JP6152458B1 - 柑橘類果実様飲料及びその製造方法 - Google Patents
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Abstract
Description
また、シトラールは、熱、光、酸素、酸性等の外因的要因又は経時的要因によって、その化学構造が変化することが知られている。その結果、シトラールを含有した飲料は、柑橘類果実様香味(特に、レモン様香味)が経時的に減少することから、シトラールによる柑橘類果実様香味感、とりわけ、柑橘類果実(特に、レモン果実)をもぎたて搾り立てした際の果汁感又は新鮮感(フレッシュ感)が失われることがある。このため、シトラールによる柑橘類果実様香味感を低減させることなく、寧ろ、促進させることができる柑橘類果実様飲料が存在すれば、益々、消費者の嗜好に沿うものとなる。
シトラールと、ノナナールとを含んでなり、
前記シトラールの含有量(mg/L)を「X」とし、
前記ノナナールの含有量(mg/L)を「Y」とした場合、以下の数式1及び数式2:
3≦X≦10 (数式1)
0.23≦Y≦0.43 (数式2)
で表される関係を満たすものを提案することができる。
好ましい態様は以下の通りである。
〔1〕 柑橘類果実様飲料であって、
シトラールと、ノナナールとを含んでなり、
前記シトラールの含有量(mg/L)を「X」とし、
前記ノナナールの含有量(mg/L)を「Y」とした場合、以下の数式1及び数式2:
3≦X≦10 (数式1)
0.23≦Y≦0.43 (数式2)
である関係を満たすものである、柑橘類果実様飲料。
〔2〕 前記数式1が、4.5≦X≦10であり、及び、
前記数式2が、0.23≦Y≦0.43である、〔1〕に記載の柑橘類果実様飲料。
〔3〕 劣化臭生成抑制剤又は劣化臭消臭剤をさらに含んでなる、〔1〕又は〔2〕に記載の柑橘類果実様飲料。
〔4〕 前記柑橘類果実様飲料のpHが、2以上7未満である、〔1〕〜〔3〕の何れか一項に記載の柑橘類果実様飲料。
〔5〕 前記柑橘類果実様飲料が、アルコール飲料又はノンアルコール飲料である、〔1〕〜〔4〕の何れか一項に柑橘類果実様飲料。
〔6〕 柑橘類果実様飲料を製造する方法であって、
シトラールと、ノナナールとを混合してなり、
前記混合が、前記シトラールの含有量(mg/L)を「X」とし、
前記ノナナールの含有量(mg/L)を「Y」とした場合、以下の数式1及び数式2:
3≦X≦10 (数式1)
0.23≦Y≦0.43 (数式2)
である関係を満たすように行われる、柑橘類果実様飲料の製造方法。
(シトラール)
シトラール(C10H16O)は、ゲラニアールとネラール(立体異性体)という化合物として存在し、一般には、精油に含まれる芳香成分の一つとして知られている。シトラールは、レモングラス、メリッサ(レモンバーム)、レモンバーベナ等の植物に多く含まれており、また、オレンジ、グレープフルーツ、ユズ、レモン、ライム等の柑橘系果実、並びに、山椒、生姜等の野菜に含まれている。
また、シトラール香料(柑橘系香料)は、強いレモン香を呈し、抗菌作用、鎮痙及び発汗作用に優れるという効果を有することから、従来、様々な飲食料品及び生活用品に使用されている。
しかし、シトラールは、柑橘類果実様香味(特に、強いレモン様香味)を有するものであるが、柑橘類果実様飲料に、例えば低濃度(例えば、一桁mg/Lオーダー)で含有させた場合、十分な柑橘類果実様香味を呈することは困難である。
また、シトラールは、加熱、光、酸性物質、酸素等の外因的要因により、また、柑橘類果実様飲料の保存、搬送、陳列等による経時的要因により、シトラールの化学構造が、環化、水和、異性化等の反応により変化し、その結果、劣化化学物質、例えば、p−クレゾール、p−サイメン、p−メチルアセトフェノンの化合物に変化する。しかもこれら劣化化合物は臭気を放ち、柑橘類果実様飲料に好ましくない臭い(悪臭)及び味を付与することがある。
ノナナール:(C9H18O)は、多くの植物及び果実の精油中に見出され、一般には、精油に含まれる芳香成分の一つとして知られている。
本発明にあっては、ノナナールは、シトラールに併用されて、シトラールによる柑橘類果実様香味感を促進するものとして使用される。
具体的には、ノナナールは、シトラール含有柑橘類果実様飲料に混合されると、柑橘類果実様飲料に、柑橘類果実〔例えば、レモン、ライム、グレープフルーツ、オレンジ〕をもぎたて搾り立てした際の果汁感又は新鮮感を継続付与し、促進させる。
本発明にあっては、含有量は、本明細書において特にことわりがない限り、基本的に、mg/L、即ち、ppm(質量/体積)にて表す。
柑橘類果実様飲料は、柑橘系果実様香味を有する飲料、好ましくは、レモン、グレープフルーツ、オレンジ、ライム等の果実様香味を持った飲料である。
本発明による柑橘類果実様飲料は、主成分として、シトラールと、ノナナールとを含んでなり、前記シトラールの含有量(mg/L)を「X」とし、前記ノナナールの含有量(mg/L)を「Y」とした場合、以下の数式1及び数式2:
3≦X≦10 (数式1)
0.23≦Y≦0.43 (数式2)
で表される関係を満たすものを提案することができる。
前記数式1が、4.5≦X≦10であり、及び、
前記数式2が、0.23≦Y≦0.43である、柑橘類果実様飲料を提案することができる。
別の好ましい態様によれば、柑橘類果実様飲料のpHは、2以上7未満であり、好ましくは、3以上5以下である。
本発明にあっては、柑橘類果実様飲料は、必要に応じて、任意成分を含んでなるものであってよい。任意成分としては、劣化臭生成抑制剤、劣化臭消臭剤(マスキング剤)、色素、果汁、エキス、香料、甘味料、酸味料、pH調整剤、酸化防止剤、保存料、ビタミン類、旨み成分、食物繊維、安定化剤、乳化剤等が挙げられる。これら任意成分は、厚生労働省、消費者庁等において定められたガイドライン及び関連法規(食品衛生法等)に規定されたものを用いる。
好ましい態様にあっては、シトラール劣化化合物による劣化臭対策として、劣化臭生成抑制剤又は劣化臭消臭剤(マスキング剤)を添加することができる。
酸味料の具体例としては、アジピン酸、クエン酸、クエン酸(三)ナトリウム、グルコノデルタラクトン、グルコン酸、グルコン酸カリウム、グルコン酸ナトリウム、コハク酸、コハク酸一ナトリウム、コハク酸二ナトリウム、酢酸ナトリウム、DL−酒石酸、L−酒石酸、DL−酒石酸ナトリウム、L−酒石酸ナトリウム、二酸化炭素、乳酸、乳酸ナトリウム、氷酢酸、フマル酸、フマル酸一ナトリウム、DL−リンゴ酸、DL−リンゴ酸ナトリウム、リン酸及びこれらの塩(カリウム塩、ナトリウム塩)が挙げられる。酸味料は、pH調整剤としても使用可能である。
甘味料としては、例えば、果糖、砂糖、果糖ぶどう糖液糖、ぶどう糖、麦芽糖、ショ糖、高果糖液糖、糖アルコール、オリゴ糖、はちみつ、サトウキビ搾汁液(黒糖蜜)、水飴、ステビア末、ステビア抽出物、羅漢果末、羅漢果抽出物、甘草末、甘草抽出物、ソーマトコッカスダニエリ種子末、ソーマトコッカスダニエリ種子抽出物などの天然甘味料や、アセスルファムカリウム、スクラロース、ネオテーム、アスパルテーム、サッカリンなどの人工甘味料などが挙げられる。
色素の具体例としては、カラメル、アントシアニン色素、フラボノイド色素、カロテノイド色素、キノン色素、ポリフィリン、ジケトン色素、ベタシアニン色素、アザフィロン色素、クチナシ色素等が挙げられる。
柑橘類果実様飲料は、果汁飲料、野菜飲料、スポーツドリンク、ハチミツ飲料、豆乳、ビタミン補給飲料、ミネラル補給飲料、栄養ドリンク、滋養ドリンク、乳酸菌飲料、乳飲料などのソフト飲料;果汁入り炭酸飲料、乳類入り炭酸飲料、エキス入り飲料等の炭酸飲料;緑茶、紅茶、ウーロン茶、ハーブティー、ミルクティー、コーヒー飲料等の嗜好飲料、アルコール飲料;又はノンアルコール飲料のいずれであってよもよい。
柑橘類果実様飲料の製造方法は、シトラールと、ノナナールとを混合してなり、
前記混合が、前記シトラールの含有量(mg/L)を「X」とし、
前記ノナナールの含有量(mg/L)を「Y」とした場合、下記数式1及び数式2:
3≦X≦10 (数式1)
0.23≦Y≦0.43 (数式2)
で表される関係を満たすように行われるものである。
別の好ましい態様によれば、柑橘類果実様飲料を容器に詰めた容器詰飲料を提案することができる。容器詰飲料とすることにより、柑橘類果実様香味感、とりわけ、柑橘類果実をもぎたて搾り立てした際の果汁感及び新鮮感を付与し、促進させると伴に、柑橘類果実様飲料の提供利便性、流通利便性、保存性、品質劣化防止を図ることが可能となる。
容器は、内容物が漏洩しない材料であれば、ビニール、プラスチック、ガラス、金属、紙、木又は皮等で、様々な形状で形成された容器に詰めることができる。より好ましい態様によれば、容器の内外に、光、熱、酸素、紫外線等を遮断するための素材(たとえば、金属箔)を備えたものであってよい。
実施例、比較例の飲料中に含まれる各成分は、ガスクロマトグラフ質量分析(GC/MS)を用いて定量を行った。GC/MS分析の手順は以下の通りであった。
〈分析用試料調製〉
試料を5.0g秤量し、内部標準としてリナロール−d5を200μl添加した上で、45mLの水で希釈した。次にアセトニトリル浸漬および加熱にてコンディショニングを行ったTwister(PDMS,0.5mm×20mm)を希釈した試料に投入し、40℃2時間の撹拌吸着反応を行ったものを分析用試料として調製した。なお、試料調製は2点並行して行った。
分析用試料中のシトラールの量は、内部標準(リナロール−d5)とのピーク面積比から計算した。また、同一試料について2点並行で行った分析値の平均値を試料中の成分量であるものとして定量を行った。
装置:測定には昇温気化型注入口(CIS4,Gerstel社製)、加熱脱着ユニット(TDU, Gerstel社製)およびLTMカラム(1st:DB−WAX,20m×0.18mm;0.3μm、2nd:DB−5,10m×0.18mm;0.4μm,Agilent Technologies社製)を搭載した7890B GC System(Agilent Technologies社製)、5977A MSD(Agilent Technologies社製)を使用した。
TDU:20℃(1min)−(720℃/min)−250℃(3min)
CIS:−50℃(1.5min)−(12℃/min)−240℃(60min)
スプリット比:30:1
注入口圧:508.28kPa
ベント圧:314.11kPa
1stカラム温度:40℃(3min)−(5℃/min)−180℃(0min)
2ndカラム温度:40℃(31min)−(5℃/min)−200℃(0min)
MSD:Scan mode,m/z 29−230, 20Hz, EI
「ノナナール」は、非特許文献(Vesely, P. et al.; Analysis of aldehydes in beer using solid−phase microextraction with on−fiber derivatization and gass chromatography/mass spectrometry. J. Agric. Food Chem. 2003, 51, 6941−6944)に記載された方法に基づいて分析した。
下記処方に従って、実施例と比較例による柑橘類果実様アルコール飲料を調製した。
下記組成表にある通り、レモン風味の炭酸アルコール飲料を調製し、参考例0(対照例)とした。飲料のpHは、3.4であった。ガス圧は2.4〜2.7volに調製した。pHは東亜ディーケーケー社製のpHメーター HM−30Rを用いて測定した。
95.3%アルコール 96.5ml/L(全体で9.20%)
レモン香料 0.05g/L
(シトラール0.3mg/L;ノナナール0.13mg/L)
クエン酸 4g/L
クエン酸ナトリウム 1.7g/L
アセスルファムK 0.1g/L
スクラロース 0.012g/L
実施例及び比較例は、シトラールと、ノナナールとの添加量を、下記〔表1〕及び〔表2〕の組成表に従って処方した以外は、参考例0と同様にして、レモン風味のアルコール飲料を調製した。
実施例と比較例における、シトラール含有量と、ノナナール含有量を下記表1に記載した。
食品官能評価能力のある男女合わせて13名のパネルにより、実施例及び比較例のアルコール飲料を以下の基準で評価し、その平均値を得て、その結果を、下記表2に記載した。
レモン果汁感は、レモンを搾った際のレモン香味として、以下の評価基準で評価して平均値を下記〔表2〕に記載した。
評価点1:レモン果汁感が極めて弱かった。
評価点2:レモン果汁感が弱かった。
評価点3:参考例0のレモン果汁感と同様であった。
評価点4:本来のレモン果汁感が強かった。
評価点5:本来のレモン果汁感が極めて強かった。
レモン新鮮感は、レモンをもぎたて搾り立ての爽やかなレモン香味として以下の評価基準で評価して平均値を下記〔表2〕に記載した。
評価点1:爽やかなレモン香味感が極めて弱かった。
評価点2:爽やかなレモン香味感が弱かった。
評価点3:参考例0の爽やかなレモン香味感と同様であった。
評価点4:本来の爽やかなレモン香味感が強かった。
評価点5:本来の爽やかなレモン香味感が極めて強かった。
実施例1は、参考例0と比較して、果汁感が感じられた。
実施例2は、参考例0と比較して、果汁感、レモンキャンディな感じ、ボディ感が感じられた。
実施例3は、参考例0と比較して、レモンの皮の感じ、ボディ感、果汁感が感じられた。
実施例4は、参考例0と比較して、果汁感、新鮮感、レモンスカッシュ的な感じが感じられた。
実施例5は、参考例0と比較して、果汁感、新鮮感が感じられた。
実施例6は、参考例0と比較して、トップのレモン感、レモンの皮の感じ、新鮮感、グリーン感が感じられた。
比較例2は、参考例0と比較して、苦みが認められた。
比較例3は、参考例0と比較して、ファッティ、オイリーな香りが強く認められた。
比較例4は、参考例0と比較して、グリーンでオイリーな感じが強く感じられた。
比較例5は、参考例0と比較して、エタノール臭や苦味が感じられた。
比較例6は、参考例0と比較して、レモン香気が弱く感じられた。
比較例7は、参考例0と比較して、人工的な香味がし、加熱臭やビタミン臭が感じられた。
シトラールと、ノナナールと、上記数式1及び数式2で表される関係を満たす含有量で含有した柑橘類果実様飲料によれば、柑橘類果実様香味感、とりわけ、柑橘類果実をもぎたて搾り立てした際の果汁感及び爽やかな新鮮感を、付与し、促進させることが理解された。
Claims (6)
- 柑橘類果実様飲料であって、
シトラールと、ノナナールとを含んでなり、
前記シトラールの含有量(mg/L)を「X」とし、
前記ノナナールの含有量(mg/L)を「Y」とした場合、以下の数式1及び数式2:
3≦X≦10 (数式1)
0.23≦Y≦0.43 (数式2)
である関係を満たすものである、柑橘類果実様飲料。 - 前記数式1が、4.5≦X≦10であり、及び、
前記数式2が、0.23≦Y≦0.43である、請求項1に記載の柑橘類果実様飲料。 - 劣化臭生成抑制剤又は劣化臭消臭剤をさらに含んでなる、請求項1又は2に記載の柑橘類果実様飲料。
- 前記柑橘類果実様飲料のpHが、2以上7以下である、請求項1〜3の何れか一項に記載の柑橘類果実様飲料。
- 前記柑橘類果実様飲料が、アルコール飲料又はノンアルコール飲料である、請求項1〜4の何れか一項に記載の柑橘類果実様飲料。
- 柑橘類果実様飲料を製造する方法であって、
シトラールと、ノナナールとを混合してなり、
前記混合が、前記シトラールの含有量(mg/L)を「X」とし、
前記ノナナールの含有量(mg/L)を「Y」とした場合、以下の数式1及び数式2:
3≦X≦10 (数式1)
0.23≦Y≦0.43 (数式2)
である関係を満たすように行われる、柑橘類果実様飲料の製造方法。
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