JP2019026603A - 忌避剤組成物 - Google Patents

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麻依子 松木
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真一郎 椛島
耕平 松本
Kohei Matsumoto
耕平 松本
達也 亀澤
Tatsuya Kamezawa
達也 亀澤
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Abstract

【課題】低刺激性であり、安定性、使用感、忌避有効成分の滞留性に優れたエタノールフリーの忌避剤組成物の提供。【解決手段】忌避有効成分(a)と、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤(b)と、高級アルコール(c)と、多価アルコール(d)と、水とを含み、エタノールを含まない忌避剤組成物。【選択図】なし

Description

本発明は、忌避剤組成物に関する。
従来より、蚊等の害虫に対する忌避剤を肌に適用することで、害虫を忌避することが行われている。忌避剤の有効成分(忌避有効成分)としては、ディートが汎用されている。
しかし、上記のような忌避剤は、持続性が低い問題がある。そこで持続性に優れた忌避剤についての検討が行われている。例えば特許文献1では、ポリグリセリンの脂肪酸エステルを含む乳化剤組成物及び害虫忌避成分を含有する乳化状害虫忌避剤が提案されている。特許文献2では、特定のグルタミン酸系の界面活性剤と忌避成分を含有する忌避剤が提案されている。
一方、スプレー剤等の液状の形態で肌に適用される忌避剤には、忌避有効成分の溶解性または分散性を高め、製剤の安定性を高めるために、エタノールや多価アルコールが配合されることが多い。例えばイカリジンやディートは水に難溶であるがエタノールに可溶であるため、エタノールを配合することで製剤安定性が向上する。最近、イカリジンを忌避有効成分とする忌避剤が医薬部外品として認可されているが、この忌避剤はエタノール製剤である。
特開平11−1404号公報 特開2013−144692号公報
しかし、エタノールを含む忌避剤は、肌に適用したときに忌避有効成分が肌に滞留しにくい問題がある。また、エタノールを含むことで、使用者によっては刺激を感じることがある。
多価アルコールを含む忌避剤は、安定化効果を得るために多価アルコールを多量に配合することが必要で、肌に適用したときにべたつきやぬるつきがあり、使用感が悪い。また、エタノールを含む場合と同様、使用者が刺激を感じることがある。
本発明は、低刺激性であり、安定性、使用感、忌避有効成分の滞留性に優れたエタノールフリーの忌避剤組成物を提供することを目的とする。
本発明は、以下の態様を有する。
<1>忌避有効成分(a)と、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤(b)と、炭素数8〜30の高級アルコール(c)と、多価アルコール(d)と、水とを含み、エタノールを含まない忌避剤組成物。
<2>前記忌避有効成分(a)が、イカリジンおよびディートからなる群から選ばれる少なくとも1種である<1>の忌避剤組成物。
<3>前記ノニオン界面活性剤(b)のHLBが9〜17である<1>又は<2>の忌避剤組成物。
<4>前記高級アルコール(c)が分岐構造または二重結合を有する<1>〜<3>のいずれかの忌避剤組成物。
<5>前記多価アルコール(d)が、炭素数が3〜6でヒドロキシ基の数が2〜6である多価アルコールである<1>〜<4>のいずれかの忌避剤組成物。
<6>ショ糖脂肪酸エステル(e)をさらに含む<1>〜<5>のいずれかの忌避剤組成物。
<7>前記忌避有効成分(a)の含有量が、忌避剤組成物の全質量に対して1〜25質量%である<1>〜<6>のいずれかの忌避剤組成物。
<8>前記ノニオン界面活性剤(b)の含有量が、忌避剤組成物の全質量に対して0.1〜15質量%である<1>〜<7>のいずれかの忌避剤組成物。
<9>前記高級アルコール(c)の含有量が、忌避剤組成物の全質量に対して0.5〜5質量%である<1>〜<8>のいずれかの忌避剤組成物。
<10>前記多価アルコール(d)の含有量が、忌避剤組成物の全質量に対して1〜35質量%である<1>〜<9>のいずれかの忌避剤組成物。
本発明によれば、低刺激性であり、安定性、使用感、忌避有効成分の滞留性に優れたエタノールフリーの忌避剤組成物を提供できる。
本発明の忌避剤組成物は、忌避有効成分(a)と、ノニオン界面活性剤(b)と、高級アルコール(c)と、多価アルコール(d)と、水とを含み、エタノールを含まない。
本発明の忌避剤組成物は、ショ糖脂肪酸エステル(e)をさらに含むことができる。
本発明の忌避剤組成物は、必要に応じて、本発明の効果を損なわない範囲で、前記忌避有効成分(a)、前記ノニオン界面活性剤(b)、前記高級アルコール(c)、前記多価アルコール(d)および前記ショ糖脂肪酸エステル(e)以外の他の成分をさらに含むことができる。
<忌避有効成分(a)>
忌避有効成分(a)は、害虫の忌避効果を有する成分である。
忌避有効成分(a)としては、特に限定されず、例えばイカリジン、ディート(ジエチルトルアミド)、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル(IR3535)、p−メンタン−3,8−ジオール等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
忌避有効成分(a)としては、本発明の有用性の点で、水に難溶でエタノールに可溶である忌避有効成分が好ましく、このような忌避有効成分としては、イカリジン、ディート(ジエチルトルアミド)、3−(N−n−ブチル−N−アセチル)アミノプロピオン酸エチルエステル(IR3535)、p−メンタン−3,8−ジオールが挙げられる。これらの中でも、肌へ塗布した際のスキンフィール性やにおいの点で、イカリジンが好ましい。
<ノニオン界面活性剤(b)>
ノニオン界面活性剤(b)は、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選ばれる少なくとも1種である。
ノニオン界面活性剤(b)は、忌避有効成分(a)を均一分散させて忌避剤組成物の安定性の向上に寄与する。
以下、「ポリオキシエチレン」を「POE」とも記載する。
POE硬化ヒマシ油におけるオキシエチレン基の平均繰り返し数(エチレンオキサイドの平均付加モル数)は、20〜100が好ましく、30〜60がより好ましい。
脂肪酸POE硬化ヒマシ油におけるオキシエチレン基の平均繰り返し数は、20〜100が好ましく、30〜60がより好ましい。
脂肪酸POE硬化ヒマシ油における脂肪酸残基の炭素数は、12〜22が好ましく、12〜18がより好ましい。脂肪酸残基は、脂肪酸のカルボキシ基からOHを除いた基(アシル基)を示す。
オキシエチレン基の平均繰り返し数や脂肪酸残基の炭素数が上記範囲内であれば、HLBが後述の好ましい範囲内となりやすい。
ノニオン界面活性剤(b)の具体例としては、POE硬化ヒマシ油(40E.O.)、POE硬化ヒマシ油(50E.O.)、POE硬化ヒマシ油(60E.O.)、POE硬化ヒマシ油(80E.O.)、ラウリン酸POE硬化ヒマシ油(40E.O.)、ラウリン酸POE硬化ヒマシ油(50E.O.)、ラウリン酸POE硬化ヒマシ油(60E.O.)、イソステアリン酸POE硬化ヒマシ油(40E.O.)、イソステアリン酸POE硬化ヒマシ油(50E.O.)等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
「E.O.」の前に付された数値は、オキシエチレン基の平均繰り返し数を示す。
ノニオン界面活性剤(b)のHLBは、9〜17であることが好ましく、12〜15が特に好ましい。HLBが上記範囲内であれば、忌避剤組成物の安定性が、低温(例えば−5℃)から高温(例えば50℃)までの幅広い温度範囲で優れる。
HLBは、親水性−親油性バランス(Hydrophile−Lipophile Balance)、つまり界面活性剤の分子がもつ親水性と親油性の相対的な強さを意味し、その親水親油バランスを数量的に表したものである。
HLBは、小田、寺村らの有機性・無機性の各値から下記式により求められる。
HLB値=Σ無機性/Σ有機性×10
前記有機性・無機性の各値については、「界面活性剤の合成とその応用」(1957年、槇書店発行、小田、寺村著)に詳しく記載されている。
<高級アルコール(c)>
高級アルコール(c)は、溶解・分散させた会合体の安定化に寄与する。高級アルコール(c)を含むことで、会合体の曲率が小さくなり、可溶化量が増える。そのため、界面活性剤の含有量が少なくても会合体を安定化することができる。
本明細書および特許請求の範囲において「高級アルコール」とは、炭素数8〜30の一価の鎖式アルコールを意味する。具体的には、R−OHで表される化合物が挙げられる。Rは炭素数8〜30の鎖状の炭化水素基を示す。
高級アルコール(c)の炭素数(炭素鎖長)は、会合体の安定化効果の点では、12〜18が好ましい。
高級アルコール(c)は、分岐構造を有するものでもよく、分岐構造を有しないもの(直鎖構造であるもの)であってもよい。会合体の安定化効果の点では、分岐構造を有することが好ましい。
高級アルコール(c)は、二重結合(>C=C<)、三重結合(−C≡C−)等の不飽和結合を有するものでもよく、不飽和結合を有しないものでもよい。会合体の安定化効果の点では、二重結合を有することが好ましい。
高級アルコール(c)としては、炭素数が12〜18であり、分岐構造または二重結合を有するものが特に好ましい。
高級アルコール(c)の具体例としては、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコール、ミリスチルアルコール、セチルアルコール等が挙げられる。これらはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。これらの中でも、ヘキシルデカノール、イソステアリルアルコール、オクチルドデカノール、オレイルアルコールが好ましい。
<多価アルコール(d)>
多価アルコール(d)は、溶解・分散させた会合体の安定化に寄与する。多価アルコール(d)を含むことで、界面張力の低下効果や曇点の上昇効果が得られる。そのため、界面活性剤の含有量が少なくても会合体を安定化することができる。
本明細書および特許請求の範囲において「多価アルコール」とは、ヒドロキシ基を2つ以上有する化合物を意味する。多価アルコール(d)が有するヒドロキシ基の数は2〜6が好ましい。多価アルコール(d)の分子量は200未満であることが好ましい。
多価アルコール(d)としては、例えば、炭素数が3〜6でヒドロキシ基の数が2〜6である多価アルコール等が挙げられる。
炭素数が3〜6でヒドロキシ基の数が2〜6である多価アルコールとしては、例えば1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコール、グリセリン、ソルビトール等が挙げられる。これらの多価アルコールはいずれか1種を単独で用いてもよく2種以上を組合わせて用いてもよい。
多価アルコール(d)としては、界面活性剤の曇点を上昇させる効果が高い点で、炭素数が3〜6でヒドロキシ基の数が2〜6であるものが好ましく、炭素数が3〜6でヒドロキシ基の数が2であるものがより好ましく、1,3−ブチレングリコール、プロピレングリコール、ジプロピレングリコールが特に好ましい。
<ショ糖脂肪酸エステル(e)>
ショ糖脂肪酸エステル(e)は、忌避剤組成物の透明性の向上に寄与する。例えばノニオン界面活性剤(b)とショ糖脂肪酸エステル(e)とを組み合わせた場合と、それらの合計量と同じ量のノニオン界面活性剤(b)を単独で用いた場合とを比較すると、前者の方が、忌避剤組成物の透明性が高い傾向がある。これは、ショ糖脂肪酸エステル(e)が界面膜を強化することによって忌避剤組成物がより安定な乳化組成物になるためと考えられる。
ショ糖脂肪酸エステル(e)における脂肪酸残基の炭素数は、12〜22が好ましく、12〜18がより好ましい。
<他の成分>
他の成分としては、例えば、ノニオン界面活性剤(b)およびショ糖脂肪酸エステル(e)以外の他の界面活性剤が挙げられる。その他、保湿剤、殺菌・防腐剤、増粘剤、色素、pH調整剤、香料、紫外線吸収剤、紫外線散乱剤等の添加剤等が挙げられる。
増粘剤としては、化粧品・医薬部外品・医薬品に使用されるものであれば特に限定されず、天然の水溶性高分子、半合成の水溶性高分子、合成の水溶性高分子、無機の水溶性高分子等が挙げられる。天然の水溶性高分子としては、例えばアラビアガム、トラガカントガム、ガラクタン、グアーガム、キサンタンガム、キャロブガム、ローカストビーンガム、カラヤガム、カラギーナン、ペクチン、寒天、クインスシード、アルゲコロイド、デンプン等の植物系高分子、デキストラン、デキストリン、サクシノグルカン、プルラン等の微生物系高分子、コラーゲン、カゼイン、アルブミン、ゼラチン等の動物系高分子等が挙げられる。半合成の水溶性高分子としては、例えばカルボキシメチルデンプン、メチルヒドロキシプロピルデンプン等のデンプン系高分子、メチルセルロース、ニトロセルロース、エチルセルロース、メチルヒドロキシプロピルセルロース、ヒドロキシエチルセルロース、セルロース硫酸ナトリウム、ヒドロキシプロピルセルロース、カルボキシメチルセルロースナトリウム(CMC)、結晶セルロース、セルロース末等のセルロース系高分子、アルギン酸ナトリウム、アルギン酸プロピレングリコールエステル等のアルギン酸系高分子等が挙げられる。合成の水溶性高分子としては、例えばポリビニルアルコール、ポリビニルメチルエーテル、ポリビニルピロリドン、カルボキシビニルポリマー(カルボマー)等のビニル系高分子、ポリエチレングリコール(分子量1500、4000、6000等)等のポリオキシエチレン系高分子、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレン共重合系高分子、ポリアクリル酸ナトリウム、ポリエチルアクリレート等のアクリル系高分子、ポリエチレンイミン、カチオンポリマー等が挙げられる。無機の水溶性高分子としては、例えばベントナイト、ケイ酸AlMg、ラポナイト、ヘクトライト、無水ケイ酸等が挙げられる。
他の界面活性剤としては、特に限定されず、公知の界面活性剤を適宜用いることができる。例えば、ポリオキシエチレンポリオキシプロピレングリコール(以下、「POE・POPグリコール」とも記載する。)、アルコールエトキシレート、水素添加大豆リゾリン脂質及び水素添加大豆リン脂質は、忌避剤組成物の安定性を損ないにくく、好ましい。
これらの中でも特に、水素添加大豆リゾリン脂質及び水素添加大豆リン脂質のいずれか一方または両方を含むことが好ましい。これにより、忌避剤組成物の安定性がより高くなり、ノニオン界面活性剤(b)の含有量が少ない場合でも安定な乳化状態を維持しやすくなる。これは、水素添加大豆リゾリン脂質や水素添加大豆リン脂質が界面膜を強化するためと考えられる。
POE・POPグリコールとしては、オキシエチレン基の平均繰り返し数が50〜300で、オキシプロピレン基の平均繰り返し数が5〜80であるものが好ましい。
POE・POPグリコールの具体例としては、POE・POPグリコール(50E.O.)(40P.O.)、POE・POPグリコール(54E.O.)(39P.O.)、POE・POPグリコール(105E.O.)(5P.O.)、POE・POPグリコール(120E.O.)(40P.O.)、POE・POPグリコール(150E.O.)(30P.O.)、POE・POPグリコール(150E.O.)(35P.O.)、POE・POPグリコール(160E.O.)(30P.O.)、POE・POPグリコール(160E.O.)(31P.O.)、POE・POPグリコール(190E.O.)(60P.O.)、POE・POPグリコール(196E.O.)(67P.O.)、POE・POPグリコール(200E.O.)(40P.O.)、POE・POPグリコール(200E.O.)(70P.O.)、POE・POPグリコール(240E.O.)(60P.O.)、POE・POPグリコール(300E.O.)(55P.O.)等が挙げられる。
「P.O.」の前に付された数値は、オキシプロピレン基の平均繰り返し数を示す。
アルコールエトキシレートのアルコール残基の炭素数は12〜18が好ましい。オキシエチレン基の平均繰り返し数は7〜15が好ましい。
アルコールエトキシレートのHLBは10〜17が好ましい。このようなアルコールエトキシレートとしては、例えばC12EO7、C12EO12、C12EO15、C16EO15、C18EO8等が挙げられる。これらの例示において、Cの後に付された数値はアルコール残基の炭素数を示し、EOの後に付された数値はオキシエチレン基の平均繰り返し数を示す。
<各成分の含有量>
本発明の忌避剤組成物中、忌避有効成分(a)の含有量は、忌避剤組成物の全質量に対して1〜25質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、1〜10質量%がさらに好ましい。忌避有効成分(a)の含有量が上記下限値以上であれば、忌避剤組成物を肌に適用したときに害虫に対する忌避効果が発揮されやすく、上記上限値以下であれば、忌避剤組成物の安定性がより優れる。
ノニオン界面活性剤(b)の含有量は、忌避剤組成物の全質量に対して0.1〜15質量%が好ましく、0.3〜10質量%がより好ましく、0.5〜6質量%がさらに好ましい。ノニオン界面活性剤(b)の含有量が上記下限値未満であると、忌避剤組成物の安定性が低下するおそれがあり、上記上限値超であると、忌避剤組成物の使用感が低下するおそれがある。
高級アルコール(c)の含有量は、忌避剤組成物の全質量に対して0.5〜5質量%が好ましく、1〜3質量%がより好ましく、1〜2質量%がさらに好ましい。高級アルコール(c)の含有量が上記範囲内であれば、ノニオン界面活性剤(b)の含有量が少ない場合でも、会合体が充分に安定化され、忌避剤組成物の安定性が優れる。高級アルコール(c)の含有量が多すぎても少なすぎても分子会合体が不安定化するおそれがある。
多価アルコール(d)の含有量は、忌避剤組成物の全質量に対して1〜35質量%が好ましく、1〜20質量%がより好ましく、4〜12質量%がさらに好ましい。多価アルコール(d)の含有量が上記範囲内であれば、ノニオン界面活性剤(b)の含有量が少ない場合でも、会合体が充分に安定化され、忌避剤組成物の安定性が優れる。多価アルコール(d)の含有量が多すぎても少なすぎても分子会合体が不安定化するおそれがある。また、多価アルコール(d)の含有量が多すぎると使用感が低下したり刺激性が強くなったりするおそれがある。
ノニオン界面活性剤(b)と高級アルコール(c)と多価アルコール(d)との合計の含有量は、忌避有効成分(a)に対して100〜700質量%が好ましく、120〜500質量%がより好ましい。ノニオン界面活性剤(b)と高級アルコール(c)と多価アルコール(d)との合計の含有量が上記範囲の下限値未満であると、忌避剤組成物の安定性が低下するおそれがあり、上記範囲の上限値超であると、忌避剤組成物の使用感が低下し刺激性が高くなるおそれがある。
本発明の忌避剤組成物は、エタノールを含まない。これにより、忌避剤組成物を皮膚に適用したときの忌避有効成分(a)の滞留性が優れる。また、忌避剤組成物を皮膚に適用したときの刺激性が低い。
上記と同様の理由から、本発明の忌避剤組成物は、エタノール以外の炭素数4以下の低級アルコール(例えばメタノール、2−プロパノール等)も含まないことが好ましい。
本発明の忌避剤組成物がショ糖脂肪酸エステル(e)を含む場合、ショ糖脂肪酸エステル(e)の含有量は、ノニオン界面活性剤(b)に対して50〜300質量%が好ましく、100〜250質量%がより好ましい。ショ糖脂肪酸エステル(e)の含有量が上記下限値未満であると、忌避剤組成物の安定性、透明性向上効果が低下するおそれがあり、上記上限値超であると、忌避剤組成物の使用感が低下し刺激性が高くなるおそれがある。
<忌避剤組成物の調製方法>
本発明の忌避剤組成物の調製方法は特に限定されず、公知の方法を利用できる。
例えば以下の方法により忌避剤組成物を調製可能である。
忌避剤有効成分(a)と、界面活性剤(ノニオン界面活性剤(b)、必要に応じてショ糖脂肪酸エステル(e)や他の界面活性剤)と、高級アルコール(c)と、多価アルコール(d)とを、60〜80℃の温浴で攪拌混合し、この混合物に対して水、および必要に応じて添加剤を添加し、5〜10分間程度攪拌し、室温まで放冷する方法。なお、多価アルコールは水に添加することも可能である。
高圧ホモジナイザーを用いて忌避剤組成物を調製することも可能である。
例えば、忌避剤有効成分(a)と、界面活性剤と、高級アルコール(c)と、多価アルコール(d)とを、60〜80℃の温浴で攪拌混合し、そこに水、および必要に応じて添加剤を添加して攪拌し、得られた混合液を、高圧ホモジナイザー(例えば吉田機械興業社製、ナノヴェイタ(登録商標))を用いて分散処理する方法。
上記分散処理の条件としては、例えば圧力150〜200MPa、パス回数2回の条件が挙げられる。
ショ糖脂肪酸エステル(e)を加えて高圧ホモジナイザーを用いると、半透明の溶液状の忌避剤組成物を得ることができる。
<作用効果>
本発明の忌避剤組成物は、忌避有効成分(a)と、ノニオン界面活性剤(b)と、高級アルコール(c)と、多価アルコール(d)と、水とを含み、エタノールを含まないため、低刺激性であり、安定性、使用感、忌避有効成分(a)の滞留性に優れる。
界面活性剤としてノニオン界面活性剤(b)を用いることで、イカリジンのような水に難溶性の忌避有効成分であっても、少量の界面活性剤で均一分散させて忌避剤組成物を安定化できる。また、忌避剤組成物の透明液化も可能である。界面活性剤としてノニオン界面活性剤(b)とショ糖脂肪酸エステル(e)とを組み合わせると、透明液化効果がさらに向上する。
また、ノニオン界面活性剤(b)に高級アルコール(c)および多価アルコール(d)を組み合わせることで、界面活性剤の含有量を低減した場合でも、安定な透明溶解状態を保つことができる。高級アルコール(c)は、会合体の曲率を小さくし可溶化量を増やす効果があるため、これを併用することで、界面活性剤が少量でも温度安定性に優れる乳化・可溶化組成物の調製が可能と考えられると考えられる。多価アルコール(d)は、界面張力を低下させる効果および界面活性剤の曇点を上昇させる効果があるため、これを併用することで、ノニオン界面活性剤(b)が少量でも温度安定性が高い乳化・可溶化組成物の調製が可能と考えられると考えられる。多価アルコール(d)だけでも忌避有効成分(a)の分散は可能であるが、多価アルコール(d)を多量に使用する必要があり、使用感が悪く、刺激性も高くなる。
また、エタノールを含まないことで、肌に適用したときに、エタノールによる刺激が無い。また、エタノールは忌避有効成分(a)の経皮吸収を促進し、皮膚表面における忌避有効成分(a)の滞留性を低下させる。エタノールを含まないことで滞留性が向上する。
イカリジンのような揮発性の低い忌避有効成分(a)は、主に汗による流亡や経皮吸収によってその効果が失われるため、経皮吸収を抑制することによる滞留性の向上効果が高い。そのため本発明は、様々な忌避有効成分に有効であるが、イカリジンのような揮発性の低い忌避有効成分を用いる場合に特に有用である。
本発明の忌避剤組成物は、例えば、乳液、クリーム、ジェル、スプレー等の剤型で用いられる。
本発明の忌避剤組成物は、例えば皮膚に塗布されることで、害虫に対して忌避効果を発揮する。
本発明の忌避剤組成物によって忌避対象となる害虫としては、例えば蚊、ブヨ、サシバエ、イエダニ、トコジラミ(ナンキンムシ)、マダニ、ツツガムシ等が挙げられる。
以下に実施例を用いて本発明をさらに詳しく説明するが、本発明はこれら実施例に限定されるものではない。
本実施例において使用した原料は下記の表1に示す通りである。
表1中、グレードの欄の「外原規」は医薬部外品原料規格の略である。「薬添」は医薬品添加物規約の略である。
Figure 2019026603
<実施例1〜38、比較例2〜9>
表2〜6に記載の種類および配合量(数値は質量%を示す。)の忌避有効成分、界面活性剤、高級アルコールおよび多価アルコールを80℃の温浴で攪拌混合して溶解し、そこにメチルパラベンをバランス量の精製水に溶解したメチルパラベン水溶液を添加し予備乳化を行った後、高圧ホモジナイザー(吉田機械興業、ナノヴェイタ(登録商標))を用いて、150〜200MPa、パス回数2回の条件で分散処理して忌避剤組成物を調製した。
表2〜6中、精製水の「バランス」は、忌避剤組成物の全量が100質量%になる量を示す(以下同様)。
<比較例1>
表3に記載の種類および配合量(数値は質量%を示す。)の忌避有効成分、エタノール、防腐剤および精製水を室温で10分間攪拌混合して忌避剤組成物を調製した。
得られた忌避剤組成物について、以下の手順で安定性、低刺激性および使用感を評価した。ただし、安定性の評価結果が悪かったものについては低刺激性および使用感を評価しなかった。実施例1、4、14、17の忌避剤組成物については、滞留性も評価した。
「安定性の評価」
忌避剤組成物を、室温、−5℃、50℃それぞれの温度で1ヶ月保存した。保存後の忌避剤組成物の状態(外観)を目視評価し、以下の基準で安定性を評価した。結果を表2〜6に示す。
(安定性評価基準)
○:均一分散状態を保っている。
△:一部分離を伴うが、室温(5〜35℃)下で再度均一に分散する。
×:分離状態になっている。
また、上記安定性の評価において室温で1ヶ月保存した忌避剤組成物の状態を「外観」として結果を表2〜6に示す。
「低刺激性の評価」
忌避剤組成物2gを被験者5名の前腕内側に均一に塗布し、刺激性を評価した。5名の評価の結果から、以下の基準で低刺激性を評価した。結果を表2〜6に示す。
(低刺激性評価基準)
○:5名とも刺激を感じなかった。
×:1名以上が刺激を感じた。
「使用感の評価」
忌避剤組成物2gを被験者5名の前腕内側に均一に塗布し、塗布した部分のべたつきの状態を評価した。5名の官能評価の結果から、以下の基準で使用感を評価した。結果を表2〜6に示す。
(使用感評価基準)
○:5名ともべたつきを感じなかった。
△:1〜4名がべたつきを感じなかった。
×:5名がべたつきを感じた。
「滞留性の評価」
被験者5名それぞれの上腕内側(約160cm区画)に、忌避剤組成物を、忌避有効成分が5mgになるように塗り広げた。それから8時間後、忌避剤組成物を塗り広げた部分の角質を、テープ(約3.8cm)を用いて1枚ストリップし、エタノール(1mL)を用い、ボルテックスミキサー(3分間)にて忌避有効成分を抽出し、高速液体クロマトグラフィー(HPLC)(島津(株)、SHIMAZU SPD20A、カラム:InertsilODS−3)にて定量した。下式に従い、塗布8時間後の忌避有効成分の残存率(%)を算出した。求めた残存率と、エタノール製剤(比較例1の忌避剤組成物)の残存率とを比較し、以下の基準で滞留性を評価した。結果を表7に示す。
忌避有効成分残存率(%)=[8時間後の単位面積当たりの忌避有効成分の残存量(mg/cm)]/[塗布した時点での単位面積当たりの忌避有効成分量(mg/cm)]×100
(滞留性評価基準)
◎:忌避有効成分残存率がエタノール製剤よりも高い被験者が5名。
○:忌避有効成分残存率がエタノール製剤よりも高い被験者が4名。
×:忌避有効成分残存率がエタノール製剤よりも高い被験者が3名以下。
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実施例1〜38の忌避剤組成物は、界面活性剤の含有量が少なくても、安定性に優れていた。また、低刺激性であり、使用感も良好であった。
また、実施例1、4、14、17の忌避剤組成物は、エタノール製剤である比較例1の忌避剤組成物に比べて忌避有効成分の滞留性に優れていた。イカリジン等の揮発性が低い忌避有効成分は、汗による流亡や経皮吸収によってその効果が失われる。エタノールはこの経皮吸収を促進する。上記実施例の忌避剤組成物は、エタノールを含まないことによって、忌避有効成分の経皮吸収が抑制され、滞留性の向上が見られたと推察される。したがって、エタノールを含まない他の実施例の忌避剤組成物も、忌避有効成分の滞留性に優れると判断できる。
ノニオン界面活性剤(b)を含まない比較例2の忌避剤組成物、高級アルコール(c)を含まない比較例3の忌避剤組成物、多価アルコール(d)を含まない比較例4の忌避剤組成物はそれぞれ、安定性が悪かった。
ノニオン界面活性剤(b)および高級アルコール(c)を含まない比較例5の忌避剤組成物は、多価アルコール(b)を多量に含むことで安定性は良好であったものの、刺激性があり、また使用感が悪かった。
ノニオン界面活性剤(b)以外の他のノニオン界面活性剤を用いた比較例6〜9の忌避剤組成物はそれぞれ、安定性が悪かった。
実施例14、15、24〜31、比較例6〜9の対比から、ノニオン界面活性剤(b)が忌避剤組成物の安定化効果を有し、このような効果が他のノニオン界面活性剤では見られないこと、ノニオン界面活性剤(b)の中でも特にHLBが10〜17であるものを用いると、幅広い温度範囲で安定化効果が得られることが分かる。
実施例4、7〜11の対比から、高級アルコール(c)の炭素鎖が分岐構造または二重結合を有すると、これらを有しない場合に比べて、忌避剤組成物の安定性が優れることが分かる。
実施例14〜21の対比、または実施例36〜37の対比から、ノニオン界面活性剤(b)の一部をショ糖脂肪酸エステルに置き換えることで、忌避剤組成物の透明性が向上することが分かる。
実施例12、22〜23の対比から、水素添加大豆リン脂質や水素添加大豆リゾリン脂質をさらに含むことで、安定性がさらに向上することが分かる。

Claims (6)

  1. 忌避有効成分(a)と、ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油および脂肪酸ポリオキシエチレン硬化ヒマシ油からなる群から選ばれる少なくとも1種のノニオン界面活性剤(b)と、炭素数8〜30の高級アルコール(c)と、多価アルコール(d)と、水とを含み、エタノールを含まない忌避剤組成物。
  2. 前記忌避有効成分(a)が、イカリジンおよびディートからなる群から選ばれる少なくとも1種である、請求項1に記載の忌避剤組成物。
  3. 前記ノニオン界面活性剤(b)のHLBが9〜17である、請求項1または2に記載の忌避剤組成物。
  4. 前記高級アルコール(c)が分岐構造または二重結合を有する、請求項1〜3のいずれか一項に記載の忌避剤組成物。
  5. 前記多価アルコール(d)が、炭素数が3〜6でヒドロキシ基の数が2〜6である多価アルコールである、請求項1〜4のいずれか一項に記載の忌避剤組成物。
  6. ショ糖脂肪酸エステル(e)をさらに含む、請求項1〜5のいずれか一項に記載の忌避剤組成物。
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