JP6435440B1 - 親水性構造体、及び親水性構造体の製造方法 - Google Patents

親水性構造体、及び親水性構造体の製造方法 Download PDF

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Abstract

本発明は、基体と、中間層と、親水性層とがこの順に積層されてなる層構造を有する親水性構造体であって、前記中間層が、シロキサン系ポリマーを含有する層であり、前記親水性層が、ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーを含有し、かつ、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しない層であることを特徴とする親水性構造体と、その製造方法である。本発明によれば、親水性、耐汚染性、密着性、及び耐水性に優れる親水性層を有する親水性構造体と、その製造方法が提供される。

Description

本発明は、親水性、耐汚染性、密着性、及び耐水性に優れる親水性層を有する親水性構造体と、その製造方法に関する。
従来、重合性双性イオン化合物由来の繰り返し単位を有する重合体を含有する親水性コート剤が知られている。
例えば、特許文献1には、ベタインモノマー及びアルコキシシリル基含有化合物を含有するモノマー成分を重合させてなるアルコキシシリル基含有ポリマーを含有する親水性コート剤、及び、この親水性コート剤を用いて形成された防曇性層を表面に有する製品が記載されている。
WO2014/084219号(US2015/0259570A1)
特許文献1に記載の親水性コート剤を用いて基材上に親水性層を形成する際、基材表面に水酸基等の反応性基が存在すると、アルコキシシリル基含有ポリマーが基材表面に化学的に固定される。このため、この親水性コート剤を用いることにより、表面に反応性基を有する基材との密着性に優れる親水性層を効率よく形成することができる。
しかしながら、アルコキシシリル基含有ポリマーを含む親水性コート剤(塗布液)を製造する際、用いるモノマーの種類によっては、重合反応時に固形物が析出し、成分が完全に溶解又は分散した塗布液を得ることができない場合があった。
本発明者らは、親水性層を有する親水性構造体を安定的に製造するために、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しない塗布液を用いて親水性層を形成することを試みた。
しかしながら、このような塗布液を用いる場合、基材層との密着性に優れる親水性層を形成することは困難であった。
また、塗布液の成分によっては、耐水性や耐汚染性に劣る親水性層が形成されたり、塗布液を基材上に均一に塗布することができなかったりする場合があった。
本発明は、上記実情に鑑みてなされたものであり、親水性、耐汚染性、密着性、及び耐水性に優れる親水性層を有する親水性構造体、及び、その製造方法を提供することを目的とする。
本発明者らは、上記課題を解決すべく鋭意検討した結果、基体表面にシロキサン系ポリマーを含有する層を設け、この層の上に、親水性層として、ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーを含有し、かつ、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しない層を形成することにより、親水性、耐汚染性、密着性、及び耐水性に優れる親水性層を有する親水性構造体を安定的に製造し得ることを見出し、本発明を完成するに至った。
かくして本発明によれば、下記〔1〕〜〔7〕の親水性構造体、及び〔8〕の親水性構造体の製造方法、が提供される。
〔1〕基体、中間層及び親水性層がこの順に積層されてなる層構造を有する親水性構造体であって、前記中間層が、シロキサン系ポリマーを含有する層であり、前記親水性層が、ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーを含有し、かつ、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しない層であることを特徴とする親水性構造体。
〔2〕前記基体が、樹脂フィルムである、〔1〕に記載の親水性構造体。
〔3〕前記シロキサン系ポリマーが、加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物である、〔1〕又は〔2〕に記載の親水性構造体。
〔4〕前記加水分解性有機ケイ素化合物が、下記式(1)で示されるケイ素化合物、又は、下記式(1)で示されるケイ素化合物の加水分解重縮合物である、〔3〕に記載の親水性構造体。
Figure 0006435440
(式中、Rは、水素原子又は非加水分解性の有機基を表し、Rは、加水分解性基を表す。qは0〜2の整数を表す。)
〔5〕前記ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーが、下記式(2)で示される繰り返し単位を有する重合体である、〔1〕〜〔4〕のいずれかに記載の親水性構造体。
Figure 0006435440
〔式中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜11のシアノアルキル基、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜10のアルケニル基、又は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基を表す。また、R及びRは、互いに結合して、環を形成していてもよい。Aは、下記式(3)〜(5)
Figure 0006435440
(式中、A及びAは、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基を表す。nは1〜10の整数を表す。*1は炭素原子との結合手を表し、*2は窒素原子との結合手を表す。)
のいずれかで示される2価の基を表す。mは、2〜5の整数を表す。〕
〔6〕前記ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーが、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位、及び、カルボキシ基、スルホ基、又は、これらの基が塩基と反応してなる基を有する繰り返し単位(ただし、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位を除く。)を有する重合体である、〔1〕〜〔5〕のいずれかに記載の親水性構造体。
〔7〕前記親水性層が、さらに、炭素数が0〜10の陽イオンを有するイオン性化合物を含有する層である、〔1〕〜〔6〕のいずれかに記載の親水性構造体。
〔8〕下記工程(1)〜(3)を有する、〔1〕〜〔7〕のいずれかに記載の親水性構造体の製造方法。
工程(1):基体上に、加水分解性有機ケイ素化合物を含有する塗布液を塗布し、得られた塗膜中の加水分解性有機ケイ素化合物を加水分解重縮合させることにより、シロキサン系ポリマーを含有する塗膜を形成する工程
工程(2):前記シロキサン系ポリマーを含有する塗膜が完全に乾燥した状態で、又は、前記塗膜中に溶媒が残存した状態で、前記塗膜上に、ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーを含有し、かつ、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しない塗布液(A)を塗布し、前記塗布液(A)の塗膜を形成する工程
工程(3):工程(2)で得られた積層構造を有する構造体中の未乾燥状態の塗膜を乾燥させる工程
本発明によれば、親水性、耐汚染性、密着性、及び耐水性に優れる親水性層を有する親水性構造体、及び、その製造方法が提供される。
本発明の親水性構造体は、基体、中間層及び親水性層がこの順に積層されてなる層構造を有する親水性構造体であって、前記中間層が、シロキサン系ポリマーを含有する層であり、前記親水性層が、ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーを含有し、かつ、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しない層であることを特徴とする。
〔基体〕
本発明の親水性構造体を構成する基体は、固体であって、中間層、親水性層等を担持できるものであれば、形状、素材、大きさ等は特に限定されない。
基体の形状は特に限定されるものではなく、立方体、直方体、球形、紡錘形、シート形、フィルム形、繊維状等の任意の形状をとることができる。
基体は、表面処理が施されたものであってもよい。
表面処理としては、コロナ処理、プラズマ処理、紫外線処理等の物理的表面処理;酸接触等の化学的表面処理;等が挙げられる。
基体の素材としては、ガラス、陶器、磁器、琺瑯、タイル、セラミックス等の無機物;アルミニウム、ステンレス、真鍮等の金属;各種合成樹脂;木綿、絹、羊毛等の繊維;等が挙げられる。
これらの中でも、基体としては、樹脂フィルムが好ましい。基体として樹脂フィルムを用いることで、防曇性フィルム等の機能性フィルムを得ることができる。
樹脂フィルムの原料としては、ポリエチレン、ポリプロピレン等のポリオレフィン;ポリエチレンテレフタレート、ポリブチレンテレフタレート、ポリナフタレンテレフタレート等のポリエステル;ポリ塩化ビニル;ポリカーボネート;アクリル系樹脂;スチレン系樹脂;等が挙げられる。
樹脂フィルムは、紫外線吸収剤、光安定剤、酸化防止剤等の添加剤を含有してもよい。
樹脂フィルムの厚みは、通常、20〜1000μm、好ましくは、30〜500μmである。
また、樹脂フィルムは、長尺状のものであっても、短冊状のものであってもよい。
ここで、「長尺状のもの」とは、幅に対して、5倍以上の長さを有するものをいう。
〔中間層〕
本発明の親水性構造体を構成する中間層は、シロキサン系ポリマーを含有する層である。
中間層としてシロキサン系ポリマーを含有する層を設けることで、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを用いなくても、密着性に優れる親水性層を形成することができる。これは、中間層と親水性層との界面において、シロキサン系ポリマーとケイ素原子を有しない双性イオンポリマーとが絡み合うことに起因すると考えられる。
また、親水性層を形成する際に用いる塗布液が水系のものである場合、基体表面に塗膜を均一に塗布することができない場合がある。
一方、この中間層の上であれば、水系の塗布液を用いる場合であっても、均一な塗膜を効率よく形成することができる。
中間層に含まれるシロキサン系ポリマーは、シロキサン結合(Si−O−Si)を有するポリマーである。シロキサン系ポリマーは、通常、加水分解性有機ケイ素化合物を加水分解重縮合させることにより得ることができる。
なお、このシロキサン系ポリマーは、実質的に加水分解重縮合反応性を有しないもの(すなわち、原料化合物である加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解重縮合反応が終了したもの)である。
このように、このシロキサン系ポリマーは、反応性の有無という点で、加水分解性有機ケイ素化合物として用いられる、「式(1)で示されるケイ素化合物の部分加水分解重縮合物」と区別される。
本発明において、「加水分解性」とは、水との反応によりシラノール基を生成させる性質をいう。
シロキサン系ポリマーの重合度は特に限定されない。シロキサン系ポリマーの重合度は、通常、100超である。
加水分解性有機ケイ素化合物は、分子内に加水分解性基を有する有機ケイ素化合物である。加水分解性有機ケイ素化合物としては、下記式(1)で示されるケイ素化合物、又は、下記式(1)で示されるケイ素化合物の加水分解重縮合物(「部分加水分解重縮合物」ともいう。)が挙げられる。
Figure 0006435440
式(1)中、Rは、水素原子又は非加水分解性の有機基を表し、Rは、加水分解性基を表す。qは0〜2の整数を表す。
の非加水分解性の有機基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、s−ブチル基、イソブチル基、t−ブチル基、t−アミル基(1,1−ジメチルプロピル基)、1,1−ジメチル−3,3−ジメチルブチル基、へプチル基、オクチル基、ノニル基、デシル基等の炭素数1〜10のアルキル基;シクロペンチル基、シクロヘキシル基等の炭素数3〜10のシクロアルキル基;ビニル基、アリル基等の炭素数2〜10のアルケニル基;エチリデン基、プロピリデン基等の炭素数2〜10のアルキリデン基;フェニル基、ナフチル基、アントラセニル基等の炭素数6〜15の芳香族基;等が挙げられる。
これらの有機基は置換基を有していてもよい。置換基としては、(メタ)アクリロイルオキシ基、エポキシ基、アミノ基、メルカプト基、水酸基、ハロゲン原子、アルコキシ基、フルオロアルキル基等が挙げられる。
の加水分解性基としては、メトキシ基、エトキシ基、プロポキシ基等の炭素数1〜5のアルコキシ基;アセトキシ基、プロピオニルオキシ基等のアシロキシ基;塩素原子、臭素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
qは0〜2の整数を表し、0又は1が好ましく、0がより好ましい。
式(1)で表されるケイ素化合物としては、テトラメトキシシラン、テトラエトキシシラン、テトラ−n−プロポキシシラン、テトライソプロポキシシラン、テトラ−n−ブトキシシラン、テトライソブトキシシラン、テトラ−s−ブトキシシラン、テトラ−t−ブトキシシラン等のqが0のケイ素化合物;メチルトリメトキシシラン、メチルトリエトキシシラン、メチルトリプロポキシシラン、メチルトリイソプロポキシシラン、エチルトリメトキシシラン、エチルトリエトキシシラン、プロピルトリメトキシシラン、プロピルトリエトキシシラン、ブチルトリメトキシシラン、ブチルトリエトキシシラン、フェニルトリメトキシシラン、フェニルトリエトキシシラン、γ−グリシドキシプロピルトリメトキシシラン、γ−アクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、γ−メタクリロイルオキシプロピルトリメトキシシラン、ビニルトリメトキシシラン、ビニルトリエトキシシラン等のqが1のケイ素化合物;ジメチルジメトキシシラン、ジメチルジエトキシシラン、ジエチルジメトキシシラン、ジエチルジエトキシシラン、メチルフェニルジメトキシシラン、ジビニルジメトキシシラン、ジビニルジエトキシシラン等のqが2のケイ素化合物;等が挙げられる。
これらのケイ素化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
また、これらのケイ素化合物とともに、トリメチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルメトキシシラン、トリエチルエトキシシラン、トリビニルメトキシシラン、トリビニルエトキシシラン等のqが3のケイ素化合物を併用してもよい。
上記式(1)で示されるケイ素化合物の加水分解重縮合物は、例えば、アルコール溶媒等の有機溶媒中、特定量の水及び縮合触媒の存在下、あるいは特定量の水の存在下及び縮合触媒の非存在下で、式(1)で示されるケイ素化合物を加水分解重縮合させて得ることができる。
加水分解性有機ケイ素化合物として用いられる、式(1)で示されるケイ素化合物の部分加水分解重縮合物の重合度は特に限定されない。この化合物の重合度は、通常、100以下である。
この反応を行って得られる反応液としては、アルコール性シリカゾル等として公知のものが挙げられる。
この反応を行って得られる反応液は、中間層形成用の塗布液としてそのまま使用してもよいし、中間層形成用の塗布液を製造するための原料液として使用してもよい。
本発明においては、上記式(1)で示されるケイ素化合物の加水分解重縮合物として、メチルシリケート51、メチルシリケート53A、エチルシリケート40、エチルシリケート48、EMS−485、SS−101、HAS−1、HAS−6、HAS−10、SS−C1、コルコートPX、コルコートN−103X、PC−291(以上、コルコート株式会社製)等の市販品を用いることもできる。
中間層は、シロキサン系ポリマー以外の成分を含有してもよい。シロキサン系ポリマー以外の成分としては、帯電防止剤、界面活性剤、シロキサン系ポリマー以外の高分子化合物等が挙げられる。
中間層に含まれるシロキサン系ポリマーの量は、中間層全体を基準として、通常50質量%以上、好ましくは60質量%以上である。
中間層の厚みは、通常、10〜10,000nm、好ましくは、30〜5,000nm、より好ましくは50〜500nmである。
後述するように、中間層と親水性層との間の境界は明確であってもよいし、明確でなくてもよい。中間層と親水性層との間の境界が明確な親水性構造体は、中間層が完全に形成された後に親水性層を形成することにより得ることができる。また、中間層と親水性層との間の境界が明確でない親水性構造体は、中間層が完全には形成されていない状態で親水性層の形成を開始することにより得ることができる。
中間層の形成方法は特に限定されない。例えば、後述する方法に従って中間層を形成することができる。
〔親水性層〕
本発明の親水性構造体を構成する親水性層は、ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーを含有し、かつ、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しない層である。
ここで、双性イオンポリマーは、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位を有する重合体である。また、双性イオンモノマーは、分子内に、重合性炭素−炭素二重結合と、正・負両電荷を有するベタイン構造を有する化合物である。
本発明の親水性構造体は、親水性層を有することで、親水性に優れたものになる。
上記のように、本発明の親水性構造体を構成する親水性層は、ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーを含有する一方で、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しないものである。
ケイ素原子を有する双性イオンポリマーとしては、アルコキシシリル基等のケイ素原子を含有する基を有する双性イオンポリマーが挙げられる。このような双性イオンポリマーを含有する親水性層は、他の層との密着性に優れる傾向がある。
しかしながら、原料モノマーとして、カルボキシ基やスルホ基等とアルコキシシリル基を有する双性イオンモノマーを用いて、アルコキシシリル基を有する双性イオンポリマーを合成する過程(モノマーの重合反応)において固形物が析出し、成分が完全に溶解又は分散した親水性層形成用の塗布液を調製することができない場合があった。
一方、本発明の親水性構造体を構成する親水性層は、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しないものであるため、本発明の親水性構造体を製造する際にこのような問題は発生しない。
本発明の親水性構造体を構成する親水性層は、ケイ素原子を有しない双性イオンポリマー(以下、「双性イオンポリマー(α)」ということがある。)は、ケイ素原子を有しない双性イオンモノマー(以下、「双性イオンモノマー(a)」ということがある。)由来の繰り返し単位の1種又は2種以上を含有するものである。
双性イオンモノマー(a)は、分子内に、重合性炭素−炭素二重結合と、正・負両電荷を有するベタイン構造を有し、ケイ素原子を有しない化合物である。
双性イオンポリマー(α)の質量平均分子量は、通常、5万〜300万、好ましくは10万〜250万、より好ましくは20万〜200万である。
双性イオンポリマー(α)の質量平均分子量は、実施例に記載の方法に従って測定することができる。
双性イオンモノマー(a)由来の繰り返し単位としては、下記式(20)で示される繰り返し単位を有する重合体が挙げられる。
Figure 0006435440
式(20)中、Rは、水素原子又はメチル基を表し、R、Rは、それぞれ独立に、水素原子、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜11のシアノアルキル基、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜10のアルケニル基、又は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基を表す。R及びRは、互いに結合して、環を形成していてもよい。「−G」は、−COO、又は、−SO を表す。
、Rのエーテル結合を有する若しくは有しない炭素数1〜10のアルキル基の、炭素数1〜10のアルキル基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜5がより好ましい。
エーテル結合を有しないアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、n−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
エーテル結合を有するアルキル基としては、下記式(6)又は(7)で示される基等が
挙げられる。
Figure 0006435440
式(6)中、Rは、炭素数1〜8のアルキル基を表し、Zは、炭素数2〜9のアルキレン基を表し、RとZの炭素数の合計は、3〜10である。*は結合手を表す。
式(7)中、Rは、炭素数1〜6のアルキル基を表し、Zは、炭素数2〜7のアルキレン基を表し、Zは、炭素数2〜7のアルキレン基を表し、R、Z、Zの炭素数の合計は、5〜10である。*は結合手を表す。
、Rのエーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜11のシアノアルキル基の、炭素数2〜11のシアノアルキル基の炭素数は、2〜9が好ましく、2〜6がより好ましい。
エーテル結合を有しないシアノアルキル基としては、シアノメチル基、2−シアノエチル基、3−シアノプロピル基、4−シアノブチル基、6−シアノヘキシル基等が挙げられる。
エーテル結合を有するシアノアルキル基としては、下記式(8)又は(9)で示される基等が挙げられる。
Figure 0006435440
式(8)中、Rは、炭素数2〜9のシアノアルキル基を表し、Zは、炭素数2〜9のアルキレン基を表し、RとZの炭素数の合計は、4〜11である。*は結合手を表す。
式(9)中、R10は、炭素数2〜7のシアノアルキル基を表し、Zは、炭素数2〜7のアルキレン基を表し、Zは、炭素数2〜7のアルキレン基を表し、R10、Z、Zの炭素数の合計は、6〜11である。*は結合手を表す。
、Rのエーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜10のアルケニル基の、炭素数2〜10のアルケニル基の炭素数は、2〜9が好ましく、2〜6がより好ましい。
エーテル結合を有しないアルケニル基としては、ビニル基、アリル基、1−ブテニル基、2−ブテニル基、1−ペンテニル基等が挙げられる。
エーテル結合を有するアルケニル基としては、下記式(10)又は(11)で示される基等が挙げられる。
Figure 0006435440
式(10)中、R11は、炭素数2〜8のアルケニル基を表し、Zは、炭素数2〜8のアルキレン基を表し、R11とZの炭素数の合計は、4〜10である。*は結合手を表す。
式(11)中、R12は、炭素数2〜6のアルケニル基を表し、Zは、炭素数2〜6のアルキレン基を表し、Zは、炭素数2〜6のアルキレン基を表し、R12 、Z、Zの炭素数の合計は、6〜10である。*は結合手を表す。
、Rの置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基の、炭素数6〜20のアリール基の炭素数は6〜10が好ましい。
無置換のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
置換基を有するアリール基の置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
とRが結合して形成される環としては、ピロリジン環、ピペリジン環、モルホリン環等が挙げられる。
式(2)中、Aは、下記式(3)〜(5)のいずれかで示される2価の基を表す。
Figure 0006435440
式(3)〜(5)中、A及びAは、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R、R及びRは、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基を表す。nは1〜10の整数を表す。*1は炭素原子との結合手を表し、*2は窒素原子との結合手を表す。
、Aの炭素数1〜10のアルキレン基の炭素数は、1〜8が好ましく、1〜6がより好ましい。
炭素数1〜10のアルキレン基としては、メチレン基、エチレン基、トリメチレン基、テトラメチレン基、ペンタメチレン基等の直鎖状アルキレン基;プロパン−1,2−ジイル基、ブタン−1,3−ジイル基等の分岐鎖状アルキレン基が挙げられる。
、R及びRの炭素数1〜6のアルキル基としては、メチル基、エチル基、n−プロピル基、イソプロピル基、n−ブチル基、sec−ブチル基、t−ブチル基、n−ペンチル基、n−ヘキシル基等が挙げられる。
、R及びRの置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基の、炭素数6〜20のアリール基の炭素数は6〜10が好ましい。
無置換のアリール基としては、フェニル基、1−ナフチル基、2−ナフチル基等が挙げられる。
置換基を有するアリール基の置換基としては、メチル基、エチル基等の炭素数1〜6のアルキル基;メトキシ基、エトキシ基等の炭素数1〜6のアルコキシ基;フッ素原子、塩素原子等のハロゲン原子;等が挙げられる。
nは、1〜10の整数であり、1〜5の整数が好ましい。
式(2)中、mは、2〜5の整数であり、3又は4が好ましい。
本発明においては、入手容易性等の観点から、双性イオンポリマー(α)として、下記式(2)で示される繰り返し単位を有するものが好ましい。
Figure 0006435440
〔式(2)中、R、R、R、A及びmは、それぞれ前記と同じ意味を表す。〕
双性イオンポリマー(α)の合成に用いる双性イオンモノマー(a)は、目的の双性イオンポリマーに合わせて適宜決定することができる。
例えば、式(2)で示される繰り返し単位を有する双性イオンポリマーは、下記式(2A)で示される双性イオンモノマーを用いることで合成することができる。
Figure 0006435440
式(2A)中、R、R、R、A、m、及び「−G」は、それぞれ前記と同じ意味を表す。
式(2A)で示される双性イオンモノマーの合成方法は特に限定されない。
上記式(2A)中、「−G」が−COOで表される双性イオンモノマーは、例えば、対応するアミン化合物〔下記式(2b)〕と、式:hal−(CH−COOH(halはハロゲン原子を表し、mは前記と同じ意味を表す。)で表されるハロゲン化カルボン酸を反応させる方法等の、公知のカルボキシベタイン化合物の製造方法により得ることができる(特開平8−99945号公報、特開平7−278071号公報、特開2006−143634号公報、特開2006−143635号公報等)。
また、上記式(2A)中、「−G」が−SO である双性イオンモノマー〔下記式(2a)で示される化合物〕は、下記式に示すように、対応するアミン化合物(2b)とスルトン化合物(2c)とを反応させることにより得ることができる。
Figure 0006435440
上記式中、R〜R、A、及びmは、前記と同じ意味を表し、pは(m−2)である。
アミン化合物(2b)は、公知の方法で製造し、入手することができる。
前記スルトン化合物(2c)としては、1,2−エタンスルトン、1,3−プロパンスルトン、1,4−ブタンスルトン、2,4−ブタンスルトン、1,5−ペンタンスルトンが挙げられる。
これらは公知化合物であり、公知の方法で製造し、入手することができる。また、本発明においては、これらのスルトン化合物として市販品を用いることもできる。
アミン化合物(2b)とスルトン化合物(2c)との反応において、スルトン化合物(2c)の使用量は、アミン化合物(2b)に対して、好ましくは0.8〜1.2当量、より好ましくは0.9〜1.1当量である。スルトン化合物(2c)の使用量を上記範囲にすることで、未反応物を除去する工程を省略したり、除去にかかる時間を短縮したりすることができる。
アミン化合物(2b)とスルトン化合物(2c)との反応は、無溶媒で行ってもよいし、不活性溶媒の存在下に行ってもよい。
用いる不活性溶媒としては、水:テトラヒドロフラン、ジグライム等のエーテル系溶媒;アセトニトリル、プロピオニトリル等のニトリル系溶媒;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン系溶媒;トルエン、キシレン等の芳香族炭化水素系溶媒;クロロホルム等のハロゲン化炭化水素系溶媒;等が挙げられる。
不活性溶媒を用いる場合、その使用量は特に制限されないが、アミン化合物(2b)1質量部に対して、通常0.1〜100質量部、好ましくは1〜100質量部である。
反応温度は、特に限定されないが、通常、0〜200℃、好ましくは10〜100℃、より好ましくは20〜60℃の範囲である。また、常圧(大気圧)下で反応を実施してもよいし、加圧条件下で反応を施してもよい。
反応時間は特に限定されないが、通常、12〜332時間、好ましくは24〜168時間である。
反応は、酸素による酸化や、空気中の水分によるスルトン化合物(2c)の加水分解による収率の低下を防ぐ観点から、窒素ガス、アルゴンガス等の不活性ガス雰囲気下で行うことが好ましい。
反応の進行は、ガスクロマトグラフィー、高速液体クロマトグラフィー、薄層クロマトグラフィー、NMR、IR等の通常の分析手段により確認することができる。
反応終了後、有機合成化学における通常の後処理操作を行い、所望により、再結晶、カラムクロマトグラフィー等の公知の精製方法により精製して、目的とする双性イオンモノマーを単離することができる。
上記式(2A)で示される双性イオンモノマーの中でも、本発明においては、入手容易性等の観点から、双性イオンモノマーとして、下記式(2a)で表されるスルホベタイン構造を有する化合物の使用が好ましい。
Figure 0006435440
〔式(2a)中、R、R、R、及びmは、それぞれ前記と同じ意味を表す。〕
また、本発明においては、式(2A)で示される双性イオンモノマーとして市販されているものを、そのまま、あるいは所望により精製して用いることもできる。
双性イオンポリマー(α)は、双性イオンモノマー(a)由来の繰り返し単位以外に、このものと共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位を有するものであってもよい。
双性イオンポリマー(α)中の、双性イオンモノマー(a)と共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位としては、(メタ)アクリル酸由来の繰り返し単位、マレイン酸由来の繰り返し単位、クロトン酸由来の繰り返し単位、イタコン酸由来の繰り返し単位等のカルボキシ基を有する繰り返し単位;(メタ)アクリルアミドt−ブチルスルホン酸由来の繰り返し単位等のスルホ基を有する繰り返し単位;(メタ)アクリル酸メチル、メタアクリル酸エチル等の(メタ)アクリル酸エステル由来の繰り返し単位;(メタ)アクリルアミド由来の繰り返し単位;等が挙げられる。ここで、(メタ)アクリル酸は、アクリル酸又はメタクリル酸を意味する(以下にて同じ)。
これらの中でも、双性イオンモノマー(a)と共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位としては、親水性基を有するものが好ましい。双性イオンポリマー(α)がこれらの繰り返し単位を有することで、塗布液の保存安定性がさらに向上する傾向があり、またより親水性に優れる親水性層が得られ易くなる。
親水性基としては、スルホ基(−SOH)、カルボキシ基(−COH)、ホスホン酸基(−PO)、ヒドロキシ基(−OH)、これらの基が塩基と反応してなる基等のアニオン系親水性基;置換若しくは無置換のアミノ基、置換若しくは無置換の窒素含有複素環基、これらの基が酸と反応してなる基等のカチオン系親水性基;等が挙げられる。
これらの中でも、親水性基としては、アニオン系親水性基が好ましく、−SOH、−COH、−PO、又はこれらの基が塩基と反応してなる基がより好ましい。
「これらの基が塩基と反応してなる基」の生成に用いられる塩基としては、周期表第1族又は第2族の金属の水酸化物や、アミン化合物が挙げられる。したがって、「これらの基が塩基と反応してなる基」を有する繰り返し単位は、通常、周期表第1族又は第2族の金属のイオンやアンモニウムイオンを有し、双性イオンモノマー全体としては電気的に中性の状態になっている。
本発明の親水性樹脂組成物に含まれる双性イオンポリマー(α)は、本発明のより優れた効果が得られる観点から、分子内に、双性イオンモノマー(a)由来の繰り返し単位と、双性イオンモノマー(a)と共重合可能なモノマー由来の繰り返し単位を有する共重合体であることが好ましい。
双性イオンポリマー(α)中の、双性イオンモノマー(a)由来の繰り返し単位の量は、双性イオンポリマー(α)全体を基準として、通常、50〜100モル%、好ましくは60〜99モル%、より好ましくは70〜95モル%である。双性イオンポリマー(α)中の、双性イオンモノマー(α)由来の繰り返し単位の量が、50モル%以上であると、親水性が良好となる。また99モル%以下であると、架橋点を導入しやすくなり、被塗物との密着性が良好となる。
双性イオンポリマー(α)が、親水性基を有する繰り返し単位を含む場合、これらの繰り返し単位の量は、双性イオンポリマー(α)全体を基準として、通常、0〜50モル%、好ましくは1〜40モル%、より好ましくは5〜30モル%である。
双性イオンポリマー(α)は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
双性イオンポリマー(α)の合成方法は特に限定されない。例えば、ラジカル重合開始剤の存在下、双性イオンモノマー(a)、及び、所望により双性イオンモノマー(a)と共重合可能なモノマーを含むモノマー(モノマー混合物)の重合反応を行うことにより、双性イオンポリマー(α)を合成することができる。
ラジカル重合開始剤としては、有機過酸化物やアゾ系化合物等が挙げられる。
有機過酸化物としては、ラウロイルパーオキサイド、ベンゾイルパーオキサイド等のジアシルパーオキサイド類;1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)シクロヘキサン、1,1−ビス(t−ブチルパーオキシ)3,3,5−トリメチルシクロヘキサン等のパーオキシケタール類;ジイソプロピルパーオキシジカーボネート、ジ−2−エチルヘキシルパーオキシジカーボネート等のパーオキシジカーボネート類;t−ブチルパーオキシ−2−エチルヘキサノエート、t−ブチルパーオキシイソブチレート等のパーオキシエステル類等が挙げられる。
アゾ系化合物としては、2,2’−アゾビスイソブチロニトリル、2,2’−アゾビス(2−メチルブチロニトリル)、1,1’−アゾビス(シクロヘキサン1−カルボニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチルバレロニトリル)、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、ジメチル2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオネート)、2,2’−アゾビス(N−ブチル−2−メチルプロピオンアミド)、ジメチル1,1’−アゾビス(1−シクロヘキサンカルボキシレート)等の油溶性アゾ重合開始剤;4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)、2,2’−アゾビス(2−ヒドロキシメチルプロピオニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]、2,2’−アゾビス(2,4−ジメチル−4−メトキシバレロニトリル)、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジヒドロクロロイド、2,2’−アゾビス[2−(2−イミダゾリン−2−イル)プロパン]ジスルホネートジヒドレート、2,2’−アゾビス(2−メチルプロピオンアミジン)ジヒドロクロロイド、2,2’−アゾビス[N−(2−カルボキシエチル)−2−メチルプロピオンアミジン]テトラヒドレート、2,2’−アゾビス[2−メチル−N−(2−ヒドロキシエチル)プロピオンアミド]等の水溶性アゾ重合開始剤;等が挙げられるが、水溶性アゾ重合開始剤が好ましく、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸)が特に好ましい。
これらは1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて使用することができる。
ラジカル重合開始剤の使用量は、重合反応に用いるモノマー1モル(ただし共重合体の場合は、モノマーの合計モル)に対し、通常0.0001〜0.1000モル、好ましくは0.0005〜0.0050モルである。
ラジカル重合反応の反応条件は、目的の重合反応が進行する限り特に限定されない。加熱温度は、通常、40〜150℃であり、反応時間は、1分から24時間の範囲で適宜設定することができる。
得られた反応液は、そのまま親水性樹脂組成物の調製に用いてもよいし、常法に従って、双性イオンポリマーを単離、精製して用いてもよい。
親水性層は、イオン性化合物(ただし、双性イオンポリマー(α)を除く)を含有してもよい。
イオン性化合物としては、炭素数が0〜10の陽イオンを有するイオン性化合物が好ましく、炭素数が0の陽イオンを有するイオン性化合物がより好ましい。
炭素数が0〜10の陽イオンを有するイオン性化合物としては、下記式(12)〜(15)で示される化合物が挙げられる。
Figure 0006435440
式(12)〜(15)中、Mは炭素数0〜10の1価の陽イオンを表し、M’は炭素数0〜10の2価の陽イオンを表し、Xは1価の陰イオンを表し、X’は2価の陰イオンを表す。
Mとしては、ナトリウムイオン、カリウムイオン等のアルカリ金属イオン;アンモニウムイオン(NH );第1級アンモニウムイオン;第2級アンモニウムイオン;第3級アンモニウムイオン;第4級アンモニウムイオン;等が挙げられる。
M’としては、カルシウムイオン等のアルカリ土類金属イオン;マグネシウムイオン;等が挙げられる。
Xとしては、塩化物イオン、臭化物イオン等のハロゲン化物イオン;炭酸水素イオン;硝酸イオン;等が挙げられる。
X’としては、炭酸イオン、硫酸イオン等が挙げられる。
炭素数が0の陽イオンを有するイオン性化合物としては、NaCl、NaCO、NaHCO、NaSO、NaNO、KCl、KCO、KHCO、KSO、KNO等のアルカリ金属の塩;MgCl、MgSO等のマグネシウムの塩;CaCl等のアルカリ土類金属の塩;NHCl等のアンモニウム塩;等が挙げられる。
炭素数が1〜10の陽イオンを有するイオン性化合物としては、〔(CH)NH〕Cl、〔(CHNH〕Cl、〔(CHNH〕Cl、〔(CHN〕Cl等が挙げられる。
イオン性化合物は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
親水性層中のイオン性化合物の含有量は、親水性層全体を基準として、通常、0〜70質量%、好ましくは2〜50質量%、より好ましくは5〜20質量%である。
親水性層は、双性イオンポリマー(α)以外の重合体を含有してもよい。
双性イオンポリマー(α)以外の重合体としては、ポリエステル系重合体、エチレン−ビニルアルコール共重合体、ビニルアルコール単独重合体、(メタ)アクリル酸系重合体、(メタ)アクリル酸エステル系重合体、ウレタン系重合体、アクリル−ウレタン系重合体、ポリアミド樹脂、ポリオレフィン樹脂、セルロース系樹脂等が挙げられる。
双性イオンポリマー(α)以外の重合体は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
親水性層が双性イオンポリマー(α)以外の重合体を含有する場合、その含有量は、親水性層全体を基準として、通常、1〜40質量%、好ましくは2〜20質量%である。
親水性層は、架橋構造が形成されていてもよい。親水性層中の架橋構造は、例えば架橋剤を用いることで効率よく形成することができる。
架橋剤とは、親水性層中の重合体成分と反応して、架橋構造を形成し得る化合物である。架橋構造を有する親水性層は、耐水性により優れる傾向がある。
架橋剤としては、エポキシ系架橋剤、イソシアネート系架橋剤、アミン系架橋剤、メラミン系架橋剤、アジリジン系架橋剤、ヒドラジン系架橋剤、アルデヒド系架橋剤、オキサゾリン系架橋剤、金属アルコキシド系架橋剤、金属キレート系架橋剤、金属塩系架橋剤、アンモニウム塩系架橋剤等が挙げられる。
親水性層は、本発明の効果を阻害しない範囲で添加剤を含有してもよい。
添加剤としては、界面活性剤、保湿剤、粘度調整剤、色素等が挙げられる。
親水性層の厚みは、通常、1〜1000nm、好ましくは2〜800nmである。
親水性層の形成方法は特に限定されない。例えば、後述する方法に従って親水性層を形成することができる。
〔親水性構造体〕
本発明の親水性構造体は、前記基体、前記中間層及び前記親水性層がこの順に積層されてなる層構造を有する構造体である。
本発明の親水性構造体の親水性層は親水性に優れる。
本発明の親水性構造体の親水性層の親水性層上に、イオン交換水2μLを滴下した後、接触角測定装置を用いて、滴下から3秒後の水滴について測定される水接触角(洗浄前水接触角)は、通常、70°以下、好ましくは60°以下、より好ましくは50°以下である。下限値は特にないが、通常は、3°以上である。
本発明の親水性構造体の親水性層は耐汚染性に優れる。特に、本発明の親水性構造体の親水性層は、油性の汚れが付着し難いものである。
本発明の親水性構造体の親水性層は中間層との密着性に優れる。
これは、中間層と親水性層との界面において、シロキサン系ポリマーと双性イオンポリマー(α)とが絡み合っていることに起因すると考えられる。
本発明の親水性構造体の親水性層は耐水性に優れる。本発明において、耐水性とは、水と接触した後であっても、当初の親水性が維持されることをいう。
特に、本発明の親水性構造体においては、水と接触することで親水性層の親水性がより高まる場合がある。この現象も、前記した、シロキサン系ポリマーと双性イオンポリマー(α)との絡み合いに起因すると考えられる。
すなわち、水と接触することで親水性層の表面部分に存在していたほとんど絡み合っていない重合鎖が除去されることにより、シロキサン系ポリマーと双性イオンポリマー(α)との絡み合いが強い領域が表面に露出されると考えられる。そして、この領域が露出することで、親水性層の親水性がより高まると考えられる。
本発明の親水性構造体の親水性層の表面をイオン交換水で洗浄し、乾燥後、上記と同様の方法により測定される水接触角(洗浄後水接触角)は、通常、40°以下、好ましくは30°以下、より好ましくは10°以下である。下限値は特にないが、通常は、3°以上である。
本発明の親水性構造体としては、防曇フィルム、防汚フィルム等の機能性フィルムが挙げられる。
また、本発明の親水性構造体は、フィルム状製品に限られない。例えば、本発明の親水性構造体は、鏡、ディスプレイ、看板、案内板、道路標識、建物の外壁、窓ガラス等の親水性が求められる製品として用いられる。
本発明の親水性構造体の製造方法は特に限定されない。例えば、本発明の親水性構造体は、下記工程(1)〜(3)を有する方法により製造することができる。
工程(1):基体上に、加水分解性有機ケイ素化合物を含有する塗布液(加水分解性有機ケイ素化合物含有塗布液)を塗布し、得られた塗膜中の加水分解性有機ケイ素化合物を加水分解重縮合させることで、シロキサン系ポリマーを含有する塗膜を形成する工程
工程(2):前記シロキサン系ポリマーを含有する塗膜が完全に乾燥した状態で、又は、前記塗膜中に溶媒が残存した状態で、前記塗膜上に、ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーを含有し、かつ、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しない塗布液(A)を塗布し、前記塗布液(A)の塗膜を形成する工程
工程(3):工程(2)で得られた積層構造を有する構造体中の未乾燥状態の塗膜を乾燥させる工程
工程(1)においては、前記基体上に、前記加水分解性有機ケイ素化合物を含有する塗布液を塗布し、得られた塗膜中の加水分解性有機ケイ素化合物を加水分解重縮合させることで、シロキサン系ポリマーを含有する塗膜を形成する。
この塗布液に含まれる溶媒は、加水分解性有機ケイ素化合物等の成分を溶解又は分散し得るものであれば特に限定されない。
溶媒としては、水、水と混和する有機溶剤等が挙げられる。
水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−及びイソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のポリアルキレングリコール類;ポリアルキレングリコールのアルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム類、等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、溶媒としては、水とアルコール類の混合溶媒が好ましい。
溶媒の含有量は、加水分解性有機ケイ素化合物含有塗布液の固形分濃度が0.1〜30.0質量%となるように調整することが好ましく、0.5〜10.0質量%がより好ましい。
前記塗布液の塗布方法は、特に限定されない。例えば、バーコート法、ナイフコート法、ロールコート法、ブレードコート法、ダイコート法、グラビアコート法などを用いて塗布液を基体上に塗布することができる。
加水分解性有機ケイ素化合物を加水分解重縮合させる方法は、特に限定されない。必要に応じて触媒を用いたり、加熱したりすることにより、加水分解重縮合反応を促進することができる。
加水分解重縮合反応における反応温度は、通常、40〜110℃、好ましくは50〜100℃である。
反応時間(加熱時間)は、通常、10秒〜3分、好ましくは30秒〜2分である。
加水分解重縮合反応を加熱して行う場合、通常、その加熱処理により塗膜の乾燥も進行する。後述するように、塗膜を完全に乾燥させた後、次の工程(2)を行ってもよいし、塗膜が完全には乾燥していない状態(塗膜中に溶媒が残存した状態)で、次の工程(2)を行ってもよい。工程(2)を行うときの塗膜の乾燥状態を制御することで、シロキサン系ポリマーと双性イオンポリマー(α)との絡み合いの程度を調節することができる。
工程(2)においては、前記シロキサン系ポリマーを含有する塗膜が完全に乾燥した状態で、又は、前記塗膜中に溶媒が残存した状態で、前記塗膜上に、前記ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーを含有し、かつ、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しない塗布液(A)を塗布し、前記塗布液(A)の塗膜を形成する。
シロキサン系ポリマーを含有する塗膜が完全に乾燥した状態で塗布液(A)を塗布することで、中間層と親水性層との間の境界が明確な親水性構造体(すなわち、シロキサン系ポリマーと双性イオンポリマー(α)とが絡み合った領域が薄い親水性構造体)を得ることができる。
一方、シロキサン系ポリマーを含有する塗膜中に溶媒が残存した状態で塗布液(A)を塗布することで、中間層と親水性層との間の境界が明確でない親水性構造体(すなわち、シロキサン系ポリマーと双性イオンポリマー(α)とが絡み合った領域が厚い親水性構造体)を得ることができる。
上記のように、シロキサン系ポリマーと双性イオンポリマー(α)との絡み合いの程度は、親水性層の密着性や耐水性に影響する。
したがって、工程(2)を開始する際のシロキサン系ポリマーを含有する塗膜の乾燥状態を適切に制御することで、目的の特性を有する親水性層を効率よく形成することができる。
塗布液(A)に含まれる溶媒は、ケイ素原子を有しない双性イオンポリマー等の成分を溶解又は分散し得るものであれば特に限定されない。
溶媒としては、水、水と混和する有機溶剤等が挙げられる。
水と混和する有機溶剤としては、例えば、メタノール、エタノール、n−プロパノール、イソプロパノール等のアルコール類;アセトン、メチルエチルケトン等のケトン類;エチレングリコール、ジエチレングリコール、プロピレングリコール等のアルキレングリコール類;メチルセロソルブ、エチルセロソルブ等のアルキルエーテル類;N−メチル−2−ピロリドン等のラクタム類;等が挙げられる。
これらの溶媒は、1種単独で、あるいは2種以上を組み合わせて用いることができる。
これらの中でも、溶媒としては、水とアルコール類の混合溶媒が好ましい。
溶媒の含有量は、塗布液(A)の固形分濃度が0.1〜20質量%となるように調整することが好ましく、0.5〜10質量%がより好ましい。
前記塗布液の塗布方法は、特に限定されない。例えば、加水分解性有機ケイ素化合物含有塗布液の塗布方法として示したものと同様の方法により、塗布液(A)を塗布することができる。
工程(3)においては、工程(2)で得られた積層構造を有する構造体中の未乾燥状態の塗膜を乾燥させる。
ここで、未乾燥状態の塗膜とは、シロキサン系ポリマーを含有する塗膜が完全に乾燥した状態で工程(2)を行った場合は、「塗布液(A)由来の塗膜」をいい、シロキサン系ポリマーを含有する塗膜中に溶媒が残存した状態で工程(2)を行った場合は、「シロキサン系ポリマーを含有する塗膜」と「塗布液(A)由来の塗膜」をいう。
塗膜を乾燥する方法は特に制限されない。例えば、熱風乾燥、熱ロール乾燥、赤外線照射等、従来公知の乾燥方法を利用することができる。
乾燥条件は、中間層の状態等に応じて、適宜決定することができる。
乾燥温度は、通常、60〜130℃、好ましくは70〜120℃である。
乾燥時間(加熱時間)は、通常、10秒から3分、好ましくは30秒から2分である。
以下、実施例を挙げて本発明を更に詳細に説明する。但し、本発明は、以下の実施例になんら限定されるものではない。
各例中の部及び%は、特に断りのない限り、質量基準である。
〔質量平均分子量(Mw)〕
双性イオンポリマーの質量平均分子量(Mw)は、以下の条件にてゲルパーミエーションクロマトグラフィー(GPC)を行って求めた。
装置:HLC−8320GPC/UV−8320(東ソー株式会社製)
カラム:TSKgelGMPWXL(東ソー株式会社製)×2
検出器:HLC−8320GPC 内蔵RI検出器/UV−8320(東ソー株式会社製)
カラム温度:40℃
試料濃度:1.0g/L(ポリマー成分濃度)
注入量:100μL
溶離液:0.2M NaNO水溶液
流速:1.0mL/分
分子量マーカー:標準ポリエチレンオキシド、ポリエチレングリコール
〔製造例1〕双性イオンモノマー(1)の合成
撹拌装置付きの反応容器内に、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]アクリルアミド100部、ジブチルヒドロキシトルエン0.4部、アセトン383部を仕込み、内容物を撹拌しながらゆっくりとプロパンサルトン72部を滴下した。その後、内容物を25℃で24時間撹拌し、析出した白色固体をろ取し、これを乾燥することで、双性イオンモノマー(1)(N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタイン)を得た。
〔製造例2〕双性イオンモノマー(2)の合成
撹拌装置付きの反応容器内に、N−[3−(ジメチルアミノ)プロピル]メタクリルアミド100部、ジブチルヒドロキシトルエン0.4部、アセトン383部を仕込み、内容物を撹拌しながらゆっくりとプロパンサルトン72部を滴下した。その後、内容物を25℃で24時間撹拌し、析出した白色固体をろ取し、これを乾燥することで、双性イオンモノマー(2)(N−メタクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタイン)を得た。
〔製造例3〕〜〔製造例8〕双性イオンポリマーの合成
撹拌装置付きの反応容器内に、第1表に示した通りのモル比となるように各モノマーを仕込み、各モノマーの合計量100部に対して、重合開始剤(和光純薬株式会社製、製品名「V−501」、4,4’−アゾビス(4−シアノバレリック酸))0.19部、第1表で示した希釈溶媒を入れ、反応容器内に窒素を導入しながら25℃で30分間撹拌した。その後、系内を80℃まで上昇させ、そのまま16時間撹拌することで重合反応を行い、各双性イオンポリマーを含有する固形分濃度30%の溶液を得た。得られた各双性イオンポリマーの質量平均分子量を第1表に示す。第1表中の略称等は以下のとおりである。
なお製造例7と製造例8の双性イオンポリマーについては、後述の通り重合反応時に沈殿を生じてしまったため分子量の測定を省略した。
<モノマー>
SBAAm:(N−アクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタイン)
SBMAAm:(N−メタクリロイルアミノプロピル−N,N−ジメチルアンモニウムプロピル−α−スルホキシベタイン)
ATBS:アクリルアミドt−ブチルスルホン酸
AAc:アクリル酸
VTMS:ビニルトリメトキシシラン
<希釈溶媒>
水:蒸留水
TFE:トリフルオロエタノール
Figure 0006435440
以下の実施例及び比較例においては、製造例3〜8で作成した双性イオンポリマー溶液に加えて、以下に示す原材料を用いて親水性構造体を製造した。
(基体)
基体(1):東洋紡株式会社製、製品名「コスモシャイン A4100」、厚さ50μm
基体(2):東レ株式会社製、製品名「ルミラー 50T60」、厚さ50μm
(アルコール性シリカゾル)
アルコール性シリカゾル(1):コルコート株式会社製、製品名「N−103X」、固形分濃度2.0%
アルコール性シリカゾル(2):コルコート株式会社製、製品名「PC−291」、固形分濃度2.5%
(水性ポリエステル樹脂)
水性ポリエステル樹脂(1):下記式(16)で示される繰り返し単位を有する水性ポリエステル樹脂。質量平均分子量(Mw)16,000
水性ポリエステル樹脂(2):下記式(16)で示される繰り返し単位と、メチルアクリレート由来の繰り返し単位を有する共重合体からなる水性ポリエステル系樹脂。
Figure 0006435440
〔実施例1〕
製造例3で調製した双性イオンポリマー溶液100部(固形分)に対して、5%塩化ナトリウム水溶液を塩化ナトリウムの固形分量が第2表に記載の値となるように量を調整して添加し、蒸留水を混合して、固形分濃度3%の親水性層形成用塗布液を得た。
これとは別に、基体(1)の易接着面に、アルコール性シリカゾル(1)を、ワイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが100nmとなるように塗布した。得られた積層体を80℃で1分間加熱した。加熱後において、積層体中の塗膜は、完全には乾燥していなかった。
次いで、その上に、前記親水性層形成用塗布液を塗布し、積層構造を有する構造体を得た。次いで、この構造体を120℃で1分間加熱することで、この構造体中の未乾燥状態の塗膜を乾燥させ、親水性構造体を得た。
〔実施例2〜11〕
親水性構造体の製造を第2表に記載の条件で行ったことを除き、実施例1と同様にして親水性構造体を得た。
〔比較例1〕
製造例5で調製した双性イオンポリマー溶液100部(固形分)、トリフルオロエタノール(TFE)500部を混合し、親水性層形成用塗布液を得た。
基体(1)の易接着面に、前記親水性層形成用塗布液を塗布し、積層構造を有する構造体を得た。次いで、この構造体を100℃で1分間加熱することで、前記塗膜を乾燥させ、親水性構造体を得た。
〔比較例2〕
製造例3で調製した双性イオンポリマー溶液100部(固形分)に対して、5%塩化ナトリウム水溶液を塩化ナトリウムの固形分量が第2表に記載の値となるように量を調整して添加し、蒸留水を混合して、固形分濃度3%の親水性層形成用塗布液を得た。
基体(1)の易接着面に、前記親水性層形成用塗布液を塗布したところ、塗布液が基体(1)上で弾いてしまい塗布できなかった。
〔比較例3〕
基体(1)の易接着面に、アルコール性シリカゾル(1)を、ワイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが100nmとなるように塗布した。得られた積層体を120℃で1分間加熱し、親水性構造体を得た。
〔比較例4〕
ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有する層を形成することを目的として、製造例7の方法にて、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーの合成を試みた。
しかしながら、重合反応時に沈殿が生じ、塗布液を得ることができなかった。
〔比較例5〕
ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有する層を形成することを目的として、製造例8の方法にて、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーの合成を試みた。
しかしながら、重合反応時に沈殿が生じ、塗布液を得ることができなかった。
〔比較例6〕
製造例6で調製した双性イオンポリマー溶液100部(固形分)に対して、5%塩化ナトリウム水溶液を塩化ナトリウムの固形分量が第2表に記載の値となるように量を調整して添加し、蒸留水を混合して、固形分濃度3%の親水性層形成用塗布液を得た。
これとは別に、基体(1)の易接着面に、水性ポリエステル樹脂(1)を含有する塗布液を、ワイヤーバーを用いて乾燥後の厚さが100nmとなるように塗布した。得られた積層体を80℃で1分間加熱した。加熱後において、積層体中の塗膜は、完全には乾燥していなかった。
次いで、その上に、前記親水性層形成用塗布液を塗布し、積層構造を有する構造体を得た。次いで、この構造体を100℃で1分間加熱することで、この構造体中の未乾燥状態の塗膜を乾燥させ、親水性構造体を得た。
〔比較例7〕
水性ポリエステル樹脂(1)を含有する塗布液の代わりに、水性ポリエステル樹脂(2)を含有する塗布液を用いたことを除き、比較例6と同様にして親水性構造体を得た。
〔水接触角測定〕
実施例及び比較例で得られた親水性構造体の親水性層上に、イオン交換水2μLを滴下した。全自動接触角測定装置(協和界面科学株式会社製、DM−701)を用いて、滴下から3秒後の水滴について水接触角(洗浄前水接触角)を測定した。
〔耐水性評価〕
実施例及び比較例で得られた親水性構造体の親水性層の表面をイオン交換水で洗浄し、乾燥後、上記と同様の方法により水接触角(洗浄後水接触角)を測定し、以下の基準で耐水性を評価した。
A:洗浄後水接触角が、洗浄前水接触角と同等又はそれ以下。
B:洗浄後水接触角が、洗浄前水接触角より大きい。
〔親水性層の密着性評価〕
実施例及び比較例で得られた親水性構造体の親水性層に、ニチバン株式会社製セロテープ(登録商標)を貼付した後、これを剥離した。剥離後の親水性構造体の表面を観察し、親水性層の密着性を評価した。評価基準を以下に示す。
A:親水性層の剥離無し
B:親水性層が部分的に剥離した。
C:親水性層が完全に剥離した。
〔親水性層の耐汚染性評価〕
実施例及び比較例で得られた親水性構造体の親水性層に、ゼブラ株式会社製油性ペン(マッキー)で色を塗り、これを試験片とした。この試験片を蒸留水に浸漬し、振とうさせた後、蒸留水を不織布ワイパー(旭化成株式会社製、製品名「ベンコット」)で拭き取った。この作業を2回繰り返した後、表面状態を観察し、耐汚染性を評価した。評価基準を以下に示す。
A:油性ペンのインクが完全に除去される。
B:油性ペンのインクが除去されるが、一部残存する。
C:油性ペンのインクが半分以上除去されない。
Figure 0006435440
Figure 0006435440
第3表から以下のことがわかる。
実施例1〜11の親水性構造体の親水性層は、親水性、耐汚染性、密着性、及び耐水性に優れていた。
比較例1〜2の親水性構造体は、基体の上に直接親水性層の形成を試みたものである。しかしながら、比較例1では、実施例と同等の性能を有する親水性層を形成することができなかった。また、比較例2では、基体上に均一に塗布することができず、親水性層を形成することができなかった。
また、比較例3の親水性構造体は、表面に、本発明の中間層を有するものである。この層は、親水性が十分ではなかった。
比較例4、5では、上記のように、双性イオンポリマーを合成することができなかった。
比較例6、7の親水性構造体は、水性ポリエステル樹脂を含有する中間層を形成し、その上に親水性層を形成したものである。しかしながら、この親水性層は耐水性に劣っていた。

Claims (7)

  1. 基体、中間層及び親水性層がこの順に積層されてなる層構造を有する親水性構造体であって、
    前記中間層が、シロキサン系ポリマーを含有する層であり、
    前記親水性層が、ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーを含有し、かつ、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しない層であり、
    前記ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーが、下記式(2)
    Figure 0006435440
    〔式中、R は、水素原子又はメチル基を表し、R 、R は、それぞれ独立に、水素原子、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数1〜10のアルキル基、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜11のシアノアルキル基、エーテル結合を有する若しくは有しない炭素数2〜10のアルケニル基、又は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基を表す。また、R 及びR は、互いに結合して、環を形成していてもよい。A は、下記式(3)〜(5)
    Figure 0006435440
    (式中、A 及びA は、それぞれ独立に炭素数1〜10のアルキレン基を表し、R 、R 及びR は、それぞれ独立に、水素原子、炭素数1〜6のアルキル基、又は、置換基を有する若しくは有しない炭素数6〜20のアリール基を表す。nは1〜10の整数を表す。*1は炭素原子との結合手を表し、*2は窒素原子との結合手を表す。)
    のいずれかで示される2価の基を表す。mは、2〜5の整数を表す。〕
    で示される繰り返し単位を有する重合体であることを特徴とする親水性構造体。
  2. 前記基体が、樹脂フィルムである、請求項1に記載の親水性構造体。
  3. 前記シロキサン系ポリマーが、加水分解性有機ケイ素化合物の加水分解重縮合物である、請求項1又は2に記載の親水性構造体。
  4. 前記加水分解性有機ケイ素化合物が、下記式(1)で示されるケイ素化合物、又は、下記式(1)で示されるケイ素化合物の加水分解重縮合物である、請求項3に記載の親水性構造体。
    Figure 0006435440
    (式中、Rは、水素原子又は非加水分解性の有機基を表し、Rは、加水分解性基を表す。qは0〜2の整数を表す。)
  5. 前記ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーが、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位、及び、カルボキシ基、スルホ基、又は、これらの基が塩基と反応してなる基を有する繰り返し単位(ただし、双性イオンモノマー由来の繰り返し単位を除く。)を有する重合体である、請求項1〜4のいずれかに記載の親水性構造体。
  6. 前記親水性層が、さらに、炭素数が0〜10の陽イオンを有するイオン性化合物を含有する層である、請求項1〜5のいずれかに記載の親水性構造体。
  7. 下記工程(1)〜(3)を有する、請求項1〜6のいずれかに記載の親水性構造体の製造方法。
    工程(1):基体上に、加水分解性有機ケイ素化合物を含有する塗布液を塗布し、得られた塗膜中の加水分解性有機ケイ素化合物を加水分解重縮合させることで、シロキサン系ポリマーを含有する塗膜を形成する工程
    工程(2):前記シロキサン系ポリマーを含有する塗膜が完全に乾燥した状態で、又は、前記塗膜中に溶媒が残存した状態で、前記塗膜上に、ケイ素原子を有しない双性イオンポリマーを含有し、かつ、ケイ素原子を有する双性イオンポリマーを含有しない塗布液(A)を塗布し、前記塗布液(A)の塗膜を形成する工程
    工程(3):工程(2)で得られた積層構造を有する構造体中の未乾燥状態の塗膜を乾燥させる工程
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