JP7180401B2 - 圧延設備及び圧延方法 - Google Patents

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Description

本発明は、鋼板を圧延する圧延設備及び圧延方法に関する。
電磁鋼板は、変圧器や発電機、電動機の鉄心材料として広く用いられている。近年、特に無方向性電磁鋼板は、自動車の燃費向上のためにハイブリッドカー用のモータ素材として使用され、需要が急速に高まっている。このようなハイブリッドカーに用いられる無方向性電磁鋼板には、品質と価格が求められる。品質としては鉄損が低いこと、価格としては当然ながら廉価であることが求められる。
鉄損の低い電磁鋼板を鉄心材料として使用することにより、鉄心の発熱に起因する電気機器の温度上昇が抑えられ、機器の効率も向上するので、低鉄損材料に対する要望は極めて強い。一般に鉄損は、ヒステリシス損と渦電流損との2つの鉄損成分に分けられる。これらの鉄損成分は、鋼板の結晶粒径、析出物量、集合組織及び鋼板の電気抵抗(固有抵抗)等の冶金的因子により変化することが知られている。鉄損を低減させるために冶金的因子の制御が行われており、大別すると、焼鈍条件または合金の成分条件等による冶金的因子の制御と、圧延における冶金的因子の制御とがある。
焼鈍条件または合金の成分条件等による冶金的因子の制御では、以下のような観点で鋼板の結晶粒径、析出物量、集合組織及び鋼板の電気抵抗(固有抵抗)等の冶金的因子が制御される。
結晶粒径は、粒径が大きくなるほどヒステリシス損は減少し、渦電流損は増加する。そのため、鉄損が最小となる適正粒径が存在する。適正粒経は、励磁周波数により変化し、周波数が高くなるほど適正粒径は小さくなることが知られており、使用される周波数に応じて適正粒径が選定される。この所望される適性粒径が得られるように、例えば仕上げ焼鈍の条件が選定される。
析出物は、磁壁移動の障害となりヒステリシス損を増加させるとともに、仕上げ焼鈍で結晶粒が適正粒径まで成長するのを妨げて、鉄損の増加を引き起こす。このため、硫化物や窒化物等の析出物を形成する硫黄成分(S)あるいは窒素成分(N)は極力低減されるようにする。
また、電磁鋼板の製造においては、インヒビターと呼ばれる析出物を使用して、最終の仕上焼鈍中に好ましい方位の結晶粒を優先的に二次再結晶させる方法が一般的な技術として使用されている。
集合組織に関しては、板面内に磁化容易軸を含む{100}、{110}方位の集積を増やし、磁化容易軸を含まない{111}、{211}方位を減少させることにより、ヒステリシス損を減少させている。
鋼板の固有抵抗の増加は、渦電流損を減少させるので鉄損の低減に極めて有効である。一般には、Siの添加により鋼板の固有抵抗を増加させているが、Si添加量が増大すると電磁鋼板の加工性が劣化して冷間圧延時に破断を起こし易くなる。また、Alも固有抵抗を増加させる効果の大きい元素ではあるが、Siと同様に加工性を劣化させる。このため、SiとAlとの添加量の合計が3%を超えると、圧延時に板破断が多発して、生産性の低下および製造コストの上昇を引き起こす。
一方、圧延における冶金的因子の制御では、例えば特許文献1には、温間圧延による冶金的因子の制御技術として、タンデム圧延機の圧延方向の最上流側に配置されたスタンドの入側において、鋼板を200℃以上500℃以下に予備加熱して温間圧延する技術が開示されている。これにより、鋼板表層近傍の集合組織を制御し、板厚方向の磁束分布(つまり集合組織)を均一化する。すなわち、鋼板表層の{100}面近傍の集積度を増加させ、板厚方向の磁束分布(つまり集合組織)を均一化することにより、ヒステリシス損を低減している。
このように電磁鋼板の特性を向上するために、様々な取り組みが行われている。特に、タンデム圧延機を用いた温間圧延方法は、ゼンジマー圧延機を用いた圧延方法よりも生産性を飛躍的に高めて製造コストも低減できることから注目されている。
特開2017-125249号公報 特開2006-272382号公報 特開昭57-39023号公報
通常、タンデム圧延機により電磁鋼板を圧延する際、電磁鋼板は脆性材料であるために、素材(コイル)は、ホットバスト呼ばれる浴槽での加熱後あるいは蒸気加熱後に圧延される。いずれの加熱方法でも加熱された電磁鋼板の温度は100℃未満である。この方法は脆性対策としては有効であることが公知である。
しかし、これらの方法は脆性対策としては有効であるものの、加熱温度が100℃未満であるために、加熱後の電磁鋼板の温度は、特許文献1に記載されているようなヒステリシス損の低減効果が高まる200℃まで到達しない。このため、鋼板表層の{100}面近傍の集積度を増加させて、板厚方向の磁束分布(つまり集合組織)を均一化し、ヒステリシス損を低減する効果を得ることができない。
ところで、冷間圧延工程において使用されるタンデム圧延機は、潤滑剤の供給及びワークロールの冷却に関し、ダイレクト潤滑方式とリサーキュレーション潤滑方式との2つに大きく分類される。
ダイレクト潤滑方式は、いわゆるかけすて方式である。ダイレクト潤滑方式では、スタンドの入側にて、鋼板及びワークロールに対して潤滑油をエマルションにして供給し、スタンドの出側にて、ワークロールに対して冷却液を供給する。これらの潤滑油及び冷却液は、回収し分離されて再生利用される。
リサーキュレーション潤滑方式は、循環方式である。リサーキュレーション潤滑方式はで、圧延潤滑油と水を混合したエマルションをタンクに貯めておき、スタンドの入側では鋼板及びワークロールに対して潤滑性確保の目的でエマルションを供給し、スタンドの出側ではワークロールに対して冷却性及び洗浄性の目的でエマルションを供給する。供給されたエマルションは、上記タンクに回収されて再び使用される。
このような冷間タンデム圧延機の圧延方向上流側に予備加熱装置を配備して、鋼板を予備加熱して温間圧延する場合、鋼板にエマルションがかかると鋼板が冷却されてしまう。特に、冷間タンデム圧延機の圧延方向最上流側にある第1スタンドは、通板速度が他のスタンドよりも遅く、鋼板の温度低下が与える当該鋼板への影響が大きい。このような鋼板の冷却を防止するために、例えば特許文献2には、圧延機の上ロールに供給するクーラントが鋼板にかからないように、水切り板を設ける技術が開示されている。
しかしながら、上記特許文献2に記載されているように水切り板を設けることは板温度低減防止のためには有効であるものの、ワークロールに供給されたエマルションの鋼板へのプレートアウトが確保できないために、潤滑不足が生じやすい。このため、上記特許文献2には、このような潤滑不足を解消するために、エマルションを高濃度にして鋼板に少量供給することも開示されている。しかし、スタンド入側でエマルションを鋼板に供給すると、鋼板が冷却され、鋼板の温度が低下する。このため、予備加熱装置を使用する加熱圧延においては、鋼板の温度低下分を加味した予備加熱装置の温度制御が必要となる。加熱量の増加に伴い予備加熱装置の電力も増加するため、製造コストも上昇する。
一方、温間圧延を実施するために高濃度のエマルションを鋼板に少量供給することを行わない場合には、ロールバイト内に導入されるエマルションは、ワークロールに供給したエマルションのみとなるため、潤滑不足が生じて鋼板に焼付が発生する。焼付が発生すると、鋼板の表面品位が低下するため、鋼板はスクラップ処理されることになる。このため、少量のエマルションの供給により鋼板に焼付を生じさせないためには、さらに高濃度なエマルションを供給する必要がある。
しかし、潤滑過多になるとスリップが発生するので、エマルション濃度のきめ細かい制御が必要である。例えば、濃度の異なるエマルションを収容した潤滑油タンクを多数設置し、状況に応じて使用するエマルションを切り替えることによって、スタンドに供給するエマルション濃度を細やかに制御することは実用的ではない。
少ない潤滑油タンクで濃度を自由に変更可能な方法としては、例えば特許文献3に開示されているように、潤滑油の原液と温水をそれぞれ独立に供給し、圧延機直前で両者を混合し、スタティックミキサーを用いてエマルションにして供給する方法がある。かかる方法を用いれば、エマルション濃度を安定した範囲内で自由に調整することが可能となる。
ここで、スタティックミキサーを用いてエマルションとされ供給された潤滑油は、回収されて別工程で再生された後、再び潤滑油(原液)として利用される。エマルション濃度が高いと処理及び再生に係る費用が高くなるため、できる限り低濃度のエマルションを用いて圧延潤滑をしたいという要望がある。一方で、エマルション濃度が同一であってもエマルション粒径が大きいほどプレートアウトが向上して潤滑性が良くなることは公知である。しかしながら、潤滑性に及ぼすエマルション粒径の影響は非常に大きく、大きくなりすぎると潤滑過多となり、スリップを誘発してしまう。このため、従来、スタティックミキサーはエマルション平均粒径が8~20μm位の範囲でしか適用できず、低濃度での潤滑性改善には限界があった。
そこで、本発明は、上記問題に鑑みてなされたものであり、本発明の目的とするところは、ダイレクト循環方式の冷間タンデム圧延機にて鋼板を温間圧延する際、潤滑性を確保し、焼付を防止し得る、低濃度のエマルションを供給することの可能な、新規かつ改良された圧延設備及び圧延方法を提供することにある。
上記課題を解決するために、本発明のある観点によれば、鋼板を加熱する予備加熱装置と、予備加熱装置に対して圧延方向下流側に配置され、複数のスタンドからなるダイレクト潤滑方式の冷間タンデム圧延機と、を有し、冷間タンデム圧延機を構成するスタンドのうち圧延方向上流側に配置されている1つのスタンドには、当該スタンドの入側に配置され、当該スタンドのワークロールに対してエマルションを供給するエマルション供給ノズルと、当該スタンドの出側に配置され、ワークロールに対して冷却液を供給する冷却液供給ノズルと、少なくとも当該スタンドの入側に配置され、エマルション供給ノズルと鋼板との間に配置される水切り板と、エマルション供給ノズルから供給されるエマルションを調整するエマルション調整設備と、が設けられており、エマルション調整設備は、温水と潤滑油とを混合してエマルションを生成するスタティックミキサーと、スタティックミキサーにより生成されたエマルションのエマルション粒径を測定する粒径測定装置と、粒径測定装置によるエマルション粒径の測定値に基づいて、エマルションの供給流量を制御する流量制御装置と、を含む、圧延設備が提供される。
鋼板は電磁鋼板であり、予備加熱装置は、冷間タンデム圧延機の入側において電磁鋼板の板温度が200℃以上500℃以下となるように電磁鋼板を予備加熱し、冷間タンデム圧延機は、電磁鋼板を少なくとも圧延方向最上流側の第1スタンドにおいて圧下率30%以上で圧延するようにしてもよい。
エマルション調整設備が設けられたスタンドのワークロールは、少なくとも上下いずれか一方のワークロールが、板端部近傍においてロール端に向かうにつれて順次径少するロールプロフィルを有するようにしてもよい。
また、エマルション調整設備が設けられたスタンドのワークロールは、ハイスロールであってもよい。
さらに、エマルション調整設備が設けられたスタンドのワークロールは、表面粗度が0.6~1.2μmRaであってもよい。
エマルション調整設備が設けられたスタンドは、ワークロールを支持するチョックのベアリングを冷却する冷却機構を有してもよい。
また、上記課題を解決するために、本発明の別の観点によれば、鋼板を加熱する予備加熱装置と、予備加熱装置に対して圧延方向下流側に配置され、複数のスタンドからなるダイレクト潤滑方式の冷間タンデム圧延機と、を有する圧延設備による圧延方法であって、冷間タンデム圧延機を構成するスタンドのうち圧延方向上流側に配置されている1つのスタンドには、当該スタンドの入側に配置され、当該スタンドのワークロールに対してエマルションを供給するエマルション供給ノズルと、当該スタンドの出側に配置され、ワークロールに対して冷却液を供給する冷却液供給ノズルと、少なくとも当該スタンドの入側に配置され、エマルション供給ノズルと電磁鋼板との間に配置される水切り板と、エマルション供給ノズルから供給されるエマルションを調整するエマルション調整設備と、が設けられており、エマルション調整設備は、温水と潤滑油とを混合してエマルションを生成するスタティックミキサーと、スタティックミキサーにより生成されたエマルションのエマルション粒径を測定する粒径測定装置と、粒径測定装置によるエマルション粒径の測定値に基づいて、エマルションの供給流量を制御する流量制御装置と、を含み、エマルション調整設備が設けられたスタンドでは、粒径測定装置により、スタティックミキサーにより生成されたエマルションのエマルション粒径を測定し、流量制御装置により、ワークロールと鋼板との間の摩擦係数が所定の範囲内となるように、エマルション粒径の測定値と、予め取得されたエマルション粒径、エマルション濃度及び供給流量と摩擦係数との関係とに基づいて、エマルションの供給流量を制御する、圧延方法が提供される。
以上説明したように本発明によれば、ダイレクト循環方式の冷間タンデム圧延機にて鋼板を温間圧延する際、潤滑性を確保し、焼付を防止し得る、なるべく低濃度のエマルションを供給することができる。
本発明の一実施形態に係る鋼板製造プロセスの一例を示す概略説明図である。 同実施形態に係るエマルション調整設備が設けられたスタンドの一構成例を示す模式図である。 ロール両端がテーパー形状のワークロールの一例を示す模式図である。 エマルション粒径、エマルション濃度及び供給流量と摩擦係数との一関係を示すグラフである。 ワークロールに供給するエマルションの供給流量を算出する処理を示すフローチャートである。
以下に添付図面を参照しながら、本発明の好適な実施の形態について詳細に説明する。なお、本明細書及び図面において、実質的に同一の機能構成を有する構成要素については、同一の符号を付することにより重複説明を省略する。
<1.鋼板製造プロセスの構成>
まず、図1に基づいて、本発明の一実施形態に係る鋼板製造プロセス1について説明する。図1は、本実施形態に係る鋼板製造プロセス1の一例を示す概略説明図である。
本実施形態では、鋼板製造プロセス1として、無方向性電磁鋼板(以下、単に電磁鋼板Sとも称する。)の製造プロセスについて説明する。本実施形態において、無方向性電磁鋼板は、質量%で、2.5%≦Si≦5.0%、0.1%≦Al≦2.0%、0.1%≦Mn≦2.0%、P≦0.02%、0.001%≦C≦0.005%、0.001%≦N≦0.005%、S≦0.005%、Cu≦0.1%、Ni≦0.1%を含有し、残部としてFeおよび不純物元素を含有する鋼板である。なお、本発明は、P、S、Cu、Niの各元素を含まない無方向性電磁鋼板も含む。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、Si、Al、Mn、P、C、N、S、Cu及びNiを上記範囲で含有し、かつ残部がFeおよび不純物元素からなる鋼板であることが望ましい。また、本発明は、無方向性電磁鋼板だけでなく、方向性電磁鋼板及びハイテン鋼の製造にも適用し得る。
鋼板製造プロセス1は、例えば図1に示すように、コイル払出機10と、溶接機20と、ルーパー30と、酸洗設備40と、予備加熱装置50と、冷間タンデム圧延機60と、切断機70と、コイル巻取機80とを有する。鋼板製造プロセス1では、熱間圧延された無方向性電磁鋼板、あるいは、熱間圧延された後に熱処理された無方向性電磁鋼板コイル(以下、まとめて「電磁鋼板」として説明する。)を処理する。図1には、無方向性電磁鋼板コイルC1、C2がコイル払出機10に供給され、無方向性電磁鋼板コイルC2が払い出されている状態を示している。
コイル払出機10は、供給された電磁鋼板SのコイルC1、C2を払い出し、下流側の設備へ電磁鋼板Sを供給する。なお、コイル払出機10に供給されるコイルは、ホットバス等により60℃以上に予め加熱されていてもよい。
溶接機20は、コイル払出機10から供給された先行コイルの電磁鋼板Sの尾端と後行コイルの電磁鋼板Sの先端とを溶接する。これにより、電磁鋼板Sは連続化されたストリップとされる。ストリップとされた電磁鋼板Sはルーパー30へ送られる。
ルーパー30は、下流工程で電磁鋼板Sの供給に停滞が生じないように、電磁鋼板Sの搬送を制御するための設備である。例えば、溶接機20にてコイル接合中のため電磁鋼板Sの搬送が停止されている場合、下流工程への電磁鋼板Sの供給が変化しないようにルーパー30での電磁鋼板Sの搬送距離が制御される。ルーパー30を通過した電磁鋼板Sは、酸洗設備40に供給される。
酸洗設備40は、熱間圧延または熱間圧延後に熱処理された電磁鋼板Sの表面のスケールを除去する。酸洗設備40の酸洗槽には酸洗液が収容されている。酸洗液は、例えば塩酸または硫酸等のスケールを溶削可能な水溶液である。酸洗設備40では、電磁鋼板Sを酸洗槽にて酸洗液に浸漬させながら搬送することにより、電磁鋼板Sの表面のスケールを溶削する。なお、酸洗の溶削効率を上昇させるため、酸洗設備40の上流側には、電磁鋼板Sの表面のスケールにクラックを付与する圧延機、レベラー装置、テンションレベラー、乾式あるいは湿式のショットブラスト、またはグラインダー等を設置してもよい。酸洗設備40により酸洗されて表面のスケールが除去された電磁鋼板Sは、予備加熱装置50に供給される。
予備加熱装置50は、冷間タンデム圧延機60により圧延する前に酸洗された電磁鋼板Sを加熱する。予備加熱装置50による電磁鋼板Sの加熱形態は特に限定されない。例えば誘導加熱装置を予備加熱装置50として用いてもよい。予備加熱装置50は、冷間タンデム圧延機60の入側での鋼板温度が200℃以上500℃以下になるように電磁鋼板Sを加熱する。これにより、電磁鋼板Sのヒステリシス損の低減効果を高めることができる。予備加熱装置50で加熱された電磁鋼板Sは、冷間タンデム圧延機60へ供給されて圧延される。
ここで、予備加熱装置50による電磁鋼板Sの加熱温度は、予備加熱装置50と冷間タンデム圧延機60との距離等に基づき決定し得る。予備加熱装置50と冷間タンデム圧延機60との距離または通板速度にもよるが、例えば予備加熱装置50と冷間タンデム圧延機60との距離が10mであり、通板速度が150m/minである場合、当該区間を通過する間に電磁鋼板Sの板温度は約50℃低下する。このため、予備加熱装置50による電磁鋼板Sの加熱温度は、かかる板温度の低下を考慮して決定してもよい。
なお、冷間タンデム圧延機60の入側には、電磁鋼板Sの表面温度(板温度)を測定する温度計(図示せず。)が設置されている。予備加熱装置50は、電磁鋼板Sが予め設定された目標板温度になるように、温度計により測定された電磁鋼板Sの板温度に基づき、出力電力を制御している。
冷間タンデム圧延機60は、電磁鋼板Sを所定の目標板厚となるように圧延する。本実施形態に係る冷間タンデム圧延機60は、予備加熱装置50に対して圧延方向下流側に配置されており、複数のスタンド6a~6fからなるダイレクト潤滑方式の冷間タンデム圧延機である。例えば、圧延方向最上流側の第1スタンド6a~第5スタンド6eまでは4重圧延スタンドとし、圧延方向最下流側の第6スタンド6fは6重圧延スタンドとしてもよい。具体的には、4重圧延スタンドでは、例えば、ワークロール径は500mm~700mm、バックアップロール径は1300mm~1600mm、胴長はいずれも2000mmとしてもよい。また、6重圧延スタンドでは、例えば、ワークロール径は450mm~500mm、中間ロール径は500mm~650mm、バックアップロール径は1300mm~1500mm、胴長はいずれも2000mmとしてもよい。
なお、図1に示す冷間タンデム圧延機60は、6つのスタンド6a~6fからなるが、本発明はかかる例に限定されず、少なくとも4つ以上のスタンドを備えていればよい。冷間タンデム圧延機60は、例えば板厚2.3mm、板幅1200mmの無方向性電磁鋼板を板厚0.3mmまで圧延する。冷間タンデム圧延機60により圧延された電磁鋼板Sは、後述するコイル巻取機80にてコイル状に巻き取られる。
ここで、本実施形態に係る冷間タンデム圧延機60は、これらのスタンド6a~6fのうち第1スタンド6aに対してエマルション調整設備が設けられている。エマルション調整設備は、スタンドに供給されるエマルションのエマルション粒径に基づき、ワークロールへ供給するエマルションの供給流量を制御することを可能にする。なお、エマルション調整設備の詳細は後述する。
また、第2スタンド6b~第6スタンド6fでもダイレクト潤滑方式の圧延が行われ、所定の濃度のエマルションがタンクから各スタンドの入側からのロールバイトに向けて供給される。また、ワークロールの冷却のため、各スタンドの出側から冷却液がワークロールに供給される。供給されたエマルション及び冷却液は回収され、別ラインにて油水分離され再生される。なお、第2スタンド6b~第6スタンド6fには、後述するエマルション調整設備は設けられていなくともよい。
冷間タンデム圧延機60の圧延方向下流側には、切断機70及びコイル巻取機80が設置されている。切断機70は、連続化された電磁鋼板Sを切断する。切断機70の圧延方向下流側には、電磁鋼板Sを巻き取るカローゼルリールがコイル巻取機80として配置されている。コイル巻取機80でコイル状に巻き取られ、所定の長さにて切断機70により切断され形成された電磁鋼板Sのコイルは、コイル巻取機80から払い出され、コンベアにより次工程へと搬出される。
<2.エマルション調整設備>
本実施形態に係る冷間タンデム圧延機60は、電磁鋼板を温間圧延する際、潤滑性を確保し、焼付を防止し得る、なるべく低濃度のエマルションを供給するために、エマルション濃度を調整するエマルション調整設備を備える。エマルション調整設備は、スタンドに供給されたエマルション粒径を測定し、スタンドのワークロールと電磁鋼板との間の摩擦係数が所定の範囲内となるように、エマルション粒径の測定値と、予め取得されたエマルション粒径、エマルション濃度及び供給流量と摩擦係数との関係とに基づいて、エマルションの供給流量を制御する。これにより、使用するエマルションを低濃度にしつつ、潤滑性を確保し、焼付の発生を防止する。以下、エマルション調整設備の構成と、エマルション調整設備が設置されたスタンドでの圧延について説明する。
[2-1.構成]
図2に、本実施形態に係るエマルション調整設備が設けられたスタンドの一構成例を示す。本実施形態では、第1スタンド6aにエマルション調整設備が設けられているものとして説明する。しかし、本発明はかかる例に限定されず、エマルション調整設備は、圧延方向上流側に配置されたスタンドに設けられていればよく、例えば第2スタンド6bに設けられていてもよい。
図2に示すように、第1スタンド6aは、上ワークロール61a及び下ワークロール61bと、一対のワークロール61a、61bを支持する上バックアップロール62a及び下バックアップロール62bとを備える。電磁鋼板Sは一対のワークロール61a、61b間を通過することで、所定の板厚に圧延される。
ここで、上ワークロール61a及び下ワークロール61bは、上下ともにフラットロールでもよい。あるいは、少なくとも上下いずれか一方が、板端部近傍においてロール端に向かうにつれて順次径少するロールプロフィルを有していてもよい。例えば、図3に示すように、上ワークロール61a及び下ワークロール61bの板端部近傍を、ロール端に向かって順次径少する、いわゆるテーパー形状となるようにしてもよい。これにより、電磁鋼板Sのエッジドロップを制御することができる。また、上下のワークロール61a、61bが板幅方向に移動可能な圧延機であれば、ワークロール61a、61bの胴長方向片側のみをいわゆるテーパー形状とし、当該上下のワークロール61a、61bを点対称に配置してもよい。このような圧延機では、板幅に応じて上下のワークロール61a、61bを板幅方向に移動させることで、電磁鋼板Sの板端部にテーパー形状の位置を対応させて圧延することができる。
また、上ワークロール61a及び下ワークロール61bは、ハイスロールであってもよい。ハイスロールは、耐摩耗性の高いロールであり、優れた高温強度及び耐肌荒れ性を有する。ハイスロールの材質として、例えば一次炭化物としてMC、MC、MCを基地に分散させたE61を用いてもよい。
さらに、上ワークロール61a及び下ワークロール61bは、表面粗度が0.6~1.2μmRaに設定されていてもよい。ワークロール61a、61bの表面粗度を上記範囲とすることで、冷間タンデム圧延機60の上流での酸洗設備40による酸洗処理にて電磁鋼板Sの表面に生じた酸洗ムラによる表面性状のばらつきを均一にすることができる。また、ロールバイト内での変形の際に付加的剪断ひずみの効果を発揮させ、品質を高めることができる。なお、上ワークロール61a及び下ワークロール61bとして、鍛鋼ロールを用いてもよい。
また、上ワークロール61a及び下ワークロール61bを支持するチョックには、それぞれ、当該チョックに設けられたロール軸を回転可能に支持するベアリングが設けられている。そこで、本実施形態に係る上ワークロール61a及び下ワークロール61bを支持するチョックに、チョック内のベアリングを冷却する冷却機構を設けてもよい。これにより、チョックを効果的に冷却し、例えばグリース封入タイプのベアリング潤滑では、グリースの溶融、漏れ、それに伴うベアリングの焼き付きを防止することもできる。
ベアリングの冷却は、例えばベアリングの潤滑とともに行ってもよい。ベアリングの潤滑方法としては、例えば、強制潤滑、オイルミスト潤滑、エアオイル潤滑、ジェット潤滑等がある。これらの潤滑方法を実現する機構を冷却機構としてベアリングに設けることにより、ベアリングの冷却効果を得ることが可能である。あるいは、例えばチョックの外部から水あるいはエア等の冷却媒体を直接供給することによりベアリングを冷却してもよい。また、例えばチョック内部にパイプ等を設置し、当該パイプに水あるいはエア等の冷却媒体を流通させることによってもベアリングを冷却することができる。
このようなワークロール61a、61b及びバックアップロール62a、62bを有する第1スタンド6aの入側には、後述するスタティックミキサー95により温水と潤滑油とを混合して作成されたエマルションをワークロール61a、61bに対して供給するエマルション供給ノズル63a、63bが設けられている。エマルション供給ノズル63a、63bによりワークロール61a、61bに対してエマルションを供給することで、ワークロール61a、61b表面でのプレートアウトを高め、ワークロール61a、61bと電磁鋼板Sとの間の潤滑性を確保する。エマルションの供給は、ワークロール61a、61bの冷却にも寄与する。
エマルション供給ノズル63a、63bと電磁鋼板Sとの間には、水切り板64a、64bが配置される。水切り板64a、64bを設けることにより、エマルション供給ノズル63a、63bから供給されたエマルションが電磁鋼板Sにかかり板温度が低下することを防止できるとともに、鋼板の冷却により生じる板幅方向の温度むらの発生を抑制できる。板温度の低下を防止することで、鉄損等の最終製品の品質に生じるバラツキを抑制できる。また、温度むらの発生が抑制されることで、冷間タンデム圧延機60での圧延により鋼板の形状が不良となることも抑制され、結果として、絞りによる板破断あるいは蛇行等の誘発も抑制される。
第1スタンド6aの出側には、ワークロール61a、61bに対して冷却液を供給する冷却液供給ノズル65a、65bが設けられる。冷却液供給ノズル65a、65bは、ワークロール61a、61bの冷却のため、水等の冷却液をワークロール61a、61bに供給する。なお、図2には示されていないが、第1スタンド6aの出側にも、ワークロール61a、61bに供給された冷却液が電磁鋼板Sにかからないように、入側と同様、冷却液供給ノズル65a、65bと電磁鋼板Sとの間に水切り板を設置してもよい。
また、第1スタンド6aは、スタティックミキサー95と、粒径測定装置97と、流量制御装置100を含んで構成されるエマルション調整設備を備える。
スタティックミキサー95は、エマルション供給ノズル63a、63bから供給されるエマルションを生成する。スタティックミキサー95は、それぞれ独立して貯蔵された潤滑油の原液と温水をワークロール61a、61bに供給する直前で混合する装置である。
より詳細に説明すると、図2に示すように、エマルション調整設備は、潤滑油の原液を加熱貯蔵する第1のタンク91と、温水を貯蔵する第2のタンク92とを備える。潤滑油としては、例えばパーム油を用い得る。潤滑油は、例えば約50℃で貯蔵される。また、温水は、例えば純水であってもよく、例えば約50℃で第2のタンク92に貯蔵される。第1のタンク91に貯蔵された潤滑油の原液は、第1のポンプ93によりスタティックミキサー95に供給され、第2のタンク92に貯蔵された温水は、第2のポンプ94によりスタティックミキサー95に供給される。
スタティックミキサー95は、第1のタンク91から供給された潤滑油の原液と第2のタンク92から供給された温水とを内部に設けられたフィン(図示せず。)によってせん断することによりエマルションとする。生成されるエマルションの濃度は、第1のポンプ93により供給される潤滑油の原液の流量と第2のポンプ94により供給される温水の流量との割合を変更することで調整される。流量の割合及び各流量は、流量制御装置100により制御される。
スタティックミキサー95を用いて作成されたエマルションの粒径は、粒径測定装置97により測定された後、エマルション供給ノズル63a、63bからワークロール61a、61bに供給される。粒径測定装置97として、例えばレーザー回折式粒度分布測定器を用い得る。粒径測定装置97は、エマルション粒径の測定値を流量制御装置100へ出力する。
流量制御装置100は、粒径測定装置97によるエマルション粒度の測定値に応じて、スタティックミキサー95により生成するエマルションの濃度が適正な値となるように、潤滑油の原液と温水との流量の割合及び各流量を制御する。
[2-2.エマルションの調整]
流量制御装置100による潤滑油の原液と温水との流量の割合を決定するにあたり、まず、エマルション粒径、エマルション濃度及び供給流量と摩擦係数との関係を調べた。図4に、エマルション粒径、エマルション濃度及び供給流量と摩擦係数との一関係を示す。図4では、エマルション濃度が20%でエマルション粒径が約15μmである場合と、エマルション濃度が10%でエマルション粒径が約50μmと約100μmとの場合の3つのケースについての供給流量と摩擦係数との関係を示している。電磁鋼板Sの圧延速度は200m/minとした。
なお、上述したように、エマルションは、通常、乳化安定性を確保するために平均粒径が約8~20μmの範囲で使用される。例えば、エマルション供給ノズル63a、63bは、エマルション濃度5~15%のエマルションを、ワークロール61a、61bに対して10~50リットル/min程度の供給量で供給する。このような条件下では、エマルション粒径は急激に変化しない。これより、図4に示す供給流量の範囲では、エマルション粒径は一定であるとみなすことができる。
図4には、摩擦係数の適正範囲(0.06~0.08)をハッチングにて示している。摩擦係数が適正範囲下限値よりも小さい場合にはスリップが生じやすくなり、摩擦係数が適正範囲上限値よりも大きい場合には焼付きが生じてしまう。このため、流量制御装置100は、摩擦係数が適正範囲となるように、エマルション粒径及びエマルション濃度に応じて供給流量を決定する。図4に示すように、エマルション粒径を50μm、100μmと大きくすることで、低濃度のエマルションを少量供給しても摩擦係数は適正範囲内となり、プレートアウトを確保できることがわかる。しかし、エマルション濃度が同一であってもエマルション粒径が異なると、摩擦係数が適正範囲内となるために必要な供給流量は異なる。このように、エマルション粒径がプレートアウトに及ぼす影響は大きいことから、エマルション粒径と供給流量とを厳密に制御する必要がある。
そこで、本実施形態に係る流量制御装置100は、図5に示す処理フローに基づき、ワークロール61a、61bに供給するエマルションの供給流量を算出する。
まず、圧延開始前に、予めエマルション粒径、エマルション濃度及び供給流量と摩擦係数との関係が取得される(S10)。これらの関係は圧延速度により変化するため、圧延速度毎に取得される。
冷間タンデム圧延機60による圧延が開始されると、粒径測定装置97により、スタティックミキサー95により生成されたエマルションの粒径が測定される(S20)。粒径測定装置97は、エマルション粒径の測定値を流量制御装置100へ出力する。
流量制御装置100は、エマルション粒径の測定値が入力されると、ステップS10にて予め取得されている関係から、現在のエマルション粒径及びエマルション濃度に対応する関係を特定する(S30)。エマルション濃度は、第1のポンプ93により供給される潤滑油の原液の流量と第2のポンプ94により供給される温水の流量との割合により特定可能であり、かかる流量の割合は流量制御装置100によって設定される情報である。現在のエマルション粒径及びエマルション濃度が既知であれば、例えば図4に示したようなエマルション粒径、エマルション濃度及び供給流量と摩擦係数との関係を一意に特定することが可能となる。
そして、流量制御装置100は、ステップS30にて特定された関係に基づき、粒径測定装置97にて測定されたエマルション粒径とエマルション濃度とにおいて摩擦係数が適正範囲となるエマルションの供給流量を求める。そして、流量制御装置100は、求めた供給流量でエマルションがワークロール61a、61bに供給されるように、第1のポンプ93及び第2のポンプ94を制御する(S40)。
例えば、図4に示す関係が得られているとき、エマルション濃度が10%でエマルション粒径が約50μmの場合には、エマルションの供給流量を約14リットル/minまで減少させることができ、エマルション濃度が10%でエマルション粒径が約100μmの場合には、エマルションの供給流量を約12リットル/minまで減少させることができる。このように、本実施形態に係るエマルション調整設備を用いることで、圧延中において使用するエマルションを低濃度にしつつ、潤滑性を確保し、焼付の発生を防止することが可能となる。
なお、流量制御装置100は、摩擦係数が適正範囲内となるエマルションの供給流量を決定する際、摩擦係数の適正範囲内から任意に目標値を設定し、当該摩擦係数が目標値となるようにエマルションの供給流量を設定してもよい。例えば、摩擦係数の適正範囲が0.06~0.08であるとき摩擦係数の目標値を0.07と設定し、摩擦係数0.07±0.005内に収まるようにエマルションの供給流量を設定してもよい。
本発明による効果を検証すべく、以下の検証を行った。本実施例では、以下の比較例1、2及び実施例1について、図1に示した鋼板製造プロセスにおいて圧延条件を変更し、電磁鋼板を圧延したときのスリップ有無及び焼付き有無について調べた。
本検証では、板厚2.3mm、板幅1200mmの無方向性電磁鋼板を用い、冷間タンデム圧延機にて板厚0.3mmまで圧延した。第1スタンド入側での板温度は450℃、圧下率は38%、圧延速度は200m/minであった。潤滑油としてはパーム油を用いた。また、第1スタンド出側では、冷却液供給ノズルから冷却水をワークロールに供給しロール冷却を行った。
比較例1では、エマルション粒径の測定は行わず、エマルション濃度10%、供給流量20リットル/minで潤滑を行いながら電磁鋼板を圧延した。比較例2では、エマルション粒径の測定は行わず、エマルション濃度20%、供給流量20リットル/minで潤滑を行いながら電磁鋼板を圧延した。
一方、実施例1では、図5に示した処理に基づき、粒径測定装置からのエマルション粒径の測定値をフィードバックし、予め設定されたエマルション粒径、エマルション濃度及び供給流量と摩擦係数との関係に基づき、摩擦係数が適正範囲内となるようにエマルションの供給流量を調整した。実施例1では、エマルション粒径が75μm、エマルション濃度が10%であり、予め取得されている摩擦係数との関係から、エマルションの供給流量は15リットル/minに設定された。
上記の比較例1、2及び実施例1について冷間タンデム圧延機による圧延を行った。その結果、比較例1では焼付きが生じており、圧延時にスリップも発生していた。比較例22では焼き付きは防止できたが、圧延時にスリップが発生した。一方、実施例1では、焼付き及びスリップの発生はなく、これらを完全に防止することができた。実施例1では、エマルション濃度が同一の比較例1と比べて供給流量を低減することができた。また、比較例2との対比では、実施例1ではエマルション濃度が低減されるとともに供給流量も低減された。
以上より、無方向性電磁鋼板をダイレクト潤滑方式の冷間タンデム圧延機で圧延する際、無方向性電磁鋼板を、板温度が200℃以上500℃以下となるように予備加熱した後、少なくとも圧延方向最上流側の第1スタンドにおいて圧下率30%以上で圧延する場合に、本発明の圧延方法を適用することで、エマルションのコストを低減できるとともに焼付きの発生を防止できることが確認された。
以上、添付図面を参照しながら本発明の好適な実施形態について詳細に説明したが、本発明はかかる例に限定されない。本発明の属する技術の分野における通常の知識を有する者であれば、特許請求の範囲に記載された技術的思想の範疇内において、各種の変更例または修正例に想到し得ることは明らかであり、これらについても、当然に本発明の技術的範囲に属するものと了解される。
例えば、上記実施形態では、無方向性電磁鋼板の圧延に適用する場合について説明したが、本発明はかかる例に限定されない。例えば、方向性電磁鋼板及びハイテン鋼を圧延対象とする圧延に適用してもよい。ハイテン鋼の場合、温間圧延することで、圧延時の荷重を低減することができ、板破断を防止することができる。
1 鋼板製造プロセス
6a~6f 第1~第6スタンド
10 コイル払出機
20 溶接機
30 ルーパー
50 予備加熱装置
60 冷間タンデム圧延機
61a 上ワークロール
61b 下ワークロール
62a 上バックアップロール
62b 下バックアップロール
63a、63b エマルション供給ノズル
64a、64b 水切り板
65a、65b 冷却液供給ノズル
70 切断機
80 コイル巻取機
91 第1のタンク
92 第2のタンク
93 第1のポンプ
94 第2のポンプ
95 スタティックミキサー
97 粒径測定装置
100 流量制御装置

Claims (7)

  1. 鋼板を加熱する予備加熱装置と、
    前記予備加熱装置に対して圧延方向下流側に配置され、複数のスタンドからなるダイレクト潤滑方式の冷間タンデム圧延機と、
    を有し、
    前記冷間タンデム圧延機を構成する前記スタンドのうち第1スタンドまたは第2スタンドには、
    当該スタンドの入側に配置され、当該スタンドのワークロールに対してエマルションを供給するエマルション供給ノズルと、
    当該スタンドの出側に配置され、前記ワークロールに対して冷却液を供給する冷却液供給ノズルと、
    少なくとも当該スタンドの入側に配置され、前記エマルション供給ノズルと前記鋼板との間に配置される水切り板と、
    前記エマルション供給ノズルから供給されるエマルションを調整するエマルション調整設備と、
    が設けられており、
    前記エマルション調整設備は、
    温水と潤滑油とを混合してエマルションを生成するスタティックミキサーと、
    前記スタティックミキサーにより生成された前記エマルションのエマルション粒径を測定する粒径測定装置と、
    前記粒径測定装置によるエマルション粒径の測定値に基づいて、エマルションの供給流量を制御する流量制御装置と、
    を含む、圧延設備。
  2. 前記鋼板は電磁鋼板であり、
    前記予備加熱装置は、前記冷間タンデム圧延機の入側において前記電磁鋼板の板温度が200℃以上500℃以下となるように前記電磁鋼板を予備加熱し、
    前記冷間タンデム圧延機は、前記電磁鋼板を少なくとも圧延方向最上流側の前記第1スタンドにおいて圧下率30%以上で圧延する、請求項1に記載の圧延設備。
  3. 前記エマルション調整設備が設けられた前記スタンドの前記ワークロールは、少なくとも上下いずれか一方のワークロールが、板端部近傍においてロール端に向かうにつれて順次径少するロールプロフィルを有する、請求項1または2に記載の圧延設備。
  4. 前記エマルション調整設備が設けられた前記スタンドの前記ワークロールは、ハイスロールである、請求項1~3のいずれか1項に記載の圧延設備。
  5. 前記エマルション調整設備が設けられた前記スタンドの前記ワークロールは、表面粗度が0.6~1.2μmRaである、請求項1~4のいずれか1項に記載の圧延設備。
  6. 前記エマルション調整設備が設けられた前記スタンドは、前記ワークロールを支持するチョックのベアリングを冷却する冷却機構を有する、請求項1~5のいずれか1項に記載の圧延設備。
  7. 鋼板を加熱する予備加熱装置と、前記予備加熱装置に対して圧延方向下流側に配置され、複数のスタンドからなるダイレクト潤滑方式の冷間タンデム圧延機と、を有する圧延設備による圧延方法であって、
    前記冷間タンデム圧延機を構成する前記スタンドのうち第1スタンドまたは第2スタンドには、
    当該スタンドの入側に配置され、当該スタンドのワークロールに対してエマルションを供給するエマルション供給ノズルと、当該スタンドの出側に配置され、前記ワークロールに対して冷却液を供給する冷却液供給ノズルと、少なくとも当該スタンドの入側に配置され、前記エマルション供給ノズルと前記鋼板との間に配置される水切り板と、前記エマルション供給ノズルから供給されるエマルションを調整するエマルション調整設備と、が設けられており、
    前記エマルション調整設備は、
    温水と潤滑油とを混合してエマルションを生成するスタティックミキサーと、前記スタティックミキサーにより生成された前記エマルションのエマルション粒径を測定する粒径測定装置と、前記粒径測定装置によるエマルション粒径の測定値に基づいて、エマルションの供給流量を制御する流量制御装置と、を含み、
    前記エマルション調整設備が設けられた前記スタンドでは、
    前記粒径測定装置により、前記スタティックミキサーにより生成されたエマルションのエマルション粒径を測定し、
    前記流量制御装置により、前記ワークロールと前記鋼板との間の摩擦係数が所定の範囲内となるように、エマルション粒径の測定値と、予め取得されたエマルション粒径、エマルション濃度及び供給流量と摩擦係数との関係とに基づいて、前記エマルションの供給流量を制御する、圧延方法。
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