JP2023083242A - ポリイミド系樹脂粉体、およびポリイミド系樹脂粉体の製造方法 - Google Patents
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Abstract
【課題】ろ過性が良好であり、ワニス調製時の溶解性が良好なポリイミド系樹脂粉体を提供する。
【解決手段】ポリイミド系樹脂粉体であって、アスペクト比が2.0未満であり、式(I):
圧縮性指数={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
〔式(I)中、Pは、前記ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用い、該測定試料をろ過した際の圧縮圧力[kPa]であり、αは圧縮圧力P[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]であり、P0は基準圧縮圧力100[kPa]であり、α0は基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]である〕
より算出される圧縮性指数が1.0未満である、樹脂粉体。
【選択図】なし
【解決手段】ポリイミド系樹脂粉体であって、アスペクト比が2.0未満であり、式(I):
圧縮性指数={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
〔式(I)中、Pは、前記ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用い、該測定試料をろ過した際の圧縮圧力[kPa]であり、αは圧縮圧力P[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]であり、P0は基準圧縮圧力100[kPa]であり、α0は基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]である〕
より算出される圧縮性指数が1.0未満である、樹脂粉体。
【選択図】なし
Description
本発明は、ポリイミド系樹脂粉体、およびポリイミド系樹脂粉体の製造方法に関する。
従来、太陽電池や画像表示装置等の表示部材の前面板としてガラスが用いられてきた。しかし、近年の小型化、薄型化、軽量化およびフレキシブル化の要求に対して、ガラスは十分な特性を有するものではなく、ガラスの代替材料として各種の高分子材料である樹脂を用いることが検討されている。その例として、例えばポリイミド系樹脂が柔軟性を有する樹脂として検討されている。
ポリイミド系樹脂を使用して、例えばフィルムなどの高分子材料を製造する際、輸送時に容積を少なくすることができる観点から、ポリイミド系樹脂を粉体として製造し、該粉体を成膜場所まで輸送し、該粉体を用いて調製されたポリイミド系樹脂のワニスを用いて成膜が行われている。
このようなポリイミド系樹脂粉体の製造方法として、ポリイミド前駆体もしくはポリイミド前駆体を化学イミド化して得られるポリイミド樹脂を含有する反応液に、メタノール等の貧溶媒を添加し、ポリイミド系樹脂の粉体を析出させることが行われている(例えば特許文献1および2)。
ポリイミド系樹脂粉体を製造する際、析出条件等によってポリイミド系樹脂粉体のろ過性が低下する場合がある。また、ポリイミド系樹脂フィルムを製造する際には、ポリイミド系樹脂粉体を溶媒に溶解させてワニスを調製する必要があるが、ポリイミド系樹脂粉体が凝集してダマ、ゲル等が生じる場合や、ワニスへの十分な溶解性が得られない場合がある。したがって、本発明は、ろ過性が良好であり、ワニス調製時の溶解性が良好なポリイミド系樹脂粉体を提供することを課題とする。
本発明者は、上記課題を解決するために、ポリイミド系樹脂粉体の形状や表面特性等に着目して鋭意検討を行い、特定の物性値を満たすポリイミド系樹脂粉体によって、上記課題が解決されることを見出し、本発明を完成するに至った。すなわち、本発明には、以下の態様が含まれる。
〔1〕ポリイミド系樹脂粉体であって、アスペクト比が2.0未満であり、式(I):
圧縮性指数={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
〔式(I)中、Pは、前記ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用い、該測定試料をろ過した際の圧縮圧力[kPa]であり、
αは圧縮圧力P[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]であり、
P0は基準圧縮圧力100[kPa]であり、
α0は基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]である〕
より算出される圧縮性指数が1.0未満である、樹脂粉体。
〔2〕ポリイミド系樹脂はポリアミドイミド樹脂である、〔1〕に記載の樹脂粉体。
〔3〕ポリアミドイミド樹脂は、該ポリアミドイミド樹脂を構成する全構造単位に基づいて、30モル%以上のジカルボン酸に由来する構造単位を有する、〔2〕に記載の樹脂粉体。
〔4〕圧縮性指数が0.1以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の樹脂粉体。
〔5〕ポリイミド系樹脂と前記ポリイミド系樹脂に対する良溶媒の少なくとも1種とを含む樹脂溶液に、前記ポリイミド系樹脂に対する貧溶媒の少なくとも1種を添加して樹脂粉体を析出させる析出工程を含む、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法であって、
前記析出工程は19℃以下の温度で行われ、
得られるポリイミド系樹脂粉体のアスペクト比が2.0未満であり、式(I):
圧縮性指数={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
〔式(I)中、Pは、前記ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用い、該測定試料をろ過した際の圧縮圧力[kPa]であり、
αは圧縮圧力P[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]であり、
P0は基準圧縮圧力100[kPa]であり、
α0は基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]である〕
より算出される圧縮性指数が1.0未満である、製造方法。
〔6〕前記貧溶媒はアルコール系溶媒を含む、〔5〕に記載の製造方法。
〔7〕前記析出工程において、2種以上の貧溶媒を使用する、〔5〕または〔6〕に記載の製造方法。
〔8〕前記析出工程において、樹脂溶液が白濁し始めてから貧溶媒の添加が終了するまでの時間は100分以上である、〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の製造方法。
〔1〕ポリイミド系樹脂粉体であって、アスペクト比が2.0未満であり、式(I):
圧縮性指数={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
〔式(I)中、Pは、前記ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用い、該測定試料をろ過した際の圧縮圧力[kPa]であり、
αは圧縮圧力P[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]であり、
P0は基準圧縮圧力100[kPa]であり、
α0は基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]である〕
より算出される圧縮性指数が1.0未満である、樹脂粉体。
〔2〕ポリイミド系樹脂はポリアミドイミド樹脂である、〔1〕に記載の樹脂粉体。
〔3〕ポリアミドイミド樹脂は、該ポリアミドイミド樹脂を構成する全構造単位に基づいて、30モル%以上のジカルボン酸に由来する構造単位を有する、〔2〕に記載の樹脂粉体。
〔4〕圧縮性指数が0.1以上である、〔1〕~〔3〕のいずれかに記載の樹脂粉体。
〔5〕ポリイミド系樹脂と前記ポリイミド系樹脂に対する良溶媒の少なくとも1種とを含む樹脂溶液に、前記ポリイミド系樹脂に対する貧溶媒の少なくとも1種を添加して樹脂粉体を析出させる析出工程を含む、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法であって、
前記析出工程は19℃以下の温度で行われ、
得られるポリイミド系樹脂粉体のアスペクト比が2.0未満であり、式(I):
圧縮性指数={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
〔式(I)中、Pは、前記ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用い、該測定試料をろ過した際の圧縮圧力[kPa]であり、
αは圧縮圧力P[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]であり、
P0は基準圧縮圧力100[kPa]であり、
α0は基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]である〕
より算出される圧縮性指数が1.0未満である、製造方法。
〔6〕前記貧溶媒はアルコール系溶媒を含む、〔5〕に記載の製造方法。
〔7〕前記析出工程において、2種以上の貧溶媒を使用する、〔5〕または〔6〕に記載の製造方法。
〔8〕前記析出工程において、樹脂溶液が白濁し始めてから貧溶媒の添加が終了するまでの時間は100分以上である、〔5〕~〔7〕のいずれかに記載の製造方法。
本発明のポリイミド系樹脂粉体は、該粉体を製造する際のろ過性が良好であり、該粉体を用いてワニスを調製する際の溶解性が良好である。
以下、本発明の実施の形態について詳細に説明する。なお、本発明の範囲はここで説明する実施の形態に限定されるものではなく、本発明の趣旨を逸脱しない範囲で種々の変更をすることができる。
<ポリイミド系樹脂粉体>
本発明のポリイミド系樹脂粉体は、アスペクト比が2.0未満であり、式(I):
圧縮性指数={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
〔式(I)中、Pは、前記ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用い、該測定試料をろ過した際の圧縮圧力[kPa]であり、
αは圧縮圧力P[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]であり、
P0は基準圧縮圧力100[kPa]であり、
α0は基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]である〕
より算出される圧縮性指数が1.0未満である、樹脂粉体である。ここで、本明細書において、ポリイミド系樹脂とは、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド前駆体樹脂、および、ポリアミドイミド前駆体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を表す。ポリイミド樹脂は、イミド基を含む繰返し構造単位を含有する樹脂であり、ポリアミドイミド樹脂は、イミド基およびアミド基の両方を含む繰返し構造単位を含有する樹脂である。また、ポリイミド前駆体樹脂およびポリアミドイミド前駆体樹脂は、それぞれ、イミド化によりポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂を与える、イミド化前の前駆体であり、ポリアミック酸とも称される樹脂である。本明細書において、上記ポリイミド前駆体樹脂および上記ポリアミドイミド前駆体樹脂を合せて、「ポリアミック酸樹脂」とも称する。
本発明のポリイミド系樹脂粉体は、アスペクト比が2.0未満であり、式(I):
圧縮性指数={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
〔式(I)中、Pは、前記ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用い、該測定試料をろ過した際の圧縮圧力[kPa]であり、
αは圧縮圧力P[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]であり、
P0は基準圧縮圧力100[kPa]であり、
α0は基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]である〕
より算出される圧縮性指数が1.0未満である、樹脂粉体である。ここで、本明細書において、ポリイミド系樹脂とは、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂、ポリイミド前駆体樹脂、および、ポリアミドイミド前駆体樹脂からなる群から選択される少なくとも1種の樹脂を表す。ポリイミド樹脂は、イミド基を含む繰返し構造単位を含有する樹脂であり、ポリアミドイミド樹脂は、イミド基およびアミド基の両方を含む繰返し構造単位を含有する樹脂である。また、ポリイミド前駆体樹脂およびポリアミドイミド前駆体樹脂は、それぞれ、イミド化によりポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂を与える、イミド化前の前駆体であり、ポリアミック酸とも称される樹脂である。本明細書において、上記ポリイミド前駆体樹脂および上記ポリアミドイミド前駆体樹脂を合せて、「ポリアミック酸樹脂」とも称する。
本発明のポリイミド系樹脂粉体は、アスペクト比が2.0未満である。アスペクト比が2.0以上である場合、ポリイミド系樹脂粉体を溶解させてワニスを調製する際に未溶解分が発生しやすく、ゲルが生じやすくなる。その理由は明らかではないが、アスペクト比が2.0以上である場合、樹脂粉体の長軸端部から溶解が始まり、溶解が進行するにつれて、ワニスの粘度が上昇するため、次第に樹脂粉体の撹拌状況が不良となりやすく、溶け残りが発生しやすく、その結果、ワニスのろ過性が低下しやすいためであると考えられる。また、ワニスを調製する場合には、樹脂粉体の長軸端部では溶解が比較的早く進むのに対し、中心部は溶解しにくく、ゲル状態で存在する時間が長くなることや、樹脂粉体同士が絡みやすくなることによって、溶解時に樹脂粒子同士の衝突頻度が増大し、塊状のゲルが生じやすくなると考えられる。
ポリイミド系樹脂粉体のアスペクト比は、ワニスを調製する際のポリイミド系樹脂粉体の溶解性の観点から、好ましくは1.8以下、より好ましくは1.6以下、さらに好ましくは1.5以下である。アスペクト比の下限は好ましくは1.0以上である。ポリイミド系樹脂粉体のアスペクト比は、ポリイミド系樹脂粒子を光学顕微鏡にて観察し、得られた画像において5個以上、好ましくは10個以上の樹脂粒子のそれぞれについて、長軸の長さLおよび短軸の長さSを測定し、L/Sの式よりアスペクト比を算出する。得られた値の平均値を、ポリイミド系樹脂粉体のアスペクト比とする。なお、この時の長軸とは、粒子の中心を通った粒子の両端部を結んで引いた最も長い直線であり、短軸とは、長軸に直角な直線であって、かつ粒子両端部を結んだ長さが最も長くなる直線を表す。アスペクト比を上記の範囲内に調整する方法としては、例えば後述する製造方法でポリイミド系樹脂粉体を製造することが挙げられる。
本発明のポリイミド系樹脂粉体において、式(I):
圧縮性指数={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
〔式(I)中、Pは、前記ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用い、該測定試料をろ過した際の圧縮圧力[kPa]であり、
αは圧縮圧力P[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]であり、
P0は基準圧縮圧力100[kPa]であり、
α0は基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]である〕
より算出される圧縮性指数は、1.0未満である。上記の式より算出されるポリイミド系樹脂粉体の圧縮性指数が1.0以上である場合、ポリイミド系樹脂粉体を製造する際のろ過性が低下しやすく、また、ポリイミド系樹脂粉体を溶解させてワニスを調製する際にゲルが生じやすくなる。その理由は明らかではないが、圧縮性指数が1.0以上である場合には、樹脂粒子が溶媒の存在下で膨潤しやすく、膨潤した樹脂粒子同士の塊が生じやすいためであると考えられる。ポリイミド系樹脂粉体の圧縮性指数は、ポリイミド系樹脂粉体を製造する際のろ過性、および、ワニスを調製する際のポリイミド系樹脂粉体の溶解性の観点から、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.7以下、さらにより好ましくは0.6以下である。また、ポリイミド系樹脂粉体の製造工程において、製造した樹脂粉体を溶媒で洗浄する際に、樹脂粉体と溶媒とを十分に接触させて、樹脂粉体から不純物を除去しやすい観点からは、圧縮性指数は好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上である。圧縮性指数を上記の範囲内に調整する方法としては、例えば後述する製造方法でポリイミド系樹脂粉体を製造することが挙げられる。
圧縮性指数={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
〔式(I)中、Pは、前記ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用い、該測定試料をろ過した際の圧縮圧力[kPa]であり、
αは圧縮圧力P[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]であり、
P0は基準圧縮圧力100[kPa]であり、
α0は基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]である〕
より算出される圧縮性指数は、1.0未満である。上記の式より算出されるポリイミド系樹脂粉体の圧縮性指数が1.0以上である場合、ポリイミド系樹脂粉体を製造する際のろ過性が低下しやすく、また、ポリイミド系樹脂粉体を溶解させてワニスを調製する際にゲルが生じやすくなる。その理由は明らかではないが、圧縮性指数が1.0以上である場合には、樹脂粒子が溶媒の存在下で膨潤しやすく、膨潤した樹脂粒子同士の塊が生じやすいためであると考えられる。ポリイミド系樹脂粉体の圧縮性指数は、ポリイミド系樹脂粉体を製造する際のろ過性、および、ワニスを調製する際のポリイミド系樹脂粉体の溶解性の観点から、好ましくは0.9以下、より好ましくは0.8以下、さらに好ましくは0.7以下、さらにより好ましくは0.6以下である。また、ポリイミド系樹脂粉体の製造工程において、製造した樹脂粉体を溶媒で洗浄する際に、樹脂粉体と溶媒とを十分に接触させて、樹脂粉体から不純物を除去しやすい観点からは、圧縮性指数は好ましくは0.1以上、より好ましくは0.2以上、さらに好ましくは0.3以上である。圧縮性指数を上記の範囲内に調整する方法としては、例えば後述する製造方法でポリイミド系樹脂粉体を製造することが挙げられる。
圧縮性指数は、ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用いて、該測定試料をろ過する際の圧縮圧力Pとろ過比抵抗αから、式(I)により算出される。なお、P0は基準圧縮圧力100kPaであり、α0は基準圧縮圧力100kPaにおけるろ過比抵抗である。測定試料として用いるポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーは、好ましくはポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒と良溶媒とを含むスラリーであり、より好ましくは、スラリーの総質量に基づいて0.1~10質量%の範囲のポリイミド系樹脂粉体と、20~89.9質量%の範囲の貧溶媒としてのメタノールもしくは水の単一溶媒ないしはそれらの混合溶媒と、10~70質量%の範囲の良溶媒としてのDMAcとを含むスラリーである。圧縮性指数は、好ましくは上記の組成のスラリーを測定試料として、圧密透過試験機を用いて測定される。なお、該測定試料として用いるスラリーは、ポリイミド系樹脂粉体の圧縮性指数を特定するために使用される測定試料であり、ポリイミド系樹脂粉体の製造工程を何ら限定するものではない。また、ポリイミド系樹脂粉体の圧縮性指数は、ポリイミド系樹脂粉体の形状、表面特性、ゲル化特性などを間接的に評価するための特性値である。測定試料として用いる該スラリーにおいて、ポリイミド系樹脂粉体は貧溶媒で膨潤している。該測定試料としてのスラリーは、ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒等とを、20~30℃で混合し、ポリイミド系樹脂粉体を貧溶媒に膨潤させるために、例えば常温で24時間以上放置して調製してもよいし、ポリイミド系樹脂を製造する際の、析出したポリイミド系樹脂と、良溶媒と、貧溶媒とを含むスラリーを、該測定試料として用いてもよい。また、測定に用いる圧密透過試験機および測定条件として、例えば実施例に記載の試験機および測定条件を用いて、ポリイミド系樹脂粉体の圧縮性指数を測定することができる。
ろ過比抵抗α[m/kg]は、例えば内部を加圧できる金属製のろ過器(ろ過面積;0.0028[m2])を用い、25℃の測定温度にて、湿潤粉体量0.030kgで試験したときにろ過速度v[m/s]を取得することにより式(II)より導出できる。
〔式(II)中、ΔPはろ過圧力[Pa]であり、
ろ過圧力は、試験機上部と通液するろ液上面の高さとの差圧であり、
μはろ液の粘度[Pa・s]であり、
vはろ過速度[m/s]であり、
mはろ過面積あたりの溶媒を含んだポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体量[kg/m2]であり、
ρはろ液の密度[kg/m3]であり、
gは重力加速度9.8[m/s2]であり、
ΔHは試験機上部と通液するろ液上面の高さとの差分[m]を表す。〕
ろ過圧力は、試験機上部と通液するろ液上面の高さとの差圧であり、
μはろ液の粘度[Pa・s]であり、
vはろ過速度[m/s]であり、
mはろ過面積あたりの溶媒を含んだポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体量[kg/m2]であり、
ρはろ液の密度[kg/m3]であり、
gは重力加速度9.8[m/s2]であり、
ΔHは試験機上部と通液するろ液上面の高さとの差分[m]を表す。〕
なお、ろ過速度v[m/s]は、5mLのろ液の全量がポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を通液するまでに要した時間θ[s]とろ過時のろ過面積A[m2]から、式(III);
v=5×10-6/A×θ 式(III)
により算出する。
ρは好ましくは500kg/m3以上、より好ましくは700m3/kg以上であり、好ましくは1200kg/m3以下、より好ましくは1000m3/kg以下である。
ΔHは好ましくは0.2m以上、より好ましくは0.3m以上であり、好ましくは0.6m以下、より好ましくは0.5m以下である。
μは好ましくは0.0005Pa・s以上、より好ましくは0.001Pa・s以上であり、好ましくは0.003Pa・s以下、より好ましくは0.0025Pa・s以下である。
mは好ましくは5kg/m2以上、より好ましくは7kg/m2以上であり、好ましくは15kg/m2以下、より好ましくは13kg/m2以下である。
v=5×10-6/A×θ 式(III)
により算出する。
ρは好ましくは500kg/m3以上、より好ましくは700m3/kg以上であり、好ましくは1200kg/m3以下、より好ましくは1000m3/kg以下である。
ΔHは好ましくは0.2m以上、より好ましくは0.3m以上であり、好ましくは0.6m以下、より好ましくは0.5m以下である。
μは好ましくは0.0005Pa・s以上、より好ましくは0.001Pa・s以上であり、好ましくは0.003Pa・s以下、より好ましくは0.0025Pa・s以下である。
mは好ましくは5kg/m2以上、より好ましくは7kg/m2以上であり、好ましくは15kg/m2以下、より好ましくは13kg/m2以下である。
<ポリイミド系樹脂粉体の製造方法>
本発明のポリイミド系樹脂粉体は、ポリイミド系樹脂と少なくとも1種の前記ポリイミド系樹脂に対する良溶媒とを含む樹脂溶液に、少なくとも1種の前記ポリイミド系樹脂に対する貧溶媒を添加して樹脂粉体を析出させる工程を含む、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法であって、前記析出工程は19℃以下の温度で行われる製造方法によって製造することができる。得られるポリイミド系樹脂粉体のアスペクト比および圧縮性指数は、上記に述べた通りである。本発明は上記製造方法も提供する。
本発明のポリイミド系樹脂粉体は、ポリイミド系樹脂と少なくとも1種の前記ポリイミド系樹脂に対する良溶媒とを含む樹脂溶液に、少なくとも1種の前記ポリイミド系樹脂に対する貧溶媒を添加して樹脂粉体を析出させる工程を含む、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法であって、前記析出工程は19℃以下の温度で行われる製造方法によって製造することができる。得られるポリイミド系樹脂粉体のアスペクト比および圧縮性指数は、上記に述べた通りである。本発明は上記製造方法も提供する。
本発明の製造方法は、ポリイミド系樹脂と少なくとも1種の前記ポリイミド系樹脂に対する良溶媒とを含む樹脂溶液に、少なくとも1種の前記ポリイミド系樹脂に対する貧溶媒を添加して樹脂粉体を析出させる工程を含む。ポリイミド系樹脂と少なくとも1種の前記ポリイミド系樹脂に対する良溶媒とを含む樹脂溶液において、ポリイミド系樹脂は該良溶媒に溶解している。
前記樹脂溶液は、モノマーを溶媒中、特にポリイミド系樹脂に対する良溶媒中で重合させて得た反応溶液であってもよいし、単離したポリイミド系樹脂を良溶媒に溶解させて得た溶液であってもよい。ポリイミド系樹脂溶液を製造しやすい観点からは、モノマーの重合反応を後述する良溶媒中で行い、得られた反応溶液をポリイミド系樹脂溶液として用いることが好ましい。
ポリイミド系樹脂溶液に含まれる良溶媒は、ポリイミド系樹脂を溶解させやすい溶媒であり、例えばポリイミド系樹脂に対する、20~30℃での溶解度が1質量%以上の溶媒をいう。ポリイミド系樹脂溶液に含まれる良溶媒は、1種類の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合物であってもよい。良溶媒としては、例えば、アセトン、N,N-ジメチルホルムアミド(以下、DMFと記載することがある)、ジメチルスルホキシド(以下、DMSOと記載することがある)、γ-ブチロラクトン(以下、GBLと記載することがある)、N,N-ジメチルアセトアミド(以下、DMAcと記載することがある)が挙げられる。良溶媒のポリイミド系樹脂に対する溶解度は、容積効率の観点から、好ましくは3質量%以上、より好ましくは5質量%以上である。良溶媒のポリイミド系樹脂に対する溶解度の上限は特に限定されないが、貧溶媒の使用量を削減できる観点からは、好ましくは40質量%以下、より好ましくは25質量%以下である。
ポリイミド系樹脂溶液における良溶媒の含有量は、操作上、扱いやすい粘度に調整しやすい観点から、ポリイミド系樹脂溶液の総量に対して好ましくは60質量%以上、より好ましくは75質量%以上である。また、ポリイミド系樹脂溶液における良溶媒の含有量は、貧溶媒の使用量を削減できる観点から、ポリイミド系樹脂溶液の総量に対して好ましくは98質量%以下、より好ましくは95質量%以下である。
前記ポリイミド系樹脂溶液は、さらに貧溶媒を含んでもよい。貧溶媒としては、例えば、アルコール系溶媒およびエーテル系溶媒が挙げられ、前記ポリイミド系樹脂溶液の粘度抑制の観点から、好ましくはアルコール系溶媒である。アルコール系溶媒としては、2-プロパノール、エタノール、メタノール等が挙げられ、好ましくはメタノールである。ポリイミド系樹脂溶液に含まれる貧溶媒の含有量は、ポリイミド系樹脂溶液中のポリイミド系樹脂が析出しない範囲であれば、特に限定されない。
貧溶媒がアルコール系溶媒である場合、ポリイミド系樹脂溶液に含まれる貧溶媒の含有量は、良溶媒100質量部に対して、0質量部超、100質量部以下であってもよく、沈殿が生じにくく送液良好な傾向があることから、良溶媒100質量部に対して、好ましくは10~60質量部であり、より好ましくは20~40質量部である。
貧溶媒がアルコール系溶媒である場合、ポリイミド系樹脂溶液に含まれる貧溶媒の含有量は、良溶媒100質量部に対して、0質量部超、100質量部以下であってもよく、沈殿が生じにくく送液良好な傾向があることから、良溶媒100質量部に対して、好ましくは10~60質量部であり、より好ましくは20~40質量部である。
ポリイミド系樹脂溶液におけるポリイミド系樹脂の含有量は、容積効率の観点から、ポリイミド系樹脂溶液の総量に対して好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上である。また、ポリイミド系樹脂溶液におけるポリイミド系樹脂の含有量は、操作上、扱いやすい粘度に調整しやすい観点、および、上記のアスペクト比および圧縮性指数を満たす粉体を製造しやすい観点から、ポリイミド系樹脂溶液の総量に対して好ましくは20質量%以下、より好ましくは10質量%以下、さらに好ましくは7質量%以下である。
本発明の製造方法は、ポリイミド系樹脂と少なくとも1種の良溶媒とを含む樹脂溶液に、少なくとも1種の前記ポリイミド系樹脂に対する貧溶媒を添加して樹脂粉体を析出させる工程を含み、好ましくは、該樹脂溶液に、2種以上の貧溶媒を添加して樹脂粉体を析出させる工程を含む。
ポリイミド系樹脂に対する貧溶媒は、ポリイミド系樹脂を溶解させにくい溶媒であり、例えばポリイミド系樹脂に対する、20~30℃での溶解度が1質量%未満の溶媒をいう。貧溶媒としては、例えば、メタノールおよび2-プロパノール等のアルコール系溶媒、酢酸エチル、テトラヒドロフラン、トルエン、ヘキサン、水が挙げられ、このうちアルコール系溶媒が好ましい。貧溶媒は、1種類の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合物であってもよい。
使用する溶媒が、ポリイミド系樹脂に対して良溶媒であるか貧溶媒であるかは下記の方法で確認することができる。溶媒にポリイミド系樹脂を1質量%となるように加え、必要に応じて加熱および撹拌等することにより溶媒に樹脂を溶解させ、20~30℃の状態での溶液が均一に透明になっていれば該溶媒は良溶媒であると判断し、溶け残りが存在した場合や一度溶解した樹脂が析出した場合は、貧溶媒であると判断する。例えば本実施例においては、容器に溶媒を測りとり、撹拌し、そこに、1質量%になるようにポリイミド系樹脂を入れ、24℃で3時間撹拌を行った。その結果、溶液が均一に透明になっていれば良溶媒であり、溶け残りが存在した場合は貧溶媒であると判断した。
本発明の製造方法は、ポリイミド系樹脂と良溶媒とを含む樹脂溶液に少なくとも1種の貧溶媒を添加して樹脂粉体を析出させる析出工程を含み、好ましくは少なくとも2種の貧溶媒を添加することを含む。ここで、少なくとも2種類の貧溶媒を添加するとは、互いに異なる貧溶媒を別々に添加することを意味する。以下において、1種類の貧溶媒を用いる場合は、第1の貧溶媒と称し、少なくとも2種類の貧溶媒を用いる場合には、第1の貧溶媒および第2の貧溶媒と称して説明する。なお、第1および第2の貧溶媒に加え、第3の貧溶媒を用いてもよい。また、貧溶媒を添加する順序は特に限定されず、同時に添加してもよいが、ポリイミド系樹脂に対する溶解度が低くなる順序で添加させることが好ましい。
第1の貧溶媒および場合により使用される第2の貧溶媒は、ポリイミド系樹脂を溶解させにくい溶媒であり、それぞれ、1種類の溶媒であってもよいし、2種以上の溶媒の混合物であってもよい。第1の貧溶媒および第2の貧溶媒を使用する場合、第1の貧溶媒と第2の貧溶媒とは、それぞれが互いに異なる1種類の物質であってもよいし、一方が1種類の物質で、他方が2種以上の物質の混合物であってもよいし、両方が2種以上の物質の混合物であってもよい。なお、第1の貧溶媒および第2の貧溶媒が、互いに混合割合においてのみ異なる2種以上の物質の混合物であってもよい。ポリイミド系樹脂を析出させやすい観点からは、第1の貧溶媒および第2の貧溶媒を用いることが好ましく、溶解度が互いに異なる1種類の溶媒である第1の貧溶媒および第2の貧溶媒を用いることがより好ましい。
本発明の製造方法は、具体的には、ポリイミド系樹脂と少なくとも1種の前記ポリイミド系樹脂に対する良溶媒とを含む樹脂溶液に、少なくとも1種の前記ポリイミド系樹脂に対する貧溶媒を添加して樹脂粉体を析出させる析出工程を含む。ポリイミド系樹脂が良溶媒中に溶解したポリイミド系樹脂の溶液に貧溶媒を添加すると、溶媒全体としてのポリイミド系樹脂の溶解度が下がることにより、溶解しきれなくなったポリイミド系樹脂が、場合によりゲル状態を経て、最終的に粉体として析出する。
貧溶媒の添加による溶解度の変化速度が速すぎる場合、ポリイミド系樹脂が固体化し析出する速度が速くなる。析出速度が速すぎると、樹脂溶液に溶解していたポリイミド系樹脂が粒子となる際に、粒子表面での析出および固体化が進む。このため、粒子表面は固体化されているが、粒子の内部に溶媒等を含んだゲルが残る状態で粉体となりやすいと考えられる。このような粉体を乾燥させる際、粒子の内部に残っていた溶媒が揮発し、粒子表面には無数のしわ等が生じやすくなり、その結果、このような粉体は貧溶媒で膨潤させた際に圧縮性指数が高くなりやすく、ゲル化しやすい粉体となると考えられる。
一方、貧溶媒の添加による溶解度の変化速度が遅すぎる場合、樹脂溶液に溶解していたポリイミド系樹脂が粉体として析出する前に、ゲル状態で滞留する時間が長くなる。ゲル状態のポリイミド系樹脂は撹拌によるせん断力などの外力によって形状が変わりやすく、撹拌によって引き延ばされ、最終的に例えば高いアスペクト比の粒子として析出すると考えられる。このような粒子も、1つの粒子内に溶解性が異なる部分が存在することとなるため、ワニスを調製する際のポリイミド系樹脂粉体の溶解性が低下する場合がある。
貧溶媒の添加方法は特に限定されないが、添加速度を調整しやすく、上記特徴を満たす粉体を得やすい観点から、滴下により添加を行うことがより好ましい。なお、ポリイミド系樹脂溶液中においては、少なくとも一部のポリイミド系樹脂が溶解した状態である限り、一部のポリイミド系樹脂が粉体として析出していてもよいし、全てのポリイミド系樹脂が溶解していてもよい。ポリイミド系樹脂溶液を貧溶媒に添加して析出させる方法も知られてはいるが、当該方法では通常、上記特徴を満たすポリイミド系樹脂粉体は得ることが難しい。
ポリイミド系樹脂溶液に貧溶媒を添加して樹脂粉体を析出させる析出工程は、低温で行うことが好ましく、例えば19℃以下、好ましくは17℃以下、より好ましくは15℃以下の温度で行われる。析出工程の温度を低くすることにより、析出し始めたポリイミド系樹脂がゲル状態で滞留する時間を短くすることができ、撹拌のせん断力によりポリイミド系樹脂のゲルが引き延ばされることを防止しやすく、アスペクト比を小さくしやすい。その結果、該粉体を用いてワニスを調製する際に、粉体が均一に溶解するため、結果として途中の粘度上昇が一様となり溶け残り発生を抑制することができると考えられる。析出工程の温度は、貧溶媒を添加した樹脂溶液の粘度が増加しすぎることを防止し、撹拌不良を防止する観点、および、ポリイミド系樹脂の析出速度を適度な範囲に調整しやすい観点からは、好ましくは0℃以上、より好ましくは3℃以上、さらに好ましくは5℃以上である。
ポリイミド系樹脂溶液に貧溶媒を添加して樹脂粉体を析出させる析出工程において、貧溶媒の添加量が増えていくにつれ、ある時点で良溶媒に溶解していたポリイミド系樹脂がゲル状態で析出し始め、ポリイミド系樹脂と良溶媒と貧溶媒とを含む樹脂溶液が白濁し始める。樹脂溶液が白濁し始めてから、さらに貧溶媒を添加することによって、ゲル状態で析出し始めたポリイミド系樹脂に対する溶解度が低下し、最終的に樹脂固体粒子となって析出する。
樹脂溶液が白濁し始めてから貧溶媒の添加が終了するまでの時間は、好ましくは15分以上であり、より好ましくは60分以上である。該時間は、さらにより好ましくは100分以上であり、とりわけ好ましくは110分以上、とりわけより好ましくは120分以上である。ポリイミド系樹脂の析出に要する時間を上記の下限以上とすることによって、特にゲル状態のポリイミド系樹脂を適度な速度で固体状態へと遷移させ、粒子の内部に溶媒が残りにくくすることができると考えられ、その結果、表面形状が均質であり、ゲル化しにくい粉体を得ることができると考えられる。また、樹脂溶液が白濁し始めてから貧溶媒の添加が終了するまでの時間は、好ましくは480分以下、より好ましくは300分以下である。該時間は、さらにより好ましくは200分以下、より好ましくは180分以下、さらに好ましくは160分以下である。上記の時間以下で添加を終了させることによって、ポリイミド系樹脂がゲル状態で滞留する時間を適度に短くすることができ、ポリイミド系樹脂が撹拌によるせん断力で引き延ばされることを防止し、得られる粉体のアスペクト比を上記の範囲に調整しやすくなる。また、ゲル状態の粒子同士が衝突することにより、ゲルが凝集し、塊が生じることも防止しやすい。
貧溶媒として第1の貧溶媒と第2の貧溶媒を用いる場合について、以下に説明する。ポリイミド系樹脂と良溶媒とを含む樹脂溶液に、まず、第1の貧溶媒を添加する。第1の貧溶媒を添加後、ポリイミド系樹脂の少なくとも一部が樹脂溶液に溶解している限り、一部の樹脂が析出していても、析出していなくてもよい。次いで、第1の貧溶媒を添加後のポリイミド系樹脂溶液に、第2の貧溶媒を添加する。第2の貧溶媒を添加することにより、ポリイミド系樹脂を析出させることができる。第2の貧溶媒を添加することによりポリイミド系樹脂を析出させやすい観点から、第2の貧溶媒のポリイミド系樹脂に対する溶解度は、第1の貧溶媒のポリイミド系樹脂に対する溶解度よりも低いことが好ましい。
第1の貧溶媒は、続く第2の貧溶媒を添加する工程においてポリイミド系樹脂を析出させやすい観点から、炭素数1~4のアルコールを主成分とする溶媒であることが好ましい。なお、本明細書において、主成分とするとは、70質量%以上を占めることを意味する。第1の貧溶媒中の炭素数1~4のアルコールの割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
第2の貧溶媒は、ポリイミド系樹脂を析出させやすい観点から、水を主成分とする溶媒であることが好ましい。第2の貧溶媒中の水の割合は、好ましくは70質量%以上、より好ましくは80質量%以上、さらに好ましくは90質量%以上である。
ポリイミド系樹脂を含む溶液に貧溶媒を添加する方法としては、局所的なポリイミド系樹脂粉体の析出を抑制する観点からは、貧溶媒の局所的な濃度上昇を抑制できる方法が好ましく、ポリイミド系樹脂粉体の製造効率を高めやすい観点からは、添加速度を早くできる方法が好ましい。これらの観点から、ポリイミド系樹脂を含む溶液に貧溶媒を添加する好ましい方法としては、該貧溶媒を、例えば複数のノズルまたは複数の枝分かれを有するノズルを用いて、ライン分割して添加する方法、シャワーノズルを用いて添加する方法、貧溶媒の吐出口がポリイミド系樹脂を含む溶液中に浸漬された状態で添加を行うディップ法、ノズルの先に分散板を取り付ける方法などが挙げられる。
本発明の製造方法は、ポリイミド系樹脂の溶液に貧溶媒を添加する工程の他に、該工程の後、得られた混合物をろ過してポリイミド系樹脂組成物を得る工程をさらに含んでよい。なお、ろ過により得られるポリイミド系樹脂組成物は、湿潤粉体とも称される組成物であり、ポリイミド系樹脂粉体を得るための中間体である。ポリイミド系樹脂組成物には、ポリイミド系樹脂粉体と、良溶媒および/または貧溶媒が含まれており、ポリイミド系樹脂組成物を乾燥させることによりポリイミド系樹脂粉体が得られる。
得られた混合物をろ過してポリイミド系樹脂組成物を得る工程について、ろ過方法は特に限定されず、析出物と溶媒の透過性が異なるフィルターを介して、重力により分離する方法、遠心力により分離する方法、加圧により分離する方法が挙げられる。ろ過後のポリイミド系樹脂粉体の湿潤粉体を乾燥させて溶媒を除去することにより、本発明のポリイミド系樹脂粉体を製造することができる。本発明の製造方法におけるろ過工程において、得られた反応液を測定試料として測定したポリイミド系樹脂粉体の圧縮性指数にも、上記の本発明のポリイミド系樹脂粉体の圧縮性指数に関する記載が同様にあてはまる。この場合、本発明の製造方法のろ過工程において、ポリイミド系樹脂粉体のろ過性を向上させやすい。
本発明の製造方法は、得られた混合物をろ過してポリイミド系樹脂組成物を得る工程の後、さらに、ポリイミド系樹脂組成物を乾燥させ、ポリイミド系樹脂粉体を得る工程をさらに含んでよい。乾燥条件は、ポリイミド系樹脂組成物中の溶媒が除去される限り特に限定されない。例えば、減圧または大気圧条件下、50~250℃程度の温度で1~48時間程度加熱する方法により行ってよい。
本発明の製造方法の好ましい一実施形態において、貧溶媒を添加する前の、ポリイミド系樹脂と前記ポリイミド系樹脂に対する少なくとも1種の良溶媒とを含む樹脂溶液におけるポリイミド系樹脂の濃度は、樹脂溶液の総量に対して好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上であり、好ましくは30質量%以下、より好ましくは20質量%以下である。
貧溶媒を添加する前のポリイミド系樹脂溶液に含まれるポリイミド系樹脂の質量をWA[kg]とすると、析出工程において添加する貧溶媒の総量WB[kg]は、WAの好ましくは5倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上、さらにより好ましくは30倍以上である。また、貧溶媒の滴下速度は、析出工程のスケールに応じて適宜調整してよく、特に樹脂溶液が白濁し始めてから貧溶媒の添加が終了するまでの工程は、上記の好ましい時間の範囲内で添加が終了するように、貧溶媒の滴下速度を調整すればよい。
本発明の製造方法の一実施形態において、第1の貧溶媒としてアルコール系溶媒、特にメタノールを使用し、第2の貧溶媒として、水を使用する。この場合、ポリイミド系樹脂溶液に添加する第1の貧溶媒の総量WB1[kg]は、ポリイミド系樹脂溶液に含まれるポリイミド系樹脂の質量WA[kg]に対して、好ましくは3倍以上、より好ましくは10倍以上、さらに好ましくは20倍以上である。ポリイミド系樹脂溶液に添加する第2の貧溶媒の総量WB2[kg]は、ポリイミド系樹脂溶液に含まれるポリイミド系樹脂の質量WA[kg]に対して、好ましくは1.5倍以上、より好ましくは5倍以上、さらに好ましくは10倍以上である。また、第1の貧溶媒の総量WB1[kg]の割合は、第2の貧溶媒の総量WB2[kg]に対して、好ましくは0.5倍以上、より好ましくは1倍以上であり、好ましくは5倍以下、より好ましくは3倍以下である。
<ポリイミド系樹脂>
本発明のポリイミド系樹脂粉体におけるポリイミド系樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂またはポリアミック酸樹脂である。ポリイミド系樹脂粉体は、1種類のポリイミド系樹脂を含有する粉体であってもよいし、2種以上のポリイミド系樹脂を含有する粉体であってもよい。ポリイミド系樹脂は、製膜性の観点から、好ましくはポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂であり、より好ましくはポリアミドイミド樹脂である。
本発明のポリイミド系樹脂粉体におけるポリイミド系樹脂は、ポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂またはポリアミック酸樹脂である。ポリイミド系樹脂粉体は、1種類のポリイミド系樹脂を含有する粉体であってもよいし、2種以上のポリイミド系樹脂を含有する粉体であってもよい。ポリイミド系樹脂は、製膜性の観点から、好ましくはポリイミド樹脂、ポリアミドイミド樹脂であり、より好ましくはポリアミドイミド樹脂である。
本発明のポリイミド系樹脂粉体におけるポリイミド系樹脂のポリスチレン換算重量平均分子量(以下、Mwと記載することがある)は、ゲル化を防止しやすく、ろ過性が良好であり、ワニス調製時の溶解性が良好な粉体を製造しやすい観点、および、該粉体を用いて製造した光学フィルムの経時的な黄変抑制、および耐屈曲性向上の観点からは、好ましくは100,000以上、より好ましくは120,000以上、より好ましくは150,000以上、さらに好ましくは180,000以上である。ポリイミド系樹脂のポリスチレン換算のMwは、ワニスの製造しやすさや、高分子材料を製造する際の成膜性の観点からは、好ましくは800,000以下、より好ましくは600,000以下、さらに好ましくは500,000以下、さらにより好ましくは450,000以下である。上記Mwは、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(以下、GPCと記載することがある)測定により測定される。測定条件としては、実施例に記載する条件を使用してよい。
本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(1)で表される構成単位を有するポリイミド樹脂であるか、または、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であることが好ましい。ポリイミド系樹脂は、透明性や屈曲性の観点から、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂であることがより好ましい。以下において式(1)および式(2)について説明するが、式(1)についての説明は、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂の両方に関し、式(2)についての説明は、ポリアミドイミド樹脂に関する。
式(1)で表される構成単位は、テトラカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位であり、式(2)で表される構成単位は、ジカルボン酸化合物とジアミン化合物とが反応して形成される構成単位である。
ポリイミド系樹脂が、式(1)で表される構成単位を有するポリイミド樹脂であるか、または、式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂である本発明の一態様において、式(1)中のYは、互いに独立に、4価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の4価の有機基を表す。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基であり、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。本発明の一実施態様である上記ポリイミド系樹脂は、複数種のYを含み得、複数種のYは、互いに同一であっても、異なっていてもよい。Yとしては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基;それらの式(20)~式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基;ならびに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
[式(20)~式(29)中、*は結合手を表し、
W1は、単結合、-O-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-Ar-、-SO2-、-CO-、-O-Ar-O-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH2-Ar-、-Ar-C(CH3)2-Ar-または-Ar-SO2-Ar-を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。]
W1は、単結合、-O-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-Ar-、-SO2-、-CO-、-O-Ar-O-、-Ar-O-Ar-、-Ar-CH2-Ar-、-Ar-C(CH3)2-Ar-または-Ar-SO2-Ar-を表す。Arは、水素原子がフッ素原子で置換されていてもよい炭素数6~20のアリーレン基を表し、具体例としてはフェニレン基が挙げられる。]
式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)および式(29)で表される基の中でも、該ポリイミド系樹脂を含んでなる光学部材の表面硬度および柔軟性の観点から、式(26)、式(28)または式(29)で表される基が好ましく、式(26)で表される基がより好ましい。また、W1は、該ポリイミド系樹脂を含んでなる光学部材の表面硬度および柔軟性の観点から、互いに独立に、単結合、-O-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-または-C(CF3)2-であることが好ましく、単結合、-O-、-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-または-C(CF3)2-であることがより好ましく、単結合、-O-、-C(CH3)2-または-C(CF3)2-であることがさらに好ましく、-O-または-C(CF3)2-であることがことさら好ましい。
上記態様において、式(1)で表される複数の構成単位におけるYの少なくとも一部は、式(5)で表される構成単位であることが好ましい。式(1)で表される複数の構成単位におけるYの少なくとも一部が式(5)で表される基であると、該ポリイミド系樹脂を含んでなる光学部材は、高い透明性を発現しやすいと同時に、高い屈曲性骨格に由来して、該ポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を向上し、ポリイミド系樹脂を含むワニスの粘度を低く抑制することができ、また光学部材の加工を容易にすることができる。
[式(5)中、R18~R25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表し、R18~R25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、*は結合手を表す。]
式(5)において、R18、R19、R20、R21、R22、R23、R24、R25は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表し、好ましくは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表す。ここで、R18~R25に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。R18~R25は、互いに独立に、該ポリイミド系樹脂を含んでなる光学部材の表面硬度および柔軟性の観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基であり、特に好ましくは水素原子またはトリフルオロメチル基である。
本発明の好適な実施態様においては、式(5)で表される構成単位は、式(5’)で表される基であり、すなわち、式(1)で表される複数の構成単位における複数のYの少なくとも一部は、式(5’)で表される構成単位である。この場合、該ポリイミド系樹脂を含んでなる光学部材は、高い透明性を有することができる。
[式(5’)中、*は結合手を表す]
本発明の好適な実施態様において、上記ポリイミド系樹脂中のYの、好ましくは50モル%以上、より好ましくは60モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が式(5)、特に式(5’)で表される。上記ポリイミド系樹脂における上記範囲内のYが式(5)、特に式(5’)で表されると、該ポリイミド系樹脂を含んでなる光学部材は高い透明性を有することができ、さらにフッ素元素を含有する骨格により該ポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を向上し、ポリイミド系樹脂を含むワニスの粘度を低く抑制することができ、また光学部材の製造が容易である。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂中のYの100モル%以下が式(5)、特に式(5’)で表される。上記ポリイミド系樹脂中のYは式(5)、特に式(5’)であってもよい。上記ポリイミド系樹脂中のYの式(5)で表される構成単位の含有率は、例えば1H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
ポリイミド系樹脂が式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位を有するポリアミドイミド樹脂である本発明の一態様において、式(2)中のZは、互いに独立に、2価の有機基を表す。本発明の一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂は、複数種のZを含み得、複数種のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。前記2価の有機基は、好ましくは炭素数4~40の2価の有機基を表す。前記有機基は、炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。Zの有機基としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基の結合手のうち、隣接しない2つが水素原子に置き換わった基並びに炭素数6以下の2価の鎖式炭化水素基が例示される。光学フィルムの光学特性を向上、例えばYI値を低減しやすい観点から、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)または式(29)で表される基において、隣接しない2つの結合手が水素原子に置き換わった基が好ましい。本発明の一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂は、Zとして1種類の有機基を含んでいてもよいし、2種類以上の有機基を含んでいてもよい。
Zの有機基としては、式(20’)、式(21’)、式(22’)、式(23’)、式(24’)、式(25’)、式(26’)、式(27’)、式(28’)および式(29’):
[式(20’)~式(29’)中、W1および*は、式(20)~式(29)において定義する通りである]
で表される2価の有機基がより好ましい。なお、式(20)~式(29)および式(20’)~式(29’)における環上の水素原子は、炭素数1~8の炭化水素基、フッ素置換された炭素数1~8の炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、フッ素置換された炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよい。
で表される2価の有機基がより好ましい。なお、式(20)~式(29)および式(20’)~式(29’)における環上の水素原子は、炭素数1~8の炭化水素基、フッ素置換された炭素数1~8の炭化水素基、炭素数1~6のアルコキシ基、フッ素置換された炭素数1~6のアルコキシ基で置換されていてもよい。
ポリアミドイミド樹脂が、式(2)中のZが上記の式(20’)~式(29’)のいずれかで表される構成単位を有する場合、ポリアミドイミド樹脂は、該構成単位に加えて、次の式(d1):
[式(d1)中、R24は、互いに独立に、水素原子、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を表し、R25は、R24または-C(=O)-*を表し、*は結合手を表す]
で表されるカルボン酸由来の構成単位をさらに有することが、ワニスの粘度を低くしやすく、ワニスの成膜性を高めやすく、得られる光学フィルムの均一性を高めやすい観点から好ましい。
で表されるカルボン酸由来の構成単位をさらに有することが、ワニスの粘度を低くしやすく、ワニスの成膜性を高めやすく、得られる光学フィルムの均一性を高めやすい観点から好ましい。
R24において、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基および炭素数6~12のアリール基としては、それぞれ、後述する式(3)中のR1~R8に関して例示のものが挙げられる。構成単位(d1)としては、具体的には、ジカルボン酸化合物に由来する構成単位であるR24およびR25がいずれも水素原子である構成単位、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位であるR24がいずれも水素原子であり、R25が-C(=O)-*を表す構成単位等が挙げられる。
本発明の一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂は、複数の式(1)で表される構成単位および式(2)で表される構成単位を含み、該構成単位において複数のZを含み得、複数のZは、互いに同一であっても異なっていてもよい。特に、得られるフィルムの表面硬度および光学特性を向上させやすい観点から、Zの少なくとも一部が、式(3a):
[式(3a)中、RgおよびRhは、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または炭素数6~12のアリール基を表し、RgおよびRhに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、A、mおよび*は式(3)中のA、mおよび*と同じであり、tおよびuは互いに独立に0~4の整数である]
で表されることが好ましく、式(3):
[式(3)中、R1~R8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または炭素数6~12のアリール基を表し、R1~R8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-、-S-、-CO-または-N(R9)-を表し、R9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し、
mは0~4の整数であり、
*は結合手を表す]
で表されることがより好ましい。
で表されることが好ましく、式(3):
Aは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-、-S-、-CO-または-N(R9)-を表し、R9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表し、
mは0~4の整数であり、
*は結合手を表す]
で表されることがより好ましい。
式(3)および式(3a)において、Aは、互いに独立に、単結合、-O-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-、-S-、-CO-または-N(R9)-を表し、得られるフィルムの耐屈曲性の観点から、好ましくは-O-または-S-を表し、より好ましくは-O-を表す。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または炭素数6~12のアリール基を表す。RgおよびRhは、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または炭素数6~12のアリール基を表す。炭素数1~6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。ワニスから得られるフィルムの表面硬度および柔軟性の観点から、R1~R8は、互いに独立に、好ましくは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。ここで、R1~R8、RgおよびRhに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
R9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1~12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。ポリイミド系樹脂は、複数種のAを含み得、複数種のAは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
R1、R2、R3、R4、R5、R6、R7およびR8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または炭素数6~12のアリール基を表す。RgおよびRhは、互いに独立に、ハロゲン原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基、または炭素数6~12のアリール基を表す。炭素数1~6のアルキル基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基等が挙げられる。炭素数1~6のアルコキシ基としては、例えばメトキシ基、エトキシ基、プロピルオキシ基、イソプロピルオキシ基、ブトキシ基、イソブトキシ基、tert-ブトキシ基、ペンチルオキシ基、ヘキシルオキシ基、シクロヘキシルオキシ基等が挙げられる。炭素数6~12のアリール基としては、例えばフェニル基、トリル基、キシリル基、ナフチル基、ビフェニル基等が挙げられる。ワニスから得られるフィルムの表面硬度および柔軟性の観点から、R1~R8は、互いに独立に、好ましくは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、さらに好ましくは水素原子を表す。ここで、R1~R8、RgおよびRhに含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。
R9は水素原子、ハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。炭素数1~12の1価の炭化水素基としては、例えばメチル基、エチル基、n-プロピル基、イソプロピル基、n-ブチル基、sec-ブチル基、tert-ブチル基、n-ペンチル基、2-メチル-ブチル基、3-メチルブチル基、2-エチル-プロピル基、n-ヘキシル基、n-ヘプチル基、n-オクチル基、tert-オクチル基、n-ノニル基、n-デシル基等が挙げられ、これらはハロゲン原子で置換されていてもよい。前記ハロゲン原子としては、フッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子などが挙げられる。ポリイミド系樹脂は、複数種のAを含み得、複数種のAは、互いに同一でよく、異なっていてもよい。
式(3a)中のtおよびuは、互いに独立に、0~4の整数であり、好ましくは0~2の整数、より好ましくは0または1、さらにより好ましくは0である。
式(3)および式(3a)において、mは、0~4の範囲の整数であり、mがこの範囲内であると、ワニスの安定性、および、ワニスから得られるフィルムの耐屈曲性や弾性率が良好になりやすい。また、式(3)および式(3a)において、mは、好ましくは0~3の範囲の整数、より好ましくは0~2の範囲の整数、さらに好ましくは0または1、さらにより好ましくは0である。mがこの範囲内であると、フィルムの耐屈曲性や弾性率を向上させやすい。また、Zは、式(3)または式(3a)で表される構成単位を1種または2種類以上含んでいてもよく、光学フィルムの弾性率および耐屈曲性の向上、YI値低減の観点、光学フィルムの経時的な黄変抑制の観点から、特にmの値が異なる2種類以上の構成単位、好ましくはmの値の異なる2種類または3種類の構成単位を含んでいてもよい。その場合、ワニスから得られるフィルムの高い弾性率、耐屈曲性および低いYI値を発現しやすい観点から、樹脂がZにおいて、mが0である式(3)または式(3a)で表される構成単位を含有することが好ましく、該構成単位に加えてmが1である式(3)または式(3a)で表される構成単位をさらに含有することがより好ましい。また、mが0である式(3)で表されるZを有する式(2)で表される構成単位に加えて、上記の式(d1)で表される構成単位をさらに有することも好ましい。
本発明の好ましい一実施形態において、樹脂は、式(3)で表される構成単位として、m=0であり、かつR5~R8が水素原子である構成単位を有する。より好ましい本発明の一実施形態において、樹脂は、式(3)で表される構成単位として、m=0であり、かつR5~R8が水素原子である構成単位と、式(3’):
で表される構成単位を有する。この場合、ワニスから得られるフィルムの表面硬度および耐屈曲性を向上させやすく、YI値を低減しやすく、光学フィルムの経時的な黄変を抑制しやすい。
本発明の好ましい一実施形態において、ポリアミドイミド樹脂の全構成単位に基づいて、30モル%以上のジカルボン酸に由来する構成単位を有することが好ましく、33モル%以上のジカルボン酸に由来する構成単位を有することが好ましい。ジカルボン酸に由来する構成単位の量が前記の範囲にあると、ワニスから得られるフィルムの表面硬度を高めやすく、かつ耐屈曲性や弾性率を高めやすい。
また、ポリアミドイミド樹脂の全構成単位に基づいて、式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上、さらにより好ましくは25モル%以上、とりわけ好ましくは30モル%以上であり、好ましくは45モル%以下、より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下である。式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合が上記の下限以上であると、ワニスから得られるフィルムの表面硬度を高めやすく、かつ耐屈曲性や弾性率を高めやすい。式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)または式(3a)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。
また、ポリアミドイミド樹脂の全構成単位に基づいて、式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合は、好ましくは10モル%以上、より好ましくは15モル%以上、さらに好ましくは20モル%以上、さらにより好ましくは25モル%以上、とりわけ好ましくは30モル%以上であり、好ましくは45モル%以下、より好ましくは40モル%以下、さらに好ましくは35モル%以下である。式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合が上記の下限以上であると、ワニスから得られるフィルムの表面硬度を高めやすく、かつ耐屈曲性や弾性率を高めやすい。式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)または式(3a)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。
また、ポリアミドイミド樹脂がm=1~4である式(3)または式(3a)の構成単位を有する場合、ポリアミドイミド樹脂の全構成単位の合計を100モル%としたときに、mが1~4である式(3)または式(3a)の構成単位の割合は、好ましくは2モル%以上、より好ましくは4モル%以上、さらに好ましくは6モル%以上、さらにより好ましくは8モル%以上であり、好ましくは70モル%以下、より好ましくは50モル%以下、さらに好ましくは30モル%以下、さらにより好ましくは15モル%以下、ことさら好ましくは12モル%以下である。mが1~4である式(3)または式(3a)の構成単位の割合が上記の下限以上であると、ワニスから得られるフィルムの表面硬度および耐屈曲性を高めやすい。mが1~4である式(3)または式(3a)の構成単位の割合が上記の上限以下であると、式(3)または式(3a)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。なお、式(1)、式(2)、式(3)または式(3a)で表される構成単位の含有量は、例えば1H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリアミドイミド樹脂中のZの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは40モル%以上、さらに好ましくは45モル%以上、さらにより好ましくは50モル%以上、とりわけ好ましくは70モル%以上が、mが0~4である式(3)または式(3a)で表される構成単位である。Zの上記の下限以上が、mが0~4である式(3)または式(3a)で表される構成単位であると、ワニスから得られるフィルムの表面硬度を高めやすいと共に、耐屈曲性および弾性率も高めやすい。また、ポリアミドイミド樹脂中のZの100モル%以下が、mが0~4である式(3)または式(3a)で表される構成単位であればよい。なお、樹脂中の、mが0~4である式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合は、例えば1H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリアミドイミド樹脂中のZの、好ましくは5モル%以上、より好ましくは8モル%以上、さらに好ましくは10モル%以上、さらにより好ましくは12モル%以上が、mが1~4である式(3)または式(3a)で表される。ポリアミドイミド樹脂のZの上記の下限以上が、mが1~4である式(3)または式(3a)で表されると、ワニスから得られるフィルムの表面硬度を高めやすく、かつ耐屈曲性および弾性率を高めやすい。また、Zの、好ましくは90モル%以下、より好ましくは70モル%以下、さらに好ましくは50モル%以下、さらにより好ましくは30モル%以下が、mが1~4である式(3)または式(3a)で表されることが好ましい。Zの上記の上限以下が、mが1~4である式(3)または式(3a)で表されると、mが1~4である式(3)または式(3a)由来のアミド結合間水素結合による樹脂含有ワニスの粘度上昇を抑制し、フィルムの加工性を向上しやすい。なお樹脂中のmが1~4である式(3)または式(3a)で表される構成単位の割合は、例えば1H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
式(1)および式(2)において、Xは、互いに独立に、2価の有機基を表し、好ましくは炭素数4~40の2価の有機基、より好ましくは環状構造を有する炭素数4~40の2価の有機基を表す。環状構造としては、脂環、芳香環、ヘテロ環構造が挙げられる。前記有機基は、有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよく、その場合、炭化水素基およびフッ素置換された炭化水素基の炭素数は好ましくは1~8である。本発明の一実施形態において、ポリイミド樹脂またはポリアミドイミド樹脂は、複数種のXを含み得、複数種のXは、互いに同一であっても異なっていてもよい。Xとしては、式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)および式(18)で表される基;それらの式(10)~式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
[式(10)~式(18)中、*は結合手を表し、
V1、V2およびV3は、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-、-CO-または-N(Q)-を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。]
V1、V2およびV3は、互いに独立に、単結合、-O-、-S-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-、-CO-または-N(Q)-を表す。ここで、Qはハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の1価の炭化水素基を表す。]
炭素数1~12の1価の炭化水素基としては、R9について上記に述べた基が挙げられる。
1つの例は、V1およびV3が単結合、-O-または-S-であり、かつ、V2が-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-または-SO2-である。V1とV2との各環に対する結合位置、および、V2とV3との各環に対する結合位置は、互いに独立に、好ましくは各環に対してメタ位またはパラ位であり、より好ましくはパラ位である。
1つの例は、V1およびV3が単結合、-O-または-S-であり、かつ、V2が-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-または-SO2-である。V1とV2との各環に対する結合位置、および、V2とV3との各環に対する結合位置は、互いに独立に、好ましくは各環に対してメタ位またはパラ位であり、より好ましくはパラ位である。
式(10)~式(18)で表される基の中でも、ワニスから得られるフィルムの表面硬度および耐屈曲性を高めやすい観点から、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)および式(17)で表される基が好ましく、式(14)、式(15)および式(16)で表される基がより好ましい。また、V1、V2およびV3は、本発明のワニスから得られるフィルムの表面硬度および柔軟性を高めやすい観点から、互いに独立に、好ましくは単結合、-O-または-S-、より好ましくは単結合または-O-である。
本発明の好ましい一実施形態において、式(1)および式(2)で表される複数の構成単位における複数のXの少なくとも一部は、式(4):
[式(4)中、R10~R17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を表し、R10~R17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、*は結合手を表す]
で表される構成単位である。式(1)および式(2)で表される複数の構成単位における複数のXの少なくとも一部が式(4)で表される基であると、ワニスから得られるフィルムの表面硬度および透明性を高めやすい。
で表される構成単位である。式(1)および式(2)で表される複数の構成単位における複数のXの少なくとも一部が式(4)で表される基であると、ワニスから得られるフィルムの表面硬度および透明性を高めやすい。
式(4)において、R10、R11、R12、R13、R14、R15、R16およびR17は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基を表す。炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基としては、式(3)における炭素数1~6のアルキル基、炭素数1~6のアルコキシ基または炭素数6~12のアリール基として例示のものが挙げられる。R10~R17は、互いに独立に、好ましくは水素原子または炭素数1~6のアルキル基を表し、より好ましくは水素原子または炭素数1~3のアルキル基を表し、ここで、R10~R17に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよい。ハロゲン原子としては、例えばフッ素原子、塩素原子、臭素原子、ヨウ素原子が挙げられる。R10~R17は、互いに独立に、光学フィルムの表面硬度、透明性および耐屈曲性の観点から、さらに好ましくは水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基を表し、さらにより好ましくはR10、R12、R13、R14、R15およびR16が水素原子、R11およびR17が水素原子、メチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基を表し、とりわけ好ましくはR11およびR17がメチル基またはトリフルオロメチル基を表す。
本発明の好ましい一実施形態において、式(4)で表される構成単位は式(4’):
で表される構成単位であり、すなわち、式(1)および式(2)で表される複数の構成単位中の複数のXの少なくとも一部は、式(4’)で表される構成単位である。この場合、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を高めやすい。また、ワニスの粘度を低減しやすく、光学フィルムの加工性を向上しやすい。また、フッ素元素を含有する骨格により、ワニスから得られるフィルムの光学特性を向上しやすい。
本発明の好ましい一実施形態において、上記ポリイミド系樹脂中のXの、好ましくは30モル%以上、より好ましくは50モル%以上、さらに好ましくは70モル%以上が式(4)、とりわけ式(4’)で表される。ポリイミド系樹脂における上記範囲内のXが式(4)、とりわけ式(4’)で表されると、フッ素元素を含有する骨格によりポリイミド系樹脂の溶媒への溶解性を向上させやすい。また、ワニスの粘度を低減しやすく、ワニスから得られるフィルムの加工性を向上しやすい。さらに、フッ素元素を含有する骨格により、ワニスから得られるフィルムの光学特性も向上しやすい。なお、好ましくは、上記ポリイミド系樹脂中のXの100モル%以下が式(4)、とりわけ式(4’)で表される。上記ポリアミドイミド樹脂中のXは式(4)、とりわけ式(4’)であってもよい。上記樹脂中のXの式(4)で表される構成単位の割合は、例えば1H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の製造方法において、ポリイミド系樹脂は、式(30)で表される構成単位および/または式(31)で表される構成単位を含むことができ、式(1)および式(2)で表される構成単位に加え、更に式(30)で表される構成単位および/または式(31)で表される構成単位を含むものであってもよい。
式(30)において、Y1は、互いに独立に、4価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Y1としては、式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)および式(29)で表される基、それらの式(20)~式(29)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基、並びに4価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のY1を含み得、複数種のY1は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(31)において、Y2は3価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。Y2としては、上記の式(20)、式(21)、式(22)、式(23)、式(24)、式(25)、式(26)、式(27)、式(28)および式(29)で表される基の結合手のいずれか1つが水素原子に置き換わった基、および3価の炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、複数種のY2を含み得、複数種のY2は、互いに同一であっても異なっていてもよい。
式(30)および式(31)において、X1およびX2は、互いに独立に、2価の有機基であり、好ましくは有機基中の水素原子が炭化水素基またはフッ素置換された炭化水素基で置換されていてもよい有機基である。X1およびX2としては、上記の式(10)、式(11)、式(12)、式(13)、式(14)、式(15)、式(16)、式(17)および式(18)で表される基;それら式(10)~式(18)で表される基中の水素原子がメチル基、フルオロ基、クロロ基またはトリフルオロメチル基で置換された基;並びに炭素数6以下の鎖式炭化水素基が例示される。
本発明の一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、式(1)および/または式(2)で表される構成単位、並びに場合により式(30)および/または式(31)で表される構成単位からなる。また、ワニスから得られるフィルムの光学特性、表面硬度および耐屈曲性の観点から、上記ポリイミド系樹脂において、式(1)および式(2)で表される構成単位は、式(1)および式(2)、並びに場合により式(30)および式(31)で表される全構成単位に基づいて、好ましくは80モル%以上、より好ましくは90モル%以上、さらに好ましくは95モル%以上である。なお、ポリイミド系樹脂において、式(1)および式(2)で表される構成単位は、式(1)および式(2)、並びに場合により式(30)および/または式(31)で表される全構成単位に基づいて、通常100%以下である。なお、上記割合は、例えば、1H-NMRを用いて測定することができ、または原料の仕込み比から算出することもできる。
本発明の一実施形態において、ワニスから得られるフィルム中におけるポリイミド系樹脂の含有量は、該フィルム100質量部に対して、好ましくは10質量部以上、より好ましくは30質量部以上、さらに好ましくは50質量部以上であり、好ましくは99.5質量部以下、より好ましくは95質量部以下である。ポリイミド系樹脂の含有量が上記範囲内であると、ワニスから得られるフィルムの光学特性および弾性率を向上させやすい。
ポリアミドイミド樹脂において、式(2)で表される構成単位の含有量は、式(1)で表される構成単位1モルに対して、好ましくは0.1モル以上、より好ましくは0.5モル以上、さらに好ましくは1.0モル以上、さらにより好ましくは1.5モル以上であり、好ましくは6.0モル以下、より好ましくは5.0モル以下、さらに好ましくは4.5モル以下である。式(2)で表される構成単位の含有量が上記の下限以上であると、ワニスから得られるフィルムの表面硬度を高めやすい。また、式(2)で表される構成単位の含有量が上記の上限以下であると、式(2)中のアミド結合間の水素結合による増粘を抑制し、光学フィルムの加工性を向上させやすい。
ポリアミドイミド樹脂において、式(2)で表される構成単位のモル数は、全構成単位に基づいて、好ましくは15モル%以上、より好ましくは20モル%以上、さらにより好ましくは30モル%以上であり、好ましくは45モル%以下、より好ましくは40モル%以下である。式(2)で表される構成単位のモル数が上記の範囲内であると、ワニスから得られるフィルムの表面硬度を高めやすいと共に、圧縮性指数を本発明の好ましい範囲に調整しやすい。また、本発明の好ましい一実施形態においては、好ましくは式(2)中のZが式(3)または式(3a)で表される構成単位、より好ましくは式(2)中のZがm=0である式(3)または式(3a)で表される構成単位のモル数が上記の範囲内である。
本発明の好ましい一実施形態において、ポリイミド系樹脂は、例えば上記の含フッ素置換基等によって導入することができる、フッ素原子等のハロゲン原子を含んでよい。ポリイミド系樹脂がハロゲン原子を含む場合、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの弾性率を向上させ、かつYI値を低減させやすい。フィルムの弾性率が高いと、該フィルムを例えばフレキシブル表示装置において使用する際に、該フィルムにおける傷およびシワ等の発生を抑制しやすい。また、フィルムのYI値が低いと、該フィルムの透明性および視認性を向上させやすくなる。ハロゲン原子は、好ましくはフッ素原子である。ポリイミド系樹脂にフッ素原子を含有させるために好ましい含フッ素置換基としては、例えばフルオロ基およびトリフルオロメチル基が挙げられる。
ポリイミド系樹脂におけるハロゲン原子の含有量は、ポリイミド系樹脂の質量を基準として、好ましくは1~40質量%、より好ましくは5~40質量%、さらに好ましくは5~30質量%である。ハロゲン原子の含有量が上記の下限以上であると、該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの弾性率をより向上させ、吸水率を下げ、YI値をより低減し、透明性および視認性をより向上させやすい。ハロゲン原子の含有量が上記の上限以下であると、樹脂の合成がしやすくなる。
ポリイミド系樹脂のイミド化率は、好ましくは90%以上、より好ましくは93%以上、さらに好ましくは96%以上である。該ポリイミド系樹脂を含むフィルムの光学的均質性を高めやすい観点から、イミド化率が上記の下限以上であることが好ましい。また、イミド化率の上限は100%以下である。イミド化率は、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値に対する、ポリイミド系樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。なお、ポリイミド系樹脂がトリカルボン酸化合物を含む場合には、ポリイミド系樹脂中のテトラカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量の2倍の値と、トリカルボン酸化合物に由来する構成単位のモル量との合計に対する、ポリイミド樹脂およびポリアミドイミド樹脂中のイミド結合のモル量の割合を示す。また、イミド化率は、IR法、NMR法などにより求めることができ、例えば、NMR法においては、実施例に記載の方法により測定できる。
ポリイミド系樹脂は、市販品を使用してもよい。ポリイミド樹脂の市販品としては、例えば三菱瓦斯化学(株)製ネオプリム(登録商標)、河村産業(株)製KPI-MX300F等が挙げられる。
<ポリイミド系樹脂の製造方法>
本発明のポリイミド系樹脂粉体およびその製造方法におけるポリイミド系樹脂に関し、ポリイミド樹脂は、例えば後述するテトラカルボン酸化合物およびジアミン化合物を主な原料として製造することができる。また、ポリアミドイミド樹脂は、例えば、後述するテトラカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物およびジアミン化合物を主な原料として製造することができる。
本発明のポリイミド系樹脂粉体およびその製造方法におけるポリイミド系樹脂に関し、ポリイミド樹脂は、例えば後述するテトラカルボン酸化合物およびジアミン化合物を主な原料として製造することができる。また、ポリアミドイミド樹脂は、例えば、後述するテトラカルボン酸化合物、ジカルボン酸化合物およびジアミン化合物を主な原料として製造することができる。
ポリイミド系樹脂の合成に用いられるテトラカルボン酸化合物としては、芳香族テトラカルボン酸およびその無水物、好ましくはその二無水物等の芳香族テトラカルボン酸化合物;および脂肪族テトラカルボン酸およびその無水物、好ましくはその二無水物等の脂肪族テトラカルボン酸化合物等が挙げられる。テトラカルボン酸化合物は、単独で用いてもよいし、2種以上を併用してもよい。テトラカルボン酸化合物は、二無水物の他、酸クロリド化合物等のテトラカルボン酸化合物類縁体であってもよい。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
芳香族テトラカルボン酸二無水物としては、非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物および縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。非縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、4,4’-オキシジフタル酸二無水物(以下、OPDAと記載することがある)、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物(以下、BPDAと記載することがある)、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、4,4’-(ヘキサフルオロイソプロピリデン)ジフタル酸二無水物(以下、6FDAと記載することがある)、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物、4,4’-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が挙げられる。また、単環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては1,2,4,5-ベンゼンテトラカルボン酸二無水物が、縮合多環式の芳香族テトラカルボン酸二無水物としては2,3,6,7-ナフタレンテトラカルボン酸二無水物が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
これらの中でも、OPDA、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェノキシフェニル)プロパン二無水物、6FDA、1,2-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、1,1-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)エタン二無水物、ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、ビス(2,3-ジカルボキシフェニル)メタン二無水物、4,4’-(p-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物および4,4’-(m-フェニレンジオキシ)ジフタル酸二無水物が好ましく、OPDA、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、6FDAがより好ましい。
脂肪族テトラカルボン酸二無水物としては、環式または非環式の脂肪族テトラカルボン酸二無水物が挙げられる。環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物とは、脂環式炭化水素構造を有するテトラカルボン酸二無水物であり、その具体例としては、1,2,4,5-シクロヘキサンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロブタンテトラカルボン酸二無水物、1,2,3,4-シクロペンタンテトラカルボン酸二無水物等のシクロアルカンテトラカルボン酸二無水物、ビシクロ[2.2.2]オクト-7-エン-2,3,5,6-テトラカルボン酸二無水物、ジシクロヘキシル-3,3’-4,4’-テトラカルボン酸二無水物およびこれらの位置異性体が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物の具体例としては、1,2,3,4-ブタンテトラカルボン酸二無水物、および1,2,3,4-ペンタンテトラカルボン酸二無水物等が挙げられ、これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。また、環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物および非環式脂肪族テトラカルボン酸二無水物を組合せて用いてもよい。
上記テトラカルボン酸二無水物の中でも、光学部材の高表面硬度、高柔軟性、高い耐屈曲性、高透明性および低着色性の観点から、OPDA、3,3’,4,4’-ベンゾフェノンテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、2,2’,3,3’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物、3,3’,4,4’-ジフェニルスルホンテトラカルボン酸二無水物、2,2-ビス(3,4-ジカルボキシフェニル)プロパン二無水物、6FDAならびにこれらの混合物が好ましく、OPDA、3,3’,4,4’-ビフェニルテトラカルボン酸二無水物および6FDA、ならびにこれらの混合物がより好ましく、6FDAがさらに好ましい。
ポリアミドイミド樹脂の合成に用いられるジカルボン酸化合物としては、式(3”)で表される化合物を含むことが好ましい。
[式(3”)中、R1~R8は、互いに独立に、水素原子、炭素数1~6のアルキル基または炭素数6~12のアリール基を表し、R1~R8に含まれる水素原子は、互いに独立に、ハロゲン原子で置換されていてもよく、
Aは、単結合、-O-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-、-S-、-CO-または-NR9-を表し、R9はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表し、
mは0~4の整数であり、
R31およびR32は、互いに独立に、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基または塩素原子を表す。]
Aは、単結合、-O-、-CH2-、-CH2-CH2-、-CH(CH3)-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-、-S-、-CO-または-NR9-を表し、R9はハロゲン原子で置換されていてもよい炭素数1~12の炭化水素基を表し、
mは0~4の整数であり、
R31およびR32は、互いに独立に、ヒドロキシル基、メトキシ基、エトキシ基、n-プロポキシ基、n-ブトキシ基または塩素原子を表す。]
本発明の好ましい一実施形態において、ジカルボン酸化合物は、mが0である、式(3”)で表される化合物であり、さらにはAが-O-である、式(3”)で表される化合物を含むことが好ましい。また、別の好適な実施態様においては、ジカルボン酸化合物は、R32が-Clである、式(3”)で表される化合物である。また、ジアミン化合物に代えて、ジイソシアネート化合物を用いてもよい。好ましくは、テレフタロイルクロリドが用いられ、加えて他のジカルボン酸化合物が用いられてもよい。他のジカルボン酸化合物としては、4,4’-オキシビス安息香酸および/またはその酸クロリド化合物が用いられ、具体的には、4,4’-オキシビス(ベンゾイルクロリド)が好ましい例としてあげられる。また、その他のジカルボン酸化合物としては、芳香族ジカルボン酸、脂肪族ジカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。具体例としては、テレフタル酸;イソフタル酸;ナフタレンジカルボン酸;4,4’-ビフェニルジカルボン酸;3,3’-ビフェニルジカルボン酸;炭素数8以下である鎖式炭化水素、のジカルボン酸化合物および2つの安息香酸が単結合、-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-もしくはフェニレン基で連結された化合物ならびにそれらの酸クロリド化合物が挙げられる。
なお、上記ポリイミド系樹脂は、該ポリイミド系樹脂を含んでなる光学部材の各種物性を損なわない範囲で、上記のポリイミド系樹脂の合成に用いられるテトラカルボン酸化合物に加えて、テトラカルボン酸およびトリカルボン酸ならびにそれらの無水物および誘導体を更に反応させたものであってもよい。
テトラカルボン酸としては、上記テトラカルボン酸化合物の無水物の水付加体が挙げられる。
トリカルボン酸化合物としては、芳香族トリカルボン酸、脂肪族トリカルボン酸およびそれらの類縁の酸クロリド化合物、酸無水物等が挙げられ、2種以上を併用してもよい。具体例としては、1,2,4-ベンゼントリカルボン酸の無水物;2,3,6-ナフタレントリカルボン酸-2,3-無水物;フタル酸無水物と安息香酸とが単結合、-O-、-CH2-、-C(CH3)2-、-C(CF3)2-、-SO2-もしくはフェニレン基で連結された化合物が挙げられる。
ポリイミド系樹脂の合成に用いられるジアミン化合物としては、例えば、脂肪族ジアミン、芳香族ジアミンおよびこれらの混合物が挙げられる。なお、本実施形態において「芳香族ジアミン」とは、アミノ基が芳香環に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に脂肪族基またはその他の置換基を含んでいてもよい。この芳香環は単環でも縮合環でもよく、ベンゼン環、ナフタレン環、アントラセン環およびフルオレン環等が例示されるが、これらに限定されるわけではない。これらの中でも、好ましくはベンゼン環である。また「脂肪族ジアミン」とは、アミノ基が脂肪族基に直接結合しているジアミンを表し、その構造の一部に芳香環やその他の置換基を含んでいてもよい。
脂肪族ジアミンとしては、例えば、ヘキサメチレンジアミン等の非環式脂肪族ジアミン、ならびに1,3-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、1,4-ビス(アミノメチル)シクロヘキサン、ノルボルナンジアミンおよび4,4’-ジアミノジシクロヘキシルメタン等の環式脂肪族ジアミン等が挙げられる。これらは単独でまたは2種以上を組合せて用いることができる。
芳香族ジアミンとしては、例えば、p-フェニレンジアミン、m-フェニレンジアミン、2,4-トルエンジアミン、m-キシリレンジアミン、p-キシリレンジアミン、1,5-ジアミノナフタレン、および2,6-ジアミノナフタレン等の、芳香環を1つ有する芳香族ジアミン;4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、4,4’-ジアミノジフェニルエーテル(以下、ODAと記載することがある)、3,4’-ジアミノジフェニルエーテル、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、1,3-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2’-ジメチルベンジジン(以下、MBと記載することがある)、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジン(以下、TFMBと記載することがある)、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニル、9,9-ビス(4-アミノフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-メチルフェニル)フルオレン、9,9-ビス(4-アミノ-3-クロロフェニル)フルオレン、および9,9-ビス(4-アミノ-3-フルオロフェニル)フルオレン等の、芳香環を2つ以上有する芳香族ジアミンが挙げられ、好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、ODA、3,3’-ジアミノジフェニルエーテル、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、3,3’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、ビス〔4-(3-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、2,2-ビス[4-(3-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、MB、TFMB、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルであり、より好ましくは4,4’-ジアミノジフェニルメタン、4,4’-ジアミノジフェニルプロパン、ODA、4,4’-ジアミノジフェニルスルホン、1,4-ビス(4-アミノフェノキシ)ベンゼン、ビス〔4-(4-アミノフェノキシ)フェニル〕スルホン、2,2-ビス[4-(4-アミノフェノキシ)フェニル]プロパン、MB、TFMB、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルが挙げられる。これらは単独または2種以上を組合せて使用できる。
上記ジアミン化合物の中でも、光学部材の高表面硬度、高柔軟性、高い耐屈曲性、高透明性および低着色性の観点からは、ビフェニル構造を有する芳香族ジアミンからなる群から選ばれる1種以上を用いることが好ましい。MB、TFMB、4,4’-ビス(4-アミノフェノキシ)ビフェニルおよびODAからなる群から選ばれる1種以上を用いることがより好ましく、2,2’-ビス(トリフルオロメチル)ベンジジンを用いることがよりさらに好ましい。
本発明の好ましい実施態様において、ポリイミド系樹脂には、上記の通り、ハロゲン原子が含まれ得る。含フッ素置換基の具体例としては、フルオロ基およびトリフルオロメチル基が挙げられる。ポリイミド系樹脂がハロゲン原子を含むことにより、ポリイミド系樹脂を含んでなる光学部材の黄色度(以下、YI値と記載することがある)を低減させることができる場合があり、さらに高い柔軟性および耐屈曲性を両立させることができる傾向がある。また、光学部材のYI値の低減、透明性の向上、吸水率の低減、および耐屈曲性の観点から、ハロゲン原子は好ましくはフッ素原子である。
ポリイミド系樹脂におけるハロゲン原子の含有率は、YI値の低減、透明性の向上、吸水率の低減、および光学部材の変形抑制の観点から、ポリイミド系樹脂の質量を基準として、好ましくは1~40質量%、より好ましくは3~35質量%、さらに好ましくは5~32質量%である。
本発明の一実施態様において、ポリイミド系樹脂の合成反応において、イミド化触媒が存在してもよい。イミド化触媒としては、例えばトリプロピルアミン、ジブチルプロピルアミン、エチルジブチルアミン、トリエチルアミン、ジイソプロピルエチルアミン(以下、DIEAと記載することがある)等の脂肪族アミン;N-エチルピペリジン、N-プロピルピペリジン、N-ブチルピロリジン、N-ブチルピペリジン、およびN-プロピルヘキサヒドロアゼピン等の脂環式アミン(単環式);アザビシクロ[2.2.1]ヘプタン、アザビシクロ[3.2.1]オクタン、アザビシクロ[2.2.2]オクタン、およびアザビシクロ[3.2.2]ノナン等の脂環式アミン(多環式);ならびにピリジン、2-メチルピリジン、3-メチルピリジン、4-メチルピリジン、2-エチルピリジン、3-エチルピリジン、4-エチルピリジン、2,4-ジメチルピリジン、2,4,6-トリメチルピリジン、3,4-シクロペンテノピリジン、5,6,7,8-テトラヒドロイソキノリン、およびイソキノリン等の芳香族アミンが挙げられる。また、イミド化反応を促進しやすい観点から、イミド化触媒とともに、酸無水物を用いることが好ましい。酸無水物は、イミド化反応に用いられる慣用の酸無水物等が挙げられ、その具体例としては、無水酢酸、無水プロピオン酸、無水酪酸等の脂肪族酸無水物、フタル酸無水物等の芳香族酸無水物などが挙げられる。
ジアミン化合物、ジカルボン酸化合物、および、場合によりテトラカルボン酸化合物の反応温度は、特に限定されないが、例えば50~350℃である。反応時間も特に限定されないが、例えば0.5~10時間程度である。必要に応じて、不活性雰囲気または減圧の条件下において反応を行ってよい。また、反応は溶剤中で行ってよく、溶剤としては例えば、ポリイミド系樹脂を含むワニスの調製に用いられる後述する溶剤が挙げられる。
本発明の製造方法により製造したポリイミド系樹脂粉体は、例えば光学部材として使用することができる。光学部材としては、例えば光学フィルムが挙げられる。該光学部材は、柔軟性、耐屈曲性および表面硬度に優れるため、画像表示装置の前面板、特にフレキシブルディスプレイの前面板として適当である。光学部材は単層であってもよく、複層であってもよい。光学部材が複層である場合、各層は同一の組成であってよく、異なる組成であってもよい。
本発明の製造方法により製造したポリイミド系樹脂粉体を光学部材として使用する場合、光学部材中におけるポリイミド系樹脂の含有率は、光学部材の全質量に対して、好ましくは40質量%以上、より好ましくは50質量%以上、さらに好ましくは70質量%以上、特に好ましくは80質量%以上、非常に好ましくは90質量%以上である。ポリイミド系樹脂の含有率が上記下限値以上であると、光学部材の耐屈曲性が良好である。なお、光学部材中におけるポリイミド系樹脂の含有率は、光学部材の全質量に対して、通常100質量%以下である。
(フィラー)
光学部材は、フィラーを含むことができる。フィラーとしては、例えば有機粒子、無機粒子などが挙げられ、好ましくは無機粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(以下、ITOと記載することがある)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物粒子、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物粒子などが挙げられ、これらの中でも、得られる光学フィルムの耐衝撃性を向上しやすい観点から、好ましくはシリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子が挙げられ、より好ましくはシリカ粒子が挙げられる。これらのフィラーは単独または2種以上を組合せて使用できる。
光学部材は、フィラーを含むことができる。フィラーとしては、例えば有機粒子、無機粒子などが挙げられ、好ましくは無機粒子が挙げられる。無機粒子としては、シリカ、ジルコニア、アルミナ、チタニア、酸化亜鉛、酸化ゲルマニウム、酸化インジウム、酸化スズ、インジウムスズ酸化物(以下、ITOと記載することがある)、酸化アンチモン、酸化セリウム等の金属酸化物粒子、フッ化マグネシウム、フッ化ナトリウム等の金属フッ化物粒子などが挙げられ、これらの中でも、得られる光学フィルムの耐衝撃性を向上しやすい観点から、好ましくはシリカ粒子、ジルコニア粒子、アルミナ粒子が挙げられ、より好ましくはシリカ粒子が挙げられる。これらのフィラーは単独または2種以上を組合せて使用できる。
フィラー、好ましくはシリカ粒子の平均一次粒子径は、好ましくは10nm以上、より好ましくは15nm以上、さらに好ましくは20nm以上であり、好ましくは100nm以下、より好ましくは90nm以下、さらに好ましくは80nm以下、よりさらに好ましくは70nm以下、とりわけ好ましくは60nm以下、とりわけより好ましくは50nm以下、とりわけさらに好ましくは40nm以下である。シリカ粒子の平均一次粒子径が上記範囲であると、シリカ粒子の凝集を抑制し、得られる光学部材の光学特性を向上しやすい。フィラーの平均一次粒子径は、BET法により測定できる。なお、透過型電子顕微鏡や走査型電子顕微鏡の画像解析により、平均一次粒子径を測定してもよい。
光学部材がフィラー、好ましくはシリカ粒子を含有する場合、フィラー、好ましくはシリカ粒子の含有率は、ワニス中の固形分に対して、通常0.1質量%以上、好ましくは1質量%以上、より好ましくは5質量%以上、さらに好ましくは10質量%以上、さらにより好ましくは20質量%以上、とりわけ好ましくは30質量%以上であり、好ましくは60質量%以下である。フィラーの含有量が上記の下限以上であると、得られる光学部材の弾性率を向上しやすい。また、フィラーの含有量が上記の上限以下であると、ワニスの保管安定性が向上され、得られる光学部材の光学特性を向上しやすい。
(紫外線吸収剤)
光学部材は、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。光学部材が紫外線吸収剤を含有することにより、ポリイミド系樹脂の劣化が抑制されるため、光学部材の視認性を高めることができる。
なお、本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
光学部材は、1種または2種以上の紫外線吸収剤を含有していてもよい。紫外線吸収剤は、樹脂材料の分野で紫外線吸収剤として通常用いられているものから、適宜選択することができる。紫外線吸収剤は、400nm以下の波長の光を吸収する化合物を含んでいてもよい。紫外線吸収剤としては、例えば、ベンゾフェノン系化合物、サリシレート系化合物、ベンゾトリアゾール系化合物、およびトリアジン系化合物からなる群より選ばれる少なくとも1種の化合物が挙げられる。光学部材が紫外線吸収剤を含有することにより、ポリイミド系樹脂の劣化が抑制されるため、光学部材の視認性を高めることができる。
なお、本明細書において、「系化合物」とは、当該「系化合物」が付される化合物の誘導体を指す。例えば、「ベンゾフェノン系化合物」とは、母体骨格としてのベンゾフェノンと、ベンゾフェノンに結合している置換基とを有する化合物を指す。
光学部材が紫外線吸収剤を含有する場合、紫外線吸収剤の含有率は、光学部材の全質量に対して、好ましくは1質量%以上、より好ましくは2質量%以上、さらに好ましくは3質量%以上であり、好ましくは10質量%以下、より好ましくは8質量%以下、さらに好ましくは6質量%以下である。好適な含有率は用いる紫外線吸収剤により異なるが、400nmの光線透過率が20~60%程度になるように紫外線吸収剤の含有率を調節すると、光学部材の耐光性が高められるとともに、透明性の高い光学部材を得ることができる。
(他の添加剤)
光学部材は、更に他の添加剤を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、pH調整剤、シリカ分散剤、滑剤、増粘剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
光学部材は、更に他の添加剤を含有していてもよい。他の成分としては、例えば、酸化防止剤、離型剤、安定剤、ブルーイング剤、難燃剤、pH調整剤、シリカ分散剤、滑剤、増粘剤、およびレベリング剤等が挙げられる。
他の添加剤を含有する場合、その含有率は、光学部材の質量に対して、好ましくは0.0001質量%以上20質量%以下、より好ましくは0.0001質量%以上10質量%以下である。
<光学部材>
光学部材、特に光学フィルムの厚さは、用途に応じて適宜調整されるが、通常10~1000μm、好ましくは15~500μm、より好ましくは20~400μm、さらに好ましくは25~300μmである。なお、本発明において、厚さは接触式のデジマチックインジケーターによって測定することができる。
光学部材、特に光学フィルムの厚さは、用途に応じて適宜調整されるが、通常10~1000μm、好ましくは15~500μm、より好ましくは20~400μm、さらに好ましくは25~300μmである。なお、本発明において、厚さは接触式のデジマチックインジケーターによって測定することができる。
光学部材において、JIS K 7105:1981に準拠した全光線透過率Ttが好ましくは70%以上、より好ましくは80%以上、さらに好ましくは85%以上、特に好ましくは90%以上である。光学部材の全光線透過率Ttが上記下限値以上であると、光学部材を画像表示装置に組み込んだ際に、十分な視認性を確保しやすい。なお、光学部材の全光線透過率Ttの上限値は通常100%以下である。光学部材におけるヘーズは、好ましくは1.0%以下、より好ましくは0.8%以下、さらにより好ましくは0.5%以下、特に好ましくは0.3%以下である。光学部材のヘーズが上記の上限値以下であると、光学部材を画像表示装置等のフレキシブル電子デバイスに組み込んだ際に、十分な視認性を確保しやすい。なお、上記ヘーズの下限値は特に限定されず、0%以上であればよい。本発明の製造方法において使用するポリイミド系樹脂溶液に溶解させたポリイミド系樹脂、および/または、本発明の製造方法により得られるポリイミド系樹脂の粉体は、上記全光線透過率Ttおよび/またはヘーズを有することが好ましい。ポリイミド系樹脂およびポリイミド系樹脂粉体の全光線透過率Ttおよび/またはヘーズは、成形体の形状、例えばフィルムの形状で測定される。
<光学部材の製造方法>
本発明の製造方法により製造したポリイミド系樹脂粉体を用いて、上記のような光学部材、例えば光学フィルムを製造することができる。製造方法は特に限定されない。例えば以下の工程:
(a)ポリイミド系樹脂粉体を溶剤に溶解させて得たポリイミド系樹脂を含む液(ポリイミド系樹脂のワニス)を基材に塗布して塗膜を形成する工程(塗布工程)、および
(b)塗布された液(ポリイミド系樹脂のワニス)を乾燥させて光学部材、特に光学フィルム(ポリイミド系樹脂フィルム)を形成する工程(形成工程)
を含む製造方法によって光学部材を製造することができる。工程(a)および(b)は、通常この順で行うことができる。本発明のポリイミド系樹脂粉体によれば、凝集によるダマやゲルの発生を抑制しやすく、取扱性が良好であるため、ワニスを調製しやすいと共に、該樹脂粉体から得た光学フィルムの均質性も向上させやすい。
本発明の製造方法により製造したポリイミド系樹脂粉体を用いて、上記のような光学部材、例えば光学フィルムを製造することができる。製造方法は特に限定されない。例えば以下の工程:
(a)ポリイミド系樹脂粉体を溶剤に溶解させて得たポリイミド系樹脂を含む液(ポリイミド系樹脂のワニス)を基材に塗布して塗膜を形成する工程(塗布工程)、および
(b)塗布された液(ポリイミド系樹脂のワニス)を乾燥させて光学部材、特に光学フィルム(ポリイミド系樹脂フィルム)を形成する工程(形成工程)
を含む製造方法によって光学部材を製造することができる。工程(a)および(b)は、通常この順で行うことができる。本発明のポリイミド系樹脂粉体によれば、凝集によるダマやゲルの発生を抑制しやすく、取扱性が良好であるため、ワニスを調製しやすいと共に、該樹脂粉体から得た光学フィルムの均質性も向上させやすい。
塗布工程においては、ポリイミド系樹脂粉体を溶剤に溶解させ、必要に応じて上記紫外線吸収剤および他の添加剤を添加し、撹拌することにより、ポリイミド系樹脂を含む液であるワニスを調製する。
ワニスの調製に用いられる溶剤は、ポリイミド系樹脂を溶解可能であれば特に限定されない。かかる溶剤としては、例えばDMAc、DMF等のアミド系溶剤;GBL、γ-バレロラクトン等のラクトン系溶剤;ジメチルスルホン、DMSO、スルホラン等の含硫黄系溶剤;エチレンカーボネート、プロピレンカーボネート等のカーボネート系溶剤;およびそれらの混合溶剤が挙げられる。これらの溶剤の中でも、アミド系溶剤またはラクトン系溶剤が好ましい。また、ワニスには水、アルコール系溶剤、ケトン系溶剤、非環状エステル系溶剤、エーテル系溶剤などが含まれてもよい。
次に、例えば公知のロール・ツー・ロールやバッチ方式により、樹脂基材、SUSベルト、またはガラス基材等の基材上に、ポリイミド系樹脂のワニスを用いて、流涎成形等によって塗膜を形成することができる。
形成工程において、塗膜を乾燥し、基材から剥離することによって、光学部材を形成することができる。剥離後に更に光学部材を乾燥する乾燥工程を行ってもよい。塗膜の乾燥は、通常50~350℃の温度にて行うことができる。必要に応じて、不活性雰囲気または減圧の条件下において塗膜の乾燥を行ってよい。
光学部材の少なくとも一方の表面に、表面処理を施す表面処理工程を行ってもよい。表面処理としては、例えばUVオゾン処理、プラズマ処理、およびコロナ放電処理が挙げられる。
樹脂基材の例としては、SUS等の金属ベルト、PETフィルム、PENフィルム、ポリイミドフィルム、およびポリアミドイミドフィルム等が挙げられる。中でも、耐熱性に優れる観点から、PETフィルム、PENフィルム、ポリイミドフィルム、および他のポリアミドイミドフィルムが好ましい。さらに、光学部材との密着性およびコストの観点から、PETフィルムがより好ましい。
本発明の製造方法により得たポリイミド系樹脂粉体を用いて、光学部材を製造することができる。このような光学部材は、高い弾性率と柔軟性を有する。本発明の好適な実施態様において、上記光学部材の弾性率は、好ましくは3.0GPa以上、より好ましくは4.0GPa以上、さらに好ましくは5.0GPa以上、特に好ましくは6.0GPa以上であり、好ましくは10.0GPa以下、より好ましくは8.0GPa以下、さらに好ましくは7.0GPa以下である。光学部材の弾性率が上記上限値以下であると、フレキシブルディスプレイが屈曲する際に、上記光学部材による他の部材の損傷を抑制することができる。弾性率は、例えば(株)島津製作所製オートグラフAG-ISを用いて、10mm幅の試験片をチャック間距離500mm、引張速度20mm/分の条件で応力-歪曲線を測定し、その傾きから測定することができる。本発明の製造方法において使用するポリイミド系樹脂溶液に溶解させたポリイミド系樹脂、および/または、本発明の製造方法により得られるポリイミド系樹脂の粉体は、例えば実施例に記載するような成形体の形状で測定して、上記弾性率を有することが好ましい。ポリイミド系樹脂およびポリイミド系樹脂粉体の弾性率は、成形体の形状、例えばフィルムの形状で測定される。
上記光学部材、特に光学フィルムは、優れた耐屈曲性を有する。本発明の好適な実施態様において、光学部材は、R=1mmで135°、加重0.75kgfで速度175cpmにて測定した際に破断するまでの往復折り曲げ回数が、好ましくは10,000回以上、より好ましくは20,000回以上、さらに好ましくは30,000回以上、特に好ましくは40,000回以上、非常に好ましくは50,000回以上である。
光学部材の往復折り曲げ回数が上記下限値以上であると、光学部材を屈曲した際に生じ得る折り皺をさらに抑制することができる。なお、光学部材の往復折り曲げ回数は制限されないが、通常、上記の下限以上1,000,000回以下程度であっても十分実用的である。往復折り曲げ回数は、例えば(株)東洋精機製作所製 MIT耐折疲労試験機(型式0530)で厚さ50μm、幅10mmの試験片を用いて求めることができる。本発明の製造方法において使用するポリイミド系樹脂溶液に溶解させたポリイミド系樹脂、および/または、本発明の製造方法により得られるポリイミド系樹脂の粉体は、上記耐屈曲性を有することが好ましい。ポリイミド系樹脂およびポリイミド系樹脂粉体の耐屈曲性は、成形体の形状、例えばフィルムの形状で測定される。
光学部材の往復折り曲げ回数が上記下限値以上であると、光学部材を屈曲した際に生じ得る折り皺をさらに抑制することができる。なお、光学部材の往復折り曲げ回数は制限されないが、通常、上記の下限以上1,000,000回以下程度であっても十分実用的である。往復折り曲げ回数は、例えば(株)東洋精機製作所製 MIT耐折疲労試験機(型式0530)で厚さ50μm、幅10mmの試験片を用いて求めることができる。本発明の製造方法において使用するポリイミド系樹脂溶液に溶解させたポリイミド系樹脂、および/または、本発明の製造方法により得られるポリイミド系樹脂の粉体は、上記耐屈曲性を有することが好ましい。ポリイミド系樹脂およびポリイミド系樹脂粉体の耐屈曲性は、成形体の形状、例えばフィルムの形状で測定される。
上記光学部材は、優れた透明性を発現することができる。そのため、上記光学部材は、画像表示装置、特にフレキシブルディスプレイの前面板として非常に有用である。本発明の好適な実施態様において、光学部材は、JIS K 7373:2006に準拠したYI値が、好ましくは5以下、より好ましくは3以下、さらに好ましくは2.5以下、特に好ましくは2.0以下であり、通常0以上である。YI値が上記上限値以下である光学部材は、表示装置等の高い視認性に寄与することができる。本発明の製造方法において使用するポリイミド系樹脂溶液に溶解させたポリイミド系樹脂、および/または、本発明の製造方法により得られるポリイミド系樹脂の粉体は、上記YI値を有することが好ましい。ポリイミド系樹脂およびポリイミド系樹脂粉体のYI値は、成形体の形状、例えばフィルムの形状で測定される。
上記の光学部材は、紫外線吸収層、粘着層、色相調整層、屈折率調整層等の機能層、ハードコート層等などの機能層、保護フィルム等を備えてもよい。
本発明のポリイミド系樹脂粉体を用いて製造した光学部材、例えば光学フィルムは、画像表示装置の前面板、特にフレキシブルディスプレイの前面板用のフィルムであるウィンドウフィルムとして有用である。中でもフレキシブルディスプレイ、特にローラブルディスプレイやフォルダブルディスプレイのウィンドウフィルムとして有用である。上記光学部材は、画像表示装置、特にフレキシブルディスプレイの視認側表面に前面板として配置することができる。この前面板は、フレキシブルディスプレイ内の画像表示素子を保護する機能を有する。上記光学部材を備える画像表示装置は、高い柔軟性および耐屈曲性を有すると同時に、高い表面硬度を有するため、屈曲した際に他の部材を損傷することがなく、また光学部材自体にも折り皺が生じ難く、さらに表面の傷つきを有利に抑制できる。
画像表示装置としては、テレビ、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション、タブレットPC、携帯ゲーム機、電子ペーパー、インジケーター、掲示板、時計、およびスマートウォッチ等のウェアラブルデバイス等が挙げられる。フレキシブルディスプレイとしては、フレキシブル特性を有する画像表示装置、例えばテレビ、スマートフォン、携帯電話、カーナビゲーション、タブレットPC、携帯ゲーム機、電子ペーパー、インジケーター、掲示板、時計、およびウェアラブルデバイス等が挙げられる。
以下、実施例により本発明をさらに詳細に説明する。例中の「%」および「部」は、特記しない限り、質量%および質量部を意味する。
[樹脂の物性測定]
〔重量平均分子量〕
Mwの測定は、GPCを用いて行った。測定試料の調製方法および測定条件は下記の通りである。
(1)試料調製方法
樹脂粉体を20mg秤りとり、10mLのDMF(10mmol/L臭化リチウム添加)を加え、完全に溶解させた。この溶液を孔径0.45μmのクロマトディスクにてろ過し、試料溶液とした。
(2)測定条件
装置:HLC-8020GPC(東ソー(株)製)
カラム:ガードカラム、TSKgelα-M(内径7.8mm、長さ300mm)を2本、α-2500(内径7.8mm、長さ300mm)1本を記載順に連結した。
溶離液:DMF(10mmol/Lの臭化リチウム添加)
流量:1.0mL/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μL
分子量標準:標準ポリスチレン
〔重量平均分子量〕
Mwの測定は、GPCを用いて行った。測定試料の調製方法および測定条件は下記の通りである。
(1)試料調製方法
樹脂粉体を20mg秤りとり、10mLのDMF(10mmol/L臭化リチウム添加)を加え、完全に溶解させた。この溶液を孔径0.45μmのクロマトディスクにてろ過し、試料溶液とした。
(2)測定条件
装置:HLC-8020GPC(東ソー(株)製)
カラム:ガードカラム、TSKgelα-M(内径7.8mm、長さ300mm)を2本、α-2500(内径7.8mm、長さ300mm)1本を記載順に連結した。
溶離液:DMF(10mmol/Lの臭化リチウム添加)
流量:1.0mL/分
検出器:RI検出器
カラム温度:40℃
注入量:100μL
分子量標準:標準ポリスチレン
[製造例:ポリアミドイミド樹脂の調製]
十分に乾燥させた撹拌機と温度計を備える反応容器に、窒素を導通させ、容器内を窒素で置換した。反応容器内を10℃に冷却し、表1中の条件1に示すモル比のDMAcを容器に入れ、TFMBと6FDAを加えて、10℃で3時間反応させた。次いで、OBBCとTPCを加えて、10℃で3時間反応させた。
十分に乾燥させた撹拌機と温度計を備える反応容器に、窒素を導通させ、容器内を窒素で置換した。反応容器内を10℃に冷却し、表1中の条件1に示すモル比のDMAcを容器に入れ、TFMBと6FDAを加えて、10℃で3時間反応させた。次いで、OBBCとTPCを加えて、10℃で3時間反応させた。
次いで、得られたポリアミック酸溶液に、TFMB 1.0000モルに対して表2中の条件1に示すモル比で、DIEA、無水酢酸、および4-ピコリン(以下、4-PCと記載することがある)を加え、反応容器を70℃に昇温し、3時間撹拌することにより、反応液であるポリアミドイミド樹脂溶液(a0)を得た。
得られた反応液を冷却し、45℃以下に下がったところで、TFMB 1.0000モルに対して表3中の条件1に示すモル比でメタノールを加えて、密度が910kg/m3であるポリアミドイミド樹脂溶液(a1)を得た。ポリアミドイミド樹脂溶液(a1)に含まれるポリアミドイミド樹脂の量は、ポリアミドイミド樹脂溶液(a1)の総量に基づいて、4.5質量%であり、良溶媒であるDMAcの量は70質量%であり、貧溶媒であるメタノールの量は21質量%であった。さらに、ポリアミドイミド樹脂溶液(a1)に含まれるポリアミドイミド樹脂のMwは27万であった。ポリアミドイミド樹脂溶液(a1)を以下において、溶液(a1)と称する。
各成分のモル比を表1~表3中の条件2に示すモル比に変えたこと以外は条件1の場合と同様にして、密度が910kg/m3であるポリアミドイミド樹脂溶液(a2)を、表1~表3中の条件3に示すモル比に従って密度が910kg/m3であるポリアミドイミド樹脂溶液(a3)を、表1~表3中の条件4に示すモル比に従って密度が910kg/m3であるポリアミドイミド樹脂溶液(a4)を、表1~表3中の条件5に示すモル比に従って密度が910kg/m3であるポリアミドイミド樹脂溶液(a5)を得た。ポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に含まれるポリアミドイミド樹脂の量は、ポリアミドイミド樹脂溶液(a2)の総量に基づいて、5.5質量%であり、ポリアミドイミド樹脂溶液(a3)に含まれるポリアミドイミド樹脂の量は、ポリアミドイミド樹脂溶液(a3)の総量に基づいて、4.0質量%であり、ポリアミドイミド樹脂溶液(a4)に含まれるポリアミドイミド樹脂の量は、ポリアミドイミド樹脂溶液(a4)の総量に基づいて、3.5質量%であり、ポリアミドイミド樹脂溶液(a5)に含まれるポリアミドイミド樹脂の量は、ポリアミドイミド樹脂溶液(a5)の総量に基づいて、3.5質量%であった。また、ポリアミドイミド樹脂溶液(a2)~(a5)中、良溶媒であるDMAcの量は70質量%であり、貧溶媒であるメタノールの量は21質量%であり、ポリアミドイミド樹脂溶液(a2)~(a5)いずれも同等であった。
さらに、ポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に含まれるポリアミドイミド樹脂のMwは21万、ポリアミドイミド樹脂溶液(a3)に含まれるポリアミドイミド樹脂のMwは35万、ポリアミドイミド樹脂溶液(a4)に含まれるポリアミドイミド樹脂のMwは40万、ポリアミドイミド樹脂溶液(a5)に含まれるポリアミドイミド樹脂のMwは21万であった。ポリアミドイミド樹脂溶液(a2)~(a5)はそれぞれ溶液(a2)~(a5)と称する。ポリアミドイミド樹脂溶液(a1)~(a5)を用い、析出工程および圧縮性指数の評価を行った。
さらに、ポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に含まれるポリアミドイミド樹脂のMwは21万、ポリアミドイミド樹脂溶液(a3)に含まれるポリアミドイミド樹脂のMwは35万、ポリアミドイミド樹脂溶液(a4)に含まれるポリアミドイミド樹脂のMwは40万、ポリアミドイミド樹脂溶液(a5)に含まれるポリアミドイミド樹脂のMwは21万であった。ポリアミドイミド樹脂溶液(a2)~(a5)はそれぞれ溶液(a2)~(a5)と称する。ポリアミドイミド樹脂溶液(a1)~(a5)を用い、析出工程および圧縮性指数の評価を行った。
[圧縮性指数の算出]
圧縮性指数nは、圧縮圧力Pとろ過比抵抗αから、式(I)により導出した。なお、P0は基準圧縮圧力100kPaであり、α0は基準圧縮圧力100kPaにおけるろ過比抵抗[m/Kg]である。
圧縮性指数nは、圧縮圧力Pとろ過比抵抗αから、式(I)により導出した。なお、P0は基準圧縮圧力100kPaであり、α0は基準圧縮圧力100kPaにおけるろ過比抵抗[m/Kg]である。
n={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
得られた圧縮性指数nの結果に基づいて評価を行った。なお、各評価基準において、圧縮性指数が1.0未満の場合は良好であって、〇と記載し、圧縮性指数が1.0以上の場合は不良であって、×と記載した。
圧縮性指数が1.0未満の場合には、ろ過中に湿潤粉体が圧縮されにくいため、圧力をかけてろ過を行うことで総ろ過時間が短縮され生産性がよい。対して、圧縮性指数が1.0以上の場合には、高圧でろ過を行うと湿潤粉体が圧縮されることによりろ過性が悪化し、ろ過が長時間化するため、生産性が悪化する。
圧縮性指数が1.0未満の場合には、ろ過中に湿潤粉体が圧縮されにくいため、圧力をかけてろ過を行うことで総ろ過時間が短縮され生産性がよい。対して、圧縮性指数が1.0以上の場合には、高圧でろ過を行うと湿潤粉体が圧縮されることによりろ過性が悪化し、ろ過が長時間化するため、生産性が悪化する。
(ろ過比抵抗αの測定)
ろ過比抵抗α[m/kg]は、圧縮透過試験により、ろ過速度v[m/s]を取得することにより式(II)で導出できる。
ろ過比抵抗α[m/kg]は、圧縮透過試験により、ろ過速度v[m/s]を取得することにより式(II)で導出できる。
(1)測定サンプル
上記製造例にて調製したポリアミドイミド樹脂溶液(a1)~(a5)を、ポリアミドイミド樹脂粉体の圧縮性指数の算出に用いるろ過比抵抗の測定サンプルとした。
(2)測定条件
装置名:加圧ろ過器
測定温度:25℃
ろ液の密度 ρ:910[kg/m3]
重力加速度 g:9.8[m/s2]
ろ液の粘度 μ:0.002[Pa・s]
ろ過面積 A:0.0028[m2]
湿潤粉体量 w:0.030[kg]
ΔHは試験機上部と通液するろ液上面との高さの差分[m]を表す。
また、式中のmはろ過面積A当たりの溶媒を含んだポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体量[kg/m2]を表し、湿潤粉体量 w[kg]とろ過時のろ過面積A[m2]から、式(IV):
m=w/A 式(IV)
により算出可能である。
なお、ろ過速度v[m/s]は、5[mL]のろ液の全量がポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を通液するまでに要した時間θ[s]とろ過時のろ過面積A[m2]から、式(III):
v=5×10-6/A×θ 式(III)
により算出可能である。
上記製造例にて調製したポリアミドイミド樹脂溶液(a1)~(a5)を、ポリアミドイミド樹脂粉体の圧縮性指数の算出に用いるろ過比抵抗の測定サンプルとした。
(2)測定条件
装置名:加圧ろ過器
測定温度:25℃
ろ液の密度 ρ:910[kg/m3]
重力加速度 g:9.8[m/s2]
ろ液の粘度 μ:0.002[Pa・s]
ろ過面積 A:0.0028[m2]
湿潤粉体量 w:0.030[kg]
ΔHは試験機上部と通液するろ液上面との高さの差分[m]を表す。
また、式中のmはろ過面積A当たりの溶媒を含んだポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体量[kg/m2]を表し、湿潤粉体量 w[kg]とろ過時のろ過面積A[m2]から、式(IV):
m=w/A 式(IV)
により算出可能である。
なお、ろ過速度v[m/s]は、5[mL]のろ液の全量がポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を通液するまでに要した時間θ[s]とろ過時のろ過面積A[m2]から、式(III):
v=5×10-6/A×θ 式(III)
により算出可能である。
具体的な測定は、内部を加圧できるろ過器(ろ過面積;0.0028[m2])に、先述の測定サンプルであるスラリー約2[kg]を常圧下で投入し、湿潤粉体、すなわち、膨潤した樹脂粉体とろ液とに分離する。このとき、ろ過後の湿潤粉体の質量を測定する。次いで、装置内に基準圧縮圧力100[kPa]の圧力をかけて湿潤粉体を圧縮した後、試験機上部と通液するろ液上面の高さとの差分ΔH[m]を測定すると共に、この間の圧力差を利用し、ろ液5[mL]を通液した。このとき、ろ液5[mL]がポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を通液するまでに要した時間θ[s]を記録し、ろ過速度v[m/s]を求め、基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗α0[m/Kg]を算出した。
また、上記の測定を、500[kPa]の圧力で湿潤粉体を圧縮した条件でも同様に測定を行い、圧縮圧力500[kPa]におけるろ過比抵抗α[m/Kg]も算出した。
また、上記の測定を、500[kPa]の圧力で湿潤粉体を圧縮した条件でも同様に測定を行い、圧縮圧力500[kPa]におけるろ過比抵抗α[m/Kg]も算出した。
[アスペクト比の算出]
光学顕微鏡を用いて、樹脂粉末を拡大観察(倍率:100)し、その画像から、任意の12個の樹脂粒子のそれぞれについて、長軸の長さL、短軸の長さSを測定し、個々の粒子のアスペクト比をL/Sの式より算出した。次に、得られた12個のL/S値のうち、最大値と最小値を除いた10個のL/Sの平均値を算出し、樹脂粉体のアスペクト比とした。この時の長軸とは、粒子の中心を通った粒子の両端部を結んで引いた最も長い直線であり、短軸とは、長軸に直角な直線であって、かつ粒子両端部を結んだ長さが最も長くなる直線を表す。
光学顕微鏡を用いて、樹脂粉末を拡大観察(倍率:100)し、その画像から、任意の12個の樹脂粒子のそれぞれについて、長軸の長さL、短軸の長さSを測定し、個々の粒子のアスペクト比をL/Sの式より算出した。次に、得られた12個のL/S値のうち、最大値と最小値を除いた10個のL/Sの平均値を算出し、樹脂粉体のアスペクト比とした。この時の長軸とは、粒子の中心を通った粒子の両端部を結んで引いた最も長い直線であり、短軸とは、長軸に直角な直線であって、かつ粒子両端部を結んだ長さが最も長くなる直線を表す。
[ポリアミドイミド樹脂の溶媒への溶解性およびろ過性]
(溶解性)
撹拌羽根を備えたポリ容器にGBL 400mLを入れ、100rpmで撹拌しながら、常温で樹脂の固形分濃度が10質量%となるように、樹脂粉体を一気に投入し、5時間撹拌して樹脂ワニスを得た。得られた樹脂ワニスの一部を目開き2mmの篩を通し、樹脂の溶け残りがあるかを目視で確認した。溶け残りがない場合は良好であり、〇と記載し、溶け残りがある場合は不良で、×と記載した。
(溶解性)
撹拌羽根を備えたポリ容器にGBL 400mLを入れ、100rpmで撹拌しながら、常温で樹脂の固形分濃度が10質量%となるように、樹脂粉体を一気に投入し、5時間撹拌して樹脂ワニスを得た。得られた樹脂ワニスの一部を目開き2mmの篩を通し、樹脂の溶け残りがあるかを目視で確認した。溶け残りがない場合は良好であり、〇と記載し、溶け残りがある場合は不良で、×と記載した。
(ろ過性)
上記溶解性試験のようにして得た樹脂ワニス 400gをステンレス容器に充填し、ろ過精度3μmのディスクフィルター((株)ロキテクノ社製 ラボピュアフィルターカートリッジ、LPD-03-P-B)を用いて、0.3MPaに加圧してろ過を実施した。ろ過開始直後のワニス吐出速度V0(g/分)、ろ過終了直前のワニス吐出速度V1(g/分)として、V1/V0が0.5以上である時、樹脂ワニスのろ過性が良好であると判断し〇で表記し、V1/V0が0.5未満の場合は樹脂ワニスのろ過性が不良であると判断し×と記載した。ろ過性が良好である場合、総ろ過時間が短いため樹脂ワニスの生産性がよい。対して、ろ過性が悪い場合はろ過時間が長時間化するため、樹脂ワニスの生産性が悪化する。
上記溶解性試験のようにして得た樹脂ワニス 400gをステンレス容器に充填し、ろ過精度3μmのディスクフィルター((株)ロキテクノ社製 ラボピュアフィルターカートリッジ、LPD-03-P-B)を用いて、0.3MPaに加圧してろ過を実施した。ろ過開始直後のワニス吐出速度V0(g/分)、ろ過終了直前のワニス吐出速度V1(g/分)として、V1/V0が0.5以上である時、樹脂ワニスのろ過性が良好であると判断し〇で表記し、V1/V0が0.5未満の場合は樹脂ワニスのろ過性が不良であると判断し×と記載した。ろ過性が良好である場合、総ろ過時間が短いため樹脂ワニスの生産性がよい。対して、ろ過性が悪い場合はろ過時間が長時間化するため、樹脂ワニスの生産性が悪化する。
<実施例1>
表1~表3の条件1に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a1)に10℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを24分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から14分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.54であり、アスペクト比が1.3であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、良好であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過性が良好であることを確認した。
表1~表3の条件1に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a1)に10℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを24分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から14分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.54であり、アスペクト比が1.3であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、良好であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過性が良好であることを確認した。
<実施例2>
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に、10℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを24分間で撹拌しながら等速で添加した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、水滴下開始から1分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.47であり、アスペクト比が1.3である、ポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、良好であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過性が良好であることを確認した。
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に、10℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを24分間で撹拌しながら等速で添加した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、水滴下開始から1分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.47であり、アスペクト比が1.3である、ポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、良好であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過性が良好であることを確認した。
<実施例3>
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に、10℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを48分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から24分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.54であり、アスペクト比が1.5であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、良好であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過性が良好であることを確認した。
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に、10℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを48分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から24分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.54であり、アスペクト比が1.5であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、良好であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過性が良好であることを確認した。
<実施例4>
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に10℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して20.0質量倍のメタノールを48分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から30分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.42であり、アスペクト比が1.4であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、良好であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過性が良好であることを確認した。
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に10℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して20.0質量倍のメタノールを48分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から30分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.42であり、アスペクト比が1.4であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、良好であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過性が良好であることを確認した。
<実施例5>
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に10℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを48分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から23分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して12.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.48であり、アスペクト比が1.3であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、良好であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過性が良好であることを確認した。
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に10℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを48分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から23分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して12.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.48であり、アスペクト比が1.3であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、良好であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過性が良好であることを確認した。
<実施例6>
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に15℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを48分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から24分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.54であり、アスペクト比が1.5であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、良好であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過性が良好であることを確認した。
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に15℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを48分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から24分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.54であり、アスペクト比が1.5であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、良好であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過性が良好であることを確認した。
<比較例1>
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に20℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを48分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から30分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.70であり、アスペクト比が2.2であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、不良であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過速度が低下し、ろ過性が不良であることを確認した。
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に20℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを48分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から30分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を128分間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が0.70であり、アスペクト比が2.2であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、不良であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過速度が低下し、ろ過性が不良であることを確認した。
<比較例2>
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a5)に10℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを48分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から39分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を15秒間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が1.25であり、アスペクト比が2.5であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、不良であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過速度が低下し、ろ過性が不良であることを確認した。
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a5)に10℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して25.0質量倍のメタノールを48分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、メタノール滴下開始から39分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。その後、メタノール滴下後の溶液にポリアミドイミド樹脂量に対して16.0質量倍の水を15秒間で撹拌しながら等速で添加した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が1.25であり、アスペクト比が2.5であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、不良であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過速度が低下し、ろ過性が不良であることを確認した。
<比較例3>
表1~表3の条件3に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a3)に20℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して7.5質量倍の水を175分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、水滴下開始から93分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が1.58であり、アスペクト比が2.3であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、不良であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過速度が低下し、ろ過性が不良であることを確認した。
表1~表3の条件3に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a3)に20℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して7.5質量倍の水を175分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、水滴下開始から93分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が1.58であり、アスペクト比が2.3であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、不良であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過速度が低下し、ろ過性が不良であることを確認した。
<比較例4>
表1~表3の条件3に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a3)に20℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して10.0質量倍の水を277分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、水滴下開始から207分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が2.98であり、アスペクト比が2.4であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、不良であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過速度が低下し、ろ過性が不良であることを確認した。
表1~表3の条件3に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a3)に20℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して10.0質量倍の水を277分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、水滴下開始から207分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が2.98であり、アスペクト比が2.4であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、不良であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過速度が低下し、ろ過性が不良であることを確認した。
<比較例5>
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に20℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して27.0質量倍の80質量%メタノール水溶液を300分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、80質量%メタノール水溶液の滴下開始から160分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が2.50であり、アスペクト比が2.9であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、不良であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過速度が低下し、ろ過性が不良であることを確認した。
表1~表3の条件2に従い取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a2)に20℃下で、ポリアミドイミド樹脂量に対して27.0質量倍の80質量%メタノール水溶液を300分間で撹拌しながら等速で添加した。このとき、80質量%メタノール水溶液の滴下開始から160分後にポリアミドイミド樹脂粉体が析出した。ポリアミドイミド樹脂粉体が分散した溶液を減圧ろ過により脱液し、圧縮性指数が2.50であり、アスペクト比が2.9であるポリアミドイミド樹脂の湿潤粉体を得た。該湿潤粉体を減圧下、78℃で乾燥し、乾燥粉体を得た。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、不良であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過速度が低下し、ろ過性が不良であることを確認した。
<比較例6>
ポリアミドイミド樹脂量に対して238.0質量倍のメタノールに、表1から表3の条件4に従って取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a4)を10℃下で撹拌しながらゆっくり添加した。析出した白色固体は糸毬状となり、粉体を形成しなかったため、圧縮性指数は測定不可であり粒子形状は繊維状であった。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、不良であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過速度が低下し、ろ過性が不良であることを確認した。
ポリアミドイミド樹脂量に対して238.0質量倍のメタノールに、表1から表3の条件4に従って取得したポリアミドイミド樹脂溶液(a4)を10℃下で撹拌しながらゆっくり添加した。析出した白色固体は糸毬状となり、粉体を形成しなかったため、圧縮性指数は測定不可であり粒子形状は繊維状であった。
得られた乾燥粉体について、前記溶解性の試験を行ったところ、不良であることを確認した。
また、前記ろ過性の試験において、ろ過速度が低下し、ろ過性が不良であることを確認した。
実施例および比較例の樹脂粉体の製造条件を表4に示す。また、得られた樹脂粉体について測定した樹脂粉体の性状、ならびに樹脂粉体について溶け残り性およびろ過性を評価した結果を表5に示す。
表4中の※1および※2
ポリアミドイミド樹脂量に対する80質量%メタノールの滴下量(※1)および滴下時間(※2)
ポリアミドイミド樹脂量に対する80質量%メタノールの滴下量(※1)および滴下時間(※2)
Claims (8)
- ポリイミド系樹脂粉体であって、アスペクト比が2.0未満であり、式(I):
圧縮性指数={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
〔式(I)中、Pは、前記ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用い、該測定試料をろ過した際の圧縮圧力[kPa]であり、αは圧縮圧力P[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]であり、P0は基準圧縮圧力100[kPa]であり、α0は基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]である〕
より算出される圧縮性指数が1.0未満である、樹脂粉体。 - ポリイミド系樹脂はポリアミドイミド樹脂である、請求項1に記載の樹脂粉体。
- ポリアミドイミド樹脂は、該ポリアミドイミド樹脂を構成する全構造単位に基づいて、30モル%以上のジカルボン酸に由来する構造単位を有する、請求項2に記載の樹脂粉体。
- 圧縮性指数が0.1以上である、請求項1~3のいずれかに記載の樹脂粉体。
- ポリイミド系樹脂と前記ポリイミド系樹脂に対する良溶媒の少なくとも1種とを含む樹脂溶液に、前記ポリイミド系樹脂に対する貧溶媒の少なくとも1種を添加して樹脂粉体を析出させる析出工程を含む、ポリイミド系樹脂粉体の製造方法であって、
前記析出工程は19℃以下の温度で行われ、
得られるポリイミド系樹脂粉体のアスペクト比が2.0未満であり、式(I):
圧縮性指数={ln(α/α0)}/{ln(P/P0)} (I)
〔式(I)中、Pは、前記ポリイミド系樹脂粉体と貧溶媒とを含むスラリーを測定試料として用い、該測定試料をろ過した際の圧縮圧力[kPa]であり、αは圧縮圧力P[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]であり、P0は基準圧縮圧力100[kPa]であり、α0は基準圧縮圧力100[kPa]におけるろ過比抵抗[m/kg]である〕
より算出される圧縮性指数が1.0未満である、製造方法。 - 前記貧溶媒はアルコール系溶媒を含む、請求項5に記載の製造方法。
- 前記析出工程において、2種以上の貧溶媒を使用する、請求項5に記載の製造方法。
- 前記析出工程において、樹脂溶液が白濁し始めてから貧溶媒の添加が終了するまでの時間は100分以上である、請求項5~7のいずれかに記載の製造方法。
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