JP5626915B2 - γ−アミノ酪酸の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、エンテロコッカス アビウムを用いてγ−アミノ酪酸(以下、「GABA」ともいう)を製造する方法に関する。
GABAは、広く天然界に存在するアミノ酸の一種で、発芽玄米、茶、野菜類、穀類に含まれている。人等の哺乳動物においては脳や脊椎に存在する抑制性の神経伝達物質であり、その生理効果については、血圧降下作用、精神安定化作用、抗ストレス作用、アルコール代謝促進作用、脳代謝促進作用、肥満防止作用等が知られている。
従って、高血圧症の改善や精神安定化作用を期待して、GABA含有量を増加させた食品を摂取することが提唱されている。
GABA生産能を有する乳酸菌を利用したGABAの製造方法やこれにより得られた高濃度GABA含有食品が知られている。
例えば、ラクトバチルス ブレビスUAS−4又はラクトバチルス ブレビスUSA−6をグルタミン酸又はその塩を含む培地で、空気雰囲気下、緩やかに攪拌して若干の好気条件にて培養し、培養液中に蓄積したGABAを回収する、GABAの製造方法が知られている(特許文献1)。
また、植物又はその汁液を、グルタミン酸又はその塩及び酒粕又はその抽出物の存在下、エンテロコッカス アビウムG15株を用いて静置培養条件にて発酵させるGABA含有発酵物の製造方法が知られている(特許文献2)。
また、エンテロコッカス アビウムと蒸し大豆及び1%グルタミン酸ナトリウムを含むMRS培地を混合したものを、密閉タンクに入れた後に、タンク内の空気を吸引除去し、炭酸ガスを充填した後、嫌気的条件下の静置培養にて発酵されるGABA含有発酵物の製造方法が知られている(特許文献3)。
GABAは、従来より、一般的には、上記の文献等に記載されているように、グルタミン酸又はその塩を原料として製造されてきた。しかし、その原料であるグルタミン酸は工業的に大量に製造されて安価に入手できるものの、GABAは、前述のように高機能を有する物質であることから、付加価値の高いファインケミカルな物質である。従って、そのような付加価値の高い物質を工業的に大量に製造することが強く望まれていた。
しかしながら、GABA生産能を有する乳酸菌を用いてGABAを安価に効率よく大量生産する研究は未だ十分とは云えず、そのため、GABAの広範な普及に至っていないのが現状である。
特開2007−135416号公報 国際公開第2007−52806号パンフレット 特開2007−187501号公報
本発明は、培養物中により高濃度のGABAを効率よく製造する方法を提供することに関する。
従来、GABA生産能を有する乳酸菌を用いる場合、例えば特許文献1〜3の記載のように、無攪拌や無通気で微嫌気状態にしてか、或いは空気雰囲気下で若干攪拌して微好気状態にして培養することによりGABAを高濃度に生産させている。
本発明者は、斯かる事情に鑑み、エンテロコッカス・アビウムを用いて効率よくGABAを製造するための培養条件について種々検討したところ、意外にも、培地に不活性ガスを通気した場合、すなわち培地に不活性ガスを混入するように嫌気培養した場合、更にトランジションフェース(transition phase)においてグルタミン酸又はその塩を追加添加してグルタミン酸濃度を特定量となるようにした場合に、GABAを高濃度に含有する培養物を得ることができ、GABAを効率よく生産し回収できることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は、以下の(1)〜(7)に係るものである。
(1)グルタミン酸又はその塩を含む培地に不活性ガスを通気し、エンテロコッカス アビウムを用いて培養し、γ−アミノ酪酸を回収することを特徴とするγ−アミノ酪酸の製造方法。
(2)培養開始時のグルタミン酸濃度を培地中15質量%未満となるようにグルタミン酸又はその塩を用いる上記(1)のγ−アミノ酪酸の製造方法。
(3)トランジションフェース(transition phase)において、グルタミン酸濃度が培地中0.1〜6.5質量%となるようにグルタミン酸又はその塩を追加添加する上記(2)のγ−アミノ酪酸の製造方法。
(4)pH5.0〜7.0で培養する上記(1)〜(3)のγ−アミノ酪酸の製造方法。
(5)エンテロコッカス アビウムが、エンテロコッカス アビウムG15(NITE BP−142)である上記(1)〜(4)のγ−アミノ酪酸の製造方法。
(6)乳、果実又は野菜から選ばれる1種以上を主成分とする発酵原料を含む培地に不活性ガスを通気し、エンテロコッカス アビウムを用いて発酵させることを特徴とする発酵物の製造方法。
(7)エンテロコッカス アビウムが、エンテロコッカス アビウムG15(NITE BP−142)である上記(6)の発酵物の製造方法。
(8)上記(6)又は(7)の発酵物の製造方法により製造された発酵物。
本発明によれば、GABAの生産性が向上し、高濃度のGABA含有発酵物を得ることができ、これから効率よくGABAを回収することができる。得られた発酵物や精製されたGABAを用いることにより、血圧降下作用、精神安定化作用などの機能を有する食品又は飼料を得ることができる。
グルタミン酸フィードによるGABA生産性を示す図である。
本願発明のGABAの製造方法は、グルタミン酸又はその塩を含む培地に不活性ガスを通気し、エンテロコッカス アビウムを用いて培養し、GABAを回収するものである。
本発明の製造方法に用いられるエンテロコッカス アビウム(Enterococcus avium)は、通性嫌気性のグラム陽性球菌で、人の腸管、口腔などに存在する常在菌であるが、以下に示すエンテロコッカス アビウム(Enterococcus avium) G15(以下、「G15株」ともいう)を用いるのが好ましい。
「エンテロコッカス アビウム(Enterococcus avium) G15」は、無農薬栽培を行っている畑で育てたニンジンの葉から本発明者により始めて分離され、2005年9月22日、〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)にNITE BP−142として寄託した菌株であり、以下の菌学的性質を有する。
1)連鎖球菌、2)グラム染色は陽性、3)ランスフィールドの群抗原Dを有する、4)カタラーゼ活性は陰性、5)芽胞形成能は無い、6)通性嫌気性
本発明の製造方法でGABAの原料として使用されるグルタミン酸(「Glu」と記すことがある)は、化学的にはアミノ酸の一種であるL−グルタミン酸を指し、その塩としては、ナトリウム塩やカリウム塩等のアルカリ金属塩又はカルシウム塩やマグネシウム塩等のアルカリ土類金属塩等が挙げられる。斯かるグルタミン酸又はその塩は、由来は特に限定されないが、調味料としての用途を持つ食品添加物であるグルタミン酸、グルタミン酸ナトリウムや、食品蛋白質を酸や酵素で加水分解して得られるグルタミン酸のいずれを用いても構わない。
また、遊離グルタミン酸等を含む調味料、水産加工品、トマト等の食材を、本発明のグルタミン酸又はその塩の供給源として用いることもできる。
グルタミン酸又はその塩の培地への添加は、培養開始時に一度に添加してもよいが、培養中に追加添加するのが好ましく、培養中に間欠的に又は連続的に追加添加する方法(フェイドバッチ方法)を採用するのがより好ましい。更に好ましくは連続的に追加添加する方法が好ましい。
一度に添加する場合の培養開始時のグルタミン酸濃度又は追加添加する場合の培養開始時(初発)のグルタミン酸濃度は、培地中、15質量%未満、より好ましくは6質量%未満となるようにグルタミン酸又はその塩を用いるのが好ましい。
グルタミン酸又はその塩を追加添加する場合には、GABA生産能向上の点から、培養期間中、培地中のグルタミン酸濃度が、当該追加添加直後のグルタミン酸濃度が6.5質量%以下、例えば5質量%以下、1.5質量%以下等が挙げられ、下限は0.1質量%になるように、グルタミン酸又はその塩を培地に追加添加して維持するのが好ましい。
追加添加を開始する時期としては、エンテロコッカス アビウムのトランジションフェース(transition phase)であるのが好ましい。
ここで、「トランジションフェース(transition phase)」とは、生育曲線において細胞数が対数的に増殖する対数増殖期から定常期への移行期をいう。本発明のエンテロコッカス アビウムにおいては、植菌後から18〜26時間程度経過した時期である。
上記の追加添加する時間は、特に制限はないが、好ましくは培養時間の終了に合わせるのがよい。
尚、培養時間は、GABAの生産効率の点から、培養開始時から20〜140時間、より20〜120時間、更に20〜90時間とするのが好ましい。
より具体的には、例えば、初発のグルタミン酸濃度が4〜6質量%である場合には、ほぼ全量のグルタミン酸がGABAに変換される20〜30時間で、培養を終了してGABAを回収するか、或いは培地中のグルタミン酸濃度が、0.1〜6.5質量%、例えば0.2〜5質量%、0.2〜1.5質量%になるように培地にグルタミン酸又はその塩を追加添加して培養を継続するのが、生産効率向上の点から好ましい。このときの培養時間は、30〜80時間とするのが好ましい。
また、初発のグルタミン酸濃度が8〜12質量%である場合には、ほぼ全量のグルタミン酸がGABAに変換される40〜60時間で、培養を終了してGABAを回収するか、或いは培地中のグルタミン酸濃度が、0.1〜6.5質量%になるように培地にグルタミン酸又はその塩を追加添加して培養を継続するのが、生産効率向上の点から好ましい。このときの培養時間は、40〜130時間とするのが好ましい。
追加添加として間欠的添加を採用する場合、グルタミン酸又はその塩の1回あたりの添加量は、初発のグルタミン酸濃度が0.1〜15質量%の際に、培地1L当たり、0.1〜200gとするのが好ましく、より40〜70g、更に50〜60gが好ましい。その時期は、8〜28時間毎とするのが好ましく、このときの添加回数は、1〜8回、より1〜6回とするのが好ましい。
具体的には、初発のグルタミン酸濃度が4〜7質量%の場合には、8〜16時間毎が好ましく、このときの添加回数は、1〜6回、より2〜5回、更に3〜4回とするのが好ましい。
また初発のグルタミン酸濃度が8〜12質量%の場合には、20〜28時間毎、より22〜26時間毎が好ましく、このときの回数は、1〜4回、より1〜3回、更に1〜2回とするのが好ましい。
また、追加添加として連続的添加を採用する場合、初発のグルタミン酸濃度が0.1〜15質量%、好ましくは3〜10質量%、特に4〜6質量%の際に、培地中のグルタミン酸濃度が0.1〜6.5質量%、好ましくは0.1〜5質量%、より好ましくは0.3〜1.5質量%となるようにグルタミン酸又はその塩を追加添加するのがよい。このときの連続的に添加する際のフィード速度は、3.0〜8.0(g/培地1L/1h)、特に4〜7(g/培地1L/1h)更に4.5〜6.7(g/培地1L/1h)とするのが好ましく、連続的に追加添加する期間は、1〜70時間、より好ましくは25〜50時間とするのがよい。
尚、連続的に添加する際に、培地中のグルタミン酸濃度を所望の範囲内に調整するために、フィード速度を0(g/培地1L/1h)としてグルタミン酸又はその塩の添加を一時的に中断してもよく、またフィード速度を早くしたり遅くしたりしてもよい。
また、「g/培地1L/1h」とは、1時間当たり、培地1Lに対して添加されるグルタミン酸又はその塩の量(g)をいう。
本発明で使用される培地成分は、上記エンテロコッカス アビウムが培養物中にGABAを生産できるものであればよく、当該培地成分としては、例えば、酵母エキス、畜肉エキス、麦芽エキス、魚肉エキス等の各種エキス;カゼイン分解物、畜肉ペプトン、魚肉ペプトン、大豆分解物、脱脂大豆分解物、ポテト分解物等の動物性及び植物性のペプトン又はポリペプトン;コーンスティープリカー等を単独で又は2種以上が挙げられる。このうち、植物性ポリペプトン、酵母エキス、コーンスティープリカーを使用することが、GABA生産性向上の点で好ましい。更にこの植物性ポリペプトンのうち、大豆分解物及び脱脂大豆分解物を使用することが好ましい。これらのうち、特に、大豆分解物及び/又は酵母エキスを使用することが好ましい。
このときの植物性ポリペプトンの使用量は、培地中、0.1〜10質量%が好ましく、特に0.5〜2.5質量%が好ましい。また、当該酵母エキスの使用量は、培地中、0.1〜5質量%が好ましく、特に0.5〜1.5質量%が好ましい。また、コーンスティープリカーの使用量は、培地中、0.1〜15質量%が好ましく、特に3〜8質量%が好ましい。
また、本発明で使用される培地成分として、上記の他、ゼラチン、寒天、糖類、香料、果肉等、通常乳酸菌の培養に使用される培地成分を使用することができる。例えば、蔗糖、グルコース、フラクトース、パラチノース、トレハロース等の糖類、ソルビトール、キシリトール、エリスリトール、還元水飴等の糖アルコール、アスパルテーム、アセスルフャムカリウム等の高甘味度甘味料、蔗糖脂肪酸エステル、グリセリン脂肪酸エステル、レシチン等の乳化剤、カラギーナン、キサンタンガム、グァーガム等の増粘剤、クエン酸、乳酸、リンゴ酸等の酸味料、レモン果汁、オレンジ果汁等の果汁類の他、ビタミン類やカルシウム、鉄、マンガン、亜鉛等のミネラル類、更には甘草、桂枝、生姜のような生薬、或いは香草等を添加することが可能である。
本発明で使用される培地としては、例えば、乳酸菌の培養に一般的なGYP培地、FYP培地の他、市販のGAM培地(日本製薬社製)、MRS培地(Difco社製)等が挙げられ、これら培地に適宜上記各培地成分を更に配合してもよい。
例えば、大豆加水分解物(例えば、商品名:ポリペプトンN:日本製薬社製)0.5〜2質量%、酵母エキス0.5〜2質量%、酢酸ナトリウム0〜0.2質量%、硫酸マグネシウム0〜0.05質量%、硫酸マンガン0〜0.005質量%、リン酸2カリウム0〜0.2質量%、クエン酸2アンモニウム0〜0.2質量%、界面活性剤(例えば、ツイーン(登録商標)80)0〜0.05質量%、消泡剤0〜0.05質量%、グルコース5〜15質量%、グルタミン酸ナトリウム0.1〜15質量%(好ましくは、3〜13質量%より好ましくは5〜10質量%)、ピリドキサールリン酸0〜0.01質量%、イオン交換水残量を配合した培地を使用することが、GABA生産性向上の点で好ましい。
なお、上記培地のpHは、エンテロコッカス アビウムの増殖度を高めるため、5〜8、より6〜8とするのが好ましい。
上記培地の形態は、液体、半固体、固体の何れの状態でもよいが、大量生産の点から液体培地が好ましい。
また、適宜、上記培地成分を培養時間中の培地に添加して、各成分の濃度が上述のような濃度となるように添加してもよい。
本発明の培養は、上記グルタミン酸又はその塩を含む培地中にエンテロコッカス アビウム菌体を接種し、当該培地(培養物)中に不活性ガスを通気しつつ、攪拌、振とう、静置若しくはこれらの組み合わせ等により作用させるバッチ法、又は固定化処理を行なった当該菌体をカラム等に充填して上記培地中で作用させるカラム連続法により実施することができる。
ここで、「培地中に不活性ガスを通気する」とは、通常用いられている手段である培地中にバブリングする他、不活性ガスの雰囲気下で培養物を攪拌或いは振とうすることや、これらを組み合わせて行なうこと等、不活性ガスを培地(培養物)中に混入させることをいう。このとき、培地中の不活性ガスの溶存濃度が高くなるようにするのが、GABAの生産速度が上昇し、GABA生産効率が向上する点から、好ましい。培地中の不活性ガスの濃度を高くする手段としては、例えば、培地中に不活性ガスをバブリングしながら攪拌すること;培地表面に不活性ガスを通気しながら攪拌すること等が挙げられ、特に、培地中に不活性ガスをバブリングしながら攪拌することが好ましい。
このときの培養液1Lあたりの通気量は、0.1〜1000mL/分、より10〜500mL/分、更に20〜300mL/分であるのが好ましく、特に20〜200mL/分であるのが好ましい。また攪拌速度は、毎分30〜500回転、より毎分50〜400回転であるのが好ましく、特に毎分100〜300回転であるのが好ましい。
また、菌体の生育向上の点から、培養開始後24時間以内に不活性ガスを培養物中に混入することが好ましく、特に、GABA生産性向上の点から10時間以内に混入することが好ましい。
本発明で用いる不活性ガスとしては、例えば窒素ガス、二酸化炭素ガス、アルゴンガス、ヘリウムガス等が挙げられ、当該ガスを単独で又は2種以上混合して使用してもよい。このうち、工業的スケールで安定的に大量供給できる点から、窒素ガスが好ましい。
本発明の培養中の作用温度は、20〜50℃であるのが好ましく、より25〜45℃、更に34〜40℃であるのが、GABA生産性向上の点から好ましい。
また、培養時間は1時間〜10日間の範囲で適宜選択すればよく、より10時間〜5日間、更に20〜96時間であるのが、GABA生産効率向上の点から好ましい。
また、培養(反応)中は、生じるpHの変化に対し、クエン酸ナトリウム、酢酸ナトリウム等の有機酸、硫酸、酢酸等の無機酸、又はカセイソーダ、炭酸カルシウム等のアルカリで培地のpH調整を行ってもよく、pHの測定及び調整は常法に従って行えばよい。このときの培地のpHは、5.0〜7.0であるのが好ましく、GABAの生産性向上の点から4.5〜5.5であるのが好ましい。
なお、発酵に用いるエンテロコッカス アビウムの菌数には特に制限はないが、作用させる菌数が少ないと菌の増殖に時間を要するために雑菌汚染が起こりやすくなり、菌数が多いと前培養に手間がかかり、要する費用も高くなる。このため、スターターとして前培養したエンテロコッカス アビウム培養液を生産培養培地100容量部に対して0.5〜10容量部加えるのが好ましく、1〜5容量部加えるのがより好ましく、特に2〜3容量部加えるのがより好ましい。また、前培養に用いる培地中、グルタミン酸又はその塩を、1〜5質量%含有することが、生産培養におけるGABAの生産能を高める点から望ましい。
後記実施例に示すとおり、グルタミン酸又はその塩を含む培地中に不活性ガスを通気し、エンテロコッカス アビウムを用いて培養することにより、当該菌株のGABAの生産性が優れて向上し、培養物中のGABAが高濃度となる。更に、培養開始時のグルタミン酸濃度を培地中15質量%未満になるようにグルタミン酸又はその塩を用いることによって、またエンテロコッカス アビウムの対数増殖期後期においてグルタミン酸濃度が培地中0.1〜6質量%となるようにグルタミン酸又はその塩を培地に追加添加することによって、培養物中のGABAを高濃度とすることができる。
培養終了後、GABAを高濃度で含有する培養物から菌体を除去後、これからGABAを分離・精製すれば、効率よくGABAを回収することができる。
前記菌体の除去手段として、遠心分離や濾過等の公知の手段が挙げられる。また、前記分離・精製手段として、晶析、限外濾過、イオン交換、活性炭処理、クロマト分離等の公知の手段が挙げられる。
例えば、得られた培養液より菌体を除去後、更に活性炭を用いて脱色して、脱色液を得る。グルタミン酸及びGABAが含まれる脱色液を、pH4〜6(好ましくはpH4〜5.5)にて、陰イオン交換樹脂に通過させて、陰イオン交換樹脂してグルタミン酸を吸着し除去することで、GABAを選択的に分別すること等が挙げられる。
得られたGABAは、各種の食品又は飼料に配合することにより、血圧降下作用、精神安定化作用、抗ストレス作用、アルコール代謝促進作用、脳代謝促進作用、肥満防止作用等の機能を有する高濃度GABA含有食品又は飼料とすることができる。例えば、当該機能を発揮する旨を表示した機能性飲食品、病者用飲食品、特定保健用食品、栄養補助食品等とすることができる。GABAの1日当りの摂取量は、10〜20mgが目安とされている。
前記食品の形態は、特に限定されるものではないが、果汁飲料、炭酸飲料、茶系飲料、乳飲料、アルコール飲料、乳酸発酵飲料や清涼飲料等の飲料、ゼリー状食品、各種スナック類、焼き菓子、ケーキ類、チョコレート、ジャム、パン、ガム、飴、スープ類、ヨーグルトや漬物等の発酵食品、佃煮等、あらゆる食品形態とすることができる。また、飼料としては、例えばペット飼料、家畜飼料、養殖飼料等とすることができる。
また、本発明の発酵物の製造方法は、乳、果汁又は野菜汁から選ばれる1種以上を主成分とする発酵原料に、適宜上述の培地組成成分やグルタミン酸又はその塩を添加し、これを前記GABAの製造方法にて、具体的にはこれに不活性ガスを通気しエンテロコッカス アビウムを用いて発酵させる。これによって、高濃度GABA含有の発酵物を得るものである。
主原料として使用する乳は、動物乳、例えば牛乳、ヤギ乳、メン羊乳等が挙げられ、特に牛乳が好ましい。斯かる乳は、未殺菌乳又は殺菌乳の何れであってもよく、また、これらの乳から調製した濃縮乳若しくは練乳、またこれらの脱脂乳、部分脱脂乳又はこれらを乾燥した粉乳等であってもよい。
また、主原料として使用する果汁及び野菜汁としては、ミカン、モモ、ブドウ、イチゴ、ナシ等の果汁;ニンジン(セリ科)、トマト等の野菜汁等が挙げられる。斯かる果汁又は野汁は、果物又は野菜をミキサー等により粉砕する、また適宜粉砕後水を配合したり、粉砕後更に搾汁することにより得ることができる。斯かる果汁又は野菜汁は、適宜濃縮してもよく、この濃縮液をそのまま、或いは濃縮液を蒸留水等適当な濃度に希釈して使用してもよい。
上記の乳、果汁及び野菜汁は、それぞれを単独で又はこれを組み合わせて主原料として使用することができる。
斯くして前記GABAの製造方法を用いて得られた発酵物は、GABAが前記発酵物中に高濃度に含まれているので、そのまま前記食品又は飼料として使用することができる。
また、当該発酵物は、前記食品又は飼料に配合して使用することができるが、カラム分離、濾過、濃縮、乾燥等の通常の処理工程によってGABAの含有量をさらに高めてからこれらに使用してもよい。また、前記発酵物を前記食品又は飼料に配合後、適宜他の乳酸菌を添加し、更に発酵させて、例えばヨーグルト、漬物等の発酵食品又は飼料としてもよい。
以下に実施例を挙げて本発明を具体的に説明するが、本発明はこれらの実施例によって何ら限定されるものではない。
実施例1
本培養に用いたエンテロコッカス アビウム(Enterococcus avium)G15菌株(NITE BP−142)は、2005年9月22日、〒292−0818 千葉県木更津市かずさ鎌足2−5−8、独立行政法人製品評価技術基盤機構 特許微生物寄託センター(NPMD)に寄託されたものである。
本培養に用いた培養液は、下記に示す培地組成になるようにイオン交換水に添加し、オートクレーブしたものである。
生産培地組成:
ポリペプトンN(日本製薬製) 2質量%
酵母エキス 1質量%
酢酸ナトリウム 0.2質量%
硫酸マグネシウム 0.02質量%
硫酸マンガン 0.001質量%
リン酸2カリウム 0.2質量%
消泡剤(旭電化社製、商品名アデカノールLG−109) 0.05質量%
グルコース 6質量%
L−グルタミン酸ナトリウム 5質量%
水 残量(pH6.8)
GABAおよびグルタミン酸は、o-フタルアルデヒドを発色剤としたHPLC法にて定量した。
使用カラム;CAPCELL PAK 4.6×250 ACR, 移動相; 100mM sodium acetate buffer-5mM 1-octane sulfonate sodium salt(pH 4.7), flow rate;1.0mL/min. カラム温度;40℃の条件にて340nmの吸光を検出し定量した。
乳酸は、HPLC法にて定量した。使用カラム; Shodex Rspak KC-811 8.0×300mm, 移動相; 3mM過塩素酸水溶液, flow rate; 0.8mL/min., カラム温度; 60℃の条件にて220nmの吸光を検出し定量した。
上記エンテロコッカス アビウムG15菌株を培養液に接種後、前培養を行い、スターターを得た。このときの前培養は、空気雰囲気下、37℃にて、静置培養で行った。
得られたスターター(50mL)を本培養液(2000mL)に添加し、ジャーファーメンター装置を用いて、37℃にて、窒素ガスを培地に通気(バブリング)しながら撹拌培養(pH5)を行った。このときの通気量は、200mL/分であり、攪拌速度は、毎分200回転であった。この結果を表1に示した。
実施例2
また、「スターターを添加後一定期間(10時間)、培地に「空気」を通気(バブリング)しながら攪拌培養し、その後「空気」を「窒素ガス」に切り替えて、培地に「窒素ガス」を通気(バブリング)しながら攪拌培養した」以外は、上記実施例1と同様にして培養を行った。この結果を表1に示した。
比較例1
また、「窒素ガス」に代えて「空気」を用いた以外は上記実施例1と同様にして培養を行った。この結果を表1に示した。
実施例3〜6
上記実施例1と同様にして培養を行ない、これを実施例3とした。
「窒素ガスを培地に通気(バブリング)しながら撹拌培養」に代えて「窒素ガス雰囲気下、無通気状態で(バブリングせずに)撹拌培養」を行なった以外は上記実施例3と同様にして培養を行い、これを実施例4とした。
また、「窒素ガス雰囲気下、無通気状態で(バブリングせずに)撹拌培養」に代えて「窒素ガスをバブリングせずに通気量200mL/分にて培地上面に通気しながら、窒素ガス雰囲気下にて、攪拌培養」を行なった以外は上記実施例4と同様にして培養を行い、これを実施例5とした。
また、「攪拌速度毎分200回転」に代えて「攪拌速度毎分50回転」で行なった以外は実施例4と同様にして培養を行い、これを実施例6とした。
これらの結果を表2に示した。
表1の記載から明らかなように、実施例1において窒素をバブリングし攪拌した場合には30時間目で180mmol/L(18.6g/L)以上となり、ほぼ全量のグルタミン酸がGABAに変換されたのに対し、比較例1において空気を通気し、攪拌した場合には培養48時間目で最高でもGABA39.0mmol/L(4.0g/L)であり、15%程度のグルタミン酸しかGABAに変換されていなかった。
更に、表2の記載から明らかなように、実施例3〜6の何れでも培養時間50時間経過後には、ほぼ全量のグルタミン酸がGABAに変換されていたことから、培地中に窒素ガスを混入させることによって、良好にGABA生産性が向上することが確認された。
よって、エンテロコッカス アビウムを用いてGABAを効率よく製造する際には、培地中に不活性ガスを通気した方がよいと考えた。
そして、表2に示すように、培地中の窒素ガスの濃度が高まるように窒素ガスを培地中に積極的に混入させた場合に、GABA生産速度が上昇し、GABAの工業的な生産性も向上することが確認された。
よって、エンテロコッカス アビウムを用いてGABAを効率よく製造する際には、培地中の不活性ガスの溶存濃度が高くなるように不活性ガスを培地中に混入させた方がよいと云える。
また、表1の記載から明らかなように、培養初期には空気を通気し、一定のフェーズで窒素通気に変更したところ、実施例2において培養10時間目で変更した場合には、若干生成が遅れるものの48時間目にはほぼ完全に変換が終了したことから、好気的条件下にて生育がある程度進んでもGABA変換能が回復することが明らかにすることができた。
Figure 0005626915
Figure 0005626915
実施例7〜8
実施例1の生産培地を用い、「培地中のグルタミン酸ナトリウムを初発5質量%(267mmol/L)と調整し、培養時間中に、グルタミン酸ナトリウム50質量%溶液(2670mmol/L)800mLを連続的に添加しつつ、培養液をpH5.5に調整して」培養した以外は、上記実施例1と同様にして培養を行い、これを実施例7とした。
実施例1の「生産培地中の有機窒素源(ポリペプトン,イーストエキス)」に代えて「含有窒素量換算で同等となるようにコーンスティプリカー(CSL)(培地中、5質量%)」を配合した培地を用いた」以外は、上記実施例7と同様にして培養を行い、これを実施例8とした。
その結果、GABAの最高生産量は、実施例7及び8のそれぞれの培地で1050mmol/L(108g/L)及び1020mmol/L(105g/L)とほぼ同等のGABAの生産性が認められた。
参考例1
培養終了時、GABA43.4g/Lの培養液(1000mL)から菌体を濾過し、除菌した濾液に液量あたり5%の活性炭を添加し脱色を行った。当該脱色液(pH5.5)を、陰イオン交換樹脂(ローム・アンド・ハース社製、商品名アンバーライト、IR-50型)を通過させて、通過液を得、更にスプレー乾燥して、GABA27.3質量%含有粉末(49.3g)を回収した。
実施例9及び10
実施例1で使用した培地に代えて下記のGYP培地及びGYP2培地を用いた以外は、実施例1と同様にして、不活性ガスを通気(バブリング)しながら、培地中のGABA量を測定した(それぞれ、実施例9及び10とする)。また、エンテロコッカス アビウムG15菌株の細胞増殖度については、OD610にて、吸光度を分光光度計により測定した。この結果を表3に示した。
GYP培地組成:
トリプトン(DIfco製) 0.5質量%
酵母エキス 1質量%
酢酸ナトリウム 0.2質量%
硫酸マグネシウム 0.02質量%
硫酸マンガン 0.001質量%
リン酸2カリウム 0.2質量%
塩化ナトリウム 0.001質量%
硫酸鉄 0.001質量%
Tween(登録商標) 80 0.05質量%
消泡剤(旭電化社製、商品名アデカノールLG−109)
0.05質量%
グルコース 6質量%
L―グルタミン酸ナトリウム 5質量%
ピリドキサールリン酸 0.01質量%
水 残量(pH6.8)
GYP2培地組成:
ポリペプトンN(日本製薬製) 2質量%
酵母エキス 1.2質量%
酢酸ナトリウム 0.2質量%
硫酸マグネシウム 0.02質量%
硫酸マンガン 0.0005質量%
リン酸2カリウム 0.2質量%
Tween(登録商標) 80 0.1質量%
消泡剤(旭電化社製、商品名アデカノールLG−109)
0.05質量%
グルコース 6質量%
L―グルタミン酸ナトリウム 5質量%
ピリドキサールリン酸 0.01質量%
水 残量(pH6.8)
Figure 0005626915
表3の記載から明らかなように、培養時間48時間目で、GYP培地を用いた場合には、GABAが61.1mmol/L(6.3g/L)となったのに対し、GYP2培地を用いた場合にはGABAが288.0mmol/L(29.7g/L)となった。
以上の結果から、GYP2培地を用いた場合と比較し、窒素源を増量したGYP2培地を用いた場合には、エンテロコッカス アビウムの増殖度が向上すると共にGABAの生産量も増大すると云える。
実施例11及び12
培養中のpHを5.0及び6.5とした以外は、上記実施例10(GYP2培地)と同様にして、不活性ガスを通気(バブリング)しながら、水酸化ナトリウム水溶液及び硫酸水溶液を用いて培養中のpHを調整し、培養を行い、培地中のGABA量、乳酸量及び細胞増殖度を測定した(それぞれ、実施例11及び12とする)。この結果を表4に示した。
Figure 0005626915
表4の記載から明らかなように、培養時間48時間目で、pH5.0とした場合には、GABAが249.2mmol/L(25.7g/L)となったのに対し、pH6.5とした場合にはGABAが116.4mmol/L(12.0g/L)となった。
以上の結果から、pHを5.0にした場合には、pHを6.5にした場合と比較し、エンテロコッカス アビウムのGABAの生産量が増大した。尚、一方、エンテロコッカス アビウムの増殖度は、pH6.5の方が向上していた。
実施例13〜15
上記GYP2培地のグルタミン酸ナトリウムの濃度を、5質量%、10質量%及び15質量%に調整した(pH6.8)以外は、上記実施例1と同様にして、培養を行った。この結果を表5に示した。
Figure 0005626915
表5の記載から明らかなように、培養開始時(0h、初発)のグルタミン酸ナトリウム濃度が5質量%、10質量%及び15質量%の場合には、それぞれGABAが、培養時間48時間目で、261.8mmol/L(27.0g/L)、482.9mmol/L(49.8g/L)及び103.8mmol/L(10.7g/L)となった。
また、エンテロコッカス アビウムは、培地中のグルタミン酸ナトリウム濃度が5.0質量%であれば培養時間24時間で、及びグルタミン酸ナトリウムが10.0質量%であれば培養時間48時間で、その殆どがGABAに変換された。
一方、グルタミン酸ナトリウム15.0質量%の場合には、培養時間24時間以降のGABAの生産速度の低下が認められた。
以上の結果から、培養開始時のグルタミン酸濃度を15質量%未満とすることにより、GABAをより大量にかつ効率良く生産できることが認められた。
実施例16及び17
上記GYP2培地のグルタミン酸ナトリウムの濃度を10質量%に調整し(pH6.8)、培養液中の初発のグルタミン酸濃度を10質量%とした。
培養時間24時間後に、培地1L当たりグルタミン酸ナトリウム60gを添加し、このときの培地中のグルタミン酸濃度は11質量%であった(実施例16)。
また、培養時間24時間後及び48時間後に、それぞれ培地1L当たりグルタミン酸ナトリウム60gを添加し、このときの培地中のグルタミン酸濃度はそれぞれ11質量%及び12質量%であった(実施例17)。これ以外は、上記実施例14と同様にして、培養を行った。この結果を表6に示した。
Figure 0005626915
表6の記載から明らかなように、初発のグルタミン酸ナトリウム濃度が10質量%の際に、培養開始から24時間目にグルタミン酸ナトリウムを培地1L当たり60g添加した場合(1回添加)、並びに培養開始から24時間目及び48時間目にそれぞれグルタミン酸ナトリウムを培地1L当たり60g添加した場合(2回添加)には、培養時間120時間経過後に、GABAが822.3mmol/L(84.8g/L)、986.2mmol/L(101.7g/L)となった。これに対し、実施例15とほぼ同じグルタミン酸ナトリウムの使用量である実施例16の場合ではGABAが822.3mmol/Lと、GABAの生産量が高まった。また、実施例17の場合では、グルタミン酸ナトリウムの総使用量は実施例15の場合よりも多いにも拘わらず、グルタミン酸ナトリウムの残量は少なかった。
よって、培養中に使用するグルタミン酸又はその塩の量は、複数回に分けて添加するのがGABAを効率良く大量に生産する上でよいと云える。
実施例18
本培養液として上記GYP培地2Lを使用し、初発グルタミン酸ナトリウム濃度を5質量%とした。エンテロコッカス アビウムG15菌株の本培養液への植菌方法は、上記実施例1と同様にして行った。
本培養は、ジャーファーメンター装置を用いて、37℃にて、窒素ガスを培地中に通気(バブリング)しながら撹拌を行った。このときの通気量は160mL/分であり、撹拌速度は毎分200回転であった。
ここで、ショット添加法を用いてフェッドバッチ培養を行った。ショット添加法として、トランジションフェースに相当する培養時間22時間目から、培地1L当たり50gのグルタミン酸ナトリウムを、8−16時間毎に4回添加した(表7参照)。
尚、トランジションフェース以降に添加したグルタミン酸ナトリウムの総使用量は400gであり、すなわちグルタミン酸ナトリウムの使用量は培地1L当たり200gであった。
この結果を表7及び図1に示した。
実施例19
また、「ショット添加法」から「連続添加法」に代えた以外は、上記実施例18と同様にして、培養を行った。
ここで、連続添加法として、トランジションフェースに相当する培養時間22時間目から52時間目まで(30時間かけて)、培地1L当たり200gのグルタミン酸ナトリウムを連続的に添加した。このときのグルタミン酸ナトリウムのフィード速度は、培地1L当たりグルタミン酸ナトリウム4.5〜6.7(g/培地1L/1hr)であった。引き続き、70時間まで、同様のフィード速度でグルタミン酸ナトリウムを添加した(表7参照)。また、追加添加したグルタミン酸ナトリウムの使用量は、培地1L当たり、200gであった。
この結果を表7及び図1に示した。
Figure 0005626915
実施例18のショット添加法の場合、培養時間70時間目のGABAの生産量は、683.7mmol/L(70.5g/L)であった。トランジションフェース以降にグルタミン酸ナトリウムを添加することによって、効率良く連続的に大量のGABAを生産できたので、産業上の利用性が非常に高いといえる。
また、実施例19の連続的添加法の場合、培養時間70時間目のGABAの生産量は、864.0mmol/L(89.1g/L)であり、グルタミン酸ナトリウムの総使用量が同じ実施例18のショット添加法の場合よりも、効率良くGABAの生産量を高めることができた。これは、エンテロコッカス アビウムの場合、培地中のグルタミン酸濃度の変動幅を小さくするのがよいと云える。

Claims (5)

  1. グルタミン酸又はその塩を含む培地に不活性ガスを通気し、エンテロコッカス アビウムを用いて培養し、γ−アミノ酪酸を回収するγ−アミノ酪酸の製造方法であって、培養開始時のグルタミン酸濃度を培地中15質量%未満となるようにグルタミン酸又はその塩を用い、且つ、トランジションフェースにおいて、グルタミン酸濃度を培地中0.1〜6.5質量%となるようにグルタミン酸又はその塩を追加添加することを特徴とする前記γ−アミノ酪酸の製造方法。
  2. 培養開始時のグルタミン酸濃度を培地中4〜7質量%とし、トランジションフェースにおいて、グルタミン酸又はその塩を培地1L当たり40〜70g、8〜16時間毎に1〜6回追加添加する請求項1記載のγ−アミノ酪酸の製造方法。
  3. 培養開始時のグルタミン酸濃度を培地中4〜6質量%とし、トランジションフェースにおいて、グルタミン酸又はその塩を、4〜7(g/培地1L/1hr)のフィード速度で、1〜70時間、連続的に追加添加する請求項1記載のγ−アミノ酪酸の製造方法。
  4. pH5.0〜7.0で培養する請求項1〜3の何れか1項記載のγ−アミノ酪酸の製造方法。
  5. エンテロコッカス アビウムが、エンテロコッカス アビウムG15(NITE BP−142)である請求項1〜4の何れか1項記載のγ−アミノ酪酸の製造方法。
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