[第1実施形態]
本発明に係る第1実施形態のスクリーン印刷版およびスクリーン印刷版の製造方法を図1〜図7を参照して以下に説明する。
図1に示すように、第1実施形態のスクリーン印刷版11は、金属製で高剛性の四角枠状の版枠材12と、緊張状態で版枠材12に貼り付けられて固定される金属製のスクリーンメッシュ被覆体13とを有している。版枠材12とスクリーンメッシュ被覆体13とが支持体14を構成している。スクリーン印刷版11は、支持体14に支持される金属膜15を有している。金属膜15は、スクリーンメッシュ被覆体13の版枠材12から離れた内側範囲に形成されている。
図2に示すように、スクリーンメッシュ被覆体13は、金属製のスクリーンメッシュ17と、スクリーンメッシュ17を被覆するメッキ皮膜18とを有している。スクリーンメッシュ17は、断面が円形状の金属製の線材19を縦横で交差して織ることにより形成された織物である。スクリーンメッシュ被覆体13は、そのスクリーンメッシュ17において緊張状態で図1に示す版枠材12に貼り付けられて固定される。図2に示すように、スクリーンメッシュ被覆体13は、そのスクリーンメッシュ17が、金属膜15を支持している。金属膜15は、メッキ処理により形成されるメッキ膜である。金属膜15は、その厚さ方向の一側に偏った位置がスクリーンメッシュ17に支持されている。
スクリーンメッシュ17のうち、スクリーンメッシュ17が広がる面方向において金属膜15と位置が重なり合う部分が、メッシュ金属膜重なり部20となっている。メッシュ金属膜重なり部20は、金属膜15に埋設されている。メッシュ金属膜重なり部20および金属膜15が、インクの通過を規制する版膜部21となっている。版膜部21は、金属膜15およびスクリーンメッシュ17の両方を含んでいる。
金属膜15で囲まれた空間部分がインク通過空間24であり、スクリーンメッシュ17のうち、スクリーンメッシュ17が広がる面方向においてインク通過空間24と位置が重なり合う部分がメッシュ透過重なり部25となっている。言い換えれば、メッシュ透過重なり部25は、インク通過空間24内に配置されている。メッシュ透過重なり部25は、メッキ皮膜18で被覆されている。
スクリーンメッシュ17とメッキ皮膜18とで構成されるスクリーンメッシュ被覆体13のうち、スクリーンメッシュ17が広がる面方向においてインク通過空間24と位置が重なり合う部分が、被覆体透過重なり部26となっている。言い換えれば、被覆体透過重なり部26は、インク通過空間24内に配置されており、スクリーンメッシュ17のメッシュ透過重なり部25と、メッシュ透過重なり部25を覆うメッキ皮膜18とで構成されている。
版膜部21と、インク通過空間24と、スクリーンメッシュ被覆体13の被覆体透過重なり部26とが、被印刷物に画像を形成する画像形成部27を構成している。画像形成部27のスキージ側の表面は、金属膜15のスキージ側の表面と、スクリーンメッシュ被覆体13の被覆体透過重なり部26のスキージ側の表面とからなっており、すべてメッキされた金属からなっている。スクリーンメッシュ被覆体13は、図1に示すように、画像形成部27よりも外側であって画像形成部27と版枠材12との間に配置される部分が支持部28となっている。スクリーンメッシュ被覆体13を構成する図2に示すスクリーンメッシュ17は、図1に示す版枠材12に貼り付けられる部分と、支持部28内に含まれる部分と、図2に示すメッシュ金属膜重なり部20と、メッシュ透過重なり部25とからなっている。
スクリーンメッシュ17は、金属膜15に、金属膜15の厚さ方向一側に偏って埋設されている。版膜部21の厚さ方向においてスクリーンメッシュ17に近い側の表面を表面21aとし、スクリーンメッシュ17から遠い側の表面を裏面21bとする。表面21aと裏面21bとは略平行をなしている。表面21aは、印刷時にペースト状のインクを刷り込むスキージ側に配置されるスキージ面であり、裏面21bは、印刷時に被印刷物に接触する印刷面である。
図3に示すように、スクリーンメッシュ17は、四方を線材19で囲んでオープニング31を形成しており、オープニング31は、スクリーンメッシュ17を厚さ方向に貫通している。金属膜15は、スクリーンメッシュ17のメッシュ金属膜重なり部20のオープニング31内に入り込んでいる。一方で、金属膜15は、スクリーンメッシュ17のメッシュ透過重なり部25のオープニング31内には入り込んでいない。金属膜15がスクリーンメッシュ17のメッシュ金属膜重なり部20のオープニング31内に入り込むことで、スクリーンメッシュ17と金属膜15とは一体化している。メッシュ透過重なり部25は、メッキ皮膜18で被覆されて被覆体透過重なり部26を構成している。被覆体透過重なり部26内には、オープニング31よりも一回り小さいオープニング32がメッキ皮膜18によって形成されている。オープニング32も被覆体透過重なり部26を厚さ方向に貫通している。
金属膜15は、スクリーンメッシュ17のメッシュ金属膜重なり部20のオープニング31内に入り込んでいる部分が、スクリーンメッシュ17のメッシュ金属膜重なり部20を覆って形成されたメッキ膜部33となっている。メッキ膜部33には、被覆体透過重なり部26内のオープニング32よりも一回り小さい凹部34がスキージ側から被印刷物側に凹んで形成されている。なお、凹部34は形成されていなくても良い。金属膜15は、メッキ膜部33を含んで同一の金属で形成されている。メッキ皮膜18も、金属膜15と同一の金属で形成されている。なお、メッキ膜部33と、金属膜15のメッキ膜部33以外の部分とを異なる金属で形成しても良い。また、メッキ膜部33とメッキ皮膜18とを異なる金属で形成しても良い。さらに、メッキ皮膜18と、金属膜15のメッキ膜部33以外の部分とを異なる金属で形成しても良い。
図4に示すように、スクリーンメッシュ17のメッシュ金属膜重なり部20のオープニング31内に形成されたメッキ膜部33の被覆の厚さT1は、スクリーンメッシュ17のメッシュ透過重なり部25のオープニング31内に形成されたメッキ皮膜18の被覆の厚さT2よりも厚い。厚さT1,T2は、スクリーンメッシュ17を構成する線材19の径方向における線材19の外周面からの厚さである。厚さT1は、線材19の外周面から最も近い凹部34の内壁面までの厚さであり、厚さT2は、線材19の外周面からメッキ皮膜18の外周面までの厚さである。
図2に示すように、メッシュ金属膜重なり部20にこれを覆って形成されたメッキ膜部33と、メッシュ透過重なり部25にこれを覆って形成されたメッキ皮膜18とは、スキージ側の先端部の高さ位置を揃えている。言い換えれば、メッキ膜部33は、スキージ側の先端面33aが、メッシュ透過重なり部25にこれを覆って形成されたメッキ皮膜18の、スキージ側の先端部と面一となっている。
ここで、メッシュ金属膜重なり部20に形成されたメッキ膜部33と、メッシュ透過重なり部25に形成されたメッキ皮膜18とのうち、少なくともメッキ膜部33のスキージ側の先端部が平面研磨されている。そして、この平面研磨は、メッシュ金属膜重なり部20に形成されたメッキ膜部33と、メッシュ透過重なり部25に形成されたメッキ皮膜18との、スキージ側の先端部の高さ位置を揃えるように行われる。よって、メッキ膜部33のスキージ側の先端面33aは平面であり、研磨面である。
メッキ膜部33の先端面33aは、版膜部21の表面21aを構成している。版膜部21の表面21aは、画像形成部27の表面を構成しており、版膜部21の裏面21bは、画像形成部27の裏面を構成している。金属膜15におけるインク通過空間24との境界の内壁面15aは、インク通過空間24を囲む壁面となっている。版膜部21は、画像形成部27においてインクの通過を規制する部分であって、インクの通過が不可となっている。
インク通過空間24は、版膜部21を、厚さ方向において表面21a側から裏面21b側に貫通しており、画像形成部27において、インクの通過を許容する部分である。言い換えれば、インク通過空間24は、インクの通過が可能となっている。インク通過空間24は、金属膜15の内壁面15aに囲まれて形成されており、被印刷物に印刷される画像パターンに応じた形状、具体的には画像パターンと同様の形状に形成されている。
以上により、スクリーン印刷版11は、スクリーンメッシュ17と金属膜15とを一体化してなるもので、金属膜15に囲まれて画像パターンに応じた形状のインク通過空間24が形成されている。スクリーンメッシュ17は、これが広がる面方向において金属膜15と位置が重なり合う部分が、メッシュ金属膜重なり部20となっている。スクリーンメッシュ17は、これが広がる面方向において、インク通過空間24と位置が重なり合う部分がメッシュ透過重なり部25となっている。スクリーンメッシュ17は、これが広がる面方向において、金属膜15と位置が重なり合うとともにインク通過空間24とも位置が重なり合う。スクリーンメッシュ17には、メッシュ透過重なり部25にメッキ皮膜18が全面的に形成されている。
このようなスクリーン印刷版11に、スキージで、版膜部21の表面21a側に置かれたインクが画像形成部27に摺り込まれる。すると、インクが、版膜部21ではスキージ側の表面21aから裏面21bへの通過が規制された状態で、インク通過空間24を表面21a側から裏面21b側に通過する。その際に、インクは、インク通過空間24への導入直後にスクリーンメッシュ被覆体13の被覆体透過重なり部26で分流された後、被覆体透過重なり部26を通過後にインク通過空間24内で合流して、版膜部21のスキージとは反対側の裏面21bに配置された被印刷物に、インク通過空間24の形状を転写した画像パターンとなって印刷される。
次に、第1実施形態のスクリーン印刷版11の製造方法について工程順に説明する。
まず、図5(a)に示すように、感光性樹脂材料からなるドライフィルム101の一面側にステンレス鋼等の導電板102を熱圧着する準備工程を行う。次に、図5(b)に示すように、ドライフィルム101の導電板102とは反対側にフォトマスク105を配置してドライフィルム101を導電板102とは反対側から露光する第1露光工程を行う。この第1露光工程を行うことにより、フォトマスク105の透光部106でドライフィルム101にパターン107を硬化形成する。
そして、ドライフィルム101を現像する第1除去工程を行うことにより、図5(c)に示すように、感光性樹脂材料のうち硬化した感光性樹脂材料からなるパターン107のみを導電板102上に残す。次に、図5(d)に示すように、導電板102を電極としてニッケル等のメッキ処理を行う第1メッキ工程を行う。この第1メッキ工程では、パターン107を囲むように金属膜15Aを、最終的な版膜部21の膜厚よりも所定位置低い高さとなるように、導電板102上に形成する。金属膜15Aの導電板102に接触する面が、上記した裏面21bとなる。金属膜15Aは、パターン107の周囲の形状になる。言い換えれば、金属膜15Aは、パターン107を反転した形状になる。
次に、感光性樹脂材料のパターン107の金属膜15Aからの突出部分を平面研磨して、図6(a)に示すように除去する第1研磨工程を行う。第1研磨工程では、パターン107および金属膜15Aの導電板102とは反対側の面を面一とする。次に、図6(b)に示すように、金属のスクリーンメッシュ17をパターン107および金属膜15Aの導電板102とは反対側の面に密着させてメッキ処理を行う第2メッキ工程を行う。この第2メッキ工程によって、図6(c)に示すように、スクリーンメッシュ17と金属膜15Aとを、金属膜15Aと同じ金属のメッキ皮膜18Aで一体化して、スクリーンメッシュ17をメッキ皮膜18Aで被覆してなるスクリーンメッシュ被覆体13Aを有する中間体11Aを形成する。スクリーンメッシュ17は、導電性の金属材料からなっており、例えば、ステンレス鋼からなっている。ステンレス鋼にかえてタングステン合金を用いても良い。なお、第2メッキ工程において、スクリーンメッシュ17と金属膜15Aとを、金属膜15Aとは異なる金属のメッキ皮膜18Aで一体化して中間体11Aを形成しても良い。
次に、導電板102およびパターン107を除去する第2除去工程を行う。これにより、感光性樹脂材料からなるパターン107を除去した部分が、金属膜15Aの 内壁面15Aaに囲まれた、画像パターンに応じたインク通過空間24Aとなる。ここでは、金属膜15Aからの導電板102の剥離を容易とするために、導電板102をステンレス鋼板とし、金属膜15Aをニッケルとして、メッキ時の密着を抑制するようにしている。
中間体11Aにおいて、スクリーンメッシュ被覆体13Aのうち、これが広がる面方向において、金属膜15Aと位置が重なり合う部分が被覆体金属膜重なり部131となっている。また、スクリーンメッシュ被覆体13Aのうち、これが広がる面方向において、インク通過空間24Aと位置が重なり合う部分が、上記した被覆体透過重なり部26となる。スクリーンメッシュ17のうち、これが広がる面方向において、金属膜15Aと位置が重なり合う部分が上記したメッシュ金属膜重なり部20となり、インク通過空間24Aに位置が重なり合う部分が、上記したメッシュ透過重なり部25となる。中間体11Aにおいては、金属膜15Aの裏面21b側が被印刷物側となり、スクリーンメッシュ被覆体13A側がスキージ側となる。
以上の第2メッキ工程と第2除去工程とが、画像パターンに応じたインク通過空間24Aを囲んで形成する金属膜15Aとスクリーンメッシュ17とをメッキ皮膜18Aで一体化する一体化メッキ工程となっている。一体化メッキ工程によって、スクリーンメッシュ17をメッキ皮膜18Aで被覆してなるスクリーンメッシュ被覆体13Aを有する中間体11Aを形成する。スクリーンメッシュ17は、図3に示すオープニング31内もメッキ皮膜18Aで被覆されることになる。メッキ皮膜18Aは、スクリーンメッシュ17のうちのメッシュ透過重なり部25を被覆する部分がメッキ皮膜18となる。スクリーンメッシュ被覆体13Aは、オープニング31を被覆したメッキ皮膜18Aの内側に図3に示すオープニング32を有している。スクリーンメッシュ17は、一体化メッキ工程によってオープニング31がメッキ皮膜18Aで閉塞されることはない。
次に、図7(a)に示すように、中間体11Aに感光性樹脂材料121(感光性材料)を塗布する塗布工程を行う。その際に、インク通過空間24Aと、金属膜15Aの裏面21b側すなわち被印刷物側と、金属膜15Aおよびスクリーンメッシュ被覆体13Aのスキージ側とに感光性樹脂材料121を塗布する。このとき、スクリーンメッシュ被覆体13Aには、その厚さ方向に貫通する図3に示すオープニング32内にも感光性樹脂材料121が塗布される。スクリーンメッシュ被覆体13Aのうち、その広がる面方向において、金属膜15Aに重なり合う被覆体金属膜重なり部131にあるオープニング32およびインク通過空間24Aに重なり合う被覆体透過重なり部26にあるオープニング32は、全て感光性樹脂材料121で閉塞される。
図7(a)に示すように、感光性樹脂材料121が塗布された中間体11Aに、金属膜15Aの裏面21b側すなわち被印刷物側から露光する第2露光工程を行う。この第2露光工程を行うことにより、中間体11Aの裏面21b側と、インク通過空間24Aと、インク通過空間24Aのスキージ側への延長上とに、露光されて硬化した図7(b)に示す感光性材料層123が形成される。
次に、感光性樹脂材料121を現像する第3除去工程(被覆工程)を行う。これにより、感光性樹脂材料121のうち、図7(b)に示すように硬化した感光性材料層123のみを残し、他の未硬化の感光性樹脂材料121を除去する。感光性材料層123は、金属膜15Aの裏面21bを覆う裏面被覆部125と、インク通過空間24Aを埋めるとともにその延長上に延びるパターン126とを有する。第3除去工程後の、スクリーンメッシュ被覆体13Aは、その広がる面方向において、パターン126に位置が重なり合う部分のオープニング32は閉塞されており、パターン126に位置が重なり合わない部分のオープニング32は開口している。スクリーンメッシュ被覆体13Aのパターン126内のオープニング32は、後に、被覆体透過重なり部26のオープニング32になる。
以上の塗布工程と、第2露光工程と、第3除去工程とが、中間体11Aに感光性樹脂材料121を塗布し、感光性樹脂材料121を中間体11Aの被印刷物側から露光して現像することにより、金属膜15Aの被印刷物側と、インク通過空間24Aと、スクリーンメッシュ被覆体13Aのインク通過空間24Aに位置が重なり合う被覆体透過重なり部26とに感光性材料層123を形成する被覆工程となっている。
次に、スクリーンメッシュ17を電極として中間体11Aに、金属膜15Aと同じ金属のメッキ処理を施すことで、金属膜15Aをスキージ側に成長、拡大させて、図7(c)に示すような金属膜15Bとする第3メッキ工程(強化メッキ工程)を行う。第3メッキ工程では、図7(b)に示すように感光性材料層123が形成されていない、スクリーンメッシュ被覆体13Aの被覆体金属膜重なり部131に、図7(c)に示すように金属膜15Bの一部であるメッキ膜部33Bを形成する。第3メッキ工程後の金属膜15Bは、パターン126の周囲の形状になる。言い換えれば、第3メッキ工程では、金属膜15Bを形成することにより、中間体11Aのスキージ側の感光性材料層123以外の部分をメッキ膜である金属膜15Bのメッキ膜部33Bで埋める。なお、第3メッキ工程において、中間体11Aに、金属膜15Aとは異なる金属のメッキ処理を施すことで、メッキ膜部33Bを形成しても良い。
金属膜15Aとメッキ皮膜18Aとが同じ金属である場合、第3メッキ工程において、中間体11Aに、金属膜15Aおよびメッキ皮膜18Aと同じ金属のメッキ処理を施すことで、メッキ膜部33Bを形成しても良い。また、金属膜15Aとメッキ皮膜18Aとが同じ金属である場合、第3メッキ工程において、中間体11Aに、金属膜15Aおよびメッキ皮膜18Aとは異なる金属のメッキ処理を施すことで、メッキ膜部33Bを形成しても良い。金属膜15Aとメッキ皮膜18Aとが異なる金属である場合、第3メッキ工程において、中間体11Aに、これら金属膜15Aおよびメッキ皮膜18Aの両方と異なる金属のメッキ処理を施すことで、メッキ膜部33Bを形成しても良い。また、金属膜15Aとメッキ皮膜18Aとが異なる金属である場合、第3メッキ工程において、中間体11Aに、金属膜15Aと同じ金属のメッキ処理を施すことで、メッキ膜部33Bを形成しても良い。さらに、金属膜15Aとメッキ皮膜18Aとが異なる金属である場合、第3メッキ工程において、中間体11Aに、メッキ皮膜18Aと同じ金属のメッキ処理を施すことで、メッキ膜部33Bを形成しても良い。
この第3メッキ工程によって、メッキ膜である金属膜15Bは、その一部であるメッキ膜部33Bが、図7(b)に示すスクリーンメッシュ被覆体13Aのパターン126に埋設されていない被覆体金属膜重なり部131のオープニング内に入り込む。その際に、メッキ膜部33Bは、メッキが、被覆体金属膜重なり部131にあったメッキ皮膜18Aと一体となり、さらに周囲に拡大することで形成される。これにより、メッキ膜部33Bが、スクリーンメッシュ17の、図7(b)に示す被覆体金属膜重なり部131の位置にあったオープニング31をさらに狭めるように形成される。
この第3メッキ工程においては、図7(b)に示すようにスクリーンメッシュ被覆体13Aのパターン126に埋設されている被覆体透過重なり部26は、パターン126を形成している非導電性の感光性材料で覆われているため、メッキ皮膜が形成されることはなく、そのオープニング32内にもメッキ皮膜が形成されることはない。よって、図3に示すように、被覆体透過重なり部26のオープニング32、言い換えればメッシュ透過重なり部25のオープニング31は、それまでより狭まることはない。ここでは、ニッケルを電解メッキする。ニッケル以外にも、ニッケル合金、銅、クロム、スズ、鉄等をメッキしても良い。
この第3メッキ工程によって、図7(b)に示すスクリーンメッシュ被覆体13Aは、被覆体金属膜重なり部131のメッキ皮膜18Aが金属膜15Bの一部になって、図7(c)に示す最終的なスクリーンメッシュ被覆体13となる。この第3メッキ工程後の金属膜15Bの内壁面15Baに囲まれた部分は、インク通過空間24Bとなる。
次に、感光性材料層123を除去する第4除去工程(除去工程)を行う。第4除去工程では、感光性材料層123を金属膜15Bおよびスクリーンメッシュ被覆体13の被覆体透過重なり部26とから剥がして除去する。この第4除去工程で、感光性材料層123を溶剤等で溶かしてもよい。
次に、上記第3メッキ工程後のメッキ膜部33Bをスキージ側から平面研磨する第2研磨工程(研磨工程)を行う。この第2研磨工程を行うことにより、メッキ膜部33Bが、図2に示すように、スキージ側の先端面33aを被覆体透過重なり部26のスキージ側の先端部と面一としたメッキ膜部33となる。言い換えれば、メッキ膜部33Bが、メッシュ透過重なり部25にこれを覆って形成されたメッキ皮膜18のスキージ側の先端部と面一となってメッキ膜部33となる。また、この第2研磨工程を行うことにより、図7(c)に示す内壁面15Baおよびメッキ膜部33Bを含む金属膜15Bが、図2に示すように内壁面15aおよびメッキ膜部33を含む金属膜15となる。その結果、図7(c)に示すインク通過空間24Bが、図2に示すインク通過空間24になる。なお、この第2研磨工程では、スクリーンメッシュ17を外部に露出させることがない範囲で平面研磨を行う。
このようにして、図2に示すように、スクリーンメッシュ17と金属膜15とを一体化してなり、金属膜15の内壁面15aで囲まれて画像パターンに応じたインク通過空間24が形成されるスクリーン印刷版11が製造される。このスクリーン印刷版11は、図3および図4に示すように、スクリーンメッシュ17の金属膜15と位置が重なり合うメッシュ金属膜重なり部20のオープニング31内に形成されたメッキ膜部33の厚さT1が、スクリーンメッシュ17のインク通過空間24と位置が重なり合うメッシュ透過重なり部25のオープニング31内に形成されたメッキ皮膜18の厚さT2よりも厚くなっている。
以上に述べた第1実施形態のスクリーン印刷版11は、スクリーンメッシュ17の金属膜15と位置が重なり合うメッシュ金属膜重なり部20のオープニング31内に形成されたメッキ膜部33の厚さT1が、スクリーンメッシュ17のインク通過空間24と位置が重なり合うメッシュ透過重なり部25のオープニング31内に形成されたメッキ皮膜18の厚さT2よりも厚い。このため、インク通過空間24でのインクの吐出性低下を抑制しつつ、厚肉のメッキ膜部33によって版膜部21の強度を向上させることができる。その結果、画像形成部27の強度を向上させることができる。
また、スクリーン印刷版11は、金属製のスクリーンメッシュ17とメッキ皮膜18と金属膜15とを有し、金属膜15に囲まれて画像パターンに応じたインク通過空間24が形成されるため、耐溶剤性、寸法安定性、耐久性および印刷面の平滑性に優れる。
また、スクリーン印刷版11は、メッシュ金属膜重なり部20に形成されたメッキ膜部33と、メッシュ透過重なり部25に形成されたメッキ皮膜18とが、スキージ側の先端部の高さ位置を揃えているため、印刷時にスキージを円滑に移動させることができる。よって、スキージの寿命を向上させることができる。
また、メッシュ金属膜重なり部20に形成されたメッキ膜部33のスキージ側の先端部が研磨されて、スキージ側の先端面33aが形成されているため、印刷時にスキージを、より円滑に移動させることができる。よって、スキージの寿命を一層向上させることができる。
第1実施形態のスクリーン印刷版11の製造方法は、第2メッキ工程および第2除去工程からなる一体化メッキ工程によって、図6(c)に示すように、画像パターンに応じたインク通過空間24Aを囲んで形成する金属膜15Aとスクリーンメッシュ17とを、メッキ皮膜18Aで一体化して、スクリーンメッシュ17をメッキ皮膜18Aで被覆してなるスクリーンメッシュ被覆体13Aを有する中間体11Aを形成する。
そして、塗布工程、第2露光工程および第3除去工程からなる被覆工程によって、図7(a)に示すように、中間体11Aに感光性樹脂材料121を塗布し、感光性樹脂材料121を露光して現像することにより、図7(b)に示すように、金属膜15Aの被印刷物側と、インク通過空間24Aと、スクリーンメッシュ被覆体13Aのインク通過空間24Aに位置が重なり合う被覆体透過重なり部26とに、硬化した感光性材料層123を形成する。
次に、感光性材料層123が形成されていない、スクリーンメッシュ被覆体13Aの金属膜15Aと位置が重なり合う被覆体金属膜重なり部131に、第3メッキ工程によって、図7(c)に示すようにメッキ膜部33Bを形成する。すると、感光性材料層123がないメッシュ金属膜重なり部20のオープニング31内のメッキ膜部33Bの厚さは厚くなる一方で、感光性材料層123がある被覆体透過重なり部26のオープニング31内に形成されたメッキ皮膜18の厚さは厚くならない。
そして、第4除去工程によって、感光性材料層123を除去する。これにより、図3および図4に示すように、スクリーンメッシュ17のメッシュ金属膜重なり部20のオープニング31内に形成されたメッキ膜部33の厚さT1が、スクリーンメッシュ17のメッシュ透過重なり部25のオープニング31内に形成されたメッキ皮膜18の厚さT2よりも厚いスクリーン印刷版11を容易に製造することができる。
また、被覆工程によって、図7(a)に示すように、中間体11Aに感光性樹脂材料121を塗布し、感光性樹脂材料121を中間体11Aの被印刷物側から露光して現像するため、金属膜15Aが露光用マスクとなって、スクリーンメッシュ被覆体13Aの被覆体金属膜重なり部131に硬化した感光性材料層が形成されないようにする。よって、被覆工程を効率良く行うことができる。すなわち、図7(b)に示すように感光性材料層が形成されていないスクリーンメッシュ被覆体13Aの被覆体金属膜重なり部131に、第3メッキ工程によって、図7(c)に示すようにメッキ膜部33Bを形成するためには、被覆工程において、被覆体金属膜重なり部131に硬化した感光性材料層を形成しないようにする必要があるが、被覆工程において、感光性樹脂材料121を中間体11Aの被印刷物側から露光して現像するため、金属膜15Aが露光用マスクとなって、被覆体金属膜重なり部131に硬化した感光性材料層が形成されないようにできる。なお、塗布工程によって図7(a)に示すように中間体11Aに感光性樹脂材料121を塗布した後、スキージ側に被覆体金属膜重なり部131をマスクする露光用マスクを配置してスキージ側から露光を行っても良い。この場合、露光用マスクを配置する工程が余計に必要となってしまうため、第1実施形態のように感光性樹脂材料121を中間体11Aの被印刷物側から露光するのが好ましい。
また、図7(c)に示すように第3メッキ工程で形成されたメッキ膜部33Bを、スキージ側から研磨する研磨工程を含むため、図2に示すメッキ膜部33Bの先端面33aを研磨面とすることができる。よって、印刷時にスキージを、より円滑に移動させることができるため、スキージの寿命を向上させることができる。
また、第3メッキ処理を施す際に、導電性のスクリーンメッシュ17を電極としてメッキ処理を施しているため、金属膜15をスクリーンメッシュ17のメッシュ金属膜重なり部20のオープニング31内に確実に入り込ませることができ、金属膜15とスクリーンメッシュ17との接合強度を一層向上させることができる。
[第2実施形態]
本発明に係る第2実施形態のスクリーン印刷版およびスクリーン印刷版の製造方法を主に図8〜図10を参照して、第1実施形態との相違部分を中心に以下に説明する。
第2実施形態のスクリーン印刷版11は、図8に示すように、メッシュ金属膜重なり部20に形成されたメッキ膜部33において、スクリーンメッシュ17のスキージ側の先端部に形成された部分が他の基部150よりもスキージ側に突出する突出部151となっている。
第2実施形態のスクリーン印刷版11では、メッシュ金属膜重なり部20に形成されたメッキ膜部33と、メッシュ透過重なり部25に形成されたメッキ皮膜18とのいずれにおいても、スキージ側の先端部が研磨されていない。よって、メッキ膜部33の先端面33aは研磨面ではない。
次に、このような第2実施形態のスクリーン印刷版11の製造方法について工程順に説明する。
第1実施形態と同様に、準備工程(図5(a)参照)、第1露光工程(図5(b)参照)、第1除去工程(図5(c)参照)、第1メッキ工程(図5(d)参照)、第1研磨工程(図6(a)参照)、第2メッキ工程(図6(b)参照)、第2除去工程(図6(c)参照)、塗布工程(図7(a)参照)、第2露光工程(図7(a)参照)および第3除去工程(図7(b)参照)を行って、硬化した感光性材料層123が形成された中間体11Aを形成する。
第2実施形態では、次に、図9に示すように、中間体11Aに追加塗布工程(先端部被覆工程)を行う。追加塗布工程は、スクリーンメッシュ被覆体13Aの、これが広がる面方向において金属膜15Aと位置が重なり合う被覆体金属膜重なり部131に対して、厚さ方向のスキージ側の面のみに感光性樹脂材料等のメッキレジスト材料121Cを塗布する。この追加塗布工程においては、金属膜15Aのスキージ側の面にはメッキレジスト材料121Cを塗布しない。しかも、このようにスクリーンメッシュ被覆体13Aのスキージ側にメッキレジスト材料121Cを塗布する際に、被覆体金属膜重なり部131のオープニング32がスクリーンメッシュ被覆体13Aの厚さ方向に貫通するようにメッキレジスト材料121Cを塗布する。言い換えれば、被覆体金属膜重なり部131のオープニング32を閉塞することがないようにメッキレジスト材料121Cを塗布する。
次に、図10に示すように、メッキレジスト材料121Cが塗布された中間体11Aに、スキージ側から露光する追加露光工程(先端部被覆工程)を行う。この追加露光工程を行うことにより、スクリーンメッシュ被覆体13Aの被覆体金属膜重なり部131の厚さ方向のスキージ側のみに、露光されて硬化した感光性材料層からなるメッキレジスト層123Cが形成される。次に、感光性樹脂材料121を現像する追加除去工程(先端部被覆工程)を行う。これにより、中間体11Aに感光性材料層123およびメッキレジスト層123Cが残る。メッキレジスト層123Cは、被覆体金属膜重なり部131のオープニング32を閉塞することがないように形成されている。なお、メッキレジスト層123Cは、メッキレジスト材料121Cとして感光性樹脂材料を塗布しスキージ側から露光して形成する以外にも、例えば熱乾燥により硬化する材料で形成しても良い。しかしながら、スクリーンメッシュ被覆体13Aの被覆体金属膜重なり部131の厚さ方向のスキージ側のみにメッキレジスト層123Cを良好に形成するためには、メッキレジスト材料121Cとして感光性樹脂材料を塗布しスキージ側から露光してメッキレジスト層123Cを形成するのが好ましい。
以上の追加塗布工程と、追加露光工程と、追加除去工程とが、第3メッキ工程の前に、スクリーンメッシュ被覆体13Aのスキージ側の先端部を、メッキレジスト層123Cで被覆する先端部被覆工程となっている。
次に、第1実施形態と同様の第3メッキ工程を行う。すると、図10に示す金属膜15Aが、メッキレジスト層123Cまでの範囲で成長して、図8に示す金属膜15となる。言い換えれば、メッシュ金属膜重なり部20に、メッキレジスト層123Cまでの範囲でメッキ膜部33が形成される。このようなメッキ膜部33がメッシュ金属膜重なり部20に形成されることで、第2実施形態の版膜部21は、図8に示すように、スクリーンメッシュ17のスキージ側の先端部に形成された部分が他の基部150よりもスキージ側に突出する突出部151となる。ここで、突出部151は、図10に示すスクリーンメッシュ被覆体13Aのメッキ皮膜18Aが残存して構成されるものである。
この第2実施形態の第3メッキ工程によって、図8に示すメッキ膜である金属膜15は、その一部であるメッキ膜部33が、図10に示すスクリーンメッシュ被覆体13Aのパターン126に埋設されていない被覆体金属膜重なり部131のオープニング32内の被印刷物側に入り込む。その際に、図8に示すメッキ膜部33は、メッキが、図10に示す被覆体金属膜重なり部131にあったメッキ皮膜18Aと一体となる。これにより、メッキ膜部33が、スクリーンメッシュ17の、被覆体金属膜重なり部131の位置にあったオープニング31をさらに狭めるように形成される。よって、第2実施形態のスクリーン印刷版11においても、スクリーンメッシュ17のメッシュ金属膜重なり部20のオープニング31内に形成されたメッキ膜部33の被覆の厚さT1は、スクリーンメッシュ17のメッシュ透過重なり部25のオープニング31内に形成されたメッキ皮膜18の被覆の厚さT2よりも厚くなる。
次に、第1実施形態と同様の第4除去工程(除去工程)を行う。なお、第2実施形態では、第1実施形態の第2研磨工程は行わない。
以上に述べた第2実施形態のスクリーン印刷版11によれば、メッシュ金属膜重なり部20のメッキ膜部33は、スクリーンメッシュ17のスキージ側の先端部に形成された部分が他の基部150よりもスキージ側に突出する突出部151となっているため、画像形成部27の突出部151以外の基部150の膜厚を薄くすることができる。
第2実施形態のスクリーン印刷版11の製造方法では、第3メッキ工程の前に、スクリーンメッシュ被覆体13Aのスキージ側の先端部を、メッキレジスト層123Cで被覆する先端部被覆工程を含むため、メッキ膜部33のスクリーンメッシュ17のスキージ側の先端部に形成された部分を、メッキ膜部33の他の基部150よりもスキージ側に突出する突出部151とすることが容易にできる。
なお、第2実施形態において、先端部被覆工程は、第3メッキ工程の前に行えば良く、例えば、第2メッキ工程(図6(b)参照)の前に、スクリーンメッシュ17の厚さ方向一側のみに上記と同様のメッキレジスト層123Cを形成しておいても良い。そして、第2メッキ工程においては、メッキレジスト層123Cが形成されたスクリーンメッシュ17を、メッキレジスト層123Cが導電板102とは反対側に向く向きで、パターン107および金属膜15Aに密着させてメッキ処理を行う。この場合、先端部被覆工程は、第3メッキ工程の前に、スクリーンメッシュ17のスキージ側の先端部を、メッキレジスト層123Cで被覆する工程となる。
このようにすれば、スクリーン印刷版11は、図11に示すように、スクリーンメッシュ17のスキージ側の先端部に、メッキされていない非メッキ部155を有することになる。この場合、非メッキ部155が、他の部分であるメッキ膜部33よりもスキージ側に突出する突出部となる。これにより、画像形成部27の実質的な膜厚を薄くすることができる。
なお、第1,第2実施形態において、支持体14としては、版枠材12に金属製の織物であるスクリーンメッシュ17を緊張状態で貼り付けた紗張り品以外にも、例えば、全面に細孔が形成された金属の薄板であるスクリーンメッシュ17を版枠材12に貼り付けたものを用いることができる。また、支持体14は、金属製の版枠材12にポリエステル等の合成樹脂製の織物である支持メッシュを張り、この支持メッシュの中央側にステンレス等の金属製の織物であるスクリーンメッシュを張ったコンビネーションマスクであっても良い。