JP6509196B2 - 酵母エキスの製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、核酸含有量の高い酵母エキスの製造方法に関する。
酵母エキスとは、酵母菌体から調製され、アミノ酸等を豊富に含むものであり、従来から、旨味やコクを付与するための調味料等のような食品添加剤として使用されている。特に昨今の天然志向の高まりから、調味料としての酵母エキスの需要は増加傾向にある。呈味成分を豊富に含む酵母から調製された酵母エキスは、より優れた調味料として使用し得ることが期待できるため、呈味成分をより多く含む酵母エキスの開発が盛んに行われている。
呈味成分のうち、特に核酸の含有量が多い酵母エキスを製造する方法が幾つか報告されている。例えば、特許文献1には、酸性水溶液で処理した酵母菌体を加熱処理して酵母菌体内の酵素を失活させた後、アルカリ処理を行ってエキス分を抽出し、遠心分離処理により菌体残渣を除去した上清を5’−ホスホジエステラーゼ及びデアミナーゼ処理することにより、核酸含有量の高い酵母エキスを調製する方法が開示されている。また、特許文献2には、酵母懸濁液をアルカリ抽出した後に、菌体内のプロテアーゼ及びリボヌクレアーゼ類を加熱失活させ、次いで5’−ホスホジエステラーゼと5’−アデニル酸デアミナーゼとを作用させることにより、核酸含有量の高い酵母エキスを調製する方法が開示されている。さらに、特許文献3には、元々核酸含有量の高い酵母に対して、酵母菌体を40〜95℃の温度で殺菌処理した後、遠心分離処理により得られた上清をプロテイナーゼ、ヌクレアーゼ、及びトランスアミナーゼにより処理し、得られた酵素分解物を加熱処理により酵素を失活させることにより、核酸含有量の高い酵母エキスを調製する方法が開示されている。
特開2002−101846号公報 特許第2604306号公報 特表2011−512130号公報
特許文献1に記載の方法では、酸処理後に中和処理してアルカリ処理を行い、その後さらに酵素処理のために中和処理を行う必要がある。このため、得られた酵母エキス中には中和塩が多量に持ち込まれてしまい、相対的に核酸含有量が低くなるという問題がある。
また、特許文献2に記載の方法では、菌体に対して殺菌処理を行わずに直接アルカリ抽出を行うため、後記実施例において示すように、核酸以外の物質も多く抽出される結果、相対的に核酸含有量が少なくなる傾向があり、かつ雑味が比較的多くなる。特許文献3に記載の方法では、殺菌処理が比較的低温で長時間であることに加えて、全工程がほぼ酸性条件で行われるため、後記実施例において示すように、菌体から核酸がうまく抽出されない。
本発明は、核酸、特に呈味性核酸であるイノシン酸とグアニル酸を従来よりも高濃度に含有する酵母エキスを製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記目的を達成するため鋭意研究を行った結果、酵母菌体に対して高温で短時間の殺菌処理を行った後に更にpH7〜10で抽出処理を行い、次いで菌体残渣を除去したエキス分に対してヌクレアーゼ処理及びデアミナーゼ処理を行うことにより、従来よりも核酸含有量の高い酵母エキスが得られることを見出し、本発明を完成させた。すなわち、本発明は以下の構成を採用する。
[1] (1)酵母菌体を、100〜130℃で10〜90秒間加熱殺菌する工程と、(2)前記工程(1)により殺菌した酵母菌体を、50〜85℃、pH7〜10で抽出処理し、酵母抽出物を調製する工程;
(3)前記工程(2)の後、得られた酵母抽出物を固液分離処理し、不溶物の少なくとも一部を除去する工程;
(4)前記工程(3)の後、不溶物が除去された酵母抽出物をヌクレアーゼ処理及びデアミナーゼ処理する工程;並びに
(5)前記工程(4)の後、前記酵母抽出物を殺菌処理する工程;
を有する、酵母エキスの製造方法。
[2] 前記工程(2)における抽出処理を、pH7.4〜10で行う、前記[1]の酵母エキスの製造方法。
[3] 前記工程(4)におけるヌクレアーゼ処理及びデアミナーゼ処理を、pH4.0以上pH7未満で行う、前記[1]又は[2]の酵母エキスの製造方法。
[4] 前記工程(5)の後、さらに、
(6)前記酵母抽出物を濾過する濾過工程;及び
(7)前記濾過工程により得られた濾液を乾燥させる乾燥工程;
を有する、前記[1]〜[3]のいずれかの酵母エキスの製造方法。
[5] 前記濾過工程(6)後、前記乾燥工程(7)前に、さらに
(6−1)前記濾過工程(6)により得られた濾液を濃縮する濃縮工程;及び
(6−2)前記濃縮工程(6−1)により得られた濃縮物を加熱殺菌処理する加熱殺菌工程;
を有する、前記[4]の酵母エキスの製造方法。
[6] 前記濾過が珪藻土濾過である、前記[4]又は[5]の酵母エキスの製造方法。
[7] 前記[1]〜[6]のいずれかの酵母エキスの製造方法により製造された酵母エキス。
本発明に係る酵母エキスの製造方法により、酵母菌体から、従来の酵母エキスの製造方法よりもより核酸含有量の高い酵母エキスを調製することができる。
実施例1において、方法1〜6により得られた菌体分離直前サンプルの分解率の測定結果を示した図である。 実施例1において、方法1〜6の各工程において得られた各サンプルの固形分乾燥重量に対するAIG含有量(%)の測定結果を示した図である。 実施例2において、抽出温度を70℃とした試験区m1〜m3の分解率(%)の測定結果を示した図である。 実施例2において、抽出温度を70℃とした試験区m1〜m3のAIG含有量(%)の測定結果を示した図である。 実施例2において、抽出pHを7.7とした試験区m2、m4、m6の分解率(%)の測定結果を示した図である。 実施例2において、抽出pHを7.7とした試験区m2、m4、m6のAIG含有量(%)の測定結果を示した図である。 実施例2において、抽出温度を75℃とした試験区m4及びm5の分解率(%)の測定結果を示した図である。 実施例2において、抽出温度を75℃とした試験区m4及びm5のAIG含有量(%)の測定結果を示した図である。
本発明に係る酵母エキスの製造方法は、エキス抽出前に予め酵母菌体を短時間で殺菌処理することに加えて、菌体からのエキス分の抽出をpH7〜10のアルカリ処理により行った後、得られたエキス分から菌体残渣を除去したものに対してヌクレアーゼ処理とデアミナーゼ処理を行うことを特徴とする。具体的には、本発明に係る酵母エキスの製造方法は、下記工程(1)〜(5)を有することを特徴とする。
(1)酵母菌体を、100〜130℃で10〜90秒間加熱殺菌する工程;
(2)前記工程(1)により殺菌した酵母菌体を、50〜85℃、pH7〜10で抽出処理し、酵母抽出物を調製する工程;
(3)前記工程(2)の後、得られた酵母抽出物を固液分離処理し、不溶物の少なくとも一部を除去する工程;並びに
(4)前記工程(3)の後、不溶物が除去された酵母抽出物をヌクレアーゼ処理及びデアミナーゼ処理する工程;
(5)前記工程(4)の後、前記酵母抽出物を加熱殺菌処理する工程。
本発明に係る酵母エキスの製造方法に供される酵母菌体は、単細胞性の真菌類であればよく、具体的には、サッカロマイセス(Saccharomyces)属菌、シゾサッカロマイセス(Shizosaccharomyces)属菌、ピキア(Pichia)属菌、キャンディダ(Candida)属菌、クリベロマイセス(Kluyveromyces)属菌、ウィリオプシス(Williopsis)属菌、デバリオマイセス(Debaryomyces)属菌、ガラクトマイセス(Galactomyces)属菌、トルラスポラ(Torulaspora)属菌、ロドトルラ(Rhodotorula)属菌、ヤロウィア(Yarrowia)属菌、ジゴサッカロマイセス(Zygosaccharomyces)属菌などが挙げられる。これらの中でも、可食性であることから、キャンディダ・トロピカリス(Candida tropicalis)、キャンディダ・リポリティカ(Candida lypolitica)、キャンディダ・ユティリス(Candida utilis)、キャンディダ・サケ(Candida sake)、及びサッカロマイセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)などが好ましく、より好ましくは汎用されているサッカロマイセス・セレビシエ、及びキャンディダ・ユティリスである。
本発明に係る酵母エキスの製造方法に供される酵母菌体は、天然の(野生型の)菌株(遺伝子を人為的に改変処理されていない菌株)であってもよく、変異株であってもよい。変異株としては、例えば、EMS(メタンスルフォン酸エチル)処理等の突然変異処理によって核酸含有量、特にイノシン酸とグアニル酸の総含有量(以下、「IG含有量」ということがある。)が高められた変異株等が挙げられる。本発明に係る酵母エキスの製造方法により、元々核酸含有量が少ない酵母の菌体からであっても、従来の酵母エキスの製造方法を行った場合よりも核酸含有量の高い酵母エキスを調製することができる。
本発明に係る酵母エキスの製造方法に供される酵母菌体は、常法により培養されたものを用いることができる。酵母菌体の培養形式としては、回分培養、流加培養、又は連続培養のいずれでもよいが、工業的には流加培養又は連続培養が採用される。
酵母菌体の培養に用いられる培地組成としては、特に限定されるものではなく、定法において利用されるものを用いることができる。例えば、炭素源として通常の微生物の培養に利用されるグルコース、蔗糖、酢酸、エタノール、糖蜜及び亜硫酸パルプ廃液等からなる群より選ばれる1種又は2種以上が用いられる。窒素源としては、尿素、アンモニア、硫酸アンモニウム、塩化アンモニウム、又はリン酸アンモニウム等の無機塩、及びコーンスティプリカー(CSL)、カゼイン、酵母エキス又はペプトン等の含窒素有機物等からなる群より選ばれる1種又は2種以上が使用される。更に、リン酸成分、カリウム成分、マグネシウム成分を培地に添加してもよく、これらとしては、過リン酸石灰、リン安、塩化カリウム、水酸化カリウム、硫酸マグネシウム、塩酸マグネシウム等の通常の工業用原料でよい。その他、亜鉛、銅、マンガン、鉄イオン等の無機塩を使用してもよい。その他、ビタミン等を添加してもよい。
培養条件又はpH調整前の培養条件は、一般的な酵母の培養条件に従えばよく、例えば温度は20〜40℃、好ましくは25〜35℃がよく、pHは3.5〜7.5、特に4.0〜6.0が好ましい。
また、好気的条件であることが好ましく、通気・攪拌を行いながら培養することがより好ましい。通気の量と攪拌の条件は、培養の容量と時間、菌の初発濃度を考慮して、適宜決定することができる。例えば、通気は0.2〜2V.V.M.(Volume per volume per minuts)程度、攪拌は50〜900rpm程度で行なうことができる。
本発明に係る酵母エキスの製造方法に供される酵母菌体は、培養後、遠心分離処理等により集菌した後、水又はバッファー等で洗浄しておくことが好ましい。洗浄することにより、酵母エキスに培養培地由来の成分の持ち込みを抑制することができる。洗浄するバッファーとしては、酵母自体を損なうおそれのないものであれば特に限定されるものではなく、PBS(リン酸緩衝生理食塩水)等の酵母等の微生物の洗浄等に一般的に用いられるバッファーの中から適宜選択して用いることができる。
本発明に係る酵母エキスの製造方法としては、まず、工程(1)として、酵母菌体を、100〜130℃で10〜90秒間加熱殺菌する。本発明においては、酵母の菌株からエキス分を抽出する前に殺菌処理することによって菌体由来の酵素を失活させるが、この際に殺菌処理を短時間で行うことにより、殺菌処理を比較的長時間行う場合よりも、当該菌体から抽出されるエキス分中の核酸含有量を高めることができる。殺菌処理の温度としては、100〜125℃が好ましく、110〜125℃がより好ましく、115〜125℃がさらに好ましい。殺菌処理の時間としては、20〜90秒間が好ましく、30〜90秒間がより好ましく、40〜80秒間がさらに好ましい。殺菌方法としては、例えば、UHT(Ultra high temperature)殺菌装置、オートクレーブ等を使用して行うことができる。
次いで、工程(2)として、工程(1)により殺菌した酵母菌体を、50〜85℃、pH7〜10で抽出処理し、酵母抽出物を調製する。抽出処理のpHは、7.4〜10が好ましく、7.7〜10がより好ましく、7.7〜9.5がさらに好ましい。核酸は、中性〜アルカリ性条件で、特にアルカリ条件で抽出することにより、酵母菌体から核酸を効率よく抽出することができる。
抽出処理の温度としては、50〜85℃が好ましく、55〜75℃がより好ましく、60〜75℃がさらに好ましく、65〜75℃がよりさらに好ましい。抽出処理の時間としては、酵母菌体からエキス分を充分に抽出可能な時間であれば特に限定されるものではなく、処理する菌体の重量や抽出処理の温度等を考慮して適宜調節することができる。本発明においては、抽出処理時間は30分間〜12時間が好ましく、1〜9時間がより好ましく、1〜6時間がよりさらに好ましい。また、抽出処理は一定の温度で行ってもよく、温度を途中で変更してもよい。例えば、80℃で30分間〜2時間加熱した後、55〜70℃で30分間〜5時間加熱してもよい。抽出処理のpHが比較的低い場合には、抽出温度を高めとし、かつ抽出時間を長くすることにより、pHが比較的高い条件と同様に充分量の核酸を抽出することができる。
次いで、工程(3)として、工程(2)により得られた酵母抽出物を固液分離処理し、不溶物(菌体残渣)の少なくとも一部を除去する。当該除去により、主に、酵母細胞壁が除去される。固液分離処理としては、沈降分離、遠心分離、濾過、デカンテーション、圧搾等の各種方法の中から適宜選択して行うことができる。以降の酵素反応では、酵素の至適条件の点からpH調整を行い酸性条件にするが、pH調整により液性画分に抽出された核酸が菌体残渣に再吸収されてしまう。本発明においては、中和処理前に菌体残渣を予め除去することにより、中和処理における菌体残渣への再吸収による核酸損失が抑制される結果、最終的に得られる酵母エキス中の核酸含有量を高めることができる。
次いで、工程(4)において、工程(3)において不溶物が除去された酵母抽出物をヌクレアーゼ処理及びデアミナーゼ処理する。酵母抽出物中の核酸をヌクレアーゼ処理することにより、呈味性核酸であるグアニル酸が生成される。また、ヌクレアーゼ処理により得られたアデニル酸をデアミナーゼ処理することにより、呈味性核酸であるイノシン酸が生成される。
ヌクレアーゼ処理及びデアミナーゼ処理は、いずれも市販の各種酵素を使用することができる。これらの酵素処理における温度、pH、添加する酵素量、及び酵素処理時間は、使用する酵素の種類、活性の強さ、処理する酵素抽出物の濃度等を考慮して適宜決定することができる。また、各酵素処理の順番は、ヌクレアーゼ処理物に対してデアミナーゼ処理が可能であればよく、ヌクレアーゼ処理を行った後の酵母抽出物にデアミナーゼを添加してデアミナーゼ処理を行ってもよく、用いるヌクレアーゼとデアミナーゼが共に同じ温度で酵素活性を示す場合には、酵母抽出物にヌクレアーゼとデアミナーゼを共に添加して同時に酵素処理を行ってもよい。
例えば、不溶物が除去された酵母抽出物をpH4.0以上、pH7未満、好ましくはpH4.5〜6.0に調整した後、ヌクレアーゼを添加して60〜80℃で30分間〜12時間ヌクレアーゼ処理した後、デアミナーゼを添加して40〜60℃で30分間〜6時間デアミナーゼ処理を行うことにより、イノシン酸とグアニル酸を充分に生成することができる。
その後、工程(5)として、酵素処理後の酵母抽出物(酵母エキス)を加熱殺菌処理する。当該加熱殺菌処理により、混入しているヌクレアーゼとデアミナーゼも失活させることができるため、加熱殺菌処理の温度は、添加したヌクレアーゼとデアミナーゼが失活可能な温度であることが好ましい。例えば、80〜120℃、好ましくは80〜105℃、より好ましくは90〜105℃で、15秒間〜30分間、好ましくは15〜90秒間加熱処理することにより、殺菌と酵素の失活を同時に行うことができる。
工程(5)により得られた殺菌済の酵母抽出物は、そのまま酵母エキスとして使用することもできるが、濾過処理、遠心分離処理、沈殿法等の濾過工程(6)により不溶物を除去しておくことが好ましい。当該濾過処理としては、不溶物に加えて雑味等の原因となる物質も吸着除去可能であることから、珪藻土濾過を行うことがより好ましい。なお、最終的な酵母エキスのpHが所望のpHになるように、不要物を除去する前又は除去後にpH調整を行っておくことが好ましい。
工程(5)により得られた殺菌済の酵母抽出物、又は当該酵母抽出物から不溶物を除去した酵母抽出物は、さらに、乾燥工程(7)にかけることができる。また、固形分乾燥重量が所望の濃度になるように、濾過工程(6)の後、乾燥工程(7)の前に、適宜濃縮する濃縮工程(6−1)にかけてもよい。濃縮工程は、蒸発法、凍結濃縮法、逆浸透圧濃縮法等の公知の濃縮方法の中から適宜選択して行うことができる。
不溶物除去後や濃縮処理後の酵母エキスに対して、さらに加熱殺菌処理工程(6−2)を行ってもよい。当該加熱殺菌処理は、工程(1)や工程(5)における加熱殺菌処理と同様に行うことができる。酵母エキスの風味を損なう恐れが小さいため、UHT殺菌処理であることが好ましい。
本発明に係る酵母エキスの製造方法により得られた酵母エキスを乾燥処理して粉末状にすることで、核酸高含有酵母エキス粉末が得られる。例えば、濾過処理後の酵母抽出物を、必要に応じてpHを中性に調整した後、所望の濃度となるように濃縮した後、必要に応じて食塩やデキストリン等の添加物を添加した上で乾燥処理することにより、粉末状の酵母エキスが得られる。酵母エキス粉末を調製する方法としては、通常行われている方法であればいずれの方法であってもよいが、工業的には、凍結乾燥法、スプレードライ法、ドラムドライ法などが採用される。
得られた酵母エキスや該酵母エキス粉末は、調味料組成物としてもよい。なお、当該調味料組成物は、本発明において得られた酵母エキスのみからなるものであってもよく、本発明において得られた酵母エキス等の他に、安定化剤、保存剤等の他の成分を含有していてもよい。具体的には、酵母エキスやその粉末に、必要に応じてその他の成分を添加して混合することにより、調味料組成物を製造することができる。当該調味料組成物は、他の調味料組成物と同様に、様々な飲食品に適宜用いることができる。
さらに、得られた酵母エキスやその粉末は、原料として直接飲食品に含有させることもできる。具体的には、飲食品の製造工程において、本発明において得られた酵母エキス、及び該酵母エキス粉末等を、他の原料と同様に添加する。当該飲食品としては、通常酵母エキス又はこれを含む調味料組成物を添加しうる飲食品であれば何れでもよいが、例えばアルコール飲料、清涼飲料、発酵食品、調味料、スープ類、パン類、菓子類等を挙げることができる。
このように、本発明に係る酵母エキスの製造方法により、核酸含有量の高い酵母エキスを調製することができる。例えば、熱水抽出法等の従来の製法では乾燥重量当たりのIG含有量が5〜8質量%程度の酵母エキスしか調製できない酵母菌体からであっても、本発明に係る酵母エキスの製造方法により、酵母エキス中に乾燥重量当たりのIG含有量が15質量%以上、好ましくは15〜30質量%、より好ましくは20〜30質量%の酵母エキスを製造することができる。
このため、本発明に係る酵母エキスの製造方法によって得られる酵母エキスは、特に呈味性が高く、飲食品等に用いることで、味に深みがあり、コクのある飲食品が製造できる。
なお、本発明において、「酵母エキスの乾燥重量当たりのIG含有量(イノシン酸とグアニル酸の総含有量)」とは、酵母エキスを乾燥させて得られる固形分中に含まれるイノシン酸とグアニル酸の総和量(2Na・7水和物換算値)の割合(質量%)を意味する。
また、イノシン酸とグアニル酸の含有量は、例えば、それぞれ、C18カラム(ODSカラム)を用いたHPLC(高速液体クロマトグラフィー)分析により得られたクロマトグラフのピーク面積から求めることができる。ピーク面積からの定量方法は、面積百分率法によってもよく、濃度既知の標準品のピーク面積との比から求めてもよい。
次に、実施例を示して本発明をさらに詳細に説明するが、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
[実施例1]
酵母菌体から抽出した抽出物をヌクレアーゼ処理及びデアミナーゼ処理する方法により、酵母エキスを調製した。具体的には、下記6種の方法により行い、得られた酵母エキスの乾燥重量当たりのIG含有量(イノシン酸とグアニル酸の含有量)を比較した。
<酵母の培養物の調製>
2%寒天含有YPD平板培地に、サッカロマイセス・セレビシエAB5814株を植菌し、30℃のインキュベーターにて一晩静置培養行い、継代培養プレートを作製し、4℃にて保存した。
該継代培養プレートから1白金耳のAB5814株コロニーを採取し、50mLのYPD培地に植菌し、30℃で1晩培養したものを前培養液とした。その後、得られた前培養液を初発菌数が1×10cells/mLとなるように1.5LのYPD培地に植菌し、30℃のインキュベーター中で16時間、攪拌数200rpmで振とう培養した。得られた培養物から遠心分離処理することにより上清の一部を除去し、固形分15質量%の酵母菌体の懸濁液(酵母懸濁液)を調製した。
<方法1>
まず、調製した酵母懸濁液(菌体固形分濃度が15質量%)を、120℃、40秒間でUHT殺菌した。殺菌後の酵母懸濁液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液(23.2g)を添加してpH9.0に調整した後、65℃で90分間インキュベートすることにより抽出処理を行った。抽出処理後の酵母懸濁液(酵母抽出物)の一部を測定用にサンプリングした(菌体分離直前サンプル)。
残りの酵母抽出物を遠心分離処理することにより上清(酵母エキス)を回収し、70℃にまで加温した後、その一部を測定用にサンプリングした(70℃達温後サンプル)。残りの酵母エキスに47質量%の硫酸水溶液(8.9g)を添加してpH5.0に調整した後、その一部を測定用にサンプリングした(pH調整後サンプル)。次いで、残りの酵母エキスに0.3質量%の5’−ホスホジエステラーゼ(製品名:スミチームNP、新日本化学工業社製)を添加し、70℃で6時間インキュベートすることによりヌクレアーゼ処理を行った。ヌクレアーゼ処理後の酵母エキスについて、その一部を測定用にサンプリングし(Nuc反応後サンプル)、残りを50℃に調整した後に0.2質量%の5’−アデニル酸デアミナーゼ(製品名:デアミザイムG、天野エンザイム社製)を添加し、50℃で3時間インキュベートすることによりデアミナーゼ処理を行った。デアミナーゼ処理後の酵母エキスについて、その一部を測定用にサンプリングし(Dea反応後サンプル)、残りを100℃で40秒間加熱して失活処理した後、珪藻土濾過した後、固形分乾燥重量が25〜50質量%となるまで濃縮した後、さらに100℃で47秒間加熱してUHT殺菌処理した。UHT殺菌処理後の酵母エキスについて、その一部を測定用にサンプリングし(UHT2後サンプル)、残りをスプレードライにより乾燥することで、粉末状の酵母エキス1(SD後サンプル)を得た。
<方法2>
まず、調製した酵母懸濁液(菌体固形分濃度が15質量%)を、120℃、40秒間でUHT殺菌した。殺菌後の酵母懸濁液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液(10.0g)を添加してpH7.9に調整した後、70℃で180分間インキュベートすることにより抽出処理を行った。抽出処理後の酵母懸濁液(酵母抽出物)の一部を測定用にサンプリングした(菌体分離直前サンプル)。
残りの酵母抽出物を遠心分離処理することにより上清(酵母エキス)を回収し、70℃を保持したまま、その一部を測定用にサンプリングした(70℃達温後サンプル)。残りの酵母エキスに47質量%の硫酸水溶液(4.4g)を添加してpH5.0に調整した後、その一部を測定用にサンプリングした(pH調整後サンプル)。次いで、方法1と同様にして、残りの酵母エキスに対してヌクレアーゼ処理した後にデアミナーゼ処理し、さらに失活処理、珪藻土濾過処理、濃縮処理、殺菌処理をした後、スプレードライにより乾燥することで、粉末状の酵母エキス2を得た。
<方法3>
まず、調製した酵母懸濁液(菌体固形分濃度が15質量%)に、47質量%の硫酸水溶液(16.21g)を添加してpH3.5に調整した後、60℃で30分間インキュベートした(酸処理)。酸処理後の酵母懸濁液を、120℃、40秒間でUHT殺菌し、殺菌後の酵母懸濁液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液(53.6g)を添加してpH9.0に調整した後、65℃で90分間インキュベートすることにより抽出処理を行った。抽出処理後の酵母懸濁液(酵母抽出物)の一部を測定用にサンプリングした(菌体分離直前サンプル)。
残りの酵母抽出物を遠心分離処理することにより上清(酵母エキス)を回収し、70℃にまで加温した後、その一部を測定用にサンプリングした(70℃達温後サンプル)。残りの酵母エキスに47質量%の硫酸水溶液(9.9g)を添加してpH5.0に調整した後、その一部を測定用にサンプリングした(pH調整後サンプル)。次いで、方法1と同様にして、残りの酵母エキスに対してヌクレアーゼ処理した後にデアミナーゼ処理し、さらに失活処理、珪藻土濾過処理、濃縮処理、殺菌処理をした後、スプレードライにより乾燥することで、粉末状の酵母エキス3を得た。
<方法4>
まず、調製した酵母懸濁液(菌体固形分濃度が15質量%)に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液(29.9g)を添加してpH9.0に調整した後、65℃で90分間インキュベートすることにより抽出処理を行った。抽出処理後の酵母懸濁液(酵母抽出物)を、120℃、40秒間でUHT殺菌し、殺菌後の酵母抽出物の一部を測定用にサンプリングした(菌体分離直前サンプル)。
残りの酵母抽出物を遠心分離処理することにより上清(酵母エキス)を回収し、70℃にまで加温した後、その一部を測定用にサンプリングした(70℃達温後サンプル)。残りの酵母エキスに47質量%の硫酸水溶液(5.0g)を添加してpH5.0に調整した後、その一部を測定用にサンプリングした(pH調整後サンプル)。次いで、方法1と同様にして、残りの酵母エキスに対してヌクレアーゼ処理した後にデアミナーゼ処理し、さらに失活処理、珪藻土濾過処理、濃縮処理、殺菌処理をした後、スプレードライにより乾燥することで、粉末状の酵母エキス4を得た。
<方法5>
まず、調製した酵母懸濁液(菌体固形分濃度が15質量%)を、60℃で30分間インキュベートして殺菌処理を行った。殺菌処理後の酵母懸濁液に、25質量%の水酸化ナトリウム水溶液(29.9g)を添加してpH9.0に調整した後、65℃で90分間インキュベートすることにより抽出処理を行った。抽出処理後の酵母懸濁液(酵母抽出物)の一部を測定用にサンプリングした(菌体分離直前サンプル)。
残りの酵母抽出物を遠心分離処理することにより上清(酵母エキス)を回収し、70℃にまで加温した後、その一部を測定用にサンプリングした(70℃達温後サンプル)。残りの酵母エキスに47質量%の硫酸水溶液(11.3g)を添加してpH5.0に調整した後、その一部を測定用にサンプリングした(pH調整後サンプル)。次いで、方法1と同様にして、残りの酵母エキスに対してヌクレアーゼ処理した後にデアミナーゼ処理し、さらに失活処理、珪藻土濾過処理、濃縮処理、殺菌処理をした後、スプレードライにより乾燥することで、粉末状の酵母エキス5を得た。
<方法6>
まず、調製した酵母懸濁液(菌体固形分濃度が15質量%)を、60℃で30分間インキュベートして殺菌処理を行った。殺菌処理後の酵母懸濁液に対して、その一部を測定用にサンプリングし(菌体分離直前サンプル)、残りを遠心分離処理することにより上清(酵母エキス)を回収した。回収された酵母エキスを70℃にまで加温した後、その一部を測定用にサンプリングした(70℃達温後サンプル)。残りの酵母エキスに47質量%の硫酸水溶液(2.1g)を添加してpH5.0に調整した後、その一部を測定用にサンプリングした(pH調整後サンプル)。次いで、方法1と同様にして、残りの酵母エキスに対してヌクレアーゼ処理した後にデアミナーゼ処理し、さらに失活処理、珪藻土濾過処理、濃縮処理、殺菌処理をした後、スプレードライにより乾燥することで、粉末状の酵母エキス6を得た。
<分解率>
各方法においてサンプリングされた、遠心分離処理により菌体が分離回収される直前のサンプル(菌体分離直前サンプル)について、酵母エキスの分解率を調べた。分解率(%)は、酵母懸濁液中の全固形分のうちエキス分(可溶性固形分)の割合であり、下記式(a)に基づいて算出した。「A」は、サンプル(エキス懸濁液)中の水分(質量%)を、「B」は、サンプルを遠心分離処理して得られた上清中の水分(質量%)を、それぞれ意味する。
式(a): 分解率(%)=〔A×(100−B)〕/〔B×(100−A)〕×100
<AIG含有量の測定>
各方法において得られた各サンプルに含まれるアデニル酸、イノシン酸、及びグアニル酸の濃度を、C18カラムを用いたHPLC分析により得られたクロマトグラフのピーク面積と、濃度既知の標準品のピーク面積との比から算出した。イノシン酸の標準品としてはイノシン5’一リン酸(シグマ社製)を、グアニル酸の標準品としてはグアノシン5’一リン酸二ナトリウム塩水和物(シグマ社製)を、アデニル酸の標準品としてはアデノシン5’一リン酸ナトリウム塩(シグマ社製)を、それぞれ用いた。
具体的には、まず、固形分重量が1.00〜1.05gとなる量のサンプルを超純水に溶解させて100mLのサンプル溶液を調製した後、これを超純水で希釈した希釈溶液を調製した。次いで、この希釈溶液1mLをMillex(登録商標)シリンジフィルターにより濾過し、濾液200μLをHPLCバイアルに移し、下記の条件にてHPLCを行い、クロマトグラフのピーク面積からアデニル酸(A)、イノシン酸(I)、及びグアニル酸(G)の濃度を測定した。
HPLC装置:アライアンスe2695(Waters社製)、
カラム:YMC Hydrosphere C18(ワイエムシィ社製)、
検出器:UV検出2489(Waters社製)、
移動相:5mmol/L テトラブチルアンモニウムヒドロキシドを含有する100mmol/L リン酸二水素カリウム溶液(pH3.9)、
インジェクション:10μL、
カラム温度:35℃、
流量:1mL/分、
検出波長:250nm、
分析時間:60分間。
各サンプルについて、固形分乾燥重量当たりのアデニル酸、イノシン酸、及びグアニル酸の総含有量(2Na・7水和物換算)の割合(以下、「AIG含有量」ということがある。)を、下記式(b)に基づいて算出した。式中、「アデニル酸のHPLC測定値(ppm)」はHPLCのクロマトグラフピーク面積比から算出されたアデニル酸(2Na・7水和物換算)濃度であり、「イノシン酸のHPLC測定値(ppm)」はHPLCのクロマトグラフピーク面積比から算出されたイノシン酸(2Na・7水和物換算)濃度であり、「グアニル酸のHPLC測定値(ppm)」はHPLCのクロマトグラフピーク面積比から算出されたグアニル酸(2Na・7水和物換算)濃度であり、「C」は、サンプル溶液を超純水で希釈した際の希釈率であり、「D」は、サンプル溶液の調製に用いた各サンプルの固形分重量(g)であり、「DM(%)」は、各サンプル(粉末)の固形分乾燥重量割合([固形分乾燥重量(g)]/[固形分重量(g)]×100)である。また、式中、1.496、1.494、及び1.476は、ぞれぞれ、アデニル酸、イノシン酸、及びグアニル酸を2Na・7水和物換算する際の係数である。
式(b):[AIG含有量(%)]={([アデニル酸のHPLC測定値(ppm)]×1.496)+([イノシン酸のHPLC測定値(ppm)]×1.494)+([グアニル酸のHPLC測定値(ppm)]×1.476)}/10000×C/D/[DM(%)]×100
なお、デアミナーゼ反応終了時点以降のサンプルにおいて、サンプル中のアデニル酸はイノシン酸に変換されているため、「AIG含有量(%)」は、「IG含有量(%)」に相当する。
菌体分離直前サンプルの分解率の測定結果を図1に示す。方法3及び4において分解率は45%前後と高く、方法5においても40%以上と高かった。UHT殺菌後にアルカリ抽出を行った方法1に比べて、アルカリ抽出後にUHT殺菌を行った方法4のほうが分解率が高かったことから、殺菌前にアルカリ抽出処理を行うことにより、より多くの菌体が分解されることがわかった。また、酵母菌体の殺菌処理を、UHT殺菌で行った方法1よりも、60℃で30分間という低温度長時間の殺菌処理を行った方法5のほうが分解率が高かった。一方で、遠心分離処理前にアルカリ抽出を行っていない方法6では、分解率は30%未満であり、一般的な熱水抽出のみと変わらない結果となった。
各サンプルのAIG含有量の測定結果を図2に示す。全工程を通して、方法1及び2におけるサンプルが最もAIG含有量が高かった。分解率が高かった方法3〜5におけるサンプルのAIG含有量がより低かったのは、酵母菌体から核酸以外の様々な物質がより多く抽出されてしまったためと推察される。一方で、方法6におけるサンプルのAIG含有量は非常に低く、ほとんど菌体から核酸が抽出されていないことが示された。
その他、方法4と方法5により調製されたサンプルでは、得られた酵母エキスの色度がその他よりも高かった。これは、菌体を充分に失活させる前に抽出処理を行ったためと推察される。一方で、ほとんど分解されていない方法6のサンプルと、分解率は高いが中和塩の含有量が多い方法3のサンプルは、比較的色度は低かった。
<アミノ酸組成>
各方法により得られた粉末状の酵母エキス(SD後サンプル)について、遊離アミノ酸組成を調べた。測定は、Acquity UPLC分析装置(ウォーターズ社製、米国)を用いて、アキュタグウルトラ(AccQ−Tag Ultra)ラベル化法により測定した。当該測定法では、試料中の遊離アミノ酸を選択的に定量することができる。
この結果、粉末状の酵母エキス1〜6において、遊離アミノ酸の組成にはさほど大きな差はなかった(図示せず。)。なお、粉末状の酵母エキス3ではGABA含有量が高かったが、これは酵母菌体を失活させる前に酸処理を行ったためにグルタミン酸がGABAに変換されたためと推察される。
<官能評価>
各方法により得られた粉末状の酵母エキス(SD後サンプル)の1.0質量%水溶液について、旨味について評価した。評価は、酵母エキス専門パネラー7名で行い、旨味の強い順に順位(旨味強度が最も強いものを1位とし、最も弱いものを6位とする。)をつけた。各方法により得られた酵母エキスに対して各パネラーの評価結果(各サンプルにつけた旨味強度順位)を表1に、フリーコメントを表2にそれぞれ示す。
Figure 0006509196
Figure 0006509196
この結果、方法1及び2(本発明に係る酵母エキスの製造方法に相当。)で得られた酵母エキスが、7名のパネラーの順位の合計値が最も小さく、これらが他に比べて旨味に優れていることが確認された。また、核酸がほとんど抽出されていなかった方法6で得られた酵母エキスは、他と比べて極端に順位が低かった。また、方法3〜5に係る方法で得られた酵母エキスは、酸味や雑味が目立った。これは、核酸以外の物質が過剰に抽出されたためと推察される。
[実施例2]
酵母菌体をUHT殺菌処理する条件をふり、分解率やAIG含有量に対する影響を調べた。
まず、調製した酵母懸濁液(菌体固形分濃度が15質量%)を、表3に示す温度と時間でUHT殺菌した。殺菌後の酵母懸濁液の一部を測定用にサンプリング(UHT1後サンプル)、残りを70℃に調整した上で25質量%の水酸化ナトリウム水溶液を添加してpH7.9に調整した後、70℃で4.5時間インキュベートすることにより抽出処理を行った。抽出開始から0時間目、1.5時間目、3時間目、及び4.5時間目(終了時)に、酵母懸濁液の一部を測定用にサンプリングした(抽出0hサンプル、抽出1.5hサンプル、抽出3hサンプル、抽出4.5hサンプル。なお、抽出4.5hサンプルは、実施例1における菌体分離直前サンプルに相当する。)。
残りの酵母抽出物を遠心分離処理することにより上清(酵母エキス)を回収し、70℃にまで加温した後、その一部を測定用にサンプリングした(70℃達温後サンプル)。残りの酵母エキスに47質量%の硫酸水溶液を添加してpH5.0に調整した後、その一部を測定用にサンプリングした(pH調整後サンプル)。次いで、実施例1の方法1と同様にして、残りの酵母エキスに対してヌクレアーゼ処理した後にデアミナーゼ処理し、さらに失活処理、珪藻土濾過処理、濃縮処理、殺菌処理をした後、スプレードライにより乾燥することで、粉末状の酵母エキスを得た。
各サンプルについて、分解率(%)とAIG含有量(%)を、実施例1と同様にして測定した。測定結果を表3に示す。この結果、抽出処理前のUHT殺菌の殺菌温度が120℃の試験区1及び2のほうが、100℃の試験区3及び4よりも、分解率が高い傾向が観察された。ただし、その差は、UHT殺菌処理後が最も大きく、抽出処理開始から3時間を経過するころにはいずれもほぼ同程度となっていた。また、AIG含有量も、UHT殺菌処理後から抽出処理の序盤では、抽出処理前のUHT殺菌の殺菌温度が120℃の試験区1及び2のほうが、100℃の試験区3及び4よりも高くなっていたが、抽出処理開始から1.5時間を経過するころにはいずれもほぼ同程度となっていた。すなわち、抽出処理前の殺菌処理の条件の違いにかかわらず、全ての試験区において、AIG含有量が高い酵母エキスを調製することができた。
Figure 0006509196
[実施例3]
酵母菌体を抽出処理する条件をふり、分解率やAIG含有量に対する影響を調べた。
具体的には、抽出処理の条件を表4に示す通りとし、抽出時間を6時間とし、抽出開始から0時間目、1.5時間目、3時間目、4.5時間目、及び6時間目(終了時)に、酵母懸濁液の一部を測定用にサンプリングした(抽出0hサンプル、抽出1.5hサンプル、抽出3hサンプル、抽出4.5hサンプル、抽出6hサンプル)以外は、実施例2と同様にして酵母懸濁液から粉末状の酵母エキスを調製した。
Figure 0006509196
各サンプルについて、分解率(%)とAIG含有量(%)を、実施例1と同様にして測定した。測定結果を図3〜8に示す。抽出温度を70℃とした試験区m1〜m3について、図3に分解率の推移(各サンプルの分解率)を、図4にAIG含有量の推移(各サンプルのAIG含有量)を示す。同様に、抽出pHを7.7とした試験区m2、m4、m6について、図5に分解率の推移を、図6にAIG含有量の推移を示し、抽出温度を75℃とした試験区m4及びm5について、図7に分解率の推移を、図8にAIG含有量の推移を示す。抽出温度が一定の場合、抽出処理におけるpHが高いほど、分解率は高くなる傾向が観察されたが、AIG含有量はあまり差がなかった(図3、4、7、及び8)。抽出処理におけるpHが一定の場合には、温度が高くなるほど分解率は高くなる傾向が観察されたが、AIG含有量はあまり差がなかった(図5及び6)。すなわち、抽出処理の条件の違いにかかわらず、全ての試験区において、AIG含有量が高い酵母エキスを調製することができた。
[実施例4]
下記表5に示す酵母について、酵母菌体から抽出した抽出物をヌクレアーゼ処理及びデアミナーゼ処理する方法により、酵母エキスを調製し、得られた酵母エキスの乾燥重量当たりのIG含有量(イノシン酸とグアニル酸の含有量)を測定した。下記表中、「IFO番号」とは、公益財団法人発酵研究所の登録番号を意味する。
Figure 0006509196
具体的には、まず、実施例1の<酵母の培養物の調製>と同様にして、固形分15質量%の酵母菌体の懸濁液(酵母懸濁液)を調製した後、同じ実施例1の<方法1>又は<方法5>と同様にして酵母エキスを調製した。
実施例1と同様にして、Dea反応後サンプルのIG含有量と、菌体分離直前サンプル(アルカリ抽出後、遠心分離処理により菌体が分離回収される直前のサンプル)の分解率を調べた。測定結果を表6に示す。この結果、いずれの菌株においても、方法1のほうが方法5よりも、Dea反応後サンプルのIG含有量が高く、より核酸含有量の高い酵母エキスが調製できることが確認された。また、IFO 0639株を除き、分解率を測定した全ての菌株において、方法5のほうが、菌体分離直前サンプルの分解率が高く、核酸以外の物質が過剰に抽出されていることが示唆された。
Figure 0006509196
本発明に係る酵母エキスの製造方法により、従来の酵母エキスの製造方法と比較して核酸含有量のより高い酵母エキスを酵母菌体から調製することができる。

Claims (6)

  1. (1)酵母菌体を、100〜130℃で10〜90秒間加熱殺菌する工程;
    (2)前記工程(1)により殺菌した酵母菌体を、50〜85℃、pH7〜10で抽出処理し、酵母抽出物を調製する工程;
    (3)前記工程(2)の後、得られた酵母抽出物を固液分離処理し、不溶物の少なくとも一部を除去する工程;
    (4)前記工程(3)の後、不溶物が除去された酵母抽出物をヌクレアーゼ処理及びデアミナーゼ処理する工程;並びに
    (5)前記工程(4)の後、前記酵母抽出物を加熱殺菌処理する工程;
    を有する、酵母エキスの製造方法。
  2. 前記工程(2)における抽出処理を、pH7.4〜10で行う、請求項1に記載の酵母エキスの製造方法。
  3. 前記工程(4)におけるヌクレアーゼ処理及びデアミナーゼ処理を、pH4.0以上pH7未満で行う、請求項1又は2に記載の酵母エキスの製造方法。
  4. 前記工程(5)の後、さらに、
    (6)前記酵母抽出物を濾過する濾過工程;及び
    (7)前記濾過工程により得られた濾液を乾燥させる乾燥工程;
    を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の酵母エキスの製造方法。
  5. 前記濾過工程(6)後、前記乾燥工程(7)前に、さらに、
    (6−1)前記濾過工程(6)により得られた濾液を濃縮する濃縮工程;及び
    (6−2)前記濃縮工程(6−1)により得られた濃縮物を加熱殺菌処理する加熱殺菌工程;
    を有する、請求項4に記載の酵母エキスの製造方法。
  6. 前記濾過が珪藻土濾過である、請求項4又は5に記載の酵母エキスの製造方法。
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