JP2002105784A - アセテート異繊度マルチフィラメント糸及びその製造方法並びにその織編物 - Google Patents

アセテート異繊度マルチフィラメント糸及びその製造方法並びにその織編物

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JP2002105784A
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Takanobu Takenaka
孝信 竹中
Hiroyuki Kono
裕之 河野
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Mitsubishi Rayon Co Ltd
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Abstract

(57)【要約】 【課題】織編物表面に光沢を有する部分が均一に分散し
た、キラキラとした光沢とドライ感、ソフト感を有する
アセテート異繊度マルチフィラメント糸及びその製造方
法並びにその織編物を提供する。 【解決手段】下式を満足する、単繊維繊度が7〜14d
texの平滑面を有する異形断面の太繊度糸と、単繊維
繊度が該太繊度糸の0.1〜0.4倍の細繊度糸からな
るアセテート異繊度マルチフィラメント糸および、アセ
テート繊維の乾式紡糸法において、紡糸ノズルから吐出
された単繊維繊度の異なる2種類の糸条に、引き取りロ
ーラーと巻き取り機の間で混繊交絡処理を行う際に、該
糸条が15〜25%の残存溶剤を含んでいることを特徴
とするアセテート異繊度マルチフィラメント糸の製造方
法。 0.1≦Da/Db≦0.4 (Daは太繊度糸の全繊度(dtex)。Dbは細繊度
糸の全繊度(dtex)を表す。)

Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【発明の属する技術分野】本発明は、キラキラとした光
沢感とドライ感、ソフト感を有するアセテート異繊度マ
ルチフィラメント糸及びその製造方法並びにその織編物
に関するものである。
【0002】
【従来の技術】アセテート繊維はドライ感とシルキーな
光沢に特長があるが、近年の消費者ニーズの多様化に伴
って、アセテート繊維にもドライ感のみでなく、新規な
光沢感とソフト感な風合いを兼ね備えた商品が要求され
ている。従来より、繊維の断面形状を平滑面を有するY
断面や十字断面の異形断面とすることで光沢が向上する
ことが知られており、例えば特公昭37−7917号公
報に紡糸孔形状が正三角形であるとY字状断面の繊維が
得られ、また、紡糸孔形状が正方形であると十字状断面
の異形断面繊維が得られることが記載されている。
【0003】しかしこの方法では、光沢感は得られるが糸が
剛直になり、ソフトな風合いが得られず、紡糸工程にお
いてはケバの発生、糸切れ等の問題、さらには、織編工
程でもケバ、糸切れ等のトラブルが発生しやすい。
【0004】また、マルチフィラメント糸を構成する単繊維
のすべてが、異形断面による光沢を有しているため、い
らついた光沢となる。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】本発明はこのような従
来技術における問題点を解決するものであり、織編物表
面に光沢を有する部分が均一に分散した、キラキラとし
た光沢とドライ感、ソフト感を有するアセテート異繊度
マルチフィラメント糸及びその製造方法並びにその織編
物を提供することにある
【0006】
【課題を解決するための手段】本発明の第一の要旨は、
下式を満足する、単繊維繊度が7〜14dtexの平滑
面を有する異形断面の太繊度糸と、単繊維繊度が該太繊
度糸の0.1〜0.4倍の細繊度糸からなるアセテート
異繊度マルチフィラメント糸にある。 0.1≦Da/Db≦0.4 (Daは太繊度糸の全繊度(dtex)。Dbは細繊度
糸の全繊度(dtex)を表す。) また本発明の第二の要旨は、アセテート繊維の乾式紡糸
法において、紡糸ノズルから吐出された単繊維繊度の異
なる2種類の糸条に、引き取りローラーと巻き取り機の
間で混繊交絡処理を行う際に、該糸条が15〜25%の
残存溶剤を含んでいることを特徴とするアセテート異繊
度マルチフィラメント糸の製造方法にある。
【0007】さらに本発明の第三の要旨は、該アセテート異
繊度マルチフィラメント糸を50%以上含む織編物にあ
る。
【0008】
【発明の実施の形態】以下、本発明の好適な実施の形態
について具体的に説明する。
【0009】本発明のアセテート異繊度マルチフィラメント
糸は、単繊維繊度が7〜14dtexの平滑面を有する
異形断面の太繊度糸と、単繊維繊度が該太繊度糸の0.
1〜0.4倍の細繊度糸からなることが必要である。
【0010】本発明の平滑面を有する異形断面とは、例えば
Y断面、十字断面等であって、繊維横断面を800倍の
光学顕微鏡で観察し、断面の一部に長さが15μm以上
40μm未満の凹凸がなくスムーズな曲線又は直線部分
があるものをいう。
【0011】該異形断面のフィラメント糸は、単繊維繊度が
7〜14dtexの太繊度糸であり、光沢を発揮する点
から8〜11dtexがより好ましい。該単繊維繊度が
7dtex未満では、単繊維断面における平滑面の長さ
が短くなり光沢の効果が薄れると共に、該マルチフィラ
メント糸を布帛とした場合のドライ感が損なわれる。ま
た、14dtexを越えると、光沢としては好ましい方
向ではあるが、糸が剛直となり、織り編み工程でケバ発
生の原因となる。
【0012】さらに本発明では、単繊維繊度が該太繊度糸の
0.1〜0.4倍の細繊度糸を含むことが必要でり、該
細繊度糸の単繊維繊度が該太繊度糸の0.1倍未満では
織編物とした場合、織編物表面でのイラツキ感と粗硬感
が増し、0.4倍を超えると太繊度糸の平滑面の発現頻
度が減少し、きらきらとした光沢感が損なわれる。
【0013】また、該細繊度糸の単繊維繊度は1.4〜2.
8dtexが好ましく、1.4dtex未満ではソフト
な風合いは確保できるものの、紡糸孔が細孔になるため
に紡糸口金からの原液の吐出安定性が低下しやすく、
2.8dtexを越えると糸全体として、ソフト感が十
分得られにくくなる。なお、該細繊度糸の断面形状は特
に限定されるものではないが、通常の丸断面の紡糸孔か
ら紡糸されるものが好ましい。
【0014】さらに本発明では、太繊度糸の全繊度Da(d
tex)、細繊度糸の全繊度Db(dtex)の比Da
/Dbが0.1以上、0.4以下であることが必要であ
り、0.15以上、0.3以下がより好ましい。0.1
未満では織編物とした場合、織編物表面の光沢のイラツ
キ感が強くなり、0.4を超えると太繊度糸の平滑面の
発現頻度が減少し、きらきらとした光沢感が損なわれ
る。
【0015】なお前述の繊度範囲において、異型太繊度糸の
フィラメント構成本数についても好ましくは4フラメン
ト以下とし、細繊度を1.4〜2.8dtexのフィラ
メント群とを混繊する事で、平滑部を有する異型断面の
強い光沢部分が繊維表面に均一に分散し、いらつき感を
押さえ、織り編み製品にきらきらとした新規な光沢感の
ある糸が得られる。太繊度異型断面のフィラメント本数
が4フィラメントもしくは全繊度の40%を越えると布
帛でのガリ味感、光沢のいらつき感が強調されやすくな
る。
【0016】さらに本発明では、異型断面糸の平滑面を糸全
体に均一に分布させ、いらつきのない製品にするために
インタレース処理を行うことが好ましく、その交絡数は
20〜40個/m、より好ましくは30〜35個/mで
あり、このインターレース処理に使用するインターレー
スノズルは特に限定はなく、糸条にケバ、ループの発生
がなく、強伸度等織り編みに耐える物性が確保できるノ
ズルであれば良い。交絡数20個/m未満では糸の集束
性が悪くなりやすく、太繊度糸と細繊度糸が分糸してし
まい、織り編み工程での通過性不良が生じやすい。又4
0個/mを越えると糸質ダメージが大きく、ケバの発生
が認められやすくなることから好ましくない。
【0017】次に本発明のアセテート異繊度マルチフィラメ
ント糸の製造方法の一例について詳細に説明する。
【0018】本発明では、アセテート繊維の乾式紡糸法にお
いて、紡糸ノズルから吐出された単繊維繊度の異なる2
種類の糸条に、引き取りローラーと巻き取り機の間で混
繊交絡処理を行う際に、該糸条が15〜25%の残存溶
剤を含んでいることが必要である。
【0019】通常、異なる単繊維繊度を有するマルチフィラ
メント糸を混繊する場合、該マルチフィラメント糸をそ
れぞれ別個に紡糸した後、インターレースを付与して混
繊する方法が行われている。しかし、この方法でアセテ
ート繊維を混繊すると、アセテート繊維の持つ強伸度特
性から、インターレース混繊工程では強度の低下が著し
く、ケバが発生し、十分なインターレース処理が出来な
い。
【0020】しかしながら本発明では、紡糸ノズルから吐出
された単繊維繊度の異なる2種類の糸条に、紡糸原液を
調整した際の残存溶剤が15%〜25%含まれているた
めに紡糸直後の糸条は可塑化状態にあり、強度なインタ
レース処理が可能となり十分な交絡数を確保できる。混
繊交絡処理を行う際の糸条の残存溶剤が15%未満では
捲取時にケバ、ループが発生し、後工程通過性、品質へ
悪影響を与える事となり、25%を超えると紡糸過程に
おいて乾燥不良が生じ、単繊維の接着、更には糸切れ等
紡糸安定性が悪くなる。
【0021】また通常、アセテート繊維を乾式紡糸する際に
は、前記紡糸口金から吐出される紡糸原液の温度を65
℃以上75℃以下程度に設定するが、本発明では、紡糸
原液を通常の温度よりも低い範囲に設定することによっ
て、本発明の意図する平滑断面を有するアセテート繊維
を安定して得ることが容易となる。本発明では紡糸口金
から吐出される紡糸原液の温度を45℃〜65℃、より
好ましくは、50℃〜60℃に設定することが好まし
い。この原液温度が45℃よりも低いと、紡糸原液中の
溶剤が十分に蒸発せず、紡糸工程中に複数の単繊維が密
着したり、或いは、糸切れを起こしやすい。一方、65
℃よりも高いと、溶剤が極めて蒸発しやすくなり、紡糸
孔の形状を異形状としても、繊維の表皮層の形成速度の
差異が小さくなり、繊維断面に凹凸部が増し、断面形状
が経時的に崩れやすくなる。
【0022】さらに本発明では、紡糸原液の吐出直後、原液
温度による表面乾燥過程で異型孔の断面形状の乾燥速度
を遅らせ、形状を安定させ、経時的な断面崩れを防ぐた
めに、紡糸ノズルが、孔面積が異なる2種類の紡糸孔を
有し、孔面積大の紡糸孔を孔面積小の紡糸孔の内側に配
列し、各紡糸孔の間隔が2.0mm以上であることが好
ましい。該紡糸孔の孔間隔を2.0mm未満にすると個
々の吐出方向の乱れ等で、単繊維同士が密着を起こしや
すい。
【0023】また、本発明のアセテート異繊度マルチフィラ
メント糸を含む織編物は、キラキラした光沢感とドライ
感等を得るため、該マルチフィラメント糸を50%以上
含むことが必要であり50%未満では光沢感が不足した
物となる。
【0024】織編物とする際に、他繊維との複合手法は特に
限定されないが、合撚、混繊、カバーリング等の複合手
法や交織交編による手法が好ましい。望ましくは、キラ
キラとした光沢を生かすために、甘撚から中撚条件がよ
り望ましい。更に複合する他の繊維にも特に限定はな
く、ポリエステル、ポリアミド等の合成繊維、レーヨ
ン、キュプラ等の再生繊維、綿、麻、ウール、シルク等
の天然繊維が用いられる。
【0025】
【実施例】以下、実施例をあげて本発明を説明する。以
下本発明を実施例により具体的に説明する。尚実施例に
おける光沢値、交絡数の測定は下記の方法に拠った。
【0026】<光沢値>得られたマルチフィラメント糸をd
tex×0.1gの張力付与の下、平板に約42×35
mm幅で、6層に整然と連続に巻き付け測定試料とし、
日本電色(株)光沢度計300Aにて、45度の反射条
件にて測定した。
【0027】<交絡数>ROTHSHLLD社製エンタング
ルメントカウンターR2070で初張力dtex×0.
1g、トリップレベル張力を初張力+3.8gにて開繊
長の平均値を交絡数として測定した。
【0028】<風合い>得られたマルチフィラメント糸を用
いて、天竺組織で28Gの編地を作成し、精錬染色後、
目視による光沢感、感触テストを行い、光沢感、ソフト
感、ドライ感の非常に優れたものを◎、すぐれたものを
○、やや劣るものを△、劣るものを×とした。
【0029】(実施例1〜6)平均酢化度61.6%のセル
ローストリアセテートを塩化メチレン/メタノール=9
1/1の混合溶剤に溶解し、21.95%のセルロース
トリアセテート紡糸原液を調整し、原液の温度を60℃
に調整した後、表1に示す孔形状及び孔数を有する紡糸
口金を用い、紡糸速度500m/minにて乾式紡糸
し、紡糸捲取直前にて孔径0.66mmφのエアー孔径
を持つインターレースノズル2個を直列に配し、エアー
圧0.30Mpaにてインターレース交絡処理を行い、
84dtexのアセテート異繊度マルチフィラメント糸
を得た。
【0030】得られたマルチフィラメント糸の布帛評価では
光沢値の水準が比較的低いにも拘わらず、いずれも布帛
表面にきらきらとした光沢感が認められ、ドライ感とソ
フト感がミックスされた、これまでにない新規なアセテ
ート編み物であった。
【0031】(比較例1)表1に示す孔形状及び孔数を構成
する紡糸口金を用い、交絡処理のエアー圧を0.25M
paとした以外は、実施例1と同様の条件で84dte
xのアセテート異繊度マルチフィラメント糸を得た。
【0032】得られたマルチフィラメント糸は、異形断面の
太線度糸の繊度が22.2dtexと太いために、紡糸
工程でループの発生が認められ、糸物性が低く、糸切れ
やケバを引き起こし紡糸安定性不良となった。
【0033】(比較例2)表1に示す孔形状及び孔数を構成
する紡糸口金を用い、比較例1と同様の条件でアセテー
ト異繊度マルチフィラメント糸を得た。
【0034】得られたマルチフィラメント糸は、異形断面の
太繊度糸の全繊度Da(dtex)、細繊度糸の全繊度
Db(dtex)の比Da/Dbが高いために異形断面
によるイラツキ感が強くなり、また糸の硬さが強調さ
れ、織物の布帛上に多数のケバの発生が認められた。
【0035】(比較例3)表1に示す丸断面のみからなる紡
糸口金を用い、比較例1と同様の条件でアセテート異繊
度マルチフィラメント糸を得た。得られたマルチフィラ
メント糸からなる布帛は、表面の全体に光沢感を有する
が、目的とする織編物表面に光沢を有する部分が均一に
分散した、キラキラとした光沢は得られなかった。
【0036】(比較例4)表1に示す三角断面のみからなる
紡糸口金を用い、比較例1と同様の条件でアセテート異
繊度マルチフィラメント糸を得た。得られたマルチフィ
ラメント糸からなる布帛は、マルチフィラメント糸を構
成する単繊維のすべてが、異形断面による光沢を有して
いるため、いらついた光沢となった。
【0037】
【表1】
【0038】
【発明の効果】本発明によるアセテート異繊度マルチフ
ィラメント糸は、織編物表面に光沢を有する部分が均一
に分散した、キラキラとした光沢とドライ感、ソフト感
を有するアセテート異繊度マルチフィラメント糸及びそ
の製造方法並びにその織編物が得られる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.7 識別記号 FI テーマコート゛(参考) D04B 21/00 D04B 21/00 B Fターム(参考) 4L002 AA00 AB00 AB02 AC07 EA00 4L035 AA09 BB84 DD02 DD15 4L036 MA04 MA20 MA24 MA33 PA01 PA03 PA42 UA10 4L048 AA13 AA37 AB07 AB08 AB11 AC08 CA00 CA12

Claims (7)

    【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 下式を満足する、単繊維繊度が7〜14
    dtexの平滑面を有する異形断面の太繊度糸と、単繊
    維繊度が該太繊度糸の0.1〜0.4倍の細繊度糸から
    なるアセテート異繊度マルチフィラメント糸。 0.1≦Da/Db≦0.4 (Daは太繊度糸の全繊度(dtex)。Dbは細繊度
    糸の全繊度(dtex)を表す。)
  2. 【請求項2】 細繊度糸の単繊維繊度が1.4〜2.8
    dtexである請求項1記載のアセテート異繊度マルチ
    フィラメント糸。
  3. 【請求項3】 交絡数が20〜40個/mである請求項
    1または2記載のアセテート異繊度マルチフィラメント
    糸。
  4. 【請求項4】 アセテート繊維の乾式紡糸法において、
    紡糸ノズルから吐出された単繊維繊度の異なる2種類の
    糸条に、引き取りローラーと巻き取り機の間で混繊交絡
    処理を行う際に、該糸条が15〜25%の残存溶剤を含
    んでいることを特徴とするアセテート異繊度マルチフィ
    ラメント糸の製造方法。
  5. 【請求項5】 紡糸ノズルが、孔面積が異なる2種類の
    紡糸孔を有し、孔面積大の紡糸孔を孔面積小の紡糸孔の
    内側に配列し、各紡糸孔の間隔が2.0mm以上であ
    る、請求項4記載のセルロースアセテート異繊度マルチ
    フィラメント糸の製造方法。
  6. 【請求項6】 孔面積が異なる2種類の紡糸孔をのう
    ち、孔面積大の紡糸孔が異形紡糸孔であり、該2種類の
    紡糸孔がそれぞれ環状に配列している請求項5記載の、
    セルロースアセテート異繊度マルチフィラメント糸の製
    造方法。
  7. 【請求項7】 請求項1〜3のいずれかに記載のアセテ
    ート異繊度マルチフィラメント糸を50%以上含む織編
    物。
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