JP2020055916A - モールド成形体、モールド成形体の製造方法、およびモールド成形体の柔軟性調整方法 - Google Patents

モールド成形体、モールド成形体の製造方法、およびモールド成形体の柔軟性調整方法 Download PDF

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浩一 小鷹
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本章 渡邉
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Abstract

【課題】低い加熱温度で成形可能で、柔軟性を有し、しかも生分解性を備えた透明なモールド成形体、そのようなモールド成形体を製造可能な製造方法、および、モールド成形体の柔軟性を調整可能な柔軟性調整方法を提供する。【解決手段】構造タンパク質を含む組成物のモールド成形体であって、透明性を有すると共に、水分率が7質量%以上であるモールド成形体。【選択図】なし

Description

本発明は、モールド成形体、モールド成形体の製造方法、およびモールド成形体の柔軟性調整方法に関する。
従来から、ポリプロピレンやポリエチレンテレフタレート、アクリル樹脂、或いはメラミン樹脂やエポキシ樹脂等、熱可塑性、熱硬化性等を問わず様々な透明な合成樹脂が、食器や各種の容器、ウィンドウ部材等の透明性が要求される各種の用途に用いられてきている。それら透明な合成樹脂は、無機ガラスに比して軽量で、しかも、加熱成形によって、無機ガラスでは成形困難な形状に容易に成形できるといった利点を有している。
ところが、合成樹脂の加熱成形温度は、一般に120℃を超え、樹脂の種類や成形方法等によっては250℃を超える場合もある。それゆえ、従来の透明な合成樹脂製品の製造時には、多大なエネルギーが必要とされる。しかも、従来の透明な合成樹脂製品は微生物によって分解されないため、そのまま廃棄されると様々な環境問題をも引き起こすといった問題を内在していた。そこで本出願人等は、下記特許文献1〜3等において、構造タンパク質等のポリペプチドを含む組成物を加熱および加圧して得られる透明なモールド成形体を提案した。この透明なモールド成形体は、ポリペプチドを主成分としていることで生分解性を有する。
国際公開第2017/047503号 国際公開第2017/047504号 国際公開第2018/043698号
しかしながら、そのようなモールド成形体にあっても、たとえば、120℃以下の低い温度で安定的に成形することは容易ではなかった。また、そのようなモールド成形体は、高い曲げ弾性率を有するものの、曲げ弾性率の高さが、かえって、特定の用途に使用する際の阻害要因となり得る。従来のモールド成形体では、たとえば、柔軟性が要求される用途への使用が制限されるといった問題点があった。
本発明は、低い加熱温度で成形可能で、柔軟性を有し、しかも生分解性を備えた透明なモールド成形体、そのようなモールド成形体を製造可能な製造方法、および、モールド成形体の柔軟性を調整可能な柔軟性調整方法を提供することを課題とする。
本発明は、以下の[1]〜[8]を提供する。
[1] 構造タンパク質を含む組成物のモールド成形体であって、透明性を有すると共に、水分率が7質量%以上であるモールド成形体。
[2] 6.5GPa以下の曲げ弾性率を有する、[1]に記載のモールド成形体。
[3] 前記構造タンパク質が、天然クモ糸タンパク質および天然クモ糸タンパク質に由来するタンパク質からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、[1]または[2]に記載のモールド成形体。
[4] 加熱加圧成形体である、[1]〜[3]のいずれか1つに記載のモールド成形体。
[5] [1]〜[4]のいずれか1つに記載のモールド成形体を製造する方法であって、構造タンパク質を含み、該構造タンパク質に対して水分率が7質量%以上である組成物を準備する準備工程と、前記組成物を加熱および加圧する成形工程と、を含むモールド成形体の製造方法。
[6] 前記成形工程での前記組成物の加熱温度が120℃以下である、[5]に記載のモールド成形体の製造方法。
[7] 構造タンパク質を含む組成物の、該構造タンパク質に対する水分率を7質量%以上の任意の値となるように調整する調整工程と、前記組成物を加熱および加圧する成形工程と、を含むモールド成形体の柔軟性調整方法。
[8] 前記構造タンパク質が、天然クモ糸タンパク質および天然クモ糸タンパク質に由来するタンパク質からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、[7]に記載のモールド成形体の柔軟性調整方法。
上記モールド成形体は構造タンパク質を原料とすることから、生分解性を有している。水分率が7質量%以上であるモールド成形体は、透明性を有すると共に、従来の樹脂に対して低い曲げ弾性率(たとえば6.5GPa以下)を有しており、したがって柔軟性を有する。このような特性は、本発明のモールド成形体が適用され得る用途に幅広さをもたらす。
また、モールド成形体の製造方法は、構造タンパク質に対して水分率が7%以上である組成物を加熱および加圧する成形工程を含む。この特徴に起因して、この製造方法は、低い加熱温度(たとえば120℃以下)での成形を可能とし、モールド成形体に柔軟性を付与する。さらに、モールド成形体の柔軟性調整方法は、構造タンパク質に対する水分率を7%以上の任意の値となるように組成物を調整する調整工程を含む。この特徴に起因して、この柔軟性調整方法は、モールド成形体の柔軟性の調整を可能とする。
本発明は、低い加熱温度で成形可能で、柔軟性を有し、しかも生分解性を備えた透明なモールド成形体を提供する。また本発明は、そのようなモールド成形体を製造可能とする。さらに、本発明は、モールド成形体の柔軟性の調整を可能とする。
成形時における金型の温度と内圧の関係を示すグラフである。 成形時の水分率と、曲げ弾性率および樹脂化温度との関係を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
本実施形態に係るモールド成形体は、構造タンパク質を含む組成物を鋳型(モールド)に導入し、成形加工等により得られるものである。
[構造タンパク質]
本実施形態に係るモールド成形体は、構造タンパク質を含む組成物からなる。構造タンパク質とは、生体構造を構築する役割を有するタンパク質であり、酵素、ホルモン、抗体等の機能タンパク質とは異なる。構造タンパク質としては、クモ糸タンパク質、カイコシルクタンパク質、ケラチン、コラ−ゲン、エラスチン及びレシリン等の天然構造タンパク質、並びにそれらのタンパク質由来の構造タンパク質等が挙げられる。本実施形態に係るモールド成形体を構成する構造タンパク質としては、天然クモ糸タンパク質に由来する、いわゆる組換えクモ糸タンパク質が好適に用いられる。すなわち、構造タンパク質は、天然クモ糸タンパク質および天然クモ糸タンパク質に由来するタンパク質からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する。
クモ糸タンパク質は、例えば、牽引糸タンパク質や横糸タンパク質であってもよい。
クモ糸タンパク質であって牽引糸タンパク質に由来する組換えクモ糸タンパク質として、例えば、式1:[(A)モチーフ−REP1]、又は式2:[(A)モチーフ−REP1]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質が挙げられる。組換えクモ糸タンパク質は、ドメイン配列のN末端側及びC末端側のいずれか一方又は両方に更にアミノ酸配列(N末端配列及びC末端配列)が付加されていてもよい。N末端配列及びC末端配列は、これに限定されるものではないが、典型的には、クモ糸タンパク質に特徴的なアミノ酸モチーフの反復を有さない領域であり、100残基程度のアミノ酸からなる。
ここで、本明細書において「組換えクモ糸タンパク質」とは、人為的に製造されたクモ糸タンパク質(人造クモ糸タンパク質)を意味する。組換えクモ糸タンパク質は、そのドメイン配列が、天然由来のクモ糸タンパク質のアミノ酸配列とは異なるクモ糸タンパク質であってもよく、天然由来のクモ糸タンパク質のアミノ酸配列と同一であるクモ糸タンパク質であってもよい。本明細書でいう「天然由来のクモ糸タンパク質1」もまた、式1:[(A)モチーフ−REP1]、又は式2:[(A)モチーフ−REP1]−(A)モチーフで表されるドメイン配列を含むタンパク質である。
「組換えクモ糸タンパク質」は、天然由来のクモ糸タンパク質のアミノ酸配列をそのまま利用したものであってもよく、天然由来のクモ糸タンパク質のアミノ酸配列に依拠してそのアミノ酸配列を改変したもの(例えば、クローニングした天然由来のクモ糸タンパク質の遺伝子配列を改変することによりアミノ酸配列を改変したもの)であってもよく、また天然由来のクモ糸タンパク質に依らず人工的に設計及び合成したもの(例えば、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより所望のアミノ酸配列を有するもの)であってもよい。
本明細書において「ドメイン配列」とは、クモ糸タンパク質特有の結晶領域(典型的には、アミノ酸配列の(A)モチーフに相当する。)と非晶領域(典型的には、アミノ酸配列のREPに相当する。)を生じるアミノ酸配列であり、式1:[(A)モチーフ−REP1]、又は式2:[(A)モチーフ−REP1]−(A)モチーフで表されるアミノ酸配列を意味する。ここで、(A)モチーフは、アラニン残基を主とするアミノ酸配列を示し、アミノ酸残基数は2〜27である。(A)モチーフのアミノ酸残基数は、2〜20、4〜27、4〜20、8〜20、10〜20、4〜16、8〜16、又は10〜16の整数であってよい。また、(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数の割合は40%以上であればよく、60%以上、70%以上、80%以上、83%以上、85%以上、86%以上、90%以上、95%以上、又は100%(アラニン残基のみで構成されることを意味する。)であってもよい。ドメイン配列中に複数存在する(A)モチーフは、少なくとも7つがアラニン残基のみで構成されてもよい。REPは2〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。REPは、10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列であってもよい。mは2〜300の整数を示し、10〜300の整数であってもよい。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。具体的には配列番号1で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をあげることができる。
クモ糸タンパク質であって横糸タンパク質に由来の組換えクモ糸タンパク質としては、例えば、式3:[REP2]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式3中、REP2はGly−Pro−Gly−Gly−Xから構成されるアミノ酸配列を示し、Xはアラニン(Ala)、セリン(Ser)、チロシン(Tyr)及びバリン(Val)からなる群から選ばれる一つのアミノ酸を示す。oは8〜300の整数を示す。)をあげることができる。
具体的には配列番号2で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をあげることができる。配列番号2で示されるアミノ酸配列は、NCBIデータベースから入手したアメリカジョロウグモの鞭毛状絹タンパク質の部分的な配列(NCBIアクセッション番号:AAF36090、GI:7106224)のリピート部分及びモチーフに該当するN末端から1220残基目から1659残基目までのアミノ酸配列(PR1配列と記す。)と、NCBIデータベースから入手したアメリカジョロウグモの鞭毛状絹タンパク質の部分配列(NCBIアクセッション番号:AAC38847、GI:2833649)のC末端から816残基目から907残基目までのC末端アミノ酸配列を結合し、結合した配列のN末端に配列番号7で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
コラーゲン由来のタンパク質として、例えば、式4:[REP3]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式4中、pは5〜300の整数を示す。REP3は、Gly一X一Yから構成されるアミノ酸配列を示し、X及びYはGly以外の任意のアミノ酸残基を示す。複数存在するREP3は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。具体的には、配列番号3で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号3で示されるアミノ酸配列は、NCBIデータベースから入手したヒトのコラーゲンタイプ4の部分的な配列(NCBIのGenBankのアクセッション番号:CAA56335.1、GI:3702452)のリピート部分及びモチーフに該当する301残基目から540残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号7で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
レシリン由来のタンパク質として、例えば、式5:[REP4]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式5中、qは4〜300の整数を示す。REP4はSer一J一J一Tyr一Gly一U−Proから構成されるアミノ酸配列を示す。Jは任意のアミノ酸残基を示し、特にAsp、Ser及びThrからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。Uは任意のアミノ酸残基を示し、特にPro、Ala、Thr及びSerからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。複数存在するREP4は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。具体的には、配列番号4で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号4で示されるアミノ酸配列は、レシリン(NCBIのGenBankのアクセッション番号NP 611157、Gl:24654243)のアミノ酸配列において、87残基目のThrをSerに置換し、かつ95残基目のAsnをAspに置換した配列の19残基目から321残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号8で示されるアミノ酸配列(タグ配列)が付加されたものである。
エラスチン由来のタンパク質として、例えば、NCBIのGenBankのアクセッション番号AAC98395(ヒト)、I47076(ヒツジ)、NP786966(ウシ)等のアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。具体的には、配列番号5で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号5で示されるアミノ酸配列は、NCBIのGenBankのアクセッション番号AAC98395のアミノ酸配列の121残基目から390残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号7で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
ケラチン由来のタンパク質として、例えば、カプラ・ヒルクス(Capra hircus)のタイプIケラチン等を挙げることができる。具体的には、配列番号6で示されるアミノ酸配列(NCBIのGenBankのアクセッション番号ACY30466のアミノ酸配列)を含むタンパク質を挙げることができる。
<組換えタンパク質の製造方法>
組換えタンパク質は、例えば、当該組換えタンパク質をコードする核酸配列と、当該核酸配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで形質転換された宿主により、当該核酸を発現させることにより生産することができる。
組換えタンパク質をコードする遺伝子の製造方法は特に制限されない。例えば、天然の構造タンパク質をコードする遺伝子を利用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などで増幅しクローニングする方法、又は、化学的な合成によって、遺伝子を製造することができる。遺伝子の化学的な合成方法も特に制限されず、例えば、NCBIのウェブデータベースなどより入手した構造タンパク質のアミノ酸配列情報をもとに、AKTA oligopilot plus 10/100(GEヘルスケア・ジャパン株式会社)などで自動合成したオリゴヌクレオチドをPCRなどで連結する方法によって遺伝子を化学的に合成することができる。この際に、タンパク質の精製や確認を容易にするため、上記のアミノ酸配列のN末端に開始コドン及びHis10タグからなるアミノ酸配列を付加したアミノ酸配列からなるタンパク質、をコードする遺伝子を合成してもよい。
調節配列は、宿主における組換えタンパク質の発現を制御する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合配列、転写終結配列等)であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。プロモーターとして、宿主細胞中で機能し、組換えタンパク質を発現誘導可能な誘導性プロモーターを用いても良い。誘導性プロモーターは、誘導物質(発現誘導剤)の存在、リプレッサー分子の非存在、又は温度、浸透圧若しくはpH値の上昇若しくは低下等の物理的要因により、転写を制御できるプロモーターである。
発現ベクターの種類は、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、人工染色体ベクター等、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製が可能、又は宿主の染色体中への組込みが可能で、組換えタンパク質をコードする核酸を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが好適に用いられる。
宿主として、原核生物、並びに酵母、糸状真菌、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞等の真核生物のいずれも好適に用いることができる。
原核生物の好ましい例として、エシェリヒア属、ブレビバチルス属、セラチア属、バチルス属、ミクロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属及びシュードモナス属等に属する細菌を挙げることができる。エシェリヒア属に属する微生物として、例えば、エシェリヒア・コリ等を挙げることができる。ブレビバチルス属に属する微生物として、例えば、ブレビバチルス・アグリ等を挙げることができる。セラチア属に属する微生物として、例えば、セラチア・リクエファシエンス等を挙げることができる。バチルス属に属する微生物として、例えば、バチルス・サチラス等を挙げることができる。ミクロバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ミクロバクテリウム・アンモニアフィラム等を挙げることができる。ブレビバクテリウム属に属する微生物として、例えば、ブレビバクテリウム・ディバリカタム等を挙げることができる。コリネバクテリウム属に属する微生物として、例えば、コリネバクテリウム・アンモニアゲネス等を挙げることができる。シュードモナス(Pseudomonas)属に属する微生物として、例えば、シュードモナス・プチダ等を挙げることができる。
原核生物を宿主とする場合、組換えタンパク質をコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、pBTrp2(ベーリンガーマンハイム社製)、pGEX(Pharmacia社製)、pUC18、pBluescriptII、pSupex、pET22b、pCold、pUB110、pNCO2(特開2002−238569号公報)等を挙げることができる。
真核生物の宿主としては、例えば、酵母及び糸状真菌(カビ等)を挙げることができる。酵母としては、例えば、サッカロマイセス属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属等に属する酵母を挙げることができる。糸状真菌としては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ(Trichoderma)属等に属する糸状真菌を挙げることができる。
真核生物を宿主とする場合、組換えタンパク質をコードする核酸を導入するベクターとしては、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)等を挙げることができる。上記宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110 (1972)〕、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、コンピテント法等を挙げることができる。
発現ベクターで形質転換された宿主による核酸の発現方法としては、直接発現のほか、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
組換えタンパク質は、例えば、発現ベクターで形質転換された宿主を培養培地中で培養し、培養培地中に組換えタンパク質を生成蓄積させ、該培養培地から採取することにより製造することができる。宿主を培養培地中で培養する方法は、宿主の培養に通常用いられる方法に従って行うことができる。
宿主が、大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物である場合、培養培地として、宿主が資化し得る炭素源、窒素源及び無機塩類等を含有し、宿主の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、上記形質転換微生物が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、及びこれらを含有する糖蜜、デンプン及びデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、並びにエタノール及びプロパノール等のアルコール類を用いることができる。窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物を用いることができる。
無機塩としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅及び炭酸カルシウムを用いることができる。
大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物の培養は、例えば、振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことができる。培養温度は、例えば、15〜40℃である。培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中の培養培地のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。培養培地のpHの調整は、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム及びアンモニア等を用いて行うことができる。
また、培養中必要に応じて、アンピシリン及びテトラサイクリン等の抗生物質を培養培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
発現させた組換えタンパク質の単離、精製は通常用いられている方法で行うことができる。例えば、当該組換えタンパク質が、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、宿主細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁した後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー及びダイノミル等により宿主細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、タンパク質の単離精製に通常用いられている方法、すなわち、溶媒抽出法、硫安等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等の方法を単独又は組み合わせて使用し、精製標品を得ることができる。
また、組換えタンパク質が細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に宿主細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として組換えタンパク質の不溶体を回収する。回収した組換えタンパク質の不溶体は蛋白質変性剤で可溶化することができる。該操作の後、上記と同様の単離精製法により組換えタンパク質の精製標品を得ることができる。当該組換えタンパク質が細胞外に分泌された場合には、培養上清から当該組換えタンパク質を回収することができる。すなわち、培養物を遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
[成形体の製造方法]
本実施形態に係るモールド成形体の製造方法は、たとえば上述のようにして得られる構造タンパク質を含む組成物を加熱および加圧する成形工程を含む。この成形工程において、組成物は、構造タンパク質に対して7質量%以上の水分率を有する。すなわち、本実施形態に係るモールド成形体の製造方法は、成形工程に先立って、構造タンパク質に対して水分率が7質量%以上である組成物を準備する準備工程を含む。
組成物は、構造タンパク質を含んでいればよい。組成物は、構造タンパク質のみであってもよく、構造タンパク質及び任意の添加成分(例えば、可塑剤、着色剤、フィラー、合成樹脂等)を含んでいてもよい。上記添加成分の含有量は、構造タンパク質の合計量の50質量%以下にすることが好ましい。組成物は、典型的には粉末状(凍結乾燥粉末等)又は繊維状(紡糸して得られる繊維等)の形状を有している。成形組成物は、そのような形状の構造タンパク質を含む組成物の融着体であり得る。
組成物の水分率は、公知の水分計を用いて計測することができる。水分率の計測方法としては、たとえば、近赤外線法、電気抵抗法、電気容量法、乾燥重量法、またはカールフィッシャー法を含む化学測定法の各種の計測方法が挙げられる。公知の計測方法のうちいずれかの方法を用いて、組成物の水分率の計測を行うことができる。たとえば、組成物を十分に撹拌して均一化した後に、その一部分を取り出して、その部分の水分率を計測してもよい。組成物の水分率を調整する場合には、組成物を所定の雰囲気下に置いて組成物を乾燥または加湿しつつ、組成物を所望の水分率に調整することができる。
原料組成物の水分率(構造タンパク質に対する質量%)は、7質量%以上である。一方で、組成物の水分率の上限値は、40質量%であってもよく、30質量%であってもよく、25質量%であってもよく、20質量%であってもよく、15質量%であってもよく、10質量%未満であってもよい。組成物の水分率の範囲は、たとえば、7〜40質量%であってもよく、7〜30質量%であってもよく、7〜25質量%であってもよく、7〜20質量%であってもよく、7〜15質量%であってもよく、7質量%以上且つ10質量%未満であってもよい。本実施形態では、7質量%以上の範囲内で水分率を任意の値となるように調整することにより、モールド成形体の曲げ弾性率を低く抑える、すなわち柔軟性を有するモールド成形体を得る。このことは、本実施形態のモールド成形体の製造方法が、別の観点では、モールド成形体の柔軟性調整方法でもあることを意味する。
なお、水分率が高過ぎると、成形工程における加圧量をより大きくしなければならない可能性がある。製造設備の設備コストやランニングコスト等との兼ね合いにより、水分率の範囲を決定すればよい。その意味で、水分率の範囲は、たとえば、8〜20質量%であってもよく、9〜15質量%であってもよい。組成物の水分率を20質量%程度にした場合、ほぼ常温での成形が可能となる。
本実施形態に係るモールド成形体の製造方法は、準備工程で準備された組成物を加熱および加圧する成形工程を含む。本実施形態に係るモールド成形体の柔軟性調整方法は、調整工程で水分率が任意の値に調整された組成物を加熱および加圧する成形工程を含む。
成形工程では、たとえば、構造タンパク質を含む組成物を鋳型(モールド)に導入し、組成物を加熱および加圧しつつ成形加工して、モールド成形体を得る。成形工程では、たとえば加圧成形機を用いることができる。この加圧成形機の構成は、特に限定はされないが、たとえば、上記特許文献3(国際公開第2018/043698号)に記載された加圧成形機と同じ構成を有する加圧成形機が用いられ得る。加圧成形機は、たとえば金型を加熱する機能を有する。加熱および加圧の方法についても、特許文献3に記載された方法が用いられ得る。加圧成形機は、金型を加熱することにより、内部の成形体を加熱する。加圧成形機は、たとえば、内部の成形体の温度を計測するように構成されてもよい。なお、上記装置および方法に限られず、他の公知の成形方法、および成形体の加熱加圧方法が採用されてもよい。
成形工程において、金型の加熱温度は、120℃以下であることが好ましい。金型の加熱温度は、110℃以下であってもよく、100℃以下であってもよく、80℃以下であってもよく、60℃以下であってもよく、40℃以下であってもよく、30℃以下であってもよく、20℃以下であってもよい。本実施形態のモールド成形体の製造方法において、成形温度(加熱温度)は、原料組成物の水分率に依存し得る。たとえば、成形温度が低くなればなるほど昇温に要する時間が短くなり、その結果として、成形時間の短縮が図られ得る。金型の加熱温度は、30℃以上であることが好ましい。加熱温度が低すぎると、水分率が高すぎる場合と同様、コスト高につながる可能性がある。加圧は、20MPa以上の圧力で行うことが好ましい。
成形工程における金型の加熱は、金型の内部の圧力(内圧)の状態に応じて定義される金型の温度である樹脂化温度を基準として行われてもよい。この樹脂化温度については後述する。
これらの準備工程(または調整工程)および成形工程を経て、モールド成形体が製造される。組成物の水分率を上記した範囲とすることにより、成形温度を低く抑えつつ、曲げ弾性率の低い(柔軟性を有する)、透明なモールド成形体を得ることができる。モールド成形体は、加熱加圧成形体である。
モールド成形体の水分率は、7質量%以上である。モールド成形体の水分率は、原料組成物の水分率に影響され得る。原料組成物の水分率が高いほど、モールド成形体の水分率も高くなる。モールド成形体の水分率は、たとえば、原料組成物の水分率と同程度である。モールド成形体の透明性は、目視で判断可能であるが、光学透過率測定器を用い、例えば220〜800nmの波長範囲で0.1秒間の積算時間とした場合に、透過率が50%以上であるものが好適である。また、柔軟性に関して言えば、本実施形態のモールド成形体は、たとえば6.5GPa以下の曲げ弾性率を有する。
本実施形態では、原料組成物(またはモールド成形体)の水分率を高めれば高めるほど、モールド成形体の曲げ弾性率を低下させる(柔軟性を高める)ことができる。すなわち、原料組成物(またはモールド成形体)の水分率を調整することで、モールド成形体の柔軟性をコントロールすることができる。このことは、曲げ弾性率を高めることを目的として、組成物に水を加えている上記特許文献3(国際公開第2018/043698号)とは、異なる技術的思想であると言える。
[予備実験1]
後述する実施例で用いたのと同じタンパク質粉末を用いて、タンパク質粉末が樹脂化するタイミングと、加圧成形機の内圧の変化との関係を確認した。より詳細には、上記特許文献3(国際公開第2018/043698号)に記載された加圧成形機と同じ構成を有する加圧成形機を用い、実験用に、金型にガラス窓を設けて金型内部を可視化する改造を施した。さらに、金型の内面に圧力センサーを設置した。
具体的な実験手順は、以下のとおりである。
a)タンパク質粉末(Spiber(株)製改変フィブロイン:PRT410)を金型内に投入
b)型締めを行い、内圧が40MPaになるように型締力を調整し、金型の内圧値をリセット(ゼロにする)
c)昇温を開始し(設定40℃/min)、金型内の寸法が変わらないよう型締力を調整
このとき、内圧の上昇が見られた。
d)樹脂化の完了を目視にて確認し、その時点から、金型の温度を5分間保持
樹脂化の確認は、金型内部の色に基づいて行った。粉末の状態では、金型内部の色は不透明の白色であり、樹脂化が始まると金型内部の色が変化し始め、樹脂化が完了すると、金型内部の色は半透明の薄茶色になった。
e)上記樹脂化完了後、金型の温度が80℃になるまで、スポットクーラーにて冷却
f)金型を開放し、モールド成形体を取出し
g)20℃/60%RHの環境下で24時間保管後、後述の曲げ試験を実施
図1に、モールド成形体の成形時における金型の温度と内圧の関係を示す。予備実験1の結果、内圧のピークで樹脂化が始まり(図中のAの部分)、内圧が下がりきったところで樹脂化が完了する(図中のBの部分)ことが確認できた。本明細書において、内圧がピークに達したとき(すなわち下降に転じたとき)の温度、言い換えれば図中のAの部分に相当する金型の温度が、「樹脂化温度」と定義される。
[予備実験2]
続いて、後述する実施例で用いたのと同じタンパク質粉末を用いて水分率の調整を行い、水分率の違いによる樹脂化温度を確認した。具体的な実験手順としては、まず、加熱乾燥式水分計((株)エー・アンド・デイ製、MS−70)を用いて、1分間の重量変化率が0.01wt%以下になるまで130℃で粉末を乾燥し、この状態をもって水分率0%(すなわち水分が抜けきった状態)とした。続いて、23℃、60%RHの雰囲気下で3分間放置した粉末の水分率を測定したところ2.6%であった。同様に、5分間放置した粉末の水分率を測定したところ5.2%であり、6分間放置した粉末の水分率を測定したところ7.0%であり、7分間放置した粉末の水分率を測定したところ8.0%であり、20分間放置した粉末を測定したところ10.7%であった。
そして、予備実験1と同じ設備を用いて、上記のようにして得た各粉末を樹脂化させ、樹脂化温度を調べた。その結果、水分率0%の粉末を樹脂化させた場合、樹脂化温度は195℃であった。水分率2.6%の粉末を樹脂化させた場合、樹脂化温度は145℃であった。水分率5.2%の粉末を樹脂化させた場合、樹脂化温度は125℃であった。水分率8.0%の粉末を樹脂化させた場合、樹脂化温度は110℃であった。水分率10.7%の粉末を樹脂化させた場合、樹脂化温度は80℃であった。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(1)構造タンパク質発現株の作製
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列をGenBankのウェブデータベースより取得した後、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施し、さらにN末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加して、配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する組換えフィブロイン(「PRT410」ともいう。)を設計した。
次に、PRT410をコードする遺伝子を合成委託した。その結果、遺伝子の5’末端直上流にNdeIサイト、及び3’末端直下流にEcoRIサイトを付加した遺伝子を得た。当該遺伝子をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした後、NdeI及びEcoRIで制限酵素処理し、タンパク質発現ベクターpET−22b(+)に組み換えた。
(2)タンパク質の発現
上記で得られたPRT410をコードする遺伝子を含むpET22b(+)発現ベクターで、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。形質転換された大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養後、同培養液を、表1に示すシード培養用培地100mLに、OD600が0.005となるように添加した。培養液の温度を30℃に保ち、OD600が5になるまでフラスコにて、さらに約15時間培養を行い、シード培養液を得た。
Figure 2020055916
得られたシード培養液を、表2に示す生産培地500mLを添加したジャーファーメンターに、OD600が0.05となるように添加した。培養液の温度を37℃に保ち、pH6.9で一定になるように制御し、培養液中の溶存酸素濃度を溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにして培養した。なお、消泡剤として、アデカノールLG−295S((株)ADEKA製)を使用した。
Figure 2020055916
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにし、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)水溶液を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、目的のタンパク質を発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存した目的とするタンパク質サイズのバンドの出現により、目的とするタンパク質の発現を確認した。
(3)構造タンパク質の精製
IPTGを添加してから2時間後に回収した菌体を20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8Mグアニジン塩酸塩、10mMリン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris−HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質を遠心分離により回収し、凍結乾燥機で水分を除き、凍結乾燥粉末を回収した。
<モールド成形体の作製>
次に、得られた凍結乾燥粉末の水分を調整した。水分率の調整は、上述の予備実験と同様に行い、(構造タンパク質の質量に対する)水分率が互いに異なる6種類の原料組成物、すなわち、水分率0%、2.6%、5.2%、8.0%、10.7%のクモ糸フィブロイン粉末(構造タンパク質粉末)を得た。
続いて、加圧成形機を用いて、上記粉末を加熱および加圧し、モールド成形体を得た。ここでも、上記特許文献3(国際公開第2018/043698号)に記載の実施例にて用いられたものと同じ加圧成形機を用いた。金型の貫通孔の寸法は、35mm×15mmであった。水を加えることなく、成形品の厚さが2mmとなるように調整された量の粉末を貫通孔内に導入した。次に、金型を閉じ、内圧が40MPaになるまで加圧し、続いて40℃/minで昇温するように加熱した。加熱の際には、型内寸法が変わらないように型締力を調整した。樹脂化の完了を目視にて確認したら、その時点で加熱を中止し(この時点が、予備実験2で確認した樹脂化温度になった時点に相当する)、冷却後に樹脂化物を金型内から取り出して、35mm×15mm×2mmの直方体形状のモールド成形体(試験片)を得た。
これらのモールド成形体の透明性を目視にて確認したところ、いずれのモールド成形体も、半透明の薄茶色を呈していた。すなわち、いずれのモールド成形体も、透明性を有していた。
水分率0%、2.6%および5.2%の粉末を用いて作製されたモールド成形体は、それぞれ、比較例1、比較例2および比較例3に相当する。水分率7.0%、8.0%および10.7%の粉末を用いて作製されたモールド成形体は、それぞれ、実施例1、実施例2および実施例3に相当する。
<曲げ試験>
上記のように作製した各成形体を20℃/60%RHの環境下で24時間保管した後、オートグラフ((株)島津製作所製、AGS−X)を用いて三点曲げ試験をそれぞれ行った。その際、三点曲げ試験の支点間距離を27mmに固定し、測定速度を1mm/分とした。また、各モールド成形体の寸法をマイクロメーターで測定した後、支点に設置して曲げ弾性率を測定した。
曲げ試験の結果を表3および図2に示す。水分率が7%を下回ると、曲げ弾性率が6.5GPaを超えてしまい、所望の柔軟性が得られない。一方、水分率が7%以上であると、樹脂化温度(すなわち成形工程における加熱温度)は120℃以下と低く抑えられつつも、6.5GPa以下の曲げ弾性率が実現される。このように、原料組成物の水分率を7%以上とすることで、比較的低い加熱温度で、柔軟性を有し、しかも生分解性を備えた透明なモールド成形体を得ることができる。また、原料組成物の水分率を任意の値に調整することにより、モールド成形体の柔軟性(曲げ弾性率)を調整できることがわかる。
Figure 2020055916
さらに、曲げ弾性率の測定時の各試験片の水分率をカールフィッシャー式水分計(Metrohm社製、商品名:860KF Thermoprep、85l Titrando、801 Stirrer)を用いて測定した。このとき試験片を180℃に加熱した。その結果、各試験片の水分率は、それぞれの原料組成物の水分率と同程度であった。

Claims (8)

  1. 構造タンパク質を含む組成物のモールド成形体であって、透明性を有すると共に、水分率が7質量%以上であるモールド成形体。
  2. 6.5GPa以下の曲げ弾性率を有する、請求項1に記載のモールド成形体。
  3. 前記構造タンパク質が、天然クモ糸タンパク質および天然クモ糸タンパク質に由来するタンパク質からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項1または2に記載のモールド成形体。
  4. 加熱加圧成形体である、請求項1〜3のいずれか一項に記載のモールド成形体。
  5. 請求項1〜4のいずれか一項に記載のモールド成形体を製造する方法であって、
    構造タンパク質を含み、該構造タンパク質に対して水分率が7質量%以上である組成物を準備する準備工程と、
    前記組成物を加熱および加圧する成形工程と、
    を含むモールド成形体の製造方法。
  6. 前記成形工程での前記組成物の加熱温度が120℃以下である、請求項5に記載のモールド成形体の製造方法。
  7. 構造タンパク質を含む組成物の、該構造タンパク質に対する水分率を7質量%以上の任意の値となるように調整する調整工程と、
    前記組成物を加熱および加圧する成形工程と、
    を含むモールド成形体の柔軟性調整方法。
  8. 前記構造タンパク質が、天然クモ糸タンパク質および天然クモ糸タンパク質に由来するタンパク質からなる群より選ばれる少なくとも1種を含有する、請求項7に記載のモールド成形体の柔軟性調整方法。
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