JP2020055762A - モールド成形体の製造方法 - Google Patents

モールド成形体の製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP2020055762A
JP2020055762A JP2018185825A JP2018185825A JP2020055762A JP 2020055762 A JP2020055762 A JP 2020055762A JP 2018185825 A JP2018185825 A JP 2018185825A JP 2018185825 A JP2018185825 A JP 2018185825A JP 2020055762 A JP2020055762 A JP 2020055762A
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
amino acid
protein
acid sequence
seq
molded article
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Pending
Application number
JP2018185825A
Other languages
English (en)
Inventor
あゆみ 安部
Ayumi Abe
あゆみ 安部
浩一 小鷹
Koichi KOTAKA
浩一 小鷹
本章 渡邉
Motoaki Watanabe
本章 渡邉
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Kojima Industries Corp
Spiber Inc
Original Assignee
Kojima Press Industry Co Ltd
Spiber Inc
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Kojima Press Industry Co Ltd, Spiber Inc filed Critical Kojima Press Industry Co Ltd
Priority to JP2018185825A priority Critical patent/JP2020055762A/ja
Publication of JP2020055762A publication Critical patent/JP2020055762A/ja
Pending legal-status Critical Current

Links

Images

Landscapes

  • Manufacture Of Macromolecular Shaped Articles (AREA)
  • Peptides Or Proteins (AREA)

Abstract

【課題】成形温度を低く抑えつつ、曲げ強度の高いタンパク質成形体を得ることを可能とし、従来にないタンパク質成形体の製造方法を提供する。【解決手段】構造タンパク質を含む組成物であって2%以上7%未満の水分率を有する上記組成物を加熱および加圧する成形工程を含む、モールド成形体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、モールド成形体の製造方法に関する。
軽量化、コストダウン、成形加工の容易化等を目的として、金属材料を有機材料で代替する試みがなされている。たとえば、特許文献1には、曲げ弾性率の高いタンパク質成形体として、天然クモ糸タンパク質に由来するポリペプチドを含むモールド成形体が記載されている。特許文献2には、曲げ弾性率と曲げ強度の高いタンパク質成形体の製造方法として、加水して成形後に乾燥させる製造方法が提案されている。
国際公開第2017/047504号 国際公開第2018/043698号
上記した従来の技術では、成形温度に関する検討が十分になされているとは言えない。従来、成形温度を低く抑えつつ、曲げ強度の高いタンパク質成形体を得ることは難しかった。本発明は、成形温度を低く抑えつつ、曲げ強度の高いタンパク質成形体を得ることができる、モールド成形体の製造方法を提供する。
本発明は、以下の[1]〜[3]を提供する。
[1] 構造タンパク質を含む組成物であって2%以上7%未満の水分率を有する上記組成物を加熱および加圧する成形工程を含む、モールド成形体の製造方法。
[2] 上記成形工程に先立って、上記構造タンパク質を含む組成物の水分率を2%以上7%未満に調整する水分率調整工程を含む、[1]に記載のモールド成形体の製造方法。
[3] 上記構造タンパク質がクモ糸フィブロインである、[1]または[2]に記載のモールド成形体の製造方法。
上記モールド成形体は構造タンパク質を原料とすることから、生分解性を有している。また、モールド成形体の製造方法は、2%以上7%未満の水分率を有する組成物を加熱および加圧して成形体を得るという工程(成形工程)を含むことを特徴としている。この特徴に起因して、この製造方法は、成形温度を低く抑えつつ、曲げ強度の高いタンパク質成形体を得ることを可能とする。このような低い成形温度と曲げ強度高さを両立するような製造方法は、従来にないモールド成形体の製造方法である。
本発明は、成形温度を低く抑えつつ、曲げ強度の高いタンパク質成形体を得ることを可能とし、従来にないモールド成形体の製造方法を提供する。
成形時における金型の温度と内圧の関係を示すグラフである。 成形時の水分率と、曲げ強度、曲げ弾性率および樹脂化温度との関係を示すグラフである。
以下、本発明の好適な実施形態について説明する。ただし、本発明は下記実施形態に何ら限定されるものではない。
本実施形態に係るモールド成形体の製造方法は、構造タンパク質を含む成形体の製造方法である。本実施形態に係るモールド成形体の製造方法では、構造タンパク質を含む組成物が用いられる。
[構造タンパク質]
構造タンパク質とは、生体構造を構築する役割を有するタンパク質であり、酵素、ホルモン、抗体等の機能タンパク質とは異なる。構造タンパク質としては、例えば、天然に存在するフィブロイン、コラ−ゲン、レシリン、エラスチン及びケラチン等の天然型構造タンパク質を挙げることができる。天然に存在するフィブロインとして、昆虫及びクモ類が産生するフィブロインが知られている。本実施形態において、構造タンパク質はスパイダーシルクタンパク質を含むことが好ましい。
本実施形態に係る構造タンパク質は、クモ糸フィブロインであることが好ましい。クモ糸フィブロインには、天然クモ糸フィブロイン、及び天然クモ糸フィブロインに由来する改変フィブロインが含まれる。天然クモ糸フィブロインとしては、例えば、クモ類が産生するスパイダーシルクタンパク質が挙げられる。「改変フィブロイン」とは、天然由来のフィブロインとは異なるアミノ酸配列を有するフィブロインを意味する。なお、本明細書において、「改変フィブロイン」と「組換えフィブロイン」とは同意である。
昆虫が産生するフィブロインとしては、例えば、ボンビックス・モリ(Bombyx mori)、クワコ(Bombyx mandarina)、天蚕(Antheraea yamamai)、柞蚕(Anteraea pernyi)、楓蚕(Eriogyna pyretorum)、蓖蚕(Pilosamia Cynthia ricini)、樗蚕(Samia cynthia)、栗虫(Caligura japonica)、チュッサー蚕(Antheraea mylitta)、ムガ蚕(Antheraea assama)等のカイコが産生する絹タンパク質、スズメバチ(Vespa simillima xanthoptera)の幼虫が吐出するホーネットシルクタンパク質が挙げられる。
昆虫が産生するフィブロインのより具体的な例としては、例えば、カイコ・フィブロインL鎖(GenBankアクセッション番号M76430(塩基配列)、AAA27840.1(アミノ酸配列))が挙げられる。
クモには最大7種類の絹糸腺が存在し、それぞれ性質の異なるフィブロイン(スパイダーシルクタンパク質)を産生する。スパイダーシルクタンパク質は、その源泉の器官にしたがって、高い靭性を有する大瓶状スパイダータンパク質(major ampullate spider protein、MaSp)、高度な伸長力を有する小瓶状スパイダータンパク質(minor ampullate spider protein、MiSp)、並びに鞭状(flagelliform(Flag))、管状(tubuliform)、集合(aggregate)、ブドウ状(aciniform)及びナシ状(pyriform)の各スパイダーシルクタンパク質と命名されている。
クモ類が産生するフィブロインとしては、例えば、オニグモ、ニワオニグモ、アカオニグモ、アオオニグモ及びマメオニグモ等のオニグモ属(Araneus属)に属するクモ、ヤマシロオニグモ、イエオニグモ、ドヨウオニグモ及びサツマノミダマシ等のヒメオニグモ属(Neoscona属)に属するクモ、コオニグモモドキ等のコオニグモモドキ属(Pronus属)に属するクモ、トリノフンダマシ及びオオトリノフンダマシ等のトリノフンダマシ属(Cyrtarachne属)に属するクモ、トゲグモ及びチブサトゲグモ等のトゲグモ属(Gasteracantha属)に属するクモ、マメイタイセキグモ及びムツトゲイセキグモ等のイセキグモ属(Ordgarius属)に属するクモ、コガネグモ、コガタコガネグモ及びナガコガネグモ等のコガネグモ属(Argiope属)に属するクモ、キジロオヒキグモ等のオヒキグモ属(Arachnura属)に属するクモ、ハツリグモ等のハツリグモ属(Acusilas属)に属するクモ、スズミグモ、キヌアミグモ及びハラビロスズミグモ等のスズミグモ属(Cytophora属)に属するクモ、ゲホウグモ等のゲホウグモ属(Poltys属)に属するクモ、ゴミグモ、ヨツデゴミグモ、マルゴミグモ及びカラスゴミグモ等のゴミグモ属(Cyclosa属)に属するクモ、及びヤマトカナエグモ等のカナエグモ属(Chorizopes属)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質、並びにアシナガグモ、ヤサガタアシナガグモ、ハラビロアシダカグモ及びウロコアシナガグモ等のアシナガグモ属(Tetragnatha属)に属するクモ、オオシロカネグモ、チュウガタシロカネグモ及びコシロカネグモ等のシロカネグモ属(Leucauge属)に属するクモ、ジョロウグモ及びオオジョロウグモ等のジョロウグモ属(Nephila属)に属するクモ、キンヨウグモ等のアズミグモ属(Menosira属)に属するクモ、ヒメアシナガグモ等のヒメアシナガグモ属(Dyschiriognatha属)に属するクモ、クロゴケグモ、セアカゴケグモ、ハイイロゴケグモ及びジュウサンボシゴケグモ等のゴケグモ属(Latrodectus属)に属するクモ、及びユープロステノプス属(Euprosthenops属)に属するクモ等のアシナガグモ科(Tetragnathidae科)に属するクモが産生するスパイダーシルクタンパク質が挙げられる。スパイダーシルクタンパク質としては、例えば、MaSp(MaSp1及びMaSp2)、ADF(ADF3及びADF4)等の牽引糸タンパク質、MiSp(MiSp1及びMiSp2)等が挙げられる。
クモ類が産生するフィブロインのより具体的な例としては、例えば、fibroin−3(adf−3)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47010(アミノ酸配列)、U47855(塩基配列))、fibroin−4(adf−4)[Araneus diadematus由来](GenBankアクセッション番号AAC47011(アミノ酸配列)、U47856(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 1[Nephila clavipes由来](GenBankアクセッション番号AAC04504(アミノ酸配列)、U37520(塩基配列))、major angu11ate spidroin 1[Latrodectus hesperus由来](GenBankアクセッション番号ABR68856(アミノ酸配列)、EF595246(塩基配列))、dragline silk protein spidroin 2[Nephila clavata由来](GenBankアクセッション番号AAL32472(アミノ酸配列)、AF441245(塩基配列))、major anpullate spidroin 1[Euprosthenops australis由来](GenBankアクセッション番号CAJ00428(アミノ酸配列)、AJ973155(塩基配列))、及びmajor ampullate spidroin 2[Euprosthenops australis](GenBankアクセッション番号CAM32249.1(アミノ酸配列)、AM490169(塩基配列))、minor ampullate silk protein 1[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14589.1(アミノ酸配列))、minor ampullate silk protein 2[Nephila clavipes](GenBankアクセッション番号AAC14591.1(アミノ酸配列))、minor ampullate spidroin−like protein[Nephilengys cruentata](GenBankアクセッション番号ABR37278.1(アミノ酸配列)等が挙げられる。
天然由来のフィブロインのより具体的な例としては、更に、NCBI GenBankに配列情報が登録されているフィブロインを挙げることができる。例えば、NCBI GenBankに登録されている配列情報のうちDIVISIONとしてINVを含む配列の中から、DEFINITIONにspidroin、ampullate、fibroin、「silk及びpolypeptide」、又は「silk及びprotein」がキーワードとして記載されている配列、CDSから特定のproductの文字列、SOURCEからTISSUE TYPEに特定の文字列の記載された配列を抽出することにより確認することができる。
構造タンパク質は、上記天然型構造タンパク質に由来するポリペプチド、すなわち組換えポリペプチドであってもよい。例えば、組換えフィブロインは、いくつかの異種タンパク質生産系で産生されており、その製造方法として、トランスジェニック・ヤギ、トランスジェニック・カイコ、又は組換え植物若しくは哺乳類細胞が利用されている(非特許文献2参照)。
組換えフィブロインは、例えば、クローニングした天然由来のフィブロインの遺伝子配列から(A)モチーフをコードする配列の1又は複数を欠失させることにより得ることができる。また、例えば、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から1又は複数の(A)モチーフが欠失したことに相当するアミノ酸配列を設計し、設計したアミノ酸配列をコードする核酸を化学合成することにより得ることもできる。いずれの場合においても、天然由来のフィブロインのアミノ酸配列から(A)モチーフが欠失したことに相当する改変に加え、更に1又は複数のアミノ酸残基を置換、欠失、挿入及び/又は付加したことに相当するアミノ酸配列の改変を行ってもよい。アミノ酸残基の置換、欠失、挿入及び/又は付加は、部分特異的突然変異誘発法等の当業者に周知の方法により行うことができる。具体的には、Nucleic Acid Res.10,6487(1982)、Methods in Enzymology,100,448(1983)等の文献に記載されている方法に準じて行うことができる。
大吐糸管しおり糸タンパク質の組換えポリペプチドは、例えば、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式1中、(A)モチーフは4〜20アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示し、かつ(A)モチーフ中の全アミノ酸残基数に対するアラニン残基数が80%以上である。REPは10〜200アミノ酸残基から構成されるアミノ酸配列を示す。mは8〜300の整数を示す。複数存在する(A)モチーフは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。複数存在するREPは、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)として表すことができる。具体的には配列番号12で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質をあげることができる。
コラーゲンの組換えポリペプチドとして、例えば、式2:[REP2]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式2中、oは5〜300の整数を示す。REP2は、Gly−X−Yから構成されるアミノ酸配列を示し、X及びYはGly以外の任意のアミノ酸残基を示す。複数存在するREP2は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。具体的には、配列番号13で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号13で示されるアミノ酸配列は、NCBIデータベースから入手したヒトのコラーゲンタイプ4の部分的な配列(NCBIのGenbankのアクセッション番号:CAA56335.1、GI:3702452)のリピート部分及びモチーフに該当する301残基目から540残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
レシリンの組換えポリペプチドとして、例えば、式3:[REP3]で表されるドメイン配列を含むタンパク質(ここで、式3中、pは4〜300の整数を示す。REP3はSer−J−J−Tyr−Gly−U−Proから構成されるアミノ酸配列を示す。Jは任意のアミノ酸残基を示し、特にAsp、Ser及びThrからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。Uは任意のアミノ酸残基を示し、特にPro、Ala、Thr及びSerからなる群から選ばれるアミノ酸残基であることが好ましい。複数存在するREP3は、互いに同一のアミノ酸配列でもよく、異なるアミノ酸配列でもよい。)を挙げることができる。具体的には、配列番号14で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号14で示されるアミノ酸配列は、レシリン(NCBIのGenbankのアクセッション番号NP 611157、Gl:24654243)のアミノ酸配列において、87残基目のThrをSerに置換し、かつ95残基目のAsnをAspに置換した配列の19残基目から321残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号17で示されるアミノ酸配列(タグ配列)が付加されたものである。
エラスチンの組換えポリペプチドとして、例えば、NCBIのGenbankのアクセッション番号AAC98395(ヒト)、I47076(ヒツジ)、NP786966(ウシ)等のアミノ酸配列を有するタンパク質を挙げることができる。具体的には、配列番号15で示されるアミノ酸配列を含むタンパク質を挙げることができる。配列番号15で示されるアミノ酸配列は、NCBIのGenbankのアクセッション番号AAC98395のアミノ酸配列の121残基目から390残基目までのアミノ酸配列のN末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)が付加されたものである。
ケラチンの組換えポリペプチドとして、例えば、カプラ・ヒルクス(Capra hircus)のタイプIケラチン等を挙げることができる。具体的には、配列番号16で示されるアミノ酸配列(NCBIのGenbankのアクセッション番号ACY30466のアミノ酸配列)を含むタンパク質を挙げることができる。
組換えポリペプチドは、(i)配列番号2、配列番号4若しくは配列番号10で示されるアミノ酸配列、又は(ii)配列番号2、配列番号4若しくは配列番号10で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換えフィブロインであってもよい。
(i)配列番号2、配列番号4若しくは配列番号10で示されるアミノ酸配列を含む、組換えフィブロインについて説明する。配列番号2で示されるアミノ酸配列は、天然由来のフィブロインに相当する配列番号1で示されるアミノ酸配列(天然由来のフィブロインに相当)から、N末端側からC末端側に向かって2つおきに(A)モチーフを欠失させ、更にC末端配列の手前に[(A)モチーフ−REP]を1つ挿入したものである。配列番号4で示されるアミノ酸配列は、配列番号2で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものである。配列番号10で示されるアミノ酸配列は、配列番号4で示されるアミノ酸配列の各(A)モチーフのC末端側に2つのアラニン残基を挿入し、更に一部のグルタミン(Q)残基をセリン(S)残基に置換し、配列番号4の分子量とほぼ同じとなるようにN末端側の一部のアミノ酸を欠失させたものである。なお、配列番号3で示されるアミノ酸配列は、配列番号1で示されるアミノ酸配列のREP中の全てのGGXをGQXに置換したものである。
(ii)配列番号2、配列番号4若しくは配列番号10で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換えフィブロインについて説明する。(ii)組換えフィブロインは、配列番号2、配列番号4又は配列番号10で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含むものである。(ii)組換えフィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
上述の組換えフィブロインは、N末端及びC末端のいずれか一方又は両方にタグ配列を含んでいてもよい。これにより、組換えフィブロインの単離、固定化、検出及び可視化等が可能となる。
タグ配列として、例えば、他の分子との特異的親和性(結合性、アフィニティ)を利用したアフィニティタグを挙げることができる。アフィニティタグの具体例として、ヒスチジンタグ(Hisタグ)を挙げることができる。Hisタグは、ヒスチジン残基が4から10個程度並んだ短いペプチドで、ニッケル等の金属イオンと特異的に結合する性質があるため、金属キレートクロマトグラフィー(chelating metal chromatography)による組換えフィブロインの単離に利用することができる。タグ配列の具体例として、例えば、配列番号5で示されるアミノ酸配列(Hisタグを含むアミノ酸配列)が挙げられる。
また、グルタチオンに特異的に結合するグルタチオン−S−トランスフェラーゼ(GST)、マルトースに特異的に結合するマルトース結合タンパク質(MBP)等のタグ配列を利用することもできる。
さらに、抗原抗体反応を利用した「エピトープタグ」を利用することもできる。抗原性を示すペプチド(エピトープ)をタグ配列として付加することにより、当該エピトープに対する抗体を結合させることができる。エピトープタグとして、HA(インフルエンザウイルスのヘマグルチニンのペプチド配列)タグ、mycタグ、FLAGタグ等を挙げることができる。エピトープタグを利用することにより、高い特異性で容易に組換えフィブロインを精製することができる。
さらにタグ配列を特定のプロテアーゼで切り離せるようにしたものも使用することができる。当該タグ配列を介して吸着したタンパク質をプロテアーゼ処理することにより、タグ配列を切り離した組換えフィブロインを回収することもできる。
タグ配列を含む組換えフィブロインのより具体的な例として、(iii)配列番号7、配列番号9若しくは配列番号11で示されるアミノ酸配列、又は(iv)配列番号7、配列番号9若しくは配列番号11で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換えフィブロインを挙げることができる。
組換えポリペプチドは、(iii)配列番号7、配列番号9又は配列番号11で示されるアミノ酸配列、又は(iv)配列番号7、配列番号9又は配列番号11で示されるアミノ酸配列と90%以上の配列同一性を有するアミノ酸配列を含む、組換えフィブロインであってもよい。
配列番号6、7、8、9及び11で示されるアミノ酸配列は、それぞれ配列番号1、2、3、4及び10で示されるアミノ酸配列のN末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(Hisタグを含む)を付加したものである。(iv)組換えフィブロインもまた、式1:[(A)モチーフ−REP]で表されるドメイン配列を含むタンパク質である。上記配列同一性は、95%以上であることが好ましい。
構造タンパク質は、組換えポリペプチドを含むことが好ましい。構造タンパク質として組換えポリペプチドを含むことにより、得られるモールド成形体の曲げ弾性率、曲げ強度及び硬度を所望の数値に調整することが可能である。
[構造タンパク質を発現する組換え細胞]
組換えポリペプチドの製造方法について、以下に詳述する。目的とする組換えポリペプチドは、例えば、構造タンパク質をコードする遺伝子配列と、当該遺伝子配列に作動可能に連結された1又は複数の調節配列とを有する発現ベクターで形質転換された宿主により、当該遺伝子を発現させることにより生産することができる。
目的とする組換えポリペプチドをコードする遺伝子の製造方法は特に制限されない。例えば、天然の構造タンパク質をコードする遺伝子を利用して、ポリメラーゼ連鎖反応(PCR)などで増幅しクローニングする方法、又は、化学的な合成によって、遺伝子を製造することができる。遺伝子の化学的な合成方法も特に制限されず、例えば、NCBIのウェブデータベースなどより入手した構造タンパク質のアミノ酸配列情報をもとに、AKTA oligopilot plus 10/100(GEヘルスケア・ジャパン株式会社製)などで自動合成したオリゴヌクレオチドをPCRなどで連結する方法によって遺伝子を化学的に合成することができる。この際に、タンパク質の精製や確認を容易にするため、上記のアミノ酸配列のN末端に開始コドン及びHis10タグからなるアミノ酸配列を付加したポリペプチドをコードする遺伝子を合成してもよい。
調節配列は、宿主における組換えタンパク質の発現を制御する配列(例えば、プロモーター、エンハンサー、リボソーム結合配列、転写終結配列等)であり、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。プロモーターとして、宿主細胞中で機能し、目的とするタンパク質を発現誘導可能な誘導性プロモーターを用いても良い。誘導性プロモーターは、誘導物質(発現誘導剤)の存在、リプレッサー分子の非存在、又は温度、浸透圧若しくはpH値の上昇若しくは低下等の物理的要因により、転写を制御できるプロモーターである。
発現ベクターの種類は、プラスミドベクター、ウイルスベクター、コスミドベクター、フォスミドベクター、人工染色体ベクター等、宿主の種類に応じて適宜選択することができる。発現ベクターとしては、宿主細胞において自立複製が可能、又は宿主の染色体中への組込みが可能で、目的とする組換えポリペプチドをコードする遺伝子を転写できる位置にプロモーターを含有しているものが好適に用いられる。
宿主として、原核生物、並びに酵母、糸状真菌、昆虫細胞、動物細胞及び植物細胞等の真核生物のいずれも好適に用いることができる。
原核生物の好ましい例として、エシェリヒア属、ブレビバチルス属、セラチア属、バチルス属、ミクロバクテリウム属、ブレビバクテリウム属、コリネバクテリウム属及びシュードモナス属等に属する細菌を挙げることができる。
目的とする組換えポリペプチドをコードする遺伝子を導入するベクターとしては、例えば、pBTrp2(ベーリンガーマンハイム社製)、pGEX(Pharmacia社製)、pUC18、pBluescriptII、pSupex、pET22b、pCold、pUB110、pNCO2(特開2002−238569号公報参照)等を挙げることができる。
真核生物の宿主としては、例えば、酵母及び糸状真菌(カビ等)を挙げることができる。
酵母としては、例えば、サッカロマイセス属、ピキア属、シゾサッカロマイセス属等に属する酵母を挙げることができる。糸状真菌としては、例えば、アスペルギルス属、ペニシリウム属、トリコデルマ(Trichoderma)属等に属する糸状真菌を挙げることができる。
ベクターとしては、例えば、YEP13(ATCC37115)、YEp24(ATCC37051)等を挙げることができる。
上記宿主細胞への発現ベクターの導入方法としては、上記宿主細胞へDNAを導入する方法であればいずれも用いることができる。例えば、カルシウムイオンを用いる方法〔Proc. Natl. Acad. Sci. USA,69,2110 (1972)参照〕、エレクトロポレーション法、スフェロプラスト法、プロトプラスト法、酢酸リチウム法、コンピテント法等を挙げることができる。
発現ベクターで形質転換された宿主による遺伝子の発現方法としては、直接発現のほか、モレキュラー・クローニング第2版に記載されている方法等に準じて、分泌生産、融合タンパク質発現等を行うことができる。
目的とする組換えポリペプチドは、例えば、本発明に係る発現ベクターで形質転換された宿主を培養培地中で培養し、培養培地中に当該タンパク質を生成蓄積させ、該培養培地から採取することにより製造することができる。本発明に係る宿主を培養培地中で培養する方法は、宿主の培養に通常用いられる方法に従って行うことができる。
本発明に係る宿主が、大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物である場合、本発明に係る宿主の培養培地として、該宿主が資化し得る炭素源、窒素源及び無機塩類等を含有し、該宿主の培養を効率的に行える培地であれば天然培地、合成培地のいずれを用いてもよい。
炭素源としては、上記形質転換微生物が資化し得るものであればよく、例えば、グルコース、フラクトース、スクロース、及びこれらを含有する糖蜜、デンプン及びデンプン加水分解物等の炭水化物、酢酸及びプロピオン酸等の有機酸、並びにエタノール及びプロパノール等のアルコール類を用いることができる。
窒素源としては、例えば、アンモニア、塩化アンモニウム、硫酸アンモニウム、酢酸アンモニウム及びリン酸アンモニウム等の無機酸又は有機酸のアンモニウム塩、その他の含窒素化合物、並びにペプトン、肉エキス、酵母エキス、コーンスチープリカー、カゼイン加水分解物、大豆粕及び大豆粕加水分解物、各種発酵菌体及びその消化物を用いることができる。
無機塩類としては、例えば、リン酸第一カリウム、リン酸第二カリウム、リン酸マグネシウム、硫酸マグネシウム、塩化ナトリウム、硫酸第一鉄、硫酸マンガン、硫酸銅及び炭酸カルシウムを用いることができる。
大腸菌等の原核生物又は酵母等の真核生物の培養は、例えば、振盪培養又は深部通気攪拌培養等の好気的条件下で行うことができる。培養温度は、例えば、15〜40℃である。培養時間は、通常16時間〜7日間である。培養中の培養培地のpHは3.0〜9.0に保持することが好ましい。培養培地のpHの調整は、無機酸、有機酸、アルカリ溶液、尿素、炭酸カルシウム及びアンモニア等を用いて行うことができる。
また、培養中必要に応じて、アンピシリン及びテトラサイクリン等の抗生物質を培養培地に添加してもよい。プロモーターとして誘導性のプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときには、必要に応じてインデューサーを培地に添加してもよい。例えば、lacプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはイソプロピル−β−D−チオガラクトピラノシド等を、trpプロモーターを用いた発現ベクターで形質転換した微生物を培養するときにはインドールアクリル酸等を培地に添加してもよい。
本発明に係る組換えポリペプチドは、タンパク質の単離精製に通常用いられている方法で単離及び精製することができる。例えば、当該組換えポリペプチドが、細胞内に溶解状態で発現した場合には、培養終了後、宿主細胞を遠心分離により回収し、水系緩衝液に懸濁した後、超音波破砕機、フレンチプレス、マントンガウリンホモゲナイザー及びダイノミル等により宿主細胞を破砕し、無細胞抽出液を得る。該無細胞抽出液を遠心分離することにより得られる上清から、タンパク質の単離精製に通常用いられている方法を単独又は組み合わせて使用し、精製標品を得ることができる。このような方法としては、溶媒抽出法、硫酸アンモニウム等による塩析法、脱塩法、有機溶媒による沈殿法、ジエチルアミノエチル(DEAE)−セファロース、DIAION HPA−75(三菱化成社製)等のレジンを用いた陰イオン交換クロマトグラフィー法、S−Sepharose FF(Pharmacia社製)等のレジンを用いた陽イオン交換クロマトグラフィー法、ブチルセファロース、フェニルセファロース等のレジンを用いた疎水性クロマトグラフィー法、分子篩を用いたゲルろ過法、アフィニティークロマトグラフィー法、クロマトフォーカシング法、等電点電気泳動等の電気泳動法等が挙げられる。
また、組換えポリペプチドが細胞内に不溶体を形成して発現した場合は、同様に宿主細胞を回収後、破砕し、遠心分離を行うことにより、沈殿画分として組換えポリペプチドの不溶体を回収する。回収した組換えポリペプチドの不溶体は蛋白質変性剤で可溶化することができる。該操作の後、上記と同様の単離精製法により組換えポリペプチドの精製標品を得ることができる。
組換えポリペプチドが細胞外に分泌された場合には、培養上清から組換えポリペプチドを回収することができる。すなわち、培養物を遠心分離等の手法により処理することにより培養上清を取得し、該培養上清から、上記と同様の単離精製法を用いることにより、精製標品を得ることができる。
[成形体の製造方法]
本実施形態に係るモールド成形体の製造方法は、たとえば上述のようにして得られる構造タンパク質を含む組成物を加熱および加圧する成形工程を含む。この成形工程において、組成物は、2%以上7%未満の水分率を有する。本実施形態に係るモールド成形体の製造方法は、成形工程に先立って、組成物の水分率を2%以上7%未満に調整する水分率調整工程を含んでもよい。水分率調整工程が最初に実施されることにより、構造タンパク質が得られた時点における組成物の水分率に関わらず、成形温度を低く抑えつつ曲げ強度の高いモールド成形体を確実に得ることができる。
組成物は、構造タンパク質を含んでいればよい。組成物は、構造タンパク質のみであってもよく、構造タンパク質及び任意の添加成分(例えば、可塑剤、着色剤、フィラー、合成樹脂等)を含んでいてもよい。上記添加成分の含有量は、構造タンパク質の合計量の50質量%以下にすることが好ましい。組成物は、典型的には粉末状(凍結乾燥粉末等)又は繊維状(紡糸して得られる繊維等)の形状を有している。成形組成物は、そのような形状の構造タンパク質を含む組成物の融着体であり得る。
組成物の水分率は、公知の水分計を用いて計測することができる。水分率の計測方法としては、たとえば、近赤外線法、電気抵抗法、電気容量法、乾燥重量法、またはカールフィッシャー法を含む化学測定法の各種の計測方法が挙げられる。公知の計測方法のうちいずれかの方法を用いて、組成物の水分率の計測を行うことができる。たとえば、組成物を十分に撹拌して均一化した後に、その一部分を取り出して、その部分の水分率を計測してもよい。組成物の水分率を調整する場合には、組成物を所定の雰囲気下に置いて組成物を乾燥または加湿しつつ、組成物を所望の水分率に調整することができる。
組成物の水分率は、成形工程の開始時において、2%以上7%未満である。組成物の水分率は、成形工程の開始時において、2.5%以上であることが好ましい。組成物の水分率は、成形工程の開始時において、6%未満であることが好ましい。
本実施形態に係るモールド成形体の製造方法は、たとえば、水分率調整工程で水分率が調整された組成物を加熱および加圧する成形工程を含む。なお、水分調整工程が省略されてもよい。すなわち、成形工程では、2%以上7%未満の水分率を有する組成物を用意し、この組成物を加熱および加圧してもよい。
成形工程では、たとえば、構造タンパク質を含む組成物を鋳型(モールド)に導入し、組成物を加熱および加圧しつつ成形加工して、モールド成形体を得る。成形工程では、たとえば加圧成形機を用いることができる。この加圧成形機の構成は、特に限定はされないが、たとえば、上記特許文献2(国際公開第2018/043698号)に記載された加圧成形機と同じ構成を有する加圧成形機が用いられ得る。加圧成形機は、たとえば金型を加熱する機能を有する。加熱および加圧の方法についても、特許文献2に記載された方法が用いられ得る。加圧成形機は、金型を加熱することにより、内部の成形体を加熱する。加圧成形機は、たとえば、内部の成形体の温度を計測するように構成されてもよい。なお、上記装置および方法に限られず、他の公知の成形方法、および成形体の加熱加圧方法が採用されてもよい。
成形工程における加熱は、金型の温度が80〜300℃で行うことが好ましく、100〜180℃がより好ましく、100〜130℃が更に好ましい。加圧は、20MPa以上の圧力で行うことが好ましい。成形工程における加熱は、金型の内部の圧力(内圧)の状態に応じて定義される金型の温度である樹脂化温度を基準として行われてもよい。この樹脂化温度については後述する。
これらの水分率調整工程および成形工程を経て、モールド成形体が製造される。組成物の水分率を上記した範囲とすることにより、成形温度を低く抑えつつ、曲げ強度の高いモールド成形体を得ることができる。
[予備実験1]
後述する実施例で用いたのと同じタンパク質粉末を用いて、タンパク質粉末が樹脂化するタイミングと、加圧成形機の内圧の変化との関係を確認した。より詳細には、上記特許文献2(国際公開第2018/043698号)に記載された加圧成形機と同じ構成を有する加圧成形機を用い、実験用に、金型にガラス窓を設けて金型内部を可視化する改造を施した。さらに、金型の内面に圧力センサーを設置した。
具体的な実験手順は、以下のとおりである。
a)タンパク質粉末(Spiber(株)製改変フィブロイン:PRT410)を金型内に投入
b)型締めを行い、内圧が40MPaになるように型締力を調整し、金型の内圧値をリセット(ゼロにする)
c)昇温を開始し(設定40℃/min)、金型内の寸法が変わらないよう型締力を調整
このとき、内圧の上昇が見られた。
d)樹脂化の完了を目視にて確認し、その時点から、金型の温度を5分間保持
樹脂化の確認は、金型内部の色に基づいて行った。粉末の状態では、金型内部の色は不透明の白色であり、樹脂化が始まると金型内部の色が変化し始め、樹脂化が完了すると、金型内部の色は半透明の薄茶色になった。
e)上記樹脂化完了後、金型の温度が80℃になるまで、スポットクーラーにて冷却
f)金型を開放し、モールド成形体を取出し
g)20℃/60%RHの環境下で24時間保管後、後述の曲げ試験を実施
図1に、モールド成形体の成形時における金型の温度と内圧の関係を示す。予備実験1の結果、内圧のピークで樹脂化が始まり(図中のAの部分)、内圧が下がりきったところで樹脂化が完了する(図中のBの部分)ことが確認できた。本明細書において、内圧がピークに達したとき(すなわち下降に転じたとき)の温度、言い換えれば図中のAの部分に相当する金型の温度が、「樹脂化温度」と定義される。
[予備実験2]
続いて、後述する実施例で用いたのと同じタンパク質粉末を用いて水分率の調整を行い、水分率の違いによる樹脂化温度を確認した。具体的な実験手順としては、まず、加熱乾燥式水分計((株)エー・アンド・デイ製、MS−70)を用いて、1分間の重量変化率が0.01wt%以下になるまで130℃で粉末を乾燥し、この状態をもって水分率0%(すなわち水分が抜けきった状態)とした。続いて、23℃、60%RHの雰囲気下で3分間放置した粉末の水分率を測定したところ2.6%であった。同様に、5分間放置した粉末の水分率を測定したところ5.2%であり、7分間放置した粉末の水分率を測定したところ8.0%であり、20分間放置した粉末を測定したところ10.7%であった。
そして、予備実験1と同じ設備を用いて、上記のようにして得た各粉末を樹脂化させ、樹脂化温度を調べた。その結果、水分率0%の粉末を樹脂化させた場合、樹脂化温度は195℃であった。水分率2.6%の粉末を樹脂化させた場合、樹脂化温度は145℃であった。水分率5.2%の粉末を樹脂化させた場合、樹脂化温度は125℃であった。水分率8.0%の粉末を樹脂化させた場合、樹脂化温度は110℃であった。水分率10.7%の粉末を樹脂化させた場合、樹脂化温度は80℃であった。
以下、実施例に基づいて本発明をより具体的に説明する。ただし、本発明は以下の実施例に限定されるものではない。
(1)構造タンパク質発現株の作製
ネフィラ・クラビペス(Nephila clavipes)由来のフィブロイン(GenBankアクセッション番号:P46804.1、GI:1174415)の塩基配列及びアミノ酸配列をGenBankのウェブデータベースより取得した後、生産性の向上を目的としてアミノ酸残基の置換、挿入及び欠失を施し、さらにN末端に配列番号5で示されるアミノ酸配列(タグ配列及びヒンジ配列)を付加して、配列番号12で示されるアミノ酸配列を有する組換えフィブロイン(「PRT410」ともいう。)を設計した。
次に、PRT410をコードする遺伝子を合成委託した。その結果、遺伝子の5’末端直上流にNdeIサイト、及び3’末端直下流にEcoRIサイトを付加した遺伝子を得た。当該遺伝子をクローニングベクター(pUC118)にクローニングした後、NdeI及びEcoRIで制限酵素処理し、タンパク質発現ベクターpET−22b(+)に組み換えた。
(2)タンパク質の発現
上記で得られたPRT410をコードする遺伝子を含むpET22b(+)発現ベクターで、大腸菌BLR(DE3)を形質転換した。形質転換された大腸菌を、アンピシリンを含む2mLのLB培地で15時間培養後、同培養液を、表1に示すシード培養用培地100mLに、OD600が0.005となるように添加した。培養液の温度を30℃に保ち、OD600が5になるまでフラスコにて、さらに約15時間培養を行い、シード培養液を得た。
Figure 2020055762
得られたシード培養液を、表2に示す生産培地500mLを添加したジャーファーメンターに、OD600が0.05となるように添加した。培養液の温度を37℃に保ち、pH6.9で一定になるように制御し、培養液中の溶存酸素濃度を溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにして培養した。なお、消泡剤として、アデカノールLG−295S((株)ADEKA製)を使用した。
Figure 2020055762
生産培地中のグルコースが完全に消費された直後に、フィード液(グルコース455g/1L、Yeast Extract 120g/1L)を1mL/分の速度で添加した。培養液温度を37℃に保ち、pH6.9で一定に制御して培養した。また培養液中の溶存酸素濃度を、溶存酸素飽和濃度の20%に維持するようにし、20時間培養を行った。その後、1Mのイソプロピル−β−チオガラクトピラノシド(IPTG)水溶液を培養液に対して終濃度1mMになるよう添加し、目的のタンパク質を発現誘導させた。IPTG添加後20時間経過した時点で、培養液を遠心分離し、菌体を回収した。IPTG添加前とIPTG添加後の培養液から調製した菌体を用いてSDS−PAGEを行い、IPTG添加に依存した目的とするタンパク質サイズのバンドの出現により、目的とするタンパク質の発現を確認した。
(3)構造タンパク質の精製
IPTGを添加してから2時間後に回収した菌体を20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の菌体を約1mMのフェニルメチルスルホニルフルオリド(PMSF)を含む20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)に懸濁させ、高圧ホモジナイザー(GEA Niro Soavi社)で細胞を破砕した。破砕した細胞を遠心分離し、沈殿物を得た。得られた沈殿物を、高純度になるまで20mM Tris−HCl緩衝液(pH7.4)で洗浄した。洗浄後の沈殿物を100mg/mLの濃度になるように8M グアニジン緩衝液(8Mグアニジン塩酸塩、10mMリン酸二水素ナトリウム、20mM NaCl、1mM Tris−HCl、pH7.0)で懸濁し、60℃で30分間、スターラーで撹拌し、溶解させた。溶解後、透析チューブ(三光純薬株式会社製のセルロースチューブ36/32)を用いて水で透析を行った。透析後に得られた白色の凝集タンパク質を遠心分離により回収し、凍結乾燥機で水分を除き、凍結乾燥粉末を回収した。
<モールド成形体の作製>
次に、得られた凍結乾燥粉末の水分を調整した。水分率の調整は、上述の予備実験と同様に行い、水分率0%、2.6%、5.2%、8.0%、10.7%のクモ糸フィブロイン粉末(構造タンパク質粉末)をそれぞれ得た。
続いて、加圧成形機を用いて、上記粉末を加熱および加圧し、モールド成形体を得た。ここでも、上記特許文献2(国際公開第2018/043698号)に記載の実施例にて用いられたものと同じ加圧成形機を用いた。金型の貫通孔の寸法は、35mm×15mmであった。水を加えることなく、成形品の厚さが2mmとなるように調整された量の粉末を貫通孔内に導入した。次に、金型を閉じ、内圧が40MPaになるまで加圧し、続いて40℃/minで昇温するように加熱し、予備実験2で確認した樹脂化温度になったところで加熱を中止した。金型を冷却した後、金型からサンプルを取り出して、35mm×15mm×2mmの直方体形状のモールド成形体を得た。
水分率0%、8.0%および10.7%の粉末を用いて作製されたモールド成形体は、それぞれ、比較例1、比較例2および比較例3に相当する。水分率2.6%および5.2%の粉末を用いて作製されたモールド成形体は、それぞれ、実施例1および実施例2に相当する。
<曲げ試験>
上記のように作製した各成形体に対し、卓上形精密万能試験機((株)島津製作所製、オートグラフAG−20)を用いて三点曲げ試験を行った。支点間距離を27mm、測定速度を1mm/分とした。
曲げ試験の結果を表3および図2に示す。水分率が2%を下回ると、曲げ強度と曲げ弾性率は比較的高いモールド成形体を得られるが、樹脂化温度を160℃以上に昇温する必要がある。よって、消費エネルギーが大きく、また加熱および冷却時間も長くなるため、成形のサイクルタイムが長くなってしまう。一方、水分率が7%以上であると、樹脂化温度は120℃未満に昇温すればよいが、曲げ強度と曲げ弾性率が小さくなってしまう。図2中において四角く囲った領域に示されるように、水分率を2%以上7%未満とすることで、比較的低い温度で、高い曲げ強度と曲げ弾性率の高いモールド成形体を得ることができる。
Figure 2020055762

Claims (3)

  1. 構造タンパク質を含む組成物であって2%以上7%未満の水分率を有する前記組成物を加熱および加圧する成形工程を含む、モールド成形体の製造方法。
  2. 前記成形工程に先立って、前記構造タンパク質を含む組成物の水分率を2%以上7%未満に調整する水分率調整工程を含む、請求項1に記載のモールド成形体の製造方法。
  3. 前記構造タンパク質がクモ糸フィブロインである、請求項1または2に記載のモールド成形体の製造方法。
JP2018185825A 2018-09-28 2018-09-28 モールド成形体の製造方法 Pending JP2020055762A (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018185825A JP2020055762A (ja) 2018-09-28 2018-09-28 モールド成形体の製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2018185825A JP2020055762A (ja) 2018-09-28 2018-09-28 モールド成形体の製造方法

Publications (1)

Publication Number Publication Date
JP2020055762A true JP2020055762A (ja) 2020-04-09

Family

ID=70106398

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2018185825A Pending JP2020055762A (ja) 2018-09-28 2018-09-28 モールド成形体の製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP2020055762A (ja)

Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0267109A (ja) * 1988-09-01 1990-03-07 Nagata Sangyo Kk グルテン成形体
WO2018043698A1 (ja) * 2016-09-02 2018-03-08 Spiber株式会社 モールド成形体及びモールド成形体の製造方法

Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JPH0267109A (ja) * 1988-09-01 1990-03-07 Nagata Sangyo Kk グルテン成形体
WO2018043698A1 (ja) * 2016-09-02 2018-03-08 Spiber株式会社 モールド成形体及びモールド成形体の製造方法

Non-Patent Citations (2)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Title
INDUSTRIAL CROPS AND PRODUCTS, 2013, VOL.44, PP.480-487, JPN6022031423, ISSN: 0004839346 *
マテリアルライフ, 1996, VOL.8, NO.2, PP.84-88, JPN6022031424, ISSN: 0004982056 *

Similar Documents

Publication Publication Date Title
WO2018043698A1 (ja) モールド成形体及びモールド成形体の製造方法
WO2017131196A1 (ja) 成形体及びその製造方法、並びに成形体のタフネスを向上させる方法
JP7088511B2 (ja) フィブロイン様タンパク質を含むコンポジット成形組成物及びその製造方法
US11174572B2 (en) Composite molding composition including fibroin-like protein, and method for producing composite molding composition
WO2017094722A1 (ja) タンパク質溶液を製造する方法
JPWO2018159695A1 (ja) 微生物増殖抑制剤、微生物の増殖を抑制する方法、耐紫外線性向上剤、耐紫外線性を向上させる方法、人工タンパク質成形体及びその製造方法、人工タンパク質溶液、並びに、着色剤
WO2018164195A1 (ja) 精製されたタンパク質を製造する方法
WO2020067554A1 (ja) 成形体の製造方法および構造タンパク質成形体
JPWO2020067548A1 (ja) 難燃性タンパク質成形体及びその製造方法
JP2020055762A (ja) モールド成形体の製造方法
WO2017131195A1 (ja) 成形体及びその製造方法、並びに成形体の結晶化度を向上させる方法
US20210032778A1 (en) Production Method for Protein Molded Article, Production Method for Protein Solution, and Production Method for Protein
KR101722742B1 (ko) 말미잘유래 재조합단백질을 포함하는 하이드로겔 제조용 조성물 및 이를 포함하는 하이드로겔의 생산방법
WO2018163758A1 (ja) モールド成形体及びモールド成形体の製造方法
JP2020055904A (ja) 吸湿発熱性付与剤、及び吸湿発熱性を付与する方法
EP2389387A2 (en) Natural biodegradable adhesive from the silk
WO2019131924A1 (ja) モールド成形体及びモールド成形体の製造方法
JP7219899B2 (ja) 成形体の製造方法および成形体
WO2019146765A1 (ja) タンパク質成形体用素材、タンパク質成形体、及びタンパク質成形体の製造方法
JP7113429B2 (ja) タンパク質組成物、その製造方法及び熱安定性向上方法
JP2020121962A (ja) タンパク質フィルム及びタンパク質フィルムの製造方法
JP2020055916A (ja) モールド成形体、モールド成形体の製造方法、およびモールド成形体の柔軟性調整方法
WO2019194231A1 (ja) タンパク質組成物及びその製造方法
KR20160018234A (ko) 말미잘유래 재조합단백질을 포함하는 하이드로겔 제조용 조성물 및 이를 포함하는 하이드로겔의 생산방법
JP2019183300A (ja) 成形体及び成形体の製造方法

Legal Events

Date Code Title Description
A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20190719

A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20210921

A711 Notification of change in applicant

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A711

Effective date: 20211027

A521 Request for written amendment filed

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A821

Effective date: 20211027

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20220727

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20220802

A02 Decision of refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A02

Effective date: 20230207