JP2023058067A - 無方向性電磁鋼板 - Google Patents

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Abstract

【課題】応力感受性が低く、45°方向の優れた磁気特性を有する、無方向性電磁鋼板を提供すること。【解決手段】(2×[Mn]+2.5×[Ni]+[Cu])-([Si]+2×[sol.Al]+4×[P])≧1.50%を満たす、所定の化学組成を有し、表面から板厚の1/2の深さの圧延面に平行な面をSEM-EBSDで測定した際の{hkl}<uvw>方位の結晶粒の全視野に対する面積率をAhkl-uvwと表記したとき、A411-011が15.0%以上であり、圧延方向に対して45度方向及び135度方向の平均磁束密度であるB50Dが1.70T以上であり、前記圧延方向に対して45度方向及び135度方向の平均鉄損であるW10D/400Dが12.0W/kg以下である、無方向性電磁鋼板。【選択図】なし

Description

本発明は無方向性電磁鋼板に関する。
電磁鋼板は、電機機器のコア(鉄心)の素材として利用される。電機機器はたとえば、自動車に搭載される駆動モータや、エアコンや冷蔵庫用に代表される各種コンプレッサー用モータ、さらには家庭用または産業用の発電機等である。これらの電機機器では、高いエネルギー効率、小型化及び高出力化が要求される。そのため、電機機器のコアとして利用される電磁鋼板には、低鉄損及び高い磁束密度が要求される。
鉄損の低減は、板厚の薄手化にて達成できる。しかしながら、板厚薄手化はモータの生産効率低下につながるので、板厚を維持しつつ、鉄損を低減する方法が要求されていた。
このような課題に対し、低鉄損及び高い磁束密度を得るための解決策として集合組織制御があり、これまで、鋼板板面内に磁化容易軸を持ち、磁気特性向上に有利であり、かつ鋼板製造の必須工程である熱間圧延および冷間圧延における圧延加工により比較的容易に集積を高めることが可能な組織(αファイバー)を発達させる技術が提案されている。具体的には、<110>方向が圧延方向(RD)に略平行な組織が形成される。
例えば、特許文献1には、熱間圧延後3秒以内に200℃/sec以上の冷却速度で250℃以下まで冷却すること、熱間圧延と、冷間圧延との間で焼鈍を行わず、冷間圧延における累積圧下率を88%以上とすることが記載されている。これにより、鋼板板面において{100}<011>方位に集積した電磁鋼板が製造できるとしている。
一方で、磁気特性を向上させるために、{100}方位から20°回転した{411}方位を発達させる技術も提案されている。特許文献2~8には、いずれも{411}方位を発達させる技術が開示されており、熱間圧延板における粒径を最適化したり、熱間圧延板の集合組織におけるαファイバーを強化したりすることが記載されている。
具体的には、特許文献2には、{411}方位の集積度より{211}方位の集積度の方が高い熱間圧延板に対して冷間圧延を行い、冷間圧延における累積圧下率を80%以上とすることが記載されている。これにより、鋼板板面において{411}方位に集積した電磁鋼板が製造できるとしている。
また、特許文献3及び4には、スラブ加熱温度を700℃以上1150℃以下、仕上げ圧延の開始温度を650℃以上850℃以下、仕上げ圧延の終了温度を550℃以上800℃以下とし、さらに、冷間圧延における累積圧下率を85~95%とすることが記載されている。これにより、鋼板表面において{100}方位および{411}方位に集積した電磁鋼板が製造できるとしている。
特許文献5には、無方向性電磁鋼板の製造方法において、ストリップキャスティングなどにより熱間圧延コイルの鋼板でαファイバーを鋼板表層近傍まで発達させると、その後の熱間圧延板焼鈍で{h11}<1/h12>方位、特に{100}<012>~{411}<148>方位が再結晶することが記載されている。
特許文献6には、インバースポールフィギュアの{100}面強度が2.4以上であり、電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の{100}方位(裕度20°以内)の
結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率が18%以上であり、平均結晶粒径が20μm以下であり、板厚が0.10mm~0.30mmであり、前記Siの含有量(質量%)を[Si]、前記Mnの含有量(質量%)を[Mn]としたときにQ=[Si]-0.5×[Mn]で表されるQが、2.00以上である、無方向性電磁鋼板において、磁気特性を向上させ、低鉄損および高磁束密度を実現するために、磁気特性に優位な{411}方位粒の存在確率を高めることが開示されている。特許文献6では、熱間圧延コイルの鋼板でαファイバーを鋼板表層近傍まで発達させると、その後の熱間圧延板焼鈍で{h11}<1/h12>方位、特に{100}<012>~{411}<148>方位が再結晶することが記載されている。
特許文献7には、α-γ変態系であり、化学組成が、質量%で、Si:2.0~4.5%、Mn:3.0超~5.0%、並びに、残部:Fe、任意元素及び不純物元素、であり、鋼板板面から板厚の1/4の深さにおける{100}<011>結晶方位のX線ランダム強度比が0~15.0であり、かつ、{411}<148>結晶方位のX線ランダム強度比が4.0~200である、無方向性電磁鋼板が開示されている。
特許文献8には、インバースポールフィギュアの{100}面強度が2.4以上であり、電子線後方散乱回折(EBSD)で測定した際の{100}方位(裕度20°以内)の結晶方位を有する結晶粒の全視野に対する面積率が18%以上であり、平均結晶粒径が55μm~200μmであり、板厚が0.10mm~0.30mmであり、鋼板の表面に厚さが0.01μm以上0.5μm以下のCr酸化物を含む層を有し、前記Siの含有量(質量%)を[Si]、前記Alの含有量(質量%)を[Al]、前記Crの含有量(質量%)を[Cr]、無方向性電磁鋼板の板厚(mm)をtとしたときに10.00%≦2[Si]+2[Al]+[Cr]<15.00%及び(2[Al]+[Cr])/2[Si]-10t≦0.35を満たす無方向性電磁鋼板において、低鉄損および高磁束密度を実現するため、磁気特性に優位な{411}方位粒の存在確率を高めることが開示されている。
特開2017-145462号公報 特許第4218077号公報 特許第5256916号公報 特開2011-111658号公報 特開2019-183185号公報 特開2020-76138号公報 特開2020-100860号公報 特開2020-139198号公報
本発明者らが上記の技術を検討したところ、特許文献1に従い{100}<011>方位を強化して磁気特性を改善しようとすると、熱間圧延直後の急冷が必要であり、製造負荷が高いという問題点があることが判明した。さらに特許文献1のように{100}<011>方位を強化した鋼板をかしめコアの素材として用いた場合、素材から期待されるほどのコア特性が得られない場合があることが分かった。この原因について検討した結果、{100}<011>方位は応力に対する磁気特性の変化、具体的には圧縮応力が作用した場合の磁気特性の劣化(応力感受性)が大きくなっているからであると考えられた。
また、特許文献2~8による技術では{411}方位は発達するものの、面内方位の<011>方位への集積が弱く、αファイバーの特徴である鋼板圧延方向から45°方向での磁気特性が十分に高くならないことが判明した。面内方位が<011>方位に揃わない、すなわちαファイバーからのずれが大きいことは、面方位としての{411}方位への集積を阻害する要因になっており、磁気特性が十分に向上しない原因となっている可能性も考えられた。
本発明は上記の問題点を鑑み、製造負荷が高くならない製造方法を前提として、応力感受性が低く、45°方向の優れた磁気特性を有する、無方向性電磁鋼板を提供することを目的とする。
本発明者らは、{411}面という{100}面から20°回転した面方位に着目し、さらに検討を行った。その結果、{411}<011>という特殊な方位を発達させることにより、磁気特性(特に圧延方向から45°方向での磁気特性)が一層改善されるとの知見を得た。
本発明者らは、このような知見に基づいて更に鋭意検討を重ねた結果、以下に示す発明の諸態様に想到した。
[1]質量%で、C:0.0100%以下、Si:1.50%~4.00%、sol.Al:0.0001%~1.00%、S:0.0100%以下、N:0.0100%以下、Mn、Ni、Cuからなる群から選ばれる1種以上:総計で2.50%~5.00%、Co:0.000%~1.000%、Sn:0.000%~0.400%、Sb:0.000%~0.400%、P:0.000%~0.400%、及びMg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、Cdからなる群から選ばれる1種以上:総計で0.0000%~0.0100%、を含有し、質量%での、Mn含有量を[Mn]、Ni含有量を[Ni]、Cu含有量を[Cu]、Si含有量を[Si]、sol.Al含有量を[sol.Al]、P含有量を[P]としたときに、以下の(1)式を満たし、残部がFeおよび不純物からなる、化学組成を有し、表面から板厚の1/2の深さの圧延面に平行な面をSEM-EBSDで測定した際の{hkl}<uvw>方位の結晶粒の全視野に対する面積率をAhkl-uvwと表記したとき、A411-011が15.0%以上であり、
圧延方向に対して45度方向及び135度方向の平均磁束密度であるB50Dが1.70T以上であり、前記圧延方向に対して45度方向及び135度方向の平均鉄損であるW10D/400Dが12.0W/kg以下である、無方向性電磁鋼板。
(2×[Mn]+2.5×[Ni]+[Cu])-([Si]+2×[sol.Al]+4×[P])≧1.50% ・・・(1)
[2]前記圧延方向に対して0度方向及び90度方向の平均磁束密度をB50Lとしたとき、前記B50Dと前記B50Lとが、以下の式(2)を満たす、[1]に記載の無方向性電磁鋼板。
B50D/B50L≧1.05 ・・・(2)
本発明によれば、応力感受性が低く、45°方向の優れた磁気特性を有する、無方向性電磁鋼板を提供することができる。
以下、本発明の一実施形態に係る無方向性電磁鋼板(本実施形態に係る無方向性電磁鋼板)、及びその好ましい製造方法について説明する。
[無方向性電磁鋼板]
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、
所定の化学組成を有し、
表面から板厚の1/2の深さの圧延面に平行な面をSEM-EBSDで測定した際の{hkl}<uvw>方位の結晶粒の全視野に対する面積率をAhkl-uvwと表記したとき、A411-011が15.0%以上であり、
圧延方向に対して45度方向及び135度方向の平均磁束密度であるB50Dが1.70T以上であり、
前記圧延方向に対して45度方向及び135度方向の平均鉄損であるW10D/400Dが12.0W/kg以下である。
<化学組成>
まず、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の化学組成について説明する。以下の説明において、各元素の含有量の単位である「%」は、特に断りがない限り「質量%」を意味する。また、「~」を用いて表される数値範囲は、「~」の前後に記載される数値を下限値及び上限値として含む範囲を意味する。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、フェライト-オーステナイト変態(以下、α-γ変態)がある程度生じ得る化学組成(全体がγに変態しなくても、加熱した際に一定量のγが生じる化学組成)であって、C:0.0100%以下、Si:1.50%~4.00%、sol.Al:0.0001%~1.00%、S:0.0100%以下、N:0.0100%以下、Mn、Ni、Cuからなる群から選ばれる1種以上:総計で2.50%~5.00%、Co:0.000%~1.000%、Sn:0.000%~0.400%、Sb:0.000%~0.400%、P:0.000%~0.400%、及びMg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdからなる群から選ばれる1種以上:総計で0.0000%~0.0100%を含有し、残部がFeおよび不純物からなる化学組成を有する。さらに、Mn、Ni、Cu、Si、sol.AlおよびPの含有量が後述する所定の条件を満たす。不純物としては、鉱石やスクラップ等の原材料に含まれるもの、製造工程において含まれるもの、が例示される。
(C:0.0100%以下)
Cは、微細な炭化物が析出して粒成長を阻害することにより、鉄損を高めたり、磁気時効を引き起こしたりする元素である。従って、C含有量は低ければ低いほどよい。このような現象は、C含有量が0.0100%超で顕著である。このため、C含有量は0.0100%以下とする。C含有量は、好ましくは0.0050%以下、より好ましくは0.0025%以下である。C含有量の下限は特に限定しないが、精錬時の脱炭処理のコストを踏まえ、C含有量は、0.0005%以上とすることが好ましい。
(Si:1.50%~4.00%)
Siは、電気抵抗を増大させて、渦電流損を減少させ、鉄損を低減したり、降伏比を増大させて、鉄心への打ち抜き加工性を向上させたりする元素である。Si含有量が1.50%未満では、これらの作用効果を十分に得られない。従って、Si含有量は1.50%以上とする。
一方、Si含有量が4.00%超では、磁束密度が低下したり、硬度の過度な上昇により打ち抜き加工性が低下したり、冷間圧延が困難になったりする。従って、Si含有量は4.00%以下とする。
(sol.Al:0.0001%~1.00%)
sol.Alは、電気抵抗を増大させて、渦電流損を減少させ、鉄損を低減する元素である。sol.Alは、飽和磁束密度に対する磁束密度B50の相対的な大きさの向上にも寄与する元素である。ここで、磁束密度B50とは、5000A/mの磁場における磁束密度である。sol.Al含有量が0.0001%未満では、これらの作用効果を十分に得られない。また、Alには製鋼での脱硫促進効果もある。従って、sol.Al含有量は0.0001%以上とする。sol.Al含有量は好ましくは0.001%以上、より好ましくは0.10%以上である。
一方、sol.Al含有量が1.00%超では、磁束密度が低下する。従って、sol.Al含有量は1.00%以下とする。
(S:0.0100%以下)
Sは、必須元素ではなく、例えば鋼中に不純物として含有される元素である。Sは、微細なMnSとして析出し、焼鈍における再結晶及び結晶粒の成長を阻害する。従って、S含有量は低ければ低いほどよい。このような再結晶及び結晶粒成長の阻害による鉄損の増加および磁束密度の低下は、S含有量が0.0100%超で顕著である。このため、S含有量は0.0100%以下とする。S含有量の下限は特に限定しないが、精錬時の脱硫処理のコストを踏まえ、S含有量は、0.0003%以上とすることが好ましい。
(N:0.0100%以下)
NはTiNやAlNなどの微細な析出物の形成を通じて磁気特性を劣化させる元素である。そのため、N含有量は低ければ低いほどよい。このような磁気特性の劣化は、N含有量が0.0100%超で顕著であるので、N含有量は0.0100%以下とする。N含有量の下限は特に限定しないが、精錬時の脱窒処理のコストを踏まえ、N含有量は、0.0010%以上とすることが好ましい。
(Mn、Ni、Cuからなる群から選ばれる1種以上:総計で2.50%~5.00%)
これらの元素は、α-γ変態を生じさせるために必要な元素である。本実施形態に係る無方向性電磁鋼板では、これらの元素の少なくとも1種を総計で2.50%以上含有させる。
一方で、これらの元素の含有量が総計で5.00%を超えると、コスト高となるだけでなく、磁束密度が低下する場合もある。したがって、これらの元素の少なくとも1種を総計で5.00%以下とする。
Mn、Ni、Cuのそれぞれの含有量は限定されないが、比抵抗の点で、好ましくは、Mn含有量は1.50%以上である。
また、α-γ変態が生じ、かつ良好な磁気特性を得る条件として、さらに以下の条件を満たす。つまり、Mn含有量(質量%)を[Mn]、Ni含有量(質量%)を[Ni]、Cu含有量(質量%)を[Cu]、Si含有量(質量%)を[Si]、sol.Al含有量(質量%)を[sol.Al]、P含有量(質量%)を[P]としたときに、以下の(1)式を満たす。
(2×[Mn]+2.5×[Ni]+[Cu])-([Si]+2×[sol.Al]+4×[P])≧1.50% ・・・(1)
前述の(1)式を満たさない場合には、α-γ変態が生じない、あるいは生じたとしても変態点が高いため、後述の製造方法を適用しても、十分な磁束密度が得られない。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の化学組成は、上記の元素を含み、残部がFe及び不純物(上記以外の不純物)からなることを基本とするが、残部のFeの一部に代えて、Co、Sn、Sb、P、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdを以下に示す範囲で含有してもよい。これらの元素は必ずしも含有しなくてもよいので、下限は0%である。また、これらの元素は、意図的に添加されず、不純物として含有されていたとしても、許容される。
(Co:0.000%~1.000%)
Coは磁束密度を上げる元素である。そのため、必要に応じて含有させてもよい。
一方、Coが過剰に含まれるとコスト高となる。したがって、Co含有量は1.000%以下とする。
(Sn:0.000%~0.400%、Sb:0.000%~0.400%)
SnやSbは冷間圧延、再結晶後の集合組織を改善して、磁束密度を向上させる元素である。そのため、これらの元素を必要に応じて含有させてもよい。磁気特性等のさらなる効果を付与する場合には、0.020%~0.400%のSn、及び0.020%~0.400%のSbからなる群から選ばれる1種以上を含有することが好ましい。
一方、これらの元素が過剰に含まれると鋼が脆化する。したがって、Sn含有量、Sb含有量はいずれも0.400%以下とする。
(P:0.000%~0.400%)
Pは再結晶後の鋼板の硬度を確保するために有効な元素である。また、Pは、磁気特性への好適な影響を有する元素でもある。そのため、含有させてもよい。これらの効果を得る場合には、P含有量を0.020%以上とすることが好ましい。
一方、Pが過剰に含まれると鋼が脆化する。したがって、P含有量は0.400%以下とする。
(Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、及びCdからなる群から選ばれる1種以上:総計で0.0000%~0.0100%)
Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdは、溶鋼の鋳造時に溶鋼中のSと反応して硫化物若しくは酸硫化物又はこれらの両方の析出物を生成する元素である。以下、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn及びCdを総称して「粗大析出物生成元素」ということがある。粗大析出物生成元素の析出物の粒径は1μm~2μm程度であり、MnS、TiN、AlN等の微細析出物の粒径(100nm程度)よりはるかに大きい。このため、これら微細析出物は粗大析出物生成元素の析出物に付着し、中間焼鈍などの焼鈍における再結晶及び結晶粒の成長を阻害しにくくなる。これらの作用効果を十分に得るためには、これらの元素の総計が0.0005%以上であることが好ましい。より好ましくは0.0010%以上である。
一方、これらの元素の総計が0.0100%を超えると、硫化物若しくは酸硫化物又はこれらの両方の総量が過剰となり、中間焼鈍などの焼鈍における再結晶及び結晶粒の成長が阻害される。従って、粗大析出物生成元素の含有量は総計で0.0100%以下とする。
化学組成については、以下の方法で求める。
化学組成については、鋼の一般的な分析方法によって測定すればよい。例えば、化学組成はICP-AES(Inductively Coupled Plasma-Atomic Emission Spectrometry)を用いて測定すればよい。具体的には、鋼板から採取した試験片を予め作成した検量線に基づいた条件で所定の測定装置にて測定することにより、化学組成が特定される。CおよびSは燃焼-赤外線吸収法を用いて測定し、Nは不活性ガス融解-熱伝導度法を用いて測定すればよい。
無方向性電磁鋼板が、表面に絶縁被膜を有している場合には、ミニターなどにより機械的に除去したのちに分析に供すればよい。
<集合組織>
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板においては、表面(表面に絶縁被膜を有している場合には、絶縁被膜を除く鋼板(母材鋼板)の表面、以下同様)から板厚の1/2の深さの圧延面に平行な面を、電子線後方散乱回折機能付き走査型電子顕微鏡(SEM-EBSD)で測定した際の、集合組織を制御する。
具体的には、上記の測定により得られる、{hkl}<uvw>方位(裕度10°以内)の結晶粒の、全視野に対する面積率を、Ahkl-uvwと表記したときの、A411-011(以下{411}<011>率という場合がある)、を15.0%以上とする。{411}<011>率が15.0%未満であると、優れた磁気特性を得ることができない。{411}<011>率は、好ましくは25.0%以上、より好ましくは30.0%以上、さらに好ましくは35.0%以上、一層の好ましくは40.0%以上である。上限は特に限定されないが、製造負荷の観点から80.0%以下としてもよい。
また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板においては、{111}方位の割合が小さいことが好ましい。{111}方位は面内の磁化を妨げる方位であり、{111}方位の割合({111}率という場合がある)を10.0%以下にすることで、優れた磁気特性が得られる。{111}率は、好ましくは8.0%以下、より好ましくは7.0%以下、さらに好ましくは5.0%以下である。下限は特に限定されないが、製造負荷の観点から1.0%以上としてもよい。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の特定方位粒の面積率は、以下の方法で測定できる。すなわち、特定方位粒の面積率は、OIM Analysis7.3(TSL社製)を用いて、下記測定条件で観察した電子線後方散乱回折(EBSD:Electron Back Scattering Diffraction)付き走査型電子顕微鏡(SEM:Scanning Electron Microscope)による測定領域の中から、目的とする特定方位を抽出(トレランスは10°に設定、以下裕度10°以内と表記)する。その抽出した面積を、測定領域の面積で割り、百分率を求める。この百分率を特定方位粒の面積率とする。
本実施形態では、「{hkl}<uvw>方位(裕度10°以内)の結晶方位を有する結晶粒の測定領域に対する面積率」、「{hkl}方位(裕度10°以内)の結晶方位を有する結晶粒の測定領域に対する面積率」を、各々単に「{hkl}<uvw>率」、「{hkl}率」とも称する場合がある。結晶方位の記述においては裕度10°以内であるとする。
各方位粒の面積率を求める測定条件の詳細は、次の通りである。
・測定装置:SEMの型番「JSM-6400(JEOL社製)」、EBSD検出器の型番「HIKARI(TSL社製)」、またはこれと同様の装置を使用
・ステップ間隔:5.0μm
・倍率:100倍
・測定対象:表面から板厚の1/2の深さの圧延面に平行な面
・測定領域:1000μm以上×1000μm以上の矩形の領域
<平均結晶粒径>
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板において、結晶粒が粗大化せずに平均結晶粒径が小さすぎると、鉄損が悪化することが懸念される。一方、結晶粒が過度に粗大化して平均結晶粒径が大きすぎると、加工性が悪化するだけではなく、渦電流損が悪化する場合がある。そのため、無方向性電磁鋼板の平均結晶粒径は50μm~150μmとすることが好ましい。
平均結晶粒径は、例えば任意の断面においてJIS G0551(2020)の切断法にて測定することができる。
<板厚>
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の板厚は特に限定されない。通常、板厚が薄くなれば、鉄損は低くなるものの、磁束密度が低くなる。この点を踏まえると、板厚が0.25mm以上であれば、鉄損がより低く、かつ、磁束密度がより高くなる。また、板厚が0.50mm以下であれば、低い鉄損を維持できる。そのため、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の好ましい板厚は、0.25~0.50mmである。より好ましくは、0.30~0.50mmである。
<磁気特性>
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、化学組成及び集合組織が制御されており、圧延方向に対して45度方向及び135度方向の平均磁束密度であるB50Dが1.70T以上であり、圧延方向に対して45度方向及び135度方向の平均鉄損であるW10D/400Dが12.0W/kg以下である。
一般に、無方向性電磁鋼板では、磁気特性は一般に鋼板の圧延方向(コイル長手方向、L方向)およびその垂直方向(コイル幅方向、C方向)の平均値で評価されることが多い。これは、板面内異方性を考慮するためであり、従来の無方向性電磁鋼板は、磁気異方性は低いものも多く提案されている。しかしながら、これらの従来の無方向性電磁鋼板は、この二方向(L、C方向)に比べ圧延方向と45度の方向(コイル斜め方向)の磁気特性が劣ったものになる場合が多かった。そのため、鋼板の圧延方向から45度方向をコアの主たる磁化方向とするように設計される分割コアとしての利用には課題があった。
これに対し、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、上述のように、45度方向及び135度方向(すなわち、圧延方向から±45度の方向)における磁気特性が優れる。
そのため、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は特に、鋼板の圧延方向から45°方向をコアの主たる磁化方向とするように設計される分割コアとしての利用に好適であり、さらに、1000Hz以上の高周波数域に適用される、電気ビークル又はハイブリッドビークルの駆動モータの分割コア等に好適である。
B50Dは、好ましくは1.73T以上、より好ましくは1.76T以上である。
また、W10D/400Dは、好ましくは、11.5W/kg以下である。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、圧延方向に対して0度方向及び90度方向の平均磁束密度をB50Lとしたとき、B50DとB50Lとが、以下の式(2)を満たす、ことが好ましい。この場合、上記の用途としてより好適である。
B50D/B50L≧1.05 ・・・(2)
また、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、上記のように化学組成及び集合組織が制御されており、圧縮応力が作用した場合の磁気特性の劣化(応力感受性)が小さい。
応力感受性は、例えば、応力なしでの鉄損W10/50(45°方向)と10MPaの圧縮応力下での鉄損W10/50(45°方向)とから算出する鉄損劣化率で評価できる。
[製造方法]
次に、本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法の一例について説明する。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板は、製造方法に関わらず、上記の特徴を有していればその効果は得られるが、後述する、熱間圧延工程、冷却工程、冷間圧延工程、中間焼鈍工程、2回目の冷間圧延(以下、スキンパス圧延工程)、仕上げ焼鈍工程を含む製造方法によれば、安定して得られるので好ましい。
各工程の好ましい条件について説明する。説明しない条件については公知の条件を適用できる。
以下、本実施形態において、Ar3温度、Ar1温度、Ac1温度(いずれも単位は℃)は、以下の方法で求めたものを用いる。
Ar3温度及びAr1温度は、1℃/秒の平均冷却速度で冷却中の鋼材(鋼板)の熱膨張変化から求め、Ac1温度は、1℃/秒の平均加熱速度で加熱中の鋼材(鋼板)の熱膨張変化から求める。
<熱間圧延工程>
熱間圧延工程では、上述の化学組成を満たす鋼材に対して熱間圧延を実施して熱間圧延鋼板を製造する。熱間圧延工程は、加熱過程と、圧延過程とを備える。
鋼材は、例えば通常の連続鋳造によって製造されるスラブであり、上述した組成の鋼材は周知の方法で製造される。たとえば、転炉又は電気炉等で溶鋼を製造する。製造された溶鋼に対して脱ガス設備等で二次精錬して、上記化学組成を有する溶鋼とする(その後の工程では化学組成は実質的に変化しない)。溶鋼を用いて連続鋳造法又は造塊法によりスラブを鋳造する。鋳造されたスラブを分塊圧延してもよい。
加熱過程では、上述の化学組成を有する鋼材を1000~1200℃に加熱することが好ましい。具体的には、鋼材を加熱炉又は均熱炉に装入して、炉内にて加熱する。加熱炉又は均熱炉での上記加熱温度での保持時間は特に限定されないが、例えば30~200時間である。
圧延過程では、加熱過程により加熱された鋼材に対して、複数回パスの圧延を実施して、熱間圧延鋼板を製造する。ここで、「パス」とは、一対のワークロールを有する1つの圧延スタンドを鋼板が通過して圧下を受けることを意味する。熱間圧延はたとえば、一列に並んだ複数の圧延スタンド(各圧延スタンドは一対のワークロールを有する)を含むタンデム圧延機を用いてタンデム圧延を実施して、複数回パスの圧延を実施してもよいし、一対のワークロールを有するリバース圧延を実施して、複数回パスの圧延を実施してもよい。生産性の観点から、タンデム圧延機を用いて複数回の圧延パスを実施するのが好ましい。
圧延過程(粗圧延および仕上げ圧延)での圧延は、γ域(Ar3温度以上)の温度で行うことが好ましい。つまり、仕上げ圧延の最終パスを通過する際の温度(仕上げ圧延温度FT(℃))がAr3温度以上となるように熱間圧延を行うことが好ましい。
仕上げ圧延温度FTとは、熱間圧延工程中の上記圧延過程において、最終パスの圧下を行う圧延スタンド出側での鋼板の表面温度(℃)を意味する。仕上げ圧延温度FTは、例えば最終パスの圧下を行う圧延スタンド出側に設置された測温計により、測温可能である。仕上げ圧延温度FTは、例えば鋼板全長を圧延方向に10等分して10区分とした場合において、先端の1区分と、後端の1区分とを除いた部分の測温結果の平均値を意味する。
<冷却工程>
冷却工程では、熱間圧延工程後(仕上げ圧延完了後)の鋼板(熱間圧延鋼板)を冷却する。この冷却によってオーステナイトからフェライトへ変態することにより、高歪みで適度に微細な結晶粒が得られる。冷却条件としては、仕上げ圧延の最終パスを通過してから0.10秒後以降に(0.10秒以上経過してから)冷却を開始し、3秒後に熱間圧延鋼板の表面温度が300℃以上Ar1温度以下となるように、冷却する(直後急冷しないようにする)ことが好ましい。このように直後急冷を回避することによって、特殊な急冷装置が不要となり、製造(コスト)上のメリットにもなる。また、熱間圧延鋼板の集合組織は、直後急冷すると未再結晶オーステナイトが変態した組織になり、その後に行う仕上げ焼鈍後の組織において{100}<011>方位に集積した集合組織となりやすい。一方、直後急冷を行わない場合には部分再結晶オーステナイトが変態した組織になり、その後の仕上げ焼鈍後の組織において{411}<011>方位に集積しやすくなると推察される。すなわち、{411}<011>率を高めるためには部分再結晶オーステナイトを変態させることが重要であり、直後急冷を行わないことが好ましい。
また、冷却条件としては、冷間圧延前の熱間圧延鋼板での平均結晶粒径が3~10μmとなるような条件とすることが好ましい。過度に微細化されることのない好適な結晶粒径において、その後冷間圧延を施すと、中間焼鈍後にαファイバーが発達し、続くスキンパス、仕上げ焼鈍後に通常は発達しにくい{411}<011>方位を発達させることができる。一方、結晶粒が粗大化しすぎると、冷間圧延、中間焼鈍後にαファイバーが発達しにくくなり、所望の{411}<011>率が得られない場合がある。
冷間圧延前の熱間圧延鋼板での平均結晶粒径を3~10μmとするためには、仕上げ圧延の最終パスを通過してから3秒以内にAr1温度以下の温度とすればよい。一方、冷却停止温度が、300℃未満であると、熱間圧延鋼板での平均結晶粒径が過度に微細化されることが懸念される。そのため、冷却停止温度を300℃以上とすることが好ましい。
熱間圧延鋼板温度(特に仕上げ圧延温度)、仕上げ圧延の最終パスを通過してから3秒後の熱間圧延鋼板の表面温度は、次の方法で測定する。
無方向性電磁鋼板の製造に用いられる熱間圧延設備ラインにおいて、熱間圧延機の下流に、冷却装置及び搬送ライン(例えば搬送ローラ)が配置され、熱間圧延機の最終パスを実施する圧延スタンドの出側には、熱間圧延鋼板の表面温度を測定する測温計が配置され、圧延スタンドの下流に配置された搬送ローラにも、複数の測温計が搬送ラインに沿って配列されている場合、熱間圧延温度、仕上げ圧延の最終パスを通過してから3秒後の熱間圧延鋼板の表面温度は、熱間圧延設備ラインに配置されている測温計で測定すればよい。
冷却は、最終パスを実施する圧延スタンドの下流に配置されている冷却装置を用いて行う。水冷装置は一般に複数配置され、水冷装置の入側には、それぞれ測温計が配置されている。冷却装置はたとえば、周知の水冷装置であってもよいし、周知の強制空冷装置であってもよい。好ましくは、冷却装置は水冷装置である。水冷装置の冷却液は、水であってもよいし、水と空気の混合流体であってもよい。
<冷間圧延工程>
冷間圧延工程では、熱間圧延鋼板に対して冷間圧延を行って冷間圧延鋼板を得る。熱間圧延鋼板には、冷間圧延後のαファイバーを発達させるために、冷間圧延工程前に、熱延板焼鈍を行わないことが好ましい。ここでいう熱延板焼鈍とは、例えば、加熱温度がAc1温度以下であって、300℃以上の熱処理を意味する。
冷間圧延はたとえば、一列に並んだ複数の圧延スタンド(各圧延スタンドは一対のワークロールを有する)を含むタンデム圧延機を用いてタンデム圧延を実施して、複数回パスの圧延を実施してもよい。また、一対のワークロールを有するゼンジミア圧延機等によるリバース圧延を実施して、1回パス又は複数回パスの圧延を実施してもよい。生産性の観点から、タンデム圧延機を用いて複数回パスの圧延を実施するのが好ましい。
冷間圧延では、冷間圧延途中で焼鈍処理を実施することなく冷間圧延を実施する。例えば、リバース圧延を実施して、複数回のパスにて冷間圧延を実施する場合、冷間圧延のパスとパスとの間に焼鈍処理を挟まずに複数回パスの冷間圧延を実施する。パスとパスの間に焼鈍を行うと、後述する工程で所望の方位を発達させることができない。
冷間圧延は、リバース式の圧延機を用いて、1回のパスのみで冷間圧延を実施してもよい。また、タンデム式の圧延機を用いた冷間圧延を実施する場合、複数回のパス(各圧延スタンドでのパス)で連続して冷間圧延を実施する。
本実施形態では、αファイバーを発達させるため、冷間圧延における圧下率RR1(%)を75~95%とすることが好ましい。圧下率RR1は、より好ましくは78~92%である。ここで、圧下率RR1は、次のとおり定義される。
圧下率RR1(%)=(1-冷間圧延での最終パスの圧延後の板厚/冷間圧延での1パス目の圧延前の板厚)×100
<中間焼鈍工程>
中間焼鈍工程では、冷間圧延工程後の鋼板(冷間圧延鋼板)に対し、中間焼鈍を行う。
本実施形態では、300℃/秒以上の昇温速度で、600℃~Ac1温度以下の焼鈍温度(中間焼鈍温度T1)(℃)まで昇温(加熱)する焼鈍を行うことが好ましい。
焼鈍温度までの昇温速度が300℃/秒未満では、十分な回復が生じず、所望の集合組織が得られないことが懸念される。昇温速度は、好ましくは400℃/秒以上である。昇温速度は速い方が、集合組織の形成には好ましいが、2000℃/秒超の昇温速度を得る場合、特別な装置や制御が必要になるなど、コストが大幅に増加するので、昇温速度を2000℃/秒としてもよい。より好ましくは、1000℃/秒以下である。
昇温速度は、室温(例えば25℃)から、焼鈍温度までの温度変化を、昇温に要した時間で除することで算出される。
また、中間焼鈍の焼鈍温度がAc1温度を超えると、鋼板の組織の一部がオーステナイトに変態してしまい、変態にともなう結晶方位変化に起因して、続くスキンパス圧延および仕上げ焼鈍時に{411}<011>方位粒が十分に成長せず、磁束密度が高くならない場合がある。
一方、中間焼鈍の温度が低過ぎると、再結晶が生じず、続くスキンパス圧延および仕上げ焼鈍時に{411}<011>方位粒が十分に成長せず、磁束密度が高くならない場合がある。したがって、中間焼鈍温度T1(℃)は600℃以上とすることが好ましい。
中間焼鈍温度T1(℃)は、焼鈍炉の抽出口近傍での板温(表面の温度)とする。
中間焼鈍工程における中間焼鈍温度T1(℃)での保持時間は当業者に周知の時間でよい。中間焼鈍温度T1(℃)での保持時間は、例えば5~60秒であるが、これに限定されない。
また、中間焼鈍時の雰囲気は特に限定されないが、例えば、体積率で20%のHを含有し、残部がNからなる雰囲気ガス(乾燥)を用いる。中間焼鈍後の鋼板の冷却速度は特に限定されず、例えば5.0~60.0℃/秒である。
<スキンパス圧延工程>
スキンパス圧延工程では、中間焼鈍工程後の冷間圧延鋼板に対して、常温、大気中において、圧延(冷間圧延)を実施する。ここでのスキンパス圧延は、例えば上述のゼンジミア圧延機に代表されるリバース圧延機、又は、タンデム圧延機を用いる。
スキンパス圧延工程では、途中で焼鈍処理を実施することなく圧延を実施する。例えば、リバース圧延を実施して、複数回のパスにてスキンパス圧延を実施する場合、パス間に焼鈍処理を挟まずに複数回の圧延を実施する。リバース式の圧延機を用いて、1回のパスのみでスキンパス圧延を実施してもよい。また、タンデム式の圧延機を用いたスキンパス圧延を実施する場合、複数回のパス(各圧延スタンドでのパス)で連続して圧延を実施する。
本実施形態では、熱間圧延および冷間圧延により鋼板にひずみを導入した後、中間焼鈍により鋼板に導入されたひずみをいったん低減させる。そして、スキンパス圧延を実施する。これにより、冷間圧延により過剰に導入されたひずみを中間焼鈍において低減しつつ、中間焼鈍を実施することにより、鋼板板面中において{111}粒が優先的に再結晶を起こすのを抑制して、{411}<011>結晶方位粒を残存させる。そして、スキンパス圧延において鋼板中の各結晶粒に適切なひずみ量を導入して、次工程の仕上げ焼鈍において、バルジングによる粒成長を発生しやすい状態にする。
スキンパス圧延における圧下率RR2は、10~15%とすることが好ましい。圧下率RR2が10%未満だとひずみ量が小さくなりすぎ、バルジングによる粒成長にかかる仕上げ焼鈍時間が長くなる。一方、圧下率RR2が15%を超えるとひずみ量が大きくなりすぎ、バルジングではなく通常の粒成長が起こり、仕上げ焼鈍で{411}<148>や{111}<112>が成長してしまう。
ここで、圧下率RR2は、次のとおり定義される。
圧下率RR2(%)=(1-スキンパス圧延での最終パスの圧延後の板厚/スキンパス圧延での1パス目の圧延前の板厚)×100
スキンパス圧延でのパス回数は1回パスのみ(つまり、1回の圧延のみ)であってもよいし、複数回パスの圧延であってもよい。
本実施形態において実施するスキンパス圧延は、仕上げ焼鈍後に行うスキンパス圧延とは効果が大きく異なる。熱間圧延、冷却、冷間圧延、中間焼鈍、スキンパス圧延、仕上げ焼鈍を所定の条件でこの順で行うことで、所定の組織を得ることができる。
<仕上げ焼鈍工程>
仕上げ焼鈍工程では、スキンパス圧延工程後の鋼板に対し、750℃以上Ac1温度以下の焼鈍温度T2(℃)で、2時間以上保持する焼鈍を行う。仕上げ焼鈍温度T2(℃)を750℃未満とした場合には、バルジングによる粒成長が十分に起こらないことが懸念される。この場合、{411}<011>方位の集積度が低下してしまう。
一方、仕上げ焼鈍温度T2(℃)がAc1温度超では、鋼板の組織の一部がオーステナイトに変態してしまい、バルジングによる粒成長は起こらず、所望の{411}<011>率が得られない。
また、焼鈍時間が2時間未満である場合は、仕上げ焼鈍温度T2(℃)が750℃以上Ac1温度以下であっても、バルジングによる粒成長が十分に起こらず、{411}<011>方位の集積度が低下してしまうことが懸念される。
一方、仕上げ焼鈍の焼鈍時間は特に限定されないが、焼鈍時間が10時間を超えても効果が飽和するため、10時間以下としてもよい。
仕上げ焼鈍工程における仕上げ焼鈍温度T2までの昇温速度TR2は、当業者に周知の昇温速度であればよい。40℃/時間以上、200℃/時間未満が例示されるが、この範囲に限定されない。
昇温速度TR2は、次の方法により求める。
上記化学組成を有し、上記熱間圧延からスキンパスまで実施して得られた鋼板に熱電対を取り付けて、サンプル鋼板とする。熱電対を取り付けたサンプル鋼板に対して昇温を実施して、昇温を開始してから仕上げ焼鈍温度T2に到達するまでの時間を測定する。測定された時間に基づいて、昇温速度TR2を求める。
仕上げ焼鈍工程時の雰囲気は特に限定されない。仕上げ焼鈍工程時の雰囲気には、例えば体積率で20%Hを含有し、残部がNからなる雰囲気ガス(乾燥)や、100%水素(H)雰囲気などとすればよい。仕上げ焼鈍後の鋼板の冷却速度は特に限定されない。冷却速度は、例えば5~20℃/秒である。
無方向性電磁鋼板からコアを作成する場合、鋼板は、打ち抜き、及び/または積層される。鋼板の打ち抜き及び/または積層は、仕上げ焼鈍工程後に行ってもよいが、スキンパス圧延工程後かつ仕上げ焼鈍工程前に、行ってもよい。
仕上げ焼鈍工程前に、抜き及び/または積層を行う場合、仕上げ焼鈍(750℃以上Ac1温度以下の焼鈍温度で2時間以上の焼鈍時間)を、歪取焼鈍を兼ねて行ってもよい。
本実施形態に係る無方向性電磁鋼板の製造方法では、たとえば、上記製造工程のうち、冷却工程後であって、冷間圧延工程前に、ショットブラスト及び/又は酸洗を実施してもよい。ショットブラストでは、熱間圧延後の鋼板に対してショットブラストを実施して、熱間圧延後の鋼板の表面に形成されているスケールを破壊して除去する。酸洗では、熱間圧延後の鋼板に対して酸洗処理を実施する。酸洗処理はたとえば、塩酸水溶液を酸洗浴として利用する。酸洗により鋼板の表面に形成されているスケールが除去される。冷却工程後であって、冷間圧延工程前に、ショットブラストを実施して、次いで、酸洗を実施してもよい。また、冷却工程後であって冷間圧延工程前に、酸洗を実施して、ショットブラストを実施しなくてもよい。冷却工程後であって冷間圧延工程前に、ショットブラストを実施して、酸洗処理を実施しなくてもよい。ショットブラスト及び酸洗は任意の工程である。したがって、ショットブラスト工程及び酸洗工程の両方を実施しなくてもよい。
<絶縁被膜形成工程>
本実施形態による電磁鋼板の製造方法はさらに、仕上げ焼鈍工程後にコーティングによって、仕上げ焼鈍後の鋼板(無方向性電磁鋼板)の表面に、絶縁被膜を形成してもよい。絶縁被膜形成工程は任意の工程である。したがって、仕上げ焼鈍後にコーティングを実施しなくてもよい。
絶縁被膜の種類は特に限定されない。絶縁被膜は有機成分であってもよいし、無機成分であってもよい、絶縁コーティングは、有機成分と無機成分とを含有してもよい。無機成分はたとえば、重クロム酸-ホウ酸系、リン酸系、シリカ系等である。有機成分はたとえば、一般的なアクリル系、アクリルスチレン系、アクリルシリコン系、シリコン系、ポリエステル系、エポキシ系、フッ素系の樹脂である。塗装性を考慮した場合、好ましい樹脂は、エマルジョンタイプの樹脂である。加熱及び/又は加圧することにより接着能を発揮する絶縁コーティングを施してもよい。接着能を有する絶縁コーティングはたとえば、アクリル系、フェノール系、エポキシ系、メラミン系の樹脂である。
次に、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板について、実施例を示しながら具体的に説明する。以下に示す実施例は、本発明の実施形態に係る無方向性電磁鋼板のあくまでも一例にすぎず、本発明に係る無方向性電磁鋼板が下記の例に限定されるものではない。
溶鋼を鋳造することにより、表1(単位は質量%、残部はFe及び不純物)に示す化学組成を有するインゴットを作製した。表1において、式左辺とは、前述の(1)式の左辺の値を表している。また、Mg等の粗大析出物生成元素の合計とは、Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、Cdからなる群から選ばれる1種以上の総計を表している。
No.8については、αが安定であり、α-γ変態が起こらない成分系であった。
この作製したインゴットを1150℃まで加熱して、1時間保持した後、熱間圧延を行い、表2に示す仕上げ圧延温度FTとなるように仕上げ圧延を行った。
熱間圧延完了後(最終パスを通過してから)、冷却開始までの時間を表2に示す通りとし、冷却開始から3秒後の鋼板の温度が、表2に示す温度となるように冷却を行った。
このようにして得られた熱間圧延鋼板に対し、熱延板焼鈍を行わず、酸洗によりスケールを除去し、表2に示す圧下率RR1で冷間圧延を行った。
そして、体積率で、水素20%、窒素80%からなる雰囲気中で、表2に示す昇温速度で、表2に示す中間焼鈍温度T1まで加熱し、T1で30秒間保持する中間焼鈍を行った。
中間焼鈍後の冷間圧延に対し、表2に示す圧下率RR2でスキンパス圧延を行った。
次に、スキンパス圧延後の鋼板を、水素100%の雰囲気中で昇温速度を100℃/時間、表2に示す仕上げ焼鈍温度T2にて仕上げ焼鈍を行った。この時、仕上げ焼鈍温度T2での保持時間を2時間とした。
上記により、無方向性電磁鋼板を作成した。ただし、No.7については、冷延時に2枚割れが生じたため、それ以降の工程については実施しなかった。
得られた無方向性電磁鋼板について、集合組織を調査するため、鋼板の一部を切除し試験片を採取し、その試験片を表面から1/2の厚みまで減圧する減厚加工を行った。
この試験片の減厚によって露出した表面から板厚の1/2の深さの圧延面に平行な面を測定面とし、SEM-EBSDを用いて、上述した条件で、{411}<011>率、及び{111}率を測定した。
また、上記測定面に対し、JIS G0551(2020)の切断法にて、平均結晶粒径を測定した。
また、得られた無方向性電磁鋼板の磁気特性を、以下の要領で測定した。
<磁束密度>
測定試料として55mm角の単板磁気特性試験用試料を圧延方向に0°と45°の2種類の方向に採取した。そして、この2種類の試料を、JISC2556(2015)に沿って、圧延方向に対して、0°、45°、90°、135°の磁束密度B50を求めた。
圧延方向に対して、45°、135°の磁束密度の平均をB50Dとし、圧延方向に対して0°、90°の磁束密度の平均をB50Lとした。
<鉄損、及び鉄損劣化率>
鉄損W10/400に関しては、上記測定試料で、圧延方向に45°の方向に採取したものを用い、JISC2556(2015)に沿って、圧延方向に対して45°方向及び135°方向の鉄損を求め、その平均をW10D/400Dとした。
また、圧縮応力下での鉄損W10/50の鉄損劣化率Wx[%]に関しては、応力なしでの鉄損W10/50(45°方向)をW10/50(0)、10MPaの圧縮応力下での鉄損W10/50(45°方向)をW10/50(10)としたとき、以下の式で鉄損劣化率Wxを算出した。
Wx={W10/50(10)-W10/50(0)}/W10/50(0)
圧延方向に対して45°方向の圧縮応力下でのW10/50の鉄損劣化率が、40%以下であれば、鉄損劣化率(応力感受性)が低いと判断した。
Figure 2023058067000001
Figure 2023058067000002
Figure 2023058067000003
表1~表3から分かるように、本発明例であるNo.1~5では、化学組成が本発明範囲内にあり、集合組織も本発明範囲にあり、磁気特性(磁束密度、鉄損、及び鉄損劣化率)に優れていた。
これに対し、比較例である、No.6、No.8~18では、化学組成、製造方法、集合組織、磁気特性の1つ以上が本発明範囲外であった。

Claims (2)

  1. 質量%で、
    C:0.0100%以下、
    Si:1.50%~4.00%、
    sol.Al:0.0001%~1.00%、
    S:0.0100%以下、
    N:0.0100%以下、
    Mn、Ni、Cuからなる群から選ばれる1種以上:総計で2.50%~5.00%、
    Co:0.000%~1.000%、
    Sn:0.000%~0.400%、
    Sb:0.000%~0.400%、
    P:0.000%~0.400%、及び
    Mg、Ca、Sr、Ba、Ce、La、Nd、Pr、Zn、Cdからなる群から選ばれる1種以上:総計で0.0000%~0.0100%、
    を含有し、
    質量%での、Mn含有量を[Mn]、Ni含有量を[Ni]、Cu含有量を[Cu]、Si含有量を[Si]、sol.Al含有量を[sol.Al]、P含有量を[P]としたときに、以下の(1)式を満たし、
    残部がFeおよび不純物からなる、化学組成を有し、
    表面から板厚の1/2の深さの圧延面に平行な面をSEM-EBSDで測定した際の{hkl}<uvw>方位の結晶粒の全視野に対する面積率をAhkl-uvwと表記したとき、A411-011が15.0%以上であり、
    圧延方向に対して45度方向及び135度方向の平均磁束密度であるB50Dが1.70T以上であり、
    前記圧延方向に対して45度方向及び135度方向の平均鉄損であるW10D/400Dが12.0W/kg以下である、
    ことを特徴とする無方向性電磁鋼板。
    (2×[Mn]+2.5×[Ni]+[Cu])-([Si]+2×[sol.Al]+4×[P])≧1.50% ・・・(1)
  2. 前記圧延方向に対して0度方向及び90度方向の平均磁束密度をB50Lとしたとき、
    前記B50Dと前記B50Lとが、以下の式(2)を満たす、
    ことを特徴とする、請求項1に記載の無方向性電磁鋼板。
    B50D/B50L≧1.05 ・・・(2)
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