JP2019137035A - 積層体 - Google Patents

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仁之 福井
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一喜 大松
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Masayoshi Karasawa
真義 唐澤
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Abstract

【課題】フィルム表面の凹凸(オレンジピール)が生じ難く、良好な外観および視認性を有する、ポリイミド系高分子に基づく透明樹脂フィルムを含む積層体を提供する。【解決手段】ポリイミドおよびポリアミドイミドからなる群から選択される少なくとも1種および溶媒を含んでなる透明樹脂フィルムと、透明樹脂フィルムの少なくとも一方の面に貼合された保護フィルムとを含んでなる積層体であって、数式(1):に従って算出される、透明樹脂フィルムと接する保護フィルム表面の算術平均うねりWaが30nm以下である、積層体。[数式(1)中、Zw(x,y)は、保護フィルム表面の二次元の高さデータから、カットオフ値20μm、振幅伝達率が50%のガウシアンフィルタを用いて得られる表面うねりの各点の高さを表し、1x,1yはそれぞれx,y方向の測定領域の範囲を表す。]【選択図】なし

Description

本発明は、積層体に関する。
近年、各種画像表示装置のディスプレイの薄型化、軽量化およびフレキシブル化等に伴い、従来用いられていたガラスに代わる材料として、ポリイミドやポリアミド等の高分子に基づく透明樹脂フィルムが広く利用されている。このような透明樹脂フィルムの製造方法の1つとしてキャスト法(溶液流涎法)が知られている。キャスト法では、一般に、溶媒に溶解させたポリイミド等の高分子を含むワニスを支持基材上に塗布して製膜し、支持基材から剥離した後、乾燥により溶媒を除去することによって、樹脂フィルムを連続的に成形することができる。製膜された透明樹脂フィルムの表面には、適宜、剥離可能な保護フィルムが積層され、フィルム表面の保護が図られている(特許文献1〜3)。
特開2010−208312号公報 特開2015−214122号公報 特開2016−87799号公報
樹脂フィルム中に溶媒が存在している場合、一般に、樹脂フィルムと保護フィルムとの密着性が高くなる。このため、保護フィルムと貼合された透明樹脂フィルムの表面に、保護フィルムの表面凹凸が転写されることにより、いわゆるオレンジピールと称される揺らぎをもった表面凹凸が生じることがある。特に、キャスト法等により溶媒を用いて製造される透明樹脂フィルムでは、連続的な生産において、ワニス中の溶媒を完全に除去することは難しくある程度の量の溶媒が残存していると、保護フィルムと貼合した際に、保護フィルムの表面凹凸が転写されやすく、表面凹凸が生じやすくなる。このような透明樹脂フィルムにおける表面凹凸は、高い透明性が要求される透明樹脂フィルムにとって外観的な欠陥となるだけでなく、各種画像表示装置などのディスプレイに用いる場合には視認性を悪化させる原因となる。
そこで、本発明は、フィルム表面の凹凸(オレンジピール)が生じ難く、良好な外観および視認性を有する、ポリイミド系高分子に基づく透明樹脂フィルムを含む積層体を提供することを目的とする。
本発明者等は、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明は、以下の好適な態様を提供するものである。
[1]ポリイミド、ポリアミドおよびポリアミドイミドからなる群から選択される少なくとも1種および溶媒を含んでなる透明樹脂フィルムと、前記透明樹脂フィルムの少なくとも一方の面に貼合された保護フィルムとを含んでなる積層体であって、数式(1)に従って算出される、透明樹脂フィルムと接する保護フィルム表面の算術平均うねりWaが30nm以下である、積層体。
数式(1):
Figure 2019137035
〔数式(1)中、Zw(x,y)は、保護フィルム表面の二次元の高さデータから、カットオフ値20μm、振幅伝達率が50%のガウシアンフィルタを用いて得られる表面うねりの各点の高さを表し、l,lはそれぞれx,y方向の測定領域の範囲を表す。〕
[2]透明樹脂フィルムの、熱重量−示差熱測定による120℃から250℃における質量減少率として算出される残留溶媒量Sが0.001質量%以上である、前記[1]に記載の積層体。
[3]保護フィルムの、測定温度140℃におけるゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して得られるチャートの全面積に対するLog Mが2.82から3.32までの面積の割合として定義される低分子成分量Wが0.4%以下である、前記[1]または[2]に記載の積層体。
[4]透明樹脂フィルムが1種類以上の溶媒を含み、当該溶媒の中で最も沸点が高い溶媒の沸点が120〜300℃である、前記[1]〜[3]のいずれかに記載の積層体。
[5]透明樹脂フィルムが、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、シクロペンタノン、酢酸ブチルおよび酢酸アミルからなる群から選択される溶媒を少なくとも1つ含む、前記[1]〜[4]のいずれかに記載の積層体。
[6]保護フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムである、前記[1]〜[5]のいずれかに記載の積層体。
本発明によれば、フィルム表面の凹凸(オレンジピール)が生じ難いとともに白化も生じ難く、良好な外観および視認性を有する、ポリイミド系高分子に基づく透明樹脂フィルムを含む積層体を提供することができる。
図1は、実施例1で作製した透明ポリイミド系フィルムのTG−DTA測定結果を示す。
以下、本発明の実施の形態について、詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を損なわない範囲で種々の変更をすることができる。
本発明の積層体は、透明樹脂フィルムと、前記透明樹脂フィルムの少なくとも一方の面に貼合された保護フィルムとを含んでなり、本発明の積層体を構成する透明樹脂フィルムは、ポリイミド、ポリアミドおよびポリアミドイミドからなる群から選択される少なくとも1種を含んでなり、ポリイミド、ポリアミドおよびポリアミドイミドからなる群から選択される少なくとも1種を含む樹脂組成物から形成される。
本明細書において、ポリイミドは、イミド基を含む繰返し構造単位を含有する重合体を表し、ポリアミドイミドは、イミド基を含む繰り返し構造単位とアミド基を含む繰り返し構造単位との両方を含有する重合体を表し、ポリアミドは、アミド基を含む繰返し構造単位を含有する重合体を表す。ポリイミド系高分子は、ポリイミドおよびポリアミドイミドから選ばれるいずれか1つ以上を含む重合体を表す。
本実施形態に係るポリイミド系高分子は、式(10)で表される繰り返し構造単位を有する。ここで、Gは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す。Gおよび/またはAは、異なる2種類以上の式(10)で表される繰り返し構造単位を含んでいてもよい。また、本実施形態に係るポリイミド系高分子は、得られる透明樹脂フィルムの各種物性を損なわない範囲で、式(11)、式(12)、および式(13)のいずれかで表される繰り返し構造単位のいずれか1つ以上を含んでいてもよい。
ポリイミド系高分子の主な構造単位が式(10)で表される繰り返し構造単位であると、透明樹脂フィルムの強度および透明性の観点で好ましい。本実施形態に係るポリイミド高分子において、式(10)で表される繰り返し構造単位は、ポリイミド系高分子の全繰り返し構造単位に対し、好ましくは40モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、殊更好ましくは90モル%以上であり、殊更さらに好ましくは98モル%以上である。式(10)で表される繰り返し構造単位は、100モル%であってもよい。
Figure 2019137035
GおよびGは、それぞれ独立に、4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の4価の有機基を表す。前記有機基は、炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。GおよびGとしては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。式中の*は結合手を表し、Zは、単結合、−O−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−Ar−、−SO−、−CO−、−O−Ar−O−、−Ar−O−Ar−、−Ar−CH−Ar−、−Ar−C(CH−Ar−または−Ar−SO−Ar−を表す。Arはフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。得られる透明樹脂フィルムの黄色度を抑制しやすいことから、GおよびGとしては、好ましくは式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)または式(27)で表される基が挙げられる。
Figure 2019137035
は3価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の3価の有機基を表す。前記有機基は、炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。
としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基並びに3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。式中のZの例は、Gに関する記述におけるZの例と同じである。
は2価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の2価の有機基を表す。前記有機基は、炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。
としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基および炭素数6以下の2価の鎖式炭化水素基が例示される。式中のZの例は、Gに関する記述におけるZの例と同じである。
A、A、AおよびAはいずれも2価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の2価の有機基を表す。前記有機基は、炭化水素基またはフッ素置換された炭素数1〜8の炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。A、A、AおよびAとしては、それぞれ式(30)、式(31)、式(32)、式(33)、式(34)、式(35)、式(36)、式(37)または式(38)で表される基;これらがメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基の1種類以上で置換された基;および炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
式中の*は結合手を表し、Z、ZおよびZは、それぞれ独立して、単結合、−O−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−S−、−SO−、−CO−または−NRを表す。ここで、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を表す。ここで、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を表す。ZとZ、および、ZとZは、それぞれ、各環に対してメタ位またはパラ位に位置することが好ましい。
Figure 2019137035
本発明において、透明樹脂フィルムを形成する樹脂組成物は、ポリアミドを含んでいてもよい。本実施形態に係るポリアミドは、式(13)で表される繰り返し構造単位を主とする重合体である。ポリアミドにおけるGおよびAの好ましい例および具体例は、ポリイミド系高分子におけるGおよびAの好ましい例および具体例と同じである。前記ポリアミドは、Gおよび/またはAが異なる2種類以上の式(13)で表される繰り返し構造単位を含んでいてもよい。
ポリイミド系高分子は、例えば、ジアミンとテトラカルボン酸化合物(テトラカルボン酸二無水物等)との重縮合によって得ることができ、例えば、特開2006−199945号公報または特開2008−163107号公報に記載されている方法にしたがって合成することができる。ポリイミドの市販品としては、三菱瓦斯化学株式会社製ネオプリム(登録商標)、河村産業株式会社製KPI−MX300F等を挙げることができる。
ポリイミド系高分子の合成に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸およびその無水物、好ましくはその二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;および脂肪族テトラカルボン酸およびその無水物、好ましくはその二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、無水物の他、テトラカルボン酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物誘導体であってもよく、これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物および縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDAと記載することがある)、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。
これらの中でも、好ましくは4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物および4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられ、より好ましくは4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物および4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式または非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル3,3’−4,4’−テトラカルボン酸二無水物およびこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物および非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組み合わせて用いてもよい。
テトラカルボン酸化合物の中でも、透明樹脂フィルムの弾性率、耐屈曲性、および光学特性を向上しやすい観点から、好ましくは前記脂環式テトラカルボン酸二無水物または非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。より好ましい具体例としては、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
なお、本実施形態に係るポリイミド系高分子は、得られる透明樹脂フィルムの各種物性を損なわない範囲で、上記のポリイミド合成に用いられるテトラカルボン酸の無水物に加えて、テトラカルボン酸、トリカルボン酸およびジカルボン酸ならびにそれらの無水物および誘導体をさらに反応させたものであってもよい。
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6−ナフタレントリカルボン酸−2,3−無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−またはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
ジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、これらは2種以上を併用してもよい。具体例としては、テレフタル酸;イソフタル酸;ナフタレンジカルボン酸;4,4’−ビフェニルジカルボン酸;3,3’−ビフェニルジカルボン酸;炭素数8以下である鎖式炭化水素、のジカルボン酸化合物および2つの安息香酸骨格が単結合、−O−、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−NR−、−C(=O)−、−SO−またはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。ここで、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を表す。
ジカルボン酸化合物としては、好ましくはテレフタル酸;イソフタル酸;4,4’−ビフェニルジカルボン酸;3,3’−ビフェニルジカルボン酸;および2つの安息香酸骨格が−CH−、−C(=O)−、−O−、−NR−、−SO−またはフェニレン基で連結された化合物であり、より好ましくは、テレフタル酸;4,4’−ビフェニルジカルボン酸;および2つの安息香酸骨格が−O−、−NR−、−C(=O)−または−SO−で連結された化合物である。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
テトラカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物、およびジカルボン酸化合物の合計に対する、テトラカルボン酸化合物の割合は、好ましくは40モル%以上であり、より好ましくは50モル%以上であり、さらに好ましくは70モル%以上であり、よりさらに好ましくは90モル%以上であり、とりわけ好ましくは98モル%以上である。
ポリイミド系高分子の合成に用いられるジアミンとしては、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンまたはそれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基またはその他の置換基を含んでいてもよい。芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環が挙げられる。また「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。
脂肪族ジアミンの具体例としては、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミンおよび1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミン、4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組み合わせて用いることができる。
芳香族ジアミンの具体例としては、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、2,6−ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン、4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMBと記載することがある)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
芳香族ジアミンとしては、好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルであり、より好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルである。これらは単独または2種以上を組み合わせて使用できる。
前記ジアミンは、フッ素系置換基を有することもできる。フッ素系置換基としては、トリフルオロメチル基などの炭素数1〜5のパーフルオロアルキル基、および、フルオロ基が挙げられる。
上記ジアミンの中でも、高透明性および低着色性の観点からは、ビフェニル構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましく、具体例としては2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)および4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。ビフェニル構造およびフッ素系置換基を有するジアミンであることがより好ましく、具体例としては2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)を用いることがより好ましい。
ポリイミド系高分子は、ジアミンと、テトラカルボン酸化合物(酸クロリド化合物、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸化合物誘導体を含む)との重縮合で形成される、式(10)で表される繰り返し構造単位を含む縮合型高分子である。出発原料としては、これらに加えて、さらにトリカルボン酸化合物(酸クロリド化合物、トリカルボン酸無水物等のトリカルボン酸化合物誘導体を含む)およびジカルボン酸化合物(酸クロリド化合物等の誘導体を含む)を用いることもある。また、ポリアミドは、ジアミンと、ジカルボン酸化合物(酸クロリド化合物等の誘導体を含む)との重縮合で形成される、式(13)で表される繰り返し構造単位を含む縮合型高分子である。
式(10)および式(11)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミン類およびテトラカルボン酸化合物から誘導される。式(12)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミンおよびトリカルボン酸化合物から誘導される。式(13)で表される繰り返し構造単位は、通常、ジアミンおよびジカルボン酸化合物から誘導される。ジアミン、テトラカルボン酸化合物、トリカルボン酸化合物およびジカルボン酸化合物の具体例は、上述のとおりである。
ジアミンと、テトラカルボン酸化合物等のカルボン酸化合物とのモル比は、ジアミン1.00molに対して、好ましくはテトラカルボン酸0.9mol以上1.1mol以下の範囲で適宜調節できる。高い耐折性を発現するためには得られるポリイミド系高分子が高分子量であることが好ましいことから、ジアミン1.00molに対してテトラカルボン酸0.98mol以上1.02molであることがより好ましく、0.99mol%以上1.01mol%以下であることがさらに好ましい。
また、得られる透明樹脂フィルムの黄色度を抑制する観点から、得られる高分子末端に占めるアミノ基の割合が低いことが好ましく、ジアミン1.00molに対してテトラカルボン酸化合物等のカルボン酸化合物は1.00mol以上であることが好ましい。
ジアミンおよびカルボン酸化合物(たとえば、テトラカルボン酸化合物)の分子中のフッ素数を調整して、得られるポリイミド系高分子中のフッ素量を、ポリイミド系高分子の質量を基準として、1質量%以上、5質量%以上、10質量%以上、20質量%以上とすることができる。フッ素の割合が高いほど原料費が高くなる傾向があることから、フッ素量の上限は40質量%以下であることが好ましい。フッ素系置換基は、ジアミンまたはカルボン酸化合物のいずれに存在してもよく、両方に存在してもよい。フッ素系置換基を含むことにより特にYI値が低減される場合がある。
本実施形態に係るポリイミド系高分子は、異なる種類の複数の上記の繰り返し構造単位を含む共重合体でもよい。ポリイミド系高分子の標準ポリスチレン換算の重量平均分子量は、通常100,000〜800,000である。ポリイミド系高分子の重量平均分子量が大きいと、成膜した際の屈曲性が向上することから、好ましくは200,000以上であり、より好ましくは300,000以上であり、さらに好ましくは350,000以上である。また、適度な濃度および粘度のワニスが得られ、成膜性が向上する傾向があることから、好ましくは750,000以下であり、より好ましくは600,000以下であり、さらに好ましくは500,000以下である。異なる重量平均分子量のポリイミド系高分子を混合して用いてもよい。
ポリイミド系高分子およびポリアミドは、含フッ素置換基を含むことにより、フィルム化した際の弾性率が向上するとともに、YI値が低減される傾向を示す。フィルムの弾性率が高いと、キズおよびシワ等の発生が抑制される傾向がある。フィルムの透明性の観点から、ポリイミド系高分子およびポリアミドは、含フッ素置換基を有することが好ましい。含フッ素置換基の具体例としては、フルオロ基およびトリフルオロメチル基が挙げられる。
ポリイミド系高分子およびポリイミド系高分子とポリアミドとの混合物におけるフッ素原子の含有量は、それぞれ、ポリイミド系高分子の質量またはポリイミド系高分子の質量とポリアミドの質量との合計を基準として、好ましくは1質量%以上40質量%以下であり、さらに好ましくは5質量%以上40質量%以下である。フッ素原子の含有量が1質量%以上であると、フィルム化した際のYI値をより低減し、透明性をより向上することができる傾向がある。フッ素原子の含有量は、40質量%を越えると、ポリイミドの高分子量化が困難になる傾向がある。
本発明において、透明樹脂フィルムを形成する樹脂組成物におけるポリイミド系高分子および/またはポリアミドの含有量は、樹脂組成物の固形分に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上であり、100質量%であってもよい。ポリイミド系高分子および/またはポリアミドの含有量が上記下限値以上であると、透明樹脂フィルムの屈曲性が良好である。なお、固形分とは、樹脂組成物から溶剤を除いた成分の合計量のことをいう。
本発明において、透明樹脂フィルムを形成する樹脂組成物は、上記ポリイミド系高分子および/またはポリアミドに加えて、無機粒子等の無機材料をさらに含有していてもよい。無機材料として、シリカ粒子、チタン粒子、水酸化アルミニウム、ジルコニア粒子、チタン酸バリウム粒子などの無機粒子、また、オルトケイ酸テトラエチル等の4級アルコキシシラン等のケイ素化合物が挙げられる。ワニスの安定性、無機材料の分散性の観点から、好ましくは、シリカ粒子、水酸化アルミニウム、ジルコニア粒子、さらに好ましくはシリカ粒子である。
無機材料の粒子の平均一次粒子径は、好ましくは1〜200nm、より好ましくは3〜100nm、さらに好ましくは5〜50nm、さらにより好ましくは5〜30nmである。シリカ粒子の平均一次粒子径が100nm以下であると透明性が向上する傾向がある。シリカ粒子の平均一次粒子径が10nm以上であると、シリカ粒子の凝集力が弱まるために取り扱い易くなる傾向がある。
本発明においてシリカ粒子は、有機溶剤等にシリカ粒子を分散させたシリカゾルであっても、気相法で製造したシリカ微粒子粉末を用いてもよいが、ハンドリングが容易であることから液相法で製造したシリカゾルであることが好ましい。
透明樹脂フィルム中のシリカ粒子の平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡(TEM)による観察で求めることができる。透明樹脂フィルムを形成する前のシリカ粒子の粒度分布は、市販のレーザー回折式粒度分布計により求めることができる。
本発明において、樹脂組成物中の無機材料の含有量は、樹脂組成物の固形分に対して、好ましくは0質量%以上90質量%以下、より好ましくは10質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは20質量%以上50質量%以下である。樹脂組成物における無機材料の含有量が上記の範囲内であると、透明樹脂フィルムの透明性および機械的強度を両立させやすい傾向がある。なお、固形分とは、樹脂組成物から溶剤を除いた成分の合計量のことをいう。
透明樹脂フィルムを形成する樹脂組成物は、以上説明した成分に加えて、他の成分をさらに含有していてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、光安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、滑剤およびレベリング剤が挙げられる。
本発明において樹脂組成物がポリイミド系高分子等の樹脂成分および無機材料以外の他の成分を含む場合、その他の成分の含有量は、透明樹脂フィルムの総質量に対して0%以上20質量%以下であることが好ましく、より好ましくは0%以上10質量%以下である。
本発明において透明樹脂フィルムは、例えば、前記テトラカルボン酸化合物、前記ジアミンおよび前記のその他の原料から選択して反応させて得られる、ポリイミド系高分子および/またはポリアミドの反応液、必要に応じて無機材料およびその他の成分を含む樹脂組成物に、溶媒を加えて混合および撹拌することにより調製される樹脂ワニスから製造することができる。前記樹脂組成物または樹脂ワニスにおいて、ポリイミド系高分子等の反応液に変えて、購入したポリイミド系高分子等の溶液や、購入した固体のポリイミド系高分子等の溶液を用いてもよい。
樹脂ワニスを調製するために用い得る溶媒としては、ポリイミド系高分子等の樹脂成分を溶解または分散させ得るものを適宜選択することができる。樹脂成分の溶解性、塗布性および乾燥性等の観点からは、120〜300℃の沸点を有する有機溶媒が好ましく、より好ましくは120〜270℃、さらに好ましくは120〜250℃、特に好ましくは120〜230℃の沸点を有する有機溶媒が好ましい。そのような有機溶媒としては、具体的に例えば、N,N−ジメチルホルムアミド、N,N−ジメチルアセトアミド、N−メチルピロリドンなどのアミド系溶媒;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶媒;シクロヘキサノン、シクロペンタノン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;酢酸ブチル、酢酸アミル等の酢酸エステル系溶媒;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶媒、エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶媒などが挙げられる。中でも、ポリイミド系高分子およびポリアミドに対する溶解性に優れることから、N,N−ジメチルアセトアミド(沸点:165℃)、γ−ブチロラクトン(沸点:204℃)、N−メチルピロリドン(沸点:202℃)、シクロペンタノン(沸点:131℃)、酢酸ブチル(沸点:126℃)および酢酸アミル(沸点:149℃)からなる群から選択される溶媒が好ましい。溶媒として、1種を単独で用いてもよく、2種以上を組み合わせて用いてもよい。なお、2種以上の溶媒を用いる場合には、用いる溶媒の中で最も沸点の高い溶媒の沸点が上記範囲に入るよう溶媒の種類を選択することが好ましい。
溶媒の量は、樹脂ワニスの取り扱いが可能な粘度になるように選択すればよく、特に制限はないが、例えば樹脂ワニス全量に対して、好ましくは50〜95質量%、より好ましくは70〜95質量%、さらに好ましくは80〜95質量%である。
また、本発明の積層体を構成する透明樹脂フィルム中の溶媒の含有量は、熱重量−示差熱測定による120℃から250℃における質量減少率として算出される残留溶媒量S(質量%)が、好ましくは20質量%以下であり、より好ましくは17質量%以下であり、さらに好ましくは15質量%以下である。透明樹脂フィルム中に溶媒が多量に存在する場合には、透明樹脂フィルムの表面凹凸は生じ易い傾向があり、また、保護フィルムに含まれる添加剤等に由来する成分が溶媒中に溶出することにより、保護フィルムと貼合された透明保護フィルムの表面に白化が生じやすくなる。透明樹脂フィルム中の残留溶媒量Sが上記上限値以下であると、白化の発生を抑制することができ、また、得られる透明樹脂フィルムを自立膜として形成することができる点でも好ましい。残留溶媒量Sの下限値は特に限定されるものではないが、ポリイミド系高分子やポリアミドを樹脂成分とする透明樹脂フィルムの製造においては、一般的に上述したような100℃を超える沸点を有する高沸点溶媒が用いられるため、その製造過程で溶媒を完全に除去することは難しく、通常、0.001質量%以上である。
本発明において、残留溶媒量Sとは、熱重量−示差熱(TG−DTA)測定装置を用いて行われ、測定対象とする透明樹脂フィルム(試料)を、室温から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、120℃で5分間保持することにより吸着水を除去した後、400℃まで10℃/分の昇温速度で昇温(加熱)しながら測定した質量変化の結果において、120℃から250℃にかけての質量減少率S(質量%)を数式(2)に従い算出される値である。
S(質量%)=100−(W1/W0)×100 (2)
〔数式(2)中、W0は120℃で5分間保持した後の試料の質量であり、W1は250℃における試料の質量である〕。
残留溶媒量Sは、透明樹脂フィルムを形成するための樹脂ワニスに含まれる溶媒量、溶媒種、樹脂ワニスから製膜した塗膜の乾燥条件(乾燥温度および時間、風速等)等を調整することにより制御することができる。
透明樹脂フィルムの厚みは、透明樹脂フィルムの用途等に応じて適宜決定すればよいが、通常、10〜500μmであり、好ましくは15〜200μmであり、より好ましくは20〜100μmである。透明樹脂フィルムの厚みが上記範囲内にあると、透明樹脂フィルムの屈曲性が良好である。
本発明の積層体は、上記透明樹脂フィルムに貼合された保護フィルムを含む。保護フィルムは、透明樹脂フィルムの一方の面のみに貼合されていてもよく、両面に貼合されていてもよい。透明樹脂フィルムに貼合される保護フィルムは、通常、透明樹脂フィルムの表面を一時的に保護するためのフィルムであり、透明樹脂フィルムの表面を保護できる剥離可能なフィルムである限り特に限定されない。例えば、ポリエチレン、ポリプロピレンフィルムなどのポリオレフィン系樹脂フィルム等が挙げられる。透明樹脂フィルムの両面に保護フィルムが貼合されている場合、各面の保護フィルムは互いに同じであってもよく、異なっていてもよい。
本発明の積層体において、透明樹脂フィルムと接する保護フィルム表面の算術平均うねりWaは30nm以下である。算術平均うねりWaは、うねりの高さ方向の大きさ(振幅)を表すパラメータである。本発明においては、干渉顕微鏡で保護フィルムの表面形状を測定後、測定データをフーリエ変換し、短波長成分を除去(カットオフ値:20μm)して得られる二次元のうねり波形から求められ、数式(1)に従って算出される値である。外観不良として視認される表面凹凸は数十μm周期のうねりから成ることから、干渉顕微鏡の測定領域の範囲はx方向、y方向ともに60μm以上100μm以下である。なお、詳細には、後述する実施例に記載の方法に従って算出される。
数式(1):
Figure 2019137035
〔数式(1)中、Zw(x,y)は、保護フィルム表面の二次元の高さデータから、カットオフ値20μm、振幅伝達率が50%のガウシアンフィルタを用いて得られる表面うねりの各点の高さを表し、l,lはそれぞれx,y方向の測定領域の範囲を表す。〕
透明樹脂フィルムと接する保護フィルム表面の算術平均うねりWaが30nm以下であると、残留溶媒を含む透明樹脂フィルムと貼合された際に、透明樹脂フィルム上の表面凹凸の発生を抑制することができる。したがって、本発明において、保護フィルムの算術平均うねりWaは、好ましくは29nm以下、より好ましくは28nm以下、さらに好ましくは27nm以下である。保護フィルムの算術平均うねりWaの下限値は、特に制限されるものではないが、通常、5nm以上である。
保護フィルムの算術平均うねりWaは、保護フィルムの成形時の製造条件(温度、線速、ニップロールの表面うねり、ニップ圧等)により制御し得る。例えば、成形温度を低くすると算術平均うねりWaは小さくなる傾向にあり、線速を上げたり、ニップ圧を低くしたりすることによっても、算術平均うねりWaが小さくなる傾向にある。また、成形後の保護フィルムの保管条件(温度、湿度、保管時間)によっても制御することができる。市販の保護フィルムを使用する場合には、透明樹脂フィルムと貼合する前に用いる保護フィルムの算術平均うねりWaを測定することで、適当なものを選別することも可能である。
本発明の積層体において保護フィルムは、基材フィルムとその上に積層される、例えばアクリル系粘着剤、エポキシ系粘着剤、ウレタン系粘着剤、シリコーン系粘着剤等から形成される粘着剤層とから構成されていてもよいが、コストを削減し得る観点からは、ポリオレフィン系樹脂等の自己粘着性を有する樹脂フィルムであることが好ましく、具体的には、ポリオレフィン系樹脂フィルムが好ましい。入手しやすく安価であることから、より好ましくはポリプロピレン系樹脂フィルムまたはポリエチレン系樹脂フィルムであり、さらに好ましくはポリエチレン系樹脂フィルムである。また、ポリエチレン系樹脂としては、例えば高圧法低密度ポリエチレン(LDPE)、直鎖状短鎖分岐ポリエチレン(LLDPE)、中低圧法高密度ポリエチレン(HDPE)、超低密度ポリエチレン(VLDPE)などが挙げられるが、透明樹脂フィルムと隣り合う面の樹脂としては、透明樹脂フィルムとの接着性、ならびに加工性の観点から、LLDPEであることが好ましい。なお、透明樹脂フィルムの両面に保護フィルムが貼合されている場合、各面の保護フィルムは互いに同じであってもよく、異なっていてもよいが、少なくとも一方の面に貼合される保護フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムであることが好ましい。
透明樹脂フィルム中に溶媒が存在する場合、溶媒中に保護フィルムに含まれる低分子成分が溶出することにより、保護フィルムと貼合された透明保護フィルムの表面に白化が生じやすくなる。ここで、本発明において、保護フィルムに含まれる「低分子成分」とは、下記条件に従い、測定温度140℃におけるゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して得られるチャートのLog Mが2.82から3.32までの範囲に検出される成分を意味する。
<ゲル浸透クロマトグラフィーの測定条件>
カラム:PLgel Individual(5μm、50Å、7.5mm ID×30cm、アジレントテクノロジー製)1本と、TSKgel GMHHR−H(S)HT(7.5mm ID×30cm、東ソー(株)製)2本を連結
移動相:オルトジクロロベンゼン(和光、特級)にBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を0.1w/V%添加して使用
流速:1mL/分
カラムオーブン温度:140℃
オートサンプラー温度:140℃
システムオーブン温度:40℃
検出:示差屈折率検出器(RID)
RIDセル温度:140℃
試料溶液注入量:300μL
GPCカラム較正用標準物質溶液:東ソー(株)製標準ポリスチレン
なお、ゲル浸透クロマトグラフィーのより詳細な測定条件は、後述する実施例に記載する。
上記低分子成分は、具体的には、保護フィルム中、または保護フィルムが基材フィルムとその上に積層される粘着剤層とからなる場合には粘着剤層中に含有される残存モノマー、オリゴマーおよび添加剤やフィルム原料等に由来する成分であると考えられる。保護フィルムに含まれる低分子成分としては、例えば、核剤、酸化防止剤、塩酸吸収剤、耐熱安定剤、光安定剤、紫外線吸収剤、滑剤、アンチブロッキング剤、帯電防止剤、難燃剤、顔料、染料、分散剤、銅害防止剤、中和剤、発泡剤、可塑剤、気泡防止剤、架橋剤、過酸化物などの流れ性改良剤、ウェルド強度改良剤等に由来する成分が、保護フィルム上に積層される粘着剤層に含まれる低分子成分としては、例えば、粘着付与樹脂および軟化剤等に由来する成分などが挙げられる。
本発明において、保護フィルムに含まれる低分子成分の含有量は、上記ゲル浸透クロマトグラフィーの測定条件に従い、測定温度140℃におけるゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して得られるチャートの全面積に対するLog Mが2.82から3.32までの面積の割合として定義される低分子成分量W(%)が、好ましくは0.4%以下であり、より好ましくは0.38%以下であり、さらに好ましくは0.35%以下である。低分子成分量Wが上記上限値以下であると、保護フィルムに含まれる低分子成分の透明樹脂フィルムへの転写が生じ難くなり、光学用の透明樹脂フィルム表面を保護するための保護フィルムとして好適である。また、低分子成分量Wの下限値は特に限定されるものではないが、光学分野で用いられる保護フィルムは、一般に、先に例示したような添加剤や原料に由来する低分子成分を含有しているため、通常、0.001%以上である。
本発明において、保護フィルムにおける算術平均うねりWa(nm)と低分子成分量W(%)との積(Wa×W)が、14以下であることが好ましく、12以下であることがより好ましく、10以下であることがさらに好ましい。Wa(nm)と低分子成分量W(%)との積が、前記上限値以下であると、該保護フィルムを貼合した透明樹脂フィルムの表面凹凸の発生を抑えるとともに、白化を抑制することができるため、高い透明性を有し、外観に優れた積層体となり、光学用途に好適に用いることができる。
保護フィルムの厚みは、特に限定されるものではないが、透明樹脂フィルムの保護の観点から、通常、10μm以上であり、好ましくは20μm以上であり、より好ましくは25μm以上である。一方、フィルムハンドリングの観点から、300μm以下であることが好ましい。透明樹脂フィルムの両面に保護フィルムが貼合されている場合、各面の保護フィルムの厚みは同じであってもよく、異なっていてもよい。
本発明の積層体は、保護フィルムを貼合した透明樹脂フィルム表面の凹凸の発生および白化を抑制する効果に優れる。このため、本発明の積層体を構成する透明樹脂フィルムのヘイズは、好ましくは1.0%以下であり、より好ましくは0.7%以下であり、さらに好ましくは0.5%以下である。また、本発明の積層体を構成する透明樹脂フィルムの全光線透過率は、好ましくは85%以上であり、より好ましくは87%以上であり、さらに好ましくは90%以上である。さらに、本発明の積層体を構成する透明樹脂フィルムの黄色度は、好ましくは3.0以下であり、より好ましくは2.5以下であり、さらに好ましくは2.2以下である。積層体を構成する透明樹脂フィルムのヘイズや全光線透過率が上記範囲にあると、高い透明性を求められる光学用途に好適な積層体となる。加えて、本発明の積層体から保護フィルムを剥離して用いられる透明樹脂フィルムは、フィルム表面の凹凸や白化が生じ難く、透明性に優れるため、該透明樹脂フィルムを用いると、例えば、透過率の低い透明樹脂フィルムを用いた場合と比べて、一定の明るさを確保しやすくなり、表示素子等の発光強度を抑えることが可能となる。このため、表示素子等を有する表示装置の消費電力を削減することができる。また、透明樹脂フィルムの黄色度が低く、着色が抑えられていることからも本発明の積層体は光学用途に好適である。なお、本発明における「透明樹脂フィルムの白化」は、後述する実施例に記載する通り、光束3000ルーメンの高輝度ライトを照射することにより識別し得るものであり、「白化」の発生は、透明樹脂フィルムのヘイズや全光線透過率に必ずしも直接影響を与えるものではない。
本発明の積層体は、公知の方法および装置/設備を用いて、透明樹脂フィルムと保護フィルムとを貼合することにより製造することができる。具体的には、例えば、
透明樹脂フィルムを形成するための樹脂組成物を溶媒と混合および撹拌して得られる樹脂ワニスを支持基材上に塗布すること;
塗布された樹脂ワニスを乾燥させることにより溶媒を除去し、支持基材上に透明樹脂フィルムの層を形成すること;
支持基材上に形成された透明樹脂フィルムの支持基材とは反対側の面に保護フィルムを貼合すること;および
支持基材上に形成された透明樹脂フィルムの層から支持基材を剥離すること
を含む方法により製造することができる。
例えば、キャスト法に代表されるような、溶媒を含む樹脂ワニスを塗布して製膜した後、乾燥により溶媒を除去する工程を含む方法により連続的に透明樹脂フィルムを製造する場合、乾燥により溶媒を完全に除去することは難しく、透明樹脂フィルム中に溶媒が残存したまま次工程へ用いられることが多く、ある程度の量の残留溶媒が存在することにより、保護フィルムを貼合した際に、透明樹脂フィルムに表面凹凸や白化が生じやすくなる。
このような場合においても、所定の範囲の算術平均うねりWaを有する保護フィルムを用いることにより、また、透明樹脂フィルム中の残留溶媒量や保護フィルム中の低分子成分量を所定の範囲に制御することにより、保護フィルムを貼合した透明樹脂フィルム表面に生じる凹凸や白化を効果的に抑制することができる。
本発明の積層体が上記方法により製造される場合、樹脂ワニスを塗布する支持基材はフィルム状の基材であり、例えば、樹脂フィルム基材、スチール基材(例えばSUSベルト)であってもよい。樹脂フィルム基材としては、例えばポリエチレンテレフタレート(PET)フィルムがある。支持基材の厚みは、特に制限されず、例えば10〜500μmであり、好ましくは50〜300μmである。
塗膜の乾燥工程においては、樹脂ワニス中の溶媒が所望の範囲となるよう、乾燥により溶媒を除去することが好ましい。溶媒を除去するための乾燥は、自然乾燥、通風乾燥、加熱乾燥または減圧乾燥およびこれらの組み合わせにより行ってもよい。生産効率等の観点からは、加熱乾燥が好ましい。乾燥条件は用いる溶媒の種類やフィルム中の溶媒含有量等に応じて、透明樹脂フィルムの光学特性を損なわない範囲で適宜決定すればよい。例えば、50〜300℃、好ましくは70〜250℃の温度で、例えば5〜100分程度加熱してもよい。
次いで、上記式(1)の関係を満たす低分子成分量の保護フィルムを透明樹脂フィルムの支持基材とは反対側の面に貼合し、支持基材上に透明樹脂フィルムの層が形成され、さらに該透明樹脂フィルムの層上に保護フィルムが積層された積層フィルムが得られる。その後、透明樹脂フィルムの層から支持基材を剥離することにより、透明樹脂フィルムに保護フィルムを貼合した積層フィルムを得ることができる。また、必要に応じて、支持基材を剥離した透明樹脂フィルムの表面に保護フィルムを貼合してもよく、さらに、得られた積層フィルムをロール状に巻回する工程、支持基材を剥離した透明樹脂フィルムをさらに乾燥させるための乾燥工程、および/または、フィルムの平滑性を向上させるための面直し工程等を施してもよい。
本発明の積層体は、保護フィルムを貼合した透明樹脂フィルムの表面における凹凸の発生および白化を抑制することができ、高い透明性および良好な外観を有するため、特に、各種画像表示装置のディスプレイ等の光学用途に好適に用いることができる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記ない限り、質量%および質量部である。また、実施例および比較例で用いた保護フィルムの算術平均うねりおよび低分子成分量、透明樹脂フィルムの残留溶媒量、全光線透過率、ヘイズおよび黄色度は、それぞれ、下記方法に従い測定、算出した。結果を表1に示す。
<算術平均うねりWaの測定方法>
(1)表面形状の測定(干渉顕微鏡)
菱化システム社製Mircomapを用いて5倍の倍率で保護フィルムの表面形状を測定した。得られた測定範囲はx方向93.59μm、y方向70.25μmである。
(2)算術平均うねりWaの算出
得られた表面形状データから、菱化システム社製Mircomap付属のソフトウェアSX−Viewerを用いて、カットオフλcを20μm、サンプリング値3の条件にてフーリエ変換を実施し、算術平均うねりWaを得た。
<残留溶媒量Sの測定方法>
熱重量−示差熱(TG−DTA)測定
TG−DTAの測定装置として、日立ハイテクサイエンス社製TG/DTA6300を用いた。作製した透明ポリイミド系フィルムから約20mgの試料を取得した。この試料を、室温から120℃まで10℃/分の昇温速度で昇温し、120℃で5分間保持した後、400℃まで10℃/分の昇温速度で昇温(加熱)しながら、試料の質量変化を測定した。図1は、後述の実施例1で作製した透明ポリイミド系フィルムのTG−DTA測定結果を示す。
TG−DTA測定結果から、120℃から250℃にかけての質量減少率S(質量%)を数式(2)に従い算出した。
S(質量%)=100−(W1/W0)×100 (2)
〔数式(2)中、W0は120℃で5分間保持した後の試料の質量であり、W1は250℃における試料の質量である〕。
算出された質量減少率Sを、透明樹脂フィルム中の残留溶媒量S(質量%)とした。
<低分子成分量の測定方法>
低分子成分量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求められる。GPC測定は下記の条件で行う。低分子成分量はゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)法により求められる。得られたクロマトグラムについて、試験対象溶液と参照溶液との屈折率差に由来する電気信号値(強度Y)を、ポリスチレン換算分子量Log Mに対しプロットしたチャートを得た。このチャートについて、Log Mが2.82、および7.61の点を結んだ線をベースラインとして規定した。またベースラインにより補正された強度Y値がマイナスとなった部分については、0とした。
(1)試料溶液調製条件
溶媒:オルトジクロロベンゼン(和光、特級)にBHT(ジブチルヒドロキシトルエン)を0.1w/V%添加して使用
試料溶液濃度:1mg/mL
溶解用自動振とう器:DF−8020(東ソー(株)製)
溶解条件:5mgの試料を1000メッシュのSUS製の金網袋に封入し、試料を封入した金網袋を試験管に入れた後、試験管に5mLの溶媒を加えた。次いで、アルミホイルで蓋をした試験管をDF−8020にセットし、60往復/分の撹拌速度で140℃、120分間撹拌した。
(2)測定条件
(GPC装置およびソフトウェア)
測定装置:東ソー(株)製 HLC−8121 GPC/HT
測定ソフト:GPC−8020 model II データ収集 Version 4.32(東ソー(株)製)
解析ソフト:GPC−8020 model II データ解析 Version 4.32(東ソー(株)製)
(測定条件)
GPCカラム:PLgel Individual(5μm、50Å、7.5mm ID×30cm、アジレントテクノロジー製)1本と、TSKgel GMHHR−H(S)HT(7.5mm ID×30cm、東ソー(株)製)2本を連結
移動相:オルトジクロロベンゼン(和光、特級)にBHTを0.1w/V%添加して使用
流速:1mL/分
カラムオーブン温度:140℃
オートサンプラー温度:140℃
システムオーブン温度:40℃
検出:示差屈折率検出器(RID)
RIDセル温度:140℃
試料溶液注入量:300μL
GPCカラム較正用標準物質溶液:東ソー(株)製標準ポリスチレンをそれぞれ下表のような質量で秤り取り、5mLのオルトジクロロベンゼン(移動相と同じ組成)を加え、室温で完全に溶解させて調製。
Figure 2019137035
GPC測定結果から、低分子成分量W(%)を数式(3)によって算出した。
W(%)= V0/V1 (3)
〔数式(3)中、V0は、GPC測定から得られたチャートにおけるLog Mが2.82から3.32までの面積であり、V1はチャート全体の面積である〕。
<全光線透過率>
透明樹脂フィルムの全光線透過率は、JIS K7105:1981に準拠して、スガ試験機(株)製の全自動直読ヘーズコンピューターHGM−2DPにより測定した。
<ヘイズ>
透明樹脂フィルムのヘイズは、JIS K7105:1981に準拠して、スガ試験機(株)製の全自動直読ヘーズコンピューターHGM−2DPにより測定した。
<黄色度>
透明樹脂フィルムの黄色度は、紫外可視近赤外分光光度計(日本分光(株)製V−670)を用いて、三刺激値(X,Y,Z)を求め、計算式(4)に代入することにより算出した。
黄色度=100×(1.2769X−1.0592Z)/Y (4)
製造例1:透明ポリイミド系高分子の調製
セパラブルフラスコにシリカゲル管、攪拌装置および温度計を取り付けた反応器と、オイルバスとを準備した。このフラスコ内に、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸無水物(6FDA)75.52gと、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル(TFMB)54.44gとを投入した。これを400rpmで攪拌しながらN,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)519.84gを加え、フラスコの内容物が均一な溶液になるまで攪拌を続けた。続いて、オイルバスを用いて容器内温度が20〜30℃の範囲になるように調整しながらさらに20時間攪拌を続け、反応させてポリアミック酸を生成させた。30分後、撹拌速度を100rpmに変更した。20時間攪拌後、反応系温度を室温に戻し、DMAc649.8gを加えてポリマー濃度が10重量%となるように調整した。さらに、ピリジン32.27g、無水酢酸41.65gを加え、室温で10時間攪拌してイミド化を行った。反応容器からポリイミドワニスを取り出した。得られたポリイミドワニスをメタノール中に滴下して再沈殿を行い、得られた粉体を加熱乾燥して溶媒を除去し、固形分として透明ポリイミド系高分子を得た。得られたポリイミド系高分子のGPC測定を行ったところ、重量平均分子量は360,000であった。
製造例2:透明ポリアミドイミド系高分子の調製
窒素ガス雰囲気下、撹拌翼を備えた1Lセパラブルフラスコに、TFMB50g(156.13mmol)およびDMAc642.07gを加え、室温で撹拌しながらTFMBをDMAcに溶解させた。次に、フラスコに6FDA20.84g(46.91mmol)を添加し、室温で3時間撹拌した。その後、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)(OBBC)9.23g(31.27mmol)、次いでテレフタロイルクロリド(TPC)15.87g(78.18mmol)をフラスコに加え、室温で1時間撹拌した。次いで、フラスコに4−メチルピリジン9.89g(106.17mmol)と無水酢酸14.37g(140.73mmol)とを加え、室温で30分間撹拌後、オイルバスを用いて70℃に昇温し、さらに3時間撹拌し、反応液を得た。
得られた反応液を室温まで冷却し、大量のメタノール中に糸状に投入し、析出した沈殿物を取り出し、メタノールで6時間浸漬後、メタノールで洗浄した。次に、100℃にて沈殿物の減圧乾燥を行い、透明ポリアミドイミド系高分子を得た。得られたポリアミドイミド系高分子のGPC測定を行ったところ、重量平均分子量は420,000であった。
製造例3:シリカゾルの調製
ゾル−ゲル法により作製されたBET径(BET法で測定された平均一次粒子径)27nmのアモルファスシリカゾルを原料とし、溶媒置換により、γ−ブチロラクトン(以下、GBLと表記することもある)置換シリカゾルを調製した。得られたゾルを目開き10μmのメンブレンフィルターでろ過し、GBL置換シリカゾルを得た。得られたGBL置換シリカゾルは、いずれもシリカ粒子が30〜32質量%であった。
実施例1:積層体の作製
上記製造例1により得られた透明ポリイミド系高分子を、γ−ブチロラクトン(GBL)とDMAcを1:9で混合した混合溶媒中に、16.5%の濃度で溶解して樹脂ワニスを得た。得られた樹脂ワニスを、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材(厚み188μm、東洋紡(株)製)上に流涎成形により塗布して製膜した。その後、50℃で30分、140℃で10分加熱することによって塗膜を乾燥し、塗膜からPET基材を剥離した。その後、200℃で12分加熱することで、厚み約80μmの透明ポリイミド系フィルムを得た。得られた透明ポリイミド系フィルムの残溶媒量は1質量%であった。
次いで、保護フィルムとして、東レフィルム加工(株)製 トレテック(登録商標) N−711(ポリエチレン系保護フィルム)を準備した。前記保護フィルムの低分子成分量は、0.33%であった。作製した透明ポリイミド系フィルムに、ローラーを用いて貼合し、積層体を作製した。
<オレンジピールの評価>
得られた積層体の、保護フィルムと貼合した透明ポリイミド系フィルムの表面状態を確認した。得られた積層体を100mm角に切り出し、温度23℃、相対湿度50%の環境にて10日間静置した。その後、保護フィルムを剥離し、保護フィルムが貼合されていた透明ポリイミド系フィルムの表面を蛍光灯下で目視評価した。結果を表2に示す。
<オレンジピールの評価基準>
1:凹凸が視認されない
2:凹凸が弱く視認される
3:凹凸がやや強く視認される
4:凹凸が強く視認される
<白化の評価>
得られた透明ポリイミド系フィルムの白化を確認した。
実施例1にて作製した積層体を100mm角に切り出し、温度23℃、湿度50%の環境にて3日間静置した。その後、貼りあわせた保護フィルムを剥離し、保護フィルムが貼合してあった透明ポリイミド系フィルムの表面を、クリーンウェスで擦った。その後、POLARION社製 HIDポータブルサーチライトPS−X1(光束3400ルーメン)を用いて、下記評価基準に従いフィルムの外観(白化)を評価した。結果を表2に示す。
<白化の評価基準>
○:白化が確認できなかった
×:ポリイミド系フィルムの表面に白化が確認できた
実施例2
製造例1により得られた透明ポリイミド系高分子を、γ−ブチロラクトン(GBL)とDMAcを1:9で混合した混合溶媒中に、16.5%の濃度で溶解して樹脂ワニスを得た。得られた樹脂ワニスを、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材(厚み188μm、東洋紡(株)製)上に流涎成形により塗布して製膜した。その後、50℃で30分、140℃で10分加熱することによって塗膜を乾燥し、塗膜からPET基材を剥離して、厚み約80μmの透明ポリイミド系フィルムを得た。得られた透明ポリイミド系フィルムの残溶媒量は10質量%であった。これを透明樹脂フィルムとして用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。実施例1と同様の方法により、フィルムの外観(オレンジピール、白化)および光学特性を評価した。結果を表2に示す。
実施例3
保護フィルムとして、ポリプロピレン系保護フィルム トレファン(登録商標) BO 25−MK01(東レ(株)製、低分子成分量:0.04%)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。実施例1と同様の方法により、フィルムの外観(オレンジピール、白化)および光学特性を評価した。結果を表2に示す。
実施例4
保護フィルムとして、ポリプロピレン系保護フィルム トレファン(登録商標) BO 25−MK01(東レ(株)製、低分子成分量:0.04%)を用いた以外は、実施例2と同様の方法により積層体を得た。実施例1と同様の方法により、フィルムの外観(オレンジピール、白化)および光学特性を評価した。結果を表2に示す。
実施例5
製造例2により得られた透明ポリアミドイミド系高分子を、DMAc溶媒中に、10%の濃度で溶解して樹脂ワニスを得たこと以外は、実施例2と同様の方法により積層体を得た。実施例1と同様の方法により、フィルムの外観(オレンジピール、白化)および光学特性を評価した。結果を表2に示す。
実施例6
製造例2にて得られた透明ポリアミドイミド系高分子をGBLに溶解し、製造例3にて得られたGBL置換シリカゾルを加えて十分に混合することで、表2に記載の組成である透明ポリアミドイミド系高分子/シリカ粒子混合ワニス(以下、混合ワニスと称することがある)を得た。その際、ポリアミドイミド系高分子/シリカ粒子濃度(樹脂とシリカ粒子の総質量に対する濃度)が10質量%となるように混合ワニスを調製した。その後、得られた混合ワニスを、ポリエチレンテレフタレート(PET)フィルム基材(厚み188μm、東洋紡(株)製(製品名:コスモシャイン(登録商標)) A4100))上に流涎成形により塗布して製膜した。その後、50℃で30分、140℃で10分加熱することによって塗膜を乾燥し、塗膜からPET基材を剥離して、厚み50μmの透明樹脂フィルムを得た。得られた透明樹脂フィルムの残溶媒量は14質量%であった。これを透明樹脂フィルムとして用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。実施例1と同様の方法により、フィルムの外観(オレンジピール、白化)および光学特性を評価した。結果を表2に示す。
実施例7
保護フィルムとして、ポリプロピレン系保護フィルム トレファン(登録商標) BO 25−MK01(東レ(株)製、低分子成分量:0.04%)を用いた以外は、実施例6と同様の方法により積層体を得た。実施例1と同様の方法により、フィルムの外観(オレンジピール、白化)および光学特性を評価した。結果を表2に示す。
実施例8
製造例2により得られた透明ポリアミドイミド系高分子を、DMAc溶媒中に、12%の濃度で溶解して樹脂ワニスを得て、塗膜の乾燥条件を、70℃で30分、140℃で15分加熱に変更した以外は、実施例2と同様の方法により積層体を得た。実施例1と同様の方法により、フィルムの外観(オレンジピール、白化)および光学特性を評価した。結果を表2に示す。
実施例9
塗膜からPET基材を剥離したのち、200℃で14時間加熱したこと以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。得られた透明樹脂系フィルムの厚みは79μm、残溶媒量は0.024質量%であった。実施例1と同様の方法により、フィルムの外観(白化)を評価した。結果を表2に示す。
比較例1
保護フィルムとして、ポリエチレン系保護フィルム トレテック(登録商標) 7832C(東レフィルム加工(株)製、低分子成分量:0.48%)を用いた以外は、実施例1と同様の方法により積層体を得た。実施例1と同様の方法により、フィルムの外観(オレンジピール、白化)および光学特性を評価した。結果を表2に示す。
比較例2
保護フィルムとして、ポリエチレン系保護フィルム トレテック(登録商標) 7832C(東レフィルム加工(株)製、低分子成分量:0.48%)を用いた以外は、実施例2と同様の方法により積層体を得た。実施例1と同様の方法により、フィルムの外観(オレンジピール、白化)および光学特性を評価した。結果を表2に示す。
比較例3
保護フィルムとして、ポリエチレン系保護フィルム トレテック(登録商標) 7332K(東レフィルム加工(株)製、低分子成分量:0.50%)を用いた以外は、実施例2と同様の方法により積層体を得た。実施例1と同様の方法により、フィルムの外観(オレンジピール、白化)および光学特性を評価した。結果を表2に示す。
比較例4
保護フィルムとして、ポリエチレン系保護フィルム トレテック(登録商標) 7832C(東レフィルム加工(株)製、低分子成分量:0.48%)を用いた以外は、実施例6と同様の方法により積層体を得た。実施例1と同様の方法により、フィルムの外観(オレンジピール、白化)および光学特性を評価した。結果を表2に示す。
Figure 2019137035

Claims (6)

  1. ポリイミドおよびポリアミドイミドからなる群から選択される少なくとも1種および溶媒を含んでなる透明樹脂フィルムと、前記透明樹脂フィルムの少なくとも一方の面に貼合された保護フィルムとを含んでなる積層体であって、
    数式(1):
    Figure 2019137035
    〔数式(1)中、Zw(x,y)は、保護フィルム表面の二次元の高さデータから、カットオフ値20μm、振幅伝達率が50%のガウシアンフィルタを用いて得られる表面うねりの各点の高さを表し、l,lはそれぞれx,y方向の測定領域の範囲を表す〕
    に従って算出される、透明樹脂フィルムと接する保護フィルム表面の算術平均うねりWaが30nm以下であり、
    前記ポリイミドおよびポリアミドイミドが、式(10):
    Figure 2019137035
    〔式(10)中、Gは4価の有機基を表し、Aは2価の有機基を表す〕
    で表される繰り返し構造単位を含む重合体である、積層体。
  2. 透明樹脂フィルムの、熱重量−示差熱測定による120℃から250℃における質量減少率として算出される残留溶媒量Sが0.001質量%以上である、請求項1に記載の積層体。
  3. 保護フィルムの、測定温度140℃におけるゲル浸透クロマトグラフィーにより測定して得られるチャートの全面積に対するLog Mが2.82から3.32までの面積の割合として定義される低分子成分量Wが0.4%以下である、請求項1または2に記載の積層体。
  4. 透明樹脂フィルムが1種類以上の溶媒を含み、当該溶媒の中で最も沸点が高い溶媒の沸点が120〜300℃である、請求項1〜3のいずれかに記載の積層体。
  5. 透明樹脂フィルムが、N,N−ジメチルアセトアミド、γ−ブチロラクトン、N−メチルピロリドン、シクロペンタノン、酢酸ブチルおよび酢酸アミルからなる群から選択される溶媒を少なくとも1つ含む、請求項1〜4のいずれかに記載の積層体。
  6. 保護フィルムがポリオレフィン系樹脂フィルムである、請求項1〜5のいずれかに記載の積層体。
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