JP2023093156A - シート搬送ローラ用ゴム組成物およびシート搬送ローラ - Google Patents

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Abstract

【課題】高い摩擦係数を有するシート搬送ローラおよびそのローラ本体を形成するためのゴム組成物を提供する。【解決手段】本開示のゴム組成物は、シート搬送ローラのローラ本体を形成するためのゴム組成物であって、エチレン・α-オレフィン系共重合体を含有するゴム成分と、ロジン類成分とを含有することを特徴とする。【選択図】なし

Description

本開示は、シート搬送ローラ用ゴム組成物およびこれを用いて形成されたシート搬送ローラに関する。
従来、プリンタなどのOA機器のローラは、その摩擦係数、耐環境性能(耐オゾン等)、コストの面で、エチレン・プロピレン・ジエンゴム(EPDM)製のローラが使用される場合が多い。プリンタ等で使用される紙の種類が多岐にわたるようになり、ローラに対しては高い摩擦係数が要求される場合がある。そのためEPDMにオイル等を加えて低硬度化して摩擦係数を上げたり、またイソプレンゴム(IR)をブレンドしたりすることで摩擦係数を上げるなどの工夫がなされている。
例えば、特許文献1には、ローラのローラ本体を形成するためのゴム組成物であって、少なくともエチレンプロピレンジエンゴムを含むゴム、前記ゴムの総量100質量部あたり20質量部以下のフィラー、および前記ゴムの総量100質量部あたり2.5質量部以上の過酸化物架橋剤を含み、前記エチレンプロピレンジエンゴムは、エチレン含量が55%以上、72%以下の非油展エチレンプロピレンジエンゴムと、油展エチレンプロピレンジエンゴムであり、前記非油展エチレンプロピレンジエンゴムの割合は、前記ゴムの総量100質量部中の20質量部以上、80質量部以下であるゴム組成物が開示されている。
特許文献2には、ロジン物質の有機溶媒液からなることを特徴とするエラストマーローラの処理剤が開示されている(引用文献2の請求項1)。
特開2020-002271号公報 特開平7-268313号公報
本開示は、上記事情に鑑みてなされたものであり、摩擦係数が高いシート搬送ローラおよびそのローラを形成するためのゴム組成物を提供することを課題とする。さらに、本開示は、シート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法を提供することを課題とする。
前記課題を解決することができた、本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有するゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを含有することを特徴とする。
本開示には、本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物を硬化させて得られるシート搬送ローラが含まれる。
本開示には、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有するゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上の温度で混錬して混錬物を得る第1工程を有することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法が含まれる。
本開示によれば、高い摩擦係数を有するシート搬送ローラが得られる。
本開示のシート搬送ローラの実施形態の一例を示す斜視図。 本開示のシート搬送ローラの摩擦係数および摩耗減量率を測定する方法を説明する図。
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有するゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを含有することを特徴とする。
[ゴム成分]
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有するゴム成分を含有することが好ましい。まず、前記ゴム成分について説明する。
(エチレン・α-オレフィン共重合体)
前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構成単位とα-オレフィンに由来する構成単位(以下、それぞれ「エチレン単位」、「α-オレフィン単位」と称することがある。)を有する共重合体であれば特に限定されない。
前記α-オレフィンとしては、炭素数3~20のα-オレフィンが好ましい。前記α-オレフィンの具体例としては、プロピレン、1-ブテン、1-ペンテン、1-ヘキセン、1-ヘプテン、1-オクテン、1-ノネン、1-デセン等の直鎖状オレフィン;3-メチル-1-ブテン、3-メチル-1-ペンテン、4-メチル-1-ペンテン等の分岐鎖状オレフィン;ビニルシクロヘキサン等の環状オレフィンが挙げられる。これらは単独で又は組み合わせて用いてもよい。これらのうち、炭素数3~8のα-オレフィンが好ましく、炭素数3~6のα-オレフィンがより好ましく、炭素数3~4のα-オレフィンがさらに好ましく、プロピレンが特に好ましい。
前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、エチレンに由来する構成単位とα-オレフィンに由来する構成単位のみを有しても良いが、さらに他のモノマーに由来する構成単位(以下、単に「他のモノマー単位」と称することがある。)を有してもよい。
前記他のモノマーとしては、ジエンが好ましく、非共役ジエンがより好ましく、炭素数5~20の非共役ジエンがさらに好ましい。前記非共役ジエンの具体例としては、1,4-ヘキサジエン、1,6-オクタジエン、2-メチル-1,5-ヘキサジエン、6-メチル-1,5-ヘプタジエン、及び7-メチル-1,6-オクタジエン等の鎖状非共役ジエン;シクロヘキサジエン、ジシクロペンタジエン、5-ビニルノルボルネン、5-エチリデン-2-ノルボルネン、5-(2-プロペニル)-2-ノルボルネン、5-(3-ブテニル)-2-ノルボルネン、5-(4-ペンテニル)-2-ノルボルネン、5-(5-ヘキセニル)-2-ノルボルネン、5-(6-ヘプテニル)-2-ノルボルネン、5-(7-オクテニル)-2-ノルボルネン、5-メチレン-2-ノルボルネン、及び6-クロロメチル-5-イソプロペニル-2-ノルボルネン等の環状非共役ジエンが挙げられる。これらは単独で又は組み合わせて用いてもよい。これらのうち、5-エチリデン-2-ノルボルネン、ジシクロペンタジエン、1,4-ヘキサジエンが好ましく、5-エチリデン-2-ノルボルネンがより好ましい。
本開示において、ジエン成分を含有するエチレン・α-オレフィン共重合体を、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体という場合がある。本開示において、エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体は、エチレン・α-オレフィン共重合体の下位概念である。
前記エチレン・α-オレフィン共重合体において、エチレン単位の含有率は、40質量%以上であることが好ましく、42質量%以上であることがより好ましく、43質量%以上であることがさらに好ましく、79質量%以下であることが好ましく、78質量%以下であることがより好ましく、77質量%以下であることがさらに好ましい。エチレン単位の含有率が前記範囲であれば、市販品で入手しやすく、シート搬送ローラとして成型加工でき、シート搬送ローラとして好適なゴムとなるからである。
前記エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体において、エチレン単位の含有率は、40質量%以上であることが好ましく、42質量%以上であることがより好ましく、43質量%以上であることがさらに好ましく、79質量%以下であることが好ましく、78質量%以下であることがより好ましく、77質量%以下であることがさらに好ましい。エチレン単位の含有率が前記範囲であれば、市販品で入手しやすく、シート搬送ローラとして成型加工でき、シート搬送ローラとして好適なゴムとなるからである。
前記エチレン・α-オレフィン・ジエン共重合体において、ジエン単位の含有率は、0.5質量%以上であることが好ましく、0.7質量%以上であることがより好ましく、1.0質量%以上であることがさらに好ましく、15質量%以下であることが好ましく、14質量%以下であることがより好ましく、13質量%以下であることがさらに好ましい。ジエン単位の含有率が前記範囲であれば、市販品で入手しやすく、シート搬送ローラとして成型加工でき、シート搬送ローラとして好適なゴムとなるからである。
なお、共重合体中のエチレン単位の含有率、α-オレフィン単位の含有率および他のモノマー単位の含有率は、例えば13C-NMRにより求めることができる。
前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、伸展油を加えて柔軟性を付与した油展タイプのものと、伸展油を加えない非油展タイプのものとがあるが、本開示ではいずれのものを用いてもよい。なお、本開示では、非油展タイプと油展タイプを併用する場合は、耐摩耗性の点から、非油展タイプの含有量は、非油展タイプと、油展タイプ中に含まれる固形分(伸展油を除いたエチレン・α-オレフィン系共重合体自体)との合計質量に対して、15質量%以上であることが好ましく、20質量%以上であることがより好ましく、25質量%以上であることがさらに好ましい。
前記エチレン・α-オレフィン共重合体は、例えば、触媒の存在下で、エチレンと、α-オレフィンと、必要に応じて他のモノマーとを含むモノマー混合物を共重合させる公知の方法により製造することができる。また、市販品を用いてもよい。
本開示において、前記エチレン・α-オレフィン共重合体としては、例えば、エチレン・プロピレン共重合体(EPM)、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)、エチレン・ブテン共重合体(EBR)、エチレン・オクテン共重合体(EOR)、エチレン・プロピレン・ブテン共重合体(EPBR)、エチレン・ブテン・ジエン共重合体(EBDM)、エチレン・プロピレン・ブテン・ジエン共重合体を挙げることができる。本開示では、エチレン・α-オレフィン共重合体として、エチレン・プロピレン・ジエン共重合体(EPDM)を用いることが好ましい。前記EPDMは、1種で用いても良く、2種以上を併用してもよい。
前記EPDMの市販品としては、例えば、住友化学社製のエスプレン(登録商標)301〔エチレン含量:62%、ジエン含量:3.0%〕、301A〔エチレン含量:50%、ジエン含量:5.0%〕、501A〔エチレン含量:52%、ジエン含量:4.0%〕、505A〔エチレン含量:50%、ジエン含量:9.5%〕、505〔エチレン含量:50%、ジエン含量:10.0%〕、502〔エチレン含量:56%、ジエン含量:4.0%〕、512F〔エチレン含量:65%、ジエン含量:4.0%〕、532〔エチレン含量:51%、ジエン含量:3.5%〕、552〔エチレン含量:55%、ジエン含量:4.0%〕、553〔エチレン含量:58%、ジエン含量:4.5%〕、5206F〔エチレン含量:54%、ジエン含量:8.5%〕、5527F〔エチレン含量:54%、ジエン含量:8.5%〕、586〔エチレン含量:66%、ジエン含量:12.5%〕(以上は非油展タイプ);7456〔エチレン含量:53%、ジエン含量:10.5%、油展量:20phr〕、603〔エチレン含量:64%、ジエン含量:4.5%、油展量:40phr〕、6101〔エチレン含量:70%、ジエン含量:6.5%、油展量:70phr〕、601F〔エチレン含量:59%、ジエン含量:3.5%、油展量:70phr〕、600F〔エチレン含量:66%、ジエン含量:4.0%、油展量:100phr〕、670F〔エチレン含量:66%、ジエン含量:4.0%、油展量:100phr〕(以上は油展タイプ)が挙げられる(「%」は、「質量%」である。)。
また、ダウ・ケミカル社製のNORDEL(ノーデル、登録商標)3640〔エチレン含量:55%、ジエン含量:1.8%〕、3720P〔エチレン含量:70%、ジエン含量:0.6%〕、3722P〔エチレン含量:71%、ジエン含量:0.5%〕、3745P〔エチレン含量:70%、ジエン含量:0.5%〕、3760P〔エチレン含量:67%、ジエン含量:2.2%〕、4520〔エチレン含量:50%、ジエン含量:4.9%〕、4570〔エチレン含量:50%、ジエン含量:4.9%〕、4572 XFM〔エチレン含量:50%、ジエン含量:4.9%〕、4640〔エチレン含量:55%、ジエン含量:4.9%〕、4725P〔エチレン含量:70%、ジエン含量:4.9%〕、4760P〔エチレン含量:67%、ジエン含量:4.9%〕、4770P〔エチレン含量:70%、ジエン含量:4.9%〕、4785HM〔エチレン含量:68%、ジエン含量:4.9%〕、4820P〔エチレン含量:85%、ジエン含量:4.9%〕、5565〔エチレン含量:50%、ジエン含量:7.5%〕、6530XFC〔エチレン含量:55%、ジエン含量:8.5%〕、6565XFC〔エチレン含量:55%、ジエン含量:8.5%〕、3722P EL〔エチレン含量:71%、ジエン含量:0.5%〕、3745P EL〔エチレン含量:70%、ジエン含量:0.5%〕、4770P EL〔エチレン含量:70%、ジエン含量:4.9%〕、4770R EL〔エチレン含量:70%、ジエン含量:4.9%〕(以上は非油展タイプ);6555 OE〔エチレン含量:53%、ジエン含量:8.5%、油展量:23phr〕(油展タイプ)が挙げられる(「%」は、「質量%」である。)。
また、JSR社製のEP331〔エチレン含量:47%、ジエン含量:11.3%〕、EP342〔エチレン含量:47%、ジエン含量:9%〕、EP251〔エチレン含量:53.5%、ジエン含量:9%〕、EP65〔エチレン含量:53.5%、ジエン含量:9%〕、EP35〔エチレン含量:52%、ジエン含量:8.1%〕、EP33〔エチレン含量:52%、ジエン含量:8.1%〕、T7241〔エチレン含量:52%、ジエン含量:7.7%〕、EP21〔エチレン含量:61%、ジエン含量:5.8%〕、EP51〔エチレン含量:67%、ジエン含量:5.8%〕、EP25〔エチレン含量:58.5%、ジエン含量:5.1%〕、EP22〔エチレン含量:54%、ジエン含量:4.5%〕、EP24〔エチレン含量:54%、ジエン含量:4.5%〕、EP123〔エチレン含量:58%、ジエン含量:4.5%〕、EP103AF〔エチレン含量:59%、ジエン含量:4.5%〕、EP107F〔エチレン含量:62%、ジエン含量:4.5%〕、EP57F/C〔エチレン含量:67%、ジエン含量:4.5%〕、EP27〔エチレン含量:54.5%、ジエン含量:4%〕、EP93〔エチレン含量:55%、ジエン含量:2.7%〕(以上は非油展タイプ);EP96〔エチレン含量:66%、ジエン含量:5.8%、油展量:50phr〕、EP501EC〔エチレン含量:65.5%、ジエン含量:5.5%、油展量:40phr〕、EP98〔エチレン含量:66%、ジエン含量:4.5%、油展量:75phr〕、EP104E〔エチレン含量:52%、ジエン含量:3.5%、油展量:30phr〕(以上は油展タイプ)が挙げられる(「%」は、「質量%」である。)。
さらに、三井化学社製の三井EPT(登録商標)1045〔エチレン含量:58%、ジエン含量:5.0%〕、1070〔エチレン含量:57%、ジエン含量:4.0%〕、2060M〔エチレン含量:55%、ジエン含量:2.3%〕、3045〔エチレン含量:56%、ジエン含量:4.7%〕、3070〔エチレン含量:58%、ジエン含量:4.7%〕、3091〔エチレン含量:61%、ジエン含量:5.4%〕、3092M〔エチレン含量:65%、ジエン含量:4.6%〕、3110M〔エチレン含量:56%、ジエン含量:5.0%〕、X-4010M〔エチレン含量:54%、ジエン含量:7.6%〕、4021〔エチレン含量:51%、ジエン含量:8.1%〕、4045〔エチレン含量:54%、ジエン含量:8.1%〕、4045M〔エチレン含量:45%、ジエン含量:7.6%〕、4070〔エチレン含量:56%、ジエン含量:8.1%〕、8030M〔エチレン含量:47%、ジエン含量:9.5%〕、9090M〔エチレン含量:41%、ジエン含量:14.0%〕、X-3012P〔エチレン含量:72%、ジエン含量:3.6%〕、3092PM〔エチレン含量:65%、ジエン含量:4.6%〕、K-9720〔エチレン含量:77%、ジエン含量:10.4%〕(以上は非油展タイプ);X-3042E〔エチレン含量:66%、ジエン含量:4.7%、油展量:120phr〕、3062EM〔エチレン含量:65%、ジエン含量:4.5%、油展量:20phr〕、3072EM〔エチレン含量:64%、ジエン含量:5.4%、油展量:40phr〕、3090EM〔エチレン含量:48%、ジエン含量:5.2%、油展量:10phr〕、8120E〔エチレン含量:56%、ジエン含量:9.5%、油展量:20phr〕、3072EPM〔エチレン含量:64%、ジエン含量:5.4%、油展量:40phr〕、PX-049PEM〔エチレン含量:56%、ジエン含量:5.0%、油展量:10phr〕(以上は油展タイプ)が挙げられる(「%」は、「質量%」である。)。
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物が含有するゴム成分は、前記エチレン・α-オレフィン共重合体を主成分として含有することが好ましい。前記ゴム成分中のエチレン・α-オレフィン共重合体の含有率は、50質量%以上であることが好ましく、80質量%以上であることがより好ましく、90質量%以上であることがさらに好ましい。なお、本開示では、前記ゴム成分が、エチレン・α-オレフィン共重合体のみを含有することも好ましい態様である。
(他のゴム成分)
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物が含有するゴム成分は、前記エチレン・α-オレフィン系共重合体に加えて、他のゴム成分を含んでもよい。
前記他のゴム成分としては、コスト削減やローラ性能改善などの観点から、ジエン系ゴムが好ましい。前記ジエン系ゴムの具体例としては、例えば、天然ゴム(NR);イソプレンゴム(IR)、スチレンブタジエンゴム(SBR)、アクリロニトリルブタジエンゴム(NBR)、ブタジエンゴム(BR)、クロロプレンゴム(CR)等の合成ゴムを挙げることができる。これらは単独で又は組み合わせて用いてもよい。これらの中でも、コストを削減する点から、SBRが好ましい。また、摩擦係数を向上する点から、IRまたはNRが好ましい。なお、前記ジエン系ゴムは、非油展ゴム、油展ゴムのいずれを用いてもよい。
前記合成ゴムは、市販品を用いてもよい。特に限定されないが、例えば、SBRとしては、日本ゼオン社製のニポール1502、1723、1739、9548等が挙げられる。IRとしては、日本ゼオン社製のニポール(登録商標)IR2200、IR2200L等が挙げられる。
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物が含有するゴム成分において、前記他のゴム成分の含有率は、5質量%以上であることが好ましく、10質量%以上であることがより好ましく、15質量%以上であることがさらに好ましく、45質量%以下であることが好ましく、40質量%以下であることがより好ましく、30質量%以下であることがさらに好ましい。他のゴム成分の含有率を前記範囲にすることで、高い摩擦係数を維持しつつ、得られるローラのコスト削減を図ることができる。
なお、本開示では、前記エチレン・α-オレフィン系共重合体または他のゴム成分として、油展タイプを使用する場合、当該油展タイプ中に含まれる固形分(伸展油を除いたゴム成分自体)の量に基づいて、前記含有率を算出する。
[ロジンおよび/またはその誘導体]
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、ロジンおよび/またはロジン誘導体(以下、単に「ロジン類成分」と称する場合がある)を含有する。ロジンとロジン誘導体は、それぞれ単独で用いてもよく、両者を併用してもよい。
ロジンは、マツ科の植物の樹液である松脂等のバルサム類を集めてテレピン精油を蒸留した後に残る残留物で、ロジン酸(アビエチン酸、パラストリン酸、イソピマール酸等)を主成分とする天然樹脂である。ロジンとしては、例えば、ガムロジン、ウッドロジン及びトール油ロジン等の原料ロジン、並びにこれらの精製物が挙げられる。これらのロジンは、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
ロジン誘導体は、前記ロジンの誘導体であれば特に限定されず、例えば、前記ロジンに水素化、不均化、重合、エステル化、変性(例えば、酸変性)、その他の化学的な修飾などの処理を施したものが挙げられる。これらの処理は、1種であってもよく、2種以上であってもよい。ロジン誘導体としては、例えば、ロジンエステル、不均化ロジン、不均化ロジンエステル、重合ロジン、重合ロジンエステル、水素化ロジン、水素化ロジンエステル、変性ロジン、変性ロジンエステル等が挙げられる。これらのロジン誘導体は、1種を単独で用いてもよく、2種以上を混合して用いてもよい。
前記ロジンおよび/またはロジン誘導体としては、市販品を用いることができる。例えば、ハリマ化成社製のハリエスターP(ペンタエリスリトールロジンエステル、酸価:6~12mgKOH/g)、ハリエスターDS-70L(ロジンエステル、酸価:8mgKOH/g以下)、ハリタックR-80(ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)、ハリタックFK100(不均化ロジンエステル、酸価:5mgKOH/g以下)、ハリタックFK125(不均化ロジンエステル、酸価:14~20mgKOH/g)、ハリタックSE10(水添ロジンエステル、酸価:2~10mgKOH/g)、ハリタックF85(水添ロジンエステル、酸価:4~12mgKOH/g)、ハリタックPH(水添ロジンエステル、酸価:7~16mgKOH/g)、ハリタックAQ-90A(ロジン変性特殊合成樹脂、酸価:100~110mgKOH/g)などのロジンエステル類;ハリタックF-75(特殊変性ロジン、酸価:145mgKOH/g以上)、ハリタックFG-90(特殊変性ロジン、酸価:140~160mgKOH/g)、ハリマックT-80(マレイン化ロジン、酸価:170~200mgKOH/g)、ハリマックR-100(マレイン化ロジンエステル、酸価:25mgKOH/g以下)、ハリマックM-453(マレイン化ロジンエステル、酸価:25mgKOH/g以下)、ハリタック4740(マレイン化ロジンエステル、酸価:25~35mgKOH/g)、ハリエスターMSR-4(マレイン化ロジンエステル、酸価:120~150mgKOH/g)、ハリタック28JA(マレイン化ロジンエステル、酸価:39mgKOH/g以下)などの変性ロジン類及び変性ロジンエステル類;ハリタックPCJ(重合ロジンエステル、酸価:16mgKOH/g以下)、ハリエスターDS-130(重合ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)、ハリエスターKT-3(重合ロジンエステル、酸価:17mgKOH/g以下)などの重合ロジンエステル類が挙げられる。
また、荒川化学工業社製のパインクリスタルKR-85(超淡色ロジン、酸価:165~175mgKOH/g)、パインクリスタルKR-612(超淡色ロジン、酸価:160~175mgKOH/g)、パインクリスタルKR-614(超淡色ロジン、酸価:170~180mgKOH/g)、パインクリスタルKE-100(超淡色ロジンエステル、酸価:2~10mgKOH/g)、パインクリスタルKE-311(超淡色ロジンエステル、酸価:2~10mgKOH/g)、パインクリスタルPE-590(超淡色ロジンエステル、酸価:2~10mgKOH/g)、パインクリスタルKE-359(超淡色ロジンエステル、酸価:10~20mgKOH/g)、パインクリスタルKE-604(酸変性超淡色ロジン、酸価:230~245mgKOH/g)、パインクリスタルKR-120(酸変性超淡色ロジン、酸価:305~345mgKOH/g)、パインクリスタルKR-140(超淡色重合ロジン、酸価:130~160mgKOH/g)、パインクリスタルD-6011(ロジン含有ジオール、酸価:1mgKOH/g以下)、パインクリスタルKR-50M(超淡色ロジンの金属塩、酸価:90~100mgKOH/g)などの超淡色ロジン類;スーパーエステルA-18(特殊ロジンエステル、酸価:15~30mgKOH/g)、スーパーエステルA-75(特殊ロジンエステル、酸価:10mgKOH/g以下)、スーパーエステルA-100(特殊ロジンエステル、酸価:10mgKOH/g以下)、スーパーエステルA-115(特殊ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)、スーパーエステルA-125(特殊ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)等の特殊ロジンエステル類;エステルガムAA-L(ロジンエステル、酸価:0.1~7.0mgKOH/g)、AA-G(ロジンエステル、酸価:0.1~7.0mgKOH/g)、エステルガムAA-V(ロジンエステル、酸価:0.1~7.0mgKOH/g)、エステルガム105(ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)、エステルガムAT(ロジンエステル、酸価:10mgKOH/g以下)、エステルガムH(水素化ロジンエステル、酸価:10mgKOH/g以下)、エステルガムHP(水素化ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)、ペンセルGA-100(ロジンエステル、酸価:10~20mgKOH/g)、ペンセルAZ(ロジンエステル、酸価:35~50mgKOH/g)、ペンセルC(重合ロジンエステル、酸価:16mgKOH/g以下)、ペンセルD-125(重合ロジンエステル、酸価:20mgKOH/g以下)、ペンセルD-135(重合ロジンエステル、酸価:10~16mgKOH/g)、ペンセルD-160(重合ロジンエステル、酸価:10~16mgKOH/g)、ペンセルKK(重合ロジンエステル、酸価:10~25mgKOH/g)などのロジンエステル類;アラダイム白菊ロジン(精製ロジン、酸価:165mgKOH/g以上)、アラダイムR-95(重合ロジン、158~168mgKOH/g)などの重合ロジン類;マルキードNo.1(マレイン酸ロジン、酸価:25mgKOH/g以下)、マルキードNo.2(マレイン酸ロジン、酸価:20~39mgKOH/g)、マルキードNo.5(マレイン酸ロジン、酸価:15~25mgKOH/g)、マルキードNo.6(マレイン酸ロジン、酸価:39mgKOH/g以下)、マルキードNo.8(マレイン酸ロジン、酸価:20~39mgKOH/g)、マルキードNo.31(マレイン酸ロジン、酸価:175~200mgKOH/g)、マルキードNo.32(マレイン酸ロジン、酸価:120~140mgKOH/g)、マルキードNo.33(マレイン酸ロジン、酸価:290~320mgKOH/g)などのマレイン酸ロジン類が挙げられる。
前記ロジンおよび/またはロジン誘導体の含有量は、前記ゴム成分100質量部に対して、1質量部以上であることが好ましく、1.5質量部以上であることがより好ましく、2質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以下であることが好ましく、13質量部以下であることがより好ましく、12質量部以下であることがさらに好ましい。ロジンおよび/またはロジン誘導体の含有量が、1質量部未満では、摩擦係数を向上させる効果が得られない場合がある。一方、ロジンおよび/またはロジン誘導体の含有量が15質量部を超えると、それ以上の効果が得られないだけでなく、混練時に粘着するなどの加工性の悪化が懸念される。
本開示のゴム組成物は、加硫剤として後記する有機過酸化物を含有する場合、前記ロジンおよび/またはロジン誘導体の酸価は、50mgKOH/g以下であることが好ましく、30mgKOH/g以下であることがより好ましく、20mgKOH/g以下であることがさらに好ましい。有機過酸化物を含有するゴム組成物に、酸価が大きいロジンおよび/またはロジン誘導体を配合すると、得られるローラの耐摩耗性が低下する傾向があるからである。なお、ゴム組成物が有機過酸化物を含有しない場合や、耐摩耗性の求められないローラの場合は、前記ロジンおよび/またはロジン誘導体の酸価は前記範囲に限定されない。これらの場合は、例えば、酸価が50mgKOH/g超、400mgKOH/g以下のロジンおよび/またはロジン誘導体を使用することもできる。また、ロジンおよび/またはロジン誘導体の配合量や有機過酸化物の配合量等を調整して使用することも可能である。
[その他の成分]
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、前記ゴム成分及びロジンおよび/またはロジン誘導体に加えて、必要に応じてその他の成分を本開示の効果を損なわない範囲で配合することができる。その他の成分としては、例えば、加硫剤、加硫促進剤、加硫助剤、加硫遅延剤、フィラー、顔料、加工助剤、老化防止剤、しゃっかい剤、耐熱安定剤、耐候安定剤、および帯電防止剤等のゴム配合剤として一般に使用される添加剤が挙げられる。これらの添加剤は、単独で用いてもよく、2種以上を併用してもよい。
(加硫剤)
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、加硫剤を含有することが好ましい。前記加硫剤は、ゴム分子を架橋させて加硫物を形成するための成分である。
前記加硫剤としては、硫黄系、有機過酸化物、フェノール樹脂、ヒドロシリコーン系化合物、アミノ樹脂、キノンまたはその誘導体、アミン系化合物、アゾ系化合物、エポキシ系化合物、イソシアネート系化合物等のゴムを架橋する際に一般に使用される加硫剤が挙げられる。これらのうち、硫黄系加硫剤、有機過酸化物が好適である。
前記硫黄系加硫剤としては、例えば、粉末硫黄、沈降硫黄、コロイド硫黄、分散性硫黄等が挙げられる。これらは単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、加硫剤として硫黄系加硫剤を用いる場合、後記する加硫促進剤および/または加硫助剤を併用することが好ましい。
加硫剤として硫黄系加硫剤を用いる場合、硫黄系加硫剤の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.2質量部以上であることがより好ましく、0.5質量部以上であることがさらに好ましく、10質量部以下であることが好ましく、8質量部以下であることがより好ましく、5質量部以下であることがさらに好ましい。
前記有機過酸化物としては、ジクミルペルオキシド、ジ-tert-ブチルペルオキシド、2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキサン、2,5-ジメチル-2,5-ジ-(tert-ブチルペルオキシ)ヘキシン-3、1,3-ビス(tert-ブチルペルオキシイソプロピル)ベンゼン、1,1-ビス(tert-ブチルペルオキシ)-3,3,5-トリメチルシクロヘキサン、n-ブチル-4,4-ビス(tert-ブチルペルオキシ)バレレート、ベンゾイルペルオキシド、p-クロロベンゾイルペルオキシド、2,4-ジクロロベンゾイルペルオキシド、tert-ブチルペルオキシベンゾエート、tert-ブチルペルオキシイソプロピルカーボネート、ジアセチルペルオキシド、ラウロイルペルオキシド、tert-ブチルクミルペルオキシド等が挙られる。これらの有機過酸化物は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。なお、硫黄系加硫剤のブルームによる摩擦係数の低下の懸念が少ない点から、加硫剤として有機過酸化物を用いることが好ましい。
加硫剤として有機過酸化物を用いる場合、有機過酸化物の含有量は、ゴム成分100質量部に対して、0.1質量部以上であることが好ましく、0.5質量部以上であることがより好ましく、1質量部以上であることがさらに好ましく、15質量部以下であることが好ましく、10質量部以下であることがより好ましく、8質量部以下であることがさらに好ましい。
(加硫促進剤)
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、加硫促進剤を含有してもよい。前記加硫促進剤としては、無機促進剤、有機促進剤のいずれも使用できる。前記無機促進剤としては、消石灰、マグネシア(MgO)、リサージ(PbO)等が挙げられる。前記有機促進剤としては、たとえば、チアゾール系促進剤、チウラム系促進剤、スルフェンアミド系促進剤、ジチオカルバミン酸塩系促進剤等が挙げられる。加硫促進剤は、単独で使用してもよいし、2種以上を併用してもよい。前記硫黄系架橋剤と組み合わせる加硫促進剤としては、チアゾール系促進剤とチウラム系促進剤を併用するのが好ましい。
前記チアゾール系促進剤としては、2-メルカプトベンゾチアゾール、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィド、2-メルカプトベンゾチアゾールの亜鉛塩、2-メルカプトベンゾチアゾールのシクロヘキシルアミン塩、2-(N,N-ジエチルチオカルバモイルチオ)ベンゾチアゾール、2-(4’-モルホリノジチオ)ベンゾチアゾール等が挙げられ、ジ-2-ベンゾチアゾリルジスルフィドが好ましい。
前記チウラム系促進剤としては、テトラメチルチウラムモノスルフィド、テトラメチルチウラムジスルフィド、テトラエチルチウラムジスルフィド、テトラブチルチウラムジスルフィド、テトラキス(2-エチルヘキシル)チウラムジスルフィド、ジペンタメチレンチウラムテトラスルフィド等が挙げられ、テトラメチルチウラムモノスルフィドが好ましい。
前記チアゾール系促進剤の使用量は、前記基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上、10質量部以下が好ましい。
前記チウラム系促進剤の使用量は、前記基材ゴム100質量部に対して0.1質量部以上、10質量部以下が好ましい。
(加硫促進助剤)
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、加硫促進助剤を含有してもよい。前記加硫促進助剤としては、酸化亜鉛が挙げられる。前記加硫促進助剤の使用量は、前記基材ゴム100質量部に対して1質量部以上、20質量部以下が好ましい。
(その他の成分)
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、充填剤、加工助剤、老化防止剤、しゃっかい剤、顔料など、本開示の趣旨を害さない範囲で、ゴムの配合剤として一般的に使用される配合剤を使用することができる。
前記充填剤としては、ゴムの配合剤として一般的に使用されるものが使用することができ、例えば、カーボンブラック、シリカ、炭酸カルシウム、タルク、クレー、炭酸マグネシウム、酸化アルミニウム等が挙げられる。充填剤を配合することにより、得られるローラの機械的強度等を向上できる。
前記充填剤の含有量は、基材ゴム100質量部に対して、3質量部以上が好ましく、より好ましくは5質量部以上、さらに好ましくは10質量部以上であり、100質量部以下が好ましく、より好ましくは70質量部以下、さらに好ましくは50質量部以下、特に好ましくは28質量部以下である。
顔料としてカーボンブラックを配合する場合、カーボンブラックの含有量は、基材ゴム100質量部に対して、3質量部以下が好ましく、より好ましくは1質量部以下である。カーボンブラックの配合量を抑えることで、搬送されるシートの汚れを抑制できる。
前記加工助剤としては、炭素数12~30の脂肪酸(ステアリン酸等)、脂肪酸エステル、脂肪酸金属塩、脂肪酸アミド、炭化水素(パラフィン)、プロセスオイル等が挙げられる。
前記老化防止剤としては、ジエチルジチオカルバミン酸ニッケル、ジブチルジチオカルバミン酸ニッケル等が挙げられる。
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法は、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有するゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上の温度で混錬して混錬物を得る第1工程を有することを特徴とする。
ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上の温度で混錬することにより、ロジン類成分がゴム成分に均一に分散する。
前記第1工程における最終混錬温度(排出時の温度)は、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点よりも3℃以上であることが好ましく、5℃以上であることがより好ましく、10℃以上であることがさらに好ましく、50℃以下であることが好ましく、40℃以下であることがより好ましく、30℃以下であることがさらに好ましい。
前記第1工程において、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上での混錬時間は、1分間以上が好ましく、1.5分間以上がより好ましく、2分間以上がさらに好ましく、15分間以下が好ましく、12分間以下がより好ましく、10分間以下がさらに好ましい。
前記第1工程では、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有するゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とに加えて、必要に応じて顔料、フィラーなどを配合することも好ましい。
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法は、前記第1工程において加硫剤を配合しないことが好ましい。第1工程で加硫剤を配合すると、架橋反応が進行する場合があるからである。すなわち、本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法は、第1工程で得られた混錬物を冷却して、加硫剤を混合する第2工程を有することが好ましい。また、第2工程で、加硫剤に加えて加硫促進剤および/または加硫助剤を配合することも好ましい。
第2工程における混合温度は、特に限定されないが、20℃以上が好ましく、30℃以上がより好ましく、40℃以下がさらに好ましく、120℃以下が好ましく、110℃以下がより好ましく、100℃以下がさらに好ましい。
前記第2工程における混合時間は、十分に混合されていれば特に限定されないが、1分間以上が好ましく、2分間以上がより好ましく、3分間以上がさらに好ましく、30分間以下が好ましく、20分間以下がより好ましく、15分間以下がさらに好ましい。
第1工程および第2工程は、例えば、混練ロール、バンバリーミキサー、ニーダーなどの公知の混練機を用いて行うことができる。
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物を硬化する条件は、特に限定されないが、例えば、120℃~190℃の温度で3分間~60分間加熱成形することが好ましい。
前記ゴム組成物の硬化物の硬度(デュロメータ法、タイプA硬さ)は、10以上が好ましく、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上であり、90以下が好ましく、より好ましくは85以下、さらに好ましくは80以下である。硬化物の硬度が10以上であればシート搬送に適した硬度となり搬送力がより向上し、90以下であればローラ軸の圧入がより容易である。
<シート搬送ローラ>
本開示のシート搬送ローラは、前記シート搬送ローラ用ゴム組成物を硬化して得られたものである。シート搬送ローラの形状としては、円筒状、円柱状、多角筒状、多角柱状が挙げられる。シート搬送ローラが円筒状、多角筒状の場合、シート搬送ローラはシャフトを有することが好ましい。前記シャフトの材質は特に限定されず、金属、セラミック、樹脂等が挙げられる。
図1にシート搬送ローラの一例を示す。図1に記載のシート搬送ローラ1は、上述した本開示のゴム組成物を筒状に成形するとともに架橋させて形成されたローラ本体2を備えている。前記ローラ本体2の中心には断面円形の通孔3が設けられており、当該通孔3には、図示しない駆動系に連結されるなどした円柱状のシャフト4が挿通されて、固定されている。ローラ本体2の外周面は、通孔3およびシャフト4と同心の筒状に形成されている。
ローラ本体2とシャフト4とは、たとえば、ローラ本体2の通孔3に、当該通孔3の内径よりも外径の大きいシャフト4を圧入する等して、空転を生じないように互いに固定されている。つまり、両者間の径差に基づく締め代により、当該両者間で一定の空転トルク(空転が生じない限界のトルク)が確保されている。
シャフト4は、たとえば、金属、セラミック、硬質樹脂等によって形成されている。ローラ本体2は、必要に応じて複数個を、1本のシャフト4の複数箇所に固定してもよい。
ローラ本体2を製造する方法は、ゴム組成物を押出成形法等によって筒状に成形した後、プレス架橋法等によって架橋する方法;トランスファー成形法等によって筒状に成形するとともに架橋する方法等が挙げられる。
ローラ本体2は、上記製造の工程の任意の時点で、必要に応じて、外周面を所定の表面粗さになるように研磨したり、ローレット加工、シボ加工等したりしてもよい。また、外周面が所定幅となるようにローラ本体2の両端をカットしてもよい。ローラ本体2の外周面は、任意のコート層で被覆してもよい。
またローラ本体2は、外周面側の外層と通孔3側の内層の2層構造に形成してもよい。その場合、少なくとも外層を上記本開示のゴム組成物によって形成するのが好ましい。ただし、構造を簡略化し、生産性を向上するとともに製造コストを低下させること等を考慮すると、ローラ本体2は、図1に示すように単層構造とするのが好ましい。
また、ローラ本体2は多孔質構造としてもよい。しかし、耐摩耗性を向上したり、圧縮永久ひずみを小さくして、1箇所で接触した状態が比較的長期間に亘って続いても変形による凹みを生じにくくしたりするために、ローラ本体2は、実質的に非多孔質構造であるのが好ましい。
前記通孔3は、シート搬送ローラ1の用途によっては、ローラ本体2の中心から偏心した位置に設けてもよい。また、ローラ本体2の外周面は筒状ではなく異形形状、たとえば、筒状の外周面の一部が平面状に切欠かれた形状等であってもよい。これら異形形状のローラ本体2を備えたシート搬送ローラ1を製造するには、先に説明した製造方法によって直接に、異形形状のローラ本体2を成形したのち架橋させてもよいし、筒状に成形したローラ本体2を、後加工によって異形形状としてもよい。
また筒状に成形したローラ本体2の通孔3に、当該ローラ本体2の異形形状に対応する変形形状とされたシャフト4を圧入して、ローラ本体2を異形形状に変形させてもよい。
この場合、外周面5の研磨やローレット加工、シボ加工などは、変形前の筒状の外周面
5に対して実施できるため加工性を向上できる。
<画像形成装置>
本開示のシート搬送ローラは、例えば、レーザープリンタや静電式複写機、普通紙ファクシミリ装置、あるいはこれらの複合機等の、電子写真法を利用した種々の画像形成装置に組み込むことができる。また、本開示のシート搬送ローラは、例えば、インクジェットプリンタやATM等に組み込むこともできる。
本開示のシート搬送ローラは、用紙等のシートと接触しながら回転して、摩擦によってシートを搬送する。前記シート搬送ローラは、例えば、給紙ローラ、搬送ローラ、プラテンローラ、排紙ローラ等として用いることができる。
本開示のシート搬送ローラが搬送するシートとしては、ロール状のシートであってもよいし、あるいは、所定の寸法に裁断された枚葉紙であってもよい。本開示のシート搬送ローラは、枚葉紙の搬送ローラとして好適に使用することができる。
以下、本開示を実施例によって詳細に説明するが、本開示は、下記実施例によって限定されるものではなく、本開示の趣旨を逸脱しない範囲の変更、実施の態様は、いずれも本開示の範囲内に含まれる。
[評価方法]
(1)硬度
ゴム組成物の硬化物の硬度は、JIS K6253-3(2012)に準拠して測定した。具体的には、ゴム組成物を170℃で20分間プレスして、厚み2mmのシートを作製した。このシートを、測定基板などの影響が出ないように、3枚重ねた状態で、タイプAデュロメータの加圧板を接触させ、接触させてから3秒後に数値を読み取った。
(2)引張強さ、破断伸び
ゴム組成物の硬化物の引張強さ、破断伸び(切断時伸び)は、JIS K6251(2017)に準拠して測定した。具体的には、ゴム組成物を170℃で20分間プレスして、厚み2mmのシートを作製し、これをダンベル形状(ダンベル状3号形、平行部分の厚さ2mm、初期の標線間距離20mm)に打ち抜いて試験片を作製した。引張試験測定装置を用いて物性を測定した(測定温度23℃、引張速度500mm/分)。そして、試験片が切断するまで引っ張ったときに記録される最大の引張力を試験片の試験前の断面積で除することで引張強さを算出した。
(3)摩擦係数測定
図2に示すように、普通紙11(富士フイルムビジネスイノベーション製、P紙)を、水平に設置したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の板10の上に載置した。この紙11に、シート搬送ローラ1のローラ本体2を載置し、シャフト4に鉛直荷重W1(=300gf)を付加し板10に圧接させた。
次いで、温度23℃、相対湿度55%の環境下、ローラ本体2を一点鎖線の矢印R1で示す方向に200rpmで回転させた際に、紙11の一端に接続したロードセル12に加わる搬送力F(gf)を測定した。
測定した搬送力Fと鉛直荷重W1(=300gf)とから式(1)によって初期の摩擦係数μを求めた。
μ=F(gf)/W1(gf) (1)
(4)強制摩耗試験
図2に示すように、普通紙11(富士フイルムビジネスイノベーション製、P紙)を、水平に設置したポリテトラフルオロエチレン(PTFE)製の板10の上に載置した。この紙11に、シート搬送ローラ1のローラ本体2を載置し、シャフト4に鉛直荷重W1(=500gf)を付加し板10に圧接させた。
次いで、温度23℃、相対湿度55%の環境下、ローラ本体2を一点鎖線の矢印R1で示す方向に200rpmで10分間連続回転させた。ローラ1を回転させる前の質量W(g)と回転後の質量W(g)とから下記式(2)によって摩耗減量率(%)求めた。
摩耗減量率(%)=100×(W-W)/W (式2)
(5)ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点の測定方法
JIS K 5902の環球法により測定した。
<ゴム組成物の調製>
表1~表4に示す配合処方に基づいて、3Lニーダーにゴム成分、ロジン類成分、顔料、およびフィラーを投入し、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上の温度で、1分間以上混錬して混錬物を得た。得られた混錬物を冷却して、表面温度を30℃~50℃に制御したオープンロールを用いて、前記混錬物に加硫剤および加硫促進剤、加硫助剤を加えて混合して、ゴム組成物を調製した。
<シート搬送ローラの作製>
上記で調製したゴム組成物をトランスファー成形により170℃、30分間の成形条件で円筒状に成形した。円筒状成形体の通孔に外径12mmのシャフトを圧入した。シャフトが挿入された状態で、円筒研削盤を用いて、円筒状成形体の外径が22mmになるように研磨し、幅25mmにカットして、筒状のローラを作製した。
各シート搬送ローラについての評価結果は、表1~表4に示す。
(シート搬送ローラNo.1~No.6)
シート搬送ローラNo.1~No.6では、ゴム組成物として、硫黄、加硫促進剤および加硫助剤を配合した加硫系を用いた。表1の結果から、ローラ本体がロジン類成分を適量に含有するゴム組成物から形成されたNo.1~No.5のローラは、いずれもローラ本体がロジン類成分を含有しないゴム組成物から形成されたNo.6のローラと比べて摩擦係数が向上していることがわかる。
Figure 2023093156000001
(シート搬送ローラNo.7~No.13)
シート搬送ローラNo.7~No.13では、ゴム組成物として、有機過酸化物を配合した加硫系を用いた。表2の結果から、ローラ本体がロジン類成分を適量に含有するゴム組成物から形成されたNo.7~12のローラは、いずれもローラ本体がロジン類成分を含有しないゴム組成物から形成されたNo.13のローラと比べて摩擦係数が向上していることがわかる。なお、これらのNo.7~12の中で、ロジン類成分の酸価が50mgKOH/g以下のNo.7,9,10,12のローラは、ロジン類成分の酸価が50mgKOH/g超のNo.8,11のローラと比較して耐摩耗性に優れることが分かる。
Figure 2023093156000002
(シート搬送ローラNo.14~No.17)
シート搬送ローラNo.14~No.17では、ゴム組成物として、有機過酸化物を配合した加硫系を用いた。なお、これらの例では、ゴム成分として、EPDMに比較的安価に入手できるSBRをブレンドしたものを用いた。表3の結果から、ローラ本体がロジン類成分を適量に含有するゴム組成物から形成されたNo.14~No.16のローラは、いずれもローラ本体がロジン類成分を含有しないゴム組成物から形成されたNo.17のローラと比べて摩擦係数が向上していることがわかる。
Figure 2023093156000003
(シート搬送ローラNo.18~No.21)
シート搬送ローラNo.18~No.21では、ゴム組成物として、有機過酸化物を配合した加硫系を用いた。なお、これらの例では、ゴム成分として、2種類のEPDMに摩擦係数の向上を狙ってIRをブレンドしたものを用いた。表4の結果から、ローラ本体がロジン類成分を適量に含有するゴム組成物から形成されたNo.18~No.20のローラは、いずれもローラ本体がロジン類成分を含有しないゴム組成物から形成されたNo.21のローラと比べて摩擦係数が向上していることがわかる。
Figure 2023093156000004
表1~4で用いた材料は下記の通りである。
EPDM1:住友化学社製、エスプレン505A〔エチレン含量:50%、ジエン含量:9.5%、非油展タイプ〕
EPDM2:住友化学社製、エスプレン670F〔エチレン含量:66%、ジエン含量:4.0%、油展量:100phr〕
EPDM3:住友化学社製、エスプレン586〔エチレン含量:66%、ジエン含量:12.5%、非油展タイプ〕
SBR:日本ゼオン社製、ニポール1502
IR:日本ゼオン社製、ニポールIR2200
ペンタエリスリトールロジンエステル:ハリマ化成社製、ハリエスターP〔軟化点:98~106℃、 酸価:6~12mgKOH/g〕
ロジン変性特殊合成樹脂:ハリマ化成社製、ハリタックAQ-90A〔軟化点:100~110℃、 酸価:100~110mgKOH/g〕
不均化ロジンエステル:荒川化学工業社製、パインクリスタルKE-100〔軟化点:95~105℃、 酸価:2~10mgKOH/g〕
水添ロジンエステル:荒川化学工業社製、エステルガムH〔軟化点:68℃以上、 酸価:10mgKOH/g以下〕
不均化ロジンエステル:荒川化学工業社製、スーパーエステルA-100〔軟化点:95~105℃、 酸価:10mgKOH/g以下〕
ロジンエステル:荒川化学工業社製、エステルガム105〔軟化点:100~110℃、 酸価:20mgKOH/g以下〕
超淡色ロジン:荒川化学工業社製、パインクリスタルKR-612〔軟化点:80~90℃、 酸価:160~175mgKOH/g〕
マレイン酸ロジン:荒川化学工業社製、マルキードNo.8〔軟化点:130~140℃、 酸価:20~39mgKOH/g〕
硫黄:鶴見化学工業社製、5%油入微粉硫黄
有機過酸化物:日油社製、パークミル(登録商標)D
チウラム系加硫促進剤:大内新興化学工業社製、ノクセラーTOT-N
チアゾール系加硫促進剤:大内新興化学工業社製、ノクセラーDM
酸化亜鉛:三井金属鉱業製、酸化亜鉛2種
ステアリン酸:日油社製、つばき
カーボンブラック:東海カーボン社製、シースト3
炭酸カルシウム:備北粉化工業社製、BF-300
本開示のシート搬送ローラ用ゴム組成物によれば、高い摩擦係数を有するシート搬送ローラを得ることができる。
1:シート搬送ローラ、2:ローラ本体、3:通孔、4:シャフト、10:板、11:紙、12:ロードセル
本開示(1)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有するゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを含有することを特徴とする。
本開示(2)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、前記ゴム成分中のエチレン・α-オレフィン共重合体の含有率は、50質量%以上である本開示(1)に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
本開示(3)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、前記ゴム成分100質量部に対して、前記ロジンおよび/またはロジン誘導体を1質量部~15質量部含有する本開示(1)または(2)に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
本開示(4)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、加硫剤として有機過酸化物を含有し、前記ロジンおよび/またはロジン誘導体の酸価が50mgKOH/g以下である本開示(1)~(3)のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
本開示(5)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、前記ゴム成分として、さらにジエン系ゴムを含有する本開示(1)~(4)のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
本開示(6)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、前記ジエン系ゴムが、イソプレンゴムおよび/または天然ゴムである本開示(5)に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
本開示(7)のシート搬送ローラ用ゴム組成物は、前記シートは、枚葉紙である本開示(1)~(6)のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物である。
本開示(8)のシート搬送ローラは、本開示(1)~(7)のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物を硬化して得られたことを特徴とする。
本開示(9)のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法は、エチレン・α-オレフィン共重合体を含有するゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上の温度で混錬して混錬物を得る第1工程を有することを特徴とする。
本開示(10)のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法は、前記混錬物に加硫剤を混合する第2工程を有する本開示(9)に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法である。

Claims (10)

  1. エチレン・α-オレフィン共重合体を含有するゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを含有することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物。
  2. 前記ゴム成分中のエチレン・α-オレフィン共重合体の含有率は、50質量%以上である請求項1に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
  3. 前記ゴム成分100質量部に対して、前記ロジンおよび/またはロジン誘導体を1質量部~15質量部含有する請求項1または2に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
  4. 加硫剤として有機過酸化物を含有し、前記ロジンおよび/またはロジン誘導体の酸価が50mgKOH/g以下である請求項1~3のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
  5. 前記ゴム成分として、さらにジエン系ゴムを含有する請求項1~4のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
  6. 前記ジエン系ゴムが、イソプレンゴムおよび/または天然ゴムである請求項5に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
  7. 前記シートは、枚葉紙である請求項1~6のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物。
  8. 請求項1~7のいずれか一項に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物を硬化して得られたことを特徴とするシート搬送ローラ。
  9. エチレン・α-オレフィン共重合体を含有するゴム成分と、ロジンおよび/またはロジン誘導体とを、ロジンおよび/またはロジン誘導体の軟化点以上の温度で混錬して混錬物を得る第1工程を有することを特徴とするシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法。
  10. 前記混錬物に加硫剤を混合する第2工程を有する請求項9に記載のシート搬送ローラ用ゴム組成物の製造方法。
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