以下、発明の実施の形態を通じて本発明を説明するが、以下の実施形態は特許請求の範囲にかかる発明を限定するものではない。また、実施形態の中で説明されている特徴の組み合わせの全てが発明の解決手段に必須であるとは限らない。
図1は、半導体装置100の上面を示す概略図である。本例の半導体装置100は、半導体基板10を備える。図1において、半導体基板10におけるX軸方向およびY軸方向の各端部を外周16として示す。半導体基板10は、Z軸の正方向の端部に上面12を有し、Z軸の負方向の端部に下面14を有する。なお、上面12および下面14は、図3において示す。本例の半導体基板10はシリコン基板であるが、他の例において半導体基板10は、炭化ケイ素基板、窒化ガリウム基板または酸化ガリウム基板であってもよい。
本明細書において、X軸方向とY軸方向とは互いに直交する方向であり、Z軸方向はX‐Y平面に垂直な方向である。X軸方向、Y軸方向およびZ軸方向は、いわゆる右手系を成す。なお、本例において、X軸方向は第1方向の一例であり、Y軸方向は第2方向の一例である。本明細書においては、Z軸方向と平行な方向を半導体基板10の深さ方向と称する場合がある。本明細書において、「上」、「下」、「上方」および「下方」の用語は、重力方向における上下方向に限定されない。これらの用語は、予め定められた軸に対する相対的な方向を指すに過ぎない。
半導体装置100は、活性領域110、パッド領域120およびエッジ終端領域130を有する。活性領域110は、複数の素子領域を有してよい。本例の活性領域110は、複数のIGBT領域90と、複数のFWD領域92と、温度センスダイオード領域94とを有する。温度センスダイオード領域94は、半導体基板10を上面視した場合に、半導体基板10の中央部18に設けられる。
図1において、中央部18を四角破線で示す。本例において、中央部18は、活性領域110のX軸方向における中心近傍の領域である。本例の中央部18は、活性領域110のX軸方向の中心に位置するIGBT領域であって最大の領域面積を有するIGBT領域90よりも狭いX軸方向の幅と、Y軸方向において隣接する3つのIGBT領域90の合計と同じY軸方向の幅とを有する。
本例の半導体装置100は、いわゆるRC‐IGBT(Reverse Conducting‐IGBT)である。本例において、複数のIGBT領域90はY軸方向に並んで設けられる。また、複数のFWD領域92もY軸方向に並んで設けられる。さらに、中央部18を除いて、IGBT領域90とFWD領域92とはX軸方向において交互に設けられる。
中央部18における一部のIGBT領域90は、中央部18以外のIGBT領域90に比べて、半導体基板10を上面視した場合の領域の面積が小さくてよい。中央部18に設けられるIGBT領域90であって、X軸方向において温度センスダイオード領域94を挟む2つのIGBT領域90は、中央部18以外のIGBT領域90よりも領域の面積が小さくてよい。本例において、中央部18におけるY軸の負方向の端部に位置する2つのIGBT領域90と、中央部18における温度センスダイオード領域94を挟む2つのIGBT領域90とは、中央部18以外のIGBT領域90よりも領域の面積が小さい。
半導体装置100は、ゲート電極40をさらに備える。ゲート電極40は、半導体基板10の上方に設けられてよい。図1において、ゲート電極40を太い破線により示す。本例のゲート電極40は、ゲート電位を供給する金属層または金属配線層である。つまり、本例のゲート電極40は、半導体基板10上に設けられた金属配線層であるゲートランナーも含む。本例のゲート電極40は、活性領域110のX軸方向端部近傍に位置する外周部44と、一対の外周部44との間において延伸する延伸部46とを含む。
本例の外周部44は、外周部44‐1と、外周部44‐2とを有する。外周部44‐1は、半導体基板10の外周16のうちY軸方向と平行な一辺17‐1に対して平行であり、外周部44‐2は、一辺17‐1に対向するY軸方向に平行な他の一辺17‐2に対して平行である。外周部44‐1と、外周部44‐2とは、X軸方向において互いに対向する。延伸部46は、外周部44から中央部18に向かって延伸して設けられてよい。本例において4つの延伸部46が外周部44‐1から外周部44‐2までX軸方向と平行に延伸する。
パッド領域120は、複数のパッドと、素子領域とを有してよい。本例のパッド領域120は、ゲートパッド122、センス(sense)IGBT領域124、センスエミッタパッド126、ダミーエミッタパッド127、温度センスアノードパッド128および温度センスカソードパッド129を有する。ゲートパッド122には、記号Gを付して示す。ゲートパッド122は、ゲート電極40と電気的に接続してよい。IGBTを駆動するゲート信号は、ゲートパッド122から半導体装置100へ供給されてよい。
センスIGBT領域124には、SIGBTを付して示す。センスIGBT領域124は、活性領域110のIGBT領域90に流れる主電流を検出する目的で設けられてよい。センスIGBT領域124に流れるセンス電流を、半導体装置100外に設けられた制御回路に取り込むことにより、IGBT領域90に流れる主電流を検知することができる。なお、センス電流の値は、主電流に比べて十分に小さくてよい。
センスエミッタパッド126には、SEを付して示す。センスエミッタパッド126は、センスIGBT領域124のエミッタと同電位の電極パッドであってよい。センス電流は、センスエミッタパッド126を通じて上述の制御回路に取り込まれてよい。
ダミーエミッタパッド127には、DEを付して示す。ダミーエミッタパッド127は、IGBT領域90とセンスIGBT領域124とに対して試験を行う場合に利用されてよい。特に、ダミーエミッタパッド127は、IGBT領域90とセンスIGBT領域124とに対して、エミッタトレンチ部内に設けられた絶縁膜のスクリーニング試験を行う場合に、利用されてよい。
温度センスアノードパッド128には、TAを付して示す。また、温度センスカソードパッド129には、TKを付して示す。本例の温度センスアノードパッド128および温度センスカソードパッド129は、温度センスダイオード領域94のアノードおよびカソードにそれぞれ電気的に接続されたパッドである。温度センスダイオード領域94に一定電流を流したときの電圧特性をモニタリングすることにより、温度センスダイオード領域94の温度を特定することができる。
エッジ終端領域130は、活性領域110およびパッド領域120の周囲に設けられてよい。エッジ終端領域130には、ドットを付して示す。エッジ終端領域130は、半導体基板10の上面12近傍の電界集中を緩和する機能を有してよい。エッジ終端領域130は、例えばガードリング、フィールドプレート、リサーフおよびこれらを組み合わせた構造を有する。
図2は、第1実施形態における領域Aの拡大図である。図2は、半導体基板10の上面視図である。図2において、ゲート電極40およびエミッタ電極50の外形を太い破線により示す。なお、図2においては、理解を容易にすることを目的として、ゲート電極40およびエミッタ電極50と半導体基板10の上面12との間に設けられる酸化膜36および層間絶縁膜38を省略する。酸化膜36および層間絶縁膜38について説明は、図3にて示す。
IGBT領域90は、活性領域110において半導体基板10の上面12に対して垂直にコレクタ領域32を投影した領域であって、エミッタ領域22およびコンタクト領域26を含む所定の単位構成が規則的に配置された領域であってよい。なお、コレクタ領域32は、図3にて示す。
また、FWD領域92は、活性領域110においてカソード領域33が設けられる領域に一致する下面14の領域、または、活性領域110において上面12に対して垂直にカソード領域33を投影した領域であってよい。図2においては、カソード領域33が設けられる範囲を一点鎖線により示し、カソード領域33におけるY軸方向の端部には矢印を付して示す。本例において、IGBT領域90とFWD領域92との境界は、X軸方向において直線形状のゲートトレンチ部60に隣接するU字形状のエミッタトレンチ部70である。また、ゲート電極40またはエミッタブリッジ部52を挟んでY軸方向に対向する2つのFWD領域92については、それぞれU字形状のエミッタトレンチ部70のY軸方向の端部までを、便宜的にFWD領域92といってよい。
IGBT領域90およびFWD領域92の各々は、メサ部80と複数のトレンチ部とを備えてよい。メサ部80は、隣接する2つのトレンチ部の間に設けられる半導体基板の一部の領域である。メサ部80は、トレンチ部の底面よりも上面12に近い領域に位置する半導体基板10の一部である。なお、本明細書においては、ゲートトレンチ部60およびエミッタトレンチ部70をまとめてトレンチ部と称する場合がある。
本例のIGBT領域90は、ゲートトレンチ部60とエミッタトレンチ部70とを有する。IGBT領域90のゲートトレンチ部60およびエミッタトレンチ部70は、Y軸方向に延伸し、かつ、X軸方向において交互に設けられてよい。IGBT領域90におけるゲートトレンチ部60およびエミッタトレンチ部70は、一のIGBT領域90から他のIGBT領域90まで延伸してよく、ゲート電極40の延伸部46の下方において延伸部46を横切ってよい。
本例のFWD領域92は、ゲートトレンチ部60を有せず、エミッタトレンチ部70を有する。FWD領域92のエミッタトレンチ部70も、Y軸方向に延伸し、かつ、X軸方向において交互に設けられてよい。ただし、FWD領域92のエミッタトレンチ部70は、Y軸方向に隣接するFWD領域92間には設けられなくてよい。本例において、FWD領域92のエミッタトレンチ部70は、Y軸方向の各端部においてU字形状を成す。U字形状は、Y軸方向に平行な2つの長手部とX軸方向に平行な1つの短手部とにより構成されてよい。延伸部46よりもY軸の正方向に位置するエミッタトレンチ部70は順方向のU字形状を構成してよく、延伸部46よりもY軸の負方向に位置するエミッタトレンチ部70は逆方向のU字形状を構成してよい。FWD領域92のエミッタトレンチ部70は、順方向のU字形状と逆方向のU字形状との長手部を各々接合した形状を有してよい。
ゲートトレンチ部60およびエミッタトレンチ部70の各々は、半導体基板10内に設けられてよい。ゲートトレンチ部60は、ゲート電極40と電気的に接続するゲート導電部62を有してよい。なお、ゲート導電部62は、図3にて示す。ゲート電極40は、第1の上面電極の一例であり、ゲートトレンチ部60は、第1トレンチ部の一例である。本例において、ゲート導電部62は、ゲートトレンチ部60とゲート電極40の延伸部46との間の層間絶縁膜38における開口を通じて、延伸部46と電気的に接続する。ゲート導電部62とゲート電極40との接続部をコンタクト部66として示す。
エミッタトレンチ部70は、エミッタ電極50と電気的に接続するエミッタ導電部72を有してよい。なお、エミッタ導電部72は、図3にて示す。エミッタ電極50は、第2の上面電極の一例であり、エミッタトレンチ部70は、第2トレンチ部の一例である。本例において、エミッタ導電部72は、エミッタトレンチ部70とエミッタ電極50との間の層間絶縁膜38における開口を通じて、エミッタ電極50と電気的に接続する。エミッタ導電部72とエミッタ電極50との接続部をコンタクト部76として示す。
コンタクト部66およびコンタクト部76において、各導電部と電極とは、直接接触してよく、バリアメタルを介して接触してよく、バリアメタルおよびプラグを介して接触してもよい。バリアメタルは、層間絶縁膜38の開口の底部および側部に接触するように形成されてよい。バリアメタルは、モリブデン(Mo)およびチタン(Ti)等であってよい。また、プラグは、タングステン(W)から成るプラグであってよい。プラグは、バリアメタル上に接するように層間絶縁膜38の開口内に埋め込み形成されてよい。
半導体基板10は、IGBT領域90において、N+型のエミッタ領域22、P+型のコンタクト領域26、P−型のベース領域24およびP+型のウェル領域20を有してよい。エミッタ領域22、コンタクト領域26、ベース領域24およびウェル領域20は、半導体基板10の上面12からそれぞれ所定深さまで設けられてよい。IGBT領域90のメサ部80において、エミッタ領域22およびコンタクト領域26は、Y軸方向において交互に設けられてよい。ただし、IGBT領域90のX軸方向の端部に位置するメサ部80においては、エミッタ領域22が設けられなくてよい。なお、図2において、P+型のウェル領域20が設けられる範囲を一点鎖線および矢印により示す。
本例において、NまたはPは、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。また、NまたはPに記載した+または−について、+はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が高く、−はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が低いことを意味する。
IGBT領域90のメサ部80において、ベース領域24は、エミッタ領域22およびコンタクト領域26の下方に設けられてよい。また、ベース領域24は、Y軸方向に交互に設けられたエミッタ領域22およびコンタクト領域26対して、Y軸の正負方向の各端部にも設けられてよい。これに対して、IGBT領域90とFWD領域92との境界に位置するメサ部80においては、ベース領域24は、コンタクト領域26の下方と、コンタクト領域26のY軸の正負方向の各端部とに設けられてよい。なお、ウェル領域20は、Y軸方向において隣接する2つのIGBT領域90の間に設けられてよい。
エミッタ電極50は、酸化膜36および層間絶縁膜38の開口を通じて、Y軸方向に交互に設けられたエミッタ領域22およびコンタクト領域26と電気的に接続してよい。エミッタ電極50とY軸方向に交互に設けられたエミッタ領域22およびコンタクト領域26との接続部をコンタクト部82として示す。なお、外周部44に最も近いX軸の正方向の端部に設けられたコンタクト部82は、コンタクト領域26との接続部であってよい。IGBT領域90においてX軸の正方向の端部に設けられたコンタクト部82は、複数個がストライプ状に形成されてよい。当該複数個のコンタクト部82は、X軸方向において隣り合うように形成されてよい。
また、エミッタ電極50は、酸化膜36および層間絶縁膜38の開口を通じて、IGBT領域90とFWD領域92との境界に位置するメサ部80のコンタクト領域26と電気的に接続してよい。境界に位置するメサ部80のコンタクト領域26とエミッタ電極50との接続部をコンタクト部84として示す。さらに、エミッタ電極50は、酸化膜36および層間絶縁膜38の開口を通じて、IGBT領域90のX軸の正方向端部におけるP+型のウェル領域20と電気的に接続してよい。エミッタ電極50とウェル領域20との接続部をコンタクト部85として示す。コンタクト部85はウェル領域20上に設けられてよく、ストライプ状の複数個のコンタクト部85はX軸方向において隣り合うように形成されてよい。
半導体基板10は、FWD領域92において、コンタクト領域26、ベース領域24およびウェル領域20を有してよい。コンタクト領域26、ベース領域24およびウェル領域20は、半導体基板10の上面12からそれぞれ所定深さまで設けられてよい。FWD領域92のメサ部80において、ベース領域24およびコンタクト領域26は、Y軸方向において交互に設けられてよい。
FWD領域92のメサ部80において、コンタクト領域26は、ベース領域24の上面に形成されたコンタクト部86のY軸方向の両端のみに形成されてよい。あるいは、コンタクト領域26は、ベース領域24とY軸方向において交互に設けられてもよい。ベース領域24は、コンタクト領域26の下方にも設けられてよい。また、Y軸方向に交互に設けられたベース領域24およびコンタクト領域26において、Y軸の正負方向の各端部はベース領域24であってよい。ウェル領域20は、Y軸方向において隣接する2つのFWD領域92の間に設けられてよい。
エミッタ電極50は、酸化膜36および層間絶縁膜38の開口を通じて、Y軸方向に交互に設けられたベース領域24およびコンタクト領域26と電気的に接続してよい。Y軸方向に交互に設けられたベース領域24およびコンタクト領域26とエミッタ電極50との接続部をコンタクト部86として示す。
ゲート電極40およびエミッタ電極50は、半導体基板10の上面12の上方に設けられてよい。ゲート電極40およびエミッタ電極50は、金属材料を有してよい。ゲート電極40およびエミッタ電極50は、アルミニウム(Al)電極であってよく、アルミニウム(Al)‐シリコン(Si)合金であってよく、アルミニウム(Al)‐ニッケル(Ni)合金であってもよい。
ゲート電極40はエミッタ電極50と同じ材料であってよい。本例のゲート電極40は、アルミニウムを主に含む金属配線層である。つまり、ゲート電極40の外周部44および延伸部46は、アルミニウムを主に含む金属配線層である。ゲート電極40は、半導体基板10の上方の層間絶縁膜38に接して設けられてよい。仮に、ゲート電極40の外周部44および延伸部46をポリシリコン配線層とする場合、ポリシリコン配線層は金属配線層に比べて抵抗率が大きいので、ポリシリコン配線層の抵抗値を低減するべく、ポリシリコン配線層の幅(例えば、延伸部46のY軸方向の幅)を金属配線層に比べて大きくする必要がある。
これに対して本例においては、ゲート電極40を金属配線層とするので、ポリシリコン配線層の場合に比べて延伸部46のY軸方向の幅を小さくすることができる。これにより、半導体装置100のチップサイズを縮小することができる。また、ゲート電極40を金属配線層とすることにより、ポリシリコン配線層の場合と比べて、ゲート電極40の延伸部46における電流アンバランスおよびゲート信号の伝達遅れを低減することもできる。
なお、ゲート電極40の外周部44および延伸部46をポリシリコン配線層とする場合、コンタクト部66および76に上には、ポリシリコン配線層と同じ層に設けられ、かつ、ポリシリコン配線層をパターニングすることにより島状に加工された接続領域を設ける。これに対して本例においては、ポリシリコン配線層を用いないので、島状に加工されたポリシリコン配線層の接続領域に起因する段差をなくすことができる。これにより、微細加工における加工精度バラつきを低減することができるので、IGBTの特性バラつきを低減することができる。
半導体装置100は、ゲート電極40に電気的に接続するゲートブリッジトレンチ部42を有してよい。ゲートブリッジトレンチ部42は、第1接続部の一例である。ゲートブリッジトレンチ部42は、半導体基板10の上面12から予め定められた深さまで設けられてよい。つまり、ゲートブリッジトレンチ部42は、半導体基板10内に設けられる。半導体基板10の上面視において、ゲートブリッジトレンチ部42の延伸方向はX軸方向であってよい。つまり、上面視において、ゲートブリッジトレンチ部42は、Y軸方向の幅よりもX軸方向の幅が大きくてよい。
ゲート電極40の延伸部46は、半導体基板10の上面視において少なくともエミッタブリッジ部52の位置において分離されてよい。これにより、層間絶縁膜38上に各々設けられるゲート電極40とエミッタ電極50とを、電気的に分離することができる。本例において、エミッタブリッジ部52により分離された延伸部46は、ゲートブリッジトレンチ部42に電気的に接続する。これにより、電気的導通を確保することができる。
ゲートブリッジトレンチ部42は、導電部を含んでよい。ゲートブリッジトレンチ部42のゲートブリッジ導電部142は、半導体材料であってよい。なお、ゲートブリッジ導電部142は図5Aおよび図5Bにて示す。本例のゲートブリッジ導電部142は、ポリシリコンから成る。ゲートブリッジ導電部142は、X軸方向の端部近傍において、ゲート電極40の延伸部46と電気的に接続してよい。本例において、ゲートブリッジ導電部142は、ゲートブリッジトレンチ部42と延伸部46との間の層間絶縁膜38における開口を通じて、延伸部46と電気的に接続する。ゲートブリッジ導電部142と延伸部46との接続部をコンタクト部48として示す。すなわち、ゲートブリッジトレンチ部42とは、エミッタブリッジ部52においてX軸方向で分離される2つのゲート電極40の延伸部46を、ゲート電極40とは異なる導電性の材料で互いに接続する導電部を含んだトレンチ部といってよい。
本例において、ゲートブリッジトレンチ部42は、エミッタブリッジ部52の下方に位置する。ゲートブリッジトレンチ部42は半導体基板10の上面12から突出しないので、エミッタブリッジ部52‐1の下にポリシリコン配線層を設ける場合に比べて、エミッタブリッジ部52‐1の下の上面12を平坦にすることができる。
エミッタ電極50は、第1領域50‐1および第2領域50‐2を含んでよい。本例において、第1領域50‐1および第2領域50‐2の各々は、半導体基板10の上面視においてゲートブリッジトレンチ部42を境界として分離して配置されたエミッタ電極50の一部である。
エミッタ電極50は、エミッタブリッジ部52‐1をさらに含んでよい。エミッタブリッジ部52‐1は、ゲートブリッジトレンチ部42の上方において、第1領域50‐1および第2領域50‐2を接続してよい。エミッタブリッジ部52‐1は、Y軸方向において互いに離間する少なくとも2つのFWD領域92の間において、第1領域50‐1および第2領域50‐2を接続してよい。繰り返しとなるが、本例のエミッタブリッジ部52は、エミッタ電極50の一部である。エミッタブリッジ部52‐1を介して、第1領域50‐1および第2領域50‐2は、電気的に同電位となる。すなわち、エミッタブリッジ部52とは、ゲート電極40の延伸部46を挟んでY軸方向に分離された2つのFWD領域92のエミッタ電極50を、エミッタ電極50と同じ導電性の材料で互いに接続する電極層といってよい。
X軸方向におけるエミッタブリッジ部52の幅は、X軸方向における1つのFWD領域92の幅よりも小さくてよい。X軸方向におけるエミッタブリッジ部52の幅WEBは、X軸方向における1つのFWD領域92の幅WFWDの3/4以下であってよく、1/2以下であってもよい。例えば、FWD領域92の幅WFWDは200μmであり、エミッタブリッジ部52の幅WEBは80μmである。このように、エミッタブリッジ部52の幅WEBをFWD領域92の幅WFWDよりも小さくすることにより、その分だけ、ゲート電極40の延伸部46のX軸方向の長さを長くすることができる。これに応じて、ゲートブリッジトレンチ部42のコンタクト部48間の距離LCNTを短くすることができる。上述のように、延伸部46の金属配線層は、ゲートブリッジトレンチ部42のゲートブリッジ導電部142であるポリシリコンよりも抵抗率が低い。ゲートブリッジトレンチ部42のコンタクト部48間の長さを短くすることにより、ゲートブリッジトレンチ部42における抵抗値を低減することができる。
本例の半導体基板10は、ゲート電極40の外周部44の下方に、ゲート外周トレンチ部43を有する。ゲート外周トレンチ部43は、半導体材料から成るゲート外周導電部132を有してよい。なお、ゲート外周導電部132は図3にて示す。本例のゲート外周導電部132は、ゲート外周トレンチ部43と外周部44との間の層間絶縁膜38における開口を通じて、外周部44と電気的に接続する。ゲート外周導電部132とゲート電極40との接続部をコンタクト部49として示す。コンタクト部49は、ゲート外周トレンチ部43上の一部ではなく、ゲート外周トレンチ部43上の全体に設けられてよい。
ゲート外周トレンチ部43は、外周部44の下方に加えて、Y軸の正方向の端部に位置する延伸部46‐1の下方と、Y軸の負方向の端部に位置する延伸部46‐4の下方とにも設けられてよい。ゲート外周トレンチ部43は、延伸部46‐1、外周部44‐1、延伸部46‐4および外周部44‐2の下方において、四角枠状となるよう一つながりに設けられてよい。これに応じて、コンタクト部49も、四角枠状となるよう一つながりに設けられてよい。
図3は、図2におけるB‐B断面を示す図である。B‐B断面は、ゲートトレンチ部60、エミッタトレンチ部70およびゲート外周トレンチ部43を通るX‐Z平面に平行な断面である。半導体基板10は、上面12、下面14、P+型のウェル領域20、N−型のドリフト領域28、N+型のバッファ領域34、およびP+型のコレクタ領域32を有する。また、半導体装置100は、コレクタ電極30、酸化膜36、層間絶縁膜38をさらに備える。
コレクタ領域32の下面は、半導体基板10の下面14と一致してよい。コレクタ電極30は、下面14に接して設けられてよい。コレクタ電極30は、アルミニウム電極であってよく、アルミニウム‐シリコン合金であってもよい。
バッファ領域34は、Z軸方向において、ドリフト領域28とコレクタ領域32との間に位置してよい。バッファ領域34は、半導体装置100のターン・オフ時にベース領域24の下面から広がる空乏層がコレクタ領域32に到達することを防ぐ機能を有してよい。バッファ領域34は、深さ方向において、N型のドーピング濃度が離散的なピーク値を有するフィールドストップ(FS)領域であってよい。
本例のゲートトレンチ部60は、ゲート導電部62、ゲートトレンチ63およびゲート絶縁膜64を含む。ゲート絶縁膜64は、ゲートトレンチ63の内壁を覆って形成されてよい。ゲート絶縁膜64は、ゲートトレンチ63の内壁の半導体を酸化または窒化することにより形成してよい。ゲート絶縁膜64は、ゲート導電部62と半導体基板10とを電気的に絶縁してよい。ゲート導電部62は、ゲートトレンチ63内においてゲート絶縁膜64上に形成されてよい。ゲート導電部62は、不純物が添加されたポリシリコン等の導電材料であってよい。
なお、IGBT領域90においては、ゲート・オン時に、ゲートトレンチ63の側壁に接するベース領域24にチャネルが形成されてよい。チャネルを介してドリフト領域28に導入される電子と、コレクタ領域32からドリフト領域28に導入される正孔とにより、ドリフト領域28において電導度変調が生じてよい。これにより、コレクタ電極30からエミッタ電極50へ電流が流れてよい。
本例のエミッタトレンチ部70は、エミッタ導電部72、エミッタトレンチ73およびエミッタ絶縁膜74を含む。エミッタ絶縁膜74は、エミッタトレンチ73の内壁を覆って形成されてよい。エミッタ絶縁膜74は、エミッタトレンチ73の内壁の半導体を酸化または窒化することにより形成してよい。エミッタ絶縁膜74は、エミッタ導電部72と半導体基板10とを電気的に絶縁してよい。エミッタ導電部72は、エミッタトレンチ73内においてエミッタ絶縁膜74上に形成されてよい。エミッタ導電部72は、不純物が添加されたポリシリコン等の導電材料であってよい。
ゲート・オン時において、エミッタトレンチ73の側壁にチャネルは形成されない。エミッタトレンチ部70は、ゲート・オン時にキャリアの注入を促進させる効果(Injection Enhancement効果、IE効果)を発揮してよい。
本例のゲート外周トレンチ部43は、ゲート外周導電部132、ゲート外周トレンチ133およびゲート外周絶縁膜134を含む。ゲート外周絶縁膜134は、ゲート外周トレンチ133の内壁を覆って形成されてよい。ゲート外周絶縁膜134は、ゲート外周トレンチ133の内壁の半導体を酸化または窒化することにより形成してよい。ゲート外周絶縁膜134は、ゲート外周導電部132と半導体基板10とを電気的に絶縁してよい。ゲート外周導電部132は、ゲート外周トレンチ133内においてゲート外周絶縁膜134上に形成されてよい。ゲート外周導電部132は、不純物が添加されたポリシリコン等の導電材料であってよい。
ゲートトレンチ部60、エミッタトレンチ部70およびゲート外周トレンチ部43は、半導体基板10の上面12から予め定められた深さ位置に各々設けられてよい。ゲートトレンチ63、エミッタトレンチ73およびゲート外周トレンチ133は、同一工程で形成されることにより、同じ深さ位置に底部を有してよい。本例において、ゲートトレンチ63、エミッタトレンチ73およびゲート外周トレンチ133の底部は、P+型のウェル領域20の底部よりも浅く、かつ、同じ深さ位置に設けられる。なお、図示しないが、ゲートトレンチ63、エミッタトレンチ73およびゲート外周トレンチ133の底部は、ベース領域24とドリフト領域28の境界よりは深くてよい。
ゲート絶縁膜64、エミッタ絶縁膜74およびゲート外周絶縁膜134は、同じ材料であってよく、同一工程で形成されてよい。本例において、ゲート絶縁膜64、エミッタ絶縁膜74およびゲート外周絶縁膜134は、酸化シリコン膜である。また、ゲート導電部62、エミッタ導電部72およびゲート外周導電部132も、同じ材料であってよく、同一工程で形成されてよい。本例において、ゲート導電部62、エミッタ導電部72およびゲート外周導電部132はリン(P)がドープされたポリシリコンである。
酸化膜36は、上面12に接して設けられてよい。酸化膜36は、ゲート絶縁膜64等を形成するのと同じタイミングで形成されてもよい。例えば、ゲート絶縁膜64と酸化膜36とは、シリコン基板を熱酸化することにより形成した二酸化シリコン膜である。それゆえ、酸化膜36は、ゲートトレンチ63、エミッタトレンチ73およびゲート外周トレンチ133の内壁および底部には設けられるが、上部には設けられない。
本例において、ゲート電極40の延伸部46‐2は、コンタクト部66を通じてゲート導電部62と電気的に接続する。同様に、ゲート電極40の外周部44‐2は、コンタクト部49を通じてゲート外周導電部132と電気的に接続する。なお、ゲート電極40において、外周部44‐2と延伸部46‐2との境界を破線により示す。
図4は、図2におけるC‐C断面を示す図である。C‐C断面は、エミッタ電極50の第1領域50‐1および第2領域50‐2、ならびに、延伸部46‐2を通るY‐Z平面に平行な断面である。エミッタ領域22およびコンタクト領域26は、ベース領域24よりも浅い位置に設けられてよい。本例のエミッタ領域22およびコンタクト領域26は、酸化膜36および層間絶縁膜38における開口を通じて、エミッタ電極50と電気的に接続する。ベース領域24は、ウェル領域20よりも浅い位置に設けられる。つまり、ベース領域24の底部は、ウェル領域20よりも上面12に近い。なお、ウェル領域20においてベース領域24よりも高いドーピング濃度の部分20Aを破線で示す。
図5Aは、図2におけるD‐D断面を示す図である。D‐D断面は、エミッタ電極50の第1領域50‐1、第2領域50‐2およびエミッタブリッジ部52‐1を通るY‐Z平面に平行な断面である。エミッタブリッジ部52‐1に対応する下面14には、P+型のコレクタ領域32が形成されてよい。
ゲートブリッジトレンチ部42は、ゲートブリッジ導電部142、ゲートブリッジトレンチ143およびゲートブリッジ絶縁膜144を含む。ゲートブリッジ絶縁膜144は、ゲートブリッジトレンチ143の内壁を覆って形成されてよい。ゲートブリッジ絶縁膜144は、ゲートブリッジトレンチ143の内壁の半導体を酸化または窒化することにより形成されてよい。ゲートブリッジ絶縁膜144は、ゲートブリッジ導電部142と半導体基板10とを電気的に絶縁してよい。ゲートブリッジ導電部142は、ゲートブリッジトレンチ143内においてゲートブリッジ絶縁膜144上に形成されてよい。ゲートブリッジ導電部142は、不純物が添加されたポリシリコン等の導電材料であってよい。ゲートブリッジ導電部142も、ゲートトレンチ部60エミッタトレンチ部70およびゲート外周トレンチ部43と同じ工程で形成されてよい。
図5Bは、図2におけるD'‐D'断面を示す図である。D'‐D'断面は、X軸方向に各々配列された2つのコンタクト部48と2つのコンタクト部66とを通る断面である。ゲート電極40の延伸部46‐2は、エミッタブリッジ部52‐1から離間してよい。D'‐D'断面に示すように、2つの延伸部46‐2は、X軸方向においてエミッタブリッジ部52‐1を間に挟んで互いに離間する。本例の延伸部46‐2は、ゲートトレンチ部60のゲート導電部62と、ゲートブリッジトレンチ部42のゲートブリッジ導電部142とに電気的に接続する。また、本例のエミッタブリッジ部52‐1は、層間絶縁膜38および酸化膜36により、ゲートブリッジ導電部142から電気的に絶縁される。
図6は、図1の上面図にエミッタ電極50を付加して示す図である。本例のエミッタ電極50は、第1領域50‐1および第2領域50‐2に加えて、第3領域50‐3、第4領域50‐4および第5領域50‐5を含む。また、本例のエミッタ電極50は、エミッタブリッジ部52‐1に加えて、エミッタブリッジ部52‐2、52‐3、52‐4および52‐4を含む。
第1領域50‐1から第5領域50‐5の各々は、所定範囲に帯状に設けられてよい。本例においては、Y軸の正方向における外周16に近い順に、第1領域50‐1と、第2領域50‐2および第4領域50‐4と、第3領域50‐3および第5領域50‐5とが、設けられる。また、第1領域50‐1と、第2領域50‐2および第4領域50‐4と、第3領域50‐3および第5領域50‐5とは、Y軸方向において互いに離間する。
本例の第1領域50‐1は、X軸の正方向端部に位置するIGBT領域90上からX軸の負方向端部に位置するIGBT領域90上まで連続的に設けられる。これに対して、第2領域50‐2と第4領域50‐4とは、中央部18において互いに離間する。同様に、第3領域50‐3と第5領域50‐5とは、中央部18において互いに離間する。
エミッタブリッジ部52は、エミッタ電極50の2つの領域を電気的に接続してよい。本例において、エミッタブリッジ部52‐1は、第1領域50‐1および第2領域50‐2を電気的に接続し、エミッタブリッジ部52‐2は、第2領域50‐2および第3領域50‐3を電気的に接続する。また、エミッタブリッジ部52‐3は、第1領域50‐1および第4領域50‐4を電気的に接続し、エミッタブリッジ部52‐5は、第4領域50‐4および第5領域50‐5を電気的に接続する。これにより、エミッタ電極50の各領域は、同電位を有することができる。
ただし、Y軸方向において互いに離間する複数のFWD領域92のうち、少なくとも2つのFWD領域92の間には、エミッタブリッジ部52が設けられなくてよい。エミッタブリッジ部52の数を間引くことにより、Y軸方向において互いに離間する全てのFWD領域92間にエミッタブリッジ部52を設ける場合と比較して、ゲートブリッジトレンチ部42の数を減らすことができる。これにより、ゲートブリッジトレンチ部42よりも抵抗率の低いゲート電極40の延伸部46の面積を増やすことができるので、半導体装置100のゲート抵抗を低減することができる。
エミッタブリッジ部52は、半導体基板10の上面視において半導体基板10の中央部18の近くに配置された2つのFWD領域92の間に少なくとも設けられてよい。これにより、Y軸方向において互いに離間する全てのFWD領域92間にエミッタブリッジ部52を設ける場合と比較して、ゲートブリッジトレンチ部42よりも熱伝導性の高いゲート電極40の延伸部46の面積を増やすことができるので、半導体装置100の放熱性が向上する。本例においては、ゲート外周部44よりも中央部18の近くに位置するFWD領域92間にはエミッタブリッジ部52が設けられるが、中央部18よりもゲート外周部44の近くに位置するFWD領域92間にはエミッタブリッジ部52が設けられない。
一方、半導体装置(半導体チップ)のX‐Y平面における面積が例えば1cm2よりも大きくなる場合では、Y軸方向において互いに離間する全てのFWD領域92間にエミッタブリッジ部52を設けてよい。
図7(A)は、エミッタ電極50の各領域が電気的に分離されている比較例における側面図である。複数の半導体装置100を配線等により各々接続することで半導体モジュールへ組み立てる前に、半導体装置100が所望の電気特性を満たすか否かの試験を行うことが一般的である。例えば、半導体装置100のエミッタ電極50にプローブ182を接触させることにより、電気特性試験を行う。本例のプローブ182は、治具であるプローブカード180から下方に突出する針である。
第1領域50‐1から第5領域50‐5の各々が電気的に分離している場合には、各領域に個別にプローブ182を接触させるか、または、一度に複数のプローブ182を各領域に接触させる必要がある。各領域に個別にプローブ182を接触させる場合には試験に要する作業時間が長くなるので、一度に複数のプローブ182を各領域に接触させて試験することが望ましい。ただし、第1領域50‐1から第5領域50‐5が各々独立している場合には、図7(A)に示す様に、半導体基板10が少しでも傾いていれば、全てのプローブ182と各領域との接触が担保されない恐れがある。
図7(B)は、エミッタ電極50の各領域が電気的に接続されている本実施形態における側面図である。本実施形態においては、第1領域50‐1から第5領域50‐5の全ての領域にプローブ182を接触させずとも、いずれか一つの領域のみにプローブ182を接触させれば電気特性試験を行うことができる。それゆえ、半導体基板10が少し傾いていても、プローブ182とエミッタ電極50全体との電気的導通を担保することができる。また、試験に要する作業時間を短くすることができる。加えて、エミッタ電極50の全領域が接続されているので、エミッタ電極50の各領域が電気的に分離している場合と比べて、エミッタ電極50における電流バランスを改善することができる。加えて、エミッタ電極50の放熱性も向上させることもできる。本例は、電気特性試験の行い易さ、ならびに、電流バランスおよび放熱性の向上という点において、電気的に分離されているエミッタ電極50の各領域をステッチまたはめっきにより接続する場合に比べて、有利である。特に、めっきにニッケルを用いる場合は、ニッケルの熱伝導率はアルミニウムよりの熱伝導率よりも低いので、本例のエミッタブリッジ部52を設けることで、エミッタ電極50全体の熱を均等に保つうえで有利である。
(製造方法)次に、半導体装置100の製造方法の一例を説明する。なお、Eは10のべき乗を意味し、例えば1E+16cm−3は1×1016cm−3を意味する。
まず、N−型のドリフト領域28と同じ導電型であり、かつ、同じドーピング濃度を有する半導体基板10を準備する。次に、半導体基板10の上面12に所定のパターンのエッチングマスクを設け、ゲートトレンチ部60、ゲートブリッジトレンチ部42、ゲート外周トレンチ部43、およびエミッタトレンチ部70のトレンチを形成する。
このとき、各トレンチの幅と、各トレンチを形成するためのマスク開口幅とを同じにする。トレンチを形成した後、各トレンチの内壁にゲート絶縁膜64、ゲートブリッジ絶縁膜144、ゲート外周絶縁膜134およびエミッタ絶縁膜74を形成する。このとき、酸化膜36も形成されてよい。そして、内壁に形成された各絶縁膜に接してゲート導電部62、ゲートブリッジ導電部142、ゲート外周導電部132およびエミッタ導電部72を充填して形成する。
次に、半導体基板10の上面12側からP型不純物を選択的に注入して、1100℃程度の温度で2時間程度の熱処理を行う。これにより、半導体基板10の上面12全体に、P+型のウェル領域20、P型のベース領域24、P+型のコンタクト領域26をそれぞれ形成する。P型不純物は、ボロン(B)であってよい。P+型のウェル領域20、P−型のベース領域24およびP+型のコンタクト領域26には、それぞれ5.5E+15cm−2、2.5E+13cm−2および3E+15cm−2のドーズ量で、P型不純物を注入してよい。
次に、半導体基板10の上面12側からN型不純物を選択的に注入する。これにより、N+型のエミッタ領域22を選択的に形成する。N型不純物は、リン(P)およびヒ素(As)のいずれかまたは両方であってよい。N+型のエミッタ領域22には5E+19cm−2のドーズ量でN型不純物を注入してよい。その後、半導体基板10の上面12側に層間絶縁膜38を形成し、選択的エッチングにより層間絶縁膜38にコンタクト部48、49、66および76用の開口を設ける。また、選択的エッチングにより酸化膜36および層間絶縁膜38にコンタクト部82、84、85および86用の開口を設ける。
次に、層間絶縁膜38上にゲート電極40およびエミッタ電極50形成用の金属膜を形成してパターニングする。これにより、ゲート電極40の外周部44および延伸部46と、第1領域50‐1から第5領域50‐5およびエミッタブリッジ部52を有するエミッタ電極50を形成する。
次に、半導体基板10の下面14側からN型不純物を注入してN+型のバッファ領域34を形成する。例えば、下面14側から、1.0E+14cm−2程度の異なるドーズ量で、プロトン(H+)を複数回注入してよい。続いて、300℃から400℃程度の温度で熱処理を行う。これにより、プロトン注入により半導体基板10の内部に導入された水素と、半導体基板10中の酸素および空孔とから成るVOH欠陥を形成する。このVOH欠陥がドナー(水素ドナー)となる。水素ドナーは、N+型のバッファ領域34のN型ドーパントとして機能し得る。
次に、IGBT領域90に対応する領域において、半導体基板10の下面14からP型不純物を注入する。これにより、P+型のコレクタ領域32を形成する。例えば、下面14側から1.0E+13cm−2以上4.0E+13cm−2以下のドーズ量でP型不純物を注入する。また、FWD領域92に対応する領域において、N+型のカソード領域33を形成するべく、半導体基板10の下面14からN型不純物を注入する。例えば、下面14側から1.0E+14cm−2以上1.0E+16cm−2以下のドーズ量でN型不純物を注入する。その後、下面14にレーザーを照射することにより半導体基板10をアニールする。これにより、P型およびN型不純物を活性化させる。最後に、下面14に接するコレクタ電極30を形成する。
図8は、エミッタ電極50の変形例を示す図である。図8は、図1、図2および図6と同じ、半導体基板10の上面視図である。本例においては、Y軸方向において互いに離間する全てのFWD領域92間にエミッタブリッジ部52を設ける。ただし、本例においては、中央部18の近くに配置された2つのFWD領域92の間に設けられたエミッタブリッジ部52‐1、52‐2、52‐3および52‐4の幅を、中央部18から離れて配置された2つのFWD領域92の間に設けられたエミッタブリッジ部52‐1'、52‐2'、52‐3'および52‐4'の幅よりも大きくする。本例において、エミッタブリッジ部52‐1、52‐2、52‐3および52‐4は、X軸方向の幅WEB_aを有する。これに対して、エミッタブリッジ部52‐1'、52‐2'、52‐3'および52‐4'は、X軸方向の幅WEB_bを有する。幅WEB_aは、幅WEB_bよりも大きい。
本例においては、各エミッタブリッジ部52近傍においてゲート電極40の延伸部46を分離し、かつ、各エミッタブリッジ部52の下方において分離された延伸部46をゲートブリッジトレンチ部42により電気的に接続する必要がある。それゆえ、抵抗率の観点において第1実施形態に劣る可能性がある。しかし、第1実施形態に比べてエミッタ電極50の各領域間の電気的接続をより確実にすることができるので、エミッタ電極50における電流バランスおよび放熱性を向上させることができる。
図9は、ゲートブリッジトレンチ部42の第1変形例を示す図である。本例において、Y軸方向におけるゲートブリッジトレンチ部42の幅WGBは、X軸方向におけるエミッタトレンチ部70の幅WEと、X軸方向におけるゲートトレンチ部60の幅WGと、のいずれよりも大きい。ゲート電極40は、複数のIGBT領域90における各ゲートトレンチ部60にゲート電位を供給する必要がある。それゆえ、ゲートブリッジトレンチ部42の幅WGBを相対的に大きくすることによりゲートブリッジトレンチ部42の抵抗値を低減することは、各ゲートトレンチ部60に供給されるゲート電位の低下を防ぐ上で有効である。
図10は、ゲートブリッジトレンチ部42の第2変形例を示す図である。本例においては、複数のゲートブリッジトレンチ部42がY軸方向において互いに分離して設けられる。本例において、各ゲートブリッジトレンチ部42のY軸方向の幅は、第1実施形態におけるゲートブリッジトレンチ部42のY軸方向の幅と同じであってよく、これより小さくてもよい。ただし、複数のゲートブリッジトレンチ部42のY軸方向の幅の合計は、第1実施形態におけるゲートブリッジトレンチ部42のY軸方向の幅よりも大きくてよい。本例においては、ゲートブリッジトレンチ部42の幅を実効的に増加させる。これにより、ゲートブリッジトレンチ部42の抵抗値を低減することができる。
図11は、ゲートブリッジトレンチ部42の第3変形例を示す図である。本例においては、環状に設けられたゲートブリッジトレンチ部42が、第1接続部に対応する。ゲート電極40の延伸部46とゲートブリッジトレンチ部42とを接続するコンタクト部48は、Y軸方向に平行なゲートブリッジトレンチ部42に設けられてよい。ゲートブリッジトレンチ部42のX軸方向に平行な部分を、エミッタ電極50‐1とエミッタブリッジ部52‐1を挟んで分離するゲート電極40の延伸部46との間に形成してよい。本例においても、各ゲートブリッジトレンチ部42のY軸方向の幅は、第1実施形態におけるゲートブリッジトレンチ部42のY軸方向の幅と同じであってよく、これより小さくてもよい。本例においても、ゲートブリッジトレンチ部42の幅を実効的に増加させることにより、ゲートブリッジトレンチ部42の抵抗値を低減することができる。
図12は、上面キラー領域96を示す上面図である。図12においては、理解を容易にするために、ゲート電極40およびエミッタ電極50を省略する。第1実施形態における半導体基板10は、上面キラー領域96を有してもよい。本例の上面キラー領域96は、半導体基板10の上面12側もしくは下面14側からヘリウムイオンを照射することにより、上面12から予め定められた深さ範囲に設けられた欠陥領域である。上面キラー領域96は、FWD領域92と、Y軸方向において互いに離間するFWD領域92の間とに、Y軸方向に沿って連続的に設けられてよい。さらに、上面キラー領域96はFWD領域92から、FWD領域92に隣接するIGBT領域90に侵入してよい。これにより、FWD領域92における正孔のライフタイムを調整して、逆回復時における損失を低減することができる。なお、本例においては、FWD領域92と同じX軸方向の幅を有する上面キラー領域96が、Y軸方向において隣接するFWD領域92間にも設けられる。
図13は、図2におけるD‐D断面に対応する図である。図2におけるD‐D断面である図5Aとの違いは、上面キラー領域96が設けられている点である。上面キラー領域96は、ベース領域24の下面よりも下方に形成されてよく、ウェル領域20の下面よりも下方に形成されてもよい。また、トレンチ部の底部よりも下方に形成されてよい。本例の上面キラー領域96は、ウェル領域20の下面よりも上であって、図示しないベース領域の下面よりも下のドリフト領域28の上面近傍に設けられる。なお、他の例において、上面キラー領域96は、ウェル領域20の下面と、ゲートブリッジトレンチ部42、ゲートトレンチ部60およびエミッタトレンチ部70の各底部との間に設けられてもよい。
図14(A)は、上面キラー領域96の第1変形例を示す上面図である。図14(B)は、第1実施形態におけるエミッタ電極50の外形を示す上面図である。なお、理解を容易にすることを目的として、図14(A)においては、ゲート電極40の外周部44および延伸部46等を省略する。また、上面キラー領域96を実線にて示す。
本例の半導体基板10も上面キラー領域96を有する。但し、本例においては、エミッタブリッジ部52が設けられない領域におけるX軸方向の上面キラー領域96の幅WEB_2は、エミッタブリッジ部52が設けられる領域におけるX軸方向の上面キラー領域96の幅WEB_1よりも大きい。これにより、上面キラー領域96の面積を低減することができるので、図12の例に比べて半導体基板10に導入される欠陥を少なくすることができる。図14(A)における各幅WEB_1の位置は、図14(B)におけるエミッタブリッジ部52‐1から52‐4の位置にそれぞれ対応する。
図15は、上面キラー領域96の第2変形例を示す上面図である。なお、理解を容易にすることを目的として、図15においても、ゲート電極40の外周部44および延伸部46等を省略する。また、上面キラー領域96にはドットを付して示す。なお、上面キラー領域96は、FWD領域92にも設けられる。本例においては、Y軸方向において隣接するFWD領域92間と、FWD領域92とに加えて、ゲートブリッジトレンチ部42およびゲート電極40の延伸部46の下方においても、上面キラー領域96が設けられる。つまり、本例の上面キラー領域96は、Y軸方向において隣接するIGBT領域90間およびFWD領域92間において、X軸方向に延伸する。
Y軸方向において隣接するIGBT領域90間およびFWD領域92間には、P+型のウェル領域20が設けられる。P+型のウェル領域20においては、正孔が蓄積しやすい。そこで、本例のように上面キラー領域96を配置することにより、P+型のウェル領域20に蓄積される正孔の量を低減することができる。
図16は、第2実施形態における領域Aの拡大図である。本例のゲート電極40は、外周部44を有するが、延伸部46を有しない。本例の半導体装置100は、半導体基板10の上面12の上方に設けられたポリシリコン配線層を有する。本例の半導体装置100は、ゲート電極40の延伸部46およびゲートブリッジトレンチ部42に代えて、ポリシリコン配線層の延伸部196を有する。ポリシリコン配線層の延伸部196は、第1接続部の一例である。ポリシリコン配線層の延伸部196は、エミッタブリッジ部52の下方にも設けられる。
本例の半導体装置100は、エミッタトレンチ部70のエミッタ導電部72とエミッタ電極50との間に島状の接続部192を有する。接続部192は、導電材料であってよい。本例の接続部192は、ポリシリコン配線層と同一層のポリシリコン層である。本例の接続部192は、エミッタトレンチ部70のY軸の正負方向の各端部に設けられてよい。各接続部192は、コンタクト部193を通じてエミッタ電極50に電気的に接続してよい。
本例において、ゲート電極40の外周部44は、ポリシリコン配線層の外周部194の上方に設けられる。本例の外周部44は、層間絶縁膜38における開口を通じて、外周部194に電気的に接続する。ゲート外周トレンチ部43およびコンタクト部49と同様に、ポリシリコン配線層の外周部194も、四角枠状となるよう一つながりに設けられてよい。図7(B)において説明したように、本例においても、エミッタ電極50の各領域が電気的に接続されていることに起因する有利な効果を得ることができる。
なお、本例においても、上面キラー領域96は、ポリシリコン配線層の延伸部196の下方に設けられる。その他の構成は、第1実施形態と同じであってよい。第2実施形態においても、図8に示したエミッタ電極50の変形例、および、図12から図15に示した上面キラー領域96を適用してもよい。
図17は、図16におけるE‐E断面を示す図である。図17は、ポリシリコン配線層の延伸部196を通るX‐Z平面に平行な断面である。本例のポリシリコン配線層は、酸化膜36に接して設けられる。ポリシリコン配線層は、ゲートトレンチ部60のゲート導電部62に接触してよい。本例においては、ポリシリコン配線層の延伸部196がゲート導電部62に接触する。また、層間絶縁膜38は、ポリシリコン配線層上に位置してよい。ゲート電極40およびエミッタ電極50は、層間絶縁膜38上に位置してよい。
図18は、図16におけるF‐F断面を示す図である。図18は、ポリシリコン配線層の延伸部196および外周部194を通るX‐Z平面に平行な断面である。本例のポリシリコン配線層の外周部194は、ゲート外周トレンチ部43のゲート外周導電部132に電気的に接する。また、ポリシリコン配線層の外周部194は、コンタクト部49においてゲート電極40と接する。
図19Aは、第3実施形態における領域Aの拡大図である。本例の半導体装置100は、活性領域110においてダミーエミッタ電極150を更に備える。ダミーエミッタ電極150は、第3の上面電極の一例である。ダミーエミッタ電極150は、図20において示すスクリーニング試験に用いられてよい。
本例の半導体基板10は、ダミーエミッタ電極150と電気的に接続するダミーブリッジトレンチ部152を有する。本例のダミーブリッジトレンチ部152は、トレンチ部と同様に、半導体基板10の上面12から予め定められた深さまで設けられる。また、ダミーブリッジトレンチ部152は、ゲートブリッジトレンチ部42部と同様に、エミッタブリッジ部52の下方に位置する。ダミーブリッジトレンチ部152は、コンタクト部154においてダミーエミッタ電極150と電気的に接続してよい。コンタクト部154は、層間絶縁膜38に設けられた開口における接続部であってよい。本例は、主として係る点において、第1実施形態と異なる。
活性領域110において、ダミーエミッタ電極150は、ゲート電極40およびエミッタ電極50から離間して設けられてよい。本例のダミーエミッタ電極150は、IGBT領域90およびFWD領域92におけるエミッタトレンチ部70と電気的に接続する。また、本例のダミーエミッタ電極150は、図20において示す様に、パッド領域120におけるセンスIGBT領域124のセンスエミッタトレンチ部170と電気的に接続する。
ダミーエミッタ電極150は、外周部155と、延伸部156とを有してよい。本例のダミーエミッタ電極150の外周部155は、X軸方向の端部に位置するIGBT領域90と、ゲート電極40の外周部44との間に位置する。また、本例のダミーエミッタ電極150の延伸部156は、Y軸方向に隣接するIGBT領域90の間およびFWD領域92の間に設けられる。ダミーエミッタ電極150の延伸部156は、ゲート電極40の延伸部46を囲む様に設けられてよい。本例において、ダミーエミッタ電極150の延伸部156は、X軸方向に延伸する長手部と、Y軸方向に延伸する短手部とを有する。
本例において、Y軸方向において2つのFWD領域92間に設けられたゲートブリッジトレンチ部42は、エミッタブリッジ部52の下方、かつ、ダミーエミッタ電極150の延伸部46の下方に位置する。このゲートブリッジトレンチ部42は、X軸方向に隣接するゲート電極40の2つの延伸部46‐2を電気的に接続する。さらに、本例において、IGBT領域のX軸方向の端部近傍において、ダミーエミッタ電極150の外周部155の下方に設けられる。このゲートブリッジトレンチ部42は、ゲート電極40の延伸部46‐2と外周部44−2とを電気的に接続する。本例において、外周部155の下方に位置するゲートブリッジトレンチ部42は、コンタクト部48を通じて、ゲート電極40の延伸部46と外周部44とに電気的に接続する。
なお、本例におけるゲート電極40の延伸部46は、ポリシリコン配線層であってもよい。また、本例においても、第2実施形態の様に、上面キラー領域96が、ポリシリコン配線層の延伸部196の下方に設けられてもよい。さらに、本例におけるゲート電極40の延伸部46は、ポリシリコン配線層とアルミニウム等の金属配線層との積層であってもよい。第3実施形態においても、図8に示したエミッタ電極50の変形例、図9から図11に示したゲートブリッジトレンチ部42の変形例、および、図12から図15に示した上面キラー領域96を適用してよい。
図19Bは、図19Aにおけるa‐a断面を示す図である。a‐a断面は、2つのコンタクト部154を通るX‐Y平面に平行な断面である。ダミーエミッタ電極150の延伸部156は、エミッタブリッジ部52‐1から離間してよい。a‐a断面に示すように、2つの延伸部156は、X軸方向においてエミッタブリッジ部52‐1を間に挟んで、互いに離間する。ただし、互いに離間した2つの延伸部156をつなぐように、ダミーブリッジトレンチ部152が設けられる。2つの延伸部156の各々は、ダミーブリッジトレンチ部152内部の導電部に接続する。これにより、互いに離間した2つの延伸部156は、ダミーブリッジトレンチ部152内部の導電部を介して電気的に接続することができる。なお、エミッタブリッジ部52‐1は、層間絶縁膜38および酸化膜36により、ダミーブリッジトレンチ部152内部の導電部から電気的に絶縁される。
図19Cは、図19Aにおけるb‐b断面を示す図である。b‐b断面は、2つのコンタクト部76および1つのコンタクト部154を通るY‐Z平面に平行な断面である。b‐b断面において、延伸部156の下方には、4つのトレンチ部が設けられる。4つのトレンチ部のうちY軸方向の両端に位置する2つのエミッタトレンチ部70は、図19AにおいてFWD領域92に位置するU字形状のトレンチ部である。Y軸方向において2つのエミッタトレンチ部70の間には、ダミーブリッジトレンチ部152およびゲートブリッジトレンチ部42が設けられる。ダミーブリッジトレンチ部152は、2つのエミッタトレンチ部70のうち相対的に+Y方向位置するエミッタトレンチ部70と、ゲートブリッジトレンチ部42との間に位置する。
ゲートブリッジトレンチ部42は、エミッタブリッジ部52‐1およびダミーエミッタ電極150を設けることに起因して分離されたゲート電極40の延伸部46‐2を、ゲート電極40に電気的に接続してよい。ゲートブリッジトレンチ部42の導電部は、層間絶縁膜38および酸化膜36により、ダミーエミッタ電極150の延伸部156から電気的に絶縁される。これに対して、エミッタトレンチ部70のエミッタ導電部72は、コンタクト部76においてダミーエミッタ電極150の延伸部156に電気的に接続する。また、ダミーブリッジトレンチ部152の導電部は、コンタクト部154においてダミーエミッタ電極150の延伸部156に電気的に接続する。
図20(A)は、スクリーニング試験前における半導体装置200の一部に対応する回路図である。図20(A)においては、IGBT領域90およびセンスIGBT領域124を破線により示す。IGBT領域90およびセンスIGBT領域124の各ゲートには、ゲート電極40を介して共通のゲート電位が供給されてよい。
IGBT領域90におけるエミッタトレンチ部70と、センスIGBT領域124におけるセンスエミッタトレンチ部170とを、キャパシタの記号により示す。エミッタトレンチ部70においては、エミッタ絶縁膜74をキャパシタの誘電体とみなしてよい。また、当該誘電体を挟む2つの電極のうち、一つの電極はエミッタ電極50であり、他の電極はエミッタ導電部72に接続されたダミーエミッタ電極150であると見なしてよい。センスエミッタトレンチ部170においては、誘電体であるセンスエミッタ絶縁膜174をセンスエミッタパッド126とダミーエミッタ電極150とが挟むと見なしてよい。なお、ダミーエミッタ電極150は、ダミーエミッタパッド127に接続している。
第3実施形態の特徴の1つは、エミッタトレンチ部70のエミッタ導電部72と、センスエミッタトレンチ部170のセンスエミッタ導電部172とを、共通のダミーエミッタ電極150に電気的に接続していることである。これにより、ダミーエミッタ電極150を介して共通の1つのダミーエミッタパッド127に電気的に接続することができる。
スクリーニング試験は、半導体装置100の不良検出試験であってよい。スクリーニング試験は、ゲート‐エミッタ間に通常使用時よりも高い電圧を印加することにより、ゲート‐エミッタ間の漏れ電流を測定する試験を含んでよい。また、スクリーニング試験は、ゲートトレンチ部に過大な高電圧を印加した後にゲート洩れ電流を測定する試験を含んでもよい。
ゲート‐エミッタ間の漏れ電流測定により、ゲート電極40と、エミッタ電極50、ベース領域24または半導体基板10との短絡による不良を検出することができる。このゲート洩れ電流測定により、絶縁膜不良(例えば、ゲート絶縁膜64が局所的に薄く形成されている、または、ゲート絶縁膜64の膜質が悪いこと)を検出することができる。
IGBT領域90とセンスIGBT領域124とにおける試験条件は異なってよい。例えば、印加する電圧値は同じとしたうえで、相対的に面積が大きいIGBT領域90における漏れ電流測定時間を相対的に面積が小さいセンスIGBT領域124における漏れ電流測定時間よりも長くする。
例えば、ダミーエミッタパッド127に所定の高電圧を印加して、エミッタトレンチ部70について、ダミーエミッタ電極150とエミッタ電極50との間の漏れ電流測定をする(測定A)。また、例えば、ダミーエミッタパッド127に同じ所定の高電圧を印加して、センスエミッタトレンチ部170について、ダミーエミッタ電極150とセンスエミッタパッド126との間の漏れ電流測定をする(測定B)。
この場合に、測定Aにおける漏れ電流測定時間を、測定Bにおける漏れ電流測定時間よりも長くする。測定AおよびBは、共通の一つのダミーエミッタパッド127を用いて別々に行うことができる。本例においては、スクリーニング試験の際に、IGBT領域90とセンスIGBT領域124とで共通の1つのダミーエミッタパッド127を使用する。これにより、別個のダミーエミッタパッド127をパッド領域120に配置しなくてよいので、パッドの数の増加を抑えることができる。
また、ゲートトレンチ部60とエミッタトレンチ部70とにおける試験条件が異なってもよい。具体的には、上面視における領域の面積に応じて、ゲートトレンチ部60とエミッタトレンチ部70とにおける試験の条件が異なってもよい。一例において、印加する電圧値は同じとしたうえで、ゲートトレンチ部60とエミッタトレンチ部70との面積比と同じ時間比に基づいて、ゲートトレンチ部60およびエミッタトレンチ部70の漏れ電流を測定してもよい。例えば、ゲートトレンチ部60とエミッタトレンチ部70との面積比が2:1である場合には、ゲートトレンチ部60とエミッタトレンチ部70との測定時間比を2:1とする。
また、ゲート電極40、コレクタ電極30およびエミッタ電極50を用いて、ゲートトレンチ部60についてスクリーニング試験を行うことができる。同様に、ゲート電極40、コレクタ電極30およびセンスエミッタパッド126を用いて、センスゲートトレンチ部160についてスクリーニング試験を行うことができる。このように、ゲートトレンチ部60とセンスゲートトレンチ部160とを別々にスクリーニング試験をすることもできる。
図20(B)は、スクリーニング試験後にエミッタ電極50とダミーエミッタ電極150とを短絡させた半導体装置100の一部に対応する回路図である。スクリーニング試験後においては、パッド領域120において、エミッタ電極50とダミーエミッタ電極150とが電気経路Aにより短絡されてよい。一例として、エミッタ電極50とダミーエミッタ電極150とが近接する位置で、両者をめっきにより接続してよい。これに代えて、スクリーニング試験後において、エミッタ電極50とダミーエミッタパッド127とが電気経路Bにより短絡されてもよい。短絡の手段は、めっきまたはワイヤ接続であってよい。
図21は、他の例における半導体装置300の上面を示す概略図である。本例の半導体装置300におけるエミッタ電極50は、エミッタブリッジ部52を有さない。本例のエミッタ電極50は、活性領域110を概略覆う矩形形状を有する。本例は、係る点において上述半導体装置100と異なる。
図22は、第4実施形態における領域Bの拡大図である。本例の半導体装置300は、ゲート電極40およびエミッタ電極50の下方に設けられるポリシリコン配線層240を有する。本例のポリシリコン配線層240は、外周部244および延伸部246を有する。外周部244および延伸部246は、ゲート電極40の外周部44および延伸部46にそれぞれ対応する機能を有してよい。本例のポリシリコン配線層240は、ゲート電極40の外周部44とコンタクト部49を通じて電気的に接続する。つまり、本例の外周部244‐2は、ゲート電極40の外周部44を通じて、ゲート導電部62にゲート電位を供給する。
延伸部246は、X軸方向と平行に延伸してよい。本例の延伸部246‐2は、2つのIGBT領域90間においてY軸方向に延びるゲートトレンチ部60と交差する。本例の延伸部246‐2は、ゲートトレンチ部60との交差部分において、コンタクト部66を通じてゲート導電部62と直接接続する。延伸部246は、各コンタクト部66を通じて、半導体装置300における各IGBT領域90のゲート導電部62と電気的に接続してよい。延伸部246は、エミッタ電極50の下に位置する第1の接続部の一例である。
本例において、IGBT領域90のエミッタトレンチ部70は、延伸部246と交差しない。本例のエミッタトレンチ部70は、Y軸方向において延伸部246から離間する。本例の半導体装置300は、エミッタトレンチ部70が終端する領域であって、延伸部246‐2近傍におけるエミッタトレンチ部70の領域上にコンタクト部76を有する。本例のコンタクト部76は、P+型のウェル領域20に位置するエミッタトレンチ部70上であって、エミッタトレンチ部70の端部領域上に設けられる。
コンタクト部76において、エミッタ電極50とエミッタトレンチ部70のエミッタ導電部72とは電気的に接続してよい。本例において、エミッタ電極50とエミッタ導電部72とは、金属から成るプラグを介して接続する。本例において、エミッタ電極50とエミッタ導電部72とは、ポリシリコン層から成る接続層を介さずに電気的に接続する。係る点は、本例における特徴の1つである。
本例において、FWD領域92のエミッタトレンチ部70もまた、Z軸方向において延伸部246と交差しない。FWD領域92においては、エミッタトレンチ部70のU字形状の短手部をZ軸方向において少なくとも覆う様に、ポリシリコンからなる接続層242が設けられてよい。接続層242は、ポリシリコン配線層240とは離間しているが、同一層であってよい。例えば、接続層242とポリシリコン配線層240とは、PECVD(Plasma−Enhanced Chemical Vapor Deposition)により形成された1つのポリシリコン層をパターニングすることにより形成してよい。本例において、FWD領域92のエミッタ導電部72は接続層242と直接接続し、接続層242はコンタクト部376を介してエミッタ電極50と電気的に接続する。
本例においては、接続層242上の層間絶縁膜38に貫通開口部を形成し、この貫通開口部内にコンタクト部376を設ける。なお、一般に、トレンチ部の間隔を狭くすることによりIGBT領域90およびFWD領域92の構造を微細化しようとすると、ポリシリコン層である接続層の段差に起因して、貫通開口部であるコンタクトホールを層間絶縁膜38に形成することが難しくなる。例えば、図22において破線で示すように、IGBT領域90の一部にポリシリコンからなる島状の仮想接続層241を設ける場合、エミッタ導電部72に接触する仮想接続層241の上部が+Z方向に突出する凸形状となり得る。また、これに応じて、コンタクト部76の大きさが、−Z方向に進むにつれて小さくなる逆凸形状となり得る。
例えば、ポリシリコンの仮想接続層241は、加工時のフォトレジストのサイドエッチング等に起因して、+Z方向に突出する凸形状となる傾向がある。また、ポリシリコンの仮想接続層241は、微小面積であるがゆえに、層として残存しにくい傾向もある。これらの問題は、トレンチ部の間隔を狭くする微細化が進むにつれて特に顕著となる。仮に仮想接続層241が残存したとしても、コンタクト部76の底部が仮想接続層241に達しない場合は、IGBT領域90のエミッタ導電部72とエミッタ電極50とが電気的に接続しないこととなる。なお、本例の半導体装置300は、実際には仮想接続層241を有さず、仮想接続層241は問題を説明するための便宜的なポリシリコン層に過ぎない点に注意されたい。
また、仮想接続層241のような微小な島状のポリシリコン層が設けられた領域においては、ポリシリコン層の厚みに応じた段差が設けられることとなる。当該段差領域の近傍では、フォトリソグラフィー工程においてフォトレジストの厚さが不均一となるので、エッチングの加工精度が担保できないという問題も生じる。
そこで、本例のIGBT領域90においては、エミッタ導電部72とエミッタ電極50とを、ポリシリコン層を介さずに直接接続する。本例においては、ポリシリコン層を介さずにエミッタ導電部72とエミッタ電極50とが電気的に接続することを、エミッタ導電部72とエミッタ電極50とを直接接続すると表現する。それゆえ、エミッタ導電部72とエミッタ電極50とを直接接続する場合に、エミッタ導電部72とエミッタ電極50との間に、タングステン(W)で形成されたプラグを設けてもよい。これにより、仮想接続層241を用いた場合における、エミッタ導電部72とエミッタ電極50との接続不良、および、エッチングにおける加工精度の問題を解消することができる。
本例のIGBT領域90において、エミッタトレンチ部70上に設けられたコンタクト部76は、第2コンタクト部の一例である。コンタクト部76のX軸方向における幅W2は、FWD領域92の接続層242上に設けられたコンタクト部376のX軸方向における幅W3よりも大きくてよい。本例のIGBT領域90においては、エミッタトレンチ部70と接続するポリシリコンの仮想接続層241を設けないので、比較的大きい幅W2のコンタクト部76によりエミッタ導電部72とエミッタ電極50とを確実に直接接続することができる。
本例のIGBT領域90のメサ部80上に設けられたコンタクト部82は、第1コンタクト部の一例である。コンタクト部82において、メサ部80とエミッタ電極50とは電気的に接続してよい。本例のIGBT領域90においては、ポリシリコンの仮想接続層241を設けないので、コンタクト部76におけるX軸方向の幅W2は、コンタクト部82におけるX軸方向の幅W1よりも大きくすることができる。
メサ部80のX軸方向の幅は、0.3μm以上0.5μm以下であってよい。一例において、メサ部80のX軸方向の幅は、0.4μmである。また、ゲートトレンチ部60およびエミッタトレンチ部70のX軸方向の幅は、0.4μm以上1.2μm以下であってよく、0.4μm以上0.8μm以下であってもよい。一例において、ゲートトレンチ部60およびエミッタトレンチ部70のX軸方向の幅は、0.7μmである。
コンタクト部82とコンタクト部76とはY軸方向の異なる位置に設けられてよい。つまり、層間絶縁膜38における微細な開口パターンに対応するコンタクト部82とコンタクト部76とは、X軸方向において隣り合わなくてよい。本例において、コンタクト部76は、P+型のウェル領域20の上方であって、延伸部246‐2近傍に位置するエミッタトレンチ部70の端部領域上に位置する。これに対して、コンタクト部82は、N+型のエミッタ領域22およびP+型のコンタクト領域26上であって、コンタクト部76に比べて延伸部246‐2からさらに離間する。
コンタクト部76およびコンタクト部82がX軸方向において隣り合う場合は、フォトリソグラフィー工程においてフォトレジストの厚さに異常が生じ得るので、層間絶縁膜38の開口パターンが設計通りに形成できない場合がある。これに対して、本例においては、コンタクト部82とコンタクト部76とがX軸方向において隣り合わないので、隣り合う場合に比べて、層間絶縁膜38の開口パターンをより正確に形成することができる。また、コンタクト部82とコンタクト部76とがX軸方向において隣り合う場合に必要とされる、両者の間隔(マージン)を設ける必要がなくなる点も有利である。
なお、温度センスダイオード領域94は、PN接合ダイオードを含むポリシリコン層を有してよい。PN接合ダイオードを含むポリシリコン層は、ポリシリコン配線層240と同一層であってよい。本例においては、PN接合ダイオードを含むポリシリコン層の周囲に位置するエミッタトレンチ部70も、ポリシリコン層を介さずにエミッタ導電部72とエミッタ電極50とが電気的に接続する。それゆえ、PN接合ダイオードを含むポリシリコン層の周囲に位置するエミッタトレンチ部70においても、コンタクト部および開口を従来よりも大きくすることができる。
他の例においては、コンタクト部82とコンタクト部76とはX軸方向において部分的に重なってもよい。また、コンタクト部82とコンタクト部76とはX軸方向において直線上に並んでもよい。ただし、半導体装置300の微細化に伴いメサ部80のX軸方向の幅は縮小するので、本例のように、コンタクト部82とコンタクト部76とはX軸方向において隣り合わない方が、各開口部の加工精度が担保する上で有利である。なお、本例の構造を、第1から第3実施形態におけるエミッタブリッジ部52を有するエミッタ電極50の構成と組み合わせてもよい。また、本例のポリシリコン配線層240に代えて、第1および第3実施形態のゲート電極40とゲート外周トレンチ部43とを適用してもよい。
図23は、図22におけるG‐G断面を示す図である。G‐G断面は、X‐Z面に平行な断面である。G‐G断面は、Y軸方向において隣接する2つのIGBT領域90の間において、2つのゲートトレンチ部60とその間に位置するエミッタトレンチ部70のコンタクト部76とを通る。コンタクト部76は、層間絶縁膜38に形成された貫通開口部である第2開口部276に設けられてよい。本例において、エミッタ電極50とエミッタトレンチ部70とは、第2開口部276においてポリシリコン配線層を介さずに、プラグ270を介して電気的に接続する。本例においてコンタクト部76は、第2開口部276に設けられたプラグ270に対応する。
本例において、コンタクト部のX軸方向の幅は、開口部のX軸方向の幅に一致する。それゆえ、コンタクト部76と第1開口部との形状はX‐Y平面において互いに対応してよい。本例において、第2開口部276におけるX軸方向の幅はW2である。本例において、幅W2は、層間絶縁膜38の上部におけるX軸方向の幅とする。ただし、開口部のX軸方向の幅は、複数の開口部における所定のZ軸方向の位置において規定すれば、必ずしも層間絶縁膜38の上部におけるX軸方向の幅でなくてもよい。第2開口部276と後述する第1開口部282とにおいて、層間絶縁膜38の底部と上部との間における予め定められたZ軸方向の位置におけるX軸方向の幅を、それぞれ幅W2および幅W1としてもよい。第2開口部276におけるX軸方向の幅W2は、後述する第1開口部282におけるX軸方向の幅W1よりも大きい。
図24は、図22におけるH‐H断面を示す図である。H‐H断面は、X‐Z面に平行な断面である。H‐H断面は、IGBT領域90における、2つのゲートトレンチ部60と、その間に位置するエミッタトレンチ部70と、メサ部80上のコンタクト部82とを通る。コンタクト部82は、層間絶縁膜38に形成された貫通開口部である第1開口部282に設けられてよい。本例において、メサ部80とエミッタ電極50とは、第1開口部282においてプラグ270を介して電気的に接続する。本例においてコンタクト部82は、第1開口部282に設けられたプラグ270に対応する。本例においても、コンタクト部82と第2開口部との形状はX‐Y平面において互いに対応する。本例において、第1開口部282におけるX軸方向の幅はW1である。
図25は、図22におけるI‐I断面を示す図である。I‐I断面は、X‐Z面に平行な断面である。I‐I断面は、Y軸方向において隣接する2つのIGBT領域90の間において、ゲートトレンチ部60と延伸部246‐2とのコンタクト部66を通る。本例のコンタクト部66は、延伸部246‐2とゲート導電部62とが接触する部分である。本例においてコンタクト部66のX軸方向の幅はW4である。幅W4は、幅W1と同じであってよく、幅W1より大きくてもよい。
なお、延伸部246‐2とゲート導電部62とは、ともにPECVDを経て形成されてよい。それゆえ、延伸部246‐2とゲート導電部62とは連続したポリシリコン層であってよい。本例においては、便宜的に、ゲートトレンチ部60における上部をコンタクト部66とする。
図26は、更なる他の例における半導体装置400の上面を示す概略図である。本例の半導体装置400におけるエミッタ電極50は、エミッタブリッジ部52を有さない。本例は、係る点において上述半導体装置100と異なる。
図27は、第5実施形態における領域Cの拡大図である。領域Cは、活性領域110の+Y方向端部とエッジ終端領域130の一部とを含む領域である。エッジ終端領域130は、Y軸方向において互いに離間する複数のガードリング230を有する。本例のゲートトレンチ部60は、X軸方向に延伸する第1の延伸領域261と、Y軸方向に延伸する第2の延伸領域262とを含む。
本例の第1の延伸領域261は、延伸部46‐1の下方に位置するゲート外周トレンチ部43に対応する。また、本例の第2の延伸領域262は、第1実施形態におけるゲートトレンチ部60に対応する。ただし、本例においては、第1の延伸領域261および第2の延伸領域262が一続きであるので、ゲートトレンチ部60は第1の延伸領域261および第2の延伸領域262を含むものとする。なお、第1の延伸領域261と第2の延伸領域262との交差部分において、ゲートトレンチ63の深さは、非交差部分に比べて深い。ただし、交差部分の底部は、P+型のウェル領域20よりも浅い位置に設けられる。
第1の延伸領域261は、少なくとも3つの第2の延伸領域262をX軸方向において接続してよい。第1の延伸領域261は、1つのIGBT領域90における10個の第2の延伸領域262をX軸方向において接続してもよい。本例の第1の延伸領域261は、1つのIGBT領域90における全ての第2の延伸領域262をX軸方向において接続する。ただし、IGBT領域90において、エミッタトレンチ部70は、第1の延伸領域261よりも手前のウェル領域20において終端する。
本例において、第1の延伸領域261および第2の延伸領域262は、コンタクト部269を介してゲート電極40の延伸部46‐1と接続する。本例のコンタクト部269は、コンタクト延伸部267とコンタクト突出部268とを有する櫛形状を有する。本例において、コンタクト延伸部267は、第1の延伸領域261に対して平行に延伸する部分である。また、本例のコンタクト突出部268は、コンタクト延伸部267からY軸方向に延伸するが、ゲート電極40の下方において終端し、エミッタ電極50の下方までは延伸しない。
本例のエミッタトレンチ部70は、X軸方向に延伸する第3の延伸領域273と、Y軸方向に延伸する第4の延伸領域274とを含む。第3の延伸領域273は、ウェル領域20においてX軸方向に延伸してよい。本例において、第3の延伸領域273の+Y方向の端部は、IGBT領域90におけるエミッタトレンチ部70の+Y方向の端部とY軸方向の位置が一致する。なお、本例においては、FWD領域92におけるエミッタトレンチ部70は第3の延伸領域273および第4の延伸領域274を含むものとする。
第3の延伸領域273は、少なくとも3つの第4の延伸領域274をX軸方向において接続してよい。第3の延伸領域273は、1つのFWD領域92における10個の第4の延伸領域274をX軸方向において接続してもよい。本例の第3の延伸領域273は、1つのFWD領域92における全ての第4の延伸領域274をX軸方向において接続する。本例において、第3の延伸領域273は、コンタクト部279を介してエミッタ電極50と接続する。本例のコンタクト部279は、第3の延伸領域273に対して平行に延伸する。
図28の(A)は、本例における第1の延伸領域261と第2の延伸領域262との交差部分の拡大図である。図28の(B)は、比較例におけるゲートトレンチ部60およびエミッタトレンチ部70のY軸方向の端部の拡大図である。
図28の(A)に示す様に、第1の延伸領域261と第2の延伸領域262との接続部分は、曲率を有する角部264である。ゲート絶縁膜64の厚さは、第1の延伸領域261および第2の延伸領域262において一定でなくてよい。本例においては、Y軸方向においてエミッタトレンチ部70と対向する第1の延伸領域261であって、X軸方向において2つの角部264の間に位置するゲート絶縁膜64‐1の厚さは、他の部分におけるいずれのゲート絶縁膜64よりも大きい。
また、角部264におけるゲート絶縁膜64‐2の厚さは、ゲート絶縁膜64‐1の厚さに次ぐ、二番目に大きな厚さを有する。第2の延伸領域262におけるゲート絶縁膜64‐3の厚さは、ゲート絶縁膜64‐2の厚さに次ぐ、三番目に大きな厚さを有する。これに対して、第1の延伸領域261の+Y軸方向の端部に位置するゲート絶縁膜64‐4の厚さは最も小さい。
図28の(B)の比較例に示す様に、ゲートトレンチ部60が逆方向のU字形状を有する。当該比較例においては、Y軸方向においてエミッタトレンチ部70と対向するU字形状の短手部であって、X軸方向において2つの曲率部265の間に位置するゲート絶縁膜64‐1の厚さが、最も大きい。また、曲率部265におけるゲート絶縁膜64‐2の厚さは、ゲート絶縁膜64‐1の厚さに次ぐ、二番目に大きな厚さを有する。X軸方向においてエミッタトレンチ部70と対向するU字形状の長手部におけるゲート絶縁膜64‐3の厚さは、ゲート絶縁膜64‐2の厚さに次ぐ、三番目に大きな厚さを有する。
U字形状の短手部の+Y軸方向の端部と、曲率部265とは反対側の曲率部266とに位置する、ゲート絶縁膜64‐5の厚さは最も小さい。ゲート絶縁膜64‐5は、曲率部265および曲率部266の形状に起因して、特に薄くなりやすい。ゲート絶縁膜64が薄くなると、ゲート・オン時にゲート絶縁膜64が破壊されるという問題が生じ得る。
これに対して、(A)に示す本例は、(B)に示す比較例の曲率部266を有しない。この形状の相違に起因して、(A)において最も薄いゲート絶縁膜64‐4は、(B)において最も薄いゲート絶縁膜64‐5よりも厚い。それゆえ、(A)の本例においては、(B)の比較例に比べて、ゲート・オン時にゲート絶縁膜64が破壊される可能性を低減することができる。例えば、第1の延伸領域261が少なくとも3つの第2の延伸領域262をX軸方向において接続することにより、接続しない場合と比較して、ゲート・オン時にゲート絶縁膜64が破壊される可能性を低減することができる。
図29は、図27におけるJ‐J断面を示す図である。J‐J断面は、Y‐Z面に平行な断面である。J‐J断面は、第1の延伸領域261を通るが、第2の延伸領域262は通らない。本例において、第1の延伸領域261のゲート導電部62とゲート電極40とは、プラグ270を介して電気的に接続する。本例においてコンタクト延伸部267は、プラグ270に対応する。
図30は、図27におけるK‐K断面を示す図である。K‐K断面は、Y‐Z面に平行な断面である。K‐K断面は、第1の延伸領域261および第2の延伸領域262を通る。本例において、ゲート導電部62とゲート電極40とは、第1の延伸領域261および第2の延伸領域262に設けられたプラグ270を介して電気的に接続する。本例においてコンタクト延伸部267とコンタクト突出部268とは、第1の延伸領域261に設けられたプラグ270の一部と、第2の延伸領域262に設けられたプラグ270の他の一部とにそれぞれ対応する。なお、図30における第1の延伸領域261は、第1の延伸領域261と第2の延伸領域262との交差部分であるので、第1の延伸領域261の底部は第2の延伸領域262の底部よりも深い。
図31は、図27におけるL‐L断面を示す図である。L‐L断面は、Y‐Z面に平行な断面である。L‐L断面は、IGBT領域90のコンタクト部82、第1の延伸領域261およびエッジ終端領域130を通る。本例のエッジ終端領域130は、複数のガードリング230と、比較的厚い二酸化シリコン層292と、ポリシリコン層294と、層間絶縁膜296と、電極298とを有する。
ガードリング230は、半導体基板10の上面12から予め定められた深さまで設けられてよい。本例のガードリング230は、P+型のウェル領域20と同じ深さ位置まで設けられる。本例のガードリング230は、P+型である。なお、本例において、P型は第2導電型の例であり、N型は第1導電型の例である。但し、他の例においては、P型が第1導電型であってよく、N型が第2導電型であってもよい。本例において、NまたはPは、それぞれ電子または正孔が多数キャリアであることを意味する。NまたはPの右に記載した+または−について、+はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が高く、−はそれが記載されていないものよりもキャリア濃度が低いことを意味する。
二酸化シリコン層292は、各ガードリング230に上に設けられてよい。二酸化シリコン層292は、上面12に接して設けられる酸化膜36を含んでよい。二酸化シリコン層292は、シリコンからなる半導体基板10を熱酸化することにより形成してよい。二酸化シリコン層292は、Z軸方向において1μm以上の厚さを有してよい。本例の二酸化シリコン層292は、Z軸方向において1.1μmの厚さを有する。
ポリシリコン層294は、二酸化シリコン層292に設けられた凹部293に接して設けられてよい。ただし、ポリシリコン層294は、L‐L断面においてはガードリング230に接続しない。ポリシリコン層294は、ポリシリコンからなるゲート導電部62を形成する際に形成されてよい。層間絶縁膜296は、二酸化シリコン層292およびポリシリコン層294上に設けられてよい。層間絶縁膜296は、BPSG(Boro‐Phospho Silicate Glass)、PSG(Phosphorus Silicate Glass)およびBSG (Borosilicate Glass)のいずれかから成る膜であってよく、これらの任意の2つを重ねた膜であってもよい。
電極298は、層間絶縁膜296を間に挟んで、ポリシリコン層294の上方に設けられる。電極298は、ゲート電極40およびエミッタ電極50と同じ合金で形成されてよい。電極298は、層間絶縁膜296の開口を通じてポリシリコン層294に接続してもよい。
本例においては、ゲート電極40の+Y方向端部を活性領域110とエッジ終端領域130との境界とする。本例においては、エッジ終端領域130における比較的厚い二酸化シリコン層292からコンタクト部82を十分に(例えば、100μm以上)離間する。これにより、二酸化シリコン層292の段差に起因して生じるフォトレジストの厚さ異常が、コンタクト部82に影響することを抑制することができる。
本例において、二酸化シリコン層292においてIGBT領域90のエミッタ領域22に最も近い−Y方向の端部37と、エッジ終端領域130に最も近いエミッタ領域22の+Y方向の端部23との間の距離LYは、100μm以上である。なお、変形例として、第1の延伸領域261上にポリシリコン配線層を設ける場合には、ポリシリコン配線層においてIGBT領域90に最も近い−Y方向の端部と、エッジ終端領域130に最も近いエミッタ領域22の+Y方向の端部23との間の距離は、50μm以上としてよい。
図32は、第6実施形態における領域Dの拡大図である。本例の第1の延伸領域261は、活性領域110におけるエッジ終端領域130側の端部において、Y軸方向に延伸するゲート外周トレンチ部43に接続する。活性領域110の角部において、X軸方向に延伸する第1の延伸領域261と、Y軸方向に延伸するゲート外周トレンチ部43とは、上面視において曲率を有するゲート外周トレンチ部43により接続されてよい。また、コンタクト部269およびコンタクト部49も曲率を有するコンタクト部分により接続されてよい。
なお、本明細書においてはRC−IGBTを主として記載したが、本願の技術的思想をパワーMOSFET(Metal Oxide Semiconductor Field Effect Transistor)に適用してもよい。この場合、第2の上面電極としてのエミッタ電極50は、ソース電極としてよい。さらに、コレクタ電極30およびP+型のコレクタ領域32をそれぞれ、ドレイン電極およびN+型領域としてよい。
図33は、第6実施形態における領域Cの拡大図である。第6実施形態においては、ゲートトレンチ部60およびエミッタトレンチ部70の形状が、図27に示した第5実施形態と異なる。他の構造は、第5実施形態と同様である。
本例では、ゲートトレンチ部60の第1の延伸領域261と、第2の延伸領域262とが接続される部分を接続部分288とする。同様に、エミッタトレンチ部70の第3の延伸領域273と、第4の延伸領域274とが接続される部分も、接続部分288とする。本例では、ゲートトレンチ部60における接続部分288を説明するが、エミッタトレンチ部70における接続部分288も同様の構造を有する。
本例の第1の延伸領域261は、接続部分288の上面視において窪み部286を有する。窪み部286は、第2の延伸領域262とY軸方向において向かい合う位置に設けられている。窪み部286は、第1の延伸領域261のY軸方向の端部のうち、第2の延伸領域262とは逆側の端部が、第2の延伸領域262の方向に窪んでいる部分を指す。本例の窪み部286は、第2の延伸領域262に近づくほど、X軸方向の幅が徐々に減少するテーパー形状を有している。第5の実施形態においては、第1の延伸領域261と第2の延伸領域262は、上面視において垂直に交わっていたが、第6の実施形態においては、第1の延伸領域261と第2の延伸領域262は、上面視において垂直よりも小さい角度で交わっている。
窪み部286を設けることで、接続部分288におけるゲートトレンチ部60の面積を減少させることができる。第1の延伸領域261および第2の延伸領域262が交差する接続部分288においては、図28の(A)に示した角部264等により、トレンチ面積が増加しやすい。トレンチ面積が増加すると、接続部分288のトレンチ深さが、他の部分に比べて深くなってしまう場合がある。また、トレンチ内に埋め込むゲート導電部62の深さ位置も変動してしまう場合がある。本例では窪み部286を設けることで、接続部分288におけるトレンチ面積の増大を抑制できる。
図34は、接続部分288の拡大図である。本例の第1の延伸領域261は、直線部分283と、曲線部分284とを有する。直線部分283は、X軸方向に沿った直線形状を有する。曲線部分284は、角部264とほぼ平行な曲線形状を有してよい。曲線部分284の曲率は、角部264の曲率と同一であってよい。曲線部分284の曲率は、角部264の曲率の半分以上、2倍以下であってもよい。曲線部分284は、直線部分283と、第2の延伸領域262とを接続する。
本例では曲線部分284と、第2の延伸領域262とが交わる角度をθとする。角度θは、90度より小さい。角度θは、70度より小さくてよく、50度より小さくてもよい。角度θは、曲線部分284の幅方向の中心を通る曲線を近似した直線287と、第2の延伸領域262の延伸方向を近似した直線289との成す角度であってよい。本例の直線289は、Y軸と平行な直線である。
窪み部286のY軸方向の長さL1は、第1の延伸領域261の直線部分283のY軸方向の幅L2より小さくてよい。長さL1は、幅L2と同一であってよく、幅L2より大きくてもよい。
以上、本発明を実施の形態を用いて説明したが、本発明の技術的範囲は上記実施の形態に記載の範囲には限定されない。上記実施の形態に、多様な変更又は改良を加えることが可能であることが当業者に明らかである。その様な変更又は改良を加えた形態も本発明の技術的範囲に含まれ得ることが、特許請求の範囲の記載から明らかである。
特許請求の範囲、明細書、および図面中において示した装置、システム、プログラム、および方法における動作、手順、ステップ、および段階等の各処理の実行順序は、特段「より前に」、「先立って」等と明示しておらず、また、前の処理の出力を後の処理で用いるのでない限り、任意の順序で実現しうることに留意すべきである。特許請求の範囲、明細書、および図面中の動作フローに関して、便宜上「まず、」、「次に、」等を用いて説明したとしても、この順序で実施することが必須であることを意味するものではない。