JP2019131625A - 親水性層の親水性向上方法、及び高親水性構造体の製造方法 - Google Patents

親水性層の親水性向上方法、及び高親水性構造体の製造方法 Download PDF

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【課題】双性イオンポリマーと水性ポリエステル系樹脂を含有する親水性層の親水性を確実に向上させる方法と、この方法を使用して高親水性構造体を製造する方法を提供する。【解決手段】下記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面の少なくとも一部に(B)成分が露出している親水性層の親水性向上方法であって、前記親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去することを特徴とする、親水性層の親水性向上方法と、この方法を使用して高親水性構造体を製造する方法。(A)成分:双性イオンポリマー(B)成分:水性ポリエステル系樹脂【選択図】なし

Description

本発明は、双性イオンポリマーと水性ポリエステル系樹脂を含有する親水性層の親水性向上方法と、この方法を使用する高親水性構造体の製造方法に関する。
従来、双性イオンポリマー(双性イオンモノマー由来の繰り返し単位を有する重合体)や、双性イオンポリマーを含有する親水性コート剤が知られている。
例えば、特許文献1には、ベタインモノマー及びアルコキシシリル基含有化合物を含有するモノマー成分を重合させてなるアルコキシシリル基含有ポリマーを含有する親水性コート剤や、この親水性コート剤を用いて形成された被膜を有する防曇性シート等が記載されている。
WO2014/084219号
双性イオンポリマーを含有する親水性層を基材層上に有する積層シートは、特許文献1に記載されるように、防曇性シート等の親水性シートとして有用である。
また、本発明者らの検討によれば、双性イオンポリマーとともに水性ポリエステル系樹脂を含有する親水性組成物を用いて親水性層を形成することで、より高性能な親水性シートが得られる場合があることや、この親水性層は、形成後に親水性がさらに向上する可能性があることが分かった。
本発明は、双性イオンポリマーと水性ポリエステル系樹脂を含有する親水性層のこの特性に注目して行われたものであり、双性イオンポリマーと水性ポリエステル系樹脂を含有する親水性層の親水性を確実に向上させる方法と、この方法を使用して高親水性構造体を製造する方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく、双性イオンポリマーと水性ポリエステル系樹脂を含有する親水性層について鋭意検討した。その結果、
1)この親水性層においては、その表面に水性ポリエステル系樹脂が露出する傾向があること、及び
2)水性ポリエステル系樹脂の露出量が多いと、親水性層の親水性が低くなる傾向があること、
を見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、下記〔1〕〜〔10〕の親水性層の親水性向上方法、及び〔11〕の高親水性構造体の製造方法、が提供される。
〔1〕下記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面の少なくとも一部に(B)成分が露出している親水性層の親水性向上方法であって、前記親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去することを特徴とする、親水性層の親水性向上方法。
(A)成分:双性イオンポリマー
(B)成分:水性ポリエステル系樹脂
〔2〕前記(A)成分の双性イオンポリマーが、下記式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体である、〔1〕に記載の親水性層の親水性向上方法。
Figure 2019131625
〔式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜11のシアノアルキル基、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜10のアルケニル基、又は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基を表す。また、R及びRは、互いに結合して、環を形成していてもよい。Aは、下記式(2)〜(4)
Figure 2019131625
(式中、A及びAは、それぞれ独立に、置換基を有する若しくは有しない炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基を表す。nは1〜10の整数を表す。*1は炭素原子との結合手を表し、*2は窒素原子との結合手を表す。)
のいずれかで示される2価の基を表す。−Gは、脱プロトン化カルボキシ基(−COO)又は脱プロトン化スルホ基(−SO )を表す。mは、2〜5の整数を表す。〕
〔3〕前記式(1)中の−Gが、脱プロトン化スルホ基である、〔2〕に記載の親水性層の親水性向上方法。
〔4〕前記(A)成分の双性イオンポリマーが、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位、及び、カルボキシ基、スルホ基、又は、これらの基が塩基と反応してなる基を有する繰り返し単位(ただし、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位を除く。)を有する重合体である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
〔5〕前記(B)成分の水性ポリエステル系樹脂が、下記式(5)
Figure 2019131625
(式中、Arは3価の芳香族基を表し、Xは親水性基を表し、Yはアルキレン基又はアリーレン基を表す。)
で示される繰り返し単位を有する重合体である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
〔6〕Xで表される親水性基が、−SOH、−COH、−PO、又はこれらの基が塩基と反応してなる基である、〔5〕に記載の親水性層の親水性向上方法。
〔7〕親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去する前において、親水性層に含まれる(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、15〜200質量部である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
〔8〕前記親水性層が、下記の工程1及び2を有する層形成方法により形成されたものである、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
工程1:前記(A)成分、(B)成分、及び溶媒を含有する原料液を用いて、親水化対象物上に塗膜を形成する。
工程2:工程1で得られた塗膜中の溶媒を揮発させて、親水性層を形成する。
〔9〕親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去する方法が、(B)成分を溶解し得る溶媒を用いて、前記親水性層の表面を洗浄するものである、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
〔10〕(B)成分を溶解し得る溶媒を用いて、親水性層の表面を洗浄する操作が、下記の工程3及び4を有するものである、〔9〕に記載の親水性層の親水性向上方法。
工程3:(B)成分を溶解し得る溶媒を親水性層に接触させて、親水性層の表面に存在する(B)成分を前記溶媒中に抽出し、前記溶媒と(B)成分とを含有する(B)成分含有液を生成させる。
工程4:工程3において生成させた(B)成分含有液を、前記親水性層から分離除去する。
〔11〕基体上に、直接又はその他の層を介して、高親水性層が積層されてなる高親水性構造体の製造方法であって、前記高親水性構造体が、基体上に、直接又はその他の層を介して、親水性層が積層されてなる親水性構造体の前記親水性層の親水性を向上させることにより得られるものであり、前記親水性層が、前記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面に(B)成分が露出しているものであり、〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の方法を用いて、前記親水性層の親水性を向上させることを特徴とする、高親水性構造体の製造方法。
本発明によれば、双性イオンポリマーと水性ポリエステル系樹脂を含有する親水性層の親水性を向上させる方法と、この方法を使用して高親水性構造体を製造する方法が提供される。
洗浄処理前親水性シートの親水性層と洗浄処理後親水性シートの親水性層についてのC1sスペクトルを表す図である。
以下、本発明を、1)親水性層の親水性向上方法、及び、2)高親水性構造体の製造方法、に項分けして詳細に説明する。
1)親水性層の親水性向上方法
本発明の親水性層の親水性向上方法は、下記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面の少なくとも一部に(B)成分が露出している親水性層の親水性向上方法であって、前記親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去することを特徴とする。
(A)成分:双性イオンポリマー
(B)成分:水性ポリエステル系樹脂
〔親水性層〕
本発明の方法において、親水性層は、本発明の方法の処理対象として用いられるものである。したがって、本発明の方法が施されることにより、この親水性層は親水性が向上する。
親水性層は、上記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面の少なくとも一部に(B)成分が露出しているものである。
親水性層は、(A)成分として双性イオンポリマーを含有するため、この親水性層は親水性に優れたものとなる。
双性イオンポリマーとは、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位を有する重合体である。
双性イオンモノマーとは、分子内に重合性炭素−炭素二重結合と、カチオン性部と、アニオン性部とを有する化合物をいう。
双性イオンポリマーの質量平均分子量は特に限定されないが、通常5万〜300万、好ましくは10万〜250万、より好ましくは20万〜200万である。
双性イオンポリマーの質量平均分子量は、実施例に記載の方法に従って測定することができる。
双性イオンモノマー由来の繰り返し単位としては、下記式(1)で示されるものが挙げられる。
Figure 2019131625
式(1)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜11のシアノアルキル基、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜10のアルケニル基、又は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基を表す。また、R及びRは、互いに結合して、環を形成していてもよい。
、Rのエーテル結合を有する若しくは有しない炭素数1〜10のアルキル基の、炭素数1〜10のアルキル基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましい。
エーテル結合を有しないアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
エーテル結合を有するアルキル基としては、下記式(6)又は(7)で示される基等が挙げられる。
Figure 2019131625
式(6)中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を表し、Zは、炭素数2〜9のアルキレン基を表し、RとZの炭素数の合計は、3〜10である。*は結合手を表す。
式(7)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表し、Zは、炭素数2〜7のアルキレン基を表し、Zは、炭素数2〜7のアルキレン基を表し、R、Z、Zの炭素数の合計は、5〜10である。*は結合手を表す。
、Rのエーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜11のシアノアルキル基の、炭素数2〜11のシアノアルキル基の炭素数は、2〜9が好ましく、2〜6がより好ましい。
エーテル結合を有しないシアノアルキル基としては、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基、6−シアノヘキシル基等が挙げられる。
エーテル結合を有するシアノアルキル基としては、下記式(8)又は(9)で示される基等が挙げられる。
Figure 2019131625
式(8)中、Rは、炭素数2〜9のシアノアルキル基を表し、Zは、炭素数2〜9のアルキレン基を表し、RとZの炭素数の合計は、4〜11である。*は結合手を表す。
式(9)中、R10は、炭素数2〜7のシアノアルキル基を表し、Zは、炭素数2〜7のアルキレン基を表し、Zは、炭素数2〜7のアルキレン基を表し、R10、Z、Zの炭素数の合計は、6〜11である。*は結合手を表す。
、Rのエーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜10のアルケニル基の、炭素数2〜10のアルケニル基の炭素数は、2〜9が好ましく、2〜6がより好ましい。
エーテル結合を有しないアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基等が挙げられる。
エーテル結合を有するアルケニル基としては、下記式(10)又は(11)で示される基等が挙げられる。
Figure 2019131625
式(10)中、R11は、炭素数2〜8のアルケニル基を表し、Zは、炭素数2〜8のアルキレン基を表し、R11とZの炭素数の合計は、4〜10である。*は結合手を表す。
式(11)中、R12は、炭素数2〜6のアルケニル基を表し、Zは、炭素数2〜6のアルキレン基を表し、Zは、炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R12、Z、Zの炭素数の合計は、6〜10である。*は結合手を表す。
、Rの置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基の、炭素数6〜20のアリール基の炭素数は6〜10が好ましい。
無置換のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
置換基を有するアリール基の置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
とRが結合して形成される環としては、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
式(1)中、Aは、下記式(2)〜(4)のいずれかで示される2価の基を表す。
Figure 2019131625
式(2)〜(4)中、A及びAは、それぞれ独立に、置換基を有する若しくは有しない炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基を表す。nは1〜10の整数を表す。*1は炭素原子との結合手を表し、*2は窒素原子との結合手を表す。
、Aの、置換基を有する若しくは有しない炭素数1〜10のアルキレン基の、炭素数1〜10のアルキレン基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましい。
無置換のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の直鎖状アルキレン基;プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基等の分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。
置換基を有するアルキレン基の置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
、R及びRの炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
、R及びRの置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基の、炭素数6〜20のアリール基の炭素数は6〜10が好ましい。
無置換のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
置換基を有するアリール基の置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
nは、1〜10の整数であり、1〜5の整数が好ましい。
式(1)中、−Gは、脱プロトン化カルボキシ基(−COO)又は脱プロトン化スルホ基(−SO )を表す。これらの中でも、本発明の方法で処理する親水性層をより安価に形成する際は、−Gは、脱プロトン化スルホ基が好ましい。後述するように、脱プロトン化スルホ基を有する双性イオンポリマーは、比較的容易に合成することができるため、量産化により適している。
式(1)中、mは、2〜5の整数であり、3又は4が好ましい。
双性イオンポリマーは、双性イオンモノマーを用いて重合反応を行うことで合成することができる。例えば、上記式(1)で示される繰り返し単位を有する双性イオンポリマーは、下記式(1a)で示される双性イオンモノマーを用いて重合反応を行うことで合成することができる。
Figure 2019131625
式(1a)中、R、R、R、A、及びmは、それぞれ前記と同じ意味を表す。
式(1a)で示される双性イオンモノマーの合成方法は特に限定されない。
式(1a)中、「−G」が脱プロトン化カルボキシ基である化合物は、例えば、対応するアミン化合物〔下記式(1b)〕と、式:hal−(CH−COOH(halはハロゲン原子を表し、mは前記と同じ意味を表す。)で表されるハロゲン化カルボン酸を反応させる方法等の、公知のカルボキシベタイン化合物の製造方法により得ることができる(特開平8−99945号公報、特開平7−278071号公報、特開2006-143634号公報、特開2006-143635号公報等)。
また、式(1a)中、「−G」が脱プロトン化スルホ基である化合物は、例えば、下記式に示すように、対応するアミン化合物(1b)とスルトン化合物(1c)とを反応させることにより得ることができる。
Figure 2019131625
上記式中、R〜R、Aは、前記と同じ意味を表し、pは(m−2)である。
アミン化合物(1b)は、公知の方法で製造し、入手することができる。
前記スルトン化合物(1c)としては、1,2−エタンスルトン、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,5−ペンタンスルトンが挙げられる。
これらは、公知化合物であり、公知の方法で製造し、入手することができる。また、本発明においては、これらのスルトン化合物として市販品を用いることもできる。
アミン化合物(1b)とスルトン化合物(1c)との反応において、スルトン化合物(1c)の使用量は、アミン化合物(1b)に対して、好ましくは0.8〜1.2当量、より好ましくは0.9〜1.1当量である。スルトン化合物(1c)の使用量を上記範囲にすることで、未反応物を除去する工程を省略したり、除去にかかる時間を短縮したりすることができる。
アミン化合物(1b)とスルトン化合物(1c)との反応は、無溶媒で行ってもよいし、不活性溶媒の存在下に行ってもよい。
用いる不活性溶媒としては、水;テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
不活性溶媒を用いる場合、その使用量は特に制限されないが、アミン化合物(1b)1質量部に対して、通常1〜100質量部である。
反応温度は、特に限定されないが、通常0〜200℃、好ましくは10〜100℃、より好ましくは20〜60℃の範囲である。また、常圧(大気圧)下で反応を実施してもよいし、加圧条件下で反応を実施してもよい。
反応時間は、特に限定されないが、通常12〜332時間、好ましくは24〜168時間である。
反応は、酸素による酸化や、空気中の水分によるスルトン化合物(1c)の加水分解による収率の低下を防ぐ観点から、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
反応の進行は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
反応終了後、有機合成化学における通常の後処理操作を行い、所望により、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製方法により精製して、目的とする双性イオンモノマーを単離することができる。
また、本発明においては、双性イオンモノマーとして市販品を用いることもできる。
双性イオンポリマーは、双性イオンモノマーと共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位を有する共重合体であってもよい。
双性イオンポリマー中の、双性イオンモノマーと共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位としては、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位、マレイン酸由来の繰り返し単位、クロトン酸由来の繰り返し単位、イタコン酸由来の繰り返し単位等のカルボキシ基を有する繰り返し単位;(メタ)アクリルアミドt−ブチルスルホン酸由来の繰り返し単位等のスルホ基を有する繰り返し単位;(メタ)アクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位;(メタ)アクリルアミド由来の繰り返し単位;等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する(以下にて同じ)。
これらの中でも、双性イオンモノマーと共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位としては、カルボキシ基、スルホ基、又は、これらの基が塩基と反応してなる基を有することが好ましい。これらの繰り返し単位を有する双性イオンポリマーを含有する親水性層は、親水性に優れる。
双性イオンポリマー中の、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位の量は、双性イオンポリマー全体を基準として、通常50〜100モル%、好ましくは60〜99モル%、より好ましくは70〜95モル%である。
双性イオンポリマーが、カルボキシ基、スルホ基、又は、これらの基が塩基と反応してなる基を有する繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位の量は、双性イオンポリマー全体を基準として、通常0〜50モル%、好ましくは1〜40モル%、より好ましくは5〜30モル%である。
双性イオンポリマーの合成方法は特に限定されない。例えば、ラジカル重合開始剤の存在下、双性イオンモノマー等の重合反応を行うことにより、双性イオンポリマーを合成することができる。
ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ系化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル類等が挙げられる。
アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)等の油溶性アゾ重合開始剤;4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロロイド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルホネートジヒドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロロイド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等の水溶性アゾ重合開始剤;等が挙げられるが、水溶性アゾ重合開始剤が好ましく、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)が特に好ましい。
これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、重合反応に用いるモノマー1モルに対し、通常0.0001〜0.1000モル、好ましくは0.0005〜0.0050モルである。
ラジカル重合反応の反応条件は、目的の重合反応が進行する限り特に限定されない。加熱温度は、通常40〜150℃であり、反応時間は、1分から24時間の範囲で適宜設定することができる。
親水性層は、双性イオンポリマーを1種含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
親水性層は、(B)成分として、水性ポリエステル系樹脂を含有するため、この親水性層は、密着性に優れたものとなる。
水性ポリエステル系樹脂は、水又は水溶性の有機溶剤(例えば、アルコール、アルキルセロソルブ、ケトン系溶媒、エーテル系溶媒を50質量%未満含む水溶液)に溶解して水溶液の形態、又は、水中にエマルションとして分散した水分散体の形態をとり得るポリエステル系樹脂である。
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸(またはジカルボン酸エステル)とジオールとをエステル化(またはエステル交換)させながら重縮合させる方法等により得られる樹脂である。
水性ポリエステル系樹脂は、ポリエステル系樹脂に、水性(水溶性又は水分散性)が付与された樹脂である。
水性ポリエステル系樹脂の質量平均分子量(Mw)は、通常2,000〜10,0000、好ましくは2,500〜80,000、より好ましくは5,000〜50,000である。
この質量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値である。
水性ポリエステル系樹脂の水接触角は、通常10〜85°、好ましくは25〜80°、より好ましくは40〜75°である。
水性ポリエステル系樹脂の水接触角は、例えば全自動接触角測定装置(協和界面科学株式会社製、DM−701)を用いて測定することができる。
水性ポリエステル系樹脂の酸価は、通常0.1〜60mgKOH/g、好ましくは0.5〜15mgKOH/gである。
水性ポリエステル系樹脂の酸価は、例えば、フェノールフタレイン溶液などの指示薬と水酸化カリウム溶液などのアルカリ性溶液を用いた中和点滴定法で測定することができる。
水性ポリエステル系樹脂のガラス転移温度(Tg)は、−10〜130℃が好ましく、10〜115℃がより好ましく、30〜90℃がさらに好ましく、40〜65℃が特に好ましい。
水性ポリエステル系樹脂は、通常、分子内に親水性基を有する。
水性ポリエステル系樹脂に含まれる親水性基としては、スルホ基(−SOH)、カルボキシ基(−COH)、ホスホン酸基(−PO)、ヒドロキシ基(−OH)、これらの基が塩基と反応してなる基等のアニオン系親水性基;置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の窒素含有複素環基、これらの基が酸と反応してなる基等のカチオン系親水性基;等が挙げられる。
これらの中でも、親水性基としては、アニオン系親水性基が好ましく、−SOH、−COH、−PO、又はこれらの基が塩基と反応してなる基(以下、「これらの基が塩基と反応してなる基」を「アニオン系親水性基(α)」ということがある。)がより好ましい。
アニオン系親水性基(α)の生成に用いられる塩基としては、周期表第1族又は第2族の金属の水酸化物や、アミン化合物が挙げられる。したがって、アニオン系親水性基(α)を有する水性ポリエステル系樹脂は、通常は、周期表第1族又は第2族の金属のイオンやアンモニウムイオンを有し、水性ポリエステル系樹脂全体としては電気的に中性の状態になっている。
水性ポリエステル系樹脂の具体例としては、下記式(5)で示される繰り返し単位を有する重合体が挙げられる。
Figure 2019131625
式(5)中、Arは3価の芳香族基を表し、Xは親水性基を表し、Yはアルキレン基、又はアリーレン基を表す。
Arで表される芳香族基の炭素数は、通常6〜20、好ましくは6〜15、より好ましくは6〜10である。
Arで表される芳香族基としては、下記式で表される基、又は、その水素原子が置換されたものが挙げられる。
Figure 2019131625
式中、a〜a10は、水性ポリエステル系樹脂の主鎖に含まれる炭素原子(C=O結合中の炭素原子)との結合手を表す。Xは、親水性基を表し、芳香環中の任意の炭素原子と結合している。
Arで表される芳香族基が置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
Xで表される親水性基としては、前記したものが挙げられる。これらの中でも、−SOH、−COH、−PO、又はこれらの基が塩基と反応してなる基が好ましい。
Yで表されるアルキレン基の炭素数は、通常1〜20、好ましくは2〜10である。
Yで表されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の直鎖状アルキレン基;プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基等の分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。これらの中でも、直鎖状アルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
Yで表されるアリーレン基の炭素数は、通常6〜20、好ましくは6〜15、より好ましくは6〜10である。
Yで表されるアリーレン基としては、下記式で表される基、又は、その水素原子が置換されたものが挙げられる。
Figure 2019131625
式中、b〜b10は、水性ポリエステル系樹脂の主鎖に含まれる酸素原子との結合手を表す。
Yで表されるアリーレン基が置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記式(5)で示される繰り返し単位としては、下記式(5a)で示されるものが好ましく、(5b)で示されるものがより好ましい。
Figure 2019131625
式(5a)中、Xは、前記と同じ意味を表す。式(5b)中、Mは、アルカリ金属イオンを表し、ナトリウムイオンが好ましい。
また、水性ポリエステル系樹脂が上記式(5)で示される繰り返し単位を有する場合、このものは、上記式(5)で示される繰り返し単位を1種又は2種以上含有してもよく、上記式(5)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位を有していてもよい。
上記式(5)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位や、Xを有しない点を除き、上記式(5)で示される繰り返し単位と同様の構造を有するものが挙げられる。なかでも、下記式で示される構造の繰り返し単位が好ましい。
Figure 2019131625
水性ポリエステル系樹脂に含まれる上記式(5)で示される繰り返し単位の量は、水性ポリエステル系樹脂全体に対して、通常40〜100質量%、好ましくは60〜100質量%、より好ましくは80〜100質量%、特に好ましくは95〜100質量%である。
水性ポリエステル系樹脂は、ポリエステル系樹脂に水性を付与することにより得ることができる。
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸(またはジカルボン酸エステル)とジオールとをエステル化(またはエステル交換)させながら重縮合させる方法等の、従来公知の製造方法により得ることができる。
ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸およびそのエステル;アジピン酸、コハク酸、セバチン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸およびそのエステル;シクロヘキシルジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸およびそのエステル;ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸およびそのエステル;等が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸またはそのエステルが好ましい。
ジカルボン酸エステルとしては、ジカルボン酸の、メチルエステル、エチルエステル等の、ジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。これらのエステルはモノエステルであってもジエステルであってもよい。
ジオールとしては、エチレングリコール、プロピレングリコール、トリメチレングリコール、4−ブタンジオール、1,6−ヘキサンジオール、ネオペンチルグリコール、2,シクロヘキサンジメタノール、ビスフェノール類等が挙げられる。
ポリエステル系樹脂に水性を付与して水性ポリエステル系樹脂を得る方法としては、例えば、ポリエステル系樹脂を製造する際に、上記ジカルボン酸とポリオールに加え、分子中に親水性基を有するモノマーを重合する方法が挙げられる。
分子中に親水性基を有するモノマーとしては、親水性基を有するジカルボン酸または親水性基を有するジカルボン酸エステルが好ましい。親水性基を有するジカルボン酸をジカルボン酸成分として用いる方法により、親水性基を有する水性ポリエステル系樹脂を得ることができる。
より具体的には、上記式(5)で示される繰り返し単位を有する水性ポリエステル系樹脂は、下記式(5c)で示されるカルボキシ基及び親水性基を有する化合物と、下記式(5d)で示される水酸基含有化合物とを常法に従って重縮合反応させることで合成することができる。
Figure 2019131625
式(5c)、(5d)中、Ar、X、Yは、それぞれ前記と同じ意味を表す。
また、スルホ基またはカルボキシ基等のアニオン系親水性基(アニオン系親水性基(α)を除く。)を有するポリエステル系樹脂に、アルカリ金属、各種アミン類、アンモニウム系化合物等の水溶性塩を形成する物質を作用させることにより、アニオン系親水性基(α)を有する水性ポリエステル系樹脂を得ることができる。
また、水性ポリエステル系樹脂は、変性ポリエステル系樹脂であってもよい。変性ポリエステル系樹脂としては、アクリル変性ポリエステル系樹脂、ウレタン変性ポリエステル系樹脂、エポキシ変性ポリエステル系樹脂、グリコール変性ポリエステル系樹脂等が挙げられる。
これらの中でも、親水性と耐ブロッキング性のバランスに優れる親水性層を形成し易いことから、アクリル変性ポリエステル系樹脂が好ましい。アクリル変性ポリエステル系樹脂としては、例えば、主鎖としてポリエステル鎖を有し、側鎖としてアクリル系単量体由来の重合体鎖を有するグラフト共重合体が挙げられる。
変性ポリエステル系樹脂は、上記の方法により得られた重合体(未変性の水性ポリエステル系樹脂)に対して公知の方法により変性処理を行う方法等により、目的の変性ポリエステル系樹脂を得ることができる。例えば、アクリル変性ポリエステル系樹脂は、グリシジルメタクリレート等のエポキシ基と重合性二重結合を有する単量体を、カルボキシ基等を有する未変性の水性ポリエステル系樹脂と反応させることにより、この未変性の水性ポリエステル系樹脂に重合性二重結合を導入し、次いで、この重合性二重結合を利用して、アクリル系単量体の重合反応を行い、側鎖(アクリル系単量体由来の重合体鎖)を形成することにより合成することができる。
親水性層は、水性ポリエステル系樹脂を1種含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
親水性層に含まれる(B)成分の含有量は、(A)成分100質量部に対して、好ましくは15〜200質量部、より好ましくは40〜170質量部、より更に好ましくは60〜152質量部、特に好ましくは80〜120質量部である。(B)成分の含有量を前述の範囲とすることで、親水性を付与する対象となる構造物と親水性層との間の密着性と、親水性層表面の親水性をバランスよく得ることができる。
親水性層は、(A)成分や(B)成分以外の樹脂成分(以下、「その他の樹脂成分」ということがある。)を含有してもよい。
その他の樹脂成分としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール単独重合体、(メタ)アクリル酸系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
親水性層は、その他の樹脂成分を1種含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
親水性層がその他の樹脂成分を含有する場合、その含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは40質量部以下である。
親水性層に含まれる樹脂成分〔(A)成分、(B)成分、その他の樹脂成分〕は、架橋構造を有していてもよい。
特に(A)成分やその他の樹脂成分は架橋構造を有することが好ましい。これらの樹脂成分が架橋構造を有するとき、これらの樹脂成分を含む親水性層は耐水性により優れたものになる。
一方、(B)成分は架橋構造を有しないことが好ましい。(B)成分が架橋構造を有しないとき、(B)成分の少なくとも一部を除去する作業をより効率よく行うことができる。
架橋構造は、親水性層の形成工程中に、架橋剤を用いて架橋反応を行うことにより形成することができる。
架橋剤とは、親水性層に含まれる樹脂成分と反応して、架橋構造を形成し得る化合物である。
架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。
これらの中でも、架橋剤としてはエポキシ系架橋剤が好ましい。
エポキシ系架橋剤としては、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
架橋剤を用いて親水性層を形成する場合、架橋剤は1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
架橋剤を用いて親水性層を形成する場合、その使用量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
親水性層は、(C)成分として、炭素数が0〜10の陽イオンを有するイオン性化合物を含有してもよい。
(C)成分としては、炭素数が0〜5の陽イオンを有するイオン性化合物が好ましく、炭素数が0の陽イオンを有するイオン性化合物がより好ましい。
炭素数が0〜10の陽イオンを有するイオン性化合物としては、下記式(12)〜(15)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2019131625
式(12)〜(15)中、Mは炭素数0〜10の1価の陽イオンを表し、M’は炭素数0〜10の2価の陽イオンを表し、Xは1価の陰イオンを表し、X’は2価の陰イオンを表す。
Mとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;アンモニウムイオン(NH );第1級アンモニウムイオン;第2級アンモニウムイオン;第3級アンモニウムイオン;第4級アンモニウムイオン;等が挙げられる。
M’としては、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;マグネシウムイオン;等が挙げられる。
Xとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;炭酸水素イオン;硝酸イオン;等が挙げられる。
X’としては、炭酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。
炭素数が0の陽イオンを有するイオン性化合物としては、NaCl、NaCO、NaHCO、NaSO、NaNO、KCl、KCO、KHCO、KSO、KNO等のアルカリ金属の塩;MgCl、MgSO等のマグネシウム塩;CaCl等のアルカリ土類金属の塩;NHCl等のアンモニウム塩;等が挙げられる。
炭素数が1〜10の陽イオンを有するイオン性化合物としては、〔(CH)NH〕Cl、〔(CHNH〕Cl、〔(CHNH〕Cl、〔(CHN〕Cl等が挙げられる。
親水性層は、(C)成分を1種含有してもよいし、2種以上含有してもよい。
親水性層が(C)成分を含有する場合、その含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常1〜70質量部、好ましくは2〜50質量部、より好ましくは5〜20質量部である。
親水性層は、添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、界面活性剤、保湿剤、粘度調整剤、色素等が挙げられる。
(A)成分と(B)成分の合計量は、親水性層全体に対して、50〜100質量%であることが好ましく、70〜100質量%であることがより好ましく、90〜100質量%であることがよりさらに好ましい。
親水性層は、その表面の少なくとも一部に(B)成分が露出しているものである。
このような親水性層は、下記の工程1及び2を有する層形成方法を用いることにより効率よく形成することができる。
工程1:前記(A)成分、(B)成分、及び溶媒を含有する原料液を用いて、親水化対象物上に塗膜を形成する。
工程2:工程1で得られた塗膜中の溶媒を揮発させて、親水性層を形成する。
工程1において用いる原料液は、親水性層を構成する成分と溶媒を含有するものである。
溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;メトキシエタノール等のセロソルブ系溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;等が挙げられる。
溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
原料液の固形分濃度は、取り扱い性や塗布適性の観点から、0.5〜30質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
原料液は、公知の方法を用いて、上記の成分を混合することにより調製することができる。
親水化対象物とは、親水性層を担持するものであり、通常は、その用途等に応じて、高い親水性が要求される。
親水化対象物の種類としては、ガラス、陶器、磁器、琺瑯、タイル、セラミックス等の無機物;アルミニウム、ステンレス、真鍮等の金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の合成樹脂;木綿、パルプ、絹、羊毛等の天然繊維;等が挙げられる。
工程1においては、例えば、原料液を親水化対象物表面に接触させることにより、親水化対象物上に塗膜を形成することができる。
原料液を親水化対象物表面と接触させる方法としては、例えば、原料液に親水化対象物を浸漬させる方法、原料液を親水化対象物表面に噴霧又は塗布する方法等が挙げられる。
工程2において、塗膜中の溶媒を揮発させる方法は特に限定されない。例えば、公知の加熱処理により溶媒を揮発させることができる。
加熱処理としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等が挙げられる。
加熱する際の温度は、通常30〜150℃、好ましくは、50〜100℃である。加熱時間は、通常5秒〜10分、好ましくは20秒〜5分、より好ましくは40秒〜2分である。
工程2の後、必要に応じて、被塗物(親水性層が形成された親水化対象物)を適切な環境に静置し、シーズニング処理を施すことが好ましい。
親水性層の厚さは、通常0.1〜5μm、好ましくは、0.5〜3μmである。
本発明の方法を施す前において、親水性層の水接触角は、好ましくは60°以下、より好ましくは25〜55°である。
〔親水性層の親水性向上方法〕
本発明の親水性層の親水性向上方法は、前記親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去することを特徴とするものである。
(A)成分と(B)成分とを比べると、(A)成分の方が、親水性層の親水性を高める効果をより有すると考えられる。このため、親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去することにより、(A)成分の露出量が増加し、親水性層の親水性が向上すると考えられる。
親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去する方法は特に限定されない。例えば、(B)成分を溶解し得る溶媒を用いて、親水性層の表面を洗浄することで、効率よく(B)成分を除去することができる。その中でも(A)成分は除去せず、(B)成分のみを除去することが好ましく、(A)成分のうち親水性を阻害する成分(例えば低分子量成分)と(B)成分のみを除去することが好ましい。
親水性層の表面を洗浄する方法は特に限定されない。例えば、下記の工程3及び4を行うことにより、親水性層の表面を洗浄することができる。
工程3:(B)成分を溶解し得る溶媒を親水性層に接触させて、親水性層の表面に存在する(B)成分を前記溶媒中に抽出し、前記溶媒と(B)成分とを含有する(B)成分含有液を生成させる。
工程4:工程3において生成させた(B)成分含有液を、前記親水性層から分離除去する。
工程3において用いる溶媒は、(B)成分を抽出し得るものであれば特に限定されない。好ましい溶媒としては、水が挙げられる。
工程3における接触方法は特に限定されない。接触方法としては、例えば、親水性シートを水平に置き、その上に溶媒を塗布した後、所定時間静置することにより、溶媒を親水性層に接触させる方法、親水性シートを傾けた後、その上流部から下流部に向けて溶媒を流すことにより、溶媒を親水性層に接触させる方法、容器中に溶媒を入れ、その中に、親水性シートを浸漬することにより、溶媒を親水性層に接触させる方法等が挙げられる。
溶媒を親水性層に接触させることで、親水性層の表面に存在する(B)成分が溶媒中に抽出され、溶媒と(B)成分とを含有する(B)成分含有液が親水性層上に生成する。
(B)成分の抽出量は、温度や接触時間を調節することで最適化することができる。
工程4における(B)成分含有液を、親水性層から分離除去する方法は特に限定されない。分離除去方法としては、例えば、親水性シートを傾けることで、(B)成分含有液を流し落とす方法、親水性シート状の(B)成分含有液を吸引する方法、(B)成分含有液を拭き取る方法等が挙げられる。
洗浄操作は、1回で終えてもよいし、複数回繰り返してもよい。
工程4の後、必要に応じて、親水性層を乾燥させてもよい。
本発明の親水性層の親水性向上方法を行うことで、(A)成分、及び(B)成分を含有する親水性層の親水性を効率よく高めることができる。
本発明の方法を施した後において、親水性層の水接触角は、好ましくは20°以下、より好ましくは1°以上、18°以下、より更に好ましくは1°以上、13°以下、特に好ましくは1°以上、10°未満である。また、このときの親水性層の厚さは、通常1〜1000nm、好ましくは3〜200nm、より好ましくは5〜50nmである。
2)高親水性構造体の製造方法
本発明の高親水性構造体の製造方法は、基体上に、直接又はその他の層を介して、高親水性層が積層されてなる高親水性構造体の製造方法であって、前記高親水性構造体が、基体上に、直接又はその他の層を介して、親水性層が積層されてなる親水性構造体の前記親水性層の親水性を向上させることにより得られるものであり、前記親水性層が、前記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面に(B)成分が露出しているものであり、上記の方法を用いて、前記親水性層の親水性を向上させることを特徴とするものである。
「高親水性層」とは、親水性層の親水性が高められてなるものであり、「高親水性構造体」とは、基体と高親水性層とを有する構造体である。
このように、本発明において「高親水性」は相対的な表現として用いており、親水性がより高くなることを表すものである。
本発明により得られる高親水性構造体は、基体上に、直接又はその他の層を介して、親水性層が積層されてなる親水性構造体の前記親水性層の親水性を向上させることにより得られるものである。
親水性構造体を構成する基体としては、「親水性層の親水性向上方法」の発明のなかで、「親水化対象物」として示したものが挙げられる。
親水性構造体を構成する親水性層は、「親水性層の親水性向上方法」の発明における、「親水性が向上する前の親水性層(表面に露出している(B)成分の少なくとも一部が除去される前の親水性層)と同様のものである。
本発明において用いる親水性構造体の親水性層の水接触角は、好ましくは60°以下、より好ましくは25〜55°である。
親水性構造体が、基体上に、その他の層を介して親水性層が積層されてなるものであるとき、その他の層としては、シロキサン系ポリマーを含有する層が挙げられる。
シロキサン系ポリマーとは、シロキサン結合(Si−O−Si)を有するポリマーである。シロキサン系ポリマーは、通常、加水分解性有機ケイ素化合物を加水分解重縮合させることにより得ることができる。この「加水分解性」とは、水との反応によりシラノール基を生成させる性質をいう。
基体の表面状態によっては、形成された親水性層が基体との密着性に劣る場合がある。親水性層の密着性に関するこの問題は、親水性層の下にシロキサン系ポリマーを含有する層を設けることで解消される。
シロキサン系ポリマーを含有する層は、例えば、基体上に、シロキサン系ポリマーの前駆体化合物(テトラアルコキシシラン等の加水分解性有機ケイ素化合物)を含有する塗布液を塗布し、得られた塗膜中の加水分解性有機ケイ素化合物を加水分解重縮合させることで、シロキサン系ポリマーを含有する塗膜を形成し、次いで、この塗膜を乾燥させることにより形成することができる。
なお、前記シロキサン系ポリマーの前駆体化合物を含有する塗布液としては、いわゆるアルコール性シリカゾルとして知られる市販品を用いてもよい。
また、シロキサン系ポリマーを含有する層中のシロキサン系ポリマーと親水性層中の樹脂成分が、両層の界面で絡み合うようにすることで、より密着性に優れる親水性層を形成することができる。
界面におけるシロキサン系ポリマーと親水性層中の樹脂成分の絡み合いを高めるためには、シロキサン系ポリマーを含有する塗膜が半乾きの状態(溶媒が残存した状態)で、その塗膜の上に、親水性層形成用の塗布液を塗布して塗膜を形成し、次いで、これらの塗膜を乾燥させて、その他の層と親水性層を同時に形成すればよい。
その他の層の厚さは、通常10〜10,000nm、好ましくは、30〜5,000nm、より好ましくは50〜500nmである。
高親水性構造体は、「親水性層の親水性向上方法」の発明を利用して、親水性構造体の親水性層の親水性を高めることにより、得ることができる。
高親水性構造体の高親水性層の水接触角は、好ましくは20°以下、より好ましくは1°以上、18°以下、より更に好ましくは1°以上、13°以下、特に好ましくは1°以上、10°未満である。
親水性層の水接触角(α)と高親水性層の水接触角(α)の差〔α−α〕は、通常5〜60°、好ましくは10〜50°、より好ましくは15〜40°である。
本発明によれば、極めて高い親水性を有する構造体を効率よく製造することができる。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
各例中の部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
〔質量平均分子量(Mw)〕
双性イオンポリマーの質量平均分子量(Mw)は、以下の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行って求めた。
装置:HLC−8320GPC/UV−8320(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgelGMPWXL(東ソー株式会社製)×2
検出器:HLC−8320GPC 内蔵RI検出器/UV−8320(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
試料濃度:1.0g/L(ポリマー成分濃度)
注入量:100μL
溶離液:0.2M NaNO水溶液
流速:1.0mL/分
分子量マーカー:標準ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール
〔製造例1〕双性イオンモノマーの合成
撹拌装置付きの反応容器内に、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド100部、ジブチルヒドロキシトルエン0.4部、アセトン267部を仕込み、内容物を撹拌しながらゆっくりとプロパンサルトン78部を滴下した。その後、内容物を25℃で24時間撹拌し、析出した白色固体をろ取し、これを乾燥することで、双性イオンモノマー(N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタイン)を得た。
〔製造例2〕双性イオンポリマーの合成
撹拌装置付きの反応容器内に、N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタイン98.7部、アクリル酸1.3部、重合開始剤(和光純薬株式会社製、製品名「V−501」、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸))0.21部、蒸留水234部を入れ、反応容器内に窒素を導入しながら25℃で30分間撹拌した。その後、系内を80℃まで上昇させ、そのまま12時間撹拌することで重合反応を行い、双性イオンポリマーを含有する溶液を得た。得られた双性イオンポリマーの質量平均分子量は、720,000であった。
〔実施例1〕
製造例2で得られた、双性イオンポリマーを含有する溶液(固形分100部)、塩化ナトリウム17部、水性ポリエステル系樹脂(1)含有液〔互応化学工業株式会社製、製品名「プラスコート RZ−105」(固形分濃度25%)〕(固形分100部)を加え、蒸留水を加えて固形分濃度を2.0%に調整し、このものを十分に撹拌して親水性組成物を得た。
基材シート(ポリエステルフィルム、三菱ケミカル株式会社製、製品名「ダイアホイル」、厚さ50μm)に、アルコール性シリカゾル(コルコート株式会社製、製品名「N−103X」、固形分濃度2.0%)を、ワイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが100nmとなるように塗布し、得られた積層体を100℃で1分間加熱し、シロキサン系ポリマーを含有する層を形成した。
次いで、このシロキサン系ポリマーを含有する層上に、前記親水性組成物を塗布し、得られた塗膜を100℃で1分間加熱して、厚さが1μmの親水性層を形成し、親水性シート(洗浄処理前親水性シート)を得た。
得られた親水性シートを2つに分け、その一方の親水性シートの親水性層上に、イオン交換水5μLをスポイトで滴下した。次いで、不織布シート(旭化成株式会社製、製品名「ベンコット」)で水滴を拭き取った。このものを23℃50%RH(相対湿度)の環境下で1時間自然乾燥させることにより、洗浄処理後の親水性層を有する親水性シート(洗浄処理後親水性シート)を得た。
洗浄処理前親水性シートと洗浄処理後親水性シートについて、以下のように、水接触角測定とXPS(X線光電子分光法)測定を行った。
〔水接触角測定〕
洗浄処理前親水性シートと洗浄処理後親水性シートのそれぞれの親水性層上に、イオン交換水2μLを滴下した。全自動接触角測定装置(協和界面科学株式会社製、Drop Master、DM−701)を用いて、滴下から3秒後の水滴について水接触角(洗浄処理前水接触角と洗浄処理後水接触角)を測定した。結果を第1表に示す。
〔XPS測定〕
洗浄処理前親水性シートと洗浄処理後親水性シートのそれぞれの親水性層について、XPSを用いて元素分析を行い、親水性層の表面に存在する炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ケイ素原子の合計量(100atom%)に対する、各原子濃度を算出した。また、エステル結合由来のピークを確認することを目的として、炭素原子の結合状態を調べた。C1sスペクトルを図1に示し、元素分析結果を第2表に示す。
XPSの測定条件は以下のとおりである。
測定装置:PHI Quantera SXM(アルバック・ファイ株式会社製)
X線源:単色化AlKα
出力:25W
加速電圧:15kV
ビーム直径:100μm
光電子取り出し角度:45°
パルスエネルギー:112eV(炭素原子、酸素原子)、224eV(窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子)
ステップ分解能:0.1eV(炭素原子、酸素原子)、0.2eV(窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子)
測定面積:100μmφ
〔実施例2〜10、比較例2〕
実施例1において、各成分の種類と量を第1表に記載のとおりに変更したことを除き、実施例1と同様にして親水性組成物と、親水性シート(洗浄処理前親水性シートと洗浄処理後親水性シート)を得た。次いで、洗浄処理前親水性シートと洗浄処理後親水性シートについて、上記と同様の方法により、水接触角を測定した。結果を第1表に示す。
なお、各例においては、以下の市販品を使用した。
水性ポリエステル系樹脂(1)含有液:互応化学工業株式会社製、製品名「プラスコート RZ−105」(固形分濃度25%)、Tg54℃、分子量16,000
水性ポリエステル系樹脂(2)含有液:互応化学工業株式会社製、製品名「プラスコート Z−760」(固形分濃度25%)、Tg52℃、分子量3,000
水性ポリエステル系樹脂(3)含有液:互応化学工業株式会社製、製品名「プラスコート Z−687」(固形分濃度25%)、Tg110℃、分子量26,000
水性ポリエステル系樹脂(4)含有液:互応化学工業株式会社製、製品名「プラスコート Z−690」(固形分濃度25%)、Tg110℃、分子量28,000
水性ポリエステル系樹脂(5)含有液:東洋紡績株式会社製、製品名「MD−1245」固形分濃度30%)、Tg64℃、分子量20,000
水性ポリエステル系樹脂(6)含有液:互応化学工業株式会社製、製品名「プラスコート Z−221」(固形分濃度20%)、Tg47℃、分子量14,000
〔比較例1〕
基材シート(ポリエステルフィルム、三菱ケミカル株式会社製、製品名「ダイアホイル」、厚さ50μm)に、アルコール性シリカゾル(コルコート株式会社製、製品名「N−103X」、固形分濃度2.0%)を、ワイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが100nmとなるように塗布し、得られた積層体を100℃で1分間加熱し、シロキサン系ポリマーを含有する層を形成した。
得られた積層体を2つに分け、その一方の積層体のシロキサン系ポリマーを含有する層に対して上記と同様に洗浄処理を行った。次いで、洗浄処理前の積層体と洗浄処理後の積層体について、上記と同様の方法により、水接触角を測定した。結果を第1表に示す。
Figure 2019131625
Figure 2019131625
第1表から以下のことがわかる。
実施例1〜10で得られた親水性シートにおいては、洗浄処理を施すことで、親水性が非常に高まる。
一方で、比較例1〜2で得られた親水性シートにおいては、洗浄処理前後で親水性に変化が無かった。
図1中、(A)は洗浄処理前親水性シートの親水性層についてのC1sスペクトルであり、(B)は洗浄処理後親水性シートの親水性層についてのC1sスペクトルである。
(A)のC1sスペクトルにおいては、「*」で示すように、エステル結合を示すC−O(286.4eV)とC=O(288.9eV)が観測されていることから、洗浄処理前親水性シートの親水性層の表面には、水性ポリエステル系樹脂が存在することが分かる。
一方、これらのピークは、(B)のC1sスペクトルではほとんど観測されていないことから、洗浄処理後親水性シートの親水性層の表面には、水性ポリエステル系樹脂はほとんど存在していないことが分かる。
また、第2表に示すように、洗浄処理後においては、CとOが減り、SとNが増えていることから、洗浄処理を行うことで親水性層の表面の水性ポリエステル系樹脂が除去された結果、水性ポリエステル系樹脂の割合が減り、双性イオンポリマーの割合が増えていることが分かる。また、洗浄処理後においては、Siが増えていることから、洗浄処理を行うことで親水性層がかなり薄くなり、シロキサン系ポリマーを含有する層が元素分析結果に影響を与えていることが予想される。
これらのことから示されるように、双性イオンポリマーと水性ポリエステル系樹脂を含有し、その表面の少なくとも一部に水性ポリエステル系樹脂が露出している親水性層においては、その親水性層の表面に露出している水性ポリエステル系樹脂の少なくとも一部を除去することにより、親水性層の親水性を大きく向上させることができる。
A:洗浄処理前親水性シートの親水性層についてのC1sスペクトル
B:洗浄処理後親水性シートの親水性層についてのC1sスペクトル

Claims (11)

  1. 下記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面の少なくとも一部に(B)成分が露出している親水性層の親水性向上方法であって、
    前記親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去することを特徴とする、親水性層の親水性向上方法。
    (A)成分:双性イオンポリマー
    (B)成分:水性ポリエステル系樹脂
  2. 前記(A)成分の双性イオンポリマーが、下記式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体である、請求項1に記載の親水性層の親水性向上方法。
    Figure 2019131625
    〔式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜11のシアノアルキル基、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜10のアルケニル基、又は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基を表す。また、R及びRは、互いに結合して、環を形成していてもよい。Aは、下記式(2)〜(4)
    Figure 2019131625
    (式中、A及びAは、それぞれ独立に、置換基を有する若しくは有しない炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基を表す。nは1〜10の整数を表す。*1は炭素原子との結合手を表し、*2は窒素原子との結合手を表す。)
    のいずれかで示される2価の基を表す。−Gは、脱プロトン化カルボキシ基(−COO)又は脱プロトン化スルホ基(−SO )を表す。mは、2〜5の整数を表す。〕
  3. 前記式(1)中の−Gが、脱プロトン化スルホ基である、請求項2に記載の親水性層の親水性向上方法。
  4. 前記(A)成分の双性イオンポリマーが、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位、及び、カルボキシ基、スルホ基、又は、これらの基が塩基と反応してなる基を有する繰り返し単位(ただし、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位を除く。)を有する重合体である、請求項1〜3のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
  5. 前記(B)成分の水性ポリエステル系樹脂が、下記式(5)
    Figure 2019131625
    (式中、Arは3価の芳香族基を表し、Xは親水性基を表し、Yはアルキレン基又はアリーレン基を表す。)
    で示される繰り返し単位を有する重合体である、請求項1〜4のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
  6. Xで表される親水性基が、−SOH、−COH、−PO、又はこれらの基が塩基と反応してなる基である、請求項5に記載の親水性層の親水性向上方法。
  7. 親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去する前において、親水性層に含まれる(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、15〜200質量部である、請求項1〜6のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
  8. 前記親水性層が、下記の工程1及び2を有する層形成方法により形成されたものである、請求項1〜7のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
    工程1:前記(A)成分、(B)成分、及び溶媒を含有する原料液を用いて、親水化対象物上に塗膜を形成する。
    工程2:工程1で得られた塗膜中の溶媒を揮発させて、親水性層を形成する。
  9. 親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去する方法が、(B)成分を溶解し得る溶媒を用いて、前記親水性層の表面を洗浄するものである、請求項1〜8のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
  10. (B)成分を溶解し得る溶媒を用いて、親水性層の表面を洗浄する操作が、下記の工程3及び4を有するものである、請求項9に記載の親水性層の親水性向上方法。
    工程3:(B)成分を溶解し得る溶媒を親水性層に接触させて、親水性層の表面に存在する(B)成分を前記溶媒中に抽出し、前記溶媒と(B)成分とを含有する(B)成分含有液を生成させる。
    工程4:工程3において生成させた(B)成分含有液を、前記親水性層から分離除去する。
  11. 基体上に、直接又はその他の層を介して、高親水性層が積層されてなる高親水性構造体の製造方法であって、
    前記高親水性構造体が、基体上に、直接又はその他の層を介して、親水性層が積層されてなる親水性構造体の前記親水性層の親水性を向上させることにより得られるものであり、
    前記親水性層が、前記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面に(B)成分が露出しているものであり、
    請求項1〜10のいずれかに記載の方法を用いて、前記親水性層の親水性を向上させることを特徴とする、高親水性構造体の製造方法。
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