JP5277005B2 - 炭素繊維製造用アクリル繊維油剤およびそれを用いた炭素繊維の製造方法 - Google Patents

炭素繊維製造用アクリル繊維油剤およびそれを用いた炭素繊維の製造方法 Download PDF

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Description

本発明は、強度の優れた炭素繊維を提供するための炭素繊維製造用アクリル繊維油剤およびそれを用いた炭素繊維の製造方法に関する。より詳しくは、炭素繊維製造用アクリル繊維(以下、プレカーサーと称することがある)に使用した場合に、優れた強度が得られる炭素繊維製造用アクリル繊維油剤(以下、プレカーサー油剤と称することがある)と、それを用いた炭素繊維の製造方法とに関する。
炭素繊維はその優れた機械的特性を利用して、マトリックス樹脂と称されるプラスチックとの複合材料用の補強繊維として、航空宇宙用途、スポーツ用途、一般産業用途等に幅広く利用されている。
炭素繊維を製造する方法としては、プレカーサーを200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換し、続いて300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭素化する方法が一般的である。これらの高熱による焼成時には、単繊維同士の融着が発生し、得られた炭素繊維の品質、品位を低下させるという問題がある。
この融着を防止するため、優れた耐熱性および繊維−繊維間の平滑性による優れた剥離性を有するシリコーン系油剤、特に架橋反応により耐熱性をさらに向上出来るアミノ変性シリコーン系油剤をプレカーサーに付与する技術が多数提案され(特許文献1〜2参照)、工業的に広く利用されている。しかし、これらシリコーン系油剤であっても、十分な強度を有する炭素繊維が得られないことがあった。
特開昭60−181322号公報 特開2001−172879号公報
かかる従来の技術背景に鑑み、本発明の目的は、優れた炭素繊維強度が得られる炭素繊維製造用アクリル繊維油剤と、それを用いた炭素繊維の製造方法とを提供することにある。
一般的に、シリコーン系油剤は、工業的に安全にかつプレカーサーに均一に付着させるため、水中に分散したエマルジョンとされる。そのため、使用されるシリコーン成分が自己乳化性を有しない場合においては、各種界面活性剤などが乳化剤成分として併用され、エマルジョン化される。
本発明者らは、上記課題を解決するべく鋭意検討した結果、この乳化剤成分が、水分を除去した後の絶乾状態において、シリコーン成分と相溶しない場合が多く、そのようなシリコーン系油剤をエマルジョンとしてプレカーサーに付与、乾燥させた際に、シリコーン成分と乳化剤成分が分離してしまい、均質にプレカーサー表面を被覆できていないこと、このことがプレカーサーを炭素繊維に転換する焼成工程における焼成斑の一因となり、十分な強度を有する炭素繊維が得られないことを見出した。そして、特定の変性シリコーンおよび界面活性剤を必須成分として含有する炭素繊維製造用アクリル繊維油剤であれば、油剤絶乾状態における皮膜の均一性を向上させることができ、上記課題を解決できるという知見を得て、本発明に到達した。
すなわち、本発明はアマイドポリエーテル変性シリコーンおよび界面活性剤を必須に含有する炭素繊維製造用アクリル繊維油剤であって、油剤の不揮発分全体に占める前記アマイドポリエーテル変性シリコーンの重量割合が1〜95重量%であり、前記界面活性剤の重量割合が5〜50重量%である炭素繊維製造用アクリル繊維油剤である。
また本発明は、アミノ変性シリコーンをさらに含有し、油剤の不揮発分全体に占める前記アマイドポリエーテル変性シリコーンと前記アミノ変性シリコーンの合計の重量割合が30〜95重量%であり、アマイドポリエーテル変性シリコーンとアミノ変性シリコーンとの重量比が5/95〜95/5であることが好ましく、前記アマイドポリエーテル変性シリコーンとアミノ変性シリコーンとの重量比は、5/95〜45/55または55/45〜95/5であることがさらに好ましい。
前記アマイドポリエーテル変性シリコーンは、アミド結合と(ポリ)オキシアルキレン基の両方を有する置換基によって変性された変性ジメチルポリシロキサン、またはアミド結合を有する置換基と(ポリ)オキシアルキレン基を有する置換基によって変性された変性ジメチルポリシロキサンであることが好ましい。
また、前記アマイドポリエーテル変性シリコーンは、下記一般式(1)で示される化合物、下記一般式(2)で示される化合物、下記一般式(3)で示される化合物および下記一般式(4)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物であることが好ましい。
Figure 0005277005
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Figure 0005277005
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但し、式(1)〜(4)中の記号は、各式独立して次の意味を表す。
A:炭素数2〜4のアルキレン基を示す。(AO)中のAは同一であってもよく、異なっていてもよい。
B、D:炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基または水酸基を示す。BとDは同一であってもよく、異なっていてもよい。
Ra:炭素数1〜3のアルキレン基を示す。
Ra’:炭素数1〜3のアルキレン基を示す。RaとRa’は同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rb:炭素数1〜6のアルキレン基を示す。
Rc:水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を示す。
Rd:炭素数1〜3のアルキレン基を示す。
Re:水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を示す。
Rf:炭素数1〜3のアルキレン基を示す。
Rf’:炭素数1〜3のアルキレン基を示す。RfとRf’は同一であってもよく、異なっていてもよい。
Rg:炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基または−RORで示されるアルコキシアルキル基(Rは炭素数1〜3のアルキレン基、Rは炭素数1〜18のアルキル基を示す)を示す。
r:1〜50の整数を示す。
p:1〜1000の整数を示す。
q:1〜100の整数を示す。
s:1〜100の整数を示す。
また、本発明にかかる炭素繊維製造用アクリル繊維油剤は、水中に分散したエマルジョンとなっていることが好ましい。
また、本発明にかかる炭素繊維の製造方法は、上記炭素繊維製造用アクリル繊維油剤を炭素繊維製造用アクリル繊維に付着させる付着処理工程と、付着処理後のアクリル繊維を200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程と、前記耐炎化繊維をさらに300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程とを含む製造方法である。
本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維油剤は、これを予めプレカーサーに付着させる処理を行うことによって、炭素繊維製造における耐炎化処理工程および炭素化処理工程などの焼成工程で焼成斑を防止し、炭素繊維の強度を向上させることができる。また、本発明の炭素繊維の製造方法では、この炭素繊維製造用アクリル繊維油剤を付着させるので、高強度の炭素繊維を製造できる。
本発明の炭素繊維製造用アクリル繊維油剤(プレカーサー油剤)は、炭素繊維製造に用いられるアクリル繊維(炭素繊維のプレカーサー)に付与することを目的とした油剤であり、アマイドポリエーテル変性シリコーンおよび界面活性剤を必須に含有し、油剤の不揮発分全体に占める前記アマイドポリエーテル変性シリコーンの重量割合が1〜95重量%であり、前記界面活性剤の重量割合が5〜50重量%である、炭素繊維製造用アクリル繊維油剤である。以下に詳細に説明する。
〔アマイドポリエーテル変性シリコーン〕
本発明のプレカーサー油剤はアマイドポリエーテル変性シリコーンを必須成分として含む。アマイドポリエーテル変性シリコーンは、分子中にアミド結合を有する置換基と(ポリ)オキシアルキレン基を含む変性ジメチルポリシロキサンであれば特に限定されない。具体的には、アマイドポリエーテル変性シリコーンは、アミド結合と(ポリ)オキシアルキレン基の両方を有する置換基によって変性された変性ジメチルポリシロキサン、またはアミド結合を有する置換基と(ポリ)オキシアルキレン基を有する置換基によって変性された変性ジメチルポリシロキサンが挙げられる。より詳細には、ジメチルポリシロキサンのメチル基の一部がアミド結合と(ポリ)オキシアルキレン基の両方を有する置換基、即ち(ポリ)オキシアルキレン基含有アマイド鎖によって置換された変性ジメチルポリシロキサン、又はジメチルポリシロキサンのメチル基の一部がアミド結合を有する置換基即ちアマイド鎖によって置換され、且つ他のメチル基の一部が(ポリ)オキシアルキレン基を有する置換基、即ち(ポリ)オキシアルキレン鎖によって置換された変性ジメチルポリシロキサンとして示される。その変性ジメチルポリシロキサンの末端珪素のジメチル以外の残りの1つの置換基は、炭素数1〜3のアルキル基、すなわちメチル基、エチル基またはプロピル基でもよいし、炭素数1〜3のアルコキシ基、すなわちメトキシ基、エトキシ基またはプロポキシ基でもよいし、水酸基でもよい。
すなわち、末端珪素の置換基がトリメチル、ジメチルエチル、ジメチルプロピル、ジメチルメトキシ、ジメチルエトキシ、ジメチルプロポキシ、またはジメチルヒドロキシであるジメチルポリシロキサンの側鎖に、(ポリ)オキシアルキレン基含有のアマイド鎖、または(ポリ)オキシアルキレン基およびイミノ基を含有するアマイド鎖が結合した変性シリコーンでもよいし、末端珪素の置換基が前記同様のジメチルポリシロキサンの側鎖に(イミノ基含有)アマイド鎖及び(ポリ)オキシアルキレン鎖がそれぞれ独立して結合していてもよい。前者の(ポリ)オキシアルキレン基含有のアマイド鎖、または(ポリ)オキシアルキレン基およびイミノ基を含有するアマイド鎖が主鎖に結合したアマイドポリエーテル変性シリコーン、及び後者の(イミノ基含有)アマイド鎖と(ポリ)オキシアルキレン鎖がそれぞれ独立して主鎖と結合しているブランチ型のアマイドポリエーテル変性シリコーンは、ともにアミノ変性シリコーンを前駆体として合成することができる。前駆体として用いるアミノ変性シリコーンは特に限定はなく、シリコーンの主鎖に結合するアミノ基はモノアミン型でもよいし、ポリアミン型でもよく、また末端珪素ジメチル以外の置換基は、炭素数1〜3のアルキル基、即ちメチル基またはエチル基またはプロピル基でもよいし、炭素数1〜3のアルコキシ基、即ちメトキシ基またはエトキシ基またはプロポキシ基でもよいし、水酸基でもよく、合成したいアマイドポリエーテル変性シリコーンの構造にあわせて選択すればよい。また、アマイドポリエーテル変性シリコーンは1種または2種以上を使用してもよい。
前者のアマイドポリエーテル変性シリコーンはこれらのアミノ変性シリコーンと(ポリ)オキシアルキレンヒドロキシカルボン酸またはアルコキシ(ポリ)オキシアルキレンカルボン酸との縮合反応によって得られる。その具体例としては、上記一般式(1)及び(2)で示される化合物を挙げることができる。但し、上記一般式(1)は側鎖が(ポリ)オキシアルキレン基を含有するアマイド鎖である具体例を示し、上記一般式(2)は側鎖が(ポリ)オキシアルキレン基およびイミノ基を含有するアマイド鎖である具体例を示す。また、後者のアマイドポリエーテル変性シリコーンはこれらのアミノ変性シリコーンとカルボン酸またはヒドロキシカルボン酸またはアルコキシアルキルカルボン酸との縮合反応と珪素への(ポリ)オキシアルキレン鎖導入反応により得られる。その具体例としては上記一般式(3)及び(4)で示される化合物を挙げることができる。但し、上記一般式(3)は側鎖のアマイド鎖がイミノ基を含有しない場合の具体例を示し、上記一般式(4)は側鎖のアマイド鎖がイミノ基を含有する場合の具体例を示す。
アマイドポリエーテル変性シリコーンの(ポリ)オキシアルキレン基は特に限定はないが、乳化剤成分との親和性の観点、他のシリコーン成分を併用する場合はそのシリコーン成分との親和性の観点から、オキシアルキレン基の繰り返し単位は1〜50で且つオキシアルキレン基を含む側鎖が結合した主鎖の珪素の繰り返し数が1〜100であるものが好ましい。例えば、上記一般式(1)〜(4)で示される化合物であれば、オキシアルキレン基の繰り返し単位rが1〜50で且つオキシアルキレン基を含む側鎖が結合した主鎖の珪素の繰り返し数qは1〜100であるものが好ましく、rが1〜30で、qが10〜80であるものがさらに好ましく、rが5〜20で且つqが15〜60であるものが特に好ましい。さらに上記一般式(3)および(4)で示される化合物においては、オキシアルキレン基を含む側鎖が結合した主鎖の珪素の繰り返し数qと、(イミノ基含有)アマイド鎖が結合した主鎖の珪素の繰り返し数sについて、qとsの数量比に特に限定は無いが、qとsが同程度の数値の方が親水−疎水のバランス関係から、乳化剤成分との相溶性が優れる場合が多く、より好ましい。即ち、上記一般式(3)および(4)においては、rが5〜20で且つqが15〜60で且つsが1〜100であるものが好ましく、rが5〜20で且つqが15〜60で且つsが10〜80であるものがより好ましく、rが5〜20で且つqが15〜60で且つsが15〜60であるものが特に好ましい。
一般式(1)で示される化合物において、Aは炭素数2〜4のアルキレン基を示し、(AO)中のAは同一であってもよく、異なっていてもよい。つまり、オキシアルキレン基であるAOとしては、オキシエチレン基、オキシプロピレン基、オキシブチレン基が挙げられ、ポリオキシアルキレン基を構成するオキシアルキレン基は同一であってもよく、例えばオキシエチレン基とオキシプロピレン基のブロック共重合体やランダム共重合体のように異なっていてもよい。これらの中でも、水系乳化のし易さ、皮膜の均一性に寄与する乳化剤成分との相溶性、取り扱い性を重視し、親水性−疎水性のバランスと粘度をコントロールし易いという観点から、オキシエチレン基とオキシプロピレン基のランダム共重合体や、オキシエチレン基とオキシブチレン基のランダム共重合体が好ましく、さらには本件の重要因子である皮膜の均一性向上を最重視する観点からは(ポリ)オキシエチレンがより好ましい。
BおよびDは、炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基または水酸基を示す。BとDは同一であってもよく、異なっていてもよい。これらの中でも、架橋性をより重視する観点からは、BおよびDは、水酸基または炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましく、水酸基またはメトキシ基がより好ましく、水酸基が更に好ましい。一方、「付着処理工程でのガムアップ抑制」すなわち「工程通過性」、更には「製糸操業性」をより重視する観点からはBおよびDは炭素数1〜3のアルキル基、または炭素数1〜3のアルコキシ基が好ましく、炭素数1〜3のアルキル基がより好ましく、更に製造の容易さの観点も加味するとメチル基またはエチル基がより好ましい。
Raは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、炭素数は2〜3がさらに好ましい。Rbは炭素数1〜6のアルキレン基を示し、炭素数は1〜3がさらに好ましい。Rcは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を示し、アルキル基の炭素数は8〜16が好ましく、12〜14がさらに好ましい。rは1〜50の整数を示し、1〜30が好ましく、5〜25がより好ましく、5〜20がさらに好ましい。pは1〜1000の整数を示し、100〜800が好ましく、200〜700がより好ましく、300〜600がさらに好ましい。qは1〜100の整数を示し、10〜80が好ましく、15〜60がさらに好ましい。
一般式(2)で示される化合物において、A、B、D、Rb、Rc、r、pおよびqは、一般式(1)で示される化合物で説明した内容と同じである。Ra、Ra’は炭素数1〜3のアルキレン基を示し、炭素数は2〜3がさらに好ましい。RaとRa’は同一であってもよく、異なっていてもよい。
一般式(3)で示される化合物において、A、B、D、r、pおよびqは、一般式(1)で示される化合物で説明した内容と同じである。Rdは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、炭素数は2〜3がさらに好ましい。Reは水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を示し、アルキル基の炭素数は8〜15が好ましく、12〜14がさらに好ましい。Rfは炭素数1〜3のアルキレン基を示し、炭素数は2〜3がさらに好ましい。Rgは炭素数1〜18のアルキル基、ヒドロキシアルキル基または−RORで示されるアルコキシアルキル基示し、Rは炭素数1〜3のアルキレン基、Rは炭素数1〜18のアルキル基を示す。Rのアルキル基の炭素数は8〜16が好ましく、12〜14がさらに好ましい。sは1〜100の整数を示し、この範囲であれば特に限定はないが、sはqと同程度の方が好ましい。即ち、qとsの好ましい範囲としては、qが10〜80で且つsが10〜80であることが好ましく、qが10〜80で且つsが10〜80であることがより好ましく、qが15〜60でかつsが15〜60であることがさらに好ましい。
一般式(4)で示される化合物において、A、B、D、Rd、Re、Rg、r、p、qおよびsは、一般式(3)で示される化合物で説明した内容と同じである。Rf、Rf’は炭素数1〜3のアルキレン基を示し、炭素数は2〜3がさらに好ましい。RfとRf’は同一であってもよく、異なっていてもよい。
これら一般式(1)〜(4)で示される化合物のうち、目的である優れた炭素繊維強度を得るという観点からはいずれを用いてもよいが、製造工程数の観点からは、アミノ変性化工程とアマイド化工程と(ポリ)オキシアルキレン変性化(ポリエーテル変性化)工程の3工程を要する一般式(3)、(4)で示される化合物よりも、アミノ変性化工程とアマイド化工程の2工程で合成できる一般式(1)、(2)で示される化合物の方が好ましく、さらにアミノシリコーンの汎用性を考慮すると一般式(2)で示される化合物がより好ましい。
シリコーン化合物は元来その疎水性の強さから繊維との親和性が良好である。それに加えてアマイドポリエーテル変性シリコーンは、アミノ変性シリコーンと同様窒素原子を有しているため、炭素繊維製造用アクリル繊維(プレカーサー繊維)のニトリル基との相互作用により、より繊維との親和性が良好であり繊維表面に均一皮膜を形成しやすいという効果が得られる。さらにアマイドポリエーテル変性シリコーンは、アミノ変性シリコーンと異なり、その分子内に(ポリ)オキシアルキレン基を有しているため、乳化剤成分との親和性にも優れる。そのため、より繊維表面に均一皮膜を形成するという効果が得られやすい。その良好な均一皮膜の生成は、耐炎化工程や炭素化工程などの焼成工程で繊維保護に有利に働き、優れた強度の炭素繊維が得られる。
また、アマイドポリエーテル変性シリコーンは架橋性が低く、比較的耐熱性に優れるため、「付着処理工程でのガムアップ抑制」すなわち「工程通過性」、更には「製糸操業性」と「焼成工程での耐熱性」の相反する要求特性を両立しやすい。
アマイドポリエーテル変性シリコーンの25℃における粘度については特に限定はないが、繊維に付与後の各工程での飛散防止と取扱性の観点から100〜15,000mm/sが好ましく、300〜10,000mm/sがさらに好ましく、500〜5,000mm/sが特に好ましい。
アマイドポリエーテル変性シリコーンの窒素原子の含有量には特に限定はないが、もともと架橋性が低く、焼成工程で十分な耐熱性を得るという観点からは、窒素原子の変性当量は500〜10,000g/molが好ましく、500〜5,000g/molがさらに好ましく、500〜3,000g/molが特に好ましい。
例えば、上記一般式(1)で示される化合物においては、25℃における粘度が1,600mm/s、(ポリ)オキシアルキレン基含有アマイド鎖の変性当量が2,800g/mol(窒素原子の変性当量も2,800g/mol)であるアマイドポリエーテル変性シリコーン(末端珪素置換基がトリメチルであり、r=1〜20、p=10〜1,000、q=10〜80、s=10〜80であるものの混合物)や、25℃における粘度が2,000mm/sで、(ポリ)オキシアルキレン基含有アマイド鎖の変性当量が4,000g/mol(窒素原子の変性当量も4,000g/mol)のアマイドポリエーテル変性シリコーン(末端珪素置換基がトリメチルであり、r=1〜20、p=10〜1,000、q=10〜80、s=10〜80であるものの混合物)などが好適例として挙げられる。
上記一般式(2)で示される化合物においては、25℃における粘度が700mm/sで(ポリ)オキシアルキレン基およびイミノ基含有アマイド鎖の変性当量が3,000g/mol(窒素原子の変性当量は1,500g/molとなる)であるBY−16−891(末端珪素の置換基がトリメチルであり、r=1〜20、p=10〜1,000、q=10〜80、s=10〜80であるものの混合物);(東レダウコーニング製)や25℃における粘度が1,600mm/sで(ポリ)オキシアルキレン基およびイミノ基含有アマイド鎖の変性当量3,200g/mol(窒素原子の変性当量は1,600g/molとなる)であるBY−16−878(末端珪素の置換基がトリメチルであり、r=1〜20、p=10〜1,000、q=10〜80、s=10〜80であるものの混合物);(東レダウコーニング製)などが好適例として挙げられる。
上記一般式(3)で示される化合物においては、25℃における粘度が2,000mm/sで、アマイド鎖の変性当量2,800g/mol(窒素原子の変性当量も2,800g/mol)であるアマイドポリエーテル変性シリコーン(末端珪素置換基:ジメチルメトキシ、(ポリ)オキシアルキレン鎖の変性当量:2,800g/molであり、r=1〜20、p=10〜1,000、q=10〜60、s=10〜60であるものの混合物)や25℃における粘度が1,000mm/sで、アマイド鎖の変性当量1,500g/mol(窒素原子の変性当量も1,500g/mol)であるアマイドポリエーテル変性シリコーン(末端珪素の置換基:トリメチル、(ポリ)オキシアルキレン鎖の変性当量:2,000g/molであり、r=1〜20、p=10〜800、q=10〜60、s=10〜60であるものの混合物)などが好適例として挙げられる。
上記一般式(4)で示される化合物においては、25℃における粘度が2,000mm/sで、イミノ基含有アマイド鎖の変性当量が3,500g/mol(窒素原子の変性当量は1,750g/molとなる)であるアマイドポリエーテル変性シリコーン(末端珪素置換基:ジメチルメトキシ、(ポリ)オキシアルキレン鎖の変性当量:3,000g/molであり、r=1〜20、p=10〜1,000、q=10〜60、s=10〜60であるものの混合物)や、25℃における粘度が3,500mm/sで、イミノ基含有アマイド鎖の変性当量が2,000g/mol(窒素原子の変性当量は1,000g/molとなる)であるアマイドポリエーテル変性シリコーン(末端珪素置換基:トリメチル、(ポリ)オキシアルキレン鎖の変性当量:3,000g/molであり、r=1〜20、p=10〜1,000、q=10〜80、s=10〜80であるものの混合物)などが好適例として挙げられる。
〔界面活性剤〕
本発明のプレカーサー油剤においては、界面活性剤を必須成分として含む。界面活性剤は、乳化剤として使用され、プレカーサー油剤を乳化または分散させた状態にする成分であり、その状態にてプレカーサーに付与する際に、繊維への均一な付着性および作業環境の安全性を向上させることができる。
界面活性剤としては、特に限定されず、非イオン系界面活性剤、アニオン系界面活性剤、カチオン系界面活性剤および両性界面活性剤から、公知のものを適宜選択して使用することができる。界面活性剤は、1種または2種以上を併用してもよい。
非イオン界面活性剤としては、例えば、ポリオキシエチレンヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンオクチルエーテル、ポリオキシエチレンデシルエーテル、ポリオキシエチレンラウリルエーテル、ポリオキシエチレンセチルエーテル等のポリオキシアルキレン直鎖アルキルエーテル;ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレンイソセチルエーテル、ポリオキシエチレンイソステアリルエーテル等のポリオキシアルキレン分岐第一級アルキルエーテル;ポリオキシエチレン1−ヘキシルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン1−オクチルヘキシルエーテル、ポリオキシエチレン1−ヘキシルオクチルエーテル、ポリオキシエチレン1−ペンチルへプチルエーテル、ポリオキシエチレン1−へプチルペンチルエーテル等のポリオキシアルキレン分岐第二級アルキルエーテル;ポリオキシエチレンオレイルエーテル等のポリオキシアルキレンアルケニルエーテル;ポリオキシエチレンオクチルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル;ポリオキシエチレントリスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンジスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンスチリルフェニルエーテル、ポリオキシエチレントリベンジルフェニル、ポリオキシエチレンジベンジルフェニルエーテル、ポリオキシエチレンベンジルフェニルエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアリールフェニルエーテル;ポリオキシエチレンモノラウレート、ポリオキシエチレンモノオレート、ポリオキシエチレンモノステアレート、ポリオキシエチレンモノミリスチレート、ポリオキシエチレンジラウレート、ポリオキシエチレンジオレート、ポリオキシエチレンジミリスチレート、ポリオキシエチレンジステアレート等のポリオキシアルキレン脂肪酸エステル;ソルビタンモノパルミテート、ソルビタンモノオレート等のソルビタンエステル;ポリオキシエチレンソルビタンモノステアレート、ポリオキシエチレンソルビタンモノオレート等のポリオキシアルキレンソルビタン脂肪酸エステル;グリセリンモノステアレート、グリセリンモノラウレート、グリセリンモノパルミテート等のグリセリン脂肪酸エステル;ポリオキシアルキレンソルビトール脂肪酸エステル;ショ糖脂肪酸エステル;ポリオキシエチレンひまし油エーテル等のポリオキシアルキレンひまし油エーテル;ポリオキシエチレン硬化ひまし油エーテル等のポリオキシアルキレン硬化ひまし油エーテル;ポリオキシエチレンラウリルアミノエーテル、ポリオキシエチレンステアリルアミノエーテル等のポリオキシアルキレンアルキルアミノエーテル;オキシエチレン−オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体;オキシエチレン−オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体の末端アルキルエーテル化物;オキシエチレン−オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体の末端ショ糖エーテル化物;等を挙げることができる。これら非イオン界面活性剤の中でも、シリコーン化合物の水系乳化力に特に優れるという理由で、ポリオキシアルキレン分岐第一級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレン分岐第二級アルキルエーテル、ポリオキシアルキレンアルケニルエーテル、ポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル、ポリオキシアルキレン脂肪酸エステル、オキシエチレン−オキシプロピレンブロックまたはランダム共重合体、オキシエチレン−オキシプロピレンブロック共重合体の末端アルキルエーテル化物が好ましく、更に焼成工程での耐熱性にも優れるという理由でポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテルがより好ましい。
アニオン界面活性剤としては、例えば、オレイン酸、パルミチン酸、オレイン酸ナトリウム塩、パルミチン酸カリウム塩、オレイン酸トリエタノールアミン塩等の脂肪酸(塩);ヒドロキシ酢酸、ヒドロキシ酢酸カリウム塩、乳酸、乳酸カリウム塩等のヒドロキシル基含有カルボン酸(塩);ポリオキシエチレントリデシルエーテル酢酸(ナトリウム塩)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテル酢酸(塩);トリメリット酸カリウム、ピロメリット酸カリウム等のカルボキシル基多置換芳香族化合物の塩;ドデシルベンゼンスルホン酸(ナトリウム塩)等のアルキルベンゼンスルホン酸(塩);ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルスルホン酸(カリウム塩)等のポリオキシアルキレンアルキルエーテルスルホン酸(塩);ステアロイルメチルタウリン(ナトリウム)、ラウロイルメチルタウリン(ナトリウム)、ミリストイルメチルタウリンN(ナトリウム)、パルミトイルメチルタウリン(ナトリウム)等の高級脂肪酸アミドスルホン酸(塩);ラウロイルサルコシン酸(ナトリウム)等のN−アシルサルコシン酸(塩);オクチルホスホネート(カリウム塩)等のアルキルホスホン酸(塩); フェニルホスホネート(カリウム塩)等の芳香族ホスホン酸(塩);2−エチルヘキシルホスホネートモノ2−エチルヘキシルエステル(カリウム塩)等のアルキルホスホン酸アルキル燐酸エステル(塩);アミノエチルホスホン酸(ジエタノールアミン塩)等の含窒素アルキルホスホン酸(塩);2−エチルヘキシルサルフェート(ナトリウム塩)等のアルキル硫酸エステル(塩);ポリオキシエチレン2−エチルヘキシルエーテルサルフェート(ナトリウム塩)等のポリオキシアルキレン硫酸エステル(塩);ラウリルホスフェート(カリウム塩)、セチルホスフェート(カリウム塩)、ステアリルホスフェート(ジエタノールアミン塩)等のアルキル燐酸エステル(塩);ポリオキシエチレンラウリルエーテルホスフェート(カリウム塩)、ポリオキシエチレンオレイルエーテルホスフェート(トリエタノールアミン塩)等のポリオキシアルキレンアルキル(アルケニル)エーテル燐酸エステル(塩);ポリオキシエチレンノニルフェニルエーテルホスフェート(カリウム塩)、ポリオキシエチレンドデシルフェニルエーテルホスフェート(カリウム塩)等のポリオキシアルキレンアルキルフェニルエーテル燐酸エステル(塩);ジ−2−エチルヘキシルスルホコハク酸ナトリウム、ジオクチルスルホコハク酸ナトリウム等の長鎖スルホコハク酸塩、N−ラウロイルグルタミン酸ナトリウムモノナトリウム、N−ステアロイル−L−グルタミン酸ジナトリウム等の長鎖N−アシルグルタミン酸塩;等を挙げることができる。
カチオン系界面活性剤としては、例えば、ラウリルトリメチルアンモニウムクロライド、オレイルメチルエチルアンモニウムエトサルフェート等の第4級アンモニウム塩;(ポリオキシエチレン)ラウリルアミノエーテル乳酸塩、ステアリルアミノエーテル乳酸塩、(ポリオキシエチレン)ラウリルアミノエーテルトリメチルホスフェート塩等の(ポリオキシアルキレン)アルキルアミノエーテル塩等;を挙げることができる。
両性界面活性剤としては、例えば、2−ウンデシル−N,N−(ヒドロキシエチルカルボキシメチル)−2−イミダゾリンナトリウム、2−ココイル−2−イミダゾリニウムヒドロキサイド−1−カルボキシエチロキシ2ナトリウム塩等のイミダゾリン系両性界面活性剤;2−ヘプタデシル−N−カルボキシメチル−N−ヒドロキシエチルイミダゾリウムベタイン、ラウリルジメチルアミノ酢酸ベタイン、アルキルベタイン、アミドベタイン、スルホベタイン等のベタイン系両性界面活性剤;N−ラウリルグリシン、N−ラウリルβ−アラニン、N−ステアリルβ−アラニン等のアミノ酸型両性界面活性剤等が挙げられる。
これらの界面活性剤のなかでも、イオン性を持つ界面活性剤は乳化後の経時変化が起こる場合があり、またシリコーンの架橋性にも影響を与える場合がある。その為、経時安定性に優れ、シリコーン架橋性への影響も少なく、更にはシリコーンの乳化力にも優れるという理由から、非イオン性界面活性剤が好ましい。
〔アミノ変性シリコーン〕
本発明のプレカーサー油剤は、アミノ変性シリコーンをさらに含有するのが好ましい。アミノ変性シリコーンは、架橋性に優れる成分であり、焼成工程においてシリコーン架橋が促進され耐熱性が更に良好となり、焼成時の繊維保護の観点から好ましい成分である。しかし、アミノ変性シリコーンのみでは、その優れた架橋性のために、付着処理工程で油剤付与後の乾燥時においても架橋が促進されてしまい、ガムアップが問題となる場合がある。逆に付着処理工程におけるガムアップ抑制の目的から、アミノ変性量が極端に少ないシリコーンを用いたり、燐系酸化防止剤や燐系界面活性剤を架橋抑制剤として添加した系などでは、架橋性が大きく抑制されてしまう為、アミノ変性シリコーンを用いる本来の目的である耐熱性が低下してしまい、焼成工程で十分な融着防止性が得られず、優れた強度の炭素繊維が得られないことが問題となる場合があった。
一方、アマイドポリエーテル変性シリコーンは、アミノ変性シリコーンと比較して架橋性は低く、且つアミノ変性シリコーンに迫る、優れた耐熱性を有する成分である為、アマイドポリエーテル変性シリコーンとアミノ変性シリコーンを所定の比率で併用することで、「付着処理工程でのガムアップ抑制」すなわち「工程通過性」、更には「製糸操業性」と「焼成工程でシリコーンの架橋によって得られる十分な耐熱性」という、相反する要求特性の両立を可能とする。その併用比率について、例えばアミノ変性シリコーンリッチな併用比率領域では、工程通過性、製糸操業性が比較的良好であり且つ、優れた強度の炭素繊維が得られる。逆にアマイドポリエーテル変性シリコーンリッチな併用比率領域では、非常に工程通過性、製糸操業性が良好であり、且つ比較的優れた強度の炭素繊維が得られる。
更に、アマイドポリエーテル変性シリコーンとアミノ変性シリコーンを併用した場合にも、アミノ変性シリコーンとも乳化剤成分とも親和性が強いアマイドポリエーテル変性シリコーンの作用により相溶性が向上し、繊維表面に均一皮膜を形成しやすくなる効果も得られ、優れた強度の炭素繊維が得られやすい。
アミノ変性シリコーンの構造としては特に限定はなく、変性基であるアミノ基は、主鎖であるシリコーンの側鎖と結合していてもよいし、末端と結合していてもよいし、また両方と結合していてもよい。また、そのアミノ基は、モノアミン型であってもポリアミン型であってもよく、1分子中に両者が併存していてもよい。
アミノ変性シリコーンの25℃における粘度については、特に限定はないが、耐炎化処理工程におけるアミノ変性シリコーンの飛散防止および付着処理工程におけるガムアップ抑制の観点から、100〜15,000mm/sが好ましく、500〜10,000mm/sがさらに好ましく、1,000〜5,000mm/sが特に好ましい。
アミノ変性シリコーンのアミノ当量については、特に限定はないが、繊維への油剤付与後の乾燥工程等における架橋性が強過ぎることから発生する付着処理工程でのガムアップの抑制、および架橋性が乏しいことから発生する耐熱性低下に起因する、耐炎化工程や炭素化工程などの焼成工程での融着防止性の低下を防止する観点からは、500〜10,000g/molが好ましく、1,000〜5,000g/molがさらに好ましく、1,500〜2,000g/molが特に好ましい。
〔プレカーサー油剤〕
本発明のプレカーサー油剤は、上記のアマイドポリエーテル変性シリコーンおよび界面活性剤を必須成分として含む油剤である。絶乾皮膜の均一性および焼成時の融着防止性および油剤エマルジョンとする際の乳化安定性のバランス保持の観点から、油剤の不揮発分全体に占めるアマイドポリエーテル変性シリコーンの重量割合は、1〜95重量%であり、30〜95重量%が好ましく、50〜95重量%がより好ましく、70〜90重量%がさらに好ましく、75〜85重量%が特に好ましい。不揮発分全体に占めるアマイドポリエーテル変性シリコーンの重量割合が1重量%未満となると、本発明の効果である絶乾皮膜の均一性が得られにくく、また、95重量%を超えると、必然的に他の必須成分の比率が合計で5重量%未満となり、焼成工程での融着防止性および良好な乳化安定性が得られにくい。なお、本発明において不揮発分とは、油剤を105℃で熱処理して溶媒等を除去し、恒量に達した時の絶乾成分を意味する。
本発明のプレカーサー油剤において、油剤の不揮発分全体に占める界面活性剤の重量割合は、乳化剤として使用したときのエマルジョンの乳化安定性と油剤の耐熱性維持の観点から、5〜50重量%であり、10〜40重量%が好ましく、10〜30重量%がより好ましく、さらに15〜25重量%が好ましい。不揮発分全体に占める界面活性剤の重量割合が5重量%未満となると、良好な乳化安定性が得られにくく、また、50重量%を超えると、油剤の耐熱性が不足し、焼成工程における融着防止性が得られにくい。
また、本発明のプレカーサー油剤は、上述のようにアミノ変性シリコーンをさらに含有することが好ましい。油剤の不揮発分全体に占めるアマイドポリエーテル変性シリコーンとアミノ変性シリコーンの合計の重量割合は、30〜95重量%が好ましく、50〜95重量%がより好ましく、70〜90重量%がさらに好ましく、75〜85重量%が特に好ましい。また、アマイドポリエーテル変性シリコーンとアミノ変性シリコーンの重量比(アマイドポリエーテル変性シリコーン/アミノ変性シリコーン)は、5/95〜95/5が好ましい。
絶乾皮膜の均一性、焼成時の融着防止性、工程通過性(製糸操業性)等の効果をより一層向上させる観点から、アマイドポリエーテル変性シリコーンとアミノ変性シリコーンの重量比は、同量程度よりもいずれか一方を他方よりも多くするほうが好ましい。具体的には、アミノ変性シリコーンリッチな併用比率領域(A)として重量比が5/95〜45/55であること、またはアマイドポリエーテル変性シリコーンリッチな併用比率領域(B)として重量比が55/45〜95/5であることが好ましい。このように重量比を領域(A)または(B)の範囲にすることにより、より一層良好な絶乾皮膜の均一性、焼成工程での融着防止性、乳化安定性および工程通過性(製糸操業性)が得られる。
領域(A)において、アマイドポリエーテル変性シリコーンとアミノ変性シリコーンの重量比は、5/95〜30/70がより好ましく、5/95〜25/75がさらに好ましく、10/90〜20/80が特に好ましい。領域(B)において、アマイドポリエーテル変性シリコーンとアミノ変性シリコーンの重量比は、70/30〜95/5がより好ましく、75/25〜90/10がさらに好ましく、80/20〜90/10が特に好ましい。
これら領域(A)、(B)の中でも、焼成工程でより耐熱性に優れ、融着防止性がより優れ、より優れた強度の炭素繊維が得られるという理由から、領域(A)のほうが好ましい。
本発明のプレカーサー油剤は、本発明の効果を阻害しない範囲で、アマイドポリエーテル変性シリコーンおよびアミノ変性シリコーン以外のシリコーン成分を含んでいてもよい。具体的には、ジメチルシリコーン、エポキシ変性シリコーン、アルキレンオキサイド変性シリコーン(ポリエーテル変性シリコーン)、カルボキシ変性シリコーン、カルビノール変性シリコーン、アルキル変性シリコーン、アミノポリエーテル変性シリコーン、エポキシポリエーテル変性シリコーン、フェノール変性シリコーン、メタクリレート変性シリコーン、アルコキシ変性シリコーン、フッ素変性シリコーン等が挙げられる。
本発明のプレカーサー油剤はさらに上記した成分以外にも、フェノール系、アミン系、硫黄系、リン系、キノン系等の酸化防止剤;高級アルコール・高級アルコールエーテルの硫酸エステル塩、スルホン酸塩、高級アルコール・高級アルコールエーテルの燐酸エステル塩、第4級アンモニウム塩型カチオン系界面活性剤、アミン塩型カチオン系界面活性剤等の制電剤;高級アルコールのアルキルエステル、高級アルコールエーテル、ワックス類等の平滑剤;抗菌剤;防腐剤;防錆剤;および吸湿剤等を、本発明の効果を阻害しない範囲で含有してもさしつかえない。
プレカーサー油剤は、不揮発分のみからなる上述の成分で構成されていてもよいが、繊維への均一な付着性および作業環境の安全性の面からは、乳化剤として界面活性剤を含み、水に乳化または分散させて、水中に分散したエマルジョンとなっている状態が好ましい。
本発明のプレカーサー油剤が水を含む場合、プレカーサー油剤全体に占める水の重量割合、不揮発分の重量割合については、特に限定はなく、たとえば、本発明のプレカーサー油剤を輸送する際の輸送コストや、エマルジョン粘度に因るところの取扱い性等を考慮して適宜決定すればよい。プレカーサー油剤全体に占める水の重量割合は、好ましくは0.1〜99.9重量%、さらに好ましくは10〜99.5重量%、特に好ましくは50〜99重量%である。プレカーサー油剤全体に占める不揮発分の重量割合(濃度)は、好ましくは0.01〜99.9重量%、さらに好ましくは0.5〜90重量%、特に好ましくは1〜50重量%である。
本発明のプレカーサー油剤は、上記で説明した成分を混合することによって製造することができる。特に、プレカーサー油剤が水中で乳化または分散させた状態の組成物である場合、上記で説明した成分を乳化・分散させる方法については特に限定されず、公知の手法が採用できる。このような方法としては、たとえば、プレカーサー油剤を構成する各成分を攪拌下の温水中に投入して乳化分散する方法や、プレカーサー油剤を構成する各成分を混合し、ホモジナイザー、ホモミキサー、ボールミル等を用いて機械せん断力を加えつつ、水を徐々に投入して転相乳化する方法等が挙げられる。
本発明のプレカーサー油剤を用いて炭素繊維を製造することができる。本発明のプレカーサー油剤を用いた炭素繊維の製造方法は、特に限定されないが、たとえば、以下の製造方法を挙げることができる。
〔炭素繊維の製造方法〕
本発明の炭素繊維の製造方法は、付着処理工程と、耐炎化処理工程と、炭素化処理工程とを含む。
付着処理工程は、炭素繊維製造用アクリル繊維(プレカーサー)を製糸し、得られたプレカーサーに炭素繊維製造用アクリル繊維油剤(プレカーサー油剤)を付着させる工程である。付着処理工程では、プレカーサー油剤をプレカーサーに付着させる。
プレカーサーは、少なくとも95モル%以上のアクリロニトリルと、5モル%以下の耐炎化促進成分とを共重合させて得られるポリアクリロニトリルを主成分とするアクリル繊維から構成される。耐炎化促進成分としては、アクリロニトリルに対して共重合性を有するビニル基含有化合物が好適に使用できる。プレカーサーの単繊維繊度については、特に限定はないが、性能と製造コストのバランスから、好ましくは0.1〜2.0dTexである。また、プレカーサーの繊維束を構成する単繊維の本数についても特に限定はないが、性能と製造コストのバランスから、好ましくは1,000〜96,000本である。
プレカーサー油剤は、付着処理工程のどの段階でプレカーサーに付着させてもよい。すなわち、プレカーサー油剤を紡糸直後に付着しても良いし、延伸後に付着しても良いし、その後の巻き取り段階で付着してもよい。その付着方法に関しては、プレカーサー油剤が不揮発分のみからなる場合は、ストレートオイルとしてローラー等を使用して付着してもよいし、プレカーサー油剤が水や有機溶剤等の溶媒中に乳化または分散させたエマルジョンの場合は、浸漬法、スプレー法等で付着してもよい。
付着処理工程において、プレカーサー油剤の付与率は、繊維−繊維間の融着防止効果を得ることと、炭素化処理工程において油剤のタール化物によって炭素繊維の品質低下を防止することとのバランスからは、プレカーサーの重量に対して好ましくは0.1〜2重量%であり、さらに好ましくは0.3〜1.5重量%である。プレカーサー油剤の付与率が0.1重量%未満であると、単繊維間の融着を十分に防止できず、得られる炭素繊維の強度が低下することがある。一方、プレカーサー油剤の付与率が2重量%超であると、プレカーサー油剤が単繊維間を必要以上に覆うため、耐炎化処理工程において繊維への酸素の供給が妨げられ、得られる炭素繊維の強度が低下することがある。なお、ここでいうプレカーサー油剤の付与率とは、プレカーサー重量に対するプレカーサー油剤の付着した不揮発分重量の百分率で定義される。
耐炎化処理工程は、付着処理後のアクリル繊維(プレカーサー油剤が付着したアクリル繊維)を200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する工程である。酸化性雰囲気とは、通常、空気雰囲気であればよい。酸化性雰囲気の温度は好ましくは230〜280℃である。耐炎化処理工程では、付着処理後のアクリル繊維に対して、延伸比0.90〜1.10(好ましくは0.95〜1.05)の張力をかけながら、20〜100分間(好ましくは30〜60分間)にわたって熱処理が行われる。この耐炎化処理では、分子内環化および環への酸素付加を経て、耐炎化構造を持つ耐炎化繊維が製造される。
炭素化処理工程は、耐炎化繊維をさらに300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる工程である。炭素化処理工程では、まず、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中、300℃から800℃まで温度勾配を有する焼成炉で、耐炎化繊維に対して、延伸比0.95〜1.15の張力をかけながら、数分間熱処理して、予備炭素化処理工程(第一炭素化処理工程)を行うのが好ましい。その後、より炭素化を進行させ、且つグラファイト化を進行させるために、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中で、第一炭素化処理工程に対して延伸比0.95〜1.05の張力をかけながら、数分間熱処理して、第二炭素化処理工程を行い、耐炎化繊維が炭素化される。第二炭素化処理工程における熱処理温度の制御については、温度勾配をかけながら、最高温度を1000℃以上(好ましくは1000〜2000℃)とすることがよい。この最高温度は、所望する炭素繊維の要求特性(引張強度、弾性率等)に応じて適宜選択して決定される。
本発明の炭素繊維の製造方法では、弾性率がさらに高い炭素繊維が所望される場合は、炭素化処理工程に引き続いて、黒鉛化処理工程を行うこともできる。黒鉛化処理工程は、通常、窒素、アルゴン等の不活性雰囲気中、炭素化処理工程で得られた繊維に対して張力をかけながら、2000〜3000℃の温度で行われる。
このようにして得られた炭素繊維には、目的に応じて、複合材料とした時のマトリックス樹脂との接着強度を高めるための表面処理を行うことができる。表面処理方法としては、気相または液相処理を採用でき、生産性の観点からは、酸、アルカリなどの電解液による液相処理が好ましい。さらに、炭素繊維の加工性、取り扱い性を向上させるために、マトリックス樹脂に対して相溶性の優れる各種サイジング剤を付与することもできる。
以下、実施例により本発明を具体的に説明するが、ここに記載した実施例に限定されるものではない。なお、以下の実施例に示されるパーセント(%)は特に限定しない限り、「重量%」を示す。各特性値の測定は以下に示す方法に基づいて行った。
<溶液安定性>
不揮発分濃度が3.0重量%である各油剤エマルジョンを50℃に調節された恒温槽で保管し、溶液の外観を目視で確認し、下記の評価基準で溶液安定性を判定した。
◎ :60日間分離無し
○ :30日間分離無し、60日以内には分離
△ :7日間分離無し、30日以内に分離
× :7日間以内に分離
××:乳化当日に分離、または乳化できない
<油剤の付与率>
油剤付与後のプレカーサーを水酸化カリウム/ナトリウムブチラートでアルカリ溶融した後、水に溶解して塩酸でpH1に調整した。これを亜硫酸ナトリウムとモリブデン酸アンモニウムを加えて発色させ、ケイモリブデンブルーの比色定量(波長815mμ)を行い、ケイ素の含有量を求めた。ここで求めたケイ素含有量と予め同法で求めた油剤中のケイ素含有量の値を用いて、プレカーサー油剤の付与率を算出した。
<絶乾皮膜均一性>
直径φ60mmのアルミカップ上に、各プレカーサー油剤エマルジョンを、その不揮発分の重量が1gとなるよう採取した。そして温風乾燥機にて105℃で3時間処理し、水分を除去して得られた絶乾皮膜の状態を観察し、下記の評価基準で判定した。
◎:斑点の無い均一な皮膜
○:1〜5個の斑点のある皮膜
△:6〜9個の斑点のある皮膜
×:10個以上の斑点のある、または2つの部分に分離している皮膜
<製糸操業性(ローラー汚れ)>
プレカーサー50kgに油剤を付与した後の乾燥ローラーの汚染度合い(ガムアップ)を下記の評価基準で判定した。
◎ :ガムアップによるローラー汚染が無く、製糸操業性問題無し
○ :ガムアップによるローラー汚染が少なく、製糸操業性問題無し
△ :ガムアップによるローラー汚染がややあるが、製糸操業性問題無し
× :ガムアップによるローラー汚染があり、やや製糸操業性に劣る
××:ガムアップによるローラー汚染が著しく、製糸時に単糸取られ、捲き付きあり
<融着防止性>
炭素繊維から無作為に20カ所を選び、そこから長さ10mmの短繊維を切り出し、その融着状態を観察し、下記の評価基準で判定した。
◎:融着無し
○:ほぼ融着無し
△:融着少ない
×:融着多い
<炭素繊維強度>
JIS−R−7601に規定されているエポキシ樹脂含浸ストランド法に準じ測定し、測定回数10回の平均値を炭素繊維強度(GPa)とした。
<成分の説明>
シリコーン組成物 S−1:アミノ変性シリコーン(25℃粘度:1,300mm/s、アミノ当量:2000g/mol)
シリコーン組成物 S−d1:アマイドポリエーテル変性シリコーン(BY−16−878:東レダウコーニング製)(25℃粘度:1,600mm/s、側鎖の変性当量:3,200g/mol、末端珪素置換基:トリメチル、側鎖:ポリオキシアルキレン基及びイミノ基含有アマイド鎖、窒素原子の変性当量:1,600g/molであり、r=1〜20、p=10〜1,000、q=10〜80、s=10〜80であるものの混合物)
シリコーン組成物 S−d2:アマイドポリエーテル変性シリコーン/非イオン界面活性剤=67/33配合品(BY−16−891:東レダウコーニング製)(25℃粘度:750mm/s、側鎖の変性当量:3,000g/mol、末端珪素置換基:トリメチル、側鎖:ポリオキシアルキレン基及びイミノ基含有アマイド鎖、窒素原子の変性当量:1,500g/molであり、r=1〜20、p=10〜1,000、q=10〜80、s=10〜80であるものの混合物)
シリコーン組成物 S−d3:アマイドポリエーテル変性シリコーン(25℃粘度:1,600mm/s、側鎖の変性当量:2,800g/mol、末端珪素置換基:ジメチルメトキシ、側鎖:ポリオキシアルキレン基含有アマイド鎖、窒素原子の変性当量:2,800g/molであり、r=1〜20、p=10〜1,000、q=10〜80、s=10〜80であるものの混合物の混合物)
シリコーン組成物 S−d4: アマイドポリエーテル変性シリコーン(25℃粘度:2,000mm/s、アマイド鎖変性当量:2,800g/mol、末端珪素置換基:ジメチルメトキシ、側鎖:アマイド鎖及びポリオキシアルキレン鎖、窒素原子の変性当量:2,800g/mol、(ポリ)オキシアルキレン鎖の変性当量:2,800g/molであり、r=1〜20、p=10〜1,000、q=10〜60、s=10〜60であるものの混合物)
シリコーン組成物 S−d5:アマイドポリエーテル変性シリコーン(25℃粘度:2,000mm/s、アマイド鎖変性当量:3、500g/mol、末端珪素置換基:ジメチルメトキシ、側鎖:イミノ基含有アマイド鎖及びポリオキシアルキレン鎖、窒素原子の変性当量:1,750g/mol、(ポリ)オキシアルキレン鎖の変性当量:3,000g/molであり、r=1〜20、p=10〜1,000、q=10〜60、s=10〜60であるものの混合物)
界面活性剤 N−1:ポリオキシエチレンアルキルエーテル(アルキル基の炭素数はC12〜14)のうち、オキシエチレンの繰り返し単位が3〜12のものをシリコーン成分との親水−疎水バランスを考慮して適宜選択して用いた。
界面活性剤 N−2:ポリオキシエチレンアルキルフェニルエーテル(アルキル基の炭素数はC9〜12)のうち、オキシエチレンの繰り返し単位が3〜12のものをシリコーン成分との親水−疎水バランスを考慮して適宜選択して用いた。
界面活性剤 N−3:ポリオキシエチレンアルキルエーテルホスフェート(アルキル基の炭素数はC12〜14)のうち、オキシエチレンの繰り返し単位が3〜12のものをシリコーン成分との親水−疎水バランスを考慮して適宜選択して用いた。
〔実施例1〕
シリコーン組成物S−1およびS−d1を、界面活性剤N−1を用いて水系乳化し、油剤不揮発成分組成として、S−1/S−d1/N−1=76.5/8.5/15の重量比率よりなる油剤エマルジョン(プレカーサー油剤)を得た。なお、油剤不揮発分濃度は3.0重量%とした。この油剤エマルジョンをプレカーサー(単繊維繊度0.8dtex,24,000フィラメント)に付与率1.0%となるように付着し、100〜140℃で乾燥して水分を除去した。この油剤付着後のプレカーサーを250℃の耐炎化炉にて60分間耐炎化処理し次いで窒素雰囲気下300〜1400℃の温度勾配を有する炭素化炉で焼成して炭素繊維に転換した。各特性値の評価結果を表1に示す。
〔実施例2〜30、比較例1〜4〕
実施例1において、表1〜4に示す油剤不揮発成分組成になるように油剤エマルションを調製した以外は実施例1と同様にして、油剤付着後のプレカーサーおよび炭素繊維を得た。各特性値の評価結果を表1〜4に示す。
Figure 0005277005
Figure 0005277005
Figure 0005277005
Figure 0005277005
表1〜4から明らかな様に、比較例と比較して実施例ではいずれも溶液安定性、製糸操業性、皮膜均一性、融着防止性の全ての項目で良好な水準であり、炭素繊維強度においても良好な結果が得られた。

Claims (7)

  1. アマイドポリエーテル変性シリコーンおよび界面活性剤を必須に含有する炭素繊維製造用アクリル繊維油剤であって、油剤の不揮発分全体に占める前記アマイドポリエーテル変性シリコーンの重量割合が1〜95重量%であり、前記界面活性剤の重量割合が5〜50重量%である、炭素繊維製造用アクリル繊維油剤。
  2. アミノ変性シリコーンをさらに含有し、油剤の不揮発分全体に占める前記アマイドポリエーテル変性シリコーンと前記アミノ変性シリコーンの合計の重量割合が30〜95重量%であり、アマイドポリエーテル変性シリコーンとアミノ変性シリコーンとの重量比が5/95〜95/5である、請求項1に記載の炭素繊維製造用アクリル繊維油剤。
  3. 前記アマイドポリエーテル変性シリコーンとアミノ変性シリコーンとの重量比が、5/95〜45/55または55/45〜95/5である、請求項2に記載の炭素繊維製造用アクリル繊維油剤。
  4. 前記アマイドポリエーテル変性シリコーンが、アミド結合と(ポリ)オキシアルキレン基の両方を有する置換基によって変性された変性ジメチルポリシロキサン、またはアミド結合を有する置換基と(ポリ)オキシアルキレン基を有する置換基によって変性された変性ジメチルポリシロキサンである、請求項1〜3のいずれかに記載の炭素繊維製造用アクリル繊維油剤。
  5. 前記アマイドポリエーテル変性シリコーンが、下記一般式(1)で示される化合物、下記一般式(2)で示される化合物、下記一般式(3)で示される化合物および下記一般式(4)で示される化合物から選ばれる少なくとも1種の化合物である、請求項1〜4のいずれかに記載の炭素繊維製造用アクリル繊維油剤。
    Figure 0005277005
    Figure 0005277005
    Figure 0005277005
    Figure 0005277005

    但し、式(1)〜(4)中の記号は、各式独立して次の意味を表す。
    A:炭素数2〜4のアルキレン基を示す。(AO)中のAは同一であってもよく、異なっていてもよい。
    B、D:炭素数1〜3のアルキル基、炭素数1〜3のアルコキシ基または水酸基を示す。BとDは同一であってもよく、異なっていてもよい。
    Ra:炭素数1〜3のアルキレン基を示す。
    Ra’:炭素数1〜3のアルキレン基を示す。RaとRa’は同一であってもよく、異なっていてもよい。
    Rb:炭素数1〜6のアルキレン基を示す。
    Rc:水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を示す。
    Rd:炭素数1〜3のアルキレン基を示す。
    Re:水素原子または炭素数1〜18のアルキル基を示す。
    Rf:炭素数1〜3のアルキレン基を示す。
    Rf’:炭素数1〜3のアルキレン基を示す。RfとRf’は同一であってもよく、異なっていてもよい。
    Rg:炭素数1〜18のアルキル基、炭素数1〜18のヒドロキシアルキル基または−RORで示されるアルコキシアルキル基(Rは炭素数1〜3のアルキレン基、Rは炭素数1〜18のアルキル基を示す)を示す。
    r:1〜50の整数を示す。
    p:1〜1000の整数を示す。
    q:1〜100の整数を示す。
    s:1〜100の整数を示す。
  6. 水中に分散したエマルジョンとなっている、請求項1〜5のいずれかに記載の炭素繊維製造用アクリル繊維油剤。
  7. 請求項1〜6のいずれかに記載の炭素繊維製造用アクリル繊維油剤を炭素繊維製造用アクリル繊維に付着させる付着処理工程と、付着処理後のアクリル繊維を200〜300℃の酸化性雰囲気中で耐炎化繊維に転換する耐炎化処理工程と、前記耐炎化繊維をさらに300〜2000℃の不活性雰囲気中で炭化させる炭素化処理工程とを含む、炭素繊維の製造方法。
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