JP6008505B2 - Gaba高含有酵母の製造方法 - Google Patents

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本発明は、GABA(γ−アミノ酪酸)高含有酵母の製造方法、GABA高含有酵母、及びGABA高含有酵母エキスの製造方法に関する。
GABAは、アミノ酸の一種であり、哺乳類では中枢神経系における代表的な抑制系の神経伝達物質として機能する。近年、GABAの生理効果として、血圧上昇抑制作用、利尿作用等に加えて、ストレス低減効果やリラクゼーション効果があることも注目されている。さらに、GABA自身は酸味に近い味を有しており、また、GABAを添加することにより、塩味とうま味が強調される傾向にあることも報告されている(例えば、非特許文献1参照。)。このように多種多様な効果を有するため、従来から、GABAを高濃度に含む天然食品素材の需要は多かった。
GABAを多量の含有する食品素材としては、例えば、特許文献1には、グルタミン酸及び/又はグルタミン酸ナトリウムに酵母を作用させることによってGABAを富化した食品素材を製造する方法が開示されている。当該方法は、酵母が有する酵素によって、グルタミン酸及び/又はグルタミン酸ナトリウムからGABAを生成する。
また、特許文献2では、グルタミン酸及びその塩類の少なくとも一つを含有する食品素材に、グルタミン酸デカルボキシラーゼ生産能を有する乳酸菌とともに、GABA生成能を有しない酵母を作用させることにより、GABAを生成する方法が開示されている。
特許第2891296号公報 特許第4137349号公報
植野 洋志、「DOJIN News」、2010年、第136巻、第1〜6ページ。
特許文献1及び2に記載の方法は、いずれも、外部から添加したGABAの前駆体であるグルタミン酸やグルタミンをGABAに変換している。食品分野においては、外部から添加されたGABAの前駆体を酵素剤や微生物を用いてGABAに変換加工する方法以外によって、GABAを高濃度に蓄積する食品素材を生産することは、極めて困難であった。
特に食品素材を酵母に限定すると、酵母中のGABA濃度は、乾燥酵母菌体当たりせいぜい0.6重量%程度でしかなく、より高濃度のGABAを含有する酵母エキスを得るためには、製造された酵母エキスに外部からGABAを添加するか、GABAの前駆体を添加することによって酵母エキスに残存している酵素によりGABAを生成させるか、又はグルタミン酸デカルボキシラーゼ等のGABA生成反応のための酵素を添加することによって酵母エキス中のグルタミン酸からGABAを精製させる必要があった。GABA、グルタミン酸、又はグルタミン酸デカルボキシラーゼ等の酵素を外部から添加することは、製造コストが高くなるという問題がある。加えて、GABAの前駆体を酵母エキスに添加した場合には、エキス化工程後の酵素を使用するため、GABAの生成効率が充分ではない、という問題がある。
本発明は、上記事情に鑑みてなされたものであり、GABAやGABAの前駆体を外部から添加することなく、GABAを高濃度に含有する酵母を製造する方法、GABA高含有酵母、及びGABA高含有酵母エキスの製造方法を提供することを目的とする。
本発明者は上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、増殖の定常期にある酵母の培養中に培養液を特定のpHに上昇(アルカリ性域にシフト)させることにより酵母中のグルタミン酸含有量、特に遊離グルタミン酸含有量が増加することを見出した。そして、この酵母を、グルタミン酸からGABAを生成する反応に好適な条件でインキュベートすることにより、GABAを高濃度に含有する酵母を製造し得ることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の構成を採用する。
(1) 増殖の定常期にある酵母を、液体培地のpHが7.5以上11未満である条件下で液体培養する培養工程と、
前記培養工程後、培養した酵母を回収し、水性溶媒を添加して酵母懸濁液を調製する懸濁液調製工程と、
前記酵母懸濁液を40〜55℃、pH3.0以上6.0未満に保持し、GABAの生成反応を行うGABA生成工程と、
を有し、
前記水性溶媒が、水又はバッファーであることを特徴とする、GABA高含有酵母の製造方法。
(2) 前記GABA生成工程において、GABAの生成反応の反応時間が1〜7時間である、前記(1)のGABA高含有酵母の製造方法。
(3) 前記培養工程後、培養した酵母を1回以上洗浄した後、酵母懸濁液を調製する、前記(1)又は(2)のGABA高含有酵母の製造方法。
(4) 前記懸濁液調製工程後、前記GABA生成工程前に、調製された酵母懸濁液が0〜15℃で保存されている、前記(1)〜(3)の何れかのGABA高含有酵母の製造方法。
(5) 前記懸濁液調製工程において、酵母の濃度が、10〜20重量%となるように酵母懸濁液を調製する、前記(1)〜(4)の何れかのGABA高含有酵母の製造方法。
(6) 前記培養工程が、
酵母の増殖が定常期に入った後に液体培地のpHを7.5以上11未満に調整する工程;及び、
当該酵母を当該pHの範囲内において更に培養する工程
を含む、前記(1)〜(5)の何れかのGABA高含有酵母の製造方法。
(7) 前記酵母がサッカロマイセス(Saccharomyces)属菌又はキャンディダ(Candida)属菌である、前記(1)〜(6)の何れかのGABA高含有酵母の製造方法。
(8) 前記酵母が天然型の酵母である、前記(1)〜(7)の何れかのGABA高含有酵母の製造方法。
(9) 前記GABA生成工程後の酵母のGABA含有量が、乾燥酵母菌体当たり2.5重量%以上である、前記(1)〜(8)の何れかのGABA高含有酵母の製造方法
本発明のGABA高含有酵母の製造方法によれば、増殖の定常期にある酵母の液体培地のpHをアルカリにシフトした後、得られた酵母を40〜55℃、pH3.0以上6.0未満に保持するだけで簡便にGABA含有量が顕著に増大したGABA高含有酵母を製造することができる。
また、本発明のGABA高含有酵母から抽出作業を行なうことにより、GABAを高濃度で含むGABA高含有酵母エキスを製造することができる。
実施例2において、pH無調整でインキュベートした場合の、各酵母エキスの乾燥酵母エキス重量当たりのGABA含有量及びグルタミン酸含有量の測定結果を、インキュベート時間ごとに示した図である。 実施例2において、pH4.5調整でインキュベートした場合の、各酵母エキスの乾燥酵母エキス重量当たりのGABA含有量及びグルタミン酸含有量の測定結果を、インキュベート時間ごとに示した図である。
本発明のGABA高含有酵母の製造方法は、増殖の定常期にある酵母を、液体培地のpHが7.5以上11未満である条件下で液体培養する培養工程と、前記培養工程後、培養した酵母を回収し、酵母懸濁液を調製する懸濁液調製工程と、前記酵母懸濁液を40〜55℃に保持し、GABAの生成反応を行うGABA生成工程と、を有することを特徴とする。国際公開第2010/058616号に開示されているように、増殖の定常期にある酵母をアルカリ条件下で培養することにより、グルタミン酸含有量を飛躍的に高めることができる。こうして得られたグルタミン酸高含有酵母を、グルタミン酸からGABAを生成する反応に好適な温度条件で保持することにより、酵母内でGABAの生成反応が進行する結果、GABA含有量の高い酵母を製造することができる。
以下、工程ごとに本発明のGABA高含有酵母の製造方法を説明する。
まず、培養工程として、増殖の定常期にある酵母を、液体培地のpHが7.5以上11未満である条件下で液体培養する。具体的には、酵母を炭素源、窒素源及び無機塩等を含む液体培地で定常期まで培養した後、得られた酵母(増殖の定常期にある酵母)をさらに、液体培地のpHが7.5以上11未満、好ましくはpHが8.0以上11未満、より好ましくはpHが8.0以上10以下である条件下で、液体培養する。
定常期まで酵母を培養するための液体培地の培地組成としては、酵母が増殖可能なものであれば特に限定されるものではなく、定法において利用されるものを用いることができる。例えば、炭素源として通常の微生物の培養に利用されるグルコース、蔗糖、酢酸、エタノール、糖蜜及び亜硫酸パルプ廃液等からなる群より選ばれる1種又は2種以上が用いられ、窒素源としては、尿素、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウムもしくはリン酸アンモニウム等の無機塩、及びコーンスティプリカー(CSL)、カゼイン、酵母エキスもしくはペプトン等の含窒素有機物等からなる群より選ばれる1種又は2種以上が使用される。更に、リン酸成分、カリウム成分、マグネシウム成分を培地に添加してもよく、これらとしては、過リン酸石灰、リン安、塩化カリウム、水酸化カリウム、硫酸マグネシウム、塩酸マグネシウム等の通常の工業用原料でよい。その他、亜鉛、銅、マンガン、鉄イオン等の無機塩を使用してもよい。その他、ビタミン、核酸関連物質等を添加しても良い。
培養形式は、特に限定されるものではなく、培養スケール、得られた培養物の使用用途等を考慮して適宜決定することができる。例えば、回分培養、流加培養、連続培養等が挙げられるが、工業的には流加培養又は連続培養が採用される。
対数増殖期の培養条件又はpH調整前の培養条件は、一般的な酵母の培養条件に従えばよく、例えば温度は20〜40℃、好ましくは25〜35℃がよく、pHは3.5〜7.5、特に4.0〜6.0が望ましい。また、好気的条件であることが好ましい。
また、通気・攪拌を行いながら培養することが好ましい。通気の量と攪拌の条件は、培養の容量と時間、菌の初発濃度を考慮して、適宜決定することができる。例えば、通気は0.2〜2V.V.M.(Volume per volume per minuts)程度、攪拌は50〜800rpm程度で行なうことができる。
増殖の定常期にある酵母を液体培地のpHが7.5以上11未満である条件下で、液体培養する方法は、特に限定されるものではない。pHを調整する方法の例としては、培養した酵母が定常期に入ったときに、液体培地のpHを7.5以上11未満に調整する方法、液体培地にアルカリ物質を添加してpHを調整する方法、及び、培地中に予め尿素などを加えておいて、培養時間を経るに連れて自然にpHが7.5以上11未満になるようにして、液体培地をアルカリシフト(以下、pHシフトともいう場合がある。)する方法を挙げることができる。
培地に添加するアルカリ物質の量は、pHが上記範囲になる限り限定されるものではないが、培地を希釈しすぎず、その後の培養におけるグルタミン酸産生に悪影響を与えない観点から、培地に対して5%以下とすることが望ましい。例えば尿素の場合の量としては、特に限定されるものではなく、培養する酵母の菌体濃度にもよるが、培地に対して0.5〜5%程度が好ましい。
培養した酵母が定常期に入ったときに、液体培地のpHを7.5以上11未満に調整する方法は、特に限定されるものではなく、例えばアルカリ物質を適宜添加し、液体培地のpHを7.5以上11未満、好ましくはpHが8.0以上11未満、より好ましくはpHが8.0以上10以下に調整すればよい。
pH調整は、定常期であればいつ行なってもよいが、定常期に入った直後に行なうことが好ましい。酵母内の遊離グルタミン酸濃度を十分に高めることが可能である上に、全工程終了時までに要する時間を短縮することができるためである。対数増殖期にある酵母の液体培地のpHを7.5以上11未満にすると、酵母の増殖が抑制され、酵母の遊離グルタミン酸含有量が増加しないため好ましくない。
また、培養中の酵母が対数増殖期から定常期に移行する際、対数増殖の状態から徐々に定常状態に移行し、その後、完全に定常状態に入るが、対数増殖期から完全に定常状態に至る間の徐々に完全な定常状態に向かう時期も本発明の定常期に含まれる。
アルカリ物質としては、特に限定されるものではなく、例えば、NHOH(アンモニア水)、アンモニアガス、水酸化ナトリウム、水酸化カリウム、水酸化カルシウム、水酸化マグネシウム等の無機アルカリ;炭酸ナトリウム、炭酸カリウム等のアルカリ性塩基;尿素等の有機アルカリ等が挙げられる。中でも、アンモニア水、アンモニアガス、尿素が好ましい。
定常期にある酵母を、pHが7.5以上11未満の液体培地において培養する場合における温度、その他の条件は、一般的な酵母の培養条件に従えばよく、例えば温度は20〜40℃、好ましくは25〜35℃である。培養時間は、pH調整後直後〜24時間が好ましく、1〜15時間がより好ましく、3〜12時間がさらに好ましく、3〜6時間が特に好ましい。
なお、液体培地のpHを7.5以上11未満にシフトした後の酵母内の遊離グルタミン酸含有量は、培養時間の経過とともに増大し、ピークに達した後、減少する傾向がある。この傾向は、培養する酵母の菌体濃度やpH、温度等の条件に依存する。これは、アルカリ条件下で過度に長時間培養すると、酵母へのアルカリの影響が大きくなりすぎるためと推察される。よって、本発明においては、培養条件ごと、特にアルカリシフト後のpHごとに最適な培養時間を適宜選択することができる。具体的には、pHシフト後に、培養酵母の一部を回収し、酵母内の遊離グルタミン酸含有量の測定を断続的に、好ましくは、一定時間毎に行う。
つまり、ピーク時に培養を終了し酵母を回収することにより、遊離グルタミン酸含有量が、乾燥酵母菌体重量当たり2.3重量%〜10.0重量%という、遊離グルタミン酸含有量が非常に高い酵母を得ることができることが確認されている。より好ましい条件下で培養、製造した場合には、乾燥酵母菌体重量当たり、4.0重量%〜10.0重量%の範囲で遊離グルタミン酸を含有する酵母を回収することができる。
本発明のGABA高含有酵母の製造方法において培養される酵母としては、単細胞性の真菌類であればよく、具体的には、サッカロマイセス(Saccharomyces)属菌、シゾサッカロマイセス(Shizosaccharomyces)属菌、ピキア(Pichia)属菌、キャンディダ(Candida)属菌、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属菌、ウィリオプシス(Williopsis)属菌、デバリオマイセス(Debaryomyces)属菌、ガラクトマイセス(Galactomyces)属菌、トルラスポラ(Torulaspora)属菌、ロドトルラ(Rhodotorula)属菌、ヤロウィア(Yarrowia)属菌、ジゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属菌などが挙げられる。
これらの中でも、サッカロマイセス属菌又はキャンディダ属菌であることが好ましく、可食性であることから、キャンディダ・トロピカリス(Candidatropicalis)、キャンディダ・リポリティカ(Candida lypolitica)、キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)、キャンディダ・サケ(Candida sake)、サッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などがより好ましく、さらに好ましくは汎用されているサッカロマイセス・セレビシエ、キャンディダ・ユティリスである。
本発明のGABA高含有酵母の製造方法において培養される酵母としては、天然型の酵母(遺伝子を人為的に改変処理されていない酵母)であってもよく、変異株であってもよい。本発明は、酵母が元々有している代謝経路を遺伝的に改変することなく、酵母からGABA含有量の高い酵母エキスを調製することができる。このため、飲食品としての嗜好性を低下させるおそれのある遺伝子改変処理を行うことなく、本発明のGABA高含有酵母の製造方法によって、天然型の酵母から、GABA含有量の高い酵母を製造することができる。
なお、本発明及び本願明細書において、「野生株」とは、自然界に元々存在していた酵母、すなわち、遺伝子に対して人工的な変異処理を施していない酵母を意味する。これに対して、「変異株」とは、遺伝子に対して人工的な変異処理を施して得られた酵母を意味する。また、本発明において、変異処理とは、酵母等の生物が有する遺伝子の一部を変異させ得る処理であれば、特に限定されるものではなく、酵母等の微生物の変異株を作製する場合に通常用いられるいずれの手法を用いて行ってもよい。例えば、変異原として、紫外線、電離放射線、亜硝酸、ニトロソグアニジン、EMS等を用いて酵母を処理することにより、酵母に変異処理を行うことができる。
培養工程後、懸濁液調製工程として、培養した酵母を回収し、酵母懸濁液を調製する。酵母の回収は、遠心分離法やフィルター濾過法等、酵母菌体の回収に通常用いられているいずれの手法で行ってもよい。回収された酵母に、適当な水性溶媒を添加し、酵母懸濁液を調製する。酵母懸濁液調製に用いられる水性溶媒は、酵母が生存可能な溶媒であれば特に限定されるものではなく、水であってもよく、リン酸バッファー等のバッファーであってもよい。なお、酵母の培養に用いられる液体培地であってもよいが、酵母が増殖可能な液体培地よりも、貧栄養であって、酵母の培養を促進しない水やバッファー等が好ましい。
後のGABA生成反応は、酸性環境下で行うほうが効率がよい。このため、酵母懸濁液調製に用いられる水性溶媒は、酸性のバッファーであることが好ましく、pH3.0以上6.0未満のバッファーであることがより好ましく、pH4.0〜5.0のバッファーであることがさらに好ましい。
後のGABA生成工程において、生成反応を酵母懸濁液中の酵母全体において効率よく行わせるためには、酵母懸濁液を撹拌した条件で行うことが好ましい。そこで、酵母懸濁液の酵母濃度は、特に限定されるものではないが、GABA生成工程において撹拌が可能な程度の濃度であることが好ましい。撹拌可能な酵母濃度は、GABA生成反応に使用する反応容器及び撹拌手段等を考慮して、適宜決定されるが、例えば、30重量%以下であることが好ましく、5〜20重量%であることがより好ましい。
培養工程後に回収された酵母は、酵母懸濁液を調製する前に、水や適当なバッファーによって1〜数回洗浄されることが好ましい。洗浄により、後のGABA生成工程において、過剰な泡立ちを抑制することができる。洗浄処理は、室温で行ってもよいが、より低温条件で、例えば、0〜15℃、好ましくは0〜10℃で行うことがより好ましい。洗浄に用いる洗浄用溶媒は、酵母懸濁液を調製する水性溶媒と同種であってもよく、異なる種類の水性溶媒であってもよい。
調製された酵母懸濁液は、GABA生成反応を開始するまで、室温で保存されていてもよいが、より低温で、例えば0〜15℃、好ましくは0〜10℃で保存されていることが好ましい。
その後、GABA生成工程として、懸濁液調製工程において調製された酵母懸濁液を、40〜55℃、pH3.0以上6.0未満に保持し、GABAの生成反応を行う。酵母を40〜55℃にてインキュベートすることにより、酵母が有する元々有する酵素によって、当該酵母内のグルタミン酸からGABAが生成される。
GABAの生成反応は、酸性環境下で行うほうが、反応効率が高い傾向にある。このため、懸濁液調製工程において調製された酵母懸濁液のpHが6.0以上の場合には、酸や高濃度の酸性バッファー等を添加して、酵母懸濁液のpHをpH3.0以上6.0未満、好ましくはpH4.0〜5.0に調整する。さらに、GABAの生成反応を、pH3.0以上6.0未満、好ましくはpH4.0〜5.0となるようにpH制御した環境下で行う。
酵母懸濁液の液温を40〜55℃の温度域にする際の昇温速度・条件は、特に限定されるものではなく、例えば、0.1℃/min〜1℃/minの昇温速度で40〜55℃の温度域まで昇温させることができる。
GABAの生成反応の反応時間は、酵母懸濁液中の酵母が所望のGABA濃度となるように、GABAの生成反応が充分に進行するために充分な時間であればよく、目的とする酵母のGABA濃度、酵母懸濁液の量や酵母濃度、酵母懸濁液のpH、昇温条件等を考慮して、適宜決定することができる。
反応当初は、反応時間依存的に酵母内のGABA濃度が高くなるが、ある程度反応時間が経過すると、酵母内のGABA濃度はプラトーに達する。このため、例えば、反応時間を、10時間以内、好ましくは1〜7時間、より好ましくは4〜7時間、更に好ましくは3〜6時間とすることにより、全工程に要する時間を過度に長時間化させることなく、GABA高含有酵母を効率よく製造することができる。
このように、本発明のGABA高含有酵母の製造方法により、GABAの前駆体やGABA生成反応のための酵素等を外部から添加することなく、GABA含有量の高い酵母を製造することができる。具体的には、本発明のGABA高含有酵母の製造方法により、GABAを乾燥酵母菌体当たり2.5重量%以上、好ましくは2.5〜8重量%、より好ましくは5〜7重量%含有する酵母を得ることができる。
本発明のGABA高含有酵母の製造方法によって得られたGABA高含有酵母(以下、本発明のGABA高含有酵母、ということがある。)から酵母エキスを抽出し製造することにより、GABA含有量の高い酵母エキスを調製することができる。例えば、本発明のGABA高含有酵母から、酵母菌体由来のGABAを、酵母エキス中に乾燥重量当たり10重量%以上、好ましくは15重量%以上、より好ましくは15〜30重量%、よりさらに好ましくは15〜25重量%含む酵母エキスを得ることができる。
本発明において、「乾燥酵母菌体当たりのGABA含有量」とは、酵母菌体を乾燥させて得られる固形分中に含まれるGABAの割合(重量%)を意味する。また、「酵母エキスの乾燥重量当たりのGABA含有量」又は「乾燥酵母エキス重量当たりのGABA含有量」とは、酵母エキスを乾燥させて得られる固形分中に含まれるGABAの割合(重量%)を意味する。
酵母菌体中、又は酵母エキス中のGABA含有量の測定方法は、例えば、日本電子社製アミノ酸自動分析装置JLC―500/V型や、(米国)ウォーターズ社製Acquity UPLC装置などを用いて測定することも可能であるが、特に限定されるものではない。
酵母エキスを製造する方法としては、通常行われている方法であればいずれの方法であってもよく、例えば、自己消化法、酵素分解法、酸分解法、アルカリ抽出法、熱水抽出法などが採用される。また、得られた酵母エキスは、凍結乾燥法、スプレードライ法、ドラムドライ法等の公知の手法により、粉末化することもできる。
本発明のGABA高含有酵母は、非常にGABA含有量が高いため、当該酵母から抽出処理後に得られた酵母エキスに対して、珪藻土濾過処理や殺菌処理等の一般的な処理を行うだけで、GABA含有量の高い酵母エキスを調製することができる。つまり、本発明のGABA高含有酵母を原料酵母とすることにより、抽出処理後の酵母エキスに対してGABAを含む画分をその他の画分から分離回収するような濃縮処理(すなわち、乾燥酵母エキス重量当たりのGABA含有量を高める処理)を行うことなく、GABA濃度が非常に高い酵母エキスを製造することが可能である。
本発明のGABA高含有酵母から得られた酵母エキスは、GABA含有量が非常に高いため、酵母エキスとしての呈味性に加えて、GABAが有する生理的機能性(血圧上昇抑制作用、利尿作用等に加えて、ストレス低減効果やリラクゼーション効果等)を合わせ持つ、非常に優れた酵母エキスである。また、GABAは塩味やうま味増強効果を有するため、GABA含有量が少ない従来の酵母エキスに比べて、より減塩効果や呈味性も向上されている。
また、本発明のGABA高含有酵母の製造方法のうち、培養工程後に回収される酵母は、グルタミン酸含有量が非常に高いため、当該製造方法により、GABA含有量とグルタミン酸含有量の両方が高い酵母を得ることもできる。例えば、本発明のGABA高含有酵母の製造方法により、乾燥酵母菌体当たり、GABA含有量が2.5重量%以上、好ましくは5重量%以上であり、かつグルタミン酸含有量が1重量%以上、好ましくは1.5重量%以上である酵母を製造することもできる。このため、本発明のGABA高含有酵母を用いることによって、GABA含有量とグルタミン酸含有量の両方が高い酵母エキス、例えば、乾燥酵母エキス重量当たりGABA含有量が5重量%以上、好ましくは7重量%以上であり、グルタミン酸含有量が2.5重量%以上、好ましくは3重量%以上である酵母エキスを製造することもできる。
本発明のGABA高含有酵母から、乾燥酵母菌体を調製してもよい。乾燥酵母菌体を調製する方法としては、通常行われている方法であればいずれの方法であってもよいが、工業的には、凍結乾燥法、スプレードライ法、ドラムドライ法などが採用される。
本発明のGABA高含有酵母から、GABAを含有する分画物を得てもよい。GABA高含有酵母からGABAを含有する分画物を分画する方法としては、通常行われている方法であればいずれの方法でもよい。
本発明のGABA高含有酵母から得られた乾燥酵母菌体や、本発明のGABA高含有酵母から得られたGABAを含有する分画物等を用いることによって、従来品よりもはるかに高濃度のGABAを含有する酵母サプリメントや、酵母素材健康食品等を、より安価に提供することができる。
また、本発明のGABA高含有酵母やこれから得られた酵母エキスから、GABAを抽出精製することにより、天然素材由来の高純度のGABAをより安価に提供することができる。GABA高含有酵母又は酵母エキスからGABAを抽出精製する方法としては、通常行われている方法であればいずれの方法でもよい。
また、本発明のGABA高含有酵母、該酵母の乾燥酵母菌体、該酵母から調製される酵母エキス、及び該酵母エキス粉末は、調味料組成物としてもよい。なお、該調味料組成物は、本発明のGABA高含有酵母等のみからなるものであってもよく、本発明のGABA高含有酵母等の他に、安定化剤、保存剤等の他の成分を含有していてもよい。該調味料組成物は、他の調味料組成物と同様に、様々な飲食品に適宜用いることができる。
さらに本発明は、上記の方法により得られたGABA高含有酵母、該GABA高含有酵母から抽出されたGABA高含有酵母エキスを含有する飲食品に関するものである。本発明のGABA高含有酵母等を含有させることにより、GABAを高濃度に含む飲食品を効率的に製造することができる。
これらの飲食品としては、通常乾燥酵母、酵母エキス、及びこれらを含む調味料組成物を添加しうる飲食品であれば何れでもよいが、例えばアルコール飲料、清涼飲料、発酵食品、調味料、スープ類、パン類、菓子類等を挙げることができる。
本発明の飲食品を製造するには、飲食品の製造工程において、上記GABA高含有酵母から得られる調製物、GABA高含有酵母の分画物を添加してもよい。その他、原料としてGABA高含有酵母をそのまま用いてもよい。
次に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
以下の<1>〜<8>に示す方法により、酵母(Saccharomyces cerevisiae AB9846株)を培養し、回収した酵母内でGABAの生成反応を行ってGABA含有量の高い酵母を製造し、当該酵母から酵母エキスを製造した。
<1> 前培養
以下の組成からなる培地を、容量350mL(2Lバッフル付き三角フラスコ)で10本作製した。
(培地組成)
糖蜜 8%
尿素 0.6%
(NHSO 0.16%(硫酸アンモニウム)
(NHHPO 0.08%(リン酸水素2アンモニウム)
(作製方法)
(1)糖蜜(糖度36%)167mLをミリQ水にて750mLにメスアップ後、2Lバッフル付き三角フラスコに350mLずつ分注した。
(2)オートクレーブ処理(121℃、15min)を行なった。
(3)使用時に糖蜜のみの培地に無菌的に窒素成分混液(×100)を1/50量添加(各7mL)した。
(培養条件)
培養温度 30℃
振とう 160rpm(ロータリー)
培養時間 24h
(植菌量 300mL)
<2> 本培養
以下の組成からなる培地を、容量2000mL(流加終了時3Lの設定)を5本作製した。
(培地組成)
塩化アンモニウム 0.18%(流加終了時3L換算)5.3g
(NHHPO 0.04%(リン酸水素2アンモニウム、流加終了換算)1.2g
続いて、以下の条件で培養を行なった。
(培養条件)
培養温度 30℃
通気 3L/min
撹拌 600rpm
pH制御 下限制御pH5.0(10%アンモニア水にて)、上限制御なし
消泡剤 アデカネート原液
流加培地 糖蜜(糖度36%)、容量800mL(1Lメジウム瓶にて、最終8%)
<3> pHシフト(液体培養工程)
次に、培養した酵母が定常期に入った直後に、NHOH水(10%)にて培養液のpHをアルカリ性域(pH9.0)にシフト(以下、pHシフトという。)させて、さらに酵母を培養した。本培養開始後24時間で終了した。なお、酵母が定常期に入ったかどうかは、菌数データ及び培養液の濁度(0D600)から判断した。
<4> 懸濁液調製工程
(1)酵母を本培養した培養液を750mLずつ、12本の1Lプラスチック遠心チューブへ移し、遠心分離(3,500g、4℃、5min)を行なった。
(2)上清を捨て、ペレットに、残っていた前記本培養の培養液を各遠心チューブに600mLずつ加え、遠心分離(3,500g、4℃、5min)を行なった。これを2回繰り返した。
(3)上清を捨て、各遠心チューブに滅菌水を150mLずつ加え、ペレットを懸濁した後、全12本のチューブ内の菌体懸濁液を6本にまとめた後、遠心分離(4,000g、4℃、10min)を行なった。
(4)上清を捨て、酵母濃度が15重量%となるように各チューブに滅菌水を加えて、酵母懸濁液を調製した。6本全てのチューブ内の酵母懸濁液は全て氷冷した。
<5> GABA生成工程
(1)予め10℃に冷やしておいた2台の5Lジャーに、酵母懸濁液全量を分注した(1本当たり約2.5L)。各5Lジャー内の酵母懸濁液の一部をGABA濃度等の測定用試料として取り分けておいた。
(2)各5Lジャー内の酵母懸濁液に、23.5%硫酸を添加し、pH4.5になるように調整し、さらに2mLのアデカネート原液を添加した。
(3)続いて、10℃から40℃まで2時間かけて昇温させた後、40℃で5時間保持し、インキュベートした。インキュベート時のその他の条件は下記の通りである。
(インキュベート条件)
通気 なし
撹拌 60rpm
pH制御 pH4.5(23.5%硫酸にて)
(4)インキュベート終了後、各5Lジャー内の酵母懸濁液は、10℃で保持した。10℃まで冷却後、各5Lジャー内の酵母懸濁液の一部をGABA濃度等の測定用試料として取り分けておいた。
<6> 酵母乾燥菌体重量の測定
あらかじめ秤量しておいたアルミ皿(直径5cm)に、酵母懸濁液を1mLとり、105℃にて5時間乾燥させた。
乾燥後の重量(酵母乾燥後重量)を測定し、以下の式(1)により固形分の重量(乾燥酵母菌体重量、単位g/L)を算出した。
酵母乾燥後重量 ― アルミ皿重量 = 乾燥酵母菌体重量 ・・・(1)
<7> 熱水抽出法によるエキス溶液の調製
(1)GABA生成工程後の酵母懸濁液を、5Lジャーごとに、沸騰水温水浴にて100℃で20分間、加熱した。途中、5分おきに軽く撹拌した(エキス化)。
(2)その後、遠心分離(5,000g、4℃、15min)にて上清液(エキス溶液)を分離した。
<8>アミノ酸含有量の測定
酵母菌体及び酵母エキス中のGABA及びグルタミン酸の含有量を、Acquity UPLC装置(ウォーターズ社製、米国)を用いて定量した。
Figure 0006008505
GABA生成前の乾燥酵母菌体当たりの含有量(重量%)、GABA生成後の乾燥酵母菌体当たりの含有量(重量%)、及び乾燥酵母エキス重量当たりの含有量(重量%)の測定結果を表1に示す。増殖の定常期にある酵母をpH9.0で2時間培養した後の酵母(GABA生成前の酵母)は、グルタミン酸含有量が乾燥酵母菌体当たり10重量%以上と非常に高いが、GABAは0.5重量%以下しか含まれていなかった。これに対して、GABA生成後の酵母では、グルタミン酸含有量は乾燥酵母菌体当たり2重量%以下にまで低下したが、GABAは5重量%以上にまで増大していた。また、GABA生成後の酵母からは、乾燥酵母エキス重量当たりGABA含有量が15重量%以上、グルタミン酸含有量が5重量%以上の酵母エキスが得られた。これらの結果から、上記<5>GABA生成工程により、酵母内のグルタミン酸からGABAが生成されたことが明らかである。
[実施例2]
実施例1の<1>〜<4>と同様にして、液体培養を行った後、酵母懸濁液を調製した。次いで、<5>GABA生成工程を、pH無調整又はpH4.5調整(23.5%硫酸にて)の条件で40℃、0.1〜24時間保持し、インキュベートした(通気:なし、撹拌:60rpm)。その後、実施例1と同様にして、得られたGABA生成後の酵母懸濁液から酵母エキスを調製し、乾燥酵母エキス重量当たりのGABA含有量及びグルタミン酸含有量を測定した。
図1及び図2に、各酵母エキスの乾燥酵母エキス重量当たりのGABA含有量及びグルタミン酸含有量の測定結果を、インキュベート時間ごとに示す。図1はpH無調整でインキュベートした場合の結果であり、図2はpH4.5調整でインキュベートした場合の結果である。この結果、どちらにおいても、インキュベートによりグルタミン酸含有量が低下し、それとともにGABA含有量が増大しており、両含有量とも、インキュベート時間が1時間以上でほぼプラトーに達していた。pH無調整の場合よりもpH4.5調整の場合のほうが、乾燥酵母エキス重量当たりのGABA含有量の高い酵母エキスが得られた。
[実施例3]
実施例1の<1>〜<5>と同様にして、液体培養を行った後、酵母懸濁液を調製し、GABA生成反応を行った(pHシフト有り)。比較対象として、 実施例1の<1>〜<2>と同様にして液体培養を行い、培養した酵母が定常期に入った直後に実施例1の<4>と同様にして酵母懸濁液を調製し、その後実施例1の<5>と同様にしてGABA生成反応を行った(pHシフト無し)。その後、両サンプルに対し、実施例1と同様にして、得られたGABA生成後の酵母懸濁液から酵母エキスを調製し、アミノ酸組成(乾燥酵母エキス重量当たりの各アミノ酸の含有量比(重量%))を測定した。また、ゲルろ過高速液体クロマトグラフィーを行い、得られたクロマトグラムのピーク面積に基づいて各酵母エキスの分子量分布を測定した。さらに、各酵母エキスの旨み、厚み、あと味について、味覚専門パネリスト5名による官能評価を行った。アミノ酸組成の測定結果を表2に、分子量分布の測定結果を表3に、官能評価の結果を表4に、それぞれ示す。
Figure 0006008505
Figure 0006008505
Figure 0006008505
この結果、酵母エキス(pHシフト有り)は、酵母エキス(pHシフト無し)に比べて、グルタミン酸含有量、GABA含有量が共に明らかに増大していた。その他、呈味性アミノ酸であるアラニンも増大していた。また、分子量が10Kより大きい物質の含有量が低下し、5Kよりも小さい物質の含有量が増大していた。アミノ酸組成を反映して、酵母エキス(pHシフト有り)は、酵母エキス(pHシフト無し)よりも旨みや厚み、あと味が強く、より複雑な味であった。これらの結果から、本発明のGABA高含有酵母の製造方法により得られた酵母から酵母エキスを調製することによって、pHシフトを行わない従来の培養方法により得られた酵母から酵母エキスを調製するよりも、グルタミン酸とGABAの両方の含有量が高い酵母エキスが得られることが明らかである。
[比較例1]
従来の培養方法により培養した酵母(生菌)に、外部からグルタミン酸ナトリウム(MSG)を添加してインキュベートした後、酵母エキスを調製した。
具体的には、実施例1の<1>〜<2>と同様にして液体培養を行い、培養した酵母が定常期に入った直後に実施例1の<4>と同様にして酵母懸濁液を調製した。当該酵母懸濁液を10mLずつ3本の容器に分注し、MSGを1又は2重量%となるようにそれぞれ添加した後、MSGを添加しなかったものと同時に、40℃で18時間インキュベートした。実施例1と同様にして、インキュベート後の酵母懸濁液から酵母エキスを調製し、乾燥酵母エキス重量当たりのGABA含有量(g/L)及びグルタミン酸含有量(g/L)を測定した。
測定結果を表5に示す。この結果、生菌にMSGを外添してインキュベートした場合には、ほとんどGABAの生成は行われないことが確認された。
Figure 0006008505
[比較例2]
特許文献1に記載されているように、アセトン処理後の酵母にグルタミン酸ナトリウム(MSG)を外添してインキュベートした後、酵母エキスを調製した。
具体的には、実施例1の<1>〜<2>と同様にして液体培養を行い、培養した酵母が定常期に入った直後に遠心分離処理により酵母を回収した。回収された酵母を滅菌水で洗浄した後、滅菌水を加えて酵母縣濁液を調製した。この酵母縣濁液に、6倍量の冷アセトン(約−20℃)を撹拌しながらゆっくりと加えた後、撹拌をさらに3分間継続した。次に、この冷アセトン含有酵母縣濁液を冷凍室(約−20℃)で20分間静置して浮遊物を除去した後、当該冷アセトン含有酵母縣濁液を濾過して濾紙上の固形物を回収した。回収された固形物を冷アセトンで洗浄した後に乾燥させ、得られた乾燥物を、アセトン処理済み酵母粉末として用いた。
滅菌水に、アセトン処理済み酵母粉末を0、2、5、10、20、又は50重量%となるように添加し、またMSGを1又は10重量%となるように添加した後、さらに23.5%硫酸を添加してpHが4.5又は5.0になるように調整して反応溶液を調製した。各反応溶液は、37℃で1時間インキュベートした。実施例1と同様にして、インキュベート後の反応溶液から酵母エキスを調製し、各酵母エキスのアミノ酸組成(乾燥酵母エキス重量当たりの各アミノ酸の含有量比(重量%))を測定し、GABA生成率(インキュベート前のグルタミン酸に対する、生成されたGABAの割合(%))を算出した。さらに、各酵母エキスの旨み、厚み、あと味について官能評価を行った。MSGの添加率が1重量%の場合のGABA生成率を表6に、アセトン処理済み酵母粉末を10重量%、pH4.5で反応を行った場合の各酵母エキスのアミノ酸組成の測定結果及び官能評価の結果を表7及び8に、それぞれ示す。
Figure 0006008505
Figure 0006008505
Figure 0006008505
この結果、アセトン処理済み酵母粉末を用いることにより、生菌を用いた場合(比較例1)と異なり、MSGを外添してインキュベートすることによってGABAを生成し得ることが確認された。しかしながら、GABA生成率を30%程度にするために、1重量%のMSGに対してアセトン処理済み酵母粉末を10重量%以上添加しなければならなかった。このように、GABA生成率が低いため、得られた酵母エキスは、外添されたMSG由来のグルタミン酸含有量がGABA含有量よりも高く、かつグルタミン酸の味が突出してしまい、厚みやあと味がなく、全体として味が乏しかった。
本発明のGABA高含有酵母の製造方法により、菌体内にGABAを高濃度に保持させた酵母を得ることができるため、酵母エキスの製造等の食品分野において利用が可能である。

Claims (9)

  1. 増殖の定常期にある酵母を、液体培地のpHが7.5以上11未満である条件下で液体培養する培養工程と、
    前記培養工程後、培養した酵母を回収し、水性溶媒を添加して酵母懸濁液を調製する懸濁液調製工程と、
    前記酵母懸濁液を40〜55℃、pH3.0以上6.0未満に保持し、GABAの生成反応を行うGABA生成工程と、
    を有し、
    前記水性溶媒が、水又はバッファーであることを特徴とする、GABA高含有酵母の製造方法。
  2. 前記GABA生成工程において、GABAの生成反応の反応時間が1〜7時間である、請求項1に記載のGABA高含有酵母の製造方法。
  3. 前記培養工程後、培養した酵母を1回以上洗浄した後、酵母懸濁液を調製する、請求項1又は2に記載のGABA高含有酵母の製造方法。
  4. 前記懸濁液調製工程後、前記GABA生成工程前に、調製された酵母懸濁液が0〜15℃で保存されている、請求項1〜3の何れか一項に記載のGABA高含有酵母の製造方法。
  5. 前記懸濁液調製工程において、酵母の濃度が、10〜20重量%となるように酵母懸濁液を調製する、請求項1〜4の何れか一項に記載のGABA高含有酵母の製造方法。
  6. 前記培養工程が、
    酵母の増殖が定常期に入った後に液体培地のpHを7.5以上11未満に調整する工程;及び、
    当該酵母を当該pHの範囲内において更に培養する工程
    を含む、請求項1〜5の何れか一項に記載のGABA高含有酵母の製造方法。
  7. 前記酵母がサッカロマイセス(Saccharomyces)属菌又はキャンディダ(Candida)属菌である、請求項1〜6の何れか一項に記載のGABA高含有酵母の製造方法。
  8. 前記酵母が天然型の酵母である、請求項1〜7の何れか一項に記載のGABA高含有酵母の製造方法。
  9. 前記GABA生成工程後の酵母のGABA含有量が、乾燥酵母菌体当たり2.5重量%以上である、請求項1〜8の何れか一項に記載のGABA高含有酵母の製造方法。
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