JP2020057773A - ボンド磁石およびその製造方法 - Google Patents

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【課題】耐熱性に優れたボンド磁石を提供する。【解決手段】SmFeN系磁性粉末と、12ナイロンと、ヘキサフルオロイソプロパノールに対する未抽出成分を含むボンド磁石に関する。また、SmFeN系磁性粉末と、12ナイロンとを含むボンド磁石と、非晶質化薬剤とを接触させることと、非晶質化薬剤と接触したボンド磁石を熱処理することを含むボンド磁石の製造方法に関する。【選択図】 なし

Description

本発明は、ボンド磁石およびその製造方法に関する。
特許文献1には、磁性粉末の表面にナイロン皮膜を形成したボンド磁石が開示されている。また、特許文献2には、結晶性樹脂であるナイロン6樹脂と非晶質ナイロン樹脂とを含むボンド磁石が開示されている。
いずれのボンド磁石も、耐熱性に関する開示がされているものの、更なる耐熱性の向上が望まれている。
特開2005−116789号公報 特開平9−12869号公報
本発明は、耐熱性に優れたボンド磁石を提供することを目的とする。
本発明者は、ボンド磁石の耐熱性向上を目的に種々検討したところ、ボンド磁石に12ナイロン由来のヘキサフルオロイソプロパノール抽出に対する未抽出成分が存在すると、酸化劣化が抑制され、耐熱性が向上することを見出し、本発明を完成した。
すなわち、本発明は、SmFeN系磁性粉末と、12ナイロンと、ヘキサフルオロイソプロパノールに対する未抽出成分を含むボンド磁石に関する。また、本発明は、SmFeN系磁性粉末と、12ナイロンとを含むボンド磁石と、非晶質化薬剤と、を接触させることと、非晶質化薬剤と接触したボンド磁石を熱処理することを含むボンド磁石の製造方法に関する。
本発明のボンド磁石は、ヘキサフルオロイソプロパノールに対する未抽出成分を含むため、耐熱性が大きく向上する。
実施例1で作製したボンド磁石をヘキサフルオロイソプロパノールでソックスレー抽出した後の試験片の写真である。
以下、本発明の実施形態について詳述する。ただし、以下に示す実施形態は、本発明の技術思想を具体化するための一例であり、本発明を以下のものに限定するものではない。なお、本明細書において「工程」との語は、独立した工程だけではなく、他の工程と明確に区別できない場合であってもその工程の所期の目的が達成されれば、本用語に含まれる。
本実施形態のボンド磁石(以下ボンド磁石(A))は、SmFeN系磁性粉末と、12ナイロンと、ヘキサフルオロイソプロパノールに対する未抽出成分を含むことを特徴とする。
ボンド磁石(A)に含まれるSmFeN系磁性粉末は、ThZn17型の結晶構造をもち、一般式がSmFe100−x−yで表される希土類金属Smと鉄Feと窒素Nからなる窒化物である。ここで、希土類金属Smの原子%のx値は、8.1〜10%の範囲に、Nの原子%のy値は、13.5〜13.9(原子%)の範囲に、残部を主としてFeとする。また、SmFeN系磁性粉末は、より一般的にはSmFe17で表される。SmFeN系は、フェライト系に比べると磁力が強く、比較的少ない量でも高磁力を発生することができる。また、SmFeN系は、NdFeB系やSmCo系といった他の希土類系と比べると、粒子径が小さく、母材樹脂へのフィラーとして適していることや、錆び難いという特長がある。また、ボンド磁石(A)は、更にNdFeB系、SmCo系の希土類磁性粉末や、フェライト系磁性粉末を含んでいても良い。
磁性粉末の平均粒子径は特に限定されないが、SmFeN系の場合、平均粒子径の下限は0.1μm以上が好ましく、0.5μm以上がより好ましく、また、平均粒子径の上限は、10μm以下が好ましく、5μm以下がより好ましい。0.1μm未満では、磁性粒子は容易に酸化されやすいため磁気特性が低下し、10μmを超えると多磁区構造を取りやすくなるため磁気特性が低下する傾向がある。なお、平均粒径は、粒度分布における小粒径側からの体積累積50%に相当する粒径として測定される。
ボンド磁石(A)に含まれる12ナイロンの含有量は、磁性粉末100質量部に対して、下限は3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、上限は15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。3質量部未満では、樹脂層が少ないため機械特性が大きく低下し、15質量部を超えると、磁性層の割合が少なくなるため強力な磁石にはならない。また、ボンド磁石(A)の耐熱性に影響がない程度であれば、他の樹脂を含んでいても良く、例えば、PPS(ポリフェニレンサルファイド)樹脂、PP(ポリプロピレン)樹脂などが挙げられる。
ボンド磁石(A)に含まれるヘキサフルオロイソプロパノールに対する未抽出成分とは、ボンド磁石(A)をヘキサフルオロイソプロパノールによりソックスレー抽出すると、12ナイロンが、ヘキサフルオロイソプロパノールに溶解することにより抽出され、残った抽出残渣には、磁性粉末成分とヘキサフルオロイソプロパノールに対する未抽出成分が含まれる。この実施形態においては、ボンド磁石(A)についてソックスレー抽出を24時間行い、残った抽出残渣から磁性粉末成分を除いたものをいう。また、ヘキサフルオロイソプロパノールに対する未抽出成分は、ヘキサフルオロイソプロパノールに対する溶解性を考慮すると、12ナイロンの架橋物と推定される。
ボンド磁石(A)に含まれる未抽出成分の含量は、0.1質量%を超えて5質量%以下であればよく、0.15質量%以上1質量%以下がより好ましい。0.1質量%以下では、磁石表面の12ナイロンの架橋密度が低いため磁石として高い機械的耐熱性を得ることは難しく、5質量%を超えると、ボンド磁石(A)中に含まれる12ナイロンの割合が減少するため弾性が低下し熱衝撃により割れやすくなる。ここで、未抽出成分の含量は、残った抽出残渣の質量から磁性粉末成分の含有量を差し引くことで算出できる未抽出成分の質量を、ソックスレー抽出前のボンド磁石の質量で割ることにより算出することができる。なお、磁性粉末成分の含有量は、抽出残渣を全溶解させた後にICP−AES分析により求めた磁性粉末由来の金属成分の含有量から算出することができる。
ボンド磁石(A)に含まれる未抽出成分は、ボンド磁石(A)の表面層に、少なくとも一部が含まれていればよく、ボンド磁石の耐熱性の点よりボンド磁石(A)の中心部よりも表面層に多く含まれることが好ましい。表面層の厚みは、例えば、耐熱性を考慮して、表面から深さ方向において10μm以上1mm以下が好ましい。
ボンド磁石(A)は、ボンド磁石に一般的に配合される成分、たとえば酸化防止剤、重金属不活性化剤、滑剤、可塑剤などを含んでいても良い。
本実施形態のボンド磁石の製造方法は、
SmFeN系磁性粉末と、12ナイロンとを含むボンド磁石(以下ボンド磁石(B))と、非晶質化薬剤とを接触させることと、
非晶質化薬剤と接触したボンド磁石を熱処理すること
を含むことを特徴とする。
SmFeN系磁性粉末と、12ナイロンとを含むボンド磁石(B)と、非晶質化薬剤と、を接触させた後、熱処理を行うと、SmFeN系磁性粉末が触媒として作用することにより、ヘキサフルオロイソプロパノール対し未抽出成分である12ナイロン架橋物が生成するため、得られたボンド磁石の耐熱性が向上すると考えられる。なお、非晶質化薬剤は、結晶性の12ナイロンを溶解して非晶質化させることができる成分を含むものである。
ボンド磁石(B)におけるSmFeN系磁性粉末は、前述で説明したとおりであるから、ここではその説明を省略するが、例えば特許第3698538号で開示された方法で製造できる。
ボンド磁石(B)は更に、NdFeB系、SmCo系の希土類磁性粉末や、フェライト系磁性粉末を含んでいても良い。NdFeB系磁性粉末については、例えば、特許第3565513号に記載されたHDDR法により製造でき、平均粒径が40〜200μm、最大エネルギー積が34〜42MGOe(270〜335kJ/m3)のものを好適に使用できる。また、Sm−Co磁性粉末については、例えば、特許第3505261号により製造でき、平均径10〜30μmのものが使用できる。
ボンド磁石(B)に含まれる12ナイロンの含有量は磁性粉末100質量部に対して、下限は3質量部以上が好ましく、5質量部以上がより好ましく、上限は15質量部以下が好ましく、10質量部以下がより好ましい。12ナイロンの含有量が、3質量部未満では、樹脂層が少ないため機械特性が大きく低下し、15質量部を超えると、磁性層の割合が少なくなるため強力な磁石にはならない。また、ボンド磁石(B)の耐熱性に影響のない程度であれば、他の樹脂を含んでいても良く、例えば、PPS樹脂、PP樹脂などが挙げられる。
ボンド磁石(B)に一般的に配合される成分、たとえば酸化防止剤、重金属不活性化剤、滑剤、可塑剤などを含んでいても良い。
ボンド磁石(B)は、磁性粉末と12ナイロンとを溶融混練して、コンパウンドを作製し、それらコンパウンドを成形することにより得ることができる。コンパウンドを作製する際に用いる溶融混練機は特に限定されないが、単軸スクリュー混練機、二軸スクリュー混練機、ミキシングロール、ニーダ、バンバリーミキサ、噛み合わせ型二軸スクリュー押出機、非噛み合わせ二軸スクリュー押出機等を用いることができ、溶融混練温度は12ナイロンを用いる場合は、180℃以上250℃以下とすることができる。また、得られたコンパウンドを成形する方法は、特に限定されず、射出成形、圧縮成形、押出成形、圧延成形などを適用することができる。SmFeN系磁性粉末を用いる場合は、ボンド磁石組成物内部の磁粉が整列するように、機械配向もしくは磁場配向を行うことが好ましい。
非晶質化薬剤とは、結晶性の12ナイロンを溶解して非晶質化させることができる成分(A)と有機溶媒(B)を含み、非晶質化薬剤中の各成分の含有量は、12ナイロンを溶解して非晶質化させる成分(A)は10〜30質量%、有機溶媒(B)は70〜90質量%とすることができる。非晶質化薬剤の例としては、例えば特開2003−89131号公報が挙げられる。
結晶性の12ナイロンを溶解して非晶質化させる成分(A)とは、12ナイロンの結晶領域の一部を溶解して非晶質化させ、高分子鎖同士の隙間に入ることで高分子鎖間を広げる成分である。たとえば二価以上のフェノール類、フッ素原子を含むフルオロアルコール類、ナイロン樹脂と強く水素結合する−SONH基をもつベンゼンスルホンアミド類などが挙げられる。
二価以上のフェノール類とは、分子中に水酸基を二個以上有するベンゼン化合物であり、たとえば1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,2−ジヒドロキシベンゼン、1,4−ジヒドロキシベンゼン、1−クロロ−2,4−ジヒドロキシベンゼン、2−クロロ−1,3−ジヒドロキシベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−4−メチルベンゼン、1,3−ジヒドロキシ−2−メチルベンゼン、3,5−ジヒドロキシ安息香酸、2,4−ジヒドロキシ安息香酸などの二価フェノール類、1,2,3−トリヒドロキシベンゼン、1,2,4−トリヒドロキシベンゼン、1,3,5−トリヒドロキシベンゼン、3,4,5−トリヒドロキシ安息香酸、2,4,6−トリヒドロキシ安息香酸などの三価のフェノール類などが挙げられる。なかでも、溶剤への溶解性に優れた二価のフェノール類が好ましく、例えば、入手性の点より、1,3−ジヒドロキシベンゼンがより好ましい。
フッ素原子を含むフルオロアルコール類としては、含フッ素アルコールやフッ素系アルコールなどの名称でも分類され、たとえば1,2,3−トリフルオロエチルアルコール、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)、2,2,3,3−テトラフルオロ−1−プロパノール、2−パーフルオロアルキルエチルアルコールなどが挙げられる。なかでも、1,1,1,3,3,3−ヘキサフルオロ−2−プロパノール(HFIP)が、12ナイロン樹脂の溶解性に優れるので好ましい。
ナイロン樹脂と強く水素結合する−SONH基をもつベンゼンスルホンアミド類とは、第一級スルホンアミドR−SONH、第二級スルホンアミドR−SONHR’、第三級スルホンアミドR−SONR’R’’の構造で表わされる、スルホンアミド基(−SONH)を構造中に有する化合物をいう。各式中、Rは芳香族炭化水素基であり、Cl等のハロゲン、NH基、スルホンアミド基などで置換されていてもよい。R’、R’’はC2n+1(n=1〜4)の化学式で表される炭化水素基である。たとえば、ベンゼンスルホンアミド、1,2−ベンゼンジスルホンアミド、2−クロロベンゼンスルホンアミド、4−クロロベンゼンスルホンアミド、2−メチルベンゼンスルホンアミド、4−メチルベンゼンスルホンアミド、3−アミノベンゼンスルホンアミド、4−アミノベンゼンスルホンアミド、4−(2−アミノエチル)ベンゼンスルホンアミド等が挙げられる。なかでも、ナイロン樹脂のアミド基と強い水素結合会合体を形成しやすい第一級スルホンアミド(R−SONH)が好ましく、溶剤可溶性や熱安定性の観点から、Rがベンゼン環であるベンゼンスルホンアミドがより好ましい。
有機溶媒(B)としては、アルコール類が好ましく、たとえば、メチルアルコール、エチルアルコール、プロピルアルコール、イソプロピルアルコール、ブチルアルコール、ペンチルアルコール、tert−ブチルアルコール、ヘキシルアルコールなどが挙げられる。
非晶質化薬剤は更に、上述の成分(A)による高分子鎖間の広がりを維持できる成分(C)を含んでいても良い。成分(C)としては、溶解パラメーター(SP値)が9〜13の範囲のものであって、12ナイロンのアミド基と水素結合を形成することができる官能基と嵩高い分子構造を有するものが挙げられる。成分(A)により生じた高分子鎖間に成分(C)が入り各々の高分子鎖と水素結合することで、成分(C)が柱のような働きをするので高分子鎖間の広がりを維持することができると考えられる。成分(C)としては、たとえば、12ナイロン以外のナイロン、フルオレン骨格をもつ化合物などが挙げられる。非晶質化薬剤中の成分(C)の含有量は、10〜20質量%とすることができる。
12ナイロン以外のナイロンとしては、たとえば6ナイロン(SP値:11.6)、6,6ナイロン(SP値:11.6)、11ナイロン(SP値:10.1)、6,12ナイロン(SP値:11.6)、6,10ナイロン(SP値:10.8)、6,66ナイロン(SP値:11.6)、ナイロンMXD6(SP値:11.6)などが挙げられる。これらは単独で用いることも複数種類を混合して用いることもできる。
フルオレン骨格をもつ化合物としては、たとえばビスアミノフェニレンフルオレン(SP値:12.7)、ビストルイジンフルオレン(SP値:12.3)、ビスフェノキシエタノールフルオレン(SP値:12.3)、2−アミノフルオレン(SP値:12.7)などの低分子量のフルオレン化合物や、フルオレン構造をもつオリゴマーまたはポリマー(例えばフルオレン系オリゴマー、オグソールMF−11、大阪ガスケミカル製)などが挙げられる。これらは単独でも、複数種類を混合して用いることもできる。
ボンド磁石(B)と、非晶質化薬剤と、を接触させる方法としては、両者を接触させることができるものであれば特に限定されないが、たとえばボンド磁石(B)を非晶質化薬剤に浸漬させる方法、ボンド磁石(B)に非晶質化薬剤を塗布や噴霧する方法などが挙げられる。
次に、非晶質化薬剤と接触したボンド磁石を熱処理する。非晶質化薬剤と接触させて非晶質化した12ナイロンは、熱処理することで架橋し、ヘキサフルオロイソプロパノールに対して未抽出成分となる。ボンド磁石(B)に含まれるSmFeN系磁性粉末が、触媒として機能することで、架橋反応を促進して、熱処理時間を大幅に短縮できる。
熱処理温度は、下限は、150℃以上が好ましく、160℃以上がより好ましい。一方、上限は178℃未満が好ましい。150℃未満では、架橋反応を生じさせるのに長時間要すため処理コストが増大し、178℃以上では12ナイロンの溶融等により変形が大きくなるため好ましくない。
熱処理時間は特に限定されないが、上限は100時間以下が好ましく、10時間以下がより好ましい。100時間を超えると、処理時間の増大にともない処理コストが増大するため好ましくない。
以下、実施例について説明する。なお、特に断りのない限り、「%」は質量基準である。
実施例1
ボンド磁石用組成物の製造
サマリウム鉄窒素磁性粉末(平均粒径3μm)92質量%に対して12ナイロン樹脂粉末7.7質量%、フェノール系酸化防止剤粉末0.3質量%をミキサーで混合した後、混合粉を二軸混練機に投入し、210℃にて混練して混練物を得た。得られた混練物を冷却後、切断しボンド磁石用組成物を得た。
成形工程
得られたボンド磁石用組成物を250℃のシリンダー内で溶解させ、90℃に調温した金型内に9kOe配向磁場を印加しながら射出成形することで、ボンド磁石(B)を得た。
非晶質化・熱処理工程
得られたボンド磁石(B)に、非晶質化薬剤としてNP−221(ジヒドロキシベンゼン誘導体混合物のアルコール溶液、株式会社型善製)を全ての面に塗布した。続いて、自然乾燥によりアルコール溶剤を揮発し、150℃に調温したオーブンに1時間入れ、大気暴露することで熱処理を行い、ボンド磁石(A)を得た。表1に各実施例の熱処理時間の条件を示す。
実施例2〜4
熱処理時間を変更した以外は実施例1に記載の方法でボンド磁石(A)を作製した。
表1に各実施例の熱処理時間の条件を示す。
実施例5
サマリウム鉄窒素磁性粉末の代わりに、サマリウム鉄窒素粉末と平均粒子径200μmのネオジウム鉄ボロン粉末との5:95質量比での混合粉末とした以外は実施例2に記載の方法でボンド磁石を作製した。
実施例6
サマリウム鉄窒素磁性粉末の代わりに、サマリウム鉄窒素粉末と平均粒子径200μmのネオジウム鉄ボロン粉末との50:50質量比での混合粉末とした以外は実施例2に記載の方法でボンド磁石を作製した。
実施例7
サマリウム鉄窒素磁性粉末の代わりに、サマリウム鉄窒素粉末と平均粒子径1μmの異方性フェライト粉末との5:95質量比での混合粉末とした以外は実施例2に記載の方法でボンド磁石を作製した。
実施例8
サマリウム鉄窒素磁性粉末の代わりに、サマリウム鉄窒素粉末と平均粒子径1μmの異方性フェライト粉末との50:50質量比での混合粉末とした以外は実施例2に記載の方法でボンド磁石を作製した。
比較例1
実施例1の製造方法において、非晶質化薬剤での処理と熱処理を行わなかったこと以外は同様にしてボンド磁石を作製した。
比較例2
サマリウム鉄窒素磁性粉末の代わりに、平均粒子径200μmのネオジム鉄ボロン粉末91.5質量%、12ナイロン樹脂粉末8.2質量%とした以外は実施例2に記載の方法でボンド磁石を作製した。
比較例3
サマリウム鉄窒素磁性粉末の代わりに、平均粒子径1μmの異方性フェライト粉末88質量%、12ナイロン樹脂粉末11.7質量%とした以外は実施例2に記載の方法でボンド磁石を作製した。
比較例4
<12ナイロン樹脂の混練・成形工程>
磁性粉末を含まず、12ナイロン樹脂粉末99.7質量%に、フェノール系酸化防止剤0.3質量%をミキサーで混合した後、混合粉を二軸混練機に投入し、190℃にて混練して混練物を得た。得られた混練物を冷却後、適当な大きさに切断し12ナイロン樹脂組成物を得、続いて、射出成形機のホッパーに投入した後200℃のシリンダー内で溶解させ、40℃に調温した金型内に射出成形することで、ボンド磁石を得た。
実施例および比較例で得られたボンド磁石を、以下に示す方法で評価した。評価結果を表1に示す。
<機械的耐熱性の評価>
得られたボンド磁石を、エアコンの効いた室内で室温にて1晩放置した後、荷重たわみ温度(HDT)の測定(条件:フラットワイズ、試験荷重:1.80MPa、昇温レート:120℃/hr)により、短期耐熱性を評価した。
実施例1〜8は、比較例1〜4よりもHDT温度が高いことから耐熱性が向上することを確認した。
<長期耐熱性の評価>
得られたボンド磁石を、エアコンの効いた室内で室温にて1晩放置した後、150℃に調温したオーブンに投入して大気暴露し、1000時間後の成形品を、エアコンの効いた室内で室温にて1晩放置した後、多目的強度試験機を用いて曲げ強度を測定した。オーブン投入前のボンド磁石の曲げ強度に対する1000時間後の成形品の曲げ強度の割合を曲げ強度維持率として評価した。
実施例1〜8は、比較例1〜4よりも曲げ強度維持率が高いことから長期の耐熱性が向上することを確認した。
<未抽出成分の評価>
実施例1にて得られたボンド磁石に対してヘキサフルオロイソプロパノールによるソックスレー抽出した後の抽出残渣を図1に示す。表面に約100μmの薄い層が形成されていることを確認できた。その他実施例2〜8および比較例1〜4についても同様にソックスレー抽出を行ったところ、実施例2〜8については約100μmの表面層を確認できたが、比較例1〜4については、表面層を確認できなかった。
実施例1について抽出残渣の表面層に含まれる磁性粉末由来のFe濃度を蛍光X線分析法(XRF)により測定し、C濃度をTOC分析(燃焼法)により測定したところ、Fe濃度は72.1質量%、C濃度は2.2質量%であった。また、抽出残渣の中心部についても同様にFe分析、C分析を行ったところ、それぞれ72.1質量%、0.36質量%であった。式:C/Fe×100で定義される抽出残渣中に含まれる未抽出成分の比率は、表面層3.1%、中心部0.5%となり、未抽出成分は表面層に多く含まれていることを確認できた。表1より、実施例2〜8についても同様に未抽出成分は表面層に多く含まれていることを確認できた。
また、各実施例および比較例の未抽出成分の含量を、残った抽出残渣の質量から磁性粉末成分の含有量を差し引くことで算出できる未抽出成分の質量を、ソックスレー抽出前のボンド磁石の質量で割ることにより算出した。なお、磁性粉末成分の含有量は、抽出残渣を全溶解させた後にICP−AES分析により求めた磁性粉末由来の金属成分の含有量から算出した。
Figure 2020057773
本発明のボンド磁石は、高い耐熱性を有することから、モーター等の用途に好適に適用することができる。

Claims (7)

  1. SmFeN系磁性粉末と、12ナイロンと、ヘキサフルオロイソプロパノールに対する未抽出成分を含むボンド磁石。
  2. ボンド磁石に含まれる前記未抽出成分の含量が0.1質量%を超えて5質量%以下である請求項1に記載のボンド磁石。
  3. 前記未抽出成分の少なくとも一部が、ボンド磁石の表面層に含まれる請求項1または2に記載のボンド磁石。
  4. 前記未抽出成分がボンド磁石の中心部よりも表面層に多く含まれる請求項1から3のいずれか1項に記載のボンド磁石。
  5. SmFeN系磁性粉末と、12ナイロンとを含むボンド磁石と、非晶質化薬剤と、を接触させることと、
    非晶質化薬剤と接触したボンド磁石を熱処理することを含むボンド磁石の製造方法。
  6. 熱処理温度が、150℃以上178℃未満である請求項5に記載のボンド磁石の製造方法。
  7. 熱処理温度が、160℃以上である請求項6に記載のボンド磁石の製造方法。
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