JP2891296B2 - γ−アミノ酪酸を多量に含有する食品素材およびその製造方法 - Google Patents
γ−アミノ酪酸を多量に含有する食品素材およびその製造方法Info
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Description
富化した食品素材およびその製造方法に関し、詳しくは
グルタミン酸および/またはグルタミン酸ナトリウムに
酵母を作用させることによって、γ−アミノ酪酸を富化
した食品素材を製造する方法と当該食品素材に関する。
れ、神経抑制作用、精神安定などの機能を有しているこ
とが分かり、最近は血圧降下作用、脳の新陳代謝促進作
用、動脈硬化の予防、二日酔い防止、皮膚の活性化(シ
ミ防止)などに効果ある物質として注目され、その開
発、研究が進められてきた。既に、1987年に農林水
産省野菜・茶業試験場では、茶葉を嫌気的に処理して得
た茶を「ギャバロン茶」として開発している(T.Tsushi
da and T.Murai: Agric. Biol. Chem., 51, 2865-2871
(1987))。この「ギャバロン茶」には、乾物100g中
250mg、抽出液には50mg/100g程度のGA
BAが含まれ、通常の茶のGABA含有量10〜30m
g/100gに比較してかなり多い。
れていることが知られ、加工処理してGABAを富化し
た食品素材およびGABAの製造法が特開平7−213
252号公報に開示されている。例えば、温度40℃、
pH5.5〜6.0の湯中での最適条件で処理した場
合、コシヒカリでは1時間後にGABAは180mg
(9倍)、8時間後に14倍の含有量になる。GABA
の含有量は米の品種によって異なり、北海269号はコ
シヒカリの2倍以上蓄積(550mg/100g、前記
「ギャバロン茶」の3倍)し、冷水でも3時間浸せば美
味しくなり、GABAを摂取したい場合は、一晩浸せば
よいという。さらに、米糠を水に漬けて抽出する場合、
水に含まれる酸素のためにGABA合成酵素が作用し難
く、抽出量が少ない。そこで、抽出に用いる水を沸騰さ
せて溶存酸素を除去した後、米糠に7〜8時間漬けて作
用させることによって、GABAを大量に生成する方法
を開発した例もある。通常の抽出では2.9mg/10
0mlであるのに、この方法によると35.7mg/1
00mlに増大したという報告がある。コシヒカリの胚
芽には、25.4mg/100gのGABAが含まれる
が、40℃の湯に1時間浸すのみで、220mg/10
0gに増加し、4時間では310mg/100g、pH
5.5の湯では、4時間で415mgに達し、ラットの
餌に該処理胚芽10%を加えて機能性を検討したとこ
ろ、血圧が13.1%降下し、「ギャバロン茶」よりも
優れた効果があると述べている。
血圧を下げる効果のある漬物も提案されている。これ
は、グルタミン酸ナトリウムを添加した野菜に乳酸菌を
加える方法であり、漬物には前記「ギャバロン茶」の3
〜4倍量のGABAが含まれる上に、乳酸菌による爽や
かな食味もあり、歯切れもよく、健康志向の低塩漬物で
ある。
GABAの含有量を増加させても、食品素材として他の
食品への利用面が限られ、漬物の場合は、食品そのもの
であり、食品素材としては利用し難いなどの問題点があ
る。また、グルタミン酸脱炭酸酵素(グルタミン酸デカ
ルボキシラーゼ、EC4.1.1.15)を用いれば、GABAを
大量に生産することが可能であるが、酵素剤は高価であ
り、ピリドキサールリン酸を補助因子として添加する必
要がある等、反応条件が煩雑であり、実用化し難い。な
お、この酵素はエシェリヒア・コリ,クロストリジウム
・パーフリンゲンスなどの微生物やカボチャ,ニンジン
などの高等植物、動物の脳組織などに存在する。したが
って、例えば生野菜(マッシュルーム等のキノコ類も含
む)にグルタミン酸やグルタミン酸ナトリウムを振りか
けて混合し、所定時間放置すれば、GABAを生成させ
ることが可能である。しかしながら、これらの方法は工
業的規模での実施には適さない。
問題点に鑑み、従来のGABAの製造法とは異なる効果
的な方法を開発し、併せて食品素材として幅広い利用が
可能なGABAを多量に含有する食品素材を提供するこ
とを目的とする。
および/またはグルタミン酸ナトリウムに酵母を作用さ
せることを特徴とするγ−アミノ酪酸(以下、GABA
と略記する。)を富化した食品素材の製造方法に関し、
さらにGABAを富化した酵母に関する。
よび/またはグルタミン酸ナトリウムに酵母を加えて作
用させることによって、GABAを簡便に、かつ多量に
生成することができ、この処理物はそのまま食品素材と
してもよく、所望により該処理物全体を濃縮、乾燥して
食品素材とすることもできる。
本発明で用いる酵母は、グルタミン酸やグルタミン酸ナ
トリウムに作用してGABAを生成し得るものであれば
よく、例えばサッカロミセス属、カンジダ属、ピシア
属、ハンゼニュラ属、トルロプシス属、デバリオマイセ
ス属などの酵母があるが、食品素材としての利用を考慮
すると、通常はサッカロミセス属に属する酵母、特にサ
ッカロミセス・セレビシアが好ましい。このような酵母
の具体例としてはパン酵母、ビールや日本酒等の醸造用
酵母、ワイン酵母、焼酎酵母などが使用できる。特に生
育pHの低い焼酎酵母やワイン酵母、生育温度の低い醸
造用酵母などが好適である。一般に、酵母は廃糖蜜を含
む培地に30℃程度の温度で培養すると、一部がGAB
Aに変換されるが、その生成量は多くない。GABAの
生成量を多くすることを目的として、グルタミン酸量を
増加させると、逆にGABAの生成率が低下する。これ
は、酵母が生きているために、グルタミン酸の一部を資
化し、グルタミン酸添加量の増加は、酵母の生育阻害を
起こしてGABAの生成率が低下するものと考えられ
る。
またはグルタミン酸ナトリウムに酵母を加える場合、酵
母として自己消化物あるいはアセトン処理したものを用
いることが好ましい。なお、生酵母や自己消化処理した
酵母は、GABA生成率はアセトン処理酵母よりも低下
するが、本発明に使用することができる。自己消化処理
した酵母を用いると、濾過が困難である等の不利な点も
ある。ここで、自己消化は、既知の手法に従って行えば
よく、例えば生酵母の細胞を化学的もしくは物理的に破
壊する方法がある。生酵母に酢酸エチル、トルエン、ク
ロロホルムなどの有機溶媒を添加して酵母の膜構造を破
壊して細胞中の分解酵素の作用により細胞を破壊する方
法は、大量処理が可能で、GABA生成に関与する酵素
の抽出効果も高いが、やや長時間を要することが難点で
ある。また、ホモジナイザーなどの機械を用いて酵母を
物理的に破壊して得た酵母破砕物を利用することがで
き、その他に市販の圧搾パン酵母なども用いることがで
きる。
行うことができる。酵母を蒸留水などで洗浄した後、蒸
留水に懸濁し、該懸濁液にアセトン、好ましくは−10
℃〜−20℃の冷アセトンに攪拌しながら加え、所定時
間攪拌後、−15℃程度の冷凍室に放置したのち、濾過
などの固液分離操作により得た固形物を、未だ乾かない
うちに冷アセトンで洗浄し、次いで乾燥する。さらに、
必要に応じて粉末化してもよい。アセトン処理をする
と、酵母細胞の液腔や原形質に含まれる水や細胞膜など
の結合水がアセトン中に拡散し、細胞が乾燥状態とな
り、比較的容易に乾燥粉末を得ることができる。
ナトリウムに酵母を加えてGABAを生成する反応は、
グルタミン酸および/またはグルタミン酸ナトリウムに
対して重量比で2〜50倍量、好ましくは10〜20倍
量の酵母を加えてpH3.0〜7.0、好ましくはpH
4.0〜6.0、温度25〜45℃、好ましくは30〜
40℃で行えばよい。反応時間は、反応条件により任意
に選択できるが、通常は30分〜24時間、好ましくは
1〜2時間が適当である。この反応は、バッチ式、半連
続式、連続式などいずれの形式で行ってもよく、連続式
の場合は、酵母をカラムに充填し、これにグルタミン酸
および/またはグルタミン酸ナトリウムの溶液を通す方
法、すなわちバイオリアクターとしての利用が好適であ
る。粉末状のアセトン処理酵母を充填すると、密充填と
なり、流速が遅くなる場合は、セライト等の通液補助剤
を加えるとよく、また該粉末酵母をエピクロルヒドリン
などで処理してから用いる方法も有効である。
質について検討したところ、サイクロデキストリン類
(以下、CDと略記することがある。)を添加すると、
GABAの生成速度が速まり、生成率も改善されること
が分かった。すなわち、α−CD,β−CD,γ−C
D,CD環にグルコース,マルトースなどの枝を持つ分
岐CD並びにこれらの混合物を反応系に0.1〜6倍
量、好ましくは0.2〜2倍量加えることによって、上
記した効果が奏される。ここで、CDとしてはいずれも
使用できるが、反応効率の点からはα>β>γの順であ
り、分岐CDの場合も同様である。また、CDは一度に
添加してもよく、数回に分けて加えてもよい。この他
に、ピリドキサールリン酸,食塩などの塩素化合物等の
賦活剤の添加、無酸素状態での反応などGABAの生成
率、生成速度を高めることができる条件を本発明の方法
に採用することができる。また、有機酸やATPなどの
阻害剤を反応系から取り除くことによってもGABAの
生成率を高めることができる。
含有する反応液は、そのまま食品素材して用いてもよ
く、また使用目的に応じて適宜精製して用いる。食品素
材として用いる酵母は、通常GABAを600mg/1
00g以上含んでいる。
るが、本発明はこれらに限定されるものではない。製造
例1市販の圧搾パン酵母(オリエンタル酵母工業(株)
製)20gを予め蒸留水で洗浄(8,000rpm×1
5分、2回)し、沈澱物に蒸留水50mlを加えて懸濁
液とした。この懸濁液を冷アセトン(約−15℃)30
0mlに、急速攪拌しながらゆっくり加え、懸濁液全量
を加えた後、攪拌を3分間継続した。次に、この冷アセ
トン溶液を冷凍室(約−15℃)で20分間放置し、浮
遊物が生じていたならば、これを除去したのち、ブフナ
ー濾斗で吸引濾過し、濾紙上の固形物が乾かないうちに
再度冷アセトン50mlで2回洗浄した。この固形物を
ガラスシャーレに移し、デシケーター中で乾燥させた。
乾燥酵母を乳鉢で磨砕して得た粉末をアセトン処理粉末
酵母とした。
L−グルタミン酸溶液(0.1M酢酸緩衝液でpH5.
0に調整)1mlに加え、37℃で1時間反応させた。
このときのGABA生成率(%)を第1表に示す。な
お、GABAの生成量は、反応液を100℃の沸騰水中
で10分間加熱処理して反応を停止したのち、遠心分離
によって得た上澄液を薄層クロマトグラフィー(TL
C)および高速液体クロマトグラフィー(HPLC)に
より分析して求めた。また、L−グルタミン酸とGAB
Aを一定の割合で混合し、その面積比からGABAの生
成率を求めた。
った。 薄層プレート: Kieselgel 60 F254 (層厚 0.5mm) サンプル: 2μlをスポット 展開溶媒: n−プロパノール:水(32:18、V/V) 温度: 室温 約7cm展開 展開後、薄層プレートを110℃で乾燥(プレヒーター
使用)し、0.2%ニンヒドリン溶液(n−ブタノール
にニンヒドリンを0.2%濃度に溶解)を噴霧し、再度
110℃で乾燥、発色させた。これにより、L−グルタ
ミン酸とGABAは赤紫色に呈色する。
酵母の添加量が増すに従いGABAの生成量も増え、
0.2g程度でL−グルタミン酸の約50%がGABA
に変換される。なお、0.5g以上の添加では、反応液
が移動し難くなるが、反応は進行することを確認した。
5:0.1M酢酸緩衝液、pH5.5〜8.0:0.1
Mリン酸緩衝液)に溶解したL−グルタミン酸溶液1m
lに製造例1で得たアセトン処理粉末酵母0.1gを3
7℃で1時間作用させ、GABAの生成率を求めた。結
果を第2表に示す。
pH4.5付近で最高値を示したが、pH3.0〜7.
0の広い範囲で実施できる。
5.0に調整)1mlに製造例1で得たアセトン処理粉
末酵母0.1gを加え、37℃で所定時間反応させ、G
ABA生成率の経時的変化を調べた。結果を第3表に示
す。表から明らかなように、2時間後からGABA生成
率はほぼ一定となり、12時間後にはL−グルタミン酸
の半量以上がGABAに変換された。
5.0に調整)1mlに製造例1で得たアセトン処理粉
末酵母0.1gを加え、所定温度で1時間反応を行い、
GABA生成率を検討した。結果を第4表に示す。表か
ら明らかなように、GABAの生成率は40℃付近で最
高となり、25〜45℃の範囲で実施可能であることが
分かった。
でpH5.0に調整)1mlに製造例1で得たアセトン
処理粉末酵母0.1gを加え、37℃で1時間作用させ
てGABA生成率を検討した。結果を第5表に示す。表
から明らかなように、GABAの生成率は基質であるL
−グルタミン酸濃度は1%までは40%以上の高い変換
率を示したが、さらに濃度を高めると、変換率は急速に
低下する。
5.0に調整)1mlに製造例1で得たアセトン処理粉
末酵母0.1gと所定濃度の各種CD1mlを加え、3
7℃で1時間反応を行い、GABA生成率を検討した。
結果を第6〜8表に示す。なお、β−CDは溶解性に劣
るので、2gのβ−CDを10mlの12%エタノール
溶液に溶解して用いた。そのため、反応液には終濃度6
%のエタノールが含まれる。表から明らかなように、各
CDとも0.5%の添加でGABA生成率20%以上と
高い値を示し、特に6グルコース環のサイズで高い生成
率を示した。CDの添加量は、基質に対して0.1〜1
倍が適当であり、6倍以上では生成率の減少が認められ
た。
20gを用いて、製造例1と同様の方法でアセトン処理
粉末酵母を製造した。この粉末酵母2gを1%L−グル
タミン酸溶液(0.1M酢酸緩衝液でpH4.5に調
整)10mlに加え、37℃で1時間反応させた後、全
量を減圧濃縮してから減圧下に60℃で乾燥して2.2
gの乾燥粉末を得た。この粉末中のGABA含量は48
mgであり、そのまま調味料として利用できる味を有し
ていた。
ムを使用したこと以外は、実施例1と同様にして2.3
gの乾燥粉末を得た。この粉末のGABA含有量は49
mgであった。
同様にして5.2gの乾燥粉末を得た。この粉末のGA
BA含有量は52mgであった。
1%L−グルタミン酸溶液(0.1M酢酸緩衝液でpH
4.8に調整)10mlを加え、30℃で6時間培養し
た後、110℃で乾燥して1.42gの乾燥粉末を得
た。この粉末のGABA含有量は12mgであった。
に酢酸エチル40mlを加え、液状になるまで攪拌し
た。次いで、4℃で16時間放置後、水20mlを加
え、室温下で2時間攪拌した。遠心分離(8,000×
20分)により残渣を除いたのち、分液ロートで酢酸エ
チル層と水層に分け、水層を抽出液とした。この抽出液
に5%L−グルタミン酸ナトリウム溶液(0.1M酢酸
緩衝液でpH5.0に調整)10mlを加え、37℃で
1時間反応させた。得られた液中のGABA含有量は4
7mgであった。
ルタミン酸溶液(0.1M酢酸緩衝液でpH5.0に調
整)10mlに懸濁し、さらに1%α−CD溶液10m
lを加え、37℃で1時間反応させた。反応終了後、上
澄み液をHPLCにより分析したところ、GABAへの
変換率は49.1%であった。
は、実施例7と同様に実施した。その結果、GABAへ
の変換率は47.6%であった。
イトを混合し、カラム(ガラス管:サイズ内径10mm
×10cm)に充填し、37℃の温浴中に沈め、ペリス
タリックポンプで1%L−グルタミン酸溶液(0.1M
酢酸緩衝液でpH5.0に調整)を30分間循環させた
後、取り出した。その結果、GABA変換率36%の溶
液を得た。同様の操作を5回繰り返したが、GABA変
換率はいずれも同等であった。
グルタミン酸および/またはグルタミン酸ナトリウムか
ら大量のGABAを生成させることができる。この反応
物全体をそのまま液状で、あるいは濃縮したり、さらに
は乾燥、粉末化してGABAを多量に含む食品素材とし
て利用することができる。この食品素材は、機能性調味
料等の製造原料として用いることができる。本発明によ
り得られる食品素材は、通常100gあたり1g以上の
GABAを含んでおり、味質も優れていることから、各
種食品の製造に利用することができる。さらに、GAB
Aを40%以上の高率で含む製品も得られ、必要に応じ
て精製し、純品を得ることも可能である。
Claims (7)
- 【請求項1】 グルタミン酸および/またはグルタミン
酸ナトリウムに酵母を作用させることを特徴とするγ−
アミノ酪酸を富化した食品素材の製造方法。 - 【請求項2】 酵母が、アセトン処理したものである請
求項1記載の方法。 - 【請求項3】 グルタミン酸および/またはグルタミン
酸ナトリウムとアセトン処理酵母を混合し、pH3.0
〜7.0、温度25〜45℃で処理することを特徴とす
る請求項1記載の方法。 - 【請求項4】 アセトン処理酵母を充填したカラムにグ
ルタミン酸および/またはグルタミン酸ナトリウムを通
すことを特徴とする請求項1記載の方法。 - 【請求項5】 サイクロデキストリンを添加することを
特徴とする請求項1記載の方法。 - 【請求項6】 サイクロデキストリンを、グルタミン酸
および/またはグルタミン酸ナトリウムに対して10〜
100%(容量)の割合で添加する請求項5記載の方
法。 - 【請求項7】 γ−アミノ酪酸を600mg/100g
以上含有する酵母。
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JPH09238650A JPH09238650A (ja) | 1997-09-16 |
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JPH0759534A (ja) | 甘味調味料の製造法 |
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