JP2020019935A - ポリアミド系樹脂粉体の製造方法およびポリアミド系樹脂組成物 - Google Patents

ポリアミド系樹脂粉体の製造方法およびポリアミド系樹脂組成物 Download PDF

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久照 宮本
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Abstract

【課題】ポリアミド系樹脂の粉体を効率的に製造しやすいポリアミド系樹脂粉体の製造方法を提供する。【解決手段】ポリアミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリアミド系樹脂溶液(a)を、前記ポリアミド系樹脂に対する少なくとも2種の貧溶媒と接触させることを含み、前記ポリアミド系樹脂溶液(a)と第1の貧溶媒とを接触させてポリアミド系樹脂溶液(b)を得る工程、および、得られたポリアミド系樹脂溶液(b)に第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる工程を含む、ポリアミド系樹脂粉体の製造方法。【選択図】なし

Description

本発明は、ポリアミド系樹脂粉体の製造方法およびポリアミド系樹脂組成物に関する。
現在、液晶表示装置や有機EL表示装置等の画像表示装置は、テレビのみならず、携帯電話やスマートウォッチといった種々の用途で広く活用されている。こうした用途の拡大に伴い、フレキシブル特性を有する画像表示装置(フレキシブルディスプレイ)が求められている。
画像表示装置は、液晶表示素子または有機EL表示素子等の表示素子の他、偏光板や位相差板および前面板等の構成部材から構成される。フレキシブルディスプレイを達成するためには、これら全ての構成部材が柔軟性を有する必要がある。
これまで前面板としてはガラスが用いられている。ガラスは、透明度が高く、ガラスの種類によっては高硬度を発現できる反面、非常に剛直であり、割れやすいため、フレキシブルディスプレイの前面板材料としての利用は難しい。
そのため、ガラスに代わる材料として高分子材料の活用が検討されている。高分子材料からなる前面板はフレキシブル特性を発現し易いため、種々の用途に用いることが期待できる。柔軟性を有する樹脂としては種々のものが挙げられるが、例えばポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂がある。
ポリアミド系樹脂およびポリイミド系樹脂を使用して全面板等の部材を製造する場合、取り扱い性の容易さのためにこれら樹脂の粉体が使用されている。例えば特許文献1には、特定の平均粒子径を有し、450nmにおける光線透過率が80%以上であるフィルムを得ることができるポリイミド粉体が開示されている。
国際公開第2017/179367号
特許文献1には、ポリイミド溶液にポリイミドの貧溶媒を加えてポリイミドを析出させて粉体を形成させるポリイミド粉体の製造方法が記載されている。しかしながら、本発明者の検討によれば、ポリアミド系樹脂の場合には、単に貧溶媒を加えるだけではポリアミド系樹脂の粉体を得られない場合があることがわかった。
したがって、本発明の目的は、ポリアミド系樹脂の粉体を効率的に製造しやすいポリアミド系樹脂粉体の製造方法を提供することである。
本発明者は、上記課題を解決すべく、貧溶媒の種類や添加方法に着目し、鋭意検討を行った。その結果、ポリアミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリアミド系樹脂溶液(a)を、前記ポリアミド系樹脂に対する少なくとも2種の貧溶媒と接触させることを含むポリアミド系樹脂粉体の製造方法によって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。
すなわち、本発明は以下の好適な態様を含む。
〔1〕ポリアミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリアミド系樹脂溶液(a)を、前記ポリアミド系樹脂に対する少なくとも2種の貧溶媒と接触させることを含み、前記ポリアミド系樹脂溶液(a)と第1の貧溶媒とを接触させてポリアミド系樹脂溶液(b)を得る工程、および、得られたポリアミド系樹脂溶液(b)に第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる工程を含む、ポリアミド系樹脂粉体の製造方法。
〔2〕ポリアミド系樹脂溶液(a)と第1の貧溶媒とを接触させてポリアミド系樹脂溶液(b)を得る工程は、第1の貧溶媒をポリアミド系樹脂溶液(a)に添加することにより行う、前記〔1〕に記載の製造方法。
〔3〕第2の貧溶媒は水を主成分とする溶媒である、前記〔1〕または〔2〕に記載の製造方法。
〔4〕第1の貧溶媒は、炭素数1〜4のアルコールを主成分とする溶媒である、前記〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の製造方法。
〔5〕ポリアミド系樹脂溶液(a)中のポリアミド系樹脂の量をX(kg)、良溶媒の量をY(kg)とし、前記ポリアミド系樹脂溶液と接触させる第1の貧溶媒の量をZ(kg)、第2の貧溶媒の量をZ(kg)とした場合に、各成分の質量比が関係式(i)〜(iii):
Figure 2020019935
を満たす、前記〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の製造方法。
〔6〕第2の貧溶媒の添加速度(kg/分)と、前記ポリアミド系樹脂溶液(b)中の良溶媒の量(kg)とが、関係式(iv):
Figure 2020019935
を満たす、前記〔5〕に記載の製造方法。
〔7〕第2の貧溶媒を少なくとも1本のノズルから添加し、前記ノズルの内径断面積(mm)と前記ノズル1本当たりの第2の貧溶媒の添加速度(kg/分)とが、関係式(v):
Figure 2020019935
を満たす、前記〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の製造方法。
〔8〕ポリアミド系樹脂を析出させる工程の後、得られた混合物をろ過してポリアミド系樹脂組成物を得る工程をさらに含み、該ポリアミド系樹脂組成物における貧溶媒の含有量が、該ポリアミド系樹脂組成物の総質量に対して5質量%以上であり、かつ、良溶媒の含有量が、該ポリアミド系樹脂組成物の総質量に対して1質量%以下である、前記〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の製造方法。
〔9〕ポリアミド系樹脂と、該ポリアミド系樹脂に対する貧溶媒および良溶媒とを含むポリアミド系樹脂組成物であって、ポリアミド系樹脂組成物の総質量に対して、貧溶媒の含有量が5質量%以上であり、かつ、良溶媒の含有量が1質量%以下である、ポリアミド系樹脂組成物。
本発明のポリアミド系樹脂粉体の製造方法によれば、ポリアミド系樹脂の粉体を効率的に製造することができる。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
本発明のポリアミド系樹脂粉体の製造方法(以下において「本発明の製造方法」とも称する)は、ポリアミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリアミド系樹脂溶液(a)を、前記ポリアミド系樹脂に対する少なくとも2種の貧溶媒と接触させることを含み、前記ポリアミド系樹脂溶液(a)と第1の貧溶媒とを接触させてポリアミド系樹脂溶液(b)を得る工程、および、得られたポリアミド系樹脂溶液(b)に第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる工程を含む製造方法である。
(ポリアミド系樹脂溶液(a))
少なくとも2種の貧溶媒と接触させる前のポリアミド系樹脂溶液(a)は、ポリアミド系樹脂が良溶媒中に溶解した溶液である。
ポリアミド系樹脂溶液(a)は、モノマーを溶媒(特にポリアミド系樹脂に対する良溶媒)中で重合させて得た反応溶液であってもよいし、単離したポリアミド系樹脂を良溶媒に溶解させて得た溶液であってもよい。ポリアミド系樹脂溶液(a)を製造しやすい観点からは、モノマーの重合反応を後述する良溶媒中で行い、得られた反応溶液をポリアミド系樹脂溶液(a)として用いることが好ましい。
ポリアミド系樹脂溶液(a)に含まれる良溶媒は、ポリアミド系樹脂を溶解させやすい溶媒であり、例えばポリアミド系樹脂に対する室温(20〜30℃)での溶解度が1質量%以上の溶媒をいう。ポリアミド系樹脂溶液(a)に含まれる良溶媒は、1種類の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合物であってもよい。良溶媒としては、例えば、アセトン、N,N−ジメチルホルムアミド(DMF)、ジメチルスルホキシド(DMSO)、γ−ブチロラクトン(GBL)、N,N−ジメチルアセトアミド(DMAc)が挙げられる。良溶媒のポリアミド系樹脂に対する溶解度は、容積効率の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。良溶媒のポリアミド系樹脂に対する溶解度の上限は特に限定されないが、貧溶媒の使用量を削減できる観点からは、好ましくは40質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
ポリアミド系樹脂溶液(a)における良溶媒の含有量は、操作上、扱いやすい粘度に調整しやすい観点から、ポリアミド系樹脂溶液(a)の総量に対して好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上である。また、ポリアミド系樹脂溶液(a)における良溶媒の含有量は、貧溶媒の使用量を削減できる観点から、ポリアミド系樹脂溶液(a)の総量に対して好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
ポリアミド系樹脂溶液(a)におけるポリアミド系樹脂の含有量は、容積効率の観点から、ポリアミド系樹脂溶液(a)の総量に対して好ましくは1質量%以上、より好ましくは3質量%以上である。また、ポリアミド系樹脂溶液(a)におけるポリアミド系樹脂の含有量は、操作上、扱いやすい粘度に調整しやすい観点から、ポリアミド系樹脂溶液(a)の総量に対して好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下である。
本発明のポリアミド系樹脂粉体の製造方法は、ポリアミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリアミド系樹脂溶液(a)を、ポリアミド系樹脂に対する少なくとも2種の貧溶媒と接触させることを含む。
ポリアミド系樹脂に対する貧溶媒は、ポリアミド系樹脂を溶解させにくい溶媒であり、例えばポリアミド系樹脂に対する室温(20〜30℃)での溶解度が1質量%未満の溶媒をいう。貧溶媒は、1種類の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合物であってもよい。貧溶媒としては、例えば、メタノール、2−プロパノール、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、水が挙げられる。
したがって、使用する溶媒が良溶媒であるか貧溶媒であるかは下記の方法で確認することができる。溶媒にポリアミド系樹脂を1質量%となるように加え、必要に応じて加熱・撹拌等することにより溶媒に樹脂を溶解させ、室温(20〜30℃)状態での溶液が均一に透明になっていれば該溶媒は良溶媒であると判断し、溶け残りが存在した場合や一度溶解した樹脂が析出した場合は、貧溶媒であると判断する。例えば本実施例においては、容器に溶媒を測りとり、撹拌し、そこに、1質量%になるようにポリアミド系樹脂を入れ、室温(24℃)で3時間撹拌を行った。その結果、溶液が均一に透明になっていれば良溶媒であり、溶け残りが存在した場合は貧溶媒であると判断した。
本発明の製造方法は、ポリアミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリアミド系樹脂溶液(a)を、前記ポリアミド系樹脂に対する少なくとも2種の貧溶媒と接触させることを含む。ここで、少なくとも2種類の貧溶媒と接触させるとは、互いに異なる貧溶媒と少なくとも2回接触させることを意味する。以下において、少なくとも2種類の貧溶媒を、第1の貧溶媒および第2の貧溶媒と称し、説明する。なお、第1および第2の貧溶媒の他に、3種類以上の貧溶媒を用いてもよい。また、第1の貧溶媒との接触および第2の貧溶媒との接触の間に、第3の貧溶媒との接触が行われてもよいが、ポリアミド系樹脂溶液(a)と接触させる貧溶媒が、ポリアミド系樹脂に対する溶解度が低くなる順序で接触させることが好ましい。
第1の貧溶媒および第2の貧溶媒は、ポリアミド系樹脂を溶解させにくい溶媒であり、それぞれ、1種類の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合物であってもよい。第1の貧溶媒と第2の貧溶媒とは、それぞれが互いに異なる1種類の物質であってもよいし、一方が1種類の物質で、他方が2種以上の物質の混合物であってもよいし、両方が2種以上の物質の混合物であってもよい。なお、第1の貧溶媒および第2の貧溶媒が、互いに混合割合においてのみ異なる2種以上の物質の混合物であってもよい。ポリアミド系樹脂を析出させやすい観点からは、第1の貧溶媒および第2の貧溶媒は、溶解度が互いに異なる1種類の溶媒であることが好ましい。
本発明の製造方法は、具体的には、ポリアミド系樹脂溶液(a)と第1の貧溶媒とを接触させてポリアミド系樹脂溶液(b)を得る工程、および、得られたポリアミド系樹脂溶液(b)に第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる工程を少なくとも含む。ここで、ポリアミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリアミド系樹脂溶液に貧溶媒を添加すると、溶媒全体としてのポリアミド系樹脂の溶解度が下がることにより、溶解しきれなくなったポリアミド系樹脂が粉体として析出する。貧溶媒の添加による溶解度の変化速度が速い場合、ポリアミド系樹脂が固体化し析出する速度が速くなる。析出速度が速すぎると、ポリアミド系樹脂の粉体に触媒や残モノマーといった不純物が混入しやすくなる。また、ポリアミド系樹脂と良溶媒との親和性の高さに起因して、析出したポリアミド系樹脂中に良溶媒が包含され、ゴム状の混合物となり、粉体が得られない場合がある。ポリアミド系樹脂溶液(a)と第1の貧溶媒とを接触させる工程、および、第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる工程を少なくとも含む本発明の製造方法によれば、ポリアミド系樹脂粉体の析出速度をコントロールすることができ、析出するポリアミド系樹脂粉体中に溶媒が包含されることを抑制できるため、ポリアミド系樹脂粉体を効率的に製造することができる。
まず、ポリアミド系樹脂溶液(a)と第1の貧溶媒とを接触させてポリアミド系樹脂溶液(b)を得る工程について説明する。ポリアミド系樹脂溶液(a)と第1の貧溶媒とを接触させる方法としては、これらが接触する限り特に限定されず、例えば、ポリアミド系樹脂溶液(a)に第1の貧溶媒を添加する方法、または、第1の貧溶媒にポリアミド系樹脂溶液(a)を添加する方法が挙げられる。粉体を得やすい観点からは、ポリアミド系樹脂溶液(a)と第1の貧溶媒とを接触させてポリアミド系樹脂溶液(b)を得る工程を、第1の貧溶媒をポリアミド系樹脂溶液(a)に添加することにより行うことが好ましい。また、添加速度を調整しやすい観点から、滴下により添加を行うことがより好ましい。なお、ポリアミド系樹脂溶液(b)中においては、少なくとも一部のポリアミド系樹脂が溶解した状態である限り、一部のポリアミド系樹脂が粉体として析出していてもよいし、全てのポリアミド系樹脂が溶解していてもよい。
第1の貧溶媒をポリアミド系樹脂溶液(a)に添加することにより接触を行う本発明の好ましい一態様において、第1の貧溶媒の添加速度(kg/分)と、ポリアミド系樹脂溶液(a)中の良溶媒の量(kg)とは、関係式(vi):
Figure 2020019935
を満たすことが好ましい。式(vi)の左辺により算出される値は、溶解度の急激な変化を防ぎやすい観点から、好ましくは100×10−3以下、より好ましくは70×10−3以下、さらに好ましくは50×10−3以下である。式(vi)の左辺により算出される値の下限値は特に限定されないが、ポリアミド系樹脂粉体の製造効率の観点からは、通常1×10−3以上程度である。
次に、本発明の製造方法は、上記のようにして得たポリアミド系樹脂溶液(b)に第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる工程を少なくとも含む。かかる工程では、ポリアミド系樹脂溶液(b)に第2の貧溶媒を添加することにより、ポリアミド系樹脂を析出させる。第2の貧溶媒を添加することによりポリアミド系樹脂を析出させやすい観点から、第2の貧溶媒のポリアミド系樹脂に対する溶解度は、第1の貧溶媒のポリアミド系樹脂に対する溶解度よりも低いことが好ましい。
第1の貧溶媒は、続く第2の貧溶媒を添加する工程においてポリアミド系樹脂を析出させやすい観点から、炭素数1〜4のアルコールを主成分とする溶媒であることが好ましい。なお、本明細書において、主成分とするとは、70質量%以上を占めることを意味する。第1の貧溶媒中の炭素数1〜4のアルコールの割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
第2の貧溶媒は、ポリアミド系樹脂を析出させやすい観点から、水を主成分とする溶媒であることが好ましい。第2の貧溶媒中の水の割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
第1および第2の貧溶媒と接触させる工程について、ポリアミド系樹脂溶液(a)中のポリアミド系樹脂の量をX(kg)、良溶媒の量をY(kg)とし、前記ポリアミド系樹脂溶液と接触させる第1の貧溶媒の量をZ(kg)、第2の貧溶媒の量をZ(kg)とした場合に、各成分の質量比が関係式(i)〜(iii):
Figure 2020019935
を満たすことが好ましい。
式(i)中のY/Xは、ポリアミド系樹脂溶液(a)中の良溶媒の量とポリアミド系樹脂の量との関係を表す。なお、良溶媒として2種以上の溶媒を使用する場合には、その合計重量をYとする。Y/Xは、ポリアミド系樹脂溶液(a)中でポリアミド系樹脂を溶解させ、取り扱いやすい粘度に調整しやすい観点から、好ましくは5以上、より好ましくは10以上、さらに好ましくは15以上である。Y/Xは、続く第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる工程において、ポリアミド系樹脂を析出させやすい観点から、好ましくは40以下、より好ましくは35以下、さらに好ましくは30以下である。
式(ii)中のZ/Xは、ポリアミド系樹脂溶液(a)中のポリアミド系樹脂の量と、ポリアミド系樹脂溶液と接触させる第1の貧溶媒の量との関係を表す。なお、第1の貧溶媒として2種以上の溶媒を使用する場合には、その合計重量をZとする。Z/Xは、続く第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる工程において、ポリアミド系樹脂の溶解度の急激な変化を抑制しやすい観点から、好ましくは10以上、より好ましくは15以上、さらに好ましくは20以上である。Z/Xは、第1の貧溶媒を添加する工程でポリアミド系樹脂が析出しすぎることを防止し、第2の貧溶媒を添加時に精度よくポリアミド系樹脂を粉体として析出させやすい観点から、好ましくは50以下、より好ましくは40以下、さらに好ましくは35以下である。
式(iii)中のZ/Xは、ポリアミド系樹脂溶液(a)中のポリアミド系樹脂の量と、ポリアミド系樹脂溶液と接触させる第2の貧溶媒の量との関係を表す。なお、第2の貧溶媒として2種以上の溶媒を使用する場合には、その合計重量をZとする。Z/Xは、ポリアミド系樹脂を粉体として析出させやすい観点から、好ましくは3以上、より好ましくは5以上、さらに好ましくは8以上である。Z/Xは、粉体を乾燥させる条件を和らげやすく、また廃液量を削減できる観点から、好ましくは30以下、より好ましくは25以下、さらに好ましくは22以下である。
ポリアミド系樹脂溶液(b)に第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる工程について、第2の貧溶媒の添加速度(kg/分)と、ポリアミド系樹脂溶液(b)中の良溶媒の量(kg)とは、関係式(iv):
Figure 2020019935
を満たすことが好ましい。第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる際、第2の貧溶媒の添加速度を、良溶媒の量との関係において上記の上限以下にすることにより、良溶媒中に溶解していたポリアミド系樹脂が析出する速度を、ポリアミド系樹脂が良溶媒を包含せずに析出する速度に調整しやすい。式(iv)の左辺により算出される値は、ポリアミド系樹脂を粉体として析出させやすい観点から、好ましくは50×10−3以下、より好ましくは30×10−3以下、さらに好ましくは20×10−3以下、よりさらに好ましくは15×10−3以下、特に好ましくは10×10−3以下である。式(iv)の左辺により算出される値の下限値は特に限定されないが、ポリアミド系樹脂粉体の製造効率の観点からは、通常1×10−3以上程度である。
ポリアミド系樹脂溶液(b)に第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる工程について、第2の貧溶媒の添加方法は特に限定されない。添加速度を調整しやすく、貧溶媒の局所的な濃度上昇を抑制しやすい観点からは、滴下により添加を行うことがより好ましい。ポリアミド系樹脂溶液(b)に添加された第2の貧溶媒に関し、添加方法にもよるが、添加直後は局所的に貧溶媒の濃度が高い部分が生じ、その後ポリアミド系樹脂溶液(b)全体に広がる。第2の貧溶媒の濃度が局所的に高くなりすぎると、局所的にポリアミド系樹脂粉体が急激に析出し、ポリアミド系樹脂粉体に不純物が混入しやすくなったり、固体化したポリアミド系樹脂が溶媒を包含することにより粉体を得にくくなったりする場合がある。そのため、できるだけ局所的な析出が生じないように添加方法や添加速度を選択することが、効率的に高い精度でポリアミド系樹脂粉体を析出させやすい観点から好ましい。
ポリアミド系樹脂溶液(b)に第2の貧溶媒を添加する方法としては、局所的なポリアミド系樹脂粉体の析出を抑制する観点からは、第2の貧溶媒の局所的な濃度上昇を抑制できる方法が好ましく、ポリアミド系樹脂粉体の製造効率を高めやすい観点からは、添加速度を早くできる方法が好ましい。これらの観点から、ポリアミド系樹脂溶液(b)に第2の貧溶媒を添加する好ましい方法としては、第2の貧溶媒を、例えば複数のノズルまたは複数の枝分かれを有するノズルを用いて、ライン分割して添加する方法、第2の貧溶媒の吐出口がポリアミド系樹脂溶液(b)中に浸漬された状態で添加を行うディップ法、ノズルの先に分散板を取り付ける方法などが挙げられる。
第2の貧溶媒の添加方法として、例えば少なくとも1本のノズルから第2の貧溶媒を添加してよい。この態様において、ノズルの内径断面積(mm)と前記ノズル1本当たりの第2の貧溶媒の添加速度(kg/分)とが、関係式(v):
Figure 2020019935
を満たすことが好ましい。式(v)の左辺により算出される値は、ポリアミド系樹脂を粉体として析出させやすい観点から、好ましくは0.14以下、より好ましくは0.07以下、さらに好ましくは0.05以下、特に好ましくは0.03以下である。式(v)の左辺により算出される値の下限値は特に限定されないが、ポリアミド系樹脂粉体の製造効率の観点からは、通常0.001以上程度である。
本発明の製造方法は、ポリアミド系樹脂溶液(a)と第1の貧溶媒とを接触させてポリアミド系樹脂溶液(b)を得る工程、得られたポリアミド系樹脂溶液(b)に第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる工程の他に、該工程の後、得られた混合物をろ過してポリアミド系樹脂組成物を得る工程をさらに含んでよい。なお、ろ過により得られるポリアミド系樹脂組成物は、ウェットケーキとも称される組成物であり、ポリアミド系樹脂粉体を得るための中間体である。ポリアミド系樹脂組成物には、ポリアミド系樹脂粉体と、良溶媒および/または貧溶媒が含まれており、ポリアミド系樹脂組成物を乾燥させることによりポリアミド系樹脂粉体が得られる。
得られた混合物をろ過してポリアミド系樹脂組成物を得る工程について、ろ過方法は特に限定されず、析出物と溶媒の透過性が異なるフィルターを介して、重力により分離する方法、遠心力により分離する方法、加圧により分離する方法が挙げられる。このようにして得たポリアミド系樹脂組成物における貧溶媒の含有量は、ろ過方法により異なるが、一般的に、該ポリアミド系樹脂組成物の総質量に対して好ましくは5質量%以上、より好ましくは10質量%以上、さらに好ましくは20質量%以上である。貧溶媒の含有量の上限は、乾燥によりポリアミド系樹脂粉体を製造しやすい観点からは、該ポリアミド系樹脂組成物の総質量に対して好ましくは70質量%以下、より好ましくは50質量%以下である。また、ポリアミド系樹脂組成物における良溶媒の含有量は、好ましくは1質量%以下、より好ましくは0.3質量%以下である。良溶媒の含有量の下限値は特に限定されず、少ない方が好ましい。本発明は、本発明の製造方法における中間体である、上記ポリアミド系樹脂組成物も提供する。本発明のポリアミド系樹脂組成物を乾燥させて溶媒を除去することにより、ポリアミド系樹脂粉体を製造することができる。
本発明の製造方法は、得られた混合物をろ過してポリアミド系樹脂組成物を得る工程の後、さらに、ポリアミド系樹脂組成物を乾燥させ、ポリアミド系樹脂粉体を得る工程をさらに含んでよい。乾燥条件は、ポリアミド系樹脂組成物中の溶媒が除去される限り特に限定されない。例えば、減圧または大気圧条件下、約50〜250℃程度の温度で1〜48時間程度加熱する方法により行ってよい。
(ポリアミド系樹脂)
本発明の製造方法において、ポリアミド系樹脂溶液(a)に含まれるポリアミド系樹脂は、ポリアミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂である。ポリアミド系樹脂溶液(a)は、1種類のポリアミド系樹脂を含有してもよいし、2種以上のポリアミド系樹脂を含有してもよい。ポリアミド系樹脂溶液(a)に含まれるポリアミド系樹脂は、製膜性の観点から、好ましくはポリアミドイミド樹脂である。
本発明の一実施形態において、ポリアミド系樹脂は、式(2)で表される構成単位を有するポリアミド樹脂であるか、または、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂である。ポリアミド系樹脂は、透明性や屈曲性の観点から、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。以下において式(1)および式(2)について説明するが、式(1)についての説明は、ポリアミドイミド樹脂に関し、式(2)についての説明は、ポリアミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂の両方に関する。
Figure 2020019935
ポリアミド系樹脂が、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂である本発明の一態様において、式(1)中のYは、それぞれ独立に、4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の4価の有機基を表す。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基であり、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。本発明の一実施態様であるポリアミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。Yとしては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基;それらの式(20)〜式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基;ならびに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
Figure 2020019935
[式(20)〜式(29)中、
*は結合手を表し、
は、単結合、−O−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−Ar−、−SO−、−CO−、−O−Ar−O−、−Ar−O−Ar−、−Ar−CH−Ar−、−Ar−C(CH−Ar−または−Ar−SO−Ar−を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6〜20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。]
式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)および式(29)で表される基の中でも、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材の表面硬度および柔軟性の観点から、式(26)、式(28)または式(29)で表される基が好ましく、式(26)で表される基がより好ましい。また、Wは、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材の表面硬度および柔軟性の観点から、それぞれ独立に、単結合、−O−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−または−C(CF−であることが好ましく、単結合、−O−、−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−または−C(CF−であることがより好ましく、単結合、−O−、−C(CH−または−C(CF−であることがさらに好ましく、−O−または−C(CF−であることがことさら好ましい。
上記態様において、式(1)中の複数のYの少なくとも一部は、式(5)で表される構成単位であることが好ましい。式(1)中の複数のYの少なくとも一部が式(5)で表される基であると、該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材は、高い透明性を発現すると同時に、高い屈曲性骨格に由来して、該ポリアミドイミド樹脂の溶媒への溶解性を向上し、ポリアミドイミドワニスの粘度を低く抑制することができ、また光学部材の加工を容易にすることができる。
Figure 2020019935
[式(5)中、R18〜R25は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表し、R18〜R25に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す。]
式(5)において、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24およびR25は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表す。ここで、R18〜R25に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。R18〜R25は、それぞれ独立に、該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材の表面硬度および柔軟性の観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基であり、特に好ましくは水素原子またはトリフルオロメチル基である。
本発明の好適な実施態様においては、式(5)で表される構成単位は、式(5’)で表される基であり、すなわち、複数のYの少なくとも一部は、式(5’)で表される構成単位である。この場合、該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材は、高い透明性を有することができる。
Figure 2020019935
[式(5’)中、*は結合手を表す]
本発明の好適な実施態様において、上記ポリアミドイミド樹脂中のYの、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が式(5)、特に式(5’)で表される。上記ポリアミドイミド樹脂における上記範囲内のYが式(5)、特に式(5’)で表されると、該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材は高い透明性を有することができ、さらにフッ素元素を含有する骨格により該ポリアミドイミド樹脂の溶媒への溶解性を向上し、ポリアミドイミドワニスの粘度を低く抑制することができ、また光学部材の製造が容易である。なお、好ましくは、上記ポリアミドイミド樹脂中のYの100モル%以下が式(5)、特に式(5’)で表される。上記ポリアミドイミド樹脂中のYは式(5)、特に式(5’)であってもよい。上記ポリアミドイミド樹脂中のYの式(5)で表される構成単位の含有率は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
式(2)において、Zは、それぞれ独立に、2価の有機基を表す。本発明の一実施形態において、ポリアミド系樹脂は、複数種のZを含み得、複数種のZは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。前記2価の有機基は、好ましくは炭素数4〜40の2価の有機基を表す。前記有機基は、炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1〜8である。Zの有機基としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基並びに炭素数6以下の2価の鎖式炭化水素基が例示される。光学部材の光学特性を向上、例えば黄色度を低減しやすい観点から、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)または式(27)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基で表される基が好ましい。
本発明の好適な実施態様において、光学部材が高い耐屈曲性および高い表面硬度に加えて、優れた光学特性を発現できるという観点から、Zの少なくとも一部が、式(3)で表される構成単位であることが好ましい。
Figure 2020019935
[式(3)中、R、R、R、R、R、R、RおよびRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表し、R〜Rに含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、単結合、−O−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−、−S−、−CO−または−N(R)−を表し、Rは水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を表し、
mは0〜4の整数であり、
*は結合手を表す。]。
式(3)において、mは、好ましくは0〜4の範囲の整数であり、mがこの範囲内であると、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材の弾性率や柔軟性を高めやすい。また、式(3)において、mは、好ましくは0〜3の範囲の整数、より好ましくは0〜2、さらに好ましくは0または1であり、mがこの範囲内であると、光学積層体の耐屈曲性や弾性率が良好であると同時に、原料の入手性が比較的良好である。また、Zは、式(3)で表される構成単位を1種または2種類以上含んでいてもよく、光学積層体の弾性率および耐屈曲性の向上、並びに黄色度(YI値)低減の観点から、特にmの値が異なる2種類以上の構成単位、好ましくはmの値の異なる2種類の構成単位を含んでいてもよい。その場合、光学積層体が高い弾性率や耐屈曲性、低い黄色度(YI値)を発現しやすい観点から、mが0と1の構成単位を両方含むことが好ましい。
式(3)において、Aは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−、−S−、−CO−または−N(R)−を表し、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材の柔軟性の観点から、好ましくは−O−または−S−を表し、より好ましくは−O−を表す。R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、tert−ブチル基、n−ペンチル基、2−メチル−ブチル基、3−メチルブチル基、2−エチル−プロピル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。また、炭素数6〜12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材の柔軟性および表面硬度の観点から、R〜Rは、それぞれ独立に、好ましくは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。ここで、R〜Rに含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を表す。
本発明の好適な実施態様においては、式(3)は式(3’)で表される構成単位であり、すなわち、複数のZの少なくとも一部は式(3’)で表される構成単位である。この場合、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材は、高い表面硬度を発揮すると同時に、弾性率が低く、高い柔軟性を有することができる。
Figure 2020019935
本発明の好適な実施態様において、ポリアミド系樹脂がポリアミド樹脂である場合はZに対し、ポリアミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂である場合はYおよびZの合計に対して、式(3)で表される構成単位の含有率は、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上、さらにより好ましくは9モル%以上、特に好ましくは15モル%以上、非常に好ましくは30モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは87モル%以下、さらに好ましくは85モル%以下、特に好ましくは83モル%以下、非常に好ましくは80モル%以下である。ポリアミド系樹脂がポリアミド樹脂である場合はZに対し、ポリアミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂である場合はYおよびZの合計に対して、式(3)で表される構成単位の含有率が上記下限値以上であると、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材は弾性率が低く、柔軟性に優れ、同時に高い表面硬度を発現することができる。ポリアミド系樹脂がポリアミド樹脂である場合はZに対し、ポリアミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂である場合はYおよびZの合計に対して、式(3)で表される構成単位の含有率が上記上限値以下であると、式(3)由来のアミド結合間水素結合による増粘を抑制することで、ポリアミド系樹脂のワニスの粘度を抑制することができ、光学部材の加工を容易にすることができる。なお、式(3)で表される構成単位の含有率は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
ポリアミド系樹脂は、本発明の好適な実施態様において、上記ポリアミド系樹脂中のZの、好ましくは5モル%以上、より好ましくは7モル%以上、さらに好ましくは9モル%以上、特に好ましくは11モル%以上が式(3)で表される。上記ポリアミド系樹脂中のZの上記下限値以上が式(3)で表されると、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材は高い表面硬度を発現すると同時に、弾性率が低く、高い柔軟性を有することができる。なお、上記ポリアミド系樹脂中のZの100モル%以下が式(3)で表されることが好ましい。なお、上記ポリアミド系樹脂中の式(3)で表される構成単位の含有率は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の好適な実施態様において、ポリアミド系樹脂は、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂である。
上記実施態様において、ポリアミドイミド樹脂における式(1)で表される構成単位の含有率は、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位の合計に対して、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは18モル%以上、特に好ましくは20モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは60モル%以下、特に好ましくは50モル%以下である。上記ポリアミドイミド樹脂において、式(1)で表される構成単位の含有率が上記下限値以上であると、式(2)中のアミド結合間の水素結合による増粘を抑制し、ポリアミドイミドワニスの粘度を低減することができ、光学部材の製造が容易である。上記ポリアミドイミド樹脂において、式(1)で表される構成単位の含有率が上記上限値以下であると、該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材は、高い表面硬度を発揮する。なお、上記割合は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
上記実施態様において、ポリアミドイミド樹脂における式(2)で表される構成単位の含有率は、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位の合計に対して、好ましくは20モル%以上、より好ましくは30モル%以上、さらに好ましくは40モル%以上、特に好ましくは50モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは80モル%以下、さらに好ましくは75モル%以下、特に好ましくは70モル%以下である。上記ポリアミドイミド樹脂において、式(1)で表される構成単位の含有率が上記上限値以下であると、式(2)中のアミド結合間の水素結合による増粘を抑制し、ポリアミドイミドワニスの粘度を低減することができ、光学部材の製造が容易である。上記ポリアミドイミド樹脂において、式(1)で表される構成単位の含有率が上記下限値以上であると、該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材は、高い表面硬度を発揮する。なお、上記割合は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
上記実施態様において、ポリアミドイミド樹脂における式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位の合計に対する、式(3)で表される構成単位の比率は、好ましくは3モル%以上、より好ましくは5モル%以上、さらに好ましくは7モル%以上、さらにより好ましくは9モル%以上、特に好ましくは15モル%以上、非常に好ましくは30モル%以上であり、好ましくは90モル%以下、より好ましくは87モル%以下、さらに好ましくは85モル%以下、特に好ましくは83モル%以下、非常に好ましくは80モル%以下である。ポリアミドイミド樹脂中の式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位の合計に対して、式(3)で表される構成単位の比率が上記下限値以上であると、該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材は弾性率が低く、柔軟性に優れ、同時に高い表面硬度を発現することができる。ポリアミドイミド樹脂中の式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位の合計に対して、式(3)で表される構成単位の比率が上記上限値以下であると、式(3)由来のアミド結合間水素結合による増粘を抑制することで、ポリアミドイミド樹脂のワニスの粘度を抑制することができ、光学部材の加工を容易にすることができる。なお、式(3)で表される構成単位の含有率は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
式(1)および式(2)において、Xは、それぞれ独立に、2価の有機基を表し、好ましくは炭素数4〜40の2価の有機基である。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基であり、好ましくは炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は1〜8である。なお、式(1)におけるXは、式(2)におけるXと同一であってもよいし、異なってもよい。
本発明の一実施態様において、ポリアミド系樹脂は、複数種のXを含み得、複数種のXは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。Xとしては、以下の式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)または式(18)で表される基;それらの式で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基;ならびに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
Figure 2020019935
[式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)または式(18)中、*は結合手を表し、
〜Vは、それぞれ独立に、単結合、−O−、−S−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−、−CO−または−N(Q)−を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を表す。]
とVとの各環に対する結合位置、および、VとVとの各環に対する結合位置は、それぞれ、各環に対して好ましくはメタ位またはパラ位、より好ましくはパラ位である。
式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)または式(18)で表される基の中でも、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材の表面硬度および柔軟性の観点から、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)または式(17)で表される基が好ましく、式(14)、式(15)または式(16)で表される基がより好ましい。また、V〜Vは、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材の表面硬度および柔軟性の観点から、それぞれ独立に、単結合、−O−または−S−であることが好ましく、単結合または−O−であることがより好ましい。
本発明の好適な実施態様において、ポリアミド樹脂の場合は式(2)中、ポリアミドイミド樹脂の場合は式(1)および式(2)中の複数のXの少なくとも一部は、式(4)で表される構成単位である。複数のXの少なくとも一部が式(4)で表される基であると、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材は、高い透明性を発現すると同時に、高い表面硬度を発現することができる。
Figure 2020019935

[式(4)中、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表し、R10〜R17に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
*は結合手を表す。]
式(4)において、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表す。炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基としては、式(3)における炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基として例示のものが挙げられる。R10〜R17は、それぞれ独立に、好ましくは水素原子または炭素数1〜6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1〜3のアルキル基を表し、ここで、R10〜R17に含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R10〜R17は、それぞれ独立に、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材の表面硬度、柔軟性および透明性の観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基であり、特に好ましくは水素原子またはトリフルオロメチル基である。
本発明の好適な実施態様においては、式(4)で表される構成単位は式(4’)で表される構成単位であり、すなわち、複数のXの少なくとも一部は、式(4’)で表される構成単位である。この場合、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材は、高い透明性を発現すると同時に、フッ素元素を含有する骨格により該ポリアミド系樹脂の溶媒への溶解性を向上し、ポリアミド系樹脂を含むワニスの粘度を低く抑制することができ、光学部材の加工を容易にすることができる。
Figure 2020019935
[式(4’)中、*は結合手を表す]
本発明の好適な実施態様において、上記ポリアミド系樹脂中のXの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは60モル%以上、ことさら好ましくは70モル%以上が式(4)、特に式(4’)で表される。上記ポリアミド系樹脂における上記範囲内のXが式(4)、特に式(4’)で表されると、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材は、高い透明性を発現すると同時に、フッ素元素を含有する骨格により該ポリアミド系樹脂の溶媒への溶解性を向上し、ポリアミド系樹脂を含むワニスの粘度を低く抑制することができ、また光学部材の加工を容易にすることができる。なお、好ましくは、上記ポリアミド系樹脂中のXの100モル%以下が式(4)、特に式(4’)で表される。上記ポリアミド系樹脂中のXは式(4)、特に式(4’)であってもよい。上記ポリアミド系樹脂中のXの式(4)で表される構成単位の含有率は、例えばH−NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の製造方法において、ポリアミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)は、好ましくは5,000以上、より好ましくは10,000以上、さらに好ましくは50,000以上、特に好ましくは70,000以上であり、ことさら好ましくは100,000以上であり、好ましくは800,000以下、より好ましくは600,000以下、さらに好ましくは500,000以下、特に好ましくは450,000以下である。ポリアミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)が上記下限値以上であると、該ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材はさらに良好な屈曲耐性を有する。ポリアミド系樹脂の重量平均分子量(Mw)が上記上限値以下であると、ポリアミド系樹脂を含むワニスの粘度を低く抑制することができ、また光学部材、特に光学フィルムの延伸が容易であるため、加工性が良好である。なお、本発明において重量平均分子量(Mw)は、例えば、GPC測定を行い、標準ポリスチレン換算によって求めることができ、具体的には実施例に記載の方法により求めることができる。
本発明の製造方法において、ポリアミド系樹脂の動的粘弾性測定(DMA測定)におけるtanδにより算出されたガラス転移温度Tgは、好ましくは380℃未満、より好ましくは379℃以下、さらに好ましくは378℃以下、例えば370℃以下である。ポリアミド系樹脂のガラス転移温度Tgが上記の上限値未満(または以下)であると、ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材が高い表面硬度を発現すると同時に、弾性率が低く、高い柔軟性を有することができる。ガラス転移温度を上記範囲に制御するためには、ポリアミド系樹脂を構成するモノマーとして、製膜して得られるポリアミド系樹脂フィルムに柔軟性を与え得る二価の基を有するモノマーを含むことが好ましく、柔軟性を与え得る二価の基として具体的には、−O−、−CH−、−CF−、−C(CH−、−C(CF−が挙げられ、柔軟性を与え得る二価の基を有するモノマーとして、−O−を含む二価の基を有するモノマーを含むことがより好ましい。なお、ポリアミド系樹脂の上記ガラス転移温度Tgは通常300℃以上である。
本発明の製造方法において、ポリアミド系樹脂がポリアミドイミド樹脂である場合、該ポリアミドイミド樹脂は、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位の他に、式(10−2)で表される構成単位、および/または式(11−2)で表される構成単位を含んでもよい。
Figure 2020019935
式(10−2)において、Yは、それぞれ独立に、4価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Yとしては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基、ならびに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施態様であるポリアミドイミド樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
式(11−2)において、Yは3価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Yとしては、上記の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基、および3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施態様であるポリアミドイミド樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
式(10−2)および式(11−2)において、XおよびXは、それぞれ独立に、2価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。XおよびXとしては、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)または式(18)で表される基;それらの式で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基;ならびに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
本発明の一実施態様において、上記ポリアミドイミド樹脂は、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位、ならびに場合により式(10−2)および/または式(11−2)で表される構成単位からなる。また、該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材の柔軟性および表面硬度の観点から、上記ポリアミドイミド樹脂において、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位の含有率は、式(1)および式(2)、ならびに場合により式(10−2)および式(11−2)で表される全構成単位の合計100%に対して、好ましくは80%以上、より好ましくは90%以上、さらに好ましくは95%以上である。なお、上記ポリアミドイミド樹脂において、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位の含有率は、式(1)または式(2)、もしくは場合により式(10−2)または式(11−2)で表される全構成単位に基づいて、通常100%以下である。なお、上記含有率は、例えば、H−NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の製造方法におけるポリアミド系樹脂に関し、ポリアミド樹脂は、例えば後述するジカルボン酸化合物およびジアミン化合物を主な原料として製造することができる。また、ポリアミドイミド樹脂は、例えば、後述するテトラカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物およびジアミン化合物を主な原料として製造することができる。
ポリアミドイミド樹脂の合成に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸およびその無水物、好ましくはその二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;および脂肪族テトラカルボン酸およびその無水物、好ましくはその二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物および縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、4,4’−オキシジフタル酸二無水物(OPDAと記載することがある)、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(BPDAと記載することがある)、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDAと記載することがある)、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては1,2,4,5−ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては2,3,6,7−ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
これらの中でも、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、1,2−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3−ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’−(p−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物および4,4’−(m−フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が好ましく、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物がより好ましい。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式または非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5−シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4−シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト−7−エン−2,3,5,6−テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル−3,3’,4,4’−テトラカルボン酸二無水物およびこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4−ブタンテトラカルボン酸二無水物、および1,2,3,4−ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物および非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
上記テトラカルボン酸二無水物の中でも、光学部材の高表面硬度、高柔軟性、高屈曲耐性、高透明性および低着色性の観点から、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’−ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2−ビス(3,4−ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、ならびにこれらの混合物が好ましく、4,4’−オキシジフタル酸二無水物、3,3’,4,4’−ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物、ならびにこれらの混合物がより好ましく、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物がさらに好ましい。
ポリアミド系樹脂の合成に用いられるジカルボン酸化合物としては、式(3”)で表される化合物を含むことが好ましい。
Figure 2020019935
[式(3”)中、R〜Rは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基または炭素数6〜12のアリール基を表し、R〜Rに含まれる水素原子は、それぞれ独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、単結合、−O−、−CH−、−CH−CH−、−CH(CH)−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−、−S−、−CO−または−N(R)−を表し、Rはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1〜12の炭化水素基を表し、
mは0〜4の整数であり、
31およびR32は、それぞれ独立に、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n−プロポキシ基、n−ブトキシ基または塩素原子を表す。]
好適な実施態様においては、ジカルボン酸化合物は、mが0である、式(3”)で表される化合物であり、さらにはAが−O−である、式(3”)で表される化合物を含むことが好ましい。また、別の好適な実施態様においては、ジカルボン酸化合物は、R32が−Clである、式(3”)で表される化合物である。また、ジアミン化合物に代えて、ジイソシアネート化合物を用いてもよい。好ましくは、テレフタロイルクロリドが用いられ、加えて他のジカルボン酸化合物が用いられてもよい。他のジカルボン酸化合物としては、4,4’−オキシビス安息香酸および/またはその酸クロリド化合物が用いられ、具体的には、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)が好ましい例として挙げられる。また、その他のジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。具体例としては、テレフタル酸;イソフタル酸;ナフタレンジカルボン酸;4,4’−ビフェニルジカルボン酸;3,3’−ビフェニルジカルボン酸;炭素数8以下である鎖式炭化水素、のジカルボン酸化合物および2つの安息香酸が単結合、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−もしくはフェニレン基で連結された化合物ならびにそれらの酸クロリド化合物が挙げられる。
なお、上記ポリアミドイミド樹脂は、該ポリアミドイミド樹脂を含んでなる光学部材の各種物性を損なわない範囲で、上記のポリアミドイミド合成に用いられるテトラカルボン酸化合物に加えて、テトラカルボン酸およびトリカルボン酸ならびにそれらの無水物および誘導体を更に反応させたものであってもよい。
テトラカルボン酸としては、上記テトラカルボン酸化合物の無水物の水付加体が挙げられる。
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。具体例としては、1,2,4−ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6−ナフタレントリカルボン酸−2,3−無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、−O−、−CH−、−C(CH−、−C(CF−、−SO−もしくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
ポリアミド系樹脂の合成に用いられるジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンおよびこれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基またはその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環である。また「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミン、ならびに1,3−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4−ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミンおよび4,4’−ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、p−フェニレンジアミン、m−フェニレンジアミン、2,4−トルエンジアミン、m−キシリレンジアミン、p−キシリレンジアミン、1,5−ジアミノナフタレン、および2,6−ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン;4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル(ODAと記載することがある)、3,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン(MBと記載することがある)、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMBと記載することがある)、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9−ビス(4−アミノフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−メチルフェニル)フルオレン、9,9−ビス(4−アミノ−3−クロロフェニル)フルオレン、および9,9−ビス(4−アミノ−3−フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
芳香族ジアミンとしては、好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、3,3’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、3,3’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4−(3−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2−ビス[4−(3−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)−4,4’−ジアミノジフェニル、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルであり、より好ましくは4,4’−ジアミノジフェニルメタン、4,4’−ジアミノジフェニルプロパン、4,4’−ジアミノジフェニルエーテル、4,4’−ジアミノジフェニルスルホン、1,4−ビス(4−アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4−(4−アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2−ビス[4−(4−アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルである。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
上記ジアミン化合物の中でも、光学部材の高表面硬度、高柔軟性、高屈曲耐性、高透明性および低着色性の観点からは、ビフェニル構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。2,2’−ジメチルベンジジン、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン、4,4’−ビス(4−アミノフェノキシ)ビフェニルおよび4,4’−ジアミノジフェニルエーテルからなる群から選ばれる1種以上を用いることがより好ましく、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを用いることがよりさらに好ましい。
本発明の一実施態様であるポリアミドイミド樹脂は、ジアミン化合物と、テトラカルボン酸化合物(酸クロリド化合物、テトラカルボン酸二無水物等のテトラカルボン酸化合物類縁体)およびジカルボン酸化合物(酸クロリド化合物等のジカルボン酸化合物類縁体)、ならびに場合によりトリカルボン酸化合物(酸クロリド化合物、トリカルボン酸無水物等のトリカルボン酸化合物類縁体)との重縮合生成物である縮合型高分子である。
式(1)および式(10−2)で表される構成単位は、通常、ジアミン類およびテトラカルボン酸化合物から誘導される。式(2)で表される構成単位は、通常、ジアミンおよびジカルボン酸化合物から誘導される。式(11−2)で表される構成単位は、通常、ジアミンおよびトリカルボン酸化合物から誘導される。
本発明の好ましい実施態様において、ポリアミド系樹脂には、上記の通り、ハロゲン原子が含まれ得る。含フッ素置換基の具体例としては、フルオロ基およびトリフルオロメチル基が挙げられる。ポリアミド系樹脂がハロゲン原子を含むことにより、ポリアミド系樹脂を含んでなる光学部材の黄色度(YIと記載することがある)を低減させることができる場合があり、さらに高い柔軟性および屈曲耐性を両立させることができる傾向がある。また、光学部材の黄色度の低減(すなわち、透明性の向上)、吸水率の低減、および耐屈曲性の観点から、ハロゲン原子は好ましくはフッ素原子である。
ポリアミド系樹脂におけるハロゲン原子の含有率は、黄色度の低減(透明性の向上)、吸水率の低減、および光学部材の変形抑制の観点から、ポリアミド系樹脂の質量を基準として、好ましくは1〜40質量%、より好ましくは3〜35質量%、さらに好ましくは5〜32質量%である。
本発明の一実施態様において、ポリアミド系樹脂の合成反応において、イミド化触媒が存在してもよい。イミド化触媒としては、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン等の脂肪族アミン;N−エチルピペリジン、N−プロピルピペリジン、N−ブチルピロリジン、N−ブチルピペリジン、およびN−プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、およびアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);ならびにピリジン、2−メチルピリジン、3−メチルピリジン、4−メチルピリジン、2−エチルピリジン、3−エチルピリジン、4−エチルピリジン、2,4−ジメチルピリジン、2,4,6−トリメチルピリジン、3,4−シクロペンテノピリジン、5,6,7,8−テトラヒドロイソキノリン、およびイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。
ジアミン化合物、ジカルボン酸化合物、および、場合によりテトラカルボン酸化合物の反応温度は、特に限定されないが、例えば50〜350℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば30分〜10時間程度である。必要に応じて、不活性雰囲気または減圧の条件下において反応を行ってよい。また、反応は溶剤中で行ってよく、溶剤としては例えば、ポリアミド系樹脂を含むワニスの調製に用いられる後述する溶剤が挙げられる。
本発明の製造方法により製造したポリアミド系樹脂粉体は、例えば光学部材として使用することができる。光学部剤としては、例えば光学フィルムが挙げられる。該光学部材は、柔軟性、屈曲耐性および表面硬度に優れるため、画像表示装置の前面板、特にフレキシブルディスプレイの前面板(ウィンドウフィルム)として適当である。光学部材は単層であってもよく、複層であってもよい。光学部材が複層である場合、各層は同一の組成であってよく、異なる組成であってもよい。
本発明の製造方法により製造したポリアミド系樹脂粉体を光学部材として使用する場合、光学部材中におけるポリアミド系樹脂の含有率は、光学部材の全質量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、非常に好ましくは90質量%以上である。ポリアミド系樹脂の含有率が上記下限値以上であると、光学部材の屈曲耐性が良好である。なお、光学部材中におけるポリアミド系樹脂の含有率は、光学部材の全質量に対して、通常100質量%以下である。
(無機材料)
光学部材には、ポリアミド系樹脂の他に無機粒子等の無機材料を更に含有してもよい。無機材料として、例えば、チタニア粒子、アルミナ粒子、ジルコニア粒子、シリカ粒子等の無機粒子、およびオルトケイ酸テトラエチル等の4級アルコキシシラン等のケイ素化合物等が挙げられる。光学部材を製造するためのポリアミド系樹脂を含むワニスの安定性の観点から、無機材料は無機粒子、特にシリカ粒子であることが好ましい。無機粒子同士は、シロキサン結合を有する分子により結合されていてもよい。
無機粒子の平均一次粒子径は、光学部材の透明性、機械物性、および無機粒子の凝集抑制の観点から、1〜100nm以上であり、好ましくは5〜80nmであり、より好ましくは7〜50nm、特に好ましくは10〜30nmである。本発明において、平均一次粒子径は、透過型電子顕微鏡による定方向径の10点平均値を測定することにより決定することができる。
光学部材中の無機材料の含有率は、光学部材の全質量を基準として、好ましくは0質量%以上90質量%以下、より好ましくは0.01質量%以上60質量%以下、さらに好ましくは5質量%以上40質量%以下である。無機材料の含有率が上記範囲内であると、光学部材の透明性および機械物性を両立させやすい傾向がある。
(紫外線吸収剤)
光学部材は、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。光学部材が紫外線吸収剤を含有することにより、ポリアミド系樹脂の劣化が抑制されるため、光学部材の視認性を高めることができる。
なお、本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
光学部材が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有率は、光学部材の全質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。好適な含有率は用いる紫外線吸収剤により異なるが、400nmの光線透過率が20〜60%程度になるように紫外線吸収剤の含有率を調節すると、光学部材の耐光性が高められるとともに、透明性の高い光学部材を得ることができる。
(他の添加剤)
光学部材は、更に他の添加剤を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、pH調整剤、シリカ分散剤、滑剤、増粘剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
他の添加剤の含有率は、光学部材の質量に対して、好ましくは0質量%以上20質量%以下、より好ましくは0質量%以上10質量%以下である。
光学部材、特に光学フィルムの厚さは、用途に応じて適宜調整されるが、通常10〜1000μm、好ましくは15〜500μm、より好ましくは20〜400μm、さらに好ましくは25〜300μmである。なお、本発明において、厚さは接触式のデジマチックインジケーターによって測定することができる。
光学部材において、JIS K 7105:1981に準拠した全光線透過率Ttが好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。光学部材の全光線透過率Ttが上記下限値以上であると、光学部材を画像表示装置に組み込んだ際に、十分な視認性を確保しやすい。なお、光学部材の全光線透過率Ttの上限値は通常100%以下である。光学部材におけるヘーズ(Haze)は、スガ試験機(株)製の直読ヘーズコンピュータ(型式HGM−2DP)で測定して、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.8%以下、さらにより好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.3%以下である。光学部材のヘーズが上記の上限値以下であると、光学部材を画像表示装置等のフレキシブル電子デバイスに組み込んだ際に、十分な視認性を確保しやすい。なお、上記ヘーズの下限値は特に限定されず、0%以上であればよい。本発明の製造方法において使用するポリアミド系樹脂溶液(a)に溶解させたポリアミド系樹脂、および/または、本発明の製造方法により得られるポリアミド系樹脂の粉体は、上記全光線透過率Ttおよび/またはヘーズを有することが好ましい。ポリアミド系樹脂およびポリアミド系樹脂粉体の全光線透過率Ttおよび/またはヘーズは、成形体(例えばフィルム)の形状で測定される。測定試料の作成方法および測定方法の詳細は、実施例に記載するとおりである。
(光学部材の製造方法)
本発明の製造方法により製造したポリアミド系樹脂粉体を用いて、上記のような光学部材、例えば光学フィルムを製造することができる。製造方法は特に限定されない。例えば以下の工程:
(a)ポリアミド系樹脂粉体を溶剤に溶解させて得たポリアミド系樹脂を含む液(ポリアミド系樹脂のワニス)を基材に塗布して塗膜を形成する工程(塗布工程)、および
(b)塗布された液(ポリアミド系樹脂のワニス)を乾燥させて光学部材、特に光学フィルム(ポリアミド系樹脂フィルム)を形成する工程(形成工程)
を含む製造方法によって光学部材を製造することができる。工程(a)および(b)は、通常この順で行うことができる。
塗布工程においては、ポリアミドイミド系樹脂粉体を溶剤に溶解させ、必要に応じて上記紫外線吸収剤および他の添加剤を添加し、撹拌することにより、ポリアミド系樹脂を含む液(ポリアミド系樹脂のワニス)を調製する。
ワニスの調製に用いられる溶剤は、ポリアミド系樹脂を溶解可能であれば特に限定されない。かかる溶剤としては、例えばN,N−ジメチルアセトアミド、N,N−ジメチルホルムアミド等のアミド系溶剤;γ−ブチロラクトン、γ−バレロラクトン等のラクトン系溶剤;ジメチルスルホン、ジメチルスルホキシド、スルホラン等の含硫黄系溶剤;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;およびそれらの組合せが挙げられる。これらの溶剤の中でも、アミド系溶剤またはラクトン系溶剤が好ましい。また、ワニスには水、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、非環状エステル系溶剤、エーテル系溶剤などが含まれてもよい。
次に、例えば公知のロール・ツー・ロールやバッチ方式により、樹脂基材、SUSベルト、またはガラス基材等の基材上に、ポリアミド系樹脂のワニスを用いて、流涎成形等によって塗膜を形成することができる。
形成工程において、塗膜を乾燥し、基材から剥離することによって、光学部材を形成することができる。剥離後に更に光学部材を乾燥する乾燥工程を行ってもよい。塗膜の乾燥は、通常50〜350℃の温度にて行うことができる。必要に応じて、不活性雰囲気または減圧の条件下において塗膜の乾燥を行ってよい。
光学部材の少なくとも一方の表面に、表面処理を施す表面処理工程を行ってもよい。表面処理としては、例えばUVオゾン処理、プラズマ処理、およびコロナ放電処理が挙げられる。
樹脂基材の例としては、PETフィルム、PENフィルム、ポリイミドフィルム、およびポリアミドイミドフィルム等が挙げられる。中でも、耐熱性に優れる観点から、PETフィルム、PENフィルム、ポリイミドフィルム、および他のポリアミドイミドフィルムが好ましい。さらに、光学部材との密着性およびコストの観点から、PETフィルムがより好ましい。
本発明の製造方法により得たポリアミド系樹脂粉体を用いて、光学部材を製造することができる。このような光学部材は、高い弾性率と柔軟性を有する。本発明の好適な実施態様において、上記光学部材の弾性率は、好ましくは3.0GPa以上、より好ましくは4.0GPa以上、さらに好ましくは5.0GPa以上、特に好ましくは6.0GPa以上、好ましくは10.0GPa以上、より好ましくは8.0GPa以上、さらに好ましくは7.0GPa以下である。光学部材の弾性率が上記上限値以下であると、フレキシブルディスプレイが屈曲する際に、上記光学部材による他の部材の損傷を抑制することができる。弾性率は、例えば(株)島津製作所製オートグラフAG−ISを用いて、10mm幅の試験片をチャック間距離50mm、引張速度20mm/分の条件でS−S曲線を測定し、その傾きから測定することができる。本発明の製造方法において使用するポリアミド系樹脂溶液(a)に溶解させたポリアミド系樹脂、および/または、本発明の製造方法により得られるポリアミド系樹脂の粉体は、上記弾性率を有することが好ましい。ポリアミド系樹脂およびポリアミド系樹脂粉体の弾性率は、成形体(例えばフィルム)の形状で測定される。測定試料の作成方法および測定方法の詳細は、実施例に記載するとおりである。
上記光学部材、特に光学フィルムは、優れた屈曲耐性を有する。本発明の好適な実施態様において、光学部材は、R=1mmで135°を加重0.75kgfで速度175cpmにて測定した際に破断するまでの往復折り曲げ回数が、好ましくは10,000回以上、より好ましくは20,000回以上、さらに好ましくは30,000回以上、特に好ましくは40,000回以上、非常に好ましくは50,000回以上である。
光学部材の往復折り曲げ回数が上記下限値以上であると、光学部材を屈曲した際に生じ得る織り皺をさらに抑制することができる。なお、光学部材の往復折り曲げ回数は制限されないが、通常1,000,000回の折り曲げが可能であれば十分実用的である。往復折り曲げ回数は、例えば(株)東洋精機製作所製MIT耐折疲労試験機(型式0530)で厚さ50μm、幅10mmの試験片(光学部材)を用いて求めることができる。本発明の製造方法において使用するポリアミド系樹脂溶液(a)に溶解させたポリアミド系樹脂、および/または、本発明の製造方法により得られるポリアミド系樹脂の粉体は、上記屈曲耐性を有することが好ましい。ポリアミド系樹脂およびポリアミド系樹脂粉体の屈曲耐性は、成形体(例えばフィルム)の形状で測定される。
上記光学部材は、優れた透明性を発現することができる。そのため、上記光学部材は、画像表示装置、特にフレキシブルディスプレイの前面板(ウィンドウフィルム)として非常に有用である。本発明の好適な実施態様において、光学部材は、JIS K 7373:2006に準拠した黄色度YIが、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下である。黄色度YIが上記上限値以下である光学部材は、表示装置等の高い視認性に寄与することができる。なお、上記光学部材の黄色度は好ましくは0以上である。本発明の製造方法において使用するポリアミド系樹脂溶液(a)に溶解させたポリアミド系樹脂、および/または、本発明の製造方法により得られるポリアミド系樹脂の粉体は、上記黄色度YIを有することが好ましい。ポリアミド系樹脂およびポリアミド系樹脂粉体の黄色度YIは、成形体(例えばフィルム)の形状で測定される。測定試料の作成方法および測定方法の詳細は、実施例に記載するとおりである。
上記の光学部材は、紫外線吸収層、粘着層、色相調整層、屈折率調整層等の機能層、ハードコート層を備えてもよい。
本発明のポリアミド系樹脂粉体を用いて製造した光学部材(例えば光学フィルム)は、画像表示装置の前面板、特にフレキシブルディスプレイの前面板(ウィンドウフィルム)として有用である。上記光学部材は、画像表示装置、特にフレキシブルディスプレイの視認側表面に前面板として配置することができる。この前面板は、フレキシブルディスプレイ内の画像表示素子を保護する機能を有する。上記光学部材を備える画像表示装置は、高い柔軟性および屈曲耐性を有すると同時に、高い表面硬度を有するため、屈曲した際に他の部材を損傷することがなく、また光学部材自体にも折り皺が生じ難く、さらに表面の傷つきを有利に抑制できる。
画像表示装置としては、テレビ、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション、タブレットPC、携帯ゲーム機、電子ペーパー、インジケーター、掲示板、時計、およびスマートウォッチ等のウェアラブルデバイス等が挙げられる。フレキシブルディスプレイとしては、フレキシブル特性を有する画像表示装置、例えばテレビ、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション、タブレットPC、携帯ゲーム機、電子ペーパー、インジケーター、掲示板、時計、およびウェアラブルデバイス等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記ない限り、質量%および質量部を意味する。
[樹脂の物性測定]
(重量平均分子量)
重量平均分子量の測定は、ゲル浸透クロマトグラフィー(GPC)を用いて測定を行った。測定試料の調製方法および測定条件は下記の通りである。
(1)試料調整方法
樹脂粉体20mgを秤りとり、10mLのDMF(10mM臭化リチウム)を加え、完全に溶解させた。この溶液をクロマトディスク(孔径0.45μm)にてろ過し、試料溶液とした。
(2)測定条件
装置:HLC−8020GPC
カラム:ガードカラム+TSKgelα−M(300mm×7.8mm径)×2本+α−2500(300mm×7.8mm径)×1本
溶離液:DMF(10mmol/Lの臭化リチウム添加)
流量:1.0mL/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μL
分子量標準:標準ポリスチレン
(全光線透過率およびヘーズ)
光学フィルムの全光線透過率およびヘーズは、それぞれJIS K 7361−1:1997、JIS K 7136:2000に準拠して、スガ試験機(株)製の全自動直読ヘーズコンピュータHGM−2DPを用いて測定した。測定試料は、実施例のフィルムを30mm×30mmの大きさにカットして作製した。
(弾性率)
実施例で得られた光学フィルムを、ダンベルカッターを用いて10mm×100mmの短冊状にカットし、サンプルを得た。このサンプルの弾性率を(株)島津製作所製オートグラフAG−ISを用い、チャック間距離50mm、引張速度20mm/分の条件で応力−歪(S−S)曲線を測定し、その傾きから光学フィルムの弾性率を算出した。
(黄色度YI)
JIS K 7373:2006に準拠して、日本分光(株)製の紫外可視近赤外分光光度計V−670を用いて測定した。サンプルがない状態でバックグランド測定を行った後、サンプルをサンプルホルダーにセットして、300〜800nmの光に対する透過率測定を行い、3刺激値(X、Y、Z)を求めた。YI値を、下記の式に基づいて算出した。
Figure 2020019935
[ポリアミド系樹脂組成物(ウェットケーキ)における溶媒の含有量測定]
上記有機溶媒の含有量は、ガスクロマトグラフ測定により行った。測定条件の詳細は下記の通りである。
(1)試料調整方法
試料1gを5mLのIPAに加えて溶解させ、溶液をクロマトディスク(ジーエルサイエンス社製;孔径:0.45μm)にてろ過し、これを試料溶液とした。
(2)測定条件
カラム:DB−WAX(0.25mmφ×30m、膜厚:0.25μm)
カラム温度:50℃(5分)→10℃/分→250℃(10分)
注入口温度:150℃
流量:He 1.0mL/分
検出器:FID
検出器温度:250℃
試料注入量:1.0μL
スプリット比:1:50
[ポリアミド系樹脂組成物(ウェットケーキ)におけるポリアミド系樹脂の含有量測定]
上記ポリアミド系樹脂の含有量は加熱乾燥減量法により測定した。測定条件の詳細は下記のとおりである。
測定装置:ハロゲン水分計HG−63P(メトラー・トレド社製)
測定条件:200℃、30分
ウェットケーキ中の水分量は、乾燥減量法から得られた減量率から、ガスクロマトグラフ法により得られた有機溶媒含量率を引くことにより求めた。
[樹脂の溶媒への溶解性の確認]
下記製造例1と同じ組成の樹脂粉体を準備し、下記の方法で溶媒への溶解性を確認した。
30mLのガラス製スクリュー管に溶媒を9.9g量りとり、さらにマグネチックスターラーを入れて撹拌した。そこに上記樹脂粉体を0.1g加え、室温(24℃)で3時間撹拌し、溶解性を確認した。
結果、DMAcには溶解したが、メタノールとイオン交換水には溶解しなかった。したがって、DMAcは良溶媒であり、メタノールとイオン交換水は貧溶媒である。また、撹拌中の外観において、樹脂粉体はメタノール中に舞っている状態であるが、水中には入っていかず、水面で留まっていた。このことから、メタノールと水を比較して、水の方が貧溶媒の度合いが高いと推定される。
[製造例1:ポリアミドイミド樹脂の調製]
撹拌機と温度計を備える反応容器を、窒素で置換し、10℃に冷却し、溶媒としてジメチルアセトアミド(DMAc)を容器に入れた。さらに、2,2’−ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(TFMB)、4,4’−(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(6FDA)、4,4’−オキシビス(ベンゾイルクロリド)(OBBC)、およびテレフタロイルクロリド(TPC)を、表1に示すモル比で加えて、ポリアミック酸溶液を調製した。
Figure 2020019935
次いで、ジイソプロピルエチルアミン(DIEA)、無水酢酸および4−ピコリン(4−PC)を加え、反応容器を75℃に昇温することにより、反応液であるポリアミドイミド樹脂溶液(a1)3416.1kg(うちDMAc3134.8kg)を得た。各原料のTFMBに対するmol比を表2に示す。
Figure 2020019935
得られた反応液を冷却し、40℃以下に下がったところで、第1の貧溶媒としてのメタノール940.4kgを加えた。このようにして得た、ポリアミドイミド樹脂溶液(a1)と第1の貧溶媒としてメタノールを混合した反応液を、以下において反応液(1)と称する。この段階では反応液(1)は透明であり、粒子の析出はなかった。
[実施例1]
撹拌機と温度計を備えた反応容器に、窒素を導通させ、容器内を窒素で置換した。20℃で撹拌しながら、製造例1で得た反応液(1)を反応容器内に1452.2kg入れた。次いで、メタノールをノズル(内径:22mm)から30kg/分の速度で1253.9kg滴下し、ポリアミド系樹脂溶液(b1)を得た。滴下の途中から溶液が白濁し始めた。
次いでイオン交換水をノズル(内径:22mm)から7kg/分の速度で783.7kg滴下した。滴下が進むにつれて、溶液の白濁の程度が強くなった。
析出した白色固体を遠心ろ過により捕集し、メタノールで洗浄することにより、ポリアミドイミド樹脂を含むウェットケーキ(ポリアミドイミド樹脂組成物1)を得た。ウェットケーキは粉状であり、ろ布への固着はなく、得られたウェットケーキに着色は観察されなかった。ウェットケーキを一部サンプリングし、含有する溶媒量を上記方法により測定した。得られたウェットケーキを減圧下、78℃で乾燥させることによりポリアミドイミド樹脂の粉体52kgを得た。
得られたポリアミドイミド樹脂の粉体に、濃度が10質量%となるようにDMAcを加え、ポリアミドイミドワニスを作製した。得られたポリアミドイミドワニスをポリエステル基材(東洋紡(株)製、商品名「A4100」)の平滑面上に自立膜の厚さが55μmとなるようにアプリケーターを用いて塗工し、50℃で30分間、次いで140℃で15分間乾燥し、自立膜を得た。自立膜を金枠に固定し、さらに窒素雰囲気下、200℃で60分間乾燥し、厚さ50μmのポリアミドイミドフィルムを得た。
得られたポリアミドイミド樹脂の粉体およびフィルムについて、重量平均分子量、弾性率、全光線透過率、ヘーズ、YI、を上記方法に従い測定した。得られた結果を表3に示す。なお、ポリアミドイミド樹脂の粉体についての測定結果は、析出操作の前後でこれらの物性値は変化しないため、ポリアミドイミド樹脂溶液(a1)に含まれるポリアミドイミド樹脂の物性値でもある。
Figure 2020019935
[実施例2]
撹拌機と温度計を備えた反応容器に、窒素を導通させ、容器内を窒素で置換した。20℃で撹拌しながら、製造例1で得た反応液(1)を反応容器内に1452.2kg入れた。次いで、メタノールをノズル(内径:22mm)から30kg/分の速度で1253.9kg滴下した。滴下の途中から溶液が白濁し始めた。
次いでイオン交換水をノズル(内径:22mm)から15kg/分の速度で783.7kg滴下した。滴下が進むにつれて、溶液の白濁の程度が強くなった。
析出した白色固体を遠心ろ過により捕集し、メタノールで洗浄することにより、ポリアミドイミド樹脂を含むウェットケーキ(ポリアミドイミド樹脂組成物2)を得た。ウェットケーキの一部(ろ布との接触面)がゴム状となり、ろ布に固着しており、固着したウェットケーキに黄色の着色が観察された。ウェットケーキを一部サンプリングし、含有する溶媒量を上記方法により測定した。得られたウェットケーキを減圧下、78℃で乾燥させることによりポリアミドイミド樹脂の粉体52kgを得た。
[比較例1]
撹拌機と温度計を備えた反応容器に、窒素を導通させ、容器内を窒素で置換した。20℃で撹拌しながら、製造例1で得た反応液(1)を反応容器内に1452.2kg入れた。次いで、メタノールをノズル(内径:22mm)から30kg/分の速度で1253.9kg滴下した。滴下の途中から溶液が白濁し始めた。
次いで、さらに、メタノールをノズル(内径:22mm)から7kg/分の速度で783.7kg滴下した。滴下が進むにつれて、溶液の白濁の程度が強くなった。
析出した白色固体を遠心ろ過により捕集し、メタノールで洗浄することにより、ポリアミドイミド樹脂を含むゴム状の混合物を得た。得られた混合物の着色は見られないが、ゴム状であり、ろ布への固着が確認され、粉体として回収できなかった。なお、比較例1で得たゴム状の混合物については、粉体ではなかったため残存溶媒量の測定を行っていないが、混合物がゴム状であったことから、良溶媒を多く含んでいると推測される。
上記実施例および比較例について、Y/X、Z/X、Z/Xおよび値A〜Cを次の式に従い算出した。
Y/X=ポリアミド系樹脂溶液(a)中の良溶媒の量/ポリアミド系樹脂溶液(a)中のポリアミド系樹脂の量
/X=第1貧溶媒の量(kg)/ポリアミドイミド樹脂の量(kg)
/X=第2の貧溶媒の量(kg)/ポリアミドイミド樹脂の量(kg)
値A=第1の貧溶媒の滴下速度(kg/分)/良溶媒の量(kg)
値B=第2の貧溶媒の滴下速度(kg/分)/良溶媒の量(kg)
値C=第2の貧溶媒の滴下速度(kg/分)/ノズルの内径断面積(mm
上記実施例および比較例で得た粉体について、その性状を次の評価基準で評価した。
(評価1:粉体の回収性)
○粉体を回収できた
×粉体を回収できなかった。
(評価2:ろ過後のろ床状態)
○ゴム状の固形物なし
△ゴム状の固形物がわずかにあるが問題のないレベル
×ゴム状の固形物あり
(評価3:ろ布固着物の着色)
○着色なし
△わずかな着色があるが問題のないレベル
×着色あり
上記の結果を表4〜6にまとめる。
Figure 2020019935
Figure 2020019935
Figure 2020019935

Claims (9)

  1. ポリアミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリアミド系樹脂溶液(a)を、前記ポリアミド系樹脂に対する少なくとも2種の貧溶媒と接触させることを含み、前記ポリアミド系樹脂溶液(a)と第1の貧溶媒とを接触させてポリアミド系樹脂溶液(b)を得る工程、および、得られたポリアミド系樹脂溶液(b)に第2の貧溶媒を添加してポリアミド系樹脂を析出させる工程を含む、ポリアミド系樹脂粉体の製造方法。
  2. ポリアミド系樹脂溶液(a)と第1の貧溶媒とを接触させてポリアミド系樹脂溶液(b)を得る工程は、第1の貧溶媒をポリアミド系樹脂溶液(a)に添加することにより行う、請求項1に記載の製造方法。
  3. 第2の貧溶媒は水を主成分とする溶媒である、請求項1または2に記載の製造方法。
  4. 第1の貧溶媒は、炭素数1〜4のアルコールを主成分とする溶媒である、請求項1〜3のいずれかに記載の製造方法。
  5. ポリアミド系樹脂溶液(a)中のポリアミド系樹脂の量をX(kg)、良溶媒の量をY(kg)とし、前記ポリアミド系樹脂溶液と接触させる第1の貧溶媒の量をZ(kg)、第2の貧溶媒の量をZ(kg)とした場合に、各成分の質量比が関係式(i)〜(iii):
    Figure 2020019935
    を満たす、請求項1〜4のいずれかに記載の製造方法。
  6. 第2の貧溶媒の添加速度(kg/分)と、前記ポリアミド系樹脂溶液(b)中の良溶媒の量(kg)とが、関係式(iv):
    Figure 2020019935
    を満たす、請求項5に記載の製造方法。
  7. 第2の貧溶媒を少なくとも1本のノズルから添加し、前記ノズルの内径断面積(mm)と前記ノズル1本当たりの第2の貧溶媒の添加速度(kg/分)とが、関係式(v):
    Figure 2020019935
    を満たす、請求項1〜6のいずれかに記載の製造方法。
  8. ポリアミド系樹脂を析出させる工程の後、得られた混合物をろ過してポリアミド系樹脂組成物を得る工程をさらに含み、該ポリアミド系樹脂組成物における貧溶媒の含有量が、該ポリアミド系樹脂組成物の総質量に対して5質量%以上であり、かつ、良溶媒の含有量が、該ポリアミド系樹脂組成物の総質量に対して1質量%以下である、請求項1〜7のいずれかに記載の製造方法。
  9. ポリアミド系樹脂と、該ポリアミド系樹脂に対する貧溶媒および良溶媒とを含むポリアミド系樹脂組成物であって、ポリアミド系樹脂組成物の総質量に対して、貧溶媒の含有量が5質量%以上であり、かつ、良溶媒の含有量が1質量%以下である、ポリアミド系樹脂組成物。
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