JP2646608B2 - ポリエステル系樹脂組成物 - Google Patents

ポリエステル系樹脂組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 <産業上の利用分野> 本発明は、機械的性質、特に成形品のウェルド強度が
高く、流動性、耐熱性、寸法安定性に優れたポリエステ
ル系樹脂組成物に関するものである。
<従来の技術> 近年プラスチックの高性能化に対する要求がますます
高まり、種々の新規性能を有するポリマが数多く開発さ
れ、市場に供されているが、なかでも特に分子鎖の平行
な配列を特徴とする光学異方性の液晶ポリマが優れた機
械的性質を有する点で注目されている。
異方性溶融相を形成するポリマとしてはたとえばp−
ヒドロキシ安息香酸にポリエチレンテレフタレートを共
重合した液晶ポリマ(特開昭49−72393号公報)、p−
ヒドロキシ安息香酸と6−ヒドロキシ−2−ナフトエ酸
を共重合した液晶ポリマ(特開昭54−77691号公報)、
またp−ヒドロキシ安息香酸に4,4'−ジヒドロキシビフ
ェニルとテレフタル酸、イソフタル酸を共重合した液晶
ポリマ(特公昭57−24407号公報)などが知られてい
る。
しかしながら、この液晶ポリマとして、これまで知ら
れてるものは、熱変形温度が190℃未満と低く、耐熱性
が不十分であったり、熱変形温度は190℃以上と耐熱性
は良好であるが、液晶開始温度が高すぎて400℃以上で
ないと成形できないなど耐熱性と成形性のバランスを有
した液晶ポリマを得ることは困難であった。一方、テレ
フタル酸とアルキレングリコールからなる熱可塑性ポリ
エステルは、繊維、フィルム、成形品として広く使用さ
れている。なかでもポリエチレンテレフタレートは優れ
た耐熱性、剛性を有している反面、ポリブチレンテレフ
タレートなどに比較して結晶化速度が遅く、射出成形し
にくい、寸法安定が低い、耐衝撃性が不良であるなどエ
ンジニアリングプラスチックとしての用途に適さないと
いう大きな欠点も有している。
このような欠点を改良するために、従来より種々の方
法が提案され、たとえば、特開昭57−25354号公報およ
び特開昭60−190449号公報にはポリアルキレンテレフタ
レートと完全芳香族ポリエステルのブレンドにより、引
張り特性、曲げ特性、衝撃強さなどの機械的性質や耐熱
性を向上させる方法が開示されている。
一方、特開昭61−73761号公報には、ポリエチレンテ
レフタレートとアシルオキシ芳香族カルボン酸を共重合
したポリエチエレンテレフタレートのブレンドにより結
晶化速度を向上させる方法が開示されている。
また、液晶ポリエステルおよび熱可塑性ポリエステル
の耐熱性と機械的性質、特に液晶ポリエステルでは機械
的性質の異方性を改良するためにガラス繊維などの補強
剤を用いることが知られている。
<発明が解決しようとする課題> しかしながら、前記特開昭57−25354号公報、特開昭6
0−190449号公報、特開昭61−73761号公報などで知られ
ている液晶ポリエステルは耐熱性と成形性のバランスに
優れたものが得られなかったため、熱可塑性ポリエステ
ルに配合しても、耐熱性の向上効果が不十分であった
り、配合時の加熱温度が高すぎて熱可塑性ポリエステル
が分解し、実用的な組成物が得られないことや、組成物
の成形温度が高くなるなどの問題があった。
本発明は上述の問題を解消し、機械的性質、特に成形
品のウェルド強度が高く、流動性、耐熱性、寸法安定性
に優れたポリエステル系樹脂組成物を得ることを課題と
する。
<課題を解決するための手段> 本発明者らは、上記問題を解決すべく鋭意検討した結
果、本発明に到達した。
すなわち、本発明はテレフタル酸とエチレングリコー
ル、ブタンジオール、ヘキサメチレングリコールから選
ばれた1種以上のアルキレングリコールからなる熱可塑
性ポリエステル(A)99〜1重量%と下記構造単位
(I)〜(IV)からなる熱変形温度が190〜280℃の異方
性溶融相を形成する液晶ポリエステル(B)1〜99重量
%からなるポリエステル系樹脂組成物にヒンダードフェ
ノール、ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの
置換体から選ばれた1種以上の酸化防止剤および/また
は、リチウム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウ
ム、カルシウム、亜鉛およびバリウムの硫酸塩、炭酸
塩、酸化物、炭素数1〜36の脂肪族カルボン酸あるいは
芳香族カルボン酸との塩およびエチレン−α,β−不飽
和酸共重合体との塩から選ばれた1種以上の成形性改良
剤を含有せしめてなる樹脂組成物である。
O−X−O …(III) (ただし式中のXは −CH2CH2−から選ばれた1種以上の基を示し、構造単位
(IV)のカルボル基は互いにパラあるいはメタ位の関係
にあり、その50モル%以上がパラ位である。なお構造単
位(II)および(III)の合計と(IV)とは実質的に等
モルである。) 本発明の熱可塑性ポリエステル(A)は、テレフタル
酸をジカルボン酸成分とし、特定のアルキレングリコー
ルをジオール成分とするものである。テレフタル酸は、
テレフタル酸またはそのアルキルエステル、フェニルエ
ステルなどのエステル形成性誘導体である。なお、本発
明の効果を損わない程度でその一部(20モル%以下)を
イソフタル酸、オルトフタル酸、2,6−ナフタレンジカ
ルボン酸、1,5−ナフタレンジカルボン酸、ビス(p−
カルボキシフェニル)メタンアントラセンジカルボン
酸、4,4'−ジフェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェ
ノキシ)エタン−4,4'−ジカルボン酸、1,2−ビス(2
−クロルフェノキシ)エタン−4,4'−ジカルボン酸、5,
ナトリウムスルホイソフタル酸などの芳香族ジカルボン
酸、アジピン酸、セバシン酸、アゼライン酸、ドデカン
ジオン酸などの脂肪族ジカルボン酸、1,3−シクロヘキ
サンジカルボン酸、1,4−シクロヘキサンジカルボン酸
などの脂環式ジカルボン酸およびこれらのエステル形成
性誘導体などの1種以上で置き換えることもできる。
また、アルキレングリコールは、エチレングリコー
ル、1,4−ブタンジオールなどのブタンジオール、1,6−
ヘキサメチレングリコールなどのヘキサメチレングリコ
ールまたはそのエステル形成性誘導体、なかでも好まし
くはエチレングリコールである。
なお、本発明の効果を損わない程度でその一部(20モ
ル%以下)を炭素数2〜20の脂肪族および脂環族グリコ
ール、すなわち、プロピレングリコール、ネオペンチル
グリコール、1,5−ペンタンジオール、デカメチレング
リコール、シクロヘキサンジメタノール、シクロヘキサ
ンジオールなど、およびそれらのエステル形成性誘導体
の1種以上で置き換えて用いることもできる。
本発明の熱可塑性ポリエステル(A)の重合方法は特
に制限されないが、たとえばテレフタル酸とエチレング
リコールを無触媒かまたは触媒(たとえばスズ化合物ま
たはチタン化合物)の存在下に直接エステル化せしめる
か、または、テレフタル酸ジメチルとエチレングリコー
ルを触媒(マグネシウム化合物、亜鉛化合物、コバルト
化合物、カルシウム化合物またはマンガン化合物など)
の存在下でエステル交換せしめてまず低重合体を製造
し、これにアンチモン、チタン、ゲルマニウム化合物な
どの重合反応触媒を添加し、減圧下で重合せしめて熱可
塑性ポリエステルを得る方法を挙げることができる。
また、この重合触媒の添加時期は特に制限されず、重
合反応前ならいつでもよく、直接エステル化反応前、ま
たはエステル交換反応前に添加しておいてもよい。
また熱可塑性ポリエステル(A)を製造する際に、ポ
リマの色調をさらに改良するためにリン酸、亜リン酸、
次亜リン酸およびそれらのアルキルエステルまたはアリ
ールエステルなど、たとえばリン酸モノメチル、リン酸
ジメチル、リン酸トリメチル、リン酸メチルジエチル、
リン酸トリエチル、リン酸トリイソプロピル、リン酸ト
リブチル、リン酸トリフェニル、リン酸トリベンジル、
リン酸トリシクロヘキシル、亜リン酸トリメチル、亜リ
ン酸トリエチル、亜リン酸トリブチル、亜リン酸トリ
(δ−ヒドロキシブチル)、亜リン酸トリフェニルな
ど、特にリン酸、亜リン酸、リン酸トリメチル、亜リン
酸トリメチルなどをエステル化反応またはエステル交換
反応後に添加してもよい。
また、本発明の熱可塑性ポリエステル(A)は0.5g/d
lのオルソクロロフェノール溶液を25℃において測定し
た対数粘度が0.36〜1.40dl/g、特に0.52〜1.18dl/gの範
囲にあることが好ましく、0.36dl/g未満の場合には十分
な機械的特性を得ることが難しく、1.40dl/gを越えた場
合には表面光沢の良好な成形品を得ることが難しい。
本発明における液晶ポリエステル(B)の前記構造単
位(I)は、p−ヒドロキシ安息香酸から生成した構造
単位を、前記構造単位(III)は4,4'−ジヒドロキシビ
フェニル構造単位を、前記構造単位(III)はハイドロ
キノン、t−ブチルハイドロキノン、フェニルハイドロ
キノン、2,6−ジヒドロキシナフタレン、エチレングリ
コールから選ばれた一種以上のジヒドロキシ化合物から
生成した構造単位を、前記構造単位(IV)はテレフタル
酸および/またはイソフタル酸から生成した構造単位を
各々示す。
本発明の液晶ポリエステル(B)は前記構造単位
(I)、(II)、(III)および(IV)からなる共重合
体である。
前記構造単位(I)、(II)および(III)の共重合
量は任意であり、構造単位(II)および(III)の合計
と構造単位(IV)とは実質的に等モルである。流動性の
点から次の共重合量であることが好ましい。すなわち、
前記構造単位(I)は[(I)+(II)+(III)]の4
0〜90モル%であることが好ましく、特に60〜78モル%
であることが好ましい。また、前記構造単位(II)/
(III)のモル比は9/1〜1/9が好ましく、前記構造単位
(III)において−X−が−CH2CH2−以外の場合は7.5/
2.5〜2.5/7.5が好ましく、7.5/2.5〜4/6が特に好まし
い。
中でも前記構造単位(I)、(II)および(III)の
合計を100%とした場合の、構造単位(II)の共重合比
率が5〜15モル%、(III)の共重合比率が10〜20モル
%であることが好ましく、前記構造単位(I)の共重合
比率が72〜78モル%、(II)の共重合比率が5〜15モル
%、(III)の共重合比率が10〜20モル%で−X−の70
モル%以上が−CH2CH2−であることが最も好ましい。
本発明における液晶ポリエステル(B)は、熱変形温
度が190〜280℃、好ましくは190〜220℃であることが必
須である。
熱変形温度が190℃未満では耐熱性の向上効果が不十
分であり、280℃を越えると配合時に熱可塑性ポリマが
熱分解したり、得られた樹脂組成物の成形温度が高くな
るという問題が発生する。
ここで熱変形温度はASTM D648に基づき、1/8″厚の
試験片を18.6kg/cm2の応力で測定した値である。また、
液晶ポリエステル(B)の液晶開始温度は、特に制限は
ないが、流動性と耐熱性の点から260〜330℃であること
が好ましく、260〜280℃であることが特に好ましい。
本発明における液晶ポリエステル(B)の製造方法
は、特に制限がなく、公知のポリエステルの重縮合法に
準じて製造できる。
たとえば、前記構造単位(III)で、−X−が−CH2CH
2−以外の場合は下記(1)〜(4)、−X−が−CH2CH
2−の場合は(5)の製造方法が好ましく挙げられる。
(1)p−アセトキシ安息香酸、4,4′−ジアセトキシ
ビフェニル、パラアセトキシベンゼンなどの芳香族ジヒ
ドロキシ化合物のジアシル化物とテレフタル酸などの芳
香族ジカルボン酸から脱酢酸重縮合反応によって製造す
る方法。
(2)p−ヒドロキシ安息香酸、4,4′−ジヒドロキシ
ビフェニル、ハイドロキノンなどの芳香族ジヒドロキシ
化合物、テレフタル酸などの芳香族ジカルボン酸に無水
酢酸を反応させて、フェノール性水酸基をアシル化した
のち、脱酢酸重縮合反応によって製造する方法。
(3)p−ヒドロキシ安息香酸のフェニルエステル、4,
4′−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノンなどの
芳香族ジヒドロキシ化合物とテレフタル酸などの芳香族
ジカルボン酸のジフェニルエステルから脱フェノール重
縮合反応により製造する方法。
(4)p−ヒドロキシ安息香酸およびテレフタル酸など
の芳香族ジカルボン酸に所望量のジフェニルカーボネー
トを反応させてそれぞれジフェニルエステルとしたの
ち、4,4′−ジヒドロキシビフェニル、ハイドロキノン
などの芳香族ジヒドロキシ化合物を加え、脱フェノール
重縮合反応により製造する方法。
(5)ポリエチレンテレフタレートの存在下で(1)ま
たは(2)の方法で製造する方法。
高重合度の液晶ポリエステル(B)が得られるため、
(2)の方法を用いることがさらに好ましい。
重縮合反応に使用する触媒としては、酢酸第一錫、テ
トラブチルチタネート、酢酸カリウム、三酸化アンチモ
ン、マグネシウム、酢酸ナトリウムなどの金属化合物が
代表的であり、とりわけ脱フェノール重縮合の際に有効
である。
本発明の液相ポリエステル(B)は、ペンタフルオロ
フェノール中で固有粘度を測定ることが可能なものもあ
り、その際には0.1g/dlの濃度で60℃で測定した値で0.5
dl/g以上が好ましく、特に1.0〜15.0dl/gが好ましい。
また、本発明の液晶ポリエステル(B)の溶融粘度は
100〜15,000ポイズが好ましく、特に200〜5,000ポイズ
がより好ましい。
なお、この溶融粘度は(液晶開始温度+40℃)でずり
速度1,000(1/秒)の条件下で高化式フローテスターに
よって測定した値である。
なお、本発明の液晶ポリエステル(B)を重縮合する
際には上記(I)〜(IV)を構成する成分以外に、4,
4′−ジフェニルジカルボン酸、3,3′−ジフェニルジカ
ルボン酸、3,4′−ジフェニルジカルボン酸、2,2′−ジ
フェニルジカルボン酸、1,2−ビス(フェノキシ)エタ
ン−4,4′−ジカルボン酸、1,2−ビス(2−クロルフェ
ノキシ)エタン−4,4′−ジカルボン酸などの芳香族ジ
カルボン酸、ヘキサヒドロテレフタル酸などの脂環式ジ
カルボン酸、レゾルシン、クロルハイドロキノン、メチ
ルハイドロキノン、2,7−ジヒドロキシナフタレンなど
の芳香族ジヒドロキシ化合物、m−オキシ安息香酸、2,
6−オキシナフトエ酸などの芳香族オキシカルボン酸お
よびp−アミノフェノール、p−アミノ安息香酸などを
本発明の目的を損わない程度の少割合の範囲でさらに共
重合せしめることができる。
本発明において、熱可塑性ポリエステル(A)の配合
量は99〜1重量%、好ましくは95〜5重量%、特に好ま
しくは90〜10重量%に液晶ポリエステル(B)の配合量
は1〜99重量%、好ましくは5〜95重量%、特に好まし
くは10〜90重量%である。熱可塑性ポリエステル(A)
が99重量%を越えると耐熱性、流動性および機械的性質
が不十分であり、1重量%未満では成形品のウェルド強
度が不十分である。
本発明の組成物には成形性改良剤として、リチウム、
ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシウ
ム、亜鉛およびバリウムの硫酸塩、炭酸塩および酸化
物、または、上記金属と炭素数1〜36の脂肪族カルボン
酸あるいは芳香族カルボン酸との塩、エチレン−α、β
−不飽和酸共重合体の上記金属との塩および粉末状の粘
度鉱物質などが用いられる。
とりわけ熱可塑性ポリエステル(A)としてポリエチ
レンテレフタレートを使用する際に有効である。
これらの成形性改良剤の具体例としては、硫酸バリウ
ム、炭酸マグネシウム、炭酸カルシウム、酸化アルミニ
ウム、酸化亜鉛、ステアリウ酸ナトリウム、ステアリン
酸バリウム、エポキジステアリン酸バリウム、テレフタ
ル酸モノメチルナトリウム、テレフタル酸ジナトリウ
ム、イソフタル酸モノメチルナトリウム、イソフタル酸
ジナトリウム、エチレンジ−メタクリル酸共重合体の部
分ナトリウム置換物、マイカ、タルク、カオリン、クレ
ーなどが好ましく使用でき、アテアリン酸バリウムが特
に好ましい。
これら成形性改良剤の添加量は熱可塑性ポリエステル
(A)100重量部に対し、0.01〜25重量部、特に0.05〜1
0重量部が好ましい。
また、本発明の組成物には、ヒンダードフェノール、
ヒドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体か
ら選ばれた1種以上の酸化防止剤を含有せしめる。含有
せしめる量としては、通常、酸化防止の機能を果たす量
(有効量)であればよい。
さらに本発明の組成物には、本発明の目的を損なわな
い範囲で熱安定剤(例えばヒンダードフェノール、ヒド
ロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体な
ど)、紫外線吸収剤(たとえばレゾルシノール、サリシ
レート、ベンゾトリアゾール、ベンゾフェノンなど)、
滑剤および離型剤(モンタン酸およびその塩、そのエス
テル、そのハーフエステル、ステアリルアルコール、ス
テアラミドおよびポリエチレンワックスなど)、染料
(たとえばニトロシンなど)および顔料(たとえば硫化
カドミウム、フタロシアニン、カーボンブラックなど)
を含む着色剤、難燃剤、可塑剤、帯電防止剤、強化剤な
どの通常の添加剤や他の熱可塑性樹脂を添加して、所定
の特性を付与することができる。特に、耐熱性と剛性を
付与する目的で、ガラス繊維を添加することが有効であ
る。
添加量についても特に制限はないが、通常、酸化防止
剤およびその他の添加剤を配合する場合はそれらも含め
ての量で、樹脂組成物に対して10〜60重量%含有される
ように添加することが好ましい。
本発明の樹脂組成物は溶融混練することが好ましく、
溶融混練には公知の方法を用いることができる。たとえ
ば、バンバリーミキサー、ゴムロール機、ニーダー、単
軸もしくは二軸押出機などを用い、200〜400℃の温度で
溶融混練して組成物とすることができる。
<実施例> 以下に実施例により本発明をさらに詳述する。
参考例1 テレフタル酸ジメチルに対し1.8倍モル量のエチレン
グリコールを加えて十分に撹拌し、次いで製造されるポ
リエステル量に対し、エステル交換触媒として酢酸マグ
ネシウム・4水和物0.06重量%および重合触媒として二
酸化ゲルマニウム0.02重量%を添加する。徐々に昇温
し、常圧、240〜245℃でエステル交換せしめて低重合体
とした。これにリン酸トリメチル0.02重量%を加えたの
ち、減圧および昇温を開始し、減圧開始から約50分で真
空度0.05Torr、温度280℃とし、約2時間重合せしめた
のち、水中に吐出して対数粘度0.6dl/g(0.5g/dlの濃度
でオルソクロロフェノール中で25℃で測定)のポリエチ
レンテレフタレートを得た。
参考例2 p−ヒドロキシ安息香酸466重量部、4,4′−ジヒドロ
キシビフェニル84重量部、無水酢酸480重量部、テレフ
タル酸75重量部および固有粘度が約0.6dl/gのポリエチ
レンテレフタレート130重量部を撹拌翼、留出管を備え
た反応容器に仕込み、次の条件で脱酢酸重縮合を行っ
た。
まず窒素ガス雰囲気下に100〜250℃で5時間、250〜3
00℃で1.5時間反応させたのち、300℃、1時間で0.5mmH
gに減圧し、さらに2.25時間反応させ、重縮合を完結さ
せたところ、ほぼ理論量の酢酸が留出し、下記の理論構
造式を有する樹脂を得た。
また、このポリエステルを偏光顕微鏡の試料台にの
せ、昇温して、光学異方性の確認を行った結果、液晶開
始温度は264℃であり、良好な光学異方性を示した。こ
のポリエステルの対数粘度(0.1g/dl%の濃度でペンタ
フルオロフェノール中、60℃で測定)は1.96dl/gであ
り、304℃、ずり速度1,000/秒での溶融粘度は910ポイズ
であった。
参考例3 p−アセトキシ安息香酸519重量部、4,4′−ジアセト
キシビフェニル184重量部、t−ブチルハイドロキノン
ジアセテート85重量部、ハイドロキノンジアセテート1
9.4重量部およびテレフタル酸186重量部を撹拌翼、留出
管を備えた反応容器に仕込み、窒素ガス雰囲気下に250
〜340℃で3.0時間反応させたのち、350℃に昇温後1.5mm
Hgに系内を減圧し、さらに1.0時間加熱し、重縮合反応
を行い下記の理論構造式を有する樹脂を得た。
また、このポリエステルを偏光顕微鏡の試料台にの
せ、昇温して光学異方性の確認を行ったところ、液晶開
始温度は307℃であり、良好な光学異方性を示した。こ
のポリエステルの対数粘度(参考例1と同一の条件で測
定)は4.3dl/gであり、347℃、ずり速度1,000/秒での溶
融粘度は4,300ポイズであった。
参考例4 p−アセトキシ安息香酸541重量部、4,4′−ジアセト
キシビフェニル184重量部、ハイドロキノンジアセテー
ト62重量部およびテレフタル酸124重量部,イソフタル
酸42重量部を撹拌翼、留出管を備えた反応容器に仕込
み、窒素ガス雰囲気下に250〜360℃で3時間反応させた
のち、1mmHgに減圧し、さらに1時間加熱し、重縮合を
完結させ、下記の理論構造式を有する樹脂を得た。
このポリエステルを偏光顕微鏡の試料台にのせ、昇温
して光学異方性の確認を行ったところ、液晶開始温度は
305℃であり、良好な光学異方性を示した。このポリエ
ステルの対数粘度(参考例1と同一条件で測定)は4.1d
l/gであり、345℃、ずり速度1,000/秒での溶融粘度は3,
500ポイズであった。
比較例1、3 参考例1の熱可塑性ポリエステル(A)またはPBT
(ポリブチレンテレフタレート)にステアリン酸バリウ
ムおよび/または酸化防止剤を第1表に示す割合で、28
0℃(比較例1)または250℃(比較例3)に設定した30
mmφの2軸押出機により溶融混合したのち、混合物をガ
ット状に押出し、ストランドカッターでペレタイズし
た。得られたペレットを住友ネスタール射出成形機プロ
マット40/25(住友重機械工業(株)製)に供し、シリ
ンダー温度280℃(比較例1)または250℃(比較例
3)、金型温度130℃(比較例1)または80℃(比較例
3)の条件で1/8″×1/2″×5″のテストピースおよび
ASTMNo.1ダンベルを成形した。ASTMNo.1ダンベルは、ゲ
ートがダンベルの一端にある通常の金型(ダンベルI)
とゲートがダンベルの両端にあるウェルド金型(ダンベ
ルII)の両者を用いて成形した。そしてASTM D648規格
に従い、1/8″厚のテストピースの熱変形温度(18.6kg/
cm2)を測定した。また、ASTM D790規格に従い、1/8"
厚のテストピースの曲げ弾性率を測定した。さらにASTM
D638規格に従い、ASTMNo.1ダンベルIIの破断強度を測
定し、ダンベルIに対するダンベルIIの破断強度の比率
をウェルド強度保持率とした。
これらの結果を合わせて第1表に示す。
比較例2、4、5 参考例2〜4の液晶ポリエステルを用い、比較例1、
3と同様にシリンダー温度300〜350℃、金型温度130℃
の条件で1/8″×1/2″×5″のテストピースおよびASTM
No.1ダンベルを成形した。そして、熱変形温度、曲げ弾
性率および破断強度を測定し、ウェルド強度保持率を計
算した。これらの結果を合わせて第1表に示す。
実施例1〜8 熱可塑性ポリエステル(A)として参考例1のポリエ
ステルまたはPBTを用い、液晶ポリエステル(B)そし
て参考例2〜4のポリエステルを用いて、ステアリン酸
バリウム、酸化防止剤などの添加剤とともに第1表に示
す割合で290〜320℃に設定した30mmφの2軸押出機によ
り溶融混合したのち、混合物をガット状に押出し、スト
ランドカッターでペレタイズした。そして、比較例1、
3と同様にシリウンダー温度290〜320℃、金型温度130
℃の条件で1/8″×1/2″×5″のテストピースおよびAS
TMNo.1ダンベルを成形した。さらに、熱変型温度、曲げ
弾性率および破断強度を測定し、ウェルド強度保持率を
計算した。これらの結果を合わせて第1表に示す。
比較例1、3に比較して、実施例1〜8の本発明の樹
脂組成物は、熱変形温度が高く、耐熱性に優れ、曲げ弾
性率が高く機械的性質にも優れている。また、比較例
2、4、5に比較して、実施例1〜8の本発明の樹脂組
成物は、ウェルド強度が格段に高く、機械的性質に優れ
ている。
比較例6、7、実施例9 熱可塑性ポリエステル(A)として参考例1のポリエ
ステルを、液晶ポリエステル(B)として、参考例2の
ポリエステルを用いステアリン酸バリウム、酸化防止剤
などの添加剤とガラス繊維を第2表に示す割合で290〜3
10℃に設定した40mmφの単軸押出機により溶融混合した
のち、混合物をガット状に押出し、ストランドカッター
でペレタイズした。
そして、比較例1、3と同様にシリンダー温度290〜3
10℃、金型温度130℃の条件で1/8″×1/2″×5″のテ
ストピースおよびASTMNo.1ダンベルを成形した。また、
80mm×80mm×1mmの角板を成形した。さらに、熱変形温
度、曲げ弾性率および破断強度を測定し、ウェルド強度
保持率を計算した。また、角板を130℃×40時間熱処理
し、MD方向の加熱収縮率を測定した。これらの結果を第
2表に示す。
比較例6、7に対して実施例9の本発明の樹脂組成物
は、高熱変形温度と高曲げ弾性率を保持しているととも
に、ウェルド強度保持率が高く、機械的性質に優れ、加
熱収縮率が小さく寸法安定性にも優れる。
<発明の効果> 本発明は、熱可塑性ポリエステルに、限定された構造
式からなる熱変形温度が190〜280℃の結晶ポリエステル
を添加することにより、機械的性質、特にウェルド強度
が高く、流動性、耐熱性、寸法安定性に優れた樹脂組成
物が得られる。
フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 //(C08L 67/02 67:00)

Claims (10)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】テレフタル酸とエチレングリコール、ブタ
    ンジオール、ヘキサメチレングリコールから選ばれた1
    種以上のアルキレングリコールからなる熱可塑性ポリエ
    ステル(A)99〜1重量%と下記構造単位(I)〜(I
    V)からなる熱変形温度が190〜280℃の異方性溶融相を
    形成する液晶ポリエステル(B)1〜99重量%からなる
    ポリエステル系樹脂組成物にヒンダードフェノール、ヒ
    ドロキノン、ホスファイト類およびこれらの置換体から
    選ばれた1種以上の酸化防止剤およびまたは、リチウ
    ム、ナトリウム、マグネシウム、アルミニウム、カルシ
    ウム、亜鉛およびバリウムの硫酸塩、炭酸塩、酸化物、
    炭素数1〜36の脂肪族カルボン酸あるいは芳香族カルボ
    ン酸との塩およびエチレン−α,β−不飽和酸共重合体
    との塩から選ばれた1種以上の成形性改良剤を含有せし
    めてなる樹脂組成物。 O−X−O …(III) (ただし(III)式中のXは −CH2CH2−から選ばれた1種以上の基を示し、構造単位
    (IV)のカルボニル基は互いにパラあるいはメタ位の関
    係にあり、その50モル%以上がパラ位である。なお構造
    単位(II)および(III)の合計と構造単位(IV)とは
    実質的に等モルである。)
  2. 【請求項2】酸化防止剤および/または成形性改良剤が
    ポリエステル系樹脂組成物に対して、有効量含有せしめ
    てなる請求項(1)記載の樹脂組成物。
  3. 【請求項3】成形性改良剤の添加量が熱可塑性ポリエス
    テル(A)100重量部に対し、0.01〜25重量部である請
    求項(2)記載の樹脂組成物。
  4. 【請求項4】成形性改良剤がステアリン酸バリウムであ
    る請求項(1)〜(3)のいずれか記載の樹脂組成物。
  5. 【請求項5】熱可塑性ポリエステル(A)がポリエチレ
    ンテレフタレートである請求項1〜4のいずれか記載の
    樹脂組成物。
  6. 【請求項6】液晶ポリエステル(B)において前記構造
    単位(I)の共重合比率が構造単位(I)、(II)およ
    び(III)の合計に対して40〜90モル%である請求項
    (1)〜(5)のいずれか記載の樹脂組成物。
  7. 【請求項7】液晶ポリエステル(B)において構造単位
    (II)と(III)のモル比[(II)/(III)]が9/1〜1
    /9である請求項(1)〜(6)のいずれか記載の樹脂組
    成物。
  8. 【請求項8】液晶ポリエステル(B)において構造単位
    (II)の共重合比率が構造単位(I)、(II)および
    (III)の合計に対して5〜15モル%、構造単位(III)
    の共重合比率が構造単位(I)、(II)および(III)
    の合計に対して10〜20モル%である請求項(1)〜
    (7)のいずれか記載の樹脂組成物。
  9. 【請求項9】液晶ポリエステル(B)において前記構造
    単位(I)の共重合比率が72〜78モル%、(II)の共重
    合比率が5〜15モル%、(III)の共重合比率が10〜20
    モル%で、−X−の70モル%以上が−CH2CH2−である請
    求項(1)〜(8)のいずれか記載の樹脂組成物。
  10. 【請求項10】ガラス繊維を含む請求項(1)〜(9)
    のいずれか記載のポリエステル系樹脂組成物。
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