JP2623729B2 - 四環式シクロヘキシルシクロヘキセン誘導体 - Google Patents

四環式シクロヘキシルシクロヘキセン誘導体

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【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 本発明は、電気光学的表示材料として有用な新規四環
式シクロヘキシルシクロヘキセン誘導体に関する。
〔従来の技術〕
液晶表示セルの代表的なものにジー・エイチ・ハイル
マイヤー(G.H.Heilmeier)等〔Appl.Phys.Letters,13,
46(1968)〕によって提案された動的散乱効果型セル
(ダイナミック・スキャッタリング・モード・セル)ま
たはエム・ジャット(M.Schadt)等〔Appl.Phys.Letter
s,18,127(1971)〕によって提案された電界効果型セル
(フィールド・エフェクト・モード・セル)またはジー
・エイチ・ハイルマイヤー(G.H.Heilmeier)等〔Appl.
Phys.Letters,13,91(1968)〕によって提案されたゲス
ト・ホスト型セル等がある。
これらの液晶表示セルに用いられる液晶材料には種々
の特性が要求されるが、室温を含む広い温度範囲でネマ
チック相を有することは各種表示セルに共通して要求さ
れている重要な特性である。
このような特性を有する実用可能な液晶材料の多く
は、通常、室温付近にネマチック相を有する化合物と室
温より高い温度領域にネマチック相を有する化合物から
成る数種又はそれ以上の成分を混合することによって調
製される。現在実用的に使用される上記の如き混合液晶
の多くは、少なくとも−30℃〜+65℃の全温度範囲に亘
ってネマチック相を有することが要求されているが液晶
表示セルの応用製品の多様化に伴ない、ネマチック液晶
温度範囲を更に高温側に拡張した液晶材料が要望されて
おり、このため、最近では特にネマチック相−等方性液
体相転移温度(N−I点)の高いネマチック液晶化合物
が必要とされている。
このような要求に応えるために、特開昭57−165328号
公報には、4−置換ビシクロヘキシル4′−置換ベンゼ
ンの如き200℃前後にN−I点を有する化合物が提案さ
れている。
さらに高い温度領域にネマチック相を有する液晶化合
物として、特開昭58−140028号公報には、ビス(4−置
換フェニル)ビシクロヘキサン、特開昭59−7122号公
報、特開昭59−20235号公報及び特開昭59−27839号公報
には、4−(4−置換フェニル)4″−置換テルシクロ
ヘキサンの如き300℃前後にN−I点を有する化合物が
提案されている。
〔発明が解決しようとする課題〕
しかしながら、これらの化合物は、ネマチック相を示
す温度範囲の下限である結晶相−ネマチック相転移温度
(C−N点)又はスメクチック相−ネマチック相転移温
度(S−N点)が高いという欠点を有している。
混合液晶のN−I点を上昇させる目的で、これらのC
−N点又はS−N点が高い化合物を現在母体液晶として
実用的に汎用されているネマチック混合液晶に添加する
と、低温領域で結晶相又はスメクチック相が現出すると
いう好ましからざる性質を有している。
本発明が解決しようとする課題は、高いN−I点を有
し、かつ低いC−N点又はS−N点を有する新規な液晶
化合物を提供することにある。
〔課題を解決するための手段〕
本発明は、上記課題を解決するために、一般式 (式中、Rは炭素原子数1〜9の直鎖状アルキル基を表
わし、 を表わし、Yは水素原子又はフッ素原子を表わす。Yが
水素原子である場合にはXはフッ素原子、塩素原子、炭
素原子数1〜9の直鎖状アルキル基又はアルコキシル基
を表わし、Yがフッ素原子である場合にはXはフッ素原
子を表わす。シクロヘキサン環はトランス配置であ
る。)で表わされる化合物を提供する。
本発明に係わる式(I)の化合物は、次の製造方法に
従って製造することができる。
(上記反応式におけるR、X及びYは夫々、式(I)に
おけるR、X及びYと同じ意味を持つ。) 第1間隔−式(II)の化合物を、無水テトラヒドロフ
ラン(以下、THFという。)の如きエーテル系溶媒中
で、切削片状マグネシウムと20〜30℃で1〜2時間反応
させて、式(III)の化合物を製造する。
第2段階−式(III)の化合物の溶液に、式(IV)の
化合物の無水THF溶液を5〜20℃で加えて、更に10〜30
℃で1時間反応させた後、反応生成物を飽和塩化アンモ
ニウム水溶液で分解して式(V)の化合物を製造する。
第3段階−式(V)の化合物を、トルエンの如き水不
溶性不活性溶媒中で、p−トルエンスルホン酸の如き酸
性触媒の存在下に0.5〜1時間還流温度で反応させる。
反応混合物を冷却した後、溶媒層を飽和炭酸ナトリウム
水溶液及び飽和食塩水で順次洗浄し、乾燥した後、溶媒
を留去する。反応粗生成物をエタノールの如きアルコー
ル系溶媒から再結晶させて式(VI)の化合物を製造す
る。
第4段階−式(VI)の化合物を、エタノールと酢酸エ
チルの混合溶媒中で、ラネー・ニッケルの如き水素化触
媒を加え、3kg/cm2以下の水素圧下に、20〜80℃の温度
で接触還元して、式(VII)の化合物を製造する。
第5段階−式(VII)の化合物を、トルエンの如き不
活性溶媒中で、希硫酸の如き酸性水溶液と、酢酸の存在
下に還流温度で5時間反応させる。反応混合物を冷却し
た後、溶媒層を水洗,乾燥し、この溶液から溶媒を留去
する。反応粗生成物をn−ヘキサンとエタノールの混合
溶媒から再結晶させて精製して式(VII)の化合物を製
造する。
第6段階−式(IX)の化合物を、無水ジエチルエーテ
ル中でリチウムと還流温度で4〜9時間反応させてリチ
ウム塩とした後、これに、式(VIII)の化合物の無水1,
2−ジメトキシエタンの如きエーテル系溶媒の溶液を−2
0〜0℃で加えて、更に10〜25℃で30分間反応させる。
反応混合物を冷水中に加えて加水分解し、反応生成物を
トルエンで抽出した後、抽出液を水洗,乾燥し、抽出液
から溶媒を留去して式(X)の化合物を製造する。
第7段階−式(X)の化合物を、n−ヘキサン又はト
ルエンに溶解させ、この溶液を、アセトニトリル中でク
ロロトリメチルシランとヨウ化ナトリウムから調製した
ヨードトリメチルシランのアセトニトリル溶液中に加え
て5〜10℃で30分〜1時間反応させることによって、式
(X)の化合物から、式(XII)の化合物、式(XIII−
a)及び(XIII−b)の化合物から成る反応混合物を経
て、式(XIV−a)、式(XIV−b)、式(XV−a)及び
式(XV−b)の化合物から成る反応混合物を製造する。
この反応混合物に1,8−ジアザ−ビシクロ(5,4,0)ウ
ンデセン−7(以下、DBUという。)の如き塩基を加え
て、5〜30℃で5時間、更に還流温度で1時間反応させ
て、式(XV−a)又は式(XV−b)の化合物から式(I
−a)又は式(I−b)の化合物を各々製造する。反応
混合物に水を加えた後、式(I−a)及び式(I−b)
の化合物をトルエンで抽出し、抽出液を希塩酸、飽和酸
性亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナトリウム水
溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、乾燥した後、この抽出
液から溶媒を留去する。
反応粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフィー
によって精製した後、更にn−ヘキサン又はn−ヘキサ
ンとエタノールの混合溶媒から再結晶させて精製し、本
発明に係わる式(I−a)及び式(I−b)の化合物の
混合物を製造する。
次いで、高速液体クロマトグラフィーを使用して、式
(I−a)及び式(I−b)の化合物の混合物から式
(I−a)及び式(I−b)の化合物を夫々単離した
後、この単離した化合物をn−ヘキサンとエタノールの
混合溶媒から各々再結晶させることによって、本発明に
係わる式(I−a)及び式(I−b)の化合物を製造す
る。
斯くして製造された本発明に係わる式(I)の化合物
の代表的なものの転移温度を第1表に掲げる。
本発明の一般式(I)の化合物は、 又は を表わすが、このとき、Yは水素原子であってよく、X
は炭素原子数1〜9の直鎖状アルキル基であってよく、
詳しくはXはメチル基であってよい。また、このとき、
Rがn−プロピル基であってよい。
また、X及びYが共にフッ素原子であってもよく、こ
のとき、Rがn−ブチル基であってよい。
本発明に係る式(I)の化合物は極弱い正、正又は弱
い負の誘電率異方性を有するネマチック液晶化合物であ
り、従って例えば、負又は弱い正の誘電率異方性を有す
る他のネマチック液晶化合物との混合物の状態で動的光
散乱型表示セルの材料として使用することができ、また
強い正の誘電率異方性を有する他のネマチック液晶化合
物との混合物の状態で電界効果型表示セルの材料として
使用することができる。
このように、式(I)の化合物と混合して使用するこ
とのできる好ましい代表例としては、例えば4−置換安
息香酸4′−置換フェニルエステル、4−置換シクロヘ
キサンカルボン酸4′−置換フェニルエステル、4−置
換シクロヘキサンカルボン酸4′−置換ビフェニルエス
テル、4−(4−置換シクロヘキサンカルボニルオキ
シ)安息香酸4′−置換フェニルエステル、4−(4−
置換シクロヘキシル)安息香酸4′−置換フェニルエス
テル、4−(4−置換シクロヘキシル)安息香酸4′−
置換シクロヘキシルエステル、4−置換4′−置換ビフ
ェニル、4−置換フェニル−4′−置換シクロヘキサ
ン、4−置換4″−置換ターフェニル、4−置換ビフェ
ニル4′−置換シクロヘキサン、2−(4−置換フェニ
ル)−5−置換ピリミジンなどを挙げることができる。
本発明に係わる式(I)の化合物の化学構造に類似し
ており、かつ混合液晶のN−I点を上昇させる材料とし
て提案されている公知化合物のうち、N−I点が高くか
つS−N点が低い。
で表わされる化合物のネマチック温度範囲は217〜299℃
である。
この化合物と、第1表のNo.3又はNo.4の化合物との比
較から明らかなように、式(I)の化合物は公知の類似
化合物と比べて、ネマチック温度範囲の幅が同等又は広
く、しかもネマチック温度範囲の下限が大幅に低いこと
が理解できる。
第2表は、ネマチック液晶材料として現在母体液晶と
して実用的に汎用されている混合液晶(A)の90重量%
と第1表に示した式(I)の化合物No.1の5重量%及び
化合物No.2の5重量%とから成る混合液晶(B)と、混
合液晶(A)の90重量%と化合物No.3の5重量%及び化
合物No.4の5重量%とから成る混合液晶(C)について
測定されたN−I点を掲示し、比較のために混合液晶
(A)について測定されたN−I点を掲示したものであ
る。
尚、混合液晶(A)は、 及び から成るものである。
第2表に掲示したデータから、式(I)の化合物は、
混合液晶(A)のN−I点を大幅に上昇させることが理
解できる。
〔実施例〕
実施例1 で表わされる化合物28.0g(0.163モル)を無水THF112ml
に溶解し、この溶液を切削片状マグネシウム4.36g(0.0
255グラム原子)に撹拌しながら20〜30℃で滴下した
後、更に室温(25℃)で2時間反応させて、 で表わされる化合物を得た。
次に、 で表わされる化合物30.0g(0.126モル)を無水THF60ml
に溶解し、この溶液を上記反応で精製したグリニャール
試薬中に撹拌しながら7〜12℃で滴下した後、更に室温
で1時間反応させた。反応終了後、反応混合物を飽和塩
化アンモニウム水溶液中に加えた後、反応生成物をトル
エンで抽出し、抽出液を水洗、乾燥後、この液から溶媒
を留去して、下記化合物を含む粗生成物46.5gを得た。
この粗生成物をトルエン250mlに溶解し、この溶液に
p−トルエンスルホン酸・1水和物0.24g(1.3ミリモ
ル)を加えた後、これらを撹拌しながら還流温度で1時
間脱水反応を行なった。反応混合物を冷却した後、トル
エン層を飽和炭酸水素ナトリウム水溶液及び飽和食塩水
で順次洗浄し、次いで乾燥した後、トルエンを留去し
た。得られた反応生成物をエタノールから再結晶させて
精製し、下記化合物25.0g(0.(0801モル)を得た。
(収率64%) 次に、この化合物をエタノール50mlと酢酸エチル50ml
の混合溶媒に溶解し、この溶液に触媒量のラネー・ニッ
ケルを加え、加圧下(3.0kg/cm2以下)60〜70℃の温度
で撹拌して水素化反応を行なった。反応終了後、反応混
合物から触媒を去した後、液から溶媒を留去した。
得られた粗生成物をエタノールから再結晶させて精製
し、下記化合物11.0g(0.035モル)を得た。(収率44
%) この化合物をトルエン50mlに溶解し、この溶液に10%
硫酸50mlと酢酸20mlを加えた後、撹拌しながら還流温度
で5時間反応させた。反応終了後、反応混合物を冷却
し、トルエン層を水洗、乾燥した後、トルエンを留去し
た。得られた粗生成物をn−ヘキサンとエタノールの混
合溶媒から再結晶させて精製し、下記化合物8.6g(0.03
2モル)を得た。(収率90%) 次に、 で表わされる化合物4.2g(0.026モル)を無水ジエチル
エーテル13mlに溶解し、この溶液にリチウム0.36g(0.0
52グラム原子)を加えた後、撹拌しながら還流温度で4
時間反応させた。反応終了後、反応混合物を冷却し、こ
の反応混合物に、前段階で得られた式 で表わされる化合物6.0g(0.022モル)の無水1,2−ジメ
トキシエタン溶液50mlを−13〜0℃で滴下した後、更に
室温で30分間反応させた。反応混合物を冷水中に加えた
後、反応生成物をトルエンで抽出し、抽出液を水洗、乾
燥した後、溶媒を留去して下記化合物を含む粗生成物10
gを得た。
次に、ヨウ化ナトリウム13g(0.087モル)をアセトニ
トリル52mlに溶解し、この溶解にクロロトリメチルシラ
ン9.4g(0.087モル)を滴下して得た溶液中に、前段階
で得た粗生成物のトルエン溶液40mlを、撹拌下に5〜10
℃で滴下した後、更に同温度で30分間反応させた。反応
混合物にDBU15g(0.099モル)を7〜18℃で滴下した
後、更に室温(25℃)で5時間、次いで還流温度で1時
間反応させた。冷却後、この反応混合物に希塩酸を加
え、反応生成物をトルエンで抽出した。抽出液を希塩
酸、飽和酸性亜硫酸ナトリウム水溶液、飽和炭酸水素ナ
トリウム水溶液、飽和食塩水で順次洗浄し、次いで乾燥
した後、溶媒を留去して、反応粗生成物を得た。
この反応粗生成物をシリカゲルカラムクロマトグラフ
ィーによって精製した後、n−ヘキサンとエタノールの
混合溶媒から再結晶させて精製し、下記の2種類の化合
物の混合物4.2g(0.011モル)を得た。(収率50%) この混合物は、240〜285℃の間でネマチック相を示し
た。
この混合物を高速液体クロマトグラフィーを使用して
分離した後、分離した化合物をn−ヘキサンとエタノー
ルの混合溶媒から各々再結晶させて精製し、下記化合物
を各々得た。
実施例2 実施例1において、 で表わされる化合物に代えて、 で表わされる化合物31.5gを使用し、 で表わされる化合物に代えて、 を使用した以外は、実施例1と同様にして下記の2種類
の化合物の混合物を得た。
この混合物は、148〜236℃の間でネマチック相を示し
た。
この混合物を実施例1と同様にして分離・精製し、下
記化合物を各々得た。
〔発明の効果〕 本発明に係わる式(I)の化合物は、高い温度領域に
ネマチック相を有し、かつネマチック温度範囲の下限
が、類似構造を有する公知化合物に比べて低い。従っ
て、本発明に係わる式(I)の化合物を、現在母体液晶
として実用的に汎用されているネマチック混合液晶に混
合することによって、混合液晶のN−I点を上昇させる
ことができ、かつ低温領域で混合液晶に結晶相又はスメ
クチック相が現出することを防止することができる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 C07C 35/21 9155−4H C07C 35/21 35/50 9155−4H 35/50 49/675 9049−4H 49/675 49/697 9049−4H 49/697 49/753 9049−4H 49/753 C C07D 317/72 C07D 317/72 C07F 7/18 C07F 7/18 D E G G02F 1/13 500 G02F 1/13 500

Claims (5)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】一般式(I) (式中、Rは炭素原子数1〜9の直鎖状アルキル基を表
    わし、 を表わし、Yは水素原子又はフッ素原子を表わす。Yが
    水素原子である場合にはXはフッ素原子、塩素原子、炭
    素原子数1〜9の直鎖状アルキル基又はアルコキシル基
    を表わし、Yがフッ素原子である場合にはXはフッ素原
    子を表わす。シクロヘキサン環はトランス配置であ
    る。) で表わされる化合物。
  2. 【請求項2】 である請求項1記載の化合物。
  3. 【請求項3】Xが炭素原子数1〜9の直鎖状アルキル基
    であり、Yは水素原子である請求項1記載の化合物。
  4. 【請求項4】X及びYが共にフッ素原子である請求項1
    記載の化合物。
  5. 【請求項5】請求項1、2、3又は4記載の化合物を含
    有するネマチック液晶組成物。
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