JP6855895B2 - 無方向性電磁鋼板及びその製造方法 - Google Patents

無方向性電磁鋼板及びその製造方法 Download PDF

Info

Publication number
JP6855895B2
JP6855895B2 JP2017080252A JP2017080252A JP6855895B2 JP 6855895 B2 JP6855895 B2 JP 6855895B2 JP 2017080252 A JP2017080252 A JP 2017080252A JP 2017080252 A JP2017080252 A JP 2017080252A JP 6855895 B2 JP6855895 B2 JP 6855895B2
Authority
JP
Japan
Prior art keywords
rolling
steel sheet
oriented electrical
electrical steel
less
Prior art date
Legal status (The legal status is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the status listed.)
Active
Application number
JP2017080252A
Other languages
English (en)
Other versions
JP2018178197A (ja
Inventor
智 鹿野
智 鹿野
大介 新國
大介 新國
脇坂 岳顕
岳顕 脇坂
山田 健二
健二 山田
白石 利幸
利幸 白石
Current Assignee (The listed assignees may be inaccurate. Google has not performed a legal analysis and makes no representation or warranty as to the accuracy of the list.)
Nippon Steel Corp
Original Assignee
Nippon Steel Corp
Priority date (The priority date is an assumption and is not a legal conclusion. Google has not performed a legal analysis and makes no representation as to the accuracy of the date listed.)
Filing date
Publication date
Application filed by Nippon Steel Corp filed Critical Nippon Steel Corp
Priority to JP2017080252A priority Critical patent/JP6855895B2/ja
Publication of JP2018178197A publication Critical patent/JP2018178197A/ja
Application granted granted Critical
Publication of JP6855895B2 publication Critical patent/JP6855895B2/ja
Active legal-status Critical Current
Anticipated expiration legal-status Critical

Links

Images

Landscapes

  • Metal Rolling (AREA)
  • Manufacturing Of Steel Electrode Plates (AREA)
  • Soft Magnetic Materials (AREA)

Description

本発明は、無方向性電磁鋼板及びその製造方法に関する。
無方向性電磁鋼板は、電機機器の鉄心の素材として利用される。これらの電機機器では、高いエネルギー効率、小型化及び高出力化が要求される。そのため、電機機器の鉄心として利用される無方向性電磁鋼板には、低い鉄損及び高い磁性密度が要求される。
従来、無方向性電磁鋼板の鉄損を低くするため、次の技術が採用されている。
・無方向性電磁鋼板にSi及びAl等を含有する。
・無方向性電磁鋼板の結晶粒径を制御する。
・無方向性電磁鋼板の板厚を薄くする。
一方、無方向性電磁鋼板の磁性密度を高めるため、集合組織の制御が利用されている。集合組織制御では、鋼板面内において、磁化容易軸を含む結晶面の集積度を増加させる。具体的には、鋼板面内に磁化容易軸を含まない{111}面への集積を抑制し、磁化容易軸を含む{110}面及び{100}面への集積を増加させる。
磁化容易軸を含む{110}面及び{100}面への集積を増加させるため、熱間圧延工程及び冷間圧延工程での圧延変形に伴う結晶回転が制御される。また、無方向性電磁鋼板において、特に冷間圧延の温度を常温(室温、25℃程度)より高い温度で実施する、いわゆる「温間圧延」が実施されることがある。
無方向性電磁鋼板の製造において、磁気特性を高めるために、熱間圧延後に温間圧延を実施する技術が、特許文献1〜特許文献5に提案されている。
特許文献1に開示された無方向性電磁鋼板の製造方法では、無方向性電磁鋼板のAl含有量を質量%で0.02%以下とする。また、最終冷間圧延工程において、最終パスを除く少なくとも1パスを100〜300℃の温間圧延とする。さらに、最終パスを100℃以下、10〜30%で圧延する。これにより、無方向性電磁鋼板の鉄損W15/50が向上する、と特許文献1には記載されている。
特許文献2に開示された無方向性電磁鋼板の製造方法では、質量%でCu:0.2%以上、4.0%以下、Ni:0.5%以上、5.0%以下を含有する鋼素材に対して、最終の冷間圧延工程において圧延温度が100〜300℃以上の温間圧延を1パス以上実施し、その際の温間圧延の累積圧下率を45%以上とする。これにより、強度と鉄損とのバランスに優れた無方向性電磁鋼板が製造できる、と特許文献2には記載されている。
特許文献3に開示された無方向性電磁鋼板の製造方法では、熱延仕上げ温度をAr3変態点未満700℃以上とする。製造された熱延鋼板に対して脱スケールを実施した後、冷間圧延において付与する全ひずみを対数ひずみに換算して、そのうちの50%以上を100℃〜400℃の温間で圧延し、700℃〜950℃で3分以下の仕上焼鈍を行う。これにより、磁気特性に優れた無方向性電磁鋼板が製造できる、と特許文献3には記載されている。
特許文献1〜3で実施される温間圧延では、冷間圧延よりも圧延温度が高い。そのため、鋼中の転位のすべり挙動の変化に起因して、結晶方位が変化することがある。これは、鋼中に含有する元素と転位との相互作用が温度に依存し、この温度依存性により、結晶方位が変化すると考えられる。
このような元素と転位との相互作用に注目して温間圧延の条件を制御する技術が、特許文献4及び特許文献5に提案されている。特許文献4に開示された電磁鋼板製造法では、固溶(C+N)が10ppm以上である鋼を、200〜500℃の温度範囲において20%以上の圧下率で圧延し、そのあと再結晶焼鈍をおこない、集合組織の(110)〔001〕方位成分を発達させる。特許文献5に開示された無方向性電磁鋼板の製造方法では、鋼中のP、S及びSeを、P+100×S+300×Se≦0.5となるように抑制し、熱延板焼鈍をAc点以上の温度域で行う。
一方、無方向性電磁鋼板は、打ち抜き加工等により、モータ用の鉄心に加工される。そのため、無方向性電磁鋼板には、「打ち抜き加工性」も要求される。特に、無方向性電磁鋼板が打ち抜きポンチによりダイに押し込まれる際に形成される傾斜面である「ダレ」の発生を抑制することが求められる。つまり、打ち抜き加工時におけるダレの発生の抑制が求められる。
このようなダレの発生の抑制を含む、打ち抜き加工性の向上に関する技術が、特許文献6〜13に提案されている。
特許文献6及び特許文献7に開示された無方向性電磁鋼板では、硬さや降伏応力を制御することにより、打ち抜き加工性を高めている。特許文献8に開示された無方向性電磁鋼板では、フェライト相の結晶粒径を制御して、加工性を高める。特許文献6〜8に提案された技術では、無方向性電磁鋼板の機械特性を制御して、打ち抜き加工性を高めている。
特許文献9に開示された無方向性電磁鋼板では、{011}<100>方位の強度を所定範囲に制御し、特許文献10では、粒界強度の影響を検討している。また、特許文献11に開示された無方向性電磁鋼板の製造方法では、ダレ発生への粒径制御と結晶方位制御(磁束密度)の影響を考慮して、温間圧延が打ち抜き加工性の向上に有効であると記載されている。特許文献12及び13に開示された無方向性電磁鋼板では、鋼板の表層の硬さや化学組成を調整することにより、打ち抜き加工性を改善している。
また、磁気特性の中でも特に高周波特性に関しては、表層の{111}方位を含めた集合組織についての特別な考慮が必要であることが、特許文献14〜17に示されている。
特許第3888033号公報 特開2005−120431号公報 特許第2870818号公報 特開昭58−84924号公報 特開2006−104530号公報 特開2005−60737号公報 特開2005−105407号公報 特開2014−122405号公報 特開2012−36474号公報 特開2014−40622号公報 特開2003−243214号公報 特開平2−156091号公報 特開平4−173940号公報 特開平7−150310号公報 特開平8−134606号公報 特開2001−158948号公報 国際公開第2016/148010号
上述の特許文献では、磁気特性と打ち抜き加工性、特にダレを抑制する提案がされている。しかしながら、他の方法による磁気特性と打ち抜き加工性の向上も求められている。
本発明の目的は、磁気特性に優れ、かつ、打ち抜き加工時のダレ発生を抑制可能な無方向性電磁鋼板を提供することである。
本発明による無方向性電磁鋼板は、化学組成が、質量%で、C:0.001〜0.005%、Si:2.0〜5.0%、Mn:0.1〜1.5%、P:0.02%以下、S:0.005%以下、Al:0.001〜2.0%、及び、N:0.001〜0.005%を含有し、残部はFe及び不純物からなる。無方向性電磁鋼板の板厚をtと定義したとき、無方向性電磁鋼板の表面からt/10深さ位置での{111}<112>方位の集積度I(s)が6.0以上であり、無方向性電磁鋼板の表面からt/2深さ位置での{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0以上である。
本発明による無方向性電磁鋼板の製造方法は、上述の化学組成を有する素材に対して熱間圧延を実施して熱延鋼板を製造する熱間圧延工程と、熱延鋼板に対して、400〜1000mmの直径を有する一対のワークロールを有する圧延スタンドを用いて、少なくとも1パス目の圧延で温間圧延を実施し、2パス目以降の圧延で温間圧延又は冷間圧延を実施して、0.10〜0.50mmの板厚を有する薄鋼板を製造する仕上げ圧延工程と、薄鋼板に対して仕上げ焼鈍を実施する仕上げ焼鈍工程とを備える。仕上げ圧延工程では、1パス目の圧延において、圧延温度をT(℃)、ひずみ速度をεドット(s-1)、圧下率をr(%)と定義したとき、式(1)〜式(3)を満たす条件で熱延鋼板に対して温間圧延を実施する。そして、仕上げ圧延工程での累積圧下率を75〜95%とする。
Figure 0006855895
本発明による無方向性電磁鋼板は、磁気特性に優れ、かつ、打ち抜き加工時のダレ発生を抑制できる。
図1は、本発明の化学組成を満たす無方向性電磁鋼板において、表層での{111}<112>方位の集積度I(s)と、板厚中心層での{100}<012>方位の集積度I(c)と、ダレ量(μm)との関係を示す図である。 図2は、本発明の化学組成を満たす無方向性電磁鋼板において、表層での{111}<112>方位の集積度I(s)と、板厚中心層での{100}<012>方位の集積度I(c)と、磁束密度B50(T)との関係を示す図である。 図3は、本発明の化学組成の無方向性電磁鋼板の製造工程における、1パス目の温間圧延での初期ひずみ速度(s-1)及び初期圧延温度(℃)と、集積度I(s)との関係を示す図である。 図4は、実施例のダレ量測定試験を説明するための模式図である。
以下、本発明について詳細に説明する。
本発明者らは、優れた磁気特性を有し、かつ、打ち抜き加工時のダレの発生を抑制する無方向性電磁鋼板について調査及び検討を行った。その結果、次の知見を得た。
無方向性電磁鋼板の板厚をtと定義した場合、圧延面からt/10深さ位置(以下、表層という)での{111}<112>方位の集積度I(s)を6.0以上とし、かつ、圧延面からt/2深さ位置(以下、板厚中心層という)での{100}<012>方位の集積度I(c)を4.0以上とすることにより、打ち抜き時のダレ発生をより抑制できる。
図1は、本発明の化学組成を満たす無方向性電磁鋼板において、表層での{111}<112>方位の集積度I(s)と、板厚中心層での{100}<012>方位の集積度I(c)と、ダレ量との関係を示す図である。
図1を参照して、板厚中心層での{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0未満の場合(図1中の×印)、表層での{111}<112>方位の集積度I(s)が変動しても、ダレ量はそれほど変化しない。一方、板厚中心層での{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0以上の場合(図1中の○印)、表層での{111}<112>方位の集積度I(s)が大きくなるほど、ダレ量が低下する。そして、集積度I(s)が6.0以上になれば、ダレ量は15.0μm以下となり、打ち抜き加工時のダレの発生を顕著に抑制できる。
なお、表層での{111}<112>方位の集積度I(s)が変動したときの磁気特性への影響は小さい。図2は、表層での{111}<112>方位の集積度I(s)と、板厚中心層での{100}<012>方位の集積度I(c)と、磁束密度B50(T)との関係を示す図である。図2に示すとおり、磁束密度B50は、板厚中心層での{100}<012>方位の集積度I(c)の増加に応じて高くなるものの、表層での{111}<112>方位の集積度I(s)の変動の影響をほとんど受けない。
以上より、無方向性電磁鋼板の板厚をtと定義した場合、表層での{111}<112>方位の集積度I(s)を6.0以上とし、かつ、板厚中心層での{100}<012>方位の集積度I(c)を4.0以上とすれば、磁気特性を維持しつつ、打ち抜き加工時のダレの発生を抑制できる。
上述のように表層の集合組織と板厚中心層の集合組織とを規定することにより、ダレの発生が顕著に抑制されるメカニズムについては明確ではないが、以下の事項が考えられる。
従来、例えば{011}方位等の結晶方位がダレの発生抑制に有効であることは知られている(例えば特許文献9参照)。また、表層の機械的特性に着目した打ち抜き加工性の改善技術は、特許文献6及び12に開示されている。
しかしながら、本発明は、これらの従来の知見とは異なるアプローチから、ダレの発生を抑制する。本発明の化学組成の鋼板において、{111}<112>方位では、既にダレ抑制効果が知られている{011}方位よりも剛性率が非常に高い。一方、{100}<012>方位では剛性率が非常に低い。
剛性率は、硬度及び降伏比等の塑性変形領域での挙動とは異なり、基本的に弾性変形領域での変形を支配する因子である。一方で、ダレは、原則、塑性変形領域に及ぶ現象である。しかしながら、ダレ発生時の鋼板の変形量は非常に小さく、特に、剪断面から鋼板内側に入った領域では、ほぼ弾性変形に留まる。したがって、ダレは、塑性変形領域での変形だけでなく、弾性変形領域での変形にも影響される。
本発明の無方向性電磁鋼板では、表層では{111}<112>方位の集積度を高め、板厚中心層では{100}<012>方位の集積度を高める。つまり、本発明の無方向性電磁鋼板では、表層を高剛性とし、かつ、板厚中心層を低剛性とする。この組合わせを実現することにより、いわゆるスプリングバックのような、塑性変形領域での変形応力を除荷した場合の弾性変形の戻りが大きくなる。その結果、ダレの発生が顕著に抑制されると考えられる。
表層での{111}<112>方位の集積度I(s)を6.0以上とし、かつ、板厚中心層での{100}<012>方位の集積度I(c)を4.0以上とすれば、図1に示すとおり、打ち抜き加工時のダレの発生を顕著に抑制できる。
なお、図2に示すとおり、板厚中心層での{100}<012>方位の集積度I(c)を4.0以上とすれば、磁束密度B50が1.65T以上となり、優れた磁気特性も得られる。
また、ダレの発生の抑制には、無方向性電磁鋼板の平均結晶粒を微細にすることが有効である。本発明の化学組成においては、好ましい平均結晶粒径を50μm以下とすれば、ダレの発生の抑制にさらに有効である。
上述の表層及び板厚中心層の集合組織を実現する製造方法の一例を本発明者らは検討した。その結果、熱延鋼板を圧延して無方向性電磁鋼板を製造するときに、少なくとも1パス目の圧延で温間圧延を実施し、2パス目以降の圧延で温間圧延又は冷間圧延を実施する(仕上げ圧延工程)。さらに、1パス目の温間圧延において、圧延温度をT(℃)、ひずみ速度をεドット(s-1)、圧下率をr(%)と定義したとき、式(1)〜式(3)を満たす条件で圧延を実施し、さらに、仕上げ圧延工程での累積圧下率を75〜95%とすることにより、上述の集合組織を有する無方向性電磁鋼板を製造できることを見出した。
Figure 0006855895
以上の知見に基づいて完成した本発明の無方向性電磁鋼板は、化学組成が、質量%で、C:0.001〜0.005%、Si:2.0〜5.0%、Mn:0.1〜1.5%、P:0.02%以下、S:0.005%以下、Al:0.001〜2.0%、及び、N:0.001〜0.005%を含有し、残部はFe及び不純物からなり、無方向性電磁鋼板の板厚をtと定義したとき、無方向性電磁鋼板の表面からt/10深さ位置での{111}<112>方位の集積度I(s)が6.0以上であり、無方向性電磁鋼板の表面からt/2深さ位置での{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0以上である。
上記化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ti:0.01%以下、V:0.01%以下、及び、Nb:0.01%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。この場合、上記化学組成は、式(A)を満たす。
Figure 0006855895
上記化学組成は、Feの一部に代えて、Sn:0.2%以下、Cu:0.1%以下、Ni:0.1%以下、Cr:0.2%以下、及び、B:0.001%以下からなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
本発明による無方向性電磁鋼板の製造方法は、上述の化学組成を有する素材に対して熱間圧延を実施して熱延鋼板を製造する熱間圧延工程と、熱延鋼板に対して、400〜1000mmの直径を有する一対のワークロールを有する圧延スタンドを用いて、少なくとも1パス目の圧延で温間圧延を実施し、2パス目以降の圧延で温間圧延又は冷間圧延を実施して、0.10〜0.50mmの板厚を有する薄鋼板を製造する仕上げ圧延工程と、薄鋼板に対して仕上げ焼鈍を実施する仕上げ焼鈍工程とを備える。仕上げ圧延工程では、1パス目の圧延において、圧延温度をT(℃)、ひずみ速度をεドット(s-1)、圧下率をr(%)と定義したとき、式(1)〜式(3)を満たす条件で熱延鋼板に対して温間圧延を実施する。そして、仕上げ圧延工程での累積圧下率を75〜95%とする。
Figure 0006855895
上記冷間圧延では、たとえば、圧延温度を150℃以下とする。
上記仕上げ圧延工程では、各々が一対のワークロールを有し、一列に並んだ複数の圧延スタンドを含むタンデム圧延機を用いてもよい。この場合、1パス目の圧延を実施する圧延スタンドにて温間圧延を実施し、1パス目の圧延を実施する圧延スタンドの下流に配列された圧延スタンドにて2パス目以降の圧延を冷間圧延で実施する。
上記仕上げ焼鈍工程では、最高到達温度を800〜900℃としてもよい。
以下、本発明による無方向性電磁鋼板について詳述する。
[化学組成]
本発明による無方向性電磁鋼板の化学組成は、次の元素を含有する。なお、無方向性電磁鋼板の化学組成における「%」は、特に断りがない限り、質量%を意味する。
C:0.001〜0.005%
炭素(C)は鋼中に固溶Cとして存在し、温間圧延時の動的ひずみ時効による集合組織を改善する。これにより、無方向性電磁鋼板の磁束密度が高まる。C含有量が0.001%未満であれば、この効果が得られない。一方、C含有量が0.005%を超えれば、鋼中に微細な炭化物が析出して磁気特性が低下する。したがって、C含有量は0.001〜0.005%である。C含有量の好ましい下限は0.0015%であり、さらに好ましくは0.002%である。C含有量の好ましい上限は0.004%であり、さらに好ましくは0.003%である。
Si:2.0〜5.0%
シリコン(Si)は、鋼板の固有抵抗を高め、渦電流損を低減する。Siはさらに、ヒステリシス損を低減する。Si含有量が2.0%未満であれば、上記効果が得られない。また、Si含有量が2.0%未満であれば、仕上げ焼鈍時に相変態が生じる場合があり、本発明の効果が損なわれる場合がある。一方、Si含有量が5.0%を超えれば、後述の温間圧延での圧延性、及び、無方向性電磁鋼板の打ち抜き加工性が低下する。したがって、Si含有量は2.0〜5.0%である。Si含有量の好ましい下限は2.5%であり、さらに好ましくは3.0%である。Si含有量の好ましい上限は4.5%であり、さらに好ましくは4.0%である。
Mn:0.1〜1.5%
マンガン(Mn)は、鋼の固有抵抗を高める。Mnはさらに、硫化物を粗大化して無害化する。Mn含有量が0.1%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、Mn含有量が1.5%を超えれば、鋼の磁束密度が低下する。さらに、焼鈍時に相変態が生じ、本発明の効果が損なわれる。したがって、Mn含有量は0.1〜1.5%である。Mn含有量のこのましい下限は0.2%であり、さらに好ましくは0.5%である。Mn含有量の好ましい上限は1.2%であり、さらに好ましくは1.0%ある。
P:0.02%以下
リン(P)は不純物である。Pは鋼の加工性を低下し、冷間圧延時に鋼板に割れを発生させ得る。したがって、P含有量は0.02%以下である。P含有量はなるべく低い方が好ましい。P含有量の下限は特に制限されない。脱リンのコスト及び生産性の観点から、P含有量の好ましい下限は0.01%である。
S:0.005%以下
硫黄(S)は不純物である。Sは、MnSを生成して鉄損を増加する。したがって、S含有量は0.005%以下である。S含有量はなるべく低い方が好ましい。S含有量の下限は特に制限されない。脱硫のコスト及び生産性の観点から、S含有量の好ましい下限は0.001%である。
Al:0.001〜2.0%
アルミニウム(Al)は、鋼を脱酸する。Alはさらに、窒化物を粗大化して無害化する。Alはさらに、Siと同様に鋼の固有抵抗を増加させて鉄損を低減する。Alはさらに、相変態を抑制するため、相変態させないことにより、本発明の効果が得られる。Al含有量が0.001%未満であれば、これらの効果が得られない。一方、Al含有量が2.0%を超えれば、酸洗の能率が低下し、さらに、ヒステリシス損が増加する。したがって、Al含有量は0.001〜2.0%である。Al含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.1%である。Al含有量の好ましい上限は1.5%であり、さらに好ましくは1.2%である。
N:0.001〜0.005%
窒素(N)はCと同様に、鋼中に固溶Nとして存在し、温間圧延時の動的ひずみ時効による集合組織を改善する。これにより、無方向性電磁鋼板の磁束密度が高まる。N含有量が0.001%未満であれば、この効果が得られない。一方、N含有量が0.005%を超えれば、微細なAlNが析出して、磁気特性が低下する。したがって、N含有量は0.001〜0.005%である。N含有量の好ましい下限は0.0015%であり、さらに好ましくは0.002%である。N含有量の好ましい上限は0.004%であり、さらに好ましくは0.003%である。
本発明による無方向性電磁鋼板の化学組成の残部は、Fe及び不純物からなる。ここで、不純物とは、無方向性電磁鋼板を工業的に製造する際に、原料としての鉱石、スクラップ、または製造環境などから混入されるものである。これらの不純物の含有量は、本実施形態の無方向性電磁鋼板に悪影響を与えない範囲で許容される。
[任意元素]
本発明の無方向性電磁鋼板の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Ti、V及びNbからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。これらの元素を含有する場合、化学組成は式(A)を満たす。
Figure 0006855895
ここで、式(A)中の元素記号には、無方向性電磁鋼板中のその元素の含有量(質量%)が代入される。
Ti:0.01%以下
V:0.01%以下
Nb:0.01%以下
チタン(Ti)、バナジウム(V)及びニオブ(Nb)は任意元素である。これらの元素は炭窒化物を形成して、C及びNを固定する。冷間圧延前にこれらの炭窒化物が存在すれば、固溶C、固溶Nによる動的ひずみ時効が得られない。Ti含有量が0.01%以下、V含有量が0.01%以下、Nb含有量が0.01%以下であり、さらに、Ti、V及びNbの合計含有量が式(A)を満たせば、固溶C及び固溶Nによる動的ひずみ時効が活用できる。本明細書において、Ti含有量が0.004%以下の場合、Ti含有量は不純物レベルと解釈される。同様に、V含有量が0.004%以下の場合、V含有量は不純物レベルと解釈される。Nb含有量が0.004%以下の場合、Nb含有量は不純物レベルと解釈される。
本発明の無方向性電磁鋼板の化学組成はさらに、Feの一部に代えて、Sn、Cu、Ni、Cr及びBからなる群から選択される1種又は2種以上を含有してもよい。
Sn:0.2%以下
スズ(Sn)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Snは鋼板の集合組織を改善し、磁束密度を高める。Snはさらに、仕上げ焼鈍時の窒化を抑制し、磁気特性の低下を抑制する。一方、Sn含有量が0.2%を超えれば、鋼板の加工性を低下して、冷間圧延時に鋼板に割れを発生させ得る。したがって、Sn含有量は0.2%以下とする。Sn含有量の好ましい下限は0.01%であり、さらに好ましくは0.02%である。Sn含有量の好ましい上限は0.15%であり、さらに好ましくは0.1%である。
Cu:0.1%以下
銅(Cu)任意元素であり、含有されなくてもよい。過剰に含有される場合、Cuは、飽和磁束密度を下げ、磁束密度B50を下げる。Cuはさらに、CuSを形成して鉄損を劣化する。Cuはさらに、Niとともに含有されると鋼板表面に内部酸化層が形成されやすく、その結果、高周波鉄損が劣化する。したがって、Cu含有量は0.1%以下である。Cu含有量の下限値は、特に制限はないが、鉄スクラップから混入される観点から、0.01%以上であるのが好ましい。
Ni:0.1%以下
ニッケル(Ni)は任意元素であり、含有されなくてもよい。含有される場合、Niは磁束密度B50を高め、さらに、鋼板強度を高める。しかしながら、Ni含有量が高すぎれば、原料コストが高くなる。Niはさらに、Cuとともに含有されると、鋼板表面に内部酸化層が形成されやすく、その結果、高周波鉄損が劣化する。したがって、Ni含有量は0.1%以下である。Ni含有量の下限値は、特に制限はないが、磁束密度B50及び鋼板強度の観点から、0.01%以上であるのが好ましい。
Cr:0.2%以下
クロム(Cr)は任意元素であり、含有されなくてもよい。過剰に含有される場合、Crは飽和磁束密度を下げ、磁束密度B50を低下させる。したがって、Cr含有量は0.2%以下である。Cr含有量の下限値は特に制限はないが、鉄スクラップから混入される観点から、0.01%以上であるのが好ましい。
B:0.001%以下
ボロン(B)は任意元素であり、含有されなくてもよい。過剰に含有される場合、Bは、飽和磁束密度を下げ、磁束密度B50を低下させる。したがって、B含有量は0.001%以下である。B含有量の下限値は、特に制限はないが、鉄スクラップから混入される観点から、0.0001%以上であるのが好ましい。
[集合組織]
本発明の無方向性電磁鋼板の板厚をt(mm)と定義したとき、無方向性電磁鋼板の集合組織は、下記(特徴A)及び(特徴B)を有する。
(I)鋼板表面からt/10深さ位置(表層)での集合組織において、{111}<112>方位の集積度I(s)が6.0以上である。
(II)鋼板表面からt/2深さ位置(板厚中心層)での集合組織において、{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0以上である。
[I:表層の集合組織について]
表層での{111}<112>方位の集積度I(s)が高ければ、無方向性電磁鋼板の表層の剛性率が高まる。その結果、後述の板厚中心層での集合組織との組み合わせにより、打ち抜き加工時のダレの発生を抑制できる。集積度I(s)が6.0以上であれば、この効果が有効に得られる。集積度I(s)の好ましい下限値は7.0であり、さらに好ましくは8.0である。
{111}<112>方位は一般的に磁気特性にとっては好ましくない方位である。そのため、I(s)が過度に高くなると磁気特性への悪影響も懸念される。しかしながら、磁気特性は、後述するように、磁気特性にとって好ましい{100}<012>方位の板厚中心層への集積により補完できる。したがって、本発明において、I(s)の上限は特に限定しない。本発明鋼が、一般的な無方向性電磁鋼板の基本的組成や製造条件をベースとするものであることを考えれば、上限は自ずと20.0以下程度に抑えられる。
[II:板厚中心層の集合組織について]
{100}<012>方位は、磁気特性を高める。板厚中心層での{100}<012>方位はさらに、上述の{111}<112>方位との相互作用により、打ち抜き加工時のダレの発生を抑制する。{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0以上であれば、この効果が有効に得られる。集積度I(c)の好ましい下限は4.5であり、さらに好ましくは5.0である。
{100}<012>方位は一般的に磁気特性にとっては好ましい方位でもある。したがって、I(c)が高くなることについて、規定を設ける必要はない。板厚中心層が{100}<012>方位の結晶粒で埋め尽くされた状態(単結晶)であっても、発明効果が消失するものではない。
[表層及び板厚中心層の集合組織の組み合わせについて]
本発明で規定される、{111}<112>方位は、既にダレ抑制効果が知られている{011}方位よりも剛性率が非常に高い。一方、{100}<012>方位は剛性率が非常に低い。本発明の無方向性電磁鋼板では、表層では{111}<112>方位の集積度を高め、内層では{100}<012>方位の集積度を高める。つまり、本発明の無方向性電磁鋼板では、表層を高剛性率とし、内層を低剛性率とする。これにより、いわゆるスプリングバックのような、塑性変形領域での変形応力を除荷した場合の弾性変形の戻りが大きくなる。その結果、ダレの発生が顕著に抑制されると考えられる。
[I(s)及びI(c)の測定方法]
I(s)及びI(c)は次の方法で測定できる。無方向性電磁鋼板を圧延方向に垂直な断面で切断し、板厚tの粗試料片を複数採取する。粗試料片に対して化学研磨を実施して、板厚を表面からt/10減厚したI(s)測定用試験片を作製する。また、粗試験片に対して化学研磨を実施して、板厚を表面からt/2減厚したI(c)測定用試験片を作製する。
作製されたI(s)測定用試験片に対して、X線回折装置により、{200}面、{110}面、{211}面の極点図を測定し、結晶方位分布関数ODF(Orientation Determination Function)を作成する。{111}<112>方位とは、ODFにおけるφ=45°断面のφ=55°かるΦ=30°の集積度を示す。
同様に、I(c)測定用試験片に対しても、X線回折装置により、{200}面、{110}面、{211}面の極点図を測定し、結晶方位分布関数ODFを作成する。{100}<012>方位とは、φ=45°断面のφ=20°かつΦ=0°の集積度を示す。
[平均結晶粒径について]
本発明において、平均結晶粒径は特に限定されない。好ましくは、本発明の無方向性電磁鋼板の平均結晶粒径は、50μm以下である。無方向性電磁鋼板において、結晶方位は結晶粒径とは全く独立に制御することが可能である。ただし、化学組成を固定すれば、例えば熱処理温度を高めることで結晶粒を成長させた場合、特定の方位が連続的に発達することも事実である。これを前提とすると、本発明鋼板の表層においては、結晶粒成長に伴い、{111}方位は、{100}方位に蚕食されやすい。平均結晶粒径が粗大になれば、{111}方位が{100}方位に蚕食されるため、{111}<112>方位の集積度I(s)が低下する。そのため、集積度I(s)が低下し、本発明効果が損なわれる場合がある。これを回避する目安の粒径の上限として、50μmを設定する。平均結晶粒径の好ましい上限は35μmであり、さらに好ましくは20μmである。ただし、上述のとおり、平均結晶粒径が50μmを超えても、集積度I(s)が6.0以上であり、集積度I(c)が4.0以上であれば、ダレの発生は抑制できる。
無方向性電磁鋼板の平均結晶粒径は次の方法で測定できる。長手方向と板厚方向の断面における金属組織を100倍程度で撮影し、写真画像を得る。得られた写真画像に対して長手方向に線を引き,結晶粒界の交点数を数え、長手方向の線の長さを交点数で除すればよい。
[無方向性電磁鋼板の製造方法]
本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法の一例を説明する。本発明の無方向性電磁鋼板の製造方法は、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する工程(熱間圧延工程)と、少なくとも1パス目の圧延で温間圧延を実施し、2パス目以降の圧延で温間圧延又は冷間圧延を実施して、さらに、1パス目の温間圧延を特定条件で実施して薄鋼板を製造する工程(仕上げ圧延工程)と、薄鋼板に対して仕上げ焼鈍を実施して再結晶させる工程(仕上げ焼鈍工程)とを含む。以下、各工程について詳述する。
[熱間圧延工程]
熱間圧延工程では、スラブを熱間圧延して熱延鋼板を製造する。スラブは、上述の化学組成を有する。スラブは周知の方法で製造される。たとえば、上述の化学組成の溶湯を用いて、連続鋳造法によりスラブを製造する。上述の化学組成の溶湯を用いて、造塊法によりインゴットを製造し、インゴットを分塊圧延してスラブを製造してもよい。連続鋳造法により製造されたスラブに対して分塊圧延を実施してもよい。
準備されたスラブに対して、熱間圧延を実施する。熱間圧延における各種条件は、特に限定されない。熱間圧延時のスラブ加熱温度は特に限定されない。コスト及び熱間圧延性の観点から、好ましくは、スラブ加熱温度は1000℃〜1300℃である。スラブ加熱温度のさらに好ましい下限は1050℃である。スラブ加熱温度のさらに好ましい上限は1250℃である。
本発明の製造方法では、熱延鋼板に対して熱延板焼鈍を実施しても、実施しなくてもよい。熱延板焼鈍を実施する場合、例えば、仕上げ温度は700℃〜950℃であり、巻取り温度は750℃以下である。熱延板焼鈍を実施しない場合、仕上げ温度は850〜900℃であり、巻取り温度は850℃以下である。
熱延板焼鈍を実施する場合、たとえば、最高到達温度は950〜1050℃であり、保持時間は1〜180秒である。熱延板焼鈍はたとえば、連続焼鈍炉により実施される。最高到達温度及び保持時間が上記範囲内であれば、設備への負荷を抑えることができ、生産性も高めることができる。さらに、無方向性電磁鋼板の磁気特性も高まる。
[仕上げ圧延工程]
仕上げ圧延工程では、熱延工程により製造された熱延鋼板に対して、少なくとも最初の1パス目の圧延を温間圧延で実施する。そして、2パス目以降の圧延を温間圧延又は冷間圧延で実施して、薄鋼板を製造する。ここで、「パス」とは、一対のワークロールを有する1つの圧延スタンドを鋼板が通過して圧下を受けることを意味する。
仕上げ圧延工程では、一列に並んだ複数の圧延スタンド(各圧延スタンドは一対のワークロールを有する)を含むタンデム圧延機を用いてタンデム圧延を実施して、複数のパスを実施してもよいし、一対のワークロールを有するゼンジミア圧延機等によるリバース圧延を実施して、複数のパスを実施してもよい。生産性の観点から、タンデム圧延機を用いて複数の圧延パスを実施するのが好ましい。
冷間圧延工程を実施する場合、冷間圧延途中で鋼板に対して熱処理を実施してもよい。つまり、本発明における冷間圧延工程では、途中で熱処理を挟んで複数回のパスを実施してもよい。
以下、仕上げ圧延工程での条件について説明する。
[仕上げ圧延工程での累積圧下率]
仕上げ圧延工程での累積圧下率は75〜95%である。なお、累積圧下率(%)は次のとおり定義される。
累積圧下率=(1−仕上げ圧延工程の最終パス後の薄鋼板の板厚/1パス目の温間圧延前の熱延鋼板の板厚)×100
累積圧下率は、製品板厚上の制約と、{100}方位の集積度を高める点とに基づいて規定される。たとえば、熱延鋼板の板厚が2.0mmであって、無方向性電磁鋼板の最終板厚が0.10〜0.50mmである場合、累積圧下率は75〜95%となる。さらに、上述のとおり、板厚中心部において{100}<012>方位の集積度を高めるためには、累積圧下率が高い方が好ましい。以上の観点から、本発明における仕上げ圧延工程での累積圧下率は75〜95%である。累積圧下率の好ましい下限は85%である。累積圧下率の好ましい上限は92.5%である。
[1パス目の温間圧延工程]
上述のとおり、熱延鋼板に対する1パス目の圧延を、温間圧延で行う。1パス目の温間圧延における条件は次のとおりである。
[1パス目の温間圧延を実施する圧延スタンドのワークロールの直径]
温間圧延を実施する圧延スタンドのワークロールの直径は、鋼板表層での剪断変形量に影響する因子である。初期圧延スタンドのワークロール直径が大きすぎれば、鋼板表層において圧延素材の粒界近傍への剪断変形を伴うひずみの蓄積が不十分となる。この場合、{111}<112>方位の発生が十分に促進されず、集積度I(s)が6.0未満となる。一方、初期圧延スタンドのワークロール直径が小さすぎれば、剪断変形が板厚中心層にまで及ぶ。この場合、板厚中心層において、{100}<012>方位の発生が不十分となり、集積度I(c)が4.0未満となる。初期圧延スタンドのワークロール直径が400〜1000mmであれば、後述の式(1)〜式(3)が満たされることを条件に、表層の{111}<112>方位の発生を促進しつつ、板厚中心層の{100}<012>方位の発生も促進できる。その結果、集積I(s)が6.0以上になり、集積I(c)が4.0以上になる。初期圧延スタンドのワークロールの直径の好ましい上限は600mmである。
[式(1)〜式(3)について]
1パス目の温間圧延ではさらに、式(1)〜式(3)を満たす条件で圧延を実施する。
Figure 0006855895
ここで、T(℃)は1パス目の圧延での圧延温度(単位は℃、以下、初期圧延温度という)であり、より具体的には、1パス目の圧延を実施する圧延スタンド入側での鋼板温度(℃)である。εドット(イプシロンドット)は、1パス目の圧延のひずみ速度(単位はs-1、以下、初期ひずみ速度という)である。rは、1パス目の圧延の圧下率(単位は%、以下、初期圧下率という)である。
つまり、仕上げ圧延工程における1パス目の圧延では、式(2)を満たす初期ひずみ速度、式(3)を満たす初期圧下率、及び、式(1)を満たす圧延温度で温間圧延を実施する。
[式(1)について]
初期圧延温度Tは、動的ひずみ時効の発生程度を制御する因子である。動的ひずみ時効が発生することにより、圧延中の鋼板において、粒界近傍へのひずみの蓄積が高まる。特に表層近傍において、剪断変形成分が存在する状況下で動的ひずみ時効が発生すると、その後の再結晶焼鈍において、表層での{111}方位の発生が促進される。
初期圧延温度T(℃)が式(1)〜式(3)を満たさなければ、鋼板表層の粒界近傍にひずみが蓄積されにくくなる。そのため、表層での{111}方位の発生が促進されず、I(s)が6.0未満となる。
図3は、本発明の化学組成の無方向性電磁鋼板の製造工程における1パス目の温間圧延での初期ひずみ速度(s-1)及び初期圧延温度(℃)と、集積度I(s)との関係を示す図である。図3では、一例として、初期圧下率を30%としている(式(3)を満たす)。したがって、式(1)の左辺はT=223.2×(εドット)0.1159であり、式(1)の右辺はT=149.0×(εドット)0.09648となる。
図3を参照して、初期ひずみ速度が10〜1000(s-1)の場合、初期圧延温度がT=223.2×(εドット)0.1159の曲線とT=149.0×(εドット)0.09648の曲線との間であれば、集積度I(s)が6.0以上となる。そして、初期圧延温度がT=223.2×(εドット)0.1159の曲線よりも上方又はT=149.0×(εドット)0.09648の曲線よりも下方であれば、集積度I(s)が6.0未満となる。
[式(2)について]
初期ひずみ速度εドットは、初期圧延温度Tと関連して、動的ひずみ時効の発生に影響を及ぼす因子である。初期ひずみ速度εドットはさらに、結晶のすべり変形による不均一変形組織の発生頻度を制御する因子である。初期ひずみ速度εドットが高くなれば、変形に対し転位の移動速度が追随できず、変形帯のような不均一変形が発生する。このような不均一変形は、剪断変形が発生しにくく変形が単純な板厚中心層の変形挙動に強く影響し、その後の再結晶焼鈍において、板厚中心層において{100}方位の発生を促進する。
初期ひずみ速度εドットが10s-1未満であれば、板厚中心層での不均一変形が十分とならず、I(c)が4.0未満となる。一方、初期ひずみ速度εドットが1000s-1を超えれば、鋼板の表層においても不均一変形の影響が大きくなる。この場合、表層においても{100}<012>方位が増加するため、I(s)が6.0未満となる。初期ひずみ速度εドットが式(2)を満たせば、式(1)及び式(3)を満たすことを条件に、表層の{111}<112>方位の発生を促進しつつ、板厚中心層の{100}<012>方位の発生も促進できる。その結果、I(s)が6.0以上になり、I(c)が4.0以上になる。初期ひずみ速度εドットの好ましい下限は10s-1である。初期ひずみ速度εドットの好ましい上限は100s-1である。
[式(3)について]
初期圧下率rは、初期圧延温度Tと関連して、動的ひずみ時効の発生に影響を及ぼす因子である。初期圧下率rはまた、結晶のすべり変形による不均一変形組織の発生頻度を制御する因子である。
初期圧下率rは特に、鋼板の表層に付与される剪断変形の程度に影響する。そのため、初期圧下率rと上述のワークロールの直径との組み合わせにより、鋼板表層における{111}<112>方位と、板厚中心層における{100}<012>方位の配分が決定される。
初期圧下率rが10%未満であれば、鋼板の板厚中心層での不均一変形が不十分となり、{100}<012>方位の発生が十分に促進されない。一方、初期圧下率rが50%を超えれば、鋼板表層にも不均一変形の影響が大きくなる。この場合、表層においても{100}<012>方位が増加するため、I(s)が6.0未満となる。初期圧下率rが式(3)を満たせば、式(1)及び式(2)を満たすことを条件に、表層の{111}<112>方位の発生を促進しつつ、板厚中心層の{100}<012>方位の発生も促進できる。その結果、I(s)が6.0以上になり、I(c)が4.0以上になる。初期圧下率rの好ましい上限は30%であり、さらに好ましくは20%である。
[パススケジュールについて]
無方向性電磁鋼板の磁気特性向上の観点では,少なくとも1パス目圧延から温間圧延を実施することにより、変形帯のような不均一変形が発生する頻度を十分に高くでき、その結果、板厚中心層において{100}<012>方位の再結晶を最大化できる。2パス目以降の圧延(初期圧延スタンドの下流側に配置された圧延スタンドでの圧延)では板厚が薄くなっているため、十分な圧延形状比(ロール接触弧長さ/平均板厚)をとることが難しい。このため、本発明にとって必要な変形状態としにくく、発明効果の大幅な向上は期待できない。また圧延工程の後段は、本発明が注目する変形状態とは無関係に、最終的な製品の板厚精度を確保するために圧延形状比を小さくする必要がある。また、板厚精度の観点では十分な潤滑が可能となる冷間圧延が有利という側面もある。
本発明において、そのような小さな圧延形状比で温間圧延または冷間圧延を実施した場合、1パス目で導入した本発明にとって必要な変形状態が一部消失してしまい、再結晶後の鋼板表層に形成される{111}<112>方位の集積が低下して発明効果を阻害することにもなる。このため、本発明においては、1パス目圧延の条件で製造法を規定するものである。ただし、2パス目以降も温間圧延とすることは、発明効果が完全に失われるものでなければ、除外するものでないことは言うまでもない。
また、脆性破断の回避の観点からも、圧延形状比が高い1パス目の圧延を温間圧延とすることは有利となる。
さらに、過張力破断回避の観点では、1パスあたりの圧下率を高くする場合、又は1パスあたりのひずみ速度を速くする場合、圧延荷重が増加して張力が大きくなりすぎる場合がある。この場合、圧延中の鋼板が破断する場合がある。調査の結果、過剰な張力は1パス目の圧延を実施する圧延スタンド(初期圧延スタンド)の出側と、2パス目の圧延を実施する圧延スタンドの出側で生じやすい。1パス目の圧延にて温間圧延を実施することは、鋼板に過剰な張力が付与されるのを抑制するためにも好都合である。
温間圧延に用いるワークロールの観点では、温間圧延によるロール寿命は、冷間圧延によるロール寿命よりも低い。温間圧延では冷間圧延よりもワークロールが磨耗しやすく、さらに焼戻しが生じるためである。本発明では、1パス目のみを温間圧延とすることにより、ロール原単位を高めることができる。
以上の理由により、圧延の1パス目を含む前段を温間圧延とし、後段を冷間圧延とすることは本発明の好ましい実施形態となる。後段の冷間圧延では、圧延温度(鋼板温度)を150℃以下とする。これにより、磁気特性を高めつつ、板厚変動を小さくするとともに、1パス目の温間圧延で形成された本発明にとって好ましい加工組織状態が破壊される懸念を回避することができる。
タンデム圧延機を用いる場合、少なくとも1パス目の圧延を実施する圧延スタンド、及び、その圧延スタンドと下流に配列される圧延スタンドにて温間圧延を実施し、温間圧延を実施した圧延スタンドの下流に配置された1又は複数の圧延スタンドにて冷間圧延を実施してもよい。
[圧延温度の制御について]
圧延の1パス目を含む前段での温間圧延のために、熱延鋼板を加熱する。温間圧延工程における加熱方法は、電磁誘導加熱、通電加熱、ヒーター加熱、雰囲気ガス中での加熱等を含め、公知の加熱方法を適用できる。
温間圧延後の後段の圧延において、上記のメリットを得るため冷間圧延を適用する際は、温間圧延後、冷間圧延とするパスの前で、冷却ロールなどへの接触や、冷却ガスの吹き付けなど、公知の方法により所要の温度に鋼板を冷却すればよい。
[仕上げ焼鈍工程]
仕上げ圧延工程を実施して製造された冷延鋼板に対して、仕上げ焼鈍を実施して、無方向性電磁鋼板を製造する。仕上げ焼鈍では、最終の板厚に仕上げられた冷延鋼板を焼鈍して再結晶させる。
仕上げ焼鈍の最高到達温度及び保持時間は、仕上げ焼鈍後の無方向性電磁鋼板の平均結晶粒径が50μm以下となれば、特に限定されない。最高到達温度及び保持時間は、無方向性電磁鋼板の化学組成や、熱間圧延工程、仕上げ圧延工程の条件に応じて適宜設定される。最高到達温度及び保持時間の設定は、当業者であれば容易である。たとえば、仕上げ焼鈍における最高到達温度は800〜900℃である。また、最高到達温度での保持時間(つまり、800〜900℃での保持時間)は20〜90秒である。同じ化学組成、同じ熱間圧延工程条件、及び、同じ仕上げ圧延工程条件により圧延されたサンプル冷延鋼板を用いて、熱処理及び組織観察を行い、事前に仕上げ圧延焼鈍の条件(最高到達温度及び保持時間)を決定してもよい。この場合、平均結晶粒径を50μm以下にする、より適切な条件を決定できる。
[その他の工程]
上述の製造方法において、仕上焼鈍工程後にコーティング工程を実施してもよい。コーティング工程では、仕上焼鈍後の無方向性電磁鋼板の表面に、絶縁コーティングを施す。絶縁コーティングの種類は特に限定されない。絶縁コーティングは有機成分であってもよいし、無機成分であってもよい、絶縁コーティングは、有機成分と無機成分とを含有してもよい。無機成分はたとえば、重クロム酸−ホウ酸系、リン酸系、シリカ系等である。有機成分はたとえば、一般的なアクリル系、アクリルスチレン系、アクリルシリコン系、シリコン系、ポリエステル系、エポキシ系、フッ素系の樹脂である。塗装性を考慮した場合、好ましい樹脂は、エマルジョンタイプの樹脂である。加熱及び/又は加圧することにより接着能を発揮する絶縁コーティングを施してもよい。接着能を有する絶縁コーティングはたとえば、アクリル系、フエノール系、エポキシ系、メラミン系の樹脂である。
以上の製造工程により、本発明による無方向性電磁鋼板が製造できる。本発明の無方向性電磁鋼板は、磁気特性に優れる。さらに、打ち抜き加工におけるダレ発生を抑制できる。
以下、実施例を例示して、本発明を具体的に説明する。
表1に示す化学組成のスラグ(鋼片)に熱間圧延を実施して、板厚2.0mmの熱延鋼板を製造した。表1中の「−」は、対応する元素の含有量が検出限界未満であったことを示す。
Figure 0006855895
熱延鋼板に対して、1000℃で1分均熱する熱延板焼鈍を実施した。その後、5個の圧延スタンドが一列に配列されたタンデム圧延機を用いて、表2に示す条件として、1パス目の圧延を温間圧延で実施した。さらに、2〜5パス目の圧延を100℃以下の冷間圧延で実施して、板厚0.25mmの薄鋼板を製造した。仕上げ圧延工程での累積圧下86%であった。仕上げ圧延後の薄鋼板に対して、表2に示す仕上げ焼鈍温度(最高到達温度)で14秒保持した。以上の製造工程により、無方向性電磁鋼板を製造した。
Figure 0006855895
なお、表2中のT1は、式(1)の左辺とし、T2は式(1)の右辺とした。具体的にはT1及びT2は次のとおりとした。
Figure 0006855895
以上の工程で製造された無方向性電磁鋼板に対して、次の評価試験を実施した。
[集積度I(s)、I(c)の測定]
I(s)及びI(c)は次の方法で測定できる。無方向性電磁鋼板を圧延方向に垂直な断面で切断し、板厚tの粗試料片を複数採取した。粗試料片に対して化学研磨を実施して、板厚を表面からt/10減厚したI(s)測定用試験片を作製した。また、粗試験片に対して化学研磨を実施して、板厚を表面からt/2減厚したI(c)測定用試験片を作製した。
作製されたI(s)測定用試験片に対して、X線回折装置により、{200}面、{110}面、{211}面の極点図を測定し、結晶方位分布関数ODF(Orientation Determination Function)を作成し、集積度I(s)を求めた。同様に、I(c)測定用試験片に対しても、X線回折装置により、{200}面、{110}面、{211}面の極点図を測定し、結晶方位分布関数ODFを作成し、集積度I(c)を求めた。
[平均結晶粒径の測定]
無方向性電磁鋼板の表面からt/2深さ位置において、圧延方向の板厚方向断面を表面に含むサンプルを採取した。採取したサンプルの表面(圧延方向の板厚方向断面)を機械研磨した後、ナイタル液にてエッチングした。100倍の光学顕微鏡にて組織観察して、上述の方法(切断法)により、平均結晶粒径を求めた。
[磁気特性評価試験]
各試験番号の無方向性電磁鋼板に対して、55mm角磁気測定試験により、5000A/mにおける磁束密度B50を測定した。磁束密度B50は、L方向(圧延方向)及びC方向(圧延方向に直交する方向)の平均値として求めた。
[ダレ量測定試験]
製造された無方向性電磁鋼板に対して、打ち抜き加工を実施した。打ち抜き方向と平行であって、打ち抜き刃と垂直な断面となるように、無方向性電磁鋼板を切断した。そして、切断面のうち、無方向性電磁鋼板の端部を樹脂に埋め込み、研磨した。研磨後の無方向性電磁鋼板の端部を光学顕微鏡で撮影して写真画像を生成した。写真画像を用いて、打ち抜き加工により鋼板端部に形成されたダレ量を測定した。図4は、ダレ量測定試験における、鋼板端部の写真画像の模式図である。図4を参照して、鋼板端部100には、打ち抜き方向PUから順に、ダレ部101、せん断面102、破断面103、かえり104が形成されている。打ち抜き加工後の任意の5箇所の鋼板端部において、ダレ部101のダレ量D101を測定する。測定されたダレ量D101の平均を、ダレ量と定義した。
[結果]
評価結果を表2に示す。表2を参照して、試験番号1〜11、17、20〜22、34及び35では、化学組成が適切であり、製造条件も適切であった。そのため、集積度I(s)が6.0以上であり、集積度I(c)が4.0以上であった。その結果、ダレ量は15μm以下と少なく、打ち抜き加工時のダレ発生を十分に抑制できた。また、磁束密度B50が1.65T以上であり、優れた磁気特性が得られた。
一方、試験番号12〜15は初期ひずみ速度が低すぎた。そのため、集積度I(c)が4.0未満であった。その結果、磁束密度B50が1.65T未満であり、磁気特性が低かった。なお、試験番号15では、初期圧延温度も高すぎたため、集積度I(s)が6.0未満となり、ダレ量が15μmを超えた。
試験番号16及び19では初期圧延温度が低すぎた。そのため、集積度I(s)及び集積度I(c)が低すぎた。その結果、磁束密度B50が1.65T未満であり、磁気特性が低かった。さらに、ダレ量が15μmを超えた。
試験番号18及び23では、初期圧延温度が高すぎた。そのため、集積度I(s)が6.0未満となり、ダレ量が15μmを超えた。
試験番号24〜28では初期ひずみ速度が速すぎた。そのため、集積度I(s)が6.0未満となり、ダレ量が15μmを超えた。なお、試験番号24では、初期圧延温度も低すぎた。そのため、集積度I(c)が低く、集積度I(c)が4.0未満であり、磁束密度B50が1.65T未満と低かった。
試験番号29では、初期圧下率が低すぎた。そのため、集積度I(c)が4.0未満であり、磁束密度B50が1.65T未満と低かった。
試験番号30では、初期圧下率が高すぎた。そのため、集積度I(s)が6.0未満となり、ダレ量が15μmを超えた。
試験番号31では、ワークロール直径が小さすぎた。そのため、集積度I(c)が4.0未満であり、磁束密度B50が1.65T未満と低かった。
試験番号32では、ワークロール直径が大きすぎた。そのため、集積度I(s)が6.0未満となり、ダレ量が15μmを超えた。
試験番号33では、仕上げ焼鈍時の仕上げ焼鈍温度(最高到達温度)が低すぎた。そのため、集積度I(c)が4.0未満であり、磁束密度B50が1.65T未満と低かった。
試験番号36では、仕上げ焼鈍時の仕上げ焼鈍温度(最高到達温度)が高すぎた。集積度I(s)が6.0未満となり、ダレ量が15μmを超えた。
質量%で、Si:3.3%、Al:1.0%、Mn:0.7%、P:0.01%、C:0.003%、N:0.002%、S:0.0005%を含有し、残部がFe及び不純物元素からなるスラグ(鋼片)に対して熱間圧延を実施して、板厚2.0mmの熱延鋼板を得た。この熱延鋼板に対して1000℃で1分均熱する熱延板焼鈍を実施した。
熱延板焼鈍後、5個の圧延スタンドが一列に配列されたタンデム圧延機を用いて、仕上げ圧延工程を実施した。具体的には、1パス目の圧延において、初期ひずみ速度を31s−1とし、初期圧下率を30%とした。仕上げ圧延工程での累積圧下率は85%であった。1パス目〜5パス目までのそれぞれのスタンドでの圧延温度は表3に示すとおりであった。仕上げ圧延後の薄鋼板に対して、850℃の仕上げ焼鈍温度(最高到達温度)で14秒保持した。以上の製造工程により、無方向性電磁鋼板を製造した。
Figure 0006855895
なお、各試験番号の鋼板における板厚変動については、50mmの間隔で、板幅方向に4か所×長さ方向に4か所、計16か所の板厚を測定した。そして、測定された板厚の最大値と最小値の差の1/2を板厚変動(mm)と定義した。測定された16か所の平均を平均板厚(mm)と定義した。
各試験番号の無方向性電磁鋼板に対して、実施例1と同様の方法で、集積度I(s)、集積度I(c)、磁束密度B50(T)、ダレ量(μm)を求めた。
[結果]
結果を表3に示す、試験番号1〜4では、化学組成が適切であり、製造条件も適切であった。そのため、集積度I(s)が6.0以上であり、集積度I(c)が4.0以上であった。その結果、ダレ量は15μm以下と少なく、打ち抜き加工時のダレ発生を十分に抑制できた。また、磁束密度B50が1.65T以上であり、優れた磁気特性が得られた。
一方、試験番号6〜13では、1パス目の初期圧延温度が低すぎ、式(1)を満たさなかった。そのため、集積度I(s)及び集積度I(c)が低すぎた。その結果、磁束密度B50が1.65T未満であり、磁気特性が低かった。さらに、ダレ量が15μmを超えた。
また、試験番号7〜13は、2〜5パス目の圧延温度が150℃以上であり、温間圧延を含んだ。そのため、全てが冷間圧延の試験番号6と比較して、板厚変動幅が大きくなった。さらに、1パス目を300℃で温間圧延した試験番号1〜6よりも、板厚変動幅が大きくなった。
以上、本発明の好適な実施例について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。当業者であれば、特許請求の範囲に記載された思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、それらについても当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。

Claims (7)

  1. 無方向性電磁鋼板であって、
    化学組成が、
    質量%で、
    C:0.001〜0.005%、
    Si:2.0〜5.0%、
    Mn:0.1〜1.5%、
    P:0.02%以下、
    S:0.005%以下、
    Al:0.001〜2.0%、及び、
    N:0.001〜0.005%、を含有し、残部はFe及び不純物からなり、
    前記無方向性電磁鋼板の板厚をtと定義したとき、
    前記無方向性電磁鋼板の表面からt/10深さ位置での{111}<112>方位の集積度I(s)が6.0以上であり、
    前記無方向性電磁鋼板の表面からt/2深さ位置での{100}<012>方位の集積度I(c)が4.0以上である、無方向性電磁鋼板。
  2. 請求項1に記載の無方向性電磁鋼板であって、
    前記化学組成はさらに、Feの一部に代えて、
    Ti:0.01%以下、
    V:0.01%以下、及び、
    Nb:0.01%以下からなる群から選択された1種又は2種以上を含有し、
    前記化学組成は式(A)を満たす、無方向性電磁鋼板。
    Figure 0006855895
  3. 請求項1又は請求項2に記載の無方向性電磁鋼板であって、
    前記化学組成はさらに、Feの一部に代えて、
    Sn:0.2%以下、
    Cu:0.1%以下、
    Ni:0.1%以下
    Cr:0.2%以下、及び、
    B:0.001%以下
    からなる群から選択される1種又は2種以上を含有する、無方向性電磁鋼板。
  4. 請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の化学組成を有する素材に対して熱間圧延を実施して熱延鋼板を製造する熱間圧延工程と、
    前記熱延鋼板に対して、400〜1000mmの直径を有する一対のワークロールを有する圧延スタンドを用いて、少なくとも1パス目の圧延で温間圧延を実施し、2パス目以降の圧延で温間圧延又は冷間圧延を実施して、0.10〜0.50mmの板厚を有する薄鋼板を製造する仕上げ圧延工程と、
    前記薄鋼板に対して仕上げ焼鈍を実施する仕上げ焼鈍工程とを備え、
    前記仕上げ圧延工程では、
    前記1パス目の圧延において、圧延温度をT(℃)、ひずみ速度をεドット(s−1)、圧下率をr(%)と定義したとき、式(1)〜式(3)を満たす条件で前記熱延鋼板に対して温間圧延を実施し、
    前記仕上げ圧延工程での累積圧下率を75〜95%とする、請求項1〜請求項3のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法。
    Figure 0006855895
  5. 請求項4に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記冷間圧延では、
    前記圧延温度を150℃以下とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。
  6. 請求項4又は請求項5に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記仕上げ圧延工程では、
    各々が一対のワークロールを有し、一列に並んだ複数の圧延スタンドを含むタンデム圧延機を用い、
    少なくとも前記1パス目の圧延を実施する前記圧延スタンド、又は、前記圧延スタンド及びその下流に配列された圧延スタンドにて前記温間圧延を実施し、
    前記温間圧延を実施する前記圧延スタンドの下流に配列された圧延スタンドにて冷間圧延で実施する、無方向性電磁鋼板の製造方法。
  7. 請求項4〜請求項6のいずれか1項に記載の無方向性電磁鋼板の製造方法であって、
    前記仕上焼鈍工程では、
    最高到達温度を800〜900℃とする、無方向性電磁鋼板の製造方法。
JP2017080252A 2017-04-14 2017-04-14 無方向性電磁鋼板及びその製造方法 Active JP6855895B2 (ja)

Priority Applications (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017080252A JP6855895B2 (ja) 2017-04-14 2017-04-14 無方向性電磁鋼板及びその製造方法

Applications Claiming Priority (1)

Application Number Priority Date Filing Date Title
JP2017080252A JP6855895B2 (ja) 2017-04-14 2017-04-14 無方向性電磁鋼板及びその製造方法

Publications (2)

Publication Number Publication Date
JP2018178197A JP2018178197A (ja) 2018-11-15
JP6855895B2 true JP6855895B2 (ja) 2021-04-07

Family

ID=64281393

Family Applications (1)

Application Number Title Priority Date Filing Date
JP2017080252A Active JP6855895B2 (ja) 2017-04-14 2017-04-14 無方向性電磁鋼板及びその製造方法

Country Status (1)

Country Link
JP (1) JP6855895B2 (ja)

Families Citing this family (8)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
KR102177530B1 (ko) * 2018-11-30 2020-11-12 주식회사 포스코 무방향성 전기강판 및 그 제조방법
JP7180401B2 (ja) * 2019-01-21 2022-11-30 日本製鉄株式会社 圧延設備及び圧延方法
US20220064751A1 (en) * 2019-01-24 2022-03-03 Jfe Steel Corporation Non-oriented electrical steel sheet and method for producing same
JP7235187B1 (ja) * 2021-07-08 2023-03-08 Jfeスチール株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法、ならびにモータコア
WO2023282197A1 (ja) * 2021-07-08 2023-01-12 Jfeスチール株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法、ならびにモータコア
TW202342785A (zh) * 2022-03-24 2023-11-01 日商日本製鐵股份有限公司 無方向性電磁鋼板
KR20240012071A (ko) * 2022-07-20 2024-01-29 현대제철 주식회사 무방향성 전기강판 및 그 제조 방법
JP7231133B1 (ja) * 2022-10-26 2023-03-01 Jfeスチール株式会社 無方向性電磁鋼板およびその製造方法、ならびにモータコア

Family Cites Families (5)

* Cited by examiner, † Cited by third party
Publication number Priority date Publication date Assignee Title
JP4533036B2 (ja) * 2004-08-04 2010-08-25 新日本製鐵株式会社 圧延方向から45°方向の磁気特性が優れた無方向性電磁鋼板およびその製造方法
JP4589737B2 (ja) * 2005-01-20 2010-12-01 新日本製鐵株式会社 粒成長後の磁気特性が優れたセミプロセス電磁鋼板およびその製造方法
JP5573147B2 (ja) * 2009-12-22 2014-08-20 Jfeスチール株式会社 無方向性電磁鋼板の製造方法
JP6176181B2 (ja) * 2014-04-22 2017-08-09 Jfeスチール株式会社 積層電磁鋼板およびその製造方法
JP6604120B2 (ja) * 2015-09-29 2019-11-13 日本製鉄株式会社 無方向性電磁鋼板、及びその製造方法

Also Published As

Publication number Publication date
JP2018178197A (ja) 2018-11-15

Similar Documents

Publication Publication Date Title
JP6855895B2 (ja) 無方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP6992652B2 (ja) 電磁鋼板、及び、電磁鋼板の製造方法
JP6913683B2 (ja) 無方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP4855222B2 (ja) 分割コア用無方向性電磁鋼板
KR20190112757A (ko) 무방향성 전자 강판 및 무방향성 전자 강판의 제조 방법
KR20180087374A (ko) 무방향성 전기 강판, 및 무방향성 전기 강판의 제조 방법
JP2019019355A (ja) 電磁鋼板及びその製造方法、ロータ用モータコア及びその製造方法、ステータ用モータコア及びその製造方法、並びに、モータコアの製造方法
KR101961057B1 (ko) 무방향성 전자 강판 및 그 제조 방법
JP6855896B2 (ja) 無方向性電磁鋼板及びその製造方法
KR20220142512A (ko) 무방향성 전자 강판, 코어, 냉간 압연 강판, 무방향성 전자 강판의 제조 방법 및 냉간 압연 강판의 제조 방법
KR20190077025A (ko) 무방향성 전기 강판 및 그 제조 방법
JP4855225B2 (ja) 異方性の小さい無方向性電磁鋼板
JP6855894B2 (ja) 無方向性電磁鋼板及びその製造方法
JP6863528B2 (ja) 電磁鋼板およびその製造方法
JP2004332042A (ja) 圧延方向とその板面内垂直方向磁気特性の優れた無方向性電磁鋼板の製造方法
JP6950723B2 (ja) 方向性電磁鋼板の製造方法
JP7164071B1 (ja) 無方向性電磁鋼板
JP2009197299A (ja) 高珪素鋼板の製造方法
JP2005002401A (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
JP3937685B2 (ja) 高周波磁気特性に優れた電磁鋼板とその製造方法
JP7211532B2 (ja) 無方向性電磁鋼板の製造方法
JP7164070B1 (ja) 無方向性電磁鋼板
KR102668145B1 (ko) 무방향성 전자 강판
CN114286871B (zh) 无取向性电磁钢板的制造方法
JP7231133B1 (ja) 無方向性電磁鋼板およびその製造方法、ならびにモータコア

Legal Events

Date Code Title Description
A621 Written request for application examination

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A621

Effective date: 20191204

A977 Report on retrieval

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A971007

Effective date: 20201127

A131 Notification of reasons for refusal

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A131

Effective date: 20201208

A521 Written amendment

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A523

Effective date: 20210121

TRDD Decision of grant or rejection written
A01 Written decision to grant a patent or to grant a registration (utility model)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A01

Effective date: 20210216

A61 First payment of annual fees (during grant procedure)

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: A61

Effective date: 20210301

R151 Written notification of patent or utility model registration

Ref document number: 6855895

Country of ref document: JP

Free format text: JAPANESE INTERMEDIATE CODE: R151