JP2614610B2 - 親水性粘着剤組成物 - Google Patents

親水性粘着剤組成物

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JP2614610B2 JP61293760A JP29376086A JP2614610B2 JP 2614610 B2 JP2614610 B2 JP 2614610B2 JP 61293760 A JP61293760 A JP 61293760A JP 29376086 A JP29376086 A JP 29376086A JP 2614610 B2 JP2614610 B2 JP 2614610B2
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Description

【発明の詳細な説明】 (産業上の利用分野) 本発明は,例えば口腔粘膜に用いられる粘着剤,特に
耐湿性・耐水性と水溶解性とのバランスが良好な親水性
粘着剤組成物に関する。
(従来の技術) 親水性を有する粘着剤組成物は,粘着テープ,粘着シ
ートや各種表示用ラベル,ステッカーなど文具用,表示
用,工業用の製品として広く利用されている。これら製
品は,湿った表面にも貼付し得るうえに水により容易に
剥離できる。他方,口腔内粘膜の傷部や疾患(口内炎,
口唇炎,舌炎,智歯周囲炎,歯槽膿漏,歯肉炎など)部
分に貼付してその箇所を保護し治療するための製剤;お
よび口腔内粘膜を通して薬物を吸収させ全身的治療効果
を得るための製剤にも親水性粘着剤組成物が用いられ
る。
親水性粘着剤組成物には,例えば,ヒドロキシプロピ
ルセルロースとアクリル酸(共)重合体またはその塩と
を含有する組成物(特公昭58−7605号公報に開示)があ
る。口腔内粘膜に用いられる親水性粘着剤組成物とし
て,例えば,特開昭59−196814号公報には,ニフェジピ
ンを薬物として含有する粘着剤層が支持体上に形成され
たシート状ニフェジピン製剤が開示されている。この薬
剤に用いられる粘着剤は,ゼラチンまたは寒天;グルテ
ン;カルボキシビニルポリマー;多価アルコール;およ
び酢酸ビニル樹脂またはガム類を含む。特開昭59−2325
53号公報には,ポリエステルなどのプラスチックフィル
ム表面に粘着剤層が形成された粘膜用包帯が開示されて
いる。この粘着剤としては,アクリル酸(共)重合体も
しくはその水溶性塩;カルボキシメチルセルロースナト
リウム,アルギン酸ナトリウムおよびヒドロキシエチル
セルロースのうちの少なくとも一種;そしてグリセリン
および/またはプロピレングリコールを主成分とする。
特開昭60−215622号公報には薬物を含む口腔粘膜用徐放
性製剤が開示されている。その基剤(粘着剤)としては
ポリビニルピロリドン,ポリビニルアルコール,ポリエ
チレングリコール,アルギン酸またはその塩,および無
水マレイン酸とメチルビニルエーテルとの交互共重合体
でなる群から選択される少なくとも一種のポリマーと,
アクリル酸(共)重合体またはその塩との混合物が開示
されている。
しかし,これらの組成物は,耐湿性・耐水性と水溶解
性とのバランスが悪い。従って,耐湿性・耐水性に欠け
る場合には,水に濡れた状態で速やかに水に溶解して粘
着性を失う。他方,水溶解性に欠けると,水に濡れても
粘着性・接着性を有しなくなる。例えば,特開昭58−10
9059号公報に開示の組成物や特開昭60−215622号公報に
開示の組成物は,いずれも水に溶解しやすいか水により
崩壊しやすいため,口腔内に長時間(例えば1時間以
上)保持することが困難である。
(発明が解決しようとする問題点) 本発明は上記従来の問題点を解決するものであり,そ
の目的とするところは,耐湿性・耐水性と水溶解性との
バランスが良好な親水性粘着剤組成物を提供することに
ある。本発明の他の目的は,水により溶解もしくは流動
しにくい親水性粘着剤組成物を提供することにある。本
発明のさらに他の目的は,水に濡れても粘着性・接着性
を失わない親水性粘着剤組成物を提供することにある。
本発明のさらに他の目的は,人体に毒性や刺激性を有し
ない親水性粘着剤組成物を提供することにある。
(問題点を解決するための手段) 本発明は,水およびアルコールに可溶のポリマーと軟
化剤とを配合することにより,一定の粘着性を有する粘
着剤組成物が得られる,この組成物に,さらに水に不溶
かつアルコールに可溶のポリマーを加えると,耐湿性・
耐水性と水溶解性とのバランスに優れた親水性粘着剤組
成物が調製され得る,との発明者の知見にもとづいて完
成された。
本発明の親水性粘着剤組成物は,水およびアルコール
に可溶のポリマー(A),水に不溶かつアルコールに可
溶のポリマー(B),および軟化剤を含有する親水性粘
着剤組成物であって,前記ポリマー(A)が,ポリビニ
ルピロリドンおよび/またはビニルピロリドン−酢酸ビ
ニル共重合体であり,前記ポリマー(B)が,エチルセ
ルロースであり,そのことにより上記目的が達成され
る。
上記ポリマー(A)と上記ポリマー(B)との重量比
は90:10から40:60の範囲であり,かつ両者の合計量を10
0重量部としたときに,上記軟化剤が10〜100重量部の割
合で含有される。ポリマー(A)の量が上記範囲よりも
過大であると,得られた親水性粘着剤組成物の耐湿性・
耐水性が低下する。それゆえ,吸湿(水)により容易に
軟化し流動性を有するようになる。逆にポリマー(B)
が過剰であり,ポリマー(A)が過少であると,粘着性
が低く使用に供し得ない。軟化剤の量は,これらポリマ
ー(A)とポリマー(B)との合計量を基準として決定
される。この軟化剤の量が過少であると,粘着性そのも
のが発現されず,過剰であると,粘着性は向上するが過
度に軟化し流動性を有するようになる。
水およびアルコールに可溶のポリマー(A)は,ポリ
ビニルピロリドンおよび/またはビニルピロリドン−酢
酸ビニル共重合体に限定されるが,このポリマー(A)
の市販品には,例えば,Kollidon−90(ポリビニルピロ
リドン,重量平均分子量1100000,BASF社製),Kollidon
−30(ポリビニルピロリドン,重量平均分子量49000,BA
SF社製),Kollidon VA 64(ビニルピロリドン−酢酸ビ
ニル共重合体(60/40重量比),BAFS社製),Plasdon 3
0(ポリビニルピロリドン,重量平均分子量約50000,GAF
社製)がある。
ポリマー(B)は,水に不溶かつアルコールに可溶で
あり,親水性基(例えばOH基)を有するものであり,エ
チルセルロースに限定される。このポリマー(B)の市
販品には,エトセルSTD−10(溶液の平均粘度10cp,日新
化成社製),エトセルSTD−45(溶液の平均粘度45cp,日
新化成社製),エトセルSTD−100(溶液の平均粘度100c
p,日新化成社製)がある。これらは,いずれもエチルセ
ルロースであり,溶液の平均粘度は5%エタノール溶液
による25℃での粘度である。
軟化剤には,例えば,グリセリン,ジグリセリン,ト
リグリセリン,ソルビトール,ソルビトール誘導体があ
る。この軟化剤は,得られた粘着剤組成物に柔軟性,粘
着性を付与するとともに,水溶解性の調整に用いられ
る。この粘着性付与効果は,液体である軟化剤が直接与
える効果と,空気中から該軟化剤に吸収される水による
効果とであると考えられる。この軟化剤とともに,ポリ
エチレングリコール,ポリプロピレングリコール,ポリ
(エチレン・プロピレン)グリコールおよびそれらを主
成分とする界面活性剤が用いられてもよい。
本発明の粘着剤組成物には,上記ポリマー(A),ポ
リマー(B)および軟化剤のほかに,水およびアルコー
ルに不溶なポリマーが含まれていてもよい。また,この
組成物には,さらに,必要に応じて添加剤が加えられ
る。添加剤には,例えば,架橋剤,充填剤,着色剤,香
料,防カビ剤,湿潤剤(転写塗工時における剥離性面の
濡れ性を向上させる)がある。これら添加剤は,得られ
る粘着剤組成物の特性に影響を与えない範囲(約20%以
下)内で加えられる。
本発明の親水性粘着剤組成物は,ポリマー(A),ポ
リマー(B)および軟化剤を含むアルコール(特にエチ
ルアルコール)系で調製される。溶媒として水を用いる
と,ポリマー(B)が溶解せず混合性が悪くなる。アル
コール以外の有機溶媒では,ポリマー(A)が溶解しな
いことが多い。乾燥後に有機溶媒が粘着剤層に残留し
て,有害となるおそれもある。しかし,粘着剤組成物に
少量のアルコール,水またはそれらの混合系を加えて混
練することにより混練物を得てもよい。
このようにして得られる粘着剤組成物は,例えば,そ
れ自身で単層の粘着シートや粘着性成形体に;もしく
は,支持体上に粘着剤層が形成された複層の粘着シート
やテープに調製される。例えば,単層の粘着シートは,
剥離紙上に上記粘着剤組成物の溶液を塗布・流延した
後,乾燥して得られる。混練物の場合には,ロールによ
るカレンダー成形,バッチ式のプレス成形,押出機によ
る押出成形などがある。複層の粘着シートは,上記形成
された剥離紙上の単層粘着シートの粘着剤層上に支持体
となるべきプラスチック(例えばポリエステル)フィル
ムを圧着する方法;プラスチックシートなどの支持体上
に粘着剤組成物の溶液を塗布・乾燥させる方法など通常
の粘着シートの製造方法により調製されうる。塗工方法
には,例えば,転写塗工法がある。支持体は,人体に無
害な材料が用いられる。
(作用) 本発明によれば,このように,耐湿性・耐水性と水溶
解性とのバランスの良好な親水性粘着剤組成物が得られ
る。この粘着剤組成物は,ポリマー(A)および軟化剤
により粘着性・水溶解性に優れた粘着剤組成物とされ,
これにさらにポリマー(B)を加えることにより,水溶
解性と耐湿性・耐水性とが調節される。
ポリマー(A)は粘着性の発現と接着状態の保持に用
いられる。ポリマー(B)は耐湿性・耐水性の向上と接
着状態の保持に有用である。軟化剤は粘着性の発現と柔
軟性の付与により,接着力を高めるとともに保水効果
(過度の水分を安定に保持する)をもたらす。さらに,
水に濡れることによる粘着性を与える。
ポリマー(A)のみまたはポリマー(A)と軟化剤だ
けでは,所望の粘着性は得られるものの,水溶解性が高
すぎ水に濡れると容易に溶解してしまう。他方,ポリマ
ー(B)のみまたはポリマー(B)と軟化剤だけでは,
一旦接着すれば乾燥後も接着状態を保つものの,水を吸
収しないため水に濡れても粘着性が発現しない。
ポリマー(A),ポリマー(B)および軟化剤を適当
な割合で配合することにより,3成分の相乗効果により,
耐湿性・耐水性と水溶解性とのバランスが保たれる。こ
の機構の詳細は不明であるが,おそらくポリマー(A)
と軟化剤とにより得られた優れた粘着性・水溶解性を阻
害することなく,ポリマー(B)の添加により耐湿性・
耐水性を改善し得るためと考えられる。ポリマー(A)
の割合が多くなると,耐湿性・耐水性が低下する。ポリ
マー(B)の割合が多くなると,耐湿性・耐水性は向上
するものの水溶解性が低下し,水に濡れても粘着性・接
着性が得られない。柔軟性も低下するため,口腔内粘膜
などの部位には適用できない。軟化剤が多くなると,耐
湿性・耐水性が低下するうえに過度に柔軟性が付与され
たり軟化剤が浸み出すおそれがある。
(実施例) 以下に本発明を実施例について述べる。
実施例1 (1)粘着剤組成物の調製 ポリビニルピロリドン(Kollidon 90,BASF社製)の
24%エチルアルコール溶液,およびエチルセルロース
(エトセルSTD−45,日新化成社製)の12%エチルアルコ
ール溶液を調製した。これらとグリセリンとを下記の割
合で混合し,親水性粘着剤組成物の約24%エチルアルコ
ール溶液を得た。
ポリビニルピロリドン 60重量部 エチルセルロース 40重量部 グリセリン 50重量部 (2)粘着剤皮膜の作製 (1)で得られた粘着剤組成物の溶液を,転写塗工法
により,表面がシリコーン剥離性の台紙上に,乾燥後の
厚さが約200μmとなるように塗布,乾燥した。
(3)粘着剤皮膜の評価 (2)で得られた粘着剤皮膜の外観を評価した。その
結果,乳白色で半透明の外観を呈し,柔軟性を有してい
た。しかも,湿度に応じて適度な吸湿状態で平衡に達
し,わずかな粘着性を与えた。この粘着剤皮膜を2cm×2
cmの試料に裁断し,その物性を次のように評価した。こ
れらの結果を下表に示す。
(a)乾燥状態での接着力 粘着剤皮膜の試料を厚さ約1.5cmのラワン材(被接着
体)2枚の間にはさみ,2kgの荷重を1分間かけて接合体
(試験片)を形成した。この場合,試料の両面およびラ
ワン材の接着面は,水の噴霧により軽く湿潤させた(試
料の水の吸着量は全重量の約2%)。この試験片を80℃
のオーブン中で1時間乾燥した後,引張り試験機によ
り,2枚のラワン材を互いに反対方向に引張って接着力を
測定した。その結果,接着力は8.4kg(21℃,60%R.H.)
であった。試験後の接着面には界面破壊が生じた。
(b)湿潤状態での接着力 (a)で形成した乾燥状態の試験片を40℃,80%R.H.
にて24時間放置した後,(a)と同様の方法により接着
力を測定した。その結果,接着力は6.8kg(21℃,60%R.
H.)であった。試験後の接着面には主として界面破壊が
生じた。
(c)浸水保持時間 (a)で形成した試験片の一方のラワン材部分を,水
を入れた容器中の底面に接するように固定した状態で水
中に浸漬した。水の作用によって接着破壊が生じ,他方
のラワン材が浮上するまでの時間を浸水保持時間とし
た。その結果,浸水保持時間は4.5〜5.0時間であった。
試験後の接着面には,主として界面破壊が生じた。
(d)口腔粘膜保持時間 (2)で得られた粘着剤皮膜を1cm×2cmに切断した
後,上前歯の前方歯肉部分に貼付した。貼付後,剥脱ま
たは溶解消失までの時間を口腔粘膜保持時間とした。そ
の結果,口腔粘膜保持時間は2.0〜2.5時間であった。試
験後の貼付面は分散消失した。
実施例2 (1)粘着剤組成物の調製 ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体(Kollidon V
A−64,BASF社製)の35%エチルアルコール溶液,および
エチルセルロース(エトセルSTD−10,日新化成社製)の
18%エチルアルコール溶液を調製した。これらとソルビ
トールおよびソルビタンモノラウレート(ソルゲン−9
0,第一工業製薬社製)とを下記の割合で混合し,親水性
粘着剤組成物の約36%エチルアルコール溶液を得た。
ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体 75重量部 エチルセルロース 25重量部 ソルビトール 10重量部 ソルビタンモノラウレート 30重量部 (2)粘着剤皮膜の作製および評価 (1)で得られた粘着剤組成物の溶液を用いて,実施
例1と同様の方法により粘着剤皮膜を作製した。この粘
着剤皮膜の外観を評価したところ,乳白色で半透明の外
観を呈し,柔軟性を有していた。しかも,室内に放置し
ても状態の変化は認められなかった。この粘着剤皮膜を
用いて,実施例1と同様の方法により物性を評価したと
ころ,乾燥状態での接着力は6.3kg(21℃,60%R.H.,界
面破壊),湿潤状態での接着力は5.4kg(21℃,65%R.
H.,主として凝集破壊),浸水保持時間は3.5〜4.0時間
(主として凝集破壊),そして口腔粘膜保持時間は1.5
〜2.0時間(分散消失)であった。
実施例3 (1)粘着剤組成物の調製 ポリビニルピロリドン(Plasdon 30,GAF社製)の30
%エチルアルコール溶液,ビニルピロリドン−酢酸ビニ
ル共重合体(Kollidon VA−64,BASF社製)の35%エチル
アルコール溶液,およびエチルセルロース(エトセルST
D−100,日新化成社製)の10%エチルアルコール溶液を
調製した。これらとジグリセリンおよびソルビトールと
を下記の割合で混合し,親水性粘着剤組成物の約32%エ
チルアルコール溶液を得た。
ポリビニルピロリドン 70重量部 ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体 15重量部 エチルセルロース 15重量部 ジグリセリン 30重量部 ソルビトール 20重量部 (2)粘着剤皮膜の作製および評価 (1)で得られた粘着剤組成物の溶液を用いて,実施
例1と同様の方法により粘着剤皮膜を作製した。この粘
着剤皮膜の外観を評価したところ,透明に近く柔軟性を
有していた。しかも湿度に応じて適度な吸湿状態で平衡
に達し,わずかな粘着性を与えた。この粘着剤皮膜を用
いて,実施例1と同様の方法により物性を評価したとこ
ろ,乾燥状態での接着力は7.2kg(21℃,60%R.H.,界面
破壊),湿潤状態での接着力は4.7kg(21℃,60%R.H.,
主として凝集破壊),浸水保持時間は2.0〜2.5時間(主
として凝集破壊),そして口腔粘膜保持時間は1.0〜1.5
時間(分散消失)であった。
比較例1 実施例1においてエチルセルロースを用いず,ポリビ
ニルピロリドンの24%エチルアルコール溶液とグリセリ
ンとを下記の割合で混合し,約34%のエチルアルコール
溶液を得た。
ポリビニルピロリドン 100重量部 グリセリン 60重量部 得られた粘着剤組成物の溶液を用いて,実施例1と同
様の方法により粘着剤皮膜を作製した。この粘着剤皮膜
の外観を評価したところ,透明な外観を呈し,柔軟性を
有していた。しかし,室内に放置すると軟化していき,
指触試験でも指先に移行した。この粘着剤皮膜を用い
て,実施例1と同様の方法により物性を評価したとこ
ろ,乾燥状態での接着力は8.7kg(21℃,60%R.H.,界面
破壊),湿潤状態での接着力は3.3kg(21℃,60%R.H.,
凝集破壊),浸水保持時間は1.5〜2.0時間(凝集破
壊),そして口腔粘膜保持時間は0.5〜1.0時間(分散消
失)であった。
比較例2 実施例1においてポリビニルピロリドンを用いず,エ
チルセルロースの12%エチルアルコール溶液とグリセリ
ンとを下記の割合で混合し,約17%のエチルアルコール
溶液を得た。
エチルセルロース 100重量部 グリセリン 50重量部 得られた粘着剤組成物の溶液を用いて,実施例1と同
様の方法により粘着剤皮膜を作製した。この粘着剤皮膜
の外観を評価したところ,皮膜は硬くてもろく,全体的
に白色化した模様を与えた。これは,混合成分どうしの
相溶性が少ないことを示す。この粘着剤皮膜を用いて,
実施例1と同様の方法により物性の評価を試みたもの
の,粘着剤皮膜とラワン材との接着が不能であり,評価
し得なかった。
比較例3 実施例2においてエチルセルロースを用いず,ビニル
ピロリドン−酢酸ビニル共重合体の35%エチルアルコー
ル溶液,ソルビトールおよびソルビタンモノラウレート
を下記の割合で混合し,約43%のエチルアルコール溶液
を得た。
ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体 100重量部 ソルビトール 10重量部 ソルビタンモノラウレート 30重量部 得られた粘着剤組成物の溶液を用いて,実施例1と同
様の方法により粘着剤皮膜を作製した。この粘着剤皮膜
の外観を評価したところ,透明で柔軟性を有し,室内に
放置しても変化は見られず,わずかに粘着性が発現し
た。この粘着剤皮膜を用いて,実施例1と同様の方法に
より物性を評価したところ,乾燥状態での接着力は6.5k
g(21℃,60%R.H.,界面破壊),湿潤状態での接着力は
4.1kg(21℃,65%R.H.,凝集破壊),浸水保持時間は2.0
〜2.5時間(凝集破壊),そして口腔粘膜保持時間は0.5
〜1.0時間(溶解消失)であった。
比較例4 実施例2においてビニルピロリドン−酢酸ビニル共重
合体を用いず,エチルセルロースの18%エチルアルコー
ル溶液,ソルビトールおよびソルビタンモノラウレート
を下記の割合で混合し,約24%のエチルアルコール溶液
を得た。
エチルセルロース 100重量部 ソルビトール 10重量部 ソルビタンモノラウレート 30重量部 得られた粘着剤組成物の溶液を用いて,実施例1と同
様の方法により粘着剤皮膜を作製した。この粘着剤皮膜
の外観を評価したところ,皮膜はわずかに柔軟性を有し
ているものの,実施例2の皮膜に比べて非常に硬くかつ
もろかった。この粘着剤皮膜を用いて,実施例1と同様
の方法により物性の評価を試みたものの,皮膜とラワン
材との接着が不能であり,評価し得なかった。
比較例5 実施例3においてエチルセルロースを用いず,ポリビ
ニルピロリドンの30%エチルアルコール溶液,ビニルピ
ロリドン−酢酸ビニル共重合体の35%エチルアルコール
溶液,ジグリセリンおよびソルビトールを下記の割合で
混合し,約40%のエチルアルコール溶液を得た。
ポリビニルピロリドン 80重量部 ビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体 20重量部 ジグリセリン 30重量部 ソルビトール 20重量部 得られた粘着剤組成物の溶液を用いて,実施例1と同
様の方法により粘着剤皮膜を作製した。この皮膜の外観
を評価したところ,透明で柔軟性を有していた。しか
も,湿度に応じて吸湿により粘着性を増し,平衡状態に
達した。この粘着剤皮膜を用いて,実施例1と同様の方
法により物性を評価したところ,乾燥状態での接着力は
7.3kg(21℃,60%R.H.,界面破壊),湿潤状態での接着
力は3.6kg(21℃,60%R.H.,凝集破壊),浸水保持時間
は1.5〜2.0時間(凝集破壊),そして口腔粘膜保持時間
は0.5〜1.0時間(溶解消失)であった。
比較例6 実施例3においてポリビニルピロリドンおよびビニル
ピロリドン−酢酸ビニル共重合体を用いず,エチルセル
ロースの10%エチルアルコール溶液,ジグリセリンおよ
びソルビトールを下記の割合で混合し,約14%のエチル
アルコール溶液を得た。
エチルセルロース 100重量部 ジグリセリン 30重量部 ソルビトール 20重量部 得られた粘着剤組成物の溶液を用いて,実施例1と同
様の方法により粘着剤皮膜を作製した。この粘着剤皮膜
の外観を評価したところ,皮膜は硬くてややもろく,部
分的に白色化しており,相溶性が不良であることを示し
た。この粘着剤皮膜を用いて,実施例1と同様の方法に
より物性の評価を試みたものの,粘着剤皮膜とラワン材
との接着が不良であり,評価し得なかった。
実施例および比較例から明らかなように,本発明の親
水性粘着剤組成物は,乾燥状態および湿潤状態のいずれ
においても接着力に優れている。浸水保持時間や口腔粘
膜保持時間も長く,耐湿性,耐水性が良好である。エチ
ルセルロースを含有しない粘着剤組成物は,接着力は得
られるものの,耐湿性,耐水性に欠ける。ポリビニルピ
ロリドンやビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体を含
有しない粘着剤組成物は,粘着性が不良である。
(発明の効果) 本発明の親水性粘着剤組成物は,このように,耐湿性
・耐水性と水溶解性とのバランスが良好である。水によ
り溶解もしくは流動しにくいうえに,水に濡れても粘着
性・接着性を失わない。それゆえ,この組成物を用い
て,例えば,口腔粘膜用の絆創膏を作製し,これを患部
に貼付しても,長期間にわたり剥脱しない。他の医療用
絆創膏や粘着テープ,粘着シートとしても,濡れた表面
や高湿度の環境下でも容易に粘着する。人体に毒性や刺
激性を有しないうえに,安価にて得られる。
このようなことから,本発明の親水性粘着剤組成物
は,口腔粘膜用の絆創膏や粘着テープ,粘着シート,他
の医療用絆創膏などに好適に用いられる。
───────────────────────────────────────────────────── フロントページの続き (51)Int.Cl.6 識別記号 庁内整理番号 FI 技術表示箇所 (C09J 139/06 131:04 101:28)

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】水およびアルコールに可溶のポリマー
    (A),水に不溶かつアルコールに可溶のポリマー
    (B),および軟化剤を含有する親水性粘着剤組成物で
    あって,前記ポリマー(A)が,ポリビニルピロリドン
    および/またはビニルピロリドン−酢酸ビニル共重合体
    であり,前記ポリマー(B)が,エチルセルロースであ
    る親水性粘着剤組成物。
  2. 【請求項2】前記軟化剤が,グリセリン,ジグリセリ
    ン,トリグリセリン,ソルビトールおよびソルビトール
    誘導体のうちの少なくとも一種である特許請求の範囲第
    1項に記載の親水性粘着剤組成物。
  3. 【請求項3】前記ポリマー(A)と前記ポリマー(B)
    との重量比が90:10から40:60の範囲であり,かつ両者の
    合計量を100重量部としたときに,前記軟化剤が10〜100
    重量部の割合で含有される特許請求の範囲第1項に記載
    の親水性粘着剤組成物。
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