JP2554046B2 - 可溶性芳香族ポリイミド組成物 - Google Patents

可溶性芳香族ポリイミド組成物

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Description

【発明の詳細な説明】 〔産業上の利用分野〕 この発明は、特定のビフェニルテトラカルボン酸又は
その二無水物を主成分とする芳香族テトラカルボン酸成
分と、特定の多環芳香族ジアミン及び特定の官能基を有
する芳香族ジアミンからなる芳香族ジアミン成分とを、
重合及びイミド化して得られた有機極性溶媒に可溶性で
ある耐熱性の芳香族ポリイミドが、ホルムアミド系溶
媒、アセトアミド系溶媒あるいはピロリドン系溶媒に均
一に溶解している電気絶縁性被覆層形成用の可溶性芳香
族ポリイミド組成物(ワニス)に関するものであり、種
々の無機又は金属材料等の表面に塗布し、その塗布層を
乾燥及び加熱処理することにより、密着性に優れている
と共に光透過性(無色透明性)に優れた耐熱性の電気絶
縁性被覆層(薄膜層)を形成することができ、特に液晶
配向膜の形成材料として好適なものである。
〔従来の技術及び問題点〕
ポリイミドは、耐熱性及び電気絶縁性等の優れた性質
を有しており、電気又は電子材料工業等において、電気
絶縁性の保護膜(固体素子への絶縁膜、パッシベーショ
ン膜、半導体集積回路などの層間絶縁膜、液晶配向膜
等)の形成材料として用いられている。
一般的に、ポリイミドは、有機極性溶媒に溶解し難い
ため、上記の用途に供するためには、ポリイミドの前駆
体(ポリアミック酸)の溶液を使用して、塗布膜を形成
し、次いで、該塗布膜を、乾燥とイミド化のためにかな
りの高温で長時間、加熱処理して、ポリイミド製の保護
膜を形成する必要があり、比較的低温ではポリイミド製
の保護膜を再現性よく形成できるものではなかったの
で、ポリイミド製の保護膜で保護すべき電気(電子)材
料自体を熱的に劣化させてしまうという問題点がある。
一方、有機極性溶媒に可溶性のポリイミドもあるが、
この種の従来公知のポリイミドは、極めて特殊な溶媒に
しか溶けなかったり、或いは有機極性溶媒に対する溶解
性が劣るため、溶解に長時間を要し且つ均一に溶解しな
い等の問題点がある。
また、従来公知のポリイミドにより形成された保護膜
は、ガラスやアルミニウム等の無機又は金属等の基板に
対する密着性が不充分であり、従って電気絶縁性が劣る
という問題点がある。
更に、従来公知のポリイミドは、光透過性(無色透明
性)が悪く、一般に黄色に着色しており、着色を嫌う被
覆用の電気絶縁用途には使用しにくいという問題点があ
る。
〔問題点を解決するための手段〕
この発明者等は、上述の問題点を解決したポリイミド
を提供すべく鋭意研究した結果、特定のビフェニルテト
ラカルボン酸又はその酸二無水物を主成分とする芳香族
テトラカルボン酸成分と、特定の多環芳香族ジアミン及
び特定の官能基を有する芳香族ジアミンからなる芳香族
ジアミン成分とを、重合及びイミド化して得られた芳香
族ポリイミドが、ホルムアミド系溶媒、アセトアミド系
溶媒あるいはピロリドン系溶媒である有機極性溶媒に対
する溶解性に優れており、且つ無機又は金属等の基板に
対する密着性に優れているとともに耐熱性の電気絶縁性
被覆層(薄膜層)を形成することができることを見出し
この発明を完成した。
すなわち、この発明は、2,3,3′,4′−ビフェニルテ
トラカルボン酸又はその二無水物を70モル%以上含有す
る芳香族テトラトカルボン酸成分と、ビス(4−アミノ
フェノキシフェニル)スルホン、2,2−ジ(4−アミノ
フェノキシフェニル)プロパン、あるいは9,10−ビス
(4−アミノフェニル)アントラセンである多環芳香族
ジアミン25〜80モル%、及びジアミノ安息香酸、ジアミ
ノベンジルアルコール、あるいはそれらのカルボキシル
基又は水酸基が不飽和基を有する化合物で変性された誘
導体であるジアミン化合物75〜20モル%からなる芳香族
ジアミン成分とを、有機極性溶媒中重合及びイミド化し
て得られた可溶性芳香族ポリイミドが、ホルムアミド系
溶媒、アセトアミド系溶媒あるいはピロリドン系溶媒で
ある有機極性溶媒に1〜50重量%の濃度で均一に溶解し
ていることを特徴とする電気絶縁性被覆層形成用の可溶
性芳香族ポリイミド組成物に関するものである。
以下にこの発明の電気絶縁性被覆層形成用の可溶性芳
香族ポリイミド組成物について説明する。
この発明の組成物を構成する可溶性芳香族ポリイミド
は、2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸又はそ
の二無水物を70モル%以上、好ましくは80モル%以上含
有する芳香族テトラカルボン酸成分と、ビス(4−アミ
ノフェノキシフェニル)スルホン、2,2−ジ(4−アミ
ノフェノキシフェニル)プロパン、あるいは9,10−ビス
(4−アミノフェニル)アントラセンである多環芳香族
ジアミンを25〜80モル%、好ましくは35〜70モル%、及
びジアミノ安息香酸、ジアミノベンジルアルコールある
いはそれらのカルボキシル基又は水酸基が不飽和基を有
する化合物で変性された誘導体であるジアミン化合物を
75〜20モル%、好ましくは65〜30モル%含有している芳
香族ジアミン成分とを、略等モル、有機極性溶媒中で、
好ましくは約80℃以下の温度、特に20〜70℃の温度で重
合して芳香族ポリアミック酸(芳香族ポリイミドの前駆
体)を製造し、その芳香族ポリアミック酸を適当な条件
でイミド化して製造される。
芳香族テトラカルボン酸成分中、2,3,3′,4′−ビフ
ェニルテトラカルボン酸又はその二無水物の割合が70モ
ル%未満であると、生成するポリイミドの前記有機極性
溶媒に対する溶解性が劣る。
また、芳香族ジアミン成分中、多環芳香族ジアミンの
割合が25モル%未満である(従って、ジアミノ安息香
酸、ジアミノベンジルアルコールあるいはそれらのカル
ボキシル基又は水酸基が不飽和基を有する化合物で変成
された誘導体であるジアミン化合物の割合が75モル%超
である)と、得られるポリイミドの耐熱性が劣り、ま
た、芳香族ジアミン成分中、多環芳香族ジアミンの割合
が80モル%超である(従って、ジアミノ安息香酸、ジア
ミノベンジルアルコール又はそれらの前記誘導体である
ジアミン化合物の割合が20モル%未満である)と、得ら
れるポリイミドのガラス等の無機又はアルミニウム、ニ
ッケル・クロム合金、金等の金属の基板に対する密着性
が劣る。
この発明の組成物を構成する可溶性芳香族ポリイミド
の製造に用いられる芳香族テトラカルボン酸成分は、2,
3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン酸又はその二無
水物以外に、例えば、3,3′,4,4′−ビフエニルテトラ
カルボン酸又はその二無水物、2,2′,3,3′−ビフェニ
ルテトラカルボン酸又はその二無水物、2,3,3′,4′−
ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はその二無水物、3,
3′,4,4′−ベンゾフェノンテトラカルボン酸又はその
二無水物、ピロメリット酸又はその二無水物等のその他
の芳香族テトラカルボン酸又はその二無水物を含むこと
ができる。これらのその他の芳香族テトラカルボン酸ま
たはその二無水物の使用割合は、全芳香族テトラカルボ
ン酸成分中30モル%未満、特に20モル%未満であること
が好ましい。
この発明の組成物を構成する可溶性芳香族ポリイミド
の製造に用いられる芳香族ジアミン成分の一つである多
環芳香族ジアミンとしては、ビス(4−アミノフェノキ
シフェニル)スルホン、2,2−ジ(4−アミノフェノキ
シフェニル)プロパン、あるいは9,10−ビス(4−アミ
ノフェニル)アントラセンが使用される。
この発明の組成物を構成する可溶性芳香族ポリイミド
の製造に用いられるもう一つの芳香族ジアミン成分であ
るジアミノ安息香酸としては、例えば3,5−ジアミノ安
息香酸が挙げられる。また、ジアミノベンジルアルコー
ルとしては、例えば3,5−ジアミノベンジルアルコール
等が挙げられる。これらのジアミノ安息香酸又はジアミ
ノベンジルアルコールは、それらのカルボキシル基又は
水酸基が不飽和基を有する化合物で変性された誘導体、
例えば3,5−ジアミノ安息香酸−2−〔(メタ)アクリ
ロイルオキシ〕エチルエステル又は3,5−ジアミノベン
ジルアルコールの(メタ)アクリル酸エステル等であっ
てもよい。
また、この発明の組成物を構成する可溶性芳香族ポリ
イミドの製造に用いられる芳香族ジアミン成分は、前記
2種類の芳香族ジアミン化合物以外に、例えば、フェニ
レンジアミン、ジアミノトルエン、キシレンジアミン等
のその他の芳香族ジアミンを含むことができる。これら
のその他の芳香族ジアミン化合物の使用割合は、全芳香
族成分に対して15モル%未満、特に10モル%未満である
ことが好ましい。
また、前記芳香族テトラカルボン酸成分と前記芳香族
ジアミン成分との重合に使用される有機極性溶媒として
は、例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジエチ
ルホルムアミド等のホルムアミド系溶媒、N,N−ジメチ
ルアセトアミド、N,N−ジエチルアセトアミド等のアセ
トアミド系溶媒、N−メチル−2−ピロリドン、N−ビ
ニル−2−ピロリドン等のピロリドン系溶媒等を挙げる
ことができる。
上述の如くして得られる可溶性芳香族ポリイミドは、
高分子量のポリマーであり、例えば、濃度;0.5g/100ml
溶媒(N−メチル−2−ピロリドン)である溶液で、30
℃の測定温度で測定した対数粘度(ポリマーの重合度の
程度を示す)が、0.1〜2.0であること、特に0.3〜1.5程
度であることが好ましい。
そして、この発明の電気絶縁性被覆層形成用の可溶性
芳香族ポリイミド組成物(ワニス)は、前述の可溶性芳
香族ポリイミドを有機極性溶媒に、1〜50重量%、好ま
しくは3〜35重量%の濃度で均一に溶解させることによ
って得られる。
上記有機極性溶媒としては、前述の可溶性芳香族ポリ
イミドの重合で使用された有機極性溶媒と同様の有機極
性溶媒が使用される。この有機極性溶媒にはキシレン、
エチルセロソルブ、ジグライム、ジオキサン等を一部配
合したものであってもよい。
この発明の可溶性芳香族ポリイミド組成物は、25℃で
の回転粘度が0.1〜5000ポイズ、特に0.2〜2000ポイズ程
度にすることが好ましい。
この発明の電気絶縁性被覆層形成用の可溶性芳香族ポ
リイミド組成物は、前述のようにして芳香族テトラカル
ボン酸成分と芳香族ジアミン成分とを、好適には有機極
性溶媒中で重合及びイミド化して得られた可溶性芳香族
ポリイミドの重合液から、それ自体公知の方法のよって
一旦粉末状の析出物として単離し、得られた可溶性芳香
族ポリイミド粉末を前記の有機極性溶媒に溶解して調製
される。
この発明の電気絶縁性被覆層形成用の可溶性芳香族ポ
リイミド組成物は、例えば、被覆すべき対象物(回路基
板、光センサー等)の表面に、常温又は加温下、回転塗
布機又は印刷機等を使用する等の適当な方法で、均一な
厚さに塗布し、該組成物の塗布膜を形成し、次いで、そ
の塗布膜を約100℃以上、特に120〜450℃の温度で乾燥
させることによって、芳香族ポリイミドの固化膜を製造
することができる。
〔実施例〕
以下に本発明の実施例を挙げて本発明を更に詳細に説
明する。
実施例1 ・可溶性芳香族ポリイミドの合成 下記第1表に示すスケールによりそれぞれ次のように
して可溶性芳香族ポリイミド粉末を得た。
フラスコに2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン
酸二無水物(a-BPDA)及びN−メチル−2−ピロリドン
(NMP)を入れ、a-BPDAをNMPに溶解させる。この溶液を
氷冷後、溶液内にビス(4−アミノフェノキシフェニ
ル)スルホン(BAPS)、3,5−ジアミノ安息香酸(DAB
A)の順にそれらを添加する。溶液の温度を室温に戻
し、重合(芳香族ポリアミック酸の合成)を行わせる
(反応時間の積算を開始する)。時々、生成する芳香族
ポリアミック酸の対数粘度〔ηinh〕をチェックして、
ηinh=0.58〜0.60程度になった時〔反応開始より5〜
6時間位(室温22〜25℃の時)〕、反応液を氷冷する。
次に、この芳香族ポリアミック酸が生成した溶液にNM
Pを添加後、更に無水酢酸及びピリジンを添加し、室温
で30分間程度反応を続けた後、反応液の温度を50℃に昇
温して2時間反応(イミド化反応)を続けて、芳香族ポ
リイミドを生成させる。次いで、反応液を氷冷後(反応
液の温度が10℃以下になるまで待つ)、反応液の約半分
の量のメタノールを一気に添加して、生成している芳香
族ポリイミドを析出させ、これを濾過して、可溶性芳香
族ポリイミド粉末を得る。
・本発明の可溶性芳香族ポリイミド組成物の調製 前述のようにして得られた可溶性芳香族ポリイミド粉
末をNMPに、12重量%及び16重量%の濃度でそれぞれ均
一に溶解し、濃度の異なる本発明の可溶性芳香族ポリイ
ミド組成物(ワニス)をそれぞれ得た。
・密着性及び耐熱性試験 本発明の可溶性芳香族ポリイミド組成物について、各
種基板に対する密着性及び耐熱性を次のようにして測定
した。
〔密着性〕
前述の如くして調製した12重量%濃度の本発明の可溶
性芳香族ポリイミド組成物に、接着促進剤としてKBM 40
3(信越シリコーン(株)製)を該組成物100重量部に対
して0.5重量部添加して得たワニスを、スピンコート(2
000rpm)により基板の上に塗布し、200℃で30分間乾燥
して、0.5μm厚の芳香族ポリイミド製の塗膜を作成
し、この塗膜の基板に対する密着性をクロスカットテー
プ剥離により調べた。その結果を下記第2表に示す。
尚、下記第2表において、密着性の試験結果は、試験後
基板に密着している塗膜の面積パーセントで示してあ
る。
〔耐熱性〕 前述の如くして調製した16重量%濃度の本発明の可溶
性芳香族ポリイミド組成物より作成した4μm厚のフイ
ルムを200℃で30分間乾燥後、TGAにより、減量開始温度
及び5%減量温度を測定した。その結果は次の通りであ
った。
減量開始温度 210℃ 5%減量温度 390℃ また、16重量%濃度の本発明の可溶性芳香族ポリイミ
ド組成物より作成した15μm厚のフイルムを200℃で30
分間乾燥後、TMAを測定した。その結果は、3×10
-5(/℃)の膨張係数であった。
実施例2 芳香族ジアミン成分として下記第3表に示す芳香族ジ
アミン化合物を用いた以外は実施例1と同様にしてそれ
ぞれ下記第3表に示す対数粘度を有する可溶性芳香族ポ
リイミド粉末を得た。
これらの可溶性芳香族ポリイミド粉末をNMPに12重量
%の濃度でそれぞれ均一に溶解し、本発明の可溶性芳香
族ポリイミド組成物(ワニス)をそれぞれ得た。
得られた本発明の可溶性芳香族ポリイミド組成物につ
いて、各種蒸着基板に対する密着性をJIS D0202に準じ
てそれぞれ測定した。その結果を下記第3表に示す。
〔発明の効果〕 本発明の可溶性芳香族ポリイミド組成物は、有機極性
溶媒に対する溶解性に優れた耐熱性の芳香族ポリイミド
が、有機極性溶媒に均一に溶解しているもので、種々の
無機又は金属材料等の表面に塗布し、その塗布層を乾燥
及び加熱処理することにより、密着性に優れていると共
に光透過性(無色透明性)に優れた耐熱性及び電気絶縁
性の被覆層(薄膜層)を形成することができ、特に液晶
配向膜の形成材料として好適なものである。

Claims (1)

    (57)【特許請求の範囲】
  1. 【請求項1】2,3,3′,4′−ビフェニルテトラカルボン
    酸又はその酸二無水物を70モル%以上含有する芳香族テ
    トラトカルボン酸成分と、ビス(4−アミノフェノキシ
    フェニル)スルホン、2,2−ジ(4−アミノフェノキシ
    フェニル)プロパン、あるいは9,10−ビス(4−アミノ
    フェニル)アントラセンである多環芳香族ジアミン25〜
    80モル%、及びジアミノ安息香酸、ジアミノベンジルア
    ルコールあるいはそれらのカルボキシル基又は水酸基が
    不飽和基を有する化合物で変性された誘導体であるジア
    ミン化合物75〜20モル%からなる芳香族ジアミン成分と
    を、有機極性溶媒中重合及びイミド化して得られた可溶
    性芳香族ポリイミドが、ホルムアミド系溶媒、アセトア
    ミド系溶媒あるいはピロリドン系溶媒である有機極性溶
    媒に1〜50重量%の濃度で均一に溶解していることを特
    徴とする電気絶縁性被覆層形成用の可溶性芳香族ポリイ
    ミド組成物。
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