JP2583496B2 - パン・菓子類の製造法 - Google Patents

パン・菓子類の製造法

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Description

【発明の詳細な説明】 (産業技術分野) 本発明は、特に米菓、スナック類或いはクッキー等の
焼菓子にチョコレート類を載置して加熱処理したとき、
チョコレート類の表面が膜を張った如く硬化して手に付
着しないにも拘わらずチョコレート類内部は軟らかく、
且つ加熱処理後のチョコレート類が耐熱性を有するとい
う、チョコレート類を被覆したパン・菓子類の製造法に
関する。
(従来技術) 従来、表面をチョコレートで被覆したパン類或いはク
ッキー等の焼菓子類が市販されているが、通常これらの
パン・菓子類は融解したチョコレートを必要によりテン
パリング処理して菓子類の表面に被覆し、冷却固化して
製造されてきた。このようにして製造されたパン・菓子
類は、保存中油脂の融点以上の温度になるとチョコレー
トが融解し、べとついて指に付着したり包装紙を汚した
りする等の欠点を有する。さらに一旦融解したチョコレ
ートは再び固化させてもブルーム現象を生じ、商品価値
を著しく損なう。
近年、上記欠点を解決する方法として、チョコレート
生地等の油脂性菓子生地を80℃以上にて数秒から数十分
間加熱し固化させることにより耐熱性の優れた油脂性菓
子生地を製造する方法が提案された(特公昭55−9174
号、同60−13654号)。上記方法によれば油脂性菓子生
地が加熱により固化するのは、「蛋白質の変性、水分の
放出、糖粒子表面の溶解などの現象が起こり、油脂中に
微粒子状に分散している糖、蛋白、繊維などの表面状態
が変化し、粒子相互の親和力が増加するに従い、構造粘
性が増し、さらに粒子相互の間に架橋構造が生じると思
われる。この加熱による架橋構造は油脂性菓子生地を固
化し、一定の形を保った製品とすると共に、油脂を架橋
構造の網目の中に入れ外へ出難くするため、製品の熱耐
久性が増加し、フアットブルームを生ずるのを防ぐと推
定される。」と説明されている。
このように、加熱によりチョコレートは固化するが、
固化の状態は全体が均一であって、高温長時間の加熱で
は硬くてパリパリとした食感を呈しチョコレート本来の
食感が喪失される。逆に低温短時間では充分固化せず軟
らかくて手にべとついたり耐熱性が得られなかったりす
る。
(本発明の解決課題;目的) 本発明は、チョコレート類をパン・菓子類に載置した
後加熱処理したとき、該チョコレート類の表面はべとつ
かないにも拘わらず内部はソフトなチョコレートの食感
が保持されるという、チョコレート類を被覆したパン・
菓子類を製造する方法を提供することを目的とするもの
である。
(課題解決手段;構成) 本発明者は、パン・菓子類を被覆するのに適したチョ
コレート類の開発を研究する過程において、HLB1以下の
蔗糖脂肪酸エステルを含有したチョコレート類を加熱処
理したものは、表面が硬化しているにも拘わらず、チョ
コレート内部は軟らかくソフトな状態が保持されている
という、意外な特性を有するという知見を得た。本発明
は、かかる知見に基づいて完成されたものである。
即ち本発明は、任意形状を呈した、HLB1以下の庶糖脂
肪酸エステルを含有するチョコレート類をパン・菓子類
に載置した後、加熱処理することを特徴とする、チョコ
レート類を被覆したパン・菓子類の製造法、である。
以下、本発明について詳述する。
先ず、本発明におけるチョコレート類を製造するに
は、従来公知のチョコレート原材料とHLB1以下の蔗糖脂
肪酸エステルとを用い公知のチョコレート製造法に準じ
て製造すればよく、例えばカカオ脂又はこれに類するテ
ンパリング型のハードバターを使用したチョコレートの
場合は、該蔗糖脂肪酸エステルの所定量を添加したチョ
コレート原材料の混合をロール掛け、コンチング及びテ
ンパリング処理した後急冷固化することにより、またノ
ーテンパー型のハードバターを使用したチョコレート或
いは可塑性範囲の広い油脂を使用した洋生用オーティン
グチョコレートの場合では、同様に該蔗糖脂肪酸エステ
ルの所定量を添加したチョコレート原材料の混合物をロ
ール掛け、コンチングした後テンパリング処理すること
なく、急冷固化することによって容易に得られる。本発
明においては、上記チョコレート類のうち特に後者の可
塑性範囲の広い油脂を用いたソフトなチョコレート類が
好ましく、従来マーガリンやショートニングに使用され
てきた可塑性範囲の広い油脂を使用するのが好ましい。
チョコレート中の油脂含量は33〜38重量%が適当であ
る。
本発明によれば、HLB1以下の蔗糖脂肪酸エステルは、
チョコレート類を製造するいずれかの工程中で添加すれ
ばよいが、通常は油脂中に添加するのがよい。該蔗糖脂
肪酸エステルの添加量は、チョコレート全量に対し0.01
〜10重量%、好ましくは0.1〜1重量%であるのが適当
である。上記下限未満では効果を得難く、上限を越えて
添加することは経済的に得策でない。
このようなチョコレート類を被覆して菓子類を製造す
るには、融解した、要すればテンパリング処理したチョ
コレート類をデポジッター等適当な手段を用いて菓子類
にコーティングして加熱処理してもよいが、予めそれぞ
れの菓子類の大きさに固化させたチョコレート類を調製
しておき、それを菓子類の上に乗せて加熱処理するとい
う方法が簡単であって作業性の点で有利である。この場
合、チョコレートの大きさは丸型、正方形、長方形或い
は三角形等それぞれの菓子類に合った形状に調製してお
けばよく、一般的には重量0.5〜10g厚さ2〜10mm程度好
ましくは3〜5mm程度に調製したものが良いようであ
る。しかしながら、これらの形状及び厚みは任意であっ
て適宜決定すればよい。このようにして調整した菓子類
とチョコレート類との一体化物を140〜150℃に5〜10分
間加熱した後常温に冷却することによって、チョコレー
ト類の表面が膜を張った如く硬化して手に付着しないに
も拘わらず、チョコレート類の内部は加熱前の軟らかさ
を保持したチョコレート被覆菓子類が容易に得られるの
である。しかもこのように一旦加熱処理したチョコレー
ト類は、それを約40℃に放置しておいても融解すること
がないために、夏季においても充分気温に耐え得る耐熱
性を有する。因に、何故HLB以下の蔗糖脂肪酸エステル
を含有したチョコレート類が、このような特性を有する
のかについて詳細には説明できないが、該庶糖脂肪酸エ
ステルは約60℃以上の温度で硬化するという、他の乳化
剤には見られない特性を有し、かかる蔗糖脂肪酸エステ
ルを含有したチョコレート類は、熱による該チョコレー
トの表面部分のみが局部的に素早く変化するためと考え
られる。
本発明においては、チョコレート類が通常のダークチ
ョコレートの他に種々の色彩を呈したカラーチョコレー
トであってもよく、例えばオレンジ、レモン、苺等の果
実類或いはヘーゼルナッツ、ピーナッツ、アーモンド等
のナッツ類ペースト等を配合して得られる、種々の色調
及び風味を有するチョコレート類が被覆された菓子類は
美観を呈し、風味とあいまって一段と食欲をそそるもの
である。
被覆を対象とするパン・菓子類は、例えば各種パン
類、米菓、スナック、ビスケット、クッキー、洋菓子等
各種の焼菓子類に適応できる。
なお、本発明においてチョコレート類とは、法規上の
制約を受けるものではなく、カカオ脂以外の他のハード
バター或いは可塑性範囲の広い油脂を使用した一切のチ
ョコレート類及び油脂加工食品を包含するものである。
(実施例) 以下に、製造例を例示して本発明の効果をより一層明
確にするが、これは例示であって本発明の精神がかかる
例示によって限定されるものでないことは言うまでもな
い。なお、以下に示す部は重量基準を意味する。
製造例1 ダークチョコレート 配合量(部) カカオマス 8 ココア 5 全脂粉乳 14 マルトース 5 砂糖 35 油脂* 33 蔗糖脂肪酸エステル(HLB 1以下) 0.5 レシチン 0.2 香料 0.1 *油脂配合 大豆硬化油(Mp.35℃) 17部 菜種油 80部 菜種極度硬化油 3部 上記配合量の混合物を常法どおりロール掛け、コンチ
ング処理した後、型に流し冷却固化して、直径50mmの円
形状で厚さ約4mm(約2g)のチョコレートを調製した。
このチョコレートを直径約60mmの米菓センベイの上部に
乗せ、約140℃に7分間加熱した後常温まで冷却した。
かくして、米菓の上部にコーティングされたチョコレー
トの表面は膜が張った如く硬化していて手に付着するこ
とがないにも拘わらず、チョコレート内部は軟らかくて
良好な食感を呈していた。また、このチョコレートをコ
ーティングした米菓を40℃に放置しておいても融解して
べとつくようなことがなく耐熱性を有していた。
比較のため、HLB値が5の蔗糖脂肪酸エステルを使用
して同様に調製したチョコレートで実施したところ、加
熱時に融解し、且つ冷却後40℃に放置したものはべとつ
いて耐熱性のないものであった。
製造例2 ホワイトチョコレート 配合量(部) 乳糖 6 脱脂粉乳 11 全脂粉乳 12 マレトース 5 砂糖 31 油脂(製造例1と同じ) 35 蔗糖脂肪酸エステル(HLB 1以下) 0.5 レシチン 0.2 香料 0.1 上記配合量の混合物を常法どおりロール掛け、コンチ
ング処理した後、型に流し冷却固化して、縦35mm横45mm
で厚さ約5mmのチョコレートを調製した。このチョコレ
ートを縦40mm横50mmのビスケット上部に乗せ、約140℃
に8分間加熱した後常温まで冷却した。かくして、ビス
ケット上部にコーティングされたチョコレートの表面は
膜が張った如く硬化していて手に付着することがないに
も拘わらず、チョコレート内部は軟らかくて良好な食感
を呈していた。また、このビスケットを40℃に放置して
おいても融解してべとつくようなことがなく耐熱性を有
していた。
比較のため、蔗糖脂肪酸エステルを使用せずレシチン
のみを使用して同様に調製したチョコレートで実施した
ところ、加熱時に融解し、且つ冷却後40℃に放置したも
のはべとついて耐熱性のないものであった。
(効果) 以上の如く、チョコレート類で被覆した米菓、ビスケ
ット、クッキー等の菓子類を製造するに際し、HLB1以下
の蔗糖脂肪酸エステルを含有するチョコレート類を使用
して加熱処理することにより、チョコレート類の表面が
膜を張った如く硬化して手に付着しないにも拘わらず、
チョコレート類の内部は加熱前の軟らかさを保持した製
品が得られ、しかもこのように加熱処理したチョコレー
ト類を約40℃に放置しておいても溶解することがないと
いう著しい耐熱性を有したチョコレート類が得られると
いう硬化を有するのである。

Claims (3)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】任意形状を呈した、HLB1以下の庶糖脂肪酸
    エステルを含有するチョコレート類をパン・菓子類に載
    置した後、加熱処理することを特徴とする、チョコレー
    ト類を被覆したパン・菓子類の製造法。
  2. 【請求項2】HLB1以下の蔗糖脂肪酸エステル含有量が、
    チョコレート類全量に対し0.01〜10重量%である、特許
    請求の範囲第(1)項記載の製造法。
  3. 【請求項3】チョコレート類が、重量0.5〜10gで厚さ2
    〜10mmの任意形状を呈している、特許請求の範囲第
    (1)項又は第(2)項に記載の製造法。
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