以下に、第1実施形態に係るインクジェットヘッド1及びインクジェット装置100の構成について、図1乃至図6を参照して説明する。図1は、一実施形態にかかるインクジェットヘッドの分解斜視図であり、図2はインクジェットヘッドの断面図である。図3はインクジェットヘッドの一部の構成及び製造方法を示す説明図である。各図において説明のため、適宜構成を拡大、縮小または省略して示している。
図1乃至図4に示すインクジェットヘッド1は、ベース10と、複数のノズル21を有するノズルプレート20と、フレーム部材30と、マニフォルド40と、一対の回路基板50と、を備える。インクジェットヘッド1は、いわゆるサイドシューター型のシェアモードシェアードウォール方式のインクジェットヘッドである。本実施形態において、一例としてノズル列21A、アクチュエータ13、回路基板50、をそれぞれ一対ずつ備える例を示すが、これに限られるものではなく、各構成部品の数は適宜変更して実施可能である。
図1乃至図3に示すように、ベース10は、基板12と、アクチュエータ13とを備える。
基板12は、所定の厚さを有する方形の板状に構成されている。基板12は、好ましくは、PZT、セラミックス、ガラス、快削性セラミックス、あるいはこれらを含む材料で、構成される。
基板12のノズルプレート20側の面上には、所定の配線パターン12a(配線電極)が形成されている。配線パターン12aは、例えば、真空蒸着法や無電解ニッケルメッキ法等の手法で形成され、エッチングやレーザ加工により所定形状にパターニングされている。
基板12には、供給口12b、及び排出口12cが形成されている。供給口12bはマニフォルド40の共通路41に連通し、マニフォルド40の共通路41からインク室C2にインクを流入させる貫通孔である。排出口12cは、マニフォルド40の共通路41に連通し、インク室C2からマニフォルド40の共通路41にインクを排出させる貫通孔である。
基板12の、ノズルプレート20に対向する対向面において、各ノズル列21Aに対向する所定箇所にそれぞれアクチュエータ13が設けられている。本実施形態において、第1方向に延びる一対のアクチュエータ13が形成される。アクチュエータ13は、例えば2枚の圧電部材が積層された積層圧電体で構成されている。アクチュエータ13は、櫛歯状に構成され、複数の溝14と、複数の溝14の間に配される複数の駆動素子15と、を交互に有する。
アクチュエータ13を構成する圧電部材は、例えばPZT(チタン酸ジルコン酸鉛)系圧電セラミックス材料で構成された2枚の圧電部材13a,13bが、互いに逆向きとなる分極方向に分極され、接着層を介して接着されている。
複数の溝14は各ノズル21に対向する位置に配置され、ノズル列21Aの列方向である第1方向に並ぶ。隣接する溝14の間に形成された壁状部が、溝14の容積を変化させる駆動素子15を構成する。
各溝14は、それぞれノズル21に対向配置され、ノズル21に連通する圧力室C1を構成する。圧力室C1の内壁には、電極16と、電極16の表面を覆う絶縁層17と、絶縁層17の表面を覆う導電層としての導電膜18と、が積層され、保護構造が形成されている。
電極16は、溝14の底壁及び側壁に形成される金属膜であり、ニッケルなどの導電性材料で構成される導電膜である。電極16は、圧力室C1から基板12の上面に至って形成され、配線パターン12aに接続される。電極16は、例えば金や銅等で形成してもよい。あるいは2種以上の導電性の膜を積層しても良い。
絶縁層17は絶縁性材料で構成された膜であり、電極16の圧力室C1側の表面である接液面の全面を覆う。本実施形態において、絶縁層17は例えばパリレンで形成されている。絶縁層17の膜厚は、例えば3μm以上5μm以下程度である。
導電膜18は、絶縁層17の圧力室C1側の表面である接液面の全面を覆う。導電膜18はスパッタ等で形成され、例えばAlやNi等で構成される。導電膜18はグランドGND1に電気的に接続される。導電膜18は電極16とは接触しない。導電膜18は、絶縁層17の表面を覆うことができればよく、膜厚は薄くてもよい。例えば導電膜18の膜厚は例えば0.5μm程度とした。
ノズルプレート20は、ベース10の一方側に対向配置されている。ノズルプレート20は、厚さ10μm以上100μm以下程度の方形の板状に構成される。ノズルプレート20には、厚さ方向に貫通する複数のノズル21を有するノズル列21Aが形成されている。本実施形態においては例えば2列のノズル列21Aが形成されている。ノズル21は、複数の圧力室C1に対応する位置にそれぞれ設けられている。すなわち、ノズルプレート20は、溝14で構成される圧力室C1に連通するノズル21を有する。
フレーム部材30は、例えば方形の枠状に構成される。フレーム部材30は、ベース10とノズルプレート20との間に挟持され、ベース10のアクチュエータ13の外周を囲み、圧力室C1に連通するインク室C2を形成する。ノズルプレート20とフレーム部材30によって、ベース10のアクチュエータ13が覆われる。
図1及び図2に示すように、マニフォルド40はベース10の他方側、すなわちノズルプレート20とは反対側に、設けられる。マニフォルド40は、例えばブロック状に構成され、内部にインク流路11の一部となる共通路41を形成する。共通路41はベース10の供給口12bに連通する供給路42、及び排出口12cに連通する排出路43を有する。
一対の回路基板50は例えばマニフォルド40の幅方向両側の一対の側壁にそれぞれ配される。回路基板50には各種実装部品が搭載されている。回路基板50は例えば所定の配線が形成されたFCP(フィルムキャリアパッケージ)51を備え、FCP51により基板12に接続されている。FCP51には、例えば駆動IC52が実装されている。したがって、駆動IC52は、FCP51の配線や配線パターン12aを介して圧力室の電極16に接続される。
以上のように構成されたインクジェットヘッド1には、ノズル21に連通する複数の圧力室C1と、複数の圧力室C1に連通するインク室C2と、マニフォルド40の共通路41を含むインク流路11が形成される。
図3はインクジェットヘッド1の製造方法の一部を示す説明図である。図3に示すように、本実施形態にかかるインクジェットヘッド1の製造方法において、アクチュエータ13の溝14の内壁に電極16を形成し(ACT11)、その後当該電極16の圧力室C1側、すなわちインク流路11側の面である接液面の全面を覆う絶縁層17を形成し(ACT12)、さらに絶縁層17の圧力室C1側の接液面の全面を覆うようにAlやNi等をスパッタ等で成膜することで導電膜18を形成する(ACT13)。この後、導電膜18を電気的にグランドGND1に繋げることで保護構造が完成する。その後、フレーム部材30を介してベース10に対してノズルプレート20を対向配置させ、ベース10とフレーム部材30とノズルプレート20とを接合する(ACT14)。
以下、インクジェットヘッド1を有するインクジェット装置100について、図4を参照して説明する。図4はインクジェット装置100の構成を示す説明図である。図4に示すように、インクジェット装置100は、筐体111と、媒体供給部112と、画像形成部113と、媒体排出部114と、搬送装置115と、制御部116と、を備える。
インクジェット装置100は、媒体供給部112から画像形成部113を通って媒体排出部114に至る所定の搬送路A1に沿って、吐出対象物である記録媒体として例えば用紙Pを搬送しながらインク等の液体を吐出することで、用紙Pに画像形成処理を行うインクジェットプリンタである。
媒体供給部112は複数の給紙カセット112aを備える。媒体排出部114は、排紙トレイ114aを備える。画像形成部113は、用紙を支持する支持部117と、支持部117の上方に対向配置された複数のヘッドユニット130と、を備える。
支持部117は、画像形成を行う所定領域にループ状に備えられる搬送ベルト118と、搬送ベルト118を裏側から支持する支持プレート119と、搬送ベルト118の裏側に備えられた複数のベルトローラ120と、を備える。
ヘッドユニット130は、複数のインクジェットヘッド1と、各インクジェットヘッド1上にそれぞれ搭載された液体タンクとしての複数のインクタンク132と、インクジェットヘッド1とインクタンク132とを接続する接続流路133と、循環部である循環ポンプ134と、を備える。ヘッドユニット130は、インクジェットヘッド1及びインクタンク132を通る循環流路にて液体を循環させる循環型のヘッドユニットである。
本実施形態において、インクジェットヘッド1としてシアン、マゼンダ、イエロー、ブラックの4色のインクジェットヘッド1C,1M,1Y,1Bと、これらの各色のインクをそれぞれ収容するインクタンク132として、インクタンク132C,132M,132Y,132Bを備える。インクタンク132は接続流路133によってインクジェットヘッド1に接続される。接続流路133は、インクジェットヘッド1のインク流路11の一次側に接続される供給流路133aと、インクジェットヘッド1のインク流路11の二次側に接続される回収流路133bと、を備える。
また、インクタンク132には、図示しないポンプなどの負圧制御装置が連結されている。そして、インクジェットヘッド1とインクタンク132との水頭値に対応して、負圧制御装置によりインクタンク132内を負圧制御することで、インクジェットヘッド1の各ノズルに供給されたインクを所定形状のメニスカスに形成させている。
循環ポンプ134は、例えば圧電ポンプで構成される送液ポンプである。循環ポンプ134は、供給流路133aに設けられている。循環ポンプ134は、配線により制御部116の駆動回路に接続され、CPU(Central Processing Unit)116aの制御によって制御可能に構成されている。循環ポンプ134は、インクジェットヘッド1とインクタンク132を含む循環流路で液体を循環させる。循環流路は、インクに電荷が溜まらないように、接地されている。
インクジェット装置100はグランドGND2に接続されている。グランドGND2は、インクジェットヘッド1の導電膜18が接続されたグランドGND1と接続されている。したがって、インクジェット装置100のグランドGND2と導電膜18のグランドGND1とは同電位となる。
搬送装置115は、媒体供給部112の給紙カセット112aから画像形成部113を通って媒体排出部114の排紙トレイ114aに至る搬送路A1に沿って、用紙Pを搬送する。搬送装置115は、搬送路A1に沿って配置される複数のガイドプレート対121a〜121hと、複数の搬送用ローラ122a〜122hと、を備えている。
制御部116は、コントローラであるCPU116aと、各種のプログラムなどを記憶するROM(Read Only Memory)と、各種の可変データや画像データなどを一時的に記憶するRAM(Random Access Memory)と、外部からのデータの入力及び外部へのデータの出力をするインターフェイス部と、を備える。
以上のように構成されたインクジェットヘッド1及びインクジェット装置100において、ノズル21から液体を吐出する駆動時には、制御部116は、駆動IC52により、駆動電圧を印加し、駆動素子15を変形させることで圧力室C1の容積を変化させ、ノズル21からインク滴を吐出させる。
本実施形態にかかるインクジェットヘッド1及びインクジェット装置100は、インクの接液面である導電膜18が電気的にグランドになり、インクとの化学反応などが生じにくくなるため、絶縁層17の耐久性を向上できる。
また、インクジェット装置100のインクの流路である循環流路を電気的にグランドにすることで、インクに電荷が溜まることを防止でき、耐久性が向上する。
さらに、インクジェット装置100内において絶縁層17上の導電膜18のグランドGND1と、インクジェット装置100が接地されたグランドGND2を互いに接続して同電位としたことにより、インクジェット装置100内に付着しているインクとインクジェットヘッド1内部のインクが接触しても、インク内で電位差が生じないため、インクやインクジェットヘッド1への不具合が生じることを防ぐことができる。
上述した実施形態によれば、絶縁層17の電気化学反応を防止でき、耐久性を向上できる。
なお、本発明は上記実施形態の構成に限定されるものではなく適宜変更して実施可能である。例えば絶縁層17はパリレンの他、SiO2、TEOS(テトエトキシシラン)等の他の絶縁材料を用いてもよい。
例えば上述した第1実施形態においては、圧力室C1及びインク室C2に面した電極の表面を絶縁層17及び導電膜18の保護構造にて覆う例を示したが、例えば図5及び図6に示すように他の実施形態にかかるインクジェットヘッド1Aのように導電膜18の圧力室側の表面である接液面の全面にさらに保護層19が形成される構成としてもよい。
保護層19は絶縁性材料で構成された膜であり、導電膜18の圧力室C1側の表面である接液面の全面を覆う。本実施形態において、保護層19は例えば使用するインクと反応し難い材料で構成される。保護層19は、例えば絶縁層17と同じパリレンやSiO2、TEOS等の絶縁材料の他、金属材料で構成されていてもよい。保護層19の膜厚は、例えば3μm以上5μm以下程度である。
図6はインクジェットヘッド1Aの製造方法の一部を示す説明図である。本実施形態にかかるインクジェットヘッド1Aの製造方法において、図3に示すように第1実施形態にかかるインクジェットヘッド1と同様にAct11〜Act13を行う。具体的には、アクチュエータ13の溝14の内壁に電極16を形成し(ACT11)、その後当該電極16の圧力室C1側の接液面の全面を覆う絶縁層17を形成し(ACT12)、さらに絶縁層17の圧力室C1側の接液面の全面を覆うようにAlやNi等をスパッタ等で成膜することで導電膜18を形成し(ACT13)、導電膜18を電気的にグランドGND1に繋げる。その後、図6に示すように、導電膜18の圧力室C1側の接液面の全面を覆うように保護層19を形成する(ACT15)。さらに、フレーム部材30を介してベース10対してノズルプレート20を対向配置させ、ベース10とフレーム部材30とノズルプレート20とを接合する(ACT16)。
その他の構成は第1実施形態に係るインクジェットヘッド1と同様である。本実施形態においても上記第1実施形態と同様の効果を得られる。
すなわち、インクジェットヘッド1Aは、インクの接液面である保護層19が電気的にグランドになり、インクとの化学反応などが生じにくくなるため、絶縁層17の耐久性を向上できる。さらに、本実施形態によれば、導電膜18を保護層19で被覆して保護することができるため、適用するインクの種類の制約を緩和でき、様々なインクが適用できる。すなわち例えば金属を溶解する等の、導電膜18に接液するのには適さないインクも利用することができ、汎用性が高い。
また、本実施形態においても、インクジェット装置100をグランドGND2に接地するとともに、導電膜18のグランドGND1と、インクジェット装置100のグランドGND2とを接続して同電位としたことにより、インクジェット装置100内に付着しているインクとインクジェットヘッド1内部のインクが接触しても、インクに電位差が生じることがなく、インクやインクジェットヘッド1への不具合が生じることを防ぐことができる。
上記実施形態ではいわゆるサイドシューター型のインクジェットヘッド1を例示したが、これに限られるものではない。例えば他の実施形態としてエンドシューター型のインクジェットヘッドに適用してもよい。
また、吐出する液体はインクに限られるものではなく、インク以外の液体を吐出することもできる。インク以外を吐出する液体吐出装置としては、例えばプリント配線基板の配線パターンを形成するための導電性粒子を含む液体を吐出する装置等であっても良い。
インクジェットヘッド1は、上記の他、例えば振動板を変形してインク滴を吐出する構造、あるいはヒータ等の熱エネルギーを利用してノズルからインク滴を吐出する構造等でもよい。
また、上記実施形態において、液体吐出装置はインクジェット記録装置に用いられる例を示したが、これに限られるものではない。例えば3Dプリンタ、産業用の製造機械、医療用途にも用いることが可能であり、小型軽量化及び低コスト化が可能である。
以上述べた少なくとも一つの実施形態によれば、電極を被覆する保護層の耐久性を向上できる。
本発明のいくつかの実施形態を説明したが、これらの実施形態は、例として提示したものであり、発明の範囲を限定することは意図していない。これら新規な実施形態は、その他の様々な形態で実施されることが可能であり、発明の要旨を逸脱しない範囲で、種々の省略、置き換え、変更を行うことができる。これら実施形態やその変形は、発明の範囲や要旨に含まれるとともに、特許請求の範囲に記載された発明とその均等の範囲に含まれる。