JP2018184600A - シトラールの残存量を向上させた、シトラール分解抑制剤、それを含有した製品 - Google Patents
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Abstract
Description
〔関連出願〕
本願は、原出願(特願2017−122882)に基づく分割出願であり、かつ、原出願でも主張していた特願2016−160166に基づく国内優先権主張を伴うものである。
また、シトラールは、熱、光、酸素、酸性等の外的要因又は経時的要因によって、その化学構造が変化することが知られている。その結果、シトラールを含有した飲料は、柑橘類果実様香味(特に、レモン様香味)が経時的に減少することから、シトラールによる柑橘類果実様香味感、とりわけ、柑橘類果実(特に、レモン果実)をもぎたて搾り立てした際の果汁感又は新鮮感が失われることがある。
さらに、シトラールは、先の外的要因又は経時的要因によって、その化学構造が変化し、別の劣化化合物が生じることも知られている。特に、シトラールが劣化した劣化化合物には劣化臭を放つものが存在し、シトラールを含有した製品にその劣化臭を付与することがある。
シトラールと、シトラール分解抑制剤とを含んでなり、
前記柑橘類果実様香味組成物を4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
前記柑橘類果実様香味組成物を37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすことを特徴とする、柑橘類果実様香味組成物を提案することができる。
(2)より好ましい態様によれば、柑橘類果実様香味組成物であって、
シトラールと、シトラール分解抑制剤とを含んでなり、
前記シトラール分解抑制剤が、オリーブ果実抽出物、又は、
前記オリーブ果実抽出物と、ビルベリー抽出物、アムラ抽出物、ルブス抽出物、赤ワインもろみ抽出物及びクランベリー抽出物から選択される一種又は二種以上との混合物であり、
前記柑橘類果実様香味組成物を4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
前記柑橘類果実様香味組成物を37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすことを特徴とする、柑橘類果実様香味組成物を提案することができる。
シトラールと、シトラール分解抑制剤とを混合してなり、
前記柑橘類果実様香味組成物を4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
前記柑橘類果実様香味組成物を37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすように行うことを特徴とする、柑橘類果実様香味組成物の製造方法を提案することができる。
(2)より好ましい態様によれば、柑橘類果実様香味組成物を製造する方法であって、
シトラールと、シトラール分解抑制剤とを混合してなり、
前記シトラール分解抑制剤が、オリーブ果実抽出物、又は、
前記オリーブ果実抽出物と、ビルベリー抽出物、アムラ抽出物、ルブス抽出物、赤ワインもろみ抽出物及びクランベリー抽出物から選択される一種又は二種以上との混合物であり、
前記混合が、
前記柑橘類果実様香味組成物を4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
前記柑橘類果実様香味組成物を37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすものである、柑橘類果実様香味組成物の製造方法を提案することができる。
好ましい態様は以下の通りである。
〔1〕 柑橘類果実様香味組成物であって、
シトラールと、シトラール分解抑制剤とを含んでなり、
前記柑橘類果実様香味組成物を4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
前記柑橘類果実様香味組成物を37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすことを特徴とする、柑橘類果実様香味組成物。
〔2〕 前記柑橘類果実様香味組成物のpHが3.3以上4.1以下である、〔1〕に記載の柑橘類果実様香味組成物。
〔3〕 前記シトラール分解抑制剤が、pH調整剤及び/又は植物抽出物である、〔1〕又は〔2〕に記載の柑橘類果実様香味組成物。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載の柑橘類果実様香味組成物を含んでなる、製品。
〔5〕 前記製品が、飲料、食料品、調味料、嗜好品、香水、化粧品又は生活用品である、〔4〕に記載のシトラール含有製品。
〔6〕 前記飲料が、アルコール飲料又はノンアルコール飲料である、〔5〕に記載のシトラール含有製品。
〔7〕 柑橘類果実様香味組成物を製造する方法であって、
シトラールと、シトラール分解抑制剤とを混合してなり、
前記混合が、
前記柑橘類果実様香味組成物を4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
前記柑橘類果実様香味組成物を37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすものである、柑橘類果実様香味組成物の製造方法。
〔8〕 シトラールの分解を抑制する方法であって、
シトラールに、シトラール分解抑制剤を付与し、
4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすものである、シトラール分解抑制方法。
〔1〕 シトラール分解抑制剤であって、
シトラール含有製品に用いられるものであり、
植物抽出物を含んでなるものであり、
前記植物抽出物が、カリン抽出物、マンゴー抽出物、マンゴスチン抽出物、ミロバラン抽出物、ザクロ抽出物、カカオ抽出物、アシタバ抽出物、アボカド抽出物、オオバコ抽出物、ルブス抽出物、オリーブ果実及び葉抽出物、バンレイシ属植物の果皮抽出物、杜仲葉抽出物、エンメイソウ抽出物、ハイビスカス抽出物、ビート抽出物、ライチ種子抽出物、月見草種子抽出物、タヒボ抽出物、グァバ葉抽出物、マリーゴールド抽出物、ブラッククミン抽出物、マリアアザミ抽出物、アーティチョーク抽出物、アイブライト抽出物、エキナセアプルプレア抽出物、エキナセアアングスティフォリア抽出物、エキナセアパリダ抽出物、オリーブ抽出物、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、赤ワインもろみ抽出物、ルブス抽出物、クランベリー抽出物及びアムラ抽出物から選択される一種又は二種以上の混合物であり、
前記シトラールと、前記シトラール分解抑制剤とを添加した製品について、
4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすものである、シトラール分解抑制剤。
〔2〕 前記植物抽出物が、オリーブ抽出物、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、アムラ抽出物、ルブス抽出物、赤ワインもろみ抽出物及びクランベリー抽出物から選択される一種又は二種以上の混合物である、〔1〕に記載のシトラール分解抑制剤。
〔3〕 pH調整剤を更に含んでなるものである、〔1〕又は〔2〕に記載のシトラール分解抑制剤。
〔4〕 〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載のシトラール分解抑制剤を含んでなる、シトラール含有製品。
〔5〕 前記シトラール含有製品が、飲料、食料品、調味料、又は嗜好品である、〔4〕に記載のシトラール含有製品。
〔6〕 前記飲料が、アルコール飲料又はノンアルコール飲料である、〔5〕に記載のシトラール含有製品。
〔7〕 シトラールの分解を抑制する方法であって、
シトラールに、シトラール分解抑制剤を付与することを含んでなり、
4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすものであり、
前記シトラール分解抑制剤が〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載のものである、シトラール分解抑制方法。
(シトラール)
シトラール(C10H16O)は、ゲラニアールとネラール(立体異性体)という化合物として存在し、一般には、精油に含まれる芳香成分の一つとして知られている。シトラールは、レモングラス、メリッサ(レモンバーム)、レモンバーベナ等の植物に多く含まれており、また、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、レモン、ライム等の柑橘系果実、並びに、山椒、生姜等の野菜に含まれている。
また、シトラール香料(柑橘系香料)は、強いレモン香を呈し、抗菌作用、鎮痙及び発汗作用に優れるという効果を有することから、従来、様々な飲食料品及び生活用品に使用されている。
しかし、シトラールは、柑橘類果実様香味(特に、強いレモン香味)を有するものであるが、製品に、例えば低濃度(例えば、1桁〔X.0〕mg/Lオーダー程度)で含有させた場合、十分なレモン果汁の香味を呈することは困難である。
また、シトラールは、加熱、光、酸性物質、酸素等の外的要因によって、或いは、製品の保存、搬送、陳列等による経時変化によって、シトラールの化学構造が、環化、水和、異性化等の反応により変化し、シトラール自体が分解され、その結果、劣化化学物質、例えば、p−クレゾール、p−サイメン、p−メチルアセトフェノン等の化合物に変化することがある。しかもこれら劣化化合物は臭気を放ち、製品に好ましくない臭い(オフフレーバー)を付与することがある。
「シトラール分解抑制剤」とは、上記した通り、外因的要因又は経時的変化により生じる、シトラール自体の分解を抑制する剤である。
具体的には、シトラール分解抑制剤は、シトラール含有製品に混合されると、シトラールの分解を抑制し、シトラールを有意量残存させることが可能となり、その結果、製品に、柑橘類果実〔例えば、レモン、ライム、グレープフルーツ、オレンジ〕をもぎたて搾り立てした際の果汁感、新鮮感及び爽快感を継続的に付与することが可能となる。
「植物抽出物」は、植物の根、葉、茎、果実等から抽出した物質である。抽出物は、一般的な抽出方法によって得ることができ、例えば、原料(果実及び葉等)を、圧搾法、溶媒抽出法、油脂(温浸透又は冷浸透)吸着法、超臨界抽出法等によって、抽出することができる。飲食料品に使用する場合には、厚生労働省、消費者庁等所管のガイドライン及び食品衛生法等の規定に基づいて抽出する。
本発明にあっては、添加量・含有量は、本明細書において特にことわりがない限り、基本的に、mg/L、即ち、ppm(質量/体積)にて表す。
(シトラール及びシトラール分解抑制剤)
(1) 本発明による柑橘類果実様香味組成物は、シトラールと、シトラール分解抑制剤とを含んでなり、
前記柑橘類果実様香味組成物を4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
前記柑橘類果実様香味組成物を37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすことを特徴とするものである。
(2) より具体的には、前記シトラール分解抑制剤が、オリーブ果実抽出物、又は、前記オリーブ果実抽出物と、ビルベリー抽出物、アムラ抽出物、ルブス抽出物、赤ワインもろみ抽出物及びクランベリー抽出物から選択される一種又は二種以上との混合物であることを特徴とする、柑橘類果実様香味組成物である。
(3) より好ましい一例によれば、シトラール分解抑制剤であって、
シトラール含有製品に用いられるものであり、
植物抽出物を含んでなるものであり、
前記シトラールと、前記シトラール分解抑制剤とを添加した製品について、
4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすものである、シトラール分解抑制剤である。
植物抽出物としては、カリン抽出物、マンゴー抽出物、マンゴスチン抽出物、ミロバラン抽出物、ザクロ抽出物、カカオ抽出物、アシタバ抽出物、アボカド抽出物、オオバコ抽出物、ルブス抽出物、オリーブ果実及び葉抽出物、バンレイシ属植物の果皮抽出物、杜仲葉抽出物、エンメイソウ抽出物、ハイビスカス抽出物、ビート抽出物、ライチ種子抽出物、月見草種子抽出物、タヒボ抽出物、グァバ葉抽出物、マリーゴールド抽出物、ブラッククミン抽出物、マリアアザミ抽出物、アーティチョーク抽出物、アイブライト抽出物、エキナセアプルプレア抽出物、エキナセアアングスティフォリア抽出物、エキナセアパリダ抽出物、オリーブ抽出物、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、赤ワインもろみ抽出物、ルブス抽出物、クランベリー抽出物及びアムラ抽出物から選択される一種又は二種以上の混合物を用いることができる。好ましくは、オリーブ抽出物、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、アムラ抽出物、ルブス抽出物、赤ワインもろみ抽出物及びクランベリー抽出物である。
(2) より詳細には、例えば、オリーブ抽出物としては、「OLIVEX(登録商標)HT6(オリーブ果実抽出物、Grap’sud社製、サンブライト株式会社から入手可能)」及び「OLEASELECT(登録商標)(オリーブ果実抽出物、INDENA社製、インデナジャパン株式会社から入手可能)」等、或いは、「オリーブ葉抽出液BG(オリーブ葉抽出物、丸善製薬株式会社製、同社から入手可能)」、「OleaVita(オレアビータ)(オリーブ葉抽出物、Phytodia SAS社製、株式会社ニュートリション・アクトから入手可能)」、「オリーブ葉乾燥エキス(オリーブ葉抽出物、FRUTAROM SWITZERLAND LTD製、アスク薬品株式会社から入手可能)」等、ブドウ種子抽出物としては、「exGrape(登録商標)Seed OPC30(Grap’sud社製、サンブライト株式会社から入手可能)」等、ビルベリー抽出物としては、「ミルトセレクト(登録商標)(ビルベリーの果実抽出物、INDENA社製、インデナジャパン株式会社から入手可能)」等、アムラ抽出物としては、「サベリー(登録商標):Saberry Amla Extract(アムラ抽出物:SABINSA社製 株式会社サビンサジャパンコーポレーションから入手可能)」等、ルブス抽出物としては、「ルブス乾燥エキスF(甜茶抽出物、丸善製薬株式会社製)」等、赤ワインもろみ抽出物としては、「exGrape(登録商標)Total PPR(Grap’sud社製、サンブライト株式会社から入手可能)」等、クランベリー抽出物としては、「ギカクラン(クランベリーの果実抽出物、INDENA社製、インデナジャパン株式会社から入手可能)」等、として入手することが可能である。
前記抽出物は、好ましくは、有効成分として、ポリフェノールを含んでなる。ポリフェノールは、フラボノイド系物質、プロアントシアニジン系物質、テアフラビン系物質、テアルビジン系物質、フェニルプロパノイド系物質、フェニルエタノイド系物質、エラジタンニン系物質、ガロタンニン系物質、カルコン類物質、スチルベン誘導体系物質、リグナン系物質、クルクミノイド系物質及びクマリン系物質からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物であってよく、好ましくは、プロアントシアニジン系物質、エラジタンニン系物質、ガロタンニン系物質からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物を使用することができる。
好ましい態様によれば、ポリフェノールは、ガロタンニン、エラジタンニン、プロアントシアニジン、及びフェニルエタノイド系物質からなる群から選択される一種又は二種以上の混合物が好ましくは使用される。
pH調整剤の具体例としては、アジピン酸、クエン酸、クエン酸(三)ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸これらの塩(カリウム塩、ナトリウム塩)、及び、分子内に共役二重結合を有するジカルボン酸又はその金属塩(例えば、フマール酸、イタコン酸及びこれらの金属塩)等が挙げられる。好ましくは、分子内に共役二重結合を有するジカルボン酸又はその金属塩が用いられる。pH調整剤は、酸味料としても使用可能である。
本発明にあっては、柑橘類果実様香味組成物は、必要に応じて、任意成分を含んでなるものであってよい。従って、後記する「製品」において添加される成分を予め含有するものであってもよい。この場合、柑橘類果実様香味組成物が製品、例えば、チューハイ等のアルコール飲料とされる。
シトラールは経時的に劣化され易い化合物であり、劣化臭生成化合物を生成し易いものである。本発明にあっては、任意成分として、劣化臭消臭剤を添加してもよい。
(1) 柑橘類果実様香味組成物の製造方法は、シトラールと、シトラール分解抑制剤とを混合してなり、
前記柑橘類果実様香味組成物を4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
前記柑橘類果実様香味組成物を37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすものである。
(2) より具体的には、前記シトラール分解抑制剤が、オリーブ果実抽出物、又は、前記オリーブ果実抽出物と、ビルベリー抽出物、アムラ抽出物、ルブス抽出物、赤ワインもろみ抽出物及びクランベリー抽出物から選択される一種又は二種以上との混合物であることを特徴とする、製造方法である。
(1) シトラールの分解を抑制する方法であって、
シトラールに、シトラール分解抑制剤を付与することを含んでなり、
4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすものである、シトラール分解抑制方法。シトラールと、シトラール分解抑制剤との混合比率は、質量を基準として、1:0.005〜1:500であり、好ましくは1:0.01〜1:100であり、最も好ましくは、1:0.05〜1:50である。
(2) より具体的には、前記シトラール分解抑制剤が、上記した植物抽出物であり、オリーブ果実抽出物、又は、前記オリーブ果実抽出物と、ビルベリー抽出物、アムラ抽出物、ルブス抽出物、赤ワインもろみ抽出物及びクランベリー抽出物から選択される一種又は二種以上との混合物であることを特徴とする、シトラール分解抑制方法である。
(必須成分)
好ましい別の態様によれば、シトラール分解抑制剤又は前記柑橘類果実様香味組成物を含有した製品を提案することができる。
前記製品において、柑橘類果実様香味組成物は、シトラールの添加量と、シトラール分解抑制剤の添加量とが上記数式(1)を充足するように、含有されてなる。
製品は、任意成分として、色素、香料、甘味料、酸味料、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、ビタミン類、旨み成分、食物繊維、安定化剤、乳化剤、香水又化粧品添加物、又は、医薬部外品用添加物等を含有することが可能である。これらは、厚生労働省、消費者庁等において定められたガイドライン及び関連法規(食品衛生法等)に規定されたものを用いる。
甘味料としては、例えば、果糖、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖、麦芽糖、ショ糖、高果糖液糖、糖アルコール、オリゴ糖、はちみつ、サトウキビ搾汁液(黒糖蜜)、水飴、ステビア末、ステビア抽出物、羅漢果末、羅漢果抽出物、甘草末、甘草抽出物、ソーマトコッカスダニエリ種子末、ソーマトコッカスダニエリ種子抽出物などの天然甘味料や、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、アスパルテーム、サッカリンなどの人工甘味料などが挙げられる。
色素の具体例としては、カラメル、アントシアニン色素、フラボノイド色素、カロテノイド色素、キノン色素、ポリフィリン、ジケトン色素、ベタシアニン色素、アザフィロン色素、クチナシ色素等が挙げられる。
より好ましい態様によれば、シトラールと、シトラール分解抑制剤(柑橘類果実様香味組成物)を含有した飲料を提案することができる。飲料については、上記に記載したものが例示され、大別して、アルコール飲料とノンアルコール飲料とに類別される。
柑橘類果実様香味組成物を含有した飲料の一般的な製造方法は、概説すると以下の通りである。シトラールとシトラール分解抑制剤(柑橘類果実様香味組成物)と、任意成分と、飲用水(炭酸水)、必要に応じてベースアルコールとを所定の量で準備し、これらを混合する。次に、混合液を冷却し、必要に応じてカーボネーションを行う。その後、容器に充填・密封することにより、所望の柑橘類果実様香味の飲料を得ることができる。容器に充填する前に膜ろ過フィルターを用いてろ過してもよい。また、濃厚な状態で中間液を作成した後に、炭酸水を含有して飲料を調製してもよい。
別の好ましい態様によれば、柑橘類果実様香味組成物を含有した製品を容器に詰めた容器詰製品を提案することができる。容器詰飲料とすることにより、柑橘類果実様香味感、とりわけ、柑橘類果実をもぎたて搾り立てした際の果汁感及び新鮮感を付与し、促進させると伴に、柑橘類果実様飲料の提供利便性、流通利便性、保存性、品質劣化防止を図ることが可能となる。
容器は、内容物が漏洩しない材料であれば、ビニール、プラスチック、ガラス、金属、紙、木又は皮等で、様々な形状で形成された容器に詰めることができる。より好ましい態様によれば、容器の内外に、光、熱、酸素、紫外線等を遮断するための素材(たとえば、金属箔)を備えたものであってよい。
実施例、比較例の飲料中に含まれる各成分は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)を用いて定量を行った。GC/MS分析の手順は以下の通りであった。
〈分析用試料調製〉
試料を5.0g秤量し、内部標準としてリナロール−d5を200μL添加した上で、45mLの水で希釈した。次に、アセトニトリル浸漬及び加熱にてコンディショニングを行ったTwister(PDMS,0.5mmx20mm)を希釈した試料に投入し、40℃、2時間の撹拌吸着反応を行ったものを分析用試料とした。なお、試料調製は2点並行して行った。
分析用試料中のシトラールの量は、内部標準(リナロール−d5)とのピーク面積比から計算した。また、同一試料について2点並行で行った分析値の平均値を試料中の成分量であるものとして定量を行った。
装置:測定には昇温気化型注入口(CIS4,Gerstel社製)、加熱脱着ユニット(TDU, Gerstel社製)およびLTMカラム(1st:DB−WAX,20m×0.18mm;0.3μm、2nd:DB−5,10m×0.18mm;0.4μm,Agilent Technologies社製)を搭載した7890B GC System(Agilent Technologies社製)、5977A MSD(Agilent Technologies社製)を使用した。
TDU:20℃(1min)−(720℃/min)−250℃(3min)
CIS:−50℃(1.5min)−(12℃/min)−240℃(60min)
スプリット比:30:1
注入口圧:508.28kPa
ベント圧:314.11kPa
1stカラム温度:40℃(3min)−(5℃/min)−180℃(0min)
2ndカラム温度:40℃(31min)−(5℃/min)−200℃(0min)
MSD:Scan mode,m/z 29−230, 20Hz, EI
下記〔表1〕に記載された処方に従って、実施例と比較例によるレモン香味を有するアルコール飲料を調製した。酸度はクエン酸含量1g/100mlを「1」として調整した。pHは東亜ディーケーケー社製のpHメーター HM−30Rを用いて測定した。なお、レモン香料A、Bの違いはシトラール含有量の違いであり、レモン香料Aが、レモン香料Bよりもシトラール含有量が高いものであった。
〈抽出物〉
また、使用した各抽出物(〔表1〕及び〔表2〕)は以下の通りであった。
オリーブ抽出物:「Olivex HT6」(オリーブ果実抽出物、Grap’sud社製、サンブライト株式会社から入手)
ブドウ種子抽出物:「exGrape Seed OPC30」(ブドウの種子抽出物、Grap’sud社製、サンブライト株式会社から入手)
ビルベリー抽出物:「Mirtoselect」(ビルベリーの果実抽出物、INDENA社製、インデナジャパン株式会社から入手)
アムラ抽出物:「Saberry:Amla Extract」(アムラの果実抽出物、SABINSA社製、サビンサジャパン株式会社から入手)
ルブス抽出物:「ルブス乾燥エキスF」(甜茶抽出物、丸善製薬株式会社製)
赤ワインもろみ抽出物:「exGrape Total PPR」(赤ワインもろみ抽出物、Grap’sud社製、サンブライト株式会社から入手)
クランベリー抽出物:「ギカクラン」(クランベリーの果実抽出物、INDENA社製、インデナジャパン株式会社から入手)
実施例1及び2と比較例1〜3を一方は4℃で1週間保存、もう一方は37℃で1週間保存し、シトラールの含有量を測定した。測定結果を〔表1〕に示した。
〔表1〕に示す通り、シトラールと、シトラール分解抑制剤と、上記数式(1)で表される関係を満たす添加量で含有した本発明によれば、外的要因又は経時的要因によってもシトラールを有意量に残存させることが可能となった。
下記〔表2〕に記載された処方に従って、実施例と比較例によるレモン香味を有するアルコール飲料を調製した。酸度はクエン酸含量1g/100mlを「1」として調整した。pHは東亜ディーケーケー社製のpHメーター HM−30Rを用いて測定した。なお、表1のレモン香料とはシトラール含有量の異なるレモン香料Cを用いた。レモン香料Cは、レモン香料Aよりもシトラール含有量が高いものであった。
実施例3〜9と比較例4〜6を一方は4℃で1週間保存、もう一方は37℃で1週間保存し、シトラールの含有量を測定した。測定結果を〔表2〕に示した。
〔表2〕に示す通り、シトラールと、シトラール分解抑制剤と、上記数式(1)で表される関係を満たす添加量で含有した本発明によれば、外的要因又は経時的要因によってもシトラールを有意量に残存させることが可能となった。
評価試験2と同様にして、下記の測定と評価を行った。その結果は、下記〔表3〕に示した通りであった。
実施例:オリーブ果実抽出物
オリーブ果実抽出物は、「Olivex HT−6(Grap'sud社製)」を用い
た。
比較例:オリーブ葉抽出物
オリーブ葉抽出物は、100%九州産オリーブ葉パウダー((株)オリーブアカデミー社製)を入手し、50%エタノール溶液で60℃1時間抽出後、濃縮、乾燥したものを得て、それを用いた。
2)〔飲料調製〕
上記評価試験2に準じて調製した。具体的には、下記〔表3〕に記載した通り、アルコール量7.5%、pHを3.3とし、シトラールを含有したレモン香料0.1%添加した飲料溶液に、オリーブ葉抽出物(比較例)、オリーブ果実抽出物(実施例)を、それぞれ10、50ppm添加して飲料を調製した。
評価試験2にと同様にして、比較例と実施例とについて評価した。
評価試験の結果は、下記〔表3〕の通りであり、本願発明の実施例(オリーブ果実抽出物)は、比較例(オリーブ葉抽出物)に対して、外的要因又は経時的要因によってもシトラールを有意量に残存させることが明らかに理解された。特に、『37℃、1週間保存後のシトラール含有量/4℃、1週間保存後のシトラール含有量』は、比較例(オリーブ葉抽出物)はともに、「1.4」(試験1及び試験2)であったのに対して、実施例(オリーブ果実抽出物)はそれぞれ、『1.7』及び『2.1』と極めて高い残存量を示しており、本願発明の実施例(オリーブ果実抽出物)は、比較例(オリーブ葉抽出物)に対して、シトラール分解抑制効果が極めて高いことが理解された。
Claims (7)
- シトラール分解抑制剤であって、
シトラール含有製品に用いられるものであり、
植物抽出物を含んでなるものであり、
前記植物抽出物が、カリン抽出物、マンゴー抽出物、マンゴスチン抽出物、ミロバラン抽出物、ザクロ抽出物、カカオ抽出物、アシタバ抽出物、アボカド抽出物、オオバコ抽出物、ルブス抽出物、オリーブ果実及び葉抽出物、バンレイシ属植物の果皮抽出物、杜仲葉抽出物、エンメイソウ抽出物、ハイビスカス抽出物、ビート抽出物、ライチ種子抽出物、月見草種子抽出物、タヒボ抽出物、グァバ葉抽出物、マリーゴールド抽出物、ブラッククミン抽出物、マリアアザミ抽出物、アーティチョーク抽出物、アイブライト抽出物、エキナセアプルプレア抽出物、エキナセアアングスティフォリア抽出物、エキナセアパリダ抽出物、オリーブ抽出物、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、赤ワインもろみ抽出物、ルブス抽出物、クランベリー抽出物及びアムラ抽出物から選択される一種又は二種以上の混合物であり、
前記シトラールと、前記シトラール分解抑制剤とを添加した製品について、
4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすものである、シトラール分解抑制剤。 - 前記植物抽出物が、オリーブ抽出物、ブドウ種子抽出物、ビルベリー抽出物、アムラ抽出物、ルブス抽出物、赤ワインもろみ抽出物及びクランベリー抽出物から選択される一種又は二種以上の混合物である、請求項1に記載のシトラール分解抑制剤。
- pH調整剤を更に含んでなるものである、請求項1又は2に記載のシトラール分解抑制剤。
- 請求項1〜3の何れか一項に記載のシトラール分解抑制剤を含んでなる、シトラール含有製品。
- 前記シトラール含有製品が、飲料、食料品、調味料、又は嗜好品である、請求項4に記載のシトラール含有製品。
- 前記飲料が、アルコール飲料又はノンアルコール飲料である、請求項5に記載のシトラール含有製品。
- シトラールの分解を抑制する方法であって、
シトラールに、シトラール分解抑制剤を付与することを含んでなり、
4℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「Y」とし、
37℃(大気圧)1週間保存した際の前記シトラールの残存量(mg/L)を「X」とした場合、数式:X/Y≧0.12(数式1)を満たすものであり、
前記シトラール分解抑制剤が請求項1〜3の何れか一項に記載のものである、シトラール分解抑制方法。
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