JP6959877B2 - 親水性層の親水性向上方法、及び高親水性構造体の製造方法 - Google Patents
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Description
例えば、特許文献1には、ベタインモノマー及びアルコキシシリル基含有化合物を含有するモノマー成分を重合させてなるアルコキシシリル基含有ポリマーを含有する親水性コート剤や、この親水性コート剤を用いて形成された被膜を有する防曇性シート等が記載されている。
また、本発明者らの検討によれば、双性イオンポリマーとともに水性ポリエステル系樹脂を含有する親水性組成物を用いて親水性層を形成することで、より高性能な親水性シートが得られる場合があることや、この親水性層は、形成後に親水性がさらに向上する可能性があることが分かった。
1)この親水性層においては、その表面に水性ポリエステル系樹脂が露出する傾向があること、及び
2)水性ポリエステル系樹脂の露出量が多いと、親水性層の親水性が低くなる傾向があること、
を見出し、本発明を完成するに至った。
〔1〕下記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面の少なくとも一部に(B)成分が露出している親水性層の親水性向上方法であって、前記親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去することを特徴とする、親水性層の親水性向上方法。
(A)成分:双性イオンポリマー
(B)成分:水性ポリエステル系樹脂
〔2〕前記(A)成分の双性イオンポリマーが、下記式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体である、〔1〕に記載の親水性層の親水性向上方法。
のいずれかで示される2価の基を表す。−G−は、脱プロトン化カルボキシ基(−COO−)又は脱プロトン化スルホ基(−SO3 −)を表す。mは、2〜5の整数を表す。〕
〔3〕前記式(1)中の−G−が、脱プロトン化スルホ基である、〔2〕に記載の親水性層の親水性向上方法。
〔4〕前記(A)成分の双性イオンポリマーが、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位、及び、カルボキシ基、スルホ基、又は、これらの基が塩基と反応してなる基を有する繰り返し単位(ただし、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位を除く。)を有する重合体である、〔1〕〜〔3〕のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
〔5〕前記(B)成分の水性ポリエステル系樹脂が、下記式(5)
で示される繰り返し単位を有する重合体である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
〔6〕Xで表される親水性基が、−SO3H、−CO2H、−PO3H2、又はこれらの基が塩基と反応してなる基である、〔5〕に記載の親水性層の親水性向上方法。
〔7〕親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去する前において、親水性層に含まれる(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、15〜200質量部である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
〔8〕前記親水性層が、下記の工程1及び2を有する層形成方法により形成されたものである、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
工程1:前記(A)成分、(B)成分、及び溶媒を含有する原料液を用いて、親水化対象物上に塗膜を形成する。
工程2:工程1で得られた塗膜中の溶媒を揮発させて、親水性層を形成する。
〔9〕親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去する方法が、(B)成分を溶解し得る溶媒を用いて、前記親水性層の表面を洗浄するものである、〔1〕〜〔8〕のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
〔10〕(B)成分を溶解し得る溶媒を用いて、親水性層の表面を洗浄する操作が、下記の工程3及び4を有するものである、〔9〕に記載の親水性層の親水性向上方法。
工程3:(B)成分を溶解し得る溶媒を親水性層に接触させて、親水性層の表面に存在する(B)成分を前記溶媒中に抽出し、前記溶媒と(B)成分とを含有する(B)成分含有液を生成させる。
工程4:工程3において生成させた(B)成分含有液を、前記親水性層から分離除去する。
〔11〕基体上に、直接又はその他の層を介して、高親水性層が積層されてなる高親水性構造体の製造方法であって、前記高親水性構造体が、基体上に、直接又はその他の層を介して、親水性層が積層されてなる親水性構造体の前記親水性層の親水性を向上させることにより得られるものであり、前記親水性層が、前記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面に(B)成分が露出しているものであり、〔1〕〜〔10〕のいずれかに記載の方法を用いて、前記親水性層の親水性を向上させることを特徴とする、高親水性構造体の製造方法。
本発明の親水性層の親水性向上方法は、下記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面の少なくとも一部に(B)成分が露出している親水性層の親水性向上方法であって、前記親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去することを特徴とする。
(A)成分:双性イオンポリマー
(B)成分:水性ポリエステル系樹脂
本発明の方法において、親水性層は、本発明の方法の処理対象として用いられるものである。したがって、本発明の方法が施されることにより、この親水性層は親水性が向上する。
親水性層は、上記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面の少なくとも一部に(B)成分が露出しているものである。
双性イオンポリマーとは、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位を有する重合体である。
双性イオンモノマーとは、分子内に重合性炭素−炭素二重結合と、カチオン性部と、アニオン性部とを有する化合物をいう。
双性イオンポリマーの質量平均分子量は、実施例に記載の方法に従って測定することができる。
エーテル結合を有しないアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
エーテル結合を有するアルキル基としては、下記式(6)又は(7)で示される基等が挙げられる。
式(7)中、R8は、炭素数1〜6のアルキル基を表し、Z2は、炭素数2〜7のアルキレン基を表し、Z3は、炭素数2〜7のアルキレン基を表し、R8、Z2、Z3の炭素数の合計は、5〜10である。*は結合手を表す。
エーテル結合を有しないシアノアルキル基としては、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基、6−シアノヘキシル基等が挙げられる。
エーテル結合を有するシアノアルキル基としては、下記式(8)又は(9)で示される基等が挙げられる。
式(9)中、R10は、炭素数2〜7のシアノアルキル基を表し、Z5は、炭素数2〜7のアルキレン基を表し、Z6は、炭素数2〜7のアルキレン基を表し、R10、Z5、Z6の炭素数の合計は、6〜11である。*は結合手を表す。
エーテル結合を有しないアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基等が挙げられる。
エーテル結合を有するアルケニル基としては、下記式(10)又は(11)で示される基等が挙げられる。
式(11)中、R12は、炭素数2〜6のアルケニル基を表し、Z8は、炭素数2〜6のアルキレン基を表し、Z9は、炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R12、Z8、Z9の炭素数の合計は、6〜10である。*は結合手を表す。
無置換のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
置換基を有するアリール基の置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
無置換のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の直鎖状アルキレン基;プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基等の分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。
置換基を有するアルキレン基の置換基としては、メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
R4、R5及びR6の置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基の、炭素数6〜20のアリール基の炭素数は6〜10が好ましい。
無置換のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
置換基を有するアリール基の置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
nは、1〜10の整数であり、1〜5の整数が好ましい。
式(1)中、mは、2〜5の整数であり、3又は4が好ましい。
式(1a)中、「−G−」が脱プロトン化カルボキシ基である化合物は、例えば、対応するアミン化合物〔下記式(1b)〕と、式:hal−(CH2)m−COOH(halはハロゲン原子を表し、mは前記と同じ意味を表す。)で表されるハロゲン化カルボン酸を反応させる方法等の、公知のカルボキシベタイン化合物の製造方法により得ることができる(特開平8−99945号公報、特開平7−278071号公報、特開2006-143634号公報、特開2006-143635号公報等)。
また、式(1a)中、「−G−」が脱プロトン化スルホ基である化合物は、例えば、下記式に示すように、対応するアミン化合物(1b)とスルトン化合物(1c)とを反応させることにより得ることができる。
アミン化合物(1b)は、公知の方法で製造し、入手することができる。
これらは、公知化合物であり、公知の方法で製造し、入手することができる。また、本発明においては、これらのスルトン化合物として市販品を用いることもできる。
用いる不活性溶媒としては、水;テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
不活性溶媒を用いる場合、その使用量は特に制限されないが、アミン化合物(1b)1質量部に対して、通常1〜100質量部である。
反応時間は、特に限定されないが、通常12〜332時間、好ましくは24〜168時間である。
反応は、酸素による酸化や、空気中の水分によるスルトン化合物(1c)の加水分解による収率の低下を防ぐ観点から、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
反応の進行は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
また、本発明においては、双性イオンモノマーとして市販品を用いることもできる。
双性イオンポリマーが、カルボキシ基、スルホ基、又は、これらの基が塩基と反応してなる基を有する繰り返し単位を有する場合、これらの繰り返し単位の量は、双性イオンポリマー全体を基準として、通常0〜50モル%、好ましくは1〜40モル%、より好ましくは5〜30モル%である。
有機過酸化物としては、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル類等が挙げられる。
アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)等の油溶性アゾ重合開始剤;4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロロイド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルホネートジヒドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロロイド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等の水溶性アゾ重合開始剤;等が挙げられるが、水溶性アゾ重合開始剤が好ましく、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)が特に好ましい。
これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ラジカル重合反応の反応条件は、目的の重合反応が進行する限り特に限定されない。加熱温度は、通常40〜150℃であり、反応時間は、1分から24時間の範囲で適宜設定することができる。
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸(またはジカルボン酸エステル)とジオールとをエステル化(またはエステル交換)させながら重縮合させる方法等により得られる樹脂である。
水性ポリエステル系樹脂は、ポリエステル系樹脂に、水性(水溶性又は水分散性)が付与された樹脂である。
この質量平均分子量(Mw)の値は、ゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)法で測定される標準ポリスチレン換算の値である。
水性ポリエステル系樹脂の水接触角は、例えば全自動接触角測定装置(協和界面科学株式会社製、DM−701)を用いて測定することができる。
水性ポリエステル系樹脂の酸価は、通常0.1〜60mgKOH/g、好ましくは0.5〜15mgKOH/gである。
水性ポリエステル系樹脂の酸価は、例えば、フェノールフタレイン溶液などの指示薬と水酸化カリウム溶液などのアルカリ性溶液を用いた中和点滴定法で測定することができる。
水性ポリエステル系樹脂に含まれる親水性基としては、スルホ基(−SO3H)、カルボキシ基(−CO2H)、ホスホン酸基(−PO3H2)、ヒドロキシ基(−OH)、これらの基が塩基と反応してなる基等のアニオン系親水性基;置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の窒素含有複素環基、これらの基が酸と反応してなる基等のカチオン系親水性基;等が挙げられる。
これらの中でも、親水性基としては、アニオン系親水性基が好ましく、−SO3H、−CO2H、−PO3H2、又はこれらの基が塩基と反応してなる基(以下、「これらの基が塩基と反応してなる基」を「アニオン系親水性基(α)」ということがある。)がより好ましい。
Arで表される芳香族基が置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
Yで表されるアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の直鎖状アルキレン基;プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基等の分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。これらの中でも、直鎖状アルキレン基が好ましく、エチレン基がより好ましい。
Yで表されるアリーレン基としては、下記式で表される基、又は、その水素原子が置換されたものが挙げられる。
Yで表されるアリーレン基が置換基を有する場合、置換基としては、アルキル基、フェニル基、アルコキシ基、ハロゲン原子等が挙げられる。
上記式(5)で示される繰り返し単位以外の繰り返し単位としては、アクリル酸エステル、メタクリル酸エステル等の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位や、Xを有しない点を除き、上記式(5)で示される繰り返し単位と同様の構造を有するものが挙げられる。なかでも、下記式で示される構造の繰り返し単位が好ましい。
ポリエステル系樹脂は、ジカルボン酸(またはジカルボン酸エステル)とジオールとをエステル化(またはエステル交換)させながら重縮合させる方法等の、従来公知の製造方法により得ることができる。
ジカルボン酸またはジカルボン酸エステルとしては、テレフタル酸、イソフタル酸、フタル酸、ナフタリンジカルボン酸等の芳香族ジカルボン酸およびそのエステル;アジピン酸、コハク酸、セバチン酸、ドデカン二酸等の脂肪族ジカルボン酸およびそのエステル;シクロヘキシルジカルボン酸等の脂環式ジカルボン酸およびそのエステル;ヒドロキシ安息香酸等のヒドロキシカルボン酸およびそのエステル;等が挙げられる。これらの中でも、芳香族ジカルボン酸またはそのエステルが好ましい。
ジカルボン酸エステルとしては、ジカルボン酸の、メチルエステル、エチルエステル等の、ジカルボン酸の低級アルキルエステルが挙げられる。これらのエステルはモノエステルであってもジエステルであってもよい。
これらの中でも、親水性と耐ブロッキング性のバランスに優れる親水性層を形成し易いことから、アクリル変性ポリエステル系樹脂が好ましい。アクリル変性ポリエステル系樹脂としては、例えば、主鎖としてポリエステル鎖を有し、側鎖としてアクリル系単量体由来の重合体鎖を有するグラフト共重合体が挙げられる。
その他の樹脂成分としては、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール単独重合体、(メタ)アクリル酸系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
親水性層がその他の樹脂成分を含有する場合、その含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常50質量部以下、好ましくは40質量部以下である。
特に(A)成分やその他の樹脂成分は架橋構造を有することが好ましい。これらの樹脂成分が架橋構造を有するとき、これらの樹脂成分を含む親水性層は耐水性により優れたものになる。
一方、(B)成分は架橋構造を有しないことが好ましい。(B)成分が架橋構造を有しないとき、(B)成分の少なくとも一部を除去する作業をより効率よく行うことができる。
架橋構造は、親水性層の形成工程中に、架橋剤を用いて架橋反応を行うことにより形成することができる。
架橋剤とは、親水性層に含まれる樹脂成分と反応して、架橋構造を形成し得る化合物である。
エポキシ系架橋剤としては、ビスフェノールA・エピクロルヒドリン型のエポキシ樹脂、ソルビトールポリグリシジルエーテル、ポリグリセロールポリグリシジルエーテル、ペンタエリスリトールポリグリシジルエーテル、ジグリセロールポリグリシジルエーテル、グリセロールポリグリシジルエーテル、トリメチロールプロパンポリグリシジルエーテル、ネオペンチルグリコールジグリシジルエーテル、1,6−ヘキサンジオールジグリシジルエーテル、エチレングリコールジグリシジルエーテル、ジエチレングリコールジグリシジルエーテル、ポリエチレングリコールジグリシジルエーテル、プロピレングリコールジグリシジルエーテル、ポリプロピレングリコールジグリシジルエーテル、ジグリシジルアニリン、N,N,N’,N’−テトラグリシジル−m−キシレンジアミン、1,3−ビス(N,N’−ジグリシジルアミノメチル)シクロヘキサン等が挙げられる。
架橋剤を用いて親水性層を形成する場合、その使用量は、(A)成分100質量部に対して、0.1〜20質量部であることが好ましく、より好ましくは1〜10質量部である。
M’としては、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;マグネシウムイオン;等が挙げられる。
Xとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;炭酸水素イオン;硝酸イオン;等が挙げられる。
X’としては、炭酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。
炭素数が1〜10の陽イオンを有するイオン性化合物としては、〔(CH3)NH3〕Cl、〔(CH3)2NH2〕Cl、〔(CH3)3NH〕Cl、〔(CH3)4N〕Cl等が挙げられる。
親水性層が(C)成分を含有する場合、その含有量は、(A)成分100質量部に対して、通常1〜70質量部、好ましくは2〜50質量部、より好ましくは5〜20質量部である。
添加剤としては、界面活性剤、保湿剤、粘度調整剤、色素等が挙げられる。
このような親水性層は、下記の工程1及び2を有する層形成方法を用いることにより効率よく形成することができる。
工程2:工程1で得られた塗膜中の溶媒を揮発させて、親水性層を形成する。
溶媒としては、水;メタノール、エタノール、イソプロパノール等のアルコール系溶媒;メトキシエタノール等のセロソルブ系溶媒;アセトン等のケトン系溶媒;等が挙げられる。
溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
原料液の固形分濃度は、取り扱い性や塗布適性の観点から、0.5〜30質量%が好ましく、1〜10質量%がより好ましい。
原料液は、公知の方法を用いて、上記の成分を混合することにより調製することができる。
親水化対象物の種類としては、ガラス、陶器、磁器、琺瑯、タイル、セラミックス等の無機物;アルミニウム、ステンレス、真鍮等の金属;ポリエチレン、ポリプロピレン、ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリエチレンナフタレート、ポリ塩化ビニル、ポリカーボネート、アクリル系樹脂、スチレン系樹脂等の合成樹脂;木綿、パルプ、絹、羊毛等の天然繊維;等が挙げられる。
原料液を親水化対象物表面と接触させる方法としては、例えば、原料液に親水化対象物を浸漬させる方法、原料液を親水化対象物表面に噴霧又は塗布する方法等が挙げられる。
加熱処理としては、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等が挙げられる。
加熱する際の温度は、通常30〜150℃、好ましくは、50〜100℃である。加熱時間は、通常5秒〜10分、好ましくは20秒〜5分、より好ましくは40秒〜2分である。
本発明の方法を施す前において、親水性層の水接触角は、好ましくは60°以下、より好ましくは25〜55°である。
本発明の親水性層の親水性向上方法は、前記親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去することを特徴とするものである。
(A)成分と(B)成分とを比べると、(A)成分の方が、親水性層の親水性を高める効果をより有すると考えられる。このため、親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去することにより、(A)成分の露出量が増加し、親水性層の親水性が向上すると考えられる。
工程3:(B)成分を溶解し得る溶媒を親水性層に接触させて、親水性層の表面に存在する(B)成分を前記溶媒中に抽出し、前記溶媒と(B)成分とを含有する(B)成分含有液を生成させる。
工程4:工程3において生成させた(B)成分含有液を、前記親水性層から分離除去する。
(B)成分の抽出量は、温度や接触時間を調節することで最適化することができる。
工程4の後、必要に応じて、親水性層を乾燥させてもよい。
本発明の方法を施した後において、親水性層の水接触角は、好ましくは20°以下、より好ましくは1°以上、18°以下、より更に好ましくは1°以上、13°以下、特に好ましくは1°以上、10°未満である。また、このときの親水性層の厚さは、通常1〜1000nm、好ましくは3〜200nm、より好ましくは5〜50nmである。
本発明の高親水性構造体の製造方法は、基体上に、直接又はその他の層を介して、高親水性層が積層されてなる高親水性構造体の製造方法であって、前記高親水性構造体が、基体上に、直接又はその他の層を介して、親水性層が積層されてなる親水性構造体の前記親水性層の親水性を向上させることにより得られるものであり、前記親水性層が、前記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面に(B)成分が露出しているものであり、上記の方法を用いて、前記親水性層の親水性を向上させることを特徴とするものである。
このように、本発明において「高親水性」は相対的な表現として用いており、親水性がより高くなることを表すものである。
親水性構造体を構成する親水性層は、「親水性層の親水性向上方法」の発明における、「親水性が向上する前の親水性層(表面に露出している(B)成分の少なくとも一部が除去される前の親水性層)と同様のものである。
本発明において用いる親水性構造体の親水性層の水接触角は、好ましくは60°以下、より好ましくは25〜55°である。
シロキサン系ポリマーとは、シロキサン結合(Si−O−Si)を有するポリマーである。シロキサン系ポリマーは、通常、加水分解性有機ケイ素化合物を加水分解重縮合させることにより得ることができる。この「加水分解性」とは、水との反応によりシラノール基を生成させる性質をいう。
なお、前記シロキサン系ポリマーの前駆体化合物を含有する塗布液としては、いわゆるアルコール性シリカゾルとして知られる市販品を用いてもよい。
高親水性構造体の高親水性層の水接触角は、好ましくは20°以下、より好ましくは1°以上、18°以下、より更に好ましくは1°以上、13°以下、特に好ましくは1°以上、10°未満である。
各例中の部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
双性イオンポリマーの質量平均分子量(Mw)は、以下の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行って求めた。
カラム:TSKgelGMPWXL(東ソー株式会社製)×2
検出器:HLC−8320GPC 内蔵RI検出器/UV−8320(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
試料濃度:1.0g/L(ポリマー成分濃度)
注入量:100μL
溶離液:0.2M NaNO3水溶液
流速:1.0mL/分
分子量マーカー:標準ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール
撹拌装置付きの反応容器内に、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド100部、ジブチルヒドロキシトルエン0.4部、アセトン267部を仕込み、内容物を撹拌しながらゆっくりとプロパンサルトン78部を滴下した。その後、内容物を25℃で24時間撹拌し、析出した白色固体をろ取し、これを乾燥することで、双性イオンモノマー(N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタイン)を得た。
撹拌装置付きの反応容器内に、N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタイン98.7部、アクリル酸1.3部、重合開始剤(和光純薬株式会社製、製品名「V−501」、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸))0.21部、蒸留水234部を入れ、反応容器内に窒素を導入しながら25℃で30分間撹拌した。その後、系内を80℃まで上昇させ、そのまま12時間撹拌することで重合反応を行い、双性イオンポリマーを含有する溶液を得た。得られた双性イオンポリマーの質量平均分子量は、720,000であった。
製造例2で得られた、双性イオンポリマーを含有する溶液(固形分100部)、塩化ナトリウム17部、水性ポリエステル系樹脂(1)含有液〔互応化学工業株式会社製、製品名「プラスコート RZ−105」(固形分濃度25%)〕(固形分100部)を加え、蒸留水を加えて固形分濃度を2.0%に調整し、このものを十分に撹拌して親水性組成物を得た。
次いで、このシロキサン系ポリマーを含有する層上に、前記親水性組成物を塗布し、得られた塗膜を100℃で1分間加熱して、厚さが1μmの親水性層を形成し、親水性シート(洗浄処理前親水性シート)を得た。
洗浄処理前親水性シートと洗浄処理後親水性シートのそれぞれの親水性層上に、イオン交換水2μLを滴下した。全自動接触角測定装置(協和界面科学株式会社製、Drop Master、DM−701)を用いて、滴下から3秒後の水滴について水接触角(洗浄処理前水接触角と洗浄処理後水接触角)を測定した。結果を第1表に示す。
洗浄処理前親水性シートと洗浄処理後親水性シートのそれぞれの親水性層について、XPSを用いて元素分析を行い、親水性層の表面に存在する炭素原子、窒素原子、硫黄原子、酸素原子、ケイ素原子の合計量(100atom%)に対する、各原子濃度を算出した。また、エステル結合由来のピークを確認することを目的として、炭素原子の結合状態を調べた。C1sスペクトルを図1に示し、元素分析結果を第2表に示す。
XPSの測定条件は以下のとおりである。
測定装置:PHI Quantera SXM(アルバック・ファイ株式会社製)
X線源:単色化AlKα
出力:25W
加速電圧:15kV
ビーム直径:100μm
光電子取り出し角度:45°
パルスエネルギー:112eV(炭素原子、酸素原子)、224eV(窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子)
ステップ分解能:0.1eV(炭素原子、酸素原子)、0.2eV(窒素原子、硫黄原子、ケイ素原子)
測定面積:100μmφ
実施例1において、各成分の種類と量を第1表に記載のとおりに変更したことを除き、実施例1と同様にして親水性組成物と、親水性シート(洗浄処理前親水性シートと洗浄処理後親水性シート)を得た。次いで、洗浄処理前親水性シートと洗浄処理後親水性シートについて、上記と同様の方法により、水接触角を測定した。結果を第1表に示す。
なお、各例においては、以下の市販品を使用した。
水性ポリエステル系樹脂(1)含有液:互応化学工業株式会社製、製品名「プラスコート RZ−105」(固形分濃度25%)、Tg54℃、分子量16,000
水性ポリエステル系樹脂(2)含有液:互応化学工業株式会社製、製品名「プラスコート Z−760」(固形分濃度25%)、Tg52℃、分子量3,000
水性ポリエステル系樹脂(3)含有液:互応化学工業株式会社製、製品名「プラスコート Z−687」(固形分濃度25%)、Tg110℃、分子量26,000
水性ポリエステル系樹脂(4)含有液:互応化学工業株式会社製、製品名「プラスコート Z−690」(固形分濃度25%)、Tg110℃、分子量28,000
水性ポリエステル系樹脂(5)含有液:東洋紡績株式会社製、製品名「MD−1245」固形分濃度30%)、Tg64℃、分子量20,000
水性ポリエステル系樹脂(6)含有液:互応化学工業株式会社製、製品名「プラスコート Z−221」(固形分濃度20%)、Tg47℃、分子量14,000
基材シート(ポリエステルフィルム、三菱ケミカル株式会社製、製品名「ダイアホイル」、厚さ50μm)に、アルコール性シリカゾル(コルコート株式会社製、製品名「N−103X」、固形分濃度2.0%)を、ワイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが100nmとなるように塗布し、得られた積層体を100℃で1分間加熱し、シロキサン系ポリマーを含有する層を形成した。
得られた積層体を2つに分け、その一方の積層体のシロキサン系ポリマーを含有する層に対して上記と同様に洗浄処理を行った。次いで、洗浄処理前の積層体と洗浄処理後の積層体について、上記と同様の方法により、水接触角を測定した。結果を第1表に示す。
実施例1〜10で得られた親水性シートにおいては、洗浄処理を施すことで、親水性が非常に高まる。
一方で、比較例1〜2で得られた親水性シートにおいては、洗浄処理前後で親水性に変化が無かった。
(A)のC1sスペクトルにおいては、「*」で示すように、エステル結合を示すC−O(286.4eV)とC=O(288.9eV)が観測されていることから、洗浄処理前親水性シートの親水性層の表面には、水性ポリエステル系樹脂が存在することが分かる。
一方、これらのピークは、(B)のC1sスペクトルではほとんど観測されていないことから、洗浄処理後親水性シートの親水性層の表面には、水性ポリエステル系樹脂はほとんど存在していないことが分かる。
B:洗浄処理後親水性シートの親水性層についてのC1sスペクトル
Claims (11)
- 下記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面の少なくとも一部に(B)成分が露出している親水性層の親水性向上方法であって、
前記親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去することを特徴とする、親水性層の親水性向上方法。
(A)成分:双性イオンポリマー
(B)成分:水性ポリエステル系樹脂 - 前記(A)成分の双性イオンポリマーが、下記式(1)で示される繰り返し単位を有する重合体である、請求項1に記載の親水性層の親水性向上方法。
のいずれかで示される2価の基を表す。−G−は、脱プロトン化カルボキシ基(−COO−)又は脱プロトン化スルホ基(−SO3 −)を表す。mは、2〜5の整数を表す。〕 - 前記式(1)中の−G−が、脱プロトン化スルホ基である、請求項2に記載の親水性層の親水性向上方法。
- 前記(A)成分の双性イオンポリマーが、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位、及び、カルボキシ基、スルホ基、又は、これらの基が塩基と反応してなる基を有する繰り返し単位(ただし、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位を除く。)を有する重合体である、請求項1〜3のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
- Xで表される親水性基が、−SO3H、−CO2H、−PO3H2、又はこれらの基が塩基と反応してなる基である、請求項5に記載の親水性層の親水性向上方法。
- 親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去する前において、親水性層に含まれる(B)成分の含有量が、(A)成分100質量部に対して、15〜200質量部である、請求項1〜6のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
- 前記親水性層が、下記の工程1及び2を有する層形成方法により形成されたものである、請求項1〜7のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
工程1:前記(A)成分、(B)成分、及び溶媒を含有する原料液を用いて、親水化対象物上に塗膜を形成する。
工程2:工程1で得られた塗膜中の溶媒を揮発させて、親水性層を形成する。 - 親水性層の表面に露出している(B)成分の少なくとも一部を除去する方法が、(B)成分を溶解し得る溶媒を用いて、前記親水性層の表面を洗浄するものである、請求項1〜8のいずれかに記載の親水性層の親水性向上方法。
- (B)成分を溶解し得る溶媒を用いて、親水性層の表面を洗浄する操作が、下記の工程3及び4を有するものである、請求項9に記載の親水性層の親水性向上方法。
工程3:(B)成分を溶解し得る溶媒を親水性層に接触させて、親水性層の表面に存在する(B)成分を前記溶媒中に抽出し、前記溶媒と(B)成分とを含有する(B)成分含有液を生成させる。
工程4:工程3において生成させた(B)成分含有液を、前記親水性層から分離除去する。 - 基体上に、直接又はその他の層を介して、高親水性層が積層されてなる高親水性構造体の製造方法であって、
前記高親水性構造体が、基体上に、直接又はその他の層を介して、親水性層が積層されてなる親水性構造体の前記親水性層の親水性を向上させることにより得られるものであり、
前記親水性層が、前記(A)成分、及び(B)成分を含有し、その表面に(B)成分が露出しているものであり、
請求項1〜10のいずれかに記載の方法を用いて、前記親水性層の親水性を向上させることを特徴とする、高親水性構造体の製造方法。
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