JP2021027163A - 保護膜付きサーミスタおよびその製造方法 - Google Patents

保護膜付きサーミスタおよびその製造方法 Download PDF

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Abstract

【課題】均一な膜厚で平滑性および密着性に優れ、かつ、簡易な工程で低コストに成膜が可能な保護膜を備えた電子部品の製造方法を提供する。【解決手段】サーミスタ10において、サーミスタ素体11と、膜厚が50nm以上1000nm以下の範囲のSiO2膜からなり、サーミスタ素体11に接して形成される保護膜20と、電極部13と、を有し、サーミスタ素体11と保護膜20との界面を含む領域には、アルカリ金属が偏在している。【選択図】図1

Description

この発明は、保護膜付きサーミスタおよびその製造方法に関するものである。
サーミスタは、温度に応じて電気抵抗が変化する特性を有しており、各種電子機器の温度補償や温度センサ等に適用されている。特に、最近では、回路基板に実装されるチップサーミスタが広く使用されている。こうしたサーミスタは、サーミスタ素体(基体)と、このサーミスタ素体の両端に形成された一対の電極部とを有している。
サーミスタ素体は、例えば複数種の金属酸化物などからなり、酸やアルカリに弱く、かつ、還元されやすいという性質を有している。サーミスタ素体の組成が変化すると、サーミスタとしての特性が変動してしまう虞がある。
酸やアルカリなどとの接触によるサーミスタ素体の組成変化を防止するために、例えば特許文献1,2には、サーミスタ素体の表面に保護膜を成膜する技術が開示されている。こうした保護膜は、サーミスタ素体の劣化を抑制するために、めっき液への耐性、耐環境性、絶縁性等が要求される。保護膜の具体例としてはSiO膜が用いられることが多い。
特開平03−250603号公報 特開2003−077706号公報
しかしながら、特許文献1,2のように、サーミスタ素体にガラスペーストを印刷して厚いガラス層を形成する方法では、保護膜の薄膜化が困難であるため、小型のサーミスタを作製することが難しいという課題があった。
一方、SiOなどの保護膜を、Siなどのスパッタリングターゲットを用いて、反応性スパッタリングによって成膜する場合、保護膜の薄膜化は可能であるものの、形成される保護膜が量論比通りの組成にならず、SiO2−xのように弱還元された状態の膜が成膜されることがある。
弱還元状態の膜は、例えば、後工程で電極形成などを目的とした焼成工程がある場合、サーミスタ素体が熱還元されて保護膜とサーミスタ素体との界面に空隙が生じる。こうした空隙によってサーミスタ素体と保護膜との密着性が低下し、保護膜が剥離してサーミスタ素体が浸食され、サーミスタの特性が変化してしまうという懸念がある。また、サーミスタ素体の組成ムラはサーミスタの感度低下などの原因となり好ましくない。
また、ディップコートなど、成膜原料液を塗布する一般的な湿式成膜法によって保護膜を製膜する場合、サーミスタ素体の表面に存在する微細な凹凸に追従した成膜ができず、膜厚が凸部で薄く凹部で厚くなってしまい、均一な膜厚の保護膜を得ることが難しい。保護膜の膜厚が不均一であると、クラックやピンホールが発生しやすく、多孔質な保護膜になってしまう。こうした多孔質な保護膜では、サーミスタ素体へのガスや液体の浸透を充分にバリアすることができず、保護膜としての機能が低くなるという課題があった。
この発明は、前述した事情に鑑みてなされたものであって、サーミスタ素体に対して剥離が生じにくい密着性に優れた保護膜を有する保護膜付きサーミスタを提供することを目的とする。
また、密着性に優れた保護膜を有する保護膜付きサーミスタを製造することが可能な保護膜付きサーミスタの製造方法を提供することを目的とする。
上記課題を解決するために、本発明の一実施形態の保護膜付きサーミスタは、サーミスタ素体と、膜厚が50nm以上1000nm以下の範囲のSiO膜からなり前記サーミスタ素体に接して形成される保護膜と、電極部と、を有し、前記サーミスタ素体と前記保護膜との界面を含む領域には、アルカリ金属が偏在していることを特徴とする。
本発明の保護膜付きサーミスタによれば、サーミスタ素体と保護膜との界面にアルカリ金属を偏在させることによって、この界面でのSiO膜の成長が効率的に促進され、サーミスタ素体と隙間なく密着した、剥離が生じにくい保護膜を有する保護膜付きサーミスタを実現することができる。
また、本発明では、エネルギー分散型X線分光分析装置を用いて、前記界面に垂直な方向の線分析によって得られた、前記界面を含む領域における前記アルカリ金属の検出量(原子%)を全金属の検出量(原子%)で除算したアルカリ金属の存在比の最大値が0.03以上であり、かつ、前記最大値を前記保護膜のアルカリ金属の存在比の平均値で除算した値が1.5以上であってもよい。
本発明の保護膜付きサーミスタの製造方法は、前記各項に記載された保護膜付きサーミスタの製造方法であって、シリコンアルコキシドとアルカリ金属と水と有機溶媒とアルカリとを含む反応液に、前記サーミスタ素体を浸漬し、前記シリコンアルコキシドの加水分解反応及び重縮合反応によって前記サーミスタ素体の表面にSiOを析出させることにより、前記保護膜を成膜する保護膜形成工程を備えていることを特徴とする。なお、反応速度向上のため、反応液を溶媒の沸点以下で加熱してもよい。
本発明の保護膜付きサーミスタの製造方法によれば、反応液にアルカリ金属を含ませて、サーミスタ素体と保護膜との界面にアルカリ金属を偏在させることによって、この界面での粒子の成長が効率的に促進され、サーミスタ素体と隙間なく密着した、剥離が生じにくい保護膜を有する保護膜付きサーミスタを製造することができる。
また、本発明では、前記保護膜形成工程の後工程であって、前記サーミスタ素体の両端面に金属ペーストを塗布して焼成することにより、前記電極部を形成する電極部形成工程を備えていてもよい。
本発明の保護膜付きサーミスタおよびその製造方法によれば、均一な膜厚で平滑性および密着性に優れ、かつ簡易な工程で低コストに成膜が可能な保護膜を備えた保護膜付きサーミスタおよびその製造方法を提供することができる。
本発明の一実施形態である保護膜付きサーミスタの概略断面説明図である。 保護膜付きサーミスタの保護膜付近の要部拡大断面図である。 本発明の一実施形態である保護膜付きサーミスタの製造方法を段階的に示すフローチャートである。 実施例における検証結果を示す光学顕微鏡像である。 実施例における検証結果を示す電子顕微鏡像である。 実施例における検証結果を示すHAADF像、元素マッピング像、およびLine分析グラフである。 実施例における検証結果を示すHAADF像、元素マッピング像、およびLine分析グラフである。 実施例における検証結果を示すHAADF像、元素マッピング像、およびLine分析グラフである。 実施例における検証結果を示すHAADF像、元素マッピング像、およびLine分析グラフである。 実施例における検証結果を示す光学顕微鏡像である。 実施例における検証結果を示す電子顕微鏡像である。
以下、図面を参照して、本発明の一実施形態の保護膜付きサーミスタおよびその製造方法について説明する。なお、以下に示す実施形態は、発明の趣旨をより良く理解させるために具体的に説明するものであり、特に指定のない限り、本発明を限定するものではない。また、以下の説明で用いる図面は、本発明の特徴をわかりやすくするために、便宜上、要部となる部分を拡大して示している場合があり、各構成要素の寸法比率などが実際と同じであるとは限らない。
(保護膜付きのサーミスタ)
図1は、本発明の一実施形態の保護膜付きサーミスタの層構造を示す断面図である。また、図2は、保護膜付きサーミスタのサーミスタ素体と保護膜との界面とその周辺を示す要部拡大断面図である。
保護膜付きサーミスタ(以下、単にサーミスタと称することがある)10は、温度変化に対して電気抵抗の変化の大きい抵抗体を有し、例えば温度センサとして広く用いられている。サーミスタ10は、サーミスタ素体(基体)11と、このサーミスタ素体11の表面に形成された保護膜20と、サーミスタ素体11の両端部にそれぞれ形成された電極部13,13と、を備えている。
保護膜20は、サーミスタ素体11の両端面には形成せず、電極部13,13は、サーミスタ素体11に直接接触し、電気的に接続するように構成されている。
電極部13,13は、例えばAg,Cu,Au等の導電性に優れた金属の焼成体で構成されている。また、電極部13は、前述した焼成体の上に、NiやSnなどのめっき膜を成膜した構成であってもよい。
サーミスタ10は、例えば、角柱状に成形されていればよい。サーミスタ10の大きさは、特に限定されない。後述する保護膜付きサーミスタの製造方法は、従来の保護膜形成技術と比較して、微小な凹凸にも追従したサイズの小さいサーミスタ素体11への成膜時に特に有用であるため、例えば、サーミスタ10の長さは実現範囲内において、2mm以下であることが好ましく、1mm以下であることがさらに好ましい。また、サーミスタ10の長さ方向に直交する断面の断面積の上限は、実現範囲内において0.65mm以下であることが好ましく、0.25mm以下であることがさらに好ましい。
また、サーミスタ素体11は、温度に応じて電気抵抗が変化する特性を有している。このサーミスタ素体11は、酸やアルカリに対する耐性が低く、還元反応等によって組成が変化し、特性が大きく変動してしまう虞がある。よって、本実施形態では、サーミスタ素体11を保護するための保護膜20が形成されている。
保護膜20は、めっき液に対する耐性、耐環境性、絶縁性が求められる。本実施形態では、保護膜20は、シリコン酸化物、具体的には、SiOで構成されている。シリコン酸化物は高い耐熱性、耐摩耗性を有し、かつクラックやピンホールの極めて少ない均一で平滑な薄膜にすることができる。
この保護膜20は、後述する保護膜付きサーミスタの製造方法において述べるように、シリコンアルコキシドの加水分解反応、重縮合反応によって、サーミスタ素体11の表面に薄膜状のSiOを析出させることによって成膜されたものである。こうしたSiOからなる保護膜20は、サーミスタ素体11との密着性に優れ、接合界面における剥離部分が極めて少ない。
保護膜20の厚さTは、50nm以上1000nm以下の範囲内になるように形成されている。そして、本実施形態のサーミスタ10は、サーミスタ素体11と保護膜20との界面Gを含む領域、例えば界面Gの保護膜側の近傍にアルカリ金属が偏在している。
後述する保護膜付きサーミスタの製造方法では、シリコンアルコキシドの加水分解反応、重縮合反応によって、サーミスタ素体11の表面に薄膜状のSiOを液相析出させる際に、触媒としてアルカリ金属化合物、例えば、NaOH、KOH、NaCl、KClを含むアルカリ性化合物を用いている。
こうしたアルカリ金属化合物に含まれるアルカリ金属(例えば、Na,K)の一部は、保護膜20の内部やサーミスタ素体11と保護膜20との界面Gに存在するが、本実施形態のサーミスタ10では、保護膜20の膜厚方向に沿った内部に存在するアルカリ金属よりも、サーミスタ素体11と保護膜20との界面Gを含む領域(界面Gの近傍)に存在するアルカリ金属のほうがその濃度が高く、界面Gを含む領域にアルカリ金属が偏在している。
より具体的には、エネルギー分散型X線分光分析装置(TEM−EDS)を用いて、サーミスタ素体11と保護膜20との界面Gを垂直に横切って行った線分析によって得られた、界面Gを含む領域におけるアルカリ金属の検出量(原子%)を全金属の検出量(原子%)で除算したアルカリ金属の存在比の最大値が0.03以上であり、かつ、この最大値を保護膜20のアルカリ金属の存在比の平均値で除算した値が1.5以上になるように、アルカリ金属が界面Gに偏在している。
なお、保護膜20のアルカリ金属の存在比の平均値は、上記のTEM−EDSの線分析によって得られたSiO保護膜部分全域におけるアルカリ金属の検出量(原子%)を全金属の検出量(原子%)で除算したアルカリ金属の存在比である。
こうしたサーミスタ素体11と保護膜20との界面Gにアルカリ金属が偏在すると、サーミスタ素体11と保護膜20との密着性が向上する。例えば、参考文献1によれば、一般的なアルコキシドの加水分解反応、重縮合反応によって1〜2nmの超微粒子ができるが、この超微粒子はしっかりとした固体表面になっておらず、表面電位(ゼータ電位)が低い状態にあるため、粒子同士の反発が小さく、凝集しやすい状態のため、ファンデルワールス力によって粒子同士が凝集することで数100nm程度の粒子が生成するとされている。
また、この粒子が成長すると粒子表面がSiOと見なせる表面状態に近づき、粒子同士の凝集は起こらなくなり、1〜2nmの超微粒子が消費されると粒子の成長は止まるとされている。そして、アルカリ金属の存在によって、超微粒子の表面にアルカリ金属が吸着され、ゼータ電位を下げる、つまり、凝集しやすくなるとされている。
参考文献1:D.Nagao, T.Satoh, and M.Konno. Journal of Colloid and Interface Science 232, 102-110 (2000)
本実施形態のサーミスタ10においても、サーミスタ素体11と保護膜20との界面Gにアルカリ金属を偏在させることによって、サーミスタ素体11の表面および、シリコンアルコキシドの加水分解反応、重縮合反応によって生じた超微粒子のゼータ電位を下げて凝集を促進させ、均一な膜厚の保護膜20を成長させるとともに、サーミスタ素体11に対する保護膜20の密着性が高められていると考えられる。
なお、界面Gにアルカリ金属が偏在せず、保護膜20内全体にアルカリ金属が多く存在している場合、シリコン酸化物保護膜の融点が下がることで、電極の焼き付け時等の熱処理によって保護膜が溶融し、膜厚に偏りが生じサーミスタ素体が露出してしまう虞がある。
以上の様な構成の本実施形態のサーミスタ10によれば、サーミスタ素体11と保護膜20との界面Gにアルカリ金属を偏在させることによって、サーミスタ素体11と保護膜20との密着性が向上し、保護膜20が剥離してサーミスタ素体11が浸食されることのないサーミスタ10を実現することができる。
次に、本発明の一実施形態の保護膜付きサーミスタの製造方法を説明する。
図3は、本発明の保護膜付きサーミスタの製造方法を段階的に示したフローチャートである。
(サーミスタ素体形成工程S01)
まず、角柱状をなすサーミスタ素体11を製造する。本実施形態においては、サーミスタ材料からなる板材を短冊状に切断することにより、上述のサーミスタ素体11を製造している。
(保護膜形成工程S02)
次に、上述のサーミスタ素体11を、シリコンアルコキシドとアルカリ金属と水と有機溶媒とアルカリを含む反応液に浸漬し、シリコンアルコキシドの加水分解及び重縮合反応により、サーミスタ素体11の表面にシリコン酸化物(SiO)を析出させて保護膜20を成膜する。
具体的には、反応容器に水と有機溶媒との混合液を秤量して攪拌し、これにシリコンアルコキシドとともにサーミスタ素体11を投入してさらに攪拌し、さらに触媒としてアルカリ金属化合物、アルカリを添加してさらに攪拌する。この時、NaOHのようにアルカリ金属化合物とアルカリが同一のものでもよく、NaClを溶解したアンモニア水のように、混合された状態で加えてもよい。シリコンアルコキシドの加水分解、重縮合反応が十分に進行した後、サーミスタ素体11を取り出し、洗浄する。この作業を繰り返し実施し、所定の膜厚の保護膜20を成膜する。なお、反応速度向上のため、反応液を溶媒の沸点以下で加熱してもよく、洗浄後のサーミスタ素体11を加熱、乾燥させてもよい。
有機溶媒は、水とシリコンアルコキシドを溶解可能なものであればよく、入手及びハンドリングのしやすさ、水との相溶性の観点から、炭素数1から4のアルコールやそれらの混合物が適当である。
シリコンアルコキシドは、アルコキシ基を2つ以上持つモノマーまたはこれらが重合したオリゴマー体であるが、反応性の観点からアルコキシ基を4つ持つモノマー、またはこれらが重合したオリゴマー体であることが好ましく、これらを混合することも可能である。なお、シリコンアルコキシドに含まれるアルキル基は、一部またはすべてが同じでもよい。
シリコンアルコキシドの具体例としては、正珪酸メチル(TMOS)、正珪酸エチル(TEOS)、多摩化学工業株式会社製メチルシリケート51などのTMOSのオリゴマー体、多摩化学工業株式会社製シリケート40などのTEOSのオリゴマー体、メチルトリメトキシシランなどを用いることができる。
アルカリ金属としてはNa,K,Liなどが挙げられる。これらのアルカリ金属の供給源として、NaOH,KOH,LiOH,NaCl,KClなどを用いることができる。
アルカリは、アンモニアやNaOH、LiOH、KOHなどの無機アルカリ、エタノールアミンやエチレンジアミンなどの有機アルカリを用いることができる。
ここで、本実施形態におけるシリコンアルコキシドの加水分解、重縮合反応は、アルカリを触媒としている。
触媒としてアルカリを用いた場合、負に帯電した水酸化物イオンが正に分極したシリコンにアタックし、水を介する形でアルコキシ基の一つがシラノール基に変わり、アルコールが抜ける。立体障害が大きいアルコキシ基の一つが、立体障害が小さいシラノール基に変わることで水酸化物イオンがアタックしやすくなり、加水分解反応の速度が一気に進行した結果、アルコキシ基すべてが加水分解したシラノールが生成し、これが3次元的に脱水縮合することで、シリコン酸化物粒子やシリコン酸化物膜ができる。
そして、本実施形態では、反応液に触媒としてアルカリを用いており、アルカリ触媒を用いたシリコンアルコキシドの加水分解反応、重縮合反応を利用して、シラノールがサーミスタ素体表面の終端酸素(−O)や水酸基(−OH)を起点に連続的に反応することによって、密着性が高く、角部や凹凸にも均一な厚さの保護膜20が得られる。
より詳しくは、アルカリ触媒によるシリコンアルコキシドの加水分解反応、重縮合反応によって、例えば1〜2nm程度のシリコン酸化物超微粒子ができる。この超微粒子はしっかりとした固体表面になっておらず、表面電位(ゼータ電位)が低い状態にあるため、粒子同士の反発が小さく、凝集しやすい状態のため、ファンデルワールス力によって超微粒子どうしが凝集して数100nm程度のSiO粒子が生成する。SiO粒子が成長すると粒子表面がSiOと見なせる表面状態近づくことで、粒子同士の凝集は起こらなくなり、1〜2nm程度の超微粒子が消費されると粒子の成長が停止する。こうしたSiO粒子の生成と同様の機構で本発明のSiO保護膜も生成していると考えられ、50nm以上1000nm以下の均一な厚みの保護膜20が生成される。
また、反応液にアルカリ金属を含むことにより、保護膜形成工程S02で形成される保護膜20とサーミスタ素体11との界面Gに、アルカリ金属、例えばNa,Kが偏在するようになる。こうしたアルカリ金属によって生じる反応液中のアルカリ金属イオンは、サーミスタ素体11及び、シリコンアルコキシドの加水分解反応、重縮合反応によって生じたシリコン酸化物超微粒子やサーミスタ素体11の表面へ吸着して、ゼータ電位を下げる。
粒子のゼータ電位が低下すると、粒子が凝集しやすくなるため、保護膜20とサーミスタ素体11との界面Gにアルカリ金属が偏在することで、界面Gでの粒子の成長が促進され、結果として保護膜20とサーミスタ素体11との密着性が高められる。これにより、サーミスタ素体11と隙間なく密着して、剥離が生じにくい保護膜20を形成することができる。
本実施形態では、保護膜20とサーミスタ素体11との界面Gにアルカリ金属が偏在の度合いとして、エネルギー分散型X線分光分析装置を用いて、界面Gに垂直な方向の線分析によって得られた、界面Gを含む領域におけるアルカリ金属の検出量(原子%)を全金属の検出量(原子%)で除算したアルカリ金属の存在比の最大値が0.03以上であり、かつ、この最大値を保護膜20のアルカリ金属の存在比の平均値で除算した値が1.5以上であることが挙げられる。
こうした条件を満たすように界面Gにアルカリ金属を偏在させることにより、界面Gでの粒子の成長を効率的に促進させて、サーミスタ素体11と隙間なく密着した、剥離が生じにくい保護膜20を形成することができる。
(電極部形成工程S03)
次に、サーミスタ素体11の両端部に電極部13を形成する。なお、サーミスタ素体11の両端面には保護膜20を形成せず、サーミスタ素体11に直接接触するように、電極部13を形成することになる。
本実施形態では、金属ペースト、例えばAg粒子を含むAgペーストをサーミスタ素体11の両端部に塗布して焼成することにより、Agの焼成体からなる電極部13を形成している。また、Agペーストの焼成体の上に、さらに、Snめっき膜及び/又はNiめっき膜を成膜してもよい。
ここで、上述のように、Agペーストの焼成時には、例えば700℃以上900℃以下の温度範囲にまで加熱されるため、保護膜20が成膜されたサーミスタ素体11についても、上述の温度範囲で加熱されることになる。このため、保護膜20には、上述の温度にまで加熱した場合であっても、サーミスタ素体11から剥離しないように、十分な密着性が必要となる。
本実施形態では、保護膜20とサーミスタ素体11との界面Gにアルカリ金属が偏在することで、保護膜20とサーミスタ素体11との密着性が高められるので、電極部形成工程S03において、例えば700℃以上900℃以下の温度範囲にまで加熱されても、サーミスタ素体11から保護膜20が剥離することがない。
以上の工程を経て、本実施形態であるサーミスタ10が製造されることになる。
以上、本発明の一実施形態を説明したが、この実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。この実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれると同様に、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれるものである。
例えば、本実施形態では、サーミスタ材料からなる板材を短冊状に切断してサーミスタ素体を得た後に、このサーミスタ素体を反応液に浸漬して保護膜を成膜するものとして説明したが、これに限定されることはなく、サーミスタ材料からなる板材を反応液に浸漬して保護膜を成膜し、その後、短冊状に切断することで、保護膜が成膜されたサーミスタ素体を得てもよい。
また、サーミスタ素体が角柱状をなすものとして説明したが、これに限定されることはなく、円柱状や平板状を成していてもよい。
さらに、電極部の構造は、本実施形態に記載したものに限定されることはなく、その他の構造であってもよい。
本発明の有効性を確認するために行った確認実験について説明する。
(本発明例1)
保護膜を成膜する基体として、0.18mm×0.18mm×38mmの角柱状をなすサーミスタ素体を準備した。そして、ラボランスクリュー管瓶No.5(容積20mL)に、イオン交換水3.0g、99%メタノール変性アルコール(エタノール 89.84%、メタノール 10.16%、ビトレックス 10ppm:今津薬品工業株式会社製)7.0g、シリコンアルコキシドとしてテトラエトキシシラン(多摩化学株式会社製)0.25g、触媒であるアルカリおよびアルカリ金属源として0.2モル/リットルNaOH0.2gを入れて反応液とした。
そして、この反応液に上述した形状のサーミスタ素体を加えて攪拌、混合した。その後、40℃のウォーターバス中で30分間加温して、加水分解反応、重縮合反応を促進させた。反応終了後、サーミスタ素体を取り出し、イオン交換水で洗浄、乾燥させた。保護膜の膜厚が200nmに成長するまでこの操作を繰り返したのち、大気中で700℃10分間の熱処理を行った。
このようにした得られた本発明例1のサーミスタ(電極形成前)のサンプルのクラックの発生状況を光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した。図4に本発明例1の光学顕微鏡観察像を、また図5にSEM観察像をそれぞれ示す。
クラックの観察は、保護膜付きサーミスタ表面をカーボン蒸着により帯電防止コーティングを施し、電界放出型走査電子顕微鏡(SU8000:日立ハイテクノロジーズ株式会社製)を用いて加速電圧5kV、5000倍でサーミスタの端から20μmを除いた中央部分で長辺方向に5等分した各領域の中心のSiO保護膜の表面における5点の観察を行い、クラック長5μm以上のクラックが1視野当たり1か所以下である場合をクラックなしとした。
なお、図4において3本の線状の部分がSiO保護膜であり、図5はこのSiO保護膜の部分のSEM像である。図5における白い点状のものはコンタミネーション(SiO粒子)でありクラックなどではない。図4、図5に示すように、本発明例1のサーミスタの保護膜には、クラック等の損傷は見られず、傷のない平滑な保護膜が形成されていることが確認できた。
次に、集束イオンビーム加工観察装置(SMI3050TB:SIIナノテクノロジーズ株式会社製)を用いて、本発明例1のサーミスタの表面から厚さ80〜100nmに薄片化したTEM観察用サンプルを作製し、透過型電子顕微鏡(TitanG2:FEI株式会社製)によって観察を行った。観察条件は加速電圧200kV、プローブ径0.1nmとし、16万倍で観察したHAADF像、元素マッピングの結果、およびLine分析の結果について、熱処理前のものを図6、熱処理後のものを図7にそれぞれ示す。
図6、図7に示す結果によれば、サーミスタ素体とSiO保護膜との界面を含む領域、例えば界面の近傍の保護膜側に、触媒として用いたアルカリ金属のNaが偏在していることが確認できた。なお、Line分析は倍率16万倍として、512×512ピクセルの解像度で、1フレーム1.7sにて985回積算した組成マッピングの結果から、スペクトルをピクセル毎にライン状に抽出したものである。
次に、本発明例1の熱処理後のサーミスタをダイシングシートに貼り付け、0.365mmに切断し、切断した両端面にAgペースト(ハイメックDP4000系:ナミックス株式会社製)を塗布し、750℃で焼き付けることで下地電極を形成した。その後、スルファミン酸系の酸性のめっき液を用いたバレルめっきによりNiめっき膜を形成した上に、さらにSnめっき膜を形成したところ、図4、5に示すように保護膜の剥離やクラックがないため、めっきによるサーミスタ素体の浸食なくチップサーミスタを製造することができた。
(本発明例2)
触媒としてのアルカリおよびアルカリ金属源として、KOHを用いた以外は、本発明例1と同様の条件である。その結果、本発明例1と同様に、サーミスタ素体とSiO保護膜との界面に、触媒として用いたアルカリ金属のKが偏在しており、保護膜の剥離やクラックは見られず、めっきによるサーミスタ素体の浸食なくチップサーミスタを製造することができた。
(本発明例3)
サーミスタ基体として、0.18mm×0.18mm×38mmの角柱状をなすサーミスタ素体を準備した。そして、ラボランスクリュー管瓶No.5(容積20mL)に、2−プロパノール(東京化成工業株式会社製)5.6g、シリコンアルコキシド(シリケート40:多摩化学株式会社製)0.30g、触媒となるアルカリとして濃度25wt%アンモニア水3.2gにアルカリ金属源としてKCl2.5mgを溶解させたものを入れて、反応液とした。
そして、この反応液に上述した形状のサーミスタ素体を加えて攪拌、混合した。その後、40℃のウォーターバス中で30分間加温、反応させた。反応終了後、サーミスタ素体を取り出し、イオン交換水で洗浄、乾燥させた。膜厚が約200nmに成長するまでこの操作を繰り返したのち、大気中で700℃10分間の熱処理を行った。
このようにした得られた本発明例3のサーミスタ(電極形成前)のサンプルのクラックの発生状況を、本発明例1と同様に光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した。その結果、SiO保護膜にクラックや剥離は観察されなかった。
次に、本発明例1と同様に、集束イオンビーム加工観察装置を用いてTEM観察用サンプルを作製し、透過型電子顕微鏡によって観察を行った。観察条件は加速電圧200kV、プローブ径0.1nmとし、16万倍で観察したHAADF像、元素マッピングの結果、およびLine分析の結果について、熱処理前のものを図8、熱処理後のものを図9にそれぞれ示す。
次に、本発明例3の熱処理後のサーミスタをダイシングシートに貼り付け、0.365mmに切断し、切断した両端面にAgペースト(ANP−1:日本スペリア株式会社製)を塗布し、乾燥後に大気中で300℃で60分焼き付けることで下地電極を形成した。
図8、図9に示す結果によれば、触媒となるアルカリおよびアルカリ金属源として、アンモニア水にKClを溶解したものに変えた場合であっても、サーミスタ素体とSiO保護膜との界面を含む領域に、触媒として用いたアルカリ金属のKが偏在していることが確認できた。この本発明例3であっても、保護膜の剥離やクラックは見られず、めっきによるサーミスタ素体の浸食なくチップサーミスタを製造することができた。
(本発明例4)
保護膜を成膜する基体として、0.18mm×0.18mm×38mmの角柱状をなすサーミスタ素体を準備した。そして、ラボランスクリュー管瓶No.5(容積20mL)に、イオン交換水2.9g、99%メタノール変性アルコール(エタノール 89.84%、メタノール 10.16%、ビトレックス 10ppm:今津薬品工業株式会社製)5.6gにアルカリ金属源としてNaCl2.5mgを溶解させ、更にシリコンアルコキシドとしてテトラエトキシシラン(多摩化学株式会社製)0.30g、触媒であるアルカリとして無水エチレンジアミン0.3gを入れて反応液とした。
そして、この反応液に上述した形状のサーミスタ素体を加えて攪拌、混合した。その後、40℃のウォーターバス中で30分間加温して、加水分解反応、重縮合反応を促進させた。反応終了後、サーミスタ素体を取り出し、イオン交換水で洗浄、乾燥させた。保護膜の膜厚が200nmに成長するまでこの操作を繰り返したのち、大気中で700℃10分間の熱処理を行った。
その結果、サーミスタ素体とSiO保護膜との界面に、アルカリ金属のNaが偏在していることが確認できた。この本発明例4であっても、保護膜の剥離やクラックは見られず、めっきによるサーミスタ素体の浸食なくチップサーミスタを製造することができた。
(本発明例5)
サーミスタ素体に形成するSiO保護膜の膜厚を50nmとした以外、本発明例1と同様の条件で実施した。その結果、本発明例1と同様、サーミスタ素体とSiO保護膜の界面にアルカリ金属のNaが偏在していることが確認できた。この本発明例5であっても、保護膜の剥離やクラックは見られず、めっきによるサーミスタ素体の浸食なくチップサーミスタを製造することができた。
(本発明例6)
サーミスタ素体に形成するSiO保護膜の膜厚を580nmとした以外、本発明例1と同様の条件で実施した。その結果、本発明例1と同様、サーミスタ素体とSiO保護膜の界面にアルカリ金属のNaが偏在していることが確認できた。この本発明例6であっても、保護膜の剥離やクラックは見られず、めっきによるサーミスタ素体の浸食なくチップサーミスタを製造することができた。
(本発明例7)
サーミスタ素体に形成するSiO保護膜の膜厚を960nmとした以外、本発明例1と同様の条件で実施した。その結果、本発明例1と同様、サーミスタ素体とSiO保護膜の界面にアルカリ金属のNaが偏在していることが確認できた。この本発明例7であっても、保護膜の剥離やクラックは見られず、めっきによるサーミスタ素体の浸食なくチップサーミスタを製造することができた。
(比較例1)
保護膜を成膜する基体として、0.18mm×0.18mm×38mmの角柱状をなすサーミスタ素体を準備した。そして、ラボランスクリュー管瓶No.5(容積20mL)に、99%メタノール変性アルコール(エタノール 89.84%、メタノール 10.16%、ビトレックス 10ppm:今津薬品工業株式会社製)5.6g、シリコンアルコキシドとしてテトラエトキシシラン(多摩化学株式会社製)0.30g、触媒として濃度25wt%アンモニア水3.2gを入れて反応液とした。
そして、この反応液に上述した形状のサーミスタ素体を加えて攪拌、混合した。その後、40℃のウォーターバス中で30分間加温して、加水分解反応、重縮合反応を促進させた。反応終了後、サーミスタ素体を取り出し、イオン交換水で洗浄、乾燥させた。保護膜の膜厚が200nmに成長するまでこの操作を繰り返したのち、大気中で700℃10分間の熱処理を行った。
このようにした得られた比較例1のサーミスタ(電極形成前)のサンプルのクラックの発生状況を光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した。図10に比較例1の光学顕微鏡観察像を示す。
図10によれば、比較例1のSiO保護膜の全面にクラックが生じており、めっきによってサーミスタ素体が浸食され、チップサーミスタを製造することができなかった。また、反応液中にアルカリ金属源を含まないので、TEM−EDSによるLine分析から、サーミスタ素体と保護膜との界面にアルカリ金属の偏在は見られなかった。
(比較例2)
保護膜を成膜する基体として、0.18mm×0.18mm×38mmの角柱状をなすサーミスタ素体を準備した。そして、ラボランスクリュー管瓶No.5(容積20mL)に、イオン交換水2.4g、99%メタノール変性アルコール(エタノール 89.84%、メタノール 10.16%、ビトレックス 10ppm:今津薬品工業株式会社製)5.6g、シリコンアルコキシドとしてテトラエトキシシラン(多摩化学株式会社製)0.30g、触媒としてエチレンジアミンを0.3gを入れて反応液とした。
そして、この反応液に上述した形状のサーミスタ素体を加えて攪拌、混合した。その後、40℃のウォーターバス中で30分間加温して、加水分解反応、重縮合反応を促進させた。反応終了後、サーミスタ素体を取り出し、イオン交換水で洗浄、乾燥させた。保護膜の膜厚が200nmに成長するまでこの操作を繰り返したのち、大気中で700℃10分間の熱処理を行った。
このようにした得られた比較例2のサーミスタ(電極形成前)のサンプルのクラックの発生状況を光学顕微鏡および電子顕微鏡で観察した。図11に比較例2のSEM観察像を示す。
クラックの観察は、サーミスタ表面をカーボン蒸着により帯電防止コーティングを施し、電界放出型走査電子顕微鏡(SU8000:日立ハイテクノロジーズ株式会社製)を用いて加速電圧5kV、5000倍でサーミスタの端から20μmを除いた中央部分で長辺方向に5等分した各領域の中心のSiO保護膜の表面における5点の観察を行い、クラック長5μm以上のクラックが1視野当たり1か所以下である場合をクラックなしとした。
その結果、光学顕微鏡像からはクラックは確認されなかったが、図11に示すように、SEM観察像ではSiO保護膜の全面にクラックが生じており、めっきによってサーミスタ素体が浸食され、チップサーミスタを製造することができなかった。また、TEM−EDSによるLine分析から、サーミスタ素体とSiO保護膜との界面にサーミスタ素体の切断加工時の切削水由来と考えられる少量のNaが検出されたが、反応液にアルカリ金属源は含まないので、界面でのアルカリ金属の偏在は殆ど見られなかった。
(比較例3)
保護膜の膜厚を30nmとした以外、本発明例1と同様の条件とした。その結果、本発明例1と同様にサーミスタ素体とSiO保護膜との界面に触媒として用いたアルカリ金属のNaが偏在しており、保護膜の剥離やクラックは見られなかったが、保護膜の膜厚が30nmと薄いために、保護膜にピンホールが散見され、めっきによってサーミスタ素体が浸食され、チップサーミスタを製造することができなかった。
(比較例4)
保護膜の膜厚を1150nmとした以外、本発明例1と同様の条件とした。その結果、本発明例1と同様にサーミスタ素体とSiO保護膜との界面に触媒として用いたアルカリ金属のNaが偏在していたが、保護膜の膜厚が1150nmと厚いことによって、サーミスタ素体と保護膜との熱膨張係数差が大きくなり、こうした熱膨張係数差に起因するクラックが生じており、めっきによってサーミスタ素体が浸食され、チップサーミスタを製造することができなかった。
以上の様な本発明例1〜7および比較例1〜4における反応液の条件、クラックの判定結果、アルカリ金属の偏在状況を、表1に纏めて示す。なお、表1のアルカリ金属の原子割合は、Line分析の結果を元に5点移動平均を用いている。また、保護膜の判定結果は、クラックが無いものを「可」、クラック、ピンホールがあるものを「不可」とした。
表1に示す確認実験の結果によれば、本発明例1〜7では、サーミスタ素体とSiO保護膜との界面を含む領域へのアルカリ金属の偏在を示す、アルカリ金属の検出量(原子%)を全金属の検出量(原子%)で除算したアルカリ金属の存在比の最大値が最も低いものでも0.08(本発明例4)であり、この最大値を保護膜のアルカリ金属の存在比の平均値で除算した値が最も低いものでも1.6(本発明例1、本発明例5)であった。これにより、本発明例1〜7では、サーミスタ素体とSiO保護膜との界面を含む領域にアルカリ金属(Na,K)が偏在することが確認された。そして、本発明例1〜7では、こうしたアルカリ金属の界面を含む領域への偏在によって、保護膜の剥離の原因となるクラックが見られず、サーミスタ素体への保護膜の高い密着性が確認できた。
一方、比較例1および比較例2では、保護膜形成時の反応液にアルカリ金属化合物を含まないため、界面を含む領域におけるアルカリ金属の存在比の最大値が比較例1で0.020、比較例2で0.025と低く(サーミスタ素体の切断加工時の切削水由来と考えられる)、保護膜にクラックが生じている。これは、サーミスタ素体とSiO保護膜との界面でのアルカリ金属の濃度が低いために、保護膜の粒子の成長が促進されず、結果としてクラックが生じてしまったものと考えられる。よって、比較例1および比較例2では、クラックによる保護膜の剥離が生じやすいことが分かった。
また、比較例3では、保護膜の膜厚が30nmと薄いために、サーミスタ素体がSiO保護膜で完全に覆われず、複数のピンホールが生じてしまっている。こうしたピンホールによって電気部形成時にめっき液がサーミスタ素体に浸入してサーミスタ素体が浸食されるため、比較例3では保護膜付きサーミスタを製造することができないことが分かった。さらに、比較例4では、保護膜の膜厚が1150nmと厚すぎるために、サーミスタ素体と保護膜との熱膨張係数差によってクラックが生じており、こうしたクラックによって電気部形成時にめっき液がサーミスタ素体に浸入してサーミスタ素体が浸食されるため、比較例4では保護膜付きサーミスタを製造することができないことが分かった。
以上の結果から、SiO膜からなる保護膜の膜厚を50nm以上1000nm以下の範囲にして、サーミスタ素体と保護膜との界面にアルカリ金属を偏在させることによって、剥離の原因となるクラックがない保護膜を備えた保護膜付きサーミスタが得られることが確認された。
10…サーミスタ
11…サーミスタ素体
13…電極部
20…保護膜

Claims (4)

  1. サーミスタ素体と、膜厚が50nm以上1000nm以下の範囲のSiO膜からなり前記サーミスタ素体に接して形成される保護膜と、電極部と、を有し、
    前記サーミスタ素体と前記保護膜との界面を含む領域には、アルカリ金属が偏在していることを特徴とする保護膜付きサーミスタ。
  2. エネルギー分散型X線分光分析装置を用いて、前記界面に垂直な方向の線分析によって得られた、前記界面を含む領域における前記アルカリ金属の検出量(原子%)を全金属の検出量(原子%)で除算したアルカリ金属の存在比の最大値が0.03以上であり、かつ、前記最大値を前記保護膜のアルカリ金属の存在比の平均値で除算した値が1.5以上であることを特徴とする請求項1に記載の保護膜付きサーミスタ。
  3. 請求項1または2に記載された保護膜付きサーミスタの製造方法であって、
    シリコンアルコキシドとアルカリ金属と水と有機溶媒とアルカリとを含む反応液に、前記サーミスタ素体を浸漬し、前記シリコンアルコキシドの加水分解反応及び重縮合反応によって前記サーミスタ素体の表面にSiOを析出させることにより、前記保護膜を成膜する保護膜形成工程を備えていることを特徴とする保護膜付きサーミスタの製造方法。
  4. 前記保護膜形成工程の後工程であって、前記サーミスタ素体の両端面に金属ペーストを塗布して焼成することにより、前記電極部を形成する電極部形成工程を備えていることを特徴とする請求項3に記載の保護膜付きサーミスタの製造方法。
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