JP2752523B2 - α‐アミラーゼアイソザイム活性の分別定量法 - Google Patents

α‐アミラーゼアイソザイム活性の分別定量法

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JP2752523B2
JP2752523B2 JP41525390A JP41525390A JP2752523B2 JP 2752523 B2 JP2752523 B2 JP 2752523B2 JP 41525390 A JP41525390 A JP 41525390A JP 41525390 A JP41525390 A JP 41525390A JP 2752523 B2 JP2752523 B2 JP 2752523B2
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【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、α‐アミラーゼアイソ
ザイム活性の新規な分別定量法、さらに詳しくいえば、
試料中のα‐アミラーゼアイソザイム活性を、2種のα
‐アミラーゼ活性測定用基質及び共役酵素を用いて分別
定量する方法に関するものである。
【0002】
【従来の技術】ヒトα‐アミラーゼには膵臓由来のもの
(以下P型α‐アミラーゼという)と唾液腺由来のもの
(以下S型α‐アミラーゼという)の少なくとも2種の
アイソザイムが存在することが知られている。ところ
で、血清中の総α‐アミラーゼ活性が高値になると、急
性膵炎の初期あるいは慢性膵炎の急性化の疑いを生じる
が、この場合はP型α‐アミラーゼ活性の上昇が総α‐
アミラーゼ活性の上昇の主因となっている。しかし、唾
液腺や耳下腺の疾病、外科手術後、ある種の肝疾患など
ではS型α‐アミラーゼ活性の上昇が主因となって顕著
な総α‐アミラーゼ活性の上昇がみられるため、しばし
ば鑑別診断を誤らせる原因となっている。したがって、
近年両アイソザイムの簡便、正確な分別定量法が強く要
望されている。
【0003】従来、ヒトα‐アミラーゼアイソザイム活
性の分別定量法としては、2種のアイソザイムを分離
し、電気泳動法、エンザイム・イムノ・アッセイ法(E
IA法)又はクロマトグラフィー法などにより、個々に
定量する方法、一方のアイソザイムのみを反応させて定
量する方法、2種のアイソザイムのα‐アミラーゼ測定
用基質に対する反応速度比の差を利用する方法などが知
られている。
【0004】しかしながら、2種のアイソザイムを分離
し、個々に定量する方法は、分離のために煩雑な操作を
必要とする上に、処理に長時間を要するという欠点があ
るし、一方のアイソザイムのみを反応させて定量する方
法は、基質以外に、安定性の低いモノクローナル抗体や
インヒビターなどの生体成分を使用しなければならない
という欠点がある。
【0005】また、2種のアイソザイムのα‐アミラー
ゼ測定用基質に対する反応速度比の差を利用する方法に
おいては、これまで基質として修飾マルトオリゴ糖が用
いられているが、2種のアイソザイムのこのものに対す
る反応速度比すなわち、S型α‐アミラーゼの反応速度
に対するP型α‐アミラーゼの反応速度の比が0.7程
度であり、P型α‐アミラーゼの反応速度とS型α‐ア
ミラーゼの反応速度との間に十分な差を生じないため、
精度が低くなるのを免れないという欠点がある。
【0006】
【発明が解決しようとする課題】本発明は、α‐アミラ
ーゼ活性測定用基質に対するP型α‐アミラーゼの反応
速度とS型α‐アミラーゼの反応速度の差を利用して、
試料中のα‐アミラーゼアイソザイムの分別定量を行う
際に、簡単な操作で、しかも高い精度で測定しうる方法
を提供することを目的としてなされたものである。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明者らは、前記目的
を達成するために、種々研究を重ねた結果、6‐デオキ
シマルトオリゴ糖誘導体に対するヒトα‐アミラーゼの
2種のアイソザイムの反応速度比が著しく異なること、
したがって、これを一方の基質として用いれば精度の高
い分別定量がなされることを見出し、この知見に基づい
て本発明をなすに至った。
【0008】すなわち、本発明は、α‐アミラーゼアイ
ソザイムによる反応速度比が異なった2種の基質と、試
料とを、共役酵素の存在下で反応させ、得られたα‐ア
ミラーゼ活性の各測定値より、α‐アミラーゼアイソザ
イム活性を分別定量する方法において、一般式
【化2】 (式中のRは水素原子又は芳香族発色性基であるか、グ
ルコース以外の単糖類の残基であり、nは2〜6の整数
である)で表わされる6‐デオキシマルトオリゴ糖誘導
体を、第二の基質として、2種のα‐アミラーゼアイソ
ザイムのそれに対する反応速度比が第一の基質に対する
反応速度比と異なるα‐アミラーゼ活性測定用基質を用
いることを特徴とするα‐アミラーゼアイソザイム活性
の分別定量法を提供するものである。
【0009】以下、本発明について詳細に説明する。先
ず、本発明方法においては、2種のα‐アミラーゼ活性
測定用基質を用い、第一の基質として前記一般式(I)
で表わされる6‐デオキシマルトオリゴ糖誘導体を用い
ることが必要である。この一般式(I)で表わされる6
‐デオキシマルトオリゴ糖誘導体は、文献未載の新規物
質であって、例えばマルトオリゴ糖誘導体の脱酸素しよ
うとする水酸基を保護したのち、他の水酸基をアセチル
化し、次いで保護基を脱離してそこにハロゲン原子又は
アリールチオ基等を導入したのち、還元、脱アセチル化
することによって製造することができる。
【0010】次に、第二の基質としては、これまで用い
られているα‐アミラーゼ活性測定用基質であって、第
一の基質と両アイソザイムによる反応速度比が異なった
ものが用いられる。このような物質としては、例えば一
般式
【化3】 (式中のR′は水素原子又は芳香族発色性基であるか、
グルコース以外の単糖類の残基であり、R1とR2はそれ
ぞれ水酸基、ハロゲン原子、アシルオキシ基、アルキル
又はアリールオキシ基、アルキル又はアリールスルホニ
ルオキシ基、アルキル又はアリールメルカプト基である
か、R1とR2とで置換又は非置換のメチレンジオキシ基
を形成する基であり、mは2〜6の整数である)で表わ
されるマルトオリゴ糖誘導体を挙げることができる。こ
れらの物質の中で、反応速度比が0.6以上、特に約1
のものが、簡便性、正確性の点で有利である。
【0011】次に、これらの基質を用いて、試料中のα
‐アミラーゼアイソザイム活性を分別定量する方法を具
体的に説明する。先ず、活性既知のP型α‐アミラーゼ
標品及びS型α‐アミラーゼ標品を用いて、あらかじめ
第一の基質に対する各反応速度と、第二の基質に対する
各反応速度を求める。この測定方法は、例えば「メソッ
ズ・オブ・エンザイマティック・アナリシス(Methods
of Enzymatic Analysis)第3版」、第IV巻、第15
7〜161ページ(1984年)に記載された方法に従
って行われる。
【0012】次に、α‐アミラーゼ活性を有する試料
に、第一の基質又は第二の基質を加え、常法により共役
酵素の存在下で反応させ、それぞれの吸光度変化量
1、A2を測定する。
【0013】第一の基質に対するP型α‐アミラーゼの
反応速度をk1、S型α‐アミラーゼの反応速度をk2
第二の基質に対するP型α‐アミラーゼの反応速度をk
3、S型α‐アミラーゼの反応速度をk4、試料中のP型
α‐アミラーゼ活性をap、S型α‐アミラーゼ活性を
sとすると、次の関係が成り立つ。
【数1】
【数2】
【0014】そして、これらの式から、次の式が得られ
る。
【数3】
【数4】 すなわち、k1,k2,k3及びk4をあらかじめ測定して
おけば、数3及び数4を用いることにより、2種の基質
を用いて酵素反応を行って測定した吸光度変化量を代入
するだけで、試料中の2種のアイソザイム活性の分別定
量を簡単に行うことができる。
【0015】そして、前記したように、第一の基質とし
て用いる前記一般式(I)の6‐デオキシマルトオリゴ
糖誘導体は、反応速度比(k1/k2)が非常に小さいた
め、k3とk4がほぼ等しいとすると、数3及び数4にお
いて分母のk1とk2の差(絶対値)が大きくなり、分子
のA1及びA2に含まれる測定誤差の増幅が小となる結
果、正確度が向上することになる。
【0016】本発明方法で第一の基質として用いる6‐
デオキシマルトオリゴ糖誘導体はα‐アノマー、β‐ア
ノマーのいずれでもよい。そして、この化合物中の6‐
デオキシマルトオリゴ糖部としては、64‐デオキシ‐
D‐マルトテトラオースから68‐デオキシ‐D‐マル
トオクタオースまでのものが全て使用できる。これらの
中でも特に65‐デオキシ‐D‐マルトペンタオース、
6‐デオキシ‐D‐マルトヘキサオース、67‐デオキ
シ‐D‐マルトヘプタオースが好適である。なお、上記
化合物におけるデオキシの前に付した記号64‐、6
5‐、66‐等はそれぞれマルトオリゴ糖を構成するグル
コース単位の還元末端から4番目、5番目、6番目のグ
ルコースの6位の水酸基が水素原子に置換されているこ
とを意味する。
【0017】また、第二の基質として用いられる前記一
般式(II)で表わされるマルトオリゴ糖誘導体も、α
‐アノマー、β‐アノマーのいずれでもよい。そして、
このマルトオリゴ糖部については、例えばD‐マルトテ
トラオースから、マルトオクタオースまでのもの全てが
使用できるが、特にマルトペンタオース、マルトヘキサ
オース、マルトヘプタオースが好ましい。前記一般式
(I)で表わされる6‐デオキシマルトオリゴ糖誘導体
のR及び一般式(II)で表わされるマルトオリゴ糖誘
導体のR1は、それぞれ水素原子、芳香族発色性基又は
グルコースを除く単糖類の残基、特に芳香族発色性基が
好ましい。
【0018】この芳香族発色性基としては分光学的に検
出できればどのようなものを用いてもよいが、例えば次
のものが挙げられる。
【化4】 (式中のR3〜R7は水素原子、ハロゲン原子、ニトロ
基、アルキル基、アリール基、アリル基、アミノ基、ス
ルホン酸基又はカルボキシル基であり、それぞれ同一で
あってもよいし、また異なっていてもよく、またR3
4又はR4とR5が結合して、縮合芳香環を形成しても
よい)
【0019】
【化5】 (式中のR8は水素原子又はアルキル基である)
【0020】
【化6】 (式中のR9は水素原子又はアルキル基である)
【0021】
【化7】 (式中のR10〜R17は水素原子、ハロゲン原子、ニトロ
基、アルキル基、アリール基、アリル基、アミノ基、ス
ルホン酸基又はカルボキシル基であり、それぞれ同一で
あってもよいし、また異なっていてもよく、またR10
11又はR12とR13が結合して、縮合芳香環を形成して
もよく、さらにR11とR12及び/又はR15とR16が共通
の酸素原子となって縮合エーテル環を形成してもよく、
またXは窒素原子又はN→Oである)
【0022】また、グルコースを除く単糖類としては広
義の単糖類あるいはその誘導体でもよく、例えばフルク
トース、イノシトール、グルシトール、グルコース‐6
‐リン酸等が挙げられる。
【0023】このような前記一般式(I)で表わされる
化合物の代表例としては、2‐クロロ‐4‐ニトロフェ
ニル=65‐デオキシ‐β‐D‐マルトペンタオシド、
4‐ニトロフェニル=65‐デオキシ‐α‐D‐マルト
ペンタオシド、2‐クロロ‐4‐ニトロフェニル=67
‐デオキシ‐β‐D‐マルトヘプタオシド、フェノール
インド‐3′‐クロロフェニル=65‐デオキシ‐β‐
D‐マルトペンタオシド、65‐デオキシ‐D‐マルト
ペンタオース、(66‐デオキシ‐α‐D‐マルトヘキ
サオシル)‐α‐D‐フルクトース等が挙げられる。
【0024】また、前記一般式(II)で表わされる化
合物の代表例としては、マルトペンタオース、マルトヘ
プタオース、2‐クロロ‐4‐ニトロフェニル=β‐D
‐マルトペンタオシド、4‐ニトロフェニル=65‐O
‐ベンジル‐α‐D‐マルトペンタオシド、2‐クロロ
‐4‐ニトロフェニル=67‐クロロ‐β‐D‐マルト
ヘプタオシド、2‐クロロ‐4‐ニトロフェニル=
5,65‐O‐ベンジリデン‐β‐D‐マルトペンタオ
シド、フェノールインド‐3′‐クロロフェニル=65
‐O‐トルエンスルホニル‐β‐D‐マルトペンタオシ
ド、65‐クロロ‐65‐デオキシ‐D‐マルトペンタオ
ース、(46,66‐ジ‐O‐メタンスルホニル‐α‐マ
ルトヘキサオシル)‐α‐D‐グルシトール等が挙げら
れる。
【0025】次に、前記一般式(I)で表わされる6‐
デオキシマルトオリゴ糖誘導体は、例えば次の方法によ
って得ることができる。
【0026】すなわち、Rが発色性芳香族であるもの
は、出発原料として市販の発色性芳香族を配糖体として
有するD‐マルトオリゴシドを用い、まずアルデヒド類
のジメチルアセタールなどを作用させ、続いて酸無水物
とピリジンとの混合物等を作用させて4,6‐O‐アリ
ーリデン又はアルキリデン化アシルマルトオリゴシドと
する。次いでNBS等を作用させて6‐ブロモ体とし、
これを接触還元などの方法で還元的に脱ブロモ化し、6
‐デオキシアシルマルトオリゴ糖類とするか、あるいは
NBS等を作用させずに、適当な酸で脱アリーリデン又
はアルキリデン化した後に、6‐O‐トシル化等を行
い、続いて還元的に脱トシルオキシ化し、6‐デオキシ
アシルマルトオリゴ糖とする。
【0027】また、6‐ブロモ体や6‐O‐トシル体を
6‐S‐フェニル体に誘導してから還元的に脱硫化し、
6‐デオキシ体としてもよい。このようにして得られた
6‐デオキシ体にメタノール中炭酸カリウム等を作用さ
せて、脱アシル化すれば還元末端置換基Rが発色性芳香
族であるもので得られる。
【0028】還元末端置換基Rが水素原子あるいはグル
コース以外の単糖類の残基であるものについては、出発
原料として市販のグルコース、フルクトース等の単糖類
を用い、これらと既知の方法で製造した6‐デオキシシ
クロデキストリン〔「カルボハイドレート・リサーチ(C
arbohyd.Res.)」第18巻、第29ページ、1971年〕
及び公知の酵素シクロデキストリングルコシルトランス
フェラーゼの3種を混合して反応させたのち、グルコア
ミラーゼ等のエキソ型糖化酵素類を作用させ、必要に応
じて通常用いられる方法で精製することにより得ること
ができる。この際、出発原料として単糖類の代わりに市
販の発色性芳香族を配糖体として有するグリコシドを用
いて同様の操作を行えば、前記した還元末端置換基Rが
発色性芳香族であるものが得られる。
【0029】さらに、一般式(II)で表わされるマル
トオリゴ糖誘導体は市販品をそのまま用いてもよいが、
これまで提案されている公知の製造方法により得ること
ができる。
【0030】本発明の方法においては、試料中のα‐ア
ミラーゼアイソザイム活性を定量的に際し、前記一般式
(I)及び一般式(II)で表わされる2種の基質を用
いておのおのα‐アミラーゼ活性を測定するのである
が、この場合常法により共役酵素の存在下でα‐アミラ
ーゼと基質を反応させる。基質を用いる共役酵素の関係
については、特に制限はなく、常法に従えばよい。
【0031】例えば、前記一般式(I)で表わされる6
‐デオキシマルトオリゴ糖誘導体及び前記一般式(I
I)で表わされるマルトオリゴ糖誘導体の場合の共役酵
素としては、次のものが用いられる。 (1)R又はR′が水素原子である化合物(α‐アノマ
ー及び/又はβ‐アノマー)の場合 α‐グルコシダーゼ及び/又はグルコアミラーゼ (2)R又はR′が芳香族発色性基である化合物の場合 α‐アノマーのみの場合 α‐グルコシダーゼ及び/又はグルコアミラーゼ β‐アノマーのみあるいはα‐アノマーとβ‐アノ
マーの混合物の場合 α‐グルコシダーゼ及び/又はグルコアミラーゼに加え
てさらにβ‐グルコシダーゼ
【0032】なお、前記一般式(II)で表わされるマ
ルトオリゴ糖誘導体の内、非還元末端が非修飾のR1
びR2が水酸基である化合物を基質として用いる場合
は、共役酵素としてグルコアミラーゼを用いないことな
ども通常通りである。
【0033】ここで使用するα‐グルコシダーゼは動
物、植物、微生物などいずれの由来の物を用いてもよい
が、例えば酵母由来のものを用いるのが好ましい。ま
た、グルコアミラーゼもいかなる起源の物を用いてもよ
いが、例えばリゾプス属(Rizopus sp)等に由来するも
のが好ましい。さらに、また、β‐グルコシダーゼもい
かなる起源のものを用いてもよく、例えばアーモンドの
種子から得たものが用いられる。
【0034】次に、α‐アミラーゼアイソザイム活性の
分別定量のための有利な系としては、例えば第一の基質
である前記一般式(I)で表わされる6‐デオキシマル
トオリゴ糖誘導体を含む系及び第二の基質である前記一
般式(II)で表わされるマルトオリゴ糖誘導体を含む
系では、各基質0.1〜10mM及び緩衝液2〜300mM
を含有し、かつ各系の共役酵素として、前記の基質と共
役酵素の組み合わせを考慮し、α‐グルコシダーゼ及び
/又はグルコアミラーゼを用いるときはそれぞれ5〜1
000単位/ml、さらにβ‐グルコシダーゼを用いると
きは0.5〜30単位/mlを含有するpH4〜10の系で
挙げられる。この系に用いられる緩衝剤としては、例え
ばリン酸塩、酢酸塩、炭酸塩、good'sの緩衝液、ホウ酸
塩、クエン酸塩、ジメチルグルタル酸塩等が挙げられ
る。
【0035】このような系に前記成分以外に本発明の目
的をそこなわない範囲で、さらに必要に応じて慣用の種
々の添加成分を加えることができる。例えば、溶解補助
剤、安定化剤として、グリセリン、牛血清アルブミン、
α‐又はβ‐シクロデキストリン、トリトンX‐100
等を加えることができるし、ヒトα‐アミラーゼ活性化
剤として、NaCl、MgCl2、MgSO4、CaCl
2、CaCl2・H2O等の形でCl-イオン、Ca2+イオ
ン、Mg2+イオン等を加えることもできる。これらの添
加成分は1種用いてもよいし、2種以上組合わせて用い
てもよい。これらは前記系調製の適当な段階で加えるこ
とができる。
【0036】また、前記一般式(I)で表わされる6‐
デオキシマルトオリゴ糖誘導体及び前記一般式(II)
で表わされるマルトオリゴ糖誘導体において、R又は
R′が水素原子若しくは単糖類の残基である基質を用い
る場合、酵素反応によって生成するグルコース、マルト
ース、あるいはその他の単糖類を吸光度法によって定量
するときには、NAD→NADH又はNADH→NAD
の酸化‐還元反応に伴う光度変化測定系に通常用いられ
る酵素類、すなわち、グルコース‐6‐リン酸デヒドロ
ゲナーゼ(例えばLeuconostoc mesenteroidesなどに由
来するもの)、マルトースホスホリラーゼ(例えばLact
obacillus brevisなどに由来するもの)、ヘキソキナー
ゼ(例えば酵母などに由来するもの)、β‐ホスホムタ
ーゼ[例えば兎筋肉(rabbitmuscle)などに由来するも
の]、ソルビトールデヒドロゲナーゼ[例えば羊肝(sh
eep liver)に由来するもの]及びNAD(又はNAD
H)、ATP等を加えればよい。
【0037】なお、R又はR′が芳香族発色性基である
基質を用いる場合には、α‐アミラーゼ反応に係わる共
役酵素系以外に上記のごとく、吸光系に係わる酵素等を
必要としないで吸光度法を適用できるため、より好まし
い。
【0038】次に、本発明方法の好適な実施態様を説明
する。先ず、前記一般式(I)で表わされる6‐デオキ
シマルトオリゴ糖誘導体を第一の基質とし、活性既知の
P型α‐アミラーゼ標品及びS型α‐アミラーゼ標品を
用いて、これらに対する反応速度比(k1/k2)を測定
する。次いで、α‐アミラーゼ活性を有する試料に、共
役酵素としてのα‐グルコシダーゼ又はグルコアミラー
ゼあるいはその両方をそれぞれ5〜1000単位/ml、
好ましくは10〜500単位/ml加え、第一の基質がβ
‐アノマーを含むときは、さらにβ‐グルコシダーゼを
0.5〜30単位/ml、好ましくは1〜15単位/ml加
え、これと同時又はこれらの後に第一の基質の0.1〜
10mM、好ましくは0.3〜5mMを緩衝剤と共に添加し
たのち、温度25〜40℃、好ましくは35〜40℃、
pH4〜10、好ましくは6.5〜7.5の条件下で少な
くとも1分間、好ましくは2〜10分間反応させ、生成
した発色性芳香族化合物を、常法に従いそのままである
いは必要に応じpHを調整したのち、適当な吸収波長で連
続的に又は断続的に吸光度変化量(A1)を測定する。
【0039】次に、活性既知のP型α‐アミラーゼ標品
及びS型α‐アミラーゼ標品を用いて、あらかじめ反応
速度比(k3/k4)を測定しておいた第二の基質につい
て、第一の基質の場合と同様にして吸光度変化量(A2)
を測定する。ただし、この第二の基質としては、その反
応速度比(k3/k4)が第一の基質の反応速度比(k1
2)と同じにならないようなものを選ぶ必要がある。
【0040】このようにして得たk1,k2,k3,k4
1及びA2の値を数3及び数4に代入することにより、
試料中のP型α‐アミラーゼ活性(ap)及びS型α‐
アミラーゼ活性(as)を求めることができる。
【0041】なお、前記一般式(I)及び(II)で表
わされる化合物のR又はR′が水素原子又は単糖類の残
基であるときは、吸光系に係る酵素その他必要な成分を
適宜添加し、R又はR′が芳香族発色性基である場合同
様にして行うことができる。
【0042】
【実施例】次に、実施例により本発明をさらに詳細に説
明する。なお、実施例において、第一の基質のDOG5
‐CNPは2‐クロロ‐4‐ニトロフェニル=65‐デ
オキシ‐β‐D‐マルトペンタオシドをDOG7‐CN
Pは2‐クロロ‐4‐ニトロフェニル=67‐デオキシ
‐β‐D‐マルトヘプタオシドを、また第二の基質のG
5‐CNPは2‐クロロ‐4‐ニトロフェニル=β‐D
‐マルトペンタオシドを、G7‐CNPは2‐クロロ‐
4‐ニトロフェニル=β‐D‐マルトヘプタオシドをそ
れぞれ意味する。
【0043】参考例1(DOG5‐CNPの製造) 市販のG5‐CNP15.0gを無水のジメチルホルム
アミド100mlに溶解し、ベンズアルデヒドジメチルア
セタール9.1mlとp‐トルエンスルホン酸0.90g
を加え、50℃、減圧下(20mmHg)で4時間かきまぜ
ながら反応させた。この反応液を氷冷下トリエチルアミ
ンで中和した後、ジメチルホルムアミドを留去した。未
精製の45,65‐O‐ベンジリデン体を含有するこの残
さに、ピリジン1000ml、無水酢酸500mlを加え、
室温で2日間反応させた。次いでこの反応液を減圧下濃
縮し、ピリジン、無水酢酸、酢酸を留去した。このよう
にして得られた未精製のパーアセチル45,65‐O‐ベ
ンジリデン体を含有する残さに、酢酸2000ml、蒸留
水500mlを加え、25℃で2日間かきまぜながら反応
させた。次いでこの反応液に3%食塩水4000mlを加
えた後、ジクロロメタン2000mlで3回抽出した。ジ
クロロメタン層を無水硫酸ナトリウムで乾燥、ろ別した
後、ろ液を減圧蒸留して、ジクロロメタンを留去した。
次に、この45,65‐OHアセチル体を含有する残さを
ピリジン300mlに溶解し、トシルクロリド21.1g
を加え、室温下5時間かきまぜながら、反応させた。次
いでこの反応液を減圧下濃縮し、ピリジンを留去した。
ここで得られた65‐O‐トシル体を含有する残さを、
未精製のままジメチルホルムアミド500mlに溶解し、
チオフェノール1.59g及びトリエチルアミン2.0
ccを加え、25℃で3時間かきまぜながら反応させた。
次いでこの反応液を減圧下濃縮し、ジメチルホルムアミ
ドを留去した。ここで得られた65‐S‐フェニル体を
含有する残さを、未精製のまま1,4‐ジオキサン1l
に溶解し、ラネーニッケル21gを加え、70℃で2日
間反応させた。この反応液をグラスフィルターでろ過
し、ジクロロメタン200mlで3回洗い、ろ液と洗液を
あわせて減圧下留去した。ここで得られた65‐デオキ
シ体を含有する残さを、未精製のままメタノール160
mlに溶解し、28%アンモニア水80ml、蒸留水40ml
を加え、35℃で20時間反応させた。この反応液を減
圧下留去した。この残さをODSカラムクロマトグラフ
ィーにより精製し、エタノール‐水混液(容量比1:
4)で溶出した目的区分を濃縮し、水から再結晶して、
以下に示す物性を有するDOG5‐CNP1.7gを得
た(収率11%)。
【0044】このものの性質は次のとおりである。 融点(℃):187.5〜190.5 紫外部・可視部吸収スペクトル:吸収極大波長(メタノール中最大値)(nm) =288(logε=4.02),288(sh),207(logε=4.27) 赤外吸収スペクトル(cm-1):3430,2940,1644,1588,1 522,1488,1352,1276,1252,1154,1082,10 46,1026 核磁気共鳴スペクトル(200MHz)ppm(D2O):1.28(3H,d,J =5.9Hz),3.14(1H,t,J=8.6Hz),3.50〜4.00(m ),5.28(1H,d,J=3.4Hz),5.35(3H,m),5.43( 1H,d,J=6.8Hz),7.40(1H,d,J=9.2Hz),8.22( 1H,dd,J=9.2Hz,2.7Hz),8.40(1H,d,J=2.7Hz) 高速液体クロマトグラフィー[東ソー(株)製TSK gel Amide−80カラム (4.6mm ID×250mm)、UV(波長280nm)検出、溶離液:アセトニ トリル/水=3/1(V/V),流速:1.0ml/min]:tR=9.2min 元素分析値:C3654ClNO27として
【表1】 比旋光度(25℃、D線、水中C0.37):+95°
【0045】参考例2(DOG7‐CNPの製造) G5‐CNPの代りに市販のG7‐CNPを用いる以外
は、参考例1と同様に処理することにより、DOG7‐
CNPを得た。このものの性質を以下に示す。 融点:209.0〜210.0℃(分解) 高速液体クロマトグラフィー〔東ソー(株)製、TSK
gel Amide‐80カラム(4.6mmID×250mm)、
UV(波長280nm)検出、溶離液:アセトニトリル/
水=7/3(V/V)、流速:1.0ml/min〕:R=
11.0分 元素分析値:C4874ClNO37として
【表2】 比旋光度(25℃、D線、水中C0.48):+120
°
【0046】実施例1 (1)第一の基質DOG5‐CNPのKm値の測定 (イ)DOG5‐CNP溶液の調製 NaCl 40ミリモル及びMgCl22ミリモルを含
有する濃度50ミリモルのリン酸緩衝液(pH=7.0)
に、参考例1で得た第一の基質DOG5‐CNP(分子
量967.5)を溶解し、濃度5.00×10-5モル、
4.50×10-5モル、3.50×10-5モル、3.0
0×10-5モル、2.50×10-5モル、2.00×1
-5モル、1.50×10-5モル及び1.00×10-5
モルのP型α‐アミラーゼ測定用基質溶液を調製した。
同様にして、50.0×10-5モル、40.0×10-5
モル、30.0×10-5モル、20.0×10-5モル、
16.0×10-5モル、14.0×10-5モル、12.
0×10-5モル、10.0×10-5モル、8.00×1
-5モル、6.00×10-5モル及び4.00×10-5
モルのS型α‐アミラーゼ測定用基質溶液を調製した。
【0047】(ロ)共役酵素液の調製 酵母由来の市販α‐グルコシダーゼ及びアーモンド由来
の市販β‐グルコシダーゼをそれぞれ125 U/ml、
12.7 U/mlの濃度になるように40mM‐NaCl
及び2mM‐MgCl2を含有する50mMリン酸緩衝液(p
H=7.0)に混合して溶解した。なお、これら市販の
α‐及びβ‐グルコシダーゼは東洋紡績(株)製を使用
した。
【0048】(ハ)α‐アミラーゼ液の調製 市販のヒトP型α‐アミラーゼ及びヒトS型α‐アミラ
ーゼをそれぞれ約150 U/lの濃度になるように、
蒸留水に溶解した。なお、この市販のヒト両α‐アミラ
ーゼは国際試薬(株)製キャリブザイム・AMYを使用
した。
【0049】(ニ)Km値の測定 ヒトP型α‐アミラーゼ及びヒトS型α‐アミラーゼ液
おのおのについて、α‐アミラーゼ液250μlに共役
酵素液1.0mlを加えてかきまぜ、37℃で1分間加温
した後、各濃度のDOG5‐CNP液2.0mlを加えて
かきまぜ、37℃で2.5分間加温した後2分間、40
0nmにおける吸光度の変化量を測定した。また、α‐ア
ミラーゼ液の代わりに蒸留水250μlを用いてブラン
ク試験を行った。得られた測定値をラインウエーバー・
バーク(Lineweaver-Burk)プロットし、最小二乗法を
用いてKm値を算出した。この結果DOG5‐CNPの
ヒトP型及びヒトS型α‐アミラーゼに対するKm値は
それぞれ、2.5×10-5モル、8.3×10-5モルと
なった。このラインウエーバー・バークプロットしたグ
ラフを図1に示す。図1(A)はP型α‐アミラーゼに
ついてのものであり、図1(B)はS型α‐アミラーゼ
についてのものである。
【0050】(2)第二の基質G5‐CNPの速度定数
の測定 (イ)α‐アミラーゼ液の調製 市販のヒトP型スイ臓α‐アミラーゼ及びヒト唾液腺由
来の市販のS型α‐アミラーゼをそれぞれブルースター
チに対して同一の活性になるように、蒸留水に溶解し
た。なお、この市販のヒト両α‐アミラーゼは国際試薬
(株)製キャリブザイム・AMYを使用した。
【0051】(ロ)G5‐CNP液の調製 常法により得たG5‐CNP(Mw 983.5)を
2.0mM濃度になるように、40mM‐NaCl及び2mM
‐MgCl2を含有する50mMリン酸緩衝液(pH=7.
0)に溶解した。この濃度は、ヒトP型α‐アミラーゼ
及びヒトS型α‐アミラーゼに対してKm値の4.4倍
に相当するため、最大反応速度を得るに十分な基質量で
ある。なお、G5‐CNPのKm値は、前記DOG5‐
CNPと同様にして測定した結果、0.45mMであっ
た。
【0052】(ハ)共役酵素液の調製 酵母由来の市販α‐グルコシダーゼ及びアーモンド由来
の市販β‐グルコシダーゼをそれぞれ110 U/ml、
12.6 U/mlの濃度になるように、40mM‐NaC
l及び2mM‐MgCl2を含有する50mMリン酸緩衝液
(pH=7.0)に混合して溶解した。なお、これらの市
販のα‐及びβ‐グルコシダーゼは東洋紡績(株)製を
使用した。
【0053】(ニ)速度定数の測定 α‐アミラーゼ液250μlに共役酵素液;1.0mlを
加えてかきまぜ、37℃で1分間加温したのち、G5‐
CNP液2.0mlを加えてかきまぜ、37℃で2.5分
間加温したのち2分間、400nmにおける吸光度変化量
を測定した。この結果、ヒトP型α‐アミラーゼ及びヒ
トS型α‐アミラーゼに対する吸光度変化量は等しく
(k3=k4)、0.16/分であった。また、2‐クロ
ロ‐4‐ニトロノフェノールの分子吸光係数εを161
00とし、α‐アミラーゼの活性を37℃、1分間に1
μmolのG5‐CNPを分解する酵素量を1国際単位
(IU)と定義すると(以下同じ)、次の式が成り立
つ。
【数5】
【0054】(3)直線性の確認試験、k1,k2の測定
前出の数3及び数4に対し、前記(2)の結果、すなわ
ちk3=k4=kを代入すると、数3は
【数6】 になり、数4は
【数7】 になる。これらの式を用いて、直線性の確認、k1,k2
の値の算出を行った。
【0055】(イ)DOG5‐CNP液の調製 DOG5‐CNP(Mw967.5)を0.40mM濃度
になるように、40mM‐NaCl及び2mM‐MgCl2
を含有する50mM‐リン酸緩衝液(pH=7.0)に溶解
した。この濃度は、前記(1)の結果によるとヒトP型
α‐アミラーゼ及びヒトS型α‐アミラーゼに対してそ
れぞれKm値の16倍、4.8倍に相当するため、最大
速度に達するには十分な基質量である。
【0056】(ロ)G5‐CNP液の調製 G5‐CNP(Mw983.5)を2.0mM濃度になる
ように、40mM‐NaCl及び2mM‐MgCl2を含有
する50mM‐リン酸緩衝液(pH=7.0)に溶解した。
この濃度は、ヒトP型α‐アミラーゼ及びヒトS型α‐
アミラーゼに対してKm値の4.4倍に相当するため、
最大速度に達するには十分な基質量である。
【0057】(ハ)α‐アミラーゼ液の調製 前記市販のヒトP型α‐アミラーゼ及びヒトS型α‐ア
ミラーゼを蒸留水で溶解し、それぞれ411 IU/
l、383 IU/lのα‐アミラーゼ液を得た。これ
らを原液とし、蒸留水を用いてそれぞれ希釈し、原液1
00%,80%,50%,30%,20%及び10%
(V/V)を含有する6種のα‐アミラーゼ液を調製し
た。
【0058】(ニ)共役酵素液の調製 酵母由来の市販α‐グルコシダーゼ及びアーモンド由来
の市販β‐グルコシダーゼをそれぞれ110 U/ml、
12.6 U/mlの濃度になるように、40mM‐NaC
l及び2mM‐MgClを含有する50mM‐リン酸緩衛
液(pH=7.0)に混合して溶解した。
【0059】 (ホ)直線性の確認、k1とk2の値の測定 前記ヒトP型α‐アミラーゼ及びヒトS型α‐アミラー
ゼ液各6種について、α‐アミラーゼ液250μlに共
役酵素液1.0mlを加えてかきまぜ、37℃で1分間加
温したのち、DOG5‐CNP液又はG5‐CNP2.
0mlを加えてかきまぜ、37℃で2.5分間加温したの
ち2分間、400nmにおける吸光度変化量を測定した。
また、両基質に関してα‐アミラーゼ液の代わりに蒸留
水250μlを用いてブランク試験を行った。この結
果、ヒトP型α‐アミラーゼに関しては411 IU/
lまで(r=0.9998)、ヒトS型α‐アミラーゼ
に関しては383 IU/lまで(r=0.9990)
まで直線性が確認された。
【0060】また、最小二乗法により得た直線の傾きか
を得た。この数値を数6及び数7に代入することによ
り、次のようにしてapとasが求められる。 ここで用いたヒトP型α‐アミラーゼの活性値と吸光
度変化量(ΔOD)との関係を示すグラフを図2(A)
に、S型α‐アミラーゼの活性値と吸光度変化量(ΔO
D)との関係を示すグラフを図2(B)に示す。
【0061】(4)分別定量試験 活性既知のヒトP型α‐アミラーゼ液とヒトS型α‐ア
ミラーゼ液とを種々の割合で混合し、G5‐CNPを第
二の基質とした場合について、混合割合に基づいて得た
理論値と数6及び数7から算出される計算値との適合性
を調べた。
【0062】(イ)DOG5‐CNP液の調製 参考例1で得たDOG5‐CNP(Mw967.5)を
0.40mM濃度になるように、40mM‐NaCl及び2
mM‐MgCl2を含有する50mM‐リン酸緩衝液(pH=
7.0)に溶解した。この濃度は、前記(1)の結果か
らヒトP型α‐アミラーゼ及びヒトS型α‐アミラーゼ
に対してそれぞれKm値の16倍、4.8倍に相当する
ため、最大速度に達するには十分な基質量である。
【0063】(ロ)G5‐CNP液の調製 G5‐CNP(Mw983.5)を2.0mM濃度になる
ように、40mM‐NaCl及び2mM‐MgCl2を含有
する50mM‐リン酸緩衝液(pH=7.0)に溶解した。
この濃度は、ヒトP型α‐アミラーゼ及びヒトS型α‐
アミラーゼに対してKm値の4.4倍に相当するため、
最大速度に達するには十分な基質量ある。
【0064】(ハ)α‐アミラーゼ試験液の調製 市販のヒトP型α‐アミラーゼ及びヒトS型α‐アミラ
ーゼを蒸留水で溶解し、P:S=10:0又はS:P=
10:0に対応する理論値の各α‐アミラーゼ液を得
た。この活性は前記(3)で試験した直線性が保持され
ている範囲内である。 これらの溶液を原液とし、P型
α‐アミラーゼ及びS型α‐アミラーゼの混合液を混合
容量比(P:S)=(10:0),(9:1),(8:
2),(7:3),(6:4),(5:5),(4:
6),(3;7),(2:8),(1:9),(0:1
0)で混合し(計11種)、α‐アミラーゼアイソザイ
ム試験液とした。また、市販ヒト両α‐アミラーゼは、
国際試薬(株)製キャリブザイム・AMYを使用した。
【0065】(ニ)共役酵素液の調製 酵母由来の市販α‐グルコシダーゼ及びアーモンド由来
の市販β‐グルコシダーゼをそれぞれ110 U/ml,1
2.6 U/mlの濃度になるように、40mM‐NaCl
及び2mM‐MgClを含有する50mM‐リン酸緩衛液
(pH=7.0)に混合して溶解した。なお、これら市販の
α‐,β‐グルコシダーゼは東洋紡績(株)製を使用し
た。
【0066】(ホ)分別定量試験 各α‐アミラーゼアイソザイム試験液に250μlに共
役酵素液1.0mlを加えてかきまぜ、37℃で1分間加
温したのち、DOG5‐CNP液又はG5‐CNP2.
0mlを加えてかきまぜ、37℃で2.5分間加温したの
ち2分間、400nmにおける吸光度変化量(ΔOD)を測
定した。また、両基質に関してα‐アミラーゼアイソザ
イム試験液の代わりに蒸留水250μlを用いてブラン
ク試験を行い、A1及びA2を求めた。混合前の活性値と
混合比から求められるap及びasを理論活性値とし、前
記(3)で求められた数6及び数7にA1及びA2を代入
して算出されるap及びasを計算活性値とした試験結果
について、P型α‐アミラーゼの分を表3に、S型α‐
アミラーゼの分を表4にそれぞれ示した。各活性値の単
位はIU/lである。
【表3】
【表4】
【0067】また、ここで用いられた各種混合比のヒト
α‐アミラーゼアイソザイム試験液と吸光度変化量(Δ
OD)の関係(1回目)のグラフを図3に示す。表3及
び表4から、計算活性値と理論活性値は極めて高い相関
を示していることがわかる。すなわち、本発明はDOG
5‐CNPとこれとは異なる反応速度比を有するマルト
オリゴ糖誘導体を基質としてヒトα‐アミラーゼアイソ
ザイム活性を測定するものであるが、このようにすれ
ば、簡単に、しかも正確に、ヒトP型α‐アミラーゼ及
びS型α‐アミラーゼ活性を別々に定量(分別定量)す
ることができる。
【0068】実施例2 第一の基質のDOG5‐CNPの代わりに、参考例2で
得た2‐クロロ‐4‐ニトロフェニル=67‐デオキシ
‐β‐D‐マルトヘプタオシド(DOG7‐CNP)
を、またG5‐CNPの代わりに2‐クロロ‐4‐ニト
ロフェニル=β‐D‐マルトヘプタオシド(G7‐CN
P)を用いる以外は、本実施例と同様にしてヒトα‐ア
ミラーゼアイソザイム試験液の活性を測定した。このと
きのDOG7‐CNPのk1は0.068×10-3(l
・ΔOD/IU)、k2は0.27×10-3(l・ΔOD
/IU)、G7‐CNPのk3及びk4は0.55×10
-3(l・ΔOD/IU)であった。この場合も、表3及
び表4に示される内容とほぼ同様の結果が得られ、P型
α‐アミラーゼ及びS型α‐アミラーゼ活性を高い正確
度で分別定量することができることが分った。
【0069】実施例3 α‐アミラーゼ活性を有するヒト血清について、分別定
量を行った。この際、用いた各試薬の組成を表5に示
す。
【表5】 (1)先ず、試薬A240μlに下記の各試料液10μ
lを加え、37℃で5分間加温したのち、試薬B120
μlを加えて37℃で加温し、3分後から5分後にいた
る2分間の405nmにおける吸光度変化量を測定した。
別に上記の試料の代りに精製水10μlを加え、同様に
操作して得た試薬ブランク試験値と、上記の各試料で得
た数値との差から各試料の吸光度変化量を求めた。
【0070】次に、試薬C260μlに下記の各試料5
μlを加え、37℃で5分間加温後、試薬D130μl
を加え、37℃で加温し、3分後から5分後までの2分
間の405nmにおける吸光度変化量を測定した。これと
試料の代りに精製水5μlを加え、同様に操作して得た
試薬ブランク試験値との差から、試料の吸光度変化量を
求めた。試料:実施例1と同様に調製した活性既知の
市販P型α‐アミラーゼ標準液:上記と同様の活性
既知の市販S型α‐アミラーゼ標準液:ヒト血清(6
0個の試料)以上のようにして得た各試料吸光度変化量
から実施例1と同様にしてk1,k2,k3,k4及び
1,A2を求め、これらの数値を数3及び数4に代入し
て、ヒト血清試料中のP型α‐アミラーゼ及びS型α‐
アミラーゼ活性値を計算した。
【0071】(2)他方、同じ試料について、従来の小
麦インヒビター法による分別定量を行った。すなわち、
試薬C260μlに前記(1)と同じ各試料5μlを加
え、37℃で5分間加温したのち、試薬D130μlを
加え、37℃で加温し、3分後から5分後にいたる2分
間の405nmにおける吸光度変化量を測定した。そし
て、これと試料の代わりに精製水5μlを加え、同様に
操作して得た試薬ブランク試験値の差から、試料吸光度
変化量を求めた。そして、試料の吸光度変化量を
3、試料のそれをA4、試料のそれをTとする。
【0072】次に、試薬C260μlに前記(1)と同
じ各試料6μlを加え、37℃で5分間加温したのち、
試薬E130μlを加えて37℃で加温し、3分後から
5分後にいたる2分間の405nmにおける吸光度変化量
を測定し、これと試料の代わりに精製水6μlを加え、
同様の操作を行って得た試薬ブランク試験値との差から
試料吸光度変化量を求めた。そして、試料の吸光度変
化量をA5、試料のそれをA6、試料のそれをRとす
る。次にこれらのA3,A4,A5,A6,T及びRを数8
に代入し、ヒト血清試料中のP型α‐アミラーゼによる
吸光度変化量(Ap)を求めた。
【数8】
【0073】このようにして得た小麦インヒビター法に
よる測定値と本発明方法による測定値との整合性を確か
めるために、同じ試料に対する対応する測定値をプロッ
トしたグラフを図4に示す。この結果、両者の相関性は
r=0.983、y=0.949x−9.097でよく
整合していることが分った。
【0074】(3)また、ベーリンガーマンハイム山之
内(株)から市販されているアイソアミラーゼ測定用試
薬EPSを用い、その説明書に記載されているとおりに
操作して、前記試料についてモノクローナル抗体阻害
法によるP型α‐アミラーゼ活性値の測定を行った。こ
のようにして得た測定値と本発明方法による測定値との
相関関係をプロットしたグラフを図5に示す。この結
果、両者の相関性は、r=0.976、y=1.855
x−15.407でよく整合していることが分った。
【0075】(4)さらに、三光純薬(株)から市販さ
れているライトアッセイ「P‐アミラーゼ」を用い、そ
の説明書に記載されているとおり操作して、前記試料
についてEIA法によるP型α‐アミラーゼタンパク量
の測定を行った。このようにして得た測定値と本発明方
法による測定値との相関関係をプロットしたグラフを図
6に示す。この結果、両者の相関性は、r=0.95
6、y=0.576x−1.349でよく整合している
ことが分った。
【0076】
【発明の効果】本発明方法によると、簡単な操作で、し
かも正確にヒトα‐アミラーゼ中のアイソザイム活性を
分別定量することができるので、P型α‐アミラーゼ及
びS型α‐アミラーゼを別々に定量することが必要な疾
患の診断に、好適に使用することができる。
【図面の簡単な説明】
【図1】 本発明方法の実施例における第一の基質に対
するP型α‐アミラーゼ及びS型α‐アミラーゼのライ
ンウエーバー・バークプロットグラフ。
【図2】 本発明方法の実施例で用いたヒトP型α‐ア
ミラーゼ及びヒトS型α‐アミラーゼの活性値と吸光度
変化量との関係を示すグラフ。
【図3】 本発明方法の実施例で用いた種々の混合比率
のヒトα‐アミラーゼアイソザイム試験液の吸光度変化
量を示すグラフ。
【図4】 本発明方法と小麦インヒビター法との相関性
を示すグラフ。
【図5】 本発明方法とモノクローナル抗体阻害法との
相関性を示すグラフ。
【図6】 本発明方法とEIA法との相関性を示すグラ
フ。
フロントページの続き (72)発明者 小谷 一夫 東京都墨田区業平5丁目5番12号 第一 化学薬品株式会社東京技術センター内 (72)発明者 斎藤 和典 東京都墨田区業平5丁目5番12号 第一 化学薬品株式会社東京技術センター内 (72)発明者 戸辺 光一朗 千葉県野田市野田339番地 盛進製薬株 式会社内 (58)調査した分野(Int.Cl.6,DB名) C12Q 1/40 BIOSIS(DIALOG) CA(STN) REGISTRY(STN) WPI(DIALOG)

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 α‐アミラーゼアイソザイムによる反応
    速度比が異なった2種の基質と、試料とを、共役酵素の
    存在下で反応させ、得られたα‐アミラーゼ活性の各測
    定値より、α‐アミラーゼアイソザイム活性を分別定量
    する方法において、第一の基質として、一般式 【化1】 (式中のRは水素原子又は芳香族発色性基であるか、グ
    ルコース以外の単糖類の残基であり、nは2〜6の整数
    である)で表わされる6‐デオキシマルトオリゴ糖誘導
    体を、第二の基質として、2種のα‐アミラーゼアイソ
    ザイムのそれに対する反応速度比が第一の基質に対する
    反応速度比と異なるα‐アミラーゼ活性測定用基質を用
    いることを特徴とするα‐アミラーゼアイソザイム活性
    の分別定量法。
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JPH04229196A (ja) 1992-08-18

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