例として、ヨリ係数を60にした比較例5
、550にした比較例5を実施例3に従って同様に評
価した。結果を表3に併せて示す。
実施例で得た試料(実施例3、実施例3、実施例
3)はいずれもシボ立ち性、シボ質、風合いにすぐれ
た極めて良好な特性を示していた。
一方、比較例で得た試料のうち、比較例5はシボム
ラ、地割れ欠点が、また、比較例5は硬い風合であ
り、それぞれ問題があった。
[発明の効果] 本発明によれば、シボ立ち性がよく、良質のシボ質を
有し、且つナイロンや絹等と同色性があり、常圧可染性
を示すポリエステル強撚糸を提供することが可能となっ
た。
【図面の簡単な説明】
第1図は、それぞれ本発明のポリエステル強撚糸(A)
と従来の常圧可染性ポリエステル強撚糸(B)、通常の
ポリエステルホモポリマーからなる延伸糸(C)をそれ
ぞれ用いた強撚チリメン織物のシボ立ち性を示す図であ
る。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 FI D03D 15/04 D03D 15/04 (56)参考文献 特開 昭61−160420(JP,A) 特開 昭56−107014(JP,A) 特開 昭50−126917(JP,A) 特開 昭59−179869(JP,A) 特開 昭61−34022(JP,A) 特開 昭54−106647(JP,A) 特開 昭59−179868(JP,A) 特公 昭55−10694(JP,B2) 特公 昭61−56352(JP,B2) (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D02G 3/00 - 3/38 D03D 15/04 D01F 6/62 - 6/86

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】ポリエステル強撚糸であって、該ポリエス
    テルが平均分子量500〜4000のポリエチレングリコール
    を6.0〜10重量%共重合し、かつ、抗酸化剤を含有する
    常圧可染性ポリエステルであり、その単繊維強度が3.0
    〜6.0g/dで、沸騰水収縮率が3〜23%であり、かつ、該
    強撚糸のヨリ係数が70〜500であることを特徴とするポ
    リエステル強撚糸。
  2. 【請求項2】該抗酸化剤が、該ポリエステル中に0.05〜
    1.0重量%配合されている請求項1記載のポリエステル
    強撚糸。
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