JP2017212308A - 希土類系ボンド磁石用組成物 - Google Patents

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Abstract

【課題】 十分な耐熱性を有し、機械強度が高く、しかもリサイクル性に優れた希土類系ボンド磁石組成物およびそれを用いて得られる希土類系ボンド磁石を提供する。【解決手段】 希土類−遷移金属系磁石粉末と、バインダーとからなるリサイクル性に優れた希土類系ボンド磁石用組成物であって、希土類−遷移金属系磁石粉末は組成物全体に対して70質量%以上97質量%以下配合されてなり、バインダーは、溶融粘度(300℃、剪断速度600s−1で測定)が200poise以上2000poise以下の架橋型ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂であり且つバインダー樹脂全量に対して架橋型PPS樹脂が70質量%以上100質量%以下の範囲で配合されてなり、さらにベントナイトがバインダー樹脂100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下を配合されてなることを特徴とする希土類系ボンド磁石用組成物を提供する。【選択図】 なし

Description

本発明は、十分な耐熱性を有すると共に、機械強度が高く、しかもリサイクル性に優れた希土類系ボンド磁石用組成物に関する。
ボンド磁石は、磁石粉末に熱可塑性樹脂や熱硬化性樹脂などのバインダーを配合し、混練した磁石用組成物を成形して製造されている。このうち、熱硬化性樹脂を用いたボンド磁石は、リサイクルができないことから限られた製品でのみ用いられているのが現状である。
一方、熱可塑性樹脂をバインダーとした磁石用組成物から得られるボンド磁石の中には、耐熱性が劣るものがある一方で、耐熱性に優れるポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を磁石用組成物として用いることにより、高耐熱性を備えるボンド磁石を得ることができる。
しかし、当該ボンド磁石は、耐熱性には優れているものの、磁石成形体としての機械強度が低いという欠点があり、このような問題点を解決するための試みが、これまでに種々行われている。
射出成形法によりボンド磁石を製造する場合は、溶融した磁石用組成物を金型のキャビティーに導入して磁石成形品とするが、磁石用組成物は、キャビティーに至るまでに流路であるスプルーやランナーを通過する。そして、成形時にスプルーやランナーに取り残された残留部分は、余剰部分として磁石成形品から切除され、磁石製品と分離する。こうして生じた余剰部分は、従来は廃棄の対象であったが、環境保護の観点と材料ロス軽減のために、これらをリサイクルする必要性が高まっている。しかしながら、熱可塑性樹脂を用いたボンド磁石には、磁石組成物の物性が変わることによってリサイクルを行うことが難しく、材料ロスが増加し、コスト増をもたらすという欠点があった(特許文献1参照)。
希土類磁石粉末と熱可塑性樹脂との混合物を含む希土類樹脂ボンド磁石用組成物は、上述したように一般に射出成形や押出成形により成形されるが、そのような成形においては、加熱溶融した磁石用組成物の流動性が成形性に大きく影響を与える。すなわち、磁石粉末の充填量を多くすると溶融磁気組成物の粘度が大きくなり流動性が大きく低下して、成形が困難となり、最悪の場合は不可能になる。
成形性低下の問題に対しては、磁石粉末にトリアジンジチオール誘導体やリン酸で表面処理を施すことが提案されている(特許文献2、3参照)。確かに、このような表面処理を磁石粉末に施すことによって成形性は多少改善されるものの、このような表面処理だけでは、磁石粉末表面を充分に被覆することができず、その結果、樹脂の酸化劣化に伴う変質は避けられないのが実情である。
また、PPS樹脂と磁粉を混練した組成物で、射出成形した成形体の強度がリサイクル品になると低下する現象は、磁粉としてフェライト磁石粉を用いた時よりも、希土類磁石粉を用いた時に顕著である。以上のことから、PPS樹脂を用いた希土類ボンド磁石においては、余剰品を再使用しようとすると成形性が大幅に悪化し、成形品の強度が低下するのでリサイクルがほとんど行われていないのが現状である。
特許第3686586号公報 特開2003−092210号公報 特開2002−124406号公報
本発明は、上記従来の問題点に鑑みて提案されたものであり、十分な耐熱性を有し、機械強度が高く、しかもリサイクル性に優れた希土類系ボンド磁石用組成物を提供することを目的とする。
本発明者は、上記目的を達成するために鋭意研究を重ねた結果、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を用いたボンド磁石においては、フェライト粉末よりもSmまたはNdの少なくとも一種を含有する希土類磁石粉末を用いて磁石用組成物を調製した場合の方が強度低下が顕著であり、それが磁石用組成物の混練工程や射出成形工程を経るとPPS樹脂が低分子量化するためであることを見出し、さらに特定の溶融粘度を有する架橋型PPSを主成分とするPPS樹脂とベントナイトを選択し配合することで、かかる強度低下の問題を回避できることを確認し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明の第1の発明によれば、希土類−遷移金属系磁石粉末と、バインダー樹脂としてポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂とを含む希土類系ボンド磁石用組成物であって、前記ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂は、溶融粘度(300℃、剪断速度600s−1で測定)が200poise以上2000poise以下であり、且つバインダー樹脂全量に対して架橋型PPS樹脂が70質量%以上100質量%以下の範囲で配合されてなり、前記希土類−遷移金属系磁石粉末は、組成物全量に対して70質量%以上97質量%以下配合されてなり、さらに添加剤としてベントナイトが、バインダー樹脂100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下配合されてなることを特徴とする希土類系ボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第2の発明によれば、第1の発明において、前記ベントナイトは、平均粒径が100μm以下であることを特徴とする希土類系ボンド磁石用組成物が提供される。
また、本発明の第3の発明によれば、第1または2の発明において、希土類−遷移金属系磁石粉末は、SmまたはNdの少なくとも一種の希土類元素を含有することを特徴とする希土類系ボンド磁石用組成物が提供される。
本発明の希土類系ボンド磁石用組成物は、希土類−遷移金属系磁石粉末と特定の架橋型ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂を主成分として、これにベントナイトを含有した希土類系ボンド磁石用組成物であり、この希土類系ボンド磁石用組成物は、PPS樹脂が優れた耐熱性を有することから高温環境下で使用可能であるとともに、ベントナイトが磁石粉末表面の重金属イオンを吸着して、PPS樹脂の酸化劣化を抑制するので、組成物をリサイクルして用いても成形品の曲げ強さが低下しない。また、この希土類系ボンド磁石用組成物を成形して得られるボンド磁石は、機械強度が高いのでロータなど各種機械部品として極めて有用である。
本発明の希土類系ボンド磁石用組成物は、希土類−遷移金属系磁石粉末と、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂とベントナイトを含有するリサイクル性に優れた組成物であって、PPS樹脂は、溶融粘度が特定範囲にある架橋型PPS樹脂がバインダー樹脂全量に対して70質量%以上100質量%以下の範囲で配合されてなり、希土類−遷移金属系磁石粉末は、組成物全量に対して70質量%以上97質量%以下配合されてなり、さらにベントナイトは、バインダー樹脂100質量部に対して0.05質量%以上4質量部以下配合されてなる希土類系ボンド磁石用組成物である。
1.希土類−遷移金属系磁石粉末
本発明において用いられる希土類−遷移金属系磁石粉末は、SmまたはNdの少なくとも一種を含有する希土類磁石粉末であって、SmCo系磁石粉末、SmCo17系磁石粉末、Sm−Fe−N系磁石粉末、Nd−Fe−B系磁石粉末、またはこれらの混合物が挙げられる。
SmCo17系磁石粉末は、Coの一部がFe,Cu,Zr,Hfなどで置換されたものを含む。また、Sm−Fe−N系磁石粉末としては、Feの一部がCo,Mn,Niなどで置換されたものも含まれる。またNd−Fe−B系磁石粉末としては、Feの一部がCo,Mn,Niなどで置換されたものも含まれる。
また、SmまたはNdの一部がLa,Ce,Pr,Tb,Dyなどで置換されたものも含まれる。また、これらの磁石粉末については、異方性の磁石粉末でも等方性の磁石粉末でも同様の効果が得られ、磁石用合金の製造方法は還元拡散法、液体急冷法などが採用され、特に限定されない。また希土類磁石粉末の一部をフェライト磁石粉末で置換して、所望の磁気特性になるよう調整することもできる。
磁石粉末の粒径は、通常、500μm以下でよく、300μm以下が好ましく、特に好ましいのは150μm以下である。
ここで、本発明に用いられる磁石粉末の平均粒径は、0.1μm以上30μm以下、好ましくは1μm以上10μm以下である。粒径が大き過ぎて30μmより大きくなると、磁石用組成物の流動特性が悪化したり、得られる磁石の寸法安定性および表面平滑性が悪化する場合がある。逆に、粒径が小さ過ぎて0.1μmより小さいと、加熱混練時や射出成形時の酸化劣化が著しくなって磁気特性が低下する。
また、本発明に用いられる希土類−遷移金属系磁石粉末は、その表面が表面処理剤によって被覆されていることが望ましい。表面処理剤としては、燐酸系化合物、シリカ系化合物、又はトリアジンチオール誘導体などが挙げられる。
燐酸系化合物としては、たとえば特開昭60−13826号公報、特開昭61−9501号公報、特開平02−46703号公報、特開平11−251124号公報などに記載されているものを適用することができる。このうち、特開2003−007521号公報に記載されるものがリサイクル強度の低減を抑える効果が高いという点で特に好ましい。
具体的には、磁石粉末1kgに対して、85%リン酸10〜30gと2−プロパノールなどの有機溶剤1〜2kgを混合した溶液に磁石粉末を混合して1〜120分間処理した後、真空中で100〜200℃に加熱して乾燥することにより得られる。
また、シリカ系化合物としては、たとえばテトラメチルオルソシリケートやテトラエチルオルソシリケートが挙げられる。これを用いればゾルゲル反応により磁石粉末表面に被膜を有効に形成できる。例えば、磁石粉末1kgに対して、シリカ系化合物を30〜80g、水0.1〜0.5gを混合した溶液に混合して1〜120分間処理した後、真空中で50〜150℃に加熱して乾燥することにより得られる。
また、トリアジンチオール誘導体としては、トリアジンチオールの他に、2,4,6−トリメルカプト−s−トリアジンなどが使用できる。これをメタノール、エタノール、2−プロパノールなどのアルコールを溶媒として希釈し、ミキサ内で磁石粉末と撹拌混合し、その後不活性ガス雰囲気中で溶媒を揮発除去すれば被膜を形成することができる。例えば、磁石粉末1kgに対し、トリアジンチオール誘導体3〜8gをアルコール100〜300gに混合した溶液に混合して1〜120分間処理した後、真空中で50〜150℃に加熱して乾燥することにより得られる。
2.ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂
一般に、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂は、ベンゼン環と硫黄原子とが交互に結合した構造の熱可塑性樹脂であり、希土類系ボンド磁石のバインダー樹脂として機能する成分である。
本発明においては、ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂は、300℃、剪断速度600s−1における溶融粘度が200poise以上2000poise以下である架橋型PPS樹脂がバインダー樹脂全量の内、70質量%以上100質量%以下を占めていることが重要である。この条件を満たせば、残部はセミ直鎖型PPS樹脂(部分架橋型PPS樹脂、あるいは半架橋型PPS樹脂とも称される)、あるいは直鎖型PPS樹脂とすることができる。なお、架橋型PPS樹脂は、好ましくは85質量%以上、特に90質量%以上であることがより好ましい。70質量%未満では機械強度を十分に高めることができない。
本発明において、PPS樹脂は架橋率によって区別し、架橋型PPS樹脂とは架橋率が26%以上(例えば、30〜40%)のものを指し、またセミ直鎖型PPS樹脂とは架橋率が5〜25%のもの、直鎖型PPS樹脂とは架橋率が5%未満のものを指すものとする。
磁石粉末がフェライトの場合、直鎖型PPS樹脂は、成形時の高温条件で若干低分子量化するが、希土類磁石粉末である場合にはそれが著しいため、成形品の機械強度が弱いという問題があった。
また直鎖型PPS樹脂は、架橋型PPS樹脂に比べて靭性に優れるとされるが、希土類磁石粉末をフィラーとした場合には、その靭性が急激に劣化する。これは希土類磁石粉末の成分が何らかの働きで直鎖PPS樹脂の分子鎖を切断するためと推定される。そのため直鎖型PPS樹脂を主成分とした磁石用組成物では、その初期材を射出成形して得た成形体では強度低下が大きく、さらに副製されたスプルーやランナー部分等の余剰品を再生したリターン材では、極端な場合、成形すらできなくなっていた。
これに対して、本発明においては、PPS樹脂は、架橋型PPS樹脂をバインダー樹脂の主成分として含有するので、磁石粉末が希土類磁石粉末であっても容易には分子鎖が切断されず、この磁石用組成物の初期材を射出成形して得た成形体においては強度低下が小さく、さらにスプルーやランナーを再生したリターン材でも、成形不能に陥ることはない。
架橋型PPS樹脂の分子量は、得られる樹脂結合型磁石に対して所望する機械的強度が得られる範囲内でできるだけ小さい方が好ましい。ただし、分子量が小さ過ぎると、機械的強度が著しく低下して、成形できなくなる場合がある。また、分子量が大き過ぎると、得られる組成物の流動性が低下して、成形性が悪化する場合がある。
架橋型PPS樹脂の溶融粘度は、分子量に大きく影響し、200poise以上2000poise以下であることが重要である。具体的には、成形時の条件として、温度300℃、剪断速度600s−1での溶融粘度は、200poise以上2000poise以下、特に300poise以上1500poise以下であることが好ましい。200poiseよりも小さいと、機械的強度が著しく低下して、成形できなくなる場合がある。ただし、2000poiseよりも大きいと、得られる組成物の流動性が低下して、成形性が悪化する場合がある。
本発明で用いる架橋型PPS樹脂は、従来公知の方法により容易に合成することができる。すなわち、架橋型PPS樹脂は、分子量が数百〜2千程度の比較的分子量の小さい直鎖状のPPS樹脂を、250℃程度の温度で1〜12時間程度熱処理して、架橋の度合いを示す架橋率が26%以上(例えば、30〜40%程度)、見掛けの分子量が数千〜数万程度になるように架橋させることで製造することができる。
例えば、市販されている架橋型PPS樹脂としては、K−1、K−4〔商品名、(株)トープレン製〕、あるいはサスティール#140、サスティールB−042〔商品名、東ソー(株)製〕などがある。
架橋型PPS樹脂の形状は、パウダー状、ビーズ状、ペレット状のいずれでも良いが、磁石粉末と均一に混合される点でパウダー状が好ましい。
本発明の希土類系ボンド磁石用組成物においては、バインダー樹脂として使用するPPS樹脂は、PPS樹脂全量の内、70質量%以上100質量%以下が架橋型PPS樹脂であることが重要である。なお、残部として直鎖型PPS樹脂および/またはセミ直鎖型PPS樹脂を含有しても良い。架橋型PPS樹脂がPPS樹脂全量の内の70質量%よりも少なくなると、磁石用組成物の初期材を射出成形して得た成形体の機械強度や、初期材成形体の機械強度に対するリターン材成形体の機械強度の強度比が低下するため好ましくない。
セミ直鎖型PPS樹脂および/または直鎖型PPS樹脂を架橋型PPS樹脂と組み合せて用いる場合、これらの溶融粘度は、得られるボンド磁石に対して所望する機械的強度が得られる範囲内でできるだけ低い方が好ましい。また、上記架橋型PPS樹脂と同様に、これらの溶融粘度は、200poise以上であることが好ましい。具体的には、300℃、600s−1(加熱成形時の温度、剪断速度)での溶融粘度は、好ましくは200〜2000poise、特に300〜1500poiseであれば一層好ましい。溶融粘度が200poiseよりも小さいと、機械的強度が著しく低下して、成形できなくなる場合があり、2000poiseよりも大きいと、得られる組成物の流動性が低下して、成形性が悪化する場合がある。
セミ直鎖型PPS樹脂および/または直鎖型PPS樹脂の量は、PPS樹脂成分全量の30質量%未満であることが好ましい。直鎖型PPS樹脂よりもセミ直鎖型PPS樹脂の方が構造的に架橋型PPS樹脂に近いことから、架橋型PPS樹脂を第一成分とすれば、第二成分としてセミ直鎖型PPS樹脂の比率を高めることが好ましい。一方、第二成分として直鎖型PPS樹脂を用いると、高温高湿下で組成物の吸湿が少なくなるが、多過ぎると強度が低下する。
セミ直鎖型PPS樹脂も、上記架橋型PPS樹脂と同様に、従来公知の方法により容易に合成することができる。セミ直鎖型PPS樹脂は、直鎖型PPS樹脂を熱処理して部分架橋させる際の熱処理時間を短くしたり、あるいは処理温度を低くしたりすれば製造することができるが、直鎖型PPS樹脂の架橋は酸素によって促進されるので、熱処理雰囲気中の酸素含有量を少なくして架橋率を調整しても、セミ直鎖型PPS樹脂を製造することができる。実際の製造に際しては、上記3つの方法を適宜組み合わせて架橋率を調整しながら、セミ直鎖型PPS樹脂を製造すれば良い。
セミ直鎖型PPS樹脂としては、(株)トープレン製のT−2(商品名)などの市販品を使用することができる。また、直鎖型PPS樹脂としては、(株)トープレン製のH−1(商品名)、LR−03(商品名)、トープレンPPS LN−1(商品名)などの市販品を使用することができる。
なお、本発明においては、必要に応じてバインダー樹脂の主成分となるポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂以外の熱可塑性樹脂も添加することができる。
本発明で使用することのできる熱可塑性樹脂としては、例えば、6ナイロン、6,6ナイロン、4,6ナイロン、11ナイロン、12ナイロン、芳香族系ナイロンなどのポリアミド樹脂、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレートなどのポリエステル系樹脂、ポリアセタール樹脂、ポリエーテルエーテルケトン樹脂、液晶ポリマ−、これらの樹脂の単量体単位と他種モノマーとの共重合体、並びにこれらの樹脂を脂肪酸などで変性したものが挙げられる。
3.ベントナイト
本発明の希土類系ボンド磁石用組成物においては、バインダー樹脂であるPPS樹脂に加えて、添加剤としてベントナイトを配合する。
一般に、希土類磁石とPPS樹脂を混練する場合、PPS樹脂の熱安定性が低下する。この現象は、希土類磁石粉末の組成物中の充填率が増加するほど、あるいは希土類磁石粉末の比表面積が増加するほど起こり易くなり、これらの現象によって高性能の希土類ボンド磁石組成物が得られなくなり、ボンド磁石の磁気特性の向上を図ることが困難になる場合がある。そこで、本発明においては、ベントナイトを用いることにより、これら重金属イオンを吸着し、ポリマー中のハイドロパーオキサイドの重金属イオンによる接触分解を抑制することができる。
本発明において用いるベントナイトは、平均粒径が100μm以下であることが好ましい。平均粒径が、100μmを超えると、重金属イオンを吸着する表面積が減るためボンド磁石用組成物中のポリマーの分解抑制効果が減るばかりではなく、異方性の磁性粉末の配向を阻害してしまい、磁気特性の低下を招くことがある。平均粒径5μm以上30μm以下のものが好ましく、10μm以上25μm以下がより好ましい。
本発明で使用するベントナイトは、微細孔(直径10Å以上200Å以下)を持つものが好ましい。この微細孔は、内部に網目状に構成されており、その微細孔の壁が大きい表面積(500m/g以上2500m/g以下)となりその表面に重金属イオンを吸着する。
ベントナイトは、粘土鉱物モンモリロナイトを主成分として、石英、オパールなどの珪酸鉱物を副成分として、長石、マイカ、ゼオライトなどの珪酸塩鉱物、カルサイト、ドロマイト、ジプサムなどの炭酸塩鉱物や硫酸塩鉱物などの硫化鉱物を随伴する弱アルカリ性粘土岩の名称である。
ベントナイトには、無機系、有機系の主に2種類あるが、いずれの種類も用いることができる。これらのベントナイトは、単独もしくは2種の混合系で用いることもできる。
4.その他の添加剤
本発明における希土類系ボンド磁石用組成物には、必要に応じて、上記ベントナイト以外の添加剤として、滑剤、安定剤などを添加することができる。
滑剤としては、例えばパラフィンワックス、流動パラフィン、ポリエチレンワックス、ポリプロピレンワックス、エステルワックス、カルナウバワックス、マイクロワックスなどのワックス類;ステアリン酸、1,2−オキシステアリン酸、ラウリン酸、パルミチン酸、オレイン酸などの脂肪酸類;ステアリン酸カルシウム、ステアリン酸バリウム、ステアリン酸マグネシウム、ステアリン酸リチウム、ステアリン酸亜鉛、ステアリン酸アルミニウム、ラウリン酸カルシウム、リノール酸亜鉛、リシノール酸カルシウム、2−エチルヘキソイン酸亜鉛などの脂肪酸塩(金属石鹸類);ステアリン酸アミド、オレイン酸アミド、エルカ酸アミド、ベヘン酸アミド、パルミチン酸アミド、ラウリン酸アミド、ヒドロキシステアリン酸アミド、メチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスステアリン酸アミド、エチレンビスラウリン酸アミド、ジステアリルアジピン酸アミド、エチレンビスオレイン酸アミド、ジオレイルアジピン酸アミド、N−ステアリルステアリン酸アミドなどの脂肪酸アミド類;ステアリン酸ブチルなどの脂肪酸エステル;エチレングリコール、ステアリルアルコールなどのアルコール類;ポリエチレングリコール、ポリプロピレングリコール、ポリテトラメチレングリコールおよびこれら変性物からなるポリエーテル類;ジメチルポリシロキサン、シリコングリースなどのポリシロキサン類;フッ素系オイル、フッ素系グリース、含フッ素樹脂粉末などのフッ素化合物;並びに窒化ケイ素、炭化ケイ素、酸化マグネシウム、アルミナ、二酸化ケイ素、二硫化モリブデンなどの無機化合物粉体が挙げられる。これらの滑剤は、一種単独でも二種以上組み合わせても良い。該滑剤の配合量は、磁石粉末100質量部に対し、通常、1質量部以上10質量部以下とする。
安定剤としては、ビス(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)セバケート、ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)セバケート、1−[2−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−4−{3−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシフェニル)プロピオニルオキシ}−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、8−べンジル−7,7,9,9−テトラメチル−3−オクチル−1,2,3−トリアザスピロ[4,5]ウンデカン−2,4−ジオン、4−べンゾイルオキシ−2,2,6,6−テトラメチルピペリジン、こはく酸ジメチル−1−(2−ヒドロキシエチル)−4−ヒドロキシ−2,2,6,6−テトラメチルピぺリジン重縮合物、ポリ[[6−(1,1,3,3−テトラメチルブチル)イミノ−1,3,5−トリアジン−2,4−ジイル][(2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル)イミノ]へキサメチレン[[2,2,6,6−テトラメチル−4−ピペリジル]イミノ]]、2−(3,5−ジ−第三ブチル−4−ヒドロキシベンジル)−2−n−ブチルマロン酸ビス(1,2,2,6,6−ペンタメチル−4−ピペリジル)などのヒンダードアミン系安定剤;並びにフェノール系、ホスファイト系、チオエーテル系などの抗酸化剤が挙げられる。これらの安定剤も、一種単独でも二種以上組み合わせても良い。該安定剤の配合量は、磁石粉末100質量部に対し、通常、0.05質量部以上10質量部以下とする。
以上説明したように、本発明の希土類ボンド磁石組成物は、上記の通り、(1)希土類磁石粉末は組成物全量に対して70質量%以上97質量%以下配合されてなり、(2)バインダー樹脂としてPPS樹脂は、PPS樹脂全量の内70質量%以上100質量%以下の架橋型PPS樹脂が配合されてなり、さらに(3)ベントナイトがバインダー樹脂100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下配合されてなり、これらが均一に配合されてなる組成物である。
そして、このように構成されることによって、このボンド磁石用組成物の初期材から得た成形体が高い機械強度を有するのみならず、リターン材から得た成形体においてもその機械強度低下を大幅に抑制できる希土類ボンド磁石用組成物とすることができる。
5.希土類系ボンド磁石用組成物の調製
本発明の希土類系ボンド磁石用組成物は、300℃、剪断速度600s−1における溶融粘度が200poise以上2000poise以下である架橋型PPSがバインダー樹脂全量の内、70質量%以上100質量%以下を占めるように配合され、さらにベントナイトおよびその他の添加剤を、均一に混合することにより調製される。
本発明において、磁石粉末の配合量は、その種類にもよるが、組成物全体に対して70質量%以上97質量%以下であり、好ましくは80質量%以上95質量%以下である。通常、磁気特性の高いSmCo17系磁石粉末、SmCo系磁石粉末を用いる場合は、Nd−Fe−B系磁石粉末、Sm−Fe−N系磁石粉末を用いる場合よりも配合量は相対的に少なくできる。
この磁石粉末の配合量が70質量%未満であると、得られる磁石の磁気特性が低下する。逆に、97質量%を超えると、組成物の流動性が極端に低下して成形が困難になったり、たとえ流動性を保ち成形できたとしても、磁性粒子の配向性が悪くなり、磁性粉末の含有率に見合った磁気特性が得られなくなったりする。また、バインダー成分が少なすぎて、磁石の機械的強度が低下し、用途によってはマグネット部品として使用できなくなる。
PPS樹脂の配合量は、磁石粉末100質量部に対して、通常、3質量部以上43質量部以下でよく、好ましくは5質量部以上30質量部以下、より好ましくは5質量部以上20質量部以下である。配合量が磁石粉末100質量部に対して3質量部よりも少ないと、組成物の混練抵抗(トルク)が著しく高まり、流動性が低下して成形困難になる場合がある。逆に、磁石粉末100質量部に対して43質量部よりも多いと、所望の磁気特性のボンド磁石が得られない。
これら成分の混合方法には、各成分を同時に添加する方法、樹脂成分を混合した後、磁石粉末を混合する方法などが挙げられ、これらの中では、磁気特性などの特性が安定する点で、前者の方法が好ましい。
なお、これらベントナイトの添加量は、その種類によって効果が大きく異なるため一概に規定できないが、PPS樹脂100質量部に対して、0.05質量%以上4質量部以下、好ましくは0.1質量部以上3質量部以下、より好ましくは0.1質量%以上2質量部以下である。添加量がPPS樹脂100質量部に対して0.05質量部より少ない場合は、十分なポリマーの分解抑制効果を確保できない。一方、PPS樹脂100質量部に対して4質量部より多い場合は、それ以上の効果はなく、むしろ成形体の密度の低下や表面の荒れ、コストアップなどを生じるため望ましくない。ベントナイトの添加量は、磁石粉末の種類によっても異なり、磁気特性の高いSmCo17系磁性粉末、SmCo系磁性粉末を用いる場合は、同じ大きさのボンド磁石であれば、Nd−Fe−B系磁性粉末、Sm−Fe−N系磁性粉末を用いる場合よりも相対的に少なくてよい。
また、各成分の混合手段は、特に限定されず、例えばリボンブレンダー、タンブラー、ナウターミキサー、ヘンシェルミキサー、スーパーミキサーなどの混合機、並びにバンバリーミキサー、ニーダー、ロール、ニーダールーダー、単軸押出機、二軸押出機などの混練機を用いた方法が挙げられる。得られる組成物の形状は、パウダー状、ビーズ状、ペレット状またはこれらの混合物の形であり、取扱い易さの点でペレット状が好ましい。
本発明によれば、リサイクル性の指標である成形体の強度比R/V(V:初期曲げ強度、R:リサイクル時の曲げ強度)が70%以上である、希土類系ボンド磁石の原材料となるボンド磁石用組成物を調製することができる。
6.希土類系ボンド磁石
希土類系ボンド磁石用組成物は、加熱溶融された後、所望の形状に成形することができる。成形法としては、例えば射出成形法、押出成形法および圧縮成形法が挙げられ、これらの中では、成形体形状の選択肢が多い射出成形法が好ましい。本発明の希土類系ボンド磁石は、射出成形法により得ることができる。
本発明により得られる希土類系ボンド磁石用組成物を用いて得られる希土類系ボンド磁石は、初期曲げ強度(V)が60MPa以上で、リサイクル時の曲げ強度は50MPa以上という優れた機械強度を有するものとなる。言い換えれば、上記の通り、リサイクル性の指標といえる成形体の強度比(R/V)が70%以上の希土類系ボンド磁石を得ることができる。
このようにして得られた希土類系ボンド磁石は、磁気特性に優れ、かつ剛性等の機械的強度に優れる。加えて、例えば、電子機器用モータ部品等の小型で偏平な複雑形状品に用いられ、大量生産が可能、後加工が不要、インサート成形可能等の特長を有しており、特に、金属材料との一体成形部品に好適である。
以下、実施例および比較例を挙げて、本発明を具体的に説明する。なお、各実施例、比較例などに用いた成分、試験方法、評価方法は単なる例示であり、本発明の趣旨を逸脱しない限り、これらに限定されるものではない。
実施例、比較例で使用したボンド磁石用組成物の構成成分の各材料を以下に示す。
<希土類磁石粉末>
・異方性SmCo17系磁石粉末:(株)三徳製
・異方性SmFeMnN合金粉末:住友金属鉱山(株)製
・等方性NdFeB系磁石粉末MQP−B:マグネクエンチインターナショナル製
<架橋型PPS樹脂>
・ポリフェニレンサルファイド:(株)トープレン製、商品名:K−1、溶融粘度300P oise(溶融粘度は300℃、剪断速度600s−1で測定した。以下同じ。)
・ポリフェニレンサルファイド:(株)トープレン製、商品名:K−4、溶融粘度2000 Poise
<直鎖型PPS樹脂>
・ポリフェニレンサルファイド:(株)トープレン製、商品名:H−1、溶融粘度100P oise
・ポリフェニレンサルファイド:(株)トープレン製、商品名:LR−03、溶融粘度30 0Poise
・ポリフェニレンサルファイド:呉羽化学(株)製、商品名:フォートロンW−214、 溶融粘度1800Poise
<ベントナイト>
・ベントナイト1:ベンゲル ブライト11(ホージュン社製)平均粒径0.5〜2 μm
<曲げ強さ評価>
磁石用組成物を射出成形した後、成形体の曲げ強さを評価した。成形体の曲げ強さは、島津製作所製オートグラフAG−5000Eを用いて、標点間距離10mm、ヘッドスピード2mm/minの試験条件で評価を行った。また、初期材の曲げ強さV(MPa)とリターン材の曲げ強さR(MPa)の比R/V(%)を算出し、リサイクル性の指標として70%以上を合格(リサイクル可能)と判断した。
(実施例1)
ベントナイトとして「ベンゲル ブライト11」(ホージュン社製)をPPS樹脂(100質量部)に対して0.1質量部混合し、これに希土類磁石粉末を配合して、プラストミル((株)東洋精機製作所製)で混練した。ここで、希土類磁石粉末としては、(株)三徳製SmCo17系磁石粉末を容積率56.7%で用い、また、PPS樹脂としては、架橋型PPS樹脂である(株)トープレン製の商品名:K−1、溶融粘度300Poise(溶融粘度は、300℃、剪断速度600s−1で測定。以下同じ。)を用いた。なお、樹脂の粘度は、キャピログラフ試験器で測定した。
次に、得られた混練物を射出成形機((株)日本製鋼所製J−35M)に投入し、ノズル温度310℃、金型温度130℃の条件で、幅8mm×厚さ2mm×長さ15mmの成形体に射出成形し、初期材を得た。次に一度射出成形した成形体を粉砕して、再度同じ条件で射出成形を行い、リターン材を得た。得られた初期材、リターン材を上記した曲げ強さ評価を行った。初期材の曲げ強さVが87.2MPaであったのに対し、リターン材の曲げ強さRについても79.0MPaの曲げ強さが得られ、これらの強度比R/Vは90.6%でリサイクル性は合格であり、リサイクルによる強度の低下が少なかった。
(実施例2)
実施例1のベントナイトの添加量をPPS樹脂(100質量部)に対して1.0質量部に変更した以外は同じ条件で混錬物を得て、実施例1と同様にして射出成形体の初期材、リターン材を得た。
得られた初期材、リターン材を上記した曲げ強さ評価を行った。初期材の曲げ強さVが86.3MPaであったのに対し、リターン材の曲げ強さRについても79.6MPaの曲げ強さが得られ、これらの強度比R/Vは92.2%でリサイクル性は合格であった。
(実施例3)
実施例1のベントナイトの添加量をPPS樹脂(100質量部)に対して1.5質量部に変更した以外は同じ条件で混錬物を得て、実施例1と同様にして射出成形体の初期材、リターン材を得た。
得られた初期材、リターン材を上記した曲げ強さ評価を行った。初期材の曲げ強さVが79.2MPaであったのに対し、リターン材の曲げ強さRについても75.3MPaの曲げ強さが得られ、これらの強度比R/Vは95.1%でリサイクル性は合格であった。
(実施例4)
架橋型PPS樹脂を、(株)トープレン製の商品名:K−1(溶融粘度300Poise)から(株)トープレン製のK−4(溶融粘度2000Poise)に変更して使用した以外は実施例2と同じ条件で混錬物を得て、実施例2と同様にして射出成形体の初期材、リターン材を得た。
得られた初期材、リターン材を上記した曲げ強さ評価を行った。初期材の曲げ強さVが90.2MPaであったのに対し、リターン材の曲げ強さRについても82.9MPaの曲げ強さが得られ、これらの強度比R/Vは91.9%でリサイクル性は合格であった。
(実施例5)
PPS樹脂を、架橋型PPS樹脂(株)トープレン製のK−4を70質量%と直鎖型PPS樹脂呉羽化学(株)製フォートロンW−214(溶融粘度1800Poise)を30質量%混合したものを使用した以外は実施例4と同じ条件で混錬物を得て、実施例4と同様にして射出成形体の初期材、リターン材を得た。
得られた初期材、リターン材を上記した曲げ強さ評価を行った。初期材の曲げ強さVが88.5MPaであったのに対し、リターン材の曲げ強さRについても70.1MPaの曲げ強さが得られ、これらの強度比R/Vは79.2%でリサイクル性は合格であった。
(実施例6)
PPS樹脂を、架橋型PPS樹脂(株)トープレン製のK−4を90質量%と直鎖型PPS樹脂トープレン(株)製LR−03(溶融粘度300Poise)を10質量%混合したものを使用した以外は実施例4と同じ条件で混錬物を得て、実施例4と同様にして射出成形体の初期材、リターン材を得た。
得られた初期材、リターン材を上記した曲げ強さ評価を行った。初期材の曲げ強さVが84.3MPaであったのに対し、リターン材の曲げ強さRについても68.2MPaの曲げ強さが得られ、これらの強度比R/Vは80.9%でリサイクル性は合格であった。
(実施例7)
PPS樹脂を、架橋型PPS樹脂(株)トープレン製のK−4を90質量%と直鎖型PPS樹脂トープレン(株)製H−1(溶融粘度100Poise)を10質量%混合したものを使用した以外は実施例4と同じ条件で混錬物を得て、実施例4と同様にして射出成形体の初期材、リターン材を得た。
得られた初期材、リターン材を上記した曲げ強さ評価を行った。初期材の曲げ強さVが80.1MPaであったのに対し、リターン材の曲げ強さRについても67.4MPaの曲げ強さが得られ、これらの強度比R/Vは84.1%でリサイクル性は合格であった。
(実施例8)
磁石粉末にSmFeMnN合金粉末(容積率50%)を用いた以外は、実施例2と同じ条件で混錬物を得て、実施例2と同様にして射出成形体の初期材、リターン材を得た。
得られた初期材、リターン材を上記した曲げ強さ評価を行った。初期材の曲げ強さVが63.5MPaであったのに対し、リターン材の曲げ強さRについても55.4MPaの曲げ強さが得られ、これらの強度比R/Vは87.2%でリサイクル性は合格であった。
(実施例9)
磁石粉末にSmFeMnN合金粉末(容積率50%)を用いた以外は、実施例5と同じ条件で混錬物を得て、実施例5と同様にして射出成形体の初期材、リターン材を得た。
得られた初期材、リターン材を上記した曲げ強さ評価を行った。初期材の曲げ強さVが64.3MPaであったのに対し、リターン材の曲げ強さRについても55.9MPaの曲げ強さが得られ、これらの強度比R/Vは86.9%でリサイクル性は合格であった。
(実施例10)
磁石粉末に等方性のNdFeB系磁石粉末MQP−B(容積率50%)を用いた以外は、実施例2と同じ条件で混錬物を得て、実施例2と同様にして射出成形体の初期材、リターン材を得た。
得られた初期材、リターン材を上記した曲げ強さ評価を行った。初期材の曲げ強さVが69.3MPaであったのに対し、リターン材の曲げ強さRについても55.7MPaの曲げ強さが得られ、これらの強度比R/Vは80.4%でリサイクル性は合格であった。
(実施例11)
磁石粉末に等方性のNdFeB系磁石粉末MQP−B(容積率50%)を用いた以外は、実施例5と同じ条件で混錬物を得て、実施例5と同様にして射出成形体の初期材、リターン材を得た。
得られた初期材、リターン材を上記した曲げ強さ評価を行った。初期材の曲げ強さVが70.3MPaであったのに対し、リターン材の曲げ強さRについても57.1MPaの曲げ強さが得られ、これらの強度比R/Vは81.2%でリサイクル性は合格であった。
(比較例1)
実施例1と同様に、磁石粉末にSmCo17系を用い、架橋型PPS樹脂としては、(株)トープレン製、商品名:K−1、溶融粘度300Poise(溶融粘度は300℃、600s−1で測定した)を使用したが、ベントナイトは配合しなかった。
実施例1と同様にして、初期材およびリターン材を得て、双方の成形体の曲げ強さを評価した。初期材の曲げ強さが83.6MPaであったのに対し、リターン材は49.3MPaの曲げ強さしか得られず、これらの強度比R/Vは59.0%でリサイクル性は不合格であった。
(比較例2)
実施例4と同様に、磁石粉末にSmCo17系を用い、架橋型PPS樹脂としては、(株)トープレン製、商品名:K−4を使用したが、ベントナイトは配合しなかった。
実施例1と同様にして、初期材およびリターン材を得て、双方の成形体の曲げ強さを評価した。初期材の曲げ強さが86.2MPaであったのに対し、リターン材は49.8MPaの曲げ強さしか得られず、これらの強度比R/Vは57.8%でリサイクル性は不合格であった。
(比較例3)
実施例1と同様に、磁石粉末にSmCo17系を用い、架橋型PPS樹脂としては、(株)トープレン製、商品名:K−1、溶融粘度300Poise(溶融粘度は300℃、600s−1で測定した)を使用したが、ベントナイトは、ホージュン社製ベンゲル ブライト11を使用し、PPS樹脂(100質量部)に対して5.0質量部配合した。ベントナイトを多量に配合したため混練することができず、組成物化できないものとなった。
(比較例4)
実施例2と同様に、磁石粉末にSmCo17系を用い、ベントナイトも同じ条件で添加したが、PPS樹脂は、架橋型でない直鎖型PPS樹脂呉羽化学(株)製フォートロンW−214(溶融粘度1800Poise)のみを使用した。
実施例2と同様にして、初期材およびリターン材を得て、双方の成形体の曲げ強さを評価した。初期材の曲げ強さは59.8MPaであったのに対し、リターン材は30.2MPaの曲げ強さしか得られず、これらの強度比R/Vは50.5%でリサイクル性は不合格であった。
(比較例5)
実施例8と同様に、磁石粉末にSmFeMnN合金粉末を用い、架橋型PPS樹脂としては、(株)トープレン製、商品名:K−1、溶融粘度300Poise(溶融粘度は300℃、600s−1で測定した)を使用したが、ベントナイトは配合しなかった。
実施例1と同様にして、初期材およびリターン材を得て、双方の成形体の曲げ強さを評価した。初期材の曲げ強さは61.9MPaであったのに対し、リターン材は36.4MPaの曲げ強さしか得られず、これらの強度比R/Vは58.8%でリサイクル性は不合格であった。
(比較例6)
磁石粉末にSmFeMnN合金粉末を用い、架橋型PPS樹脂としては、(株)トープレン製、商品名:K−4を使用した。ベントナイトは、配合しなかった。
実施例4と同様にして、初期材およびリターン材を得て、双方の成形体の曲げ強さを評価した。初期材の曲げ強さは63.2MPaであったのに対し、リターン材は36.8MPaの曲げ強さしか得られず、これらの強度比R/Vは58.2%でリサイクル性は不合格であった。
(比較例7)
実施例10と同様に、磁石粉末に等方性NdFeB系磁石粉末MQP−Bを用い、架橋型PPS樹脂としては、(株)トープレン製、商品名:K−1、溶融粘度300Poise(溶融粘度は300℃、600s−1で測定した)を使用したがベントナイトは配合しなかった。
実施例1と同様にして、初期材およびリターン材を得て、双方の成形体の曲げ強さを評価した。初期材の曲げ強さは69.8MPaであったのに対し、リターン材は40.1MPaの曲げ強さしか得られず、これらの強度比R/Vは57.4%でリサイクル性は不合格であった。
(比較例8)
磁石粉末に等方性NdFeB系磁石粉末MQP−Bを用い、架橋型PPS樹脂としては、(株)トープレン製、商品名:K−4を使用したが、ベントナイトは配合しなかった。
実施例4と同様にして、初期材およびリターン材を得て、双方の成形体の曲げ強さを評価した。初期材の曲げ強さは70.6MPaであったのに対し、リターン材は41.0MPaの曲げ強さしか得られず、これらの強度比R/Vは58.1%でリサイクル性は不合格であった。
≪評価≫
実施例1〜11に見られる通り、本発明のPPS樹脂組成物は、特定の架橋型PPS樹脂をバインダーとし、これにベントナイトを配合しているので、ベントナイトが磁石粉末に由来する重金属イオンを吸着してポリマーの接触分解を抑制できることから、曲げ強度に優れた射出成形体が得られており、リサイクルした際にも曲げ強度の低下が少ない。
なお、実施例4と、実施例5〜7を対比すると、バインダーが架橋型PPS樹脂のみの場合に対して、直鎖型PPS樹脂を配合すると、いずれも曲げ強度に優れた射出成形体が得られ、リサイクルも可能であるが、磁石粉末に由来する重金属イオンによってポリマーが接触分解して、物性が低下していることが分かる。
また、実施例2と、実施例8,10を対比すると、異方性SmCo17系磁石粉末を用いている実施例2に対して、異方性SmFeMnN合金粉末又は等方性NdFeB系磁石粉末を用いている実施例8,10では、磁石粉末の配合量が相対的に多かったために、いずれも曲げ強度に優れた射出成形体が得られ、リサイクルも可能であるが、磁石粉末に由来する重金属イオンによってポリマーが接触分解して、強度がやや低下していることが分かる。
これに対して、比較例1、2、5〜8では、ベントナイトを配合しなかったために、磁石粉末に由来する重金属イオンによってポリマーが接触分解して、曲げ強度に優れた射出成形体が得られないか、リサイクルした際に物性が大幅に低下した。
また、比較例3、4では、ベントナイトを配合したが、その配合量が多すぎたために、混練できないか、PPS樹脂が直鎖型であったために、磁石粉末に由来する重金属イオンによってポリマーが接触分解して、曲げ強度に優れた射出成形体が得られず、リサイクルした際に物性が大幅に低下した。
以上のように、本発明の希土類系ボンド磁石用組成物を用いて得られる希土類系ボンド磁石は、十分な耐熱性を有し、機械強度が高く、しかもリサイクル性に優れていることが分かった。

Claims (3)

  1. 希土類−遷移金属系磁石粉末と、バインダー樹脂としてポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂とを含む希土類系ボンド磁石用組成物であって、
    前記ポリフェニレンサルファイド(PPS)樹脂は、溶融粘度(300℃、剪断速度600s−1で測定)が200poise以上2000poise以下であり、
    且つバインダー樹脂全量に対して架橋型PPS樹脂が70質量%以上100質量%以下の範囲で配合されてなり、
    前記希土類−遷移金属系磁石粉末は、組成物全量に対して70質量%以上97質量%以下配合されてなり、
    さらに添加剤としてベントナイトが、バインダー樹脂100質量部に対して0.05質量部以上4質量部以下を配合されてなる
    ことを特徴とする希土類系ボンド磁石用組成物
  2. 前記ベントナイトは、平均粒径が100μm以下であることを特徴とする請求項1に記載の希土類系ボンド磁石用組成物。
  3. 前記希土類−遷移金属系磁石粉末は、SmまたはNdの少なくとも一種の希土類元素を含有することを特徴とする請求項1または2に記載の希土類系ボンド磁石用組成物。


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