JP2732460B2 - 蛍光x線分析方法 - Google Patents

蛍光x線分析方法

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JP2732460B2 JP5127034A JP12703493A JP2732460B2 JP 2732460 B2 JP2732460 B2 JP 2732460B2 JP 5127034 A JP5127034 A JP 5127034A JP 12703493 A JP12703493 A JP 12703493A JP 2732460 B2 JP2732460 B2 JP 2732460B2
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Description

【発明の詳細な説明】
【0001】
【産業上の利用分野】本発明は、蛍光X線の発生の原理
に基づいて蛍光X線強度を理論的に計算するFP(Fun
damental Parameter)法を用いた蛍光X線分析方法に
関し、さらに詳しくは、蛍光X線を測定できない元素を
含む試料の定量分析に好適な蛍光X線分析方法に関す
る。
【0002】
【従来の技術】FP法は、試料の元素組成から蛍光X線
の発生の原理に基づいて蛍光X線強度を理論的に計算す
るものである。
【0003】かかるFP法を用いた定量分析では、試料
の組成を仮定して蛍光X線強度の理論値を計算し、その
理論値が、実測された蛍光X線強度に一致するように、
前記仮定を修正しながら計算を繰り返して逐次近似法に
よって最終的な試料の元素組成を決定するものである。
【0004】従来、水素(H),ヘリウム(He),リ
チウム(Li)などの蛍光X線を測定できない元素を含
む試料をFP法によって定量分析する場合、例えば、有
機化合物の炭素(C),酸素(O),水素(H)をFP
法によって定量分析する場合には、蛍光X線を測定でき
ない水素を、バランス(100%からの残分)として計
算を行っている。
【0005】
【発明が解決しようとする課題】ところが、水素のよう
な蛍光X線の吸収が小さな元素をバランスとして逐次近
似法を用いて定量計算を行う従来例では、定量計算が一
定値に収束しなかったり、誤った値に収束したりすると
いう難点がある。
【0006】本発明は、上述の点に鑑みて為されたもの
であって、蛍光X線を測定できない元素を含む試料の定
量計算を精度よく行える蛍光X線分析方法を提供するこ
とを目的とする。
【0007】
【課題を解決するための手段】本発明は、試料の各成分
元素の組成比を仮定してこの組成比に基づいて各成分元
素の蛍光X線強度の理論値を計算し、一方で前記試料か
らの蛍光X線強度を実測し、蛍光X線強度の実測値と理
論値とが一致するように前記仮定した各成分元素の組成
比を逐次近似的に修正して、試料の各成分元素の組成比
を決定するファンダメンタルパラメータ法を用いた蛍光
X線分析方法において、次のような構成を備えることを
特徴としている。
【0008】すなわち、前記試料による一次X線のコン
プトン散乱線強度の理論値計算および前記試料からのコ
ンプトン散乱線強度の実測を行ったうえで、あるいは、
前記試料による一次X線のコンプトン散乱線強度とレー
リー散乱線強度の比の理論値計算およびコンプトン散乱
線強度とレーリー散乱線強度の比の実測を行ったうえ
で、前記蛍光X線強度の実測値を蛍光X線が測定できる
各成分元素に対応させるとともに、前記コンプトン散乱
線強度の実測値、あるいは、前記コンプトン散乱線強度
とレーリー散乱線強度の比の実測値を蛍光X線が測定で
きない成分元素にそれぞれ対応させながら、蛍光X線強
度の実測値と理論値とが一致するとともに、前記コンプ
トン散乱線強度あるいは前記コンプトン散乱線強度とレ
ーリー散乱線強度の比の実測値と理論値とが一致するよ
うに、前記仮定した全成分元素の組成比を逐次近似的に
修正して試料の成分組成比を決定することを特徴として
いる。
【0009】
【作用】上記構成によれば、蛍光X線を測定できない成
分元素については、従来のようにバランスとするのでは
なく、一次X線のコンプトン散乱線強度、あるいは一次
X線のコンプトン散乱線強度とレーリー散乱線強度の比
を定量計算に利用するようにしたので、定量計算が一定
値に収束しなかったり、誤った値に収束したりすること
がない。
【0010】
【実施例】以下、図面によって本発明の実施例につい
て、詳細に説明する。
【0011】図1は、本発明方法の一実施例のフローチ
ャートである。
【0012】この実施例では、炭素、酸素および水素の
みからなる有機化合物の分析に適用して説明する。
【0013】この実施例では、先ず、分析しようとする
試料の各元素について、その強度を蛍光X線分析装置で
測定する。すなわち、炭素については、CKαの積分強
度Ic、酸素については、OKαのピーク強度Ioを測
定し、蛍光X線を測定できない水素については、一次X
線の散乱線強度比であるRhKα散乱線強度比(コンプ
トン散乱/レーリー散乱)IRhKαC/Rを測定する
(ステップS1)。
【0014】ここで、コンプトン散乱/レーリー散乱の
散乱線強度比を用いるのは、加圧成形される試料の厚さ
が、2〜3mm程度であるので、膜厚の影響を受けるの
を除くためであり、十分な膜厚がある場合には、コンプ
トン散乱線強度のみを用いてもよい。
【0015】次に、試料の各成分元素である炭素、酸素
および水素の組成比である含有量(定量値)Wc,W
o,WHの初期値を設定(仮定)する(ステップS
2)。この初期値は、上述のステップS1で測定された
CKαの積分強度IcおよびOKαのピーク強度Ioか
ら次式に従って算出される。
【0016】Wc=Ac・Ic+Bc Wo=Ao・Io+Bo WH=100−(Wc+Wo) 但し、Ac,Ao,Bc,Boは、係数である。
【0017】なお、この初期値の設定は、この実施例に
限定されるものではなく、例えば、次のようにして設定
してもよい。
【0018】すなわち、100%の炭素のCKαの積分
強度を理論計算し、この値で実測されたCKαの積分強
度を割って炭素の初期値とし、同様に100%の酸素の
OKαのピーク強度を理論計算し、この値で実測された
OKαのピーク強度を割って酸素の初期値とし、残部を
水素の初期値とするものである。
【0019】あるいは、成分元素数で等分した値(1/
3)を初期値としてもよい。
【0020】次に、このようにして仮定した各成分元素
の含有量Wc,Wo,WHの初期値からFP法によっ
て、CKαの積分強度Ic、OKαのピーク強度Io、
RhKα散乱線強度比(コンプトン散乱/レーリー散
乱)IRhKαC/Rの理論値を計算する(ステップS
3)。
【0021】このような元素組成から蛍光X線強度ある
いは散乱線強度を理論的に計算する計算の式は、例え
ば、International Tables for X−ray Crystallog
raphy,vol.3(1968)に示されている。
【0022】次に、スリットの透過率、結晶の反射率あ
るいは検出器の検出率といった分析装置固有の要因の影
響をなくすために、算出された理論強度に、元素感度係
数を乗じ、仮定した含有量から推定される測定強度、す
なわち、推定測定強度を算出する(ステップS4)。
【0023】この推定測定強度と実際に上述のステップ
S1で測定された強度とを比較し(ステップS5)、仮
定した含有量(定量値)を修正し、100%の規格化を
行う(ステップS6)。
【0024】この含有量の修正は、次のようにして行わ
れる。すなわち、例えば、元素iについての仮定したn
回目の含有量をWin、(n+1)回目の含有量の修正
値をWin+1、実測強度Ii、n回目の理論強度Rin
元素感度係数Fとすると、次のようになる。
【0025】Win+1=Win・Ii/(Rin・F) この含有量の修正を、炭素、酸素および水素の各成分元
素について、CKαの積分強度Ic、OKαのピーク強
度Io、RhKα散乱線強度比(コンプトン散乱/レー
リー散乱)IRhKαC/Rの理論値および実測値に基
づいて行う。
【0026】さらに、100%の規格化を次式に従って
行う。
【0027】Wi=(Wi/ΣWj)×100 但し、jは全元素を示し、Wi,Wjの単位は%であ
る。
【0028】なお、この実施例では、実測強度と理論強
度の比率が、修正した含有量と修正前の含有量の比率に
等しいとして、修正を行うようにしたけれども、本発明
は、この実施例に限定されるものではなく、例えば、差
分方程式を用いて修正を行うようにしてもよく、あるい
は、実測強度が理論強度に比べて大きいか小さいかのみ
を判定して一定値、例えば、0.1ずつ増減させて収束
させるようにしてもよい。
【0029】次に、このようにして修正された含有量
(定量値)の修正幅が、前回の0.1%以下であるか否
かを判断し(ステップS7)、0.1%以下でないとき
には、修正された含有量で再び理論値を計算して上述と
同様の処理を繰り返し、修正幅が0.1%以下になった
ときには、収束したとして最後に修正した値を含有量
(定量値)として分析を終了する。
【0030】なお、この実施例では、0.1%にしたけ
れども、これに限定されるものでないのは勿論であり、
収束に要する時間と精度に応じて適宜設定すればよい。
【0031】このように、水素の定量計算にRhKα散
乱線強度比を用いているが、このRhKα散乱線強度比
の測定値と、FP法による理論計算値との相関は、図2
の元素感度曲線に示されるように、良好な相関が得られ
ており、また、炭素の定量計算に用いたCKαの積分強
度による元素感度曲線も図3に示されるように良好な相
関が得られている。なお、図2および図3の結果は、炭
素、酸素、水素のみからなる市販の有機化合物試薬につ
いて測定したものである。
【0032】上述の実施例では、蛍光X線を測定できな
い水素を成分元素として含む試料に適用したけれども、
本発明は、蛍光X線を測定できない他の元素、すなわ
ち、ヘリウムやリチウムを成分元素として含む化合物に
も同様に適用できるものである。
【0033】また、上述の実施例では、CKαの積分強
度を用いたけれども、本発明の他の実施例として、CK
αのピーク強度を用いてもよい。
【0034】
【発明の効果】以上のように本発明によれば、蛍光X線
を測定できない成分元素については、一次X線のコンプ
トン散乱強度、あるいは一次X線のコンプトン散乱線強
度とレーリー散乱線強度の比を定量計算に利用するよう
にしたので、定量計算が一定値に収束しなかったり、誤
った値に収束したりすることがなく、定量計算の精度が
向上することになる。
【図面の簡単な説明】
【図1】本発明の一実施例にフローチャートである。
【図2】RhKα散乱線強度比による元素感度曲線であ
る。
【図3】炭素の積分強度による元素感度曲線である。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】 試料の各成分元素の組成比を仮定してこ
    の組成比に基づいて各成分元素の蛍光X線強度の理論値
    を計算し、一方で前記試料からの蛍光X線強度を実測
    し、蛍光X線強度の実測値と理論値とが一致するように
    前記仮定した各成分元素の組成比を逐次近似的に修正し
    て、試料の各成分元素の組成比を決定するファンダメン
    タルパラメータ法を用いた蛍光X線分析方法において、 前記試料による一次X線のコンプトン散乱線強度の理論
    値計算および前記試料からのコンプトン散乱線強度の実
    測を行ったうえで、あるいは、前記試料による一次X線
    のコンプトン散乱線強度とレーリー散乱線強度の比の理
    論値計算およびコンプトン散乱線強度とレーリー散乱線
    強度の比の実測を行ったうえで、 前記蛍光X線強度の実測値を蛍光X線が測定できる各成
    分元素に対応させるとともに、前記コンプトン散乱線強
    度の実測値、あるいは、前記コンプトン散乱線強度とレ
    ーリー散乱線強度の比の実測値を蛍光X線が測定できな
    い成分元素にそれぞれ対応させながら、蛍光X線強度の
    実測値と理論値とが一致するとともに、前記コンプトン
    散乱線強度あるいは前記コンプトン散乱線強度とレーリ
    ー散乱線強度の比の実測値と理論値とが一致するよう
    に、 前記仮定した全成分元素の組成比を逐次近似的に修
    正して試料の成分組成比を決定することを特徴とする蛍
    光X線分析方法。
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