JP2019178380A - 電磁鋼板、及び、電磁鋼板の製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
熱間圧延工程では、化学組成が、質量%で、C:0.0050%以下、Si:2.00〜3.50%、Mn:2.50〜4.50%、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、Al:0.10%以下、N:0.0025%以下、Ni:0〜1.000%、Cu:0〜0.100%、及び、残部:Fe及び不純物、からなるスラブを、1000〜1200℃に加熱し、加熱されたスラブに対して熱間圧延を実施して鋼板を製造し、下記(1)及び(2)のいずれかを実施する。
(1)熱間圧延における仕上げ圧延温度をAc3変態点以上とし、熱間圧延における最終パスの圧延後の鋼板に対して、最終パスの圧延後3秒以内に、鋼板温度を250℃まで冷却する。
(2)熱間圧延における仕上げ圧延温度をAc3変態点−50℃以下とし、最終パスの圧延後、放冷以上の冷却速度で鋼板を冷却する。
冷間圧延工程では、熱間圧延工程後の鋼板に対して焼鈍処理を実施することなく、50.0〜85.0%未満の圧下率で冷間圧延を実施する。
中間焼鈍工程では、冷間圧延工程後の鋼板に対して、中間焼鈍温度を500℃〜Ac1変態点未満として焼鈍処理を実施する。
{100}<011>配向用ひずみ量調整圧延工程では、中間焼鈍工程後の鋼板に対して、5.0〜15.0%の圧下率で冷間圧延を実施する。
仕上げ焼鈍工程では、{100}<011>配向用ひずみ量調整圧延工程後の鋼板に対して、仕上げ焼鈍温度を500℃〜Ac1変態点未満として焼鈍処理を実施する。
以上の製造工程により、鋼板板面における{100}<011>結晶方位のX線ランダム強度比が15.0〜50.0であり、電磁鋼板の板厚中央位置での鋼板板面と平行な面において平均結晶粒径を1.0に規格化した場合の標準偏差が0.35以下である電磁鋼板を製造する。
(1)熱間圧延における仕上げ圧延温度をAc3変態点以上とし、熱間圧延における最終パスの圧延が完了した鋼板に対して、最終パスの圧延後3秒以内に、鋼板温度を250℃まで冷却する。
(2)熱間圧延における仕上げ圧延温度をAc3変態点−50℃以下とし、最終パスの圧延後、放冷以上の冷却速度で冷却する。
(A)中間焼鈍工程
(B){100}<011>配向用ひずみ量調整圧延工程
(C)仕上げ焼鈍工程
熱間圧延工程では、質量%で、C:0.0050%以下、Si:2.00〜3.50%、Mn:2.50〜4.50%、P:0.050%以下、S:0.0050%以下、Al:0.10%以下、N:0.0025%以下、Ni:0〜1.000%、Cu:0〜0.100%、及び、残部:Fe及び不純物、からなるスラブを、1000〜1200℃に加熱し、加熱されたスラブに対して熱間圧延を実施して鋼板を製造し、下記(1)及び(2)のいずれかを実施する。
(1)熱間圧延における仕上げ圧延温度をAc3変態点以上とし、熱間圧延における最終パスの圧延が完了した鋼板に対して、最終パスの圧延後3秒以内に、鋼板温度を250℃まで冷却する。
(2)熱間圧延における仕上げ圧延温度をAc3変態点−50℃以下とし、最終パスの圧延後、放冷以上の冷却速度で冷却する。
冷間圧延工程では、熱間圧延工程後の鋼板に対して焼鈍処理を実施することなく、50.0〜85.0%未満の圧下率で冷間圧延を実施する。
中間焼鈍工程では、冷間圧延工程後の鋼板に対して、中間焼鈍温度を500℃〜Ac1変態点未満として焼鈍処理を実施する。
{100}<011>配向用ひずみ量調整圧延工程では、中間焼鈍工程後の鋼板に対して、5.0〜15.0%の圧下率で冷間圧延を実施する。
仕上げ焼鈍工程では、{100}<011>配向用ひずみ量調整圧延後の鋼板に対して、仕上げ焼鈍温度を500℃〜Ac1変態点未満として焼鈍処理を実施する。
以上の製造工程により、鋼板板面における{100}<011>結晶方位のX線ランダム強度比が15.0〜50.0であり、電磁鋼板の板厚中央位置で鋼板板面に平行な面において平均結晶粒径を1.0に規格化した場合の標準偏差が0.35以下である電磁鋼板を製造する。
[化学組成]
本実施形態による電磁鋼板の化学組成は、次の元素を含有する。
炭素(C)は不可避に含有する不純物である。つまり、C含有量は0%超である。Cは微細な炭化物を形成する。微細な炭化物は、磁壁の移動を阻害したり、製造工程中における粒成長を阻害する。この場合、磁束密度が低下したり、鉄損が増加したりする。したがって、C含有量は0.0050%以下である。C含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、C含有量の過度の低減は、製造コストを高める。したがって、工業的生産における操業を考慮した場合、C含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0005%であり、さらに好ましくは0.0010%である。
シリコン(Si)は鋼の電気抵抗を高め、鉄損を低減する。Si含有量が2.00%未満であれば、この効果が得られない。一方、Si含有量が3.50%を超えれば、鋼の磁束密度が低下する。Si含有量が3.50%を超えればさらに、冷間加工性が低下し、冷間圧延時に鋼板に割れが発生する場合がある。したがって、Si含有量は2.00〜3.50%である。Si含有量の好ましい下限は2.10%であり、さらに好ましくは2.40%である。Si含有量の好ましい上限は3.40%であり、さらに好ましくは3.20%である。
マンガン(Mn)は鋼の電気抵抗を高め、鉄損を低減する。Mnはさらに、Ac3変態点を低下させ、本実施形態の電磁鋼板の成分系において、相変態による結晶粒の微細化を可能とする。これにより、最終の製造工程終了後の電磁鋼板において、鋼板板面における{100}<011>結晶方位のランダム強度比を高めることができる。上述のとおり、本実施形態の電磁鋼板のSi含有量は高い。SiはAc3変態点を上昇させる元素である。そこで、本実施形態では、Mn含有量を高めることにより、Ac3点を低下させ、熱間圧延工程での相変態を可能とする。Mn含有量が2.50%未満であれば、上記効果が得られない。一方、Mn含有量が高すぎれば、MnSが過剰に生成して、冷間加工性が低下する。したがって、Mn含有量は2.50〜4.50%である。Mn含有量の好ましい下限は2.60%であり、さらに好ましくは2.70%である。Mn含有量の好ましい上限は4.40%であり、さらに好ましくは4.30%である。
リン(P)は不可避に含有される不純物である。つまり、P含有量は0%超である。Pは、偏析して鋼の加工性を低下する。したがって、P含有量は0.050%以下である。P含有量の好ましい下限は0.040%であり、さらに好ましくは0.030%である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、P含有量の過剰な低減は製造コストを高めてしまう。工業的生産における操業を考慮した場合、P含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%である。
硫黄(S)は不可避に含有される不純物である。つまり、S含有量は0%超である。Sは、MnS等の硫化物を形成する。硫化物は、磁壁移動を妨げ、磁気特性を低下する。本実施形態の電磁鋼板の化学組成(S以外の元素が本実施形態の範囲内である場合)において、S含有量が0.0050%を超えれば、生成した硫化物により、磁気特性が低下する。つまり、磁束密度が低下し、鉄損が高まる。したがって、S含有量は0.0050%以下である。S含有量の好ましい上限は0.0040%であり、さらに好ましくは0.0030%である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、S含有量の過剰な低減は製造コストを高めてしまう。工業的生産を考慮すれば、S含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%である。
アルミニウム(Al)は不純物である。Al含有量が0.10%を超えれば、本実施形態の化学組成(Al以外の元素が本実施形態の範囲内である場合)において、鋼板の再結晶温度が上昇する。この場合、熱間圧延時に導入されたひずみが除去されてしまい、熱間圧延中において、オーステナイト粒が粗大化する。その結果、熱間圧延鋼板において、微細なフェライト粒が得られにくくなり、最終の製造工程終了後の電磁鋼板において、鋼板板面における{100}<011>結晶方位のランダム強度比が低下する。したがって、Al含有量は0.10%以下である。Al含有量の好ましい上限は0.05%であり、さらに好ましくは、0.03%以下である。Al含有量は0%であってもよい。つまり、Al含有量は0〜0.10%である。しかしながら、Al含有量の過剰な低減は製造コストを高めてしまう。したがって、工業的生産での操業を考慮した場合、Al含有量の好ましい下限は0.0001%であり、さらに好ましくは0.0003%である。
窒素(N)は不可避に含有される不純物である。つまり、N含有量は0%超である。Nは微細な窒化物を形成する。微細な窒化物は、磁壁の移動を阻害する。そのため、磁束密度が低下し、鉄損が高まる。したがって、N含有量は0.0025%以下である。N含有量の好ましい下限は0.0020%であり、さらに好ましくは0.0010%である。N含有量はなるべく低い方が好ましい。しかしながら、N含有量の過剰な低減は製造コストを高めてしまう。したがって、工業的生産を考慮すれば、N含有量の好ましい下限は0.0001%である。
本実施形態による電磁鋼板はさらに、Feの一部に代えて、Ni及びCuからなる群から選択される1種以上を含有してもよい。
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Ni含有量は0%であってもよい。含有される場合、NiはMnと同様に鋼板の電気抵抗を高め、鉄損を低減する。Niはさらに、A3変態点を低下させて本実施形態の電磁鋼板の化学組成において、相変態による結晶粒の微細化を可能とする。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、Niは高価であるため製品コストが高くなる。したがって、Ni含有量は0〜1.000である。Ni含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.100%であり、さらに好ましくは0.200%である。Ni含有量の好ましい上限は0.900%であり、さらに好ましくは0.850%である。
銅(Cu)は任意元素であり、含有されなくてもよい。つまり、Cu含有量は0%であってもよい。含有される場合、CuはMnと同様に鋼板の電気抵抗を高め、鉄損を低減する。Cuはさらに、A3変態点を低下させて本実施形態の電磁鋼板の化学組成において、相変態による結晶粒の微細化を可能とする。しかしながら、Cu含有量が高すぎれば、再結晶温度が上昇してひずみの蓄積が困難となる。この場合、{100}<011>結晶方位粒を高集積化することができない。したがって、Cu含有量は0〜0.100%である。Cu含有量の好ましい下限は0%超であり、さらに好ましくは0.010%であり、さらに好ましくは0.040%である。Cu含有量の好ましい上限は0.090%であり、さらに好ましくは0.080%である。
本実施形態による電磁鋼板の化学組成は、JIS G 1258(2014)に準拠したICP発光分光分析方法で測定する。具体的には、電磁鋼板の板幅中央部から、切子状のサンプルを採取し、秤量する。採取したサンプルを酸に溶解して酸溶解液とする。さらに、残渣を濾紙にて回収して、別途アルカリに融解する。融解物を酸で抽出して溶液にする。この溶液を上述の酸溶解液と混合して測定溶液とする。測定溶液を用いて、JIS G 1258(2014)に準拠した誘導結合プラズマ質量分析法(ICP−MS法)により測定する。
本実施形態による電磁鋼板ではさらに、鋼板板面における{100}<011>結晶方位のX線ランダム強度比が15.0〜50.0である。この場合、図2に示すとおり、鋼板板面において、圧延方向(RD)に対して45°傾斜した方向に、磁化容易軸である<100>方位の集積度が十分に高くなる。そのため、図2に示すとおり、分割コア30のティース部の軸方向が圧延軸RDから45°傾斜した軸と平行になるように、電磁鋼板から分割コア30を切り出せば、分割コアは十分な磁束密度を有し、鉄損が十分に低くなる。ここで、鋼板板面とは、電磁鋼板の表面のうち、圧延軸RD及び板幅軸TDを含む表面であって、法線軸NDを法線に持つ表面である(図1中の符号10に相当)。
X線ランダム強度比=(測定された電磁鋼板サンプルの{100}<011>結晶方位のX線回折強度)/標準試料の{100}<011>結晶方位のX線回折強度
本実施形態における電磁鋼板ではさらに、板厚中央位置での鋼板板面に平行な面(ND面)において、平均結晶粒径を1.0に規格化したときの標準偏差が0.35以下である。
本実施形態による電磁鋼板の板厚は特に限定されない。電磁鋼板の好ましい板厚は、0.25〜0.50mmである。通常、板厚が薄くなれば、鉄損は低くなるものの、磁束密度が低くなる。本実施形態による電磁鋼板の板厚が0.25mm以上であれば、鉄損がより低く、かつ、磁束密度がより高くなる。一方、板厚が0.50mm以下であれば、低い鉄損を維持できる。したがって、本実施形態による電磁鋼板の好ましい板厚は、0.25〜0.50mmである。板厚の好ましい下限は0.30mmである。本実施形態の電磁鋼板では、板厚が0.50mmと厚くても、高い磁束密度及び低い鉄損が得られる。
上述の本実施形態による電磁鋼板は、磁気特性(高磁束密度及び低鉄損)が求められる用途に広く適用可能である。本実施形態による電磁鋼板の用途はたとえば、次のとおりである。
(A)電機機器に用いられるサーボモータ、ステッピングモータ、コンプレッサー
(B)電気ビークル、ハイブリッドビークルに用いられる駆動モータ。ここで、ビークルとは、自動車、自動二輪車、鉄道等を含む。
(C)発電機
(D)種々の用途の鉄心、チョークコイル、リアクトル
(E)電流センサー、等
本実施形態による電磁鋼板の製造方法の一例について説明する。電磁鋼板の製造方法は、熱間圧延工程と、冷間圧延工程と、中間焼鈍工程と、{100}<011>配向用ひずみ量調整圧延工程と、仕上げ焼鈍工程とを備える。以下、各工程について詳述する。
熱間圧延工程では、上述の化学組成を満たすスラブに対して熱間圧延を実施して鋼板を製造する。熱間圧延工程は、加熱工程と、圧延工程とを備える。
加熱工程では、上述の化学組成を有するスラブを1000〜1200℃に加熱する。具体的には、スラブを加熱炉又は均熱炉に装入して、炉内にて加熱する。加熱炉又は均熱炉での上記加熱温度での保持時間はたとえば、30〜200時間である。
圧延工程では、加熱工程により加熱されたスラブに対して、複数回パスの圧延を実施して、鋼板を製造する。ここで、「パス」とは、一対のワークロールを有する1つの圧延スタンドを鋼板が通過して圧下を受けることを意味する。熱間圧延はたとえば、一列に並んだ複数の圧延スタンド(各圧延スタンドは一対のワークロールを有する)を含むタンデム圧延機を用いてタンデム圧延を実施して、複数回パスの圧延を実施してもよいし、一対のワークロールを有するリバース圧延を実施して、複数回パスの圧延を実施してもよい。生産性の観点から、タンデム圧延機を用いて複数回の圧延パスを実施するのが好ましい。
(1)熱間圧延における仕上げ圧延温度FTをAc3変態点以上とし、熱間圧延における最終パスの圧延後の鋼板に対して、最終パスの圧延後3秒以内に鋼板温度を250℃まで冷却する。
(2)熱間圧延における仕上げ圧延温度FTをAc3変態点−50℃以下とし、最終パスの圧延後、放冷以上の冷却速度で鋼板を冷却する。ここで、本明細書において、放冷における冷却速度を120℃/秒と定義する。なお、条件(2)において、最終パスの圧延後3秒以内に鋼板温度を250℃まで冷却してもよい。
上記(1)では、仕上げ圧延温度FTをAc3変態点以上とする。この場合、熱間圧延における鋼板の組織はオーステナイト単相である。本実施形態での鋼板の化学組成において、Mn含有量が2.50%以上と非常に高い。そのため、熱間圧延中において粒界の移動が極めて遅い。その結果、熱間圧延中において、ひずみが蓄積された加工オーステナイトが回復、再結晶することなく、維持される。したがって、熱間圧延の最終パスの圧延が完了した鋼板の組織においても、ひずみが蓄積された加工オーステナイトが維持されている。
上記(2)では、仕上げ圧延温度をAc3変態点−50℃以下とする。この場合、二相領域(オーステナイト及びフェライト)にて鋼板が熱間圧延される。したがって、鋼板の組織において、オーステナイト及びフェライトにひずみが蓄積される。熱間圧延の最終パスの圧延が完了した後、鋼板を放冷以上の冷却速度(120℃/秒以上)で冷却する。この場合、二相域にて熱間圧延が完了した鋼板中において、冷却後においてもフェライトはひずみを維持する。さらに、上述のとおり、本実施形態の成分系においてMn含有量は2.50%以上と非常に高いため、粒界の移動速度は遅い。そのため、放冷以上で冷却した場合においても、組織中のオーステナイト粒での回復や再結晶が抑制され、ひずみを蓄積したまま、オーステナイトがフェライトに変態する。したがって、(2)を実施した場合においても、(1)と同様の熱延鋼板を製造できる。なお、(2)において、冷却速度は放冷速度以上であれば特に限定されない。したがって、(2)において、二相域での圧延が完了した後、最終パスの圧延後3秒以内に、200〜400℃/秒の平均冷却速度CRで鋼板温度を250℃まで冷却してもよい。
本実施形態による電磁鋼板の製造方法では、熱間圧延工程後であって冷間圧延工程前に、焼鈍工程(一般的に熱延板焼鈍工程と呼ばれる)を実施しない。つまり、熱間圧延工程後であって冷間圧延工程前の焼鈍工程は省略される。本実施形態の電磁鋼板の化学組成は、上述のとおり、Mn含有量が高い。そのため、従前の電磁鋼板で実施されている熱延板焼鈍を実施すれば、Mnが粒界に偏析して、熱間圧延工程後の鋼板(熱延鋼板)の加工性が著しく低下する。したがって、本実施形態では、熱間圧延工程終了後、熱延板焼鈍工程を省略して(つまり、熱延板焼鈍を実施することなく)、冷間圧延工程を実施する。
熱間圧延工程により製造された鋼板に対して、焼鈍工程を実施することなく、冷間圧延工程を実施する。冷間圧延はたとえば、一列に並んだ複数の圧延スタンド(各圧延スタンドは一対のワークロールを有する)を含むタンデム圧延機を用いてタンデム圧延を実施して、複数回パスの圧延を実施してもよい。また、一対のワークロールを有するゼンジミア圧延機等によるリバース圧延を実施して、1回パス又は複数回パスの圧延を実施してもよい。生産性の観点から、タンデム圧延機を用いて複数回パスの圧延を実施するのが好ましい。
圧下率RR1(%)=(1−冷間圧延工程での最終パスの圧延後の鋼板の板厚/冷間圧延工程での1パス目の冷間圧延前の鋼板の板厚)×100
中間焼鈍工程では、冷間圧延工程後の鋼板に対して、中間焼鈍温度T1を500℃〜Ac1変態点未満として焼鈍処理を実施する。
中間焼鈍温度T1が500℃未満であれば、冷間圧延工程により導入されたひずみが十分に低減できない。この場合、{100}<011>結晶方位の集積度が低下して、板厚中央位置でのND面における結晶粒もばらつく。その結果、電磁鋼板の鋼板板面における{100}<011>結晶方位のX線ランダム強度比が15.0〜50.0の範囲外となり、電磁鋼板の板厚中央位置での鋼板板面に平行な面において、平均結晶粒径を1.0に規格化した場合の標準偏差が0.35を超える。一方、中間焼鈍温度T1がAc1点を超えれば、鋼板の組織の一部がオーステナイトに変態してしまい、鋼板中のひずみが過剰に低減してしまう。したがって、中間焼鈍温度T1は500℃〜Ac1変態点未満である。中間焼鈍温度T1の好ましい下限は550℃であり、さらに好ましくは570℃である。
中間焼鈍工程を完了後の鋼板に対して、{100}<011>配向用ひずみ量調整圧延工程を実施する。具体的には、中間焼鈍工程後の鋼板に対して、常温、大気中において、圧延(冷間圧延)を実施する。ここでの冷間圧延はたとえば、上述のゼンジミア圧延機に代表されるリバース圧延機、又は、タンデム圧延機を用いる。
圧下率RR2(%)=(1−最終パスの圧延後の鋼板の板厚/1パス目の圧延前の鋼板の板厚)×100
仕上げ焼鈍工程では、{100}<011>配向ひずみ量調整圧延工程後の鋼板に対して、仕上げ焼鈍温度T2を500℃〜Ac1変態点未満とする。
仕上げ焼鈍温度T2が500℃未満であれば、バルジングによる{100}<011>結晶方位粒の粒成長が十分に起こらない。この場合、{100}<011>結晶方位の集積度が低下して、ND面における結晶粒もばらつく。その結果、電磁鋼板の鋼板板面における{100}<011>結晶方位のX線ランダム強度比が15.0〜50.0の範囲外となり、板厚中央位置での鋼板板面と平行な面において、平均結晶粒径を1.0に規格化した場合の標準偏差が0.35を超える。一方、仕上げ焼鈍温度T2がAc1点を超えれば、鋼板の組織の一部がオーステナイトに変態してしまい、バルジングによる粒成長は起こらない。その結果、電磁鋼板の鋼板板面における{100}<011>結晶方位のX線ランダム強度比が15.0〜50.0の範囲外となり、板厚中央位置での鋼板板面と平行な面において、平均結晶粒径を1.0に規格化した場合の標準偏差が0.35を超える。したがって、仕上げ焼鈍温度T2は500℃〜Ac1変態点未満である。仕上げ焼鈍温度T2の好ましい下限は550℃であり、さらに好ましくは570℃である。
仕上げ焼鈍工程での仕上げ焼鈍温度T2での好ましい保持時間Δt2は10〜120秒である。保持時間Δt2が10〜120秒であれば、バルジングにより{100}<110>粒の粒成長が十分に起こる。この場合、{100}<011>結晶方位の集積度が高まり、板厚中央位置でのND面における結晶粒もさらにばらつきにくくなる。保持時間Δt2のさらに好ましい下限は12秒であり、さらに好ましくは15秒である。保持時間Δt2のさらに好ましい上限は100秒であり、さらに好ましくは90秒である。
仕上げ焼鈍工程での仕上げ焼鈍温度T2までの好ましい昇温速度TR2は0.1〜10.0℃/秒未満とする。昇温速度TR2が0.1〜10.0℃/秒であれば、バルジングによる粒成長が十分に起こる。この場合、{100}<011>結晶方位の集積度が高まり、板厚中央位置でのND面における結晶粒もさらにばらつきにくくなる。
本実施形態による電磁鋼板の製造方法は、上記製造工程に限定されない。
表1の化学組成を有する溶鋼を製造した。
各試験番号の電磁鋼板に対して、次の評価試験を実施した。
各試験番号の鋼板から、サンプルを採取し、表面を鏡面研磨した。鏡面研磨された領域のうち、ピクセルの測定間隔が平均結晶粒径の1/5以下で、結晶粒が5000個以上測定できる任意の領域を選択した。選択された領域においてEBSD測定を実施して、{200}、{110}、{310}、{211}の極点図を得た。これらの極点図を用いて級数展開法で計算した3次元集合組織を表すODF分布を得た。得られたODFから、{100}<011>結晶方位のX線ランダム強度比を求めた。求めた{100}<011>結晶方位のX線ランダム強度比を表2に示す。
各試験番号の電磁鋼板の任意の部分にて、板厚中央位置であって鋼板板面と平行な3mm×3mmの正方形の観察面(観察面はND面に相当)を有するサンプルを作製した。作製された観察面を鏡面研磨した後、鏡面研磨された観察面に対して、ナイタル液を用いてエッチングを実施した。エッチングされた観察面のうち、任意の観察視野を光学顕微鏡で観察して特定可能な結晶粒が2000個以上含まれる写真画像を生成した。生成された写真画像に対して、画像処理装置を用いて結晶粒を特定し、特定された結晶粒を楕円近似法により楕円に近似した。得られた楕円の長軸と短軸との平均値を、特定された結晶粒の結晶粒径(μm)と定義した。特定された結晶粒の個数が2000個以上となるように、観察視野を選定した。特定された結晶粒の結晶粒径の平均値を、平均結晶粒径(μm)と定義した。得られた平均結晶粒の総数をn、平均結晶粒径をd、i個目の結晶粒の結晶粒径をdiとして、次の式より、平均結晶粒径を1.0と規格化したときの標準偏差sを求めた。得られた標準偏差sを表2に示す。
各試験番号の電磁鋼板から、打ち抜き加工により、55mm×55mmの単板試験片を作製した。単板磁気測定器を用いて、上述の方法により、圧延軸RDから45°方向の磁束密度B50(45°)を測定した。測定時における磁場は、5000A/mとした。得られた磁束密度B50(45°)を表2に示す。
各試験番号の電磁鋼板から、打ち抜き加工により、55mm×55mmの単板試験片を作製した。単板磁気測定器を用いて、周波数1000Hz、最大磁束密度1.0Tで磁化された単板試験片の鉄損W10/1000(W/kg)を測定した。得られた結果を表2に示す。
次の方法により、打ち抜き精度評価試験を実施した。JIS C2550−2(2011)4.5に記載の、かえり高さの測定方法に沿って、打ち抜いた端面でかえり高さを測定した。
評価結果を表2に示す。表2を参照して、試験番号1〜11の化学組成は適切であり、製造条件も適切であった。そのため、製造された電磁鋼板において、鋼板板面における{100}<011>結晶方位のX線ランダム強度比が15.0〜50.0であり、板厚中央位置で鋼板板面と平行な面において平均結晶粒径を1.0に規格化した場合の標準偏差が0.35以下であった。その結果、磁束密度B50(45°)が1.650T以上であり、高い磁束密度が得られた。さらに、鉄損W10/1000が95W/kg以下であり、低鉄損が得られた。さらに、打ち抜き寸法精度評価試験でのかえり高さが50μm以下であり、優れた寸法精度が得られた。
Claims (4)
- 電磁鋼板であって、
化学組成が、
質量%で、
C:0.0050%以下、
Si:2.00〜3.50%、
Mn:2.50〜4.50%、
P:0.050%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.10%以下、
N:0.0025%以下、
Ni:0〜1.000%、
Cu:0〜0.100%、及び、
残部:Fe及び不純物、
からなり、
前記電磁鋼板の鋼板板面における{100}<011>結晶方位のX線ランダム強度比が15.0〜50.0であり、
前記電磁鋼板の板厚中央位置で前記鋼板板面と平行な面において、平均結晶粒径を1.0に規格化した場合の標準偏差が0.35以下である、
ことを特徴とする、電磁鋼板。 - 請求項1に記載の電磁鋼板であって、
前記電磁鋼板の板厚は、0.25〜0.50mmである、
ことを特徴とする、電磁鋼板。 - 化学組成が、
質量%で、
C:0.0050%以下、
Si:2.00〜3.50%、
Mn:2.50〜4.50%、
P:0.050%以下、
S:0.0050%以下、
Al:0.10%以下、
N:0.0025%以下、
Ni:0〜1.000%、
Cu:0〜0.100%、及び、
残部:Fe及び不純物、
からなるスラブを、1000〜1200℃に加熱し、加熱された前記スラブに対して熱間圧延を実施して鋼板を製造し、
(1)前記熱間圧延における仕上げ圧延温度をAc3変態点以上とし、前記熱間圧延における最終パスの圧延が完了した前記鋼板に対して、前記最終パスの圧延後3秒以内に鋼板温度を250℃まで冷却する、
(2)前記熱間圧延における前記仕上げ圧延温度をAc3変態点−50℃以下とし、前記最終パスの圧延後、放冷以上の冷却速度で冷却する、
のいずれかを実施する、熱間圧延工程と、
前記熱間圧延工程後の前記鋼板に対して焼鈍処理を実施することなく、50.0〜85.0%未満の圧下率で冷間圧延を実施する、冷間圧延工程と、
前記冷間圧延工程後の前記鋼板に対して、中間焼鈍温度を500℃〜Ac1変態点未満として焼鈍処理を実施する、中間焼鈍工程と、
前記中間焼鈍工程後の前記鋼板に対して、5.0〜15.0%の圧下率で冷間圧延を実施する、{100}<011>配向用ひずみ量調整圧延工程と、
前記{100}<011>配向用ひずみ量調整圧延後の前記鋼板に対して、仕上げ焼鈍温度を500℃〜Ac1変態点未満として焼鈍処理を実施する、仕上げ焼鈍工程と、を備え、
鋼板板面における{100}<011>結晶方位のX線ランダム強度比が15.0〜50.0であり、前記電磁鋼板の板厚中央位置で前記鋼板板面と平行な面において、平均結晶粒径を1.0に規格化した場合の標準偏差が0.35以下である電磁鋼板を製造する、
ことを特徴とする、電磁鋼板の製造方法。 - 請求項3に記載の電磁鋼板の製造方法であって、
前記仕上げ焼鈍工程では、前記仕上げ焼鈍温度までの昇温速度を0.1〜10.0℃/秒未満とし、前記仕上げ焼鈍温度での前記鋼板の保持時間を10〜120秒として、焼鈍処理を実施する、
ことを特徴とする、電磁鋼板の製造方法。
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