JP2763008B2 - ダブルヘテロ型エピタキシャル・ウエハおよび発光ダイオード - Google Patents

ダブルヘテロ型エピタキシャル・ウエハおよび発光ダイオード

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Description

【発明の詳細な説明】 「産業上の利用分野」 本発明は、発光出力の大きい発光ダイオード(以下、
「LED」という。)の製造に適したダブル・ヘテロ型エ
ピタキシャル・ウエハに関する。
「従来の技術」 ダブル・ヘテロ構造を有するIII−V族化合物(本明
細書では、周期律表第III b族及び第V b族元素からなる
化合物を、「III−V族化合物」という。)混晶エピタ
キシャル・ウエハは、キャリアを活性層に閉込めること
ができ、引発光再結合によるキャリアの消滅が少ないの
で大出力のLEDの製造に適する。特に、ひ化ガリウム・
アルミニウム混晶を用いたエピタキシャル・ウエハは、
大出力の赤色LEDを製造できるので、表示装置、カメラ
の自動焦点測定装置等に広く用いられている。
これらのエピタキシャル・ウエハは、ひ化ガリウム
(GaAs)等の単結晶基板(以下、「基板」という。)上
の液相エピタキシャル成長法、気相エピタキシャル成長
法等によって、所望のIII−V族化合物混晶をエピタキ
シャル成長させることにより製造される。
しかしながら、基板として用いられるひ化ガリウム等
は、光の透過性が低いのでpn接合で発生した光が、外部
に放射される前に、基板で吸収されるという問題があっ
た。従来、基板による光の吸収を避けるためには、エピ
タキシャル成長後に、基板を研磨又はエッチングを行っ
て除去することが行われていた。
一般に、エピタキシャル・ウエハは、LEDの製造工程
での破損を避ける必要から、少なくとも0.2mmの厚みを
有することが望まれる。
そのため、従来は、エピタキシャル層を、0.2mm以上
の厚みに成長させていた。
「発明が解決しようとする課題」 しかしながら、エピタキシャル層の厚みを厚くする
と、偏析係数の相違から、エピタキシャル層、特に、各
クラッド層中で混晶組成の不均一が生じるという問題が
あった。そして、期待される程の大出力を与えるダブル
ヘテロ型エピタキシャル・ウエハおよびそれから作製さ
れるLEDを工業的有利に提供することができないという
問題があった。
「課題を解決する手段」 本発明者等は、基板を除去しなくても内部の光吸収の
少なく、高出力LEDの製造に適したIII−V族化合物エピ
タキシャル・ウエハおよびそれから作製される発光ダイ
オードを開発することを目的として鋭意研究を重ねた結
果、本発明に到達したものである。
本発明の上記の目的は、単結晶基板、間接遷移型バン
ド構造を有するIII−V族化合物混晶からなるnクラッ
ド層及びpクラッド層ならびに上記両クラッド層で挟ま
れた直接遷移型バンド構造を有するIII−V族化合物混
晶からなる活性層を有するダブルヘテロ型エピタキシャ
ル・ウエハにおいて、単結晶基板の導電型がp型であ
り、pクラッド層、活性層およびnクラッド層の層厚、
混晶率およびキャリア濃度が下記の通りであって、かつ
単結晶基板側のクラッド層の屈折率が、他のクラッド層
の屈折率よりも小さいことを特徴とするダブルヘテロ型
エピタキシャル・ウエハおよびそれから作製される発光
ダイオードによって達せられる。
pクラッド層:層厚5〜40μm、混晶率0.7〜0.9、キ
ャリア濃度1×1017cm-3〜1×1018cm-3 活性層:層厚0.5〜7μm、混晶率0〜0.45、キャリ
ア濃度1×1017cm-3〜1×1018cm-3でかつpクラッド層
のキャリア濃度より大 nクラッド層:層厚5〜40μm、混晶率0.5〜0.88、
キャリア濃度1×1017cm-3〜1×1018cm-3 III−V族化合物混晶として、ひ化ガリウム・アルミ
ニウム、りん化ガリウム・インジウム、りん化ひ化ガリ
ウム・インジウム等の混晶が用いられる。これらの混晶
は、混晶率を変化させることにより、間接遷移型及び直
接遷移型の両方のバンド構造の混晶が得られるので、ダ
ブル・ヘテロ型のエピタキシャル・ウエハの製造に適し
ている。
例えば、ひ化ガリウム・アルミニウムでは、混晶率が
約0.45以下で直接遷移型、それ以上で間接遷移型のバン
ド構造を有する。
なお、本明細書では、「混晶率」とは、混晶を構成す
るIII−V族化合物の比率をいう。特に、ひ化ガリウム
・アルミニウムの場合ひ化ガリウム・アルミニウムを、
(GaAs)1−χ(AlAs)χと表示した場合の「χ」の値
をいう(1≦χ≦1)。
本発明のエピタキシャル・ウエハは、基板上に気相あ
るいは液相エピタキシャル成長法又は分子線エピタキシ
ャル成長法等の方法によって、所望のIII−V族化合物
混晶をエピタキシャル成長させることによって製造され
る。気相エピタキシャル成長法、例えば、有機金属気相
エピタキシャル成長法(MOCVD法)、ハロゲン化物輸送
法等又は分子線エピタキシャル成長法は、成長させる単
結晶層の組成、厚み等の制御が容易であり、一方、液相
エピタキシャル成長法では、膜厚の大な単結晶層が容易
に得られるので、エピタキシャル成長の目的に応じて、
成長法を適宜選択する。
基板としては、ひ化ガリウム、りん化インジウム等が
好ましいが、けい素、ゲルマニウム等でもよい。
ひ化ガリウム・アルミニウムを成長させたエピタキシ
ャル・ウエハを成長させる場合、通常は、p型ひ化ガリ
ウム基板上に、pクラッド層、活性層及びnクラッド層
をこの順で成長させる。これは、p型ひ化ガリウム基板
を用いると、ひ化ガリウム・アルミニウムとの格子定数
の差が小さいので、転位の発生が殆ど無いこと、また、
基板のp型キャリア濃度を高濃度とすることができるの
で、電極形成が容易であるからである。
本発明では、基板側のクラッド層の屈折率は、表面側
のクラッド層よりも小とする。すなわち、基板側のクラ
ッド層の混晶率を、表面側の混晶率よりも大とする。こ
の結果、基板とクラッド層の界面で反射した光が、乱反
射することなく該クラッド層と活性層の界面を通過す
る。
その結果、LEDの外部量子効率が高くなり、LEDの発光
出力が増加する。
ひ化ガリウム・アルミニウム混晶エピタキシャル・ウ
エハの場合、基板側のpクラッド層の混晶率は、表面側
のnクラッド層の混晶率よりも、少なくとも0.02大とす
る。
なお、III−V化合物混晶では、バンド幅(充満帯と
伝導帯の間のエネルギー間隔をいう。)が大となる程、
屈折率が小となる。例えば、ひ化ガリウム・アルミニウ
ムでは、混晶率が大となる程、バンド幅が大となり、屈
折率は小となる。
ひ化ガリウム・アルミニウム混晶エピタキシャル・ウ
エハの場合、各層の層厚及び混晶率は、次のように
するのがよい。
(1) pクラッド層; 約5〜約40μm、約0.7〜約0.9 (2) 活性層; 約0.5〜約7μm、約0〜約0.45 なお、活性層の伝導型は、p型とするのがよい。
(3) nクラッド層層; 約5〜約40μm、約0.5〜約0.88 また、キャリア濃度は、通常の範囲、例えば、約1×
1017〜約1×1018cm-3でよいが、活性層のキャリア濃度
をpクラッド層のキャリア濃度より大とするのが好まし
い。
「実施例」 実施例 液相エピタキシャル成長法により、次のようなひ化ガ
リウム・アルミニウム混晶エピタキシャル・ウエハを成
長させた。
(1) 基板;表面の面方位、(100)、厚さは、0.3mm
の亜鉛ドープp型ひ化ガリウム単結晶基板。
以下、本実施例及び比較例で、層厚、キャリア濃
度、混晶率の順に示す。
(2) pクラッド層;20μm、3.0×1017cm-3
0.81 (3) 活性層;2.0μm、5.2×1017cm-3、0.34 (4) nクラッド層;40μm、2.0×1017cm-3
0.72 なお、キャリア濃度は、pn接合を用いたC−V法及び
van der Pauw法により測定した。また、混晶率は、X線
マイクロアナライザーにより測定し、測定結果をZAF補
正法により補正して混晶率を求めた。
得られたエピタキシャル・ウエハから、一辺0.3mm、
厚さ0.25mmのLEDチップを作製した。得られたチップを
エポキシ樹脂でコートした後、電流密度8A/cm2の条件で
測定して、光出力は1.8cd(100個平均値)、発光波長66
1nm、また、順方向電圧は、1.85V(100個平均値)であ
った。
比較例 実施例で用いたものと同様のひ化ガリウム単結晶基板
上に次のようなひ化ガリウム・アルミニウム混晶を液相
エピタキシャル成長法によって成長させた。
(1) pクラッド層;18μm、3.5×1017cm-3
0.65 (2) 活性層;1.8μm、5.2×1017cm-3、0.34 (3) nクラッド層;45μm、2.0×1017cm-3
0.72 得られたエピタキシャル・ウエハから実施例と同様に
してLEDチップを作製した。実施例と同様にして測定し
た光出力は、1.1cd(100個平均値)、また、ピーク発光
波長は、663nmであった。
「発明の効果」 本発明は、下記のような顕著な効果があるので、産業
上の利用価値が大である。
(1) 基板を除去しなくても、大きな光出力が得られ
る。
(2) 従って、基板除去にそなえて層厚の大なエピタ
キシャル層を成長させる必要がないので、エピタキシャ
ル層の組成の不均一が発生しない。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (72)発明者 藤田 尚徳 茨城県牛久市東猯穴町1000番地 三菱モ ンサント化成株式会社筑波工場内 (56)参考文献 特開 昭62−17377(JP,A) 特開 昭55−91890(JP,A) 特開 昭61−183977(JP,A) 特開 昭61−170080(JP,A) 特開 昭62−52985(JP,A)

Claims (6)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】単結晶基板、間接遷移型バンド構造を有す
    るIII−V族化合物混晶からなるnクラッド層及びpク
    ラッド層ならびに上記両クラッド層で挟まれた直接遷移
    型バンド構造を有するIII−V族化合物混晶からなる活
    性層を有するダブルヘテロ型エピタキシャル・ウエハに
    おいて、該単結晶基板は導電型がp型のひ化ガリウムで
    あり、該III−V族化合物混晶がひ化ガリウム・アルミ
    ニウムであり、単結晶基板側のクラッド層の導電型がp
    型、他のクラッド層の導電型がn型であり、かつ単結晶
    基板側のクラッド層の屈折率が他のクラッド層の屈折率
    よりも小さいことを特徴とするダブルヘテロ型エピタキ
    シャル・ウエハ。
  2. 【請求項2】pクラッド層、活性層およびnクラッド層
    の層厚、混晶率およびキャリア濃度が下記の通りである
    ことを特徴とする請求項第1項記載のダブルヘテロ型エ
    ピタキシャル・ウエハ。 pクラッド層:層厚5〜40μm、混晶率0.7〜0.9、キャ
    リア濃度1×1017cm-3〜1×1018cm-3 活性層:層厚0.5μm〜7μm、混晶率0〜0.45、キャ
    リア濃度1×1017cm-3〜1×1018cm-3でかつpクラッド
    層のキャリア濃度より大 nクラッド層:層厚5〜40μm、混晶率0.5〜0.88、キ
    ャリア濃度1×1017cm-3〜1×1018cm-3
  3. 【請求項3】主面方位が(100)面であることを特徴と
    する請求項第1項または第2項記載のダブルヘテロ型エ
    ピタキシャル・ウエハ。
  4. 【請求項4】pクラッド層の混晶率が、nクラッド層の
    混晶率よりも少なくとも0.02大である請求項第3項記載
    のダブルヘテロ型エピタキシャル・ウエハ。
  5. 【請求項5】単結晶基板上に液相エピタキシャル成長法
    によりIII−V族化合物混晶を成長してなる請求項第1
    項乃至第4項記載のダブルヘテロ型エピタキシャル・ウ
    エハ。
  6. 【請求項6】請求項第1項乃至第5項記載のエピタキシ
    ャル・ウエハから作製される発光ダイオード。
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