<変性共役ジエン系ゴムの製造方法>
本発明の変性共役ジエン系ゴムの製造方法は、
不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第1工程と、
前記活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シリカに対して相互作用可能な官能基を有する変性剤を反応させることで、末端に変性基を有する共役ジエン系重合体鎖を得る第2工程と、
ラジカル開始剤を用いて、前記末端に変性基を有する共役ジエン系重合体鎖に、アルキルチオール化合物を反応させる第3工程と、を備える。
<第1工程>
まず、本発明の製造方法における、第1工程について説明する。本発明の製造方法における第1工程は、不活性溶媒中で、重合開始剤を用いて、少なくとも共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合し、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程である。
第1工程において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得るために、重合に用いる共役ジエン化合物としては、特に限定されず、たとえば、1,3−ブタジエン、イソプレン、2,3−ジメチル−1,3−ブタジエン、1,3−ペンタジエン、2−メチル−3−エチル−1,3−ブタジエン、2−メチル−1,3−ペンタジエン、1,3−ヘキサジエン、および1,3−シクロヘキサジエンなどを挙げることができる。これらのなかでも、1,3−ブタジエン、イソプレンおよび1,3−ペンタジエンが好ましく、1,3−ブタジエン、およびイソプレンが特に好ましい。なお、これらの共役ジエン化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
また、本発明の製造方法においては、第1工程において製造する、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖としては、共役ジエン化合物に加えて、芳香族ビニル化合物を共重合してなるものであってもよい。芳香族ビニル化合物としては、特に限定されず、たとえば、スチレン、α−メチルスチレン、2−メチルスチレン、3−メチルスチレン、4−メチルスチレン、2−エチルスチレン、3−エチルスチレン、4−エチルスチレン、2,4−ジイソプロピルスチレン、2,4−ジメチルスチレン、4−t−ブチルスチレン、5−t−ブチル−2−メチルスチレン、ビニルナフタレン、ジメチルアミノメチルスチレン、およびジメチルアミノエチルスチレンなどを挙げることができる。これらのなかでも、スチレン、α−メチルスチレン、および4−メチルスチレンが好ましく、スチレンが特に好ましい。なお。これらの芳香族ビニル化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。第1工程において製造する、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖は、共役ジエン単量体単位45〜100重量%を含むものが好ましく、50〜100重量%を含むものがさらに好ましく、55〜95重量%を含むものが特に好ましく、また、芳香族ビニル単量体単位0〜55重量%を含むものが好ましく、0〜50重量%を含むものがさらに好ましく、5〜45重量%を含むものが特に好ましい。
また、本発明の製造方法においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖は、本発明の目的を損なわない範囲において、所望により、共役ジエン化合物、および芳香族ビニル化合物に加えて、これら以外の他の単量体を共重合してなるものであってもよい。他の単量体としては、たとえば、アクリロニトリル、メタクリロニトリルなどのα,β−不飽和ニトリル;アクリル酸、メタクリル酸、無水マレイン酸などの不飽和カルボン酸または酸無水物;メタクリル酸メチル、アクリル酸エチル、アクリル酸ブチルなどの不飽和カルボン酸エステル;1,5−ヘキサジエン、1,6−ヘプタジエン、1,7−オクタジエン、ジシクロペンタジエン、5−エチリデン−2−ノルボルネンなどの非共役ジエン;などを挙げることができる。これらの他の単量体は、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖中に、単量体単位として、10重量%以下とするのが好ましく、5重量%以下とするのがより好ましい。
本発明の製造方法の第1工程において用いられる不活性溶媒としては、溶液重合において通常使用されるものであり、重合反応を阻害しないものであれば特に限定されない。不活性溶媒の具体例としては、ブタン、ペンタン、ヘキサン、ヘプタン、2−ブテン等の鎖状脂肪族炭化水素;シクロペンタン、シクロヘキサン、シクロヘキセン等の脂環式炭化水素;ベンゼン、トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素;テトラヒドロフラン、ジエチルエーテルなどのエーテル化合物;等が挙げられる。これらの不活性溶媒は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。不活性溶媒の使用量は、単量体濃度が、たとえば、1〜50重量%となる量であり、好ましくは10〜40重量%となる量である。
重合開始剤としては、上述した各単量体を重合させることにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を与えることができるものであれば、特に限定されない。その具体例としては、有機アルカリ金属化合物、有機アルカリ土類金属化合物、およびランタン系列金属化合物などを主触媒とする重合開始剤が好ましく使用される。有機アルカリ金属化合物としては、たとえば、n−ブチルリチウム、sec−ブチルリチウム、t−ブチルリチウム、ヘキシルリチウム、フェニルリチウム、スチルベンリチウムなどの有機モノリチウム化合物;ジリチオメタン、1,4−ジリチオブタン、1,4−ジリチオ−2−エチルシクロヘキサン、1,3,5−トリリチオベンゼン、1,3,5−トリス(リチオメチル)ベンゼンなどの有機多価リチウム化合物;ナトリウムナフタレンなどの有機ナトリウム化合物;カリウムナフタレンなどの有機カリウム化合物;などが挙げられる。また、有機アルカリ土類金属化合物としては、例えば、ジ−n−ブチルマグネシウム、ジ−n−ヘキシルマグネシウム、ジエトキシカルシウム、ジステアリン酸カルシウム、ジ−t−ブトキシストロンチウム、ジエトキシバリウム、ジイソプロポキシバリウム、ジエチルメルカプトバリウム、ジ−t−ブトキシバリウム、ジフェノキシバリウム、ジエチルアミノバリウム、ジステアリン酸バリウム、ジケチルバリウムなどが挙げられる。ランタン系列金属化合物を主触媒とする重合開始剤としては、例えば、ランタン、セリウム、プラセオジム、ネオジム、サマリウム、ガドリニウムなどのランタン系列金属と、カルボン酸、およびリン含有有機酸などとからなるランタン系列金属の塩を主触媒とし、これと、アルキルアルミニウム化合物、有機アルミニウムハイドライド化合物、有機アルミニウムハライド化合物などの助触媒とからなる重合開始剤などが挙げられる。これらの重合開始剤の中でも、有機モノリチウム化合物、および有機多価リチウム化合物が好ましく、有機モノリチウム化合物がより好ましく、n−ブチルリチウムが特に好ましい。なお、有機アルカリ金属化合物は、予め、ジブチルアミン、ジヘキシルアミン、ジベンジルアミン、ピロリジン、ヘキサメチレンイミン、およびヘプタメチレンイミンなどの第2級アミンと反応させて、有機アルカリ金属アミド化合物として使用してもよい。これらの重合開始剤は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
重合開始剤の使用量は、目的とする重合体の分子量に応じて決定すればよいが、単量体1000g当り、通常、1〜50ミリモル、好ましくは1.5〜20ミリモル、より好ましくは2〜15ミリモルの範囲である。
本発明の製造方法の第1工程における、重合温度は、通常、−80〜+150℃、好ましくは0〜100℃、より好ましくは30〜90℃の範囲である。重合様式としては、回分式、連続式などのいずれの様式をも採用できるが、共役ジエン化合物と芳香族ビニル化合物とを共重合させる場合は、共役ジエン単量体単位と芳香族ビニル単量体単位との結合のランダム性を制御しやすい点で、回分式が好ましい。
本発明の製造方法において、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖が、2種以上の単量体単位から構成されている場合、その結合様式は、たとえば、ブロック状、テーパー状、ランダム状など種々の結合様式とすることができるが、ランダム状の結合様式であることが好ましい。ランダム状にすることにより、得られるゴム架橋物は特に低発熱性に優れたものとなる。
また、本発明の製造方法においては、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量を調節するために、重合に際し、不活性有機溶媒に極性化合物を添加することが好ましい。極性化合物としては、例えば、ジブチルエーテル、テトラヒドロフランなどのエーテル化合物;テトラメチルエチレンジアミンなどの第三級アミン;アルカリ金属アルコキシド;ホスフィン化合物;などが挙げられる。これらの中でも、エーテル化合物、および第三級アミンが好ましく、第三級アミンがより好ましく、テトラメチルエチレンジアミンが特に好ましい。これらの極性化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。極性化合物の使用量は、目的とするビニル結合含有量に応じて決定すればよく、重合開始剤1モルに対して、好ましくは0.001〜100モル、より好ましくは0.01〜10モルである。極性化合物の使用量がこの範囲にあると、共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量の調節が容易であり、かつ重合開始剤の失活による不具合も発生し難い。
以上のようにして、本発明の製造方法における第1工程によれば、共役ジエン化合物を含んでなる単量体を重合することで、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を得ることができる。
本発明の製造方法の第1工程で得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における共役ジエン単量体単位中のビニル結合含有量(ビニル結合単位量)は、好ましくは5〜80重量%であり、より好ましくは10〜70重量%である。ビニル結合量が上記範囲にあると、得られるゴム架橋物が特に低発熱性に優れたものとなる。また、共役ジエン単量体単位中のビニル結合部分は、後述する第3工程において、アルキルチオール化合物と反応する部分となるため、ビニル結合量を上記範囲とすることで、後述する第3工程における、アルキルチオール化合物による変性反応をより好適に行うことができ、これにより、アルキルチオール化合物による変性効果、すなわち、シリカなどの充填剤を配合した際における加工性、ならびに、得られるゴム架橋物の低発熱性、ウエットグリップ性、耐摩耗性および操縦安定性をより適切に高めることができる。
本発明の製造方法の第1工程で得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(以下、GPCとも言う)により検出されるピークトップ分子量は、ポリスチレン換算の値として、100,000〜1,000,000であることが好ましく、150,000〜900,000であることがより好ましく、150,000〜800,000であることが特に好ましい。なお、共役ジエン系重合体鎖のピークが複数認められる場合は、GPCにより検出される共役ジエン系重合体鎖に由来する、分子量の最も小さいピークのピークトップ分子量を、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖のピークトップ分子量とする。活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖のピークトップ分子量が上記範囲にあると、得られるゴム架橋物が特に低発熱性と耐摩耗性に優れたものとなる。
本発明の製造方法の第1工程で得られる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、好ましくは1.0〜1.5、より好ましくは1.0〜1.4、特に好ましくは1.0〜1.3である。この分子量分布の値(Mw/Mn)が上記範囲にあると、得られるゴム架橋物が特に低発熱性とウエットグリップ性に優れたものとなる。
<第2工程>
本発明の製造方法における第2工程は、上述した第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シリカに対して相互作用可能な官能基を有する変性剤を反応させることで、末端に変性基を有する共役ジエン系重合体鎖を得る工程である。
本発明の第2工程で用いる変性剤としては、シリカに対して相互作用可能な官能基を有する化合物であればよく、特に限定されないが、得られる変性共役ジエン系ゴムを、シリカなどの充填剤に対する親和性により優れたものとすることができ、これにより、シリカなどの充填剤を配合した際における加工性や、ゴム架橋物とした場合における、低発熱性、ウエットグリップ性、耐摩耗性および操縦安定性をより向上させることができるという点より、ケイ素化合物が好ましい。
このような変性剤としてのケイ素化合物としては、たとえば、シロキサン構造(−Si−O−Si−)を有するシロキサン化合物を挙げることができ、シロキサン化合物のなかでも、シロキサン構造に加えて有機基を有するオルガノシロキサンが好ましく、シリカなどの充填剤に対する親和性をより高めることができるという観点より、下記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンがより好ましい。
上記一般式(1)中、R
1〜R
8は、炭素数1〜6のアルキル基、または炭素数6〜12のアリール基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
1およびX
4は、炭素数1〜6のアルキル基、炭素数6〜12のアリール基、炭素数1〜5のアルコキシ基、および、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基からなる群より選ばれるいずれかの基であり、これらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
2は、炭素数1〜5のアルコキシ基、またはエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基であり、X
2が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。X
3は、2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基であり、X
3が複数あるときは、それらは互いに同一であっても相違していてもよい。mは1〜200の整数、nは0〜200の整数、kは0〜200の整数であり、m+n+kは1以上である。
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、上記一般式(1)中のR1〜R8、X1およびX4を構成し得る炭素数1〜6のアルキル基としては、たとえば、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、ブチル基、ペンチル基、ヘキシル基およびシクロヘキシル基などが挙げられる。炭素数6〜12のアリール基としては、たとえば、フェニル基およびメチルフェニル基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メチル基およびエチル基が好ましい。
また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1、X2およびX4を構成し得る炭素数1〜5のアルコキシ基としては、たとえば、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基、イソプロポキシ基およびブトキシ基などが挙げられる。これらの中でも、ポリオルガノシロキサン自体の製造の容易性の観点から、メトキシ基およびエトキシ基が好ましい。
さらに、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1、X2およびX4を構成し得るエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基としては、たとえば、下記一般式(2)で表される基が挙げられる。
−Z1−Z2−E (2)
上記一般式(2)中、Z1は、炭素数1〜10のアルキレン基、またはアルキルアリーレン基であり、Z2はメチレン基、硫黄原子、または酸素原子であり、Eはエポキシ基を有する炭素数2〜10の炭化水素基である。
上記一般式(2)で表される基としては、Z2が酸素原子であるものが好ましく、Z2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものがより好ましく、Z1が炭素数1〜3のアルキレン基であり、Z2が酸素原子であり、かつ、Eがグリシジル基であるものが特に好ましい。
また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X1およびX4としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基、または、炭素数1〜6のアルキル基が好ましい。また、X2としては、上記の中でも、エポキシ基を含有する炭素数4〜12の基が好ましい。さらに、X1およびX4が炭素数1〜6のアルキル基であり、X2がエポキシ基を含有する炭素数4〜12の基であることがより好ましい。
また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、X
3、すなわち2〜20のアルキレングリコールの繰返し単位を含有する基としては、下記一般式(3)で表される基が好ましい。
上記一般式(3)中、tは2〜20の整数であり、X
5は炭素数2〜10のアルキレン基またはアルキルアリーレン基であり、R
9は水素原子またはメチル基であり、X
6は炭素数1〜10のアルコキシ基またはアリールオキシ基である。これらの中でも、tが2〜8の整数であり、X
5が炭素数3のアルキレン基であり、R
9が水素原子であり、かつ、X
6がメトキシ基であるものが好ましい。
上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、mは1〜200の整数、好ましくは20〜150の整数、より好ましくは30〜120の整数である。mが1〜200であると、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造がより容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いもより容易となる。
また、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンにおいて、nは0〜200の整数、好ましくは0〜150の整数、より好ましくは0〜120の整数である。kは0〜200の整数、好ましくは0〜150の整数、より好ましくは0〜130の整数である。m、nおよびkの合計数は1以上であり、1〜400であることが好ましく、20〜300であることがより好ましく、30〜250であることが特に好ましい。m、nおよびkの合計数が1以上であると、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサンと活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖との反応が進行し易く、さらに、m、nおよびkの合計数が400以下であると、上記一般式(1)で表されるポリオルガノシロキサン自体の製造が容易になると共に、その粘度が高くなりすぎず、取り扱いも容易となる。
また、本発明の製造方法の第2工程で用いる変性剤としては、上述したシロキサン化合物の他、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、3−(ジメチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(ジエチルアミノ)プロピルトリメトキシシラン、3−(ジメチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、3−(ジエチルアミノ)プロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルトリエトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)−3−アミノプロピルジエトキシメチルシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリメトキシシラン、N,N−ビス(トリメチルシリル)アミノエチルトリエトキシシラン、ビス(トリメトキシシリル)エタン、3−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、1−[3−(トリエトキシシラニル)−プロピル]−4−メチルピペラジン、2,2−ジメトキシ−1−(3−トリメトキシシリルプロピル)−1−アザ−2−シラシクロペンタンなどのアルコキシシラン化合物;なども挙げることができる。
本発明の製造方法の第2工程において、上述した第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、変性剤を反応させる方法としては、特に限定されないが、上述した第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の溶液に、溶媒に溶解した変性剤を添加して、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した共役ジエン系重合体鎖の重合に用いる溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、上述した第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を、その重合に用いた重合溶液のままの状態とし、ここに変性剤を添加する方法が簡便であり好ましい。さらに、この際においては、変性剤は、上述した重合に用いる不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましく、その溶液濃度は、1〜50重量%の範囲とすることが好ましい。第2工程における反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜120℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、1分〜1時間である。
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、変性剤を添加する時期は特に限定されないが、重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態、より具体的には、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が、100ppm以上、より好ましくは300〜50,000ppmの単量体を含有している状態で、この溶液に変性剤を添加することが望ましい。変性剤の添加をこのように行なうことにより、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖と重合系中に含まれる不純物などとの副反応を抑制して、反応を良好に制御することが可能となる。
なお、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖に、変性剤を反応させる前に、本発明の効果を阻害しない範囲で、カップリング剤を重合系内に添加して、共役ジエン系重合体鎖の活性末端の一部を、カップリング反応させてもよい。
この際の用いるカップリング剤としては、特に限定されないが、ハロゲン化錫、ハロゲン化珪素などが挙げられる。このようなカップリング剤を用いたカップリング反応を行うことにより、得られる変性共役ジエン系ゴムに分岐構造(好ましくは、3分岐以上の分岐構造)を導入することができ、変性共役ジエン系ゴムの形状安定性をより高めることができる。
ハロゲン化錫としては、たとえば、四塩化錫、トリフェニルモノクロル錫、下記一般式(4)で表される化合物などが挙げられる。これらの中でも、四塩化錫が好ましい。
上記一般式(4)中、R
10は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し、X
7はハロゲン基を表す。上記一般式(4)中、R
10は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し、R
10となりうる2価の炭化水素基としては、特に限定されないが、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、4−メチル−2,2−ペンチレン基、2,3−ジメチル−2,3−ブチレン基などが挙げられる。これらのなかでも、1,2−エチレン基および1,6−ヘキシレン基が好ましい。また、X
7となりうるハロゲン基としては、特に限定されないが、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられ、これらのなかでも、クロロ基が好ましい。
また、ハロゲン化珪素としては、たとえば、四塩化ケイ素、ヘキサクロロジシラン、トリフェノキシクロロシラン、メチルトリフェノキシシラン、ジフェノキシジクロロシラン、下記一般式(5)で表される化合物などが挙げられる。これらのなかでも、四塩化ケイ素が好ましい。
上記一般式(5)中、R
11は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し、X
8はハロゲン基を表す。上記一般式(5)中、R
11は置換基を有していてもよい2価の炭化水素基を表し、R
11となりうる2価の炭化水素基としては、特に限定されないが、メチレン基、1,2−エチレン基、1,3−プロピレン基、1,4−ブチレン基、1,5−ペンチレン基、1,6−ヘキシレン基、4−メチル−2,2−ペンチレン基、2,3−ジメチル−2,3−ブチレン基などが挙げられる。これらのなかでも、1,2−エチレン基および1,6−ヘキシレン基が好ましい。また、X
8となりうるハロゲン基としては、特に限定されないが、フルオロ基、クロロ基、ブロモ基、ヨード基が挙げられ、これらのなかでも、クロロ基が好ましい。上記一般式(5)で表される化合物の具体例としては、ビス(トリクロロシリル)メタン、1,2−ビス(トリクロロシリル)エタン、1,3−ビス(トリクロロシリル)プロパン、1,4−ビス(トリクロロシリル)ブタン、1,5−ビス(トリクロロシリル)ペンタン、および1,6−ビス(トリクロロシリル)ヘキサンなどが挙げられる。
本発明の製造方法において、カップリング剤の使用量は、特に限定されないが、反応させる活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端1モルに対する量として、0.001〜0.2モルであることが好ましく、0.005〜0.1モルであることがより好ましく、0.01〜0.07モルであることが特に好ましい。このような量で、カップリング剤を用いることで、得られる変性共役ジエン系ゴムの形状安定性をより高めることができる。
活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖端の一部を、カップリング剤と反応させる方法は、特に限定されないが、これらを、それぞれが溶解可能な溶媒中で、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した共役ジエン系重合体鎖の重合に用いる溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、上述した第1工程で得られた活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を、その重合に用いた重合溶液のままの状態とし、ここに変性剤を添加する方法が簡便であり好ましい。さらに、この際においては、カップリング剤は、不活性溶媒に溶解して重合系内に添加することが好ましく、その溶液濃度は、1〜50重量%の範囲とすることが好ましい。反応温度は、特に限定されないが、通常0〜120℃であり、反応時間も特に限定されないが、通常1分〜1時間である。
また、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液に、カップリング剤を添加する時期も、変性剤の場合と同様に、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖における重合反応が完結しておらず、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖を含有する溶液が単量体をも含有している状態にて添加することが望ましい。
本発明の製造方法の第2工程においては、共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、変性剤、および所望により、カップリング剤を反応させた後は、メタノールおよびイソプロパノールなどのアルコールまたは水などの、重合停止剤を添加して未反応の活性末端を失活させることが好ましい。
<第3工程>
本発明の製造方法における第3工程は、ラジカル開始剤を用いて、上述した第2工程で得られた末端に変性基を有する共役ジエン系重合体鎖に、アルキルチオール化合物を反応させる工程である。本発明の製造方法における第3工程において、アルキルチオール化合物は、主として、末端に変性基を有する共役ジエン系重合体鎖を構成する、共役ジエン単量体単位中のビニル結合部分と反応する。
本発明の製造方法によれば、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シリカに対して相互作用可能な官能基を有する変性剤と反応させ(第2工程)、次いで、ラジカル開始剤を用いて、変性剤を反応させた共役ジエン系重合体鎖に、アルキルチオール化合物を反応させる(第3工程)ものであり、これにより、得られる変性共役ジエン系ゴムを、重合体鎖末端に、シリカに対して相互作用可能な官能基を有する変性剤による変性構造を備え、かつ、アルキルチオール化合物に由来の基を有するものとすることができる。そして、これにより、シリカなどの充填剤を配合した際におけるムーニー粘度の上昇を抑制することができ、これにより、シリカなどの充填剤を良好に分散させることができ、さらには、シリカなどの充填剤を配合した際における加工性を優れたものとすることができるものである。さらには、シリカなどの充填剤を良好に分散させることができることから、シリカなどの充填剤による補強性を十分に発揮させることができるものであり、その結果として、ゴム架橋物とした場合に、得られるゴム架橋物を低発熱性、ウエットグリップ性、耐摩耗性および操縦安定性に優れたものとすることができるものである。
アルキルチオール化合物としては、特に限定されないが、エタンチオール、1−プロパンチオール、2−プロパンチオール、1−ブタンチオール、2−ブタンチオール、2−メチル−1−プロパンチオール、2−メチル−2−プロパンチオール、2−メチル−1−ブタンチオール、1−ペンタンチオール、2,2−ジメチル−1−プロパンチオール、1−ヘキサンチオール、1−ヘプタンチオール、2−エチルヘキサンチオール、1−オクタンチオール、1−ノナンチオール、1−デカンチオール、1−ウンデカンチオール、1−ドデカンチオール、tert−ドデシルメルカプタン、1−トリデカンチオール、1−テトラデカンチオール、1−ペンタデカンチオール、1−ヘキサデカンチオール、1−ヘプタデカンチオール、1−オクタデカンチオール、1−ノナデカンチオール、1−エイコサンチオールなどのアルキルモノチオール;などが挙げられる。これらの中でも、アルキルモノチオールが好ましく、第1級チオール基を有するアルキルモノチオール(すなわち、第1級炭素原子に、チオール基が1個結合してなるアルキルチオール化合物)がより好ましく、第1級チオール基を有する炭素数4〜18のアルキルモノチオールがさらに好ましい。なお、これらのアルキルチオール化合物は、1種を単独で用いてもよいし、2種以上を組み合わせて用いてもよい。
アルキルチオール化合物の使用量は、特に限定されず、得られる変性共役ジエン系ゴム中における、アルキルチオール化合物由来のアルキル基導入量が、好ましくは0.5〜30重量%、より好ましくは1〜20重量%、さらに好ましくは3〜13重量%となる量とすればよい。具体的には、上述した第2工程で得られた末端に変性基を有する共役ジエン系重合体鎖100重量部に対する、アルキルチオール化合物の使用量は、好ましくは0.5〜35重量部の範囲であり、より好ましくは1.0〜25重量部の範囲、さらに好ましくは3〜15重量部の範囲である。アルキルチオール化合物由来のアルキル基導入量を上記範囲とすることにより、アルキルチオール化合物による変性効果、すなわち、シリカなどの充填剤を配合した際における加工性、ならびに、得られるゴム架橋物の低発熱性、ウエットグリップ性、耐摩耗性および操縦安定性をより適切に高めることができる。なお、アルキルチオール化合物由来のアルキル基導入量は、たとえば、変性共役ジエン系ゴムについて13C−NMR測定を行い、13C−NMR測定の結果から、下記式にしたがって求めることができる。
アルキルチオール化合物由来のアルキル基導入量(重量%)=(アルキルチオール化合物に由来するアルキル基の重量基準での含有量/変性共役ジエン系ゴムの重量)×100
また、本発明の製造方法の第3工程において、末端に変性基を有する共役ジエン系重合体鎖に、アルキルチオール化合物を反応させる際に用いる、ラジカル開始剤としては特に限定されないが、過硫酸ナトリウム、過硫酸カリウム、過硫酸アンモニウム、過リン酸カリウム、過酸化水素等の無機過酸化物系のラジカル開始剤;ハイドロパーオキサイド(例えばジイソプロピルベンゼンハイドロパーオキサイド、クメンハイドロパーオキサイド、t−ブチルハイドロパーオキサイド、p−メンタンハイドロパーオキサイド、1,1,3,3−テトラメチルブチルハイドロパーオキサイド等)、ジアルキルパーオキサイド(例えばジ−t−ブチルパーオキサイド、t−ブチルクミルパーオキサイド、アセチルパーオキサイド等)、パーオキシエステル(例えばイソブチリルパーオキサイド、t−ブチルパーオキシイソブチレート等)、ジアシルパーオキサイド(例えばベンゾイルパーオキサイド、ラウロイルパーオキサイド、イソブチリルパーオキサイド、オクタノイルパーオキサイド、3,5,5−トリメチルヘキサノイルパーオキサイド等)、パーオキシジカーボネート、パーオキシケタール、ケトンパーオキサイド等の有機過酸化物系のラジカル開始剤;2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、アゾビス−2,4−ジメチルバレロニトリル、アゾビスシクロヘキサンカルボニトリル、アゾビスイソ酪酸メチル等のアゾ化合物系のラジカル開始剤;などが挙げられる。これらの中でも、反応性の観点より、アゾ化合物系のラジカル開始剤が好ましく、2,2’−アゾビスイソブチロニトリルが特に好ましい。
ラジカル開始剤の使用量は、使用するラジカル開始剤の種類によって適宜選択すればよいが、アルキルチオール化合物100重量部に対して、好ましくは0.1〜200重量部、より好ましくは0.5〜50重量部、さらに好ましくは1〜20重量部である。ラジカル開始剤の使用量を上記範囲とすることにより、末端に変性基を有する共役ジエン系重合体鎖と、アルキルチオール化合物との反応をより適切に進行させることができる。
本発明の製造方法の第3工程において、ラジカル開始剤を用いて、上述した第2工程で得られた末端に変性基を有する共役ジエン系重合体鎖に、アルキルチオール化合物を反応させる方法としては、特に限定されないが、上述した第2工程で得られた末端に変性基を有する共役ジエン系重合体鎖の溶液に、アルキルチオール化合物およびラジカル開始剤を添加して、混合する方法などが挙げられる。この際に用いる溶媒としては、上述した共役ジエン系重合体鎖の重合や、変性剤による反応に用いる溶媒として例示したものなどを用いることができる。また、この際においては、上述した第2工程で得られた末端に変性基を有する共役ジエン系重合体鎖を、その反応に用いた溶液のままの状態とし、ここにアルキルチオール化合物およびラジカル開始剤を添加する方法が簡便であり好ましい。さらに、この際においては、アルキルチオール化合物およびラジカル開始剤は、溶媒に溶解して重合系内に添加してもよく、その溶液濃度は、1〜50重量%の範囲とすることが好ましい。第3工程における反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜100℃であり、反応時間は、特に限定されないが、通常、1分〜600分である。
末端に変性基を有する共役ジエン系重合体鎖に、アルキルチオール化合物を反応させた後、所望により、フェノール系安定剤、リン系安定剤、イオウ系安定剤などの老化防止剤、クラム化剤、およびスケール防止剤などを重合溶液に添加し、その後、直接乾燥またはスチームストリッピングなどにより重合溶液から重合溶媒を分離して、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムを回収する。なお、重合溶液から重合溶媒を分離する前に、重合溶液に伸展油を混合し、変性共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収してもよい。
変性共役ジエン系ゴムを油展ゴムとして回収する場合に用いる伸展油としては、たとえば、パラフィン系、芳香族系およびナフテン系の石油系軟化剤、植物系軟化剤、ならびに脂肪酸などが挙げられる。石油系軟化剤を用いる場合には、IP346の方法(英国のTHE INSTITUTE PETROLEUMの検査方法)により抽出される多環芳香族の含有量が3%未満であることが好ましい。伸展油を使用する場合、その使用量は、変性共役ジエン系ゴム100重量部に対して、好ましくは5〜100重量部、より好ましくは10〜60重量部、さらに好ましくは20〜50重量部である。
本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)は、ポリスチレン換算のゲルパーミエーションクロマトグラフィで測定される値で、好ましくは100,000〜3,000,000、より好ましくは150,000〜2,000,000、特に好ましくは200,000〜1,500,000である。変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量を上記範囲内とすることにより、変性共役ジエン系ゴムへのシリカの配合がより容易となり、ゴム組成物の加工性がより優れたものとなり、得られるゴム架橋物の低発熱性と耐摩耗性をより向上させることができる。
本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムの重量平均分子量(Mw)と数平均分子量(Mn)との比(Mw/Mn)で表わされる分子量分布は、1.1〜3.0であることが好ましく、1.2〜2.5であることがより好ましく、1.2〜2.2であることが特に好ましい。変性共役ジエン系ゴムの分子量分布(Mw/Mn)を上記範囲内とすることにより、得られるゴム架橋物の低発熱性とウエットグリップ性をより向上させることができる。
また、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ML1+4,100℃)は、好ましくは20〜100、より好ましくは30〜90、特に好ましくは35〜80である。なお、変性共役ジエン系ゴムを油展ゴムとする場合は、その油展ゴムのムーニー粘度を上記の範囲とすることが好ましい。
このようにして、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムは、シリカなどの充填剤を配合した際における加工性に優れるものであり、また、充填剤および架橋剤などの配合剤を添加した上で、種々の用途に好適に用いることができる。特に、充填剤としてシリカを配合した場合に、低発熱性、ウエットグリップ性、耐摩耗性および操縦安定性に優れたゴム架橋物を得るために好適に用いられるゴム組成物を与えることができる。
<ゴム組成物>
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分100重量部に対して、シリカ10〜200重量部を含有してなる組成物である。
本発明のゴム組成物は、上述した本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴム以外のその他のゴムを含有してもよい。その他のゴムとしては、たとえば、天然ゴム(エポキシ化天然ゴム(ENR)、水素化天然ゴム(HNR)、脱タンパク質天然ゴム(DPNR)、高純度天然ゴム(UPNR)、グラフト化天然ゴムなどの改質天然ゴムであってもよい。)、ポリイソプレンゴム、乳化重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ポリブタジエンゴム(高シス−BR、低シスBRであってもよい。また、1,2−ポリブタジエン重合体からなる結晶繊維を含むポリブタジエンゴムであってもよい。)、スチレン−イソプレン共重合ゴム、ブタジエン−イソプレン共重合ゴム、スチレン−イソプレン−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−ブタジエン共重合ゴム、アクリロニトリル−スチレン−ブタジエン共重合ゴム、ブチルゴム(IIR)、エチレン−プロピレン共重合体、クロロプレンゴム、ニトリルクロロプレンゴム、およびニトリルイソプレンゴム、などのうち、上述した本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴム以外のものをいう。これらのなかでも、天然ゴム、ポリイソプレンゴム、ポリブタジエンゴム、および溶液重合スチレン−ブタジエン共重合ゴムが好ましい。これらのゴムは、それぞれ単独で、あるいは、天然ゴムとポリブタジエンゴム、天然ゴムとスチレン−ブタジエン共重合ゴム等、2種以上を組み合わせて用いることができる。
本発明のゴム組成物において、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムは、ゴム組成物中のゴム成分の10〜100重量%を占めることが好ましく、50〜100重量%を占めることが特に好ましい。このような割合で、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムをゴム成分中に含めることにより、低発熱性、ウエットグリップ性、および操縦安定性に優れたゴム架橋物を得ることができる。
本発明で用いるシリカとしては、たとえば、乾式法ホワイトカーボン、湿式法ホワイトカーボン、コロイダルシリカ、沈降シリカ、ケイ酸カルシウム、ケイ酸アルミニウムなどが挙げられる。これらの中でも、含水ケイ酸を主成分とする湿式法ホワイトカーボンが好ましい。また、カーボンブラック表面にシリカを担持させたカーボン−シリカデュアル・フェイズ・フィラーを用いてもよい。これらのシリカは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。用いるシリカの窒素吸着比表面積(ASTM D3037−81に準じBET法で測定される)は、好ましくは20〜400m2/g、より好ましくは50〜220m2/g、特に好ましくは80〜170m2/gである。また、シリカのpHは、5〜10であることが好ましい。
本発明で用いるシリカとしては、ジブチルフタレート(DBP)吸収値が、好ましくは約100〜約400の範囲、特に約150〜約300の範囲にあるものが好ましい。
本発明で用いるシリカとしては、電子顕微鏡による測定で0.01〜0.05μmの範囲の平均極限粒径を有するものが好ましいが、シリカの平均極限粒径はこの範囲に限定されず、さらに小さくても又はさらに大きくてもよい。
本発明で用いるシリカとしては、たとえば、様々な市販シリカが使用できる。例えば、PPG Industries社製のHi−Sil、210、Hi−Sil233、Hi−Sil243LD;ソルベイ社製のZeosil1115MP、Zeosil1165MP、Zeosil165GR、Zeosil Premium 200MP;エボニック社製のULTRASIL VN2、ULTRASIL VN3;などが挙げられる。
本発明のゴム組成物におけるシリカの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは10〜200重量部であり、より好ましくは15〜150重量部、さらに好ましくは20〜130重量部である。シリカの配合量を上記範囲とすることにより、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性、低発熱性および操縦安定性をより高めることができる。
本発明のゴム組成物には、低発熱性をさらに改良するという観点より、さらにシランカップリング剤を配合してもよい。シランカップリング剤としては、特に限定されず、種々のシランカップリング剤を用いることができるが、本発明においては、スルフィド系、メルカプト系、保護化メルカプト系(例えば、カルボニルチオ基を持つもの)、チオシアネート系、ビニル系、アミノ系、メタクリレート系、グリシドキシ系、ニトロ系、エポキシ系またはクロロ系のシランカップリング剤を好適に用いることができる。シランカップリング剤の具体例としては、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)ジスルフィド、ビス(3−トリエトキシシリルプロピル)トリスルフィド、ビス(3−(トリエトキシシリル)プロピル)テトラスルフィド、γ−メルカプトプロピルトリエトキシシラン、3−[ エトキシビス(3,6,9,12,15−ペンタオキサオクタコサン−1−イルオキシ)シリル]−1−プロパンチオール、3−オクタノイルチオ−1−プロピル−トリエトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピル−N,N−ジメチルチオカルバモイルテトラスルフィド、γ−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアジルテトラスルフィド、3−トリメトキシシリルプロピルベンゾチアゾールテトラスルフィド、3−チオシアネートプロピルトリエトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン、N−(β−アミノエチル)−γ−アミノプロピルトリメトキシシラン、3−トリメトキシシリルプロピルメタクリレートモノスルフィド、γ−グリシドキシプロピルトリエトキシシラン、3−ニトロプロピルトリメトキシシラン、β−(3,4−エポキシシクロヘキシル)エチルトリメトキシシラン、および3−クロロプロピルトリメトキシシランなどを挙げることができる。また、モメンティブ・パフォーマンス・マテリアルズ社製のNXT−Z100、NXT−Z30、NXT−Z45、NXT−Z60、NXT−Z45、NXT、エボニック社製のSi69、Si75、VP Si363なども用いることができる。これらのシランカップリング剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。また、これらの1種または2種以上を予めオリゴマー化させて、オリゴマー化させた状態にて用いてもよい。シランカップリング剤の配合量は、シリカ100重量部に対して、好ましくは0.1〜30重量部、より好ましくは1〜15重量部である。
また、本発明のゴム組成物には、さらに、ファーネスブラック、アセチレンブラック、サーマルブラック、チャンネルブラック、およびグラファイトなどのカーボンブラックを配合してもよい。これらのなかでも、ファーネスブラックが好ましい。これらのカーボンブラックは、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。カーボンブラックの配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、通常、120重量部以下である。
なお、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムを含むゴム成分に、シリカを添加する方法としては特に限定されず、固形のゴム成分に対して添加して混練する方法(乾式混練法)や変性共役ジエン系ゴムを含む溶液に対して添加して凝固・乾燥させる方法(湿式混練法)などを適用することができる。
また、本発明のゴム組成物は、架橋剤をさらに含有していることが好ましい。架橋剤としては、たとえば、硫黄、ハロゲン化硫黄などの含硫黄化合物、有機過酸化物、キノンジオキシム類、有機多価アミン化合物、メチロール基を有するアルキルフェノール樹脂などが挙げられる。これらの中でも、硫黄が好ましく使用される。架橋剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
さらに、本発明のゴム組成物には、上記成分以外に、常法に従って、架橋促進剤、架橋活性化剤、老化防止剤、充填剤(上記シリカおよびカーボンブラックを除く)、活性剤、プロセス油、可塑剤、滑剤、粘着付与剤、相溶化剤、界面活性化剤などの配合剤をそれぞれ必要量配合できる。
架橋剤として、硫黄または含硫黄化合物を用いる場合には、架橋促進剤および架橋活性化剤を併用することが好ましい。架橋促進剤としては、たとえば、スルフェンアミド系架橋促進剤;グアニジン系架橋促進剤;チオウレア系架橋促進剤;チアゾール系架橋促進剤;チウラム系架橋促進剤;ジチオカルバミン酸系架橋促進剤;キサントゲン酸系架橋促進剤;などが挙げられる。これらのなかでも、スルフェンアミド系架橋促進剤を含むものが好ましい。これらの架橋促進剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋促進剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.1〜15重量部、より好ましくは0.5〜5重量部、特に好ましくは1〜4重量部である。
架橋活性化剤としては、たとえば、ステアリン酸などの高級脂肪酸;酸化亜鉛;などを挙げることができる。これらの架橋活性化剤は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。架橋活性化剤の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは0.05〜20重量部、特に好ましくは0.5〜15重量部である。
また、本発明のゴム組成物には、ゴム成分以外に樹脂を配合してもよい。樹脂を配合することにより、ゴム組成物に粘着性を付与させたり、ゴム組成物中の充填剤の分散性を高めることができる。その結果、得られるゴム架橋物のウエットグリップ性や耐摩耗性の向上が期待できる。また、可塑剤と同様な効果として、ゴム組成物の加工性を向上させることもできる。樹脂としては、例えば、C5系石油樹脂、C5/C9系石油樹脂、C9系石油樹脂、ジシクロペンタジエン系樹脂、テルペン系樹脂、テルペンフェノール樹脂、芳香族変性テルペン樹脂、アルキルフェノール−アセチレン樹脂、ロジン系樹脂、ロジンエステル樹脂、インデン系樹脂、インデンを含有するC9系樹脂、α−メチルスチレン・インデン共重合体樹脂、クマロン−インデン樹脂、ファルネセン系樹脂、ポリリモネン樹脂などが挙げられる。これらの樹脂は、変性されていたり、水素添加されていたりするものであってもよい。これらの樹脂は、それぞれ単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いられる。樹脂の配合量は、ゴム組成物中のゴム成分100重量部に対して、好ましくは25重量部以下である。
本発明のゴム組成物を得るためには、常法に従って各成分を混練すればよく、たとえば、架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を除く成分と変性共役ジエン系ゴムとを混練後、その混練物に架橋剤や架橋促進剤などの熱に不安定な成分を混合して目的の組成物を得ることができる。熱に不安定な成分を除く成分と変性共役ジエン系ゴムとの混練温度は、好ましくは80〜200℃、より好ましくは120〜180℃であり、その混練時間は、好ましくは30秒〜30分である。また、その混練物と熱に不安定な成分との混合は、通常100℃以下、好ましくは80℃以下まで冷却した後に行われる。
<ゴム架橋物>
本発明のゴム架橋物は、上述した本発明のゴム組成物を架橋してなるものである。
本発明のゴム架橋物は、本発明のゴム組成物を用い、たとえば、所望の形状に対応した成形機、たとえば、押出機、射出成形機、圧縮機、ロールなどにより成形を行い、加熱することにより架橋反応を行い、ゴム架橋物として形状を固定化することにより製造することができる。この場合においては、予め成形した後に架橋しても、成形と同時に架橋を行ってもよい。成形温度は、通常、10〜200℃、好ましくは25〜120℃である。架橋温度は、通常、100〜200℃、好ましくは130〜190℃であり、架橋時間は、通常、1分〜24時間、好ましくは2分〜12時間、特に好ましくは3分〜6時間である。
また、ゴム架橋物の形状、大きさなどによっては、表面が架橋していても内部まで十分に架橋していない場合があるので、さらに加熱して二次架橋を行ってもよい。
加熱方法としては、プレス加熱、スチーム加熱、オーブン加熱、熱風加熱などのゴムの架橋に用いられる一般的な方法を適宜選択すればよい。
このようにして得られる本発明のゴム架橋物は、上述した本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムを用いて得られるものであるため、低発熱性、ウエットグリップ性、耐摩耗性および操縦安定性に優れるものである。特に、本発明の製造方法により得られる変性共役ジエン系ゴムは、重合体鎖末端に、シリカに対して相互作用可能な官能基を有する変性剤による変性構造を備え、かつ、アルキルチオール化合物に由来の基を有するものであるため、シリカなどの充填剤を配合した際に、これにより得られるゴム組成物の粘度の上昇を抑えることができ、これにより、シリカなどの充填剤を良好に分散させることができ、その結果として、シリカなどの充填剤による補強性を十分に発揮させることができるものである。したがって、このような本発明の変性共役ジエン系ゴムを用いて得られる、本発明のゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、耐摩耗性および操縦安定性に優れたものとなる。
そのため、本発明のゴム架橋物は、その優れたウエットグリップ性、低発熱性および操縦安定性を活かし、たとえば、タイヤにおいて、キャップトレッド、ベーストレッド、カーカス、サイドウォール、ビード部などのタイヤ各部位の材料;ホース、ベルト、マット、防振ゴム、その他の各種工業用品の材料;樹脂の耐衝撃性改良剤;樹脂フィルム緩衝剤;靴底;ゴム靴;ゴルフボール;玩具;などの各種用途に用いることができる。とりわけ、本発明のゴム架橋物は、ウエットグリップ性、低発熱性および操縦安定性に優れることから、タイヤの材料、特に低燃費タイヤの材料として好適に用いることができ、トレッド用途に最適である。
以下、本発明を、さらに詳細な実施例に基づき説明するが、本発明は、これら実施例に限定されない。なお、以下において、「部」は、特に断りのない限り重量基準である。また、試験および評価は下記に従った。
[数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)]
数平均分子量(Mn)、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィ(GPC)によりポリスチレン換算の分子量のとして求めた。ゲルパーミエーションクロマトグラフィの具体的な測定条件は、以下のとおりとした。
測定器:高速液体クロマトグラフ(東ソー社製、商品名「HLC−8320」)
カラム:東ソー社製ポリスチレン系カラム、商品名「GMH−HR−H」を二本直列に連結した。
検出器:示差屈折計
溶離液:テトラヒドロフラン
カラム温度:40℃
[スチレン単位含有量およびビニル結合含有量]
スチレン単位含有量、およびビニル結合含有量は、ブルカー・バイオスピン社製FT−NMR装置(製品名:ADVANCEIII 500)を用いて1H−NMRにより測定した。
[アルキルチオール化合物由来のアルキル基導入量]
変性共役ジエン系ゴムのアルキルチオール化合物由来のアルキル基導入量は、ブルカー・バイオスピン社製FT−NMR装置(製品名:ADVANCEIII 500)を用いて13C−NMRにより測定を行うことで、アルキルチオール化合物由来のアルキル基の量を定量し、下記式にしたがって求めた。
アルキルチオール化合物由来のアルキル基導入量(重量%)=(アルキルチオール化合物に由来するアルキル基の重量基準での含有量/変性共役ジエン系ゴムの重量)×100
[加工性]
架橋剤などの配合剤を配合する前の変性共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ポリマー・ムーニー、ML1+4、100℃)と、変性共役ジエン系ゴムに、シリカや架橋剤などの配合剤を配合した後の架橋性ゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンド・ムーニー、ML1+4、100℃)とを、JIS K6300に従い、ムーニー粘度計(島津製作所社製、製品名「SMV−300」)を用いて測定し、架橋性ゴム組成物のムーニー粘度(コンパウンドムーニー粘度)から、変性共役ジエン系ゴムのムーニー粘度(ポリマームーニー粘度)を引いた値ΔMLを求め、これを加工性の指標とした。ΔMLの値が低いほど、加工性に優れると判断できる。
[シリカ分散性]
架橋性ゴム組成物中におけるシリカ分散性は、架橋性ゴム組成物を用い、粘弾性測定装置(アルファテクノロジーズ社製、製品名「RPA−2000」)により、60℃、1Hzの条件で、動的歪み1%および動的歪み10%における貯蔵弾性率G’を測定し、動的歪み1%における貯蔵弾性率G’(1%)と動的歪み10%における貯蔵弾性率G’(10%)との差分(ΔG’=G’(1%)−G’(10%))を算出することにより求めた。得られた差分ΔG’について、比較例2を基準サンプルとして100とする指数で示した。この指数が小さいほど、シリカなどの充填剤の分散性に優れるため、加工性に優れる。
[低発熱性]
架橋性ゴム組成物を、160℃、20分間プレス架橋することで、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を得た。そして得られた試験片について、ティー・エイ・インスツルメント社製ARES−G2を用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で60℃におけるtanδを測定した。このtanδの値について、比較例2を基準サンプルとして100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、ゴム架橋物をタイヤに用いた際の低燃費性に優れる。
[ウエットグリップ性]
架橋性ゴム組成物を、160℃、20分間プレス架橋することで、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を得た。そして得られた試験片について、ティー・エイ・インスツルメント社製ARES−G2を用い、動的歪み0.5%、10Hzの条件で0℃におけるtanδを測定した。このtanδの値について、比較例2を基準サンプルとして100とする指数で示した。この指数が大きいものほど、ゴム架橋物をタイヤに用いた際のウエットグリップ性に優れる。
[耐摩耗性]
架橋性ゴム組成物を、160℃、25分間プレス架橋することで、外径50mm、内径15mm、厚さ10mmの試験片を作製し、この試験片について、FPS摩耗試験機(商品名「AB−2012」、上島製作所製)を用い、路面温度30℃、荷重10N、試料と摩耗ホイールとの間に発生する摩擦力(接線力)5Nで測定した。得られた摩耗速度(mm/1000km)について、比較例2を基準サンプルとして100とする指数で示した。この指数が小さいものほど、ゴム架橋物をタイヤに用いた際の耐摩耗性に優れる。
[操縦安定性]
架橋性ゴム組成物を、160℃、20分間プレス架橋することで、長さ50mm、幅12.7mm、厚さ2mmの試験片を得た。そして、得られた試験片を用いて、JIS K6301にしたがって、引張試験を行い、伸び300%における引張応力を測定した。伸び300%における引張応力が大きいほど、ゴム架橋物をタイヤに用いた際の操縦安定性に優れる。
[製造例1]
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、テトラメチルエチレンジアミン1.28mmol、1,3−ブタジエン94.8g、およびスチレン25.2gを仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.71mmolを加え、60℃で重合を開始した。続いて、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、四塩化スズ0.04mmolを添加し、10分間反応させた。なお、四塩化スズを添加する前の重合体について、その一部をサンプリングし、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)を測定したところ、重量平均分子量(Mw)は268,000であり、分子量分布(Mw/Mn)は1.13であった。
次いで、下記式(6)で表されるポリオルガノシロキサンを、ポリオルガノシロキサン中に含まれるエポキシ基の量が、使用したn−ブチルリチウムの0.31倍モルに相当する量となるように、20%濃度のキシレン溶液の状態で添加し、30分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、末端変性基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−1)を含有する溶液を得た。
得られた末端変性基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−1)を含有する溶液の一部をサンプリングし、老化防止剤(商品名「イルガノックス1520L」、BASF社製)を、末端変性基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−1)100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥することで、末端変性基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−1)を得た。得られた末端変性基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−1)中におけるスチレン単位の含有量は21.0重量%であり、ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量は64.4重量%、重量平均分子量(Mw)は492,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.50であった。
[製造例2]
製造例1と同様にして得られた末端変性基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−1)を含有する溶液に、末端変性基を有する変性共役ジエン系重合体100部当たり、1−ブタンチオール4.6部、および2,2’−アゾビスイソブチロニトリル0.56部を加え、70℃で5時間攪拌することで、反応させた。反応終了後、溶液の一部を分取し、メタノールに注いでゴム状の重合体を沈殿させた。得られたゴム状の重合体を、60℃、24時間真空乾燥した後、上記した方法にしたがって、13C−NMRを測定したところ、重合体中に1−ブタンチオールに由来する基が導入されていることが確認された。すなわち、得られた溶液は、末端変性基および1−ブタンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−2)を含む溶液であることが確認された(後述する製造例3〜6においても、同様に使用したアルキルチオール化合物に由来する基が導入されていることが確認された。)。なお、変性共役ジエン系ゴム(A−2)中における、1−ブタンチオール由来のアルキル基の導入量は、3.6重量%であった。
次いで、末端変性基および1−ブタンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−2)を含む溶液に、老化防止剤(商品名「イルガノックス1520L」、BASF社製)を、変性共役ジエン系ゴム(A−2)100部に対して0.20部添加した。その後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥して、末端変性基および1−ブタンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−2)を得た。また、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)は表1に示すとおりであった。
[製造例3]
1−ブタンチオール4.6部に代えて、1−ドデカンチオール10.4部を使用した以外は、製造例2と同様にして、末端変性基および1−ドデカンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−3)を得た。なお、変性共役ジエン系ゴム(A−3)中における、1−ドデカンチオール由来のアルキル基の導入量は、7.7重量%であった。また、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)は表1に示すとおりであった。
[製造例4]
1−ブタンチオール4.6部に代えて、1−オクタデカンチオール14.7部を使用した以外は、製造例2と同様にして、末端変性基および1−オクタデカンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−4)を得た。なお、変性共役ジエン系ゴム(A−4)中における、1−オクタデカンチオール由来のアルキル基の導入量は、10.7重量%であった。また、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)は表1に示すとおりであった。
[製造例5]
1−ブタンチオール4.6部に代えて、1−ドデカンチオール29.7部を使用した以外は、製造例2と同様にして、末端変性基および1−ドデカンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−5)を得た。なお、変性共役ジエン系ゴム(A−5)中における、1−ドデカンチオール由来のアルキル基の導入量は、19.0重量%であった。また、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)は表1に示すとおりであった。
[製造例6]
攪拌機付きオートクレーブに、窒素雰囲気下、シクロヘキサン800g、テトラメチルエチレンジアミン1.28mmol、1,3−ブタジエン94.8g、およびスチレン25.2gを仕込んだ後、n−ブチルリチウム0.71mmolを加え、60℃で重合を開始した。続いて、重合転化率が95%から100%の範囲になったことを確認してから、四塩化スズ0.04mmolを添加し、10分間反応させた。その後、重合停止剤として、使用したn−ブチルリチウムの2倍モルに相当する量のメタノールを添加して、末端変性基を有しない共役ジエン系ゴム(A−6)を含有する溶液を得た。
得られた共役ジエン系ゴム(A−6)を含有する溶液の一部をサンプリングし、老化防止剤(BASF社製、商品名「イルガノックス1520L」)を、共役ジエン系ゴム(A−6)100部に対して0.20部添加した後、スチームストリッピングにより溶媒を除去し、60℃で24時間真空乾燥することで、共役ジエン系ゴム(A−6)を得た。得られた共役ジエン系ゴム(A−6)中におけるスチレン単位の含有量は22.0重量%であり、ブタジエン単量体単位中のビニル結合含有量は62.2重量%、重量平均分子量(Mw)は315,000、分子量分布(Mw/Mn)は1.54であった。
次いで、末端変性基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−1)を含有する溶液に代えて、共役ジエン系ゴム(A−6)を含有する溶液を使用した以外は、製造例3と同様にして、1−ドデカンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−7)を得た。なお、変性共役ジエン系ゴム(A−7)中における、1−ドデカンチオール由来のアルキル基の導入量は、7.8重量%であった。また、重量平均分子量(Mw)、および分子量分布(Mw/Mn)は表1に示すとおりであった。
[実施例1]
容量250mlのバンバリーミキサーを用いて、製造例2で得られた末端変性基および1−ブタンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−2)103.4部を素練りした。次いで、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ソルベイ社製)46.5部、シランカップリング剤(商品名「Si69」、エボニック社製)5.4部、およびプロセスオイル(商品名「アロマックス T−DAE」、JXTGエネルギー社製)15.5部を添加して、110℃を開始温度として1.5分間混練した。この混練物に、シリカ(商品名「Zeosil 1165MP」、ソルベイ社製)20.7部、酸化亜鉛(亜鉛華1号)3.1部、ステアリン酸(商品名「ビーズステアリン酸つばき」、日油社製)2.1部、および老化防止剤としてのN−フェニル−N’−(1,3−ジメチルブチル)−p−フェニレンジアミン、商品名「ノクラック6C」、大内新興化学工業社製)2.1部を添加し、3分間混練して、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。混練終了時のゴム組成物の温度は150℃であった。この混練物を、室温まで冷却した後、再度バンバリーミキサー中で、3分間混練し、その後、バンバリーミキサーから混練物を排出させた。次いで、50℃のオープンロールを用いて、得られた混練物と、硫黄1.7部および架橋促進剤(N−シクロヘキシル-2-ベンゾチアゾリルスルフェンアミド(商品名「ノクセラーCZ−G」、大内新興化学工業社製)1.4部と、ジフェニルグアニジン(商品名「ノクセラーD」、大内新興化学工業社製)1.4部との混合物)2.8部とを混練した後、シート状の架橋性ゴム組成物を取り出した。得られた架橋性ゴム組成物を用いて、加工性、シリカ分散性、低発熱性、ウエットグリップ性、耐摩耗性、加工性および操縦安定性の各測定・評価を行なった。結果を表1に示す。
[実施例2]
末端変性基および1−ブタンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−2)に代えて、製造例3で得られた末端変性基および1−ドデカンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−3)103.4部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例3]
末端変性基および1−ブタンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−2)に代えて、製造例4で得られた末端変性基および1−オクタデカンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−4)103.4部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
[実施例4]
末端変性基および1−ブタンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−2)に代えて、製造例5で得られた末端変性基および1−ドデカンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−5)103.4部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例1]
末端変性基および1−ブタンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−2)に代えて、製造例1で得られた末端変性基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−1)103.4部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
[比較例2]
末端変性基および1−ブタンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−2)に代えて、製造例6で得られた1−ドデカンチオール由来のアルキル基を有する変性共役ジエン系ゴム(A−7)103.4部を使用した以外は、実施例1と同様にして、架橋性ゴム組成物を得て、同様に評価を行った。結果を表1に示す。
実施例1〜4、比較例2(変性共役ジエン系ゴム(A−2)〜(A−5)、(A−7))における、スチレン単位含有量およびビニル結合含有量は、アルキルチオール化合物を反応させる前のゴムにおける含有量である。
表1より、活性末端を有する共役ジエン系重合体鎖の活性末端に、シリカに対して相互作用可能な官能基を有する変性剤と反応させ、次いで、ラジカル開始剤を用いて、変性剤を反応させた共役ジエン系重合体鎖に、アルキルチオール化合物を反応させることにより得られる変性共役ジエン系ゴムによれば、シリカなどの充填剤を配合した際におけるムーニー粘度の上昇が小さく、加工性に優れるものであり、しかも、これを用いて得られるゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、耐摩耗性および操縦安定性に優れるものであった(実施例1〜4)。
一方、シリカに対して相互作用可能な官能基を有する変性剤による変性反応を行ったものの、アルキルチオール化合物による反応を行わなかった場合には、得られる変性共役ジエン系ゴムを用いて得られるゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、耐摩耗性および操縦安定性の改善効果が十分なものではなかった(比較例1)。
さらに、シリカに対して相互作用可能な官能基を有する変性剤による変性反応を行わずに、アルキルチオール化合物による反応のみを行った場合には、得られる変性共役ジエン系ゴムは、シリカなどの充填剤を配合した際におけるムーニー粘度の上昇が大きく、加工性に劣るものであり、しかも、これを用いて得られるゴム架橋物は、低発熱性、ウエットグリップ性、耐摩耗性および操縦安定性に劣るものであった(比較例1)。