JP6950723B2 - 方向性電磁鋼板の製造方法 - Google Patents

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Description

本発明は、方向性電磁鋼板の製造方法に関する。
方向性電磁鋼板は、変圧器や発電機の鉄心材料として用いられる軟磁性材料であり、鉄の磁化容易軸である{110}<001>方位(Goss方位)が鋼板の圧延方向に高度に揃った結晶組織を有する磁気特性に優れた鋼板である。一般に、方向性電磁鋼板の鉄損特性または製品から鉄心を製造した際の鉄損増加率であるビルディングファクター(BF)は、製品の結晶粒径が小さいほど低減されることが知られている。そして、製品の結晶粒径は、一次再結晶板における結晶方位がGoss方位へ強く集積するほど、小さくなることが知られている。
上記Goss方位への集積を高める方法としては、例えば特許文献1には、冷間圧延中の冷延板を低温で熱処理し、時効処理を施す方法が開示されている。また、特許文献2には、熱延板焼鈍または最終冷間圧延前の中間焼鈍時の冷却速度を30℃/sec以上とし、さらに、最終冷間圧延中に、板温150〜300℃で2分間以上のパス間時効を2回以上行う技術が開示されている。さらに、特許文献3には、圧延中の鋼板温度を高めた温間圧延することにより、圧延時に導入された転位を直ちにCやNで固着させる動的歪時効を利用する技術が開示されている。
上記特許文献1〜3に記載の技術は、いずれも圧延中あるいは圧延のパス間で鋼板温度を適正温度に保持することにより、固溶元素である炭素(C)や窒素(N)を低温で拡散させ、冷間圧延で導入された転位を固着して、それ以降の圧延での転位の移動を妨げ、剪断変形をより起こさせることで圧延集合組織の改善を図るものである。これらの技術の適用によって、一次再結晶板の時点でGoss方位種結晶が数多く形成される。二次再結晶時にそれらのGoss方位種結晶が粒成長することにより、二次再結晶後の結晶粒径を微細化させることが可能となる。
また、上記特許文献3に記載の歪時効の効果を更に高める技術として、特許文献4が挙げられる。特許文献4には、冷間圧延工程の最終冷間圧延の直前に熱処理を行い、鋼中に微細カーバイドを析出させておくことが記載されている。また、上記特許文献4には、前記最終圧延を前半部と後半部の二つに分けること、前記最終圧延の前半部では圧下率30〜75%の範囲で140℃以下の低温で圧延を行うこと、前記最終圧延の後半部では少なくとも2回の圧下パスを150〜300℃の高温で圧延を行うこと、かつ前記前半部と前記後半部とを合わせた総圧下率が80〜95%で圧延を行うことが開示されている。また、上記特許文献4には、これらによって安定してGOSS方位に高度に集積した材料を得られる技術が開示されている。さらに、特許文献4の技術は、鋼素材中にAlを100ppm以上含むインヒビター系方向性電磁鋼板への適用を前提としている。しかし、当該特許文献4の技術では、最終冷延前の微細カーバイド析出の為の熱処理の際、適切な熱処理条件に制御することは困難であり、カーバイドと共に粗大なAlNも析出する可能性が高い。そのため、特許文献4の技術を用いたインヒビター系方向性電磁鋼板では、AlNのインヒビターとしての効力が失われて、二次再結晶不良による磁気特性の劣化を招いてしまう。
ところで、一般的な方向性電磁鋼板は、質量%で、Siを4.5%程度以下含有し、さらに、インヒビターと呼ばれるAlN、MnSまたはMnSeなどを形成する成分を含有する鋼素材を、熱間圧延し、冷間圧延し、一次再結晶焼鈍し、仕上げ焼鈍において二次再結晶させることにより製造するのが一般的である。しかし、近年、省エネルギーに対する要求は厳しさを増す傾向であるため、特許文献1〜4に記載のインヒビター系方向性電磁鋼板より低コストのインヒビターレス系方向性電磁鋼板での低鉄損化技術の開発が求められている。
そこで、インヒビター成分を含有させずに二次再結晶を起こさせる技術(インヒビターレス法)として、例えば、特許文献5に記載の技術が提案されている。この技術は、インヒビター成分を固溶させるためのスラブ高温加熱が不要であり、仕上焼鈍での純化も不要なため、低コストで方向性電磁鋼板を製造することができるという利点を有する。
また、その他のインヒビターレスの技術としては、特許文献6に記載の技術が挙げられる。当該特許文献6では、中間焼鈍を含む2回以上の冷間圧延工程のうち1回目の冷間圧延を1パス以上で、総圧下率を25%〜50%として行い、かつ、最初の噛込温度を100℃以下として行うこと、2回目の冷間圧延は、2パス以上で、総圧下率を80%〜95%として行い、かつ、少なくとも1パス間で200℃〜300℃の温度でパス間時効をおこなうことで集合組織を改善し、磁気特性にすぐれた材料を得る技術が開示されている。
特開昭50−016610号公報 特開平08−253816号公報 特開平01−215925号公報 特開平09−157745号公報 特開2000−129356号公報 特開2013−139629号公報
しかしながら、特許文献5に記載の技術は、より高純度化した鋼および微量窒素の働きを利用し、テクスチャー(集合組織)制御による正常粒成長抑制効果によって、二次再結晶を発現させる技術であるため、集合組織の作り込みには、より繊細な制御が要求される。一方、磁気特性に優れる方向性電磁鋼板を製造する上では、冷間圧延時の集合組織制御も極めて重要である。しかし、上記特許文献5に記載の技術は、極力低減された不純物および固溶窒素のドラッグ効果によって高エネルギー粒界の移動速度の優位性を維持させることに主眼が置かれている。そのため、特許文献5に記載の技術において、冷間圧延条件は検討されていない。
また、上記特許文献6に記載の技術は、冷間圧延中に中間焼鈍を挟むことから、中間焼鈍後の結晶粒は細かくなり、2回目の冷間圧延で剪断帯が導入されにくくなるため、GOSS方位種結晶形成には不利である。
そこで、本発明の目的は、上記従来技術が抱える問題点を解決し、従来技術を超える鉄損改善効果が得られる、方向性電磁鋼板の新規な製造方法を提案することにある。
本発明者らは、上記課題を達成するための方法を見出し、本発明に至った。以下、本発明に至った実験について説明する。
(実験1)
質量%で、C:0.037%、Si:3.4%およびMn:0.05%を含有し、質量ppmで、SおよびSeをそれぞれ31ppm、Nを50ppm、sol.Alを85ppm含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブAを1210℃に加熱後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とした。
さらに、質量%で、C:0.045%、Si:3.4%およびMn:0.06%を含有し、質量ppmで、SおよびSeをそれぞれ35ppm、Nを90ppm、sol.Alを250ppm含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼スラブBを1400℃に加熱後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とした。
次いで、上記2種の熱延板から採取した試験片に、1000℃×60秒の熱延板焼鈍を施した後、冷間圧延を行い、最終板厚が0.20mm(総圧下率90%)の冷延板とした。ここで、上記鋼スラブAに対する冷間圧延は、圧延開始から累積される圧下率を表わす累積圧下率の値が表1に示される種々の値に達するまでを前半部の圧延とし、それ以降の圧延を後半部の圧延として、当該表1に示す前半部および後半部の各圧延温度条件下で行った。上記鋼スラブBに対する冷間圧延は、表1に示す通り、累積圧下率が70%になるまでの前半部の圧延を50℃にて、それ以降の後半部の圧延を200℃で行った。
上記冷延板は、その後、均熱温度を840℃、均熱時間を100秒とする脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施してから、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、二次再結晶焼鈍を施して二次再結晶させ、次いで、上記二次再結晶焼鈍後の鋼板表面に、リン酸塩−クロム酸塩−コロイダルシリカを重量比3:1:2で含有する塗布液を塗布し、800℃×30秒の平坦化焼鈍を施し、製品コイルとした。この製品コイルからエプスタイン試験片を採取し、JIS2550に従って、鉄損W17/50(磁束密度の振幅 1.7T,50Hzにおける重量あたりの損失、以下、製品板鉄損という)を測定した結果について表1に示す。
また、上記の磁気特性の測定結果を考察するため、X線回析を用いて、冷間圧延途中の前半部の圧延後における圧延板の{111}<112>方位強度および一次再結晶板のGOSS方位強度について測定を行った。なお、圧延板における{111}<112>方位組織は、GOSS方位種結晶の素地になることから、一次再結晶GOSS方位粒の育成に関する指標となる。
上記GOSS方位強度の測定方法としては、鋼板表面から板厚の1/10の深さまで研磨して減厚したサンプルを10%硝酸で30秒間エッチングし、X線シュルツ法にて(110)、(200)、(211)面を測定し、そのデータからODF(Orientation Distribution Function)解析を行い、各結晶方位の強度を算出した。解析にはResMat社のソフトウェアTextoolsを用い、ADC(Arbitrarily Defined Cell)法で算出した。上記測定結果を表1に示す。
Figure 0006950723
表1より、比較的低温の圧延を特定範囲の累積圧下率まで施してから、その後に比較的高温の圧延を実施した条件において、良好な磁気特性を示す鋼板が得られることが判明した。次に、上記表1で示した測定結果を用いて、横軸を前半部の圧延温度が50℃の場合の累積圧下率とし、縦軸を前半部の圧延後の{111}<112>方位強度として、当該累積圧下率と、当該{111}<112>方位強度との関係を整理した結果について図1に示す。図1から、累積圧下率が45%以上80%以下の範囲で{111}<112>方位強度が高く、良好な磁気特性が得られることを、発明者は見出した。
また、表1において、鋼Bのスラブを用いたNo.9では、製造条件の類似したNo.4等と比較して{111}<112>方位強度や鉄損値が良好ではない。これは、インヒビター成分であるN、sol.Alの含有量が多いために、インヒビター元素を全固溶させるため1400℃と高温のスラブ加熱が必要となり、そのため{001}<110>組織が増加し、{111}<112>組織の発達が進行しにくかったものと考えている。
(実験2)
さらに、冷間圧延条件(圧延温度)と製品板鉄損との関係について、発明者が行ったもう一つの実験について以下に説明する。
上記表1に結果を示した実験と同様に、熱延板焼鈍を施した鋼スラブAの成分組成を有する鋼板に対して、冷間圧延を施し、最終板厚が0.20mm(総圧下率90%)の冷延板とした。その際の冷間圧延の条件は、圧延の前半部および後半部の境界となる累積圧下率を65%として、前半部および後半部の圧延の温度条件を種々に変更した。その後は、前記表1に記載の方向性電磁鋼板の製造条件と同様の一次再結晶焼鈍、二次再結晶焼鈍、平坦化焼鈍を施し、製品コイルとし、製品板鉄損(W17/50)を測定した。
この測定結果を、前半部の圧延温度および後半部の圧延温度と、製品板鉄損との関係に整理して、図2に示す。図2中、「○」で表記されているものは、鉄損W17/50が0.85W/kg以下であり、「×」で表記されているものは鉄損W17/50が0.85W/kg超である。図2より、130℃以下の圧延温度下で前半部の圧延を施した後、150℃以上かつ350℃以下の圧延温度下で後半部の圧延をさらに施すことにより、磁気特性が改善されることを確認した。
上記の通り、表1、図1および図2に示す実験結果から、前半部の圧延終了後の{111}<112>方位強度が高い材料に対して、後半部の圧延(高温圧延)を施した場合に一次再結晶GOSS方位強度が高くなり、良好な製品板鉄損が得られていることが確認された。上記実験で導かれた圧延条件に従って磁気特性が改善されるメカニズムは以下であると考えられる。まず、前半部の圧延、すなわち低温の冷間圧延により圧延安定方位群の一つであるγファイバーと呼ばれる(111)組織が増大し、その結果、{111}<112>方位加工組織が増大する。その後、後半部の圧延である温間圧延により{111}<112>方位加工組織にせん断帯が導入されて、その内部にGOSS方位種結晶が形成される。その際、GOSS方位種結晶の素地となる{111}<112>方位組織を前半部の圧延により増やしておくことで、より効率的にGOSS方位種結晶が形成される。その結果、一次再結晶GOSS方位粒が増加するため、良好な磁気特性が得られると考えられる。
以上の実験結果および知見を踏まえて本発明を完成させた。すなわち、本発明の要旨は、以下の通りである。
[1]質量%で、C:0.08%以下、Si:4.5%以下およびMn:0.5%以下を含み、かつ質量ppmで、Sを50ppm未満、Seを50ppm未満、Nを60ppm未満、sol.Alを100ppm未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成を有する鋼素材を加熱する工程(I)と、
前記加熱した鋼素材に対して熱間圧延を施し、熱延板を得る工程(II)と、
前記熱延板への圧延開始からの累積圧延率が45%以上80%以下に至るまで30℃以上130℃以下の温度域で圧延を施す前半部の圧延および前記前半部の圧延後に150℃以上350℃以下の温度域での圧延を1パス以上施す後半部の圧延により、冷延板を得る工程(III)と、
前記冷延板に一次再結晶焼鈍を施す工程(IV)と、
前記一次再結晶焼鈍後の冷延板に二次再結晶焼鈍を施す工程(V)と、を有する方向性電磁鋼板の製造方法。
[2]前記前半部の圧延を施した鋼板における{111}<112>方位ランダム強度比が、3.5以上である、前記[1]記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
[3]前記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.03%以上1.50%以下、Sn:0.01%以上1.50%以下、Sb:0.005%以上1.50%以下、Cu:0.03%以上3.0%以下、P:0.01%以上0.50%以下、Mo:0.005%以上0.30%以下、Nb:0.0005%以上0.010%以下およびCr:0.03%以上1.50%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、前記[1]または[2]に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
本発明によれば、従来よりも効果的に一次再結晶GOSS方位強度を高めて、二次再結晶粒径を微細化させることができるため、良好な磁気特性を示す方向性電磁鋼板を得ることができる。
累積圧下率と、{111}<112>方位強度との関係を示すグラフである。 前半部の圧延および後半部の圧延の圧延温度と、製品板鉄損との関係を示すグラフである。
本発明に係る方向性電磁鋼板を製造する方法は、冷間圧延により最終板厚の冷延板とし、その後、前記冷延板に対して一次再結晶焼鈍を施したのち、前記一次再結晶焼鈍を施した冷延板に対して二次再結晶焼鈍を施す一連の工程よりなる方向性電磁鋼板の製造方法において、前記冷間圧延が、当該冷間圧延開始から累積される累積圧延率が45%以上80%以下に至るまで30℃以上130℃以下の温度域で圧延を施す前半部の圧延および前記前半部の圧延後に150℃以上350℃以下の温度域で圧延を1パス以上施す後半部の圧延を有する方法である。
これにより、一次再結晶Goss方位粒の存在頻度が高まると共に、製品粒径が微細化する結果、鉄損特性に優れる方向性電磁鋼板を製造することができる。
以下、本発明の方向性電磁鋼板の鋼素材の成分組成を説明した後、製造方法の各工程および当該製造方法により得られた方向性電磁鋼板について具体的に説明する。
本発明に係る鋼素材(例えば、鋼スラブ)が有する成分組成は、方向性電磁鋼板の製造に適したものを採用することができる。優れた磁気特性を有する方向性電磁鋼板を得るためには、基本成分としてC、SiおよびMnを、質量%で下記の範囲で含有することが必要である。
なお、以下の説明において、鋼成分組成の各元素の含有量の単位(%)は「質量%」を表わし、鋼成分組成の各元素の含有量の単位(ppm)はいずれも「質量ppm」を表わす。
「鋼素材の成分組成」
C:0.08%以下
Cは、熱延鋼板の集合組織の改善のために必要な元素であるが、C量が0.08%を超えると、脱炭焼鈍で、磁気時効の起こらない濃度範囲である0.0050%以下に低減することが困難になる。よって、C量の上限値は0.08%とする。しかし、C量が0.01%未満であると、スラブ加熱時に組織が粗大化し、以後の工程での再結晶が起こり難くなるため、C量の下限値は、0.01%であることが好ましい。また、熱延鋼板の集合組織の粗大化を抑制する観点からC量の下限値は、0.02%がより好ましく、0.03%がさらに好ましい。磁気時効を抑制する観点からC量の上限値は、好ましくは、0.07%、より好ましくは、0.06%とする。C量の好ましい含有量は、これらの上限値および下限値を組み合わせることができ、好ましくは0.01%以上0.08%以下の範囲である。
Si:4.5%以下
Siは、鋼の電気抵抗を高め、鉄損を改善するのに有効な元素であるが、含有量が4.5%を超えると、加工性が著しく低下するため、圧延して製造することが難しくなる。よって、Si量の上限値は4.5%である。ただし、Si量の下限値が2.0%未満では、十分な鉄損低減効果が得難くなるので、Si量の下限値は、好ましくは2.0%である。また、鉄損低減効果の観点で、Si量の下限値は、2.5%がより好ましく、3.0%がさらに好ましい。加工性の観点からSi量の上限値は、好ましくは、4.0%、より好ましくは、3.5%とする。Si量の好ましい含有量は、これらの上限値および下限値を組み合わせることができ、好ましくは2.0%〜4.5%の範囲である。
Mn:0.5%以下
Mnは、熱間加工性を改善するために必要な元素であるが、含有量が0.5%を超えると、一次再結晶集合組織が劣化し、Goss方位が高度に集積した二次再結晶粒が得難くなる。よって、Mn量の上限値は0.5%とする。また、熱間加工性の観点で、Mn量の下限値は、0.01%がより好ましく、0.05%がさらに好ましい。Goss方位が高度に集積した二次再結晶粒を得る観点からMn量の上限値は、好ましくは0.4%、より好ましくは0.3%とする。Mn量の好ましい含有量は、これらの上限値および下限値を組み合わせることができ、好ましくは、0.01%〜0.4%の範囲である。
また、本発明は集合組織改善による磁気特性改善を狙ったものであるので、二次再結晶を起こさせるためのインヒビターを用いない方が本発明の効果が顕著である。さらに、インヒビター成分が過度に多いと、インヒビター成分を全て固溶させるために加熱温度を高くする必要があり、スラブ粒径の粗大化を招き、冷間圧延時の{111}<112>方位の形成を妨げることとなる。よって、インヒビター成分であるS、Se、NおよびAlは、それぞれ質量ppmで、sol.Al:100ppm未満、N:60ppm未満、S:50ppm未満、Se:50ppm未満に低減する必要がある。また、S量の上限値は二次再結晶安定性という観点で、40ppmがより好ましく、35ppmがさらに好ましい。Se量の上限値も二次再結晶安定性という観点で、40ppmがより好ましく、35ppmがさらに好ましい。N量の上限値は二次再結晶安定性という観点で、55ppmがより好ましく、53ppmがさらに好ましい。また、sol.Al量の上限値は二次再結晶安定性という観点で、90ppmがより好ましい。さらに、また、S量の下限値は生産性(製鋼への負荷)という観点で、10ppmがより好ましく、20ppmがさらに好ましい。Se量の下限値は生産性(製鋼への負荷)という観点で、10ppmがより好ましく、20ppmがさらに好ましい。N量の下限値はAlNインヒビター確保という観点で、20ppmがより好ましく、30ppmがさらに好ましい。また、sol.Al量の下限値はAlNインヒビター確保という観点で、30ppmがより好ましく、50ppmがさらに好ましい。
なお、上記「sol.Al」とは、鋼素材中に固溶しているAlをいい、系内に存在するAlの量から介在物(Alを含む化合物)として存在するAl(insol.Al)を減じた値である。
以上が本発明の鋼素材の基本組成成分であり、本発明に係る鋼素材において、残部はFeおよび不可避的不純物である。
また、本発明の方向性電磁鋼板は、磁気特性改善を目的として、上記基本成分に加えてさらに、質量%で、Ni:0.03%以上1.50%以下、Sn:0.01%以上1.50%以下、Sb:0.005%以上1.50%以下、Cu:0.03%以上3.0%以下、P:0.01%以上0.50%以下、Mo:0.005%以上0.30%以下、Nb:0.0005%以上0.010%以下およびCr:0.03%以上1.50%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有させてもよい。
Niは、熱延板組織を改善して磁気特性を向上させるのに有用な元素である。しかし、Ni含有量が0.03%未満であると、上記効果が小さい。一方、Ni含有量が1.50%を超えると、二次再結晶が不安定となり磁気特性が劣化するおそれがある。
また、Sn,Sb,Cu,P,Mo,NbおよびCrは、磁気特性の向上に有用な元素であるが、いずれの元素も含有量が上記下限値未満であると、磁気特性向上効果が小さい。一方、上記元素の含有量が上記した各上限値を超えると、二次再結晶粒の発達が阻害されるようになるため、それぞれ上記範囲で含有させることが好ましい。
本発明に係る方向性電磁鋼板の製造方法について、以下各工程について詳説する。
「工程(I)」
本製造方法に係る工程(I)は、上記記載の成分組成を有する鋼素材を加熱する加熱工程である。
本発明の方向性電磁鋼板の製造に供する鋼素材は、上記記載の成分組成を有し、かつ従来公知の方法で製造されたものであれば、特に制限はない。当該鋼素材を作製する方法としては、例えば、転炉や電気炉等で得た溶鋼を真空脱ガス等の二次精錬を経て所望の成分組成とする通常公知の精錬プロセスで鋼を溶製し、その後、連続鋳造法あるいは造塊−分塊圧延法で鋼素材とする方法が挙げられる。上記成分組成を有する鋼素材は、その後、工程(I)により再度加熱されて、後述の工程(II)の熱間圧延に供する。
本発明に係る鋼素材を加熱する温度の上限値は、スラブ粒径の粗大化を抑制し、冷間圧延時の{111}<112>方位の形成を安定化するために、1300℃以下が好ましく、1220℃以下がより好ましい。一方、当該鋼素材を加熱する温度の下限値は、熱間圧延における荷重低減という観点から1050℃以上が好ましく、1100℃以上がより好ましい。
「工程(II)」
本製造方法に係る工程(II)は、加熱した鋼素材に対して熱間圧延を施し、熱延板を得る熱間圧延工程である。
本発明に係る熱間圧延条件については特に制限はなく、通常公知の方法で施せば良い。一般的に鋼素材は粗圧延でシートバーとなり、仕上げ圧延と巻取りによって熱延コイル(熱延鋼板)となる。例えば、本発明に係る熱間圧延工程の条件は、仕上げ圧延温度:700℃以上1100℃以下、巻取り温度:350℃以上800℃以下が好ましい。
本製造方法に係る工程(II)は、上記熱間圧延により得られた鋼板に対して、いわゆる熱延板焼鈍を必要に応じて更に有してもよい。すなわち、先述の熱間圧延の後、後述の工程(III)の前に、必要により、上記熱間圧延により得られた鋼板に対して焼鈍を施す熱延板焼鈍処理を行ってもよい。当該焼鈍条件は通常公知の条件で施せば良く、特に制限はないが、例えば焼鈍は、均熱温度:700℃以上1400℃以下、均熱時間:2s以上300s以下の条件で行うことが好ましい。
本製造方法に係る工程(II)は、上記熱間圧延により得られた熱延板に対して、酸洗などの脱スケール処理を必要に応じて更に有してもよい。
本製造方法に係る工程(II)の好ましい態様は、加熱した鋼素材に対して熱間圧延を施し、次いで熱延板焼鈍を行った後、必要に応じて脱スケール処理を行って熱延板を得る工程である。
「工程(III)」
本製造方法に係る工程(III)は、熱延板への圧延開始からの累積圧延率が45%以上80%以下に至るまで30℃以上130℃以下の温度域で圧延を施す前半部の圧延および、前記前半部の圧延後に150℃以上350℃以下の温度域で圧延を1パス以上施す後半部の圧延を有することにより、冷延板を得る工程である。
すなわち、本発明に係る冷間圧延は、少なくとも異なる2つの圧延温度域を有する圧延であり、冷間圧延の開始からの累積圧延率が所定値になることを契機とし、当該異なる圧延温度域のうちの低から高の圧延温度域への切り替えを行うものである。具体的には、30℃以上130℃以下の温度域での圧延を開始し、この開始から累積される圧延途中の圧延率が45%以上80%以下の範囲内に達した後、30℃以上130℃以下の温度域から150℃以上350℃以下の温度域への切り替えを行うものである。これにより、GOSS方位種結晶の素地となる{111}<112>方位組織を増大させることができる。
本明細書では、冷間圧延の圧延開始から累積される圧延途中の圧下率を累積圧下率とし、当該累積圧下率が所定値に達するまでを前半部、それ以降を後半部と定義する。特に本発明に係る冷間圧延は、累積圧下率が45%以上80%以下に達するまでを前半部の圧延と称して、30℃以上130℃以下の温度域で熱延板に圧延を施し、この前半部の圧延の後に行う圧延を後半部の圧延と称して、150℃以上350℃以下の温度域で1パス以上圧延を施すものであり、前記前半部の圧延と前記後半部の圧延とを連続して行うものである。
したがって、前半部の圧延は、累積圧下率が45%以上80%以下になるまで常に30℃以上130℃以下の温度域で圧延を施すことが必要である。一方、後半部の圧延は、前記前半部の圧延を施した熱延板に対して150℃以上350℃以下の温度域で1パス以上の圧延を施せば足りるため、前半部の圧延とは異なり、150℃以上350℃以下の温度域での圧延を常に行う必要が無い。後半部の圧延の実施態様の一例としては、150℃以上350℃以下の温度域で1パス以上の圧延を施す前後に、当該温度域とは異なる温度域で1パス以上の圧延をさらに施す例が挙げられる。特に、後半部の圧延の実施態様は、累積圧下率が45%以上80%以下に達した直後、鋼板に150℃以上350℃以下の温度域で1パスの圧延を施すことが好ましい。
従来の製造方法では冷間圧延工程途中に中間焼鈍を行っているが、本発明に係る冷間圧延工程は、1回の冷間圧延工程により最終板厚とすることが必要である。そのため、本発明に係る冷間圧延工程は、中間焼鈍を不要としている。なぜなら、冷間圧延工程中に中間焼鈍を挟むと結晶粒が細かくなり剪断帯が導入されにくくなり、その結果、GOSS方位種結晶が得られにくくなるためである。
本発明に係る冷間圧延工程(III)では、まず低温の冷間圧延、すなわち前半部の圧延により圧延安定方位群の一つであるγファイバーと呼ばれる(111)組織を増大させ、次いで温間圧延、すなわち後半部の圧延によりその(111)組織からGoss方位種結晶を形成させることから、Goss方位の強度を効果的に高めることができる。この点を検討した実験結果である上記した図1を用いて、累積圧下率の範囲について以下詳説する。図1に示した通り、累積圧下率が45%未満および80%超であるとGoss方位種結晶の形成サイトである(111)存在強度比が低いことが確認される。すなわち、累積圧下率が45%未満であると、Goss方位種結晶の形成サイトである(111)繊維組織が未発達である。また、図1より、(111)組織は累積圧下率80%超になると急激に減少するため、後半部の圧延は80%以下の段階で行うのが必要である。つまり、累積圧下率は、45%以上80%以下の範囲に設定する必要がある。前記累積圧下率の上限値は、78%が好ましく、77%がより好ましく、75%がさらに好ましい。また下限値は、47%が好ましく、50%がより好ましく、53%がさらに好ましい。当該累積圧下率は、これらの上限値および下限値を組み合わせることができ、例えば、前記累積圧下率の好ましくは、47%〜77%であり、より好ましくは、50%〜75%である。
一方、後半部の圧延については、累積圧下率が45%未満の条件で後半部の圧延を行うと、Goss方位種結晶の形成サイトである(111)繊維組織が未発達なため、Goss方位種結晶増加による集合組織改善効果が得られなくなる。従って、後半部の圧延は累積圧下率45%以上の段階で行うことが必要である。
本発明に係る工程(III)において、冷間圧延開始から冷間圧延終了に至るまでの圧下率を表わす総圧下率を85%以上にするのが一般的であり、本発明においても上記範囲で行うのが好ましい。上記総圧下率は、85%以上95%以下が好ましく、88%以上92%以下がより好ましい。
ここで総圧下率の定義をする。本発明の工程(III)の冷間圧延では、熱延板の板厚を基準として、総圧下率は、以下の式(1)で定義する。
総圧下率={(工程(II)後の熱延板の板厚−工程(III)後の冷延板の板厚)/(工程(II)後の熱延板の板厚)}×100(%) …式(1)
上記式(1)で示す通り、本明細書における総圧下率とは、冷間圧延開始から冷間圧延終了までの板厚の変化量をいうのに対して、本明細書における累積圧下率は、冷間圧延開始から冷間圧延途中までの板厚の変化量をいう。
本発明に係る工程(III)の冷間圧延の温度条件(圧延温度)に関して、以下説明する。累積圧下率が45%以上80%以下に達するまでの圧延温度が30℃未満であると、板割れが多発し、生産性が著しく低下する。また、前記圧延温度が130℃超の温度であると、(111)組織は減少してしまう。従って、前半部の圧延(累積圧下率が45%以上80%以下に達するまで)は30℃以上130℃以下の温度域で圧延する必要があり、好ましくは、40℃以上100℃以下で圧延する必要がある。
一方、累積圧下率が45%以上80%以下に達した後の圧延温度が150℃未満であると、炭素の拡散が遅く、転位に固着しづらいため剪断帯の導入頻度が低下してしまい、十分なGOSS方位種結晶増加効果が望めない。さらに、前記圧延温度が350℃超であると、サーマルクラウンなどにより形状制御が著しく困難になる。従って、後半部の圧延(累積圧下率が45%以上80%以下に達した後)は150℃以上350℃以下の温度域で圧延する必要があり、好ましくは、180℃以上300℃以下である。
本工程における後半部の圧延は、生産性確保という理由により、好ましくは、1パスあたりの圧下率が15%〜40%である。
本明細書における「1パス」とは、圧延機のロールに噛み込まれ噛み抜かれるまでの圧延動作である圧延パスを1回行うことをいう。例えば、タンデム圧延機の場合は、複数の圧延スタンドのうち、一つの圧延スタンドに熱間圧延後の鋼板が通過し圧延されることを1パスという。また、「圧延温度」とは、圧延処理に供する際の被圧延板の表面温度である。圧延温度は、接触温度計または放射率を適切に設定した放射温度計により測定できる。なお、コイル圧延においては、コイル長手中央部の一定速で圧延している部分におけるロールに噛み込む直前の温度を測定するものとする。
本発明に係る前半部の圧延後の冷延板における{111}<112>方位ランダム強度比が3.5以上であることが好ましい。実質的には(前半部の圧延後)の鋼板における{111}<112>方位のランダム強度比が3.5以上であると、十分なGOSS方位種結晶増大効果が期待できる。
本発明に係る工程(III)は、前半部の圧延の前に、必要に応じて酸洗やブラスト処理等で脱スケールを行う脱スケール処理をさらに有してもよい。
なお、後半部の圧延において鋼板温度を上昇させる方法としては、圧延機入側へのヒーターの設置、圧延時の潤滑エマルジョンの流量低減、圧延の高速化など、種々の方法があるが、特に制限されることなく適宜使用することができる。
本発明に係る冷間圧延を行う圧延機としては、公知の圧延機を使用することができ、例えば、ゼンジミアミルなどのリバース圧延機またはタンデム式冷間圧延機などが挙げられる。製造効率を重視する場合は、前半部の圧延および後半部の圧延ともタンデム式冷間圧延機を使用してもよく、平坦度を重視する場合は、前半部の圧延および後半部の圧延ともリバース圧延機を使用してもよい。また、集合組織制御を重視する場合は、前半部の圧延ではタンデム式冷間圧延機を使用することが好ましい。なぜなら、前半部の圧延では(111)組織を増大させる必要があるが、リバース圧延機では、鋼板を高温のまま長時間保持するため、時効硬化の影響が強く、(111)組織増大に不利に働くためである。逆に、後半部の圧延ではリバース圧延機の上記の特性がGOSS方位種結晶増加に有利にはたらくため、GOSS方位種結晶増加を重視する場合は、後半部の圧延にリバース圧延機を用いることが好ましい。本発明では、集合組織制御を重視する観点から、前半部の圧延はタンデム式冷間圧延機を使用し、かつ後半部の圧延はリバース圧延機を使用することが好ましい。
次に、本発明の方向性電磁鋼板の製造方法においては、上記した工程(III)の最終冷間圧延した冷延板を、下記の工程(IV)の一次再結晶焼鈍し、次いで、工程(VI)の二次再結晶焼鈍し、さらに必要に応じて通常公知の絶縁被膜を被成し、製品(方向性電磁鋼板)とするのが好ましい。
「工程(IV)」
本製造方法に係る工程(IV)は、工程(III)で得られた冷延板に対して一次再結晶焼鈍を施す工程である。前記一次再結晶焼鈍工程は、一般的に脱炭焼鈍を兼ねることが多く、その条件は通常公知の条件で行えばよい。例えば、湿水素雰囲気中で800℃×2分の焼鈍条件などが好ましく適合する。なお、脱炭性の観点からは、焼鈍温度は800℃以上900℃以下の範囲とするのが好ましく、また、雰囲気は湿潤雰囲気とするのが好ましい。ただし、脱炭が不要なC含有量である0.005%以下のC含有量しか含有していない鋼素材を用いる場合はこの限りではない。なお、一次再結晶焼鈍と、脱炭焼鈍とは別に行ってもよい。
また、上記一次再結晶焼鈍と脱炭焼鈍とを兼ねる場合の焼鈍時間は、30秒〜300秒とすることが好ましい。さらに、脱炭の観点からは、雰囲気は湿潤雰囲気、特に湿水素雰囲気が好ましい。保定温度までの昇温速度は、方向性電磁鋼板の最終磁気特性を良好にする観点から、50℃/s以上400℃/s以下が好ましい。
「工程(V)」
本製造方法に係る工程(V)は、前記一次再結晶焼鈍工程後の鋼板に対して二次再結晶焼鈍を施す工程とする。本工程は、工程(IV)で得られた鋼板に対して二次再結晶焼鈍を兼ねた仕上げ焼鈍を施す工程とする。すなわち、上記工程(IV)で一次再結晶焼鈍を施した鋼板は、その後、必要により該鋼板表面に焼鈍分離剤を塗布した後、二次再結晶させる仕上焼鈍を施すことが好ましい。上記焼鈍分離剤としては、従来公知のものを用いることができ、たとえば、MgOを主成分とし、必要に応じて、TiO2などを添加したものや、SiO2やAl23を主成分としたものを用いることができる。
上記工程(V)の二次再結晶焼鈍後の鋼板は、その後、鋼板表面に絶縁被膜を塗布し焼き付けた後、必要に応じて、平坦化焼鈍して鋼板形状を整える平坦化焼鈍工程(VI)を行うことが好ましい。なお、上記絶縁被膜の種類については、特に制限はないが、鋼板表面に引張張力を付与する絶縁被膜を形成する場合には、特開50−79442号公報や、特開昭48−39338号公報、特開昭56−75579号公報等に記載されているリン酸塩−コロイダルシリカを含有する塗布液を用いて、800℃程度で焼き付けるのが好ましい。なお、上記平坦化焼鈍工程(VI)は、焼鈍温度750℃以上950℃以下、焼鈍時間5秒以上120秒以下で行うことが好ましい。
本発明に係る方向性電磁鋼板の製造方法は、前記工程(I)、(II)、(III)、(IV)、(V)および(VI)の順に全ての工程を行うことが特に好ましい。また、上記各工程間に必要により公知の工程をさらに付加してもよい。
質量%で、C:0.036%、Si:3.4%およびMn:0.06%を含有し、質量ppmで、SおよびSeをそれぞれ32ppm、Nを52ppm、sol.Alを86ppm含有し、残部がFeおよび不可避的不純物の組成からなる鋼素材を1210℃に加熱後(工程(I))、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とした。次いで、前記熱延板から採取した試験片に、1000℃×60秒の熱延板焼鈍を施した後(工程(II))、冷間圧延(総圧下率90%)を施し、最終板厚が0.20mmの冷延板とした(工程(III))。当該冷間圧延の際に、前半部の圧延はタンデム圧延機を用い、後半部の圧延はリバース圧延機を用いた。また、冷間圧延工程において、冷間圧延開始からの圧下率を表わす累積圧下率の値が表2に示す種々の値に達するまでを前半部の圧延とし、それ以降の圧延を後半部の圧延として、当該表2に示す前半部および後半部の圧延を施した。実験は、表2に示す、種々の圧延温度、累積圧下率で行った。
上記冷延板は、その後、均熱温度を840℃、均熱時間を100秒とする脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍(工程(IV))を施してから、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、二次再結晶焼鈍(工程(V))を施して二次再結晶させ、次いで、上記二次再結晶焼鈍後の鋼板表面に、リン酸塩−クロム酸塩−コロイダルシリカを重量比3:1:2で含有する塗布液を塗布し、800℃×30秒の平坦化焼鈍を施し、製品コイルとした。
上記工程(IV)により得られた一次再結晶焼鈍後の鋼板について、上記表1と同様に、X線回析を用いてGOSS方位強度を測定すると共に、上記した手法と同様に、製品板鉄損を測定した。その測定結果を表2に示す。表2の測定結果から、前半部の圧延により累積圧下率が45%以上80%以下となるまで、30℃以上130℃以下の温度域での圧延を行い、かつそれ以降の後半部の圧延により150℃以上350℃以下の温度域での圧延を行うことによって、一次再結晶GOSS方位強度が大きく向上し、製品板鉄損が顕著に低減していることが確認される。また、GOSS方位強度が大きく向上した条件では、前半部の圧延終了時の鋼板の{111}<112>方位強度が3.5以上になっていることが確認される。
Figure 0006950723
質量%で、C:0.036%、Si:3.4%およびMn:0.06%を含有し、質量ppmで、SおよびSeをそれぞれ33ppm、Nを50ppm、sol.Alを72ppm含有し、その他の成分として、Ni,Sn,Sb,Cu,P,Mo,NbおよびCrを、表3に示す組成で含有する鋼を溶製し、鋼素材とし、1210℃に加熱後、熱間圧延して板厚2.0mmの熱延板とした。次いで、上記熱延板から採取した試験片に、1000℃×60秒の熱延板焼鈍を施した後、表2の条件No.10と同じ条件で冷間圧延(総圧下率90%)し、最終板厚が0.20mmの冷延板とした。
上記冷延板は、その後、均熱温度を840℃、均熱時間を100秒とする脱炭焼鈍を兼ねた一次再結晶焼鈍を施してから、鋼板表面にMgOを主成分とする焼鈍分離剤を塗布した後、二次再結晶焼鈍を施して二次再結晶させ、次いで、上記二次再結晶焼鈍後の鋼板表面に、リン酸塩−クロム酸塩−コロイダルシリカを重量比3:1:2で含有する塗布液を塗布し、800℃×30秒の平坦化焼鈍を施し、製品コイルとした。
上記製品コイルから製品板を採取し、実施例1と同様に磁気特性を測定した。上記測定結果を表3に示した。
Figure 0006950723
上記表3からNi、Sn、Sb、Cu、P、Mo、NbおよびCrのいずれか1種以上を添加した鋼板は、添加しない鋼板より鉄損が低減していることがわかる。

Claims (3)

  1. 質量%で、C:0.08%以下、Si:4.5%以下およびMn:0.5%以下を含み、かつ質量ppmで、Sを50ppm未満、Seを50ppm未満、Nを60ppm未満、sol.Alを100ppm未満に抑制し、残部はFeおよび不可避的不純物の成分組成を有する鋼素材を加熱する工程(I)と、
    前記加熱した鋼素材に対して熱間圧延を施し、熱延板を得る工程(II)と、
    前記熱延板への圧延開始からの累積圧延率が45%以上80%以下に至るまで30℃以上130℃以下の温度域で圧延を施す前半部の圧延および前記前半部の圧延後150℃以上350℃以下の温度域で圧延を1パス以上施す後半部の圧延により、冷延板を得る工程(III)と、
    前記冷延板に一次再結晶焼鈍を施す工程(IV)と、
    前記一次再結晶焼鈍後の冷延板に二次再結晶焼鈍を施す工程(V)と、を有する方向性電磁鋼板の製造方法。
  2. 前記前半部の圧延を施した鋼板における{111}<112>方位ランダム強度比が、3.5以上である、請求項1に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
  3. 上記鋼素材は、上記成分組成に加えてさらに、質量%で、Ni:0.03%以上1.50%以下、Sn:0.01%以上1.50%以下、Sb:0.005%以上1.50%以下、Cu:0.03%以上3.0%以下、P:0.01%以上0.50%以下、Mo:0.005%以上0.30%以下、Nb:0.0005%以上0.010%以下およびCr:0.03%以上1.50%以下のうちから選ばれる1種または2種以上を含有する、請求項1または2に記載の方向性電磁鋼板の製造方法。
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