JP2019007097A - アクリル繊維処理剤及びその用途 - Google Patents

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Abstract

【課題】 炭素繊維製造用アクリル繊維の製造工程で発生する静電気及びガムアップを抑制し且つタールの発生を同時に抑制することができるアクリル繊維処理剤、該処理剤を用いた炭素繊維製造用アクリル繊維及び該処理剤を用いた炭素繊維の製造方法を提供することにある。【解決手段】 アクリル繊維処理剤は、アミノ変性シリコーン(A)及びエーテルカルボン酸化合物(B)を含むものである。炭素繊維製造用アクリル繊維は、炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に、アクリル繊維処理剤を付着させてなるものである。【選択図】 なし

Description

本発明は、アクリル繊維処理剤及びその用途に関する。より詳しくは、アクリル繊維を製造する際に使用する処理剤と、該処理剤を用いた炭素繊維製造用アクリル繊維(以下、プレカーサーと称することがある)と、該処理剤を用いた炭素繊維の製造方法とに関する。
炭素繊維はその優れた機械的特性を利用して、マトリックス樹脂と称されるプラスチックとの複合材料用の補強繊維として、航空宇宙用途、スポーツ用途、一般産業用途等に幅広く利用されている。
炭素繊維を製造する方法としては、まず炭素繊維製造用アクリル繊維(プレカーサーということがある)を製造する(このプレカーサーの製造工程を製糸工程と称することがある)。このプレカーサーを200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換し(この工程を以下、耐炎化処理工程と称することがある)、続いて300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭素化する(この工程を以下、炭素化処理工程と称することがある)方法が一般的である(以下、耐炎化処理工程と炭素化処理工程をあわせて、焼成工程と称することがある)。このプレカーサーの製造には通常のアクリル繊維と比較しても高倍率に延伸される延伸工程を経る。その際、繊維同士の膠着が起こり易く、均一に高倍率延伸が行われない為に、不均一なプレカーサーとなる。この様なプレカーサーを焼成して得られる炭素繊維は十分な強度が得られないという問題がある。また、プレカーサーの焼成時には、単繊維同士の融着が発生し、得られた炭素繊維の品質、品位を低下させるという問題がある。
プレカーサーの膠着防止、炭素繊維の融着防止のために、プレカーサーに付与する処理剤として、湿潤時および高温環境下で繊維−繊維間摩擦が低く、優れた剥離性を有するシリコーン系処理剤、特に熱による架橋反応により耐熱性をさらに向上できるアミノ変性シリコーン系処理剤をプレカーサーに付与する技術が多数提案されている(特許文献1〜2参照)。
一般的に利用されているアミノ変性シリコーン系処理剤をプレカーサーに付与した場合、プレカーサー表面が撥水性となる為、静電気が発生しプレカーサーの集束性が乱れ、毛羽立ちや捲付等の操業性低下を引き起こす原因になるという問題があった。このような問題に対して、例えば特許文献3のような静電気の発生を抑制する為にスルホコハク酸エステル化合物を併用する処理剤組成が提案されている。しかしながらスルホコハク酸エステル化合物を併用することで、静電気の発生は抑制することは出来るが、プレカーサーの乾燥工程や延伸工程における熱ローラーで、アミノ変性シリコーンの熱架橋性を促進させる為ローラー汚れ(以後ガムアップを称することがある)が蓄積し易く、プレカーサーの糸切れや毛羽発生の原因となるばかりでなく、その清掃の為に操業性が低下するという問題が起こり易い。
また、このようなガムアップを抑制する為に例えば特許文献4のようなリン酸エステル化合物を併用する処理剤組成が提案されている。しかしながらリン酸エステル化合物を併用することでガムアップを抑制することは出来るが、プレカーサーの乾燥工程や延伸工程における熱ローラーで、リン酸由来のタールが発生し易くなり、それが蓄積することで毛羽立ちや捲付等の原因となりプレカーサーの品質が悪化するという欠点があった。
特開2001−172879号公報 特開2002−129481号公報 特開平4−281019号公報 国際公開第2013/129115号
かかる従来の技術背景に鑑み、本発明の目的は、炭素繊維製造用アクリル繊維の製造工程で発生する静電気及びガムアップを抑制し且つタールの発生を同時に抑制することができるアクリル繊維処理剤、該処理剤を用いた炭素繊維製造用アクリル繊維及び該処理剤を用いた炭素繊維の製造方法を提供することにある。
本発明者らは、上記課題を解決するために鋭意検討した結果、エーテルカルボン酸化合物(B)を含む、アクリル繊維処理剤であれば、本願課題を解決できることを見出し、本願発明に到達した。
すなわち、本発明のアクリル繊維処理剤は、アミノ変性シリコーン(A)及びエーテルカルボン酸化合物(B)を含むものである。
前記アミノ変性シリコーン(A)100重量部に対して、前記エーテルカルボン酸化合物(B)の割合は、0.1〜30重量部であることが好ましい。
処理剤の不揮発分に占める前記アミノ変性シリコーン(A)の重量割合は40〜95重量%であることが好ましい。
本発明のアクリル繊維処理剤は、さらに、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)を含有することが好ましい。
前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)は、下記一般式(1)で示される化合物を含むことが好ましい。
Figure 2019007097
(一般式(1)中、Rは炭素数6〜22のアルキル基を示す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す。jは1〜50の数である。)
前記アミノ変性シリコーン(A)100重量部に対して、前記エーテルカルボン酸化合物(B)と前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)の合計の割合が5〜50重量部である、請求項4又は5に記載のアクリル繊維処理剤。
本発明のアクリル繊維処理剤は、さらに、アセチレン系界面活性剤(D)を含むことが好ましい。
前記アミノ変性シリコーン(A)100重量部に対して、前記アセチレン系界面活性剤(D)の割合が0.1〜12重量部であることが好ましい。
本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維は、炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に、上記のアクリル繊維処理剤を付着させてなるものである。
本発明の炭素繊維の製造方法は、炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に、上記のアクリル繊維処理剤を付着させて製糸する製糸工程と、200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程と、前記耐炎化繊維をさらに300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程とを含むものである。
本発明のアクリル繊維処理剤は炭素繊維製造用アクリル繊維の製造工程で発生する静電気及びガムアップを抑制し且つタールの発生を同時に抑制することができる。本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維を用いれば、静電気によるプレカーサーの集束性乱れ、ガムアップやタールの発生による、プレカーサーの毛羽立ちや捲付等を抑制することができ、高強度、高品質の炭素繊維を得ることができる。本発明の炭素繊維の製造方法によれば、静電気によるプレカーサーの集束性乱れ、ガムアップやタールの発生による、プレカーサーの毛羽立ちや捲付等を抑制することができ、高強度、高品質の炭素繊維を得ることができる。
(アミノ変性シリコーン(A))
本発明の処理剤は、アミノ変性シリコーン(A)を必須に含有する。アミノ変性シリコーンの変性基であるアミノ基(アミノ基を有する有機基を含む)は、主鎖であるシリコーンの側鎖と結合していてもよいし、末端と結合していてもよいし、また両方と結合していてもよいが、耐炎化処理工程での繊維保護の観点から、側鎖と結合している(側鎖にアミノ基を有する)方が好ましい。また、そのアミノ基は、モノアミン型、ジアミン型、ポリアミン型のいずれであってもよく、1分子中に両者が併存していてもよいが、耐炎化処理工程で繊維束内部にまで処理剤を均一に付与し、かつ、処理剤を皮膜化させて繊維を保護する点から、モノアミン型又はジアミン型が好ましい。
アミノ変性シリコーン(A)の25℃での動粘度は、本願効果を発揮させる点から、50〜15000mm/sが好ましく、100〜10000mm/sがより好ましく、150〜5000mm/sがさらに好ましく、200〜3000mm/sが特に好ましい。動粘度が50mm/s未満の場合、処理剤が飛散しやすくなり、また水系乳化した際にエマルジョンの溶液安定性が悪くなり、処理剤を繊維へ均一に付与することができなくなることがある。その結果、繊維の融着を防止できないことがある。動粘度が15000mm/s超の場合、粘着性に起因するガムアップが問題となることがある。
アミノ変性シリコーン(A)のアミノ当量は、繊維間の膠着や融着の防止の点から、300〜10000g/molが好ましく、500〜10000g/molがより好ましく、1000〜9000g/molがさらに好ましい。該アミノ当量が300g/mol未満の場合、プレカーサーの乾燥工程や延伸工程における熱ローラーで、アミノ変性シリコーンが架橋しやすくなり、ローラー汚れが蓄積し、プレカーサーの糸切れや毛羽が発生し易くなることがある。また、該アミノ当量が10000g/mol以上の場合、耐炎化処理工程の後期で処理剤の熱架橋が起こらないために繊維保護ができないことがある。ここで、アミノ当量とは、アミノ基又はアンモニウム基1個当たりのシロキサン骨格の質量を意味している。表記単位のg/molはアミノ基又はアンモニウム基1mol当たりに換算した値である。従って、アミノ当量の値が小さいほど分子内でのアミノ基又はアンモニウム基の比率が高いことを示している。
アミノ変性シリコーン(A)は、アミノ当量や動粘度(25℃)の異なる複数のアミノ変性シリコーンを併用してもよい。2種以上のアミノ変性シリコーンを用いる場合、上記アミノ当量はアミノ変性シリコーン全体(混合物)のアミノ当量を意味し、上記の25℃における動粘度はアミノ変性シリコーン全体(混合物)の動粘度を意味する。
上記アミノ変性シリコーンとしては、例えば、下記一般式(2)で示す化合物を挙げることができる。
Figure 2019007097
(式(2)中、Rは炭素数が1〜20のアルキル基又はアリール基を示す。R10は下記化学式(3)で示される基である。R11は、R、R10又は−OR17(R17は水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基)である。pは10≦p≦10000、qは0.1≦q≦1000である。)
式(2)中、Rは炭素数が1〜20のアルキル基又はアリール基を示す。Rは、好ましくは炭素数が1〜10のアルキル基又はアリール基であり、より好ましくは炭素数1〜5のアルキル基であり、さらに好ましくはメチル基である。なお、式(2)における複数のRは、同一であってもよく異なっていてもよい。R10は下記一般式(3)で示される基である。R11は、R、R10又は−OR17で示される基であり、好ましくはRである。なお、式(2)における複数のR11は、同一であってもよく異なっていてもよい。
17は、水素原子又は炭素数が1〜6のアルキル基であり、好ましくは水素原子又は炭素数1〜4のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子又はメチル基である。pは、10〜10000の数であり、好ましくは50〜5000であり、さらに好ましくは100〜2000である。qは、0.1〜1000の数であり、好ましくは0.5〜500であり、さらに好ましくは1〜100である。
Figure 2019007097
式(3)中、R12及びR14は、それぞれ独立して、炭素数が1〜6のアルキレン基であり、好ましくは炭素数1〜3のアルキレン基である。R13、R15及びR16は、それぞれ独立して、水素原子、炭素数が1〜10のアルキル基又はアリール基であり、好ましくは水素原子又は炭素数1〜5のアルキル基であり、さらに好ましくは水素原子である。rは0〜6の数であり、好ましくは0〜3であり、さらに好ましくは0〜1である。
(エーテルカルボン酸化合物(B))
本発明の処理剤は、エーテルカルボン酸化合物(B)を必須に含有する。アミノ変性シリコーン(A)に対して、エーテルカルボン酸化合物(B)を用いることにより、炭素繊維製造用アクリル繊維の製造工程で発生する静電気及びガムアップを抑制し且つタールの発生を同時に抑制することができる。
ここで、エーテルカルボン酸化合物(B)とは、化合物主鎖に少なくとも1つ以上のエーテル結合を有し且つ化合物主鎖に少なくとも1つ以上のカルボキシル基を有する化合物をいう。エーテルカルボン酸化合物としては、下記一般式(4)で示される化合物が挙げられる。
Figure 2019007097
(式中、R18は有機基を示し、Zは−O−又は−CONH−を示し、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示し、Yは炭素数1〜3のアルキレン基を示す。Xは水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基を示す。tは1〜50の数である。)
18は有機基である。有機基としては、アルキル基、シクロアルキル基、アリール基、アラルキル基、アルケニル基等が挙げられる。有機基の炭素数としては、1〜50が好ましく、4〜30がより好ましく、6〜22がさらに好ましく、8〜18が特に好ましい。
は炭素数2〜4のアルキレン基を示し、AOとしてはオキシアルキレン基を示す。つまり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシブチレン基を示す。オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基がさらに好ましい。tは1〜50の数であり、2〜40が好ましく、3〜30がより好ましい。tが50超の場合、上記アミノ変性シリコーンと併用した場合耐炎化処理工程で処理剤が繊維束内部にまで均一に付与できないために融着が起こることがある。ポリオキシアルキレン基(AO)tを構成するAOとしては、1種でもよく、2種以上であってもよい。2種以上の場合、ブロック付加体、交互付加体、ランダム付加体のいずれであってもよい。AOのtは、オキシアルキレン基の付加モル数である。
Yは炭素数1〜3のアルキレン基であり、炭素数は1〜3が好ましい。
Xは、水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基又は有機アミン基である。これらの中でも、炭素繊維製造用アクリル繊維の製造工程で発生するタールの抑制の点から、水素原子、アルカリ金属原子、アンモニウム基が好ましく、水素原子がさらに好ましい。
アルカリ金属原子としては、例えば、リチウム、ナトリウム、カリウム等を挙げることができる。アンモニウム基及び有機アミン基としては、NRで示される基を挙げることができる。R、R、R及びRは、それぞれ独立して、水素原子、アルキル基、アルケニル基、ポリオキシアルキレン基である。アルキル基及びアルケニル基の炭素数は、1〜24が好ましく、1〜20がより好ましく、1〜18がさらに好ましい。ポリオキシアルキレン基は「−(AO)H」で示され、(AO)は上記の(AO)で示されるものと同様である。
NRで示される基としては、例えばアンモニウム基、メチルアンモニウム基、エチルアンモニウム基、プロピルアンモニウム基、ブチルアンモニウム基、ヘキシルアンモニウム基、オクチルアンモニウム基、ジメチルアンモニウム基、ジエチルアンモニウム基、ジプロピルアンモニウム基、ジブチルアンモニウム基、ジヘキシルアンモニウム基、ジオクチルアンモニウム基、トリメチルアンモニウム基、トリエチルアンモニウム基、トリプロピルアンモニウム基、トリブチルアンモニウム基、トリヘキシルアンモニウム基、トリオクチルアンモニウム基、テトラメチルアンモニウム基、テトラエチルアンモニウム基、テトラプロピルアンモニウム基、テトラブチルアンモニウム基、テトラヘキシルアンモニウム基、テトラオクチルアンモニウム基、エチルトリメチルアンモニウム基、プロピルトリメチルアンモニウム基、ブチルトリメチルアンモニウム基、ヘキシルトリメチルアンモニウム基、オクチルトリメチルアンモニウム基、メタノールアンモニウム基、エタノールアンモニウム基、プロパノールアンモニウム基、ブタノールアンモニウム基、ヘキサノールアンモニウム基、オクタノールアンモニウム基、ジメタノールアンモニウム基、ジエタノールアンモニウム基、ジプロパノールアンモニウム基、ジブタノールアンモニウム基、ジヘキサノールアンモニウム基、ジオクタノールアンモニウム基、トリメタノールアンモニウム基、トリエタノールアンモニウム基、トリプロパノールアンモニウム基、トリブタノールアンモニウム基、トリヘキサノールアンモニウム基、トリオクタノールアンモニウム基、(EO6)ブチルアミノエーテル基、(EO6)ヘキシルアミノエーテル基、(EO6)オクチルアミノエーテル基、(EO6)デシルアミノエーテル基、(EO6)ラウリルアミノエーテル基、(EO6)テトラデシルアミノエーテル基、(EO6)ヘキサデシルアミノエーテル基、(EO6)オレイルアミノエーテル基、(EO6)ステアリルアミノエーテル基、(EO6)ガドレイルアミノエーテル基、(EO6)テトラコシルアミノエーテル基、(EO10)オレイルアミノエーテル基、(EO10)オレイルアミノエーテル/エルカ酸塩、(EO3)ラウリルアミノエーテル基、(EO3)ラウリルアミノエーテル基、(EO7)ラウリルアミノエーテル基、(EO15)オレイルアミノエーテル基、(PO3、EO5)ステアリルアミノエーテル基、(PO5、EO3)ステアリルアミノエーテル基が挙げられる。
本願効果をより発揮できる点から、アミノ変性シリコーン(A)100重量部に対して、前記エーテルカルボン酸化合物(B)の割合は0.1〜30重量部であることが好ましい。該割合は、好ましくは0.3〜20重量部、より好ましくは0.5〜15重量部、さらに好ましくは1〜10重量部である。該割合が0.1重量部未満の場合、静電気及びガムアップが発生し易くなり、タールの発生も促進することがある。一方、該割合が30重量部超の場合、耐炎化処理工程においてエーテルカルボン酸化合物(B)がプレカーサーの繊維構造内部へ多量に浸透することにより、プレカーサーが耐炎化構造へ変換する際の欠点となり、炭素繊維の強度低下を引き起こすことがある。
[アクリル繊維処理剤]
本発明のアクリル繊維処理剤は、上記のアミノ変性シリコーン(A)及びエーテルカルボン酸化合物(B)を含むものである。
処理剤の不揮発分に占めるアミノ変性シリコーン(A)の重量割合は、好ましくは40〜95重量%、より好ましくは50〜94重量%、さらに好ましくは60〜92重量%、特に好ましくは70〜90重量%である。該重量割合が40重量%未満の場合、耐炎化処理工程で処理剤の耐熱性が不足する場合がある。一方、該重量割合が95重量%超の場合、処理剤を水系乳化した際に安定な水系乳化物を得ることができない場合がある。
処理剤の不揮発分に占めるエーテルカルボン酸化合物(B)の重量割合は、好ましくは0.1〜25重量%、より好ましくは0.3〜17重量%、さらに好ましくは0.5〜13重量%、特に好ましくは1〜9重量%である。該重量割合が0.1重量%未満の場合、静電気及びガムアップが発生し易くなり、タールの発生を促進することがある。一方、該重量割合が25重量%超の場合、耐炎化処理工程においてエーテルカルボン酸化合物(B)がプレカーサーの繊維構造内部へ多量に浸透することにより、プレカーサーが耐炎化構造へ変換する際の欠点となり、炭素繊維の強度低下を引き起こすことがある。
(ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C))
本発明の処理剤は、乳化性を高めることができる点から、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)を含有することが好ましい。なお、ポリオキシアルキレンアルキルエーテルとは、飽和脂肪族アルコールにアルキレンオキサイドが付加した構造を持つ化合物であり、上記一般式(1)において、Rがアルキル基、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基、jは1以上の数のものをいう。ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)は1種又は2種以上を用いてもよい。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)としては、例えば、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンヘプチルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレントリデシルエーテル、ポリオキシエチレンテトラデシルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシアルキレン直鎖アルキルエーテル;ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル等のポリオキシアルキレン分岐第一級アルキルエーテル;ポリオキシエチレン1−ヘキシルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン1−オクチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン1−ヘキシルオクチルエーテル、ポリオキシエチレン1−ペンチルへプチルエーテル、ポリオキシエチレン1−へプチルペンチルエーテル、ポリオキシエチレン1−ヘキシルヘプチルエーテル、ポリオキシエチレン1−ヘプチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン1−ペンチルカプチルエーテル、ポリオキシエチレン1−カプチルペンチルエーテル等のポリオキシアルキレン分岐第二級アルキルエーテル等を挙げることができる。
ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)は、本願効果を発揮させる点から、上記一般式(1)で示される化合物を必須に含むことが好ましい。一般式(1)において、Rは炭素数6〜22のアルキル基である。Rがアルキル基以外の炭化水素基及びRの炭素数が22超の場合、耐炎化処理工程においてポリオキシアルキレンアルキルエーテルがタール化することにより、プレカーサーが耐炎化構造へ変換する際の欠点となり、炭素繊維の強度低下を引き起こすことがある。一方、Rの炭素数が6未満の場合、処理剤を水系乳化した際のエマルジョンの溶液安定性が悪くなることがある。Rの炭素数は、8〜20が好ましく、10〜18がより好ましく、10〜16がさらに好ましい。Rの炭素数には分布があってもよく、またRは直鎖状であっても分岐を有していてもよい。
Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、AOとしてはオキシアルキレン基を示す。つまり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシブチレン基を示す。オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基がさらに好ましい。オキシアルキレン基の繰り返し数であるjは1〜50の数であり、2〜40が好ましく、3〜30がより好ましい。jが50超の場合、上記アミノ変性シリコーンと併用した場合耐炎化処理工程で処理剤が繊維束内部にまで均一に付与できないために融着が起こることがある。ポリオキシアルキレン基(AO)を構成するAOとしては、1種でもよく、2種以上であってもよい。2種以上の場合、ブロック付加体、交互付加体、ランダム付加体のいずれであってもよい。AOのjは、オキシアルキレン基の付加モル数である。
処理剤がポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)を含有する場合、処理剤の不揮発分に占めるポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)の重量割合は、2〜25重量%であることが好ましく、3〜20重量%がより好ましく、5〜15重量%がさらに好ましい。該重量割合が2重量%未満の場合、処理剤を水系乳化した際に安定な水系乳化物を得ることができない場合がある。一方、該重量割合が25量%超の場合、耐炎化処理工程においてポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)がプレカーサーの繊維構造内部へ多量に浸透することにより、プレカーサーが耐炎化構造へ変換する際の欠点となり、炭素繊維の強度低下を引き起こすことがある。
乳化性を高めることができる点から、アミノ変性シリコーン(A)100重量部に対して、前記エーテルカルボン酸化合物(B)とポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)の合計の割合が5〜50重量部であることが好ましい。該割合が5重量部未満の場合、乳化安定性が悪くなることがある。一方、該重量部が50重量部超の場合、耐炎化処理工程においてエーテルカルボン酸化合物(B)とポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)がプレカーサーの繊維構造内部へ多量に浸透することにより、プレカーサーが耐炎化構造へ変換する際の欠点となり、炭素繊維の強度低下を引き起こすことがある。
(アセチレン系界面活性剤(D))
本発明のアクリル繊維処理剤は、炭素繊維製造用アクリル繊維の製造工程で発生する静電気をさらに抑制できる点から、アセチレン系界面活性剤(D)を含有することが好ましい。お、アセチレン系界面活性剤とは、分子構造中にアセチレン基と水酸基等の親水基を有する化合物をいう。アセチレン系界面活性剤(D)は一種単独でもよく、二種以上を組み合わせて用いてもよい。
アセチレン系界面活性剤(D)は、アセチレンアルコール(D1)、アセチレンジオール(D2)、アセチレンアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(D3)及びアセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(D4)から選ばれた少なくとも1種であることが好ましい。これらの中でも、アセチレンアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(D3)及びアセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(D4)が好ましく、アセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(D4)がさらに好ましい。
アセチレンアルコール(D1)とは、分子構造中にアセチレン基と、1つの水酸基を有する化合物である。
アセチレンアルコール(D1)は、下記一般式(5)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2019007097
アセチレンジオール(D2)とは、分子構造中にアセチレン基と、2つの水酸基を有する化合物である。
アセチレンジオール(D2)は、下記一般式(6)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2019007097
アセチレンアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(D3)とは、アセチレンアルコールの水酸基にアルキレンオキサイドを付加させた化合物である。
アセチレンアルコールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(D3)とは、下記一般式(7)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2019007097
アセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(D4)とは、アセチレンジオールの水酸基の少なくとも1つにアルキレンオキサイドを付加させた化合物である。
アセチレンジオールにアルキレンオキサイドを付加した化合物(D4)は、下記一般式(8)で表される化合物であることが好ましい。
Figure 2019007097
式(5)及び式(7)中、R及びR2は、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基である。当該アルキル基は直鎖でもよく、分岐構造を有していてもよい。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜5である。
式(6)及び(8)中、R、R、R及びRは、それぞれ独立して炭素数1〜8のアルキル基である。当該アルキル基は直鎖でもよく、分岐構造を有していてもよい。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜7、より好ましくは1〜6、さらに好ましくは1〜5である。
式(7)及び式(8)中、Rは水素原子、または炭素数1〜5のアルキル基である。当該アルキル基の炭素数は、好ましくは1〜4、より好ましくは1〜3、さらに好ましくは1〜2である。
式(7)及び式(8)中、AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す。つまり、オキシエチレン基、オキシプロピレン基又はオキシブチレン基を示す。オキシアルキレン基としては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基が好ましく、オキシエチレン基がさらに好ましい。(AO)又は(AO)を構成するAOは、1種でもよく、2種以上であってもよい。2種以上の場合、ブロック付加体、交互付加体、ランダム付加体のいずれであってもよい。
式(7)中、nは1〜50の数である。nは1〜45が好ましく、1〜40がより好ましく、1〜35がさらに好ましい。
式(8)中、m、nはそれぞれ独立して1〜50の数である。m、nは、それぞれ独立して、1〜45が好ましく、1〜40がより好ましく、1〜35がさらに好ましい。
アセチレン系界面活性剤(D)のHLBは、乳化性の点から、4〜20が好ましく、5〜18がより好ましく、6〜16がさらに好ましい。本発明におけるHLBは、Griffinらが提唱したグリフィン法により、実験的に求めることができる。
アセチレン系界面活性剤(D)は、公知の化合物であり、公知の方法により容易に製造することができる。例えば、このような化合物は、レッペ反応と呼ばれる、加圧下で、アセチレンにケトン又はアルデヒドを、アルカリや金属化合物などの触媒の存在下で反応させる方法により得ることができる。
また、上記の化合物(D3)又は化合物(D4)は、それぞれ、アセチレンアルコール(D1)又はアセチレンジオール(D2)にアルキレンオキサイド(例えばエチレンオキサイド及び/又はプロピレンオキサイド)をアルカリや金属化合物などの触媒の存在下で付加重合させることにより得ることができる。
処理剤の不揮発分に占めるアセチレン系界面活性剤(D)の重量割合は、好ましくは0.1〜20重量%、より好ましくは0.2〜15重量%、さらに好ましくは0.3〜13重量%、特に好ましくは0.5〜10重量%である。該重量割合が0.1重量%未満の場合、乳化剤の繊維構造内部への浸透を抑制することができない場合がある。一方、該重量割合が20重量%超の場合、安定した操業性が得られない場合がある。
炭素繊維製造用アクリル繊維の製造工程で発生する静電気をさらに抑制する点から、アミノ変性シリコーン(A)100重量部に対して、アセチレン系界面活性剤(D)の割合は0.1〜12重量部であることが好ましい。該割合は、好ましくは0.2〜11重量部、より好ましくは0.2〜10重量部、さらに好ましくは0.5〜8重量部である。該割合が0.1重量部未満の場合、炭素繊維製造用アクリル繊維の製造工程で発生する静電気をさらに抑制することができない場合がある。一方、該割合が12重量部超の場合、ガムアップ及びタールが発生し易くなることがある。
(その他の界面活性剤)
本発明のアクリル繊維処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記のエーテルカルボン酸化合物(B)、ポリオキアルキレンアルキルエーテル(C)及びアセチレン系界面活性剤(D)以外の界面活性剤を含有してもよい。界面活性剤は、乳化剤、制電剤等として使用される。界面活性剤としては、特に限定されず、エーテルカルボン酸化合物(B)、ポリオキアルキレンアルキルエーテル(C)及びアセチレン系界面活性剤(D)以外の非イオン性界面活性剤、アニオン性界面活性剤、カチオン性界面活性剤及び両性界面活性剤から、公知のものを適宜選択して使用することができる。界面活性剤は、1種でもよく、2種以上を併用してもよい。
ポリオキアルキレンアルキルエーテル(C)及びアセチレン系界面活性剤(D)以外の非イオン性界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアリールフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノミリスチレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンジミリスチレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレート等のソルビタンエステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンひまし油エーテル等のポリオキシアルキレンひまし油エーテル;ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル等のポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテル;オキシエチレン−オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体;オキシエチレン−オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体の末端ショ糖エーテル化物;等を挙げることができる。非イオン性界面活性剤の重量平均分子量は、2000以下が好ましく、200〜1800がより好ましく、300〜1500がより好ましく、500〜1000がさらに好ましい。
エーテルカルボン酸化合物(B)以外のアニオン性界面活性剤としては、例えば、オレイン酸ナトリウム塩、パルミチン酸カリウム塩、オレイン酸トリエタノールアミン塩等の脂肪酸塩;ヒドロキシ酢酸カリウム塩、乳酸カリウム塩等のヒドロキシル基含有カルボン酸塩;トリメリット酸カリウム、ピロメリット酸カリウム等のカルボキシル基多置換芳香族化合物の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸ナトリウム塩等のアルキルベンゼンスルホン酸塩;ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルスルホン酸カリウム塩等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸塩;ステアロイルメチルタウリンナトリウム、ラウロイルメチルタウリンナトリウム、ミリストイルメチルタウリンナトリウム、パルミトイルメチルタウリンナトリウム等の高級脂肪酸アミドスルホン酸塩;ラウロイルサルコシン酸ナトリウム等のN−アシルサルコシン酸塩;オクチルホスホネートカリウム塩等のアルキルホスホン酸塩;フェニルホスホネートカリウム塩等の芳香族ホスホン酸塩;2−エチルヘキシルホスホネートモノ2−エチルヘキシルエステルカリウム塩等のアルキルホスホン酸アルキルリン酸エステル塩;アミノエチルホスホン酸ジエタノールアミン塩等の含窒素アルキルホスホン酸塩;2−エチルヘキシルサルフェートナトリウム塩等のアルキル硫酸エステル塩;ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルサルフェートナトリウム塩等のポリオキシアルキレン硫酸エステル塩;ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸モノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩等を挙げる事ができる。
カチオン性界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、ミリスチルトリメチルアンモニウムクロライド、パルミチルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルトリメチルアンモニウムクロライド、セチルトリメチルアンモニウムクロライド、ベヘニルトリメチルアンモニウムクロライド、ヤシ油アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、牛脂アルキルトリメチルアンモニウムクロライド、ステアリルトリメチルアンモニウムブロマイド、ヤシ油アルキルトリメチルアンモニウムブロマイド、セチルトリメチルアンモニウムメトサルフェート、オレイルジメチルエチルアンモニウムエトサルフェート、ジオクチルジメチルアンモニウムクロライド、ジラウリルジメチルアンモニウムクロライド、ジステアリルジメチルアンモニウムクロライド、オクタデシルジエチルメチルアンモニウムサルフェート、等のアルキル第四級アンモニウム塩;(ポリオキシエチレン)ラウリルアミノエーテル乳酸塩、ステアリルアミノエーテル乳酸塩、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルメチルアミノエーテルジメチルホスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルエチルアンモニウムエトサルフェート、ジ(ポリオキシエチレン)硬化牛脂アルキルエチルアミンエトサルフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ラウリルメチルアンモニウムジメチルホスフェート、ジ(ポリオキシエチレン)ステアリルアミン乳酸塩等の(ポリオキシアルキレン)アルキルアミノエーテル塩;N−(2−ヒドロキシエチル)−N,N-ジメチル−N−ステアロイルアミドプロピルアンモニウムナイトレート、ラノリン脂肪酸アミドプロピルエチルジメチルアンモニウムエトサルフェート、ラウロイルアミドエチルメチルジエチルアンモニウムメトサルフェート等のアシルアミドアルキル第四級アンモニウム塩;ジパルミチルポリエテノキシエチルアンモニウムクロライド、ジステアリルポリエテノキシメチルアンモニウムクロライド等のアルキルエテノキシ第四級アンモニウム塩;ラウリルイソキノリニウムクロライド等のアルキルイソキノリニウム塩;ラウリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド、ステアリルジメチルベンジルアンモニウムクロライド等のベンザルコニウム塩;ベンジルジメチル{2−[2−(p−1,1,3,3−テトラメチルブチルフェノオキシ)エトオキシ]エチル}アンモニウムクロライド等のベンゼトニウム塩;セチルピリジニウムクロライド等のピリジニウム塩;オレイルヒドロキシエチルイミダゾリニウムエトサルフェート、ラウリルヒドロキシエチルイミダゾリニウムエトサルフェート等のイミダゾリニウム塩;N−ココイルアルギニンエチルエステルピロリドンカルボン酸塩、N−ラウロイルリジンエチルエチルエステルクロライド等のアシル塩基性アミノ酸アルキルエステル塩;ラウリルアミンクロライド、ステアリルアミンブロマイド、硬化牛脂アルキルアミンクロライド、ロジンアミン酢酸塩等の第一級アミン塩;セチルメチルアミンサルフェート、ラウリルメチルアミンクロライド、ジラウリルアミン酢酸塩、ステアリルエチルアミンブロマイド、ラウリルプロピルアミン酢酸塩、ジオクチルアミンクロライド、オクタデシルエチルアミンハイドロオキサイド等の第二級アミン塩;ジラウリルメチルアミンサルフェート、ラウリルジエチルアミンクロライド、ラウリルエチルメチルアミンブロマイド、ジエタノールステアリルアミドエチルアミントリヒドロキシエチルホスフェート塩、ステアリルアミドエチルエタノールアミン尿素重縮合物酢酸塩等の第三級アミン塩;脂肪酸アミドグアニジニウム塩;ラウリルトリエチレングリコールアンモニウムハイドロオキサイド等のアルキルトリアルキレングリコールアンモニウム塩等を挙げることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
(その他成分)
本発明のアクリル繊維処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記した成分以外の他の成分を含有してもよい。他の成分としては、酸性成分、酸性リン酸エステル、フェノール系、アミン系、硫黄系、リン系、キノン系等の酸化防止剤;高級アルコール・高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、スルホン酸塩、高級アルコール・高級アルコールエーテルのリン酸エステル塩、第4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤、アミン塩型カチオン系界面活性剤等の制電剤;高級アルコールのアルキルエステル、高級アルコールエーテル、ワックス類等の平滑剤;抗菌剤;防腐剤;防錆剤;および吸湿剤等が挙げられる。
酸性成分としては、例えば、ギ酸、酢酸、乳酸、ヒドロキシ酢酸、塩酸、硝酸、リン酸、ホウ酸、フッ化水素酸、酪酸、クロトン酸、吉草酸、カプロン酸、エナント酸、カプリル酸、ペラルゴン酸、カプリン酸、ラウリン酸、ミリスチン酸、ミリストレイン酸、ペンタデカン酸、パルミチン酸、パルミトレイン酸、イソセチル酸、マルガリン酸、ステアリン酸、イソステアリン酸、オレイン酸、エライジン酸、バクセン酸、リノール酸、リノレン酸、アラキジン酸、イソエイコサ酸、ガドレイン酸、エイコセン酸、ドコサン酸、イソドコサン酸、エルカ酸、テトラコサン酸、イソテトラコサン酸、ネルボン酸、セロチン酸、モンタン酸、メリシン酸、シュウ酸、マロン酸、コハク酸、グルタル酸、アジピン酸、ピメリン酸、スペリン酸、アゼライン酸、セバチン酸、ウンデンカン二酸、ドデカン二酸、トリデカン二酸、テトラデカン二酸、ペンタデカン二酸、安息香酸、ケイ皮酸、ナフトエ酸、トルイル酸、フタル酸、イソフタル酸、テレフタル酸、トリメリット酸、ピロメリット酸、タルトロン酸、グリセリン酸、ヒドロキシ酪酸、リンゴ酸、酒石酸、シトラマル酸、クエン酸、ロイシン酸、メバロン酸、パントイン酸、リシノール酸、リシネライジン酸、セレブロン酸、キナ酸、シキミ酸、サリチル酸、クレオソート酸、バニリン酸、シリング酸、ピロカテク酸、レソルシル酸、プロトカテク酸、ゲンチジン酸、オルセリン酸、没食子酸、マンデル酸、ベンジル酸、アトロラクチン酸、メリロト酸、フロレト酸、クマル酸、ウンベル酸、コーヒー酸、フェルラ酸、シナピン酸及びこれらの誘導体などが挙げられる。
また、本発明の処理剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、上記のアミノ変性シリコーン以外の変性シリコーンを含んでいてもよい。変性シリコーンとしては、例えば、アミノポリエーテル変性シリコーン、アマイド変性シリコーン、アマイドポリエーテル変性シリコーン、エポキシ変性シリコーン、ポリエーテル変性シリコーン、エポキシポリエーテル変性シリコーン(例えば、特許4616934号参照)、カルビノール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、メタクリレート変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーンなどが挙げられ、一種類の変性シリコーンを用いてもよいし、複数の変性シリコーンを併用してもよい。
本発明のアクリル繊維処理剤は、アミノ変性シリコーン(A)、エーテルカルボン酸化合物(B)、必要に応じてポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)、アセチレン系界面活性剤(D)が水に溶解、可溶化、乳化又は分散された状態であることが好ましい。
アクリル繊維処理剤全体に占める水の重量割合、不揮発分の重量割合については、特に限定はない。例えば、本発明のアクリル繊維処理剤を輸送する際の輸送コストや、エマルジョン粘度に因るところの取扱い性等を考慮して適宜決定すればよい。アクリル繊維処理剤全体に占める水の重量割合は、0.1〜99.9重量%が好ましく、10〜99.5重量%がさらに好ましく、50〜99重量%が特に好ましい。アクリル繊維処理剤全体に占める不揮発分の重量割合(濃度)は、0.01〜99.9重量%が好ましく、0.5〜90重量%がさらに好ましく、1〜50重量%が特に好ましい。
本発明のアクリル繊維処理剤は、上記で説明した成分を混合することによって製造することができる。上記で説明した成分を乳化・分散させる方法については特に限定されず、公知の手法が採用できる。このような方法としては、たとえば、アクリル繊維処理剤を構成する各成分を攪拌下の温水中に投入して乳化分散する方法や、アクリル繊維処理剤を構成する各成分を混合し、ホモジナイザー、ホモミキサー、ボールミル等を用いて機械せん断力を加えつつ、水を徐々に投入して転相乳化する方法等が挙げられる。
本発明のアクリル繊維処理剤は、炭素繊維製造用アクリル繊維(プレカーサー)の処理剤(プレカーサー処理剤)として好適に使用できる。プレカーサー以外のアクリル繊維の紡糸油剤として使用してもよい。
プレカーサー製糸工程や耐炎化工程における良好な繊維束の集束性を付与できる点から、本発明のアクリル繊維処理剤の不揮発分の25℃における粘度は、10〜10000mPa・sが好ましく、10〜5000mPa・sがより好ましく、50〜1000mPa・sがさらに好ましい。該粘度が10mPa・s未満になると、プレカーサー製糸工程や耐炎化工程における繊維束の集束性が悪化する場合がある。また、該粘度が10000mPa・sを超えると、プレカーサー製糸工程や耐炎化工程における良好な繊維束の集束性を付与できても、処理剤の粘度が高くなり過ぎ、処理剤の取扱い性が悪化する場合がある。
[炭素繊維製造用アクリル繊維、その製造方法及び炭素繊維の製造方法]
本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維(プレカーサー)は、プレカーサーの原料アクリル繊維に上記のアクリル繊維処理剤を付着させて製糸したものである。本発明のプレカーサーの製造方法は、プレカーサーの原料アクリル繊維に上記のアクリル繊維処理剤を付着させて製糸する製糸工程を含むものである。
本発明の炭素繊維の製造方法は、プレカーサーの原料アクリル繊維に上記のアクリル繊維処理剤を付着させて、プレカーサーを製糸する製糸工程と、その製糸工程で製造されたプレカーサーを200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程と、前記耐炎化繊維をさらに300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程とを含むものである。
本発明の炭素繊維の製造方法によれば、本発明のアクリル繊維処理剤を用いているので、耐炎化処理工程の初期で繊維束内部にまで処理剤を均一に付与することができ、耐炎化処理工程の後期で処理剤を皮膜化させて繊維保護することができるため、繊維間の融着や毛羽発生を抑制でき高品質の炭素繊維を製造できる。
製糸工程は、プレカーサーの原料アクリル繊維にアクリル繊維処理剤を付着させてプレカーサーを製糸する工程であり、付着処理工程と延伸工程とを含む。
付着処理工程は、プレカーサーの原料アクリル繊維を紡糸した後、アクリル繊維処理剤を付着させる工程である。つまり、付着処理工程でプレカーサーの原料アクリル繊維にアクリル繊維処理剤を付着させる。またこのプレカーサーの原料アクリル繊維は紡糸直後から延伸されるが、付着処理工程後の高倍率延伸を特に「延伸工程」と呼ぶ。延伸工程は高温水蒸気をもちいた湿熱延伸法でもよいし、熱ローラーをもちいた乾熱延伸法でもよい。
プレカーサーは、少なくとも95モル%以上のアクリロニトリルと、5モル%以下の耐炎化促進成分とを共重合させて得られるポリアクリロニトリルを主成分とするアクリル繊維から構成される。耐炎化促進成分としては、アクリロニトリルに対して共重合性を有するビニル基含有化合物が好適に使用できる。プレカーサーの単繊維繊度については、特に限定はないが、性能と製造コストのバランスから、好ましくは0.1〜2.0dTexである。また、プレカーサーの繊維束を構成する単繊維の本数についても特に限定はないが、性能と製造コストのバランスから、好ましくは1,000〜96,000本である。
アクリル繊維処理剤は、製糸工程のどの段階でプレカーサーの原料アクリル繊維に付着させてもよいが、延伸工程前に一度付着させておくことが好ましい。延伸工程前の段階であればどの段階でも、例えば紡糸直後に付着させてもよい。さらに延伸工程後のどの段階で再度付着させてもよく、例えば、延伸工程直後に再度付着させてもよいし、巻取り段階で再度付着させてもよいし、耐炎化処理工程の直前に再度付着させてもよい。その付着方法に関しては、ローラー等を使用して付着してもよいし、浸漬法、スプレー法等で付着してもよい。
付着処理工程において、アクリル繊維処理剤の付与率は、繊維−繊維間の膠着防止効果や融着防止効果を得ることと、炭素化処理工程において処理剤のタール化物によって炭素繊維の品質低下を防止することとのバランスからは、プレカーサーの重量に対して好ましくは0.1〜2重量%であり、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%である。アクリル繊維処理剤の付与率が0.1重量%未満であると、単繊維間の膠着、融着を十分に防止できず、得られる炭素繊維の強度が低下することがある。一方、アクリル繊維処理剤の付与率が2重量%超であると、アクリル繊維処理剤が単繊維間を必要以上に覆うため、耐炎化処理工程において繊維への酸素の供給が妨げられ、得られる炭素繊維の強度が低下することがある。なお、ここでいうアクリル繊維処理剤の付与率とは、プレカーサー重量に対するアクリル繊維処理剤の付着した不揮発分重量の百分率で定義される。
耐炎化処理工程は、アクリル繊維処理剤が付着したプレカーサーを200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する工程である。酸化性雰囲気とは、通常、空気雰囲気であればよい。酸化性雰囲気の温度は好ましくは230〜280℃である。耐炎化処理工程では、付着処理後のアクリル繊維に対して、延伸比0.90〜1.10(好ましくは0.95〜1.05)の張力をかけながら、20〜100分間(好ましくは30〜60分間)にわたって熱処理が行われる。この耐炎化処理では、分子内環化および環への酸素付加を経て、耐炎化構造を持つ耐炎化繊維が製造される。
炭素化処理工程は、耐炎化繊維をさらに300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる工程である。炭素化処理工程では、まず、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中、300℃から800℃まで温度勾配を有する焼成炉で、耐炎化繊維に対して、延伸比0.95〜1.15の張力をかけながら、数分間熱処理して、予備炭素化処理工程(第一炭素化処理工程)を行うのが好ましい。その後、より炭素化を進行させ、且つグラファイト化を進行させるために、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中で、第一炭素化処理工程に対して延伸比0.95〜1.05の張力をかけながら、数分間熱処理して、第二炭素化処理工程を行い、耐炎化繊維が炭素化される。第二炭素化処理工程における熱処理温度の制御については、温度勾配をかけながら、最高温度を1000℃以上(好ましくは1000〜2000℃)とすることがよい。この最高温度は、所望する炭素繊維の要求特性(引張強度、弾性率等)に応じて適宜選択して決定される。
本発明の炭素繊維の製造方法では、弾性率がさらに高い炭素繊維が所望される場合は、炭素化処理工程に引き続いて、黒鉛化処理工程を行うこともできる。黒鉛化処理工程は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中、炭素化処理工程で得られた繊維に対して張力をかけながら、2000〜3000℃の温度で行われる。
このようにして得られた炭素繊維には、目的に応じて、複合材料とした時のマトリックス樹脂との接着強度を高めるための表面処理を行うことができる。表面処理方法としては、気相または液相処理を採用でき、生産性の観点からは、酸、アルカリなどの電解液による液相処理が好ましい。さらに、炭素繊維の加工性、取り扱い性を向上させるために、マトリックス樹脂に対して相溶性の優れる各種サイジング剤を付与することもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、ここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示されるパーセント(%)、部は特に限定しない限り、「重量%」、「重量部」を示す。各特性値の測定は以下に示す方法に基づいて行った。
<処理剤の付与率>
処理剤付与後のプレカーサーを水酸化カリウム/ナトリウムブチラートでアルカリ溶融した後、水に溶解して塩酸でpH1に調整した。これを亜硫酸ナトリウムとモリブデン酸アンモニウムを加えて発色させ、ケイモリブデンブルーの比色定量(波長815mμ)を行い、ケイ素の含有量を求めた。ここで求めたケイ素含有量と予め同法で求めた処理剤中のケイ素含有量の値を用いて、アクリル繊維処理剤の付与率(重量%)を算出した。
<静電気発生量>
処理剤付与後のプレカーサーストランドを温湿度20℃×65%RHの条件下で100m/分の速度で走行させて、走行時の静電気発生量を測定し、測定回数3回の平均値を静電気発生量(kV)とした。静電気発生量が多いと、プレカーサーストランドの集束性が乱れ、毛羽立ちや捲付等の原因となり、炭素繊維の強度低下の原因となる。
<ゲル化性>
ステンレス板を160℃に加熱し、その上に各エマルションを2滴滴下し、所定の時間ごとに液状かゲル状かを確認した。ゲル状になると粘着性が発現し、断糸等が起こるためゲル化し難いものほど優れていることを意味する。指標は次の通りで、◎及び○を合格とした。
◎:160℃30分で液状。
○:160℃20分で液状かつ160℃30分で一部ゲルもしくはゲル。
×:160℃20分でゲルもしくは一部ゲル。
<タール化性>
直径φ60mmのアルミカップ上に各処理剤を、その不揮発分の重量が1gになるように採取し、温風乾燥機にて105℃×3時間処理して水分を除去した。得られた試料(1g)を160℃×3時間処理し、試料の状態を下記基準で目視判定した。タール状になると硬い固形物が発現し毛羽立ち等の原因となり、炭素繊維の強度低下の原因となる。
◎:タール化物が無い。
○:タール化物が少ない。
×:タール化物が多い。
<耐擦過性>
TM式摩擦抱合力試験機TM−200(大栄科学精機社製)により、ジグザクに配置した鏡面クロムメッキステンレス針3本を介して50gの張力でプレカーサーストランド(12K)を1000回擦過させ(往復運動速度300回/分)、プレカーサーストランドの毛羽立ちの状態を下記基準で目視判定した。
◎:擦過前と同じく毛羽発生が全く見られない
○:数本の毛羽が見られるが耐擦過性良好。
△:毛羽立ちがやや多く若干耐擦過性に劣る。
×:毛羽立ちが多く、著しい単糸切れが見られる。耐擦過性不良。
<炭素繊維強度>
JIS−R−7601に規定されているエポキシ樹脂含浸ストランド法に準じ測定し、測定回数10回の平均値を炭素繊維強度(GPa)とした。
〔実施例1〕
表1に示す処理剤の不揮発分組成になるように、アミノ変性シリコーンA1、エーテルカルボン酸化合物B1及び水を混合して水系乳化し、処理剤の不揮発分に占めるアミノ変性シリコーンA1の重量割合が90重量%、エーテルカルボン酸化合物B1の重量割合が10重量%である処理剤(プレカーサー処理剤)を調製した。なお、処理剤の不揮発分濃度は20重量%とした。
次いで、調整した処理剤をさらに水で希釈し、不揮発分濃度が3.0重量%である処理液を得た。
処理液を97モル%のアクリロニトリルと3モル%のイタコン酸を共重合させて得られるプレカーサーの原料アクリル繊維に、付与率1.0重量%となるように付着し、延伸工程(スチーム延伸、延伸倍率2.1倍)を経てプレカーサーを作製した(単繊維繊度0.8dtex,24,000フィラメント)。このプレカーサーを250℃の耐炎化炉にて60分間耐炎化処理し次いで窒素雰囲気下300〜1400℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維に転換した。各特性値の評価結果を表1に示す。
〔実施例2〜22、比較例1〜6〕
実施例1において、表1〜3に示す処理剤の不揮発分組成になるように処理液を調整した以外は実施例1と同様にして、処理剤付着後のプレカーサーおよび炭素繊維を得た。各特性値の評価結果を表1〜3に示す。
なお、表1〜3の不揮発分組成の詳細は以下である。
<アミノ変性シリコーン(A)>
アミノ変性シリコーンA1(25℃粘度:250mm/s、アミノ当量:7600g/mol、ジアミン型)
アミノ変性シリコーンA2(25℃粘度:1300mm/s、アミノ当量:1700g/mol、ジアミン型)
アミノ変性シリコーンA3(25℃粘度:1700mm/s、アミノ当量:3800g/mol、モノアミン型)
<エーテルカルボン酸化合物(B)>
エーテルカルボン酸化合物B1:オキシエチレン基が10モル付加されたドデシルエーテル酢酸
エーテルカルボン酸化合物B2:オキシエチレン基が10モル付加されたドデシルエーテル酢酸Na塩
エーテルカルボン酸化合物B3:オキシエチレン基が4.5モル付加されたドデシルエーテル酢酸
エーテルカルボン酸化合物B4:オキシエチレン基が7モル付加されたドデシルフェニルエーテル酢酸
エーテルカルボン酸化合物B5:オキシエチレン基が8モル付加されたオレイルエーテル酢酸
<ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)>
ポリオキシエチレンアルキルエーテルC1:オキシエチレン基が3モル付加された炭素数が12〜14のアルキルエーテル
ポリオキシエチレンアルキルエーテルC2:オキシエチレン基が9モル付加された炭素数が12〜14のアルキルエーテル
ポリオキシエチレンアルキルエーテルC3:オキシエチレン基が20モル付加された炭素数が12〜14のアルキルエーテル
<アセチレン系界面活性剤(D)>
アセチレン系界面活性剤D1:2,4,7,9−テトラメチル−5−デシン−4,7−ジオールのエチレンオキサイド5モル付加物(式(8)において、R、Rがともにメチル基、R、Rがともにイソブチル基、Rが水素原子、AOがエチレンオキサイドであり、n+m=5である。)
アセチレン系界面活性剤D2:3,6−ジメチル−4−オクチン−3,6−ジオール(式(6)において、R、Rがともにメチル基、R、Rがともにエチル基、Rが水素原子である。)
<スルホコハク酸エステル化合物(b1)>
スルホコハク酸エステル化合物b1:オキシエチレン基が3モル付加された炭素数が12〜14のスルホコハク酸エステル
<リン酸エステル化合物(b2)>
リン酸エステル化合物b2:オキシエチレン基が9モル付加された炭素数が12〜14のリン酸エステル
<酸性成分(e)>
酸性成分e1:酢酸
酸性成分e2:リン酸
Figure 2019007097
Figure 2019007097
Figure 2019007097
表1〜3から明らかなように、実施例のアクリル繊維処理剤は、エーテルカルボン酸化合物(B)を含まない比較例のアクリル繊維処理剤と比較して、炭素繊維製造用アクリル繊維の製造工程で発生する静電気及びガムアップを抑制し且つタールの発生を同時に抑制することができ、高強度、高品質の炭素繊維を得ることができる。

Claims (10)

  1. アミノ変性シリコーン(A)及びエーテルカルボン酸化合物(B)を含む、アクリル繊維処理剤。
  2. 前記アミノ変性シリコーン(A)100重量部に対して、前記エーテルカルボン酸化合物(B)の割合が0.1〜30重量部である、請求項1に記載のアクリル繊維処理剤。
  3. 処理剤の不揮発分に占める前記アミノ変性シリコーン(A)の重量割合が40〜95重量%である、請求項1又は2に記載のアクリル繊維処理剤。
  4. さらに、ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)を含有する、請求項1〜3のいずれかに記載のアクリル繊維処理剤。
  5. 前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)が、下記一般式(1)で示される化合物を含む、請求項4に記載のアクリル繊維処理剤。
    Figure 2019007097
    (一般式(1)中、Rは炭素数6〜22のアルキル基を示す。AOは炭素数2〜4のオキシアルキレン基を示す。jは1〜50の数である。)
  6. 前記アミノ変性シリコーン(A)100重量部に対して、前記エーテルカルボン酸化合物(B)と前記ポリオキシアルキレンアルキルエーテル(C)の合計の割合が5〜50重量部である、請求項4又は5に記載のアクリル繊維処理剤。
  7. さらに、アセチレン系界面活性剤(D)を含む、請求項1〜6のいずれかに記載のアクリル繊維処理剤。
  8. 前記アミノ変性シリコーン(A)100重量部に対して、前記アセチレン系界面活性剤(D)の割合が0.1〜12重量部である、請求項7に記載のアクリル繊維処理剤。
  9. 炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に、請求項1〜8のいずれかに記載のアクリル繊維処理剤を付着させてなる、炭素繊維製造用アクリル繊維。
  10. 炭素繊維製造用アクリル繊維の原料アクリル繊維に、請求項1〜8のいずれかに記載のアクリル繊維処理剤を付着させて製糸する製糸工程と、200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程と、前記耐炎化繊維をさらに300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程とを含む、炭素繊維の製造方法。
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