JP3422972B2 - イネ科植物のγ−アミノ酪酸含量を高める方法 - Google Patents

イネ科植物のγ−アミノ酪酸含量を高める方法

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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明はイネ科植物体のγ−
アミノ酪酸の含量を高める方法、この含量を高められた
イネ科植物体、細片化物もしくは搾汁またはこれらの乾
燥粉末、並びにこの乾燥粉末を含む、食品素材、または
医薬品原料に関する。
【0002】
【従来の技術】γ−アミノ酪酸(以下、GABAとい
う)は、血圧降下作用を有することから、高血圧症の人
々のためにGABAを多く含有する食品の開発が検討さ
れている。例えば、従来から、お茶の製造過程で、摘採
した茶葉を嫌気条件に置き、茶葉中にGABAを多量に
蓄積させた、いわゆるギャバロン茶が知られている。ま
た、特開平8−173111号公報には、コーヒー生葉
を無酸素状態で処理後110℃以上の高温で熱処理、乾
燥処理をする方法でGABA濃度の高いコーヒー葉茶を
得たことが記載されている。さらに、特開平9−205
989号公報には、茶葉に赤外線を照射してGABAの
含量を向上させることが記載されている。
【0003】他方、イネ科植物の緑葉、例えば麦類の若
葉は、ビタミン類、ミネラル類、不溶性食物繊維に富
み、有害物質の吸着、腸内環境の改善、コレステロール
の吸収抑制、食後血糖値の急上昇防止、スーパーオキサ
イドディスムターゼ(SOD)の活性化などの効果を有
する健康食品の素材として注目を浴びている。このよう
な健康食品素材が高濃度でGABAを含有すれば、上記
の効果に加えさらに抗高血圧効果が期待できる。
【0004】
【発明が解決しようとする課題】そこで、GABAを高
濃度で含有するイネ科植物由来の食品素材が望まれてい
る。
【0005】
【課題を解決するための手段】発明者らは、イネ科植物
に含まれる新規な有用成分について検討を行った結果、
イネ科植物に抗高血圧成分として知られるGABAが含
まれていることを発見した。そして、これらのイネ科植
物の葉または茎をグルタミン酸および/またはその塩ま
たはそれらを含有する他の食品素材を含む溶液に浸漬す
ることにより、イネ科植物の葉または茎中のGABA含
量が高められることを見出して、本発明を完成させた。
以下、イネ科植物の葉および/または茎を総称して「イ
ネ科植物体」という。
【0006】すなわち、本発明は、イネ科植物体をグル
タミン酸および/またはその塩またはそれらを含有する
他の食品素材を含む溶液に浸漬する工程を含む、GAB
A含量が高められたイネ科植物体を製造する方法に関す
る。
【0007】好ましくは、前記グルタミン酸および/ま
たはその塩またはそれらを含有する他の食品素材を含む
溶液は、さらに無機塩化物を含む。
【0008】また、本発明は、前記方法によりGABA
含量が高められたイネ科植物体を細片化および/または
圧搾する工程を含む、γ−アミノ酪酸含量が高められ
た、イネ科植物体の細片化物または搾汁を製造する方法
に関する。
【0009】さらに、本発明は、前記方法により得られ
るGABA含量が高められたイネ科植物体、その細片化
物または搾汁を乾燥粉末化する工程を含む、イネ科植物
緑葉、その細片化物または搾汁の乾燥粉末を製造する方
法に関する。
【0010】好ましい実施態様においては、前記各方法
において用いられるイネ科植物が麦類である。
【0011】本発明は、さらに、前記方法イネ科植物
体、その細片化物あるいは搾汁またはこれらの乾燥粉末
を含む、食品素材、または医薬品原料に関する。
【0012】
【発明の実施の形態】本明細書においてイネ科植物と
は、植物分類表において、イネ科に分類されるすべての
植物を指す。具体的には大麦、小麦、ライ麦、えん麦、
ハト麦、イタリアンライグラス、イタリアンエースなど
の麦類;イネ、あわ、笹、ひえ、きび、とうもろこし、
ソルガム、サトウキビ等が例示されるが、これらに限定
されない。このうち、麦類が特に好ましい。
【0013】イネ科植物体は、前記の通り、イネ科植物
の葉および/または茎をいうが、本発明においては緑葉
が好ましく、成熟期前に収穫された若葉であることがさ
らに好ましい。
【0014】イネ科植物が麦類である場合、特に制限さ
れないが、植物体としては、大麦、小麦、ライ麦、えん
麦、ハト麦、イタリアンライグラス、イタリアンエース
などの麦類が用いられ、それらの若葉が好適に用いられ
得る。好ましくは、これらの麦類の若葉は、分けつ開始
期から出穂開始前期(背丈が20〜40cm程度)に収
穫された麦類の若葉である。より好ましくは大麦の若葉
が用いられる。
【0015】本発明によれば、イネ科植物体は、水など
で付着した泥などを洗浄した後、必要に応じて、適当な
大きさ(例えば、10cm)に切断して、イネ科植物体
中GABAが増加されるように処理(以下、GABA富
化処理という)される。
【0016】GABA富化処理は、イネ科植物体をグル
タミン酸および/またはその塩、またはそれらを含有す
る他の食品素材を含む溶液(浸漬溶液)に浸漬すること
により行われる。本明細書において、浸漬溶液には、グ
ルタミン酸および/またはその塩またはそれらを含有す
る他の食品素材の飽和もしくは過飽和溶液ならびに懸濁
液も含まれる。浸漬溶液に、当業者が通常用いる緩衝剤
を添加しても良い。
【0017】グルタミン酸の塩としては、例えば、グル
タミン酸ナトリウム、グルタミン酸カリウム、グルタミ
ン酸カルシウム、グルタミン酸マグネシウムなどの当業
者に公知のグルタミン酸の塩が挙げられる。
【0018】本発明の浸漬溶液に用いられるグルタミン
酸またはその塩を含む他の食品素材とは、用いるイネ科
植物体以外の、グルタミン酸またはその塩を含む食品素
材をいう。例えば、昆布、ワカメなどの海藻、シイタ
ケ、マイタケのようなきのこ類、かつお(かつお節を含
む)、いわしなどの魚類、あさり、しじみなどの貝類、
米、小麦、大豆(これらの胚芽を含む)、茶葉、桑葉、
野菜(例えば、トマト)、柑橘類(中果皮、じょうのう
膜)などが挙げられ、グルタミン酸またはその塩を比較
的高濃度に含む食品素材が好ましく用いられる。これに
は可食性タンパク質に酵素処理、加熱処理などを施して
グルタミン酸を遊離または生成させたものなども含まれ
る。
【0019】これらの食品素材はその形態に応じてイネ
科植物体の処理液(以下、単に処理液という)に添加さ
れる。例えば、これらの食品素材をそのまま処理液に添
加して浸漬溶液としても良く、食品素材を細片化して、
あるいは食品素材を搾汁して、処理液に添加し、浸漬溶
液としてもよい。また、これらの食品素材の乾燥粉末を
処理液に添加して浸漬溶液としても良い。あるいはその
食品素材に含まれる成分を水、エタノールなどに、必要
に応じて加熱して溶出させた溶液を処理液に添加して浸
漬溶液としてもよく、あるいは、溶出した成分の乾燥粉
末を添加して浸漬溶液としても良い。または、その溶出
液自体を浸漬溶液としてイネ科植物体を浸漬しても良
い。例えば、グルタミン酸を含有する食品素材が乾燥昆
布である場合、乾燥昆布を添加した水に加熱処理を施し
て昆布の成分が溶出した液(だし汁)を浸漬溶液として
用いれば効率的にGABAが増加される。
【0020】GABA富化処理の温度は、グルタミン酸
からGABAへの変換を触媒する酵素が失活されない範
囲で行われ、好ましくは20〜50℃、より好ましくは
25〜45℃にて行われ得る。
【0021】pHを調整することも好ましい。pHの調
整は当業者が通常用いるpH調整剤、例えば、クエン
酸、コハク酸、酒石酸、炭酸、リン酸およびそれらの塩
などを添加して調整できる。あるいは、食酢、かんすい
などの食品または食品添加物を用いることもできる。G
ABA富化処理のpHは、通常3.5〜9.0、好まし
くは4.0〜8.0、より好ましくは4.5〜7.0、最
も好ましくは5.0〜6.0で行われる。pH−8でも
GABA量は2倍以上となり、イネ科植物体の緑葉を用
いた場合、酸性で処理したものおよびpHを調整しなか
ったものと比較して鮮やかな緑色を呈するようになる。
pH−4以下では、GABA富化効率が低下するのに加
え、イネ科植物の緑葉が褐変するため、食品用途を考慮
した場合、あまり好ましくない。なお、GABA富化処
理後において、イネ科植物の緑葉をアルカリ性溶液に浸
漬することにより、あるいは、細片化後にアルカリ性物
質または溶液を添加することにより、緑色を鮮やかにす
ることもできる。
【0022】GABAの富化処理の時間は、通常10分
〜24時間行われる。30分以上行えばGABAは2倍
以上に増加される。
【0023】浸漬処理に用いられるグルタミン酸および
/またはその塩の濃度は、通常0.1〜40%、好まし
くは0.2〜20%、より好ましくは0.5〜10%で
ある。グルタミン酸(塩)濃度が20%以上となるよう
に添加しても、それ以上の劇的な効果は期待できない。
なお、本明細書において、特に記さない限りグルタミン
酸またはその塩の濃度は重量%とする。
【0024】GABA富化処理は、保温処理および/ま
たは嫌気処理することによっても行われ得る。この処理
は、上記浸漬溶液での処理の前もしくは後、または同時
に行われ、さらに効率的なGABA富化が行われる。
【0025】嫌気処理とはほとんど酸素を含まないか無
酸素の気体で処理することを意味する。真空状態も含
む。気体としては、窒素ガス、二酸化炭素が好ましく用
いられる。例えば、窒素などの気体を直接浸漬溶液にバ
ブリングするか、周辺の気体を置換するか、脱気するこ
とにより行われ得る。
【0026】保温処理および/または嫌気処理の時間は
10分から24時間が好ましく、1〜6時間がより好ま
しい。保温処理および/または嫌気処理の温度は、約2
0〜50℃が好ましく、約30〜45℃がより好まし
い。
【0027】さらに、浸漬溶液にピリドキサールリン
酸、食塩などの無機塩化物などを添加することにより、
または有機酸もしくはATPなどの阻害剤が反応系から
取り除かれ、それによってGABA富化効率を高めるこ
ともできる。
【0028】無機塩化物としては、例えば、塩化ナトリ
ウム(食塩)、塩化カルシウム、塩化カリウム、塩化マ
グネシウムなどの当業者が通常用いる無機塩化物が挙げ
られる。にがり、粗塩などを用いても良い。これらは、
任意の濃度で添加され得るが、通常、終濃度が0.05
〜20%、好ましくは0.1〜10%となるように添加
される。例えば、100g(湿重量)の大麦の若葉を3
%のグルタミン酸ナトリウム溶液(pH−6.0)に3
0℃にて5時間浸漬した場合、塩化ナトリウムを終濃度
で1重量%となるように添加すれば、添加しない場合と
比較してGABAは3割程度増加される。
【0029】このようにしてGABA富化処理されたイ
ネ科植物体のGABA含量は、通常2倍、好ましくは3
倍、より好ましくは5倍以上に増加され得る。
【0030】上記のようにしてGABA富化処理された
イネ科植物体は、水を切った後、そのままか、細片化す
るか、細片化した後に圧搾して搾汁とするか、またはそ
れらを乾燥粉末化するなどして、食品素材、または医薬
品原料とすることができる。食品素材とする場合は、イ
ネ科植物体は緑色を保っていることが好ましい。医薬品
原料、例えば、GABAを抽出・精製する場合は、必ず
しも緑色でなくともよい。
【0031】細片化は当業者が通常使用するスライス、
破砕、細断などの、イネ科植物体を細片化する方法で行
われる。細片化にはスラリー化も含まれる。スラリー化
はジューサー、ブレンダー、マスコロイダー等で処理し
て行われる。これによりイネ科植物体は、どろどろした
粥状(液体と固体粒子との懸濁液)になる。通常平均径
が1mm以下、好ましくは0.5mm以下、より好まし
くは0.1mm以下、最も好ましくは0.05mmとなる
ように細片化され、流動性を有するようになる。
【0032】細片化されたイネ科植物体(以下、細片化
物ということもある)を圧搾して搾汁とすることもでき
る。搾汁は、イネ科植物体を直接、あるいは細片化物を
圧搾することにより、そして、さらに必要に応じて、そ
れらを遠心分離またはろ過することにより得られる。こ
の操作により、不溶性食物繊維などの不溶物を除去する
こともできる。圧搾の際に、必要に応じて水、エタノー
ル溶液または緩衝液(等張液を含む)などを添加しても
良い。
【0033】また、GABA富化処理されたイネ科植物
体から、エキスを調製することもできる。イネ科植物体
のエキスは、GABA富化処理後の任意の段階におい
て、緑葉もしくはその細片化物またはその乾燥粉末に
水、エタノール溶液などの当業者が通常用いる溶媒を加
え、必要に応じて加温して抽出処理したもの(抽出物お
よびその濃縮物を含む)である。本明細書においてエキ
スは、搾汁に含まれるものとする。
【0034】上記の方法で得られたイネ科植物体をブラ
ンチング処理しても良い。ブランチング処理により、イ
ネ科植物体に含まれている変質(緑色の褪色や風味の変
化など)に関与する酵素が失活され、長期保存が可能と
なる。ブランチング処理としては、熱水処理、水蒸気処
理が挙げられるが、これらの処理では、イネ科植物体中
のGABAが失われてしまうため、マイクロウェーブ処
理することが好ましい。マイクロウェーブ処理により、
イネ科植物体を加工して、乾燥粉末、細片化物、搾汁、
またはエキスを製造する際、イネ科植物体の有する緑色
が維持されるとともに、GABA含量の低下が抑制さ
れ、GABAが保持される。また、GABAのみなら
ず、ビタミン類(特に水溶性ビタミン)、ミネラル類、
葉緑素などの有効成分が保持され、かつ緑葉の鮮やかな
緑色が褪色することおよび風味が変化することが抑制さ
れる。
【0035】マイクロウェーブ処理は、イネ科植物体中
に存在する、変質に関与する酵素が失活するか、加熱に
より緑色が失われない範囲で行なえばよい。そのような
範囲は、マイクロウェーブの波長、マイクロウェーブ照
射装置の出力、照射時間などにより適宜調節できる。例
えば、2450MHz、500Wのマイクロウェーブを
当てる場合は、麦若葉(緑葉)100g(湿重量)あた
り、0.5〜10分、好ましくは0.5〜5分、より好ま
しくは0.5〜1分間処理される。0.5分に満たないと
酵素の失活が不十分で、該処理後の緑葉が褪色しやすく
なる。また、10分以上処理すると褪色し、GABAも
減少する傾向にある。
【0036】イネ科植物体を細片化物、あるいは搾汁と
してから、マイクロウェーブ処理を行ってもよい。
【0037】あるいは、イネ科植物体の処理加工された
形態に応じて常圧、加圧、または減圧下、80〜150
℃にて2〜180秒間当業者が通常用いる加熱処理が行
われ得る。
【0038】栄養分の破壊を考えると、これらの処理は
短時間であることが望ましく、処理後、急冷処理を行う
ことがより好ましい。冷却処理は、例えば、水浴もしく
は氷浴に浸すか、冷風を用いて冷却するもしくは温風に
より気化冷却するか、または冷蔵して行われ得る。凍結
しても良い。これらの処理によって得られたイネ科植物
体中の変質に関する酵素が失活しているので、含有され
る成分を長期間安定して保持することが可能である。し
かも鮮やかな緑色が保持されるため、例えば、健康食品
あるいはその原料として用いられたときの商品価値も高
い。まず、これらの処理をイネ科植物体に対して行った
後に、得られる緑色のイネ科植物体を細片化物、搾汁と
しても良い。
【0039】上記のようにして得られたイネ科植物体、
その細片化物、搾汁は、必要に応じてさらに乾燥粉末化
され得る。
【0040】乾燥は、水分含量が10%以下、好ましく
は5%以下になるように行われる。例えば、処理後のイ
ネ科植物体、その細片化物、搾汁は、熱風乾燥、高圧蒸
気乾燥、電磁波乾燥、噴霧乾燥、凍結乾燥などの当業者
が通常用いる方法で乾燥される。加熱による乾燥は、好
ましくは50℃〜80℃、より好ましくは55℃〜65
℃にて加温により緑葉の緑色が変色しない温度および時
間で行うことができる。必要に応じて、デキストリン、
シクロデキストリン、デンプン、マルトース等の賦形剤
等を添加して噴霧乾燥することもできる。
【0041】得られた乾燥物は、さらに粉末化されて乾
燥粉末が得られる。粉砕は、当業者が通常用いる方法に
従い、例えば、クラッシャー、ミル、ブレンダー、石臼
などを用いて行われ得る。乾燥粉末は必要に応じて篩に
かけられ、例えば、30〜250メッシュの篩を通過す
るものが用いられ得る。粒径が250メッシュより小さ
いと食品素材や医薬品原料としたときに、さらなる加工
が行なわれにくい。粒径が30メッシュより大きいと、
例えば、他の食品素材との均一な混合が妨げられる。
【0042】これらはさらに、気流殺菌、高圧殺菌、加
熱殺菌などの当業者が通常用いる任意の技術により殺菌
され得る。
【0043】上記のようにしてGABA富化処理を行っ
て調製したイネ科植物体の乾燥粉末(緑色であるかそう
でないかを問わず)のGABA含量は、乾燥重量換算で
少なくとも500mg/100g以上、好ましくは80
0mg/100g以上、より好ましくは1200mg/
100g以上、最も好ましくは1600mg/100g
以上である。これに対して、GABA富化処理を行わな
かった場合、多くとも400mg/100g程度であ
る。
【0044】上記のようにしてGABA富化処理を行っ
て調製したイネ科植物体の搾汁の乾燥粉末(緑色である
かそうでないかを問わず)のGABA含量は、乾燥重量
換算で少なくとも800mg/100g以上、好ましく
は1200mg/100g以上、より好ましくは160
0mg/100g以上、最も好ましくは2000mg/
100g以上である。これに対して、GABA富化処理
を行わなかった場合、多くとも600mg/100g程
度である。
【0045】上記のようにしてGABA含量の増加され
たイネ科植物体、その細片化物、搾汁、エキスまたはそ
れらの乾燥粉末は、そのままか、賦形剤、増量剤、結合
剤、増粘剤、乳化剤、着色料、香料、食品添加物、調味
料等と混合されて食品、飲料およびそれらの素材、なら
びに医薬品用、あるいは家畜、ペットの飼料の原料とし
て供することができる。例えば、ローヤルゼリー、ビタ
ミン、プロテイン、カルシウム、キトサン、レシチンな
どが配合され、さらに糖液や調味料を加えて味を整える
こともできる。あるいは、過剰のグルタミン酸および/
またはその塩を除去することもできる。そしてこれら
は、必要に応じてハードカプセル、ソフトカプセルなど
のカプセル剤、錠剤もしくは丸剤としてか、または粉末
状、顆粒状、茶状、ティーバック状もしくは、飴状など
の形状に成形され得る。これらは、その形状または好み
に応じて、そのまま食されても良いし、あるいは水、お
湯もしくは牛乳などに溶いて飲んでも良いし、または成
分を浸出させてから飲んでも良い。
【0046】また、本発明の方法によりGABA富化処
理された素材を原料として、GABAの純品を精製する
ことも可能である。
【0047】
【実施例】以下の実施例は例示を目的としたものであ
り、本発明を制限することを意図しない。
【0048】(実施例1)原料として背丈が約30cm
で刈り取った大麦の若葉(緑葉)を用いた。これを水洗
いして付着した泥などを洗い流した。次いで、5cm程
度に切断した200gの大麦若葉を3%のグルタミン酸
ナトリウム溶液(2リットル)に浸漬し、表1に記載の
種々の温度にて4時間インキュべートした後、水洗いし
た。これを凍結乾燥した後、ブレンダーを用いて200
メッシュを90%程度が通過する程度に粉砕して乾燥粉
末とした。これらの乾燥粉末のGABA含量を、アミノ
酸自動分析機を用いて以下の条件にて測定した。結果を
表1に示す。なお、表中に未処理とあるのは、大麦若葉
(生葉)を凍結乾燥し、同様にして粉末化としたものの
GABA含量であり、GABA富化率とあるのは、未処
理の大麦若葉におけるGABA含量を100%としたと
きのGABA含量である。
【0049】 <アミノ酸自動分析計操作条件> 機 種:JLC−500/V(日本電子株式会社) 力ラム:LCR−6,4mm×90mm(日本電子株式会社) 移動相:クエン酸リチウム緩衝液(日本電子株式会社) P−21 (pH 2.98, Li 0.105 mol/l) 0→16.3 min P−12 (pH 3.28, Li 0.26 mol/l) 16.3→36.1 min P一13 (pH 3.46, Li 0.80 mol/l) 36.1→56.0 min P−14 (pH 2.83, Li 1.54 mol/l) 56.0→63.4 min P−15 (pH 3.65, Li 1.54 mol/l) 63.4→80.0 min 反応液:ニンヒドリン・ヒドリダンチン試液(和光純薬工業株式会社) 温 度:カラム 35℃(0→16.3 min), 64℃(15.3→31.0 min) 44℃(31.0→44.4 min), 72℃(63.4→80.0 min) 反応槽 135℃ 流 量:移動相 0.50 ml/min 反応液 0.30 ml/min 測定波長: 570 nm
【0050】
【表1】
【0051】表1の結果は、大麦若葉をグルタミン酸ナ
トリウム溶液に20〜50℃にて浸漬することにより、
GABA含量が増加することを示す。
【0052】(実施例2)実施例1と同様にして切断し
た200gの大麦若葉を、クエン酸または炭酸ナトリウ
ムを用いて表2に記載の種々のpHに調整した3%グル
タミン酸溶液(2リットル)に、30℃にて4時間浸漬
した後、水洗いした。これを凍結乾燥し、ブレンダーを
用いて200メッシュを90%程度が通過する程度に粉
砕した乾燥粉末のGABA含量を測定した。結果を表2
に示す。
【0053】
【表2】
【0054】表2の結果は、大麦若葉をpH−4.0〜
8.0付近に調整したグルタミン酸ナトリウム溶液に浸
漬することにより、GABA含量が増加することを示
す。
【0055】(実施例3)実施例1と同様にして切断し
た200gの大麦若葉を表3に記載の種々の濃度に調整
したグルタミン酸溶液(クエン酸を用いてpH−6.0
に調整)に30℃にて4時間浸漬した後、水洗いした。
これを凍結乾燥し、ブレンダーを用いて200メッシュ
を90%程度が通過する程度に粉砕した乾燥粉末のGA
BA含量を測定した結果を表3に示す。
【0056】
【表3】
【0057】表3の結果は、0.5%以上のグルタミン
酸ナトリウムの溶液への浸漬により、GABAが増加す
ることを示す。
【0058】(実施例4)実施例1と同様にして切断し
た200gの大麦若葉を、クエン酸を用いてpH−6.
0に調整した10%グルタミン酸溶液(2リットル)
に、30℃にて、表4に記載の種々の時間浸漬した後、
水洗いした。これを凍結乾燥した後、ブレンダーを用い
て200メッシュを90%程度が通過する程度に粉砕し
た乾燥粉末のGABA含量を測定した。結果を表4に示
す。
【0059】
【表4】
【0060】表4の結果は、30分以上のインキュべー
トにより、十分にGABAが富化されることを示す。
【0061】(実施例5)実施例1と同様にして切断し
た200gの大麦若葉をクエン酸、酢酸、食酢を用いて
pH−6.0に調整した3%グルタミン酸溶液(2リッ
トル)に30℃にて4時間浸漬した後、水洗いした。こ
れを凍結乾燥した後、ブレンダーを用いて200メッシ
ュを90%程度が通過する程度に粉砕した乾燥粉末のG
ABA含量を測定した。結果を表5に示す。
【0062】
【表5】
【0063】表5の結果は、これらのpH調整剤によ
り、GABA富化が効率的に行われることを示す。
【0064】(実施例6)市販の乾燥昆布60gを1.
5リットルの水に浸漬した後、加温してだしをとった。
このだしをさらにガーゼで濾し、冷却した。次いで、こ
のだし(1リットル)をpH−6.0に調整し、これに
実施例1と同様にして切断した100gの大麦若葉を3
0℃にて4時間浸漬した後、水洗いした。これを凍結乾
燥した後、ブレンダーを用いて200メッシュを90%
程度が通過する程度に粉砕した乾燥粉末のGABA含量
を測定した。結果を表6に示す。
【0065】
【表6】
【0066】表6の結果は、グルタミン酸を含有する食
品素材を用いても、GABA富化が行われることを示
す。
【0067】(実施例7)クエン酸を用いてpH−6.
0に調整した3%のグルタミン酸ナトリウム溶液とこれ
に食塩(終濃度1%)を添加した溶液とを調製した。次
いで、これらの溶液に実施例1と同様にして切断した1
00gの大麦若葉を30℃にて4時間浸漬した後、水洗
いした。これを凍結乾燥した後、ブレンダーを用いて2
00メッシュを90%程度が通過する程度に粉砕した乾
燥粉末のGABA含量を測定した。結果を表7に示す。
【0068】
【表7】
【0069】表7の結果は、グルタミン酸ナトリウムに
加えて塩化ナトリウムを添加することにより、GABA
富化が効率的に行われることを示す。
【0070】(実施例8)背丈が約30cmで刈り取っ
た大麦若葉ならびに背丈が約20cmで刈り取ったイタ
リアンライグラスおよびイネ(コシヒカリ)の緑葉をそ
れぞれ5cm程度に切断し、クエン酸を用いてpH−
6.0に調整した10%のグルタミン酸ナトリウム溶液
に30℃にて4時間浸漬した後、水洗いした。これを凍
結乾燥した後、ブレンダーを用いて200メッシュを9
0%程度が通過する程度に粉砕した乾燥粉末のGABA
含量を測定した。結果を表8に示す。
【0071】
【表8】
【0072】表8の結果は、本発明のGABA富化処理
により、大麦の緑葉のみならずイネ科植物であるイタリ
アンライグラスおよびイネの緑葉においてもGABAが
富化されることを示す。
【0073】
【発明の効果】イネ科植物体をグルタミン酸および/ま
たはその塩またはそれらを含有する食品素材の溶液に浸
漬することにより、GABAの量が高められる。また、
これを原料としてGABAを高濃度で含有するイネ科植
物由来の食品素材、または医薬品原料が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (56)参考文献 特開 平11−155508(JP,A) 特開 平9−238650(JP,A) 特開 平3−244366(JP,A) 特開 平7−241176(JP,A) 特開 平9−135671(JP,A) (58)調査した分野(Int.Cl.7,DB名) A23L 1/30 - 1/305 A23L 1/212 A61K 35/78 A61P 9/12 JICSTファイル(JOIS)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 イネ科植物体をグルタミン酸および/ま
    たはその塩またはそれらを含有する他の食品素材を含む
    溶液に浸漬する工程を含む、γ−アミノ酪酸含量が高め
    られたイネ科植物体を製造する方法。
  2. 【請求項2】 前記グルタミン酸および/またはその塩
    またはそれらを含有する他の食品素材を含む溶液が、さ
    らに無機塩化物を含む、請求項1に記載の方法。
  3. 【請求項3】 請求項1または2に記載の方法により得
    られるγ−アミノ酪酸含量が高められたイネ科植物体を
    細片化および/または圧搾する工程を含む、γ−アミノ
    酪酸含量が高められた、イネ科植物体の細片化物または
    搾汁を製造する方法。
  4. 【請求項4】 請求項1から3に記載の方法により得ら
    れるγ−アミノ酪酸含量が高められたイネ科植物体、そ
    の細片化物または搾汁を乾燥粉末化する工程を含む、イ
    ネ科植物体、その細片化物または搾汁の乾燥粉末を製造
    する方法。
  5. 【請求項5】 前記イネ科植物が麦類である、請求項1
    から4のいずれかの項に記載の方法。
  6. 【請求項6】 請求項1から5のいずれかの項に記載の
    方法により得られるイネ科植物体、その細片化物もしく
    は搾汁、あるいはこれらの乾燥粉末を含む、食品素材ま
    たは医薬品原料。
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