再使用のために、クロマトグラフィー樹脂などのクロマトグラフィー材料を浄化又は再生するための方法が、本明細書で提供される。クロマトグラフィー再使用は、クロマトグラフィー材料が、同じ産物又は異なる産物との使用のために浄化及び/又は再生される、切り替え手順である。本発明の方法は、大規模、例えば、製造規模のクロマトグラフィー材料の再生のために使用され得る。樹脂、例えば、プロテインA樹脂が、複数の産物のために再使用される場合に、顕著なコスト節約が達成され得る。一部の実施態様では、この浄化手順は、引き続く精製試料中への、インタクトなタンパク質、例えば、IgGの、1ppm未満のキャリーオーバーを生じる。一部の実施態様では、この低いタンパク質キャリーオーバーは、安全域中のそのセットの103分の1のタンパク質キャリーオーバーであり、同じ樹脂が、複数の産物を精製するために使用され得ることを実証する。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィーカラム中に存在する。
I.定義
用語「ポリペプチド」又は「タンパク質」は、本明細書で相互交換可能に使用されて、任意の長さのアミノ酸のポリマーを指す。このポリマーは、直鎖又は分岐鎖であり得、修飾されたアミノ酸を含み得、非アミノ酸によって中断され得る。これらの用語は、天然に修飾されているか、あるいは介入、例えば、ジスルフィド結合の形成、グリコシル化、脂質化、アセチル化、リン酸化又は任意の他の操作若しくは修飾、例えば、標識化成分とのコンジュゲーションによって修飾されている、アミノ酸ポリマーもまた包含する。アミノ酸の1又は複数のアナログ(例えば、非天然アミノ酸などを含む)、並びに当該技術分野で公知の他の修飾を含むポリペプチドなどもまた、この定義内に含まれる。用語「ポリペプチド」及び「タンパク質」は、本明細書で使用する場合、抗体を具体的に包含する。
「精製された」ポリペプチド(例えば、抗体又はイムノアドヘシン)とは、そのポリペプチドが、そのポリペプチドがその天然の環境中に存在するとき並びに/又は実験室条件下で最初に合成及び/若しくは増幅されたときよりも純粋な形態で存在するように、純度において増加されていることを意味する。純度は、相対的用語であり、絶対的純度を必ずしも意味しない。
目的の抗原、例えば、腫瘍関連ポリペプチド抗原標的を「結合する」ポリペプチドは、そのポリペプチドが、抗原を発現する細胞又は組織を標的化することにおいて診断剤及び/又は治療剤として有用であり、他のポリペプチドと顕著に交差反応しないように、十分な親和性で抗原に結合するポリペプチドである。かかる実施態様では、「非標的」ポリペプチドに対するこのポリペプチドの結合の程度は、蛍光活性化セルソーティング(FACS)解析又は放射性免疫沈降法(RIA)によって決定されるように、その特定の標的ポリペプチドに対するこのポリペプチドの結合の約10%未満である。
標的分子に対するポリペプチドの結合に関して、用語「特異的結合」又は、特定のポリペプチド若しくは特定のポリペプチド標的上のエピトープ「に特異的に結合する」若しくはそれら「に対して特異的」であるとは、非特異的相互作用とは測定可能に異なる結合を意味する。特異的結合は、例えば、一般に、結合活性を有さない類似の構造の分子であるコントロール分子の結合と比較して、分子の結合を決定することによって、測定され得る。例えば、特異的結合は、標的と類似したコントロール分子、例えば、過剰量の非標識化標的との競合によって、決定され得る。この場合、特異的結合は、プローブに対する標識された標的の結合が、過剰量の標識されていない標的によって競合的に阻害される場合に示される。
用語「抗体」は、本明細書では、最も広い意味で使用され、具体的には、モノクローナル抗体、ポリクローナル抗体、少なくとも2つのインタクトな抗体から形成される多重特異性抗体(例えば、二重特異性抗体)、及びそれらが所望の生物活性を示す限りにおいて抗体断片を、カバーする。用語「免疫グロブリン」(Ig)は、本明細書では、抗体と相互交換可能に使用される。
抗体は、免疫グロブリンフォールドに全て基づく変動する構造を有する、天然に存在する免疫グロブリン分子である。例えば、IgG抗体は、機能性抗体を形成するようにジスルフィド結合した2つの「重」鎖及び2つの「軽」鎖を有する。各重鎖及び軽鎖自体は、「定常」(C)領域及び「可変」(V)領域を含む。V領域は、抗体の抗原結合特異性を決定するが、C領域は、免疫エフェクターとの非抗原特異的相互作用における構造的支持及び機能を提供する。抗体又は抗体の抗原結合性断片の抗原結合特異性は、抗体が特定の抗原に特異的に結合する能力である。
抗体の抗原結合特異性は、V領域の構造特徴によって決定される。可変性は、可変ドメインの110アミノ酸のスパンにわたって均等に分布するわけではない。その代り、V領域は、各々9−12アミノ酸長である「超可変領域」と呼ばれる極度の可変性のより短い領域によって分離された、15−30アミノ酸のフレームワーク領域(FR)と呼ばれる比較的不変のストレッチからなる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、各々、ループ接続を形成し、一部の例ではβ−シート構造の一部を形成する3つの超可変領域(「HVR」)によって接続された、大部分はβ−シート立体配置を採る、4つのFRを含む。各鎖中の超可変領域は、これらのFRによってごく近接して一緒に保持され、他方の鎖由来の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原に対する抗体の結合に直接は関与しないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)における抗体の関与などの、種々のエフェクター機能を示す。
各V領域は、典型的には、3つの超可変領域、例えば、その各々が「超可変ループ」を含む相補性決定領域(「CDR」)、及び4つのフレームワーク領域を含む。従って、抗体結合部位、特定の所望の抗原に実質的な親和性で結合するために必要とされる最小の構造単位は、典型的には、3つのCDR、及び、適切なコンフォメーションでCDRを保持及び提示するための、それらの間に散在された、少なくとも3つ、好ましくは4つのフレームワーク領域を含む。古典的な四鎖抗体は、VHドメイン及びVLドメインによって協働して規定される抗原結合部位を有する。特定の抗体、例えば、ラクダ抗体及びサメ抗体は、軽鎖を欠き、重鎖のみによって形成される結合部位に依存する。VHとVLとの間での協働の非存在下で重鎖又は軽鎖単独によって結合部位が形成される、単一ドメイン操作免疫グロブリンが、調製され得る。
用語「可変」とは、可変ドメインの特定の部分が、抗体の間で配列において広範囲に異なっており、その特定の抗原に対する各特定の抗体の結合及び特異性において使用されるという事実を指す。しかし、可変性は、抗体の可変ドメイン全体に均等に分布するわけではない。可変性は、軽鎖可変ドメイン及び重鎖可変ドメインの両方において、超可変領域と呼ばれる3つのセグメントに集中している。可変ドメインのより高度に保存された部分は、フレームワーク領域(FR)と呼ばれる。天然重鎖及び軽鎖の可変ドメインは、各々、ループ接続を形成し、一部の例ではβ−シート構造の一部を形成する3つの超可変領域によって接続された、大部分はβ−シート立体配置を採る、4つのFRを含む。各鎖中の超可変領域は、これらのFRによってごく近接して一緒に保持され、他方の鎖由来の超可変領域と共に、抗体の抗原結合部位の形成に寄与する(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, MD. (1991)を参照のこと)。定常ドメインは、抗原に対する抗体の結合に直接は関与しないが、抗体依存性細胞傷害(ADCC)における抗体の関与などの、種々のエフェクター機能を示す。
用語「超可変領域」とは、本明細書で使用する場合、抗原結合を担う抗体のアミノ酸残基を指す。この超可変領域は、「相補性決定領域」又は「CDR」由来のアミノ酸残基(例えば、VL中のおよそ約残基24−34(L1)、50−56(L2)及び89−97(L3)並びにVH中のおよそ約31−35B(H1)、50−65(H2)及び95−102(H3)(Kabat等, Sequences of Proteins of Immunological Interest, 第5版Public Health Service, National Institutes of Health, Bethesda, Md. (1991))並びに/又は「超可変ループ」由来のアミノ酸残基(例えば、VL中の残基26−32(L1)、50−52(L2)及び91−96(L3)並びにVH中の26−32(H1)、52A−55(H2)及び96−101(H3)(Chothia及びLesk J. Mol. Biol. 196:901-917 (1987))を含み得る。
「フレームワーク」又は「FR」残基は、本明細書で規定される超可変領域残基以外の可変ドメイン残基である。
「抗体断片」は、好ましくはその抗原結合領域を含む、インタクトな抗体の一部分を含む。抗体断片の例には、Fab、Fab’、F(ab’)2及びFv断片;ダイアボディ;タンデムダイアボディ(taDb)、直鎖状抗体(例えば、米国特許第5641870号、実施例2;Zapata等, Protein Eng. 8(10):1057-1062 (1995));ワンアームド抗体、単一可変ドメイン抗体、ミニボディ、単鎖抗体分子;抗体断片から形成された多重特異性抗体(例えば、Db−Fc、taDb−Fc、taDb−CH3、(scFV)4−Fc、ジ−scFv、ビ−scFv又はタンデム(ジ、トリ)−scFvが含まれるがこれらに限定されない);及び二重特異性T細胞エンゲージャー(engagers)(BiTE)が含まれる。
抗体のパパイン消化は、各々が単一の抗原結合部位を有する「Fab」断片と呼ばれる2つの同一の抗原結合性断片、及びその名称が容易に結晶化するその能力を反映している残存「Fc」断片を生じる。ペプシン処理は、2つの抗原結合部位を有し、抗原を架橋することがなおも可能である、F(ab’)2断片を生じる。
「Fv」は、完全な抗原認識及び抗原結合部位を含む最小の抗体断片である。この領域は、緊密な非共有結合的会合での、1つの重鎖可変ドメイン及び1つの軽鎖可変ドメインのダイマーからなる。この立体配置では、各可変ドメインの3つの超可変領域が相互作用して、VH−VLダイマーの表面上の抗原結合部位を規定する。集合的に、これら6つの超可変領域が、抗体に抗原結合特異性を付与する。しかし、単一可変ドメイン(又は抗原に対して特異的な3つの超可変領域のみを含むFvの半分)であっても、結合部位全体よりも低い親和性ではあるが、抗原を認識し結合する能力を有する。
Fab断片もまた、軽鎖の定常ドメイン及び重鎖の第1の定常ドメイン(CH1)を含む。Fab’断片は、抗体ヒンジ領域由来の1又は複数のシステインを含む重鎖CH1ドメインのカルボキシ末端における数個の残基の付加によって、Fab断片とは異なる。Fab’−SHは、定常ドメインのシステイン残基(一又は複数)が少なくとも1つの遊離チオール基を保有するFab’についての、本明細書での命名である。F(ab’)2抗体断片は、元々、それらの間にヒンジシステインを有するFab’断片の対として産生された。抗体断片の他の化学カップリングもまた公知である。
任意の脊椎動物種由来の抗体(免疫グロブリン)の「軽鎖」は、それらの定常ドメインのアミノ酸配列に基づいて、カッパ(κ)及びラムダ(λ)と呼ばれる2つの明らかに異なる型のうちの1つに割り当てられる。
それらの重鎖の定常ドメインのアミノ酸配列に依存して、抗体は、異なるクラスに割り当てられ得る。5つの主要なクラスのインタクトな抗体:IgA、IgD、IgE、IgG及びIgMが存在し、これらのいくつかは、サブクラス(アイソタイプ)、例えば、IgG1、IgG2、IgG3、IgG4、IgA及びIgA2へとさらに分割され得る。異なるクラスの抗体に対応する重鎖定常ドメインは、それぞれ、α、δ、ε、γ及びμと呼ばれる。異なるクラスの免疫グロブリンのサブユニット構造及び3次元立体配置は、周知である。
「単鎖Fv」又は「scFv」抗体断片は、抗体のVHドメイン及びVLドメインを含み、これらのドメインは、単一ポリペプチド鎖中に存在する。一部の実施態様では、このFvポリペプチドは、scFvが抗原結合にとって望ましい構造を形成することを可能にする、VHドメインとVLドメインとの間のポリペプチドリンカーをさらに含む。scFvの概説については、Pluckthun、The Pharmacology of Monoclonal Antibodies、第113巻、Rosenburg及びMoore編、Springer−Verlag、New York、pp.269−315(1994)を参照のこと。
用語「ダイアボディ」とは、2つの抗原結合部位を有する小さい抗体断片を指し、これらの断片は、同じポリペプチド鎖中に、軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)(VH−VL)を含む。同じ鎖上の2つのドメイン間のペアリングを可能にするには短すぎるリンカーを使用することによって、これらのドメインは、別の鎖の相補的ドメインとペアリングさせられて、2つの抗原結合性部位を創出する。ダイアボディは、例えば、欧州404097号;国際公開第93/11161号;及びHollinger等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA、90:6444−6448(1993)に、より完全に記載されている。
用語「多重特異性抗体」は、最も広い意味で使用され、ポリエピトープ特異性を有する抗体を具体的にカバーする。かかる多重特異性抗体には、VHVL単位がポリエピトープ特異性を有する、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体、各VHVL単位が異なるエピトープに結合する、2以上のVLドメイン及びVHドメインを有する抗体、各単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する、2以上の単一可変ドメインを有する抗体、完全長抗体、抗体断片、例えば、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三機能性抗体、共有結合的に又は非共有結合的に結合された抗体断片が含まれるが、これらに限定されない。「ポリエピトープ特異性」とは、同じ又は異なる標的(一又は複数)上の2以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を指す。「単一特異性」とは、1つのエピトープだけに結合する能力を指す。一実施態様によれば、多重特異性抗体は、5μMから0.001pM、3μMから0.001pM、1μMから0.001pM、0.5μMから0.001pM又は0.1μMから0.001pMの親和性で各エピトープに結合するIgG抗体である。
表現「単一ドメイン抗体」(sdAb)又は「単一可変ドメイン(SVD)抗体」は、一般に、単一可変ドメイン(VH又はVL)が抗原結合を付与できる抗体を指す。言い換えると、この単一可変ドメインは、標的抗原を認識するために、別の可変ドメインと相互作用する必要がない。単一ドメイン抗体の例には、ラクダ科(ラマ及びラクダ)及び軟骨魚類(例えば、コモリザメ)から誘導されるもの、並びにヒト抗体及びマウス抗体から組換え方法により誘導されるものが含まれる(Nature (1989) 341:544-546;Dev Comp Immunol (2006) 30:43-56;Trend Biochem Sci (2001) 26:230-235; Trends Biotechnol (2003):21:484-490;国際公開第2005/035572号;国際公開第03/035694号;Febs Lett (1994) 339:285-290;国際公開第00/29004号;国際公開第02/051870号)。
用語「モノクローナル抗体」とは、本明細書で使用する場合、実質的に均一な抗体の集団から取得された抗体を指し、即ち、集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の産生の間に生じ得る可能な変異体を除き、同一である及び/又は同じエピトープを結合し、かかる変異体は、一般には、微量で存在する。異なる決定基(エピトープ)に対する異なる抗体を典型的に含むポリクローナル抗体調製物とは対照的に、各モノクローナル抗体は、抗原上の単一の決定基に対するものである。それらの特異性に加えて、モノクローナル抗体は、他の免疫グロブリンが夾雑していないという点で、有利である。修飾語句「モノクローナル」は、抗体の実質的に均一な集団から取得されるとして抗体の特性を示し、任意の特定の方法による抗体の産生を必要とすると解釈すべきではない。例えば、本明細書に提供される方法に従って使用されるモノクローナル抗体は、Kohler等、Nature 256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法によって作製され得るか、又は組換えDNA方法によって作製され得る(例えば、米国特許第4816567号を参照のこと)。「モノクローナル抗体」はまた、例えば、Clackson等、Nature 352:624−628(1991)及びMarks等、J.Mol.Biol.222:581−597(1991)に記載された技術を使用して、ファージ抗体ライブラリーから単離され得る。
本明細書のモノクローナル抗体には、具体的には、それらが所望の生物活性を示す限り、重鎖及び/又は軽鎖の一部分が、特定の種から誘導される又は特定の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配意と同一又は相同であり、鎖(一又は複数)の残部が、別の種から誘導される又は別の抗体クラス若しくはサブクラスに属する抗体中の対応する配意と同一又は相同である、「キメラ」抗体(免疫グロブリン)、並びにかかる抗体の断片が含まれる(米国特許第4816567号;Morrison等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 81:6851-6855 (1984))。本明細書の目的のキメラ抗体には、非ヒト霊長類(例えば、旧世界ザル、例えば、ヒヒ、アカゲザル又はカニクイザル)及びヒト定常領域配列から誘導される可変ドメイン抗原結合配列を含む「霊長類化」抗体が含まれる(米国特許第5693780号)。
非ヒト(例えば、マウス)抗体の「ヒト化」形態は、非ヒト免疫グロブリンから誘導される最小配列を含むキメラ抗体である。ほとんどの部分について、ヒト化抗体は、レシピエントの超可変領域由来の残基が、非ヒト種(ドナー抗体)、例えば、所望の特異性、親和性及び能力を有するマウス、ラット、ウサギ又は非ヒト霊長類の超可変領域由来の残基によって置き換えられた、ヒト免疫グロブリン(レシピエント抗体)である。一部の場合には、ヒト免疫グロブリンのフレームワーク領域(FR)残基が、対応する非ヒト残基によって置き換えられる。さらに、ヒト化抗体は、レシピエント抗体中にもドナー抗体中にも見出されない残基を含み得る。これらの修飾は、抗体性能をさらに精緻化するために行われる。一般に、ヒト化抗体は、少なくとも1つの、典型的には2つの可変ドメインの実質的に全てを含み、ここで、超可変ループの全て又は実質的に全てが非ヒト免疫グロブリンの超可変ループと対応し、FRの全て又は実質的に全てが、上記FR置換(一又は複数)を除いて、ヒト免疫グロブリン配列のFRである。このヒト化抗体はまた、任意選択的に、免疫グロブリン定常領域の少なくとも一部分、典型的には、ヒト免疫グロブリンのものを含む。さらなる詳細については、Jones等、Nature 321:522−525(1986);Riechmann等、Nature 332:323−329(1988);及びPresta、Curr.Op.Struct.Biol.2:593−596(1992)を参照のこと。
本明細書の目的のために、「インタクトな抗体」は、重鎖及び軽鎖可変ドメイン並びにFc領域を含む抗体である。定常ドメインは、天然配列定常ドメイン(例えば、ヒト天然配列定常ドメイン)又はそのアミノ酸配列変異体であり得る。好ましくは、インタクトな抗体は、1又は複数のエフェクター機能を有する。
「天然抗体」は、通常、2つの同一な軽(L)鎖及び2つの同一な重(H)鎖から構成される、約150,000ダルトンのヘテロ四量体糖タンパク質である。各軽鎖は、1つの共有結合的ジスルフィド結合によって重鎖に結合されるが、ジスルフィド結合の数は、異なる免疫グロブリンアイソタイプの重鎖の間で変動する。各重鎖及び軽鎖はまた、一定の間隔を開けた鎖内ジスルフィド架橋を有する。各重鎖は、一方の末端において、可変ドメイン(VH)とその後のいくつかの定常ドメインとを有する。各軽鎖は、一方の末端において可変ドメイン(VL)を有し、その他方の末端において定常ドメインを有する;軽鎖の定常ドメインは、重鎖の第1の定常ドメインとアラインされ、軽鎖可変ドメインは、重鎖の可変ドメインとアラインされる。特定のアミノ酸残基が、軽鎖可変ドメインと重鎖可変ドメインとの間の接触面を形成すると考えられる。
「ネイキッド抗体」は、細胞傷害性部分又は放射標識などの異種分子にコンジュゲートされていない抗体(本明細書で規定される)である。
一部の実施態様では、抗体の「エフェクター機能」とは、抗体のFc領域(天然配列Fc領域又はアミノ酸配列変異体Fc領域)に帰属する生物活性を指し、抗体アイソタイプによって変動する。抗体エフェクター機能の例には、C1q結合及び補体依存性細胞傷害;Fc受容体結合;抗体依存性細胞媒介性細胞傷害(ADCC);食作用;細胞表面受容体の下方調節が含まれる。
「抗体依存性細胞媒介性細胞傷害」及び「ADCC」とは、Fc受容体(FcR)を発現する非特異的細胞傷害性細胞(例えば、ナチュラルキラー(NK)細胞、好中球及びマクロファージ)が、標的細胞上の結合した抗体を認識し、標的細胞の溶解を引き続いて引き起こす、細胞媒介性反応を指す。ADCCを媒介するための初代細胞、NK細胞は、FcγRIIIのみを発現するが、単球は、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIを発現する。造血細胞上のFcR発現は、Ravetch及びKinet、Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991)のp464の表3にまとめられる。目的の分子のADCC活性を評価するために、米国特許第5500362号又は米国特許第5821337号に記載されるものなどのインビトロADCCアッセイが、実施され得る。かかるアッセイのために有用なエフェクター細胞には、末梢血単核細胞(PBMC)及びナチュラルキラー(NK)細胞が含まれる。あるいは、又はさらに、目的の分子のADCC活性は、インビボで、例えば、Clynes等、Proc.Natl.Acad.Sci.(USA)95:652−656(1998)に開示されるものなどの動物モデルにおいて、評価され得る。
「ヒトエフェクター細胞」は、1又は複数のFcRを発現し、エフェクター機能を実施する白血球である。一部の実施態様では、これらの細胞は、少なくともFcγRIIIを発現し、ADCCエフェクター機能を実施する。ADCCを媒介するヒト白血球の例には、末梢血単核細胞(PBMC)、ナチュラルキラー(NK)細胞、単球、細胞傷害性T細胞及び好中球が含まれ、PBMC及びNK細胞が好ましい。
用語「Fc受容体」又は「FcR」は、抗体のFc領域に結合する受容体を記述するために使用される。一部の実施態様では、このFcRは、天然配列ヒトFcRである。さらに、好ましいFcRは、IgG抗体を結合するものであり(ガンマ受容体)、これには、対立遺伝子変異体及びこれらの受容体の選択的スプライシング形態を含む、FcγRI、FcγRII及びFcγRIIIサブクラスの受容体が含まれる。FcγRII受容体には、FcγRIIA(「活性化受容体」)及びFcγRIIB(「阻害受容体」)が含まれ、これらは、その細胞質ドメインにおいて主に異なる類似のアミノ酸配列を有する。活性化受容体FcγRIIAは、その細胞質ドメイン中に、免疫受容活性化チロシンモチーフ(ITAM)を含む。阻害受容体FcγRIIBは、その細胞質ドメイン中に、免疫受容体チロシン−ベース阻害モチーフ(ITIM)を含む(Daeron, Annu. Rev. Immunol. 15:203-234 (1997)を参照のこと)。FcRは、Ravetch及びKinet、Annu.Rev.Immunol 9:457−92(1991);Capel等、Immunomethods 4:25−34(1994);並びにde Haas等、J.Lab.Clin.Med.126:330−41(1995)に概説がある。将来同定されるものを含む他のFcRは、本明細書で用語「FcR」に包含される。この用語はまた、胎児への母系IgGの移行を担う新生児受容体FcRnを含む(Guyer等, J. Immunol. 117:587 (1976)及びKim等, J. Immunol. 24:249 (1994))。
用語「順次的」とは、クロマトグラフィーに関して本明細書で使用する場合、第1のクロマトグラフィーとその後の第2のクロマトグラフィーとを有することを指す。さらなる工程が、第1のクロマトグラフィーと第2のクロマトグラフィーとの間に含まれ得る。
用語「連続的」とは、クロマトグラフィーに関して本明細書で使用する場合、直接又は2つのクロマトグラフィー材料間の連続的フローを可能にするいくつかの他の機構を介して接続された第1のクロマトグラフィー材料及び第2のクロマトグラフィー材料を有することを指す。
用語「単離された」とは、本明細書で使用する場合、典型的にはそれと共に天然に見出される又は産生される成分の少なくとも一部から分離された分子を指す。例えば、ポリペプチドは、それが産生された細胞の成分の少なくとも一部から分離される場合、「単離された」と言われる。ポリペプチドが発現後に細胞によって分泌される場合、そのポリペプチドを産生した細胞からそのポリペプチドを含む上清を物理的に分離することは、そのポリペプチドを「単離する」とみなされる。同様に、ポリヌクレオチドは、典型的にそれが天然に見出されるより大きいポリヌクレオチド(例えば、DNAポリヌクレオチドの場合、例えば、ゲノムDNA又はミトコンドリアDNAなど)の一部でない場合、又は例えばRNAポリヌクレオチドの場合にはそれが産生された細胞の成分の少なくとも一部から分離される場合、「単離された」と言われる。従って、宿主細胞の内側のベクター中に含まれるDNAポリヌクレオチドは、「単離された」と言われる場合もある。
「一日曝露許容量(ADE)」は、本明細書で使用する場合、個体が寿命にわたってこの用量又はより低い用量に曝露される場合に、有害健康事象又は望ましくない生理的影響を引き起こす可能性が低い、物質特異的用量である(Teschner, W.等, Vox Sang. 2007, 92:42-55; 食品医薬品局, HHS. Guidance for Industry Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers. Rockville, MD. 2005年7月、ワールドワイドウェブ上の、2012年8月7日にアクセスされたgoogle.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&ved=0CE8QFjAA&url=http%3A%2F%2Fwww.fda.gov%2Fdownloads%2FDrugs%2F...%2FGuidances%2FUCM078932.pdf&ei=f4QhUJv4K9Ov6gGQ-4DgAg&usg=AFQjCNFbTE75U0nDbFpfdpxK85uWXT8frgに記載;European Medicines Agency. Impurities: Residual Solvents, Note for Guidance on Impurities: Residual Solvents (CPMP/ICH/283/95). London, UK、1997年9月、ワールドワイドウェブ上の、2012年8月7日にアクセスされたema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/regulation/general/general_content_000431.jsp&mid=WC0b01ac0580029593に記載)。ADEに加えて、IgGについての「推定一日摂取量(EDI)」は、1用量当たり投与されるIgGの量に基づいて決定される。
「夾雑物」とは、所望のポリペプチド産物とは異なる材料を指す。夾雑物としては、これらに限定されないが、以下:宿主細胞材料、例えば、CHOP;浸出されたプロテインA;核酸;所望のポリペプチドの変異体、断片、凝集物又は誘導体;別のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス夾雑物;細胞培養培地成分などが挙げられる。一部の例では、この夾雑物は、これらに限定されないが、例えば、細菌細胞、例えば、大腸菌(E.coli)細胞、昆虫細胞、原核細胞、真核細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、トリ細胞、真菌細胞などの細胞由来の宿主細胞タンパク質(HCP)であり得る。
本明細書に記載される値又はパラメーターの「約」への言及は、その値又はパラメーター自体に対するバリエーションを含む(及び記述する)。例えば、「約X」に言及する記述は、「X」の記述を含む。
本明細書及び添付の特許請求の範囲で使用する場合、単数形「1つの(a)」、「1つの(an)」及び「その(the)」は、文脈が明らかに他を示さない限り、複数形の指示対象を含む。本明細書に記載される本発明の態様及びバリエーションは、態様及びバリエーション「からなる」並びに/又は態様及びバリエーション「から本質的になる」を含むことが理解される。
II.カラム浄化の方法
(A)クロマトグラフィー
本発明は、再使用のためにクロマトグラフィー材料を浄化又は再生するための方法を提供する。一部の実施態様では、これらのクロマトグラフィー材料は、大規模、例えば、ポリペプチド産物の製造規模の産生のために使用される。
一部の実施態様では、この方法は、a)この材料に、約2材料容積以上の溶出バッファーを通過させる工程であって、この溶出バッファーは、約pH2.9の約0.15Mの酢酸を含む、工程、b)約10分間から約30分間までの範囲の時間にわたって、溶出バッファー中でこの材料を静的に保持する工程、c)この材料に、約2材料容積以上の溶出バッファーを通過させる工程、及びd)この材料に、約2材料容積以上の再生バッファーを通過させる工程であって、この再生バッファーは、約0.1NのNaOH、pH13である、工程を含む。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィーカラム中に存在する。一部の実施態様では、このクロマトグラフィーカラムは、大規模、例えば、抗体産物などのポリペプチド産物の製造規模の産生のために使用される。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、プロテインAクロマトグラフィー材料である。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、複数の抗体産物を精製するために使用される。一部の実施態様では、浄化する方法の後のキャリーオーバーは、<0.25mg/mLの総タンパク質、<1ppmのIgG断片、<1ppmの浸出されたプロテインA、<1μg/mLのCZE LIF、<1ppmのCHOP及び<1pg/mLのCHO DNAのうち1又は複数を含む。
一部の実施態様では、この方法は、a)この材料に、約2材料容積の溶出バッファーを通過させる工程であって、この溶出バッファーは、約pH2.9の約0.15Mの酢酸を含む、工程、b)約30分間にわたって、溶出バッファー中でこの材料を静的に保持する工程、c)この材料に、約2材料容積の溶出バッファーを通過させる工程、及びd)この材料に、約4材料容積の再生バッファーを通過させる工程であって、この再生バッファーは、約pH13の約0.1NのNaOHである、工程を含む。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィーカラム中に存在する。一部の実施態様では、このクロマトグラフィーカラムは、大規模、例えば、抗体産物などのポリペプチド産物の製造規模の産生のために使用される。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、プロテインAクロマトグラフィー材料である。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、複数の抗体産物を精製するために使用される。一部の実施態様では、浄化する方法の後のキャリーオーバーは、<0.25mg/mLの総タンパク質、<1ppmのIgG断片、<1ppmの浸出されたプロテインA、<1μg/mLのCZE LIF、<1ppmのCHOP及び<1pg/mLのCHO DNAのうち1又は複数を含む。
一部の実施態様では、この方法は、a)この材料に、約2材料容積の溶出バッファーを通過させる工程であって、この溶出バッファーは、約pH2.9の約0.15Mの酢酸を含む、工程、b)約30分間にわたって、溶出バッファー中でこの材料を静的に保持する工程、c)この材料に、約2材料容積の溶出バッファーを通過させる工程、d)この材料に、約2.5材料容積の再生バッファーを通過させる工程であって、この再生バッファーは、約pH13の約0.1NのNaOHである、工程、e)約30分間にわたって、再生バッファー中でこの材料を静的に保持する工程、f)この材料に、約2.5材料容積の再生バッファーを通過させる工程を含む。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィーカラム中に存在する。一部の実施態様では、このクロマトグラフィーカラムは、大規模、例えば、抗体産物などのポリペプチド産物の製造規模の産生のために使用される。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、プロテインAクロマトグラフィー材料である。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、複数の抗体産物を精製するために使用される。一部の実施態様では、浄化する方法の後のキャリーオーバーは、<0.25mg/mLの総タンパク質、<1ppmのIgG断片、<1ppmの浸出されたプロテインA、<1μg/mLのCZE LIF、<1ppmのCHOP及び<1pg/mLのCHO DNAのうち1又は複数を含む。
一部の実施態様では、この方法は、a)この材料に、約2材料容積の平衡化バッファーを通過させる工程であって、この平衡化バッファーは、約pH7.1の、約25mMのトリス、約25mMのNaClを含む、工程、b)約30分間にわたって、平衡化バッファー中でこの材料を静的に保持する工程、c)この材料に、約2材料容積の平衡化バッファーを通過させる工程、d)この材料に、約2材料容積の溶出バッファーを通過させる工程であって、この溶出バッファーは、約pH2.8の約0.15Mの酢酸である、工程、e)約30分間にわたって、溶出バッファー中でこの材料を静的に保持する工程、f)この材料に、約2材料容積の溶出バッファーを通過させる工程、g)この材料に、約2材料容積の再生バッファーを通過させる工程であって、この再生バッファーは、pH13の約0.1NのNaOHである、工程、h)約30分間にわたって、再生バッファー中でこの材料を静的に保持する工程、i)この材料に、約2材料容積の再生バッファーを通過させる工程を含む。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィーカラム中に存在する。一部の実施態様では、このクロマトグラフィーカラムは、大規模、例えば、抗体産物などのポリペプチド産物の製造規模の産生のために使用される。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、プロテインAクロマトグラフィー材料である。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、複数の抗体産物を精製するために使用される。一部の実施態様では、浄化する方法の後のキャリーオーバーは、<0.25mg/mLの総タンパク質、<1ppmのIgG断片、<1ppmの浸出されたプロテインA、<1μg/mLのCZE LIF、<1ppmのCHOP及び<1pg/mLのCHO DNAのうち1又は複数を含む。
一部の実施態様では、この方法は、a)この材料に、約4材料容積の平衡化バッファーを通過させる工程であって、この平衡化バッファーは、約pH7.1の、約25mMのトリス、約25mMのNaClを含む、工程、b)6サイクルの、i)この材料に、約3材料容積の溶出バッファーを通過させること、ここでこの溶出バッファーは、約0.15Mの酢酸、pH2.8である;ii)約10分間にわたって、溶出バッファー中でこの材料を静的に保持すること;iii)この材料に、約1材料容積の溶出バッファーを通過させること;iv)この材料に、約3材料容積の再生バッファーを通過させること、ここでこの再生バッファーは、約pH13の約0.1NのNaOHである;v)約10分間にわたって、再生バッファー中でこの材料を静的に保持すること;vi)この材料に、約1材料容積の再生バッファーを通過させること、を含む工程を実施する工程を含む。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィーカラム中に存在する。一部の実施態様では、このクロマトグラフィーカラムは、大規模、例えば、抗体産物などのポリペプチド産物の製造規模の産生のために使用される。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、プロテインAクロマトグラフィー材料である。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、複数の抗体産物を精製するために使用される。一部の実施態様では、浄化する方法の後のキャリーオーバーは、<0.25mg/mLの総タンパク質、<1ppmのIgG断片、<1ppmの浸出されたプロテインA、<1μg/mLのCZE LIF、<1ppmのCHOP及び<1pg/mLのCHO DNAのうち1又は複数を含む。
一部の実施態様では、この方法は、6サイクルの、a)この材料に、約3材料容積の溶出バッファーを通過させる工程であって、この溶出バッファーは、約pH2.8の約0.15Mの酢酸である、工程、b)約15分間にわたって、溶出バッファー中でこの材料を静的に保持する工程、c)この材料に、約1材料容積の溶出バッファーを通過させる工程、d)この材料に、約3材料容積の再生バッファーを通過させる工程であって、この再生バッファーは、約pH13の約0.1NのNaOHである、工程、e)約15分間にわたって、再生バッファー中でこの材料を静的に保持する工程、f)この材料に、約1材料容積の再生バッファーを通過させる工程、g)この材料に、約3材料容積の貯蔵バッファーを通過させる工程であって、この貯蔵バッファーは、約pH5.0の、約100mMの酢酸ナトリウム、約2%のベンジルアルコールである、工程、e)約15分間にわたって、貯蔵バッファー中でこの材料を静的に保持する工程、f)この材料に、約1材料容積の貯蔵バッファーを通過させる工程を含む。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィーカラム中に存在する。一部の実施態様では、このクロマトグラフィーカラムは、大規模、例えば、抗体産物などのポリペプチド産物の製造規模の産生のために使用される。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、プロテインAクロマトグラフィー材料である。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、複数の抗体産物を精製するために使用される。一部の実施態様では、浄化する方法の後のキャリーオーバーは、<0.25mg/mLの総タンパク質、<1ppmのIgG断片、<1ppmの浸出されたプロテインA、<1μg/mLのCZE LIF、<1ppmのCHOP及び<1pg/mLのCHO DNAのうち1又は複数を含む。
本発明の一部の態様では、このクロマトグラフィー材料は、アフィニティークロマトグラフィー材料である。アフィニティークロマトグラフィー材料の例には、プロテインA又はプロテインGで誘導体化されたクロマトグラフィー材料が含まれるがこれらに限定されない。アフィニティークロマトグラフィー材料の例には、Prosep−VA、Prosep−VA Ultra Plus、Protein A sepharose fast flow、Tyopearl Protein A、MAbSelect(商標)、MAbSelect(商標)SuRe及びMAbSelect(商標)SuRe LXが含まれるがこれらに限定されない。上記の一部の実施態様では、このアフィニティークロマトグラフィー材料は、アフィニティークロマトグラフィー材料である。上記の一部の実施態様では、このアフィニティークロマトグラフィー材料は、アフィニティークロマトグラフィー膜である。一部の実施態様では、このアフィニティークロマトグラフィー材料は、プロテインGクロマトグラフィー材料である。一部の実施態様では、このクロマトグラフィーカラムは、大規模、例えば、抗体産物などのポリペプチド産物の製造規模の産生のために使用される。
一部の態様では、本発明は、再使用のためにイオン交換クロマトグラフィー材料を浄化する方法を提供する。一部の実施態様では、この方法は、a)この材料に、約3材料容積の平衡化バッファーを通過させる工程であって、この平衡化バッファーは、約pH7.1の、約25mMのトリス、約25mMのNaClを含む、工程、b)この材料に、約2材料容積の約0.5NのNaOHを通過させる工程、c)約10分間にわたって、約0.5NのNaOH中でこの材料を静的に保持する工程、d)この材料に、約1材料容積の約0.5NのNaOHを通過させる工程、e)約10分間にわたって、約0.5NのNaOH中でこの材料を静的に保持する工程、及びf)この材料に、約1材料容積の約0.5NのNaOHを通過させる工程を含む。一部の実施態様では、このイオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中に存在する。一部の実施態様では、このクロマトグラフィーカラムは、大規模、例えば、抗体産物などのポリペプチド産物の製造規模の産生のために使用される。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、複数の抗体産物を精製するために使用される。一部の実施態様では、浄化する方法の後のキャリーオーバーは、<0.25mg/mLの総タンパク質、<1ppmのIgG断片、<1ppmの浸出されたプロテインA、<1μg/mLのCZE LIF、<1ppmのCHOP及び<1pg/mLのCHO DNAのうち1又は複数を含む。
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、イオン交換クロマトグラフィー材料、例えば、陰イオン交換クロマトグラフィー材料又は陽イオン交換クロマトグラフィー材料である。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、陰イオン交換材料である。一部の実施態様では、この陰イオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中に存在する。一部の実施態様では、この陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、正に荷電した固体相であり、この固体相を越えて又は通って通過した水溶液中の陰イオンとの交換のための遊離陰イオンを有する。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、この陰イオン交換材料は、膜、モノリス又は樹脂であり得る。一実施態様では、この陰イオン交換材料は、樹脂であり得る。一部の実施態様では、この陰イオン交換材料は、一級アミン、二級アミン、三級アミン又は四級アンモニウムイオン官能基、ポリアミン官能基又はジエチルアミノエチル官能基を含み得る。上記の一部の実施態様では、この陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、陰イオン交換クロマトグラフィー材料である。上記の一部の実施態様では、この陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、陰イオン交換クロマトグラフィー膜である。一部の実施態様では、この陰イオン交換クロマトグラフィー材料は、大規模、例えば、抗体産物などのポリペプチド産物の製造規模の産生のために使用される。
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、陽イオン交換材料である。一部の実施態様では、この陽イオン交換材料は、クロマトグラフィーカラム中に存在する。一部の実施態様では、この陽イオン交換材料は、負に荷電した固体相であり、この固体相を越えて又は通って通過した水溶液中の陽イオンとの交換のための遊離陽イオンを有する。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、この陽イオン交換材料は、膜、モノリス又は樹脂であり得る。一部の実施態様では、この陽イオン交換材料は、樹脂であり得る。この陽イオン交換材料は、例えば、スルホネート、カルボン酸、カルボキシメチルスルホン酸、スルホイソブチル、スルホエチル、カルボキシル、スルホプロピル、スルホニル、スルホキシエチル又はオルトホスフェートであるがこれらに限定されない、カルボン酸官能基又はスルホン酸官能基を含み得る。上記の一部の実施態様では、この陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、陽イオン交換クロマトグラフィー材料である。上記の一部の実施態様では、この陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、陽イオン交換クロマトグラフィー膜である。本発明の一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、陽イオン交換クロマトグラフィー材料ではない。一部の実施態様では、この陽イオン交換クロマトグラフィー材料は、大規模、例えば、抗体産物などのポリペプチド産物の製造規模の産生のために使用される。
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、このイオン交換材料は、従来のクロマトグラフィー材料又は対流クロマトグラフィー材料を利用し得る。これらの従来のクロマトグラフィー材料には、例えば、潅流性材料(例えば、ポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)樹脂)及び拡散性材料(例えば、架橋アガロース樹脂)が含まれる。一部の実施態様では、このポリ(スチレン−ジビニルベンゼン)樹脂は、Poros樹脂であり得る。一部の実施態様では、この架橋アガロース樹脂は、スルホプロピル−Sepharose Fast Flow(「SPSFF」)樹脂であり得る。対流クロマトグラフィー材料は、膜(例えば、ポリエーテルスルホン)又はモノリス材料(例えば、架橋ポリマー)であり得る。このポリエーテルスルホン膜は、Mustangであり得る。架橋ポリマーモノリス材料は、架橋ポリ(グリシジルメタクリレート−co−エチレンジメタクリレート)であり得る。
陰イオン交換材料の例は、当該技術分野で公知であり、これには、Poros HQ 50、Poros PI 50、Poros D、Mustang Q、Q Sepharose FF及びDEAE Sepharoseが含まれるがこれらに限定されない。
陽イオン交換材料の例は、当該技術分野で公知であり、これには、Mustang S、Sartobind S、SO3 Monolith、S Ceramic HyperD、Poros XS、Poros HS50、Poros HS20、SPSFF、SP−Sepharose XL(SPXL)、CM Sepharose Fast Flow、Capto S、Fractogel Se HiCap、Fractogel SO3又はFractogel COOが含まれるがこれらに限定されない。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、この陽イオン交換材料は、Poros HS50である。一部の実施態様では、このPoros HS樹脂は、Poros HS 50μm粒子又はPoros HS 20μm粒子であり得る。
ミックスモード
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、以下の機能性のうち1又は複数が可能な官能基を含むミックスモード材料である:陰イオン交換、陽イオン交換、水素結合及び疎水性相互作用。一部の実施態様では、このミックスモード材料は、陰イオン交換及び疎水性相互作用が可能な官能基を含む。この混合様式材料は、配位子としてのN−ベンジル−N−メチルエタノールアミン、4−メルカプト−エチル−ピリジン、ヘキシルアミン若しくはフェニルプロピルアミンを含み得、又は架橋ポリアリルアミンを含み得る。ミックスモード材料の例には、Capto Adhere樹脂、QMA樹脂、Capto MMC樹脂、MEP HyperCel樹脂、HEA HyperCel樹脂、PPA HyperCel樹脂、又はChromaSorb膜若しくはSartobind STICが含まれる。一部の実施態様では、このミックスモード材料は、Capto Adhere樹脂である。上記の一部の実施態様では、このミックスモード材料は、ミックスモードクロマトグラフィー材料である。上記の一部の実施態様では、このミックスモード材料は、ミックスモードクロマトグラフィーカラムである。上記の一部の実施態様では、このミックスモード材料は、ミックスモード膜である。一部の実施態様では、このミックスモードクロマトグラフィーカラムは、大規模、例えば、製造規模のクロマトグラフィーカラムである。
本発明の一部の態様では、このクロマトグラフィー材料は、疎水性相互作用クロマトグラフィー材料である。疎水性相互作用クロマトグラフィー(HIC)は、疎水性に従って生体分子を分離する液体クロマトグラフィー技術である。HICクロマトグラフィー材料の例には、Toyopearl hexyl 650、Toyopear butyl 650、Toyopearl phenyl 650、Toyopearl ether 650、Source、Resource、Sepharose Hi−Trap、Octyl sepharose及びPhenyl sepharoseが含まれるがこれらに限定されない。上記の一部の実施態様では、このHICクロマトグラフィー材料は、HICクロマトグラフィーカラムである。上記の一部の実施態様では、このHICクロマトグラフィー材料は、HICクロマトグラフィー膜である。一部の実施態様では、このHICクロマトグラフィーカラムは、大規模、例えば、製造規模のクロマトグラフィーカラムである。
本発明の一部の態様では、このクロマトグラフィー材料は、ヒドロキシアパタイト(HAP)クロマトグラフィー材料である。ヒドロキシアパタイトクロマトグラフィー材料の例には、HA Ultrogel及びCHTヒドロキシアパタイトが含まれるがこれらに限定されない。上記の一部の実施態様では、このHAPクロマトグラフィー材料は、HAPクロマトグラフィーカラムである。上記の一部の実施態様では、このHAPクロマトグラフィー材料は、HAPクロマトグラフィー膜である。一部の実施態様では、このHAPクロマトグラフィーカラムは、大規模、例えば、製造規模のクロマトグラフィーカラムである。
一部の実施態様では、本発明は、アルカリ安定なクロマトグラフィー材料、例えば、アルカリ安定なクロマトグラフィーカラムを浄化又は再生するための方法を提供する。
本発明は、本発明の方法での使用のためのバッファーを提供する。溶出バッファーは、一般に、クロマトグラフィー材料から、材料、例えば、所望の材料、又は夾雑物などの望ましくない材料を除去するために、使用される。溶出バッファーの例には、約pH2.8−2.9の約0.15Mの酢酸が含まれるがこれに限定されない。再生バッファーは、一般に、クロマトグラフィー手順後にカラムを再チャージするために使用される。例えば、陰イオンクロマトグラフィーのための再生バッファーは、約pH13の約0.1NのNaOHであり得る。平衡化バッファーは、試料と同じ条件(塩濃度、pHなど)下にクロマトグラフィー材料を置くために使用され得る。平衡化バッファーの非限定的な例は、約pH7.1の、約25mMのトリス及び約25mMのNaClである。貯蔵バッファーは、一般に、使用していないときに、例えば、夾雑を防止するためのマイクロコードと共に、クロマトグラフィー材料を維持するために使用される。貯蔵バッファーの非限定的な例は、約100mMの酢酸ナトリウム、約2%ベンジルアルコール及び約pH5.0である。
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、流速は、約50材料容積/時間、約40材料容積/時間又は約30材料容積/時間のいずれか未満である。この流速は、約5材料容積/時間と約50材料容積/時間との間、約10材料容積/時間と約40材料容積/時間との間、又は約18材料容積/時間と約36材料容積/時間との間のいずれかであり得る。一部の実施態様では、この流速は、約9材料容積/時間、約18材料容積/時間、約25材料容積/時間、約30材料容積/時間、約36材料容積/時間又は約40材料容積/時間のいずれかである。
一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、クロマトグラフィーカラム中に存在する。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、この流速は、約50カラム容積(CV)/時間、約40CV/時間又は約30CV/時間のいずれか未満である。この流速は、約5CV/時間と約50CV/時間との間、約10CV/時間と約40CV/時間との間又は約18CV/時間と約36CV/時間との間のいずれかであり得る。一部の実施態様では、この流速は、約9CV/時間、約18CV/時間、約25CV/時間、約30CV/時間、約36CV/時間又は約40CV/時間のいずれかである。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、この流速は、約100cm/時間、約75cm/時間又は約50cm/時間のいずれか未満である。この流速は、約25cm/時間と約150cm/時間との間、約25cm/時間と約100cm/時間との間、約50cm/時間と約100cm/時間との間又は約65cm/時間と約85cm/時間との間のいずれかであり得る。
床高さは、使用されるクロマトグラフィー材料の高さである。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、この床高さは、約3cm、約10cm又は約15cmのいずれかよりも大きい。この床高さは、約3cmと約35cmとの間、約5cmと約15cmとの間、約3cmと約10cmとの間又は約5cmと約8cmとの間のいずれかであり得る。一部の実施態様では、この床高さは、約3cm、約5cm、約10cm、約15cm、約20cm、約25cm又は約30cmのいずれかである。一部の実施態様では、床高さは、ロード中のポリペプチド又は夾雑物の量に基づいて決定される。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、大規模、例えば、ポリペプチドの製造規模の産生のために使用されるカラム中に存在する。一部の実施態様では、この製造規模のクロマトグラフィー材料は、約10cm、約15cm、約20cm、約25cm又は約30cmのいずれかの床高さを有する。
床直径は、使用されるクロマトグラフィー材料の直径である。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、この床直径は、約80cm、約100cm又は約120cmのいずれかよりも大きい。一部の実施態様では、この床直径は、約50cm、約60cm、約70cm、約80cm、約90cm、約100cm、約110cm、約120cm、約130cm、約140cm、約150cm、約160cm、約170cm、約180cm、約190又は約200cmのいずれかである。一部の実施態様では、床直径は、ロード中のポリペプチド又は夾雑物の量に基づいて決定される。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、大規模、例えば、ポリペプチドの製造規模の産生のために使用されるカラム中に存在する。一部の実施態様では、この製造規模のクロマトグラフィー材料は、約50cm、約60cm、約70cm、約80cm、約90cm、約100cm、約110cm、約120cm、約130cm、約140cm、約150cm、約160cm、約170cm、約180cm、約190又は約200cmのいずれかの床直径を有する。
一部の実施態様では、このクロマトグラフィーは、約1mL、約2mL、約3mL、約4mL、約5mL、約6mL、約7mL、約8mL、約9mL、約10mL、約15mL、約20mL、約25mL、約30mL、約40mL、約50mL、約75mL、約100mL、約200mL、約300mL、約400mL、約500mL、約600mL、約700mL、約800mL、約900mL、約1L、約2L、約3L、約4L、約5L、約6L、約7L、約8L、約9L、約10L、約25L、約50L、約100L、約200L、約300L、約400L、約500L、約600L、約700L、約800L、約900L又は約1000Lよりも大きい容積を有する容器の材料中に存在する。一部の実施態様では、この容器は、大規模プロテインAカラムなど、14cmの床高さ及び80cmの床容積を有する。一部の実施態様では、この容器は、大規模陰イオン交換カラムなど、19cmの床高さ及び100cmの床容積を有する。一部の実施態様では、この容器は、大規模陽イオン交換カラムなど、30cmの床高さ及び120cmの床容積を有する。
ロードは、本明細書で使用する場合、クロマトグラフィー材料上にロードされる組成物である。一部の実施態様では、このロードは、異なるポリペプチドを単離するために以前に使用されたクロマトグラフィー材料上にロードされるポリペプチドである。ローディングバッファーは、クロマトグラフィー材料上に目的の産物を含む組成物をロードするために使用されるバッファーである。このクロマトグラフィー材料は、精製される組成物をロードする前に、平衡化バッファーで平衡化され得る。一部の例では、洗浄バッファーが、クロマトグラフィー材料上に組成物をロードした後、かつ固体相からの目的のポリペプチドの溶出前に、使用される。しかし、ポリペプチドなどの目的の産物の一部は、洗浄バッファー(例えば、フロースルーモードと類似した)によって、クロマトグラフィー材料から除去され得る。
溶出は、本明細書で使用する場合、クロマトグラフィー材料からの、産物、例えば、ポリペプチドの除去である。本発明の一部の実施態様では、この溶出は、タンパク質が最後の浄化手順に引き続いてロードされなかったクロマトグラフィー材料に溶出手順が適用される、「モック溶出」である。本発明の一部の実施態様では、このモック溶出手順は、本明細書に記載される浄化手順のいずれか1つの後に、クロマトグラフィー材料に適用される。一部の実施態様では、このモック溶出は、実際の産生実行の間にキャリーオーバー材料(例えば、夾雑物)が存在し得るかどうかを決定するための試みにおいて材料に適用される、タンパク質を溶出するために使用される溶出を模倣する。モック溶出は、浄化手順の有効性を評価するための手段として使用され得る。
溶出バッファーは、クロマトグラフィー材料から目的のポリペプチド又は他の産物を溶出するために使用されるバッファーである。多くの場合、溶出バッファーは、ロードバッファーとは異なる物理的特性を有する。例えば、この溶出バッファーは、ロードバッファーとは異なる伝導率又はロードバッファーとは異なるpHを有し得る。一部の実施態様では、この溶出バッファーは、ロードバッファーよりも低い伝導率を有する。一部の実施態様では、この溶出バッファーは、ロードバッファーよりも高い伝導率を有する。一部の実施態様では、この溶出バッファーは、ロードバッファーよりも低いpHを有する。一部の実施態様では、この溶出バッファーは、ロードバッファーよりも高いpHを有する。一部の実施態様では、この溶出バッファーは、ロードバッファーとは異なる伝導率及び異なるpHを有する。この溶出バッファーは、より高い若しくはより低い伝導率又はより高い若しくはより低いpHの任意の組み合わせを有し得る。
伝導率とは、水溶液が2つの電極間で電流を伝導する能力を指す。溶液中では、電流は、イオン輸送によって流れる。従って、水溶液中に存在する漸増量のイオンでは、この溶液は、より高い伝導率を有する。伝導率についての尺度の基本的単位は、シーメンス(又はmho)、mho(mS/cm)であり、伝導率メーター、例えば、Orion伝導率メーターの種々のモデルを使用して、測定され得る。電解伝導率は、溶液中のイオンが電流を流す能力であるので、溶液の伝導率は、その中のイオンの濃度を変化させることによって変更され得る。例えば、溶液中のバッファリング剤の濃度及び/又は塩(例えば、塩化ナトリウム、酢酸ナトリウム若しくは塩化カリウム)の濃度は、所望の伝導率を達成するために変更され得る。好ましくは、種々のバッファーの塩濃度は、所望の伝導率を達成するために修飾される。
(B)夾雑物
本発明は、製造規模などの大規模での使用のためのクロマトグラフィー材料の再使用のための方法を提供する。この方法は、複数のポリペプチド産物のためのクロマトグラフィー材料の複数回の使用を提供する。例えば、本発明の方法を使用して、第1の抗体が、クロマトグラフィー材料上で産業的規模で精製され得、その後、本明細書に記載されるクロマトグラフィー材料を浄化/再生する方法が続き、次いでその後、第2の抗体産物の産業的規模の精製が続き得る。一部の実施態様では、本発明の方法は、クロマトグラフィー材料を使用して精製された前の産物の「キャリーオーバー」を低減させるために使用される。一部の実施態様では、このキャリーオーバー夾雑物には、抗体全体、IgG断片、Fc及びFc断片が含まれるがこれらに限定されない。
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、この少なくとも1つの夾雑物は、宿主細胞材料、例えば、CHOP;浸出されたプロテインA;核酸;所望のポリペプチドの変異体、断片、凝集物又は誘導体;別のポリペプチド;エンドトキシン;ウイルス夾雑物;細胞培養培地成分、カルボキシペプチターゼB、ゲンタマイシンなどのうちいずれか1又は複数である。一部の例では、この夾雑物は、これらに限定されないが、例えば、細菌細胞、例えば、大腸菌細胞、昆虫細胞、原核細胞、真核細胞、酵母細胞、哺乳動物細胞、トリ細胞、真菌細胞などの細胞由来の宿主細胞タンパク質(HCP)であり得る。
浸出されたプロテインAは、それが結合した固体相から脱離又は洗浄されたプロテインAである。例えば、浸出されたプロテインAは、プロテインAクロマトグラフィー材料から浸出され得る。プロテインAの量は、例えば、ELISAによって測定され得る。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、浸出されたプロテインAの量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%又は約90%のいずれかよりも大きく、低減される。浸出されたプロテインAの量は、約10%と約99%との間、約30%と約95%との間、約30%と約99%との間、約50%と約95%との間、約50%と約99%との間、約75%と約99%との間又は約85%と約99%との間のいずれか、低減され得る。一部の実施態様では、浸出されたプロテインAの量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約95%のいずれか、低減される。一部の実施態様では、この低減は、精製工程(一又は複数)から回収された組成物中の浸出されたプロテインAの量を、精製工程(一又は複数)前の組成物中の浸出されたプロテインAの量と比較することによって決定される。
宿主細胞タンパク質(HCP)は、ポリペプチドが産生された細胞由来のタンパク質である。例えば、CHOPは、宿主細胞由来のタンパク質、即ち、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質である。CHOPの量は、酵素結合免疫吸着法(「ELISA」)又はMeso Scale Discovery(「MSO」)によって測定され得る。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、溶出液中のHCP(例えば、CHOP)の量は、モック溶出において最小である。一部の実施態様では、モック溶出からの溶出液中の宿主細胞タンパク質のレベルは、浄化する方法あり及びなしで、又は浄化する方法の前及び後に、比較される。
宿主細胞DNAなどのDNAを測定する方法は、当該技術分野で公知であり、実施例のセクションに記載されている。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、DNAの量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%又は約90%のいずれかよりも多く、低減される。DNAの量は、約10%と約99%との間、約30%と約95%との間、約30%と約99%との間、約50%と約95%との間、約50%と約99%との間、約75%と約99%との間又は約85%と約99%との間のいずれか、低減され得る。DNAの量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%又は約99%のいずれか、低減され得る。一部の実施態様では、この低減は、精製工程(一又は複数)から回収された組成物中のDNAの量を、精製工程(一又は複数)前の組成物中のDNAの量と比較することによって決定される。
断片ポリペプチドは、低分子量(LMW)タンパク質であり得る。一部の実施態様では、断片化されたポリペプチドは、目的のポリペプチドの断片である。LMWタンパク質の例には、Fab(断片抗原結合)、Fc(断片、結晶化可能)領域若しくは両方の組み合わせ、又は目的の抗体の任意のランダムな断片化された一部が含まれるがこれらに限定されない。断片化されたタンパク質(例えば、LMWタンパク質)を測定する方法は、当該技術分野で公知であり、実施例のセクションに記載されている。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、LMWタンパク質の量は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約95%のいずれかよりも多く、低減される。LMWタンパク質の量は、約10%と約99%との間、約30%と約95%との間、約30%と約99%との間、約50%と約95%との間、約50%と約99%との間、約75%と約99%との間又は約85%と約99%との間のいずれか、低減され得る。LMWタンパク質の量は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約95%のいずれか、低減され得る。一部の実施態様では、この低減は、精製工程(一又は複数)から回収された組成物中の断片化されたタンパク質(例えば、LMWタンパク質)の量を、精製工程(一又は複数)前の組成物中の断片化されたタンパク質(例えば、LMWタンパク質)の量と比較することによって決定される。
凝集したポリペプチドは、高分子量(HMW)タンパク質であり得る。一部の実施態様では、この凝集したポリペプチドは、目的のポリペプチドの多量体である。このHMWタンパク質は、目的のポリペプチドの、ダイマー、最大で8×のモノマー又はそれより多くであり得る。凝集したタンパク質(例えば、HMWタンパク質)を測定する方法は、当該技術分野で公知である。一部の実施態様では、モック溶出中のHMWのレベルは、最低限、例えば、約5ppm未満、約4ppm未満、約3ppm未満、約2ppm未満又は約1ppm未満である。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、この凝集したタンパク質の量は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約95%のいずれかよりも多く、低減される。凝集したタンパク質の量は、約10%と約99%との間、約30%と約95%との間、約30%と約99%との間、約50%と約95%との間、約50%と約99%との間、約75%と約99%との間又は約85%と約99%との間のいずれか、低減され得る。凝集したタンパク質の量は、約5%、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%又は約95%のいずれか、低減され得る。一部の実施態様では、この低減は、精製工程(一又は複数)から回収された組成物中の凝集したタンパク質(例えば、HMWタンパク質)の量を、精製工程(一又は複数)前の組成物中の凝集したタンパク質(例えば、HMWタンパク質)の量と比較することによって決定される。
細胞培養培地成分とは、細胞培養培地中に存在する成分を指す。細胞培養培地は、細胞を回収する時点の細胞培養培地であり得る。一部の実施態様では、この細胞培養培地成分は、ゲンタマイシンである。ゲンタマイシンの量は、ELISAによって測定され得る。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、細胞培養培地成分の量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%又は約90%のいずれかよりも多く、低減される。細胞培養培地成分の量は、約10%と約99%との間、約30%と約95%との間、約30%と約99%との間、約50%と約95%との間、約50%と約99%との間、約75%と約99%との間又は約85%と約99%との間のいずれか、低減され得る。一部の実施態様では、細胞培養培地成分の量は、約10%、約20%、約30%、約40%、約50%、約60%、約70%、約80%、約90%、約95%又は約98%のいずれか、低減される。一部の実施態様では、この低減は、精製工程(一又は複数)から回収された組成物中の細胞培養培地成分の量を、精製工程(一又は複数)前の組成物中の細胞培養培地成分の量と比較することによって決定される。
(C)夾雑物を検出するための方法
本発明は、再使用可能なクロマトグラフィー材料の浄化の効率を評価するための方法を提供する。例えば、ポリペプチドが以前にロードされ、少なくとも1回溶出されたクロマトグラフィー材料が、上記本発明の方法の1つによって浄化される。次いで、モック溶出が、さらなるポリペプチドが浄化手順後にその材料上にロードされていない材料上で実行される。このモック溶出は、その材料上に以前にロードされたポリペプチドに対して使用された溶出手順に従い得る、又は溶出手順は、浄化手順後に精製されるポリペプチドのための溶出手順に従い得る。一部の実施態様では、モックローディングが、モック溶出の前に、材料上で実行される。モックローディングは、そのポリペプチドがローディングに含まれていないことを除いて、この材料上にポリペプチドをロードするために、同じ手順を使用する。一部の実施態様では、モック溶出からの溶出剤は、1又は複数の画分において収集される。一部の実施態様では、モック溶出からの溶出剤は、単一の画分において収集される。一部の実施態様では、溶出剤、又は溶出剤の試料は、クロマトグラフィー材料の前のローディングからのキャリーオーバーポリペプチド、IgG断片、浸出されたプロテインA、CHOP及びCHO DNAを含む夾雑物について解析される。
ポリペプチドの定量化
抗体などのポリペプチドの濃度は、UV−可視分光光度計(8453モデルG1103A;Agilent Technologies;Santa Clara、CA、U.S.A.)又はNanoDrop 1000モデルND−1000(Thermo Fisher Scientific;Waltham、MA、U.S.A.)を使用して、280nm及び320nmにおける吸光度を介して決定され得る。再使用可能なクロマトグラフィー材料上に以前にロードされたポリペプチド又は本発明の方法によって浄化された材料上にロードされたポリペプチド以外の種(即ち、不純物)は、UV吸光度に対する認識できる影響を有するには、濃度が低すぎる場合がある。必要に応じて、試料は、0.1−1.0の吸光度単位の範囲で、適切な非妨害性希釈剤を用いて希釈され得る。試料調製及びUV測定は、2重で実施され、平均値が記録される。MAb吸収係数は、1.42/mg・ml・cmから1.645/mg・ml・cmまでの範囲であり得る。
総タンパク質は、キャピラリーゾーン電気泳動/レーザー誘起蛍光検出アッセイによって決定され得る。
IgG検出
インタクトなヒトIgG及びヒトIgG断片は、インタクトなヒトIgG特異的ELISA又はIgG断片特異的ELISAを使用して検出され得る。ヒトFcは、ヒトFc特異的ELISAを使用して検出され得る。
CHO宿主細胞タンパク質(CHOP)の定量化
ELISAは、CHOPと呼ばれる宿主細胞タンパク質のレベルを定量化するために使用され得る。抗CHOP抗体が、マイクロタイタープレートウェル上に固定化される。CHOPを含む試料、標準及びコントロールの希釈が、ウェル中でインキュベートされ、その後、ホースラディッシュペルオキシダーゼ(HRP)にコンジュゲートされた抗CHOP抗体と共にインキュベートされる。HRP酵素活性は、o−フェニレンジアミンを用いて検出され得、CHOPは、マイクロタイタープレートリーダーにおいて490nmで吸光度を読み取ることによって定量化される。サンドイッチELISAの原理に基づくと、ペルオキシダーゼの濃度は、CHOP濃度と対応する。ELISAについてのアッセイ範囲は、典型的には、アッセイ内可変性<10%で、5−320ng/mlである。CHOP値は、ng/mlの単位で報告され得る。あるいは、CHOP値は、MAb濃度によって除算され得、結果は、PPM(百万分率;例えば、CHOPのng/MAbのmg)で報告され得る。CHOP ELISAは、試料中の総CHOPレベルを定量化するために使用され得るが、個々のタンパク質の濃度は定量化しない。
CHO DNAの定量化
産物試料中のCHO DNAは、リアルタイムPCR(TaqMan PCR)を使用して定量化され得る。試料及びコントロール由来のDNAが、QiagenのVirus Biorobotキットを使用して最初に抽出され得る。抽出された試料、コントロール及び標準DNAは、ABIの配列検出システムと共に96ウェルプレートにおいてPCRプライマー及びプローブを使用するTaqManリアルタイムポリメラーゼ連鎖反応(PCR)に供される。これらのプライマーは、チャイニーズハムスター(Cricetulus griseus)ゲノム中の反復DNA配列の110塩基対セグメントによって規定される。このプローブは、5’末端において蛍光性レポーター色素で、3’末端においてクエンチャー色素で、標識される。プローブがインタクトである場合、レポーターの発光スペクトルは、クエンチャーによって抑制される。ポリメラーゼの5’ヌクレアーゼ活性は、このプローブを加水分解し、レポートを放出し、これが、蛍光発光における増加を生じる。配列検出器は、DNA増幅の間に連続的に測定される蛍光発光における増加に正比例する、増幅された産物を定量化する。DNAが閾値(CT)を越えて増幅したときのサイクル数が、検量線について計算される。1pg/mL−10,000pg/mLの範囲の検量線が生成され得、これが、試料中のDNAを定量化するために使用される。
浸出されたプロテインAの定量化
プロテインAプール中の浸出されたプロテイン−Aのレベルは、サンドイッチプロテイン−A ELISAによって決定され得る。ニワトリ抗ブドウ球菌プロテインA抗体が、マイクロタイタープレートウェル上に固定化される。試料処理手順は、試料希釈、及びサンドイッチELISA上で試料を実行する前の事前処理工程としてマイクロ波支援加熱を使用したプロテインA/IgG複合体の解離を含み得る。プロテインAは、試料中に存在する場合、コートされた抗体に結合し得る。結合したプロテインAは、ホースラディッシュペルオキシダーゼがコンジュゲートされた抗タンパク質抗体を使用して検出される。ホースラディッシュペルオキシダーゼの酵素活性は、比色分析シグナルを生じる2成分TMB基質溶液を用いて定量化される。
III.ポリペプチド
本発明の方法は、複数のポリペプチドの精製において使用されるクロマトグラフィー材料を浄化するために使用され得る。一部の実施態様では、このクロマトグラフィー材料は、大規模、例えば、抗体又はその断片などのポリペプチドの製造規模の産生において使用される。一部の実施態様では、クロマトグラフィー材料は、第1の抗体などの第1のポリペプチドの精製において使用され、次いで、この材料は、本発明の方法によって浄化され、次いで、このクロマトグラフィー材料は、第2の抗体などの第2のポリペプチドを精製するために使用され得る。一部の実施態様では、この浄化は有効であり、その結果、第2の精製されたポリペプチドを含む調製物が、第1のポリペプチドを本質的に含まない。一部の実施態様では、第2の精製されたポリペプチド(例えば、第2の抗体)を含む調製物は、1ppm未満の第1のポリペプチド(例えば、第1の抗体)を含む。一部の実施態様では、この第2の精製されたポリペプチドは、1ppm未満、2ppm未満、3ppm未満、4ppm未満、5ppm未満、10ppm未満、20ppm未満、30ppm未満、40ppm未満、50ppm未満又は100ppm未満のいずれか1つの第1のポリペプチドを含む。
一部の実施態様では、本発明の方法は、治療ポリペプチドを精製するために使用されるクロマトグラフィー材料を再使用するために使用される。一部の実施態様では、このポリペプチドは、アンタゴニストである。一部の実施態様では、このポリペプチドは、アゴニストである。一部の実施態様では、このポリペプチドは、抗体である。一部の実施態様では、このポリペプチドは、エピトープでタグ化されている。一部の実施態様では、このポリペプチドは、生物活性及び/又は免疫活性を保持する。一部の実施態様では、このポリペプチドは、アンタゴニストである。一部の実施態様では、このポリペプチドは、補体依存性細胞傷害を開始させる。一部の実施態様では、このポリペプチドは、抗体又はイムノアドヘシンである。
一部の実施態様では、このポリペプチド、第1のポリペプチド及び/又は第2のポリペプチドは、約5,000ダルトン、約10,000ダルトン、約15,000ダルトン、約25,000ダルトン、約50,000ダルトン、約75,000ダルトン、約100,000ダルトン、約125,000ダルトン又は約150,000ダルトンのいずれかよりも大きい分子量を有する。このポリペプチドは、約50,000ダルトンから約200,000ダルトン又は約100,000ダルトンから約200,000ダルトンのいずれかの間の分子量を有し得る。あるいは、本明細書での使用のためのこのポリペプチドは、約120,000ダルトン又は約25,000ダルトンの分子量を有し得る。
pIは、等電点であり、特定の分子又は表面が正味の電荷を有さないpHである。本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、ポリペプチド、例えば、第1のポリペプチド及び/又は第2のポリペプチドのpIは、約6から約10、約7から約9又は約8から約9のいずれかの間であり得る。一部の実施態様では、このポリペプチドは、約6、約7、約7.5、約8、約8.5、約9、約9.5又は約10のいずれかのpIを有する。
本明細書に記載される方法によって浄化された再使用可能なクロマトグラフィー材料を使用して精製されるポリペプチドは、一般に、組換え技術を使用して産生される。組換えタンパク質を産生するための方法は、例えば、本明細書に参照により援用される米国特許第5534615号及び米国特許第4816567号に記載されている。一部の実施態様では、目的のタンパク質は、CHO細胞において産生される(例えば、国際公開第94/11026号を参照のこと)。組換え技術を使用する場合、これらのポリペプチドは、細胞内で産生され得、細胞周辺腔において産生され得、又は培地中に直接分泌され得る。
本明細書に記載される方法によって浄化された再使用可能なクロマトグラフィー材料を使用して精製されるポリペプチドは、培養培地又は宿主細胞溶解物から回収され得る。ポリペプチドの発現において使用される細胞は、種々の物理的又は化学的手段、例えば、凍結−解凍サイクリング、超音波処理、機械的破壊又は細胞溶解剤によって破壊され得る。ポリペプチドが細胞内で産生される場合、第1の工程として、宿主細胞又は溶解された断片のいずれかの粒状デブリが、例えば、遠心分離又は限外濾過によって除去される。Carter等、Bio/Technology 10:163−167(1992)は、大腸菌の細胞周辺腔に分泌されるポリポリペプチドを単離するための手順を記載している。簡潔に述べると、細胞ペーストが、酢酸ナトリウム(pH3.5)、EDTA及びフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)の存在下で、約30分間にわたって解凍される。細胞デブリは、遠心分離によって除去され得る。ポリペプチドが培地中に分泌される場合、かかる発現系由来の上清は、一般に、市販のポリペプチド濃縮フィルター、例えば、Amicon又はMillipore Pellicon限外濾過ユニットを使用して、最初に濃縮される。PMSFなどのプロテアーゼ阻害剤が、タンパク質分解を阻害するために上述の工程のいずれかにおいて含められ得、抗生物質が、偶発性夾雑物の増殖を防止するために含められ得る。
本明細書に記載される方法によって浄化された再使用可能なクロマトグラフィー材料を使用して精製され得るポリペプチドの例には、免疫グロブリン、イムノアドヘシン、抗体、酵素、ホルモン、融合タンパク質、Fc含有タンパク質、イムノコンジュゲート、サイトカイン及びインターロイキンが含まれるがこれらに限定されない。ポリペプチドの例には、哺乳動物タンパク質、例えば、レニンなど;ホルモン;ヒト成長ホルモン及びウシ成長ホルモンを含む成長ホルモン;成長ホルモン放出因子;副甲状腺ホルモン;甲状腺刺激ホルモン;リポタンパク質;アルファ−1−アンチトリプシン;インスリンA鎖;インスリンB鎖;プロインスリン;卵胞刺激ホルモン;カルシトニン;黄体ホルモン;グルカゴン;凝固因子、例えば、第VIIIC因子、第IX因子、組織因子及びフォン・ヴィルブランド因子;抗凝固因子、例えば、プロテインC;心房性ナトリウム利尿因子;肺サーファクタント;プラスミノーゲン活性化因子、例えば、ウロキナーゼ又はヒト尿又は組織型プラスミノーゲン活性化因子(t−PA);ボンベシン;トロンビン;造血性増殖因子;腫瘍壊死因子−アルファ及び−ベータ;エンケファリナーゼ;RANTES(regulated on activation normally T−cell expressed and secreted);ヒトマクロファージ炎症性タンパク質(MIP−1−アルファ);血清アルブミン、例えば、ヒト血清アルブミン;ミュラー管抑制因子;リラクシンA鎖;リラクシンB鎖;プロリラクシン;マウスゴナドトロピン関連ペプチド;酵素;微生物タンパク、例えば、ベータ−ラクタマーゼ;DNase;IgE;細胞傷害性Tリンパ球関連抗原(CTLA)、例えば、CTLA−4;インヒビン;アクチビン;血管内皮増殖因子(VEGF);ホルモン又は増殖因子に対する受容体;プロテインA又はD;リウマチ因子;神経栄養因子、例えば、骨由来神経栄養因子(BDNF)、ニューロトロフィン−3、−4、−5若しくは−6(NT−3、NT−4、NT−5若しくはNT−6)、又は神経成長因子、例えば、NGF−b;血小板由来増殖因子(PDGF);線維芽細胞増殖因子、例えば、aFGF及びbFGF;上皮増殖因子(EGF);トランスフォーミング増殖因子(TGF)、例えば、TGF−アルファ、及びTGF−β1、TGF−β2、TGF−β3、TGF−β4又はTGF−β5を含むTGF−ベータ;インスリン様増殖因子−I及び−II(IGF−I及びIGF−II);des(1−3)−IGF−I(脳IGF−I)、インスリン様増殖因子結合タンパク質(IGFBP);サイトカイン;CDタンパク質、例えば、CD3、CD4、CD8、CD19及びCD20;エリスロポエチン;骨誘導因子;イムノトキシン;融合ポリペプチド、即ち、2以上の異種ポリペプチド又はそれらの断片上に含まれ、組換え核酸によってコードされるポリペプチド;Fc含有ポリペプチド、例えば、第2のポリペプチドに融合した免疫グロブリンFc領域又はその断片を含む融合タンパク質;イムノコンジュゲート;骨形成タンパク質(BMP);インターフェロン、例えば、インターフェロン−アルファ、−ベータ及び−ガンマ;コロニー刺激因子(CSF)、例えば、M−CSF、GM−CSF及びG−CSF;インターロイキン(IL)、例えば、IL−1からIL−10;スーパーオキシドジスムターゼ;T細胞受容体;表面膜タンパク質;崩壊促進因子;ウイルス抗原、例えば、AIDSエンベロープの一部分など;輸送タンパク質;ホーミング受容体;アドレシン;制御タンパク質;インテグリン、例えば、CD11a、CD11b、CD11c、CD18、ICAM、VLA−4及びVCAM;腫瘍関連抗原、例えば、CA125(卵巣癌抗原)又はHER2、HER3若しくはHER4受容体;イムノアドヘシン;並びに、上に列挙したタンパク質のいずれかの断片及び/又は変異体、並びに、例えば上に列挙したタンパク質のいずれかを含むタンパク質に結合する抗体断片を含む抗体が含まれるがこれらに限定されない。
(A)抗体
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、本明細書に記載される方法によって浄化された再使用可能なクロマトグラフィー材料を使用して精製され得るポリペプチド、例えば、第1のポリペプチド、第2のポリペプチド又は任意の引き続くポリペプチドは、抗体である。
抗体に対する分子標的には、例えば以下であるがこれらに限定されないCDタンパク質及びそれらのリガンドが含まれる:(i)CD3、CD4、CD8、CD19、CD11a、CD20、CD22、CD34、CD40、CD79α(CD79a)及びCD79β(CD79b);(ii)ErbB受容体ファミリーのメンバー、例えば、EGF受容体、HER2、HER3又はHER4受容体;(iii)細胞接着分子、例えば、LFA−1、Mac1、p150、95、VLA−4、ICAM−1、VCAM、及びそれらのアルファサブユニット又はベータサブユニットのいずれかを含む、αv/β3インテグリン(例えば、抗CD11a、抗CD18又は抗CD11b抗体);(iv)増殖因子、例えば、VEGF;IgE;血液型抗原;flk2/flt3受容体;肥満(OB)受容体;mpl受容体;CTLA−4;プロテインC、BR3、c−met、組織因子、β7など;並びに(v)細胞表面及び膜貫通腫瘍関連抗原(TAA)、例えば、米国特許第7521541号に記載されるもの。
他の例示的抗体には、抗エストロゲン受容体抗体、抗プロゲステロン受容体抗体、抗p53抗体、抗HER−2/neu抗体、抗EGFR抗体、抗カテプシンD抗体、抗Bcl−2抗体、抗E−カドヘリン抗体、抗CA125抗体、抗CA15−3抗体、抗CA19−9抗体、抗c−erbB−2抗体、抗P−糖タンパク質抗体、抗CEA抗体、抗網膜芽細胞腫タンパク質抗体、抗ras癌タンパク質抗体、抗Lewis X抗体、抗Ki−67抗体、抗PCNA抗体、抗CD3抗体、抗CD4抗体、抗CD5抗体、抗CD7抗体、抗CD8抗体、抗CD9/p24抗体、抗CD10抗体、抗CD11a抗体、抗CD11c抗体、抗CD13抗体、抗CD14抗体、抗CD15抗体、抗CD19抗体、抗CD20抗体、抗CD22抗体、抗CD23抗体、抗CD30抗体、抗CD31抗体、抗CD33抗体、抗CD34抗体、抗CD35抗体、抗CD38抗体、抗CD41抗体、抗LCA/CD45抗体、抗CD45RO抗体、抗CD45RA抗体、抗CD39抗体、抗CD100抗体、抗CD95/Fas抗体、抗CD99抗体、抗CD106抗体、抗ユビキチン抗体、抗CD71抗体、抗c−myc抗体、抗サイトケラチン抗体、抗ビメンチン抗体、抗HPVタンパク質抗体、抗カッパ軽鎖抗体、抗ラムダ軽鎖抗体、抗メラノソーム抗体、抗前立腺特異的抗原抗体、抗S−100抗体、抗tau抗原抗体、抗フィブリン抗体、抗ケラチン抗体及び抗Tn−抗原抗体から選択されるものが含まれるが、これらに限定されない。
(i)ポリクローナル抗体
一部の実施態様では、これらの抗体は、ポリクローナル抗体である。ポリクローナル抗体は、好ましくは、適切な抗原及びアジュバントの複数回の皮下(sc)又は腹腔内(ip)注射によって、動物において惹起される。適切な抗原を、免疫化される種において免疫原性であるポリペプチド、例えば、キーホールリンペットヘモシアニン、血清アルブミン、ウシサイログロブリン又はダイズトリプシン阻害因子に、二官能性剤又は誘導体化剤、例えば、マレイミドベンゾイルスルホスクシンイミドエステル(システイン残基を介したコンジュゲーション)、N−ヒドロキシスクシンイミド(リジン残基を介する)、グルタルアルデヒド、無水コハク酸、SOCl2又はR1N=C=NR、ここで、R及びR1は、異なるアルキル基である、を使用してコンジュゲートすることが、有用であり得る。
動物は、例えば、100μg又は5μgのポリペプチド又はコンジュゲート(それぞれ、ウサギ又はマウスについて)を、3容積の完全フロイントアジュバントと組み合わせ、複数の部位において溶液を皮内注射することによって、抗原、免疫原性コンジュゲート又は誘導体に対して免疫化される。1カ月後、動物は、完全フロイントアジュバント中のペプチド又はコンジュゲートの元の量の1/5から1/10で、複数の部位における皮下注射によってブーストされる。7から14日後、動物から採血し、血清が、抗体力価についてアッセイされる。動物は、力価がプラトーになるまでブーストされる。一部の実施態様では、この動物は、同じ抗原のコンジュゲートであるが、異なるポリペプチドに及び/又は異なる架橋試薬を介してコンジュゲートされたコンジュゲートによって、ブーストされる。コンジュゲートは、ポリペプチド融合物として組換え細胞培養においても作製され得る。また、凝集剤、例えばミョウバンが、免疫応答を増強するために適切に使用される。
(ii)モノクローナル抗体
一部の実施態様では、本発明の方法によって浄化された再使用可能なクロマトグラフィー材料上で精製される抗体は、モノクローナル抗体である。モノクローナル抗体は、実質的に均一な抗体の集団から取得され、即ち、集団を構成する個々の抗体は、モノクローナル抗体の産生の間に生じる可能な変異体を除き、同一である及び/又は同じエピトープを結合し、かかる変異体は、一般には、微量で存在する。従って、修飾語句「モノクローナル」は、別々の又はポリクローナル抗体の混合物ではないとして、抗体の特徴を示す。
例えば、モノクローナル抗体は、Kohler等、Nature 256:495(1975)によって最初に記載されたハイブリドーマ方法を使用して作製され得るか、又は組換えDNA方法によって作製され得る(米国特許第4816567号)。
ハイブリドーマ方法では、マウス又は他の適切な宿主動物、例えば、ハムスターが、免疫化に使用されるポリペプチドに特異的に結合する抗体を産生する又は産生することが可能であるリンパ球を惹起するために、本明細書に記載のように免疫化される。あるいは、リンパ球は、インビトロで免疫化され得る。次いで、リンパ球は、ハイブリドーマ細胞を形成するために、ポリエチレングリコールなどの適切な融剤を使用して骨髄腫細胞と融合される(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice, pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。
こうして調製されたハイブリドーマ細胞は、融合していない親骨髄腫細胞の増殖又は生存を阻害する1又は複数の物質を好ましくは含む適切な培養培地に播種され、増殖される。例えば、これらの親骨髄腫細胞が、酵素ヒポキサンチングアニンホスホリボシルトランスフェラーゼ(HGPRT又はHPRT)を欠く場合、ハイブリドーマのための培養培地は、典型的には、ヒポキサンチン、アミノプテリン及びチミジンを含み(HAT培地)、これらの物質は、HGPRT欠損細胞の増殖を防止する。
一部の実施態様では、これらの骨髄腫細胞は、効率的に融合し、選択された抗体産生細胞による抗体の安定な高レベル産生を支持し、HAT培地などの培地に対して感受性である骨髄腫細胞である。これらのうち、一部の実施態様では、骨髄腫細胞株は、マウス骨髄腫株、例えば、Salk Institute Cell Distribution Center、San Diego、California USAから入手可能なMOPC−21及びMPC−11マウス腫瘍、並びにアメリカンタイプカルチャーコレクション、Rockville、Maryland USAから入手可能なSP−2又はX63−Ag8−653細胞から誘導される骨髄腫細胞株である。ヒト骨髄腫及びマウス−ヒトヘテロ骨髄腫細胞株もまた、ヒトモノクローナル抗体の産生について記載されている(Kozbor, J. Immunol. 133:3001 (1984);Brodeur等, Monoclonal Antibody Production Techniques and Applications pp. 51-63 (Marcel Dekker, Inc., New York, 1987))。
ハイブリドーマ細胞が増殖している培養培地は、抗原に対するモノクローナル抗体の産生についてアッセイされる。一部の実施態様では、ハイブリドーマ細胞によって産生されるモノクローナル抗体の結合特異性は、免疫沈降法又はインビトロ結合アッセイ、例えば、ラジオイムノアッセイ(RIA)若しくは酵素結合免疫吸着法(ELISA)によって、決定される。
モノクローナル抗体の結合親和性は、例えば、Munson等、Anal.Biochem.107:220(1980)のScatchard解析によって決定され得る。
所望の特異性、親和性及び/又は活性の抗体を産生するハイブリドーマ細胞が同定された後、それらのクローンは、限界希釈法手順によってサブクローニングされ得、標準的な方法によって増殖され得る(Goding, Monoclonal Antibodies: Principles and Practice pp. 59-103 (Academic Press, 1986))。この目的のために適切な培養培地には、例えば、D−MEM又はRPMI−1640培地が含まれる。さらに、これらのハイブリドーマ細胞は、動物において腹水腫瘍としてインビボで増殖され得る。
これらのサブクローンによって分泌されるモノクローナル抗体は、例えば、ポリペプチドA−Sepharose、ヒドロキシルアパタイトクロマトグラフィー、ゲル電気泳動、透析又はアフィニティークロマトグラフィーなどの従来の免疫グロブリン精製手順によって、培養培地、腹水液又は血清から適切に分離される。
モノクローナル抗体をコードするDNAは、従来の手順を使用して(例えば、マウス抗体の重鎖及び軽鎖をコードする遺伝子に特異的に結合することが可能なオリゴヌクレオチドプローブを使用することによって)、容易に単離及び配列決定される。一部の実施態様では、これらのハイブリドーマ細胞は、かかるDNAの供給源として機能する。単離された後、このDNAは、組換え宿主細胞におけるモノクローナル抗体の合成を得るために、そうでなければ免疫グロブリンポリペプチドを産生しない宿主細胞、例えば、大腸菌細胞、シミアンCOS細胞、チャイニーズハムスター卵巣(CHO)細胞又は骨髄腫細胞中に次いでトランスフェクトされる発現ベクター中に配置され得る。抗体をコードするDNAの細菌中での組換え発現についての概説記事には、Skerra等、Curr.Opinion in Immunol.5:256−262(1993)及びPluckthun、Immunol.Revs.、130:151−188(1992)が含まれる。
さらなる一実施態様では、抗体又は抗体断片は、McCafferty等、Nature 348:552−554(1990)に記載される技術を使用して生成される抗体ファージライブラリーから単離され得る。Clackson等、Nature 352:624−628(1991)及びMarks等、J.Mol.Biol.222:581−597(1991)は、ファージライブラリーを使用する、それぞれマウス抗体及びヒト抗体の単離を記載している。引き続く刊行物は、鎖シャッフリング(Marks等, Bio/Technology 10:779-783 (1992))、並びに非常に大きなファージライブラリーを構築するための戦略としてのコンビナトリアル感染及びインビボ組換え(Waterhouse等, Nuc. Acids. Res. 21:2265-2266 (1993))による、高親和性(nM範囲)ヒト抗体の産生を記載している。従って、これらの技術は、モノクローナル抗体の単離のための伝統的なモノクローナル抗体ハイブリドーマ技術に対する実行可能な代替法である。
DNAはまた、例えば、相同なマウス配列の代わりにヒト重鎖及び軽鎖定常ドメインのコード配列を置換することによって(米国特許第4816567号;Morrison等, Proc. Natl Acad. Sci. USA 81:6851 (1984))、又は免疫グロブリンコード配列に、非免疫グロブリンポリペプチドのコード配列の全て若しくは一部を共有結合的に連結することによって、修飾され得る。
典型的には、かかる非免疫グロブリンポリペプチドは、抗体の定常ドメインを置換し、又はかかる非免疫グロブリンポリペプチドは、ある抗原に対する特異性を有する1つの抗原結合部位及び異なる抗原に対する特異性を有する別の抗原結合部位を含むキメラ二価抗体を創出するために、抗体の1つの抗原結合部位の可変ドメインを置換する。
本明細書に記載される方法のいずれかの一部の実施態様では、この抗体は、IgA、IgD、IgE、IgG又はIgMである。一部の実施態様では、この抗体は、IgGモノクローナル抗体である。
(iii)ヒト化抗体
一部の実施態様では、この抗体は、ヒト化抗体である。非ヒト抗体をヒト化するための方法は、当該技術分野で記載されている。一部の実施態様では、ヒト化抗体は、非ヒトである供給源由来の、その中に導入された1又は複数のアミノ酸残基を有する。これらの非ヒトアミノ酸残基は、「移入」残基と言われる場合が多く、これらは、典型的には、「移入」可変ドメインから取られる。ヒト化は、超可変領域配列でヒト抗体の対応する配列を置き換えることによって、Winter及び共同研究者(Jones等, Nature 321:522-525 (1986);Riechmann等, Nature 332:323-327 (1988);Verhoeyen等, Science 239:1534-1536 (1988))の方法に従って、本質的には実施され得る。従って、かかる「ヒト化」抗体は、キメラ抗体であり(米国特許第4816567号)、ここで、実質的に、インタクトなヒト可変ドメイン未満が、非ヒト種由来の対応する配列によって置換されている。実際には、ヒト化抗体は、典型的には、一部の超可変領域残基及びおそらくは一部のFR残基が、げっ歯類抗体中の類似の部位由来の残基によって置換される、ヒト抗体である。
ヒト化抗体を作製する際に使用される軽鎖及び重鎖の両方のヒト可変ドメインの選択は、抗原性を低減させるために非常に重要である。いわゆる「ベストフィット」方法によれば、げっ歯類抗体の可変ドメインの配列は、公知のヒト可変ドメイン配列のライブラリー全体に対してスクリーニングされる。次いで、げっ歯類のものと最も近いヒト配列が、ヒト化抗体のためのヒトフレームワーク領域(FR)として受容される(Sims等, J. Immunol. 151:2296 (1993);Chothia等, J. Mol. Biol. 196:901 (1987))。別の方法は、軽鎖又は重鎖可変領域の特定の下位群の全てのヒト抗体のコンセンサス配列から誘導される特定のフレームワーク領域を使用する。同じフレームワークが、いくつかの異なるヒト化抗体のために使用され得る(Carter等, Proc. Natl. Acad. Sci. USA 89:4285 (1992);Presta等, J. Immunol. 151:2623 (1993))。
抗体が、抗原に対する高い親和性及び他の好ましい生物特性の保持を伴ってヒト化されることが、さらに重要である。この目標を達成するために、これらの方法の一部の実施態様では、ヒト化抗体は、親配列及びヒト化配列の3次元モデルを使用した、親配列及び種々の概念的ヒト化産物の解析のプロセスによって調製される。3次元免疫グロブリンモデルは、一般に入手可能であり、当業者によく知られている。選択された候補免疫グロブリン配列の可能な3次元コンフォメーション構造を図示しディスプレイするコンピュータープログラムが利用可能である。これらのディスプレイの検査は、候補免疫グロブリン配列の機能における残基の可能性の高い役割の解析、即ち、候補免疫グロブリンがその抗原に結合する能力に影響を与える残基の解析を可能にする。この方法で、FR残基は、所望の抗体特性、例えば、標的抗原(一又は複数)に対する増加した親和性が達成されるように、レシピエント配列及び移入配列から選択され得、組み合わされ得る。一般に、超可変領域の残基は、直接的かつ最も実質的に、抗原結合に影響を与えることに関与する。
(v)ヒト抗体
一部の実施態様では、この抗体は、ヒト抗体である。ヒト化に対する代替法として、ヒト抗体が生成され得る。例えば、免疫化の際に、内因性の免疫グロブリン産生の非存在下でヒト抗体の完全レパートリーを産生することが可能なトランスジェニック動物(例えば、マウス)を産生することが、ここで可能である。例えば、キメラ及び生殖細胞系変異体マウスにおける抗体重鎖連結領域(JH)遺伝子のホモ接合型欠失は、内因性の抗体産生の完全な阻害を生じることが記載されている。かかる生殖細胞系変異体マウスにおけるヒト生殖系列免疫グロブリン遺伝子アレイの移行は、抗原曝露の際にヒト抗体の産生を生じる。例えば、Jakobovits等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:2551(1993);Jakobovits等、Nature 362:255−258(1993);Bruggermann等、Year in Immuno.7:33(1993);並びに米国特許第5591669号;米国特許第5589369号;及び米国特許第5545807号を参照のこと。
あるいは、ファージディスプレイテクノロジー(McCafferty等, Nature 348:552-553 (1990))は、免疫化されていないドナー由来の免疫グロブリン可変(V)ドメイン遺伝子レパートリーから、インビトロでヒト抗体及び抗体断片を産生するために使用され得る。この技術によれば、抗体Vドメイン遺伝子は、線状バクテリオファージ、例えば、M13又はfdのメジャー又はマイナーコートポリペプチド遺伝子のいずれか中に、インフレームでクローニングされ、ファージ粒子の表面上に機能性抗体断片としてディスプレイされる。線状粒子は、ファージゲノムの一本鎖DNAコピーを含むので、抗体の機能的特性に基づく選択もまた、これらの特性を示す抗体をコードする遺伝子の選択を生じる。従って、ファージは、B細胞の特性の一部を模倣する。ファージディスプレイは、種々の形式で実施され得る;それらの概説については、例えば、Johnson,Kevin S.及びChiswell,David J.、Current Opinion in Structural Biology 3:564−571(1993)を参照のこと。V遺伝子セグメントのいくつかの供給源が、ファージディスプレイのために使用され得る。Clackson等、Nature 352:624−628(1991)は、免疫化されたマウスの脾臓から誘導されるV遺伝子の小さいランダムコンビナトリアルライブラリーから、抗オキサゾロン抗体の多様なアレイを単離した。免疫化されていないヒトドナー由来のV遺伝子のレパートリーが構築され得、抗原(自己抗原を含む)の多様なアレイに対する抗体が、Marks等、J.Mol.Biol.222:581−597(1991)又はGriffith等、EMBO J.12:725−734(1993)によって記載された技術に本質的に従って、単離され得る。米国特許第5565332号及び米国特許第5573905号もまた参照のこと。
ヒト抗体は、インビトロで活性化されたB細胞によっても生成され得る(米国特許第5567610号及び米国特許第5229275号を参照のこと)。
(v)抗体断片
一部の実施態様では、この抗体は、抗体断片である。種々の技術が、抗体断片の産生のために開発されている。伝統的には、これらの断片は、インタクトな抗体のタンパク質分解消化を介して誘導された(例えば、Morimoto等, Journal of Biochemical and Biophysical Methods 24:107-117 (1992)及びBrennan等, Science 229:81 (1985)を参照のこと)。しかし、これらの断片は、ここで、組換え宿主細胞によって直接的に産生され得る。例えば、これらの抗体断片は、上で議論した抗体ファージライブラリーから単離され得る。あるいは、Fab’−SH断片が、大腸菌から直接回収され得、F(ab’)2断片を形成するために化学的にカップリングされ得る(Carter等, Bio/Technology 10: 163-167 (1992))。別の手法によれば、F(ab’)2断片は、組換え宿主細胞培養物から直接単離され得る。抗体断片の産生のための他の技術は、熟練の施術者に明らかである。他の実施態様では、選択された抗体は、単鎖Fv断片(scFv)である。国際公開第93/16185号;米国特許第5571894号及び米国特許第5587458号を参照のこと。抗体断片はまた、例えば米国特許第5641870号などに記載されるような、「直鎖状抗体」であり得る。かかる直鎖状抗体断片は、単一特異性又は二重特異性であり得る。
一部の実施態様では、本発明に記載される抗体の断片が提供される。一部の実施態様では、この抗体断片は、抗原結合性断片である。一部の実施態様では、この抗原結合性断片は、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv、Fv及びダイアボディからなる群より選択される。
(vi)二重特異性抗体
一部の実施態様では、この抗体は、二重特異性抗体である。二重特異性抗体は、少なくとも2つの異なるエピトープに対する結合特異性を有する抗体である。例示的二重特異性抗体は、2つの異なるエピトープに結合し得る。あるいは、二重特異性抗体の結合アームは、細胞防御の焦点を細胞に合わさせるように、白血球上のトリガー分子、例えば、T細胞受容体分子(例えば、CD2若しくはCD3)、又はIgGに対するFc受容体(FcγR)、例えば、FcγRI(CD64)、FcγRII(CD32)及びFcγRIII(CD16)に結合するアームと組み合わされ得る。二重特異性抗体は、完全長抗体又は抗体断片(例えば、F(ab’)2二重特異性抗体)として調製され得る。
二重特異性抗体を作製するための方法は、当該技術分野で公知である。完全長二重特異性抗体の伝統的な産生は、2つの免疫グロブリン重鎖−軽鎖対の共発現に基づき、これら2つの鎖は、異なる特異性を有する(Millstein等, Nature 305:537-539 (1983))。免疫グロブリン重鎖及び軽鎖のランダムな取り合わせに起因して、これらのハイブリドーマ(クアドローマ)は、10種の異なる抗体分子の潜在的混合物を産生し、これらのうち1つだけが、正しい二重特異性構造を有する。アフィニティークロマトグラフィー工程によって通常行われる正しい分子の精製は、むしろ扱いにくく、産物収量は低い。類似の手順は、国際公開第93/08829号及びTraunecker等、EMBO J.、10:3655−3659(1991)に開示されている。
異なる手法によれば、所望の結合特異性(抗体−抗原結合部位)を有する抗体可変ドメインが、免疫グロブリン定常ドメイン配列に融合される。一部の実施態様では、この融合は、ヒンジ、CH2及びCH3領域の少なくとも一部を含む、免疫グロブリン重鎖定常ドメインとのものである。一部の実施態様では、軽鎖結合に必要な部位を含む第1の重鎖定常領域(CH1)が、融合物の少なくとも1つにおいて存在する。免疫グロブリン重鎖融合物、及び所望の場合、免疫グロブリン軽鎖をコードするDNAは、別々の発現ベクター中に挿入され、適切な宿主生物中にコトランスフェクトされる。これは、構築において使用される3つのポリペプチド鎖の不均等な比率が最適な収量を提供する場合の実施態様において、3つのポリペプチド断片の相互の割合を調整することにおける大きな順応性を提供する。しかし、等しい比率での少なくとも2つのポリペプチド鎖の発現が高い収量を生じる場合又は比率に特定の有意性がない場合、1つの発現ベクター中に2つ又は3つ全てのポリペプチド鎖のコード配列を挿入することが可能である。
この手法の一部の実施態様では、これらの二重特異性抗体は、一方のアーム中の第1の結合特異性を有するハイブリッド免疫グロブリン重鎖と、他方のアーム中のハイブリッド免疫グロブリン重鎖−軽鎖対(第2の結合特異性を提供する)から構成される。この非対称構造は、望ましくない免疫グロブリン鎖の組み合わせからの所望の二重特異性化合物の分離を促進することが見出されたが、それは、二重特異性分子の半分のみにおける免疫グロブリン軽鎖の存在が、分離の容易な方法を提供するからである。この手法は、国際公開第94/04690号に開示されている。二重特異性抗体を生成することのさらなる詳細については、例えば、Suresh等、Methods in Enzymology 121:210(1986)を参照のこと。
米国特許第5731168号に記載される別の手法によれば、抗体分子の対間の接触面は、組換え細胞培養物から回収されるヘテロ二量体の百分率を最大化するために操作され得る。一部の実施態様では、この接触面は、抗体定常ドメインのCH3ドメインの少なくとも一部を含む。この方法では、第1の抗体分子の接触面由来の1又は複数の小さいアミノ酸側鎖が、より大きい側鎖(例えば、チロシン又はトリプトファン)で置き換えられる。大きい側鎖(一又は複数)に対して同一又は類似のサイズの代償的「腔」が、大きいアミノ酸側鎖をより小さいアミノ酸側鎖(例えば、アラニン又はスレオニン)で置き換えることによって、第2の抗体分子の接触面上に創出される。これは、ホモ二量体などの他の望ましくない最終産物を超えて、ヘテロ二量体の収量を増加させるための機構を提供する。
二重特異性抗体には、架橋抗体又は「ヘテロコンジュゲート」抗体が含まれる。例えば、ヘテロコンジュゲート中の抗体の一方は、アビジンにカップリングされ得、他方は、ビオチンにカップリングされ得る。かかる抗体は、例えば、望ましくない細胞へと免疫系細胞を標的化するため(米国特許第4676980号)、及びHIV感染の治療のため(国際公開第91/00360号、国際公開第92/200373号及び欧州03089号)に提唱されてきた。ヘテロコンジュゲート抗体は、任意の従来の架橋方法を使用して作製され得る。適切な架橋結合剤は、当該技術分野で周知であり、いくつかの架橋技術と共に、米国特許第4676980号に開示されている。
抗体断片から二重特異性抗体を生成するための技術もまた、文献中に記載されている。例えば、二重特異性抗体は、化学結合を使用して調製され得る。Brennan等、Science 229:81(1985)は、インタクトな抗体がF(ab’)2断片を生成するためにタンパク質分解性に切断される手順を記載している。これらの断片は、隣接ジチオールを安定化し、分子間ジスルフィド形成を防止するために、ジチオール錯化剤亜ヒ酸ナトリウムの存在下で還元される。次いで、生成されたFab’断片は、チオニトロベンゾエート(TNB)誘導体に変換される。次いで、Fab’−TNB誘導体のうち一方が、メルカプトエチルアミンによる還元によってFab’−チオールに再変換され、等モル量の他方のFab’−TNB誘導体と混合されて、二重特異性抗体を形成する。提供される二重特異性抗体は、酵素の選択的固定化のための薬剤として使用され得る。
組換え細胞培養物から直接二重特異性抗体断片を作製及び単離するための種々の技術もまた、記載されてきた。例えば、二重特異性抗体は、ロイシンジッパーを使用して産生されてきた。Kostelny等、J.Immunol.148(5):1547−1553(1992)。Fosタンパク質及びJunタンパク質由来のロイシンジッパーペプチドが、遺伝子融合によって、2つの異なる抗体のFab’部分に結合された。これらの抗体ホモ二量体は、モノマーを形成するために、ヒンジ領域において還元され、次いで、抗体ヘテロ二量体を形成するために再酸化された。この方法は、抗体ホモ二量体の産生のためにも利用され得る。Hollinger等、Proc.Natl.Acad.Sci.USA 90:6444−6448(1993)によって記載される「ダイアボディ」テクノロジーは、二重特異性抗体断片を作製するための代替的機構を提供してきた。これらの断片は、同じ鎖上の2つのドメイン間のペアリングを可能にするには短すぎるリンカーによって軽鎖可変ドメイン(VL)に接続された重鎖可変ドメイン(VH)を含む。従って、1つの断片のVHドメイン及びVLドメインは、別の断片の相補的なVLドメイン及びVHドメインとペアリングするようにさせられ、それによって、2つの抗原結合部位を形成する。単鎖Fv(sFv)ダイマーの使用によって二重特異性抗体断片を作製するための別の戦略もまた、報告されている。Gruber等、J.Immunol.152:5368(1994)を参照のこと。
2つよりも多い結合価を有する抗体が企図される。例えば、三重特異性抗体が調製され得る。Tutt等、J.Immunol.147:60(1991)。
(vii)多価抗体
一部の実施態様では、これらの抗体は、多価抗体である。多価抗体は、この抗体が結合する抗原を発現する細胞によって、二価抗体よりも速く内部移行(及び/又は異化)され得る。本明細書で提供される抗体は、抗体のポリペプチド鎖をコードする核酸の組換え発現によって容易に産生され得る、3つ以上の抗原結合部位を有する多価抗体(IgMクラスのもの以外)(例えば、四価抗体)であり得る。この多価抗体は、1つの二量体化ドメイン及び3つ以上の抗原結合部位を含み得る。好ましい二量体化ドメインは、Fc領域若しくはヒンジ領域を含む(又はFc領域若しくはヒンジ領域からなる)。このシナリオでは、抗体は、Fc領域と、Fc領域に対してアミノ末端に3つ以上の抗原結合部位とを含む。本明細書の好ましい多価抗体は、3つから約8つであるが、好ましくは4つの抗原結合部位を含む(又はそれらからなる)。この多価抗体は、少なくとも1つのポリペプチド鎖(及び好ましくは2つのポリペプチド鎖)を含み、ここで、このポリペプチド鎖(一又は複数)は、2以上の可変ドメインを含む。例えば、このポリペプチド鎖(一又は複数)は、VD1−(X1)n−VD2−(X2)n−Fcを含み得、ここで、VD1は第1の可変ドメインであり、VD2は第2の可変ドメインであり、FcはFc領域の1つのポリペプチド鎖であり、X1及びX2は、アミノ酸又はポリペプチドを示し、nは、0又は1である。例えば、このポリペプチド鎖(一又は複数)は、VH−CH1−可動性リンカー−VH−CH1−Fc領域鎖又はVH−CH1−VH−CH1−Fc領域鎖を含み得る。本明細書の多価抗体は、好ましくは、少なくとも2つの(及び好ましくは4つの)軽鎖可変ドメインポリペプチドをさらに含む。本明細書の多価抗体は、例えば、約2つから約8つまでの軽鎖可変ドメインポリペプチドを含み得る。本明細書で企図される軽鎖可変ドメインポリペプチドは、軽鎖可変ドメインを含み、任意選択的に、CLドメインをさらに含む。
一部の実施態様では、この抗体は、多重特異性抗体である。多重特異性抗体の例には、VHVL単位がポリエピトープ特異性を有する、重鎖可変ドメイン(VH)及び軽鎖可変ドメイン(VL)を含む抗体、各VHVL単位が異なるエピトープに結合する、2以上のVLドメイン及びVHドメインを有する抗体、各単一可変ドメインが異なるエピトープに結合する、2以上の単一可変ドメインを有する抗体、完全長抗体、抗体断片、例えば、Fab、Fv、dsFv、scFv、ダイアボディ、二重特異性ダイアボディ、トリアボディ、三機能性抗体、共有結合的に又は非共有結合的に結合した抗体断片が含まれるがこれらに限定されない。一部の実施態様では、この抗体は、ポリエピトープ特異性、例えば、同じ又は異なる標的(一又は複数)上の2以上の異なるエピトープに特異的に結合する能力を有する。一部の実施態様では、これらの抗体は、1つのエピトープのみに結合する抗体など、単一特異性である。一実施態様によれば、この多重特異性抗体は、5μMから0.001pM、3μMから0.001pM、1μMから0.001pM、0.5μMから0.001pM又は0.1μMから0.001pMの親和性で各エピトープに結合するIgG抗体である。
(viii)他の抗体修飾
例えば、抗体の抗体依存性細胞傷害(ADCC)及び/又は補体依存性細胞傷害(CDC)を増強するために、エフェクター機能に関して、本明細書に提供される抗体を修飾することが望まれ得る。これは、抗体のFc領域において1又は複数のアミノ酸置換を導入することによって達成され得る。あるいは又はさらに、システイン残基(一又は複数)が、Fc領域において導入され得、それによって、この領域における鎖間ジスルフィド結合形成を可能にする。こうして生成されたホモ二量体抗体は、改善された内部移行能並びに/又は増加した補体媒介性細胞殺傷及び抗体依存性細胞傷害(ADCC)を有し得る。Caron等、J.Exp Med.176:1191−1195(1992)及びShopes,B.J.、Immunol.148:2918−2922(1992)を参照のこと。増強された抗腫瘍活性を有するホモ二量体抗体は、Wolff等、Cancer Research 53:2560−2565(1993)に記載されるように、ヘテロ二官能性クロスリンカーを使用しても、調製され得る。あるいは、二重Fc領域を有する抗体が操作され得、それによって、増強された補体媒介性溶解及びADCC能を有し得る。Stevenson等、Anti−Cancer Drug Design 3:219−230(1989)を参照のこと。
抗体の血清半減期を増加させるために、アミノ酸変更が、その全内容が本明細書に参照により援用される米国特許出願公開第2006/0067930号に記載されるように、抗体において行われ得る。
(B)ポリペプチド変異体及び修飾
本明細書に記載される抗体を含むポリペプチドのアミノ酸配列修飾(一又は複数)が、本明細書に記載される方法によって浄化される再使用可能なクロマトグラフィー材料において使用され得る。
(i)変異体ポリペプチド
「ポリペプチド変異体」とは、シグナルペプチドを有する又は有さない、ポリペプチドの完全長天然配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、ポリペプチドの細胞外ドメインと少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性を有する、本明細書で定義されるポリペプチド、好ましくは活性ポリペプチドを意味する。かかるポリペプチド変異体には、例えば、1又は複数のアミノ酸残基が完全長天然アミノ酸配列のN末端又はC末端において付加又は欠失されるポリペプチドが含まれる。通常、TATポリペプチド変異体は、シグナルペプチドを有する又は有さず、完全長天然配列ポリペプチド配列、シグナルペプチドを欠くポリペプチド配列、ポリペプチドの細胞外ドメインと、少なくとも約80%のアミノ酸配列同一性、あるいは少なくとも約85%、約90%、約95%、約96%、約97%、約98%又は約99%のいずれかのアミノ酸配列同一性を有する。任意選択的に、変異体ポリペプチドは、天然ポリペプチド配列と比較して、1つ以下の保存的アミノ酸置換、あるいは、天然ポリペプチド配列と比較して、約2以下、約3以下、約4以下、約5以下、約6以下、約7以下、約8以下、約9以下又は約10以下の保存的アミノ酸置換を有する。
この変異体ポリペプチドは、例えば、完全長天然ポリペプチドと比較した場合、N末端若しくはC末端において切除され得、又は内部残基を欠き得る。特定の変異体ポリペプチドは、所望の生物活性にとって重要でないアミノ酸残基を欠き得る。切除、欠失及び挿入を有するこれらの変異体ポリペプチドは、いくつかの従来の技術のいずれかによって調製され得る。所望の変異体ポリペプチドは、化学合成され得る。別の適切な技術には、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)によって、所望の変異体ポリペプチドをコードする核酸断片を単離及び増幅することが関与する。核酸断片の所望の断片を規定するオリゴヌクレオチドは、PCRにおいて5’プライマー及び3’プライマーにおいて使用される。好ましくは、変異体ポリペプチドは、本明細書に開示される天然ポリペプチドと、少なくとも1つの生物活性及び/又は免疫活性を共有する。
アミノ酸配列挿入には、1残基から、100以上の残基を含むポリペプチドまでの長さ範囲の、アミノ末端及び/又はカルボキシル末端融合、並びに単一又は複数のアミノ酸残基の配列内挿入が含まれる。末端挿入の例には、N末端メチオニル残基を有する抗体又は細胞傷害性ポリペプチドに融合した抗体が含まれる。抗体分子の他の挿入変異体には、酵素、又は抗体の血清半減期を増加させるポリペプチドへの、抗体のN末端又はC末端への融合物が含まれる。
例えば、ポリペプチドの結合親和性及び/又は他の生物特性を改善することが望ましい場合がある。ポリペプチドのアミノ酸配列変異体は、抗体核酸中に適切なヌクレオチド変化を導入することによって、又はペプチド合成によって、調製される。かかる修飾には、例えば、ポリペプチドのアミノ酸配列内の残基からの欠失及び/又は残基中への挿入及び/又は残基の置換が含まれる。最終コンストラクトが所望の特性を有する限りにおいて、欠失、挿入及び置換の任意の組み合わせが、最終コンストラクトに達するために行われる。アミノ酸変化はまた、ポリペプチド(例えば、抗体)の翻訳後プロセスを変更し得る、例えば、グリコシル化部位の数又は位置を変化させる。
どのアミノ酸残基が、所望の活性に悪影響を与えることなく挿入、置換又は欠失され得るかを決定することにおけるガイダンスは、このポリペプチドの配列を相同な公知のポリペプチド分子の配列と比較し、高い相同性の領域において作製されるアミノ酸配列変化の数を最小化することによって、見出され得る。
突然変異誘発にとって好ましい位置であるポリペプチド(例えば、抗体)の特定の残基又は領域の同定のための有用な方法は、Cunningham及びWells、Science 244:1081−1085(1989)に記載されるように、「アラニンスキャニング突然変異誘発」と呼ばれる。ここで、残基又は標的残基の群が同定され(例えば、荷電残基、例えば、Arg、Asp、His、Lys及びGlu)、アミノ酸と抗原との相互作用に影響を与えるために、中性又は負に荷電したアミノ酸(最も好ましくはアラニン又はポリアラニン)によって置き換えられる。次いで、置換に対する機能的感受性を実証するアミノ酸位置が、置換の部位において、又は置換の部位の代わりに、さらなる又は他の変異体を導入することによって、精緻化される。従って、アミノ酸配列差異を導入するための部位は、予め決定されるが、突然変異自体の性質は、予め決定される必要はない。例えば、所与の部位における突然変異の性能を解析するために、alaスキャニング又はランダム突然変異誘発が、標的コドン又は領域において実施され、発現された抗体変異体は、所望の活性についてスクリーニングされる。
別の型の変異体は、アミノ酸置換変異体である。これらの変異体は、異なる残基によって置き換えられた、抗体分子中の少なくとも1つのアミノ酸残基を有する。置換突然変異誘発のために最も目的とされる部位には、超可変領域が含まれるが、FR変更もまた企図される。保存的置換は、「好ましい置換」の見出しの下に、以下の表1に示される。かかる置換が生物活性における変化を生じる場合、表1中で「例示的置換」と称され、又はアミノ酸クラスを参照して以下にさらに記載されるような、より実質的な変化が導入され得、産物がスクリーニングされ得る。
ポリペプチドの生物特性における実質的修飾は、(a)置換の領域におけるポリペプチド骨格の構造を、例えば、シート又はらせんコンフォメーションとして維持すること、(b)標的部位における分子の電荷若しくは疎水性を維持すること、又は(c)側鎖の嵩を維持することに対するそれらの影響が顕著に異なる置換を選択することによって、達成される。アミノ酸は、それらの側鎖の特定における類似性に従ってグループ分けされ得る(A. L. Lehninger, Biochemistry 第2版, pp. 73-75, Worth Publishers, New York (1975)中):
(1)非極性:Ala(A)、Val(V)、Leu(L)、Ile(I)、Pro(P)、Phe(F)、Trp(W)、Met(M)
(2)非荷電極性:Gly(G)、Ser(S)、Thr(T)、Cys(C)、Tyr(Y)、Asn(N)、Gln(Q)
(3)酸性:Asp(D)、Glu(E)
(4)塩基性:Lys(K)、Arg(R)、His(H)
あるいは、天然に存在する残基は、共通の側鎖特性に基づいてグループに分けられ得る:
(1)疎水性:ノルロイシン、Met、Ala、Val、Leu、Ile;
(2)中性親水性:Cys、Ser、Thr、Asn、Gln;
(3)酸性:Asp、Glu;
(4)塩基性:His、Lys、Arg;
(5)鎖配向に影響する残基:Gly、Pro;
(6)芳香族:Trp、Tyr、Phe。
非保存的置換は、これらのクラスのうち1つのメンバーを別のクラスに交換することを必要とする。
抗体の適切なコンフォメーションを維持することに関与しない任意のシステイン残基もまた、分子の酸化安定性を改善するため、及び異常な架橋を防止するために、一般にはセリンで置換され得る。逆に、システイン結合(一又は複数)が、その安定性を改善するために、ポリペプチドに付加され得る(特に、抗体が、Fv断片などの抗体断片である場合)。
特に好ましい型の置換変異体は、親抗体(例えば、ヒト化抗体)の1又は複数の超可変領域残基を置換することを含む。一般に、さらなる開発のために選択される得られた変異体(一又は複数)は、それらが生成される親抗体と比較して、改善された生物特性を有する。かかる置換変異体を生成するための簡便な方法には、ファージディスプレイを使用する親和性成熟が関与する。簡潔に述べると、いくつかの超可変領域部位(例えば、6−7個の部位)が、各部位において全ての可能なアミノ酸置換を生成するために変異される。こうして生成された抗体変異体は、各粒子内にパッケージングされたM13の遺伝子III産物との融合物として、線状ファージ粒子から一価の様式でディスプレイされる。次いで、ファージディスプレイされた変異体は、本明細書に開示されるように、それらの生物活性(例えば、結合親和性)についてスクリーニングされる。修飾のための候補超可変領域部位を同定するために、アラニンスキャニング突然変異誘発が、抗原結合に顕著に寄与する超可変領域残基を同定するために実施され得る。あるいは、又はさらに、抗体と標的との間の接触点を同定するために、抗原−抗体複合体の結晶構造を解析することが有益であり得る。かかる接触残基及び隣接残基は、本明細書で詳述される技術に従う置換のための候補である。かかる変異体が生成されると、変異体のパネルが、本明細書に記載されるようにスクリーニングに供され、1又は複数の適切なアッセイにおいて優れた特性を有する抗体が、さらなる開発のために選択され得る。
ポリペプチドの別の型のアミノ酸変異体は、抗体の元のグリコシル化パターンを変更する。このポリペプチドは、非アミノ酸部分を含み得る。例えば、このポリペプチドは、グリコシル化され得る。かかるグリコシル化は、宿主細胞若しくは宿主生物におけるポリペプチドの発現の間に天然に生じ得、又はヒトの介入から生じる意図的な修飾であり得る。変更するとは、ポリペプチド中に見出される1若しくは複数の炭水化物部分を欠失すること、及び/又はポリペプチド中に存在しない1若しくは複数のグリコシル化部位を付加することを意味する。
ポリペプチドのグリコシル化は、典型的には、N結合又はO結合のいずれかである。N結合とは、アスパラギン残基の側鎖への炭水化物部分の結合を指す。Xがプロリン以外の任意のアミノ酸であるトリペプチド配列アスパラギン−X−セリン及びアスパラギン−X−スレオニンは、アスパラギン側鎖への炭水化物部分の酵素的結合のための認識配列である。従って、ポリペプチドにおけるこれらのトリペプチド配列のいずれかの存在は、潜在的なグリコシル化部位を創出する。O結合グリコシル化とは、ヒドロキシアミノ酸、最も一般的にはセリン又はスレオニンへの、糖類N−アセチルガラクトサミン、ガラクトース又はキシロースのうちの1つの結合を指すが、5−ヒドロキシプロリン又は5−ヒドロキシリジンもまた使用され得る。
ポリペプチドへのグリコシル化部位の付加は、アミノ酸配列が、上記トリペプチド配列のうち1又は複数を含むように、アミノ酸配列を変更することによって、簡便には達成される(N結合グリコシル化部位について)。この変更は、元の抗体の配列への、1若しくは複数のセリン若しくはスレオニン残基の付加、又は1若しくは複数のセリン若しくはスレオニン残基による置換によっても、行われ得る(O結合グリコシル化部位について)。
ポリペプチド上に存在する炭水化物部分の除去は、化学的若しくは酵素的に、又はグリコシル化のための標的として機能するアミノ酸残基をコードするコドンの突然変異的置換によって、達成され得る。ポリペプチド上の炭水化物部分の酵素的切断は、種々のエンドグリコシダーゼ及びエキソグリコシダーゼの使用によって達成され得る。
他の修飾には、それぞれ対応するグルタミル及びアスパルチル残基へのグルタミニル及びアスパラギニル残基の脱アミド、プロリン及びリジンのヒドロキシル化、セリル又はスレオニル残基のヒドロキシル基のリン酸化、リジン、アルギニン及びヒスチジン側鎖のα−アミノ基のメチル化、N末端アミンのアセチル化、並びに任意のC末端カルボキシル基のアミド化が含まれる。
(ii)キメラポリペプチド
本明細書に記載されるポリペプチドは、別の異種ポリペプチド又はアミノ酸配列に融合されたポリペプチドを含むキメラ分子を形成するための方法において、修飾され得る。一部の実施態様では、キメラ分子は、抗タグ抗体が選択的に結合し得るエピトープを提供するタグポリペプチドとの、ポリペプチドの融合を含む。このエピトープタグは、一般に、ポリペプチドのアミノ末端又はカルボキシル末端に配置される。ポリペプチドのかかるエピトープタグ化形態の存在は、タグポリペプチドに対する抗体を使用して検出され得る。また、エピトープタグの提供は、ポリペプチドが、このエピトープタグに結合する抗タグ抗体又は別の型のアフィニティーマトリックスを使用するアフィニティー精製によって容易に精製されることを可能にする。
代替的な一実施態様では、このキメラ分子は、免疫グロブリン又は免疫グロブリンの特定の領域とのポリペプチドの融合を含み得る。二価形態のキメラ分子は、「イムノアドヘシン」と呼ばれる。
本明細書で使用する場合、用語「イムノアドヘシン」は、異種ポリペプチドの結合特異性を免疫グロブリン定常ドメインのエフェクター機能と組み合わせる抗体様分子を指定する。構造的には、これらのイムノアドヘシンは、抗体の抗原認識及び結合部位以外である(即ち、「異種」である)所望の結合特異性を有するアミノ酸配列と、免疫グロブリン定常ドメイン配列との融合を含む。イムノアドヘシン分子のアドヘシン部分は、典型的には、受容体又はリガンドの結合部位を少なくとも含む、近接するアミノ酸配列である。イムノアドヘシン中の免疫グロブリン定常ドメイン配列は、任意の免疫グロブリン、例えば、IgG−1、IgG−2、IgG−3若しくはIgG−4サブタイプ、IgA(IgA−1及びIgA−2を含む)、IgE、IgD又はIgMから取得され得る。
これらのIg融合物は、好ましくは、Ig分子内の少なくとも1つの可変領域の代わりに、可溶型(膜貫通ドメインが欠失又は不活化されている)形態のポリペプチドの置換を含む。特に好ましい一実施態様では、この免疫グロブリン融合物は、IgG1分子のヒンジ、CH2及びCH3、又はヒンジ、CH1、CH2及びCH3領域を含む。
(iii)ポリペプチドコンジュゲート
ポリペプチド製剤における使用のためのポリペプチドは、細胞傷害性剤、例えば、化学療法剤、増殖阻害剤、毒素(例えば、細菌、真菌、植物若しくは動物起源の酵素的に活性な毒素、又はそれらの断片)、又は放射性同位体(即ち、放射性コンジュゲート)にコンジュゲートされ得る。
かかるコンジュゲートの生成において有用な化学療法剤が使用され得る。さらに、使用され得る酵素的に活性な毒素及びそれらの断片には、ジフテリアA鎖、ジフテリア毒素の非結合性活性断片、外毒素A鎖(緑膿菌(Pseudomonas aeruginosa)由来)、リシンA鎖、アブリンA鎖、モデシンA鎖、アルファ−サルシン、シナアブラギリ(Aleurites fordii)タンパク質、ジアンチン(dianthin)タンパク質、ヨウシュヤマゴボウ(Phytolaca americana)タンパク質(PAPI、PAPII及びPAP−S)、ツルレイシ(momordica charantia)阻害剤、クルシン、クロチン、サポンソウ(sapaonaria officinalis)阻害剤、ゲロニン、ミトゲリン(mitogellin)、レストリクトシン、フェノマイシン(phenomycin)、エノマイシン及びトリコテセンが含まれる。種々の放射性核種が、放射性コンジュゲートされたポリペプチドの産生のために利用可能である。例としては、212Bi、131I、131In、90Y及び186Reが含まれる。ポリペプチドと細胞傷害性剤とのコンジュゲートは、種々の二官能性タンパク質カップリング剤、例えば、N−スクシンイミジル−3−(2−ピリジルジチオール)プロピオネート(SPDP)、イミノチオラン(IT)、イミドエステルの二官能性誘導体(例えば、アジプイミド酸ジメチルHCL)、活性エステル(例えば、スベリン酸ジスクシンイミジル)、アルデヒド(例えば、グルタルアルデヒド(glutareldehyde))、ビス−アジド化合物(例えば、ビス(p−アジドベンゾイル)ヘキサンジアミン)、ビス−ジアゾニウム誘導体(例えば、ビス−(p−ジアゾニウムベンゾイル)−エチレンジアミン)、ジイソシアネート(例えば、トルエン2,6−ジイソシアネート)及びビス活性フッ素化合物(例えば、1,5−ジフルオロ−2,4−ジニトロベンゼン)を使用して作製される。例えば、リシンイムノトキシンは、Vitetta等、Science 238:1098(1987)に記載されるように調製され得る。炭素−14標識された1−イソチオシアナトベンジル−3−メチルジエチレントリアミン五酢酸(MX−DTPA)は、ポリペプチドへの放射性ヌクレオチドのコンジュゲーションのための例示的キレート剤である。
ポリペプチドと、カリケアマイシン、メイタンシノイド、トリコテセン(trichothene)及びCC1065、並びに毒素活性を有するこれらの毒素の誘導体などの1又は複数の低分子毒素とのコンジュゲートもまた、本明細書で企図される。
メイタンシノイドは、チューブリン重合を阻害することによって作用する有糸分裂阻害剤である。メイタンシンは、東アフリカの灌木メイテナス・セラタ(Maytenus serrata)から最初に単離された。引き続いて、特定の微生物もまた、メイタンシノイド、例えば、メイタンシノール及びC−3メイタンシノールエステルを産生することが発見された。合成メイタンシノール並びにその誘導体及びアナログもまた企図される。例えば、米国特許第5208020号に開示されるものを含む、ポリペプチド−メイタンシノイドコンジュゲートを作製するための当該技術分野で公知の多数の結合基が存在する。この結合基には、上で同定した特許に開示されるような、ジスルフィド基、チオエーテル基、酸不安定性基、光不安定性基、ペプチターゼ不安定性基又はエステラーゼ不安定性基が含まれ、ジスルフィド基及びチオエーテル基が好ましい。
リンカーが、結合の型に依存して、種々の位置においてメイタンシノイド分子に結合され得る。例えば、エステル結合は、従来のカップリング技術を使用して、ヒドロキシル基との反応によって形成され得る。この反応は、ヒドロキシル基を有するC−3位、ヒドロキシメチルで修飾されたC−14位、ヒドロキシル基で修飾されたC−15位、及びヒドロキシル基を有するC−20位において生じ得る。好ましい一実施態様では、この結合は、メイタンシノール又はメイタンシノールアナログのC−3位において形成される。
目的の別のコンジュゲートは、1又は複数のカリケアマイシン分子にコンジュゲートされたポリペプチドを含む。カリケアマイシンファミリーの抗生物質は、ピコモル以下の濃度において二本鎖DNA中断を生じることが可能である。カリケアマイシンファミリーのコンジュゲートの調製については、例えば、米国特許第5712374号を参照のこと。使用され得るカリケアマイシンの構造的アナログには、γ1 I、α2 I、α3 I、N−アセチル−γ1 I、PSAG及びθ1 Iが含まれるがこれらに限定されない。抗体がコンジュゲートされ得る別の抗腫瘍薬は、抗葉酸であるQFAである。カリケアマイシン及びQFAの両方が、細胞内の作用部位を有し、原形質膜を容易には通過しない。従って、ポリペプチド(例えば、抗体)媒介性の内部移行を介したこれらの薬剤の細胞取り込みは、それらの細胞傷害性効果を大いに増強する。
本明細書に記載されるポリペプチドにコンジュゲートされ得る他の抗腫瘍剤には、BCNU、ストレプトゾシン(streptozoicin)、ビンクリスチン及び5−フルオロウラシル、集合的にLL−E33288複合体として公知の薬剤のファミリー、並びにエスペラミシンが含まれる。
一部の実施態様では、このポリペプチドは、ポリペプチドと、核酸分解活性を有する化合物(例えば、リボヌクレアーゼ又はDNAエンドヌクレアーゼ、例えば、デオキシリボヌクレアーゼ;DNase)との間でコンジュゲートされ得る。
なお別の実施態様では、このポリペプチド(例えば、抗体)は、腫瘍の事前標的化における利用のために「受容体」(ストレプトアビジンなど)にコンジュゲートされ得、このポリペプチド受容体コンジュゲートは、患者に投与され、その後、洗浄剤を使用して循環から未結合のコンジュゲートが除去され、次いで、細胞傷害性剤(例えば、放射性ヌクレオチド)にコンジュゲートされた「リガンド」(例えば、アビジン)が投与される。
一部の実施態様では、このポリペプチドは、プロドラッグ(例えば、ペプチジル化学療法剤)を活性抗癌薬に変換するプロドラッグ活性化酵素にコンジュゲートされ得る。このイムノコンジュゲートの酵素成分には、プロドラッグをそのより活性な細胞傷害性形態に変換するような方法でプロドラッグに作用することが可能な任意の酵素が含まれる。
有用な酵素には、ホスフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用なアルカリホスファターゼ;サルフェート含有プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用なアリールスルファターゼ;非毒性5−フルオロシトシンを抗癌薬、5−フルオロウラシルに変換するために有用なシトシンデアミナーゼ;ペプチド含有プロドラッグを遊離薬物に変換するために有用なプロテアーゼ、例えば、セラチア属(serratia)プロテアーゼ、サーモリシン、スブチリシン、カルボキシペプチターゼ及びカテプシン(例えば、カテプシンB及びL);D−アミノ酸置換基を含むプロドラッグを変換するために有用なD−アラニルカルボキシペプチターゼ;グリコシル化されたプロドラッグを遊離薬物に変換するために有用な炭水化物切断酵素、例えば、β−ガラクトシダーゼ及びノイラミニダーゼ;β−ラクタムで誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するために有用なβ−ラクタマーゼ;並びにそれらのアミン窒素においてそれぞれフェノキシアセチル基又はフェニルアセチル基で誘導体化された薬物を遊離薬物に変換するために有用なペニシリンアミダーゼ、例えば、ペニシリンVアミダーゼ又はペニシリンGアミダーゼが含まれるがこれらに限定されない。あるいは、当該技術分野で「アブザイム」としても公知の、酵素活性を有する抗体が、プロドラッグを遊離活性薬物に変換するために使用され得る。
(iv)その他
ポリペプチドの別の型の共有結合的修飾は、種々の非タンパク質性ポリマー、例えば、ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリオキシアルキレン、又はポリエチレングリコール及びポリプロピレングリコールの共重合体のうちの1つに、ポリペプチドを結合させることを含む。このポリペプチドはまた、例えば、コアセルベーション技術によって若しくは接触面重合によって調製されたマイクロカプセル(例えば、それぞれ、ヒドロキシメチルセルロース又はゼラチン−マイクロカプセル及びポリ−(メチルメタクリレート)マイクロカプセル)中に、コロイド状薬物送達系(例えば、リポソーム、アルブミンミクロスフェア、マイクロエマルジョン、ナノ粒子及びナノカプセル)中に、又はマクロエマルジョン中に、捕捉され得る。かかる技術は、Remington’s Pharmaceutical Sciences、第18版、Gennaro,A.R.編(1990)に開示されている。
IV.製剤及び方法における使用のためにポリペプチドを取得する
本明細書に記載される方法によって浄化された再使用可能なクロマトグラフィー材料を使用して精製されるポリペプチドは、組換え方法を含む当該技術分野で周知の方法を使用して取得され得る。以下のセクションは、これらの方法に関するガイダンスを提供する。
(A)ポリヌクレオチド
「ポリヌクレオチド」又は「核酸」は、本明細書で相互交換可能に使用される場合、任意の長さのヌクレオチドのポリマーを指し、DNA及びRNAが含まれる。
ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、ポリペプチドmRNAを有する及び検出可能なレベルでそれを発現すると考えられる組織から調製されたcDNAライブラリーが含まれるがこれに限定されない任意の供給源から取得され得る。従って、ポリペプチドをコードするポリヌクレオチドは、簡便には、ヒト組織から調製されたcDNAライブラリーから取得され得る。ポリペプチドコード化遺伝子は、ゲノムライブラリーから、又は公知の合成手順(例えば、自動化された核酸合成)によっても、取得され得る。
例えば、このポリヌクレオチドは、免疫グロブリン分子鎖全体、例えば、軽鎖又は重鎖をコードし得る。完全重鎖は、重鎖可変領域(VH)だけでなく重鎖定常領域(CH)もまた含み、これは典型的には、3つの定常ドメイン:CH1、CH2及びCH3;並びに「ヒンジ」領域を含む。一部の情況では、定常領域の存在が望ましい。
このポリヌクレオチドによってコードされ得る他のポリペプチドには、抗原結合性抗体断片、例えば、単一ドメイン抗体(「dAb」)、Fv、scFv、Fab’及びF(ab’)2並びに「ミニボディ」が含まれる。ミニボディは(典型的には)、CH1及びCK又はCLドメインが切除された二価抗体断片である。ミニボディは従来の抗体よりも小さいので、臨床的/診断的使用においてより良い組織透過を達成するはずであるが、二価であるので、dAbなどの一価の抗体断片よりも高い結合親和性を保持するはずである。従って、文脈が他を示さない限り、用語「抗体」は、本明細書で使用する場合、抗体分子全体だけでなく、上で議論した型の抗原結合性抗体断片もまた包含する。好ましくは、コードされたポリペプチド中に存在する各フレームワーク領域は、対応するヒトアクセプターフレームワークと比較して、少なくとも1つのアミノ酸置換を含む。従って、例えば、これらのフレームワーク領域は、アクセプターフレームワーク領域と比較して、合計で、3、4、5、6、7、8、9、10、11、12、13、14又は15のアミノ酸置換を含み得る。
適切に、本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、単離及び/又は精製され得る。一部の実施態様では、これらのポリヌクレオチドは、単離されたポリヌクレオチドである。
用語「単離されたポリヌクレオチド」は、その分子が、その通常の若しくは天然の環境から除去若しくは分離されている、又はその通常の若しくは天然の環境中にその分子が存在しないような方法で産生されたことを示す意図である。一部の実施態様では、これらのポリヌクレオチドは、精製されたポリヌクレオチドである。精製されたという用語は、少なくとも一部の夾雑する分子又は物質が除去されていることを示す意図である。
適切に、これらのポリヌクレオチドは、実質的に精製されており、その結果、関連のポリヌクレオチドは、組成物中に存在する支配的な(即ち、最も豊富な)ポリヌクレオチドを構成する。
(B)ポリヌクレオチドの発現
以下の説明は、ポリペプチドコード化ポリヌクレオチドを含むベクターで形質転換又はトランスフェクトされた細胞を培養することによるポリペプチドの産生に主に関する。当然、当該技術分野で周知である代替的方法がポリペプチドを調製するために使用され得ることが企図される。例えば、適切なアミノ酸配列又はその部分は、固相技術を使用する直接的ペプチド合成によって産生され得る(例えば、Stewart等, Solid-Phase Peptide Synthesis W.H. Freeman Co., San Francisco, Calif. (1969);Merrifield, J. Am. Chem. Soc. 85:2149-2154 (1963)を参照のこと)。インビトロタンパク質合成は、手動技術を使用して、又は自動化によって、実施され得る。自動化された合成は、製造者の指示を使用して、例えば、Applied Biosystems Peptide Synthesizer(Foster City、Calif.)を使用して達成され得る。ポリペプチド種々の部分が、別々に化学合成され得、所望のポリペプチドを産生するために、化学的方法又は酵素的方法を使用して組み合わされ得る。
本明細書に記載されるポリヌクレオチドは、ポリペプチドの産生のために発現ベクター(一又は複数)中に挿入される。用語「制御配列」とは、特定の宿主生物における動作可能に連結されたコード配列の発現に必要なDNA配列を指す。制御配列には、プロモーター(例えば、天然に関連する又は異種のプロモーター)、シグナル配列、エンハンサーエレメント及び転写終結配列が含まれるがこれらに限定されない。
ポリヌクレオチドは、別のポリヌクレオチド配列と機能的に関連するように配置される場合、「動作可能に連結される」。例えば、プレ配列若しくは分泌リーダーについての核酸は、それがポリペプチドの分泌に関与するプレタンパク質として発現される場合、そのポリペプチドについての核酸に動作可能に連結される;プロモーター若しくはエンハンサーは、それが配列の転写に影響を与える場合、コード配列に動作可能に連結される;又はリボソーム結合部位は、それが翻訳を促進するように位置付けられる場合、コード配列に動作可能に連結される。一般に、「動作可能に連結された」とは、結合されている核酸配列が近接すること、及び分泌リーダーの場合、近接しかつ読み取り相(reading phase)にあることを意味する。しかし、エンハンサーは、近接している必要はない。結合は、簡便な制限部位におけるライゲーションによって達成される。かかる部位が存在しない場合、合成オリゴヌクレオチドアダプター又はリンカーが、従来の実務に従って使用される。
抗体について、軽鎖及び重鎖は、同じ又は異なる発現ベクターにおいて、クローニングされ得る。免疫グロブリン鎖をコードする核酸セグメントは、免疫グロブリンポリペプチドの発現を確実にする発現ベクター(一又は複数)において、制御配列に動作可能に連結される。
ポリヌクレオチド配列(例えば、可変重鎖及び/又は可変軽鎖コード配列並びに任意選択的発現制御配列)を含むベクターは、細胞宿主の型に依存して変動する周知の方法によって、宿主細胞中に移行され得る。例えば、塩化カルシウムトランスフェクションは、原核細胞について一般に使用されるが、リン酸カルシウム処理、エレクトロポレーション、リポフェクション、微粒子銃又はウイルスベースのトランスフェクションは、他の細胞宿主について使用され得る(一般には、Sambrook等, Molecular Cloning: A Laboratory Manual (Cold Spring Harbor Press, 第2版, 1989を参照のこと)。哺乳動物細胞を形質転換するために使用される他の方法には、ポリブレン、プロトプラスト融合、リポソーム、エレクトロポレーション及びマイクロインジェクションの使用が含まれる。トランスジェニック動物の産生について、導入遺伝子は、受精した卵母細胞中にマイクロインジェクションされ得る、又は胚性幹細胞のゲノム中に取り込まれ得、かかる細胞の核は、除核された卵母細胞中に移行され得る。
(C)ベクター
用語「ベクター」には、発現ベクター及び形質転換ベクター及びシャトルベクターが含まれる。
用語「発現ベクター」とは、インビボ又はインビトロでの発現が可能なコンストラクトを意味する。
用語「形質転換ベクター」とは、1つの実体から別の実体−これらは、その種のものであってもよく、又は異なる種のものであってもよい−へと移行されることが可能なコンストラクトを意味する。このコンストラクトが、1つの種から別の種−例えば、大腸菌プラスミドから細菌、例えば、バチルス属(Bacillus)へと移行されることが可能である場合、この形質転換ベクターは、時折、「シャトルベクター」と呼ばれる。この形質転換ベクターは、大腸菌プラスミドからアグロバクテリウム属(Agrobacterium)へ、植物へと移行されることが可能なコンストラクトでさえあり得る。
ベクターは、ポリペプチドの発現を提供するために、以下に記載される適切な宿主細胞中に形質転換され得る。種々のベクターが、公に入手可能である。このベクターは、例えば、プラスミド、コスミド、ウイルス粒子又はファージの形態であり得る。適切な核酸配列が、種々の手順によってベクター中に挿入され得る。一般に、DNAは、当該技術分野で公知の技術を使用して、適切な制限エンドヌクレアーゼ部位(一又は複数)中に挿入される。これらの成分のうち1又は複数を含む適切なベクターの構築は、当業者に公知の標準的なライゲーション技術を使用する。
これらのベクターは、例えば、複製開始点、任意選択的に、このポリヌクレオチドの発現のためのプロモーター、及び任意選択的に、このプロモーターの制御因子が提供された、プラスミド、ウイルス又はファージベクターであり得る。ベクターは、当該技術分野で周知である1又は複数の選択マーカー遺伝子を含み得る。
これらの発現ベクターは、典型的には、エピソームとして、又は宿主染色体DNAの一体的な一部としてのいずれかで、宿主生物中で複製可能である。
(D)宿主細胞
宿主細胞は、例えば、細菌、酵母若しくは他の真菌細胞、昆虫細胞、植物細胞又は哺乳動物細胞であり得る。
遺伝子操作されたトランスジェニック多細胞宿主生物が、ポリペプチドを産生するために使用され得る。この生物体は、例えば、トランスジェニック哺乳動物生物(例えば、トランスジェニックヤギ又はマウス系統)であり得る。
適切な原核生物には、真正細菌、例えば、グラム陰性又はグラム陽性生物、例えば、大腸菌などの腸内細菌科(Enterobacteriaceae)が含まれるがこれらに限定されない。大腸菌K12株MM294(ATCC 31,446);大腸菌X1776(ATCC 31,537);大腸菌株W3110(ATCC 27,325)及びK5772(ATCC 53,635)などの種々の大腸菌株が、公に利用可能である。他の適切な原核生物宿主細胞には、腸内細菌科、例えば、大腸菌属(Escherichia)、例えば、大腸菌、エンテロバクター属(Enterobacter)、エルウイニア属(Erwinia)、クレブシエラ属(Klebsiella)、プロテウス属(Proteus)、サルモネラ属(Salmonella)、例えば、ネズミチフス菌(Salmonella typhimurium)、セラチア属、例えば、霊菌(Serratia marcescans)及びシゲラ属(Shigella)並びに桿菌(Bacilli)、例えば、枯草菌(B.subtilis)及びバチルス・リケニフォルミス(B.licheniformis)(例えば、バチルス・リケニフォルミス41P)、シュードモナス属(Pseudomonas)、例えば、緑膿菌(P.aeruginosa)、及びストレプトマイセス属(Streptomyces)が含まれる。これらの例は、限定ではなく例示である。株W3110は、1つの特に好ましい宿主又は親宿主であるが、それは、これが、組換えポリヌクレオチド産物発酵のための一般的な宿主株だからである。好ましくは、この宿主細胞は、最少量のタンパク質分解酵素を分泌する。例えば、株W3110は、宿主にとって内因性のポリペプチドをコードする遺伝子において遺伝子突然変異をもたらすように修飾され得、かかる宿主の例には、完全遺伝子型tonAを有する大腸菌W3110株1A2;完全遺伝子型tonA ptr3を有する大腸菌W3110株9E4;完全遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF−lac)169 degP ompT kan’を有する大腸菌W3110株27C7(ATCC 55,244);完全遺伝子型tonA ptr3 phoA E15(argF−lac)169 degP ompT rbs7 ilvG kan’を有する大腸菌W3110株37D6;非カナマイシン耐性degP欠失突然変異を有する株37D6である大腸菌W3110株40B4;並びに変異体周辺質プロテアーゼを有する大腸菌株が含まれる。あるいは、クローニングのインビトロ方法、例えば、PCR又は他の核酸ポリメラーゼ反応が、適切である。
これらの原核生物宿主では、宿主細胞と適合性の発現制御配列(例えば、複製開始点)を典型的に含む発現ベクターを作製することができる。さらに、ラクトースプロモーター系、トリプトファン(trp)プロモーター系、ベータ−ラクタマーゼプロモーター系、又はファージラムダ由来のプロモーター系などの、いくつかの種々の周知のプロモーターが存在する。これらのプロモーターは、典型的には、任意選択的にオペレーター配列と共に、発現を制御し、転写及び翻訳を開始及び完了するために、リボソーム結合部位配列などを有する。
真核微生物が、発現のために使用され得る。真核微生物、例えば、糸状菌又は酵母は、ポリペプチドコード化ベクターのための適切なクローニング宿主又は発現宿主である。サッカロミセス・セレビシエ(Saccharomyces cerevisiae)は、一般的に使用される下等真核宿主微生物である。他には、分裂酵母(Schizosaccharomyces pombe);クルイベロミセス属(Kluyveromyces)宿主、例えば、クルイベロミセス・ラクチス(K.lactis)(MW98−8C、CBS683、CBS4574)、クルイベロミセス・フラジリス(K.fragilis)(ATCC 12,424)、クルイベロミセス・ブルガリカス(K.bulgaricus)(ATCC 16,045)、クルイベロミセス・ウィッカーハミー(K.wickeramii)(ATCC 24,178)、クルイベロミセス・ワルティ(K.waltii)(ATCC 56,500)、クルイベロミセス・ドロソフィラルム(K.drosophilarum)(ATCC 36,906)、クルイベロミセス・サーモトレランス(K.thermotolerans)及びクルイベロミセス・マルシアヌス(K.marxianus)など;ヤロウィア属(yarrowia)(EP 402,226);ピキア・パストリス(Pichia pastoris);カンジダ属(Candida);トリコデルマ・レーシア(Trichoderma reesia);アカパンカビ(Neurospora crassa);シュワニオマイセス属(Schwanniomyces)、例えば、シュワニオマイセス・オクシデンタリス(Schwanniomyces occidentalis);並びに糸状菌、例えば、アカパンカビ属(Neurospora)、アオカビ属(Penicillium)、トリポクラジウム属(Tolypocladium)など、及びアスペルギルス属(Aspergillus)宿主、例えば、アスペルギルス・ニデュランス(A.nidulans)及びクロアスペルギルス・ニガー(A.niger)が含まれる。メチロトローフ酵母が、本明細書で適切であり、これには、ハンゼヌラ属(Hansenula)、カンジダ属、クロエケラ属(Kloeckera)、ピキア属(Pichia)、サッカロミセス属(Saccharomyces)、トルロプシス属(Torulopsis)及びロドトルラ属(Rhodotorula)からなる属より選択されるメタノール上での増殖が可能な酵母が含まれるがこれらに限定されない。サッカロミセス属が好ましい酵母宿主であり、適切なベクターは、所望により、発現制御配列(例えば、プロモーター)、複製開始点、終結配列などを有する。典型的なプロモーターには、3−ホスホグリセリン酸キナーゼ及び他の解糖酵素が含まれる。誘導性酵母プロモーターには、とりわけ、アルコールデヒドロゲナーゼ、イソシトクロムC、並びにマルトース及びガラクトース利用を担う酵素由来のプロモーターが含まれる。
微生物に加えて、哺乳動物組織細胞培養物もまた、本明細書に記載されるポリペプチドを発現及び産生するために使用され得、一部の例では好ましい(Winnacker, From Genes to Clones VCH Publishers, N.Y., N.Y. (1987)を参照のこと)。一部の実施態様について、真核細胞が好ましい可能性があるが、それは、異種ポリペプチド(例えば、インタクトな免疫グロブリン)を分泌することが可能ないくつかの適切な宿主細胞株が、当該技術分野で開発されているからであり、それには、CHO細胞株、種々のCos細胞株、HeLa細胞、好ましくは、骨髄腫細胞株、又は形質転換されたB細胞若しくはハイブリドーマが含まれる。一部の実施態様では、この哺乳動物宿主細胞は、CHO細胞である。
一部の実施態様では、この宿主細胞は、脊椎動物宿主細胞である。有用な哺乳動物宿主細胞株の例は、SV40によって形質転換されたサル腎臓CV1株(COS−7、ATCC CRL 1651);ヒト胚腎臓株(懸濁培養における増殖のためにサブクローニングされた293又は293細胞);ベビーハムスター腎臓細胞(BHK、ATCC CCL 10);チャイニーズハムスター卵巣細胞/−DHFR(CHO又はCHO−DP−12株);マウスセルトリ細胞;サル腎臓細胞(CV1 ATCC CCL 70);アフリカミドリザル腎臓細胞(VERO−76、ATCC CRL−1587);ヒト子宮頸癌細胞(HELA、ATCC CCL 2);イヌ腎臓細胞(MDCK、ATCC CCL 34);buffaloラット肝臓細胞(BRL 3A、ATCC CRL 1442);ヒト肺細胞(W138、ATCC CCL 75);ヒト肝臓細胞(Hep G2、HB 8065);マウス乳房腫瘍(MMT 060562、ATCC CCL51);TRI細胞;MRC5細胞;FS4細胞;及びヒト肝がん株(Hep G2)である。
V.例示的実施態様
一部の実施態様では、本発明は、以下を提供する:
1.再使用のためにクロマトグラフィー材料を浄化する方法であって、a)該材料に、2材料容積以上の溶出バッファーを通過させる工程であって、該溶出バッファーは、約0.15Mの酢酸を含み、約pH2.9である、工程、b)約10分間から約30分間までの範囲の時間にわたって、溶出バッファー中で該材料を静的に保持する工程、c)該材料に、約2材料容積以上の溶出バッファーを通過させる工程、及びd)該材料に、約2材料容積以上の再生バッファーを通過させる工程であって、該再生バッファーは、約0.1NのNaOHを含み、約pH13である、工程を含む、方法。
2.再使用のためにクロマトグラフィー材料を浄化する方法であって、a)該材料に、約2材料容積の溶出バッファーを通過させる工程であって、該溶出バッファーは、約0.15Mの酢酸を含み、約pH2.9である、工程、b)約30分間にわたって、溶出バッファー中で該材料を静的に保持する工程、c)該材料に、約2材料容積の溶出バッファーを通過させる工程、及びd)該材料に、約4材料容積の再生バッファーを通過させる工程であって、該再生バッファーは、約0.1NのNaOHを含み、約pH13である、工程を含む、方法。
3.再使用のためにクロマトグラフィー材料を浄化する方法であって、a)該材料に、約2材料容積の溶出バッファーを通過させる工程であって、該溶出バッファーは、約0.15Mの酢酸を含み、約pH2.9である、工程、b)約30分間にわたって、溶出バッファー中で該材料を静的に保持する工程、c)該材料に、約2材料容積の溶出バッファーを通過させる工程、及びd)該材料に、約2.5材料容積の再生バッファーを通過させる工程であって、該再生バッファーは、約0.1NのNaOHを含み、約pH13である、工程、e)約30分間にわたって、再生バッファー中で該材料を静的に保持する工程、f)該材料に、約2.5材料容積の再生バッファーを通過させる工程を含む、方法。
4.再使用のためにクロマトグラフィー材料を浄化する方法であって、a)該材料に、約2材料容積の平衡化バッファーを通過させる工程であって、該平衡化バッファーは、約25mMのトリス及び約25mMのNaClを含み、約pH7.1である、工程、b)約30分間にわたって、平衡化バッファー中で該材料を静的に保持する工程、c)該材料に、約2材料容積の平衡化バッファーを通過させる工程、d)該材料に、約2材料容積の溶出バッファーを通過させる工程であって、該溶出バッファーは、約0.15Mの酢酸を含み、約pH2.8である、工程、e)約30分間にわたって、溶出バッファー中で該材料を静的に保持する工程、f)該材料に、約2材料容積の溶出バッファーを通過させる工程、g)該材料に、約2材料容積の再生バッファーを通過させる工程であって、該再生バッファーは、0.1NのNaOHを含み、pH13である、工程、h)約30分間にわたって、再生バッファー中で該材料を静的に保持する工程、i)該材料に、約2材料容積の再生バッファーを通過させる工程を含む、方法。
5.再使用のためにクロマトグラフィー材料を浄化する方法であって、a)該材料に、約4材料容積の平衡化バッファーを通過させる工程であって、該再平衡化バッファーは、約25mMのトリス及び約25mMのNaClを含み、pH7.1である、工程、b)6サイクルの、i)該材料に、約3材料容積の溶出バッファーを通過させること、ここで該溶出バッファーは、約0.15Mの酢酸を含み、約pH2.8である;ii)約10分間にわたって、溶出バッファー中で該材料を静的に保持すること;iii)該材料に、約1材料容積の溶出バッファーを通過させること;iv)該材料に、約3材料容積の再生バッファーを通過させること、ここで該再生バッファーは、約0.1NのNaOHを含み、約pH13である;v)約10分間にわたって、再生バッファー中で該材料を静的に保持すること;vi)該材料に、約1材料容積の再生バッファーを通過させること
を含む工程を実施する工程を含む、方法。
6.再使用のためにクロマトグラフィー材料を浄化する方法であって、6サイクルの、a)該材料に、約3材料容積の溶出バッファーを通過させる工程であって、該溶出バッファーは、約0.15Mの酢酸を含み、約pH2.8である、工程、b)約15分間にわたって、溶出バッファー中で該材料を静的に保持する工程、c)該材料に、約1材料容積の溶出バッファーを通過させる工程、d)該材料に、約3材料容積の再生バッファーを通過させる工程であって、該再生バッファーは、約0.1NのNaOHを含み、約pH13である、工程、e)約15分間にわたって、再生バッファー中で該材料を静的に保持する工程、f)該材料に、約1材料容積の再生バッファーを通過させる工程、g)該材料に、約3材料容積の貯蔵バッファーを通過させる工程であって、該貯蔵バッファーは、約100mMの酢酸ナトリウム、約2%のベンジルアルコールを含み、約pH5.0である、工程、e)約15分間にわたって、貯蔵バッファー中で該材料を静的に保持する工程、f)該材料に、約1材料容積の貯蔵バッファーを通過させる工程を含む、方法。
7.前記クロマトグラフィー材料が、クロマトグラフィーカラム中に存在する、実施態様1から6の何れか一項に記載の方法。
8.前記クロマトグラフィー材料が、アフィニティー材料である、実施態様1から7の何れか一項に記載の方法。
9.前記アフィニティー材料が、プロテインAアフィニティー材料である、実施態様8に記載の方法。
10.前記プロテインAアフィニティー材料が、MAbSelect材料、MAbSelect SuRe材料又はMAbSelect SuRe LX材料である、実施態様9に記載の方法。
11.前記クロマトグラフィー材料が、ポリペプチドの大規模産生のために使用される、実施態様1から10の何れか一項に記載の方法。
12.再使用のためにクロマトグラフィー材料を浄化する方法であって、a)該材料に、約3材料容積の平衡化バッファーを通過させる工程であって、該平衡化バッファーは、約40mMの酢酸ナトリウムを含み、約pH5.5である、工程、b)該材料に、約2材料容積の約0.5NのNaOHを通過させる工程、c)約10分間にわたって、約0.5NのNaOH中で該材料を静的に保持する工程、d)該材料に、約1材料容積の約0.5NのNaOHを通過させる工程、及びe)約10分間にわたって、約0.5NのNaOH中で該材料を静的に保持する工程、f)該材料に、約1材料容積の約0.5NのNaOHを通過させる工程を含む、方法。
13.前記クロマトグラフィー材料が、クロマトグラフィーカラム中に存在する、実施態様12に記載の方法。
14.前記クロマトグラフィー材料が、イオン交換材料である、実施態様12又は13に記載の方法。
15.前記イオン交換材料が、陽イオン交換材料である、実施態様14に記載の方法。
16.前記陽イオン交換材料が、POROS HS50材料である、実施態様15に記載の方法。
17.前記クロマトグラフィー材料が、抗体の大規模産生のために使用される、実施態様12から16の何れか一項に記載の方法。
18.再使用のためにクロマトグラフィー材料を浄化する方法であって、a)該材料に、約3材料容積の平衡化バッファーを通過させる工程であって、該平衡化バッファーは、約50mMのトリス、85mMの酢酸ナトリウムを含み、約pH8.8及び約8.6mS/cmである、工程、b)該材料に、約2材料容積の約0.5NのNaOHを通過させる工程、c)約10分間にわたって、約0.5NのNaOH中で該材料を静的に保持する工程、d)該材料に、約1材料容積の約0.5NのNaOHを通過させる工程、及びe)約10分間にわたって、約0.5NのNaOH中で該材料を静的に保持する工程、f)該材料に、約1材料容積の約0.5NのNaOHを通過させる工程を含む、方法。
19.前記クロマトグラフィー材料が、クロマトグラフィーカラム中に存在する、実施態様18に記載の方法。
20.前記クロマトグラフィー材料が、イオン交換材料である、実施態様18又は19に記載の方法。
21.前記イオン交換材料が、陰イオン交換材料である、実施態様20に記載の方法。
22.前記陰イオン交換材料が、QSFF材料である、実施態様21に記載の方法。
23.前記クロマトグラフィー材料が、抗体の大規模産生のために使用される、実施態様18から22の何れか一項に記載の方法。
24.前記バッファーが、前記材料を、約30材料容積/時間、約20材料容積/時間又は約15材料容積/時間で通過する、実施態様1から23の何れか一項に記載の方法。
25.前記バッファーが、前記材料を、ダウンフロー方向又はアップフロー方向で通過する、実施態様1から24の何れか一項に記載の方法。
26.前記クロマトグラフィー材料を浄化した後にモック溶出を実行することによって、前記クロマトグラフィー材料の浄化が測定される、実施態様1から25の何れか一項に記載の方法。
27.前記モック溶出の溶出剤が<0.25mg/mLの総タンパク質、<1ppmのIgG断片、<1ppmの浸出されたプロテインA、<1μg/mLのCZE LIF、<1ppmのCHOP及び<1pg/mLのCHO DNAのうち1又は複数を含むことが、多産物使用に関して前記材料の有効な浄化の指標である、実施態様26に記載の方法。
28.前記クロマトグラフィー材料が、アルカリ中で安定である、実施態様1から27の何れか一項に記載の方法。
29.前記クロマトグラフィー材料が、ポリペプチドを精製するために使用される、実施態様1から28の何れか一項に記載の方法。
30.前記クロマトグラフィー材料が第1のポリペプチドの精製後に浄化され、浄化の後、該クロマトグラフィー材料が2のポリペプチドを精製するために使用される、実施態様1から29の何れか一項に記載の方法。
31.前記ポリペプチドが、抗体又はイムノアドヘシンである、実施態様30に記載の方法。
32.前記ポリペプチドがイムノアドヘシンである、実施態様31に記載の方法。
33.前記ポリペプチドが抗体である、実施態様31に記載の方法。
34.前記抗体が、モノクローナル抗体である、実施態様33に記載の方法。
35.前記モノクローナル抗体が、キメラ抗体、ヒト化抗体又はヒト抗体である、実施態様34に記載の方法。
36.前記モノクローナル抗体が、IgGモノクローナル抗体である、実施態様35に記載の方法。
37.前記抗体が、抗原結合性断片である、実施態様36に記載の方法。
38.前記抗原結合性断片が、Fab断片、Fab’断片、F(ab’)2断片、scFv、ジ−scFv、ビ−scFv、タンデム(ジ、トリ)−scFv、Fv、sdAb、三機能性抗体、BiTE、ダイアボディ又はトリアボディである、実施態様37に記載の方法。
39.前記ポリペプチドが、酵素、ホルモン、融合タンパク質、Fc含有タンパク質、イムノコンジュゲート、サイトカイン又はインターロイキンである、実施態様38に記載の方法。
40.前記第1のポリペプチドが、第1の抗体又は第1のイムノアドヘシンであり、前記第2のポリペプチドが、第2の抗体又は第2のイムノアドヘシンである、実施態様30に記載の方法。
本明細書に開示される特徴の全ては、任意の組み合わせで組み合わされ得る。本明細書に開示される各特徴は、同じ、等価な又は類似の目的を果たす代替的特徴によって置き換えられ得る。従って、明示的に特記しない限り、開示される各特徴は、一般的な一連の等価な又は類似の特徴の一例に過ぎない。
本発明のさらなる詳細は、以下の非限定的な実施例によって示される。本明細書中の全ての参考文献の開示は、本明細書に参照により明示的に援用される。
以下の実施例は、純粋に本発明の例示であることを意図し、従って、本発明を限定すると決してみなすべきではない。以下の実施例及び詳細な説明は、例示として提供されるのであって、限定としてではない。
実施例1
タンパク質キャリーオーバー
この実施例は、試料から試料へのタンパク質キャリーオーバーを定量化する試みを記載する。浄化前試験実行を、標準的プロテインAアフィニティー材料(0.66×20cm)を使用して実験室規模で実施した。このプロセスは、ロードサイクルを平衡化バッファーでシミュレートしたこと以外、標準的精製手順に従って実行したので、この実行を「モック実行」と呼んだ。典型的プロテインAプロセスにより、溶出プールを収集し、解析して、タンパク質の存在を決定した。この解析により、20−30ppmのタンパク質キャリーオーバーが、任意のさらなるカラム浄化の非存在下で「モック溶出」において存在したことが明らかになった。結果を2回目の実行で確認した。
安全なキャリーオーバーレベルを決定するために、リスク評価を実施して、mAbにおける許容される免疫グロブリン(IgG)及びタンパク質キャリーオーバーレベルを決定し、IgGについての物質特異的一日曝露許容量(ADE)を計算した。ADEとEDIとの比較は、「最悪の」x倍安全域を生じる(例えば、OCTAGAM(登録商標);Product Approval Information Summary Basis of Approval OCTAGAM(登録商標)5%。ワールドワイドウェブ上の、2012年8月7日にアクセスされたfda.gov/downloads/BiologicsBloodVaccines/BloodBloodProducts/ApprovedProducts/LicensedProductsBLAs/FractionatedPlasmaProducts/ucm064955.pdfに記載された、OCTAPHARMA Pharmazeutika: Vienna, Austria. 2002年8月を参照のこと)。この「最悪の」安全域は、前の試料から入った最も高い値のIgGキャリーオーバーであり、この値は、10μg mAb A/ml mAb B又は1000ppmに設定される。このとき、mAb Aは、キャリーオーバーされたmAbであり、mAb Bは、目的の所望のmAbである(Teschner, W.等, Vox Sang. 2007, 92:42-55; 食品医薬品局, HHS. Guidance for Industry Estimating the Maximum Safe Starting Dose in Initial Clinical Trials for Therapeutics in Adult Healthy Volunteers. Rockville, MD. 2005年7月、ワールドワイドウェブ上の、2012年8月7日にアクセスされたgoogle.com/url?sa=t&rct=j&q=&esrc=s&source=web&cd=1&ved=0CE8QFjAA&url=http%3A%2F%2Fwww.fda.gov%2Fdownloads%2FDrugs%2F...%2FGuidances%2FUCM078932.pdf&ei=f4QhUJv4K9Ov6gGQ-4DgAg&usg=AFQjCNFbTE75U0nDbFpfdpxK85uWXT8frgに記載; European Medicines Agency. Impurities: Residual Solvents, Note for Guidance on Impurities: Residual Solvents (CPMP/ICH/283/95). London, UK 1997年9月、ワールドワイドウェブ上の、2012年8月7日にアクセスされたema.europa.eu/ema/index.jsp?curl=pages/regulation/general/general_content_000431.jsp&mid=WC0b01ac0580029593に記載; OCTAGAM(登録商標); Product Approval Information Summary Basis of Approval OCTAGAM(登録商標)5%. OCTAPHARMA Pharmazeutika: Vienna, Austria. 2002年8月、ワールドワイドウェブ上の、2012年8月7日にアクセスされたfda.gov/downloads/BiologicsBloodVaccines/BloodBloodProducts/ApprovedProducts/LicensedProductsBLAs/FractionatedPlasmaProducts/ucm064955.pdfに記載)。
材料及び方法
設備
AKTAエクスプローラー100システム:GE Healthcare(Uppsala、Sweden)の標準的AKTAエクスプローラー100クロマトグラフィーシステムを、実験に使用した。MabSelect(商標)SuRe(GE Healthcare)プロテインA媒体を充填した0.66cm直径×20cm床高さカラム(Omnifit)を、システム評価に使用した。このシステムを、UNICORNソフトウェア(v5.11)を使用して制御した。アフィニティー樹脂:MabSelect(商標)SuRe樹脂(GE Healthcare、Uppsala、Sweden)を、このプロジェクトにおいて選択された樹脂として使用したが、それは、これが、剛性ハイフローアガロースマトリックス及びアルカリ安定化プロテインA由来リガンドから構成されているからである。このリガンドは、定置浄化(CIP)プロトコールにおいて使用されるアルカリ条件下で従来のプロテインAベースの媒体よりも高い安定性を提供する。浄化は、プロセスの倹約を助け得る水酸化ナトリウムなどのコスト効率の高い試薬を用いて実施され得る。
標準的精製手順(「モック溶出」)。プロテインAサイクルを、以下のパラメーターを使用して実行した:(a)30g/L樹脂のロード能力で、MabSelect(商標)SuRe樹脂、(b)回収された細胞培養液(HCCF)を、0.66×20cmカラム上に15℃(12−18℃)でロードした(全ての他の相は室温)、(c)プールのpHを、1.5Mトリス塩基の添加によってpH5.0に調整した。使用したバッファーは、バッチプロセスに使用したバッファーと類似であった。カラムを、25mMのトリス及び25mMの塩化ナトリウムで平衡化し、0.4Mのリン酸カリウムで洗浄し、0.1Nの酢酸(pH2.9)で溶出させ、MabSelect(商標)SuReについて0.1Nの水酸化ナトリウムで再生させた(Fahrner, R. L.等, Biotechnol. Genet. Eng. Rev. 2001, 18:301-327;Fahrner, R. L.等, Biotechnol. Appl. Biochem. 1999, 30:121-128;B. Kelley, Biotechnol. Prog. 2007, 23:995-1008;Trexlar-Schmidt, M.等, Biopharm. Intl. March 2, 2009)。
バッファー
以下のバッファーを使用した:
溶出バッファー:0.15Mの酢酸、pH2.9
再生バッファー:0.1MのNaOH、pH13
平衡化バッファー:25mMのトリス、25mMのNaCl、pH7.1
貯蔵バッファー:100mMの酢酸ナトリウム、2%ベンジルアルコール、pH5.0
浄化戦略。
浄化手順を、20CV/時間の流速で実施する。この浄化手順は、2つの因子(a)pHサイクリング及び(b)静的保持時間に基づいて開発した。
さらなる浄化なしの「モック実行」において得られた浄化前キャリーオーバー結果(20−30ppm)は、リスク評価によって設定した1000ppmの確立された安全性限界を十分に下回った。しかし、臨床的製造のための限界は1000ppmよりも低いので、慎重すぎるほど慎重になることを決定した。このプロジェクトの目的は、臨床的製造に移行することができる浄化手順を開発することであった;従って、キャリーオーバーを1ppm未満まで最小化するための浄化手順を同定した。注意深い最適化の後、最適な浄化戦略は、(a)静的保持及び(b)pHサイクリングに基づいた。浄化プロセスにおける静的保持手順の追加は、追加のバッファーを使用することなく、追加の滞留時間を可能にした。増加した滞留時間は、物質移動を助ける可能性が高く、カラム上の任意の残留タンパク質をバッファー中に抽出するように効率的に機能する。pHサイクリングと呼ばれる、酸性バッファーと塩基性バッファーとの間の交互変化は、タンパク質抽出を増強し、従って、カラムを効率的に洗浄する。最適な浄化条件は、溶出バッファー及び再生バッファーとして既に使用されたバッファーを含んだ。「溶出バッファー」は、0.15MのAcOH(pH2.9)であり、浄化のための「再生バッファー」は、0.1NのNaOH(pH13)であった。バッファーの選択は、そのそれぞれの特性に基づいた。例えば、「溶出バッファー」(0.15MのAcOH、pH2.9)を使用して、結合したIgGをプロテインA樹脂から洗浄した。水酸化ナトリウムは、タンパク質の変性及び小さい断片への切断によって、タンパク質及び核酸(産生プロセスの全ての成分)を可溶化する。さらに、水酸化ナトリウムは、エンドトキシンを破壊し、樹脂を再生させる。これらの条件のいずれも、樹脂と不適合性でなく、社内mAbの精製のために既に使用されなかったので、それらの使用は、経済的でもあった。
樹脂選択
大きい作業pH範囲(pH3−12)を有するので、MabSelect(商標)SuReプロテインAアフィニティー樹脂を最適化のために選択したが、これは、結合能の喪失なしに、塩基性条件下で安定である。従って、この樹脂は、浄化のための現行の溶出(0.15MのAcOH)バッファー及び再生(0.1NのNaOH)バッファーと適合性であった。
他の樹脂、例えば、ProSep(登録商標)vAは、以前に調査された。簡潔に述べると、ProSep(登録商標)vAカラムを浄化するために、いくつかの異なる浄化剤を調査した。しかし、条件の大部分は、類似の性能を示した。標準的精製手順において概要を述べたような、種々のバッファーのスクリーニングとその後の逐次的な「モック実行」とは、試料から試料へのタンパク質キャリーオーバーの減少を生じた。増加した溶出流速もまた、カラムを効率的に浄化した。この研究の主要な知見は、静的保持及びpHサイクリングが、試験した他の変数と比較して、タンパク質キャリーオーバーの低減により顕著に寄与したことであった。浄化手順の一部は、ProSep(登録商標)vA上でのタンパク質キャリーオーバーを低減させたが、この低減は、パイロット規模又はより大きい規模でのその使用を保証するには十分でなかった。それにもかかわらず、pHサイクリング及び静的保持実験からの結果は、MabSelect(商標)SuRe樹脂での浄化手順の最適化において有用であると証明された。
解析方法
HCCFの抗体濃度を、Agilent 1100 HPLC(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)で2.1×30cm POROSカラム(Applied Biosystems、Foster City、CA)を使用して決定した。バッファーA(100mMリン酸ナトリウム、250mM塩化ナトリウム、pH6.3)、バッファーB(2%酢酸、100mMグリシン)及びバッファーC(0.1Mリン酸、20%CAN(20%アセトニトリル))を使用し、総実行時間は4.5分間であった。精製されたプール中のタンパク質濃度を、280nmでAgilent 8453(Agilent Technologies、Santa Clara、CA)分光光度計を使用して測定した。多産物酵素結合免疫吸着法を、CHOP及び浸出されたProAの解析に使用した。TaqManポリメラーゼ連鎖反応を、CHO DNA解析に使用した。総タンパク質を、キャピラリーゾーン電気泳動/レーザー誘起蛍光検出(CZE−LIF)アッセイを使用して測定した。インタクトな抗体及び断片化された抗体部分を、一般的ELISAアッセイを使用して測定した。SDS/PAGEを、18%トリス−HClゲル上で実施した。
浄化なしのタンパク質キャリーオーバーの定量化
mAbキャリーオーバーの決定のための実験プロトコールは、以下の通りである:第1に、18ロードサイクルのmAbを、30g/LでプロテインAアフィニティーカラム(0.66×20cm、容積=6.8mL)上にロードし、試料を溶出させた。プロテインAアフィニティーカラムを、表2に概要を述べたカラム浄化手順の1つに従って、引き続いて浄化した。浄化後、「モック実行」を実施した。タンパク質又は不純物のキャリーオーバーのレベルを決定するために、解析的試料を、特定の時点において「モック実行」の間に、又はカラム洗浄手順の間に、採取した。収集した解析的試料を、pH5−5.5に調整し(1.5Mトリス塩基バッファー)、次いで、洗剤(0.1%ポリソルベート、0.05%アジ化ナトリウム)で処理して、タンパク質表面接着(これは偽陰性結果を生じるので)を防止した。
第1の実験において、溶出プール中のキャリーオーバーを、間欠性の浄化なしにMabSelect(商標)SuReプロテインAカラム上で順次的に精製された3つの異なるmAb(mAbA、mAbB及びmAbC)について最初に決定した。3回の精製サイクルを、プロテインAアフィニティーカラム(0.66×20cm、容積=6.8mL)上に30g/Lでロードし、結果を(図1)に示す。データは、溶出の関数として、前の実行からキャリーオーバーされたインタクトなIgGタンパク質の量(ngキャリーオーバー/mg産物)としてグラフ化される。間欠性の浄化なしのグラフによれば、3回のロードサイクルの最も高いキャリーオーバーは、30−40ppmであった(図1)。これらの結果は、明らかに、タンパク質キャリーオーバーを1ppm未満に留めるためには、さらなる浄化サイクルがカラムをリサイクルするために必要とされることを示した。
MabSelect(商標)SuRe浄化手順(CP)の最適化
バッファー消費及び浄化時間を低減させることによって浄化手順を単純化するための試みにおいて、バッファー及び実行時間の異なる組み合わせを調査した(表2、エントリー1−3)。キャリーオーバーのレベルは、1ppmの限界より下には決して下がらなかったので、より厳格な浄化手順が、MabSelect(商標)SuReカラム上での実験室規模のリサイクルのために同定される必要があることが明らかであった。より厳格な浄化条件は、静的保持の追加を含み、このとき、カラムは、バッファー中で規定された期間にわたって保持し、ゼロフローで実行した(表2、エントリー4−5)。静的保持は、バッファーでフラッシングするよりも、樹脂からより多くのタンパク質を効率的に洗浄除去したことが見出された。静的保持は、溶出バッファー静的保持の後にカラムから洗浄除去されたインタクトなIgGの量を効率的に5倍増加させ、インタクトなIgGは、再生バッファー静的保持後には検出されなかった(図2)。さらに、キャリーオーバーの量は、「モック溶出」において、エントリー4について10ppm未満のインタクトなIgGまで顕著に低減され(表2)、1ppm未満のインタクトなIgGが、エントリー5についてキャリーオーバーされる(表2)。
エントリー6−7で調査した、静的保持時間と共に浄化の回数の増加(表2)。明らかに、さらなる浄化サイクルを伴う静的保持時間は、全ての他の以前に調査した条件よりも、樹脂をより効率的に浄化した。その結果、「モック実行」を実施した後、エントリー6について3ppm未満のキャリーオーバー(表2)及びエントリー7について0.3ppm未満のキャリーオーバー(表2)が検出された(表2、図3)。pHサイクルの増加は、鋭いpH変遷の間に、より多くのタンパク質を溶出させた。しかし、0.1NのNaOHでの凝集時間は、樹脂結合能にとって有害であり得る長い静的保持と共に、サイクルの数を増加させることによって増加される。タンパク質の大部分は、30分間及び10分間の両方の静的保持時間について1回目のサイクル(図3)の後に溶出されるので、追加の静的保持時間は、限定的なさらなる利益を有した。しかし、増加したサイクルを伴うより短い静的保持時間が、より長い保持時間よりも好ましかった。ELISAアッセイに加えて、キャピラリー電気泳動−ドデシル硫酸ナトリウム解析(CE−SDS)を実施して、浄化サイクルを介した断片クリアランスを確実にした。94ng/mLの「モック溶出」試料についてエントリー7で概要を述べた手順(表2)を使用したMabSelect(商標)SuReカラムの浄化後の「モック溶出」のCE−SDS解析により、単離されたmAbが90%を超えて完全にインタクトであったことが明らかになった(図4)。
エントリー7の浄化手順(表2)を使用する「概念実証」として、「モック溶出」のAktaクロマトグラム(精製実行の間に生成された)は、カラムの効率的な浄化が、溶出バッファー(0.15Mの酢酸)から再生バッファー(0.1NのNaOH)へのシフトが行われたときに達成されたことを示唆した。これは、6サイクルの各々についてのこのpHサイクリングの間のUV強度における一連のスパイクによって明らかであった(図5)。まとめると、pHサイクリング及び静的保持は、理想的な浄化手順を提供する。
MabSelect(商標)SuRe Omnifitカラム(0.66×20cm、容積=6.7mL、30g/Lにおいて18サイクルのHCCF)上でのmAbAの精製のための実験室規模の最適化された浄化手順(エントリー7、表2)の拡大縮小は、実際に、タンパク質キャリーオーバーを最小化した(図6)。これらの結果は、明らかに、6サイクルの溶出バッファー(0.15Mの酢酸)を使用してカラムを浄化した後、顕著に少ないインタクトなIgG又はFc断片が、各サイクル後に検出され、その結果、サイクル6までに、5ppm未満が検出されたことを実証している(図6)。同様に、さらに少ないインタクトなIgG及びFc断片(<10ppm)が、再生バッファー(0.1MのNaOH、図6)による6サイクルの洗浄の各々の後に検出された。さらに、「モック溶出」を実施したとき(事前溶出、事前再生及び事前平衡化後)までに、1ppm未満のタンパク質キャリーオーバーが、「モック溶出」試料において検出された(図6)。
浄化手順の最適化の過程の間に、少量のタンパク質が、貯蔵バッファー(100mMの酢酸ナトリウム、2%ベンジルアルコール、pH5.0)中での貯蔵の期間後に、カラムから外れた。この観察は、おそらく貯蔵バッファーが、MabSelect(商標)SuRe樹脂のための効率的な浄化バッファーとしても機能し得ることを示唆した。しかし、貯蔵バッファーによる間欠性のカラム浄化後の引き続く「モック実行」は、以前に最適化された条件(エントリー8、表2;図7)よりも効率的なカラム浄化を生じなかった。さらに、プロセスにおけるこの浄化バッファーの追加は、さらなる利益なしに、全体的プロセスをより長くした。従って、既存の最適化された浄化手順を用いて進行することを決定した。
次いで、最適化された浄化手順(エントリー7、表2)を、目的のmAbへとこの手順を拡張する前の最終試験として、mAbZの精製のためにパイロット規模で遂行した(14×20、容積=3.23L)。これらの結果は、各浄化後に検出された漸減するインタクトなIgG及びFcで予測されたように有望であり、その結果、1ppm未満のタンパク質キャリーオーバーが、「モック実行」の「モック溶出」において検出された。この特定のパイロット実行を、9回の精製サイクルで以前に使用されたMabSelect(商標)SuReカラム上でmAbZと共に実施した(図8)。
この浄化手順はとても有効であったので、合計5つのパイロット規模のカラムを、遂行後に浄化した。浸出されたプロテインA(浸出されたプロテインAアッセイ)、(Zhu-Shimoni, J.等, J Immunol. Methods. 2009, 341:59-67)他のタンパク質(CZE LIF−総タンパク質、アッセイ;D. Michels、(出版準備中)、チャイニーズハムスター卵巣タンパク質(CHOPアッセイ;Fahrner, R. L.等, Biotechnol. Appl. Biochem. 1999, 30:121-128)及びDNA(CHO DNAアッセイ;CHO DNA解析に使用したTaqManポリメラーゼ連鎖反応)、抗体のFc断片(ヒトFc ELISA;インタクトな抗体及び断片化された抗体部分を、一般的な社内開発したサンドイッチELISAを使用して測定した)及び総抗体(インタクトなヒトIgG ELISA;インタクトな抗体及び断片化された抗体部分を、一般的な社内開発したサンドイッチELISAを使用して測定した)などの他の不純物の量を決定するための、これら全てのパイロット規模の試料のさらなる解析もまた実施して、このプロセスがパイロット規模で同様に機能したことを検証した(表3)。予測されるように、全ての検出された不純物は、許容される限界を十分に下回っており、この浄化手順は、mAbの精製に使用され得る(エントリー6、表3)。
結果
以前に最適化された延長された浄化条件(エントリー7、表2)を、さらなる研究のためにわずかに修飾し、10分間の静的保持時間の代わりに、15分間の静的保持時間を取り込んだ(図8)。樹脂を浄化するプロセス全体は、20カラム容積(CV)/時間の流速で4.5時間かかり、これを6サイクル(6回)にわたって実行した。これらの条件は、カラムを効率的に洗浄するために、溶出バッファーと再生バッファーとの間でのpHサイクリング及び静的保持を含んだ。簡潔に述べると、この手順は図9に詳述される。プロセス全体は、樹脂を徹底的に浄化するために、合計6サイクル実行される。最後に、この樹脂を、平衡化バッファー(3CV)で洗浄し、その後、貯蔵バッファー(5CV、貯蔵バッファー)中で貯蔵した。樹脂浄化を効率的にモニタリングするために、試料を、15分間の保持時間の後に収集して、各サイクルにおけるキャリーオーバーを解析し、どれだけ多くのタンパク質が各工程及び各サイクルにおいて樹脂から除去されたかを決定した(図9)。
樹脂を浄化した後、「モック実行」を実施して、タンパク質キャリーオーバーを検証した(図9)。この「モック溶出」を収集し、アッセイして、キャリーオーバーの量及び他の不純物の存在を決定した(Zhu-Shimoni, J.等, J Immunol. Methods. 2009, 341:59-67; Fahrner, R. L.等, Biotechnol. Appl. Biochem. 1999, 30:121-128)。総タンパク質を、キャピラリーゾーン電気泳動/レーザー誘起蛍光検出(CZE−LIF)アッセイを使用して測定した(D. Michaels等、出版準備中)。TaqManポリメラーゼ連鎖反応を、CHO DNA解析のために使用した。インタクトな抗体及び断片化された抗体部分を、一般的なサンドイッチELISAを使用して測定した。これらの他の不純物には、宿主細胞成分、タンパク質、ウイルス又はDNAが含まれる。これらのアッセイには、ELISAを使用するインタクトなヒト免疫グロブリン(IgG)についての試験、別のELISAにおけるヒトFc断片についての試験、キャピラリーゾーン電気泳動/レーザー誘起蛍光検出アッセイ(CZE/LIF)を使用する任意の他のタンパク質についての試験、CHOPアッセイにおけるチャイニーズハムスター卵巣タンパク質についての試験(Fahrner, R. L.等, Biotechnol. Appl. Biochem. 1999, 30:121-128)、及び浸出されたプロテインAアッセイ(Zhu-Shimoni, J.等, J Immunol. Methods. 2009, 341:59-67)が含まれる。「インタクトなヒトIgG ELISA」及び「ヒトFc ELISA」では、カラム上の抗体全体又は抗体断片の量が定量化される;ここで、前者は、断片抗原結合領域(Fab)及び断片結晶化可能(Fc)領域の両方に結合し、後者は、ヒトFc領域のみに結合する。CZE−LIFアッセイは、試料中のタンパク質の総量を定量化することによって、これらの結果を確認できる。最後に、プロテインAは、実行の間又は苛酷な浄化の間に樹脂から浸出でき、結合能に負の影響を与えることが公知であり、従って、浸出されたプロテインAの量を決定することは重要である(Fahrner, R. L.等, Biotechnol. Appl. Biochem. 1999, 30:121-128; Kelley, B., Biotechnol. Prog. 2007, 23995-1008; D. Michaels, 出版準備中; Fahrner, R. L.等, Biotechnol. Genet. Eng. Rev. 2001, 18:301-327)。
浄化手順の効率を試験するために、目的のmAb、mAbCを、AKTA Explorer 100を用いて、MabSelect(商標)SuReカラム(0.66×20cm、容積=6.8mL)上で実験室規模で精製した(2.2に記載したとおり)。数回の浄化サイクルの間及びその後のタンパク質キャリーオーバーを測定したところ、結果は、タンパク質キャリーオーバーが各浄化サイクル後に減少したことを実証した(図10)。引き続く「モック実行」におけるmAbCのインタクトなIgGタンパク質及びFc断片キャリーオーバーは、溶出バッファーによる1回目のサイクルにおける25ng/mgのインタクトなIgG及び35ng/mgのFc断片から、溶出バッファーによる6回目のサイクルの後に、両方について5ng/mg未満まで減少した(図10)。再生(溶出の後)の間及び後に、6回目のサイクルまでカラムから洗浄除去された、顕著により多くのインタクトなIgG及びFc断片は、レベルが5ng/mg未満のキャリーオーバーまで累積的に減少するところまで達した。キャリーオーバーを試験するために、「モック実行」(浄化サイクル全体の後の実行)を実施し、さらなるIgG及びFc断片を、事前再生においてカラムから洗浄除去し、「モック溶出」プロセスが開始するとき(このとき、第2のmAbは、再使用プロセスにおいて外れると予測される)までに、1ppm未満のIgG及びFc断片が検出された(図10)。まとめると、これらの結果は、これらの条件が有効な浄化条件であること、及び前の実行からキャリーオーバーされたタンパク質の総量が、この浄化手順を使用した後に樹脂を再使用した場合、1ppm未満であることを確認する。
1回のサイクル洗浄につきどの型のタンパク質断片が存在するかについてのより良い発想を得るために、各サイクル由来の試料を、10%トリス−HClゲル上で泳動した(mAbC)(図11)(Trexlar-Schmidt, M.等, Biopharm. Intl.2009年3月2日)。サイクル1からサイクル6まで、より少ないタンパク質が、連続するサイクルそれぞれにおいて観察された(各レーンにおいて減少したバンド強度、図11)。さらに、静的保持サイクル由来の試料を含むレーンは、サイクル1−6の間よりも濃縮され、より多くのタンパク質が、各静的保持サイクルの後に除去された。これらの結果は、延長された滞留時間が、カラムから残留タンパク質を除去するのを助けることを実証している。
この最適化された浄化プロセスを、MabSelect(商標)SuReカラム(13.8×20、容積=3L)上でのパイロット規模でのmAbXの精製に拡張した。それらの結果は、実験室規模で以前に見られた結果(図6)と類似していた。実験室規模の実行で見られたように、タンパク質不純物は、初期浄化段階において樹脂から除去され、それらの全体的濃度は、6回目のサイクルに達するまで、各溶出サイクル及び再生サイクルの後に減少する(図12)。樹脂再生の間に、カラムから最初に洗浄除去されたタンパク質の量は、6回目のサイクルの後よりもかなり多く、その結果、6回目の再生サイクルに達するときまでに、1ppm未満のタンパク質不純物が検出される(図12)。
MabSelect(商標)SuReカラム(20×20、容積=6.28L)上でのmAbYの精製及び上記浄化プロトコールを用いた引き続くカラム浄化(図9)、その後の「モック実行」は、モック溶出における6回目の再生サイクル後に、1ppm未満の浸出されたプロテインA、0.25mg/mL(定量化の限界)未満のCZE−LIF、0.5ppm未満のCHOP及び1.0pg/mL未満のCHO DNAを生じた(表4)。全ての不純物は、歴史的データと匹敵し、許容される限界内であった。
最適化された浄化プロトコール(図9)の頑強性の最終試験において、153回の多産物ロードサイクルを以前に受けた6.28LのMabSelect(商標)SuRe樹脂を使用して、目的のmAbを精製した。以前に使用した樹脂から「モック実行」中へのキャリーオーバー(エントリー1、表5)を、他の異なる3つのMabSelect(商標)SuRe樹脂から観察されたキャリーオーバーと比較した。これらの結果を、表5で概要を述べる。簡潔に述べると、古いMabSelect(商標)SuRe大規模多産物樹脂(エントリー1及び2、表5)は、新たなmAb特異的(多産物ではない)MabSelect(商標)SuRe樹脂(エントリー3、表5)及び新たなmAb特異的実験室規模MabSelect(商標)SuRe樹脂(エントリー4、表5)と匹敵して挙動した。これらの結果によれば、全てのプロテインA樹脂は、匹敵するCHOP、百分率凝集物及び浸出されたプロテインA(ng/mg)で、90%よりも高い収量でmAbを提供した。まとめると、多産物樹脂は、産物不純物プロファイル又は工程収量に対して負の影響を有さない。パイロット規模及び実験室規模の結果もまた、匹敵する(エントリー4、表5)。
示された作業に加えて、いくつかのより多くのmAbが、この手順を使用して浄化された多産物樹脂上で精製されている。これらの結果は、全て、非常に類似し再現性があり、総タンパク質レベルは0.25ppm(アッセイ検出限界)を下回った(表6)。これらの結果は、最適化された浄化手順が、多産物MabSelect(商標)SuReプロテインA樹脂を浄化、再生、再使用及びリサイクルするための効率的で再現性のある頑強な方法であることを示唆している。間欠性のプロテインA樹脂浄化のためのMSSCCP浄化手順の使用は、タンパク質キャリーオーバーを、確立された安全域を十分に下回るまで低減させる。
MabSelect(商標)SuReプロテインA樹脂が、産物純度に対する影響及び又は樹脂結合能の喪失なしに、多産物精製に使用されるのを可能にする、高度に有効なMabSelect(商標)SuRe浄化方法が開発された。実験室並びにパイロット規模の実験からのデータは、6サイクルの、0.15Mの酢酸(溶出バッファー)及び0.1Nの水酸化ナトリウム(再生バッファー)洗浄並びに15分間の保持時間を含む浄化プロトコールが、この1回目のmAb浄化工程における5ppm未満のタンパク質キャリーオーバーまで、MabSelect(商標)SuRe樹脂を浄化することを示唆している。このプロセスは、パイロット規模で多産物プロテインA樹脂(MabSelect(商標)SuRe)上で首尾よく遂行され、この戦略の有用性のさらなる信用を与えた。
実施例2
多産物使用についてのイオン交換カラムの評価
研究を実施して、類似の浄化プロセスがイオン交換クロマトグラフィーのために開発できるかどうかを決定した。ProAプール由来のMAbA及びMAbBを、陽イオン交換カラム(POROS)又は陰イオン交換カラム(QSFF)上にロードした。通常の溶出後、カラムを、「モック溶出」に供した。画分を、MabSelectSureアッセイを使用して、MAbA及び/又はMabBの存在について解析し、検出限界は0.82ng/mLであった。図13で見られるように、モック溶出結果は、これらのカラムのさらなる浄化の必要性を示した。
以下の定置浄化(CIP)手順を試験した。
I. 3CVの平衡化バッファー
II. 2CVの0.5NのNaOH
10分間の静的保持
III.1CVの0.5NのNaOH
10分間の静的保持
IV. 1CVの0.5NのNaOH
V. 浄化後モック実行
試料を、低濃度の洗剤(0.1%ポリソルベート20、0.05%アジ化ナトリウム)で条件付けて、コンテナの壁に試料が固着することを防止した。試料を、カラム上にロードする前に、中性pHに調整した。MAbA及びMAbBを、陽イオン交換カラム(POROS)又は陰イオン交換カラム(QSFF)上にロードした。通常の溶出後、カラムを、上記プロトコールを使用して浄化した。第2のセットのカラムに、MAbA又はMAbBをロードしたが、溶出後、これらのカラムは、上記プロトコールを使用して浄化しなかった。次いで、全てのカラムを、「モック溶出」に供した。モック溶出液を、インタクトなIgGの存在について解析し、ELISAによって解析した。
図14に示すように、この浄化方法は、POROSカラムにおいてMAbAのタンパク質キャリーオーバーを顕著に低減させ(パネルA)、QSFFカラムにおいてMAbBのタンパク質キャリーオーバーを顕著に低減させた(パネルB)。QSFFカラムでは、CIP工程なしであってもMAbAキャリーオーバーはほとんど見られず(パネルA)、POROSカラムでは、CIP工程なしであってもMAbBキャリーオーバーはほとんど見られなかった(パネルB)。
第3の抗体MAbCを、POROSカラム及びQSFFカラムに適用し、浄化プロトコールの選択された工程の最後にカラムから溶出するインタクトなIgGの量を測定したところ(図15)、その結果、CIPサイクルの最後までに、タンパク質キャリーオーバーの量は、0.1ppm未満であった。モック溶出プールにおけるタンパク質キャリーオーバーもまた、0.1ppm未満であった。
浄化プロトコールが大規模なイオン交換クロマトグラフィーカラムに対して有効であるかどうかを決定するために、この浄化プロトコールを、MAbDが以前にロードされたパイロット規模のカラムに対して実施した。これらのカラムは、7.22L POROS HS50カラム及び1.57L QSFFカラムであった。MAbDのローディング及び溶出の後、これらのカラムを、浄化することなしにモック平衡化し、次いで、モック溶出した。次いで、これらのカラムを、上記CIPプロトコールに従って浄化し、その後、さらなるモック平衡化及びモック溶出を行った。各工程由来の試料を取り出し、上記のようにインタクトなIgGについて解析した。結果を図16に示す。POROS HS50カラム及びQSFFカラムの両方について、タンパク質キャリーオーバーは、約0.1ppm未満であった。
実施例3
多産物使用についてのProSep Aカラムの評価
異なる浄化溶液を、どの溶液が産物キャリーオーバーを低減させるにあたり最も有効であるかを評価するために、小規模で評価した。酸、カオトロープ、塩及び有機溶媒を含む、いくつかの異なるカテゴリーの溶液を試験した。この研究は、一般的なプロセス条件を最良に模倣するために、標準的プロテインA抗体プロセスに従うように設計したが、実際のプロセシング条件は、使用される特定の産物に依存して異なり得る。
流れを、浄化サイクルを除く全てのプロセスについて、カラムを介してダウンフロー方向に方向付けた。浄化サイクルを通じて、流れを、最良の浄化シナリオを創出することを望んで、カラムを介して上方向に方向付けた。原料は、ローディングサイクルの間、下方向でカラムを介して方向付けられるので、プロテインAカラムの上部は、理論的にはほとんどが詰まる。浄化サイクルの流れを上方向に方向付けることによって、カラムの上部に積みあがったキャリーオーバー及び他の不純物が、溶出する前に、カラム長全体を横切る必要はないというのが理論である。この研究の時点で、アップフローがカラムを浄化するにあたってダウンフローよりも有益であるかどうかは、明らかでなかった。このセクションの目的のために、全ての実験はアップフローを使用することにおいて一貫しているので、比較は、この知見にもかかわらず、異なる浄化溶液間でなおもなされ得る。
材料及び方法
プロテインAクロマトグラフィープロセシング
プロテインAクロマトグラフィーを、AKTAエクスプローラー100クロマトグラフィー系(Amersham Pharmacia Biotech)及びUnicorn 5.10制御ソフトウェア(GE Healthcare)を使用して実施した。ProSep A樹脂を、ProSep vA樹脂の代わりに使用した。2つの樹脂の性能は、等価であることが以前に示されている。この樹脂を、0.66cm直径のOmnifitガラスカラム中に、14cmの床高さまで充填した。ナイーブ樹脂を、全ての実行のために充填した。全ての実験を、室温(20−30℃)で実施した。mAb1及びmAb2の回収された細胞培養液(HCCF)を使用した。標準的なプロテインA抗体プロセスを、30CV/時間の流速、14g/L樹脂のロード能力、及び280nmにおけるUV吸光度に基づいて0.5ODから2CVの最終容積までのプーリングで維持した。
溶出及び再生の事前サイクルの後に、平衡化、抗体ロード、3回の洗浄、溶出/プーリング及び再生からなるローディングサイクルを行った。9回のローディングサイクルを、順次的に実行して、カラムを十分に詰まらせた。再生、平衡化、10CVの試験される浄化剤及び再生の延長からなる浄化サイクルが後に続いた。この浄化サイクルを、10CV/時間のより緩徐な流速を使用して、アップフロー方向で実行した。1CVの画分を、浄化溶液ブロックを通じて収集した。次いで、このカラムを、一連のモック実行(キャリーオーバーサイクル)を実行する前に貯蔵して、産物キャリーオーバーを評価した。事前サイクル、通常のローディングサイクル及び貯蔵からなる完全性チェックがモック実行の後に続いて、タンパク質収量が減少しなかったことを確実にした。各実験を2重で実施した。
モック実行は、ロード相以外の各プロセス工程の通常の相が後に続く実行として規定され、このロード相の間は、カラム上にロードされるタンパク質は存在しない。その代り、リン酸緩衝生理食塩水(PBS)が、タンパク質を含む通常のロードプールの容積、pH及び伝導率をシミュレートするために、カラム上にロードされる(モックロード)。キャリーオーバー試料プール(モックプール)を、通常のタンパク質溶出プールを収集したのと同じ出発容積で、モック実行から収集した。
全体的プロセスの流れを以下にまとめる:
事前サイクル
溶出 3CV
再生 3CV
ローディングサイクル(×9)
平衡化 4CV
HCCFによるロード 14g/L
洗浄1 3CV
洗浄2 3CV
洗浄3 3CV
溶出/プール 3CV
再生 3CV
浄化サイクル
再生 7CV
平衡化 5CV
浄化剤 10CV
再生 10CV
貯蔵 5CV
事前サイクル
モック実行
ローディングサイクル(PBSロード)
完全性チェック
ローディングサイクル(HCCFロード)
貯蔵
プロテインAプールの事後プロセシング
溶出の3時間以内に、浄化画分及びキャリーオーバープールを、0.1%ポリソルベート20及び0.05%アジ化ナトリウムの最終濃度になるように、ポリソルベート20及びアジ化ナトリウムで条件付けた。ポリソルベート20は、低レベルのタンパク質が試料コンテナ壁上に吸着するのを防止する洗剤であり、アジ化ナトリウムは、細菌増殖を阻害を防止する防腐剤である。プロテインAプール(タンパク質及びモックの両方)を、pH5.0に調整し、浄化画分を、1.5Mトリス塩基を使用してpH5.0−7.0の間に調整した。全ての試料を、産物(インタクトなIgG)について解析するまで、4℃で貯蔵した。
分析論
タンパク質プール濃縮が、280nmの吸光度においてUV分光光度計(Shimadzu)を使用して見出された。浄化及びモックプール試料を2重又は3重のいずれかで提出し、インタクトなヒトIgG ELISAを使用して産物について解析した。
インタクトなヒトIgG ELISAからの結果を、以下の計算を使用して、キャリーオーバー値に変換した:
最悪のキャリーオーバーを表すために、各実験のタンパク質プール試料由来の最も低い産物濃度を、キャリーオーバーの計算に使用した(表9)。
結果
浄化溶液スクリーニングからのキャリーオーバー結果を図17にまとめる。比較のために、2つの実行を実施し、このとき、プロセシング工程の全てが同じであったが、浄化サイクルは実施しなかった。浄化されていないカラムと比較した場合、浄化溶液に曝露させたカラムの全てが、キャリーオーバーの顕著な低減を示した。平均キャリーオーバーは、浄化サイクルに曝露されていないカラムと比較して、65−93%の間減少した。
タンパク質は通常、平衡化バッファーに曝露された場合にはプロテインAカラムから溶出しないので、平衡化バッファーを、浄化溶液についてのネガティブコントロールとして含めた。しかし、この平衡化バッファーは、キャリーオーバーを低減させることにおいて他の溶液のいずれかと全く同様に機能した。これは、カラムを通じたバッファーのさらなるフロースルーが、実際の溶液組成に関わらず、キャリーオーバーを除去することを助けたことを示唆した。
実行間の高い可変性が、異なる浄化溶液の多くについて見られた。この可変性は、実験を通じた2つの異なる原料の使用に一部起因し得る。MAb1 HCCFを、以下の試料の各々からの2つの実行のうち1つのために使用した:浄化なし、平衡化バッファー、6MグアニジンHCl、1%v/vリン酸、19%エタノール、0.1Mイミダゾール/19%エタノール;mAb2 HCCFを、全ての他の実行に使用した。限定的な原料の入手可能性は、実行の全てを通じた一貫した原料の使用を妨げた。しかし、2Mリン酸カリウム試料が、両方の実行のためのmAb2 HCCFの使用にもかかわらず高い可変性を示したので(56.5%RSD)、見られた可変性の全てを、一貫しない原料が説明するわけではない可能性がある。
さらなるロードサイクルを、各実行のキャリーオーバーサイクル後に実施して、浄化後のカラムの性能を評価した。産物収量は、浄化剤への曝露の前にロードサイクルの間に取得された収量と一致した(結果示さず)。
画分を、浄化において現れる抗体の量を評価するために、浄化サイクルの浄化剤ブロックにわたって収集した(図18)。浄化剤の一部は、タンパク質に対して変性効果を有していた可能性があるので、これらの結果を使用して、絶対量を見出すのではなく、傾向を確立した。浄化剤の全てが、10CV内に十分に入る、低い、ほぼ一定のレベルまで安定化された抗体量を放出した。対照的に、モックサイクルの間に溶出したキャリーオーバーは、かなり高い濃度のままであった。タンパク質分解が予測されなかった平衡化バッファーなどのバッファーを用いても、より高いレベルのキャリーオーバーが、浄化から放出された低いレベルの抗体にもかかわらず、観察された。これらの知見は、この浄化手順が使用される場合、浄化持続時間の単なる低減又は延長が、キャリーオーバーレベルに顕著に影響を与えるわけではないことを示唆している。
いくつかの逐次的なモック実行を、試験した各溶液について浄化サイクル後に実施した。0.1M酢酸浄化の5回の逐次的なモック実行からのUV280nmシグナルを、図19においてクロマトグラム中に重ねて示す。実施した全ての逐次的なモック実行で、プーリング領域における鋭いピークは、徐々に減少した。各逐次的サイクルでのキャリーオーバーのこの減少は、この特定のカラムに限定されなかった。図20に見られ得るように、同じ傾向が、スクリーニングしたほぼ全ての浄化溶液で生じた。カラムに対して浄化を行わなかった場合であっても、キャリーオーバーは、各追加のモック実行を実施して、顕著に減少した。図21では、6MグアニジンHCl試料は、2回目のキャリーオーバーからのデータを欠いているが、同じ傾向が見られた。20%ヘキシレングリコール試料は、最大5回目のキャリーオーバーまで、同様に同じ傾向を示した。5回目のキャリーオーバーの高い値が、実際のキャリーオーバー又は試料採取における人為的ミスを反映するかどうかは、決定していない。
各逐次的なモック実行によるキャリーオーバーにおける減少は、キャリーオーバーが、スクリーニングされているものなどのより特定化された浄化剤の代わりに標準的なプロテインAバッファーを使用して、低減され得ることを示唆した。より少ない調製時間が、バッファーの計量のために必要とされ、より少ない不確実性がカラムに対する化学物質の影響に関して存在するので、既存のバッファーの使用は、精製パイロットプラントにおけるこれらの浄化手順のより容易な遂行になる。
より重要なことに、これらの結果はまた、プロテインAカラムのための代替的浄化手順としてのモック実行バッファーのパルシングを示唆した。キャリーオーバーは、0.1Mの酢酸又は1%v/vリン酸への連続的曝露からよりも、逐次的なモック実行からより多く低減されたので、モック実行の間の低pHの溶出バッファー及び再生バッファーは、改善された浄化を完全には説明できない。その代り、モック実行の間の高いpHから低いpHへの遷移がキャリーオーバーの低減を担った可能性がある。
図21は、2MアルギニンHCl試料が、キャリーオーバー低減傾向に従わなかったことを示している。Aktaシステムへの電源供給は中断されており、3回目のモック実行の後及びおそらくはその間にバッファー中でカラムが保持された。延長された持続時間のバッファー曝露後の増加したキャリーオーバーは、単一のキャリーオーバー結果が、どのくらいのタンパク質がカラム上に残存するかを完全には示さない可能性があることを示した。最初の結果でカラムが「浄化」されたと示唆された後であっても、さらなるキャリーオーバー溶出の可能性は、重大な障害を提示する。
ProSep Aを充填したプロテインAカラムにおいてキャリーオーバーを低減させる適切な浄化戦略を同定するために、10種の異なる浄化剤をスクリーニングした。これらの浄化溶液の全てが、キャリーオーバーの低減を助けた;しかし、可変性の問題に起因して、これらの薬剤の大部分は、類似の性能を示した。逐次的なモック実行からの解析したキャリーオーバープールは、各さらなるモック実行を実施すると、減少したキャリーオーバーの傾向を示した。
実施例4
高いpHから低いpHのバッファーへのパルス振動
研究を実施して、産物キャリーオーバーを低減させる手段として、モック実行バッファーのパルス振動を調査した。基本的戦略を同定した後、最適化を、より大きい小規模カラムを使用して実施した。最適化パラメーターは、流れの方向性、流速及び静的浸漬の解析を含んだ。
材料及び方法
産物溶出の予備的解析
プロテインAクロマトグラフィーを、15℃でロードしたmAb3 HCCFを使用して、実施例2に記載した方法に従って実施した。9回のローディングサイクルを実施し、その後、貯蔵、事前サイクル及び2回のモック実行を実施した。浄化は実施しなかった。以前に記載したように、1CVの画分を、モック実行の各々にわたって収集し、トリス塩基、ポリソルベート20及びアジ化ナトリウムで条件付けた。画分を、インタクトなヒトIgG ELISAによって解析した。
pHパルス振動及び最適化
全ての実験を、1.6cm直径カラム上でmAb3 HCCFを使用して実施した。床高さは14cmのままであった。9回のローディングサイクルを実施し、その後、3CVの平衡化バッファー及び3CVの再生バッファーからなる浄化サイクルを実施した。10回の浄化サイクルを実施し、その後、貯蔵、事前サイクル、及び一連のモック実行を実施した。1CVの画分を、浄化プロセス全体にわたって収集した。以前に記載したように、浄化画分及びモックプールを条件付けし、解析した。
初期設定の浄化手順を、10サイクルにわたって30CV/時間でダウンフロー方向で実行した。最適化研究には、流れ方向及び流速の修飾、静的浸漬条件の試験、並びに浄化持続時間の低減が関与した。流れ方向の最適化のために、浄化サイクルを、アップフロー方向で実行した。流速の最適化のために、浄化サイクルを、15CV/時間の流速で実行した。静的浸漬を、平衡化バッファー中又は再生バッファー中のいずれかで、4回目の浄化サイクルの間にカラムを3時間保持することによって試験した。静的浸漬の最適化のために、このカラムを、10回の浄化サイクルのうち4回の間に、平衡化バッファー中で3時間保持した。浄化持続時間の最適化のために、浄化サイクルを、2CVの平衡化バッファー及び2CVの再生バッファーへと低減させた。さらに、平衡化バッファー中での静的浸漬を、10回の浄化サイクルのうち5回について実施した。最適化パラメーターを表10にまとめる。
結果
画分を、詰まったカラムの最初の2回のモック実行サイクルにわたって収集して、モック実行サイクルの間のいつ、産物が実際に溶出するかを調査した。クロマトグラム及びキャリーオーバーの結果を図22に示す。産物の大部分は、平衡化バッファーを溶出バッファーによって置き換えた、高いpHから低いpHへの遷移の時点で溶出した。産物は、再生バッファーが溶出バッファーを置き換えた、次のpH低下の時点で、より低い程度まで溶出した。これらの観察は、2回目のキャリーオーバーサイクルで反復された。キャリーオーバー結果により、低いpHでカラムを保持するだけでは、カラムが効率的に浄化されないことが確認された。唯一の要求が低いpHである場合、2回目のキャリーオーバーサイクルの間のピークは、より小さかったはずであり、より多くのタンパク質が、1回目のキャリーオーバーサイクルの溶出及び再生ブロック全体の間に外れたはずである。
pH低下からの溶出と2回目のモック実行の間のさらなる溶出との比較は、潜在的浄化戦略としての高いpHから低いpHへのパルスを強力に支持した。タンパク質溶出は、3CV以内の溶出バッファーでピークを迎えたので、バッファー持続時間を、高いpH及び低いpHのバッファーの各々について、3CVに設定した。平衡化バッファー(pH7.1)を、高いpHのバッファーとして選択し、再生バッファー(pH1.7)を、低いpHのバッファーとして選択した。
pHパルス振動
10回のパルス振動サイクルの平衡化バッファー及び再生バッファーを通じた産物溶出を、図23に示す。カラムからのIgG溶出のピークは、浄化の高いpHから低いpHへの遷移毎に存在した。各引き続くサイクルで、溶出するタンパク質の量は減少した。
数回の逐次的なモック実行を、パルス浄化後に実施した。5回の逐次的なモック実行からのキャリーオーバー量を、図24に示す。比較のために、浄化されていないカラムからの逐次的なキャリーオーバーもまた示される。10サイクルのpHパルス浄化は、484ng IgG/mg産物から68ng IgG/mg産物まで、カラムからのキャリーオーバーの86%の低減を生じた。浄化はキャリーオーバーの顕著な低減を生じたが、さらなるモック実行は、キャリーオーバーをなおも生じた。最適化が、キャリーオーバーをさらに低減させるために必要であった。
パルス浄化の最適化
浄化サイクルの間のカラムを通じたバッファーのアップフロー及びダウンフローを比較した。5回の逐次的なモック実行についてのキャリーオーバーを、図25に示す。アップフローは、ダウンフローと比較した場合、初期キャリーオーバーにおける54%の増加を生じた(105ng IgG/mg産物対68ng IgG/mg産物)。全ての引き続くキャリーオーバーが、キャリーオーバーにおける増加を同様に示した。ポリソルベート20及びアジ化ナトリウムは、誤って、試料に添加されなかったので、4回目のモック実行の間のキャリーオーバーは、無効であった。図26は、アップフローカラム及びダウンフローカラムの両方についての、浄化持続時間全体を通じた産物溶出を示す。アップフローは、より多くのモック実行キャリーオーバーを生じたが、カラムをより徹底的に効率的に浄化する10回の浄化サイクルを通じてカラムからより多くのタンパク質が溶出することを引き起こした。顕著な量のタンパク質が最後の浄化サイクルの間にカラムからなおも溶出していたので、アップフロー実行は、ほぼ間違いなく、キャリーオーバーとして溶出している産物のより多くを除去するために、より多くのサイクルで延長され得る。
モック実行キャリーオーバーレベルに対する、浄化の間のバッファー流速の影響を、図27に示す。30CV/時間から15CV/時間まで流速を半分に低減させることで、初期キャリーオーバーをほぼ50%(68ng IgG/mg産物から35ng IgG/mg産物まで)低減させた。より緩徐な流速は、キャリーオーバーを効率的に半分にカットしたが、浄化時間の倍加が不利益であった。
浄化サイクルの間のバッファー中でのカラムの静的浸漬からの結果を、図28に示す。このカラムを、平衡化バッファー又は再生バッファー中のいずれかで3時間保持し、複数のキャリーオーバーを評価した。平衡化バッファー中でのカラムの浸漬は、再生バッファー中でのカラムの浸漬よりも優れていた(19ng IgG/mg産物対28ng IgG/mg産物)。両方の静的浸漬は、カラムの通常パルス浄化からの68ng IgG/mg産物に対する、注目すべき改善であった。流速の低減に伴って、増加した浄化時間の不利益を、キャリーオーバー低減の利益と比較検討する必要があった。
バッファー中でのカラムの静的浸漬を、平衡化バッファー中での単一回の3時間保持を、複数回の3時間保持と比較することによって、さらに評価した。カラムを、10回のパルス振動サイクルのうちの4回について静的浸漬中に保持し、キャリーオーバーについて評価した(図29)。複数回の静的浸漬を用いると、キャリーオーバーは、19ng IgG/mg産物から8ng IgG/mg産物へと低下した。
最適化実行の各々について浄化サイクルを通じて収集した画分を、最適な浄化持続時間を決定するために、産物溶出について評価した(図23、26、30−32)。浄化サイクルの大部分は、第3CVの平衡化バッファー及び再生バッファーの両方の間に、ほとんど又は全く産物溶出を示さなかった。結果として、各浄化サイクルの持続時間を、2CVの平衡化バッファー及び2CVの再生バッファーに低減させた。浄化持続時間のこの低減は、より少ないバッファー及びより短い浄化時間になった;しかし、産物キャリーオーバーは、同じままか、わずかに増加するかのいずれかである。より小さいバッファー容積を維持しながらキャリーオーバーをさらに低減させるために、静的浸漬の回数を、4から5に増加させた。図33は、これらの変化が、7.8ng IgG/mg産物から6.7ng IgG/mg産物まで、キャリーオーバーをわずかに低減させたことを示している。カラム浄化を通じた産物溶出を、図34に示す。10回目の浄化サイクルの最後までに、5.0ng IgG/mg産物が、再生バッファーの最後のカラム容積で溶出した。
実施例5
浄化の大規模性能。
最適化研究の間に同定された最も有望なpHパルス浄化手順を、以前に使用したパイロット規模のカラムに適用した。この研究のためのカラムを、分子、寸法、及び前のタンパク質接触の回数に基づいて選択した。Pharmaciaスキッドだけが自動的なポーズ持続時間を可能にしたので、2L/分のスキッドの流速上限を越えないカラムを選択した。
材料及び方法
以前に使用したmAb4及びmAb5プロテインAカラムを、パイロットプラントのコールドルーム貯蔵から取得した。このmAb4カラムは、直径が20cmで13.5cmの床高さがあり、28サイクルにわたって以前に使用されたものである。Bioprocessスキッド1538(Amersham Biosciences Pharmacia)を浄化に使用し、スキッド1050(Millipore)をモック実行に使用した。このmAb5カラム(Pharmacia Index)は、直径が14cmで15cmの床高さがあり、20サイクルにわたって以前に使用されたものである。Bioprocessスキッド1076(Amersham Pharmacia Biotech)を、全てのmAb5プロセスに使用した。
2CVの平衡化バッファー及び2CVの再生バッファーからなる10回の浄化サイクルを実施した。このカラムを、3時間の平衡化バッファー静的浸漬中で、10回のパルス振動サイクルのうち5回について保持した。浄化の後に、カラムの貯蔵、スキッドの衛生化、及びモック実行を行った。mAb5カラムについて、このカラムなしのさらなるモック実行の直後に衛生化を行い、系キャリーオーバーについての値を取得した。
モック実行パラメーターは、各特定の分子のプロテインAプロセシングにおいて以前に使用したパラメーターに基づいた。mAb5カラムについて、洗浄3工程を、典型的なmAb5プロテインAクロマトグラフィーにつき、4CVに拡張した。モック実行パラメーター及び参照のために使用した元の実行のまとめを、表11に列挙する。
産物キャリーオーバーを表12に示す。浄化した後、aIGF1Rカラムは、48.2ng IgG/mg産物のキャリーオーバーを有したが、antiAbetaカラムは、8.6ng IgG/mg産物のキャリーオーバーを有した。以前の研究は、キャリーオーバー値が、増加したタンパク質接触と共に増加することを示している。mAb4カラムを、mAb5カラムよりも8回多いタンパク質接触サイクルに曝露させたが、増加した回数の接触単独は、キャリーオーバー値における大きい不同性を説明するのに顕著に十分でない可能性がある。
最終浄化サイクルの最後までに、産物は、両方のカラムについて浄化バッファーと共になおも溶出していた。小規模最適化の間に観察された最終浄化CVからの5.0ng IgG/mg産物と比較して、パイロット規模での産物溶出は、予測したよりも高かった(それぞれaIGF1Rカラム及びantiAbetaカラムについて、12.7ng IgG/mg産物及び62.9ng IgG/mg産物)。
系キャリーオーバーを、スキッド衛生化後に所定の位置にカラムなしでモック実行を実施することによって解析した。系キャリーオーバーは、Prosep A樹脂にではなくスキッドに起因するキャリーオーバーの量を示す。スキッドの浄化手順及び衛生化は、全ての系キャリーオーバーを排除したはずだが、0.97ng IgG/mg産物が、mAb5実行の間に系モックプールにおいてなおも検出された。これらの結果は、キャリーオーバーへの系の寄与が最小であることを示すが、スキッド自体のさらなる浄化が、1つの実行から次の実行まで産物のキャリーオーバーが絶対的に存在しないことを確実にするために、必要とされ得る。
小規模最適化の間に使用される浄化手順の、パイロット規模への適用は、顕著な可変性でより高いキャリーオーバーレベルを生じた。産物は、小規模においても同様に以前に観察されたものよりも高いレベルで、浄化サイクルの最後を通じて溶出し続けた。この系は、カラムが所定の位置に存在しない場合であっても、小さいレベルのキャリーオーバーに寄与することが見出された。
高いpHから低いpHへのバッファーのパルス振動は、小規模においてキャリーオーバーを低減させる有効な手段であることが見出された。1.6cm直径のカラムを使用すると、キャリーオーバーは、6.7ng IgG/mg産物に低減された。しかし、前のパイロット実行の間に使用された実際のカラムへの浄化手順の適用は、48.2ng IgG/mg産物で、これまでに測定された最も高い値で、かなり高いキャリーオーバー値を生じた。キャリーオーバーレベルは、カラムの使用法における差異に起因してカラム間で幾分異なることが予測されるが、完成した浄化手順は、任意の所与のカラムの詳細に関わらず、キャリーオーバーを遍在的に排除する必要がある。さらに、長期カラム性能及び最小キャリーオーバー検出限界などのさらなるパラメーターを評価することが重要である。