JP2848629B2 - ビスコースレーヨンフィラメント糸条 - Google Patents

ビスコースレーヨンフィラメント糸条

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JP2848629B2
JP2848629B2 JP18165789A JP18165789A JP2848629B2 JP 2848629 B2 JP2848629 B2 JP 2848629B2 JP 18165789 A JP18165789 A JP 18165789A JP 18165789 A JP18165789 A JP 18165789A JP 2848629 B2 JP2848629 B2 JP 2848629B2
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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は複数本の単糸から成る実質上無撚のビスコー
スレーヨンフィラメント糸条に関する。
本発明のビスコースレーヨンフィラメント糸条は、無
杼織機、とりわけ流体噴射式の無杼織機で製織する際の
緯糸として、または空気噴射加工用に用いた場合、工程
性能が良く、かつ欠点が少く、風合の良好な製品を得る
ことができるという特性を有し、実質上無撚の織物用ま
たは空気噴射加工用として有用である。
〔従来技術〕
ビスコースレーヨン糸条は強度が強く、切れ易いため
に、これを補う目的で撚が加えられている。この有撚糸
は、ケークやパーンと称される形態で供給されている
が、ケークは中空円筒状の不安定な巻形状であり、パー
ンは肩部が不均一な巻形状をとるため、糸を解舒する際
の解舒テンションが不均一となり、後加工工程で切糸が
発生し易く、糸が部分的に伸長された場合には最終製品
において異常光沢部或いは、異染部が残る等の欠点があ
った。この欠点は、特に高速解舒に際し顕著に現われ、
サイジング、管巻、製織等の織物製造工程における高速
化の大きな阻害原因となっている。
また、有撚糸の生産には、高速回転のポットやリング
撚糸機が用いられ、回転のための大きな電気エネルギー
が消費されるばかりか、回転体の故障に伴なう保全等に
余計な労力が強いられるという問題点があった。
一方、製織技術の面において、フライ織機を代表とす
る有杼織機から、いわゆる革新織機と呼ばれる高速の無
杼織機への転換が急速に進行しつつあり、ビスコースレ
ーヨン糸条においても空気噴射式織機(エアジェットル
ーム)で代表される無杼織機の使用による生産性の向
上、所要織機台数の低減、電子制御による省力化、無停
止化に伴なう品質向上、発生騒音の低減等の改善が図ら
れつつある。
有撚糸を無杼織機に用いる場合、ケークは解舒性が悪
いため、パーンが使用されているが、パーンの肩部から
糸条を解舒する際に、ストレート部及び上肩部に解舒糸
条が接触して上肩部の糸を集団で引っ掛ける、いわゆる
連れ出しが発生し易い。この傾向は高速化によって益々
顕著になる。また、解舒テンションが高過ぎて飛走糸条
が織物の端にとどかず途中で停滞するショートピックに
よる停台が多発する。
これらの問題点を解決すべく、集束性を高めた無撚ビ
スコースレーヨン糸条を供給しようとする試みが知られ
ている。
例えば、特公昭47−26447号公報には、ビスコースを
紡糸初期の分解度が低い間に糸道でしごき、構成単位の
10%〜40%を互いに部分的に密着させる方法が開示され
ている。この方法では、単糸外周に形成されつつあるス
キン層が未だ固っていない状態でじごくため、単糸同志
が凝固密着を起こし、密着した単糸間の境界領域が消失
して一体化する。このような糸条は製織等の後加工工程
で糸に張力がかかると、密着部分が裂断して毛羽や単糸
切断を引き起こす。また、精練、染色等の工程を経ても
単糸が分離し難く、製品にした場合、柔軟性がなく、硬
くごわごわした風合になる等の欠点を有する。
フィルム形成能があって接着力のある異種ポリマーで
糸条を被覆した、いわゆる糊付糸を供給する試みもある
が、硬くて本来の柔軟性がなく、極く限定された用途に
しか使用できない。異種ポリマーの被覆量を軽減した糸
も試みられたが、被覆斑が発生するという問題点をも
つ。
糊付糸を無杼織機に用いた場合、緯糸打込時の走行安
定性が低く搬送途中で交錯する経糸に絡むショートピッ
クや、先端もつれ等が発生して織機の停台回数の増加、
節や毛羽の発生による織物品位の低下を招くのみなら
ず、高速化に際して多大のエネルギーを消費する。とり
わけ、空気噴射式織機では、緯糸打込み時並びに搬送時
に多大の空気量及び空気圧を必要とし、高速化には極め
て不適である。
特公昭63−5486号公報には、通常条件下で製織時の飛
走性が改良された無撚糸の例が紹介されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
本発明の目的は、エアージェットルームをはじめとす
る無杼織機による製織工程での高速化に際して省エネル
ギー化を図ることができるビスコースレーヨンフィラメ
ント糸条を提供するにある。
更に、後加工工程における単糸の切断や毛羽の発生が
極めて少く、製品にした時に柔軟で、風合の低下や品位
の低下のない、従来のビスコースレーヨンフィラメント
糸条に優るとも劣らないビスコースレーヨンフィラメン
ト糸条を提供するにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明の目的は、複数本の単糸から成る実質上無撚の
糸条であって、糸条を構成する各単糸はスキン・コア構
造を有しており、糸長方向にわたって実質上規則性のな
い間隔で節を有し、該節部分の糸条を構成する各単糸相
互の接合度合が、節の部分以外の単糸相互の接合度合に
対して相対的に低いことを特徴とするビスコースレーヨ
ンフィラメント糸条によって達成される。
本発明でいう「実質上無撚」とは、解舒等によって自
然にかかる撚以外には、特別な撚が加えられていないこ
とを言う。
本発明のビスコースレーヨンフィラメント糸条の繊度
は格別限定されるものではなく、通常、その単糸繊度は
約0.5〜20デニール、糸条の合計繊度は約30〜10,000デ
ニールである。
本発明の糸条において、糸長方向にたって実質上規則
性のない間隔で節を有し、該節部分の糸条を構成する単
糸相互の接合度合が節の部分以外の単糸相互の接合度合
と比較して相対的に低いことは重要な条要件である。
本発明にいう「実質上規則性のない間隔」とは、連続
したいくつかの節の間隔が糸長方向のずれの場所であっ
ても、測定誤差範囲内で周期性や規則性のないものであ
ることを言う。
また、ここで、「接合」とは、糸条を構成する単糸が
相互に接したままで維持されている状態をいい、その単
糸相互を接合させている物質(例えば、低重合度セルロ
ース、油剤等)を溶解、除去すると糸条は完全に独立し
た単糸に分散することを言い、上述の、「低重合度セル
ロース」、は特公昭63−5486号公報のものと同義であ
る。
第1図は、本発明の糸条すなわち、上述のような実質
上規則性のない間隔で節を有し、該節部分の糸条を構成
する単糸相互の接合度合が、節部分以外の単糸相互の接
合度合に比較して相対的に低い糸条の一部を模式的に示
している。同図に示されるように、ビスコースレーヨン
フィラメント糸条1は複数本の単糸2より構成されてお
り、接合度合が相対的に低い領域Aと接合度合が相対的
に高い領域Bを相互に有しており、かつその接合度合が
相対的に低い隣り合う2つの領域Aの中心位置の間隔C
には実質上規則性がない。本発明に言う「節」はこの接
合度合が相対的に低い領域Aに相当しており、単糸相互
の接合度合が低い結果、糸条が嵩高くなっているところ
もみられる。
さらに、典型的な本発明の糸条の一例は模式的に第2
図に示されている。本例においては糸条1がジグザグに
屈曲しており、その折れ目部分が節部分(Aの領域)を
形成している。その間隔(Cの長さ)が実質的に規則性
のない間隔であるとともに、接合度合の程度が相対的に
高い部分(Bの領域)と低い部分(Aの領域)が交互に
出現している。このような第2図に示す形態は無緊張状
態の時に観察され、弱い張力をかけて糸条を直線状にす
ると第1図の状態を示すようになる。
本発明の糸状の特徴は、拡大鏡、光学顕微鏡等によ
り、容易に観察することができ、典型的なものは肉眼に
よっても観察できる場合もある。また、誘電率を利用し
た繊度斑測定機を用いても、糸条の水分斑及び測定環境
の水分率を考慮して測定を行えばその特徴である実質上
規則性のない間隔で分布する節の存在を知ることができ
る。さらに、光学的にイメージセンサーを用いた繊維の
投影面積の測定によっても、本発明の節の測定が可能で
ある。また、後述の如く、糸条の接合度を測定すること
によっても特定できる。
第3図は本発明の糸条の節の測定方法を示す模式図で
ある。より簡便な節の測定方法として、例えば、第3図
IIIに示すように小さい荷重5(例えば0.05g/d以下)を
かけて糸条4を伸びた状態とし、次いで荷重5の取去っ
て無荷重とした直後に(第3図II)糸の長さを測り、さ
らに数時間経過して糸条が屈曲したとき(第3図I)見
掛けの長さを測定して、第3図IIの糸条との長さの差d
を求めることによって節を特定することができる。荷重
解放後に糸条が短くなる程度は節の間隔、節部分以外の
部分の接合度合によって変るが、通常数%の値を示すも
ので本発明の効果は充分に得られるが、節の間隔の小さ
いものでは10%を超えるものも得られる。
本発明の糸条(第1図、第2図に例示)を高い張力、
例えば0.2g/d以上の張力をかけると第3図IIIに模式図
に示したように、その節は見かけ上無くなり、真直な糸
条4となる。従って、高い張力をかけて用いる用途には
通常の無撚レーヨン糸条と同様に使用することができる
ことも本発明の特徴であり、即ち構成している各単糸の
長さが実質的に等しいことを意味する。
また、一時的に張力をかけてチーズ又はコーンを巻き
取った糸条も、その張力がかかっている時間が短いか、
又は低い場合には、巻玉(例えばチーズ又はコーン)の
表面では節が観察し難いこともあるが、糸条自身は残留
応力ひずみが残存し、無緊張もしくは低張力(例えば0.
05g/d以下)のもとに静置すれば、その節が出現してく
るようになる。従って、低張力のもとで使用される繊維
加工に用いる際には、本発明の効果を損うことなく、良
好な性能と製品を得ることができる。
接合度合の絶対値の大小は本発明を何ら限定するもの
ではないが、良好な集束性、製品品位、加工工程性能を
与えるうえで、糸条を構成する単糸どうしの接合度合
は、相対的に接合度合が高い領域Bの平均接合力が0.2m
g/d以上であることが好ましい。また、単糸どうしの接
合度合が相対的に低い領域Aの平均接合力は3mg/d以下
であることが好ましい。特に領域Aの平均接合力が1mg/
d以下であるときは、加工工程の性能効果を最大限に発
揮できるので一層好ましい。
ここで言う「平均接合力」は、特公昭63−5486号公報
明細書に詳細に記載される応力ひずみ計を利用した測定
法および評価法に基づいて測定・評価することができ、
糸条の集束性とともにその実用特性をよく評価できる指
標である。
従来のビスコースレーヨン無撚糸の製造においてその
技術思想は、主として、集束性を高めかつ糸長方向の均
一性を高めた真直な糸条を目指していた。つまり、上述
の平均接合力を高くする思想、及び糸長方向にわたって
糸条の接合力(言いかえれば集束性)を均一化して製品
の品位や加工工程性能を満足させようとする思想のもと
に種々のビスコースレーヨン無撚糸が提案されていた。
しかしながら、本発明者らは、レーヨンフィラメント
糸条の後加工工程、糸条の空気流に対する挙動や製品の
品位に関する広範囲に及ぶ詳細な検討を行い、数々の技
術思想を実証した結果、本発明に到達したわけである。
つまり、全糸長方向にたって実質上規則性のない間隔で
節を有し、単糸相互の接合度合が節部分が相対的に低
い、つまり、接合度合の強弱が実質的に規則性のない間
隔に交互に存在し、2種の相容れない機能を併せ持たせ
ることによって、無撚のビスコースレーヨンフィラメン
ト糸条として、とりわけ、織物用の糸もしは空気噴射加
工用の糸として優れていることを見出したものである。
本発明の糸条において隣り合う2つの節の間隔の平均
値は100mm以下であることが望ましい。本発明の糸条に
おいては、接合度合が相対的に低い領域Aが飛走安定性
を増大させる機能を有しており、節の間隔が短い程飛走
安定性はより向上するからである。すなわち、節の間隔
はできるだけ短いことが、飛走状態を一定にし、均一な
織物を得るうえで望ましい。
本発明の糸条を構成する各単糸の接合の方法は特に限
定されるものではないが、布帛の精練と染色等の通常の
後加工工程で容易に洗い落されるものであることが好ま
しい。とくに、低重合度セルロース、油剤またはその両
方によって接合度合を調節した糸条は、後加工工程にお
ける排水処理や条件設計の変更等の問題も少く好ましい
接合方法である。
本発明のビスコースレーヨンフィラメント糸条の紡糸
及び仕上げ方法は特別に制限されるものではないが、均
一な織物を得るために、本発明の糸条の沸水収縮率は全
糸長に亘ってその平均が3%未満と小さく、かつそのば
らつきが±0.5%以内であることが好ましい。これは、
後加工工程における精練・染色又は樹脂加工等に際し、
湿潤、乾燥という工程を通過せしめる機会が多いからで
ある。このような糸条は連続的に精練、仕上げ、乾燥を
施すことにより得られる。
本発明の繊維は、特別な異種ポリマーを用いなくても
得ることができ、本質的に従来のビスコースレーヨン繊
維とその組成が変らないものが得られ、その際には、後
加工工程において特別な処理や留意を新たに必要とする
ことがなく、さらに従来のビスコースレーヨン繊維の優
れた特性である吸湿性、発色性を初めとする諸特性を保
持している。
本発明の糸条において、糸条を構成する各単糸がスキ
ン・コア構造を有していることは、本発明の糸条が従来
のビスコースレーヨン糸条と同等の機械物性を示すこと
に関して大きな影響を与えているものと考えられる。ス
キン・コア構造の不均一化やスキン層が部分的に欠損し
た繊維からなる糸条をつくることによっても接合度合を
糸長方向に変化させた糸条を得ることは可能であるが、
規則性のない間隔で節をつくることが難しいうえに、得
られた糸条は部分的に密着していたり、機械物性の低下
を余儀なくされ、もはや通常の用途分野の使用には耐え
得ぬものとなる。
本発明のビスコースレーヨンフィラメント糸条は、無
杼織機により製織する際の緯糸として好適である。
無杼織機としては、例えば、レピア式織機、グリッパ
ー式織機、空気噴射式織機(エアージェットルーム)等
があるが、中でも、空気噴射式織機による織物の緯糸と
して用いるのに特に好適である。
本発明者らは、空気噴射式織機における緯糸は、飛走
する糸条に適度な断面積の拡がりを持たせることに依
り、極めて高い飛走安定性を示すことを見い出した。す
なわち、糸条の飛走安定性には断面積に比例する慣性抵
抗力が重要な推進力として働いており、この断面積の拡
がりをコントロールすることによって飛走安定性の向上
並びに搬送空気圧および空気量の減少を実現することが
可能となったのである。
本発明のビスコースレーヨンフィラメント糸条は、実
質的に規則性のない間隔で接合の程度が低い(集束の程
度が低い)領域を有しており、しかもそれらの接合の程
度の低い(集束の程度が低い)領域は、それぞれ両端を
隣接する接合の程度の高い領域で固定されており、全体
として糸条は適度の集束性を示す。この実質的に規則性
のない間隔で存在する接合の程度の低い領域が、織機へ
の打込み並びに搬送時に糸条の飛走方向に向けて噴射さ
れる圧縮空気流を、ばらけた単糸間に抱え込んで膨らむ
ことにより、慣性抵抗をつける断面積を大巾に増大させ
ることになる。また、無杼織機の緯糸の解舒張力は、チ
ーズもしくはコーン状に巻き取られた巻玉から解舒する
際は特に低く、1000m/分程の高速解舒を行っても0.1g/d
以下にすることができ、この様な場合には、本発明の糸
条の糸条断面積が接合の程度の低い領域で大きくなって
おり、圧縮空気による搬送力はさらに高まることにな
る。従って、従来のビスコースレーヨン無撚糸条または
集束糸条に比較して、圧縮空気流と糸条との接触及び/
または有効な部分の糸条断面積が増し、空気の使用効
率、すなわち、搬送力が増すか、または同一搬送力であ
れば打込みおよび搬送用の空気圧、空気量を減少せしめ
ることが可能となる。また、接合の度合の低い領域に隣
接する。接合の度合の高い領域は、空気流を抱え込んで
膨らんだ低接合領域が、進行方向に対してラジアル方向
に拡がるのを防止する機能を有する。上記のような作用
に基いて、本発明の糸条は特に空気噴射式織機において
すぐれた効果を発揮すると考えられる。
また、上述した原理に基いて、本発明の糸条を空気噴
射加工、例えば圧縮空気を用いた他素材繊維との混織か
らみ加工やサイクロセット等を用いる場合は、本発明糸
条の低接合領域を核にして容易に単糸相互のからみが発
生し、高接合領域でのからみ程度の斑の発生を防止して
いると考えられる。また、同一からみ程度を保持させる
ために必要な空気量と空気圧を低くすることができる。
本発明でいう「ビスコースレーヨンフィラメント糸
条」とは、セルロースをザンテート誘導体として水酸化
ナトリウム水溶液に溶解して、いわゆるビスコース液と
して、これを防止し、凝固−再生して得られる再生セル
ロース繊維を指す。
また、二酸化チタンや顔料等の一般に常用される艶消
し剤や着色剤等を含有したビスコースレーヨン繊維にお
いても本発明の効果は損なわれることなく得られている
ので、これらの添加剤を用途に応じて適宜用いることが
できる。
繊維の重合度は特に限定されるものではなく、通常の
ビスコースレーヨン糸条の一般的な平均重合度(約300
程度のものが多い)であってよく、また、配向度その他
の繊維の全体の物性値についても特に限定されるもので
なく、製造方法に応じて選択すればよい。
次に、本発明のビスコースレーヨン繊維の代表的製造
方法について説明する。
ビスコースの紡糸自体は公知の方法によって行なうこ
とができ、ビスコース組成、凝固浴組成および紡糸条件
などは常用される条件を採ることができる。
紡出された糸条には、乾燥前もしくは精練前に実質的
に規則性のない間隔で節部が形成される。節を形成する
工程は、糸条が乾燥履歴を受ける前が好ましく、さら
に、各単糸の表層部分の再生、凝固は完了しているが内
部の再生が未だ完了しいない時期に節部を形成すること
が更に好ましい、この節部の形成のために使用する装置
は、特に限定されるものではなく、例えば、針状ノズル
を用いて高圧水を噴射し糸条を規則性のない間隔で叩く
ように構成した装置を用いることができる。規則性のな
い間隔は乱数発生装置を組込む等によって得られる。節
の付与された糸条は、そのまま、または糸条を集めてル
ープ状に堆積させたもの等を2枚の布もしくは網等では
さんで精練あるいは乾燥させることが好ましい。
精練工程は公知の方法によって行えばよい。好ましく
は、無緊張状態を維持して精練する方法が採られる。
乾燥工程においては、糸条をシート状もしくはひも状
で、無緊張の状態で乾燥することが望ましい。この乾燥
は、例えば、特公昭54−36698号、特公昭47−16844号、
特公昭47−29926号等の公報に多数示されているような
トンネル乾燥機を用いて行うことができる。糸条は折り
たたまれたシート状もしくはヒモ状で精練及び乾燥する
ことが望ましいが、さらに、精練工程の後もしくは乾燥
工程の中間で油剤、低重合度セルロース等の集束剤を付
与させ、糸条の接合度合の調節をすることが特に望まし
い。かかる集束剤の付与方法は、例えば、網ではさんだ
状態のシートに調合された集束剤溶液をスプレーするか
またはトラフに浸漬する方法等を採用することができ
る。これによって節部以外の接合の程度を自由に調整す
ることができる。
乾燥後は、無撚のままチーズまたはコーンに巻取られ
る。巻取時にかかる張力は平均0.1〜0.3g/dであること
が望ましい。良好な集束性が得られるからである。これ
を超える場合は、節部の破壊が増加し、適度な収束性を
損い易いので避けた方が良い。張力が過小であると、第
2図に示すような折り目がそのまま残り易くなり、きれ
いな巻き形状を得難い。
なお、リングツイスター等の撚糸機を用いて巻き取る
ことも可能であるが、この際は、トラベラー等のしごき
によって、せっかく調整した節部及び節部以外の適度の
集束性が破壊され易く、無撚で巻き取ったものに比較し
て、その効果は劣るので好ましくない。しかしながら、
撚が加えられることによって糸条の集束性が維持される
ので、通常のビスコースレーヨン繊維の用途に用いるこ
とは可能である。
〔作 用〕
本発明のビスコースレーヨンフィラメント糸条は、実
質的に規則性のない間隔で接合の程度が低い(集束の程
度が低い)領域を有しており、しかもそれらの接合の程
度の低い(集束の程度が低い)領域は、それぞれの両端
を隣接する接合の程度の高い領域で固定され、全体とし
て糸条は適度の集束性を示す。この実質的に規則性のな
い間隔で存在する接合の程度の低い領域が、織機への打
込み並びに搬送時に糸条の飛走方向に向けて噴射される
圧縮空気流を、ばらけた単糸間に抱え込んで膨らむこと
により、空気の使用効率、すなわち搬送力を増大させ
る。
接合の度合の低い領域に隣接する、接合の度合の高い
領域は、空気流を抱え込んで膨らんだ低接合領域が、進
行方向に対してラジアル方向に拡がるのを防止する機能
を有する。
また、節部分が実質上規則性のない間隔で存在するた
めに、製品の周期的斑による欠点、例えば、もあれ縞や
緯斑等が見えにくくなる。
〔実施例〕
以下、実施例について、本発明をさらに具体的に説明
する。
実施例の説明に先立ち、各物性の測定方法について以
下に説明する。
(1) 接合力 特公昭63−5486号明細書記載の方法で行い、単糸間の
平均接合力として表示する。
(2) 無荷重静置時の見掛けの縮率 糸条の一端を固定し、もう一端に50mg/dの荷重をかけ
た時の長さを測定し、ついで該荷重を取り去り、糸条の
自重のみの荷重がかかる状態で24時間の間、温度20℃、
相対湿度60%に調節された室内に放置したときの糸条の
両端の直接距離を測定する。この2つの値の差を前者の
値で除したものの百分率を見かけの縮率として表示す
る。
(3) 飛走性 津田駒製作所製エアジェットルーム(ZA−103型)に
て690rpmの回転数で運転し、製織しながら飛走性評価を
行った。
製織条件を下記に示す。
(1) 経糸:レーヨン有撚糸条(撚数40回/m)75デニ
ール/26フィラメント (2) 経密度:41.3本/cm (3) 緯糸:本実施例のレーヨン糸条 (4) 緯密度:33.9本/cm (5) 製品規格:122cm幅、タフタ 飛走性の評価は、メインノズル、サブノズル各々につ
いて噴射空気の圧力を市販の圧力計にて測定した。
(4) 製織性 上記の飛走性を測定した製織条件で織機3台を用いて
生機長(3台計)5000m製織し、この時の緯糸因による
停台回数を1台1日(24時間)当りに換算して緯糸因停
台率として表示する。
(5) 織物緯欠点 製織した生機を精練加工した製品で4500m検反を行な
い、緯糸切れ、緯糸ヒケ等を含み、微小な緯欠点の発生
個数を数え、これを50m当りに換算した。
(6) 織物加工後風合 同一の精練仕上を施こした織物を官能検査し、1級=
柔かい、2級=やや柔かい、3級=普通、4級=やや硬
い、5級=硬い、の5段階の評価基準に基づき5人でラ
ンク付けし、その平均値で表わした。
実施例1 通常のビスコース(NaOH6.0重量%、セルロース8.5重
量%、γ価40、粘度50秒)を用いて、0.08mmφの孔径の
50孔のノズルより紡浴酸(H2SO4120g/、Na2SO4260g/
、ZnSO415g/、50℃)中に吐出し、120デニールを糸
の紡糸した。糸を凝固再生せしめた後に、糸条を2枚の
通水性を有する布の間にはさで走行させ、糸条の走行方
向と直角方向に規則性のない周期で往復移動する注水ノ
ズルを用いて糸条に間けつ的に水柱を当てた。注水ノズ
ルは孔径0.1mm、水圧3kg/cm2、注水の糸条に当たる間隔
の平均値を10mmになるようにノズルの往復速度を調整し
て実行した。
次いで、10分間水洗し、NaHCO350ppmの水溶液で10分
間精練し、更に1分間水洗し、その後、ポリビニルアル
コール(PVA)1g/水溶液にて1分間精練した。次に、
絞りロール(ニップロール)を用いて水分率250%にな
るまで絞った後、トンネル式乾燥機を用い95℃にて乾燥
した。
その後、1.5重量%の油剤を付与して撚をかけずにチ
ーズの形態に平均0.20g/dの張力にて巻取り、実質上無
撚の節を有するビスコースレーヨンフィラメント糸条を
得た。
この糸条を解舒して測定した節間隔の平均は9.2mmで
あり、その間隔は規則性のないものであった。これは、
無緊張で乾燥する過程で糸条が収縮したためであった。
接合力、見掛けの縮率、飛走性、製織製、織物緯欠
点、織物風合を評価した結果を第1表に示す。また、安
定飛走領域を測定した結果を第4図に示す。
得られた織物は周期斑による欠点のないものであっ
た。
実施例2 注水ノズルの移動速度を変え、節の間隔の平均値が約
10mmになるようにした他は実施例1と全く同様にして糸
条を製造し、評価を行った。評価の結果を第1表に示
す。
実施例3 PVA水溶液を低重合度セルロース水溶液にかえた他は
実施例1と全く同様にして糸条を製造し、評価を行っ
た。評価の結果を第1表に示す。
実施例4 0.08mmφの孔径の26孔のノズルを用いて75デニールの
糸を紡糸した他は実施例1と全く同様にして糸条を製造
し、評価を行った。評価結果を第1表に示す。
また、本実施例の糸条(チーズ)を800m/分の速度で
解舒しながらその途中にサイクロセットノズルを置い
て、圧縮空気で単糸の交絡を行わせしめ、交絡数の平均
値が50個/mの糸条を製造した。この糸条は糸長方向の交
絡斑が少く、かつ、製造に必要な空気圧力は1.2kg/c
m2、空気量は1.0Nm3/Hrと少い量で製造することができ
た。
実施例5 注水ノズルの移動速度を変え、隣接する2つの節の間
隔の平均値が約120mmになるようにした他は実施例1と
全く同様にして糸条を製造し、評価を行った。
評価結果は第1表に示すように、周期斑による欠点の
ないものであった。
実施例6 PVA水溶液による精練工程を省いた他は、実施例1と
全く同様にして糸条を製造し、評価を行った。
その結果は第1表に示すように、製織時の飛走性およ
び風合は良好なものが得られるが、解舒途中の糸道等と
の摩擦による毛羽の発生が多くなる傾向がみられた。し
かしながら、周期斑による欠点はみられなかった。
比較例1 注水ノズルを規則的に移動させるようにして、隣接す
る2つの節の間隔が約120mmで等間隔になるようにした
他は実施例1と全く同様にして糸条を製造し、評価を行
った。
評価結果は第1表に示すように、製織性および風合は
比較的良好であったが、周期的な斑(モアレ状にみえる
光沢斑)が肉眼でみられた。
比較例2 ビスコースレーヨンフィラメント糸条の製法として従
来より一般的に用いられているセントル方式紡糸法によ
り製造された市販の旭化成工業(株)製ビスコースレー
ヨンフィラメント糸条(120デニール、単糸数50)をチ
ーズに巻直したものを用いて実施例と同様の方法で評価
した。
評価結果を第1表に示す。また、安定飛走領域を測定
した結果は第3図に示すように、本発明の糸条に比較し
て高い圧縮空気が必要であった。
比較例3 特公昭63−5486号実施例5に記載の方法によって製造
した糸条を本実施例と同様の方法で評価した。
評価結果を第1表に示す。また、安定飛走領域を測定
した結果は第3図に示すように、本発明の糸条に比較し
て高い圧縮空気圧が必要であった。
〔発明の効果〕 本発明のビスコースレーヨン糸条は、原糸製造工程並
びに後加工工程での切断や毛羽の発生が少ない。織物、
編物とした場合も柔軟な風合で、品位の良好な製品を与
える。また、エアジェットルームをはじめとする無杼織
機の緯糸として用いた場合、無撚糸でありながら有撚糸
と比較して遜色がなく、高速のもとで優れた工程性能を
示し、かつ製品の品位がよい。
すなわち、緯糸に原因する織機の停台回数、織物な緯
欠点が抑制され、製品の風合に優れている。特に、周期
的な欠点が見えにくくなり有用であるエアージェットル
ームの緯糸として用いた場合、撚糸の費用が削減できる
とともに空気圧力、使用空気量ともに現在の実用水準を
改善でき、省エネルギー化に大きく寄与できるととも
に、さらに織機の回転数の上昇に対しても対応できるよ
うになる。また、空気噴射式加工においても上述のよう
に、使用空気量の減少、処理速度の上昇が図れ、省エネ
ルギー、省力化に寄与する。
【図面の簡単な説明】
第1図は本発明の糸条の一部の模式図、第2図は張力履
歴が極めて少い本発明の糸条の一部の模式図、第3図は
本発明の糸条の節の測定方法を示す模式図、第4図は安
定飛走領域を示す図である。 A……節部、B……節以外の部分、 C……隣り合う2つの節の間隔、 d……無荷重静置時の見掛けの縮み長さ、 1,4……ビスコースレーヨンフィラメント糸条、 2……単糸、3……止め具、 5……おもり、 6……実施例1の安定飛走領域を示す線、 7……比較例2の安定飛走領域を示す線、 8……比較例3の安定飛走領域を示す線。
フロントページの続き (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) D02J 1/00 - 1/14 D02G 3/22 D01F 2/06

Claims (2)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】複数本の単糸から成る実質上無撚の糸条で
    あって、糸条を構成する各単糸はスキン・コア構造を有
    しており、糸長方向にわたって実質上規則性のない間隔
    で節を有し、該節部分の糸条を構成する各単糸相互の接
    合度合が、節の部分以外の単糸総相互の接合度合に対し
    て相対的に低いことを特徴とするビスコースレーヨンフ
    ィラメント糸条。
  2. 【請求項2】請求項1記載のビスコースレーヨンフィラ
    メント糸条からなることを特徴とする流体噴射式の無杼
    織機用緯糸。
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